高分散されたコバルト触媒の製造、およびフィッシャー−トロプシュ反応におけるその使用
実質的に均質分散された小コバルト結晶子を有する担持コバルト含有触媒を調製する方法が提供される。本方法は、硝酸コバルトを担体上に沈積し、次いで担体は、酸素含有の、実質的に水を含まない雰囲気中で約160℃へ加熱され、中間分解生成物が形成される工程を含む。この中間分解生成物は、次いで、焼成および還元される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、担持コバルト含有触媒に関する。より詳しくは、本発明は、高分散された小粒子サイズコバルト結晶子のコバルト含有触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の目的は、高分散された小粒子サイズコバルトを有する触媒を製造するために改良された方法を提供することである。
【0003】
コバルトを、シリカまたはアルミナなどの担体上に含む触媒は、アルデヒドおよびニトリルの水素添加などの水素添加反応で有用であることが知られる。それらはまた、フィッシャー−トロプシュプロセスによる炭化水素合成で用いられる。
【0004】
フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスの場合には、特にスラリーバブルカラム反応器で行われる際には、好ましい触媒は、コバルトをチタニア担体上に担持して含む。一般に、これらの触媒中のチタニアは、そのルチル型である。
【0005】
助触媒金属(レニウム、ジルコニウム、マンガン、および第VIII族貴金属など)は、普通には、コバルト触媒と共に用いられて、触媒性能が種々の観点で向上される。例えば、Reまたは第VIII族金属の存在は、Co結晶子の分散に有利な効果を有する。
【0006】
コバルト含有フィッシャー−トロプシュ触媒の活性は、コバルト粒子サイズ6nm超の表面コバルト部位に比例することが示される(参照:非特許文献1)。また、不十分なナノスケール均質性を有する結晶子は、均質なナノスケール分布を有するものより顕著に凝縮する傾向があることが示されている(参照:非特許文献2)。その称するところでは、フィッシャー−トロプシュ触媒の最適コバルト結晶子サイズは、6nmの範囲である。何故なら、これは、より大きな結晶子より多数の表面コバルト部位を提供するからであり、6nm未満の結晶子は、6nm以上のものより低い部位活性を有するからである。非特許文献3を参照されたい。
【0007】
したがって、本発明の目的は、適切なコバルト結晶子サイズおよび良好なナノスケール均質性を有するコバルト含有触媒を製造することである。
【0008】
特許文献1は、シリカ担持硝酸コバルトを、He中にNOおよび5vol%未満O2を含むガス混合物へ硝酸塩分解温度で暴露し、次いで、引続いて還元することは、非常に小さな金属粒子の形成をもたらすことを開示する。
【0009】
本発明の他の目的は、小さなコバルト結晶子サイズを、NOおよびHeを用いることなく、またはNOをいかなる不活性または酸化ガスとも一緒に用いることなく、良好なナノスケール分布で有するコバルト触媒を形成する方法を提供することである。
【0010】
特許文献2においては、コバルト、レニウム、およびチタニアを含む触媒を用いるフィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスが開示される。この触媒は、チタニア担体を、硝酸コバルトおよび過レニウム酸の水溶液で、従来の初期湿潤法によって含浸し、乾燥し、次いで焼成して、硝酸コバルトが酸化物へ分解されることによって作製される。レニウムの存在は、いくつかの重要な機能に資する。一つは、酸化コバルトの処理を促進することであり、他は、触媒が活性化される際に、酸化コバルトの還元を促進することである。コバルトの高度処理および完全還元は、高活性触媒をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO 2007/071899 A1
【特許文献2】U. S. Patent 4,568,663
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Journal of Catalysis, (1992), 137(1), 212-224
【非特許文献2】Stud. Surf. Sci. and Catalysis, Vol. 162, (2006), pg 103-110
【非特許文献3】den Breejen, et al., “On the Origin of the Cobalt Particle Size Effects in Fischer-Tropsch Catalysis”, Journal of American Chemical Society, (2009), 131(20), 7197-7203)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
第一の態様においては、本発明は、担持コバルト触媒、好ましくはチタニアまたはシリカ担持コバルト触媒の製造方法を含み、その際担持コバルト触媒は、高分散された小粒子サイズコバルトを均質なナノスケールコバルト分布で有し、0.2wt%以下のレニウムを含む。
【0014】
第二の態様においては、本発明は、金属または金属酸化物で助触された担持コバルト含有触媒の製造方法を含み、その際担持コバルト含有触媒は、高分散された小粒子サイズコバルトを均質なナノスケールコバルト分布で有する。
【0015】
本発明の他の態様は、次の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0016】
本発明の種々の態様のそれぞれにおいては、触媒を、硝酸コバルトを触媒担体上に沈積(堆積又は担持)することによって製造される。任意に、助触媒金属溶液がまた、担体上に沈積されてもよい。用いられる場合には、助触媒金属は、硝酸コバルトと共沈積されるか、またはコバルトの沈積に続いて沈積されてもよい。そのように処理された担体は、次いで乾燥される。乾燥後、担体は、酸素を含有し、実質的に水を含まない雰囲気中で約160℃に加熱されて、硝酸コバルトが一部分分解され、それにより中間分解生成物が形成される。中間生成物は、次に、空気中で焼成され、次に還元される。
【0017】
前述の方法によって調製された触媒は、表面容積平均直径約11nm以下の高分散されたコバルトを有する。
【0018】
