説明

高分子電解質形燃料電池スタック及び高分子電解質形燃料電池システム

【課題】PEFCの熱効率の低下を抑制しつつ、スタック積層方向の温度偏差をより早期に抑制することができる高分子電解質形燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】3以上の反応部110、210と、伝熱部と、が積層して構成された高分子電解質形燃料電池スタックにおいて、記反応部110,210は、前記伝熱部から排出後の伝熱媒体が流通する流路に近接した流路を流通したアノードガス及びカソードガスのうち少なくとも一方が供給される第1反応部100と、前記伝熱部に供給前の伝熱媒体が流通する流路に近接した流路を流通したアノードガス及びカソードガスのうち少なくとも一方が供給される第2反応部210と、を有し、1以上の前記第1反応部110が積層されてなる第1反応層Qが積層方向両端部に構成され、1以上の前記第2反応部210が積層されてなる第2反応層Pが積層方向中央部に構成された、高分子電解質形燃料電池スタック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質形燃料電池スタック及び高分子電解質形燃料電池システムに関する。特に、反応部と伝熱部とが積層して構成された、高分子電解質形燃料電池スタック及びそれを用いた高分子電解質形燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高分子電解質形燃料電池(以下、PEFCという)は、MEA(Membrane−Electrode−Assembly:電解質膜−電極接合体)を有し、MEAの両側主面それぞれを水素を含有するアノードガスと空気など酸素を含有するカソードガスとに曝露して、アノードガスとカソードガスとを電気化学的に反応させることにより、電力と熱とを発生させる装置である。
【0003】
ところで、PEFCは、電池反応毎の起電力が一般用途に比べ十分ではない。
【0004】
また、電気化学反応は発熱反応であるので、PEFC運転動作中にMEAが触媒活性温度になるように反応部を冷却する必要がある。また、PEFC起動動作時には、MEAが触媒活性温度になるようにPEFCを予熱する必要がある。加えて、PEFC運転動作時には適切な温度管理を要する。すなわち、MEAの冷却が不十分な場合、MEAの温度が上昇して高分子電解質膜から水分が蒸発する。その結果、高分子電解質膜の劣化が促進されてMEAの耐久性が低下したり、高分子電解質膜の電気抵抗が増大してMEAの起電力が低下したりすることが知られている。一方、PEFCを必要以上に冷却した場合、ガス流路を流れるアノードガス及びカソードガス中の水分が結露し、これらガス中に含まれる液体状態の水の量が増加する。液体状態の水は、ガス流路に表面張力によって液滴として付着する。この液滴の量が甚だしい場合は、ガス流路内に付着した水がガス流路を塞いでガスの流れを阻害し、いわゆるフラッディング現象を起こす。その結果、電気出力が不安定化する等PEFCの性能を低下させることが知られている。
【0005】
これらの理由から、PEFCは、MEA、アノードガス流路及びカソードガス流路を有する反応部と、伝熱媒体流路を有する伝熱部と、がそれぞれ複数積層して構成されている。このような積層構造の高分子電解質形燃料電池スタック(以下、スタックと略称する)がPEFCの本体を構成している。
【0006】
そして、伝熱部に供給前の伝熱媒体が流通する伝熱媒体供給マニホールド、前記伝熱部から排出後の伝熱媒体が流通する伝熱媒体排出マニホールド、前記反応部に供給前のアノードガスが流通するアノードガス供給マニホールド、前記反応部から排出後のアノードガスが流通するアノードガス排出マニホールド、前記反応部に供給前のカソードガスが流通するカソードガス供給マニホールド、及び前記反応部から排出後のカソードガスが流通するカソードガス排出マニホールドが、それぞれ、前記積層された反応部及び伝熱部の側部において積層方向に延びて形成されている。
【0007】
ここで、このマニホールドの構成形態によって、スタックは2種類に大別される。すなわち、マニホールドがスタックと一体化されて構成される内部マニホールド型スタックと、これらマニホールドがスタックへの装着部材として構成される外部マニホールド型スタックとに大別される。
【0008】
現状において、主として用いられている内部マニホールド型スタックは、一般的には、平板状のアノードセパレータ及びカソードセパレータと、枠体及び該枠体の枠内に配設されたMEAを有するMEA部材と、を備えている。そして反応部は、アノードセパレータの内面及びカソードセパレータの内面に該MEA部材が挟まれて構成されている。アノードセパレータには、前記伝熱媒体供給マニホールド、前記伝熱媒体排出マニホールド、前記アノードガス供給マニホールド、前記アノードガス排出マニホールド、前記カソードガス供給マニホールド、及び前記カソードガス排出マニホールドを構成するマニホールド孔が、その厚さ方向に貫通してそれぞれ形成され、かつ、内面側に前記アノードガス供給マニホールド及び前記アノードガス排出マニホールドを構成するマニホールド孔同士を結ぶアノードガス流路溝が形成されている。
【0009】
同様にして、カソードセパレータは、前記伝熱媒体供給マニホールド、前記伝熱媒体排出マニホールド、前記アノードガス供給マニホールド、前記アノードガス排出マニホールド、前記カソードガス供給マニホールド、及び前記カソードガス排出マニホールドを構成するマニホールド孔が、その厚さ方向に貫通してそれぞれ形成され、かつ、内面側に前記カソードガス供給マニホールド及び前記カソードガス排出マニホールドを構成するマニホールド孔同士を結ぶカソードガス流路溝が形成されている。
【0010】
MEA部材の枠体には、前記伝熱媒体供給マニホールド、前記伝熱媒体排出マニホールド、前記アノードガス供給マニホールド、前記アノードガス排出マニホールド、前記カソードガス供給マニホールド、及び前記カソードガス排出マニホールドを構成するマニホールド孔が、その厚さ方向に貫通してそれぞれ形成されている。
【0011】
MEAは、高分子電解質膜とその両面に積層して構成された一対の電極とを有して構成されており、MEAの両主面には電極面が形成されている。また、セパレータは、電導性カーボンを含む樹脂、金属等の導電材料で構成され、MEAの電極面に当接して電気回路の一部を担っている。
【0012】
なお、伝熱部の構成にはいくつかの形態がある。例えば、アノードセパレータ及び/あるいはカソードセパレータの外面側に伝熱媒体流路溝が形成され、積層によるセパレータ外面同士の接合によって伝熱部が形成されるという形態がある。あるいは、伝熱媒体流路が内部に構成された伝熱部材が、セパレータの外面間に挿入されるという形態もある。伝熱媒体としては、水、シリコンオイルが一般的に用いられている。また、伝熱部は、各反応部(セル)の積層間に構成されている必要はない。積層された2〜3の反応部毎に伝熱部が構成されている形態もある。
【0013】
ところで、PEFCの発電運転時においては、反応部(セル)の積層方向において両端部が中央部よりも温度が低くなり、ひいてはPEFCスタックの性能低下を招来するという問題があった。(例えば、特許文献1乃至4)
このようなPEFCの発電運転時における、スタックにおける積層方向(以下、積層方向と略称する)の温度偏差の問題については、スタック端部における温度低下を抑制、つまり放熱あるいは冷却の不均一を抑制、する構造あるいは方法が従来検討されていた。
【0014】
具体的には、特許文献1では、スタックの両端に位置するセパレータの冷媒流路を廃止するスタックの構造が提案されている。
【0015】
また、特許文献2では、スタックの両端に発熱体が配設されるスタックの構造、及び電池反応熱で昇温した冷却用流体によってスタックの両端部を加温する構造が提案されている。
【0016】
特許文献3では、冷却用流体の配管接続部をスタックの両端部の一方の端部側に配設されるスタックの構造が提案されている。
