説明

高コレステロール症用組成物

【課題】 新規な組成物、より詳しくは、医薬組成物、食品組成物、高コレステロール症予防および/または治療用組成物を提供する。
【解決手段】 (i)パンテチン類、および(ii)プランタゴ植物またはその抽出物を含有する組成物。
パンテチン類とプランタゴ植物またはその抽出物を併用すると、優れたコレステロール低下作用を示すことを見出した。したがって、パンテチン類、およびプランタゴ植物またはその抽出物を含有する組成物は、医薬組成物、食品組成物、高コレステロール症用組成物として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な組成物、より詳しくは、高コレステロール症予防および/または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パンテチンは、血清総コレステロール低下作用、血清中性脂肪低下作用、血清HDL−コレステロール増加作用等が知られ、パントテン酸欠乏症の予防および治療、消耗性疾患、甲状腺機能亢進症、妊産婦、授乳婦などのパントテン酸の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給、高脂血症、弛緩性便秘、ストレプトマイシンおよびカナマイシンによる副作用の予防および治療、急・慢性湿疹、血液疾患の血小板数および出血傾向の改善のうち、パントテン酸の欠乏または代謝障害が関与すると推定される場合に用いられている(非特許文献1参照)。
プランタゴ(Plantago)植物は、オオバコ科に属する植物で、プランタゴ オバタ(P.ovata)、プランタゴ インディカ(P.indica)、プランタゴ アレナリア(P.arenaria)、プランタゴ サイリウム(P.psyllium)などが知られている。プランタゴ植物、とりわけ種皮が瀉下作用やコレステロール低下作用を有することが知られている(非特許文献2参照)。
【0003】
【非特許文献1】財団法人日本医薬情報センター編 医療薬 日本医薬品集 2002(第25版) 株式会社じほう 1582頁
【非特許文献2】食品工業、1998年、41(18)、p.71−79
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な組成物、より具体的には、医薬組成物、食品組成物、高コレステロール症用組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、パンテチン類とプランタゴ植物またはその抽出物を併用すると、優れたコレステロール低下作用を示すことを見出し、パンテチン類、およびプランタゴ植物またはその抽出物を含有する組成物が、高コレステロール症用組成物となりうることを新たに見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明はパンテチン類、およびプランタゴ植物またはその抽出物を含有する組成物に関するものであり、以下の発明に関する。
(1)(i)パンテチン類、および(ii)プランタゴ植物またはその抽出物を含有する組成物。
(2)1日当たりの投与(服用)量として、(i)パンテチン類を1〜2000mg、および(ii)プランタゴ植物またはその抽出物を、植物の重量換算で、10〜50000mg含有する組成物。
(3)パンテチン類がパンテチンである上記(1)または(2)記載の組成物。
(4)プランタゴ植物がプランタゴ オバタである上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の組成物。
(5)パンテチンおよびプランタゴ オバタ種皮末を含有する組成物。
(6)医薬用である上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の組成物。
(7)食品用である上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の組成物。
(8)高コレステロール症の予防および/または治療用である上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の組成物。
(9)剤形が経口投与製剤である上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の組成物。
【発明の効果】
【0007】
後期実施例から明らかなように、パンテチン類とプランタゴ植物を併用すると、優れたコレステロール低下作用を示した。したがって、パンテチン類、およびプランタゴ植物またはその抽出物を含有する組成物は医薬として、また食品として有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明にかかるパンテチン類は、公知の化合物であり、その入手方法としては、市販品を用いてもよく、また公知の方法に基づき製造することもできる。パンテチン類としては、パントテニルアルコール、パントテニルエチルエーテル、アセチルパントテニルエチルエーテル、ベンゾイルパントテニルエチルエーテル、ジカルボエトキシパントテン酸エチルエステル、パンテテイン、パンテチン、ホスホパンテテイン、パントテン酸、パントテン酸の塩などを挙げることができる。パントテン酸の塩としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を挙げることができる。本発明において、パンテチン類としては、パンテチン、パントテン酸、パントテン酸の塩が好ましく、パントテン酸の塩と
しては、パントテン酸カルシウムが好ましい。
【0009】
本発明にかかるプランタゴ植物は、オオバコ科に属する植物で、プランタゴ オバタ(P.ovata)、プランタゴ インディカ(P.indica)、プランタゴ アレナリア(P.arenaria)、プランタゴ サイリウム(P.psyllium)などが知られている。本発明においては、プランタゴ植物として、プランタゴ植物を構成する全てまたはプランタゴ植物を構成する一部(例えば、葉、根、根茎、茎、花、種子、種皮など)をそのまま、または必要に応じて、小片、小塊等に切断もしくは破砕して用いることができ、または粉末に粉砕して用いることもできる。さらに、生のままでも乾燥したものでも用いることができる。
