説明

高分子化合物及びその製造方法

【課題】発光効率に優れる有機発光素子製造に有用な高分子化合物の提供。
【解決手段】下記式で表される化合物の残基を構成単位として含む高分子化合物。


[式中、nは1から4の整数であり、m及びmmは0又は1であり、Ar1はアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表し、Ar2及びAr4はアリーレン基、2価の芳香族複素環基、又は、アリーレン基及び2価の芳香族複素環基からなる群より選ばれる同一又は異なる基が2以上連結した2価の基を表し、Ar3、Ar5、Ar6及びAr7はアリール基又は1価の芳香族複素環基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族アミン残基を持つペリレン骨格を構成単位に含む高分子化合物、該高分子化合物を含む組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子に用いるための発光材料として、繰り返し単位がペリレンジイル基及びフルオレンジイル基のみからなる高分子化合物が知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Synthetic Metals 102 (1999) 1087−1088
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記高分子化合物を用いた有機発光素子は、その発光効率が十分ではない。
【0005】
そこで、本発明は、発光効率に優れる有機発光素子の製造に有用な高分子化合物を提供することを目的とする。本発明はまた、該高分子化合物を含む組成物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は第一に、下記一般式(1)で表される化合物の残基を構成単位として含む高分子化合物を提供する。
【0007】
【化1】

(1)
[式(1)中、
nは1から4の整数であり、
m及びmmはそれぞれ独立に0又は1であり、
Ar1はアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表し、
Ar2及びAr4はそれぞれ独立にアリーレン基、2価の芳香族複素環基、又は、アリーレン基及び2価の芳香族複素環基からなる群より選ばれる同一又は異なる基が2以上連結した2価の基を表し、
Ar3、Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ独立にアリール基又は1価の芳香族複素環基を表す。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7はアルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる一種又は複数種の置換基を有していてもよい。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7で表される基のうち、同一の窒素原子に結合する基同士が、単結合、又は、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−N(RA)−、−C(=O)−N(RA)−若しくは−C(RA)(RA)−で表される基を介して結合していてもよい。
Aはアルキル基、アリール基又は1価の芳香族複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RAが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0008】
本発明は第二に、前記高分子化合物と、正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料とを含有する組成物(以下、「高分子組成物」と言う。)を提供する。
【0009】
本発明は第三に、前記高分子化合物を含有する有機薄膜、及び、前記組成物(即ち、高分子組成物)を用いてなる有機薄膜を提供する。
【0010】
本発明は第四に、前記有機薄膜を有する有機半導体素子、及び、有機発光素子を提供する。
【0011】
本発明は第五に、前記有機発光素子を有する面状光源、及び、表示装置を提供する。
【0012】
本発明は第六に、下記一般式(Ma)又は下記一般式(Mb)で表される化合物、並びに、下記一般式(Ma)で表される化合物及び下記一般式(Mb)で表される化合物を含有する組成物(以下、「低分子組成物」と言う。)を提供する。
【0013】
【化2】

(Ma)
【0014】
【化3】

(Mb)
[式(Ma)及び(Mb)中、
m及びmmはそれぞれ独立に0又は1であり、
Ar1はアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表し、
Ar2及びAr4はそれぞれ独立にアリーレン基、2価の芳香族複素環基、又は、アリーレン基及び2価の芳香族複素環基からなる群より選ばれる同一又は異なる基が2以上連結した2価の基を表し、
Ar3、Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ独立にアリール基又は1価の芳香族複素環基を表す。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7はアルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる一種又は複数種の置換基を有していてもよい。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7で表される基のうち、同一の窒素原子に結合する基同士が、単結合、又は、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−N(RA)−、−C(=O)−N(RA)−若しくは−C(RA)(RA)−で表される基を介して結合していてもよい。
Aはアルキル基、アリール基又は1価の芳香族複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RAが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
na1、na2、na3、na4、nb1、nb2、nb3及びnb4はそれぞれ独立に0又は1である。但し、na1、na2、na3及びna4の少なくとも1個は1であり、nb1、nb2、nb3及びnb4の少なくとも1個は1である。m、mm、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7の各々が複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
Ar20はアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表し、Ar20が複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
Xma及びXmbはそれぞれ独立に、下記置換基A群及び下記置換基B群からなる群から選ばれる基を表し、2個あるXmaは同一であっても異なっていてもよく、2個あるXmbは同一であっても異なっていてもよい。
(置換基A群)
塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及び、−O−S(=O)220(R20はアルキル基、又はアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、フッ素原子若しくはシアノ基で置換されていてもよいアリール基を表す。)で表される基。
(置換基B群)
−B(OR212(R21は水素原子又はアルキル基を表し、2個存在するR21は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して一体となって環を形成していてもよい。)で表される基、−BF41(Q1はリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムの1価の陽イオンを表す。)で表される基、−Sn(R223(R22は水素原子又はアルキル基を表し、3個存在するR22は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して一体となって環を形成していてもよい。)で表される基、−MgY1(Y1は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で表される基、及び、−ZnY2(Y2は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で表される基。]
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発光効率に優れる有機発光素子の製造に有用な高分子化合物を提供することができる。また、好ましい実施形態では、この高分子化合物は、発光輝度の駆動安定性にも優れ、長寿命の有機発光素子の製造にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】合成例1で得られた黄色結晶の1H−NMRスペクトル(300MHz、THF−d)である。
【図2】実施例1で得られたオレンジ色固体の1H−NMRスペクトル(300MHz、CDCl3)である。
【図3】合成例2で得られた黄色結晶の1H−NMRスペクトル(300MHz、THF−d)である。
【図4】実施例2で得られた黄色結晶の1H−NMRスペクトル(300MHz、CDCl3)である。
【図5】実施例14で得られた発光素子DP7の1000cd/mにおけるELスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、i−Prはイソプロピル基を表し、n-Buはノルマルブチル基を表し、t−Buはtert−ブチル基を表し、Phはフェニル基を表し、Cyはシクロヘキシル基を表す。また、THFはテトラヒドロフランを表し、DMFはN,N−ジメチルホルムアミドを表す。
【0018】
本明細書中、「化合物の残基」とは、「中性の原子価を有する化合物からk個の水素原子を取り除いた残りの原子団で表されるk価の基」を意味するものであり、kで表される数、及び、取り除かれる水素原子の位置に関しては、必要に応じて、本明細書中でより詳細に説明されるものである。
【0019】
本明細書中、「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位構造を意味する。「構成単位」は、「繰り返し単位」(即ち、高分子化合物中に2個以上存在する単位構造)として高分子化合物中に含まれることが好ましい。
【0020】
本明細書中、「アリール基」とは、芳香族炭化水素から芳香環に直接結合する水素原子1個を除いた原子団であり、縮合環を有するものを含む。アリール基は、本明細書中の各説明において特に記載しない限り、炭素数が通常6〜60であり、該炭素数には置換基の炭素数は含まれない。前記アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−テトラセニル基、2−テトラセニル基、5−テトラセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ペリレニル基、3−ペリレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、1−ビフェニリル基、2−ビフェニリル基、2−フェナンスレニル基、9−フェナンスレニル基、6−クリセニル基、1−コロネニル基等が挙げられる。
【0021】
前記アリール基における水素原子の一部又は全部は、本明細書中の各説明において特に記載しない限り、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。
【0022】
本明細書中、「n価の芳香族複素環基」とは、芳香族性を有する複素環式化合物から、芳香環に直接結合する水素原子のうちn個を除いた原子団を意味し、縮合環を有するものを含む。「複素環式化合物」とは、環式構造を持つ有機化合物のうち、環を構成する原子として、炭素原子だけでなく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、ケイ素原子等のヘテロ原子を含むものをいう。「芳香族複素環式化合物」とは、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、ジベンゾホスホール等のヘテロ原子を含む複素環式化合物であり、該複素環自体が芳香族性を示すもの、並びに、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、ベンゾピラン等のヘテロ原子を含む複素環それ自体は芳香族性を示さなくとも、該複素環に芳香環が縮環されているものを意味する。「n価の縮合芳香族複素環基」とは、前記「n価の芳香族複素環基」のうち、縮合環を有するものを表す。
【0023】
本明細書中、「1価の芳香族複素環基」とは、本明細書中の各説明において特に記載しない限り、炭素数が通常2〜60であり、好ましくは通常3〜60であり、該炭素数には置換基の炭素数は含まれない。前記1価の芳香族複素環基としては、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル基、1,3,4−チアジアゾール−2−イル基、2−チアゾリル基、2−オキサゾリル基、2−チエニル基、2−ピロリル基、2−フリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピラジニル基、2−ピリミジニル基、2−トリアジニル基、3−ピリダジニル基、5−キノリル基、5−イソキノリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基等が挙げられる。
【0024】
前記1価の芳香族複素環基における水素原子の一部又は全部は、本明細書中の各説明において特に記載しない限り、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。
【0025】
前記RAはアルキル基、アリール基又は1価の芳香族複素環基である。RAは置換基を有していてもよく、RAが複数存在する場合、RAは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0026】
Aで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ドデシル基等が挙げられる。前記アルキル基における水素原子の一部又は全部は、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で置換されたアルキル基として、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基が例示できる。
【0027】
前記一般式(1)中、「−O−RA」で表される基としては、RAがアルキル基である場合には、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を有するアルコキシ基が挙げられる。前記アルコキシ基は、炭素数が通常1〜20である。前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基、2−エトキシエチルオキシ基等が挙げられる。
【0028】
また、「−O−RA」で表される基としては、RAがアリール基である場合には、炭素数が通常6〜60のアリールオキシ基が挙げられる。該アリール基部分としては、上述のアリール基と同様のものが挙げられる。前記アリールオキシ基としては、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基(「C1〜C12アルコキシ」は、アルコキシ部分の炭素数が1〜12であることを意味し、以下同様である。)、C1〜C12アルキルフェノキシ基(「C1〜C12アルキル」は、アルキル部分の炭素数が1〜12であることを意味し、以下同様である。)、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0029】
更に、「−O−RA」で表される基としては、RAが1価の芳香族複素環基である場合には、炭素数が2〜60である基、特には、炭素数が3〜20である基が挙げられる。該1価の芳香族複素環基としては、上述の1価の芳香族複素環基と同様のものが挙げられる。
【0030】
前記一般式(1)中、「−S−RA」で表される基としては、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。
【0031】
前記一般式(1)中、「−C(=O)−RA」で表される基としては、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基等が挙げられる。
【0032】
前記一般式(1)中、「−C(=O)−O−RA」で表される基としては、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0033】
<式(1)で表される化合物の残基>
本実施形態に係る化合物は、前記一般式(1)で表される化合物の残基を構成単位として含む高分子化合物である。
【0034】
Ar1で表されるアリーレン基は、炭素数が、好ましくは6〜48であり、より好ましくは6〜30であり、更に好ましくは6〜14である。該炭素数には置換基の炭素数は含まない。アリーレン基における水素原子の一部又は全部は、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。
【0035】
前記アリーレン基としては、1,4−フェニレン基(式2−001)、1,3−フェニレン基(式2−002)、1,2−フェニレン基(式2−003)等のフェニレン基;ナフタレン−1,4−ジイル基(式2−004)、ナフタレン−1,5−ジイル基(式2−005)、ナフタレン−2,6−ジイル基(式(2−006)等のナフタレンジイル基;9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基(式2−007)等のジヒドロフェナントレンジイル基;フルオレン−3,6−ジイル基(式2−008);フルオレン−2,7−ジイル基(式2−009);(式2−010)〜(式2−012)で表されるベンゾフルオレンジイル基;アントラセン−2,6−ジイル基(式2−013)、アントラセン−9,10−ジイル基(式2−014)等のアントラセンジイル基等が挙げられる。これらのアリーレン基における水素原子の一部又は全部は、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。
【0036】
【化4】

【0037】
【化5】

[式中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基又はフッ素原子を表し、Raは、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基を表し、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、複数存在するRaは同一でも異なっていてもよい。]
【0038】
前記式2−001〜2−014においては、本実施形態に係る高分子化合物の耐熱性と有機溶媒に対する溶解性が良好となるので、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又は1価の芳香族複素環基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、また、Raはアルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0039】
Ar1で表される2価の芳香族複素環基は、炭素数が、好ましくは3〜60であり、より好ましくは8〜20である。該炭素数には置換基の炭素数は含まない。2価の芳香族複素環基における水素原子の一部又は全部は、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。
【0040】
前記2価の芳香族複素環基としては、2価の縮合芳香族複素環基が好ましい。この2価の縮合芳香族複素環基としては、キノリン−2,6−ジイル基(式2−107)等のキノリンジイル基;イソキノリン−1,4−ジイル基(式2−108)等のイソキノリンジイル基;キノキサリン−5,8−ジイル基(式2−109)等のキノキサリンジイル基;カルバゾール−3,6−ジイル基(式2−110)、カルバゾール−2,7−ジイル基(式2−111)等のカルバゾールジイル基;ジベンゾフラン−2,8−ジイル基(式2−112)、ジベンゾフラン−3,7−ジイル基(式2−113)等のジベンゾフランジイル基;ジベンゾチオフェン−2,8−ジイル基(式2−114)、ジベンゾチオフェン−3,7−ジイル基(式2−115)等のジベンゾチオフェンジイル基;ジベンゾシロール−2,8−ジイル基(式2−116)、ジベンゾシロール−3,7−ジイル基(式2−117)等のジベンゾシロールジイル基;(式2−118)、(式2−119)等のフェノキサジンジイル基;(式2−120)、(式2−121)等のフェノチアジンジイル基;(式2−123)等のジヒドロアクリジンジイル基;(式2−124)で表される2価の基等が挙げられる。これらの2価の縮合芳香族複素環基における水素原子の一部又は全部は、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。
【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
【化8】

[式2−107〜2−124中、R及びRaは、前記と同義である。]
【0044】
Ar1としては、本実施形態に係る高分子化合物の安定性が良好となり、且つ当該高分子化合物を用いた有機発光素子の発光効率がより良好となるので、1,4−フェニレン基(式2−001)、1,3−フェニレン基(式2−002)が好ましく、1,4−フェニレン基(式2−001)が特に好ましい。
【0045】
Ar1において、本実施形態に係る高分子化合物の安定性が良好となり、且つ当該高分子化合物を用いた有機発光素子の発光効率がより良好となるので、前記Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又は1価の芳香族複素環基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0046】
Ar2及びAr4で表されるアリーレン基、2価の芳香族複素環基としては、前記Ar1における基と同様のものが例示できる。
【0047】
Ar2及びAr4で表される「アリーレン基及び2価の芳香族複素環基からなる群より選ばれる同一又は異なる基が2以上連結した2価の基」は、炭素数が通常4〜60であり、好ましくは12〜60である。該炭素数には置換基の炭素数は含まない。このような基としては、下記式2−201〜2−208で表される基が挙げられる。
【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