【0017】
特許文献4では、冷却水がスタックの両端から供給及び排出されるとともに、スタックを流通した冷却水が両端の端板内の水路を流通する構造が提案されている。
【特許文献1】特開2002−216806号公報
【特許文献2】特開平8−167424号公報
【特許文献3】特開平8−130028号公報
【特許文献4】特開平8−111231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、特許文献2及び4に提案されるような、発電電力や外部電源を用いた発熱体の使用や、冷却水の保有熱の利用では、PEFCシステム自体の熱効率の低下が懸念された。
【0019】
また、特許文献1及び3に提案されるような冷却構造の変更では、温度偏差の抑制効果が限定的であり、改善の余地があった。
【0020】
さらに、これら文献の提案全ては、専らスタック端部のセパレータに対して、加熱したり、冷却を抑制したりするものであった。すなわち、端部のMEAの温度上昇には、発熱体あるいは冷却水からセパレータへの伝熱作用と、セパレータからMEAへの伝熱作用とを要し、発電開始直後からの迅速な効果は得られにくいものであった。
【0021】
このように、積層方向の温度偏差の抑制対策には、改善の余地があった。
【0022】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、PEFCの熱効率の低下を抑制しつつ、スタック積層方向の温度偏差をより早期に抑制することができる高分子電解質形燃料電池スタックを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決すべく、発明者は鋭意研究を行った。その結果、伝熱媒体排出マニホールドには、電池反応熱を吸熱した伝熱媒体が流通するが、この伝熱媒体の蓄熱の一部は、伝熱媒体排出マニホールドの壁面に輻射されて熱損失となっていた。発明者は、この輻射熱を有効利用することによって、PEFCの熱効率を低下させずに、スタック積層方向の温度偏差を抑制することができるものと考えた。
【0024】
また、スタック端部のMEAに供給されるアノードガス及びカソードガスのうち少なくとも一方の温度を調整することによってスタック積層方向の温度偏差をより早期に抑制することができるものと考えた。
【0025】
これらの発想を基にして、発明者は、本発明に想到した。
【0026】
第1の本発明の高分子電解質形燃料電池スタックは、MEA、アノードガス流路及びカソードガス流路を有する3以上の反応部と、伝熱媒体流路を有する伝熱部と、が積層して構成された高分子電解質形燃料電池スタックにおいて、
前記反応部は、前記伝熱部から排出後の伝熱媒体が流通する流路に近接した流路を流通したアノードガス及びカソードガスのうち少なくとも一方が供給される第1反応部と、前記伝熱部に供給前の伝熱媒体が流通する流路に近接した流路を流通したアノードガス及びカソードガスのうち少なくとも一方が供給される第2反応部と、を有し、
1以上の前記第1反応部が積層されてなる第1反応層が積層方向両端部に構成され、1以上の前記第2反応部が積層されてなる第2反応層が積層方向中央部に構成されている。
【0027】
このように構成すると、スタック積層方向端部の反応部には、より高温のアノードガス及びカソードガスのうち少なくとも一方が供給されるので、スタック積層方向の温度偏差をより早期に抑制することができる。また、アノードガス及びカソードガスのうち少なくとも一方の加温には、伝熱部から排出された伝熱媒体からの輻射熱あるいは伝導熱が利用されるので、PEFCの熱効率の低下を抑制することができる。
【0028】
ここで、近接とは、第1反応部に供給されるアノードガス及びカソードガスの流路が、その他の流路よりも前記伝熱部から排出後の伝熱媒体が流通する流路に近接していることをいい、第2反応部に供給されるアノードガス及びカソードガスの流路が、その他の流路よりも前記伝熱部に供給前の伝熱媒体が流通する流路に近接していることをいう。
【0029】
第2の本発明の高分子電解質形燃料電池スタックは、前記第1反応部には、前記伝熱部に供給前の伝熱媒体が流通する流路よりも前記伝熱部から排出後の伝熱媒体が流通する流路に近接した流路を流通したアノードガス及びカソードガスのうちの少なくとも一方が供給され、
前記第2反応部には、前記伝熱部から排出後の伝熱媒体が流通する流路よりも前記伝熱部に供給前の伝熱媒体が流通する流路に近接した流路を流通したアノードガス及びカソードガスのうちの少なくとも一方が供給されるとよい。このように構成するとより確実に本発明の効果を得ることができる。
【0030】
第3の本発明の高分子電解質形燃料電池スタックは、伝熱部に供給前の伝熱媒体が流通する伝熱媒体供給マニホールド、前記伝熱部から排出後の伝熱媒体が流通する伝熱媒体排出マニホールド、前記反応部に供給前のアノードガスが流通するアノードガス供給マニホールド、前記反応部から排出後のアノードガスが流通するアノードガス排出マニホールド、前記反応部に供給前のカソードガスが流通するカソードガス供給マニホールド、及び前記反応部から排出後のカソードガスが流通するカソードガス排出マニホールドが、それぞれ、前記積層された反応部及び伝熱部の側部において積層方向に延びて形成されており、
前記アノードガス供給マニホールド及び前記カソードガス供給マニホールドのうち少なくともいずれかは第1の供給マニホールド及び第2の供給マニホールドの2本のマニホールドからなり、
前記第1の供給マニホールドは前記伝熱媒体排出マニホールドに近接して形成されるとともに、前記第1反応部のアノードガス流路あるいはカソードガス流路に接続され、
前記第2の供給マニホールドは前記伝熱媒体供給マニホールドに近接して形成されるとともに、前記第2反応部のアノードガス流路あるいはカソードガス流路に接続されているとよい。このように構成すると、本発明の効果をより確実に得ることができる。
【0031】
第4の本発明の高分子電解質形燃料電池スタックは、前記反応部は、前記伝熱媒体供給マニホールド、前記伝熱媒体排出マニホールド、前記アノードガス供給マニホールド、前記アノードガス排出マニホールド、前記カソードガス供給マニホールド、及び前記カソードガス排出マニホールドを構成するマニホールド孔が、その厚さ方向に貫通してそれぞれ形成され、かつ、内面側に前記アノードガス供給マニホールド及び前記アノードガス排出マニホールドを構成するマニホールド孔同士を結ぶアノードガス流路溝が形成された、平板状のアノードセパレータと、
前記伝熱媒体供給マニホールド、前記伝熱媒体排出マニホールド、前記アノードガス供給マニホールド、前記アノードガス排出マニホールド、前記カソードガス供給マニホールド、及び前記カソードガス排出マニホールドを構成するマニホールド孔が、その厚さ方向に貫通してそれぞれ形成され、かつ、内面側に前記カソードガス供給マニホールド及び前記カソードガス排出マニホールドを構成するマニホールド孔同士を結ぶカソードガス流路溝が形成された、平板状のカソードセパレータと、
前記伝熱媒体供給マニホールド、前記伝熱媒体排出マニホールド、前記アノードガス供給マニホールド、前記アノードガス排出マニホールド、前記カソードガス供給マニホールド、及び前記カソードガス排出マニホールドを構成するマニホールド孔が、その厚さ方向に貫通してそれぞれ形成された、平板状の枠体、ならびに該枠体の枠内に配設された前記MEAを有するMEA部材と、を備え、該アノードセパレータの内面及び該カソードセパレータの内面に該MEA部材が挟まれて構成されているとよい。このように構成すると、本発明の効果をより確実に得ることができる。
【0032】
第5の本発明の高分子電解質形燃料電池は、請求項1に記載の高分子電解質形燃料電池スタックと、
前記第1反応部にアノードガスを供給する第1アノードガス供給系統と、
前記第1反応部にカソードガスを供給する第1カソードガス供給系統と、
前記第2反応部にアノードガスを供給する第2アノードガス供給系統と、
