説明

高出力パワーアンプ

【課題】高出力パワーアンプにおいて、主基板の反りによる放熱悪化により、電流増や高周波特性劣化が発生してしまうことを抑制し、且つ、半導体の特性を最大限に引き出すことを可能とする高出力パワーアンプの提供を課題とする。
【解決手段】本発明の高出力パワーアンプ20は、Push-Pull構成の半導体信号線間に、両面若しくは片面に積層銅張り層21,22が設けられ、且つネジ孔23が設けられた整合用小型基板11が、ネジ12によって主基板4に押し付けられて取り付けられ、これにより、主基板4の反り防止と、半導体直近における整合回路の形成とを両立できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高出力パワーアンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高出力パワーアンプは、Push-Pull構成を有していた。PushーPull構成とは、周知のように、能動素子2個を一組として出力回路を構成し、各々の能動素子の入力には,振幅が同じで位相が反転した信号を加え,各出力を合成して出力を得るようにするものである。
【0003】
このような高出力パワーアンプは、各出力の整合がPush-Pullにおける信号線間に、キャパシタやインダクタが接続されることによって行われる。こうすることにより、各出力の整合に用いる部品数が半分で済み、且つ、Push-pull間でのバランスが保たれる。
【0004】
なお、Push-Pullの各半導体の信号線路からグランドに対してキャパシタを接続した場合、そのキャパシタの特性バラツキや実装バラツキにより、各半導体での特性がアンバランスになり、利得の低下や出力の低下を招く恐れがある。
【0005】
また、高出力パワーアンプは、入出力のインピーダンスが低いために、半導体直近に前述のキャパシタなどを実装しないと、半導体の性能が引き出せないことが、一般的に知られている。
【0006】
図8及び図9(A)は、従来の高出力パワーアンプにおける半導体周辺の構成を示す。この高出力パワーアンプにおける半導体周辺の構成は、半導体ケース1と、主基板表面信号パターン2と、Push-Pullの信号線間に実装された整合用コンデンサ3と、主基板4と、半導体の信号線5と、放熱器6と、主基板4に設けられた凹部7と、半導体ケース取付けネジ8と、主基板裏面信号パターン9と、半田付け部10とから構成されている。
【0007】
すなわち、半導体における入出力の主基板表面信号パターン2の線路間には、半導体の性能を最大限引き出すために、整合用コンデンサ3が実装されている。また、高出力パワーアンプは放熱を良くすることが必要であるため、半導体のケース1は、半導体ケース取付けネジ8によって熱抵抗の低い放熱器6に固定されており、放熱を図っている。半導体ケース1を放熱器6にネジ留めするために、主基板4には凹部7が設けられている。
【特許文献1】特開平10-41713公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の高出力パワーアンプにおいては、その使用時に、図9(B)に示すように、ヒートサイクルにより主基板4の半導体ケース1に近いほうの端部(凹部7の周辺部)が、放熱器6と逆方向に反り上がることがあり、この場合には、反り上がった主基板4の端部に半田付けされている半導体の信号線5も、垂直方向(放熱器6と反対方向)に持ち上げられる。
【0009】
そうすると、半導体ケース1の特に中央部(半導体ケース取り付けネジ8から離れた部位)が、GND兼放熱器6から離間してしまう。そのため、半導体ケース1から放熱器6への放熱が悪くなり、電流増や高周波特性劣化が発生してしまうという問題が発生する。
【0010】
また、主基板4の端部の反りを抑えるために、主基板4の端部、及び半導体ケース1の中央部(半導体ケース取り付けネジ8から離れた部位)を、放熱器6にネジで固定することも考えられるが、この場合は、Push-pullの信号線間に実装された整合用コンデンサ3が、半導体の入出力部から遠ざかってしまい、半導体の性能が引き出せなくなるという問題が発生する。
【0011】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決するもので、高出力パワーアンプにおいて、主基板の反りによる放熱悪化により、電流増や高周波特性劣化が発生してしまうことを抑制し、且つ、半導体の特性を最大限に引き出すことを可能とする高出力パワーアンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するために本発明の高出力パワーアンプは、Push-Pull構成の半導体信号線間に、両面若しくは片面に積層銅張り層が設けられ且つネジ孔が設けられた小型基板が、ネジによって主基板に押し付けられて取り付けられ、これにより基板の反り防止と、半導体直近における整合回路の形成とを両立できることを特徴とする。
