説明

高分子発光体組成物

【課題】発光素子の発光層に用いたとき、寿命の一層長い発光素子を与えることができる高分子発光体組成物を提供すること。
【解決手段】高分子発光体と、金属アルコキシドとを含有する高分子発光体組成物。
高分子発光体が共役系高分子である前記高分子発光体組成物。
金属アルコキシドの含有量が、高分子発光体を100重量部としたとき、0.001〜1000重量部である前記高分子発光体組成物。
陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられ上記高分子発光体組成物を用いてなる層を発光層として有する高分子発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子発光体組成物およびそれを用いた高分子発光素子(高分子LED)に関する。
【背景技術】
【0002】
溶媒に可溶な高分子発光体(高分子量の発光材料)は塗布法により発光素子における発光層を形成でき、素子の大面積化の要求に合致している。このため、近年種々の高分子発光体が提案されている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】Advanced Materials Vol.12 1737-1750 (2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発光素子は、その寿命が長い、すなわち駆動による輝度の経時的な低下の度合が少ないことが望まれる。
しかしながら、高分子発光体を用いたときに、その素子の寿命は未だ十分なものではなかった。
本発明の目的は、発光素子の発光層に用いたとき、寿命の一層長い発光素子を与えることができる高分子発光体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題を解決すべく検討した結果、発光素子の発光層の材料として、高分子発光体に、金属アルコキシドを含有させた組成物を用いると、素子寿命の著しく向上した発光素子を与えることを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち本発明は、高分子発光体と、金属アルコキシドとを含有する高分子発光体組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の高分子発光体組成物を発光素子の発光層に含有させることにより、その素子の寿命を長くすることができる。したがって、本発明の高分子発光体組成物を使用した高分子LEDは、液晶ディスプレイのバックライトまたは照明用としての曲面状や平面状の光源、セグメントタイプの表示素子、ドットマトリックスのフラットパネルディスプレイ等の装置に好ましく使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の高分子発光体組成物に用いる金属アルコキシドが有するアルキルオキシ基は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよく、置換基を有していてもよく、炭素数が通常1〜20程度であり、その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、 i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基などが例示される。
【0009】
本発明の高分子発光体組成物に用いる金属アルコキシドの金属は特に限定されないが、ジルコニウム、ニオブ、スズ、亜鉛、チタン、タングステン、シリコン、バナジウム、アルミニウムなどが挙げられる。
【0010】
金属アルコキシドの具体例としては、Al(O-i-C3H7)3、Ba(OC2H5)2、B(OCH3)3、B(OC2H5)3、Bi(O-t-C5H11)3、Ca(OC2H5)2、Fe(O-i-C3H7)3、Ga(O-i-C3H7)3、Ge(OC2H5)4、Hf(O-i-C3H7)4、In(O-i-C3H7)3、KOC2H5、La(O-i-C3H7)3、LiOCH3、Mg(OC2H5)2、Mo(OC2H5)5、NaOC2H5、Nb(OC2H5)5(ニオブエトキシド)、Pb(O-i-C3H7)2、PO(OCH3)3、PO(OC2H5)3、P(OCH3)3、Sb(OC2H5)3、Si(OC2H5)4、Sn(O-i-C3H7)4、Sr(O-i-C3H7)2、Ta(OC2H5)5、Ti(O-i-C3H7)4(チタンイソプロポキシド)、VO(C2H5)3、W(OC2H5)5、Y(O-i-C3H7)3、Zn(OC2H5)2、Zr(O-i-C3H7)4、Zr(O-t-C4H9)4、Zr(O-n-C4H9)4、などが挙げられる。
【0011】
次に、本発明に用いる高分子発光体について説明する。本発明に用いる高分子発光体は、特に限定されず、ポリスチレン換算の数平均分子量が通常103〜108である。
本発明の高分子発光体組成物に含有される高分子発光体は、一種単独であっても二種以上であってもよい。
本発明に用いられる高分子発光体は、単独重合体であっても共重合体でもよく、共役系高分子でも非共役系高分子でもよい。
本発明に用いる高分子発光体のなかでは、共役系高分子であるものが好ましい。
【0012】
前記共役系高分子は、(1)二重結合と単結合とが交互に並んだ構造から実質的になる高分子、(2)二重結合と単結合とが窒素原子を介して並んだ構造から実質的になる高分子、(3)二重結合と単結合とが交互に並んだ構造及び二重結合と単結合とが窒素原子を介して並んだ構造から実質的になる高分子等を意味し、本明細書において、具体的には、非置換又は置換のフルオレンジイル基、非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基、ジベンゾフランジイル基、非置換又は置換のジベンゾチオフェンジイル基、非置換又は置換のカルバゾールジイル基、非置換又は置換のチオフェンジイル基、非置換又は置換のフランジイル基、非置換又は置換のピロールジイル基、非置換又は置換のベンゾチアジアゾールジイル基、非置換又は置換のフェニレンビニレンジイル基、非置換又は置換のチエニレンビニレンジイル基、及び非置換又は置換のトリフェニルアミンジイル基からなる群から選ばれる一種又は二種以上を繰り返し単位とし、該繰り返し単位同士が直接又は連結基を介して結合した高分子である。
【0013】
前記共役系高分子において、前記繰り返し単位同士が連結基を介して結合している場合、該連結基としては、例えば、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレンジイル、アントラセンジイル等が挙げられる。
【0014】
前記共役系高分子は、膜形成能、溶剤への溶解性の観点から、数平均分子量がポリスチレン換算で103〜108程度であることが好ましく、中でも、数平均分子量がポリスチレン換算で103〜106程度である場合、更に好ましい。また、ポリスチレン換算の重量平均分子量が103〜1×108であることが好ましく、1×103〜1×106であることがより好ましい。
【0015】
前記共役系高分子は、用いる重合反応に適した官能基を有する単量体を合成した後に、必要に応じて、有機溶媒に溶解し、例えば、アルカリや適当な触媒、配位子を用いた公知のアリールカップリング等の重合方法により重合することにより合成することができる。
【0016】