前記第2反応部にカソードガスを供給する第2カソードガス供給系統と、
前記第1アノードガス供給系統、第2アノードガス供給系統、第1カソードガス供給系統、及び第2カソードガス供給系統それぞれに配設された流量制御装置群と、を有する。
【0033】
このように構成すると、PEFCの熱効率の低下を抑制しつつ、PEFCシステムの発電性能の安定性をより早期に高めることができる。
【0034】
第6の本発明の高分子電解質形燃料電池は、前記第1反応部におけるアノードガス及びカソードガスの圧力損失を検知する圧力計、前記第2反応部におけるアノードガス及びカソードガスの圧力損失を検知する圧力計、前記第1反応部及び前記第2反応部の発電電圧を検知する電圧計の少なくともいずれかを有してなる測定部と、
前記測定部の検知情報に基づいて、前記流量制御装置群を制御する制御装置と、を備えているとよい。このように構成すると、略自動的にPEFCシステムの発電性能の安定性を高めることができる。
【発明の効果】
【0035】
以上のように、本発明の高分子電解質形燃料電池スタックは、PEFCの熱効率の低下を抑制しつつ、スタック積層方向の温度偏差をより早期に抑制することができるという効果を奏する。また、本発明の高分子電解質形燃料電池システムは、PEFCの熱効率の低下を抑制しつつ、PEFCシステムの発電性能の安定性をより早期に高めることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明を行う。
【0037】
(実施形態)
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
【0038】
図1は、本発明の実施形態の高分子電解質形燃料電池スタックの積層構造を示す3面図である。
【0039】
なお、スタック100は、家庭用コージェネレーションシステム、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、家電製品、携帯用コンピュータ装置、携帯電話、携帯用音響機器、携帯用情報端末などの携帯電気装置に例示されるようなPEFCシステムに用いられる。
【0040】
図1に示すように、スタック100は、矩形平板状の第1セル(第1反応部)110及び第2セル(第2反応部)210が積層された、直方体状を形成して構成されている。
【0041】
そして、スタック100には、1以上の第1セル110が積層されている第1反応層Qがスタック100の積層方向両端部に構成されている。第1反応層Qの第1セル110の積層数は、スタック100の両端部において異なっていてもよい。これによって、第1セル110の積層数は、スタック100の積層方向の温度偏差の状態、あるいは発電性能の安定性に応じて加減して調整することができる。
【0042】
また、1以上の第2セル210が積層されている第2反応層Pが、スタック100の積層方向中央部に構成されている。ここでは、スタック100は、第2反応層Pの積層方向両端が第1反応層Qの間に挟まれて構成されている。
【0043】
第1セル110は、第1アノードセパレータ19A及び第1カソードセパレータ19CがMEA部材7を挟んで構成されている。同様に、第2セル210は、第2アノードセパレータ29A及び第2カソードセパレータ29CがMEA部材7を挟んで構成されている。
【0044】
第1反応層Qは、従来のスタックの運転動作中におけるMEA部材7とその中央部側に隣接するMEA部材7との隣接温度差が、スタック最端部における隣接温度差とほぼ同程度の隣接温度差があるセルの積層領域を言う。ここで、隣接温度差は、スタックの運転動作中においてスタック最端部からスタック中央部に向かって小さくなる傾向にある。しかし、具体的な積層領域は、スタックの設計要素によって異なる。積層領域に影響を及ぼす設計要素としては、アノードセパレータ及びカソードセパレータの材質、セルの寸法、スタックの断熱構造が例示される。したがって、第1反応層Qは、スタック100と同じ材質及び構造の従来構造のスタックを用いた隣接温度差の計測によって、決定することができる。あるいは、スタック両端部にそれぞれ第1セル110を5つ構成したスタック100を暫定的に組み上げて、発電出力の状態を検証しながら、好適な第1セル110の積層数を決定することもできる。
【0045】
第2反応層Pは、第1反応層Q以外の領域である。
【0046】
スタック100の積層方向両端には一対の端部材が配設されて構成されている。すなわち、セル110、210と同じ平面外形を有する集電板50,51,絶縁板60,61及び端板70,71が両端に積層されて、端部間が締結具82によって、スタックが締結されている。
【0047】
集電板50,51には、それぞれ電極59が構成されている。
【0048】
一方の端板70には、一対の伝熱媒体供給部74I、第1アノードガス供給部172I、第2アノードガス供給部272I、第1カソードガス供給部173I、及び第2カソードガス供給部273Iが構成されている。
【0049】
他方の端板71には、伝熱媒体排出部74E、アノードガス排出部72E、及びカソードガス排出部73Eが構成されている。
【0050】
そして、これら供給部及び排出部からスタック端部のセル110に連通する流通孔が集電板50、51,絶縁板60、61及び端板70、71を貫通して形成されている。
【0051】
次に、スタック100のスタック端部の構造を説明する。
【0052】
図2は、図1のスタックの一方の端部の構造を示す分解斜視図である。
【0053】
締結具82は、ボルト・ナットによって構成されている。ボルト孔15は、集電板50、51、絶縁板60、61,端板70、71及びセル110,210を貫通するようにして、それぞれの矩形平面の4隅に穿たれている。ボルト82Bは、ボルト孔15に挿通されて、スタック100の両端間を貫通している。ボルト82Bの両端には座金82W及びナット82Nが装着されている。
【0054】
絶縁板60,61および端板70,71は電気絶縁性材料からなる。
【0055】
一対の伝熱媒体供給部74I、第1アノードガス供給部172I、第2アノードガス供給部272I、第1カソードガス供給部173I、及び第2カソードガス供給部273Iは、外部の配管に接続可能な部材によって構成されている。ここでは、図示するように流通孔と、それに装着されるノズルと、によって構成されている。ノズルの代わりに弁、袋ナットに例示される公知の手段によって構成することも可能である。他方の端板71においても、伝熱媒体排出部74E、アノードガス排出部72E、及びカソードガス排出部73Eが同様に構成されている(図示せず)。
【0056】
一方の絶縁板60には、各供給部74I、172I、272I、173I、273Iにそれぞれ通ずる流通孔64I、162I、262I、163I、263Iが形成されている。他方の絶縁版61にも、各排出部72E,73E,74Eに通ずる流通孔が形成されている(図示せず)。
【0057】
集電板50,51は銅金属等導電性材料からなり、それぞれ端子59が形成されている。そして、一方の集電板50には、絶縁板60の流通孔64Iと伝熱媒体供給マニホールド94Iとを連通する流通孔54I、流通孔162Iと第1アノードガス供給マニホールド192Iとを連通する流通孔152I、流通孔262Iと第2アノードガス供給マニホールド292Iとを連通する流通孔252I、流通孔163Iと第1カソードガス供給マニホールド193Iとを連通する流通孔153I、及び流通孔263Iと第2カソードガス供給マニホールド293Iとを連通する流通孔253Iが形成されている。他方の集電板51にも、各排出部72E,73E,74Eと各各排出マニホールド92E,93E,94Eとを連通する流通孔が形成されている(図示せず)。したがって、一方の集電板50には、アノードガス排出マニホールド92E、カソードガス排出マニホールド93E及び伝熱媒体排出マニホールド94Eの流通孔が形成されていないので、集電板50によってこれらマニホールドの延伸端が構成されている。同様にして、他方の集電板51には、伝熱媒体供給マニホールド94I、第1アノードガス供給マニホールド192I、第2アノードガス供給マニホールド292I、第1カソードガス供給マニホールド193I、及び第2カソードガス供給マニホールド293Iの流通孔が形成されていないので、集電板51によってこれらマニホールドの延伸端が構成されている。
