説明

高光沢の、ポリフッ化ビニリデン系コーティングシステム及び方法

ラクタム溶媒システム中に非常に高いビニリデンジフルオリド含有率を有するポリビニリデン樹脂の溶液、及び高光沢のコーティング、特に高光沢のクリアコーティングを形成するためのそれらの使用。本発明はまた、これらのコーティングを導入するコーティングされた製品を提供する。有利には、十分に高いビニリデンジフルオリド含有率を有するポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、並びに本発明を実施するために有用な多種多様の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、ラクタム溶媒に容易に分解し、次いで溶解し続けることができる。好都合には、これらの溶液は、室温で調製することができる。分散液からよりも、溶液から、上記PVDF樹脂をコーティングできることが、本発明の複数の実施形態により提供される高光沢特性をもたらすキー要因である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の主張]
本出願は、35USC§119(e)の下、Registerらにより2007年5月8日に出願され、「高光沢の、ポリフッ化ビニリデン系コーティングシステム及び方法」と題する、シリアルナンバー60/928,208を有する米国仮出願のからの優先権を主張する(参照により、全体を組み入れる)。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、ポリフッ化ビニリデン系ポリマーを導入したコーティング組成物、及び多種多様の基材上に高光沢のコーティングを形成するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリフッ化ビニリデン樹脂を導入したコーティング組成物は公知である。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂は、ビニリデンフルオリド繰返し単位を導入したポリマーである。ビニリデンジフルオリド繰返し単位は、式−[CH2CF2]−を有する。ポリフッ化ビニリデンのホモポリマーは、一般的に、末端のところを除いて、ビニリデンジフルオリドの繰返し単位のみを導入し、一方、他のポリフッ化ビニリデンの形態は、ビニリデンジフルオリド繰返し単位を、1種又は2種以上の他の共重合性繰り返し単位と共重合することにより製造される。得られたポリマー製品の特性は、ポリビニリデンジフルオリドに加えて、上記ポリマーに導入された他の成分の性質及び相対量によって大きく変化する場合がある。
【0004】
ポリフッ化ビニリデン樹脂は、広範囲のコーティングにおいてこれらの材料を用いることを望ましくする、多くの有用な特性を有する。第1に、PVDF樹脂は、広範囲の化学物質、例えば、無機酸、アルカリ液、二酸化硫黄等に対して安定である。第2に、PVDF樹脂を導入したコーティングは、撥汚染性、耐ひっかき傷性、及び耐候性を有する傾向がある。第3に、PVDF樹脂は、紫外線による劣化に耐久性を有することができる。第4に、他のフルオロポリマーと比較して、PVDF樹脂は、比較的経済的である。現在の市場の状況では、例えば、PVDFのホモポリマーは、フルオロエチレンビニルエーテル(FEVE)ポリマーの半分未満の費用を有することができる。これらの有用な特性の結果として、PVDFコーティングは、屋外用途向けの建築用及びビルディング用パネル上の着色コーティングの成分として含む、広範囲の要求の厳しいコーティング用途に用いられている。
【0005】
多種多様の基材上に高光沢のコーティングを適用することが望ましい場合がある。これらの基材は、金属に制限されず、木材、紙、セラミック及びガラス、ポリマー、皮革、織物及び不織布、繊維、これらの組み合わせ(合成物及び/又は天然物を問わず)等を含む。特別な関心は、スチール、アルミニウム、亜鉛、銅、並びに合金、金属間組成物、これらを1種又は2種以上含む複合材料等を含む基材にある。これらの基材の典型的な供給には、押出し品、コイル、又は建築物パネル、ルーフパネル、自動車ボディパーツ、アルミニウム押出し品に転換すべきことを意図する加工された基材が含まれるが、これらに限定されるものではない。これらの基材は、むき出し、プライマー塗装された、又はカラーコーティングされていてもよく、そして目的物は、それらの光沢及び外観を向上させるためにこれらの基材にクリアコーティングをさらに適用してもよい。
【0006】
FEVEポリマーを導入した高光沢クリアコート組成物は公知であるが、これらは、欠点を有する。FEVEポリマーの、PVDFポリマーに対するコスト対性能比は優位に高い。PVDF系高光沢クリアコート組成物を製造しそして使用することが明らかに、非常に望ましいが、これは技術的に難しい。FEVEポリマーを導入した高光沢のコーティングは公知である(米国特許第5,178,915号明細書)。PVDF分散液がまた公知であるが、低い〜穏やかな光沢を有するコーティングを形成する傾向がある。
【0007】
米国特許第3,944,689号明細書には、PVDF樹脂がビニリデンジフルオリド及びポリテトラフルオロエチレンのコポリマーである溶液からの、高光沢の、風乾コーティングの調製が記載されている。しかし、選択された、光沢を向上させる溶媒にPVDF/PTFEコポリマーを可溶にするために、実行可能なコポリマー実施形態のビニリデンジフルオリド含有率は、約80重量%まで下げなければならなかった。PVDF/PTFEコポリマーをまた、アクリレートポリマーと混合し(50/50比)、そして実質的にクリアな溶液を得るために175°Fまで加熱しなければならない。熱硬化性成分を、配合物に導入すべき場合には、上記加熱は早期の架橋を生じさせる場合があるので、これら貯蔵及び貯蔵寿命を複雑にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
産業界は、PVDF系、高光沢のコーティングと、これらのコーティングを導入したコーティング製品とを調製するための良好な戦略を必要としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ラクタム溶媒システム系の中に非常に高いビニリデンジフルオリド含有率を有するポリビニリデン樹脂の溶液、及び高光沢のコーティング、特に高光沢のクリアコーティングを形成するためのそれらの使用に関する。本発明はまた、これらのコーティングを導入する、コーティングされた製品を提供する。有利には、十分に高いビニリデンジフルオリド含有率を有するポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、並びに本発明を実施するために有用な多種多様な熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、ラクタム溶媒に簡易に溶解し、次いで溶解を保ち続けることができる。好都合には、これらの溶液を、室温で調製することができる。分散液からよりも、溶液から、上記PVDF樹脂をコーティングできることが、本発明の複数の実施形態により提供される高光沢特性をもたらすキー要因である。
【0010】
本発明はまた、光沢性能をさらに高めるために、単独で、又はラクタム溶解戦略と組み合わせて遂行することができる1つ又は2つ以上の追加の戦略を提供する。第1に、コーティング溶液は、いくつかの条件における耐白化性を向上させるために、熱硬化性材料及び熱可塑性材料の両方をさらに含むことができる。第2に、熱硬化性材料及び熱可塑性材料の両方を用いる場合でさえも、本発明の実施形態は、他の条件、例えば、コーティングを硬化させるために行われうる焼付けの際に生ずる傾向がありうる白化を制限するために、熱硬化性材料の含有率を制限する。上記コーティング溶液の熱硬化性材料の含有率を制限することにより、上記コーティング溶液がラクタムに敏感な基材上にコーティングされた場合に生ずる傾向があり得る白化及び/又は表面テクスチャライズ化(texturizing)を減らす手助けとなり得る。
【0011】
本発明はまた、ラクタムに敏感な基材を保護することを手助けするために、単独又は組み合わせて実施しうる追加の戦略を提供する。上記戦略の1つとして、上記コーティング溶液それ自体を、上記コーティング組成物の1種又は2種以上の材料が可溶である、部分的に可溶である、不溶である、又は室温で不溶であるが高温で可溶である少なくとも1種の追加の溶媒と配合することができる。上記溶液の1種又は2種以上の材料が追加の溶媒に少なくとも部分的に不溶である場合には、得られた組成物が溶液となるように、添加される溶媒の量を制限することが望ましい。一又は複数の上記追加の溶媒を添加すると、ラクタム材料が希釈されるので、上記ラクタムに敏感な基材に対してその影響がより小さくなる。さらに、フルオロカーボン材料、熱硬化性材料、及び熱可塑性プラスチック材料を含む基材において、熱硬化性材料の量は、ラクタム含有溶液に対する上記基材の過敏性を小さくするために制限することができる。
【0012】
態様の1つでは、本発明は、コーティング組成物に関する。上記コーティング組成物は、少なくとも1種のラクタム溶媒を含む溶媒成分を含む。少なくとも1種のポリフッ化ビニリデン樹脂は、上記溶媒成分に溶解される。上記ラクタム溶媒:上記ポリフッ化ビニリデン樹脂の重量比は、少なくとも約2.5:1である。上記PVDF樹脂は、式−(CH2CF2)−のビニリデンジフルオリド繰返し単位を十分な量含み、そして上記PVDF樹脂は、上記PVDF樹脂が25℃で上記溶媒成分に溶解しそして可溶であるような十分に低い分子量を有する。少なくとも1種の熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を上記溶媒成分に溶解し、少なくとも1種のPVDF樹脂:上記熱可塑性樹脂(存在する場合)及び上記熱硬化性樹脂(存在する場合)の総重量の重量比は、約0.3:1〜約30:1である。
【0013】
別の態様では、本発明は、少なくとも1種のラクタム溶媒を含む溶媒成分を含むコーティング組成物に関する。少なくとも1種のポリフッ化ビニリデン樹脂を、上記溶媒成分に溶解する。上記ラクタム溶媒:上記ポリフッ化ビニリデン樹脂の重量比は、少なくとも約2.5:1である。上記PVDF樹脂は、上記PVDF樹脂が25℃で上記溶媒成分に可溶であるような十分に低い分子量を有する。少なくとも1種の熱可塑性樹脂及び少なくとも1種の熱硬化性樹脂をまた、上記溶媒成分に溶解し、上記少なくとも1種のポリフッ化ビニリデン樹脂:上記熱可塑性樹脂及び上記熱硬化性樹脂の総重量の重量比は、約0.3:1〜約30:1の範囲内にある。上記熱可塑性樹脂:上記熱硬化性樹脂の重量比は、約2:1より大きい。
【0014】
別の態様では、本発明は、少なくとも90重量%のビニリデンジフルオリド繰返し単位を有するポリフッ化ビニリデン樹脂;並びに少なくとも1種の熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を含む材料に由来するクリアコーティングを含む、コーティングされた製品に関する。第2のコーティングが、上記クリアコーティングの下にある。第2のコーティングは、少なくとも1種のフルオロポリマー、少なくとも1種の熱可塑性樹脂、及び少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含む材料に由来し、上記少なくとも1種のフルオロポリマー:上記少なくとも1種の熱可塑性樹脂及び上記少なくとも1種の熱硬化性樹脂の総重量の重量比は、約1:1より大きく、そして上記熱可塑性樹脂:上記熱硬化性樹脂の重量比は、1:1より大きいが、ただし、第2のコーティングが、当該第2のコーティングに含まれる樹脂の総重量100重量部当たり、上記熱硬化性樹脂20重量部未満を含む。
【0015】
別の態様では、本発明は、ラクタム溶媒及び潜伏性溶剤を含む溶媒成分を含むコーティング組成物に関し、上記溶媒成分は、少なくとも約25重量%の上記ラクタム溶媒を含む。ポリフッ化ビニリデン樹脂を上記溶媒成分に溶解し、上記ラクタム溶媒:上記ポリフッ化ビニリデン樹脂の重量比は、少なくとも約2.5:1である。上記ポリフッ化ビニリデン樹脂は、十分な量のビニリデンジフルオリド繰返し単位を含み、そして上記ポリフッ化ビニリデン樹脂が上記ラクタム溶媒及び上記溶媒成分に25℃で溶解しそして可溶のままであるような十分に低い重量平均分子量を有し、そして上記フルオロカーボンポリマーは、上記潜伏性溶剤、上記ラクタム溶媒、及び上記溶媒成分に約35℃超で可溶である。
【0016】
上記組成物はまた、ヒドロキシル官能基を有する少なくとも1種の熱硬化性ビニル樹脂及び少なくとも1種の熱可塑性ビニル樹脂を含み、上記PVDF樹脂:上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の総重量の重量比は、約0.4:1より大きく、そして上記熱可塑性樹脂:上記熱硬化性樹脂の重量比は、約2:1より大きい。上記組成物はまた、上記熱硬化性樹脂の少なくとも一部を架橋するために有効な量で存在するアミノプラスト架橋剤を含む。上記組成物は、上記熱硬化性樹脂及び上記アミノプラスト架橋剤の間の架橋反応を促進するブロック化又は未ブロック化触媒を所望により含む。
【0017】
別の態様では、本発明はまた、本明細書に記載されるコーティング組成物を用いて調製されたコーティングに関する。他の態様では、本発明は、コーティング及びコーティングされた製品を調製するために、本明細書に記載されるコーティング組成物を使用する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に記載される本発明の実施形態は、網羅的であること、又は以下の詳細な説明に開示されるまさにその形態に本発明を制限することを意図するものではない。むしろ、実施形態は、他の当業者が、本発明の原理及び実施を正しく評価しそして理解することができるように選択されそして記載されている。
【0019】
本発明のコーティング組成物は、概して、溶媒成分、ポリフッ化ビニリデン樹脂、熱可塑性樹脂、所望による熱硬化性樹脂、及び所望による1種又は2種以上の他の材料を含む。上記溶媒成分は、概して、少なくとも1種のラクタム溶媒を含む。ラクタム溶媒は、環式アミド部分を含む溶媒である。これらの環式部分は、4〜6員環構造体であることが多い。接頭語は、環の大きさを示すために用いられうる。例えば、接頭語β(ベータ)、γ(ガンマ)、及びδ(デルタ)は、4−、5−及び6−員環を、それぞれ指す。
本発明を実施するために有用な特に好ましい双極性の、非プロトン性ラクタム溶媒は、次の5員環のラクタム構造:
【化1】

