説明

高周波コイル装置

【課題】操作性を損なわず、かつSN比の低下を抑制することを課題とする。
【解決手段】送受信コイル部6は、送信コイルと、受信コイルと、受信コイルに隣接し、該受信コイルによって受信された磁気共鳴信号を増幅する増幅部とを備える。また、送受信コイル部6は、送信コイル及び受信コイルとMRI装置100との間に敷設され、送信時には高周波パルスを伝送し、受信時には磁気共鳴信号を伝送する伝送線を備える。また、送受信コイル部6は、伝送線のコイル側端部に接続されるとともに、送信コイルと伝送線との接続および受信コイルと伝送線との接続を集約し、送受信に応じて経路を切り替える切替部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置)による撮像においては、送信コイルが、高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生し、受信コイルが、高周波磁場の影響により被検体から放射された磁気共鳴信号を受信する。また、計算機システムが、磁気共鳴信号から画像を再構成する。
【0003】
送信コイル及び受信コイルは、被検体に装着されるものとしてMRI装置とは別の高周波コイル装置に備えられる場合や、MRI装置に設置されるものとして、例えば傾斜磁場コイルの内側に備えられる場合などがある。また、送信の機能及び受信の機能を兼ね備えた一体型の送受信コイルもある。
【0004】
ここで、被検体から放射された磁気共鳴信号は、一般に微弱である。このため、従来、計算機システムの前段に増幅器が備えられ、受信コイルによって受信された磁気共鳴信号は、増幅器によって増幅された後に計算機システムに送信される。
【0005】
図7及び8は、従来技術を説明するための図である。例えば、図7に例示するように、高周波コイル装置のコイルハウジング(筐体)30内に前置増幅部33が備えられる場合がある。例えば図7の場合、送受信コイル31によって受信された磁気共鳴信号は、送受信切替部32によって受信用伝送線36側の経路に送出され、前置増幅部33によって増幅された後、受信用伝送線36に送出される。一方、図8に例示するように、MRI装置側に前置増幅部43が備えられる場合もある。例えば図8の場合、送受信コイル41によって受信された磁気共鳴信号は、増幅されずに送受信共用の伝送線に送出され、コネクタ47を介してMRI装置に到達してから送受信切替部42によって受信用伝送線46側の経路に送出され、その後、前置増幅部43によって初めて増幅される。なお、複合ケーブル34及び複合ケーブル44は、伝送線を複数本集約したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−132308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図7に例示する従来技術の場合には、高周波コイル装置とMRI装置との間に敷設される複合ケーブルが太くなり、医師や技師にとって操作性が損なわれるという課題があった。すなわち、複合ケーブルには、送信用伝送線及び受信用伝送線の2本ずつの組合せがチャネルの数分含まれることになるので、複合ケーブルは太くならざるを得ない。また、図8に例示する従来技術の場合には、微弱な磁気共鳴信号が増幅されないまま伝送線に送出されることになるので、磁気共鳴信号は減衰し、SN比(Signal to Noise ratio)が低下するという課題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、操作性を損なわず、かつSN比の低下を抑制することが可能な高周波コイル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の高周波コイル装置は、高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生する送信コイルと、被検体から放射された磁気共鳴信号を受信する受信コイルと、前記受信コイルに隣接し、該受信コイルによって受信された磁気共鳴信号を増幅する増幅部と、前記送信コイルおよび前記受信コイルと磁気共鳴イメージング装置との間に敷設され、送信時には高周波パルスを伝送し、受信時には磁気共鳴信号を伝送する伝送線と、前記伝送線のコイル側端部に接続されるとともに、前記送信コイルと該伝送線との接続および前記受信コイルと該伝送線との接続を集約し、送信時には、前記伝送線を経由して前記磁気共鳴イメージング装置から送信された高周波パルスが前記送信コイルに送信されるように、受信時には、前記増幅部を介して前記受信コイルから送信された磁気共鳴信号が前記伝送線を経由して前記磁気共鳴イメージング装置に送信されるように、送受信に応じて経路を切り替える切替部と備える。