[式2−201〜2−208中、Rは前記と同義である。]
【0050】
Ar2及びAr4としては、本実施形態に係る高分子化合物の安定性が良好となり、且つ当該化合物を用いた有機発光素子の発光効率がより良好となるので、1,4−フェニレン基(式2−001)、フルオレン−2,7−ジイル基(式2−009)、式2−201で表される2価の基が好ましく、1,4−フェニレン基(式2−001)が特に好ましい。
【0051】
Ar2及びAr4において、本実施形態に係る高分子化合物の安定性が良好となり、且つ当該高分子化合物を用いた有機発光素子の発光効率がより良好となるので、前記Rは水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、また、前記Raはアルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0052】
Ar3、Ar5、Ar6及びAr7で表されるアリール基は、炭素数が、好ましくは6〜48であり、より好ましくは6〜20であり、更に好ましくは6〜14である。該炭素数には置換基の炭素数は含まれない。前記アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−テトラセニル基、2−テトラセニル基、5−テトラセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ペリレニル基、3−ペリレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、2−フェナンスレニル基、9−フェナンスレニル基、6−クリセニル基、1−コロネニル基等が挙げられる。前記アリール基における水素原子の一部又は全部は、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。
【0053】
Ar3、Ar5、Ar6及びAr7で表される1価の芳香族複素環基は、炭素数が、通常2〜60であり、好ましくは3〜20である。該炭素数には置換基の炭素数は含まれない。前記1価の芳香族複素環基としては、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル基、1,3,4−チアジアゾール−2−イル基、2−チアゾリル基、2−オキサゾリル基、2−チエニル基、2−ピロリル基、2−フリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピラジニル基、2−ピリミジニル基、2−トリアジニル基、3−ピリダジニル基、5−キノリル基、5−イソキノリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基等が挙げられる。前記1価の芳香族複素環基における水素原子の一部又は全部は、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。
【0054】
前記一般式(1)中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7が有していてもよい置換基としては、本実施形態に係る高分子化合物の安定性が良好となり、且つ当該高分子化合物を用いた有機発光素子の発光効率がより良好となるので、水素原子、アルキル基、アリール基が好ましい。
【0055】
前記一般式(1)中、Ar5及びAr7としては、本実施形態に係る高分子化合物の安定性が良好となり、且つ当該高分子化合物を用いた有機発光素子の駆動時の輝度安定性がより良好となるので、下記式(5)で表される基が好ましい。
【0056】
【化11】

(5)
[式中、R5aはアルキル基を表し、R5b、R5c及びR5dはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R5eは水素原子又はアルキル基を表す。]
【0057】
前記一般式(5)中、R5aとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0058】
前記一般式(5)中、R5bとしては、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アルキル基で置換されていてもよいフェニル基が好ましい。
【0059】
前記一般式(5)中、R5cとしては、炭素数4〜20のアルキル基が好ましい。
【0060】
前記一般式(5)中、R5dとしては、水素原子、炭素数4〜20のアルキル基、炭素数4〜20のアルキル基を置換基として有するアリール基が好ましい。
【0061】
前記一般式(5)中、R5eとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0062】
前記一般式(1)で表される化合物の残基とは、前記一般式(1)中のペリレン環上に存在する水素原子、若しくは、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6又はAr7で表される基に含まれる芳香環を構成する炭素原子上に存在する水素原子から選ばれる1〜4個の水素原子を結合手に置き換えた1〜4価の基を意味する。前記一般式(1)で表される化合物の残基は、1〜3価(結合手の数は1〜3本)であることが好ましく、1価(結合手の数は1本)であり、高分子化合物の側鎖又は末端として存在すること、及び、2価(結合手の数が2本)であり、高分子化合物の主鎖を構成する構成単位として存在することがより好ましい。ここで、前記一般式(1)で表される化合物から取り除かれる水素原子は、ペリレン環における水素原子、又は、Ar3で表されるアリール基若しくは1価の芳香族複素環基の芳香環における水素原子が好ましい。本段落の説明は、式(1a)、(1b)についても、同様である。
【0063】
<式(1a)、(1b)で表される化合物の残基>
本実施形態に係る高分子化合物は、前記一般式(1a)又は(1b)で表される化合物の残基を構成単位として含む高分子化合物であることが好ましい。この高分子化合物を用いて得られる有機発光素子は、発光効率が一層優れる。
【0064】
【化12】

(1a)
【0065】
【化13】

(1b)
[式(1a)及び(1b)中、m、mm、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7は前記と同じ意味を表す。na1、na2、na3、na4、nb1、nb2、nb3及びnb4はそれぞれ独立に0又は1である。但し、na1、na2、na3及びna4の少なくとも1個は1であり、nb1、nb2、nb3及びnb4の少なくとも1個は1である。m、mm、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7の各々が複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。]
【0066】
前記一般式(1a)及び(1b)中、na1、nb1が1であることが好ましく、na3、na4、nb3、nb4が0であることがより好ましく、na2、nb2が0であることが更により好ましい。なお、na1、na2、na3、na4、nb1、nb2、nb3、nb4が0である場合、それらが添えられた括弧の部分は水素原子を意味する。
【0067】
前記一般式(1a)及び(1b)中、mmは0が好ましく、mは1が好ましい。
【0068】
前記一般式(1a)で表される化合物の残基からなる構成単位としては、下記一般式(1a−1)及び(1a−2)が好ましく、(1a−2)がより好ましい。前記一般式(1b)で表される化合物の残基からなる構成単位として好ましくは、下記一般式(1b−1)及び(1b−2)が好ましく、(1b−2)がより好ましい。
【0069】
【化14】

(1a−1)
【0070】
【化15】

(1a−2)
【0071】
【化16】

(1b−1)
【0072】
【化17】

(1b−2)
[式(1a−1)、(1a−2)、(1b−1)及び(1b−2)中、
m、mm、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7は前記と同じ意味を表す。Ar3'は、Ar3で表されるアリール基又は1価の芳香族複素環基から一つの水素原子を取り除いたアリーレン基又は2価の芳香族複素環基である。
na3、na4、nb3及びnb4はそれぞれ独立に0又は1である。m、mm、Ar1、Ar2、Ar3、Ar3'、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7の各々が複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。]
【0073】
前記一般式(1a−1)、(1a−2)、(1b−1)及び(1b−2)で表される残基におけるAr1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar7、m、mmの具体例、好ましい例は、前記と同様である。
前記Ar3'で表されるアリーレン基および2価の芳香族複素環基の具体例、好ましい範囲は、前記Ar1で表されるアリーレン基、及び、2価の芳香族複素環基と同様である。
【0074】
<高分子化合物>
[第一構成単位]
本実施形態に係る高分子化合物は、前記一般式(1)、(1a)又は(1b)で表される化合物の残基を構成単位(以下、「第一構成単位」とも言う。)として含む高分子化合物である。
【0075】
前記第一構成単位のうち、前記一般式(1a)で表される構成単位としては、下記式1a−001〜1a−011、1a−101〜1a−104、1a−201〜1a−204で表される構成単位が好ましく、前記一般式(1b)で表される構成単位としては、下記式1b−001〜1b−011、1b−101〜1b−104、1b−201〜1b−204で表される構成単位が好ましい。前記第一構成単位としては、本実施形態に係る高分子化合物を用いた有機発光素子の駆動時の輝度安定性が向上するので、下記式1a−001〜1a−011、1b−001〜1b−011で表される構成単位がより好ましく、下記式1a−002、1a−004、1a−005、1b−002、1b−004、1b−005で表される構成単位が更に好ましい。
【0076】
【化18】

【0077】
【化19】

【0078】
【化20】

【0079】
【化21】

【0080】
【化22】

【0081】
【化23】

【0082】
【化24】

【0083】
【化25】

【0084】
【化26】

【0085】
【化27】

【0086】
【化28】

【0087】
【化29】

【0088】
【化30】

【0089】
【化31】

【0090】
【化32】

【0091】
【化33】

【0092】
【化34】

【0093】
【化35】

【0094】
【化36】

【0095】
前記一般式(1)、(1a)又は(1b)で表される構成単位は、本実施形態に係る高分子化合物中に、それぞれ、一種のみ含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0096】
[第二構成単位]
本実施形態に係る高分子化合物は、前記一般式(1)、(1a)又は(1b)で表される化合物の残基を構成単位(第一構成単位)として含み、更に、下記一般式(2)で表される基を構成単位(以下、「第二構成単位」とも言う。)として含む高分子化合物であることが好ましい。この高分子化合物は、得られる有機発光素子の安定性及び発光効率が優れたものとなる。
【0097】
【化37】

(2)
[式(2)中、
2a及びR2bはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、又は、1価の芳香族複素環基を表すか、R2aとR2bとが互いに結合し一体となって2価の基を表す。
式(2)で表される構成単位は、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、−N(RA2で表される基、シアノ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる一種又は複数種の置換基を有していてもよい。RAは前記と同じ意味を表す。]
【0098】
前記一般式(2)中、R2a及びR2bで表されるアルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。
【0099】
前記一般式(2)中、R2a、R2bで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−メチルブチル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0100】
前記一般式(2)中、R2a、R2bで表されるアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
【0101】
前記一般式(2)中、R2a、R2bで表される1価の芳香族複素環基としては、上述のRにおける1価の芳香族複素環基と同様のものが挙げられる。
【0102】
前記一般式(2)中、R2a、R2bとしては、本実施形態に係る高分子化合物の耐熱性と有機溶媒に対する溶解性が良好となるので、置換若しくは非置換のアリール基、又は、置換若しくは非置換のアルキル基が好ましく、より好ましくは、非置換又はアルキル基、アルコキシ基、アリール基若しくは置換アミノ基で置換されたアリール基、或いは、非置換又はアルキル基、アルコキシ基、アリール基若しくは置換アミノ基で置換されたアルキル基であり、更に好ましくは、アルキル基又はアリール基で置換されたアリール基、或いは、非置換のアルキル基であり、より一層好ましくは、4−トリル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−オクチルフェニル基、4−(2−エチルヘキシル)フェニル基、4−(3、7−ジメチルオクチル)フェニル基、3−トリル基、3−ブチルフェニル基、3−tert−ブチルフェニル基、3−ヘキシルフェニル基、3−オクチルフェニル基、3−(2−エチルヘキシル)フェニル基、3−(3,7−ジメチルオクチル)フェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジ−(tert−ブチル)フェニル基、3,5−ジヘキシルフェニル基、3,5−ジオクチルフェニル基、3、4−ジヘキシルフェニル基、3,4−ジオクチルフェニル基、4−ヘキシルオキシフェニル基、4−オクチルオキシフェニル基、4−(2−エトキシ)エトキシフェニル基、4−(4’−tert−ブチルビフェニリル)基、9,9−ジヘキシルフルオレン−2−イル基、9,9−ジオクチルフルオレン−2−イル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、又は、3,7−ジメチルオクチル基である。
【0103】
前記一般式(2)中、R2a、R2bとしては、本実施形態に係る高分子化合物を発光素子に用いた際の駆動時の輝度安定性を向上させる観点で、
2a、R2bのいずれもが、アルキル基又はアリール基で置換されたアリール基であるか、
2aがアルキル基又はアリール基で置換されたアリール基であり、かつ、R2bが炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましい。
【0104】
また、前記一般式(2)で表される構成単位としては、以下の式2−501〜2−520で表される構成単位が好ましい。
【0105】
【化38】

【0106】
【化39】

【0107】
【化40】

【0108】
【化41】

【0109】
【化42】

【0110】
前記一般式(2)で表される構成単位は、本実施形態に係る高分子化合物中に、一種のみ含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0111】
[第3構成単位]
本実施形態に係る高分子化合物は、得られる有機発光素子の発光効率が一層良好となり、更に耐熱性が向上するので、下記一般式(3)で表される構成単位(以下、「第3構成単位」とも言う。)を含むことが好ましい。
【0112】
【化43】

(3)
[式(3)中、
k及びkkはそれぞれ独立に0又は1であり、
Ar11、Ar12、Ar13及びAr14はそれぞれ独立にアリーレン基、2価の芳香族複素環基、又は、アリーレン基及び2価の芳香族複素環基からなる群より選ばれる同一又は異なる基が2以上連結した2価の基を表し、
Ar15、Ar16及びAr17はそれぞれ独立にアリール基又は1価の芳香族複素環基を表す。
Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16及びAr17はアルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる一種又は複数種の置換基を有していてもよい。
Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16及びAr17で表される基のうち、同一の窒素原子に結合する基同士が、単結合、又は、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−N(RA)−、−C(=O)−N(RA)−若しくは−C(RA)(RA)−で表される基を介して結合していてもよい。
Aは前記と同じ意味を表す。]
【0113】
前記一般式(3)中、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14で表されるアリーレン基としては、上述のAr1におけるアリーレン基と同様のものが挙げられる。
【0114】
前記一般式(3)中、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14で表される2価の芳香族複素環基としては、上述のAr1における2価の芳香族複素環基と同様のものが挙げられる。
【0115】
前記一般式(3)中、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14で表される「アリーレン基及び2価の芳香族複素環基からなる群より選ばれる同一又は異なる種の基が2以上連結した2価の基」としては、上述のAr2及びAr4における基と同様の基が例示できる。
【0116】
Ar11、Ar12、Ar13、Ar14としては、本実施形態に係る高分子化合物の安定性が良好となり、且つ当該高分子化合物を用いた有機発光素子の発光効率がより良好となるので、アリーレン基が好ましく、1,4−フェニレン基(式2−001)、フルオレン−2,7−ジイル基(式2−009)がより好ましく、1,4−フェニレン基(式2−001)が更に好ましい。
【0117】
前記一般式(3)中、Ar15、Ar16、Ar17で表されるアリール基及び1価の芳香族複素環基としては、上述のAr3、Ar5、Ar6及びAr7におけるアリール基及び1価の芳香族複素環基と同様のものがそれぞれ挙げられる。
【0118】
前記一般式(3)中、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16、Ar17で表される基のうち、同一の窒素原子に結合する基同士が、単結合、又は、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−N(RA)−、−C(=O)−N(RA)−若しくは−C(RA)(RA)−で表される基を介して結合していてもよい。これにより、通常5〜7員環が形成される。
【0119】
前記一般式(3)で表される構成単位としては、下記式3−001〜3−006で表される構成単位が好ましい。
【0120】
【化44】

【0121】
【化45】

[式3−001〜3−006中、R及びRaは、前記と同義である。]
【0122】
前記一般式(3)で表される構成単位としては、本実施形態に係る高分子化合物の安定性が良好となり、且つ当該高分子化合物を用いた有機発光素子の発光効率が一層優れるので、前記一般式3−001〜3−006において、Rが、水素原子、アルキル基、アリール基又は1価の芳香族複素環基であるものが好ましく、水素原子又はアルキル基であるものがより好ましく、また、前記一般式3−001〜3−006において、Raが、アルキル基又はアリール基であるものが好ましい。
【0123】
これらの中でも、前記一般式(3)で表される構成単位としては、本実施形態に係る高分子化合物の安定性が更に良好となり、且つ当該高分子化合物を用いた有機発光素子の発光効率が一層優れるので、下記式3−101〜3−106で表される構成単位が好ましい。
【0124】
【化46】

【0125】
【化47】

[式3−101〜3−106中、R及びRaは、前記と同義である。R’はアルキル基、アリール基、又は、1価の芳香族複素環基を示す。複数存在するR’は同一でも異なっていてもよい。]
【0126】
前記一般式(3)で表される構成単位は、本実施形態に係る高分子化合物中に、一種のみ含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0127】
[第4構成単位]
本実施形態に係る高分子化合物は、下記一般式(4)で表される構成単位(該構成単位は、第1構成単位、第2構成単位、及び、第3構成単位とは異なる。以下、「第4構成単位」とも言う。)を含んでいてもよい。
【0128】
【化48】

