説明

高分散流体を接触物質床の全域にわたって分配するための流体分配トレイ及び方法

容器中に含まれる接触物質床の表面領域の全域にわたって流体を分配できる流体分配トレイであり、この流体分配トレイは、容器内で支持要素上に流体分配トレイが支持されることが原因で生じる使用不能領域を含み、またこの流体分配トレイは複数の流体フロー手段を含み、これらの複数の流体フロー手段は、使用不能領域に隣接した補償領域に高密度分布の流体フロー手段を設け且つ流体分配トレイの残りの使用可能領域に低密度分布の流体フロー手段を設けるような分布パターンにて流体分配トレイ中に分布している。容器内で均一に流体を分配する方法も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分散の流体分配トレイに関する。本発明の別の態様は容器中に含まれる接触物質床の全域にわたって流体を分散させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒床を含んだ多くのダウンフロー型反応器では、反応器への流体の供給原料が触媒床の至るところ全域にわたって一様に分配されるのが有利である。しばしば、触媒床の全域にわたる流体供給原料の分配を改善するために、流体供給原料の改善された分散を提供する流体分配トレイを反応器が備える。
【0003】
反応器の触媒床の全域にわたって流体供給原料ストリームの一様な分配を提供する装置の一例が、米国特許第5,403,561号に開示されている。この特許文献には、混合相の流体ストリームを触媒床の上部全域に一様に分配するためのフロー分配装置を反応容器内で使用することが開示されている。フロー分配装置は水平トレイを備え、間隔をあけて離して配置された複数のチムニーが水平トレイを通って延在している。各チムニーの下端部は、円錐状のスプレーを生成するためのスプレー手段を有する。スプレーパターンが重なり合い、かつ、生成されたスプレーが、水平トレイより下方でかつ触媒床より上方に配置された梁や他の構造上の反応器内部構造物に当たらないように、チムニーとスプレー手段が配置される。それ以外は、水平トレイを支持するための支持梁や他の構造体を使用することについて明示的に開示されておらず、また、水平トレイが支持されている場所にある触媒床上に水平トレイの上方から流体を送るための流体導管を設けることができないことに関する問題も認識されていない。
【0004】
別の種類の流体分配装置が米国特許第5,882,610号に開示されている。この流体分配装置は、反応器内の触媒床の上に配置され、ガス液体混合物を反応器の触媒床中に分配する。分配装置は分配板を備え、分配板は流体を触媒床に送るために開口部又は混合チャンネルなどの導管を有する。この特許文献は、分配板の上面に配置された補強材を用いることにより、又は分配板の底部より下方に配置された支持梁を用いることにより、又はその両方の方法により、分配板が支持されることを更に教示する。しかしながら、この特許は分配板の表面より下方に支持梁を配置することにより生じる問題に対処できていないし、その問題を認識してさえいない。分配板の領域が支持梁により妨害されることで、流体を触媒床に送るための流体導管又は下降管の配置に使用できなくなる場合に、このような問題が起こる。これにより、役に立たない領域ができてしまい、その上には流体が分配されないので、触媒床中における流体分配の一様性が損なわれる。
【特許文献1】米国特許第5,403,561号
【特許文献2】米国特許第5,882,610号
【特許文献3】米国特許第6,093,373号
【特許文献4】米国特許公開第2004/0028579号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
概要
本発明の目的の一つは、支持梁により支持でき、且つ反応容器内で触媒床の全域にわたって流体を高度に一様に分配できる、反応容器内の流体分配トレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、容器中に含まれる接触物質床の上面領域の全域にわたって流体を分配するための流体分配トレイであって、前記容器内で支持要素の上にパネルトレイが支持されることにより形成される使用不能領域と前記パネルトレイの残りの使用可能領域とを有する前記パネルトレイ、及び前記残りの使用可能領域内において前記使用不能領域に隣接した補償領域に高密度分布の流体フロー手段を設け、且つ前記補償領域以外の前記残りの使用可能領域に低密度分布の流体フロー手段を設けるような分布パターンにて前記パネルトレイ中に分布させた複数の流体フロー手段、を備える前記流体分配トレイが提供される。