本発明の他の態様は、フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスにおける触媒の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】空気中で室温から400℃へ加熱された硝酸コバルト−過レニウム酸含浸チタニア担体のTG/DTAスペクトルである。
【図2】種々の処理に付された硝酸コバルト−過レニウム酸含浸チタニア担体のDRIFTスペクトルである。
【図3】図2のスペクトル(b)を、図2のスペクトル(c)から差引くことによって得られた差分DRIFTスペクトルである。
【図4a】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図4b】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図4c】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図5a】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図5b】図4a〜4c、および5aの触媒の一つのTEM棒グラフである。
【図6a】本発明の方法にしたがって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図6b】本発明の方法にしたがって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図6c】本発明の方法にしたがって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図6d】触媒のTEM棒グラフである。
【図6e】触媒のTEM棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の方法で有用な触媒担体には、チタニア、シリカ、クロミア、アルミナ、マグネシア、シリカ−アルミナ、ジルコニアなどが含まれる。フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスにおけるこの触媒の使用については、担体は、主にチタニアを含み、その際チタニアの50wt%超はルチル相であることが好ましい。特に好ましい担体は、U. S. Patent 6,124,367に開示される。これは、その全体が本明細書に引用して含まれる。その担体は、主にチタニア(そのアナターゼ型からそのルチル型へ転化されている)、および少量の結合剤(アルミナおよび/またはシリカを含む)を含む。
【0021】
典型的には、用いられる担体は、表面積約5m2/g〜約40m2/g、好ましくは10m2/g〜30m2/gを有するであろう。細孔容積は、約0.2cc/g〜約0.5cc/g、好ましくは0.3cc/g〜0.4cc/gの範囲であろう。
【0022】
コバルトは、触媒担体上に、当該技術分野で周知の技術を用いて充填される。噴霧乾燥または初期湿潤技術のいずれかによって硝酸コバルト溶液を用いる担体の含浸などである。典型的には、コバルト溶液の濃度および量は、仕上げ触媒中のコバルト充填量を、触媒の全重量を基準として約6wt%〜約20wt%、好ましくは約8wt%〜約12wt%でもたらすのに十分なものであろう。
【0023】
任意に、助触媒金属溶液がまた、担体上に沈積されてもよい。有用な助触媒金属には、第IV族およびVII族の金属、ならびに第VIII族貴金属が含まれる。これらは、硝酸コバルトと共沈積されるか、またはコバルトの沈積に続いて沈積されてもよい。一般に、助触媒金属溶液は、仕上げ触媒中の金属充填量を、約0.1wt%〜約5wt%でもたらすのに十分なものであろう。
【0024】
別の好ましい実施形態においては、担体は、十分な過レニウム酸を用いて処理されて、触媒上のレニウム充填量が、触媒組成物の全重量を基準として約0.2wt%〜約1.2wt%でもたらされる。好ましくは、約0.5wt%超〜約1.0wt%の量である。
【0025】
担体を、十分な硝酸コバルト(および任意の助触媒金属溶液)で含浸した後、助触媒金属が存在する場合には、含浸された担体は、担体を、空気中で、周囲温度超約120℃以下で、水を担体から除去するのに十分な時間加熱することによって乾燥される。例えば、含浸された担体は、回転焼成炉中約120℃以下で、好都合には30分間〜1または数時間加熱されてもよい。
【0026】
重要なことには、乾燥された硝酸コバルト含有担体は、二工程(又は二段階)分解手順(又はプロトコル)に付される。第一工程において、乾燥された硝酸コバルト含有担体は、触媒が、硝酸塩分解の第一の吸熱(熱重量/示差熱分析(TG/DTA)によって測定される)(しかし、第二の吸熱ではない)を経るために十分な温度に加熱される。典型的には、硝酸コバルト含有担体は、酸素含有雰囲気(水を実質的に含まず、かつ添加NOを含まない)中で160℃±5℃へ加熱されるであろう。当業者は、硝酸コバルト含有担体が、第一の吸熱を経た時を容易に決定することができる。これは、図1で容易に理解される。例えば、雰囲気は、好ましくは水1%未満、より好ましくは水約0%までを含むであろう。特に好ましい雰囲気は、乾燥空気である。第一の分解後、硝酸コバルト含有担体は、中間物質と呼ばれる。分解手順の第二工程は、焼成工程である。中間物質を第一の分解後に形成することのさらなる証拠は、1820〜1877cm−1における赤外線ピーク(ニトロシル種の形成の指標である)の出現によって示される。したがって、第一の分解によって形成される中間物質はコバルトニトロシル種であり、これは、赤外線走査における1820〜1877cm−1のピークによって証明される。ニトロシル種は、単に、第一の分解後に存在し、その前でも焼成の後でもない。
【0027】
二工程手順(第一は、実質的に乾燥雰囲気中で行われる)の重要性は、図1〜3を引用して示される。
【0028】
第一に、図1は、乾燥された硝酸コバルト−過レニウム酸含浸チタニア担体の熱重量/示差熱分析(TG/DTA)スペクトルである。これは、空気中1℃/分で、室温から400℃に加熱される。硝酸塩の分解は、別々の二工程パターン(二つの吸熱事象がプロセスを特徴付ける)に続くことが明らかに理解される。したがって、図1は、水を担体から約121℃未満の温度で喪失させ、引続いてNOXおよびH2Oを約160℃で放出し、引続いてNOXのみを約210℃で放出することを示す。
【0029】
図2は、(a)新規Co−Re含浸チタニア担持触媒、(b)10%O2/He中121℃で、60分の乾燥後、(c)10%O2/He中160℃で、60分の焼成後、(d、e)10%H2O/Heへ、160℃で5分および15分の暴露後、および(f)Heによる60分のパージ後について、拡散反射赤外フーリエ変換分光法(DRIFTS)のスペクトルである。このスペクトルは、1820〜1877cm−1で現れるピーク(図中、丸で囲まれる)を示す。これは、ニトロシル種を第一分解工程後に形成することの指標である。この種は、担体上に容易に分散して現れ、加水分解的に不安定である。したがって、この中間種を乾燥雰囲気で形成する必要性がある。