(4)
[式(4)中、Ar18は、アリーレン基、2価の芳香族複素環基、又は、アリーレン基及び2価の芳香族複素環基からなる群より選ばれる同一又は異なる種の基が2以上連結した2価の基を示す。なお、Ar18は、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる一種又は複数の置換基を有していてもよい。RAは前記と同じ意味を表す。]
【0129】
前記一般式(4)中、Ar18で表されるアリーレン基としては、上述のAr1で表されるアリーレン基と同様の基が挙げられる。
【0130】
前記一般式(4)中、Ar18で表される2価の芳香族複素環基としては、上述のAr1で表される2価の芳香族複素環基と同様の基が挙げられる。
【0131】
前記一般式(4)中、Ar18で表される「アリーレン基及び2価の芳香族複素環基からなる群より選ばれる同一又は異なる種の基が2以上連結した2価の基」としては、上述のAr2及びAr4で表される「アリーレン基及び2価の芳香族複素環基からなる群より選ばれる同一又は異なる種の基が2以上連結した2価の基」と同様の基が例示できる。
【0132】
Ar18としては、本実施形態に係る高分子化合物の安定性が良好となり、且つ当該高分子化合物を用いた有機発光素子の発光効率がより良好となるので、アリーレン基が好ましく、1,4−フェニレン基(式2−001)、ナフタレン−2,6−ジイル基(式(2−006)、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基(式2−007)、(式2−010)〜(式2−012)で表されるベンゾフルオレンジイル基、アントラセン−2,6−ジイル基(式2−013)、アントラセン−9,10−ジイル基(式2−014)が更に好ましい。
【0133】
前記一般式(4)で表される構成単位(第4構成単位)は、本実施形態に係る高分子化合物中に、一種のみ含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0134】
本実施形態に係る高分子化合物は、当該高分子化合物を用いて得られる有機発光素子の発光効率が更に良好となるので、第1構成単位及び第2構成単位の総含有量基準で、第1構成単位の含有割合が、0.1モル%以上であることが好ましく、0.5モル%以上であることがより好ましい。また、当該高分子化合物を用いて得られる有機発光素子の発光効率が更に良好となり、且つ、高分子化合物の有機溶媒に対する溶解性が向上するので、前記含有割合が、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、7モル%以下であることが更に好ましい。
【0135】
本実施形態に係る高分子化合物が第3構成単位を含む場合、当該高分子化合物を用いて得られる有機発光素子の発光効率が更に良好となるので、第1構成単位、第2構成単位、及び第3構成単位の総含有量基準で、第1構成単位の合計の含有割合が、0.1モル%以上であることが好ましく、0.5モル%以上であることがより好ましい。また、当該高分子化合物を用いて得られる有機発光素子の発光効率が更に良好となり、且つ、高分子化合物の有機溶媒に対する溶解性が向上するので、前記含有割合が、15モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることが更に好ましい。
【0136】
本実施形態に係る高分子化合物が第3構成単位を含む場合、当該高分子化合物を用いて得られる有機発光素子の駆動時の輝度安定性が更に良好となるので、第1構成単位、第2構成単位及び第3構成単位及の総含有量基準で、第1構成単位及び第3構成単位の合計の含有割合が、1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましい。また、当該高分子化合物を用いて得られる有機発光素子の発光効率が更に良好となり、且つ、高分子化合物の有機溶媒に対する溶解性が向上するので、前記含有割合が、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、8モル%以下であることが更に好ましい。
【0137】
本実施形態に係る高分子化合物は、第1構成単位及び第2構成単位の総含有量が、高分子化合物の総量基準で、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0138】
本実施形態に係る高分子化合物が第3構成単位を含む場合、第1構成単位、第2構成単位及び第3構成単位の総含有量が、高分子化合物の総量基準で、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0139】
本実施形態に係る高分子化合物としては、前記一般式(1)、(1a)又は(1b)で表される構成単位(第1構成単位)、前記一般式(2)で表される構成単位(第2構成単位)、前記一般式(3)で表される構成単位(第3構成単位)、前記一般式(4)で表される構成単位(第4構成単位)及びそれ以外の構成単位(後述の燐光発光性構成単位とは異なる。)を、下記表1に示す比率(モル%)で含有する、高分子化合物EP1及びEP2が好ましい。ここで、「それ以外の構成単位」では、第1構成単位、第2構成単位、第3構成単位及び第4構成単位からなる群から選ばれる2種の構成単位を連結する1原子団(つまり、1原子団の両端は、それぞれ、第1構成単位、第2構成単位、第3構成単位及び第4構成単位からなる群から選ばれる1種の構成単位と連結している。)を、1構成単位とする。なお、本実施形態に係る高分子化合物において、各構成単位の含有割合の合計は100モル%である。
【0140】
【表1】

【0141】
本実施形態に係る高分子化合物としては、下記表2に示す比率(モル%)で各構成単位を含有する高分子化合物EP3及びEP4がより好ましい。
【0142】
【表2】

【0143】
本実施形態に係る高分子化合物としては、下記表3に示す比率(モル%)で各構成単位を含有する高分子化合物EP5及びEP6が更に好ましい。
【0144】
【表3】

【0145】
表4に高分子化合物EP5の好適な例を示す。表4では、高分子化合物の例として、それを構成する構成単位の種類と、各構成単位が占める比率を示す。高分子化合物EP5としては、以下の高分子化合物EP5−01〜EP5−06が好ましい。
【0146】
【表4】

[表中、比率(モル%)は各構成単位の含有割合を表し、その合計は100モル%である。]
【0147】
表5、6に高分子化合物EP6の好適な例を示す。表5、6では、高分子化合物の例として、それを構成する構成単位の種類と、各構成単位が占める比率を示す。高分子化合物EP6としては、以下の高分子化合物EP6−01〜EP6−12が好ましい。
【0148】
【表5】

[表中、比率(モル%)は各構成単位の含有割合を表し、その合計は100モル%である。]
【0149】
【表6】

[表中、比率(モル%)は各構成単位の含有割合を表し、その合計は100モル%である。]
【0150】
[燐光発光性構成単位]
本実施形態のかかる高分子化合物は、通常青緑色〜赤色の発光波長領域において高効率な発光を有する高分子化合物であるが、特に次に述べるように、第1構成単位の比率が特定の比率を有し、かつ、前記第1〜第4構成単位以外の構成単位として燐光発光性化合物から誘導される構成単位(以下、燐光発光性構成単位と述べる)を有することにより、単独で白色の発光を得ることが可能な高分子化合物となる。
【0151】
上記燐光発光性構成単位としては、主に赤色の発光波長を有する燐光発光性化合物から誘導される構成単位が挙げられ、より具体的には、該燐光発光性化合物から水素原子を1個除いた残基、該燐光発光性化合物から水素原子を1個除いた残基を置換基として有するアリーレン基又は2価の芳香族複素環基、該燐光発光性化合物から水素原子を2個除いた残基、該燐光発光性化合物から水素原子を3個除いた残基等が挙げられる。なお、燐光発光性構成単位が燐光発光性化合物から水素原子を3個除いた残基である場合、高分子化合物は、この構成単位において分岐した構造を有することになる。
【0152】
白色の発光を得る観点からは、主に赤色の発光波長を有すること、すなわち、600〜650nm付近の赤色領域に発光スペクトルを有する、燐光発光性化合物から誘導される構成単位が好ましい。
【0153】
燐光発光性化合物から誘導される構成単位を形成し得る燐光発光性化合物としては、以下の化合物が例示できる。燐光発光性化合物としては、三重項発光錯体等の公知の化合物や、有機発光素子の燐光発光性材料として従来から利用されてきた化合物等を適用できる。
【0154】
燐光発光性化合物としては、例えば、Nature, (1998), 395, 151、Appl. Phys. Lett. (1999), 75(1), 4、Proc. SPIE−Int. Soc. Opt. Eng. (2001), 4105(Organic Light−Emitting Materials and DevicesIV), 119、 J. Am. Chem. Soc., (2001), 123, 4304、Appl. Phys. Lett., (1997), 71(18), 2596、Syn. Met., (1998), 94(1), 103、Syn. Met., (1999),99(2), 1361、Adv. Mater., (1999), 11(10), 852、Inorg. Chem., (2003), 42, 8609、Inorg. Chem., (2004), 43, 6513、Journal of the SID 11/1、161 (2003)、WO2002/066552、WO2004/020504、WO2004/020448等に記載されている燐光発光性化合物が挙げられる。
【0155】
燐光発光性化合物としては、燐光発光性化合物である金属錯体の最高被占軌道(HOMO)における、中心金属の最外殻d軌道の軌道係数の2乗の和が、全原子軌道係数の2乗の和において占める割合が1/3以上であるものを適用することが、高発光効率を得る観点で好ましい。例えば、中心金属が第6周期に属する遷移金属であるオルトメタル化錯体等が挙げられる。
【0156】
燐光発光性化合物でる金属錯体の中心金属としては、原子番号50以上の原子で、錯体にスピン−軌道相互作用があり、一重項状態と三重項状態間の項間交差を起こし得る金属が挙げられる。中心金属は、好ましくは、金、白金、イリジウム、オスミウム、レニウム、タングステン、ユーロピウム、テルビウム、ツリウム、ディスプロシウム、サマリウム、プラセオジム、ガドリニウム、イッテルビウムであり、より好ましくは、金、白金、イリジウム、オスミウム、レニウムであり、更に好ましくは、金、白金、イリジウム、レニウムであり、特に好ましくは、白金、イリジウムであり、とりわけ好ましくは、イリジウムである。
【0157】
中心金属がイリジウムである、燐光発光性化合物である金属錯体の配位子としては、
8−キノリノール及びその誘導体、ベンゾキノリノール及びその誘導体等のイリジウム原子と窒素原子及び酸素原子で配位結合若しくは共有結合で結合する配位子、2−フェニル−ピリジン及びその誘導体、1−フェニルイソキノリン及びその誘導体等のイリジウム原子と窒素原子及び炭素原子で配位結合若しくは共有結合で結合する配位子、アセチルアセトン及びその誘導体等のイリジウム原子と酸素原子で配位結合若しくは共有結合で結合する配位子が挙げられる。
好ましくは、2−フェニル−ピリジン及びその誘導体、1−フェニルイソキノリン及びその誘導体、アセチルアセトン及びその誘導体であり、更に好ましくは、2−フェニル−ピリジン及びその誘導体、1−フェニルイソキノリン及びその誘導体である。
【0158】
燐光発光性化合物は、溶解性の観点から、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基等の置換基を有する化合物であることが好ましい。この置換基は、水素原子以外の原子の総数が3個以上であることが好ましく、5個以上であることがより好ましく、7個以上であることが更に好ましく、10個以上であることが特に好ましい。また、この置換基は、配位子毎に存在していることが好ましい。その場合、置換基の種類は、配位子毎に同一であっても異なっていてもよい。
【0159】
燐光発光性化合物としては、具体的には、以下の化合物が挙げられ、上述した白色の発光を得る観点から、フェニルイソキノリン構造を配位子の部分構造として有する化合物(EM01〜EM03、EM08〜EM12、EM14〜EM17)、及び、ジアリールトリアジンが置換したフェニルピリジン構造を配位子の部分構造として有する化合物(EM13〜EM17)が好ましく、その双方の構造を有する化合物(EM14〜EM17)がより好ましい。なお、下記式(EM01〜EM17)中において、破線及び実線で示されたイリジウム原子と配位子との結合はそれぞれ、配位結合及び共有結合を表す。
【0160】
【化49】

【0161】
【化50】

【0162】
【化51】

【0163】
【化52】

【0164】
本実施形態のかかる高分子化合物が、燐光発光性構成単位を含む場合、前記第1構成単位、第2構成単位、第3構成単位、第4構成単位、燐光発光性構成単位、及びそれ以外の構成単位を下記表7に示す比率(モル%)で含有する、高分子化合物EP7及びEP8が好ましく、EP8がより好ましい。
【0165】
【表7】

[表中、比率(モル%)は各構成単位の含有割合を表し、その合計は100モル%である。]
【0166】
本実施形態に係る高分子化合物は、末端基として重合活性基がそのまま残っていると、該高分子化合物を用いて作製した有機発光素子の発光特性や寿命が低下する可能性がある。そのため、末端基は安定な基(例えば、アリール基、1価の芳香族複素環基)であることが好ましい。
【0167】
本実施形態に係る高分子化合物は、線状ポリマー、分岐ポリマー、ハイパーブランチポリマー、環状ポリマー、櫛形ポリマー、星型ポリマー、網目ポリマー等の任意の形状を有していてもよい。また、それぞれの形状を有する、ホモポリマー、交互コポリマー、周期コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー等の任意の組成、規則性を有するポリマーであってもよい。
【0168】
本実施形態に係る高分子化合物は、発光材料、電荷輸送材料等として有用であり、使用する際には、その他の化合物と併用し、高分子組成物として用いてもよい。
【0169】
本実施形態に係る高分子化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という。)によるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、通常、1×103〜1×108であり、好ましくは1×104〜1×106である。また、本実施形態に係る高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常、1×103〜1×108であり、成膜性が良好になり、且つ高分子化合物を用いて作製した有機発光素子の発光効率がより良好となるので、好ましくは1×104〜5×106であり、より好ましくは3×104〜1×106であり、更に好ましくは5×104〜5×105である。
【0170】
有機発光素子を作製するための様々なプロセスに対する耐久性や、有機発光素子の耐熱性がより良好となるので、本実施形態に係る高分子化合物のガラス転移温度Tgは、70℃以上であることが好ましい。
【0171】
本実施形態に係る高分子化合物を用いた有機発光素子は、液晶ディスプレイのバックライト、照明用としての曲面状や平面状の光源、セグメントタイプの表示素子、ドットマトリックスのフラットパネルディスプレイ等の表示装置に有用である。また、本実施形態に係る高分子化合物は、レーザー用色素、有機太陽電池用材料、有機トランジスタ用の有機半導体、導電性薄膜、有機半導体薄膜等の伝導性薄膜用材料、蛍光や燐光を発する発光性薄膜材料としても有用である。
【0172】
<高分子化合物の製造方法>
本発明の高分子化合物は、好ましくは、第1構成単位を導入する構造を有する下記一般式(M−1)で表される化合物、及び、第2構成単位を導入する構造を有する下記一般式(M−2)で表される化合物を用い、第3構成単位を含む場合は、更に下記一般式(M−3)で表される化合物を用い、第4構成単位を含む場合は、更に下記一般式(M−4)で表される化合物を単量体として用いて、それらを、必要に応じて有機溶媒に溶解させ、配位子となる化合物、アルカリ、触媒等を用いた公知のアリール−アリールカップリング等の縮合重合を行うことにより、製造することができる。
【0173】
また、本発明の燐光発光性化合物から誘導される構成単位を含む高分子化合物は、上記本発明の高分子化合物の合成において式(M−1)、(M−2)、(M−3)、(M−4)で表される化合物に加えて、前述した、燐光発光性化合物から誘導される構成単位の有する2又は3の結合手がそれぞれ、前記置換基A群及び下記置換基B群からなる群から選ばれる基に置き換わった下記一般式(M−6)で表される化合物を単量体として用いることにより製造できる。
【0174】
【化53】

[式(M−1)中、
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar7、m、mm及びnは、前記一般式(1)におけるAr1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar7、m、mm及びnとそれぞれ同様の意味を表す。
1aは、下記置換基A群及び下記置換基B群からなる群から選ばれる基を表し、
ペリレン環を構成する水素原子、或いは、Ar1で表されるアリーレン基又は2価の芳香族複素環基、Ar2及びAr4で表されるアリーレン基、2価の芳香族複素環基、又は、アリーレン基及び2価の芳香族複素環基からなる群より選ばれる同一又は異なる基が2以上連結した2価の基、Ar3、Ar5、Ar6及びAr7で表されるアリール基又は1価の芳香族複素環基の芳香環を構成する水素原子から選ばれる2個の水素原子と置き換えられる基を示す。
2個あるX1aは、同一であっても異なっていてもよい。]
【0175】
【化54】

[式(M−2)中、R2a及びR2bは、前記一般式(2)におけるR2a及びR2bとそれぞれ同様の意味を表す。X2aは下記置換基A群及び下記置換基B群からなる群から選ばれる基を示す。2個あるX2aは、同一であっても異なっていてもよい。]
【0176】
【化55】

[式(M−3)中、k、kk、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16及びAr17は、前記一般式(3)におけるk、kk、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16及びAr17とそれぞれ同様の意味を表す。X3aは下記置換基A群及び下記置換基B群からなる群から選ばれる基を示す。2個あるX3aは、同一であっても異なっていてもよい。]
【0177】
【化56】