【0007】
また、容器と流体分配トレイシステムとを含む反応器システムであって、前記容器が、二相混合物を前記容器内に受け入れるための入口手段と生成物流を前記容器から取り出すための出口手段とを有し、上面領域を有する触媒床を前記容器内に含み;前記流体分配トレイシステムが、前記上面領域の全域にわたって流体を分配し、前記流体分配トレイシステムが、パネルトレイと複数の流体フロー手段とを備え;前記パネルトレイがパネルトレイ領域を有し、前記パネルトレイ領域の少なくとも一部が支持要素の支持要素表面に支えられることで前記パネルトレイ領域の使用不能領域と残りの使用可能領域とを生じ、前記使用不能領域は、前記支持要素表面に支えられた前記パネルトレイ領域の前記少なくとも一部であり、前記残りの使用可能領域は、前記パネルトレイ領域から前記使用不能領域を差し引いたものであり;前記複数の流体フロー手段が、前記残りの使用可能領域により規定され前記使用不能領域に隣接した補償領域に高密度分布の流体フロー手段を設け且つ前記補償領域以外の前記残りの使用可能領域に低密度分布の流体フロー手段を設けるような分布パターンにて、前記パネルトレイ領域の前記残りの使用可能領域の全域にわたって分布している、前記反応器システムも提供される。
【0008】
さらに、容器中に含まれる接触物質床の全域にわたって高度に分散した流体を分配する方法であって、流体をパネルトレイ上に流し、ここで、前記パネルトレイがパネルトレイ領域を有し、前記パネルトレイ領域の少なくとも一部が支持要素の支持要素表面に支えられることで、前記パネルトレイ領域の使用不能領域と残りの使用可能領域とが生成され、前記使用不能領域が、前記支持要素表面に支えられる前記パネルトレイ領域の前記少なくとも一部であり、前記残りの使用可能領域が、前記パネルトレイ領域から前記使用不能領域を差し引いたものであり;前記流体を複数の流体フロー手段に通し、ここで、前記複数の流体フロー手段は、前記残りの使用可能領域により規定され前記使用不能領域に隣接した補償領域に高密度分布の流体フロー手段を設け且つ前記補償領域以外の前記残りの使用可能領域に低密度分布の流体フロー手段を設けるような分布パターンにて、前記パネルトレイ領域の前記残りの使用可能領域の全域にわたって分布しており;そして前記複数の流体フロー手段から前記高度に分散した流体を生じさせる、ことを含む前記方法も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の詳細な説明
容器が触媒などの接触物質の床を含んでいるダウンフロー型反応器システムは、多くの石油及び化学プロセスにおいて用いられており、その接触物質の床の上に供給原料が送られて該床に通される。これらの反応器システムは、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化分解及び脱水素化を含めて化学処理の当業者に周知の任意の水素化処理反応などの触媒反応のための触媒と供給原料とを接触させる必要があるプロセスを含めて、あらゆる種類のプロセスにおいて使用できる。ダウンフロー型反応器システムの使用を伴う特定のプロセスは、液体ダウンフロー反応器システム、ガスダウンフロー反応器システム及び二相ダウンフロー反応器システムを更に含んでもよい。これらのシステムはいわゆる細流フロー反応器システムを含むことができ、該システムでは、触媒床の上に液体を位置させ、重力フローによって触媒床を通過させる。
【0010】
上記の用途のうち多くのものでは、栓流に近い接触物質床を通る供給原料の流れを与えるように、ダウンフロー反応器システムへの供給原料が接触物質床の全域にわたって一様に分配されることが重要となる。本発明の特徴は、接触物質の床全域にわたる流体流の分配を改善することであり、接触物質としては、触媒、吸収剤、充填材料、分子ふるい、又は反応容器中に含まれる供給原料と接触して化学的な効果を奏し得るその他の任意の同様の種類の材料が挙げられる。
【0011】
本発明の特定の実施態様において特に有利な特徴は、容器、例えば反応容器の中に含まれる接触物質床の表面から該床を通る二相流体(例えばガスと液体)の流れを高度に分散させることである。この高度に分散した流れにより、接触物質床の表面全域にわたって流体が高度に一様に分配されるので、栓流に近い該床を通る流体の流れが得られる。
【0012】