【0030】
図3は、図2のスペクトル(b)を図2のスペクトル(c)から差引くことによって得られるDRIFTSスペクトルである。基本的には、図3は、二工程処理手順における第一の分解の乾燥雰囲気が、加水分解的に不安定なニトロシル種の形成をもたらすことを示す。
【0031】
本発明の方法の処理手順に戻って、加熱された硝酸コバルト含有担体を、第一の吸熱を形成する温度(160℃)±5℃で、中間体が担体上に形成および分散するのに十分な時間保持することが望ましい。加熱時間は、ある程度、用いられる加熱系のタイプによるであろう。例えば、加熱が標準的な箱形炉で行われる場合には、加熱時間は、1時間以上であってもよい。一方、加熱が回転焼成炉で行われる場合には、加熱時間は、かなりより短くてもよい。したがって、回転焼成炉の場合には、加熱された硝酸コバルト含有担体は、約160℃で、1分未満であってもよい時間、しかし好ましくは少なくとも1分保持されてもよい。より好ましくは、約2分〜約10分であろう。
【0032】
第一分解工程後、形成された中間体は、第二分解工程に付され、その際中間生成物は、焼成される。この第二分解工程は、次に、還元が続く。
【0033】
焼成は、典型的には、酸素含有雰囲気(空気流など)中、硝酸塩の分解(TG/DTAによって測定される)による第二の吸熱を経るのに十分な温度で行われ、酸化コバルトを形成する。これらの焼成のための典型的な温度は、約160℃超(約300℃〜約450℃など)で、約1〜約2時間である。
【0034】
還元は、典型的には、H2雰囲気流中約250℃〜約450℃の温度で、約1〜2時間行われるであろう。
【0035】
本発明の方法によって調製される触媒は、担体表面上に均質に分散される小コバルト粒子を有するものとして特徴付けられる。実際に、これらの触媒の表面容積粒子サイズ分布(Dsv)は、典型的には10nm以下、すなわち約6nmまでである。
【0036】
本発明にしたがって製造されたコバルト−レニウム、チタニア担持触媒は、特に、フィッシャー−トロプシュ合成プロセスによる炭化水素合成で用いるのに適切である。何故なら、当該技術的分野で知られるように、コバルトの高分散および完全還元は、より活性な触媒をもたらすからである。重要なことには、本発明の触媒は、コバルトの高分散および完全還元を達成し、およびレニウム含有量を実質的に低減する。
【0037】
したがって、本発明の一実施形態は、本明細書に開示および請求されるように製造された触媒を、フィッシャー−トロプシュ合成プロセス(又は方法)で用いることを含む。入手可能な文献に記載されるように、フィッシャー−トロプシュプロセスは、温度約175℃〜約400℃、圧力約1〜100バールで行われる。H2/CO比は、0.5/1〜約4/1の範囲である。好ましくは、本発明にしたがって作られた触媒は、プロセスにおいて、ガス空間速度約1,000〜25,000のスラリーバブルカラム反応器中で用いられる。好ましいスラリーバブルカラムの運転は、U. S. Patent 5,348,982に記載される。これは、本明細書に引用して含まれる。
【実施例】
【0038】
実験測定
A.Dsv分析
本明細書に記載される触媒のDsv(表面容積平均直径)データを、所望触媒について、Philips CM 12またはPhilips CM 200透過電子顕微鏡(120kVおよび200kVで、それぞれ53,000倍および54,000倍の画面倍率で運転される)による約20〜80個の無作為画像を収集することによって得た。全ての場合に、データを、Gatanのデジタル顕微鏡写真プログラムv.2.5を用いるGatan CCDカメラシステムにより、デジタル画像として収集した。デジタル顕微鏡写真プログラムの線画トールを、各画像化された金属粒子の直径を記録するのに用いた。これから、統計的に決定されたDsvが得られる。Dsvを計算するには、粒子サイズ分布の棒グラフが、TEM(透過電子顕微鏡)測定から得られる。棒グラフから、Dsvが、次式によって得られる。
Dsv={sum(NiDi3)}/{sum(NiDi2)}
式中、Niは、直径Diの粒子数である。
【0039】
B.TG/DTA/MS分析
TG/DTAデータを、Mettler TA 850熱分析計(これに、Balzer質量分析計が、流出ガスを監視するのに接続される)で収集した。触媒試料は、空気流中、速度1〜4℃/nmで加熱された。
【0040】
C.FTIR測定
DRIFTS(拡散反射赤外フーリエ変換分光法)の測定値を、液体窒素冷却されたM検知器を装備したNicolet 670 FTIR分光装置で得た。
【0041】
実施例
次の実施例および比較例において、多数のコバルト−レニウム触媒を調製した。調製された全ての触媒を、全く同じチタニア担体を用いて作製した。全ての場合に、硝酸コバルトおよび過レニウム酸の溶液を、回転タンブラー中で担体上に噴霧して、良好に混合された易流動性の含浸物が確保された。その後、含浸された担体を、異なる熱処理へ付した。得られた触媒を、透過電子顕微鏡(TEM)特性化およびDsv測定へ付した。
【0042】
1.チタニア担体の調製
(a)チタニア担体
チタニア担体を、次のように噴霧乾燥によって調製した。スラリー原料を、Degussa P−25ヒュームドTiO234.4部(重量)、アルミナクロロヒドロールゾル(Al2O323.5wt%を含む)8.8部、シリカゾル(Nyacol 2034 DI、SiO235wt%を含む)0.6部、および水56.2部を混合することによって調製した。この混合物を、直径9フィートの噴霧乾燥装置へ、速度約13ポンド/分で、10,000rpmで旋回する9インチのホィール噴霧装置を通して付した。噴霧乾燥室を、噴霧の間、入口空気温度約285℃および出口温度約120℃で運転した。生成物は、平均サイズ約60ミクロン、ならびにTiO294wt%、Al2O35.4wt%、SiO20.6wt%の組成を有する固体球状粒子からなった。
【0043】
噴霧乾燥された担体を、1000℃で焼成して、担体(チタニアの93wt%は、X線回折(ASTM D3720−78)によって決定された際にルチル相であった)が製造された。チタニアの残りは、アナターゼ相であった。担体は、表面積17m2/gおよび水孔容積0.33cc/gを有した。
【0044】
(b)コバルトおよびレニウムの沈積
