説明

高含水率有機廃棄物の燃料化方法及びバイオマス燃料

【課題】高含水率有機廃棄物の塩素濃度及び含水率を低コストにて低減することができ、高位の発熱量を確保することができ、しかも省エネルギー効果が大きい高含水率有機廃棄物の燃料化方法及びバイオマス燃料を提供する。
【解決手段】本発明の高含水率有機廃棄物の燃料化方法は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する高含水率有機廃棄物に脱水機2を用いて脱水処理を行って脱塩素有機廃棄物とし、次いで、焼却炉3にて低含水率有機廃棄物を焼却した際に生じる燃焼排ガスと水蒸気との熱交換を熱交換器4を用いて行い、この熱交換器4から取り出された過熱蒸気を乾燥機5に導入して脱塩素有機廃棄物の乾燥または加熱乾燥を行い、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が30質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高含水率有機廃棄物の燃料化方法及びバイオマス燃料に関し、更に詳しくは、豚糞、牛糞、鶏糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、あるいは百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等にて廃棄される食品廃棄物等を含有し、しかも水分を多量に含む高含水率有機廃棄物の含水率を、低含水率有機廃棄物を焼却した際に生じる燃焼排ガスを有効利用することにより省エネルギー効果が大であり、しかも高位の発熱量を確保することが可能な高含水率有機廃棄物の燃料化方法、及び高含水率有機廃棄物の塩素濃度及び含水率が低く、高位の発熱量を確保することが可能であり、しかも省エネルギー効果が大であるバイオマス燃料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、あるいは百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、飲食店等にて廃棄される売れ残り弁当や各種残飯等の食品廃棄物は、そのままの状態もしくは発酵させた状態で肥料として利用するのが一般的であるが、焼却炉等を用いて焼却することで減容化し、得られた焼却灰を肥料として利用することもある。
特に、近年、家畜排泄物の管理に関する適正化法が施行されたことにもより、畜糞尿を含む家畜排泄物の多くが肥料化されることが予想される一方、農地の減少傾向により使用される肥料の総量も減少傾向にある。そこで、家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を有効利用するために、肥料以外の用途の多角化が急務になっており、エネルギーとしての利用もその一つである。
【0003】
一般に、家畜排泄物は30質量%以下の低含水率状態では高位の発熱量を有するものであるが、低含水率状態とするためには、長時間の自然乾燥や化石燃料を用いた加熱乾燥を必要とするために、エネルギーとしての利用はごく一部では行われているものの総体的には進んでいない。
現在行われている家畜排泄物のエネルギー利用としては、鶏糞を発電や廃棄物ボイラーの燃料として用いたり、牛や豚の糞尿をメタン発酵させてメタンガスを主成分とするバイオガスを生成させ、このバイオガスを燃料として用いる等がある。
【0004】
このような家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を有効利用するための様々な方法や装置が提案されており、例えば、次のような提案がなされている。
(1)鶏糞、家畜糞等の含水廃棄処理物を、蒸気管と燃焼室を備えた熱風炉と多段式の乾燥炭化炉との間に発生蒸気の循環系統を配設して密閉系内で熱源を循環させながら炭化物及び灰化物を生成する方法(特許文献1)。
この方法では、乾燥炭化炉から炭化物を、熱風炉から灰化物を、それぞれ回収することで、二次利用可能な炭化物及び灰化物を同時に資源回収するとともに、省資源化と無公害化の推進を図っている。
(2)畜糞を乾燥させる乾燥機と、乾燥された畜糞を小粒と大粒に分離する分離機と、分離された小粒の乾燥畜糞を焼却処理する焼却炉と、乾燥未完了の畜糞を破砕して金属類の混入異物を露出するとともに、この混入異物を磁石を介して除去する磁石付振動式篩とを有する畜糞乾燥焼却装置(特許文献2)。
この装置では、畜糞原料に混入している石、金属などの金属類異物を簡単容易に撤去することで、金属類異物に起因する機械のトラブルを未然に回避するとともに、この畜糞を焼却処理することにより発生する熱を有効利用している。
【特許文献1】特開2004−330092号公報
【特許文献2】特開2005−156085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したように、家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を有効利用するための様々な方法や装置が提案されているが、これらの方法や装置においても、次のような問題点があった。