本発明の一実施態様は流体分配トレイを備え、この流体分配トレイは、容器中に含まれる接触物質床の上面領域より上の位置にて容器内に配置し得る。流体分配トレイは、容器の断面領域の全域にわたって流体を分配し分散させ、また接触物質床の上面領域上に流体の流れを与え、更にまた、該床を通る流体フローが栓流に近くなるように、好ましくは一様性に近いパターンにて接触物質床の上面全域にわたって流体を配置する。
【0013】
流体分配トレイはパネルトレイを備え、このパネルトレイは、流体を流体分配トレイの上から流体分配トレイの下の接触物質床の上面領域上に送る又は運ぶための1又は複数の流体フロー手段を更に備えることができる。流体フロー手段は、1つの地点から目的地点まで流体を通過させることができる任意の適当な手段とすることができ、例えば、ノズル、管状導管、開口部、孔又はそれを通って流体を導くことができる他の任意の種類の開口を含んだ任意の種類の導管とし得る。種々の適当な種類の流体フロー手段のうち、好ましい流体フロー手段の一つとして、本明細書において十分に説明されている下降管ノズルが挙げられる。
【0014】
本発明の流体分配トレイの典型的な使用では、流体分配トレイは、反応容器内で反応器の供給原料の入口より下でかつ触媒床の上面より上の位置にて、流体分配トレイを支持するための支持手段により支持される。この支持手段は、1又は複数の任意の適当な構造要素を含むことができ、その構造要素の上に流体分配トレイの1又は複数のパネルトレイを載置できる。
【0015】
支持手段の一例として、反応容器の断面に架けることができる少なくとも1つの支持梁が挙げられる。支持梁はパネルトレイを支持できる任意の種類の構造形状とし得るが、好ましい支持梁は、パネルトレイを載置し支持できる支持表面を与えるフランジを備えた種類のものであると考えられる。また、パネルトレイは支持要素又は支持手段により反応容器の内壁にて又は内壁近くにて更に支持してもよい。この支持要素として、反応容器の内壁に取り付けられた支持リムが挙げられ、この支持リムが、パネルトレイを載置し支持できる表面を与える。
【0016】
上記の支持手段又は支持要素の使用に起因した1つの問題が、流体分配トレイが反応容器内の流体について均一に近い分配を与えることが望まれる場合に生じる。というのは、パネルトレイの下の支持要素により引き起こされる妨害が原因で、支持手段の表面上に載置されたパネルトレイ上の位置に流体フロー手段を配置できないか、又は配置されたとしても機能しないからである。このことにより、支持要素の表面上に支持される位置にてパネルトレイ上に使用不能領域を生じてしまうので、流体フロー手段の配置が不均一になるので、使用時に触媒床の上面全域にわたって流体フローの不均一な分配が生じ、特に、流体分配トレイの支持要素の真下の位置で流体フローが不足する。
【0017】
本明細書において上述した使用不能領域ではないパネルトレイの部分を、残りの使用可能領域と称する。というのは、残りの使用可能領域は、その上で流体フロー手段を効率的に利用できるパネルトレイの領域だからである。流体フロー手段は、パネルトレイ領域のうち残りの使用可能領域の全域にわたって任意数の分布パターン及び密度にて分布させる。一般に流体フロー手段、例えば、孔、開口部及びノズルは、一定の間隔を置いて離した配置、三角形ピッチ又は正方形ピッチの配置にて設けられる。
【0018】
本発明の種々の実施態様は、パネルトレイを反応容器内に支持するための支持手段を使用することに起因する、流体分配トレイのパネルトレイ上での使用不能領域の使用から生じる問題を解決する。本発明の流体分配トレイのこのような特徴の一つは、パネルトレイの残りの使用可能領域上に流体フロー手段を新規な分布パターンにて配置することである。この分布パターンとして、パネルトレイの残りの使用可能領域の全域にわたる流体フロー手段の高密度分布及び低密度分布がある。一般に高密度分布の流体フロー手段は、パネルトレイの残りの使用可能領域内にて使用不能領域に隣接した位置に存在する補償領域に設けられる。一般に低密度分布の流体フロー手段は、パネルトレイの残りの使用可能領域内において補償領域の外部に設けられる。
【0019】
その表面の下から支持されておらず流体フロー手段の配置を妨害しないパネルトレイにおいては、流体フロー手段の典型的なレイアウトは、流体フロー手段をパネルトレイの全域にわたって三角形ピッチ又は正方形ピッチの配置にて実質的に均一に設置することである。よって、このような場合には、パネルトレイの全域にわたる流体フロー手段の密度分布は実質的に均一である。ここで、パネルトレイ中での流体フロー手段の密度分布というときは、単位面積中に配置される流体フロー手段の個数の特定の割合、例えば、パネルトレイ領域の1平方メートル当たりの流体フロー手段の個数を意味する。