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の本発明によれば、操作性を損なわず、かつSN比の低下を抑制することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1に係るMRI装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図2は、実施例1に係る送受信コイル部の構成を示すブロック図である。
【図3A】図3Aは、送受信の切り替えを説明するための図である。
【図3B】図3Bは、送受信の切り替えを説明するための図である。
【図4A】図4Aは、送受信の切り替えを説明するための図である。
【図4B】図4Bは、送受信の切り替えを説明するための図である。
【図5】図5は、実施例2に係る送受信コイル部の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、実施例3に係る送受信コイル部の構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、従来技術を説明するための図である。
【図8】図8は、従来技術を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る高周波コイル装置の実施例を説明する。なお、以下の実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
[MRI装置の構成]
まず、図1を用いて、実施例1に係るMRI装置100の構成を説明する。図1は、実施例1に係るMRI装置100の構成を示す機能ブロック図である。図1に例示するように、実施例1に係るMRI装置100は、静磁場磁石1と、傾斜磁場コイル2と、傾斜磁場電源3と、寝台4と、寝台制御部5と、送信部7と、受信部8と、送受信切替部9と、シーケンス制御部10と、計算機システム20とを備える。また、図1に例示する送受信コイル部6は、MRI装置100とは別に備えられる高周波コイル装置である。
【0014】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成され、内部の空間に一様な静磁場を発生する。静磁場磁石1は、例えば、永久磁石、超伝導磁石などである。傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成され、内部の空間に傾斜磁場を発生する。具体的には、傾斜磁場コイル2は、静磁場磁石1の内側に配置され、傾斜磁場電源3から電流の供給を受けて傾斜磁場を発生する。傾斜磁場電源3は、シーケンス制御部10から送信されるパルスシーケンス実行データに従い、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。
【0015】
寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備え、天板4aを、被検体Pが載置された状態で傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部5は、寝台4を駆動して、天板4aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0016】
送受信コイル部6は、高周波磁場を発生し、また、磁気共鳴信号を受信する。具体的には、送受信コイル部6は、被検体Pに装着され、送受信切替部9を介して送信部7から高周波パルスの供給を受け、高周波磁場を発生する。また、送受信コイル部6は、高周波磁場の影響により被検体Pから放射された磁気共鳴信号を受信し、送受信切替部9を介して受信部8に送信する。例えば、送受信コイル部6は、被検体Pの頭部に装着される頭部用のコイル、被検体Pの背中と天板4aとの間に配置される脊椎用のコイル、被検体Pの腹側に装着される腹部用のコイルなどである。なお、送受信コイル部6の詳細については後述する。
【0017】