[式(M−4)中、Ar18は、前記一般式(4)におけるAr18と同様の意味を表す。X4aは下記置換基A群及び下記置換基B群からなる群から選ばれる基を示す。2個あるX4aは、同一であっても異なっていてもよい。]
【0178】

[式(M−6)中、Gは前記燐光発光性化合物から誘導される2又は3価の基を表し、燐光発光性化合物から誘導される1価の基を置換基として有する前記アリーレン基又は2価の芳香族複素環基も含まれる。XGaは下記置換基A群及び下記置換基B群からなる群から選ばれる基を示す。nGaは2又は3の整数を表す。]
【0179】
(置換基A群)
塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及び、−O−S(=O)220(R20はアルキル基、又はアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、フッ素原子若しくはシアノ基で置換されていてもよいアリール基を示す。)で表される基。
(置換基B群)
−B(OR212(R21は水素原子又はアルキル基を表し、2個存在するR21は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。)で表される基、−BF41(Q1はリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムの1価の陽イオンを示す。)で表される基、−Sn(R223(R22は水素原子又はアルキル基を表し、3個存在するR22は、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。)で表される基、−MgY1(Y1は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。)で表される基、−ZnY2(Y2は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。)で表される基。
【0180】
前記一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)、(M−4)及び(M−6)中、R20、R21及びR22で表されるアルキル基の炭素数は、通常、1〜20であり、好ましくは1〜15であり、より好ましくは1〜10である。
【0181】
前記一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)、(M−4)及び(M−6)中、R20で表されるアリール基としては、本発明の高分子化合物の合成の容易さ、化合物の重合時の反応性が良好となるので、フェニル基、4−トリル基、4−メトキシフェニル基、4−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、2−ニトロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基が好ましい。
【0182】
前記一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)、(M−4)及び(M−6)中、−O−S(=O)220で表される基としては、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、4−メチルフェニルスルホニルオキシ基、4−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ基等が挙げられる。
【0183】
前記一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)、(M−4)及び(M−6)中、−B(OR21)2で表される基としては、以下の式で表される基等が挙げられる。
【0184】
【化57】

【0185】
前記一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)、(M−4)及び(M−6)中、−BF4-1で表される基としては、以下の式で表される基等が挙げられる。
【0186】
【化58】

【0187】
前記一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)、(M−4)及び(M−6)中、−Sn(R22)3で表される基としては、トリメチルスタナニル基、トリエチルスタナニル基、トリブチルスタナニル基等が挙げられる。
【0188】
前記一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)、(M−4)又は(M−6)で表される化合物は、得られる高分子化合物を有機発光素子に用いる場合、その純度が発光特性の素子の性能に影響を与えるので、重合前の化合物を蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製した後に縮合重合することが好ましい。
【0189】
本実施形態に係る高分子化合物の製造方法においては、前記一般式(M−1)で表される化合物、及び、前記一般式(M−2)で表される化合物の合計に対する、前記一般式(M−1)で表される化合物の比率を0.1〜20モル%とすることが好ましい。これにより、前記一般式(1)で表される構成単位、及び、前記一般式(2)で表される構成単位の合計に対する、前記一般式(1)で表される構成単位の比率が0.1〜20モル%である高分子化合物を容易に製造することができる。
【0190】
本実施形態に係る高分子化合物の製造方法においては、前記一般式(M−1)で表される化合物、前記一般式(M−2)で表される化合物、及び、前記一般式(M−3)で表される化合物の合計に対する、前記一般式(M−1)で表される化合物の比率を、0.1〜15モル%とすることが好ましい。これにより、前記一般式(1)で表される構成単位、前記一般式(2)で表される構成単位、及び、前記一般式(3)で表される構成単位の合計に対する、前記一般式(1)で表される構成単位の比率が0.1〜15モル%である高分子化合物を容易に製造することができる。
【0191】
本実施形態に係る高分子化合物の製造方法においては、前記一般式(M−1)で表される化合物、前記一般式(M−2)で表される化合物、及び、前記一般式(M−3)で表される化合物の合計に対する、前記一般式(M−1)で表される化合物、及び、前記一般式(M−3)で表される化合物の合計比率を、1〜20モル%とすることが好ましい。これにより、前記一般式(1)で表される構成単位、前記一般式(2)で表される構成単位、及び、前記一般式(3)で表される構成単位の合計に対する、前記一般式(1)で表される構成単位、及び、前記一般式(3)で表される構成単位の合計比率が、1〜20モル%である高分子化合物を容易に製造することができる。
【0192】
また、高分子化合物の製造において、単量体となる全化合物に対する、前記一般式(M−1)で表される化合物のX1aで表される基、及び、前記一般式(M−2)で表される化合物のX2aで表される基を除いた合計比率が、80質量%以上であることが好ましい。これにより、高分子化合物を構成する全構成単位に対する、前記一般式(1)で表される構成単位、及び、前記一般式(2)で表される構成単位の合計比率が、80質量%以上である高分子化合物を容易に合成することができる。
【0193】
また、高分子化合物の製造において、単量体となる全化合物に対する、前記一般式(M−1)で表される化合物のX1aで表される基、前記一般式(M−2)で表される化合物のX2aで表される基、及び、前記一般式(M−3)で表される化合物のX3aで表される基を除いた合計比率が、80質量%以上であることが好ましい。これにより、高分子化合物を構成する全構成単位に対する、前記一般式(1)で表される構成単位、前記一般式(2)で表される構成単位、及び、前記一般式(3)で表される構成単位の合計比率が、80質量%以上である高分子化合物を容易に合成することができる。
【0194】
前記縮合重合としては、Suzukiカップリング反応により重合する方法(ケミカル レビュー(Chem. Rev.),第95巻,2457-2483頁(1995年))、Grignard反応により重合する方法(Bull. Chem. Soc. Jpn., 第51巻、2091頁(1978年))、Ni(0)触媒により重合する方法(プログレス イン ポリマー サイエンス(Progress in Polymer Science),第17巻,1153〜1205頁,1992年)、Stilleカップリング反応を用いる方法(ヨーロピアン ポリマー ジャーナル(European Polymer Journal),第41巻,2923-2933頁(2005年))等が挙げられるが、Suzukiカップリング反応により重合する方法、Ni(0)触媒により重合する方法が、原料となる化合物が合成し易く、且つ、重合反応操作が簡便であるので好ましく、高分子化合物の構造制御がし易いので、Suzukiカップリング反応、Grignard反応、Stilleカップリング反応等のクロスカップリング反応により重合する方法がより好ましく、Suzukiカップリング反応により重合する反応が特に好ましい。
【0195】
前記一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)、(M−4)及び(M−6)中、X1a、X2a、X3a、X4a及びXGaは、重合反応の種類に応じて適切な基を選択すればよいが、Suzukiカップリング反応により重合する方法を選択する場合は、前記一般式(M−1)、(M−2)、(M−3)、(M−4)及び(M−6)で表される化合物の合成が簡便であり、且つ、取り扱い易いので、臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子、−B(OR21)2が好ましく、臭素原子、−B(OR21)2がより好ましい。
【0196】
前記縮合重合の方法としては、前記置換基A群、及び前記置換基B群を重合反応性基として有する式(M−1)、(M−2)、(M−3)、(M−4)及び(M−6)で表される化合物等を、必要に応じて、触媒、塩基等とともに反応させる方法が挙げられる。Suzukiカップリング反応、Grignard反応、Stilleカップリング反応等のクロスカップリング反応により重合する方法を選択する場合は、得られる高分子化合物の分子量を所望の分子量とするためには、該化合物の合計が有する、前記置換基A群から選ばれる基のモル数と、前記置換基B群から選ばれる基のモル数との合計比率を調整すればよく、通常、前記置換基A群から選ばれる基の合計モル数に対する前記置換基B群から選ばれる基の合計モル数の比率を0.95〜1.05とすることが好ましく、0.98〜1.02とすることがより好ましく、0.99〜1.01とすることが更に好ましい。
【0197】
前記触媒は、Suzukiカップリング反応による重合においては、例えば、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、[トリス(ジベンジリデンアセトン)]ジパラジウム、パラジウムアセテート、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム等のパラジウム錯体等の遷移金属錯体と、必要に応じて、トリフェニルホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、トリス(o−メトキシフェニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の配位子とからなる触媒である。
【0198】
これらの触媒は、予め合成したものを用いてもよいし、反応系中で調製したものをそのまま用いてもよい。また、これらの触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0199】
前記触媒を用いる場合には、その使用量は、触媒としての有効量であればよく、用いる化合物のモル数の合計に対する触媒の量は、遷移金属換算で、通常、0.00001〜3モル当量であり、好ましくは0.00005〜0.5モル当量であり、より好ましくは0.0001〜0.2モル当量である。
【0200】
Suzukiカップリング反応による重合において、用いられる塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、リン酸三カリウム等の無機塩基、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の有機塩基が挙げられる。また、これらの塩基は水溶液として用いてもよい。
【0201】
前記塩基を用いる場合には、その量は、用いる化合物のモル数の合計に対して、通常、0.5〜20モル当量であり、好ましくは1〜10モル当量である。
【0202】
前記縮合重合は、溶媒の非存在下で行っても、溶媒の存在下で行ってもよいが、通常、有機溶媒の存在下で行う。
【0203】
前記有機溶媒としては、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。一般的に、副反応を抑制するために、脱酸素処理を行うことが望ましい。前記有機溶媒は一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0204】
前記有機溶媒の使用量は、単量体となる化合物の合計濃度が、通常、0.1〜90重量%となる量であり、好ましくは1〜50重量%となる量であり、より好ましくは2〜30重量%となる量である。
【0205】
前記縮合重合の反応温度は、好ましくは0〜200℃であり、より好ましくは20〜150℃であり、更に好ましくは20〜120℃である。
【0206】
前記反応時間は、通常、0.5時間以上であり、好ましくは2〜500時間である。
【0207】
前記縮合重合は、前記置換基(b)群に含まれる基として、−MgY1で表される基である場合には、脱水条件下で行う。
【0208】
前記縮合重合において、本発明の高分子化合物の末端に重合活性基が残存するのを避けるために、高分子化合物の末端を修飾する為の化合物(以後、「末端封止剤」と呼ぶことがある。)を用いてもよい。末端封止剤として用いる化合物としては、下記式(M−5)で表される化合物が好ましい。これにより、高分子化合物の末端がアリール基又は1価の芳香族複素環基で置換された高分子化合物を得ることができる。
【0209】
【化59】