プランタゴ植物の抽出物とは、上述のプランタゴ植物を構成する全てまたは一部に適当な浸出剤を加えて浸出した液(浸出液)、浸出液を濃縮した液、またはこれらの液を乾燥したものを挙げることができる。具体的には、エキス、チンキ、乾燥エキスなどを挙げることができる。抽出物の調製は、一般にエキスやチンキなどを製する際に用いられる冷浸法、温浸法やパーコレーション法などの公知の方法により行えばよい。浸出剤としては、水、メタノール、エタノール、n−ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、エチルメチルケトンなどのケトン類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、またはこれら2種以上の混合物等を挙げることができる。得られた浸出液や浸出液の濃縮液は、さらに凍結乾燥、噴霧乾燥や減圧留去などの公知の方法により、乾燥粉末としてもよい。本発明においては、プランタゴ植物の種子および種皮を用いることが好ましい。
【0010】
本発明の組成物には、パンテチン類、プランタゴ植物またはその抽出物以外に、さらに以下に示す成分を配合してもよい。配合可能な成分としては、フラバスタチンナトリウム、シンバスタチン、アトルバスタチンカルシウム水和物、セルバスタリンナトリウム、ベザフィブラート、クロフィブラート、シンフィブラート、イコサペント酸エチル、ポリエンホスファチジルイコリン、デキストラン硫酸ナトリウム、γ−オリザノール、ニコモール、ニセリトロール、クリノフィブラート、コレスチラミン、エラスターゼES、メリナミド、プロブコールやDPA(ドコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、γ−リノレン酸、リノール酸、異性化リノール酸などの脂肪酸類、デキストリン、ポリデキストロース、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キチン、キトサン、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、マンナン、カルボキシメチルセルロース、カラギナンなどの食物繊維類、リコペン、アスタキサンチン、α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチンなどのカロチノイド類、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、フコイダンなどのムコ多糖、レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトールなどのリン脂質、大豆タンパク質、タウリン、メチオニン、アルギニン、シテインなどのタンパク・アミノ酸、ビール酵母、紅麹などの菌・酵母、ヘスペリジン、ナリンゲニン、ルチン、ケルセチン、プロアントシアニジン、カテキン、ガロタンニン、ダイゼイン、ゲニスチンなどのポリフェノール類、アスコルビン酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、葉酸、トコトリエノール、トコフェロール、リボフラビン、ピリドキシンなどのビタミン類、L−カルニチン、dl−塩化カルニチン、酒石酸水素コリン、イノシトール、コエンザイムQ10などのビタミン類似成分、イノシトールヘキサニコチネート、ヘプロニカート、ニコチン酸トコフェロールなどのビタミン誘導体、プラセンタエキスなどの動物由来成分、スピルリナ、ニンニク、月見草油、ブルーベリー、イチョウ葉、ショウキョウ、セイヨウサンザシ、カシュウ、トチュウ、シゴカ、人参、クコシ、ウコン、レイシ、田七人参などのハーブ・生薬等を挙げることができるが、上記のもののみに限定されるべきものではない。これらの成分は、単一成分を配合してもよく、2種以上のものを組み合わせて配合してもよい。
【0011】
本発明の組成物は、経口的に投与することが好ましい。経口的に投与する製剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、液剤、トローチ剤、ゼリー剤、舐剤、シロップ剤等を挙げることができる。本発明の組成物は、必ずしも医薬として用いられるべきものではなく、飲料や固形物などの食品として用いてもよい。
【0012】
製剤化は、公知の製剤技術により行うことができ、製剤中には適当な製剤添加物を加えることができる。製剤添加物は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜加えればよい。製剤添加物としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、乳化剤、安定化剤等を挙げることができる。
【0013】
本発明の組成物における、パンテチン類、およびプランタゴ植物またはその抽出物の配合比は、1:0.1〜1:1000(植物の重量換算)が好ましく、1:1〜1:100(植物の重量換算)が好ましい。
【0014】
本発明の組成物の投与(配合)量は、性別、年齢、症状、投与方法、投与回数、投与時期等により適宜検討を行い、適当な投与(配合)量を決めればよい。例えば、経口投与の場合、パンテチン類については、1日当たり1〜2000mg投与(配合)することが好ましく、5〜1000mg投与(配合)することがさらに好ましい。プランタゴ植物またはその抽出物については、植物の重量換算で、1日当たり10〜50000mg投与(配合)することが好ましく、500〜25000mg投与(配合)することがさらに好ましい。
本発明の組成物は、本発明に係る全成分を含む単一の製剤として製し、これを投与(服用)してもよいし、また本発明に係る各成分を分けて別の製剤とし、それら製剤を同時または順次投与(服用)可能としたキット製剤としてもよい。
【0015】
本発明の組成物は、優れたコレステロール低下作用を示すことから、その効能・効果、適応症としては、心筋梗塞、動脈硬化症、脳梗塞、脳卒中、狭心症、高コレステロールに伴う諸症状の改善:頭痛、頭重、肩・首筋のこり、手足のしびれ・冷え、レイノー症候群などを挙げることができる。
【0016】
以下に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらにのみ限定されるべきものではない。
【実施例】
【0017】
1.血清コレステロール低下作用