【0058】
そして、後述するように、第1アノードガス供給マニホールド192I及び第1カソードガス供給マニホールド193Iは、それぞれ第1セル110内の流路によってアノードガス排出マニホールド92E及びカソードガス排出マニホールド93Eに通じている。また、第2アノードガス供給マニホールド292I及び第2カソードガス供給マニホールド293Iは、それぞれ第2セル210内の流路によってアノードガス排出マニホールド92E及びカソードガス排出マニホールド93Eに通じている。伝熱媒体供給マニホールド94Iはセル110、210の積層間を通る流路によって伝熱媒体排出マニホールド94Eに通じている。
【0059】
したがって、スタック100内には、5つの流路が構成されている。すなわち、第1アノードガス供給部172Iから第1アノードガス供給マニホールド192I、第1セル110内、及びアノードガス排出マニホールド92Eを経て、アノードガス排出部72Eに通ずる第1のアノードガスの流路が構成されている。第2アノードガス供給部272Iから第2アノードガス供給マニホールド292I、第2セル210内、及びアノードガス排出マニホールド92Eを経て、アノードガス排出部72Eに通ずる第2のアノードガスの流路が構成されている。第1カソードガス供給部173Iから第1カソードガス供給マニホールド193I、第1セル110内、及びカソードガス排出マニホールド93Eを経て、カソードガス排出部73Eに通ずる第1のカソードガスの流路が構成されている。第2カソードガス供給部273Iから第2カソードガス供給マニホールド293I、第2セル210内、及びカソードガス排出マニホールド93Eを経て、カソードガス排出部73Eに通ずる第2のカソードガスの流路が構成されている。そして、伝熱媒体供給部74Iから伝熱媒体供給マニホールド94I、第1セル110及び第2セルの積層間、ならびに伝熱媒体排出マニホールド94Eを経て、伝熱媒体排出部74Eに通ずる流路が構成されている。
【0060】
なお、図2では、スタック最端部の第1セル110のカソードセパレータ19Cの外面における、一対の伝熱媒体供給マニホールド孔34Iから伝熱媒体排出マニホールド孔34Eを結んで延びる伝熱媒体流路溝36が示されている。また、図示しないが、他方のスタック最端部に位置するアノードセパレータの外面にも伝熱媒体流路溝が形成されている。
【0061】
ここで、本発明の特徴の一部である各種マニホールドの位置を説明する。
【0062】
図2に示すように、伝熱媒体が流通する伝熱媒体供給マニホールド94I及び伝熱媒体排出マニホールド94E、アノードガスが流通する第1アノードガス供給マニホールド192I、第2アノードガス供給マニホールド292I及びアノードガス排出マニホールド92E、ならびに、カソードガスが流通する第1カソードガス供給マニホールド193I、第2カソードガス供給マニホールド293I及びカソードガス排出マニホールド93Eが、それぞれ、スタック100の側部において積層方向に延びて形成されている。
【0063】
ここで、伝熱媒体排出マニホールド94Eの両脇にそれぞれ第1アノードガス供給マニホールド192I及び第1カソードガス供給マニホールド193Iが伝熱媒体供給マニホールド94Iに平行して形成されている。また、伝熱媒体供給マニホールド94Iの両脇にそれぞれ第2アノードガス供給マニホールド292I及び第2カソードガス供給マニホールド293Iが伝熱媒体供給マニホールド94Iに平行して形成されている。
【0064】
したがって、第1アノードガス供給マニホールド192I及び第1カソードガス供給マニホールド193Iはそれぞれ伝熱媒体排出マニホールド94Eに近接して形成されているので、第1アノードガス供給マニホールド192I及び第1カソードガス供給マニホールド193Iを流通するアノードガス及びカソードガスは、伝熱媒体排出マニホールド94Eを流通する伝熱媒体との熱交換をより良く行うことができる。
【0065】
ここで、近接とは、第1アノードガス供給マニホールド192I及び第1カソードガス供給マニホールド193Iと伝熱媒体排出マニホールド94Eとの離隔距離が他のマニホールドと伝熱媒体排出マニホールド94Eとの離隔距離よりも短いことをいう。
【0066】
特に、第1アノードガス供給マニホールド192I及び第1カソードガス供給マニホールド193Iと伝熱媒体排出マニホールド94Eとの離隔距離が、それらと伝熱媒体供給マニホールド94Iとの離隔距離よりも短いと好適である。すなわち、第1アノードガス供給マニホールド192I及び第1カソードガス供給マニホールド193Iが伝熱媒体供給マニホールド94Iよりも伝熱媒体排出マニホールド94Eに近接して形成されていると好適である。
【0067】
また、第2アノードガス供給マニホールド292I及び第2カソードガス供給マニホールド293Iはそれぞれ伝熱媒体供給マニホールド94Iに近接して形成されているので、第2アノードガス供給マニホールド292I及び第2カソードガス供給マニホールド293Iを流通するアノードガス及びカソードガスは、伝熱媒体供給マニホールド94Iを流通する伝熱媒体との熱交換をより良く行うことができる。
【0068】
ここで、近接とは、第2アノードガス供給マニホールド292I及び第2カソードガス供給マニホールド293Iと伝熱媒体供給マニホールド94Iとの離隔距離が他のマニホールドと伝熱媒体供給マニホールド94Iとの離隔距離よりも短いことをいう。
【0069】
特に、第2アノードガス供給マニホールド292I及び第2カソードガス供給マニホールド293Iと伝熱媒体供給マニホールド94Iとの離隔距離が、それらと伝熱媒体排出マニホールド94Eとの離隔距離よりも短いと好適である。すなわち、第2アノードガス供給マニホールド292I及び第2カソードガス供給マニホールド293Iが伝熱媒体排出マニホールド94Eよりも伝熱媒体供給マニホールド94Iに近接して形成されていると好適である。
【0070】
次に、スタック100内のセル間の積層部(伝熱部)を説明する。
【0071】
図3は、図1のスタックのセル間の積層部を示す分解斜視図である。
【0072】
図3では、第1セル110同士間における構造を例示しているが、第2セル210の外面も同様である。したがって、スタック100のセル110、210間は全て同様の構造となっている。
【0073】
図3に示すように、アノードセパレータ19Aの外面には、一対の伝熱媒体供給マニホールド孔24Iそれぞれと伝熱媒体排出マニホールド孔24Eとの間を結ぶようにして伝熱媒体流路溝(伝熱媒体流路)26が形成されている。伝熱媒体流路溝26は、外面の中央部全体に亘って蛇行するサーペンタイン状に形成されている。同様にして、カソードセパレータ19Cの外面には、一対の伝熱媒体供給マニホールド孔34Iそれぞれと伝熱媒体排出マニホールド孔34Eとの間を結ぶようにして伝熱媒体流路溝(伝熱媒体流路)36が形成されている。伝熱媒体流路溝36は、外面の中央部全体に亘って蛇行するサーペンタイン状に形成されている。また、セル積層時には、伝熱媒体流路溝26と伝熱媒体流路溝36とが接合するように形成されている。そして、アノードセパレータ19Aの外面及びカソードセパレータ19Cの外面は、伝熱媒体流路溝26,36の周囲をシシールするように形成されている。このような構造により、伝熱媒体は、外部に漏出することなく流通し、セル110,210との熱交換をより良く行うことができる。
【0074】
次に、本発明の特徴の一部である第1セル110と第2セル210との構造の相違を説明する。
【0075】
図4は、図1の第1反応層のセルの積層構造を示す部分分解斜視図である。
【0076】