を有する化学系化合物N−メチル−2−ピロリドンである。
N−メチル−2−ピロリドンはまた、NMP、1−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリジノン、及びm−ピロールを含む他の名称により知られている。
【0020】
有利には、十分に高いビニリデンジフルオリド含有率を有するポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、並びに本発明を実施するために有用な多種多様の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、室温で、ラクタム溶媒に簡易に溶解し、次いで溶解し続けることができる。分散液からよりも、溶液から、上記PVDF樹脂をコーティングできることが、本発明の複数の実施形態により提供される高光沢特性をもたらすキー要因である。
【0021】
高いビニリデンジフルオリド含有率を有するPVDF樹脂は、室温において多くの試薬に溶解させることが難しい場合があるが、例えば、室温において、特に、上記PVDF樹脂が適切な重量平均分子量(下記でさらに論ずる)を有し且つ上記溶媒成分がPVDF樹脂と比較して十分な量のラクタム溶媒を含む場合には、ラクタム溶媒に簡易に溶解することができる。望ましくは、上記溶媒成分は、上記ラクタム溶媒:上記PVDF樹脂の重量比が少なくとも約2.5:1である、例えば、約2.5:1〜約15:1の範囲にあるような十分なラクタム溶媒を含む。いくつかの実施形態では、上記ラクタム溶媒:上記PVDF樹脂の重量比は、少なくとも約5.5:1、例えば、約5.5:1〜約10:1の範囲にある。
【0022】
1種又は2種以上のラクタム溶媒に加えて、上記溶媒成分は、種々の用途向けに、1種又は2種以上の追加の溶媒を含むことができる。例えば、上記双極性の、非プロトン性ラクタム溶媒に加えて、上記溶媒成分は、所望により、上記コーティング組成物のフルオロカーボン樹脂成分に対して潜伏性である1種又は2種以上の溶媒をさらに含むことができる。ラクタム溶媒、例えば、NMPは強力な溶媒であり且ついくつかの基材を浸食し、分解し又はそれらと相互作用する場合があるので、潜伏性溶剤は、上記コーティング組成物がコーティングされる基材を保護する手助けするために有益に用いることができる。例えば、NMPは、フルオロポリマー含有表面、例えば、FLUOROPONトップコート(Valspar Corporationから市販される)と、焼付けの際、クリアで、高光沢な外観ではなく、白化及び/又は表面テクスチャライズ化を生じさせる様式で相互作用する場合がある。表面テクスチャライズ化により、目視検査の際に光沢が害され、そして顕微鏡下では、微細なしわとして観察されうる。高光沢が望ましいそれらの実施形態では、表面テクスチャライズ化は、避けることが望ましい。潜伏性溶剤は、NMPを希釈し、そしてFLUOROPONトップコート又は他の同様の表面上に上記白化及び/又は表面テクスチャライズ化を生じさせる傾向を減少させるために、コーティング溶媒中に含まれうる。この効果を説明する技術的な原理的説明を、さらに下記において論ずる。
【0023】
上記溶媒に関する用語「潜伏性」は、上記PVDF樹脂が上記溶媒に少なくとも部分的に不溶であり、そしてさらに好ましくは、室温において上記溶媒に実質的に不溶であるが、上記組成物が加熱されると、上記PVDF樹脂が上記溶媒に溶媒和し、そして好ましくは、上記溶媒に実質的に完全に可溶化することを意味する。潜伏力から溶解力への移行は、上記コーティング組成物の1種又は2種以上の材料の過度の熱劣化が生じない温度で生ずることが望ましい。
【0024】
本発明を実施するために好適であろう潜伏性溶剤の例には、ケトン溶媒、例えば、シクロヘキサノン、イソホロン、ジメチルフタレート、エチレングリコールエーテル、プロピレングリコールエーテル及びエステル、これらの組み合わせが含まれる。シクロヘキサノンが、現時点では好ましい。本発明を実施するために好適なPVDF樹脂、例えば、約197,000の重量平均分子量を有するPVDFホモポリマーは、概して、室温でシクロヘキサノンに不溶であるが、概して、約100℃の温度において、この試薬に完全に可溶である。
【0025】
上記溶媒成分に導入される潜伏性溶剤の量は、上記コーティング組成物の品質及び/又は上記コーティング組成物から形成された、硬化したコーティングの品質に影響を与えうる。例えば、過剰量の潜伏性溶剤が用いられると、上記PVDF樹脂と、上記コーティング組成物の他の樹脂成分との溶解性が過剰に低下する可能性がある。たとえ溶解した場合であっても、上記コーティング組成物は、ゲル化する、凝集する、又は他の安定性の課題を欠点として有する傾向を有する。一方、少なすぎる量の潜伏性溶剤が用いられると、上記コーティング組成物は、ラクタム材料に過敏性を有する表面と、所望のものであろうよりも大きな相互作用をする傾向を有する。
【0026】
これらの事項のバランスをとるために、上記コーティング組成物がラクタム溶媒に敏感でありえる基材表面上に用いられるべき場合には、上記溶媒成分は、上記溶媒成分に導入された潜伏性溶剤の各重量部に対して、上記ラクタム溶媒を少なくとも1重量部含む。溶媒成分の特に好ましい実施形態の1つは、1重量部のNMPと、1重量部のシクロヘキサノンとから配合される。この重量比を計算する目的で、上記PVDF樹脂が室温で完全に可溶である、存在する追加の溶媒は、上記ラクタム溶媒の一部とみなされるべきであり、一方、上記PVDF樹脂が、室温において少なくとも部分的に不溶であるのみの、存在する追加の溶媒は、上記潜伏性溶剤の一部であるとみなされるべきである。
【0027】
上記コーティング組成物内に導入される溶媒成分の量は、広い範囲にわたって変化しうる。一般的な指針として、上記コーティング組成物の全ての樹脂成分が、室温で少なくとも実質的に完全に溶解するために十分な溶媒成分が存在することが望ましい。使用者に便利であるように、使用時に上記コーティング組成物をさらに希釈又は濃縮する必要がなく、上記コーティング組成物を基材に適用するために用いられうるコーティング技法に対応する適切なレオロジー特性を、上記コーティング組成物が有するために、十分な溶媒成分が存在することがまた望ましい。これらの事項のバランスをとるために、そして一般的な指針として、上記コーティング組成物が、上記コーティング組成物の総重量に基づいて、約70重量%〜約95重量%、さらに好ましくは80重量%〜約90重量%の上記溶媒成分を含むような十分な溶媒成分を用いることが望ましい。
【0028】
特に好ましい実施形態の1つでは、上記コーティング組成物は、17.5重量%の不揮発性塊(±0.5重量%)と、82.5重量%の溶媒成分(±0.5重量%)を含む。この特定の実施形態は、77°Fにおいて25秒の#4 Zahn粘度を有する。
【0029】
上記PVDF樹脂は、上記PVDF樹脂が上記溶媒成分に溶解可溶で且つ25℃で上記溶媒成分に溶解を保つように、十分に高いビニリデンジフルオリド含有率と、十分に低い重量平均分子量とを有する任意のPVDF樹脂であることができる。多くの実施形態では、上記PVDF樹脂は、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、さらに好ましくは少なくとも98重量%を包含し、そして最も好ましくは式:−[CH2CF2]−の繰り返しビニリデンジフルオリド単位のホモポリマーである。一般的に、より高いビニリデンジフルオリド含有率を有するPVDF材料が好ましい。上記PVDF樹脂は、熱可塑性又は熱硬化性であることができるが、熱可塑性の実施形態が好ましい。
【0030】
上記高いビニリデンジフルオリド含有率を有するPVDF樹脂は、より少ないビニリデンジフルオリド含有率を有するPVDF樹脂よりも、より高いビニリデンジフルオリド含有率を有する樹脂は、室温において、ラクタム溶媒(例えば、NMP)により簡易に溶解することができる点で、より大きな利点を提供する。対照的に、より少ないビニリデンジフルオリド含有率を有する樹脂は、米国特許第3,944,689号明細書に記載されるように、溶解を達成するために他の溶媒に依存し、そして加熱しなければならない。また、上記高いビニリデンジフルオリド含有率を有するPVDF樹脂は、フルオロエチレンビニルエーテル(FEVE)に基づくクリアコート組成物よりもさらに経済的であり且つ耐候性を有するべきポテンシャルを有する。
【0031】
所望により、上記PVDF樹脂がビニリデンジフルオリド単位のホモポリマーではないそれらの実施形態において、上記PVDF樹脂は、1種又は2種以上の追加のコモノマーの残基を含むことができる。ビニリデンジフルオリドと共重合することができるモノマーは、アリル基、スチレン基、エチレン基、α−メチルスチレン基、(メタ)アクリルアミド基、シアネートエステル基、ビニルエーテル基、(メタ)アクリル部分等であり得る炭素−炭素二重結合を含むことが多い。上記モノマーの例には、エチレン、プロピレン、イソブチレン、スチレン、ビニルクロリド、塩化ビニリデン、ジフルオロクロロエチレン、クロロトリフルオロエチレンテトラフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニルホルメート、ビニルアセテート、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソプロペニルアセテートが含まれる。他には、ビニル樹脂を形成するために、下記に列挙されるモノマーが含まれる。熱硬化性の特性が望ましい場合には、上記モノマーは、架橋性官能基、例えば、−OH、−NCO、−COOH、−NH2、これらの組み合わせ等を含むことができる。
【0032】
上記PVDF樹脂は、上記PVDF樹脂が25℃で上記溶媒成分に可溶であるような十分に低い分子量を有することが望ましい。上記PVDF樹脂の分子量は、約20,000〜約500,000、好ましくは約20,000〜400,000、さらに好ましくは20,000〜300,000、そして最も好ましくは50,000〜200,000の範囲にあることが望ましい。本明細書において、樹脂に関する分子量は、他に明示しない限り、重量平均分子量を指す。
【0033】
PVDF樹脂の好適な実施形態は、ペレット、微粉、シート、チューブバー等を含む様々な形態で市販される。微粉は、これらが上記コーティング組成物に簡易に溶解するだけでなく、優れた光沢特性を有するコーティングを形成する傾向があるので好ましい。微粉として使用でき且つ約197,000の重量平均分子量を有する特に好ましい熱可塑性PVDF樹脂の一例は、Arkema Inc.,Philadelphia,PAから商標名KYNAR711の下で市販される。
【0034】
本発明のコーティング組成物はまた、少なくとも1種の熱可塑性樹脂及び/又は少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含み、上記樹脂のそれぞれのビニリデンジフルオリド又は他のフルオロ含有率は、約50重量%未満、好ましくは約20重量%未満、さらに好ましくは約10重量%未満、及び0重量%超である。上記熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂は、多くの利益を提供する。第1に、いくつかの実施形態では、これらは、上記PVDF樹脂が上記コーティング組成物を溶解することを補助する界面活性剤のように作用する場合がある。これらはまた、得られたコーティングの基材への接着を改良することを補助することができる。上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の使用は、得られたコーティングの硬度及び/又は耐久性が改良することを補助する傾向がある。これらはまたコストを削減する手助けをする。というのは、フルオロカーボン樹脂のみを用いることは、不経済であり、費用対効果が低い傾向がある場合があるからである。これらの樹脂の使用はまた、上記コーティング組成物の調製及び/又は上記コーティング組成物の基材への適用を簡易にする。
