説明

高分子量水溶性重合体分散液の製造法

【課題】 高分子量のアクリルアミド系重合体の分散液を得ることを目的とする。
【解決手段】 アクリルアミドを含む単量体を塩水溶液中での分散重合法により重合し分散液を製造するに当り、該アクリルアミドがニトリルヒドラターゼの触媒作用によりアクリロニトリルを水和して製造されたものを使用することにより高分子量水溶性重合体分散液を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散重合法による高分子量アクリルアミド系重合体分散液の製造法に関する。
【技術背景】
【0002】
アクリルアミド系重合体の分散液は、粉末状の重合体に比べて溶解が速く、その取扱いが容易であるため、凝集剤や増粘剤として各種廃水処理、廃泥処理、製紙、土木分野等にその用途を拡大しつつあり、特に、凝集剤、製紙用途には高分子量の重合体が要求される。
【0003】
分散重合法によってアクリルアミドの含有量が全単量体の50モル%以上で高分子量のアクリルアミド系重合体を得ようとすると、単量体濃度を高くする、あるいは開始剤の量を減らすなどするのが一般的である。しかしながら、このようにすると重合中に部分架橋が起こり、生成した分散液の水溶解液が白濁してしまう欠点があった。これを克服するために連鎖移動剤を添加すると、白濁は防止できるが分子量が低下してしまうという難点があった。
【0004】
【特許文献1】特開平9−118704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高分子量のアクリルアミド系重合体の分散液を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、酵素法で製造されたアクリルアミド水溶液を使用することにより高分子量アクリルアミド系重合体の分散液の製造が可能になることを見出し本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、アクリルアミドを含む単量体を塩水溶液中での分散重合法により重合し分散液を製造するに当り、該アクリルアミドがニトリルヒドラターゼの触媒作用によりアクリロニトリルを水和して製造されたものであることを特徴とする高分子量水溶性重合体分散液の製造法を要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の高分子量水溶性重合体からなる分散液は、酵素法により製造されたアクリルアミド の使用によって初めて得られるものであり、従来の銅または銅化合物を触媒として用いる接触水和法によって製造されたアクリルアミド水溶液製品の使用によっては得ること
はできない。このような両者の相違は、それぞれのアクリルアミド製法の相違に基づく何らかの不純物の有無に起因するものと推察される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で使用されるアクリルアミドは、ニトリルヒドラターゼの触媒作用によりアクリロニトリルを水和して製造されたものである。ニトリルヒドラターゼとは、ニトリル化合物を対応するアミド化合物に変換する酵素であり、例えば、バチルス(Bacillus)属、バクテリジューム(Bacteridium) 属、マイクロコッカス(Micrococcus) 属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属〔特公昭62-21519号〕、コリネバクテリウム(Corynebacterium) 属、ノカルディア(Nocardia)属〔特公昭56-17918号〕、シュードモナス(Pseudomonas) 属〔特公昭59-37951号〕、ロドコッカス(Rhodococcus) 属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属〔特公平4-4873号〕、ロドコッカス(Rhodococcus) 属〔特公平4-40948 号〕、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous) 種〔特公平6-55148 号、SU 1731814号〕、フザリウム(Fusarium)属〔特開昭64-86889号〕、アグロバクテリウム(Agrobacterium) 属〔特開平5-103681号、特開平6-14786 号〕に属する微生物由来のものが挙げられる。
【0010】
ニトリルヒドラターゼの使用形態としては、上記微生物の培養液、培養液から分離した休止菌体または固定化菌体、あるいは、休止菌体からニトリルヒドラターゼ活性酵素を抽出し、直接または担体に固定化したもの、何れでもよい。
【0011】
アクリロニトリルのアクリルアミドへの水和反応条件は常温、常圧で反応する酵素法の条件に準ずるものであれば、特に制限されない。また、水和反応後のアクリルアミド 水溶液をそのまま用いても、濃縮操作によりアクリルアミド 濃度を上げてから使用しても差し支えない。
【0012】
本発明における分散重合はアクリルアミドを含む単量体を、その単量体を溶解するが生成重合体を溶解しない塩水溶液中で、この塩水溶液に可溶な高分子からなる分散剤の共存下に、撹拌しながら重合し、塩水溶液に分散した通常、粒径100μm以下の微細な重合体粒子として分散した状態で得ることができる。
【0013】
塩水溶液中に分散した重合体微粒子分散液からなる水溶性重合体は、特開昭62−15251号公報などによって製造することができる。具体的に製造方法を説明すると以下のようである。硫酸アンモニウムのような多価アニオン塩の水溶液を調製し、アクリルアミドを含む単量体を加え、分散剤としてアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物重合体などのようなイオン性高分子を重合前に共存させる。この時のpHは2〜6に設定する。混合物を均一に溶解した後、窒素置換により反応系の酸素を除去しラジカル重合性開始剤を添加することによって重合を開始させ、重合体を製造することができる。また、重合開始前に連鎖移動剤や架橋剤などを共存させることは他の重合法と同様である。また、グリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコールが共存すると、析出状態が更に良好になることもある。