鶏糞をエネルギー源として利用しようとした場合、鶏糞のエネルギー利用を阻んでいる主たる点は、塩素含有量が高いという点である。鶏糞の塩素含有量が高いと、この塩素成分のために燃焼装置が腐食したり、あるいは低融点塩素化合物が発生して配管等の様々な箇所で閉塞等の様々なトラブルが発生する虞があるという問題点があった。
また、この鶏糞を、例えば、セメント焼成設備に燃料として投入した場合、それに含まれる塩素成分がセメントクリンカに混入してセメントの品質を低下させる虞がある。また、塩素成分がセメント焼成設備を腐食させる等のトラブルが発生する虞があるために、セメントの操業に悪影響を及ぼす虞がある。
【0006】
また、牛や豚の糞尿がエネルギー利用され難いのは、鶏糞と同様に塩素含有量が高いことと、含水率が80%前後と高いために、燃料として用いた場合、燃焼時に発生する熱エネルギーが糞尿に含まれる水分の蒸発潜熱に奪われてしまい、燃料としてのエネルギーの有効利用を図ることが難しいからである。
さらに、これらの家畜排泄物は、脱水処理した後、自然エネルギーや発酵熱を用いて乾燥することでバイオマス燃料としているが、自然エネルギーは天候の影響を受けるために安定したエネルギー供給が難しく、また、このバイオマス燃料自体、発生元毎、季節毎に含水率にバラツキ(20〜50%)がある。したがって、乾燥に自然エネルギーや発酵熱を用いることは、省エネルギー効果の点では好ましいのであるが、乾燥工程におけるエネルギーの安定供給及び燃料としての品質の安定性の点で問題があった。
【0007】
さらに、このバイオマス燃料は、燃料として有効な発熱量(3200cal/kg以上)を安定して確保することができず、工業用燃料としては非常に問題があるものであった。
このように、様々な理由から、家畜排泄物や食品廃棄物等を含む有機廃棄物のエネルギー源としての有効利用ははかばかしくないのが現状である。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、豚糞、牛糞、鶏糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、売れ残り弁当や各種残飯等の食品廃棄物等を含有し、しかも水分を多量に含む高含水率有機廃棄物の塩素濃度及び含水率を低コストにて低減することができ、その結果、高位の発熱量を確保することができ、しかも省エネルギー効果が大きい高含水率有機廃棄物の燃料化方法、及び高含水率有機廃棄物の塩素濃度及び含水率が低く、高位の発熱量を確保することができ、しかも省エネルギー効果が大きいバイオマス燃料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する高含水率有機廃棄物に脱水処理を施せば、この高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去して塩素濃度が3000ppm以下と極めて低い脱塩素有機廃棄物を得ることができ、この脱塩素有機廃棄物に、低含水率有機廃棄物を焼却した際に生じる燃焼排ガスを用いて乾燥または加熱乾燥を施せば、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が30質量%以下の高位の発熱量を有する乾燥脱塩素有機廃棄物を低コストにて得ることができ、しかも省エネルギー効果が大きいことを見出し、さらに、この乾燥脱塩素有機廃棄物をバイオマス燃料等のエネルギー源として、さらにはセメント焼成設備のバイオマス燃料として有効利用することができ、しかもセメント焼成設備の操業やセメント品質に悪影響を及ぼす虞が無いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の高含水率有機廃棄物の燃料化方法は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する高含水率有機廃棄物を燃料化するための方法であって、前記高含水率有機廃棄物の脱水処理を行うことにより、この高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去して脱塩素有機廃棄物とし、次いで、この脱塩素有機廃棄物の乾燥または加熱乾燥を、低含水率有機廃棄物を焼却した際に生じる燃焼排ガスを用いて行い、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が30質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とすることを特徴とする。
【0011】
この高含水率有機廃棄物の燃料化方法では、高含水率有機廃棄物の脱水処理を行うことにより、この高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去して塩素濃度が3000ppm以下の脱塩素有機廃棄物とする。
次いで、この脱塩素有機廃棄物の乾燥または加熱乾燥を、低含水率有機廃棄物を焼却した際に生じる燃焼排ガスを用いて行い、含水率が30質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とする。