触媒前駆体(乾燥含浸物)を、チタニア担体を硝酸コバルトおよび過レニウム酸の溶液と共に、ベンチスケールの回転タンブラー中で噴霧し、10分間振盪されることによって調製して、十分混合された易流動性の含浸物が確保された。二つのタイプの試料を調製した。すなわち、(i)Co6.9%およびRe0.12%を有する乾燥含浸物(以下、「低Re含浸物」という)、および(ii)Co7.0%およびRe0.58%を有する含浸物(以下、「高Re含浸物」という)である。低Re含浸物の場合には、担体は、Co15.8wt%およびRe0.28wt%の溶液で含浸され、引続いて空気中4℃/分で121℃へ加熱されて、含浸物が乾燥された。高Re含浸物の場合には、担体は、Co14.7wt%およびRe1.2wt%の溶液で含浸された。各含浸の後、含浸物は、空気中4℃/分で121℃へ加熱することによって乾燥された。
【0045】
2.比較例1
乾燥された高Re含浸物を、空気中4℃/分で300℃へ加熱し、その温度で1時間保持した。そのように加熱された含浸物を、次いで、100%H2中375℃で還元し、1%O2で不動態化し、次いで空気乾燥して、TEMによる分析が可能にされた。図4a、4b、および4cは、不十分に分散されたCo結晶子を示し、触媒のある部分は、妥当な結晶子分布を有し(図4a)、他は、非常に濃密な(図4b)または非常に疎な(図4c)分布を有する。
【0046】
3.比較例2
乾燥された高Re含浸物を、空気中4℃/分で160℃へ加熱し(Co硝酸塩が一部分分解される)、その温度で1時間保持した。そのように加熱された含浸物を、次いで、100%H2中375℃で還元し、不動態化し、TEM分析へ付した。結果を、図5aおよび5bに示す。図から分かるように、この比較例2の触媒のCo結晶子は、良好に分散されず、Dsv約11nmを有する。
【0047】
4.実施例1
乾燥された高Re含浸物を、空気中4℃/分で160℃へ加熱し(Co硝酸塩が一部分分解される)、その温度で1時間保持し、引続いて4℃/分で300℃へ加熱し、1時間その温度で保持した(酸化コバルトが形成される)。この焼成された物質を、100%H2中375℃および雰囲気圧力で90分間還元した。室温へ冷却した後、触媒を、1%O2中で不動態化し、次いで空気乾燥して、TEMによる分析が可能にされた。この処理は、約10nmの良好に分布されたCo結晶子を形成した。図6aは、約10nmのCo結晶子を示す。図6dは、実施例1の分析された物質のTEM棒グラフである。
【0048】
5.実施例2
乾燥された低Re含浸物を、空気中4℃/分で160℃へ加熱し(Co硝酸塩が一部分分解される)、その温度で1時間保持し、引続いて4℃/分で300℃へ加熱し、1時間その温度で保持した(酸化コバルトが形成される)。この焼成された物質を、100%H2中375℃および雰囲気圧力で90分間還元した。室温へ冷却した後、触媒を、1%O2中で不動態化し、次いで空気乾燥して、TEMによる分析が可能にされた。図6bおよび6cは、約13nmのCo結晶子を示す。図6eは、実施例2の分析された物質のTEM棒グラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、担持コバルト含有触媒に関する。より詳しくは、本発明は、高分散された小粒子サイズコバルト結晶子のコバルト含有触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の目的は、高分散された小粒子サイズコバルトを有する触媒を製造するために改良された方法を提供することである。
【0003】
コバルトを、シリカまたはアルミナなどの担体上に含む触媒は、アルデヒドおよびニトリルの水素添加などの水素添加反応で有用であることが知られる。それらはまた、フィッシャー−トロプシュプロセスによる炭化水素合成で用いられる。
【0004】
フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスの場合には、特にスラリーバブルカラム反応器で行われる際には、好ましい触媒は、コバルトをチタニア担体上に担持して含む。一般に、これらの触媒中のチタニアは、そのルチル型である。
【0005】
助触媒金属(レニウム、ジルコニウム、マンガン、および第VIII族貴金属など)は、普通には、コバルト触媒と共に用いられて、触媒性能が種々の観点で向上される。例えば、Reまたは第VIII族金属の存在は、Co結晶子の分散に有利な効果を有する。
【0006】
コバルト含有フィッシャー−トロプシュ触媒の活性は、コバルト粒子サイズ6nm超の表面コバルト部位に比例することが示される(参照:非特許文献1)。また、不十分なナノスケール均質性を有する結晶子は、均質なナノスケール分布を有するものより顕著に凝縮する傾向があることが示されている(参照:非特許文献2)。その称するところでは、フィッシャー−トロプシュ触媒の最適コバルト結晶子サイズは、6nmの範囲である。何故なら、これは、より大きな結晶子より多数の表面コバルト部位を提供するからであり、6nm未満の結晶子は、6nm以上のものより低い部位活性を有するからである。非特許文献3を参照されたい。
【0007】
したがって、本発明の目的は、適切なコバルト結晶子サイズおよび良好なナノスケール均質性を有するコバルト含有触媒を製造することである。
【0008】
特許文献1は、シリカ担持硝酸コバルトを、He中にNOおよび5vol%未満O2を含むガス混合物へ硝酸塩分解温度で暴露し、次いで、引続いて還元することは、非常に小さな金属粒子の形成をもたらすことを開示する。
【0009】
本発明の他の目的は、小さなコバルト結晶子サイズを、NOおよびHeを用いることなく、またはNOをいかなる不活性または酸化ガスとも一緒に用いることなく、良好なナノスケール分布で有するコバルト触媒を形成する方法を提供することである。
【0010】
特許文献2においては、コバルト、レニウム、およびチタニアを含む触媒を用いるフィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスが開示される。この触媒は、チタニア担体を、硝酸コバルトおよび過レニウム酸の水溶液で、従来の初期湿潤法によって含浸し、乾燥し、次いで焼成して、硝酸コバルトが酸化物へ分解されることによって作製される。レニウムの存在は、いくつかの重要な機能に資する。一つは、酸化コバルトの処理を促進することであり、他は、触媒が活性化される際に、酸化コバルトの還元を促進することである。コバルトの高度処理および完全還元は、高活性触媒をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO 2007/071899 A1
【特許文献2】U. S. Patent 4,568,663