【0014】
水相中の単量体組成は、アクリルアミド単独またはアクリルアミドと共重合が可能なビニル単量体を任意に組み合わせたものであってよいが、アクリルアミドの割合が高いほど、本発明の効果が顕著であり、高分子量の水溶性重合体分散液を得ることができる。すなわち、アクリルアミド の割合は、通常、50モル%以上であり、さらに本発明の効果が顕著に現れるのは60モル%以上である。
【0015】
アクリルアミドと共重合が可能な水溶性ビニル単量体としては、ノニオン性単量体のメタアクリルアミドなど 、アニオン性単量体の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)、アクリル酸(塩)など、カチオン性単量体のジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルアクリルアミド など、ならびにメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド等の上記カチオン性モノマーの第4級アンモニウム塩、ビニルピロリドン等の水溶性単量体が挙げられる。その他、得られる重合体の水溶性を損なわない限り、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、スチレン等の難水溶性ないし疎水性単量体を使用することもできる。
【0016】
本発明の水溶性重合体の分子量は、任意の分子量の重合体を製造することができるが、分子量が高いほうが本発明の効果を発揮することができる。すなわち凡そ700万〜2000万であり、好ましくは900万〜2000万である。700万未満では従来の接触水和法によるアクリルアミドで十分であり、本発明の効果が発揮し難いが、2000万以上の重合体を製造することは連鎖移動剤の混入、温度制御、他の不純物など別の要素が入り製造することは難しくなる。
【0017】
重合時使用する高分子からなる分散剤は、イオン性あるいは非イオン性とも使用可能であるが、好ましくはイオン性である。まずカチオン性高分子としては、カチオン性単量体である(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、ジメチルジアリルアンモニウム塩化物などであるが、これらカチオン性単量体と非イオン性単量体との共重合体も使用可能である。非イオン性単量体の例としては、アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N、N−ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−トのなどであるが、アクリルアミドとの共重合体が好ましい。
【0018】
一方アニオン性分散剤としては、アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸(塩)やスチレンスルホン酸(塩)などのアニオン性単量体の(共)重合体も使用可能である。これらアニオン性単量体とカルボキシル基含有単量体、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などとの共重合体も使用可能である。さらに非イオン性の単量体であるアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N、N−ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−トのなどとの共重合体、さらに無水マレイン酸/ブテン共重合物の部分アミド化物も使用可能であるが、アクリルアミドとの共重合体が好ましい。
【0019】
また、非イオン性高分子としては、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/ポリビニルカプロラクタム共重合体、アクリルアミド/スチレン共重合体あるいは無水マレイン酸/ブテン共重合物の完全アミド化物などアミド基と若干の疎水性基を有する水溶性高分子が有効である。
【0020】
これらカチオン性あるいはアニオン性高分子分散剤の分子量としては、5、000から200万、好ましくは5万から100万である。また、非イオン性高分子分散剤の分子量としては、1,000〜10万であり、好ましくは1,000〜5万である。これら非イオン性あるいはイオン性高分子分散剤の単量体に対する添加量は、単量体に対して1/100〜2/10であり、好ましくは2/100〜1/10である。
【0021】
本発明に適した塩は硫酸塩の如き2価アニオン塩であり、対カチオンとしてはアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン等が選ばれる。具体的な塩としては、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸水素マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸水素アルミニウムである。特に硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムが本発明に適用される塩として最も好ましい。これら2価アニオン塩が上記の性質を有するためには、好ましくは塩濃度として15重量%以上飽和濃度までの範囲が選ばれる。また塩化ナトリウム、塩化アンモニウムのような1価アニオン塩も上記2価アニオン塩と併用して用いることができる。
【0022】
重合条件は通常、使用する単量体や共重合モル%によって適宜決めていき、温度としては0〜100℃の範囲で行う。重合開始はラジカル重合開始剤を使用する。これら開始剤は油溶性あるいは水溶性のどちらでも良く、アゾ系,過酸化物系、レドックス系いずれでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオネ−ト)、4、4−アゾビス(4−メトキシ−2、4ジメチル)バレロニトリルなどがあげられ、水混溶性溶剤に溶解し添加する。