(M−5)
[式(M−5)中、Ar19aは、アリール基又は1価の芳香族複素環基を表す。X19aは、前記置換基A群から選ばれる基、又は、前記置換基B群から選ばれる基を表す。]
【0210】
前記一般式(M−5)中、Ar19aで表されるアリール基、1価の芳香族複素環基としては、アリール基が好ましく、非置換又はアルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基若しくは置換アミノ基で置換されたアリール基がより好ましく、非置換又はアルキル基若しくはアリール基で置換されたアリール基が更に好ましく、非置換又はアルキル基若しくはアリール基で置換されたフェニル基が特に好ましい。
【0211】
前記一般式(M−5)中、X19aで表される基としては、前記X1a、X2a、X3a及びX4aと同様に、臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子、−B(OR21)2が好ましく、臭素原子、−B(OR21)2が好ましい。
【0212】
前記一般式(M−5)で表される末端封止剤は、本発明の高分子化合物の縮合重合において、一種のみ用いても二種以上用いてもよい。
【0213】
前記縮合重合の後処理は、公知の方法で行うことができ、例えば、メタノール等の低級アルコールに前記縮合重合で得られた反応液を加えて析出させた沈殿を濾過、乾燥させる方法で行うことができる。
【0214】
本発明の高分子化合物の純度が低い場合には、再結晶、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィー等の通常の方法にて精製すればよいが、本発明の高分子化合物を有機発光素子に用いる場合、その純度が発光特性等の素子の性能に影響を与えるので、縮合重合後、再沈殿、クロマトグラフィー等の純化処理をすることが好ましい。
【0215】
<単量体となる化合物>
本実施形態に係る高分子化合物の製造に有用な前記一般式(M−1)で表される化合物としては、前記一般式(Ma)で表される化合物又は前記一般式(Mb)で表される化合物、或いは、前記一般式(Ma)で表される化合物、及び、前記一般式(Mb)で表される化合物を含有する組成物(即ち、低分子組成物)が好ましい。
【0216】
前記一般式(Ma)及び(Mb)中、m、mm、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar7、na1、na2、na3、na4、nb1、nb2、nb3及びnb4はそれぞれ、前記一般式(1a)及び(1b)中、m、mm、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar7、na1、na2、na3、na4、nb1、nb2、nb3及びnb4と、その定義、及び、その好ましい範囲と同一である。
【0217】
前記一般式(Ma)及び(Mb)中、Ar20で表されるアリーレン基、及び、2価の芳香族複素環基の定義、及び、好ましい範囲は、前記Ar1で表されるアリーレン基、及び、2価の芳香族複素環基の定義、及び、好ましい範囲と同一である。
【0218】
<高分子組成物>
本実施形態に係る第一の高分子組成物は、本発明の高分子化合物と、正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料とを含有する組成物である。また、本実施形態に係る第二の高分子組成物は、本発明の高分子化合物と、溶媒とを含有する組成物、並びに、本発明の高分子化合物と、溶媒と、正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料とを含有する組成物である。
【0219】
正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体等が挙げられる。正孔輸送材料としては、その他にも、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、特開平3−152184号公報に記載された化合物も挙げられる。
【0220】
正孔輸送材料の含有量は、高分子組成物中の本発明の高分子化合物100重量部に対して、好ましくは1〜500重量部、より好ましくは5〜200重量部である。
【0221】
電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられる。電子輸送材料としては、その他にも、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、特開平3−152184号公報に記載された化合物も挙げられる。
【0222】
電子輸送材料の含有量は、高分子組成物中の本発明の高分子化合物100重量部に対して、好ましくは1〜500重量部、より好ましくは5〜200重量部である。
【0223】
発光材料としては、低分子量の蛍光発光材料、低分子量又は高分子量の燐光発光材料等が挙げられる。低分子量の蛍光発光材料としては、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、芳香族アミン類、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体、スチルベン誘導体等の低分子量の蛍光発光化合物;ポリメチン系色素、キサンテン系色素、クマリン系色素、シアニン系色素等の色素類;8−ヒドロキシキノリンを配位子として有する蛍光性金属錯体、8−ヒドロキシキノリン誘導体を配位子として有する蛍光性金属錯体、その他の蛍光性金属錯体等が挙げられる。低分子量又は高分子量の燐光発光材料としては、イリジウム錯体、白金錯体等の三重項発光錯体、及び、該三重項発光錯体から水素原子を取り除いてなる残基を構成単位として有する高分子化合物等が挙げられ、より具体的には、前記燐光発光性構成単位を形成し得る燐光発光性化合物として述べた燐光発光性化合物等が挙げられる。
【0224】
発光材料の含有量は、高分子組成物中の本発明の高分子化合物100重量部に対して、好ましくは1〜500重量部であり、より好ましくは5〜200重量部である。
【0225】
本実施形態に係る第二の高分子組成物は、該組成物中の固形分が、溶媒(分散媒を含む)に溶解又は分散して、溶液又は分散媒となったものであり、一般的に、インク、液状組成物等と呼ばれる。以下、単に「溶液」と言う。
【0226】
ここで、溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルベンゾエート、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;等の有機溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。これらの溶媒のうち、ベンゼン環を含む構造を有し、融点が0℃以下であり、且つ沸点が100℃以上である有機溶媒を含むことが、粘度、成膜性が良好となるので好ましい。
【0227】
前記溶液によれば、本実施形態に係る高分子化合物を含有する有機薄膜又は本実施形態に係る第一の高分子組成物を含有する有機薄膜を容易に製造することができる。具体的には、前記溶液を基板上に塗布して、加熱、減圧等により有機溶媒を留去することにより、本実施形態に係る高分子化合物を含有する有機薄膜が得られる。有機溶媒の留去は、使用される有機溶媒に応じて条件を変更することができ、例えば、50〜150℃程度の加温、10-3Pa程度の減圧により行うことができる。
【0228】
塗布には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビア法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、ノズルコート法等の塗布法を用いることができる。
【0229】
前記溶液の好適な粘度は印刷法によっても異なるが、好ましくは25℃において0.5〜500mPa・sである。また、インクジェットプリント法のように前記溶液が吐出装置を経由する場合、吐出時の目詰まりや飛行曲がりを防止するために25℃における粘度は0.5〜20mPa・sであることが好ましい。なお、本発明の第二の高分子組成物において、溶媒の含有量は、該組成物が上述した粘度となる量とすればよい。
【0230】
<有機薄膜>
本実施形態に係る有機薄膜は、本実施形態に係る高分子化合物、又は、本実施形態に係る第一の高分子組成物を含有する。本実施形態に係る有機薄膜は、上述のように前記溶液から容易に製造することができる。
【0231】
本実施形態に係る有機薄膜は、後述する有機発光素子における発光層として好適に使用することができる。また、有機半導体素子にも好適に使用できる。本実施形態に係る有機薄膜は、前記高分子化合物を含有するので、有機発光素子の発光層として使用した場合に当該有機発光素子の発光効率が非常に優れたものとなる。
【0232】
<有機半導体素子>
本実施形態に係る有機半導体素子は、前記有機薄膜を備える。該有機半導体素子としては、有機薄膜太陽電池、電界効果型有機トランジスタが例示され、その製造には、本発明の高分子化合物、有機薄膜が好適に用いられる。具体的には、SiO2等の絶縁膜とゲート電極とを形成したSi基板上に前記有機薄膜を形成し、Au等でソース電極とドレイン電極を形成することにより、電界効果型有機トランジスタとすることができる。
【0233】
<有機発光素子>
本実施形態に係る有機発光素子は、前記有機薄膜を有する。本実施形態に係る有機発光素子の代表例では、有機発光素子は、陽極と、陰極と、該陽極及び該陰極の間に存在する前記高分子化合物を含有する層とを有する。ここで、前記高分子化合物を含有する層は前記有機薄膜からなる層であることが好ましく、当該層は発光層として機能することが好ましい。以下、前記高分子化合物を含有する層が、発光層として機能する場合を、好ましい態様として例示する。
【0234】
本実施形態に係る有機発光素子の構成としては、以下の(a)〜(d)の構造が挙げられる。なお、「/」は、その前後の層が隣接して積層していることを示す(例えば、「陽極/発光層」とは、陽極と発光層とが隣接して積層していることを示す。)。
(a)陽極/発光層/陰極
(b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(d)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
【0235】
ここで、発光層とは、発光する機能を有する層であり、正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層である。正孔輸送層と電子輸送層とを総称して電荷輸送層と呼ぶ場合がある。また、発光層に隣接した正孔輸送層をインターレイヤー層と呼ぶ場合がある。
【0236】
各層の積層・成膜は、それぞれ各層の構成成分を含有する溶液を用いて行うことができる。溶液からの積層・成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、ノズルコート法等の塗布法を用いることができる。
【0237】
発光層の厚さは、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、更に好ましくは5nm〜200nmである。
【0238】
正孔輸送層は、上述する正孔輸送材料を含有することが好ましい。正孔輸送層の成膜は、正孔輸送材料が高分子化合物である場合には、正孔輸送材料を含有する溶液から成膜することが好ましく、正孔輸送材料が低分子化合物である場合には、高分子バインダーと正孔輸送材料とを含有する混合溶液から成膜することが好ましい。成膜方法としては、上述の塗布法と同様の方法を用いることができる。
【0239】
前記高分子バインダーは、電荷輸送を極度に阻害しないものであって、可視光に対する吸収が強くないものが好ましい。高分子バインダーとしては、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が挙げられる。
【0240】
正孔輸送層の厚さは、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、更に好ましくは5nm〜200nmである。
【0241】
電子輸送層は、上述する電子輸送材料を含有することが好ましい。電子輸送層の成膜は、電子輸送材料が高分子化合物である場合には、電子輸送材料を含有する溶液から成膜する方法、電子輸送材料を溶融して成膜する方法等が好ましい。また、電子輸送材料が低分子化合物である場合には、電子輸送材料の粉末を用いて真空蒸着法により成膜する方法、電子輸送材料を含有する溶液から成膜する方法、電子輸送材料を溶融して成膜する方法等が好ましい。電子輸送材料を含有する溶液から成膜する方法としては、上述の塗布法と同様の方法が例示できる。また、溶液中に高分子バインダーが含有していてもよい。
【0242】
前記高分子バインダーは、電荷輸送を極度に阻害しないものであって、可視光に対する吸収が強くないものが好ましい。高分子バインダーとしては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が挙げられる。
【0243】
電子輸送層の厚さは、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、更に好ましくは5nm〜200nmである。
【0244】
電極に隣接して設けられた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、特に電荷注入層(正孔注入層、電子注入層)と呼ぶことがある。電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して前記の電荷注入層又は絶縁層を設けてもよく、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。なお、積層する層の順番や数、及び各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して選択すればよい。
【0245】
電荷注入層を設けた有機発光素子としては、以下の(e)〜(p)の構造を有するものが挙げられる。
(e)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
(f)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
(g)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
(h)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(i)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
(j)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
(k)陽極/電荷注入層/発光層/電荷輸送層/陰極
(l)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
(m)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
(n)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷輸送層/陰極
(o)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
(p)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
【0246】
電荷注入層としては、
(I)導電性高分子を含む層、
(II)陽極と正孔輸送層との間に設けられ、陽極中の陽極材料と正孔輸送層中の正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含有する層、
(III)陰極と電子輸送層との間に設けられ、陰極中の陰極材料と電子輸送層中の電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含有層、
等が挙げられる。
【0247】
電荷注入層が(I)導電性高分子を含む層である場合、該導電性高分子の電気伝導度は、発光画素間のリーク電流が小さくなるので、10-5S/cm〜103S/cmが好ましく、10-5S/cm〜102S/cmがより好ましく、10-5S/cm〜101S/cmが特に好ましい。かかる範囲を満たすために、導電性高分子に適量のイオンをドープしてもよい。
【0248】
ドープするイオンの種類は、正孔注入層であればアニオン、電子注入層であればカチオンである。
アニオンとしては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオン等が挙げられる。
カチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0249】
電荷注入層の厚さは、1〜100nmが好ましく、2〜50nmがより好ましい。
【0250】
導電性高分子としては、電極や隣接する層の材料との関係で選択すればよく、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子が挙げられる。また、電荷注入層としては、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)、カーボン等を含有する層も挙げられる。
【0251】
絶縁層は、電荷注入を容易にする機能を有するものである。この絶縁層の厚さは、通常、0.1〜20nmであり、好ましくは0.5〜10nmであり、より好ましくは1〜5nmである。絶縁層に用いる材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等が挙げられる。
【0252】
絶縁層を設けた有機発光素子としては、以下の(q)〜(ab)の構造を有するものが挙げられる。
(q)陽極/絶縁層/発光層/陰極
(r)陽極/発光層/絶縁層/陰極
(s)陽極/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(t)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/陰極
(u)陽極/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
(v)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
(w)陽極/絶縁層/発光層/電子輸送層/陰極
(x)陽極/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
(y)陽極/絶縁層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
(z)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(aa)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
(ab)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
【0253】
本実施形態に係る有機発光素子は、陽極又は陰極に隣接して基板を備えることが好ましい。基板としては、電極及び各層を形成する際に形状や性状が変化しないものが好ましく、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等の基板が挙げられる。不透明な基板の場合には、該基板が接する電極とは反対側の電極が、透明又は半透明であることが好ましい。
【0254】
本実施形態に係る有機発光素子において、通常は、陽極及び陰極からなる電極の少なくとも一方が透明又は半透明であり、陽極が透明又は半透明であることが好ましい。
【0255】
陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム・スズ・オキサイド(ITO)からなる複合酸化物、インジウム・亜鉛・オキサイドからなる複合酸化物等の導電性無機化合物を用いて作製された膜、NESA等のほか、金、白金、銀、銅等が用いられる。また、陽極として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機透明導電膜を用いてもよい。また、陽極上に、電荷注入を容易にするために、フタロシアニン誘導体、導電性高分子、カーボン等からなる層、又は、金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる層を設けてもよい。
【0256】
陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。
【0257】
陽極の厚さは、光の透過性と電気伝導度とを考慮して選択すればよく、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、更に好ましくは40nm〜500nmである。
【0258】
陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、該金属のうち2種以上を含む合金、該金属のうち1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1種以上とを含む合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物等が用いられる。
【0259】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が用いられる。
【0260】
陰極の厚さは、電気伝導度や耐久性を考慮して選択すればよく、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、更に好ましくは50nm〜500nmである。
【0261】
また、陰極と発光層又は陰極と電子輸送層との間に、導電性高分子からなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる層を設けてもよく、陰極作製後、有機発光素子を保護する保護層を装着していてもよい。有機発光素子を長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護する目的で、保護層及び/又は保護カバーを装着することが好ましい。
【0262】
保護層としては、樹脂、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物等を用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板等を用いることができ、該保護カバーを熱硬化樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子がキズつくのを容易に防ぐことができる。該空間に窒素やアルゴン等の不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、更に酸化バリウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にタメージを与えるのを抑制することが容易となる。
【0263】
本実施形態に係る高分子化合物、又は、本実施形態に係る高分子組成物を含有する有機発光素子は、曲面状光源、平面状光源等の面状光源(例えば、照明);セグメント表示装置(例えば、セグメントタイプの表示素子)、ドットマトリックス表示装置(例えば、ドットマトリックスのフラットディスプレイ)、液晶表示装置(例えば、液晶表示装置、液晶ディスプレイのバックライト)等の表示装置や、レーザー用色素、有機太陽電池用材料、有機トランジスタ用の有機半導体、導電性薄膜、有機半導体薄膜等の伝導性薄膜用材料、蛍光を発する発光性薄膜材料、電界効果トランジスタの材料等としても有用である。
【0264】
本実施形態に係る有機発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の有機発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、陽極若しくは陰極のいずれか一方、又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号等を表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。また、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子化合物を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等の表示装置として用いることができる。
【実施例】
【0265】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0266】
高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)(島津製作所製:LC−10Avp)を用いて以下の測定条件により求めた。
【0267】
[測定条件]
測定する高分子化合物は、約0.05重量%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、SECに10μL注入した。SECの移動相としてテトラヒドロフランを用い、2.0mL/分の流速で流した。カラムとして、PLgel MIXED−B(ポリマーラボラトリーズ製)を用いた。検出器にはUV−VIS検出器(島津製作所製:SPD−10Avp)を用いた。
【0268】
NMRの測定は、特に記載のない限りは、測定試料5〜20mgを約0.5mLの重クロロホルムに溶解させて、NMR(バリアン(Varian,Inc.)製、商品名:MERCURY 300)を用いて行った。
【0269】
(高速液体クロマトグラフィー(HPLC))
化合物の純度の指標として、HPLC面積百分率の値を用いた。この値は、特に記載がない限り、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、島津製作所製、商品名:LC−20A)による、254nmにおける値とする。この際、測定する化合物は、0.01〜0.2重量%の濃度になるようにテトラヒドロフラン又はクロロホルムに溶解させ、HPLCに、濃度に応じて1〜10μL注入した。HPLCの移動相には、アセトニトリル及びテトラヒドロフランを用い、1mL/分の流速で、アセトニトリル/テトラヒドロフラン=100/0〜0/100(容積比)のグラジエント分析で流した。カラムは、Kaseisorb LC ODS 2000(東京化成工業製)を用いた。検出器には、フォトダイオードアレイ検出器(島津製作所製、商品名:SPD−M20A)を用いた。
【0270】
(ガラス転移温度の測定)
ガラス転移温度の測定は、DSC(TA Instruments社製、商品名:DSC2920)により行った。各高分子化合物(サンプル、共重合体や重合体)を、200℃まで加熱した後、−50℃まで急冷して30分間保持した。そして、30℃まで温度を上げた後、毎分10℃の昇温速度で300℃まで測定を行った。
【0271】
<合成例1>
(3,10−ジブロモペリレン(化合物CM1a)及び3,9−ジブロモペリレン(化合物CM1b)の混合物の合成)
【0272】
【化60】

【0273】
窒素ガス雰囲気下、1000mlフラスコ中、ペリレン(Aldrich社製、昇華精製グレード、>99.5%品)(25.23g、100mmol)、及び、ニトロベンゼン(800ml)を混合した後、125℃に加熱し、ペリレン全量をニトロベンゼンに溶解させた。その後、そこに、遮光下で臭素(32.9g、206mmol)をニトロベンゼン(85ml)で希釈した溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、反応溶液を同温度で5時間攪拌した後に、室温まで冷却した。
【0274】
次いで、別に用意した2000mlフラスコに、1000mlフラスコの内容物(析出固体と溶液)を移し、攪拌しながらメタノール(500ml)を加え、減圧濾過し、メタノール(1000ml)で洗浄し、減圧しながら乾燥させることにより、黄色結晶(37.9g)を得た。そこに、キシレン(1350ml)を加え、加熱還流下で5時間攪拌した。室温まで冷却し、減圧濾過し、メタノール(100mlで4回)で洗浄し、減圧しながら乾燥させることにより、黄色結晶(30.2g)を得た。再度、そこに、キシレン(1000ml)を加え、加熱還流下で5時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却し、減圧濾過、メタノール(100mlで4回)で洗浄し、減圧しながら乾燥させることにより、黄色結晶(24.6g)を得た。HPLC面積百分率値から求めた純度は99.82%であった。1H−NMRによる解析により、この黄色結晶は、3,10−ジブロモペリレン(化合物CM1a)及び3,9−ジブロモペリレン(化合物CM1b)をおよそ50/50のモル比率で含むことを確認した。得られた黄色結晶の1H−NMRスペクトル(300MHz、THF−d)を図1に示す。
【0275】
<実施例1>(化合物M1a及び化合物M1bの混合物の合成)
【0276】
【化61】