図4に示すように、セル110は、MEA部材7を一対の平板状のアノードセパレータ19A及びカソードセパレータ19C(両者をセパレータと総称する)で挟んで構成されている。
【0077】
平面視において、セパレータ19A,19C及びMEA部材7の周縁部には、それぞれスタック100において連なって、第1アノードガス供給マニホールド192Iを形成する第1アノードガス供給マニホールド孔112I、122I、132I、第2アノードガス供給マニホールド292Iを形成する第2アノードガス供給マニホールド孔212I、222I、232I、およびアノードガス排出マニホールド92Eを形成するアノードガス排出マニホールド孔12E、22E、32Eが、それらの主面19A、19C、7を貫通するようにして穿たれている。また、同様にして、第1カソードガス供給マニホールド193Iを形成する第1カソードガス供給マニホールド孔113I、123I、133I、第2カソードガス供給マニホールド293Iを形成する第2カソードガス供給マニホールド孔213I、223I、233I、およびカソードガス排出マニホールド93Eを形成するカソードガス排出マニホールド孔13E、23E、33Eが、それらの主面19A、19C、7を貫通するようにして穿たれている。さらに、同様にして、一対の伝熱媒体供給マニホールド94Iを形成する一対の伝熱媒体供給マニホールド孔14I、24I、34I、および伝熱媒体排出マニホールド94Eを形成する伝熱媒体排出マニホールド孔14E、24E、34Eが、それらの主面19A、19C、7を貫通するようにして穿たれている。
【0078】
そして、アノードセパレータ19Aの内面には、第1アノードガス供給マニホールド孔122Iとアノードガス排出マニホールド孔22Eとの間を結ぶようにしてアノードガス流路溝21が形成されている。アノードガス流路溝21は、セル110組立状態においてMEA5が当接する領域において、サーペンタイン状に形成されている。同様にして、カソードセパレータ19Cの内面には、第1カソードガス供給マニホールド孔133Iとカソードガス排出マニホールド孔33Eとの間を結ぶようにしてカソードガス流路溝31が形成されている。カソードガス流路溝31は、セル110組立状態においてMEA5が当接する領域において、サーペンタイン状に形成されている。このような構造によって、第1セル110組立状態において、MEA部材7とアノードセパレータ19Aとの間には、第1アノードガス供給マニホールド192Iのアノードガスが第1セル110内に供給され、第1カソードガス供給マニホールド193Iのカソードガスが第1セル110内に供給される。すなわち、第1セル110には、伝熱媒体排出マニホールド94Eとの熱交換がより良く行われたアノードガス及びカソードガスが供給される。
【0079】
図5は、図1の第2反応層のセルの積層構造を示す部分分解斜視図である。
【0080】
図5に示すように、第2セル210は、アノードガス流路溝21の上流端及びカソードガス流路溝31の上流端が、それぞれ第2アノードガス供給マニホールド孔222I及び第2カソードガス供給マニホールド孔233Iに接続されている点を除いて、図4に示す第1セル110と同じである。
【0081】
アノードセパレータ29Aの内面のアノードガス流路溝21は、第2アノードガス供給マニホールド孔222Iとアノードガス排出マニホールド孔22Eとの間を結んで形成されている。また、カソードセパレータ29Cの内面のカソードガス流路溝31は、第2カソードガス供給マニホールド孔233Iとカソードガス排出マニホールド孔33Eとの間を結んで形成されている。これによって、第2セル210組立状態において、MEA部材7とアノードセパレータ29Aとの間には、第2アノードガス供給マニホールド292Iのアノードガスが第2セル210内に供給され、第2カソードガス供給マニホールド293Iのカソードガスが第2セル210内に供給される。すなわち、第2セル210には、伝熱媒体供給マニホールド94Iとの熱交換がより良く行われたアノードガス及びカソードガスが供給される。
【0082】
なお、アノードガス流路溝21、カソードガス流路溝31、および伝熱媒体流路溝26,36は、それぞれ水平方向に伸びる直線部と隣接する直線部をつなぐターン部とから構成されているが、並行する溝の数およびターン部の数はそれぞれ限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定することが可能である。
【0083】
次に、セル110,210の構造を説明する。
【0084】
図6は、図4のセルの構造を示す要部断面図である。図6では第1セル110を例示するが第2セル210も同様の構造である。
【0085】
MEA部材7は、MEA5の周縁に延在する高分子電解膜が一対のガスケット(枠体)6で挟まれて構成されている。したがって、ガスケット6の中央開口部(枠内)の両面にはMEA5が露出している。また、ガスケット6を貫通して第1アノードガス供給マニホールド孔112I、第2アノードガス供給マニホールド孔212I、アノードガス排出マニホールド孔12E、第1カソードガス供給マニホールド孔113I、第2カソードガス供給マニホールド孔213I、カソードガス排出マニホールド孔13E、伝熱媒体供給マニホールド孔14I、伝熱媒体排出マニホールド孔14Eが穿たれている。ガスケット6の材質は、耐環境性を有する弾性物質であり、例示としては、フッ素系ゴムが好適である。
【0086】
MEA5は、高分子電解質膜1とその両面に積層して構成された一対の電極とを有して構成されている。具体的には、MEA5は、水素イオンを選択的に透過すると考えられているイオン交換膜からなる高分子電解質膜1と、高分子電解質膜1の周縁部より内側の部分の両面に形成された一対の電極層を有して構成されている。電極層は、白金族金属触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする一対のアノード側触媒層2A及びカソード側触媒層2Cと、この一対の触媒層2A,2Cの外面に配設された一対の及びアノード側ガス拡散層4A及びカソード側ガス拡散層4Cとを備えて構成されている。ここで、ガス拡散層4A,4Cは、通気性と電子伝導性を併せ持つように多孔質構造を有している。すなわち、カソード側触媒層2Cおよびカソード側ガス拡散層4Cがカソード電極を構成し、アノード側触媒層2Aおよびアノード側ガス拡散層4Aがアノード電極を構成している。
【0087】
高分子電解質膜1には、パーフルオロスルホン酸からなる膜が好適である。例えば、DuPont社製Nafion(登録商標)膜が例示される。そして、MEA5は、一般的には、高分子電解質膜上に触媒層2A、2C及びガス拡散層4A,4Cを順次塗布、転写、ホットプレス等の方法により形成して製造される。あるいは、このようにして製造されたMEA5の市販品を利用することもできる。
【0088】
アノードセパレータ19Aおよびカソードセパレータ19C(以下、両者をセパレータと総称する)は、導電性材料で構成されている。例えば、黒鉛板、フェノール樹脂を含浸させた黒鉛板、金属板からなる。したがって、MEA5において発生した電気エネルギーは、ガス拡散層4A、4C及びセパレータ9A、9Cを導通するので外部へ取り出すことができる。
【0089】
アノードセパレータ19Aの内面及びカソードセパレータ19Cの周縁部にはMEA部材7のガスケット6の両面がそれぞれ当接してアノードガス流路溝21及びカソードセパレータ31の溝蓋となる。さらに、アノードセパレータ19Aの内面の中央部には、MEA5のアノード側ガス拡散層4Aが当接している。すなわち、アノードセパレータ19Aのアノードガス流路溝21がアノード側ガス拡散層4Aに当接している。これによって、アノードガス流路溝21内を流通するアノードガスは、外部に漏出することなく、多孔質のアノード側ガス拡散層4A内部に拡散しながら侵入して、アノード側触媒層2Aまで到達する。同様にして、カソードセパレータ19Cのカソードガス流路溝31がカソード側ガス拡散層4Cに当接している。これによって、カソードガス流路溝31内を流通するカソードガスは、外部に漏出することなく、多孔質のカソード側ガス拡散層4C内部に拡散しながら侵入して、カソード側触媒層2Cまで到達する。そして、電池反応が可能となる。