【0023】
水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などがあげられる。またレドックス系の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどとの組み合わせがあげられる。さらに過酸化物の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウムあるいはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t-ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエ−トなどをあげることができる。これら開始剤の中で最も好ましいのは、水溶性アゾ開始剤である2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物である。
【0024】
本発明の高分子量水溶性重合体分散液は、製紙工業におけるパルプスラッジの脱水、抄紙工程における歩留向上剤、その他食品工業、金属、石油精製の各排水処理、また建材関係の砂利洗浄排水の処理また、一般産業排水処理で生じる有機性汚泥及び凝集汚泥を含む混合汚泥などに適用可能である。特に有効な対象物として下水、し尿の消化汚泥、あるいは食品工業排水の余剰汚泥などの脱水にに優れた効果を発揮する。添加量としては、排水の種類、懸濁物濃度などのよって変化するものであるが、液量に対して0.1〜1000ppm程度である。また、汚泥に対しては、汚泥ssに対して0.1〜3重量%である。
【0025】
(実施例)以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【実施例1】
【0026】
使用アクリルアミド試料〔酵素法50%アクリルアミド水溶液〕。比較アクリルアミド試料〔接触水和法50%アクリルアミド水溶液(三菱化学(株)製)〕。
【0027】
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水:131.7g、60%アクリル酸:50.0g、酵素法アクリルアミド50%水溶液140.3gを加え、30重量%の水酸化ナトリウム8.3gによりアニオン性単量の15モル%を中和した。さらに硫酸アンモニウム135.4g、また20質量%水溶液のアクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸重合体(分子量:20万、20当量%中和物)25.0g(対単量体5.0質量%)を添加した。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素の除去を行う。この間恒温水槽により25℃に内部温度を調整する。窒素導入30分後、0.2質量%のペルオキソニ硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素アンモニウムの0.2質量%水溶液をそれぞれこの順で2.5g(対単量体、40ppm)添加し重合を開始させた。開始剤添加2時間後、反応物液の粘性が、やや上昇したがそれ以上増加せず、除除に高分子微粒子が析出し始め粘性も減少していった。重合開始後8時間たったところで前記開始剤をそれぞれ同量追加し、さらに15時間重合を継続させ反応を終了した。この試作品を試作−1とする。この試作−1のアクリル酸/アクリルアミドのモル比は30/70であり、粘度は610mPa・sであった。なお、顕微鏡観察の結果、粒径5μm以下の粒子であることが判明した。また、静的光散乱法による分子量測定器(大塚電子製DLS−7000)によって重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【実施例2】
【0028】
温度計、攪拌機、窒素導入管、ペリスタポンプ(SMP−21型、東京理化器械製)に接続した単量体供給管およびコンデンサ−を備えた500mLの4ツ口フラスコ内にアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(以下DMQと略記)の80重量%水溶液72.6g、アクリル酸(以下AACと略記)の60重量%水溶液10.3g、酵素法アクリルアミド50%水溶液68.0g、イオン交換水186.1g、硫酸アンモニウム125.0g、分散剤としてアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物単独重合体30.0g(20重量%液、粘度6450mPa・s)をそれぞれしこみpHを3.3に調節した。この時各単量体のモル%は、DMQ/AAC/AAM=35/10/55である。次ぎに反応器内の温度を30±2℃に保ち、30分間窒素置換をした後、開始剤として2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ニ塩化水素化物の1%水溶液1.0g(対単量体0.01%)を添加し重合を開始させた。内部温度を30±2℃に保ち重合開始から7時間反応させた時点で上記開始剤を対単量体0.01%追加し、さらに7時間反応させ終了した。得られた分散液のしこみ単量体濃度は20%であり、ポリマー粒径は5μm以下、分散液の粘度は750mPa・sであった。これを試作−2とする。結果を表1に示す。
【実施例3】
【0029】
撹拌器、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた五つ口セパラブルフラスコに、ジメチルジアリルアンモニウム塩化物重合体(30%水溶液、分子量20万)21.0g(対単量体5.0%)、イオン交換水178.4g、硫酸アンモニウム115.0g、酵素法アクリルアミド50%水溶液67.4g及びアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、80%水溶液115.0gを仕込み、完全に溶解させた。内温を33〜35℃に保ち、30分間窒素置換後、開始剤として2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物の10%水溶液2.5g(対単量体0.04%)を加え重合を開始させた。開始2.5時間後、反応物はやや粘度の上昇が観測されたが、その後すぐに収まり分散液に移行していった。開始8時間後、前記開始剤溶液を1.3g追加しさらに8時間重合を行った。得られた分散液のしこみ単量体濃度は25.0%であり、ポリマー粒径は5μm以下であり、この試料を試作−3とする。結果を表1に示す。