【0020】
密度分布を求める際、各流体フロー手段はその中心又は重心に位置する1つの点で表され、単位面積当たりのこの点の個数を求めることによって密度分布が計算される。工業的に用いられる装置において均一に配置された流体フロー手段のレイアウトでの典型的な密度分布は、1平方メートル当たり20〜120個の範囲の流体フロー手段である。
【0021】
本発明の流体分配トレイでは、パネルトレイの使用不能領域に起因した流体分配有効領域の損失を相殺するために、高密度分布の補償領域が設けられる。補償領域を設ける1つの方法は、容器の断面に架かる全パネルトレイの全域にわたって流体フロー手段が均一に分布されたとした場合に、パネルトレイの使用不能領域中に通常配置される流体フロー手段の個数をまず求めることである。流体フロー手段のこの個数は、流体分配トレイの支持に起因する構造上の妨害が無い場合に使用不能領域中に通常配置されたであろう流体フロー手段の個数を得るために、所望の流体フロー手段の密度分布にパネルトレイの使用不能面積を乗じることにより求められる。そして、使用不能領域中に配置されたであろう数の流体フロー手段が、パネルトレイの使用不能領域の近くの、好ましくはそれに隣接したパネル領域の補償領域に、この補償領域内に既に配置された流体フロー手段と共に配置され、それにより流体フロー手段の高密度分布が得られる。
【0022】
高密度分布の流体フロー手段が存在する補償領域は使用不能領域にほぼ等しくてもよいが、使用不能領域の約0.25〜約5倍、好ましくは使用不能領域の0.75〜4倍、最も好ましくは使用不能領域の1〜3倍の範囲の面積に等しくし得る。
【0023】
パネルトレイの補償領域以外の残りの使用可能領域はその中に低密度分布の流体フロー手段を含む。低密度分布というときは、補償領域以外の残りの使用可能領域における流体フロー手段の密度分布が高密度分布の補償領域における流体フロー手段の密度分布よりも小さいことを意味する。本発明の工業用の実施態様では、パネルトレイの低密度分布領域における流体フロー手段の密度分布は、1平方メートル当たり20〜120個の範囲の流体フロー手段、好ましくは1平方メートル当たり30〜100個の範囲の流体フロー手段、最も好ましくは1平方メートル当たり40〜90個の範囲の流体フロー手段とし得る。
【0024】
既に述べたように、パネルトレイの補償領域における流体フロー手段の密度分布は、パネルトレイの低密度領域における密度分布より大きく、低密度分布領域における流体フロー手段の密度分布の1.25倍を超える範囲とし得る。しかしながら、高密度補償領域における密度分布は低密度分布領域における流体フロー手段の密度分布の1.5倍を超えるのが一層望ましい。高密度補償領域における好ましい密度分布は、低密度分布領域における流体フロー手段の密度分布の1.75倍を超え、最も好ましくは、低密度分布領域における流体フロー手段の密度分布の2倍を超える。
【0025】
本発明の流体分配トレイにおけるパネルトレイの流体フロー手段は、本明細書に記載のもののように当業者に周知の任意の適当な手段とし得る。適する種類の流体フロー手段の別の例として、本明細書に参考として組み入れた米国特許第5,403,561号;米国特許第5,882,610号;米国特許第6,093,373号;及び米国特許公開第2004/0028579号に記載のものが挙げられる。二相(液体とガス)流体の分配に用いられる場合、本発明の流体分配トレイのパネルトレイと共に使用するのに特に適した流体フロー手段の1つは、管状の形状をなし一定の長さを有する下降管ノズルである。
【0026】
流体フロー手段における流体フロー導管の開口部は、それが円形の穴、種々の形状の孔、円形を含めて種々の形状の開口部又は管状導管であろうとなかろうと、流体が流れて通過できるような広範囲の断面積を有し得ることにも留意されたい。円形の流体フロー導管の開口部の場合、その直径は典型的な工業規模の装置では1/16インチ〜5インチの範囲とし得る。よって、典型的な工業規模の用途で用いられる場合、本発明の流体フロー手段における流体フロー導管の開口部の断面積は、0.003平方インチ〜30平方インチの範囲とし得る。
【0027】