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Journal of Catalysis, (1992), 137(1), 212-224
【非特許文献2】Stud. Surf. Sci. and Catalysis, Vol. 162, (2006), pg 103-110
【非特許文献3】den Breejen, et al., “On the Origin of the Cobalt Particle Size Effects in Fischer-Tropsch Catalysis”, Journal of American Chemical Society, (2009), 131(20), 7197-7203)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
第一の態様においては、本発明は、担持コバルト触媒、好ましくはチタニアまたはシリカ担持コバルト触媒の製造方法を含み、その際担持コバルト触媒は、高分散された小粒子サイズコバルトを均質なナノスケールコバルト分布で有し、0.2wt%以下のレニウムを含む。
【0014】
第二の態様においては、本発明は、金属または金属酸化物で助触された担持コバルト含有触媒の製造方法を含み、その際担持コバルト含有触媒は、高分散された小粒子サイズコバルトを均質なナノスケールコバルト分布で有する。
【0015】
本発明の他の態様は、次の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0016】
本発明の種々の態様のそれぞれにおいては、触媒を、硝酸コバルトを触媒担体上に沈積(堆積又は担持)することによって製造される。任意に、助触媒金属溶液がまた、担体上に沈積されてもよい。用いられる場合には、助触媒金属は、硝酸コバルトと共沈積されるか、またはコバルトの沈積に続いて沈積されてもよい。そのように処理された担体は、次いで乾燥される。乾燥後、担体は、酸素を含有し、実質的に水を含まない雰囲気中で約160℃に加熱されて、硝酸コバルトが一部分分解され、それにより中間分解生成物が形成される。中間生成物は、次に、空気中で焼成され、次に還元される。
【0017】
前述の方法によって調製された触媒は、表面容積平均直径約11nm以下の高分散されたコバルトを有する。
【0018】
本発明の他の態様は、フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスにおける触媒の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】空気中で室温から400℃へ加熱された硝酸コバルト−過レニウム酸含浸チタニア担体のTG/DTAスペクトルである。
【図2】種々の処理に付された硝酸コバルト−過レニウム酸含浸チタニア担体のDRIFTスペクトルである。
【図3】図2のスペクトル(b)を、図2のスペクトル(c)から差引くことによって得られた差分DRIFTスペクトルである。
【図4a】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図4b】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図4c】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図5a】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図5b】図4a〜4c、および5aの触媒の一つのTEM棒グラフである。
【図6a】本発明の方法にしたがって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図6b】本発明の方法にしたがって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図6c】本発明の方法にしたがって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図6d】触媒のTEM棒グラフである。
【図6e】触媒のTEM棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の方法で有用な触媒担体には、チタニア、シリカ、クロミア、アルミナ、マグネシア、シリカ−アルミナ、ジルコニアなどが含まれる。フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスにおけるこの触媒の使用については、担体は、主にチタニアを含み、その際チタニアの50wt%超はルチル相であることが好ましい。特に好ましい担体は、U. S. Patent 6,124,367に開示される。これは、その全体が本明細書に引用して含まれる。その担体は、主にチタニア(そのアナターゼ型からそのルチル型へ転化されている)、および少量の結合剤(アルミナおよび/またはシリカを含む)を含む。
【0021】
典型的には、用いられる担体は、表面積約5m2/g〜約40m2/g、好ましくは10m2/g〜30m2/gを有するであろう。細孔容積は、約0.2cc/g〜約0.5cc/g、好ましくは0.3cc/g〜0.4cc/gの範囲であろう。
【0022】
コバルトは、触媒担体上に、当該技術分野で周知の技術を用いて充填される。噴霧乾燥または初期湿潤技術のいずれかによって硝酸コバルト溶液を用いる担体の含浸などである。典型的には、コバルト溶液の濃度および量は、仕上げ触媒中のコバルト充填量を、触媒の全重量を基準として約6wt%〜約20wt%、好ましくは約8wt%〜約12wt%でもたらすのに十分なものであろう。
【0023】
任意に、助触媒金属溶液がまた、担体上に沈積されてもよい。有用な助触媒金属には、第IV族およびVII族の金属、ならびに第VIII族貴金属が含まれる。これらは、硝酸コバルトと共沈積されるか、またはコバルトの沈積に続いて沈積されてもよい。一般に、助触媒金属溶液は、仕上げ触媒中の金属充填量を、約0.1wt%〜約5wt%でもたらすのに十分なものであろう。
【0024】
別の好ましい実施形態においては、担体は、十分な過レニウム酸を用いて処理されて、触媒上のレニウム充填量が、触媒組成物の全重量を基準として約0.2wt%〜約1.2wt%でもたらされる。好ましくは、約0.5wt%超〜約1.0wt%の量である。
【0025】
担体を、十分な硝酸コバルト(および任意の助触媒金属溶液)で含浸した後、助触媒金属が存在する場合には、含浸された担体は、担体を、空気中で、周囲温度超約120℃以下で、水を担体から除去するのに十分な時間加熱することによって乾燥される。例えば、含浸された担体は、回転焼成炉中約120℃以下で、好都合には30分間〜1または数時間加熱されてもよい。