アリールカップリングによる重合方法は、特に限定されない。前記重合反応に適した官能基としては、例えば、ホウ酸基又はホウ酸エステル基を有するモノマーと、官能基として臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、又はトリフルオロメタンスルホネート基、p-トルエンスルホネート基等のスルホネート基を有するモノマーとを炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム、フッ化カリウム等の無機塩基、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の有機塩基の存在下、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、[トリス(ジベンジリデンアセトン)]ジパラジウム、パラジウムアセテート、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロライド、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル等のPd若しくはNi錯体と、必要に応じ、さらにトリフェニルホスフィン、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(2-メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン等の配位子とからなる触媒を用いたSuzukiカップリング反応により重合する方法;ハロゲン原子又はトリフルオロメタンスルホネート基等のスルホネート基を有するモノマー同士をビス(シクロオクタジエン)ニッケル等のニッケルゼロ価錯体とビピリジル等の配位子からなる触媒を用い、若しくは[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケルジクロライド、[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケルジクロライド等のNi錯体と、必要に応じ、さらにトリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン等の配位子とからなる触媒と亜鉛、マグネシウム等の還元剤を用い、必要に応じて脱水条件で反応させる、Yamamotoカップリング反応により重合する方法;ハロゲン化マグネシウム基を有する化合物とハロゲン原子を有する化合物とを[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケルジクロライド、[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケルジクロライド等のNi触媒を用い、脱水条件で反応させる、アリールカップリング反応により重合するKumada−Tamaoカップリング反応により重合する方法、水素原子を官能基として、FeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法等が挙げられる。
【0017】
反応溶媒は、用いる重合反応、モノマー及びポリマーの溶解性等を考慮して選択されるべきである。具体的には、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、それらの2種以上の混合溶媒等の有機溶媒、又はそれらと水との二相系が例示される。
【0018】
Suzukiカップリング反応においては、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、それらの2種以上の混合溶媒等の有機溶媒、又はそれらと水との二相系が好ましい。反応溶媒は一般に副反応を抑制するために、脱酸素処理を行うことが好ましい。
【0019】
Yamamotoカップリング反応においては、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、それらの2種以上の混合溶媒等の有機溶媒が好ましい。反応溶媒は一般に副反応を抑制するために、脱酸素処理を行うことが好ましい。
【0020】
前記アリールカップリング反応の中でも、反応性の観点から、Suzukiカップリング反応、Yamamotoカップリング反応が好ましく、Suzukiカップリング反応とニッケルゼロ価錯体を用いたYamamotoカップリング反応がより好ましい。より詳細には、Suzukiカップリングによる重合に関しては、例えば、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.39,1533−1556(2001)に記載されている公知の方法を参考にできる。Yamamotoカップリングによる重合に関しては、例えば、Macromolecules 1992,25,1214−1223に記載されている公知の方法を参考にできる。
【0021】
これらの反応における反応温度は、反応溶液が液状を保つ温度範囲であれば、特に限定されるものではないが、その下限は、反応性の観点から、好ましくは−100℃、より好ましくは−20℃、特に好ましくは0℃であり、その上限は、前記共役系高分子及び前記式(1)で表される化合物の安定性の観点から、好ましくは200℃、より好ましくは150℃、特に好ましくは120℃である。
【0022】
前記共役系高分子の取り出しは公知の方法に準じて行うことができる。例えば、メタノール等の低級アルコールに反応溶液を加えて析出させた沈殿をろ過、乾燥することにより、前記共役系高分子を得ることができる。得られた共役系高分子の純度が低い場合は、再結晶、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィー等の通常の方法にて精製することができる。
【0023】
また、本発明の高分子発光体組成物は、前記高分子発光体と金属アルコキシドと溶媒とを含有する組成物(溶液状態)であってもよい。
【0024】
前記溶媒は、前記高分子発光体及び金属アルコキシドを均一に溶解乃至分散できる安定なものを公知の溶媒から適宜選択して使用できる。このような溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、有機塩素類(クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素類(ノルマルヘキサン、シクロヘキサン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)等が挙げられる。これらの溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0025】
金属アルコキシドの含有量は、前記高分子100重量部に対して、通常、0.01〜1000重量部であり、好ましくは0.1〜500重量部、さらに好ましくは1〜50重量部である。
本発明の高分子発光体組成物が溶媒を含有する場合、前記溶媒の合計量は、前記高分子及び金属アルコキシドの合計量100重量部に対して、通常、1000〜100000重量部程度である。
【0026】
本発明の高分子発光体組成物には、前記高分子発光体、金属アルコキシドに加えて、電荷輸送性、電荷注入性を損なわない範囲で、その他の成分を含有させてもよい。
【0027】
本発明の高分子発光素子は、前記高分子発光体組成物を用いてなる層を有するものであり、具体的には、例えば、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられ前記組成物を用いてなる層を発光層として有するものである。例えば、以下の層構造のものが挙げられる。
a)陽極/正孔注入層(正孔輸送層)/発光層/陰極
b)陽極/発光層/電子注入層(電子輸送層)/陰極
c)陽極/正孔注入層(正孔輸送層)/発光層/電子注入層(電子輸送層)/陰極
d)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
【0028】
本発明の高分子発光体組成物を用いてなる発光層は、塗布法によって形成されることが好ましい。塗布法は、製造プロセスを簡略化できる点、生産性が優れている点で好ましく、キャスティング法、スピンコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット法等が挙げられる。前記塗布法では、前記高分子発光体と金属アルコキシドと溶媒とを含有する組成物(溶液状態)を塗布液として調製し、該塗布液を所望の層又は電極上に塗布し乾燥させることで所望の層、膜を形成することができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
−分子量の測定方法−
実施例において、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及びピークトップ分子量(Mp)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算のものを求めた。具体的には、GPC(東ソー製、商品名:HLC-8220GPC)により、TSKgel SuperHM-H(東ソー製)3本を直列に繋げたカラムを用いて、テトラヒドロフランを展開溶媒として0.5mL/分の流速で流し、40℃で測定した。検出器には、示差屈折率検出器を用いた。
【0031】
<合成例1>(高分子化合物1の合成)
500mlの4口フラスコにトリスカプリリルメチルアンモニウムクロリド(Triscaprylylmethylammoniumchloride、商品名:Aliquat336)1.72g、下記式:


で表される化合物A 6.2171g、下記式:


で表される化合物B 0.5085g、下記式:


で表される化合物C 6.2225g、及び下記式:


で表される化合物D 0.5487gを取り、窒素置換した。トルエン100mlを加え、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II) 7.6mg、炭酸ナトリウム水溶液24mlを加え、環流下で3時間攪拌した後、フェニルホウ酸0.40gを加え、終夜攪拌した。ナトリウムN,N−ジエチルジチオカルバメート水溶液を加え、さらに環流下で3時間攪拌した。得られた反応液を分液し、有機相を酢酸水溶液及び水で洗浄した後、メタノール中に滴下したところ、沈殿が生じた。得られた沈殿を、ろ過し、減圧乾燥した後、トルエンに溶解させ、シリカゲル−アルミナカラムを通し、トルエンで洗浄した。得られたトルエン溶液をメタノール中に滴下したところ、沈殿が生じた。得られた沈殿を、ろ過し、減圧乾燥した後、トルエンに溶解させ、メタノールに滴下ところ、沈殿が生じた。得られた沈殿を、ろ過し、減圧乾燥して、7.72gの高分子化合物1(共役系高分子)を得た。高分子化合物1のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは1.2×105であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは2.9×105であった。
【0032】
<合成例2>(高分子化合物2の合成)
5Lセパラブルフラスコにトリスカプリリルメチルアンモニウムクロリド(Triscaprylylmethylammoniumchloride、商品名:Aliquat336)40.18g、下記式:



で表される化合物A 234.06g、下記式:


で表される化合物E 172.06g、及び下記式:


で表される化合物F 28.5528gを取り、窒素置換した。アルゴンバブリングしたトルエン2620gを加え、攪拌しながら更に30分間バブリングした。酢酸パラジウム 99.1mg、トリス(o−トリル)ホスフィン 937.0mgを加え、158gのトルエンで洗い流し、95℃に加熱した。17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液855gを滴下後、バス温110℃に昇温し、9.5時間攪拌した後、フェニルホウ酸5.39gをトルエン96mlに溶解して加え、14時間攪拌した。200mlのトルエンを加え、反応液を分液し、有機相を3重量%酢酸水溶液850mlで2回、更に850mlの水とナトリウムN,N−ジエチルジチオカルバメート19.89gを加え、4時間攪拌した。分液後、シリカゲル−アルミナカラムを通し、トルエンで洗浄した。得られたトルエン溶液をメタノール50Lに滴下したところ、沈殿が生じた。得られた沈殿を、メタノールで洗浄した。減圧乾燥後、11Lのトルエンに溶解させ、得られたトルエン溶液をメタノール50Lに滴下したところ、沈殿が生じた。得られた沈殿を、ろ過し、減圧乾燥して、278.39gの高分子化合物2を得た。高分子化合物2のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは7.7×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは3.8×105であった。
【0033】
なお上記化合物A〜Fは、例えばWO2005/52027に記載されている方法で合成することができる。
【0034】
<実施例1〜3、比較例1>(有機エレクトロルミネッセンス素子の作製、評価)
【0035】
<有機EL素子の作成及び評価>
スパッタ法により150nmの厚みでインジウムスズ酸化物(ITO)膜を付けたガラス基板に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(スタルク社製、商品名:Baytron AI4083)を用いてスピンコートにより成膜し、大気中ホットプレート上で、200℃で10分間乾燥して正孔注入層(膜厚:60nm)を作製した。次に、高分子化合物2のトルエン溶液(0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過)をスピンコートにより塗布し、グローブボックス中の窒素雰囲気下で、200℃で15分間ベークして、正孔輸送層(膜厚:20nm)を作製した。さらに、表1に記載の組成でトルエン溶液を調製(0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過)し、得られた溶液をスピンコートにより発光層を塗布した。発光層の膜厚が70nmとなるように調整した。
これを減圧下、90℃で1時間乾燥した後、LiFを4nm蒸着後、Alを100nm蒸着した。蒸着のときの真空度は、1×10-4Pa〜9×10-3Paの範囲であった。その後、素子は窒素雰囲気下で紫外線硬化樹脂によりガラスを接着することにより封止した。素子の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。得られた素子に段階的に電圧を印加することにより、電流密度と発光輝度、発光スペクトルを測定した。寿命評価は素子の初期輝度3000cd/m2に合わせて定電流駆動で寿命評価した。その場合、初期輝度の80%となる時間をLT80寿命とした。表1に、EL発光のピーク波長、LT80寿命を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1から分かるように、高分子発光体(高分子化合物1)とチタンテトライソプロポキシド又はニオブペンタエトキシドとを含有した組成物を用いて形成させた発光層は、高分子発光体単独を用いて形成させた発光層に比べて、初期輝度が同じ場合のLT80寿命が著しく向上した。従って、本発明の高分子発光体組成物を用いた素子は、寿命に優れることが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子発光体と、金属アルコキシドとを含有する高分子発光体組成物。
【請求項2】
高分子発光体が共役系高分子である請求項1記載の高分子発光体組成物。
【請求項3】
金属アルコキシドの含有量が、高分子発光体を100重量部としたとき、0.001〜1000重量部である請求項1または2に記載の高分子発光体組成物。
【請求項4】
金属アルコキシドが有するアルキルオキシ基の炭素数が1〜20である請求項1〜3のいずれかに記載の高分子発光体組成物。
【請求項5】
陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられ請求項1〜4のいずれかに記載の高分子発光体組成物を用いてなる発光層を有する高分子発光素子。


【公開番号】特開2008−150516(P2008−150516A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341037(P2006−341037)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】