好ましい下降管ノズルは上端部と下端部とを有し、また、パネルトレイに作動可能に連結されてパネルトレイの上からパネルトレイの下まで流体を流すための導管を与える場合には、下降管ノズルの上端部がパネルトレイより上の位置に配置され、下降管ノズルの下端部がパネルトレイより下の位置にある。好ましくは、下降管ノズルの上端部は管の内側をガスが通過できるように開放している。管の外側から管の内側に液体を流すための導管を提供するために、管の長さに沿って間隔を置いて孔が設けられる。下降管ノズルの下端部は液体とガスが通過できるように開放している。
【0028】
容器中に含まれる接触物質床の上面全域にわたって流体の高度に分散した分配を提供するために、本発明の流体分配トレイを使用してもよい。分散させる流体は、流体の化学処理を含めて任意の種々の反応のための接触物質床(例えば触媒床)上に送る必要のある任意の種類の流体とし得る。この流体は、液体又はガス又はガスと液体の両方を含んだ流体などの多相流体とし得る。
【0029】
本発明の流体分配トレイの特定の実施態様は、上面全域にわたる均一に近い分布を有する液体及びガスの並流細流フローを提供するため、接触物質床の上面全域にわたりガス−液体の流体を分散させるのに特に適し、有利に使用できる。
【0030】
本発明の流体分配トレイにより得られる一様な流体分配から多くの利点が得られる。この利点の一つは、例えば、触媒床の全域にわたる流体フローの分布の均一性を高める目的で反応容器内の触媒床の上面上にしばしば配置される分配パッキングの必要量を削減できることである。固定容積の反応容器内で使用される分配パッキングの必要量のこのような削減により、分配パッキングの削減量だけ、活性触媒又は分配パッキングの使用より好ましい他の任意の材料に代えることができる。
【0031】
上述した均一の流体分配から得られる別の潜在的に重要な利点は、特に発熱反応又は吸熱反応を伴うプロセスにおいて反応容器内の触媒床の断面全域にわたって且つ該触媒床の深さに沿って改善された温度プロファイルを提供できることである。
【0032】
よって、上述した利点の多くのもの考慮すると、本発明は容器に含まれる接触物質床の全域にわたって高度に分散した流体を分配するための方法を更に含む。この方法は本発明の流体分配トレイのパネルトレイ上に流体を送ることを含む。この流体は、パネルトレイの残りの使用可能領域の全域にわたって分布させた複数の流体フロー手段を通過し、接触物質床の上面上を流れて接触物質床を流過する高度に分散した流体が、この複数の流体フロー手段から生じる。複数の流体フロー手段の流体フロー手段が下降管ノズルを含む場合には、液体の層がパネルトレイの上面上に位置し、液面が下降管ノズルの孔より上に上がると、液体が孔を通って管の内側に入り、下降管ノズルの下端部から接触物質床の上面上に送られる。
【0033】
ここで、図1を参照すると、流体分配トレイ12を組み込んだ反応容器10の鉛直断面の概略図が示されている。反応容器10は、導管16を介して流体を受け入れ且つこの流体を反応容器10に導入するための入口手段14を備える。反応容器10はまた、生成物ストリームを反応容器10から取り出し且つ導管20を介してそこから移送するための出口手段18も備える。
【0034】
反応容器10の容積の大部分を満たす触媒床22が、反応容器10中に含まれる。触媒床22の表面又は上面24は、反応容器10の断面全体に広がっているので、表面又は上面領域25が与えられる。
【0035】
図2は2−2平面で見た反応容器10の断面の平面図であり、触媒床22の表面又は上面25の断面領域を示す。
【0036】
流体供給原料が反応容器10に導入されて流体分配トレイ12上に流れることで、触媒床22の上面領域25の全域にわたって流体供給原料の高度に分散した流れが得られるように、流体分配トレイ12は、反応容器10内で触媒床22の上面領域25より上で且つ入口手段14より下の位置に配置される。
【0037】
流体分配トレイ12は、反応容器10の断面に架かる支持梁26によって所定の位置に保持される。2つの支持梁26が図示されているが、状況に応じて任意の適当な数の支持梁26を設け得ることが分かる。したがって、流体分配トレイ12を反応容器10内に支持するために、3個以上を含めて1又はそれより多い支持梁26を使用してもよい。また、支持梁26に対して垂直又は傾斜した横梁を用いることも、特定の装置構成に依存して好ましいかもしれない。特定の状況で必要とされる支持部材の適切な大きさ、種類、個数及び配置を決めるのは、当業者の知識の範囲内にある。
【0038】