【0026】
重要なことには、乾燥された硝酸コバルト含有担体は、二工程(又は二段階)分解手順(又はプロトコル)に付される。第一工程において、乾燥された硝酸コバルト含有担体は、触媒が、硝酸塩分解の第一の吸熱(熱重量/示差熱分析(TG/DTA)によって測定される)(しかし、第二の吸熱ではない)を経るために十分な温度に加熱される。典型的には、硝酸コバルト含有担体は、酸素含有雰囲気(水を実質的に含まず、かつ添加NOを含まない)中で160℃±5℃へ加熱されるであろう。当業者は、硝酸コバルト含有担体が、第一の吸熱を経た時を容易に決定することができる。これは、図1で容易に理解される。例えば、雰囲気は、好ましくは水1%未満、より好ましくは水約0%までを含むであろう。特に好ましい雰囲気は、乾燥空気である。第一の分解後、硝酸コバルト含有担体は、中間物質と呼ばれる。分解手順の第二工程は、焼成工程である。中間物質を第一の分解後に形成することのさらなる証拠は、1820〜1877cm−1における赤外線ピーク(ニトロシル種の形成の指標である)の出現によって示される。したがって、第一の分解によって形成される中間物質はコバルトニトロシル種であり、これは、赤外線走査における1820〜1877cm−1のピークによって証明される。ニトロシル種は、単に、第一の分解後に存在し、その前でも焼成の後でもない。
【0027】
二工程手順(第一は、実質的に乾燥雰囲気中で行われる)の重要性は、図1〜3を引用して示される。
【0028】
第一に、図1は、乾燥された硝酸コバルト−過レニウム酸含浸チタニア担体の熱重量/示差熱分析(TG/DTA)スペクトルである。これは、空気中1℃/分で、室温から400℃に加熱される。硝酸塩の分解は、別々の二工程パターン(二つの吸熱事象がプロセスを特徴付ける)に続くことが明らかに理解される。したがって、図1は、水を担体から約121℃未満の温度で喪失させ、引続いてNOXおよびH2Oを約160℃で放出し、引続いてNOXのみを約210℃で放出することを示す。
【0029】
図2は、(a)新規Co−Re含浸チタニア担持触媒、(b)10%O2/He中121℃で、60分の乾燥後、(c)10%O2/He中160℃で、60分の焼成後、(d、e)10%H2O/Heへ、160℃で5分および15分の暴露後、および(f)Heによる60分のパージ後について、拡散反射赤外フーリエ変換分光法(DRIFTS)のスペクトルである。このスペクトルは、1820〜1877cm−1で現れるピーク(図中、丸で囲まれる)を示す。これは、ニトロシル種を第一分解工程後に形成することの指標である。この種は、担体上に容易に分散して現れ、加水分解的に不安定である。したがって、この中間種を乾燥雰囲気で形成する必要性がある。
【0030】
図3は、図2のスペクトル(b)を図2のスペクトル(c)から差引くことによって得られるDRIFTSスペクトルである。基本的には、図3は、二工程処理手順における第一の分解の乾燥雰囲気が、加水分解的に不安定なニトロシル種の形成をもたらすことを示す。
【0031】
本発明の方法の処理手順に戻って、加熱された硝酸コバルト含有担体を、第一の吸熱を形成する温度(160℃)±5℃で、中間体が担体上に形成および分散するのに十分な時間保持することが望ましい。加熱時間は、ある程度、用いられる加熱系のタイプによるであろう。例えば、加熱が標準的な箱形炉で行われる場合には、加熱時間は、1時間以上であってもよい。一方、加熱が回転焼成炉で行われる場合には、加熱時間は、かなりより短くてもよい。したがって、回転焼成炉の場合には、加熱された硝酸コバルト含有担体は、約160℃で、1分未満であってもよい時間、しかし好ましくは少なくとも1分保持されてもよい。より好ましくは、約2分〜約10分であろう。
【0032】
第一分解工程後、形成された中間体は、第二分解工程に付され、その際中間生成物は、焼成される。この第二分解工程は、次に、還元が続く。
【0033】
焼成は、典型的には、酸素含有雰囲気(空気流など)中、硝酸塩の分解(TG/DTAによって測定される)による第二の吸熱を経るのに十分な温度で行われ、酸化コバルトを形成する。これらの焼成のための典型的な温度は、約160℃超(約300℃〜約450℃など)で、約1〜約2時間である。
【0034】
還元は、典型的には、H2雰囲気流中約250℃〜約450℃の温度で、約1〜2時間行われるであろう。
【0035】
本発明の方法によって調製される触媒は、担体表面上に均質に分散される小コバルト粒子を有するものとして特徴付けられる。実際に、これらの触媒の表面容積粒子サイズ分布(Dsv)は、典型的には10nm以下、すなわち約6nmまでである。
【0036】
本発明にしたがって製造されたコバルト−レニウム、チタニア担持触媒は、特に、フィッシャー−トロプシュ合成プロセスによる炭化水素合成で用いるのに適切である。何故なら、当該技術的分野で知られるように、コバルトの高分散および完全還元は、より活性な触媒をもたらすからである。重要なことには、本発明の触媒は、コバルトの高分散および完全還元を達成し、およびレニウム含有量を実質的に低減する。
【0037】
したがって、本発明の一実施形態は、本明細書に開示および請求されるように製造された触媒を、フィッシャー−トロプシュ合成プロセス(又は方法)で用いることを含む。入手可能な文献に記載されるように、フィッシャー−トロプシュプロセスは、温度約175℃〜約400℃、圧力約1〜100バールで行われる。H2/CO比は、0.5/1〜約4/1の範囲である。好ましくは、本発明にしたがって作られた触媒は、プロセスにおいて、ガス空間速度約1,000〜25,000のスラリーバブルカラム反応器中で用いられる。好ましいスラリーバブルカラムの運転は、U. S. Patent 5,348,982に記載される。これは、本明細書に引用して含まれる。
【実施例】
【0038】
実験測定
A.Dsv分析
本明細書に記載される触媒のDsv(表面容積平均直径)データを、所望触媒について、Philips CM 12またはPhilips CM 200透過電子顕微鏡(120kVおよび200kVで、それぞれ53,000倍および54,000倍の画面倍率で運転される)による約20〜80個の無作為画像を収集することによって得た。全ての場合に、データを、Gatanのデジタル顕微鏡写真プログラムv.2.5を用いるGatan CCDカメラシステムにより、デジタル画像として収集した。デジタル顕微鏡写真プログラムの線画トールを、各画像化された金属粒子の直径を記録するのに用いた。これから、統計的に決定されたDsvが得られる。Dsvを計算するには、粒子サイズ分布の棒グラフが、TEM(透過電子顕微鏡)測定から得られる。棒グラフから、Dsvが、次式によって得られる。