【0277】
アルゴンガス雰囲気下、2000mLフラスコ中、ペリレン(Aldrich社製、昇華精製グレード、7.57g、30mmol)を、N,N−ジメチルホルムアミド(1350ml)と混合し、85℃に加熱して完全に溶解させた後、得られたペリレン溶液を室温まで冷却した。この時、析出は見られなかった。次いで、N−ブロモスクシンイミド(5.33g、30mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(250ml)に溶解させた溶液を、前記ペリレン溶液に遮光下で2時間かけて滴下した。滴下終了後、室温にて4時間攪拌した後に、メタノール(3300mL)に反応溶液をゆっくりと加えたところ、固体が析出した。この固体をろ取し、メタノールで洗浄し、減圧しながら乾燥させることにより、6.89gのオレンジ色粉末を得た。このオレンジ色粉末をトルエン(276ml)に加熱しながら溶解させ、攪拌しながら室温まで冷却することにより晶析した。析出した固体を、ろ取し、ヘキサン(276ml)で洗浄し、減圧しながら乾燥させることにより、中間体M1−1(5.42g)をオレンジ色粉末として得た(収率54.5%)。
【0278】
1H−NMR(300MHz,THF−d) δ(ppm)=8.37(m,3H),8.18(d,1H),8.08(d,1H),7.82(m,1H),7.73(d,2H),7.62(t,1H),7.50(m、2H).
【0279】
アルゴンガス雰囲気下、1000mLフラスコ中、中間体M1−1(5.30g、16mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(7.11g、28mmol)、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.18g、0.32mmol)、酢酸カリウム(9.4g、96mmol)、及び、1,4−ジオキサン(脱水品、480ml)を混合し、アルゴンガスをバブリングした後、オイルバスにより加熱し、1000mLフラスコの内温が70℃に到達した時点で、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.15g、0.16mmol)を加え、更に加熱しながら17時間還流下で攪拌した。反応溶液を室温まで冷却し、不溶物をセライトろ過により除去し、濃縮し、シリカゲルショートカラム(30g−SiO2、450ml−クロロホルム)に通液し、得られた溶液を濃縮した。その後、クロロホルム(55g)を加え溶液を得た後に、よく攪拌した後にメタノール(200ml)を加えたところ、固体が析出した。この固体をろ取し、減圧しながら乾燥させることにより、5.29gのオレンジ色固体を得た。このオレンジ色固体を中圧カラムクロマトグラフィー(シリカゲル1000cc、ヘキサン/クロロホルム=100/0〜50/50)で精製することにより、中間体M1−2(3.33g)を収率55%で得た。HPLC面積百分率値から求めた純度は81.3%であり、他にHPLC面積百分率値から18.6%のペリレンを含んでいることを確認した。
【0280】
1H−NMR(300MHz,THF−d) δ(ppm)=8.73(d,1H),8.36(d,1H),8.29(t,3H),8.08(d,1H),7.72(t,2H),7.50(m,3H),1.44(s,12H).
【0281】
アルゴンガス雰囲気下、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(2,6−ジメチル−4−tert−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(化合物CM2、1.477g、2.00mmol)、及び、トルエン(脱水品、20ml)を混合し、アルゴンガスをバブリングした後に、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(II)(7mg、0.01mmol)、及び、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(20重量%、3.7g、5mmol)を加え、加熱し、還流下で30分間攪拌した。反応溶液に、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(II)(7mg、0.01mmol)を追加した。別途調製した中間体M1−2(0.467g、1.00mmol)をトルエン(脱水品、20ml)に溶解させた溶液を、還流状態の反応溶液へ2.5時間かけてゆっくりと加えた。反応溶液を室温まで冷却した後に、トルエン、及び、テトラヒドロフランで希釈し、シリカゲルパッドに通液し不溶物を除去した。ろ液を濃縮した後、クロロホルム(9g)を加え、加熱還流させた状態で、メタノール(7.5ml)を加え、室温まで冷却したところ固体が析出した。この固体をろ取し、トルエン(25g)に溶解させ、ヘキサン(150ml)を加えることにより晶析することにより、黄色固体(0.43g)を得た。この黄色固体をトルエン(40ml)に溶解させ、シリカゲルショートカラムに通液し、トルエン−ヘキサンで再結晶することにより、中間体M1−3(0.42g)を収率46%で黄色固体として得た。HPLC面積百分率値から求めた純度は97.3%であった。
【0282】
1H−NMR(300MHz,THF−d) δ(ppm)=8.30(m,4H),7.89(d,1H),7.70(d,2H),7.46(m,4H),7.36(d,2H),7.24(m,6H),7.03(m,4H),6.95(d,2H),6.79(d,2H),2.14(s,6H),2.07(s,6H),1.36(s,9H),1.34(s,9H).
【0283】
アルゴンガス雰囲気下、50mlフラスコ中で、中間体M1−3(0.364g,0.40mmol)、及び、クロロホルム(30ml)を混合し、固体が完全に溶解した後に、得られた溶液を0℃に冷却した。そこに、N−ブロモスクシンイミド(0.071g、0.40mmol)を固体で加え、0℃にて4時間攪拌した後に、更に室温で2時間攪拌した。反応溶液に中間体M1−3の残存が見られたので、N−ブロモスクシンイミド(4.3mg)を加え、室温にて1時間攪拌し、再度N−ブロモスクシンイミド(4.3mg)を加え、室温にて1時間攪拌した。反応溶液に10重量%亜硫酸ナトリウム水溶液(5g)を加え、攪拌しながら分液した後、得られた有機層をイオン交換水で2回、飽和食塩水で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。濃縮液をクロロホルム(2g)−メタノール(50ml)で再結晶し、得られた結晶を濾過により取り出した。この結晶にヘキサン(50ml)を加え、よく攪拌した後に、溶解せずに残存した固体を濾過により取り出す操作を2回繰り返すことにより、オレンジ色固体(0.175g)を得た。この固体を中圧カラムクロマトグラフィー(120g−SiO2、トルエン)で精製することにより、オレンジ色固体(0.15g、収率38%)を得た。HPLC面積百分率値から求めた純度は97.3%であった。1H−NMRによる解析により、このオレンジ色固体は、化合物M1a及び化合物M1bの混合物であることを確認した。このオレンジ色固体の1H−NMRスペクトル(300MHz、CDCl3)を図2に示す。
【0284】
<合成例2>(化合物M2a及び化合物M2b混合物の合成)
【0285】
【化62】

【0286】
アルゴンガス雰囲気下、200mlフラスコ中、合成例1において合成した化合物CM1a及びCM1bの混合物(1.025g、2.5mmol)、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル−N−(4’−tert−ブチルフェニル)−N−フェニルアニリン(化合物CM3、2.334g、5.125mmol)、及び、脱水トルエン(50ml)を混合した後に、得られた溶液を80℃に加熱し、そこに、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(35mg、0.05mmol)を加えた。得られた溶液に、100℃に加熱しながら、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(20重量%、9.2ml、12.5mmol)を10分間かけて滴下した後、110℃に加熱し、約6時間加熱還流下で攪拌した。反応終了後、そこに、トルエン(500ml)を加え、室温まで冷却した。反応溶液から水層を除去した後、イオン交換水(200ml)で2回洗浄し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウム(15g)で乾燥させた後に、シリカゲルショートカラムに通液してから、溶媒をエバポレーターにより留去し、オレンジ色固体を得た。この固体をトルエン(約30ml)に加熱しながら溶解させた後に、室温まで冷却しながら、メタノール(180ml)へゆっくりと加えたところ、固体が析出した。この固体を、ろ取し、減圧しながら乾燥させることにより、2.06gのオレンジ色固体を得た。これを中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(120g−SiO2、クロロホルム)により精製し、再結晶(トルエン−メタノール)することにより、黄色結晶(0.93g、収率41%)を得た。HPLC面積百分率値から求めた純度は99.3%であった。1H−NMRによる解析により、この黄色結晶は、化合物M2a及び化合物M2bの混合物であることを確認した。この黄色結晶の1H−NMRスペクトル(300MHz、THF−d)を図3に示す。
【0287】
<実施例2>(化合物M3a及び化合物M3bの混合物の合成)
【0288】
【化63】

【0289】
アルゴンガス雰囲気下、100mlフラスコ中、合成例2において合成した化合物M2a及び化合物M2bの混合物(0.771g、0.85mmol)をクロロホルム(25ml)に室温にて溶解させた。得られた溶液に、N−ブロモスクシンイミド(0.303g、1.70mmol)を加え、室温にて4時間攪拌して反応させた。反応終了後、メタノール(200ml)に反応溶液を加えたところ、固体が析出した。この固体をろ取した後に、中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(120g−SiO2、トルエン)により精製し、再結晶(トルエン−メタノール)し、更に、ヘキサンを用いて3回分散させ撹拌ろ過し、更に再結晶(トルエン−ヘキサン)することにより、黄色結晶(0.51g、収率56%)を得た。HPLC面積百分率値から求めた純度は99.4%であった。1H−NMRによる解析により、この黄色結晶は、化合物M3a及び化合物M3bの混合物であることを確認した。この黄色結晶の1H−NMRスペクトル(300MHz、CDCl3)を図4に示す。
【0290】
<実施例3>(高分子化合物P1の合成)
2,7−ビス(4,4,5,5-テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオフチルフルオレン(0.4832g、0.75mmol)、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン(0.3813g、0.67mmol)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(2,6−ジメチル−4−tert−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(0.0443g、0.06mmol)、実施例1で合成した化合物M1a及び化合物M1bの混合物(0.0149g、0.01mmol)、及び、トルエン(16mL)を混合してモノマー溶液を調製した。窒素ガス雰囲気下、モノマー溶液を加熱し、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(1.1mg)を加えた後、100℃で20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(2.5mL)を約30分間かけて滴下した。テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の滴下開始から4時間、100℃で攪拌した。次に、得られた溶液に、フェニルボロン酸(9.3mg)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(1.1mg)、及び、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(2.5mL)を添加して、更に17時間攪拌した。
【0291】
反応溶液から水層を除いた後、そこに、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(0.42g)、及び、イオン交換水(8mL)を加え、85℃で2時間攪拌した。得られた溶液において、有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水(2回)、3重量%酢酸水溶液(2回)、イオン交換水(2回)の順番で洗浄した。
【0292】
有機層をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後に乾燥させ固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに溶液を通液し、通液された溶出液をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後、乾燥させた。この固体(以下、「高分子化合物P1」と言う。)の収量は0.517gであった。また、高分子化合物P1のポリスチレン換算の数平均分子量は1.1×105であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は3.6×105であり、ガラス転移温度Tgは82℃であった。
【0293】
高分子化合物P1は、表8に示す構造、比率(モル比)の構成単位からなる重合体であると、原料の構造、仕込み比率から推測される。
【0294】
【表8】

【0295】
<実施例4>(高分子化合物P2の合成)
2,7−ビス(4,4,5,5-テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(0.4715g、0.73mmol)、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン(0.3721g、0.66mmol)、実施例1で合成した化合物M1a及び化合物M1bの混合物(0.0733g、0.07mmol)、及び、トルエン(16mL)を混合してモノマー溶液を調製した。窒素ガス雰囲気下、モノマー溶液を加熱し、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(1.0mg)を加えた後、100℃で20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(2.5mL)を約30分間かけて滴下した。テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の滴下開始から4時間、100℃で攪拌した。次に、得られた溶液に、フェニルボロン酸(9.0mg)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(1.0mg)、及び、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(2.5mL)を追加して、更に17時間攪拌した。
【0296】
反応溶液から水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(0.41g)、及び、イオン交換水(8mL)を加え、85℃で2時間攪拌した。得られた溶液において、有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水(2回)、3重量%酢酸水溶液(2回)、イオン交換水(2回)の順番で洗浄した。
【0297】
有機層をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後、乾燥させ、固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに溶液を通液し、通液された溶出液をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後、乾燥させた。この固体(以下、「高分子化合物P2」と言う。)の収量は0.538gであった。また、高分子化合物P2のポリスチレン換算の数平均分子量は1.2×105であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は3.9×105であり、ガラス転移温度Tgは95℃であった。
【0298】
高分子化合物P2は、表9に示す構造、比率(モル比)の構成単位からなる重合体であると、原料の構造、仕込み比率から推測される。
【0299】
【表9】

【0300】
<実施例5>(高分子化合物P3の合成)
2,7−ビス(4,4,5,5-テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオフチルフルオレン(1.6469g、2.55mmol)、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン(1.3285g、2.35mmol)、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−N−(2,6−ジメチル−4−tert−ブチルフェニル)−アミン(0.746g、0.15mmol)、実施例2で合成した化合物M3a及び化合物M3bの混合物(0.0566g、0.05mmol)、及び、トルエン(44mL)を混合して、モノマー溶液を調製した。窒素ガス雰囲気下、このモノマー溶液を加熱し、そこに、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(1.9mg)を加えた後、100℃で20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(8.7mL)を約60分間かけて滴下した。テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の滴下開始から5時間、100℃で攪拌した。次に、得られた溶液に、フェニルボロン酸(31.5mg)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(1.9mg)、及び、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(8.7mL)を追加して、更に17時間攪拌した。
【0301】
反応溶液から水層を除いた後、そこに、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(1.42g)、及び、イオン交換水(28mL)を加え、85℃で2時間攪拌した。得られた溶液において、有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水(2回)、3重量%酢酸水溶液(2回)、イオン交換水(2回)の順番で洗浄した。
【0302】
有機層をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後乾燥させ固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに溶液を通液し、通液された溶出液をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後乾燥させた。この固体(以下、「高分子化合物P3」と言う。)の収量は1.854gであった。また、高分子化合物P3のポリスチレン換算の数平均分子量は2.2×105であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は7.2×105であり、ガラス転移温度Tgは86℃であった。
【0303】
高分子化合物P3は、表10に示す構造、比率(モル比)の構成単位からなる重合体であると、原料の構造、仕込み比率から推測される。
【0304】
【表10】

【0305】
<実施例6>(高分子化合物P4の合成)
2,7−ビス(4,4,5,5-テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオフチルフルオレン(1.2056g、1.87mmol)、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン(1.0043g、1.77mmol)、実施例3で合成した化合物M3a及び化合物M3bの混合物(0.1035g、0.09mmol)、及び、トルエン(39mL)を混合してモノマー溶液を調製した。窒素ガス雰囲気下、このモノマー溶液を加熱し、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(1.3mg)を加えた後、100℃で20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(6.3mL)を約60分間かけて滴下した。テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の塩基滴下開始から5時間、100℃で攪拌した。次に、得られた溶液に、フェニルボロン酸(23mg)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(1.3mg)、及び、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(6.3mL)を追加して、更に18時間攪拌した。
【0306】
反応溶液から水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(1.04g)、及び、イオン交換水(21mL)を加え、85℃で2時間攪拌した。得られた溶液において、有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水(2回)、3重量%酢酸水溶液(2回)、イオン交換水(2回)の順番で洗浄した。
【0307】
有機層をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後乾燥させ固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに溶液を通液し、通液された溶出液をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後乾燥させた。この固体(以下、「高分子化合物P4」と言う。)の収量は1.367gであった。また、高分子化合物P4のポリスチレン換算の数平均分子量は1.8×105であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は5.3×105であり、ガラス転移温度Tgは86℃であった。
【0308】
高分子化合物P4は、表11に示す構造、比率(モル比)の構成単位からなる重合体であると、原料の構造、仕込み比率から推測される。
【0309】
【表11】

【0310】
<合成例3>(高分子化合物CP1の合成)
窒素ガス雰囲気下、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(5.20g、9.80mmol)、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−N−(4−sec−ブチルフェニル)−アミン(4.50g、9.80mmol)、酢酸パラジウム2.2mg、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン(15.1mg)、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(商品名:Aliquat(登録商標)336、アルドリッチ製)(0.91g)、及び、トルエン(70mL)を混合し、105℃に加熱した。得られた溶液に、2M炭酸ナトリウム水溶液(19mL)を滴下し、4時間還流させた。その後、そこに、フェニルボロン酸(121mg)を加え、更に3時間還流させた。次いで、ジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え、80℃で4時間撹拌した。冷却後、水(60mL)で3回、3重量%酢酸水溶液(60ml)で3回、水(60mL)で3回洗浄し、アルミナカラム、シリカゲルカラムを順番に通すことにより精製した。得られたトルエン溶液をメタノール(3000mL)に滴下し、3時間撹拌した後、得られた固体を取り出し乾燥させた。この固体(以下、「高分子化合物CP1」と言う。)の収量は5.25gであった。また、高分子化合物CP1のポリスチレン換算の数平均分子量は8.1×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は3.4×105であった。
【0311】
高分子化合物CP1は、表12に示す構造、比率(モル比)の構成単位からなる交互重合体であると、原料の構造、仕込み比率から推測される。
【0312】
【表12】