図1に示されるように、支持梁26は上部フランジ28と下部フランジ30とを含めて2つのフランジを備える。上部フランジ28は支持表面32を有する。
【0039】
支持リム34もまた、流体分配トレイ12を支持している。支持リム34は、流体分配トレイ12を適所に支持できる任意の適当な構造要素とし得る。本発明の一実施態様では、反応容器10の内壁36に溶接などにより支持リム34が付与され、支持リム34の支持表面38が内壁36から延び出している。
【0040】
流体分配トレイ12はパネルトレイ40を含み、パネルトレイ40はその中に複数の下降管ノズル44を備える。図1から分かるように、下降管ノズル44は支持表面32と支持表面38との間にあるパネルトレイ40中の領域にのみ配置されているので、無益な領域が生成し、無益領域の下では下降管ノズル44が存在していないことにより分配される流体の量が少なくなっている。これらの無益領域は支持表面32及び38上に載置しているパネルトレイ40の部分を含み、上に下降管ノズルが存在していないパネルトレイ40の使用不能領域46及び48に対応する。
【0041】
図3はパネルトレイ40の底面に沿って位置する3−3断面で見た反応容器10の断面の平面図である。図3には、支持梁26の上部フランジ28に対応する支持表面32が示されている。支持リム34の表面に対応する支持表面38も図示されている。支持表面32及び38上に載っているパネルトレイ40の領域は、流体フロー手段をその中に配置できないので使用不能なパネルトレイ40の領域である。使用不能領域46及び48(それぞれが支持表面32及び38に一致する領域である)を差し引いた後に残るパネルトレイ40の全領域は、残りの領域50に対応したパネルトレイの残りの使用可能領域である。
【0042】
図4は流体分配トレイ12の真上に位置する4−4断面で見た反応容器10の断面の平面図である。明確にするために、流体分配トレイの平面図は、下降管ノズル44の具体的な位置は示していないが、破線により使用不能領域46及び48の位置を示し、使用不能領域32及び38に隣接した補償領域52を残りの領域50内にて実線により示す。補償領域52(高密度分布領域ともいう)内に、高密度分布の下降管ノズル44が存在し、補償領域52の外側にある残りの使用可能領域50(低密度分布領域54という)内に、低密度分布の下降管ノズル44が存在する。ここで下降管ノズル44の密度分布というときは、単位面積当たりのノズルの個数、例えば1平方メートル当たりのノズルの個数をいう。広義では下降管ノズル44の高密度分布というときは、補償領域52内のノズル密度が、補償領域52よりもノズル密度が小さい低密度分布領域54内でのノズル密度よりも大きいことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施態様の高分散の流体分配トレイを備えた反応容器の鉛直断面図を概略的に示す。
【図2】図1の反応容器を2−2断面で見た平面図である。
【図3】図1の反応容器を3−3断面で見た平面図である。
【図4】図1の反応容器を4−4断面で見た平面図である。
【符号の説明】
【0044】
10 反応容器
12 流体分配トレイ
14 入口手段
16 導管
18 出口手段
20 導管
22 触媒床
24 触媒床の上面
25 上面領域
26 支持梁
28 上部フランジ
30 下部フランジ
32 支持梁の支持表面
34 支持リム
38 支持リムの支持表面
40 パネルトレイ
44 下降管ノズル
46 使用不能領域
48 使用不能領域
50 残りの領域
52 補償領域
54 低密度分布領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器中に含まれる接触物質床の上面領域の全域にわたって流体を分配するための流体分配トレイであって、
前記容器内で支持要素の上にパネルトレイが支持されることにより形成される使用不能領域と前記パネルトレイの残りの使用可能領域とを有する前記パネルトレイ、及び
前記残りの使用可能領域内において前記使用不能領域に隣接した補償領域に高密度分布の流体フロー手段を設け、且つ前記補償領域以外の前記残りの使用可能領域に低密度分布の流体フロー手段を設けるような分布パターンにて前記パネルトレイ中に分布させた複数の流体フロー手段、
を備える前記流体分配トレイ。
【請求項2】
容器と流体分配トレイシステムとを含む反応器システムであって、
前記容器が、二相混合物を前記容器内に受け入れるための入口手段と生成物流を前記容器から取り出すための出口手段とを有し、上面領域を有する触媒床を前記容器内に含み;