Dsv={sum(NiDi3)}/{sum(NiDi2)}
式中、Niは、直径Diの粒子数である。
【0039】
B.TG/DTA/MS分析
TG/DTAデータを、Mettler TA 850熱分析計(これに、Balzer質量分析計が、流出ガスを監視するのに接続される)で収集した。触媒試料は、空気流中、速度1〜4℃/nmで加熱された。
【0040】
C.FTIR測定
DRIFTS(拡散反射赤外フーリエ変換分光法)の測定値を、液体窒素冷却されたM検知器を装備したNicolet 670 FTIR分光装置で得た。
【0041】
実施例
次の実施例および比較例において、多数のコバルト−レニウム触媒を調製した。調製された全ての触媒を、全く同じチタニア担体を用いて作製した。全ての場合に、硝酸コバルトおよび過レニウム酸の溶液を、回転タンブラー中で担体上に噴霧して、良好に混合された易流動性の含浸物が確保された。その後、含浸された担体を、異なる熱処理へ付した。得られた触媒を、透過電子顕微鏡(TEM)特性化およびDsv測定へ付した。
【0042】
1.チタニア担体の調製
(a)チタニア担体
チタニア担体を、次のように噴霧乾燥によって調製した。スラリー原料を、Degussa P−25ヒュームドTiO234.4部(重量)、アルミナクロロヒドロールゾル(Al2O323.5wt%を含む)8.8部、シリカゾル(Nyacol 2034 DI、SiO235wt%を含む)0.6部、および水56.2部を混合することによって調製した。この混合物を、直径9フィートの噴霧乾燥装置へ、速度約13ポンド/分で、10,000rpmで旋回する9インチのホィール噴霧装置を通して付した。噴霧乾燥室を、噴霧の間、入口空気温度約285℃および出口温度約120℃で運転した。生成物は、平均サイズ約60ミクロン、ならびにTiO294wt%、Al2O35.4wt%、SiO20.6wt%の組成を有する固体球状粒子からなった。
【0043】
噴霧乾燥された担体を、1000℃で焼成して、担体(チタニアの93wt%は、X線回折(ASTM D3720−78)によって決定された際にルチル相であった)が製造された。チタニアの残りは、アナターゼ相であった。担体は、表面積17m2/gおよび水孔容積0.33cc/gを有した。
【0044】
(b)コバルトおよびレニウムの沈積
触媒前駆体(乾燥含浸物)を、チタニア担体を硝酸コバルトおよび過レニウム酸の溶液と共に、ベンチスケールの回転タンブラー中で噴霧し、10分間振盪されることによって調製して、十分混合された易流動性の含浸物が確保された。二つのタイプの試料を調製した。すなわち、(i)Co6.9%およびRe0.12%を有する乾燥含浸物(以下、「低Re含浸物」という)、および(ii)Co7.0%およびRe0.58%を有する含浸物(以下、「高Re含浸物」という)である。低Re含浸物の場合には、担体は、Co15.8wt%およびRe0.28wt%の溶液で含浸され、引続いて空気中4℃/分で121℃へ加熱されて、含浸物が乾燥された。高Re含浸物の場合には、担体は、Co14.7wt%およびRe1.2wt%の溶液で含浸された。各含浸の後、含浸物は、空気中4℃/分で121℃へ加熱することによって乾燥された。
【0045】
2.比較例1
乾燥された高Re含浸物を、空気中4℃/分で300℃へ加熱し、その温度で1時間保持した。そのように加熱された含浸物を、次いで、100%H2中375℃で還元し、1%O2で不動態化し、次いで空気乾燥して、TEMによる分析が可能にされた。図4a、4b、および4cは、不十分に分散されたCo結晶子を示し、触媒のある部分は、妥当な結晶子分布を有し(図4a)、他は、非常に濃密な(図4b)または非常に疎な(図4c)分布を有する。
【0046】
3.比較例2
乾燥された高Re含浸物を、空気中4℃/分で160℃へ加熱し(Co硝酸塩が一部分分解される)、その温度で1時間保持した。そのように加熱された含浸物を、次いで、100%H2中375℃で還元し、不動態化し、TEM分析へ付した。結果を、図5aおよび5bに示す。図から分かるように、この比較例2の触媒のCo結晶子は、良好に分散されず、Dsv約11nmを有する。
【0047】
4.実施例1
乾燥された高Re含浸物を、空気中4℃/分で160℃へ加熱し(Co硝酸塩が一部分分解される)、その温度で1時間保持し、引続いて4℃/分で300℃へ加熱し、1時間その温度で保持した(酸化コバルトが形成される)。この焼成された物質を、100%H2中375℃および雰囲気圧力で90分間還元した。室温へ冷却した後、触媒を、1%O2中で不動態化し、次いで空気乾燥して、TEMによる分析が可能にされた。この処理は、約10nmの良好に分布されたCo結晶子を形成した。図6aは、約10nmのCo結晶子を示す。図6dは、実施例1の分析された物質のTEM棒グラフである。
【0048】
5.実施例2
乾燥された低Re含浸物を、空気中4℃/分で160℃へ加熱し(Co硝酸塩が一部分分解される)、その温度で1時間保持し、引続いて4℃/分で300℃へ加熱し、1時間その温度で保持した(酸化コバルトが形成される)。この焼成された物質を、100%H2中375℃および雰囲気圧力で90分間還元した。室温へ冷却した後、触媒を、1%O2中で不動態化し、次いで空気乾燥して、TEMによる分析が可能にされた。図6bおよび6cは、約13nmのCo結晶子を示す。図6eは、実施例2の分析された物質のTEM棒グラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト含有触媒の製造方法であって、
触媒担体を硝酸コバルト水溶液で含浸すること;
コバルト含浸担体を乾燥すること;
乾燥された担体を、水を実質的に含まずかつ添加されるNOを含まない酸素含有雰囲気中で加熱し、その際前記加熱は、硝酸塩分解の第一の吸熱が生じる温度で、乾燥された担体が硝酸塩分解の第一の吸熱を経るのに十分な時間行われて、中間物質がもたらされること;
中間物質を焼成して、酸化コバルトを形成すること;
焼成された触媒を還元し、それによりコバルト含有触媒が得られること
を含む方法。
【請求項2】