【実施例4】
【0030】
実施例3と同様な操作により、アクリルアミド/アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物/アクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウム塩化物=60/20/20の共重合体分散液、試作−4を合成した。結果を表1に示す。
【実施例5】
【0031】
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水66.7g、硫酸アンモニウム125.0g、硫酸ナトリウム20.4g、酵素法アクリルアミド50%水溶液200.0gをし込んだ。またアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物重合体水溶液(20%水溶液、分子量120万)27.5g(対単量体5.5%)を添加した。その後攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素の除去を行う。この間恒温水槽により25℃に内部温度を調整する。窒素導入30分後、0.1重量%のペルオクソ二硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素アンモニウムの0.1重量%水溶液をそれぞれこの順で3.1g(対単量体、25ppm)添加し重合を開始させた。重合開始3時間後、反応物液がわずかに増粘するのが観察されたが、分散粒子が析出し始めた。重合開始後8時間たったところで前記開始剤をそれぞれ同量追加し、さらに15時間重合を継続させ反応を終了した。この試作品を試作−5とし、分散液粘度は520mPa・sであった。なお、顕微鏡観察の結果、粒径5μm以下の粒子であることが判明した。結果を表1に示す。
【0032】
(比較例1〜5)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水:131.7g、60%アクリル酸:50.0g、接触水和法アクリルアミド50%水溶液140.3gを加え、30重量%の水酸化ナトリウム8.3gによりアニオン性単量の15モル%を中和した。さらに硫酸アンモニウム135.4g、また20質量%水溶液のアクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸重合体(分子量:20万、20当量%中和物)25.0g(対単量体5.0質量%)を添加した。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素の除去を行う。この間恒温水槽により25℃に内部温度を調整する。窒素導入30分後、0.2質量%のペルオキソニ硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素アンモニウムの0.2質量%水溶液をそれぞれこの順で2.5g(対単量体、40ppm)添加し重合を開始させた。開始剤添加2時間後、反応物液の粘性が、やや上昇したがそれ以上増加せず、除除に高分子微粒子が析出し始め粘性も減少していった。重合開始後8時間たったところで前記開始剤をそれぞれ同量追加し、さらに15時間重合を継続させ反応を終了した。この試作品を比較−1とする。この比較−1のアクリル酸/アクリルアミドのモル比は30/70であり、分散液粘度は660mPa・sであった。なお、顕微鏡観察の結果、粒径5μm以下の粒子であることが判明した。結果を表1に示す。
【0033】
実施例2〜5と同様な操作により接触水和法アクリルアミドを用いて比較2〜5の水溶性重合体分散液を各々重合した。結果を1に示す。
【0034】
(表1)

AAC:アクリル酸、AAM:アクリルアミド、
DMQ:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド
DMBC:アクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、分散液粘度:mPa・s、分子量:単位は万
アクリルアミド;B:酵素法、R:接触水和法
不溶解物量:分散液に対する不溶解物の含水重量
【0035】
結果から明らかなように酵素法アクリルアミドを使用した水溶性重合体分散液を構成する重合体分子量は、接触水和法を用いた場合より分子量は高く、不溶解物量も少なくなる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルアミドを含む単量体を、その単量体を溶解するが生成重合体を溶解しない塩水溶液中で、この塩水溶液に可溶な高分子からなる分散剤の共存下に、撹拌しながら重合し、塩水溶液に分散した微細な重合体粒子を得る分散重合法において、該アクリルアミドがニトリルヒドラターゼの触媒作用によりアクリロニトリルを水和して製造されたものであることを特徴とする高分子量水溶性重合体分散液の製造法。
【請求項2】
アクリルアミドの含有量が全単量体の50モル%以上である請求項1に記載の高分子量水溶性重合体分散液の製造法。
【請求項3】
前記高分子量水溶性重合体分散液を構成するアクリルアミドを含有する高分子量水溶性重合体の分子量が700万〜2000万であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の高分子量水溶性重合体分散液の製造法。















【公開番号】特開2006−169414(P2006−169414A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365333(P2004−365333)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】