【0035】
さらに、上記フルオロカーボン樹脂に加えて、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の両方の組み合わせを用いることにより、特に、両方が存在するが、熱硬化性材料の含有率が制限される好ましい実施形態において、性能の優位性が提供される。コーティングが比較的高温及び/又は比較的長時間焼付けられると、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のどちらか(熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の両方ではない)が存在する場合には、透明度及び光沢性能が劣る場合があることが見出された。例えば、上記条件の下で熱可塑性樹脂のみが存在する場合には、白化は沸騰水試験の際に生じうるが、一方、熱硬化性樹脂が存在する場合には、焼付けの際に白化が生じうる。さらに、熱可塑性樹脂と組み合わせて用いられた場合であっても、過剰な熱硬化性樹脂が存在する場合には、焼付けの際に白化がさらに生じうる。従って、上記熱可塑性樹脂:上記熱硬化性樹脂の重量比は、約2:1超であることが望ましく、そして約2:1〜約50:1、好ましくは約2:1〜約10:1の範囲内にあることが望ましい。特に好ましい実施形態の一つでは、約4:1の重量比が好適であった。この方式における熱硬化性材料の含有率を制限すると、そしてそれにより得られたコーティングの対応する熱硬化性材料の含有率を制限すると、この種の白化が生ずる傾向を低下させ、そしてさらに顕著に避けることができる。
【0036】
上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のそれぞれは、独立して、広範囲にわたる分子量を有することができる。一般的な指針として、それぞれは、独立して、約5000〜約200,000、さらに好ましくは約10,000〜約150,000の範囲の分子量を有することができる。実施形態の一つでは、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート及びメタクリル酸から得られる好適な熱可塑性ビニル樹脂は、55,000の分子量を有する。実施形態の一つでは、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、及び2−ヒドロキシアクリレートから得られる熱硬化性ビニル樹脂は、16,200の分子量を有する。熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の両方が用いられる場合、上記熱可塑性樹脂の分子量:上記熱硬化性樹脂の分子量の比率は、広範囲にわたって変化しうるが、一般的に、約1:4〜約4:1、さらに好ましくは約1:2〜約2:1の範囲であり得る。
【0037】
多種多様のポリマー材料を、熱硬化性樹脂及び/又は上記熱可塑性樹脂として、独立して用いることができる。好適な材料には、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル樹脂、例えば、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレア、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカプロラクトン、ポリシロキサン、これらの組み合わせ等が含まれる。耐候性を有することが望ましい屋外用途の場合、ポリウレタン及びビニル樹脂は、これらは、いくつかの他の樹脂よりも耐候性を有する傾向があるので好適であろう。さらに、屋外用途において、芳香族成分を制限するか又は避けることが望ましい。というのは、これらは、時間と共に黄変又は分解する顕著な傾向を有する場合があるからである。
【0038】
架橋官能性を提供するために、上記熱硬化性樹脂に、1種又は2種以上の異種の架橋性官能基を付与することができる。架橋性官能基の典型例には、OH、−NCO、−COOH、−NH2、放射線硬化性用の炭素−炭素二重結合、これらの組み合わせ等が含まれる。上記架橋性官能基は、上記熱硬化性樹脂材料の一種の架橋性官能基が、上記熱硬化性樹脂材料上の別の種類の架橋性官能基と、架橋剤及び/又は架橋触媒の助力を用いて、又は用いずに架橋するように相補的であることができる。例えば、ヒドロキシル及びイソシアネートが相補的である。他の実施形態では、上記架橋性官能基は同一であってもよいが、官能基は、架橋剤及び/又は架橋触媒の助力を用いて、又は用いずに共反応性である。例えば、ペンダント型炭素−炭素二重結合が共反応性である。
【0039】
あるいは、上記架橋性官能基は、触媒の助力を伴い、又は伴わずに、架橋剤上に付与された種々の官能基の存在下でのみ反応性を有することができる。例えば、ヒドロキシ官能基それ自体は、架橋反応に参加するために、架橋剤、例えば、イソシアネート及び/又はアミノプラスト架橋剤を必要とする。本発明の実施において、特にアミノプラスト架橋剤と組み合わせて用いられる場合、ヒドロキシ官能基が好ましい架橋性官能基である。
【0040】
上記熱可塑性樹脂及び上記熱硬化性樹脂の両方のためにビニル樹脂材料を用いることは、多くの用途において望ましい。というのは、産業界は、PVDF樹脂と組み合わせてこの類の材料を用いる広範囲の経験と信用とを有するからである。本明細書において、用語「ビニル樹脂」は、炭素−炭素二重結合を経由した、1種又は2種以上の異種のモノマー、オリゴマー、及び/又はポリマーの付加重合により得られる樹脂を指す。炭素−炭素二重結合の例には、アリル基、スチレン基、エチレン基又は他のオレフィン基、α−メチルスチレン基、(メタ)アクリルアミド基、シアネートエステル基、ビニルエーテル基、(メタ)アクリル部分等が含まれる。用語「(メタ)アクリル」は、本明細書において、アクリル及び/又はメタクリルを包含する。1又は2以上の炭素−炭素二重結合を有する、多種多様の1種又は2種以上の、種々の、モノマー、オリゴマー及び/又はポリマー材料を用いて、本発明を実施するために有用であるビニル熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を生成することができる。複数の異なる種類が市販されており、そして1又は2以上の所望の特性を提供することを手助けする多種多様の所望の特性と共に選択することができるモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーを、コポリマーを生成するために用いることが有利である。
【0041】
上記ビニル樹脂を生成させるために有用な、単官能性の、重合性モノマーの典型例には、スチレン、α−メチルスチレン、置換化スチレン、ビニルエステル、ビニルエーテル、N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリルアミド、ビニルナフタレン、アルキル化ビニルナフタレン、アルコキシビニルナフタレン、N−置換化(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエトキシレート(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル、β−シアノエチル−(メタ)アクリレート、2−シアノエトキシエチル(メタ)アクリレート、p−シアノスチレン、p−(シアノメチル)スチレン、イソノニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシド、α−エポキシド、(メタ)アクリロニトリル、無水マレイン酸、イタコン酸、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(ドデシル)(メタ)アクリレート、ステアリル(オクタデシル)(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、N−ビニルカプロラクタム、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレートイソオクチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートビニルアセテート、これらの組み合わせ等が含まれる。
【0042】
架橋用途向けのペンダント型ヒドロキシル基を有するコポリマーを提供するために、1種又は2種以上の、ヒドロキシル官能性モノマー、オリゴマー及び/又はポリマーを、最終的な樹脂に導入することができる。上記コポリマーのペンダント型ヒドロキシル基は、架橋及び上記配合物中の顔料との相互作用を促進するだけではなく、上記組成物中の分散及び他の材料との相互作用を促進する。上記ヒドロキシル基は、第1級、第2級又は第3級であることができるが、第1級ヒドロキシル基が好ましい。用いられる場合、ヒドロキシ官能性モノマーは、上記ビニル樹脂を配合するために用いられるモノマーの約0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜約25重量%を構成する。
【0043】
好適なヒドロキシル官能性モノマーの典型例には、α、β−不飽和カルボン酸の1種又は2種以上のジオールとの種々のエステル、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソブチル(メタ)アクリレート、又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;1,3−ジヒドロキシプロピル−2−(メタ)アクリレート;2,3−ジヒドロキシプロピル−1−(メタ)アクリレート;α、β−不飽和カルボン酸のカプロラクトンとの付加体;アルカノールビニルエーテル、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル;4−ビニルベンジルアルコール;アリルアルコール;p−メチロールスチレン等が含まれる。
【0044】
1分子あたり1つ超の炭素−炭素二重結合を含む多官能価材料はまた、種々の特性、例えば、架橋密度、硬度、体擦傷性等を強化するために用いられうる。そのようなより高い官能性のモノマーの例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、これらの組み合わせ等が含まれる。
【0045】
本発明において用いるために好適なフリーラジカル反応性オリゴマー及び/又はポリマーには、(メタ)アクリレート化ウレタン(すなわち、ウレタン(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリレート化エポキシ(すなわち、エポキシ(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリレート化ポリエステル(すなわち、ポリエステル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリレート化(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリレート化シリコーン、(メタ)アクリレート化ポリエーテル(すなわち、ポリエーテル(メタ)アクリレート)、ビニル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリレート化オイルが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本発明のビニル樹脂を、種々のさらなる重合技法により調製することができる。実施の様式では、本発明のビニル樹脂を、バルク、溶液及び分散重合方法(それらに限定されるものではない)を含む、当業界に公知のラジカル重合方法を用いて調製することが好ましい。得られたビニル樹脂は、直鎖、分岐鎖、3次元網目、グラフト、それらの組み合わせ等の種々の構造を有することができる。