送信部7は、シーケンス制御部10から送信されるパルスシーケンス実行データに従い、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを、送受信切替部9を介して送受信コイル部6に供給する。なお、送信部7は、送受信コイル部6のコイル数に応じたチャネル毎に、高周波パルスを供給する。受信部8は、シーケンス制御部10から送信されるパルスシーケンス実行データに従い、送受信コイル部6から送信された磁気共鳴信号を送受信切替部9を介して受信し、受信した磁気共鳴信号をデジタル変換することにより磁気共鳴信号データを生成する。また、受信部8は、生成した磁気共鳴信号データを、シーケンス制御部10を介して計算機システム20に送信する。なお、受信部8は、送受信コイル部6のコイル数に応じたチャネル毎に、磁気共鳴信号を受信し、チャネル毎に生成した磁気共鳴信号データを計算機システム20に送信する。
【0018】
送受信切替部9は、シーケンス制御部10から送信されるパルスシーケンス実行データに従い、送受信に応じて経路を切り替える。具体的には、送受信切替部9は、送信時には、送信部7から送信された高周波パルスが送受信コイル部6に供給されるように、受信時には、送受信コイル部6から送信された磁気共鳴信号が受信部8に送信されるように、送受信に応じて経路を切り替える。
【0019】
シーケンス制御部10は、傾斜磁場電源3、送信部7、受信部8、送受信切替部9、及び送受信コイル部6(後述する送受信切替部6c及び送受信切替部6e)を制御する。具体的には、シーケンス制御部10は、計算機システム20から送信されたパルスシーケンス実行データを、傾斜磁場電源3、送信部7、受信部8、送受信切替部9、及び送受信コイル部6に送信する。
【0020】
計算機システム20は、MRI装置100の全体制御や、磁気共鳴信号データの収集、画像の再構成などを行う。計算機システム20は、インタフェース部21と、画像再構成部22と、記憶部23と、入力部24と、表示部25と、制御部26とを有する。
【0021】
インタフェース部21は、シーケンス制御部10に接続され、シーケンス制御部10と計算機システム20との間で送受信されるデータの入出力を制御する。画像再構成部22は、受信部8から送信された磁気共鳴信号データから画像データを生成し、生成した画像データを記憶部23に格納する。なお、例えば、画像再構成部22は、磁気共鳴信号データに対してチャネル毎に独立に再構成処理を行い、その後、二乗和のルートを計算することで、合成画像(Sum Of Squares)を生成する。
【0022】
記憶部23は、画像再構成部22によって格納された画像データを記憶する。例えば、記憶部23は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスクなどである。
【0023】
入力部24は、撮像指示などを操作者から受け付ける。例えば、入力部24は、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチなどの選択デバイス、あるいはキーボードなどの入力デバイスである。表示部25は、記憶部23に格納された画像データなどを表示する。例えば、表示部25は、液晶表示器などの表示デバイスである。
【0024】
制御部26は、上記各部を制御することによってMRI装置100を総括的に制御する。例えば、制御部26は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、または、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路である。
【0025】
[送受信コイル部の構成]
次に、図2を用いて、実施例1に係る送受信コイル部6の構成を説明する。図2は、実施例1に係る送受信コイル部6の構成を示すブロック図である。
【0026】
図2に例示するように、実施例1に係る送受信コイル部6は、コイルハウジング6a内に、送受信コイル6b、送受信切替部6c、前置増幅部6d、及び送受信切替部6eの組合せを複数有する。また、図2に例示するように、送受信コイル部6は、上記組合せ毎の伝送線(1本の同軸線)を複数本集約した複合ケーブル6fを有し、複合ケーブル6fが、MRI装置100との間に敷設される。なお、送受信コイル部6は、コネクタ6gによってMRI装置100に接続される。
【0027】
実施例1において、送受信コイル6bは、高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生する送信コイルの機能、及び、被検体Pから放射された磁気共鳴信号を受信する受信コイルの機能を兼ね備えた一体型の送受信コイルである。