【0013】
本発明では、ネジ孔の開いた整合用小型基板を半導体の直近に実装することで、基板の反りによる放熱悪化により、電流増や高周波特性劣化が発生してしまうことを抑制し、且つ、半導体の特性を最大限に引き出すことができる。
【0014】
ここで、上記整合用小型基板における誘電体基板部と前記ネジとが一体に形成され、前記ネジのネジ部分及び頭部が非金属製であると共に、前記ネジの頭部に前記誘電体基板部が設けられ、且つ前記誘電体基板部が金属製であることが好ましい。
【0015】
この場合は、ネジの頭部に誘電体基板部を設け、これをコンデンサとして使用することで、ネジと整合用基板という2つの部品を1つの部品で兼用できるので、ハイパワーアンプの製造が容易になると共に、信頼性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の高出力ハイパワーアンプは上記構成を有し、ネジ孔の開いた小型整合基板を半導体の直近に実装することで、主基板の反りによる放熱悪化により、電流増や高周波特性劣化が発生してしまうことを抑制し、且つ、半導体の特性を最大限に引き出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る高出力パワーアンプについて、図面を参照して詳細に説明する。なお、図8及び図9(A),(B)と同一の部分には同一の符号を付けて、その詳細な説明を省略する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る第1実施形態の高出力パワーアンプにおける使用時の状態を示す断面図、図2は本発明に係る第1実施形態の高出力パワーアンプの使用時の状態を示す平面図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、本発明の高出力パワーアンプ20は、半導体ケース1、主基板表面信号パターン2、主基板4、半導体の信号線5、放熱器6、主基板4に設けられた凹部7、半導体ケース取付けネジ8、主基板裏面信号パターン9、半田付け部10、Push-Pullの信号線間に実装されたネジ孔付きの整合用小型基板11、及び、上記の整合用小型基板11を放熱器6にネジ留めするための取付けネジ12を備えている。
【0020】
図3(A),(B),(C)に示すように、上記の整合用小型基板11の非金属部11cにおける裏面11aには、Push-Pullの主基板表面信号パターン2に接続するための金属電極21が2つ設けられている。また、整合用小型基板11の表面11bには、裏面11aの金属電極21との間にコンデンサを形成させるための金属電極22が1つ設けられている。この整合用小型基板11の中央には、ネジ孔23が設けられている。
【0021】
上記の取付けネジ12によって、整合用小型基板11と主基板4を放熱器6に共締めすることにより、整合用小型基板11はPush-Pullの主基板表面信号パターン2の間の整合用コンデンサとして動作する。取付けネジ12を金属製にした場合は、整合用小型基板11によるコンデンサは、対グランドに対する容量とみなすことが出来る。
【0022】
このように、ネジ孔の開いた整合用小型基板11を半導体ケース1の直近に実装することで、主基板4の反りによる放熱悪化により、電流増や高周波特性劣化が発生してしまうことを抑制し、且つ、半導体の特性を最大限に引き出すという効果を奏することができる。
【0023】
ここで、整合用小型基板11の大きさ(面積および厚み)や材料を変えることで、整合用小型基板11によるコンデンサの容量を変えることが出来ることは、容易に理解できる。
(第2の実施形態)
図4は、本発明に係る第2実施形態の高出力パワーアンプの断面図、図5は本発明に係る第2実施形態の使用時の形態を示す平面図。図6及び図7は本発明に係る第2実施形態のネジを示すである。
【0024】
この高出力パワーアンプにおける基本構成は、上記の第1実施形態と同様であるので、図1〜図3と同様の部分には、同一の符号を付けてその詳細な移設名を省略する。
【0025】