この乾燥脱塩素有機廃棄物は、含水率が30質量%以下と低いことから、高位の発熱量が確保される。
さらに、脱塩素有機廃棄物の乾燥または加熱乾燥を、低含水率有機廃棄物を焼却した際に生じる燃焼排ガスを用いて行うことにより、燃料化に係るコストが低く抑えられ、省エネルギー効果が大となる。
【0012】
このように、脱塩素有機廃棄物の乾燥または加熱乾燥を、低含水率有機廃棄物を焼却した際に生じる燃焼排ガスを用いて行うことにより、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が30質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物を、低コストにて得ることが可能になり、省エネルギー効果が大である。
このようにして得られた乾燥脱塩素有機廃棄物は、塩素濃度及び含水率が極めて低くかつ高位の発熱量を有しており、燃焼効率が高いバイオマス燃料として有効利用することが可能である。
また、この乾燥脱塩素有機廃棄物をセメント焼成設備に燃料として投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
【0013】
前記燃焼排ガスと熱交換した熱媒体を用いて、前記脱塩素有機廃棄物の乾燥または加熱乾燥を行うこととしてもよい。
この高含水率有機廃棄物の燃料化方法では、燃焼排ガスと熱交換した熱媒体を用いて脱塩素有機廃棄物の乾燥または加熱乾燥を行うことにより、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が30質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物を、簡単な構成の装置を用いて低コストにて得ることが可能になり、省エネルギー効果が大である。
【0014】
前記熱媒体は、過熱蒸気であることが好ましい。
過熱蒸気は熱容量が大きく、脱塩素有機廃棄物の乾燥または加熱乾燥を比較的短時間にて行うことが可能である。
【0015】
前記高含水率有機廃棄物の含水率は60質量%以上であることが好ましい。
この高含水率有機廃棄物の含水率を60質量%以上とすることにより、高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物が水に溶解することで効果的に除去され、よって、塩素濃度が3000ppm以下と極めて低い脱塩素有機廃棄物を容易かつ安価に得ることが可能になる。
【0016】
前記乾燥脱塩素有機廃棄物に、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことが好ましい。
乾燥脱塩素有機廃棄物は、乾燥処理の後では、通常、球状、塊状(ブロック状)、板状等、比較的大きな形状を有している。そこで、乾燥処理した乾燥脱塩素有機廃棄物に対して、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことにより、燃焼効率の高い所望の形状の粉粒体とすることが可能になる。
【0017】
本発明のバイオマス燃料は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去し、得られた脱塩素有機廃棄物を低含水率有機廃棄物を焼却した際に生じる燃焼排ガスを用いて乾燥または加熱乾燥してなるバイオマス燃料であって、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が30質量%以下であることを特徴とする。
【0018】
このバイオマス燃料では、塩素濃度を3000ppm以下かつ含水率を30質量%以下としたことにより、燃料として用いた場合においても、燃焼時に発生する熱エネルギーがバイオマス燃料に含まれる水分の蒸発潜熱に奪われてしまう虞が無くなり、燃料としてのエネルギーの有効利用を図ることが可能になる。
このバイオマス燃料は、含水率が30質量%以下と低いことから、高位の発熱量が確保される。
また、塩素濃度が3000ppm以下と極めて低いので、燃焼装置等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルが発生する虞がなく、また、セメント焼成設備に投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
【0019】
このバイオマス燃料は、平均粒径が10mm以下であることが好ましい。
このバイオマス燃料では、平均粒径を10mm以下としたことにより、従来問題となっていた凝集塊が含まれないものとなり、燃焼効率を高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の高含水率有機廃棄物の燃料化方法によれば、高含水率有機廃棄物の脱水処理を行うことにより、この有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去して脱塩素有機廃棄物とし、次いで、この脱塩素有機廃棄物の乾燥または加熱乾燥を、低含水率有機廃棄物を焼却した際に生じる燃焼排ガスを用いて行い、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が30質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物するので、塩素濃度及び含水率が極めて低くかつ高位の発熱量を有する乾燥脱塩素有機廃棄物を低コストにて得ることができる。したがって、燃焼効率が高いバイオマス燃料を提供することができる。