【0028】
送受信切替部6cは、送受信コイル6bと前置増幅部6dとの間に接続され、送受信コイル6bと送受信切替部6eとの接続を、前置増幅部6dを介した接続と前置増幅部6dを介さない接続とに分離する。
【0029】
また、送受信切替部6cは、送受信に応じて経路を切り替える。具体的には、送受信切替部6cは、送信時には、送受信切替部6eから送信された高周波パルスが送受信コイル6bに送信されるように経路を切り替える。一方受信時には、送受信切替部6cは、送受信コイル6bから送信された磁気共鳴信号が前置増幅部6dを介して送受信切替部6eに送信されるように経路を切り替える。
【0030】
前置増幅部6dは、送受信コイル6bに隣接し、送受信コイル6bによって受信された磁気共鳴信号を増幅する。もっとも、実施例1においては、送受信コイル6bと前置増幅部6dとの間に、送受信切替部6cが設置される。
【0031】
送受信切替部6eは、伝送線の送受信コイル6b側端部に接続されるとともに、送信時の経路と受信時の経路とを集約する。また、送受信切替部6eは、送受信に応じて経路を切り替える。具体的には、送受信切替部6eは、送信時には、伝送線を経由してMRI装置100から送信された高周波パルスが送受信コイル6bに送信されるように経路を切り替える。一方受信時には、送受信切替部6eは、前置増幅部6dを介して送受信コイル6bから送信された磁気共鳴信号が伝送路を経由してMRI装置100に送信されるように経路を切り替える。
【0032】
このようなことから、実施例1において、MRI装置100から送信された高周波パルスは、送受信コイル部6のコネクタ6gを介して複合ケーブル6fを伝送される。また、高周波パルスは、送受信切替部6eによって経路を切り替えられることで、前置増幅部6dを通過しない経路を経て送受信切替部6cに送信され、送受信コイル6bに送信される。こうして、送受信コイル6bは、高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生し、被検体Pに照射する。
【0033】
また、被検体Pから放射された磁気共鳴信号は、送受信コイル6bによって受信され、送受信切替部6cによって経路を切り替えられることで、前置増幅部6dを通過する経路に送出される。また、磁気共鳴信号は、前置増幅部6dによって増幅され、増幅された磁気共鳴信号は、送受信切替部6eを介して複合ケーブル6fに送出され、コネクタ6gを介してMRI装置100に送信される。
【0034】
[送受信の切り替え]
続いて、図3A〜4Bを用いて、実施例1における送受信の切り替えを説明する。図3A〜4Bは、送受信の切り替えを説明するための図である。
【0035】
ここで、図3Aは、送受信切替部6c及び前置増幅部6dを図示し、図3Bは、送受信切替部6c、前置増幅部6d、及び送受信切替部6eを図示する。すなわち、図3Aと図3Bとの違いは、送受信切替部6eが図示されているか否かの違いである。以下、図3Bを用いて、実施例1における送受信の切り替えを説明する。
【0036】
図3Bの符号aは、電源供給部である。また、図3Bの符号b及びdは、ダイオード(Diode)である。ダイオードは、アノード(陽極)及びカソード(陰極)の2つの端子を有し、電流を一方向にしか流さない性質を持つ。すなわち、ダイオードは、アノードからカソードへは電流を流すが、カソードからアノードへは電流を流さない性質を持つ。例えば、ダイオードbは、MRI装置100側から送受信コイル6b側へは電流を流すが、その逆方向には流さない。一方、ダイオードdは、送受信コイル6b側からMRI装置100側へは電流を流すが、その逆方向には流さない。また、図3Bの符号c1、c2及びc3は、共振回路である。また、図3Bの符号eは、前置増幅部であり、図2の前置増幅部6dに相当する。
【0037】
電源供給部aは、MRI装置100のシーケンス制御部10による制御を受け、ダイオードb及びダイオードdを制御する。具体的には、電源供給部aは、送信時、ダイオードbに対して順方向に電圧を印加する。すなわち、電源供給部aは、アノード側に正電圧を印加し、カソード側に負電圧を印加する。すると、共振回路c1、c2、及びc3は共振し、インピーダンス(交流に関する抵抗値)が高くなる。この結果、図3Bに示す回路は、図4Aに示す回路と等価となり、送信時の高周波パルスは、図4Aに示す経路(前置増幅部eを経由しない経路)を送信されることになる。
【0038】