【0047】
上記PVDF樹脂:上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂(存在する場合)の総重量の重量比は、得られたコーティングの所望の最終用途(それらに限定されるものではない)を含む種々の要因により、広範囲にわたることができる。実施の典型的な様式では、上記PVDF樹脂:上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の総重量の重量比は、約0.3:1〜約30:1の範囲にあることができる。特定のスプレー−コーティング実施形態の一つでは、上記フルオロポリマー樹脂:上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の総重量の重量比1:1が、上記熱可塑性樹脂:上記熱硬化性樹脂が4:1である場合に好適であることが見出された。
【0048】
上記コーティング組成物がスプレー以外の技法を用いて基材に適用される実施の様式では、上記範囲内のより多い量のPVDF樹脂を用いることが望ましいであろう。しかし、上記範囲のより高い端部における多すぎる上記PVDF樹脂の使用は、最終用途が、耐久性及び弾性の両方を要求する(例えば、本発明のコーティングが外面用建築パネル上に形成される場合)場合には、望ましくない場合がある。特定の建築用パネル用途の一つにおいて、上記PVDF樹脂:上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の総重量の重量比は、70:25であり、上記PVDF樹脂70重量部あたり追加のアミノプラスト架橋剤5重量部を用いることができる。
【0049】
本発明のコーティング組成物は、上記熱硬化性樹脂が存在する場合には、上記熱硬化性樹脂の架橋を促進するための架橋剤を、所望により含むことができる。上記熱硬化性樹脂がヒドロキシ官能基を含む好ましい実施形態では、アミノプラスト架橋剤が好ましい。アミノプラストは、少なくとも1種のアルデヒド、例えば、ホルムアルデヒドを、アミノ−又はアミド−官能基を含む少なくとも1種の共反応物質に転化することを一般的に指す。アミノプラスト樹脂の例には、アルコール及びホルムアルデヒドの、メラミン、ウレア、又はベンゾグアナミンとの反応から得られる縮合生成物が含まれる。これらの生成物は、広範囲の分子量を有しうる。いくつかは、モノマー、オリゴマー又はポリマーでありうる。
【0050】
他のアミン及びアミドの縮合生成物、例えば、トリアジン、ジアジン、トリアゾール、グアナジン(guanadine)、グアナミン、並びにアルキル−及びアリール−置換化メラミンのアルデヒド縮合体をまた、上記アミノプラスト架橋剤として用いることができる。上記化合物のいくつかの例は、N,N’−ジメチルウレア、ベンゾウレア、ジシアンジアミド(dicyandimide)、ホルマグアナミン(formaguanamine)、アセトグアナミン、グリコールウリル、アメリン(ammelin)2−クロロ−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、6−メチル−2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、3,5−ジアミノトリアゾール、トリアミノピリミジン、2−メルカプト−4,6−ジアミノピリミジン、3,4,6−トリス(エチルアミノ)−1,3,5−トリアジン等である。用いられるアルデヒドは、ほとんどの場合、ホルムアルデヒドであるが、他の類似の縮合生成物を、他のアルデヒド、例えば、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド、フルフラール、グリオキサール等から製造することができる。
【0051】
好ましいアミノプラスト架橋剤は、単なる、アミン、好ましくはメラミンとのホルムアルデヒド縮合物であり、熱硬化性メチロール−官能性樹脂を提供する。複数のアミノプラスト樹脂、例えば、ウレアホルムアルデヒド凝縮物及びベンゾグアナミンホルムアルデヒド凝縮物が広範囲に有用であるが、アミノプラスト樹脂がポリアルコキシメチルメラミン樹脂である(アルコキシ基が、1〜4個の炭素原子を含む)ことが好ましい。適切なメラミン−ホルムアルデヒド凝縮物は、簡易に購入することができ、そして周知のように、有機溶媒溶液において用いるために、低級アルコールを用いてエーテル化されるのが通常である。好適なアミノプラスト硬化剤の例には、有機溶媒中の溶液としての、エーテル化メラミン−ホルムアルデヒド凝縮物が含まれる(例えば、商標名CYMEL303の名称の下、Cytecから購入可能なポリメトキシメチルメラミン)。上記アミノプラスト樹脂は、樹脂固形分の総重量の0.1〜10重量%として、そして好ましくは、総樹脂固形分の0.2〜3.0重量%の量において存在するのが典型的である。
【0052】
アミノプラスト樹脂が、ヒドロキシ官能性コポリマーを硬化させるために好ましい一方で、ヒドロキシ官能基と反応性を有する任意の硬化剤、例えば、フェノプラスト樹脂又はブロック化ポリイソシアネートを用いることがまた好ましい。好適なブロック化イソシアネート硬化剤には、メチルエチルケトキシムでブロック化したイソホロンジイソシアネート、又はオクチルアルコール−ブロック化2,4−トルエンジイソシアネートが含まれる。ブロック化イソシアネート硬化剤種は周知であり、そしてこれらの薬剤は、焼付けにより、ブロック化イソシアネート基が解離し、そして活性になると、コーティング組成物上のヒドロキシ官能基とウレタン基を生成することにより硬化を生じさせることが周知である。
【0053】
望ましくは、従来法に従って触媒を用い、ヒドロキシ官能性熱硬化性樹脂及び上記アミノプラスト架橋剤との間の架橋反応を促進することができる。典型的なアプローチに従って、ブロック化酸触媒が、好適な触媒量において用いられる。上記酸は、好適な熱不安定マスキング基、例えば、アミンを用いてブロック化する結果、上記コーティング組成物を室温で実質的に非反応性にし、そして良好な貯蔵安定性を有する。しかし、加熱すると、ブロックするアミン基が離脱し、それにより、上記触媒が活性になり、そして架橋を触媒的に促進することができる。
【0054】
本発明のコーティング組成物はまた、1種又は2種以上の他の所望による材料を含むことができる。本発明の組成物を、好適な顔料又は染料を用いて、簡易に着色又は染色することができる。さらに、コーティング組成物に用いられる他の添加剤を、所望により用いることができる。これらには、フィラー及び増量剤、殺細菌剤、殺菌剤、流動化剤、紫外線吸収剤及び安定化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、レオロジー制御剤、融合助剤等が含まれる。
【0055】
組成物に従う特に好ましい実施形態の1つは、下記;
少なくとも約95重量%の−CH2CF2単位を含むPVDFポリマー約50〜約75重量部;
少なくとも1種の熱可塑性樹脂及び上記少なくとも1種の所望による熱硬化性樹脂を含む樹脂約15〜約30重量部、ここで、上記少なくとも1種の熱可塑性樹脂:上記少なくとも1種の熱硬化性樹脂(存在する場合)の重量比は、約2:1〜約5:1の範囲にある;
望ましくは、ヒドロキシ官能性熱硬化性樹脂が用いられる場合に用いられる、所望によるアミノプラスト架橋剤約2〜約10重量部;
所望の架橋反応を促進するための、所望による、触媒量の触媒;及び
NMPと、溶媒成分の総重量に基づいて潜伏性溶媒として約50重量%のシクロヘキサノンとを含む溶媒成分約150〜約750重量部(好ましくは約300〜約500重量部):
を一般的に含む。
【0056】
これらの特に好ましいコーティング組成物は、優れた光沢特性を有する、硬化したコーティング、特に、硬化したクリアコーティングを提供する。例えば、Valspar Corp.から市販される高光沢及び標準的なFLUOROPONブランドトップコートの両方に、0.4ミル(10μm)の乾燥膜厚においてクリアコーティングとして適用すると、60°において70+のグロス示度が、各FLUOROPONトップコート上で得られた。さらに、Valspar Corp.から市販される高光沢及び標準的なFLUOROPONブランドトップコートの両方に、0.2ミル(5μm)の乾燥膜厚においてクリアコーティングとして適用すると、60°において70+のグロス示度が、高光沢トップコート上で得られ、そして60°において60+が、標準光沢トップコート上で得られた。
【0057】
上記コーティング組成物を、種々の様式で調製することができる。好適なアプローチの1つに従うと、1種又は2種以上のフルオロカーボン樹脂を、最初に、双極性の、非プロトン性ラクタム溶媒に、混合しながら添加する。典型的な実施形態では、一又は複数の上記フルオロカーボン樹脂約1重量部を、上記双極性の、非プロトン性ラクタム溶媒約3〜約10重量部に添加することが望ましい場合が多い。これは、加熱しながら行うことができるが、これを室温で行うことができることが本発明の優位性である。上記材料を、上記フルオロカーボン樹脂全てが溶解し、澄んだ溶液が得られるまで混合する。高速ミキサー、例えば、高速空気式ミキサーを用いて、これを達成することができる。典型的には、実施するための典型的なタイプでは、溶解は、室温において、約5分〜約60分、さらに典型的には約10分〜約25分、さらに典型的には約15分〜約20分の範囲にわたる時間で実施することができる。高速混合により過度の量の熱が発生する場合には、材料を冷却して熱を散逸させることができる。次いで、上記溶媒成分に導入すべき追加の溶媒を添加することができる。
【0058】
例えば、潜伏性溶剤を添加すべき場合、この段階で潜伏性溶剤を添加することができる。スプレーコーティング使用を容易にするために追加の溶媒を添加すべき場合には、これらをこの段階で添加することができる。望ましくは、上記追加の溶媒は、存在する場合には、混合しながらゆっくりと添加する。上記追加の溶媒材料と共に、又は追加の溶媒材料を添加した後、所望により、追加の樹脂材料、架橋剤(存在する場合)、触媒(存在する場合)、及び他の所望による材料を、混合しながらゆっくりと添加することができる。次いで、得られた溶液を、全ての材料が当該溶液に導入されるのを補助するために、追加の時間、混合することができる。この追加の混合は、おおよそ室温で、約2分〜約4時間、さらに典型的には約5分〜約30分、さらに典型的には約10分〜約20分の範囲にわたる時間の間、高速で行うことができる。
【0059】
所望により、上記コーティング組成物を改良し、上記溶媒成分の追加の成分として、1種又は2種以上の追加の溶媒をさらに導入して、上記組成物を希釈し、そして上記組成物の粘度を下げ、上記組成物を基材上にスプレーするためにさらに好適にすることができる。コーティング組成物がこの方式で希釈されることが事前に分かっている場合には、上記コーティング組成物において潜伏性溶剤を含まないことが望ましいであろう。しかし、1種又は2種以上の潜伏性溶剤と組み合わせたコーティング組成物において、上記追加の溶媒を用いることができるいくつかの実施の様式がある。