【0021】
また、乾燥または加熱乾燥を、低含水率有機廃棄物を焼却した際に生じる燃焼排ガスを用いて行うので、化石燃料を用いる必要がなくなり、省エネルギー効果を高めることができ、しかも環境負荷が小さい。
また、この乾燥脱塩素有機廃棄物をセメント焼成設備に燃料として投入した場合においても、セメントの操業や品質への悪影響を防止することができる。
【0022】
本発明のバイオマス燃料によれば、塩素濃度を3000ppm以下かつ含水率を30質量%以下としたので、高位の発熱量を有し、燃焼効率が高く、省エネルギー効果が大きく、しかも環境負荷が小さいバイオマス燃料を提供することができる。
また、このバイオマス燃料を燃焼する燃焼装置等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルを防止することができ、このバイオマス燃料をセメント焼成設備に投入した場合においても、燃焼効率が低下する虞がなく、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞も無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の高含水率有機廃棄物の燃料化方法及びバイオマス燃料の最良の形態について、図面に基づき説明する。
なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0024】
「高含水率有機廃棄物の燃料化方法」
本実施形態の高含水率有機廃棄物の燃料化方法は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する高含水率有機廃棄物を燃料化するための方法であり、高含水率有機廃棄物の脱水処理を行うことにより、この高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去して脱塩素有機廃棄物とし、次いで、この脱塩素有機廃棄物の乾燥または加熱乾燥を、低含水率有機廃棄物を焼却した際に生じる燃焼排ガスを用いて行い、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が30質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とする方法である。
【0025】
次に、この高含水率有機廃棄物の燃料化方法について図1に基づき詳細に説明する。
図1は、本実施形態の高含水率有機廃棄物の燃料化方法に用いられる燃料化設備を示す模式図であり、図において、1は排出源、2は脱水機、3は焼却炉、4は熱交換器、5は乾燥機、6は粉砕機、7は排水処理装置である。
【0026】
ここで、高含水率有機廃棄物とは、含水率が60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上の塩素および/または塩素化合物を含む有機廃棄物のことであり、例えば、豚舎、牛舎、鶏舎等の畜舎を水洗により洗浄した際に排出される豚糞尿、牛糞尿、鶏糞尿等の畜糞尿と多量の洗浄水とを含む排泄物含有処理水、豚糞尿、牛糞尿、鶏糞尿等の畜糞尿を等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌して得られる畜糞尿含有スラリー、使用済みの弁当容器や食品用容器を水洗により洗浄する際に排出される食品と多量の水とを含む食品廃棄物含有処理水、等が挙げられる。これらは、その用途や必要に応じて、1種のみ、または2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
また、低含水率有機廃棄物とは、含水率が50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下の有機廃棄物のことであり、この有機廃棄物は、必ずしも低塩素濃度である必要はない。
この低含水率有機廃棄物としては、含水率が50質量%以下かつ発熱量がドライベース(乾燥状態)で2500kcal/kg以上の畜糞が好ましく、例えば、ブロイラー鶏糞、ブロイラー鶏糞や採卵鶏糞を乾燥させた乾燥鶏糞、乾燥豚糞、乾燥牛糞、発酵鶏糞、発酵豚糞、発酵牛糞等が挙げられる。これらは、その用途や必要に応じて、1種のみ、または2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