【0090】
次に、スタック100を用いたPEFCシステムを例示して説明する。
【0091】
図7は、図1のスタックを用いたPEFCシステムの構成を概略的に示す図である。
【0092】
図7に示すように、一対の伝熱媒体供給部74Iには伝熱媒体供給系統44が接続される。伝熱媒体供給系統44は、配管、ポンプに例示されるような供給装置(図示せず)、及び熱交換器に例示されるような温度調節装置(図示せず)を有して構成されている。好適な伝熱媒体Wとしては水、シリコンオイルが例示される。
【0093】
第1アノードガス供給部172Iには第1アノードガス供給系統142Iが接続される。また、第2アノードガス供給部272Iには第2アノードガス供給系統242Iが接続される。第1カソードガス供給部173Iには第1カソードガス供給系統143Iが接続される。また、第2カソードガス供給部273Iには第2カソードガス供給系統243Iが接続される。アノードガス排出部72Eにはアノードガス排出系統42Eが接続される。また、カソードガス排出部73Eにはカソードガス排出系統43Eが接続される。
【0094】
ここで、第1及び第2アノードガス供給系統142I、242Iは、それぞれ配管、ポンプに例示されるような供給装置(図示せず)、加湿及び加温装置(図示せず)、ならびに供給装置より精確な流量制御を可能とする流量制御装置142C、242Cを有して構成されている。本実施形態では、第1アノードガス供給系統142Iと第2アノードガス供給系統242Iとは、供給装置ならびに加湿及び加温装置を共有して、流量制御装置142C,242Cをそれぞれの配管に有して構成されている。
【0095】
好適なアノードガスAとしては水素ガス、あるいは炭化水素を原料とする水蒸気改質反応によって生成された改質ガスが例示される。
【0096】
同様にして、第1及び第2カソードガス供給系統143I、243Iは、それぞれ配管、ポンプに例示されるような供給装置(図示せず)、加湿及び加熱装置(図示せず)、及び供給装置より精確な流量制御を可能とする流量制御装置143C、243Cを有して構成されている。本実施形態では、第1カソードガス供給系統143Iと第2カソードガス供給系統243Iとは、供給装置ならびに加湿及び加温装置を共有して、流量制御装置143C,243Cをそれぞれの配管に有して構成されている。
【0097】
好適なカソードガスCとしては、酸素ガス、あるいは空気が例示される。
【0098】
流量制御装置142C,143C,242C、243Cは、ニードル弁、質量流量制御装置(Mass Flow Controller)に例示されるような公知の手段を用いることができる。
【0099】
ここで、第2反応層P及び第1反応層Qにおけるアノードガス及びカソードガスの流路形態の相違に伴って流路抵抗も相違する。この流路抵抗の相違は、第2反応層P及び第1反応層Qにおけるアノードガス及びカソードガスの流量差を招来し、第2反応層P及び第1反応層Qにおける発電出力の相違、つまりスタック100の発電性能の低下を招来する。ところが、この流量制御装置群(142C,143C,242C、243C)の配設によって、第2反応層P及び第1反応層Qそれぞれにおいてアノードガス及びカソードガスそれぞれの流量を調整することが可能となる。つまり、第1セル110のアノードガス及びカソードガスの流量と、第2セル210のアノードガス及びカソードガスの流量との流量差を抑制することができ、スタック100の発電性能の安定性を高めることが可能となる。
【0100】
アノードガス排出部72Eにはアノードガス供給系統42Eが接続されている。また、カソードガス排出部73Eにはカソードガス排出系統43Eが接続されている。そして、第1アノードガス供給系統142Iとアノードガス排出系統42Eとには、両系統間の圧力差を検知する圧力検知装置142Pが配設されている。第2アノードガス供給系統242Iとアノードガス排出系統42Eとには、両系統間の圧力差を検知する圧力検知装置242Pが配設されている。第1カソードガス供給系統143Iとカソードガス排出系統43Eとには、両系統間の圧力差を検知する圧力検知装置143Pが配設されている。第2カソードガス供給系統243Iとカソードガス排出系統43Eとには、両系統間の圧力差を検知する圧力検知装置243Pが配設されている。これら圧力検出装置によって、第1アノードガス供給マニホールド192I、第1カソードガス供給マニホールド193I、第2アノードガス供給マニホールド292I、及び第2カソードガス供給マニホールド293Iと、アノードガス排出マニホールド92E及びカソードガス排出マニホールド93Eとの圧力差を検知することができる。
【0101】
制御装置200は、圧力検出装置142P,143P,242P,243Pの検知情報を取得して、流量制御装置群(142C,143C,242C、243C)を制御するように構成されている。
【0102】
なお、圧力検出装置142P,143P,242P,243Pは、第1アノードガス供給マニホールド192I、第1カソードガス供給マニホールド193I、第2アノードガス供給マニホールド292I、第2カソードガス供給マニホールド293I、アノードガス排出マニホールド92E、及びカソードガス排出マニホールド93E内部の圧力、あるいはこれらの圧力差を直接検出するように配設されてもよい。あるいは、第1アノードガス供給部172I、第2アノードガス供給部272I、第1カソードガス供給部173I、第2カソードガス供給部273I、アノードガス排出部72E及びカソードガス排出部73Eにそれぞれ圧力検出装置を装着し、制御装置200が差分を算出するように構成することもできる。あるいは、各セル110,210の発電電圧を検知する電圧計を備えて、制御装置200が電圧計の検知電圧(検知情報)を取得するようにしてもよい。このように構成すると、略自動的に発電性能の安定性を高めることができる。
【0103】
次に、以上のように構成されたPEFCシステムの発電運転動作を例示して説明する。
【0104】
伝熱媒体Wは、伝熱媒体供給系統44Iにおいて72℃に例示されるような電池反応に適した温度に調整される。そして、調整された伝熱媒体Wは、伝熱媒体供給部74Iに供給される。また、伝熱媒体の流量は、スタック100の温度状態に応じて、スタック100の温度が電池反応に適した温度となるように、調整される。
【0105】
また、アノードガスAは、第1アノードガス供給系統142I及び第2アノードガス供給系統242Iにおいて露点72℃に例示されるような電池反応に適した温度及び湿度に調整される。そして、調整されたアノードガスAは、第1アノードガス供給部172I及び第2アノードガス供給部272Iに供給される。
【0106】
さらに、カソードガスCは、第1カソードガス供給系統143I及び第2カソードガス供給系統243Iにおいて露点72℃に例示されるような電池反応に適した温度及び湿度に調整される。そして調整されたカソードガスCは、第1カソードガス供給部173I及び第2カソードガス供給部273Iに供給される。
【0107】
ここで、これら供給温度は、発電電圧の振動の有無のようなスタック100の発電出力状況に応じて、適宜調整される。
【0108】
伝熱媒体供給マニホールド94Iに供給された伝熱媒体Wは、伝熱媒体供給マニホールド94Iから伝熱媒体流路溝26,36に分流する。そして、第1セル110及び第2セル210の電池反応熱を吸熱してより高温となって伝熱媒体排出マニホールド94Eに合流して、伝熱媒体排出部74Eに排出される。したがって、伝熱媒体排出マニホールド孔14E、24E、34E周囲のMEA部材7,アノードセパレータ19A,29A及びカソードセパレータ19C、29Cには伝熱媒体排出マニホールド94Eの熱が輻射あるいは伝導される。この輻射熱あるいは伝導熱によって、伝熱媒体排出マニホールド94Eに近接する第1アノードガス供給マニホールド192I及び第1カソードガス供給マニホールド193Iを流通するアノードガス及びカソードガスは、それぞれ加温される。