12週齢の雄性Kbl:JWウサギ(北山ラベス株式会社)6匹を1群に分けた。固型飼料(RC4、オリエンタル酵母工業株式会社)に下表(表1)の組成となるようにコレステロール、パンテチン、プランタゴ オバタ種皮末を含有させ、各群につき、1日当たり100gを8週間にわたり摂食させた。
【0018】
表1

【0019】
上表の固型飼料摂食前、摂食2、4、6、8週後に、前日から約18時間絶食させたウサギの耳介動脈から約3ml採血し、遠心分離機(CF 8DL、日立工機株式会社)にて分離(4℃、3000rpm、15分間)した血清について、自動分析装置(AU400、オリンパス光学工業株式会社)を用い、総コレステロール濃度(mg/dl)を測定した(測定法:COD・HDAOS法)。得られた結果について、有意差検定を行った。Bartlettの検定後、等分散の場合は、Dunnett検定を行い、不等分散の場合は、Steel検定を行った。
【0020】
結果(図1)から明らかなように、本発明にかかるパンテチンおよびプランタゴ オバタを投与した群は、優れたコレステロール低下作用を示した。
【0021】
2.製剤例
2.1 顆粒剤
主成分として、以下の組成(1日量として3包)で、常法により顆粒剤を製造した。
パンテチン 600mg
プランタゴ オバタ種皮末 2000mg
酢酸d−α−トコフェロール 100mg
【0022】
2.2 顆粒剤
主成分として、以下の組成(1日量として3包)で、常法により顆粒剤を製造した。
パンテチン 600mg
プランタゴ オバタ種皮末 1500mg
酢酸d−α−トコフェロール 100mg
酪酸リボフラビン 12mg
【0023】
2.3 錠剤
主成分として、以下の組成(1日量として12錠)で、常法により錠剤を製造した。
パンテチン 300mg
プランタゴ オバタ種皮末 1000mg
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1000mg
コエンザイムQ10 30mg
dl−塩化カルニチン 200mg
【0024】
2.4 錠剤
主成分として、以下の組成(1日量として12錠)で、常法により錠剤を製造した。
パンテチン 300mg
プランタゴ オバタ種皮末 1500mg
ペクチン 600mg
オキソアミジン末(加工大蒜) 100mg
酢酸d−α−トコフェロール 10mg
【0025】
2.5 顆粒剤
主成分として、以下の組成(1日量として3包)で、常法により顆粒剤を製造した。
パンテチン 600mg
プランタゴ オバタ種皮末 1500mg
イノシトールヘキサニコチネート 200mg
酢酸d−α−トコフェロール 100mg
【0026】
2.6 顆粒剤
主成分として、以下の組成(1日量として3包)で、常法により顆粒剤を製造した。
パンテチン 600mg
プランタゴ オバタ種皮末 1000mg
L−塩酸アルギニン 300mg
アミノエチルスルホン酸 500mg
【0027】
2.7 顆粒剤
主成分として、以下の組成(1日量として3包)で、常法により顆粒剤を製造した。
パンテチン 600mg
プランタゴ オバタ種皮末 1000mg
L−アスコルビン酸 500mg
ニコチン酸dl−α−トコフェロール 100mg
γ−オリザノール 10mg
【0028】
2.8 顆粒剤
主成分として、以下の組成(1日量として3包)で、常法により顆粒剤を製造した。
パンテチン 300mg
プランタゴ オバタ種皮末 1500mg
ソイステロール(大豆不けん化物) 600mg
酢酸d−α−トコフェロール 10mg
【0029】
2.9 顆粒剤
主成分として、以下の組成(1日量として3包)で、常法により顆粒剤を製造した。
パンテチン 300mg
プランタゴ オバタ種皮末 1500mg
EPA(エイコサペンタエン酸) 100mg
DHA(ドコサヘキサエン酸) 300mg
酢酸d−α−トコフェロール 100mg
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の組成物は、実施例から明らかなように、優れたコレステロール低下作用を示した。したがって、本発明の組成物は、医薬組成物、食品組成物、さらには高コレステロール血症用組成物として有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】血清コレステロール低下作用を検討した結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)パンテチン類、および(ii)プランタゴ植物またはその抽出物を含有する組成物。
【請求項2】
1日当たりの投与(服用)量として、(i)パンテチン類を1〜2000mg、および(ii)プランタゴ植物またはその抽出物を、植物の重量換算で、10〜50000mg含有する組成物。
【請求項3】
パンテチン類がパンテチンである請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
プランタゴ植物がプランタゴ オバタである請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
パンテチンおよびプランタゴ オバタ種皮末を含有する組成物。
【請求項6】
医薬用である請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
食品用である請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
高コレステロール症の予防および/または治療用である請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
剤形が経口投与製剤である請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物。


【図1】
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【公開番号】特開2006−16356(P2006−16356A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197448(P2004−197448)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】