【0313】
<合成例4>(高分子化合物CP2の合成)
2,7−ビス(4,4,5,5-テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオフチルフルオレン(2.267g、3.529mmol)、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン(1.703g、3.105mmol)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(2,6−ジメチル−4−tert−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(0.261g、0.353mmol)、合成例1で合成した化合物CM1a及び化合物CMb1の混合物(0.029g、0.071mmol)、及び、トルエン(61mL)を混合してモノマー溶液を調製した。窒素ガス雰囲気下、このモノマー溶液を加熱し、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(2.5mg)を加えた後、100℃で20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(12mL)を60分かけて滴下した。テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の滴下開始から4時間、100℃で攪拌した。次に、得られた溶液に、フェニルボロン酸(43.5mg)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(2.6mg)、及び、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(12mL)を添加して、更に19.5時間攪拌した。
【0314】
反応溶液から水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(1.96g)、及び、イオン交換水(39mL)を加え、85℃で2.5時間攪拌した。得られた溶液において、有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水(2回)、3重量%酢酸水溶液(2回)、イオン交換水(2回)の順番で洗浄した。
【0315】
有機層をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後に乾燥させ固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに溶液を通液し、通液された溶出液をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後乾燥させた。この固体(以下、「高分子化合物CP2」と言う。)の収量は2.578gであった。また、高分子化合物CP2のポリスチレン換算の数平均分子量は2.0×105、ポリスチレン換算の重量平均分子量は6.4×105であり、ガラス転移温度Tgは85℃であった。
【0316】
高分子化合物CP2は、表13に示す構造、比率(モル比)の構成単位からなる重合体であると、原料の構造、仕込み比率から推測される。
【0317】
【表13】

【0318】
<合成例5>(高分子化合物CP3の合成)
2,7−ビス(4,4,5,5-テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオフチルフルオレン(2.342g、3.644mmol)、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン(1.759g、3.207mmol)、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−N−(2,6−ジメチル−4−tert−ブチルフェニル)−アミン(0.178g、0.364mmol)、合成例1で合成した化合物CM1a及び化合物CMb1の混合物(0.030g、0.073mmol)、及び、トルエン(61mL)を混合して、モノマー溶液を調製した。窒素ガス雰囲気下、このモノマー溶液を加熱し、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(2.6mg)を加えた後、100℃で20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(12.4mL)を60分かけて滴下した。テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の滴下開始から4.5時間、100℃で攪拌した。次に、得られた溶液に、フェニルボロン酸(44.9mg)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(2.6mg)、及び、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(12.4mL)を添加して、更に17.5時間攪拌した。
【0319】
反応溶液から水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(2.02g)、及び、イオン交換水(40mL)を加え85℃で2時間攪拌した。得られた溶液において、有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水(2回)、3重量%酢酸水溶液(2回)、イオン交換水(2回)の順番で洗浄した。
【0320】
有機層をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後に乾燥させ固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに溶液を通液し、通液された溶出液をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後に乾燥させた。この固体(以下、「高分子化合物CP3」と言う。)の収量は2.592gであった。また、高分子化合物CP3のポリスチレン換算の数平均分子量は2.2×105であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は6.8×105であり、ガラス転移温度Tgは、83℃であった。
【0321】
高分子化合物CP3は、表14に示す構造、比率(モル比)の構成単位からなる重合体であると、原料の構造、仕込み比率から推測される。
【0322】
【表14】

【0323】
<実施例7>(有機発光素子DP1の作製)
スパッタ法により45nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(エイチ・シー・スタルク社、CL EVIOS P)をスピンコートにより約65nmで成膜し、ホットプレート上で200℃、10分間乾燥させた。次に、高分子化合物CP1をキシレン(関東化学社製、電子工業用(ELグレード))に0.7重量%の濃度で溶解させた。得られたキシレン溶液を用いて、スピンコート法により前記膜の上に高分子化合物CP1を厚み20nmとなるように成膜した後、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下で、180℃、60分間乾燥させた。次いで、高分子化合物P1の1.4重量%キシレン溶液を調製した。このキシレン溶液を高分子化合物CP1膜上に約80nmの厚みとなるようにスピンコート法により成膜した後、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下で、130℃、10分間乾燥させ発光層とした。1.0×10-4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、高分子化合物P1膜上にバリウムを約5nm、次いで、バリウムの層の上にアルミニウムを約72nm蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止することにより、有機発光素子(以下、「有機発光素子DP1」と言う。)を作製した。有機発光素子DP1について、東京システム開発社製 OLED TEST SYSTEMを用いてに0Vから12Vまで電圧を印加して素子を発光させ、発光輝度、効率、色度を測定したところ、輝度1000cd/m2において、駆動電圧6.2V、発光効率18.2cd/A、CIE色度座標(0.34,0.61)であり、良好な緑色発光を示した。また、初期輝度を8000cd/m2に設定し、定電流駆動したところ、輝度50%減までに要した時間、すなわち、輝度半減寿命は、496時間であった。これらの結果を表15に示す。
【0324】
<実施例8>(有機発光素子DP2の作製)
実施例7において、高分子化合物P1の1.4重量%キシレン溶液に代えて、高分子化合物P2の1.3重量%キシレン溶液を使用した以外は同様にして、有機発光素子(以下、「有機発光素子DP2」と言う。)を作製した。有機発光素子DP2について、実施例7と同様にして、発光輝度、効率、電圧、色度を測定したところ、輝度1000cd/m2において、駆動電圧6.2V、発光効率15.5cd/A、CIE色度座標(0.38,0.60)であり、良好な緑色発光を示した。また、初期輝度8000cd/m2での輝度半減寿命は、486時間であった。これらの結果を表15に示す。
【0325】
<比較例1>(有機発光素子DCP2の作製)
実施例7において、高分子化合物P1の1.4重量%キシレン溶液に代えて、高分子化合物CP2の1.1重量%キシレン溶液を使用した以外は同様にして、有機発光素子(以下、「有機発光素子DCP2」と言う。)を作製した。有機発光素子DCP2について、実施例7と同様にして、発光輝度、効率、電圧、色度を測定したところ、輝度1000cd/m2において、駆動電圧7.1V、発光効率13.7cd/A、CIE色度座標(0.25,0.62)であり、良好な緑色発光を示した。また、初期輝度8000cd/m2での輝度半減寿命は、403時間であった。これらの結果を表15に示す。
【0326】
【表15】

【0327】
高分子化合物P1及び高分子化合物P2は、高分子化合物CP2の有する構成単位(1)と構成単位(3)とが直接結合した構成連鎖を第1構成単位として有する高分子化合物である。表15に示すとおり、第1構成単位を有することで、高分子化合物P1を用いた有機発光素子DP1、及び、高分子化合物P2を用いた有機発光素子DP2は、高分子化合物CP2を用いた有機発光素子DCP2と比較して、高い発光効率を示し、また、駆動時の輝度安定性に優れ、かつ、駆動電圧が低い発光素子である。更に、第3構成単位を含む高分子化合物P1を用いた有機発光素子DP1は、有機発光素子DP2と比較してより高い発光効率を与えた。
【0328】
<実施例9>(有機発光素子DP3の作製)
実施例7において、高分子化合物P1の1.4重量%キシレン溶液に代えて、高分子化合物P3の1.0重量%キシレン溶液を使用した以外は同様にして、有機発光素子(以下、「有機発光素子DP3」と言う。)を作製した。有機発光素子DP3について、実施例7と同様にして、発光輝度、効率、電圧、色度を測定したところ、輝度1000cd/m2において、駆動電圧5.8V、発光効率7.5cd/A、CIE色度座標(0.29,0.64)であり、良好な緑色発光を示した。これらの結果を表16に示す。
【0329】
<実施例10>(有機発光素子DP4の作製)
実施例7において、高分子化合物P1の1.4重量%キシレン溶液に代えて、高分子化合物P4の1.2重量%キシレン溶液を使用した以外は同様にして、有機発光素子(以下、「有機発光素子DP4」と言う。)を作製した。有機発光素子DP4について、実施例7と同様にして、発光輝度、効率、電圧、色度を測定したところ、輝度1000cd/m2において、駆動電圧5.9V、発光効率11.8cd/A、CIE色度座標(0.31,0.63)であり、良好な緑色発光を示した。これらの結果を表16に示す。
【0330】
<比較例2>(有機発光素子DCP3の作製)
実施例7において、高分子化合物P1の1.4重量%キシレン溶液に代えて、高分子化合物CP3の1.0重量%キシレン溶液を使用した以外は同様にして、有機発光素子(以下、「有機発光素子DCP3」と言う。)を作製した。有機発光素子DCP3について、実施例7と同様にして、発光輝度、効率、電圧、色度を測定したところ、輝度1000cd/m2において、駆動電圧6.7V、発光効率2.1cd/A、CIE色度座標(0.26,0.63)であり、良好な緑色発光を示した。これらの結果を表16に示す。
【0331】
【表16】

【0332】
高分子化合物P3及び高分子化合物P4は、高分子化合物CP3の有する構成単位(1)と構成単位(3)とが直接結合した構成連鎖を第1構成単位として有する高分子化合物である。表16に示すとおり、第1構成単位を有することで、高分子化合物P3を用いた有機発光素子DP3、及び、高分子化合物P4を用いた有機発光素子DP4は、高分子化合物CP3を用いた有機発光素子DCP3と比較して、高い発光効率を示し、駆動電圧が低い発光素子であることが分かる。
【0333】
<実施例11>(高分子化合物P6の合成)
2,7−ビス(4,4,5,5-テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ビス(4−n−ヘキシルフェニル)フルオレン(1.5630g、2.12mmol)、2,7−ビス(4,4,5,5-テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(0.5288g、0.82mmol)、9,9−ビス(3−n−ヘキシルフェニル)−2,7−ジブロモフルオレン(1.7048g、2.64mmol)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(2,6−ジメチル−4−tert−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(0.1737g、0.24mmol)、実施例1で合成した化合物M1a及び化合物M1bの混合物(0.0581g、0.06mmol)、及び、トルエン(64mL)を混合してモノマー溶液を調製した。窒素ガス雰囲気下、モノマー溶液を加熱し、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(2.1mg)を加えた後、100℃で20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(10.0mL)を約60分間かけて滴下した。テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の滴下開始から4.5時間、100℃で攪拌した。次に、得られた溶液に、フェニルボロン酸(36.3mg)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(1.1mg)、及び、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(10.0mL)を追加して、更に24時間攪拌した。
【0334】
反応溶液から水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(1.63g)、及び、イオン交換水(33mL)を加え、85℃で2時間攪拌した。得られた溶液において、有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水(3回)、3重量%酢酸水溶液(3回)、イオン交換水(3回)の順番で洗浄した。
【0335】
有機層をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後、乾燥させ、固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに溶液を通液し、通液された溶出液をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後、乾燥させた。この固体(以下、「高分子化合物P6」と言う。)の収量は2.480gであった。また、高分子化合物P6のポリスチレン換算の数平均分子量は9.9×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は3.0×105であり、ガラス転移温度Tgは129℃であった。
【0336】
高分子化合物P6は、表17に示す構造、比率(モル比)の構成単位からなる重合体であると、原料の構造、仕込み比率から推測される。
【0337】
【表17】

【0338】
<合成例6>(高分子化合物CP4の合成)
2,7−ビス(4,4,5,5-テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ビス(4−n−ヘキシルフェニル)フルオレン(1.7965g、2.43mmol)、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(0.5016g、0.95mmol)、9,9−ビス(3−n−ヘキシルフェニル)−2,7−ジブロモフルオレン(1.9159g、2.97mmol)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(2,6−ジメチル−4−tert−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(0.2495g、0.34mmol)、合成例1で合成した化合物CM1a及び化合物CM1bの混合物(0.0277g、0.07mmol)、及び、トルエン(73mL)を混合してモノマー溶液を調製した。アルゴンガス雰囲気下、このモノマー溶液を加熱し、そこに、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(2.4mg)を加えた後、100℃で20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(10.9mL)を約60分間かけて滴下した。テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の滴下開始から3時間、100℃で攪拌した。次に、得られた溶液に、フェニルボロン酸(41.6mg)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(1.3mg)、及び、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(11.5mL)を追加して、更に16.5時間攪拌した。
【0339】
反応溶液から水層を除いた後、そこに、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(1.88g)、及び、イオン交換水(38mL)を加え、85℃で2時間攪拌した。得られた溶液において、有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水(3回)、3重量%酢酸水溶液(3回)、イオン交換水(3回)の順番で洗浄した。
【0340】
有機層をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後乾燥させ固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに溶液を通液し、通液された溶出液をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後乾燥させた。この固体(以下、「高分子化合物CP4」と言う。)の収量は2.326gであった。また、高分子化合物CP4のポリスチレン換算の数平均分子量は1.1×105であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は2.5×105であり、ガラス転移温度Tgは132℃であった。
【0341】
高分子化合物CP4は、表18に示す構造、比率(モル比)の構成単位からなる重合体であると、原料の構造、仕込み比率から推測される。
【0342】
【表18】

【0343】
<合成例7>(高分子化合物CP5の合成)
窒素雰囲気下、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(21.218g、40.01mmol)、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(5.487g、10.00mmol)、N,N−ビス(4-ブロモフェニル)-N’,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−1,4−ベンゼンジアミン(16.377g、23.99mmol)、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−3−アミン(2.575g、6.00mmol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:Aliquat(登録商標)336、アルドリッチ社製)(5.17g)と溶媒となるトルエン(400mL)の混合物を約80℃に加熱した後に、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(56.2mg)、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(109ml)を加え、オイルバスで更に加熱しながら、還流下で、約6時間攪拌した。
【0344】
次に、ベンゼンボロン酸(0.49g)、を加え、オイルバスで更に加熱しながら、還流下で、約2時間攪拌した。
【0345】
水層を分液により除去した後に、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(24.3g)をイオン交換水(240mL)に溶解した溶液を加え、85℃に加熱しながら2時間攪拌した。
【0346】
有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水(約520mL)で2回、3重量%酢酸水溶液(約52mL)で2回、イオン交換水(約520mL)で2回、順次洗浄した。有機層をメタノールに滴下し高分子化合物を沈殿させ、ろ取し、乾燥させることにより、固体を得た。この固体をトルエン(約1240mL)に溶解させ、予めトルエンを通液したシリカゲルカラム及びアルミナカラムに通液し、得られた溶液をメタノール(約6200mL)に滴下し高分子化合物を沈殿させ、ろ取、乾燥させることにより、高分子化合物CP5(26.23g)を得た。
【0347】
高分子化合物CP5のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、Mn=7.8×10、Mw=2.6×10であり、ガラス転移温度は115℃であった。この高分子化合物CP5は、表19に示す構造、比率(モル比)の構成単位からなる重合体であると、原料の構造、仕込み比率から推測される。
【0348】
【表19】

【0349】
<実施例12>(有機発光素子DP6の作製)
スパッタ法により45nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、ポリチオフェン・スルホン酸系の正孔注入剤であるAQ−1200(Plextronics社製)をスピンコートにより約65nmで成膜し、ホットプレート上で170℃、15分間乾燥させた。次に、高分子化合物CP5をキシレン(関東化学社製、電子工業用(ELグレード))に0.7重量%の濃度で溶解させた。得られたキシレン溶液を用いて、スピンコート法により前記膜の上に高分子化合物CP5を厚み20nmとなるように回転速度1890rpmの回転速度で成膜した後、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下で、180℃、60分間乾燥させた。次いで、高分子化合物P6の1.6重量%キシレン溶液を調製した。このキシレン溶液を高分子化合物CP5膜上に約80nmの厚みとなるようにスピンコート法により回転速度2800rpm成膜した後、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下で、130℃、10分間乾燥させ発光層とした。1.0×10−4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、高分子化合物P6膜上にフッ化ナトリウムを約3nm、次いで、フッ化ナトリウムの層の上にアルミニウムを約80nm蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止することにより、有機発光素子(以下、「有機発光素子DP6」と言う。)を作製した。有機発光素子DP6について、システム技研株式会社製 OLED 25ch−IVL測定装置を用いてに0Vから12Vまで電圧を印加して素子を発光させ、発光輝度、効率、色度を測定したところ、輝度1000cd/mにおいて、駆動電圧4.4V、発光効率21.8cd/A、CIE色度座標(0.36,0.59)であり、良好な緑色発光を示した。また、初期輝度を8000cd/mに設定し、定電流駆動したところ、輝度80%(つまり、初期輝度から輝度20%減)までに要した時間は110時間であった。これらの結果を表20に示す。
【0350】
<比較例3>(有機発光素子DCP4の作製)
実施例12において、高分子化合物P6の1.6重量%キシレン溶液に代えて、高分子化合物CP4の1.6重量%キシレン溶液を使用し、スピンコートの回転数を2800rpmから2380rpmに変更した以外は同様にして、有機発光素子(以下、「有機発光素子DCP4」と言う。)を作製した。有機発光素子DCP4について、実施例12と同様にして、発光輝度、効率、電圧、色度を測定したところ、輝度1000cd/m2において、駆動電圧4.8V、発光効率18.2cd/A、CIE色度座標(0.28,0.61)であり、良好な緑色発光を示した。また、初期輝度を8000cd/m2に設定し、定電流駆動したところ、輝度80%(つまり、初期輝度から輝度20%減)までに要した時間は89時間であった。これらの結果を表20に示す。
【0351】
【表20】