【0060】
本発明のコーティング組成物を希釈するために用いることができ、そしてそれによりスプレー配合物として用いるために好適な実施形態を提供することができる追加の溶媒の例には、メチルエチルケトン、エチルアセテート、ブチルアセテート、これらの組み合わせ等が含まれる。メチルエチルケトンは、スプレー用途のための優れた希釈溶媒である。しかし、メチルエチルケトンの比較的に極性の性質のため、静電気スプレー装置が用いられうる場合には、比較的に非極性の溶媒、例えば、ブチルアセテート及び/又はエチルアセテートが、コーティング組成物を希釈するための良好な溶媒の選択である。
【0061】
好適な速い乾燥速度と適度なウェットスプレー適用との間の良好な均衡のため、ブチルアセテート及びエチルアセテートの組み合わせを用いることが望ましい。実施の特定の様式の1つでは、上記コーティング組成物を希釈するために好適な溶媒混合物は、おおよそ等重量部のこれらの2つの溶媒を混合することにより調製される。次いで、好適なスプレー配合物が、この追加の溶媒混合物1重量部を、事前のコーティング組成物1重量部と混合することにより得られる。2成分を、好適な時間の間、完全に混合して、得られた溶液の均一性を確保する。
【0062】
本発明のコーティング組成物を、事実上任意の基材に有益にコーティングし、非常に高光沢の特性を有するコーティングを形成することができる。これらの基材には、金属、木材、紙、セラミック及びガラス、ポリマー、皮革、織物及び不織布、繊維、これらの組み合わせ(合成品及び/又は天然品)等が含まれるが、これらに限定されるものではない。特に好適な基材には、スチール、アルミニウム、亜鉛、銅、並びにこれらを1種又は2種以上含む合金、金属間組成物、複合材料等が含まれる。上記基材の典型的な供給品には、押出し品、コイル、又は建築物パネル、屋根板、自動車のボディパーツ、アルミニウム押出し品等に加工すべきことを目的とする加工された基材が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
コーティングすべき基材表面は、下にある基材上の、任意の多種多様のトップコートであることができる。コーティングの例には、ポリウレタン、ポリエステル、(メタ)アクリル樹脂、フルオロポリマー、例えば、PVDF樹脂又はフルオロエチレンビニルエーテル(FEVE)樹脂、これらの組み合わせ等が含まれる。
【0064】
所望により、上記基材表面を、本発明のコーティング組成物の適用前に下塗りすることができる。当業者に公知の、フルオロポリマー及びアクリル系プライマーを含む種々のプライマーが、本発明の実施において好適であろう。プライマーの例は、米国特許第4,684,677号明細書及び同第6,017,639号明細書に記載されている(参照により、それぞれを本明細書に引用する)。
【0065】
上記コーティングを、1回のコーティングとして適用することができ、又は複数回のパスにおいて実施することができる。任意の適用アプローチにおいて、個々の層のそれぞれは、一般的に、約2.5μm〜約15μm、好ましくは約5μm〜約10μmの範囲における乾燥膜厚を提供するために有効な様式において適用される。はけ塗り、カーテンコーティング、コイルコーティング、押出しコーティング、ロールコーティング、フローコーティング、ディッピング、スプレー、アウアコーティング(our coating)、スロットコーティング、スピンコーティング等を含むコーティング方法を用いることができる。コーティングされた基材を風乾してもよいが、上記コーティング組成物が硬化し、上記基材表面に付着する強靱な膜を形成するために好適な条件の下で焼付けることがさらに望ましい。
【0066】
焼付け温度は重要ではないが、上記コーティング材料の過度の熱劣化を誘発することなく上記コーティングを乾燥し且つ硬化させる(熱硬化性材料が存在する場合には、化学的に硬化させる)ように十分高いのが一般的である。化学系架橋剤が用いられる場合、上記温度は、任意の好適な温度で、さらに上記コーティング材料の熱劣化なしで、化学系架橋反応が生ずるように十分高くあるべきである。例として、約150℃〜約350℃の範囲における温度において、約10秒〜約30分の範囲にわたる時間の間、焼付けることが、多くの例について好適であろう。
【0067】
ラクタム溶媒、例えば、NMPは強力な溶媒であり、そして光沢を害する方式においていくつかの基材と相互作用する場合がある。言い換えれば、本発明のコーティング組成物により提示される高光沢の保証が、上記コーティング組成物がコーティングされる際に、基材のラクタム過敏性によりある程度害される場合がある。特に、場合によっては、焼付けの際に、透明な高光沢の外観ではなく、白化又は表面テクスチャライズ化が生ずる傾向がありうる。フルオロカーボン樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、及び熱硬化性アクリル樹脂を含むトップコート上に、本発明のコーティング組成物をコーティングし、そして焼付けを経由して硬化させた場合に、これが生ずることが観察されている。上記白化及び/又は表面テクスチャライズ化は、高い焼付け温度及び/又は特定の焼付け温度における長い滞留時間と共に悪化する傾向がある。
【0068】
白化及び/又は表面テクスチャライズ化が生じるシステムの分析により、比較的高い熱硬化性材料の含有率を有するトップコートのみが、上記問題の影響を受けやすい傾向がある。特に、脆弱な、コーティングされたシステムは、上記クリアコートの下にあるトップコートが、PVDF樹脂約100重量部当たり熱硬化性アクリル樹脂約10重量部超〜約15重量部を含むものであることが見出された。
【0069】
理論と結びつけられることを望まないが、白化及び/又は表面テクスチャライズ化の問題の原因は、上記トップコート内のPVDF樹脂及び熱硬化性アクリル樹脂の間の効率的でないアロイングに少なくとも部分的に起因すると考えられる。熱硬化性アクリル樹脂は、熱可塑性アクリル樹脂よりも、PVDF樹脂と効率的でないアロイングを有する傾向がある。上記トップコートが、約100重量部のフルオロポリマー樹脂当たり約10重量部超〜約15重量部の熱硬化性アクリル樹脂を含む場合、これは、トップコート内のフルオロポリマー樹脂の一部がアロイングしていないことを意味するであろう。この非アロイングフルオロポリマー樹脂は、上記コーティング組成物が、特に高い焼付け温度において、上記トップコート上に適用された場合に、上記ラクタム溶媒により溶媒浸食される可能性が非常に高いであろう。この脆弱性及び関連する侵食は、望まれない白化及び/又は表面テクスチャライズ化にいたるものであると考えられる。
【0070】
また、理論と結びつけられることを望まないが、白化及び/又は表面テクスチャライズ化問題の別の原因は、上記クリアコート材料及び下にあるトップコート材料が、上記ラクタム溶媒の存在に影響を受ける特異的な挙動、例えば、膨張及び/又は収縮に少なくとも部分的によるであろう。さらに、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のそれぞれが、ラクタム溶媒と異なる相互作用をする傾向がある場合があるので、上記クリアコート及び下にあるトップコート材料のそれぞれの中の熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の相対量が、上記材料の間で、ある程度この差に影響を与える場合がある。従って、上記クリアコート材料及び下にあるトップコート材料の一方又は両方において、熱硬化性樹脂材料及び熱可塑性樹脂材料の相対量を制御することにより、当該2つの材料がラクタム溶媒の存在下で同様に膨張及び縮小することが可能となる。
【0071】
また、理論と結びつけられることを望まないが、アロイング効果及び特異的な膨張/縮小係数の両方が、少なくともある程度まで、白化及び/又は表面テクスチャライズ化問題の原因となりうる可能性がある。
【0072】
有利には、本発明は、白化及び/又は表面テクスチャライズ化を劇的に減少させるために、単独又は組み合わせて用いることができる複数の戦略を提供し、そしてそれにより、上記ラクタムに敏感な表面で達成すべき優れた光沢が可能になる。第1に、上述のように、上記クリアコートを形成するために用いられるコーティング組成物の、最大約50重量%の上記溶媒成分が、潜伏性溶剤を含むことができる。経験的な効果では、これにより、上記コーティング組成物中の強力なラクタム溶媒が希釈され、上記ラクタム溶媒が下にあるトップコートを浸食する能力が弱まる。上記コーティング組成物のPVDF樹脂が溶解している限り、この希釈は、高光沢の、硬化したクリアコートを得るための能力を過度に妥協することなく、有利に生じる。
【0073】
第2に、コーティングすべきトップコート内の熱硬化性樹脂の含有率が制限される場合がある。理論に結びつけられることを望まないが、熱硬化性材料の含有率を制限することにより、下にあるトップコート内のフルオロポリマー樹脂及び熱可塑性樹脂の間のアロイング効率が向上し、上記ラクタム溶媒からフルオロポリマー樹脂を保護することが補助されると考えられる。本発明の典型的な実施形態では、上記コーティング組成物が被覆されるトップコートは、下記を含む材料に由来することができる;フルオロポリマー樹脂(少なくとも50重量%、さらに好ましくは少なくとも70重量%、及びさらに好ましくは少なくとも95重量%のビニリデンジフルオリド単位を有するPVDF樹脂であることが好ましい)約50〜約100重量部;熱可塑性(メタ)アクリル樹脂約10〜約30重量部;及び熱硬化性(メタ)アクリル樹脂約0.1〜約15重量部(好ましくは約5〜約10重量部の熱硬化性(メタ)アクリル樹脂);アミノプラスト架橋剤約5〜約10重量部;並びに熱硬化性樹脂及び架橋剤の間の所望の架橋反応を促進する好適な触媒。
【0074】
白化及び/又は表面テクスチャライズ化を減少するための第3の戦略として、上記コーティング組成物の熱硬化性材料の含有率は、上述のように制限される場合があり、上記コーティング組成物内の上記熱可塑性樹脂:上記熱硬化性樹脂の重量比は、少なくとも2:1である。
本発明を、次の実施例に関連して説明する。
【実施例】
【0075】
[例1:コーティング組成物、配合A]
粉末状の107.2gのKynar 711 PVDF樹脂を、室温で、333.6gのNMPと混合しながら添加した。得られた溶液を、全てのPDVF樹脂が溶解しそしてクリアな溶液が残るまで、高速空気式ミキサーで混合した。これは、室温で約15〜20分必要であった。この溶液に、下記を、混合しながら、ゆっくりと添加した;333.6gのシクロヘキサノン、77.0gの熱可塑性アクリル樹脂、14.7gの熱硬化性アクリル、7.0gのメラミン(Cymel303)及び0.3gのブロック化酸触媒及び0.8gの流動化剤。次いで、得られた溶液を、高速で15分間混合し、全ての原材料を導入した。
【0076】
これらの例の全体で用いられる熱可塑性アクリルAは、71.8重量部のメチルメタクリレート、26.0重量部のエチルアクリレート、2.0重量部のn−ブチルメタクリレート、及び0.2重量部のメタクリル酸を導入した熱可塑性アクリル樹脂であって、55,000の重量平均分子量を有するものを指す。これらの例の全体で用いられる熱硬化性アクリルBは、70.0重量部のメチルメタクリレート、25重量部のエチルアクリレート、及び5重量部の2−ヒドロキシエチルアクリレートを導入した熱硬化性アクリル樹脂であって、16,200の重量平均分子量を有するものを指す。この例で用いられる材料を、下記の表に要約する。
【0077】
【表1】