一方、電源供給部aは、受信時、ダイオードdに対して逆方向に電圧を印加する。すなわち、電源供給部aは、アノード側に負電圧を印加し、カソード側に正電圧を印加する。すると、共振回路c1、c2、及びc3は共振するが、送信時とは反対に、インピーダンス(交流に関する抵抗値)が低くなる。この結果、図3Bに示す回路は、図4Bに示す回路と等価となり、受信時の磁気共鳴信号は、図4Bに示す経路(前置増幅部eを経由する経路)を送信されることになる。
【0039】
[実施例1の効果]
上述したように、実施例1に係る送受信コイル部6は、高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生し、被検体Pから放射された磁気共鳴信号を受信する送受信コイル6bを備える。ここで、実施例1における送受信コイル6bは、送信の機能および受信の機能を兼ね備えた一体型の送受信コイルである。また、送受信コイル部6は、送受信コイル6bによって受信された磁気共鳴信号を増幅する前置増幅部6dを備える。また、送受信コイル部6は、送受信コイル6bとMRI装置100との間に敷設され、送信時には高周波パルスを伝送し、受信時には磁気共鳴信号を伝送する伝送線を備える。
【0040】
また、送受信コイル部6は、伝送線の送受信コイル6b側端部に接続されるとともに、送受信コイル6bと伝送線との接続を集約し、送信時には、伝送線を経由してMRI装置100から送信された高周波パルスが送受信コイル6bに送信されるように、受信時には、前置増幅部6dを介して送受信コイル6bから送信された磁気共鳴信号が伝送線を経由してMRI装置100に送信されるように、送受信に応じて経路を切り替える送受信切替部6eを備える。
【0041】
また、送受信コイル部6は、送受信コイル6bと前置増幅部6dとの間に接続されるとともに、送受信コイル6bと送受信切替部6eとの接続を、前置増幅部6dを介した接続と前置増幅部6dを介さない接続とに分離する送受信切替部6cを備える。送受信切替部6cは、送信時には、送受信切替部6eから送信された高周波パルスが、送受信コイル6bに送信されるように、受信時には、送受信コイル6bから送信された磁気共鳴信号が前置増幅部6dを介して送受信切替部6eに送信されるように、送受信に応じて経路を切り替える。
【0042】
このようなことから、実施例1によれば、コイルハウジング内に増幅器を備えるとともに、コイルハウジング内で送信時の経路と受信時の経路とを集約し、伝送線を送受信共用とするので、操作性を損なわず、かつSN比の低下を抑制することが可能になる。
【0043】
すなわち、実施例1に係る送受信コイル部6の場合、図2に示したように、前置増幅部6dがコイルハウジング6a内に備えられ、送受信コイル6bに隣接して設置される。このため、送受信コイル6bによって受信された微弱な磁気共鳴信号は、増幅された後に伝送線に送出されることになり、多少の減衰があったとしても、SN比の低下は抑制される。
【0044】
また、実施例1に係る送受信コイル部6の場合、図2に示したように、コイルハウジング6a側で送信時の経路と受信時の経路とが集約されるので、コイルハウジング6aとコネクタ6gとの間の伝送線は、送受信共用の伝送線として1チャネルに付き1本となる。この結果、チャネル毎の伝送線を集約した複合ケーブル6fはチャネル数分の伝送線を集約した太さに留まり、医師や技師にとっての操作性を損なうことがない。
【実施例2】
【0045】
ところで、本発明に係る高周波コイル装置は、上記実施例1において例示した送受信コイルの構成に限られるものではない。そこで、以下では、実施例2として、他の形態を説明する。図5を用いて、実施例2に係る送受信コイル部60の構成を説明する。図5は、実施例2に係る送受信コイル部60の構成を示すブロック図である。
【0046】
図5に例示するように、実施例2に係る送受信コイル部60は、コイルハウジング60a内に、受信コイル60b、送信コイル60c、前置増幅部60d、及び送受信切替部60eの組合せを複数有する。また、図5に例示するように、送受信コイル部60は、上記組合せ毎の伝送線(1本の同軸線)を複数本集約した複合ケーブル60fを有し、複合ケーブル60fが、MRI装置100との間に敷設される。なお、送受信コイル部60は、コネクタ60gによってMRI装置100に接続される。
【0047】
実施例2において、受信コイル60bは、被検体Pから放射された磁気共鳴信号を受信する受信コイルである。送信コイル60cは、高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生する送信コイルである。前置増幅部60dは、受信コイル60bに隣接し、受信コイル60bによって受信された磁気共鳴信号を増幅する。