排出源1は、上記の高含水率有機廃棄物を排出する源であり、例えば、豚の糞や尿を含む排泄物を水洗により洗浄した排泄物含有処理水を排出する豚舎、牛の糞や尿を含む排泄物を水洗により洗浄した排泄物含有処理水を排出する牛舎、鶏のケージ等を水洗により洗浄した排泄物含有処理水を排出する鶏舎等の畜舎、豚糞尿、牛糞尿、鶏糞尿等の畜糞尿を等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌して得られる畜糞尿含有スラリーの貯留槽、百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等にて廃棄される食品廃棄物やその容器等を水洗により洗浄した食品廃棄物含有処理水を排出する食品廃棄処理施設等が挙げられる。
これらの各施設から排出される高含水率有機廃棄物は、その用途によっては、2種類以上を混合してもよい。
【0029】
脱水機2は、塩素および/または塩素化合物を含む高含水率有機廃棄物を脱水処理して塩素濃度が低い固形状のケーキ(脱塩素有機廃棄物)と、塩素濃度が高い水分とに固液分離することができるものであればよく、濾過機、加圧濾過機、遠心脱水機、スクリュープレス等の各種脱水機が使用でき、特に、短時間で固液分離ができるスクリュープレスが好ましい。
焼却炉3は、上記の低含水率有機廃棄物を焼却処理する装置であればよく、装置の種類や形式は問わない。
【0030】
熱交換器4は、過熱蒸気等の熱媒体を加熱管と冷却管との間で循環させることにより、燃焼排熱の有する熱エネルギーを熱媒体の熱エネルギーに交換するという動作(熱サイクル)を行う装置である。
乾燥機5は、熱交換器4から取り出された熱媒体の熱エネルギーを用いて、脱水機2から取り出された固形状のケーキ(脱塩素有機廃棄物)を乾燥または加熱乾燥する装置である。
【0031】
粉砕機6は、乾燥機5から取り出された固形状の乾燥したケーキ(乾燥有機廃棄物)に対して分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことにより、平均粒径が10mm以下の粒子状とする分級機能を有する装置であり、篩、分級機等を備えた自動乳鉢、スタンパ、ニーダー、ロールミル等が好適に用いられる。
排水処理装置7は、脱水機2からの排水に所定の排水処理を施し、処理済みの排水を放流する装置である。
【0032】
次に、この高含水率有機廃棄物の燃料化設備を用いて高含水率有機廃棄物を燃料化する方法について説明する。
排出源1から排出される上述した排泄物含有処理水、食品廃棄物含有処理水等の高含水率有機廃棄物を、脱水機2を用いて脱水処理し、できるだけ低含水率かつ低塩素濃度の固形状のケーキ(脱塩素有機廃棄物)Cと、塩素濃度が高い水分Wとに固液分離する。
【0033】
この高含水率有機廃棄物は、固液分離により効果的に脱塩処理が施され、塩素濃度が3000ppm以下、好ましくは2000ppm以下であり、かつ含水率が85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下の固形状のケーキ(脱塩素有機廃棄物)Cとなる。
このケーキCに含まれる塩素および/または塩素化合物の量を低減し、かつ用いられる水の量を低減するためには、低含水率とすることが必須である。このケーキCが低含水率であれば、後工程である乾燥または加熱乾燥する際の熱量を低減させることができるので好ましい。
このケーキCを乾燥機5に搬入し、乾燥または加熱乾燥する。
一方、この脱水機2にて固液分離された水分Wは、排水処理装置7により所定の排水処理が施された後、外部の排水路等へ放流される。
【0034】
一方、焼却炉3を用いて上記の低含水率有機廃棄物を焼却処理し、この焼却処理の際に発生する排ガスの熱エネルギーを、熱交換器4により水蒸気等の熱媒体と熱交換する。これにより、水蒸気等の熱媒体は150℃〜500℃程度の過熱蒸気等の高温の熱媒体となる。
また、この焼却処理の際に発生した焼却灰は、リンや窒素等を多く含んでいるので、肥料の他、堆肥用水分調整剤等として有効利用される。
【0035】
高温になった熱媒体は、乾燥機5に搬送されてケーキCを加熱し、乾燥する。一方、熱媒体はケーキCと熱交換することで冷やされて100℃〜200℃程度の低温となり、再度、熱交換器4により焼却処理の際に発生する排ガスと熱交換し、150℃〜500℃程度の高温となる。
このように、熱媒体が熱交換器4と乾燥機5との間を循環することにより、低含水率有機廃棄物の焼却処理の際に発生する排ガスの熱エネルギーを熱交換して乾燥機5内のケーキCを加熱・乾燥し、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が30質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とする。
一方、乾燥機5にて乾燥する際に発生する水蒸気は、熱交換器4に導入され、熱媒体として再利用される。
【0036】
このようにして得られた乾燥脱塩素有機廃棄物は、塩素濃度が3000ppm以下と低く、かつ高位の発熱量を有しているので、工業用各種燃料としての利用が可能である。
また、この乾燥脱塩素有機廃棄物の含水率を所定の範囲内、例えば20質量%以下に調整する必要がある場合、乾燥機5におけるケーキCの加熱・乾燥時間を調整することにより可能である。
【0037】