【0078】
*本明細書全体で用いられるNVMは、上記コーティング組成物の不揮発物成分(nonvolatile mass constituent)である。これらの例では、上記溶媒成分を除いて、全ての材料は、NVM成分である。これらの例の全体において、熱可塑性アクリルAは、PMアセテート内で希釈され、そして熱硬化性のアクリルBは、キシレン1重量部当たりPMアセテート3.6重量部を含む溶媒混合物内で提供される。
**N/Aは、あてはまらないことを意味する。
【0079】
[例2:コーティング組成物、配合A1]
シクロヘキサノンを用いず、そして溶媒成分がNMPのみを含む以外は例1の手順を用いて、コーティング組成物を調製した。この例で用いられた材料と、材料の量とを次の表に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
[例3:コーティング組成物、配合B]
熱硬化性樹脂を用いない以外は例1の手順を用いてコーティング組成物を調製した。この例で用いられた材料と、材料の量とを次の表に示す。
【0082】
【表3】

【0083】
[例4:コーティング組成物、配合B1]
シクロヘキサノンを用いず、そして熱硬化性樹脂を用いない以外は例1の手順を用いて、コーティング組成物を調製した。この例で用いられた材料と、材料の量とを次の表に示す。
【0084】
【表4】

【0085】
[例5:コーティング組成物、配合C]
熱可塑性樹脂を用いない以外は例1の手順を用いて、コーティング組成物を調製した。この例で用いられた材料と、材料の量とを次の表に示す。
【0086】
【表5】