【0048】
送受信切替部60eは、伝送線のコイル(受信コイル60b及び送信コイル60c)側端部に接続されるとともに、受信コイル60bと伝送線との接続、及び、送信コイル60cと伝送線との接続を集約する。また、送受信切替部60eは、送受信に応じて経路を切り替える。具体的には、送受信切替部60eは、送信時には、伝送線を経由してMRI装置100から送信された高周波パルスが送信コイル60cに送信されるように経路を切り替える。一方受信時には、送受信切替部60eは、前置増幅部60dを介して受信コイル60bから送信された磁気共鳴信号が伝送路を経由してMRI装置100に送信されるように経路を切り替える。
【0049】
このようなことから、実施例2において、MRI装置100から送信された高周波パルスは、送受信コイル部60のコネクタ60gを介して複合ケーブル60fを伝送される。また、高周波パルスは、送受信切替部60eによって経路を切り替えられることで、前置増幅部60dを通過しない経路を経て送信コイル60cに送信される。こうして、送信コイル60cは、高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生し、被検体Pに照射する。
【0050】
また、被検体Pから放射された磁気共鳴信号は、受信コイル60bによって受信され、前置増幅部60dに送信される。また、磁気共鳴信号は、前置増幅部60dによって増幅され、増幅された磁気共鳴信号は、送受信切替部60eを介して複合ケーブル60fに送出され、コネクタ60gを介してMRI装置100に送信される。
【0051】
[実施例2の効果]
上述したように、実施例2に係る送受信コイル部60は、高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生する送信コイル60cと、被検体Pから放射された磁気共鳴信号を受信する受信コイル60bとを備える。また、送受信コイル部60は、受信コイル60bによって受信された磁気共鳴信号を増幅する前置増幅部60dを備える。また、送受信コイル部60は、送信コイル60c及び受信コイル60bとMRI装置100との間に敷設され、送信時には高周波パルスを伝送し、受信時には磁気共鳴信号を伝送する伝送線を備える。
【0052】
また、送受信コイル部60は、伝送線のコイル側端部に接続されるとともに、送信コイル60cと伝送線との接続及び受信コイル60bと伝送線との接続を集約する送受信切替部60eを備える。送受信切替部60eは、送信時には、伝送線を経由してMRI装置100から送信された高周波パルスが送信コイル60cに送信されるように、受信時には、前置増幅部60dを介して受信コイル60bから送信された磁気共鳴信号が伝送線を経由してMRI装置100に送信されるように、送受信に応じて経路を切り替える。
【0053】
このようなことから、実施例2によれば、コイルハウジング内に増幅器を備えるとともに、コイルハウジング内で送信時の経路と受信時の経路とを集約し、伝送線を送受信共用とするので、送受信兼用でない場合でも、操作性を損なわず、かつSN比の低下を抑制することが可能になる。
【0054】
すなわち、実施例2に係る送受信コイル部60の場合、図5に示したように、前置増幅部60dがコイルハウジング60a内に備えられ、受信コイル60bに隣接して設置される。このため、受信コイル60bによって受信された微弱な磁気共鳴信号は、増幅された後に伝送線に送出されることになり、多少の減衰があったとしても、SN比の低下は抑制される。
【0055】
また、実施例2に係る送受信コイル部60の場合、図5に示したように、コイルハウジング60a側で送信時の経路と受信時の経路とが集約されるので、コイルハウジング60aとコネクタ60gとの間の伝送線は、送受信共用の伝送線として1チャネルに付き1本となる。この結果、チャネル毎の伝送線を集約した複合ケーブル60fはチャネル数分の伝送線を集約した太さに留まり、医師や技師にとっての操作性を損なうことがない。
【実施例3】
【0056】
ところで、本発明に係る高周波コイル装置は、上記実施例1及び2において例示した送受信コイルの構成に限られるものではない。そこで、以下では、実施例3として、他の形態を説明する。
【0057】
図6を用いて、実施例3に係る送受信コイル部61を説明する。図6は、実施例3に係る送受信コイル部61の構成を示すブロック図である。