この乾燥脱塩素有機廃棄物は、単に乾燥しただけでは、球状、塊状(ブロック状)、板状等、大きな形状をしていることが多い。用途によってはこのままの形状でもよいが、セメント焼成設備等にて用いる場合等では、燃焼効率を向上させるために、粉砕機6に備えられた篩または分級機を用いて分級した後、この粉砕機6により粉砕または解砕して、平均粒径が10mm以下の粒子状とするのがよい。
このようにして得られた乾燥脱塩素有機廃棄物は、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が30質量%以下と低くかつ高位の発熱量を有し、しかも、平均粒径が10mm以下の粒子状とされているので、セメント焼成設備のセメントキルンの窯尻部等に投入することによりセメント焼成用燃料として有効利用される。
【0038】
「バイオマス燃料」
本実施形態のバイオマス燃料は、上記の高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去し、得られた脱塩素有機廃棄物を低含水率有機廃棄物を焼却した際に生じる燃焼排ガスを用いて乾燥または加熱乾燥してなるバイオマス燃料であり、その塩素濃度は3000ppm以下が好ましく、より好ましくは2000ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下である。
また、含水率は30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0039】
このバイオマス燃料は、上述した脱塩素有機廃棄物からなるケーキを乾燥または加熱乾燥し、必要に応じて粉砕または解砕し、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が30質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とすることで、得ることができる。
このバイオマス燃料は、セメント製造用、バイオマス発電用、バイオマスボイラー用等、広範囲の燃料として利用することが可能である。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の高含水率有機廃棄物の燃料化方法によれば、高含水率有機廃棄物の脱水処理を行うことにより、この高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去して脱塩素有機廃棄物とし、次いで、この脱塩素有機廃棄物の乾燥または加熱乾燥を、低含水率有機廃棄物を焼却した際に生じる燃焼排ガスを用いて行い、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が30質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とするので、塩素濃度及び含水率が極めて低くかつ高位の発熱量を有するバイオマス燃料を低コストにて得ることができる。したがって、燃焼効率が高いバイオマス燃料を提供することができる。
【0041】
また、乾燥または加熱乾燥を、低含水率有機廃棄物を焼却した際に生じる燃焼排ガスを用いて行うので、化石燃料を用いる必要がなくなり、省エネルギー効果を高めることができ、しかも環境負荷が小さい。
また、この乾燥脱塩素有機廃棄物をセメント焼成設備に燃料として投入した場合、セメント焼成設備における燃焼効率を高めることができ、しかもセメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
【0042】
本実施形態のバイオマス燃料によれば、高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去し、得られた脱塩素有機廃棄物を低含水率有機廃棄物を焼却した際に生じる燃焼排ガスを用いて乾燥または加熱乾燥し、塩素濃度を3000ppm以下かつ含水率を30質量%以下としたので、高位の発熱量を有し、燃焼効率が高く、省エネルギー効果が大きく、しかも環境負荷が小さいバイオマス燃料を提供することができる。
また、このバイオマス燃料を燃焼する燃焼装置等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルを防止することができ、このバイオマス燃料をセメント焼成設備に投入した場合においても、燃焼効率が低下する虞がなく、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞も無い。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0044】
(実施例)
低含水率有機廃棄物として、含水率45質量%、塩素濃度6500ppmのブロイラー鶏糞を用いた。
このブロイラー鶏糞を焼却炉(焼却量:0.7t/h)で焼却処理した。このとき発生した排ガス(840℃)を熱交換器に導入し、乾燥機の乾燥熱源とした。この熱交換器から排出された排ガスの温度は300℃であった。
また、焼却処理した際に0.04t/hの焼却灰が得られた。この焼却灰は、肥料として有効利用することができることが確認された。
【0045】