前記担体は、チタニア担体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸素含有雰囲気は、乾燥空気である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥された担体は、赤外線ピークを1820〜1877cm−1に発現するのに十分な温度および時間で加熱される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記中間物質は、赤外線走査のピークを1820〜1877cm−1に有するニトロシル種である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ニトロシル種は、前記加熱の後に存在するが、前記焼成の後には存在しない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱された担体は、約160℃±5℃で、約1分未満〜約1時間超える時間保持される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記担体は、回転焼成炉で、約160℃±5℃へ加熱され、その温度で約2〜約10分の時間保持される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記焼成は、約300℃〜約450℃の温度において、約1〜約2時間で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記担体を、第IV、VII、およびVIII族金属、ならびにそれらの混合物から実質的になる群から選択される助触媒金属で含浸し、その後含浸された担体は加熱されて、硝酸コバルトが一部分分解される工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記助触媒金属は、金属または金属の混合物の充填量を、触媒の全重量を基準として約0.01wt%〜約5wt%でもたらすのに十分な量で用いられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記助触媒金属は、レニウムである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記レニウムは、触媒の全重量を基準として、レニウム充填量約0.5wt%〜約1wt%を、触媒上にもたらすのに十分なものである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスで用いる、請求項12〜13のいずれかによって製造される前記触媒の使用。
【請求項1】
コバルト含有触媒の製造方法であって、
触媒担体を硝酸コバルト水溶液で含浸すること;
コバルト含浸担体を乾燥すること;
乾燥された担体を、水を実質的に含まずかつ添加されるNOを含まない酸素含有雰囲気中で加熱し、その際前記加熱は、硝酸塩分解の第一の吸熱が生じる温度で、乾燥された担体が硝酸塩分解の第一の吸熱を経るのに十分な時間行われて、中間物質がもたらされること;
中間物質を焼成して、酸化コバルトを形成すること;
焼成された触媒を還元し、それによりコバルト含有触媒が得られること
を含む方法。
【請求項2】
前記担体は、チタニア担体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸素含有雰囲気は、乾燥空気である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥された担体は、赤外線ピークを1820〜1877cm−1に発現するのに十分な温度および時間で加熱される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記中間物質は、赤外線走査のピークを1820〜1877cm−1に有するニトロシル種である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ニトロシル種は、前記加熱の後に存在するが、前記焼成の後には存在しない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱された担体は、約160℃±5℃で、約1分未満〜約1時間超える時間保持される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記担体は、回転焼成炉で、約160℃±5℃へ加熱され、その温度で約2〜約10分の時間保持される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記焼成は、約300℃〜約450℃の温度において、約1〜約2時間で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記担体を、第IV、VII、およびVIII族金属、ならびにそれらの混合物から実質的になる群から選択される助触媒金属で含浸し、その後含浸された担体は加熱されて、硝酸コバルトが一部分分解される工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記助触媒金属は、金属または金属の混合物の充填量を、触媒の全重量を基準として約0.01wt%〜約5wt%でもたらすのに十分な量で用いられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記助触媒金属は、レニウムである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記レニウムは、触媒の全重量を基準として、レニウム充填量約0.5wt%〜約1wt%を、触媒上にもたらすのに十分なものである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスで用いる、請求項12〜13のいずれかによって製造される前記触媒の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6band6c】
【図6d】
【図6e】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6band6c】
【図6d】
【図6e】
【公表番号】特表2011−528983(P2011−528983A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520041(P2011−520041)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/004292
【国際公開番号】WO2010/011332
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/004292
【国際公開番号】WO2010/011332
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】
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