【0087】
[例6:コーティング組成物、配合C1]
熱可塑性樹脂を用いず、そしてシクロヘキサノンを用いない以外は例1の手順を用いて、コーティング組成物を調製した。この例で用いられた材料と、材料の量とを次の表に示す。
【0088】
【表6】

【0089】
[例7:コーティング組成物、配合D(スプレー配合物)]
シクロヘキサノンを用いず、熱硬化性アクリルを用いず、そしてメラミン(アミノプラスト)架橋剤及び対応する触媒を用いない以外は例1の手順を用いて、コーティング組成物を調製した。この例で用いられた材料と、材料の量とを次の表に示す。
【0090】
【表7】

【0091】
[例8:コーティング組成物、配合E(スプレー配合物)]
シクロヘキサノンを用いず、熱硬化性アクリルを用いず、そしてメラミン(アミノプラスト)架橋剤及び対応する触媒を用いない以外は例1の手順を用いて、コーティング組成物を調製した。この例で用いられた材料と、材料の量とを次の表に示す。
【0092】
【表8】

【0093】
[例9:コーティング組成物、配合F(スプレー配合物)]
シクロヘキサノンを用いず、熱可塑性アクリルを用いず、そしてメラミン(アミノプラスト)架橋剤及び対応する触媒を用いない以外は例1の手順を用いて、コーティング組成物を調製した。この例で用いられた材料と、材料の量とを次の表に示す。
【0094】
【表9】

【0095】
[例10:コーティング組成物、配合G(スプレー配合物)]
シクロヘキサノンを用いず、熱可塑性アクリルを用いず、そしてメラミン(アミノプラスト)架橋剤及び対応する触媒を用いない以外は例1の手順を用いて、コーティング組成物を調製した。この例で用いられた材料と、材料の量とを次の表に示す。
【0096】
【表10】

【0097】
[例11:別のコーティング組成物]
次の表は、樹脂固形分が、それぞれ、70%及び50重量%のPVDF樹脂のどちらかを含むことができるコーティング組成物を得るために、一方では相対量(重量部)の配合D及びF、又は他方では相対量(重量部)のE及びGを混合することにより得られる別のコーティング組成物をどのようにして得られるか示す。
【0098】
【表11】

【0099】
所望により、例3〜13のいずれかにおける配合を、溶媒、例えば、メチルエチルケトン、ブチルアセテート、エチルアセテート、ブチルアセテート及びエチルアセテートの50:50混合物(重量)で、スプレー様式の配合にさらに好適にするために希釈することができる。実施の典型的な様式では、1体積部の上記コーティング組成物を、1体積部の希釈溶媒で希釈する。
【0100】
[例12]
N−メチルピロリドンのみで製造されたコーティング組成物、例えば、配合A1が、ラクタムに敏感な表面、例えば、FLUROPON配合物中に含まれる100部の樹脂固形分当たり、約10部超〜約15部の熱硬化性アクリル樹脂含有量を含むFLUROPONに対する有害な影響を有することを観察した。配合A1の70%PVDF溶液クリアコートを適用し、そして上記表面上で焼付けた場合、テクスチャライズ化外観及び/又は低い光沢が生じる場合があった。高温でN−メチルピロリドンの溶解力が高くなると、高温焼付け(例えば、565°F)により、上記表面上のN−メチルピロリドンの活性が上がる。コーティングされた表面が電気オーブン(625°F)内で長時間焼き付けられた場合に、この有害な影響がまた大きくなる。
【0101】
このN−メチルピロリドン溶媒の、高い熱硬化性アクリル含有率を有するFLUROPONトップコートとの相互作用に関する可能性のある説明は、熱可塑性アクリル樹脂のFLUROPONコーティング内のPVDF樹脂との熱硬化性アクリル樹脂の乏しいアロイング効率に対する、熱可塑性アクリル樹脂のアロイング効率のためであろう。熱硬化性アクリル樹脂のこの乏しいアロイング効率は、高温焼付け温度における、N−メチルピロリドンによる溶媒浸食に脆弱である「非アロイング」PVDF樹脂を残すであろう。さらに、上記コーティング組成物が適用され且つ焼付けられる同一のFLUROPONコーティング内の熱硬化性材料の内容物の量を減らすことにより、テクスチャライズ化作用は、大きく減少する。
【0102】
[例13]
FLUROPON(次の表において、Flpnと省略される)カラーコート(「トップコート」と称される)を、水分を除去するために加熱され、そしてポリエステルプライマーで下塗りされた、厚さ0.017インチを有する合金化溶融亜鉛メッキ金属に適用した。トップコートを、0.7〜0.75ミル(18〜20μm)の乾燥膜厚で適用した。3種のクリアコートを、0.2ミル(5μm)及び0.4ミル(10μm)の乾燥膜厚で上記トップコートに適用した。この表において言及されるVALFLON High Gloss(HG) Clearcoatは、Valspar Corporationから市販されるFEVE系クリアコートである。この表において言及されるFLUROPON HG Clearcoatは、Valspar Corporationから市販されるPVDF分散系クリアコートである。比較のため、3種のトップコート上に、クリアコートを用いなかった。
【0103】
上記トップコート、又は場合によっては上記クリアコートを適用した後、パネルを、465°Fのピーク金属温度(PMT)のための15秒間と、490°FのPMT温度のための18秒間とにおいて、高速オーブン(565°F)内で、それぞれ、焼付けた。上記コーティングの組み合わせと、ピーク金属温度とを、次の表に列挙した。
【0104】
【表12】