図4及び図5に示すように、この第2実施形態の高出力パワーアンプ30は、整合用コンデンサを兼ねたネジ13が主基板4を放熱器6に押さえつけている。そして、ネジ13の誘電体製ヘッド部13bの上面に設けられた金属製の電極部13cが、コンデンサとして動作する整合用基板として用いられている。これが、本発明の特徴部分である。
【0026】
すなわち、上記のネジ13は、図6に示すように、非金属製のネジ部分13a、非金属製のヘッド部13b、整合用コンデンサとして機能させるための金属製の電極部13cとを有している。電極部13cは、ヘッド部13bの上面に設けられている。
【0027】
この第2実施形態の高出力パワーアンプ30は、主基板4を放熱器6に取り付けるためのネジ部分13aと、コンデンサとして機能する誘電体製ヘッド部13b及び金属製電極部13cとの2つの部品を、1つの部品にすることが可能となり、ハイパワーアンプ30の製造のしやすさ及び信頼性を改善できるという効果を奏することができる。
【0028】
この第2実施形態における高出力パワーアンプ30においても、図6及び図7に示すように、ネジ13のトップ部13cの大きき(面積L1,L2および厚みt1,t2)や材料を変えることで、コンデンサの容量を変えることが出来ることは、第1実施形態の高出力パワーアンプ20と同様であり、容易に理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、基板の反りによる放熱悪化により、電流増や高周波特性劣化が発生してしまうことを抑制し、且つ、半導体の特性を最大限に引き出すことを可能とする、高出力パワーアンプを実現するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る第1実施形態の高出力パワーアンプを示す断面図である。
【図2】本発明に係る第1実施形態の高出力パワーアンプの使用時の形態を示す平面図であり、図1のB矢視図である。
【図3】本発明に係る1実施形態の整合用基板を示す図であり、図3(A)は斜視図、図3(B)は図3(A)のC矢視図、図3(C)は図3(A)のD矢視図である。
【図4】本発明に係る第2実施形態の高出力パワーアンプを示す断面図である。
【図5】本発明に係る第2実施形態の高出力パワーアンプを示す平面図であり、図4のE矢視図である。
【図6】本発明に係る第2実施形態のネジを示す図であり、図6(A)は側面図、図6(B)は図6(A)のF矢視図である。
【図7】本発明に係る第2実施形態の別のネジを示す図であり、図7(A)は側面図、図7(B)は図7(A)のG矢視図である。
【図8】従来例に係る高出力パワーアンプの半導体周辺の構成を示す平面図である。
【図9】従来例に係る高出力パワーアンプの半導体周辺の構成を示す図であり、図9(A)は図8のA矢視図、図9(B)は使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 半導体ケース
2 主基板表面信号パターン
3 整合用コンデンサ
4 主基板
5 信号線
6 放熱器
7 凹部
8 ネジ
9 主基板裏面信号パターン
10 半田付け部
11 整合用小型基板
11a 裏面
11b 表面
12 ネジ
13 ネジ
13a ネジ部分
13b ヘッド部(誘電体基板部)
13c トップ部(金属電極部)
20 高出力パワーアンプ(ハイパワーアンプ)
21 金属電極
22 金属電極
23 ネジ孔
30 高出力パワーアンプ(ハイパワーアンプ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高出力パワーアンプにおいて、Push-Pull構成の半導体信号線間に、両面若しくは片面に積層銅張り層が設けられ且つネジ孔が設けられた整合用小型基板が、ネジによって主基板に押し付けられて取り付けられ、これにより前記主基板の反り防止と、半導体直近における整合回路の形成とを両立できることを特徴とする整合回路を用いた高出力パワーアンプ。
【請求項2】
前記整合用小型基板における誘電体基板部と前記ネジとが一体に形成され、前記ネジのネジ部分及び頭部が非金属製であると共に、前記ネジの頭部に前記誘電体基板部が設けられ、且つ前記誘電体基板部が金属製であることを特徴とする請求項1記載の整合回路を用いた高出力パワーアンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−81070(P2006−81070A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265166(P2004−265166)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】