【0058】
図6に例示するように、実施例3に係る送受信コイル部61は、コイルハウジング61a内に、受信コイル61b、送信コイル61c、前置増幅部61d、及び送受信切替部61eの組合せを1つ有する。また、図6に例示するように、送受信コイル部61は、コイルハウジング61a内に、受信コイル61b及び前置増幅部61dの組合せを複数有する。また、図6に例示するように、送受信コイル部61は、上記組合せ毎の伝送線(同軸線)を複数本集約した複合ケーブル61fを有し、複合ケーブル61fが、MRI装置100との間に敷設される。なお、送受信コイル部61は、コネクタ61gによってMRI装置100に接続される。
【0059】
実施例3において、受信コイル61bは、被検体Pから放射された磁気共鳴信号を受信する受信コイルである。送信コイル61cは、高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生する送信コイルである。前置増幅部61dは、受信コイル61bに隣接し、受信コイル61bによって受信された磁気共鳴信号を増幅する。
【0060】
送受信切替部61eは、伝送線のコイル(受信コイル61b及び送信コイル61c)側端部に接続されるとともに、受信コイル61bと伝送線との接続、及び、送信コイル61cと伝送線との接続を集約する。また、送受信切替部61eは、送受信に応じて経路を切り替える。具体的には、送受信切替部61eは、送信時には、伝送線を経由してMRI装置100から送信された高周波パルスが送信コイル61cに送信されるように経路を切り替える。一方受信時には、送受信切替部61eは、前置増幅部61dを介して受信コイル61bから送信された磁気共鳴信号が伝送路を経由してMRI装置100に送信されるように経路を切り替える。
【0061】
このようなことから、実施例3において、MRI装置100から送信された高周波パルスは、送受信コイル部61のコネクタ61gを介して複合ケーブル61fを伝送される。また、高周波パルスは、送受信切替部61eによって経路を切り替えられることで、前置増幅部61dを通過しない経路を経て送信コイル61cに送信される。こうして、送信コイル61cは、高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生し、被検体Pに照射する。
【0062】
また、被検体Pから放射された磁気共鳴信号は、受信コイル61bによって受信され、前置増幅部61dに送信される。また、磁気共鳴信号は、前置増幅部61dによって増幅され、増幅された磁気共鳴信号は、送受信切替部61eを介して複合ケーブル61fに送出され、コネクタ61gを介してMRI装置100に送信される。
【0063】
[実施例3の効果]
上述したように、実施例3に係る送受信コイル部61は、送信コイル61cと、受信コイル61bと、前置増幅部61dと、送受信切替部61eとの組合せを1つ備え、他は、受信コイル61bと前置増幅部61dとの組合せである。また、送受信コイル部61は、送信コイル61c及び受信コイル61bとMRI装置100との間に敷設され、送信時には高周波パルスを伝送し、受信時には磁気共鳴信号を伝送する伝送線を備える。
【0064】
送信コイル61cは、高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生する。また、受信コイル61bは、被検体Pから放射された磁気共鳴信号を受信する。また、前置増幅部61dは、受信コイル61bによって受信された磁気共鳴信号を増幅する。また、送受信切替部61eは、伝送線のコイル側端部に接続されるとともに、送信コイル61cと伝送線との接続及び受信コイル61bと伝送線との接続を集約し、送信時には、伝送線を経由してMRI装置100から送信された高周波パルスが送信コイル61cに送信されるように、受信時には、前置増幅部61dを介して受信コイル61bから送信された磁気共鳴信号が伝送線を経由してMRI装置100に送信されるように、送受信に応じて経路を切り替える。
【0065】
このようなことから、実施例3によれば、コイルハウジング内に増幅器を備えるとともに、コイルハウジング内で送信時の経路と受信時の経路とを集約し、伝送線を送受信共用とするので、操作性を損なわず、かつSN比の低下を抑制することが可能になる。
【0066】