前記流体分配トレイシステムが、前記上面領域の全域にわたって流体を分配し、前記流体分配トレイシステムが、パネルトレイと複数の流体フロー手段とを備え;
前記パネルトレイがパネルトレイ領域を有し、前記パネルトレイ領域の少なくとも一部が支持要素の支持要素表面に支えられることで前記パネルトレイ領域の使用不能領域と残りの使用可能領域とを生じ、前記使用不能領域は、前記支持要素表面に支えられた前記パネルトレイ領域の前記少なくとも一部であり、前記残りの使用可能領域は、前記パネルトレイ領域から前記使用不能領域を差し引いたものであり;
前記複数の流体フロー手段が、前記残りの使用可能領域により規定され前記使用不能領域に隣接した補償領域に高密度分布の流体フロー手段を設け且つ前記補償領域以外の前記残りの使用可能領域に低密度分布の流体フロー手段を設けるような分布パターンにて、前記パネルトレイ領域の前記残りの使用可能領域の全域にわたって分布している、
前記反応器システム。
【請求項3】
容器中に含まれる接触物質床の全域にわたって高度に分散した流体を分配する方法であって、
流体をパネルトレイ上に流し、ここで、前記パネルトレイがパネルトレイ領域を有し、前記パネルトレイ領域の少なくとも一部が支持要素の支持要素表面に支えられることで、前記パネルトレイ領域の使用不能領域と残りの使用可能領域とが生成され、前記使用不能領域が、前記支持要素表面に支えられる前記パネルトレイ領域の前記少なくとも一部であり、前記残りの使用可能領域が、前記パネルトレイ領域から前記使用不能領域を差し引いたものであり;
前記流体を複数の流体フロー手段に通し、ここで、前記複数の流体フロー手段は、前記残りの使用可能領域により規定され前記使用不能領域に隣接した補償領域に高密度分布の流体フロー手段を設け且つ前記補償領域以外の前記残りの使用可能領域に低密度分布の流体フロー手段を設けるような分布パターンにて、前記パネルトレイ領域の前記残りの使用可能領域の全域にわたって分布しており;そして
前記複数の流体フロー手段から前記高度に分散した流体を生じさせる、
ことを含む前記方法。
【請求項4】
前記補償領域が前記使用不能領域の0.25〜5倍の範囲の面積を含む、請求項1に記載の流体分配トレイ又は請求項2に記載の反応器システム又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記高密度分布領域の密度分布が前記低密度分布領域の密度分布より大きい、請求項4に記載の流体分配トレイ又は反応器システム又は方法。
【請求項6】
前記補償領域以外の前記残りの使用可能領域中の前記流体フロー手段の前記低密度分布が、パネルトレイ領域の1平方メートル当たり20〜120個の範囲の前記流体フロー手段である、請求項5に記載の流体分配トレイ又は反応器システム又は方法。
【請求項7】
前記高密度分布の密度分布が前記低密度分布の密度分布の1.5倍を超える、請求項6に記載の流体分配トレイ又は反応器システム又は方法。
【請求項8】
前記複数の流体フロー手段の前記流体フロー手段が、管からなる下降管ノズルを含み、前記下降管ノズルの管が内側を規定しかつ上端部と下端部のある所定の長さを有し、前記下降管ノズルが、前記パネルトレイの上から前記パネルトレイの下に流体を流すための導管を提供するように、前記パネルトレイに作動可能に連結される、請求項7に記載の流体分配トレイ又は反応器システム又は方法。
【請求項9】
前記下降管ノズルの前記上端部は、前記パネルトレイより上に位置すると共にガスが前記管の前記内側を通ることができるように開放しており、前記管の外側から前記管の前記内側に液体を流すために前記管の前記長さに沿って間隔を置いて孔が設けられ、前記下降管ノズルの前記下端部は、前記パネルトレイより下に位置すると共に流体が前記管を通過できるように開放している、請求項8に記載の流体分配トレイ又は反応器システム又は方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−534178(P2009−534178A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506708(P2009−506708)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/066738
【国際公開番号】WO2007/121419
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】