【0109】
そして、第1アノードガス供給部172Iにおける温度よりも高温に加温されたアノードガスAが第1セル110に供給される。同様にして、第1カソードガス供給部173Iにおける温度よりも高温に加温されたカソードガスCが第1セル110に供給される。
【0110】
他方、第2アノードガス供給マニホールド292Iに近接する伝熱媒体供給マニホールド94Iには、第2アノードガス供給部272Iのアノードガス及び第2カソードガス供給部273Iのカソードガスとほぼ同程度の温度の伝熱媒体が供給されている。したがって、第2アノードガス供給マニホールド292Iに供給されたアノードガスは、伝熱媒体供給マニホールド94Iの輻射熱あるいは伝導熱によって、放熱が抑制されて、ほぼ第2アノードガス供給部272Iにおける温度が維持されて、第2セル210に供給される。同様にして、第2カソードガス供給部273Iにおける温度が維持されたカソードガスCが第2セル210に供給される。
【0111】
そして、第1アノードガス供給マニホールド192IのアノードガスA及び第1カソードガス供給マニホールド193IのカソードガスCは、それぞれ第1セル110のアノードガス流路21及びカソードガス流路31に分流する。
【0112】
また、第2アノードガス供給マニホールド292IのアノードガスA及び第2カソードガス供給マニホールド293IのカソードガスCは、それぞれ第2セル210のアノードガス流路21及びカソードガス流路31に分流する。
【0113】
第1セル110及び第2セル210のMEA5を隔膜にしてアノードガスA及びカソードガスCが流通して電池反応が起こる。
【0114】
第1セル110及び第2セルを流通したアノードガスAは、アノードガス排出マニホールド92Eに合流して、アノードガス排出部72Eからアノードガス排出系統42Eに排出される。
【0115】
第1セル110及び第2セルを流通したカソードガスCは、カソードガス排出マニホールド93Eに合流して、カソードガス排出部73Eからカソードガス排出系統43Eに排出される。
【0116】
そして、制御装置200は、圧力検出装置44P,142P,143P,242P,243Pの検知情報を取得して、流量制御装置群(142C,143C,242C、243C)を制御する。
【0117】
以上のように、本実施形態において、第1セル110が積層されてなる第1反応層Qには、アノードガス供給系統142I,242Iにおける状態よりもより高温となったカソードガス及びアノードガスが供給され、かつ第1反応層Qはスタック100の積層方向端部に構成されているので、スタック100の積層方向の温度偏差がより早期に抑制される。また、アノードガス及びカソードガスの加温には、従来熱損失となっていた、伝熱媒体排出マニホールド94Eからの輻射熱あるいは伝導熱が利用されるので、PEFCの熱効率の低下が抑制される。
【0118】
また、流量制御装置142C、143C、242C、243Cによって、第2反応層P及び第1反応層Qを流通するアノードガス及びカソードガスの流量を調整することができる。
【0119】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0120】
例えば、本発明は、内部マニホールド型スタックのみならず外部マニホールド型スタックにおいても適用することができる。この場合には、伝熱媒体マニホールドとアノードガスマニホールドあるいはカソードガスマニホールドとの間で輻射熱又は伝導熱により上述の熱伝達が可能なように構成されている。具体的には、それぞれ近接するマニホールド部材同士が一緒に断熱材で被覆されている。
【0121】
また、各マニホールドの本数は上記の実施形態に限定されない。すなわち、伝熱媒体マニホールドとアノードガスマニホールドあるいはカソードガスマニホールドとの間での熱伝達の構造が上述のように構築されるように配置されれば、本発明を実施することができる。
【0122】
さらに、本実施形態では、アノードガス供給マニホールド及びカソードガス供給マニホールドの両方において第1の供給マニホールド及び第2の供給マニホールドを形成した。しかし、アノードガス及びカソードガスのいずれか一方においてのみ第1の供給マニホールド及び第2の供給マニホールドを形成することもできる。このように構成しても、第1反応層Qにはアノードガスあるいはカソードガスのいずれかがより高温の状態で供給されるので、スタック100の積層方向の温度偏差は抑制される。
【0123】
さらに、各マニホールド及び供給部の構成は変形例1のように変更可能である。
【0124】
[変形例1]
図8は、本変形例のスタックの一方のスタック端部の構造を示す分解斜視図である。以下、変形された構成について説明する。
【0125】
図に示すように、本変形例では、全ての供給部、すなわち、伝熱媒体供給部74I、第1アノードガス供給部172I、第2アノードガス供給部272I、第1カソードガス供給部173I、及び第2カソードガス供給部273I、伝熱媒体排出部74E、アノードガス排出部72E、及びカソードガス排出部73Eが一方の端板50に構成されている。したがって、他方の集電板51には、供給部及び排出部が構成されていない。
【0126】
また、伝熱媒体供給マニホールド94Iは一本となっている。すなわち、図に示すように伝熱媒体供給マニホールド孔34Iから、伝熱媒体排出マニホールド孔34Eを結んで伝熱媒体流路溝36が形成されている。そして、伝熱媒体流路溝36は、複数の流路に分岐して構成されている。
【0127】
そして、伝熱媒体供給マニホールド94Iの両脇にそれぞれ第2アノードガス供給マニホールド292I及び第2カソードガス供給マニホールド293Iが伝熱媒体供給マニホールド94Iに平行して形成されている。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の高分子電解質形燃料電池スタックは、PEFCの熱効率の低下を抑制しつつ、スタック積層方向の温度偏差をより早期に抑制することができる高分子電解質形燃料電池スタックとして有用である。また、本発明の高分子電解質形燃料電池システムは、PEFCの熱効率の低下を抑制しつつ、PEFCシステムの発電性能の安定性をより早期に高めることができる高分子電解質形燃料電池システムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の実施形態の高分子電解質形燃料電池スタックの積層構造を示す3面図である。
【図2】図1のスタックの一方のスタック端部の構造を示す分解斜視図である。
【図3】図1のスタックのセル間の積層部を示す分解斜視図である。
【図4】図1の第1反応層のセルの積層構造を示す部分分解斜視図である。
【図5】図1の第2反応層のセルの積層構造を示す部分分解斜視図である。
【図6】図4のセルの構造を示す要部断面図である。
【図7】図1のスタックを用いたPEFCシステムの構成を概略的に示す図である。
【図8】本変形例のスタックの一方のスタック端部の構造を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0130】
1 高分子電解質膜
2A アノード側触媒層
2C カソード側触媒層
4A アノード側ガス拡散層
4C カソード側ガス拡散層
5 膜−電極接合体(MEA)
6 ガスケット
7 MEA部材
19A、29A アノードセパレータ
19C、29C カソードセパレータ
112I、122I、132I 第1アノードガス供給マニホールド孔
212I、222I、232I 第2アノードガス供給マニホールド孔
12E、22E、32E アノードガス排出マニホールド孔
113I、123I、133I 第1カソードガス供給マニホールド孔
213I、223I、333I 第2カソードガス供給マニホールド孔