一方、このブロイラー鶏糞1.8t/hに3倍量の水(5.4t/h)を投入し、混合・撹拌し、スラリーを得た。
次いで、このスラリーを脱水機を用いて脱水し、塩素濃度1000ppm、含水率60質量%のケーキ状の脱塩素ブロイラー鶏糞2.0t/hを得た。
次いで、この脱塩素ブロイラー鶏糞を乾燥機内に搬入し、上記の熱交換器から排出された排ガスを用いて乾燥させ、塩素濃度1000ppm、含水率15質量%、発熱量(ドライベース(乾燥状態))4000kcal/kgの乾燥脱塩素鶏糞0.9t/hを得た。
この乾燥脱塩素鶏糞では、採取場所による含水率のバラツキが小さく、バイオマス燃料として高位のものであった。
【0046】
この脱塩素ブロイラー鶏糞を乾燥する際に発生した水蒸気を上記の熱交換器に導入し、焼却炉から発生した排ガス(840℃)と熱交換することにより、350℃の過熱蒸気となった。この過熱蒸気を用いて、再度脱塩素ブロイラー鶏糞を乾燥したところ、乾燥機から排出される(過熱)蒸気の温度は150℃まで低下していた。
この水蒸気のうち余剰の水蒸気を上記の焼却炉に導入し、脱臭処理を施した。
また、上記の乾燥脱塩素鶏糞をセメント焼成設備のセメントキルンの窯前部のバーナーから吹き込み、セメント製造用燃料として使用したところ、有効な燃料効果を確認することができた。また、セメントの操業や品質に対して悪影響が無いことも確認することができた。
【0047】
(比較例)
ブロイラー鶏糞1.8t/hに3倍量の水(5.4t/h)を投入し、混合・撹拌し、スラリーを得た。
次いで、このスラリーを脱水機を用いて脱水し、塩素濃度1000ppm、含水率60質量%のケーキ状の脱塩素ブロイラー鶏糞2.0t/hを得た。
次いで、この脱塩素ブロイラー鶏糞2.0tを45日間天日乾燥し、塩素濃度1000ppm、含水率40質量%程度、発熱量(ドライベース(乾燥状態))4000kcal/kgの乾燥脱塩素鶏糞を1.275t得た。
【0048】
この乾燥脱塩素鶏糞では、含水率が高く、焼成時に水分の蒸発潜熱が奪われるために、バイオマス燃料としての品質に問題があった。
また、含水率を30質量%以下にするためには、さらに長時間の天日乾燥を要し、実用上問題があった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態の高含水率有機廃棄物の燃料化方法に用いられる燃料化設備を示す模式図である。
【符号の説明】
【0050】
1 排出源
2 脱水機
3 焼却炉
4 熱交換器
5 乾燥機
6 粉砕機
7 排水処理装置
C ケーキ
W 水分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する高含水率有機廃棄物を燃料化するための方法であって、
前記高含水率有機廃棄物の脱水処理を行うことにより、この高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去して脱塩素有機廃棄物とし、
次いで、この脱塩素有機廃棄物の乾燥または加熱乾燥を、低含水率有機廃棄物を焼却した際に生じる燃焼排ガスを用いて行い、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が30質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とすることを特徴とする高含水率有機廃棄物の燃料化方法。
【請求項2】
前記燃焼排ガスと熱交換した熱媒体を用いて、前記脱塩素有機廃棄物の乾燥または加熱乾燥を行うことを特徴とする請求項1記載の高含水率有機廃棄物の燃料化方法。
【請求項3】
前記熱媒体は、過熱蒸気であることを特徴とする請求項2記載の高含水率有機廃棄物の燃料化方法。
【請求項4】
前記高含水率有機廃棄物の含水率は60質量%以上であることを特徴とする請求項1、2または3記載の高含水率有機廃棄物の燃料化方法。
【請求項5】
前記乾燥脱塩素有機廃棄物に、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の高含水率有機廃棄物の燃料化方法。
【請求項6】
家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去し、得られた脱塩素有機廃棄物を低含水率有機廃棄物を焼却した際に生じる燃焼排ガスを用いて乾燥または加熱乾燥してなるバイオマス燃料であって、
塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が30質量%以下であることを特徴とするバイオマス燃料。
【請求項7】
平均粒径が10mm以下であることを特徴とする請求項6記載のバイオマス燃料。

【図1】
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【公開番号】特開2009−242636(P2009−242636A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91649(P2008−91649)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】