すなわち、実施例3に係る送受信コイル部61の場合、図6に示したように、前置増幅部61dがコイルハウジング61a内に備えられ、受信コイル61bに隣接して設置される。このため、受信コイル61bによって受信された微弱な磁気共鳴信号は、増幅された後に伝送線に送出されることになり、多少の減衰があったとしても、SN比の低下は抑制される。
【0067】
また、実施例3に係る送受信コイル部61の場合、図6に示したように、コイルハウジング61a側で送信時の経路と受信時の経路とが集約されるので、コイルハウジング61aとコネクタ61gとの間の伝送線は、送受信共用の伝送線として1チャネルに付き1本となる。この結果、チャネル毎の伝送線を集約した複合ケーブル61fはチャネル数分の伝送線を集約した太さに留まり、医師や技師にとっての操作性を損なうことがない。
【実施例4】
【0068】
その他、本発明は、上記実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0069】
[コイル]
上記実施例においては、送受信コイル部が、MRI装置とは別の高周波コイル装置である場合を例に説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、送受信コイル部がMRI装置に備えられ、例えば傾斜磁場コイルの内側に配置される場合にも、本発明を同様に適用することができる。また、ループ形状のループコイルである場合、あるいは空間を形成する形状のボリュームコイルである場合など、高周波コイルの形状にかかわらず、本発明を同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
100 MRI装置
6 送受信コイル部
6a コイルハウジング
6b 送受信コイル
6c 送受信切替部
6d 前置増幅部
6e 送受信切替部
6f 複合ケーブル
6g コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生する送信コイルと、
被検体から放射された磁気共鳴信号を受信する受信コイルと、
前記受信コイルに隣接し、該受信コイルによって受信された磁気共鳴信号を増幅する増幅部と、
前記送信コイルおよび前記受信コイルと磁気共鳴イメージング装置との間に敷設され、送信時には高周波パルスを伝送し、受信時には磁気共鳴信号を伝送する伝送線と、
前記伝送線のコイル側端部に接続されるとともに、前記送信コイルと該伝送線との接続および前記受信コイルと該伝送線との接続を集約し、送信時には、前記伝送線を経由して前記磁気共鳴イメージング装置から送信された高周波パルスが前記送信コイルに送信されるように、受信時には、前記増幅部を介して前記受信コイルから送信された磁気共鳴信号が前記伝送線を経由して前記磁気共鳴イメージング装置に送信されるように、送受信に応じて経路を切り替える切替部と
を備えたことを特徴とする高周波コイル装置。
【請求項2】
前記送信コイル、前記受信コイル、前記増幅部、および前記切替部の組合せを複数備え、組合せ毎の伝送線を複数本集約した集約伝送線が、前記磁気共鳴イメージング装置との間に敷設されることを特徴とする請求項1に記載の高周波コイル装置。
【請求項3】
前記送信コイルおよび前記受信コイルは、送信の機能および受信の機能を兼ね備えた一体型の送受信コイルであって、
前記送受信コイルと前記増幅部との間に接続されるとともに、前記送受信コイルと前記切替部との接続を、前記増幅部を介した接続と前記増幅部を介さない接続とに分離し、送信時には、前記切替部から送信された高周波パルスが前記送受信コイルに送信されるように、受信時には、前記送受信コイルから送信された磁気共鳴信号が前記増幅部を介して前記切替部に送信されるように、送受信に応じて経路を切り替える第二切替部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の高周波コイル装置。
【請求項4】
前記送受信コイル、前記増幅部、前記切替部、および前記第二切替部の組合せを複数備え、組合せ毎の伝送線を複数本集約した集約伝送線が、前記磁気共鳴イメージング装置との間に敷設されることを特徴とする請求項3に記載の高周波コイル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−130835(P2011−130835A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291058(P2009−291058)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】