13E、23E、33E カソードガス排出マニホールド孔
14I、24I、34I 伝熱媒体供給マニホールド孔
14E、24E、34E 伝熱媒体排出マニホールド孔
15 ボルト孔
21 アノードガス流路溝
31 カソードガス流路溝
26、36 伝熱媒体流路溝
42E アノードガス排出系統
43E カソードガス排出系統
44E 伝熱媒体排出系統
44I 伝熱媒体供給系統
142I 第1アノードガス供給系統
143I 第1カソードガス供給系統
242I 第2アノードガス供給系統
243I 第2カソードガス供給系統
142C、143C、242C、243C 流量制御装置
142P、143P、242P、243P 圧力検出装置
50、51 集電板
59 端子
60、61 絶縁板
70、71 端板
52I、62I、72I 流通孔
52E、62E、72E 排出側アノードガス流通孔
53I、63I、73I 供給側カソードガス流通孔
53E、63E、73E 排出側カソードガス流通孔
54I、64I,74I 供給側伝熱媒体流通孔
54E、64E,74E 排出側伝熱媒体流通孔
52E、62E、72E、53E、63E、73E、54E、64E、74E、54I、64I、74I、152I、153I、162I、163I、172I、173I、252I、253I、262I、263I、272I、273I 流通孔
72E アノードガス排出部
73E カソードガス排出部
74E 伝熱媒体排出部
74I 伝熱媒体供給部
172I 第1アノードガス供給部
173I 第1カソードガス供給部
272I 第2アノードガス供給部
273I 第2カソードガス供給部
82 締結具
82B ボルト
82W 座金
82N ナット
83 ノズル
92E アノードガス排出マニホールド
93E カソードガス排出マニホールド
94I 伝熱媒体供給マニホールド
94E 伝熱媒体排出マニホールド
192I 第1アノードガス供給マニホールド
193I 第1カソードガス供給マニホールド
292I 第2アノードガス供給マニホールド
293I 第2カソードガス供給マニホールド
100 スタック
110 第1セル
210 第2セル
200 制御装置
P 第2反応層
Q 第1反応層
A アノードガス
C カソードガス
W 伝熱媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEA、アノードガス流路及びカソードガス流路を有する3以上の反応部と、伝熱媒体流路を有する伝熱部と、が積層して構成された高分子電解質形燃料電池スタックにおいて、
前記反応部は、前記伝熱部から排出後の伝熱媒体が流通する流路に近接した流路を流通したアノードガス及びカソードガスのうちの少なくとも一方が供給される第1反応部と、前記伝熱部に供給前の伝熱媒体が流通する流路に近接した流路を流通したアノードガス及びカソードガスのうちの少なくとも一方が供給される第2反応部と、を有し、
1以上の前記第1反応部が積層されてなる第1反応層が積層方向両端部に構成され、1以上の前記第2反応部が積層されてなる第2反応層が積層方向中央部に構成された、高分子電解質形燃料電池スタック。
【請求項2】
前記第1反応部には、前記伝熱部に供給前の伝熱媒体が流通する流路よりも前記伝熱部から排出後の伝熱媒体が流通する流路に近接した流路を流通したアノードガス及びカソードガスのうちの少なくとも一方が供給され、
前記第2反応部には、前記伝熱部から排出後の伝熱媒体が流通する流路よりも前記伝熱部に供給前の伝熱媒体が流通する流路に近接した流路を流通したアノードガス及びカソードガスのうちの少なくとも一方が供給される、請求項1に記載の高分子電解質形燃料電池スタック。
【請求項3】
伝熱部に供給前の伝熱媒体が流通する伝熱媒体供給マニホールド、前記伝熱部から排出後の伝熱媒体が流通する伝熱媒体排出マニホールド、前記反応部に供給前のアノードガスが流通するアノードガス供給マニホールド、前記反応部から排出後のアノードガスが流通するアノードガス排出マニホールド、前記反応部に供給前のカソードガスが流通するカソードガス供給マニホールド、及び前記反応部から排出後のカソードガスが流通するカソードガス排出マニホールドが、それぞれ、前記積層された反応部及び伝熱部の側部において積層方向に延びて形成されており、
前記アノードガス供給マニホールド及び前記カソードガス供給マニホールドのうち少なくともいずれかは第1の供給マニホールド及び第2の供給マニホールドの2本のマニホールドからなり、
前記第1の供給マニホールドは前記伝熱媒体排出マニホールドに近接して形成されるとともに、前記第1反応部のアノードガス流路あるいはカソードガス流路に接続され、
前記第2の供給マニホールドは前記伝熱媒体供給マニホールドに近接して形成されるとともに、前記第2反応部のアノードガス流路あるいはカソードガス流路に接続された、請求項1に記載の高分子電解質形燃料電池スタック。
【請求項4】
前記反応部は、前記伝熱媒体供給マニホールド、前記伝熱媒体排出マニホールド、前記アノードガス供給マニホールド、前記アノードガス排出マニホールド、前記カソードガス供給マニホールド、及び前記カソードガス排出マニホールドを構成するマニホールド孔が、その厚さ方向に貫通してそれぞれ形成され、かつ、内面側に前記アノードガス供給マニホールド及び前記アノードガス排出マニホールドを構成するマニホールド孔同士を結ぶアノードガス流路溝が形成された、平板状のアノードセパレータと、
前記伝熱媒体供給マニホールド、前記伝熱媒体排出マニホールド、前記アノードガス供給マニホールド、前記アノードガス排出マニホールド、前記カソードガス供給マニホールド、及び前記カソードガス排出マニホールドを構成するマニホールド孔が、その厚さ方向に貫通してそれぞれ形成され、かつ、内面側に前記カソードガス供給マニホールド及び前記カソードガス排出マニホールドを構成するマニホールド孔同士を結ぶカソードガス流路溝が形成された、平板状のカソードセパレータと、
前記伝熱媒体供給マニホールド、前記伝熱媒体排出マニホールド、前記アノードガス供給マニホールド、前記アノードガス排出マニホールド、前記カソードガス供給マニホールド、及び前記カソードガス排出マニホールドを構成するマニホールド孔が、その厚さ方向に貫通してそれぞれ形成された、平板状の枠体、ならびに該枠体の枠内に配設された前記MEAを有するMEA部材と、を備え、該アノードセパレータの内面及び該カソードセパレータの内面に該MEA部材が挟まれて構成された、請求項3に記載の高分子電解質形燃料電池スタック。
【請求項5】
請求項1に記載の高分子電解質形燃料電池スタックと、
前記第1反応部にアノードガスを供給する第1アノードガス供給系統と、
前記第1反応部にカソードガスを供給する第1カソードガス供給系統と、
前記第2反応部にアノードガスを供給する第2アノードガス供給系統と、
前記第2反応部にカソードガスを供給する第2カソードガス供給系統と、
前記第1アノードガス供給系統、第2アノードガス供給系統、第1カソードガス供給系統、及び第2カソードガス供給系統それぞれに配設された流量制御装置群と、を有する、高分子電解質形燃料電池システム。
【請求項6】
前記第1反応部におけるアノードガス及びカソードガスの圧力損失を検知する圧力計、前記第2反応部におけるアノードガス及びカソードガスの圧力損失を検知する圧力計、前記第1反応部及び前記第2反応部の発電電圧を検知する電圧計の少なくともいずれかを有してなる測定部と、
前記測定部の検知情報に基づいて、前記流量制御装置群を制御する制御装置と、を備えた、請求項5に記載の高分子電解質形燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−335230(P2007−335230A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165822(P2006−165822)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】