【0352】
高分子化合物P6は、高分子化合物CP4の有する構成単位(1)と構成単位(3)とが直接結合した構成連鎖を第1構成単位として有する高分子化合物である。表20に示すとおり、第1構成単位を有することで、高分子化合物P6を用いた有機発光素子DP6は、高分子化合物CP4を用いた有機発光素子DCP4と比較して、高い発光効率を示し、また、駆動時の輝度安定性に優れかつ、駆動電圧が低い発光素子である。
【0353】
<実施例13>(高分子化合物P7の合成)
本実施例において、下記化合物MC−4を燐光発光性構成単位の元となる原料単量体として用いた。なお、化合物MC−4は、特開2001−105701号公報に記載の方法に従って合成した。
【0354】
【化64】

(化合物MC−4)
【0355】
2,7−ビス(4,4,5,5-テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ビス(4−n−ヘキシルフェニル)フルオレン(0.7977g、1.08mmol)、2,7−ビス(4,4,5,5-テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(0.2699g、0.42mmol)、9,9−ビス(3−n−ヘキシルフェニル)−2,7−ジブロモフルオレン(0.8631g、1.34mmol)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(2,6−ジメチル−4−tert−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(0.1108g、0.15mmol)、実施例1で合成した化合物M1a及び化合物M1bの混合物(0.0047g、0.0048mmol)、化合物MC−4(0.0113g、0.0060mmol)、及び、トルエン(47mL)を混合してモノマー溶液を調製した。窒素ガス雰囲気下、モノマー溶液を加熱し、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(1.1mg)を加えた後、100℃で20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(5.1mL)を約25分間かけて滴下した。テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の滴下開始から3.5時間、100℃で攪拌した。次に、得られた溶液に、フェニルボロン酸(36.9mg)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(1.1mg)、及び、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(5.1mL)を添加して、更に18.5時間攪拌した。
【0356】
反応溶液から水層を除いた後、そこに、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(0.42g)、及び、イオン交換水(8mL)を加え、85℃で2.5時間攪拌した。得られた溶液において、有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水(2回)、3重量%酢酸水溶液(2回)、イオン交換水(2回)の順番で洗浄した。
【0357】
有機層をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後に乾燥させ固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに溶液を通液し、通液された溶出液をメタノールに滴下したところ、固体が沈殿した。この固体を濾過後、乾燥させた。この固体(以下、「高分子化合物P7」と言う。)の収量は1.278gであった。また、高分子化合物P7のポリスチレン換算の数平均分子量は1.4×105であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は4.7×105であった。
【0358】
高分子化合物P7は、表21に示す構造、比率(モル比)の構成単位からなる重合体であると、原料の構造、仕込み比率から推測される。
【0359】
【表21】

【0360】
<実施例14>(有機発光素子DP7の作製)
スパッタ法により45nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、ポリチオフェン・スルホン酸系の正孔注入剤であるAQ−1200(Plextronics社製)をスピンコートにより約65nmで成膜し、ホットプレート上で170℃、15分間乾燥させた。次に、高分子化合物CP5をキシレン(関東化学社製、電子工業用(ELグレード))に0.7重量%の濃度で溶解させた。得られたキシレン溶液を用いて、スピンコート法により前記膜の上に高分子化合物CP5を厚み20nmとなるように回転速度1890rpmの回転速度で成膜した後、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下で、180℃、60分間乾燥させた。次いで、高分子化合物P7の1.4重量%キシレン溶液を調製した。このキシレン溶液を高分子化合物CP5膜上に約80nmの厚みとなるようにスピンコート法により回転速度2910rpm成膜した後、酸素濃度及び水分濃度が10ppm以下(重量基準)の窒素雰囲気下で、130℃、10分間乾燥させ発光層とした。1.0×10−4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、高分子化合物P7膜上にフッ化ナトリウムを約3nm、次いで、フッ化ナトリウムの層の上にアルミニウムを約80nm蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止することにより、有機発光素子(以下、「有機発光素子DP7」と言う。)を作製した。有機発光素子DP7について、システム技研株式会社製 OLED 25ch−IVL測定装置を用いてに0Vから12Vまで電圧を印加して素子を発光させ、発光輝度、効率、色度を測定したところ、輝度1000cd/m2において、駆動電圧7.5V、発光効率12.4cd/A、白色発光を示した。図5に有機発光素子DP7の1000cd/mにおける発光スペクトルを示す。また、初期輝度8000cd/m2で500時間定駆動した際の輝度維持率は、60%であった。
【0361】
高分子化合物P7は、構成単位(1)と構成単位(3)とが直接結合した構成連鎖を第1構成単位として有する高分子化合物であり、かつ燐光発光性構成単位を含む高分子化合物である。図5に示すとおり、高分子化合物P7を用いて得られた有機発光素子DP7のELスペクトルは、420〜470nm付近の青色領域、500〜550nm付近の緑色領域、600〜650nm付近の赤色領域の各領域に発光スペクトルを有することから、本発明の高分子化合物は、その好ましい態様の一つにおいて、高効率、長寿命であり、かつ、良好な白色発光を示す発光素子を与え得るものであることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物の残基を構成単位として含む高分子化合物。
【化1】

(1)
[式(1)中、
nは1から4の整数であり、
m及びmmはそれぞれ独立に0又は1であり、
Ar1はアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表し、
Ar2及びAr4はそれぞれ独立にアリーレン基、2価の芳香族複素環基、又は、アリーレン基及び2価の芳香族複素環基からなる群より選ばれる同一又は異なる基が2以上連結した2価の基を表し、
Ar3、Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ独立にアリール基又は1価の芳香族複素環基を表す。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7はアルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる一種又は複数種の置換基を有していてもよい。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7で示される基のうち、同一の窒素原子に結合する基同士が、単結合、又は、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−N(RA)−、−C(=O)−N(RA)−若しくは−C(RA)(RA)−で表される基を介して結合していてもよい。
Aはアルキル基、アリール基又は1価の芳香族複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RAが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1a)又は下記一般式(1b)で表される化合物である請求項1に記載の高分子化合物。
【化2】

(1a)
【化3】

(1b)
[式(1a)及び(1b)中、m、mm、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7は前記と同じ意味を表す。na1、na2、na3、na4、nb1、nb2、nb3及びnb4はそれぞれ独立に0又は1である。但し、na1、na2、na3及びna4の少なくとも1個は1であり、nb1、nb2、nb3及びnb4の少なくとも1個は1である。m、mm、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7の各々が複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項3】
na1及びnb1が1であり、かつ、na3、na4、nb3及びnb4が0である請求項2に記載の高分子化合物。
【請求項4】
na2及びnb2が0である請求項3に記載の高分子化合物。
【請求項5】
mが1であり、かつ、mmが0である請求項4に記載の高分子化合物。
【請求項6】
更に、下記一般式(2)で表される構成単位を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【化4】

(2)
[式(2)中、
2a及びR2bはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、又は、1価の芳香族複素環基を表すか、R2aとR2bとが互いに結合し一体となって2価の基を表す。
式(2)で示される構成単位は、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、−N(RA2で表される基、シアノ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる一種又は複数種の置換基を有していてもよい。RAは前記と同じ意味を表す。]
【請求項7】
前記一般式(1)で表される化合物の残基からなる構成単位の含有量が、
前記一般式(1)で表される化合物の残基からなる構成単位、及び、前記一般式(2)で表される構成単位の含有量の合計に対して、0.1モル%以上20モル%以下である、請求項6に記載の高分子化合物。
【請求項8】
前記一般式(1)で表される化合物の残基からなる構成単位、及び、前記一般式(2)で表される構成単位の含有量の合計が、前記高分子化合物の総量に対して、80質量%以上である、請求項6又は7に記載の高分子化合物。
【請求項9】
更に、下記一般式(3)で表される構成単位を含む請求項6に記載の高分子化合物。
【化5】

(3)
[式(3)中、
k及びkkはそれぞれ独立に0又は1であり、
Ar11、Ar12、Ar13及びAr14はそれぞれ独立にアリーレン基、2価の芳香族複素環基、又は、アリーレン基及び2価の芳香族複素環基からなる群より選ばれる同一又は異なる基が2以上連結した2価の基を表し、
Ar15、Ar16及びAr17はそれぞれ独立にアリール基又は1価の芳香族複素環基を表す。
Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16及びAr17はアルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる一種又は複数種の置換基を有していてもよい。
Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16及びAr17で示される基のうち、同一の窒素原子に結合する基同士が、単結合、又は、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−N(RA)−、−C(=O)−N(RA)−若しくは−C(RA)(RA)−で表される基を介して結合していてもよい。
Aは前記と同じ意味を表す。]
【請求項10】
前記一般式(1)で表される化合物の残基からなる構成単位の含有量が、
前記一般式(1)で表される化合物の残基からなる構成単位、前記一般式(2)で表される構成単位、及び、前記一般式(3)で表される構成単位の含有量の合計に対して、0.1モル%以上15モル%以下である、請求項9に記載の高分子化合物。
【請求項11】
前記一般式(1)で表される化合物の残基からなる構成単位、前記一般式(2)で表される構成単位、及び、前記一般式(3)で表される構成単位の含有量の合計が、前記高分子化合物の総量に対して、80質量%以上である、請求項9又は10に記載の高分子化合物。
【請求項12】
前記一般式(1a)で表される化合物の残基を構成単位として含み、かつ、前記一般式(1b)で表される化合物の残基を構成単位として含む、請求項2〜11のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項13】
更に、燐光発光性化合物から誘導される構成単位を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の高分子化合物と、正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料とを含有する組成物。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の高分子化合物と、溶媒とを含有する組成物。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の高分子化合物と、溶媒と、正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料とを含有する組成物。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の高分子化合物又は請求項14に記載の組成物を含有する有機薄膜。
【請求項18】
請求項15又は16に記載の組成物を用いて製造される有機薄膜。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の有機薄膜を有する有機半導体素子。
【請求項20】
請求項17又は18に記載の有機薄膜を有する有機発光素子。
【請求項21】
請求項20に記載の有機発光素子を有する面状光源。
【請求項22】
請求項20に記載の有機発光素子を有する表示装置。
【請求項23】
下記一般式(Ma)又は下記一般式(Mb)で表される化合物。
【化6】

(Ma)
【化7】

(Mb)
[式(Ma)及び(Mb)中、
m及びmmはそれぞれ独立に0又は1であり、
Ar1はアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表し、
Ar2及びAr4はそれぞれ独立にアリーレン基、2価の芳香族複素環基、又は、アリーレン基及び2価の芳香族複素環基からなる群より選ばれる同一又は異なる基が2以上連結した2価の基を表し、
Ar3、Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ独立にアリール基又は1価の芳香族複素環基を表す。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7はアルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる一種又は複数種の置換基を有していてもよい。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7で示される基のうち、同一の窒素原子に結合する基同士が、単結合、又は、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−N(RA)−、−C(=O)−N(RA)−若しくは−C(RA)(RA)−で表される基を介して結合していてもよい。
Aはアルキル基、アリール基又は1価の芳香族複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RAが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
na1、na2、na3、na4、nb1、nb2、nb3及びnb4はそれぞれ独立に0又は1である。但し、na1、na2、na3及びna4の少なくとも1個は1であり、nb1、nb2、nb3及びnb4の少なくとも1個は1である。m、mm、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7の各々が複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
Ar20はアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表し、Ar20が複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
Xma及びXmbはそれぞれ独立に、下記置換基A群及び下記置換基B群からなる群から選ばれる基を表し、2個あるXmaは同一であっても異なっていてもよく、2個あるXmbは同一であっても異なっていてもよい。
(置換基A群)
塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及び、−O−S(=O)220(R20はアルキル基、又はアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、フッ素原子若しくはシアノ基で置換されていてもよいアリール基を表す。)で表される基。
(置換基B群)
−B(OR212(R21は水素原子又はアルキル基を表し、2個存在するR21は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して一体となって環を形成していてもよい。)で表される基、−BF41(Q1はリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムの1価の陽イオンを表す。)で表される基、−Sn(R223(R22は水素原子又はアルキル基を表し、3個存在するR22は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して一体となって環を形成していてもよい。)で表される基、−MgY1(Y1は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で表される基、及び、−ZnY2(Y2は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で表される基。]
【請求項24】
下記一般式(Ma)で表される化合物、及び、下記一般式(Mb)で表される化合物を含有する組成物。
【化8】

(Ma)
【化9】

(Mb)
[式(Ma)及び(Mb)中、
m及びmmはそれぞれ独立に0又は1であり、
Ar1はアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表し、
Ar2及びAr4はそれぞれ独立にアリーレン基、2価の芳香族複素環基、又は、アリーレン基及び2価の芳香族複素環基からなる群より選ばれる同一又は異なる基が2以上連結した2価の基を表し、
Ar3、Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ独立にアリール基又は1価の芳香族複素環基を表す。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7はアルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、−O−RAで表される基、−S−RAで表される基、−C(=O)−RAで表される基、−C(=O)−O−RAで表される基、シアノ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる一種又は複数種の置換基を有していてもよい。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7で示される基のうち、同一の窒素原子に結合する基同士が、単結合、又は、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−N(RA)−、−C(=O)−N(RA)−若しくは−C(RA)(RA)−で表される基を介して結合していてもよい。
Aはアルキル基、アリール基又は1価の芳香族複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RAが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
na1、na2、na3、na4、nb1、nb2、nb3及びnb4はそれぞれ独立に0又は1である。但し、na1、na2、na3及びna4の少なくとも1個は1であり、nb1、nb2、nb3及びnb4の少なくとも1個は1である。m、mm、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7の各々が複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
Ar20はアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表し、Ar20が複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
Xma及びXmbはそれぞれ独立に、下記置換基A群及び下記置換基B群からなる群から選ばれる基を表し、2個あるXmaは同一であっても異なっていてもよく、2個あるXmbは同一であっても異なっていてもよい。
(置換基A群)
塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及び、−O−S(=O)220(R20はアルキル基、又はアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、フッ素原子若しくはシアノ基で置換されていてもよいアリール基を表す。)で表される基。
(置換基B群)
−B(OR212(R21は水素原子又はアルキル基を表し、2個存在するR21は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して一体となって環を形成していてもよい。)で表される基、−BF41(Q1はリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムの1価の陽イオンを表す。)で表される基、−Sn(R223(R22は水素原子又はアルキル基を表し、3個存在するR22は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して一体となって環を形成していてもよい。)で表される基、−MgY1(Y1は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で表される基、及び、−ZnY2(Y2は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で表される基。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−122062(P2012−122062A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248356(P2011−248356)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】