【0105】
次の表は、配合Aを含有する各コーティングされた製品が、どのように実施されるかを示している。FLUROPON HG Clearcoat試料(PVDF分散液に基づく)は、一般的に約40〜60の光沢示度を提供し、一方、VALFLON HG Clearcoat試料は、約70+の光沢を有することに留意する。
【0106】
【表13】

【0107】
*NFX/NTO=破壊なし/テープオフなし
**沸騰水は、クロスハッチリバースインパクトに対して行われた(45”lbs=3×金属厚さ)。
値は、沸騰1時間後の付着度(%)を表わす。
【0108】
[例14]
この例において、70%及び50%の、固形分の含有率においてPVDF樹脂を含むクリアコーティング溶液(スプレー配合D及びE、それぞれ)を、それぞれ、FLUROPONカラーコート(固形分の70重量%がPVDF樹脂であるPVDF分散組成物である)上に、ウェットオンドライで適用した。上記基材は、MEK洗浄されたアルミニウムであり、PVDFプライマー(733×310,Valspar Corp.)が0.2〜0.25ミルの乾燥膜厚(DFT)に適用されている。上記プライマーをフラッシュし、次いで、FLUROPONカラーコートを、0.8〜1.0ミルのDFTまで適用した。適用後、上記カラーコートを170°Fで5分間フラッシュし、次いで、450°Fで10分間焼付けた。
【0109】
2つの試料の上に、50%及び70%固形分のクリアコーティング溶液(0.2〜0.3ミル)を適用し、170°Fで5分間フラッシュし、そして450°Fで10分間焼付けた。比較用の別の試料において、FLUROPONカラーコートが完全にフラッシュされた後に、FLUROPONクリアコート(PVDF分散液)を適用した。次いで、FLUROPONクリアコートを、170°Fで5分間フラッシュし、そして450°Fで10分間焼付けた。比較のため、FEVE系クリアコート(Valsparから市販されているVALFLONクリアコート)をまた適用し、そして試験した。次の表は、この例において調製された試料を試験した際に得られたデータを示す。
【0110】
【表14】

【0111】
本発明の別の実施形態は、本明細書の検討の際、又は本明細書に開示される発明の実施から当業者に明白であろう。本明細書に記載される本質及び実施形態への、種々の省略、改良及び変形が、次の特許請求の範囲に示される本発明の範囲及び精神から外れることなく、当業者によってなされるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含むコーティング組成物;
(a)少なくとも1種のラクタム溶媒を含む溶媒成分;
(b)前記溶媒成分に溶解した少なくとも1種のポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、ここで、前記ラクタム溶媒:前記ポリフッ化ビニリデン樹脂の重量比は、少なくとも約2.5:1であり、(i)前記PVDF樹脂は、十分な量の式−(CH2CF2)−のビニリデンジフルオリド繰返し単位を含み、そして(ii)前記PVDF樹脂は、前記PVDF樹脂が25℃において前記溶媒成分に溶解し且つ可溶性のままであるように十分に低い分子量を有する;そして
(c)前記溶媒成分に溶解した、少なくとも1種の熱可塑性樹脂及び/又は少なくとも1種の熱硬化性樹脂、ここで、前記少なくとも1種のPVDF樹脂:前記熱可塑性樹脂(存在する場合)及び前記熱硬化性樹脂(存在する場合)の総量の重量比は、約0.3:1〜約30:1の範囲内にある。
【請求項2】
前記ラクタム溶媒:前記ポリフッ化ビニリデン樹脂の重量比が、少なくとも約3:1である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記ラクタム溶媒:前記ポリフッ化ビニリデン樹脂の重量比が、少なくとも約5.5:1である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記ラクタム溶媒がN−メチルピロリドンを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記溶媒成分が潜伏性溶剤をさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記ラクタム溶媒:前記潜伏性溶剤の重量比が、約1:1以上である、請求項5に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記溶媒成分が、少なくとも25重量%の前記ラクタム溶媒を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記溶媒成分が、少なくとも40重量%の前記ラクタム溶媒を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記ポリフッ化ビニリデン樹脂が、少なくとも90重量%のビニリデンジフルオリド繰返し単位を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記ポリフッ化ビニリデン樹脂が、少なくとも98重量%のビニリデンジフルオリド繰返し単位を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記潜伏性溶剤がシクロヘキサノンを含む、請求項5又は6に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記ポリフッ化ビニリデン樹脂がホモポリマーである、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記ポリフッ化ビニリデン樹脂が、約300,000未満の重量平均分子量を有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
前記ポリフッ化ビニリデン樹脂が、約200,000未満の重量平均分子量を有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
前記熱可塑性樹脂がビニル樹脂である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
少なくとも1種の熱可塑性樹脂と、少なくとも1種の熱硬化性樹脂との両方を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項17】
前記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のそれぞれが、独立して、ビニル樹脂である、請求項16に記載のコーティング組成物。
【請求項18】
下記を含むコーティング組成物;
(a)少なくとも1種のラクタム溶媒を含む溶媒成分;
(b)前記溶媒成分に溶解した少なくとも1種のポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、ここで、前記ラクタム溶媒:前記ポリフッ化ビニリデン樹脂の重量比が、少なくとも約2.5:1であり、そして前記PVDF樹脂は、前記PVDF樹脂が25℃において前記溶媒成分に可溶であるような十分に低い分子量を有する;及び
(c)前記溶媒成分に溶解した少なくとも1種の熱可塑性樹脂、ここで、前記少なくとも1種のポリフッ化ビニリデン樹脂:前記熱可塑性樹脂の重量比は、約0.3:1〜約30:1の範囲にある;
(d)前記溶媒成分に溶解した少なくとも1種の熱硬化性樹脂、ここで、前記熱可塑性樹脂:前記熱硬化性樹脂の重量比が、約2:1超である。
【請求項19】
前記熱可塑性樹脂:前記熱硬化性樹脂の重量比が約3:1超である、請求項18に記載のコーティング組成物。
【請求項20】
下記を含むコーティングされた製品;
(a)少なくとも90重量%のビニリデンジフルオリド繰返し単位を有するポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂;並びに少なくとも1種の熱可塑性樹脂及び/又は少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含む材料に由来するクリアコーティング;及び
(b)前記クリアコーティングの下にある第2のコーティング、前記第2のコーティングは、少なくとも1種のフルオロポリマー、少なくとも1種の熱可塑性樹脂、及び少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含む材料に由来し、第2のコーティングに導入された前記少なくとも1種のフルオロポリマー:前記少なくとも1種の熱可塑性樹脂及び前記少なくとも1種の熱硬化性樹脂の総重量の重量比が、約1:1超であり;そして第2のコーティング内の前記熱可塑性樹脂:前記熱硬化性樹脂の重量比が、1:1超であるが、ただし、第2のコーティングは、第2のコーティング内に含まれるフルオロポリマーの総重量約100重量部に対して前記熱硬化性樹脂を約20重量部未満含む。
【請求項21】
下記を含むコーティング組成物;
(a)ラクタム溶媒及び潜伏性溶剤を含む溶媒成分、ここで、前記溶媒成分は、少なくとも約25重量%の前記ラクタム溶媒を含む;
(b)前記溶媒成分に溶解したポリフッ化ビニリデン樹脂、ここで、前記ラクタム溶媒;前記ポリフッ化ビニリデン樹脂の重量比は、少なくとも約2.5:1であり、そして前記ポリフッ化ビニリデン樹脂は、十分な量のビニリデンジフルオリド繰返し単位を含み、そして前記ポリフッ化ビニリデン樹脂が25℃において前記ラクタム溶媒及び前記溶媒成分に溶解し且つ可溶性のままであるような十分に低い重量平均分子量を有し、そして前記PVDF樹脂は、約35℃超の温度において前記潜伏性溶剤、前記ラクタム溶媒、及び前記溶媒成分に可溶性である、
(c)少なくとも1種の熱可塑性ビニル樹脂及びヒドロキシル官能基を有する少なくとも1種の熱硬化性ビニル樹脂、ここで、前記PVDF樹脂:前記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の総重量の重量比は約0.4:1超であり、そして前記熱可塑性樹脂:前記熱硬化性樹脂の重量比は、約2:1超である;
(d)前記熱硬化性樹脂の少なくとも一部を架橋するために有効な量において存在するアミノプラスト架橋剤;及び
(e)前記熱硬化性樹脂及び前記アミノプラスト架橋剤の間の架橋反応を促進する、所望による、ブロック化又は未ブロック化触媒。
【請求項22】
請求項1〜19及び21のいずれか一項に記載のコーティング組成物を用いて調製されたコーティング。
【請求項23】
コーティングされた基材を調製するための、請求項1〜19及び21のいずれか一項に記載のコーティングの使用方法。

【公表番号】特表2010−526903(P2010−526903A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507410(P2010−507410)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/005629
【国際公開番号】WO2008/140690
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509308012)バルスパー コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】