説明

高周波加熱調理器

【課題】マイクロ波の供給を受けて発熱する発熱体を備えた調理皿とマイクロ波の供給部との距離によって発熱体に吸収されるマイクロ波の出力が左右されない調理皿を供給する。
【解決手段】調理皿16は、金属皿部34の裏側にマイクロ波を吸収して発熱する発熱体35と、回動軸37aから距離の異なる高位置接地部37bと低位置接地部37cを備えた金属脚部37とを設け、金属脚部37の回動軸37aから高位置接地部37bまでの間はマイクロ波制御手段部で、高位置接地部37bを外側に開いてテーブルプレート24に接して載置した場合は、前記マイクロ波制御手段部の高位置接地部37bは回転アンテナ26の外周より外側に位置し、高位置接地部37bを内側に閉じて低位置接地部37cをテーブルプレート24に接して載置した場合は、前記マイクロ波制御手段部は発熱体35と回転アンテナ26の間に位置することを特徴する高周波加熱調理器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を加熱する加熱手段として、マイクロ波を発生するマグネトロンとヒータを備えた高周波加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オーブンレンジには、マグネトロンより発生するマイクロ波によって食品を短時間に内部から加熱するレンジ加熱や、電熱ヒータによって食品の表面から加熱するグリル加熱やオーブン加熱を備え、その各加熱の用途は、特にレンジ加熱は食品のあたために使用され、オーブン加熱は食品全体を加熱するのに使用され、グリル加熱は食品表面を加熱して焼き目を付ける調理に使用されるものである。
【0003】
また、レンジ加熱と、グリル加熱やオーブン加熱を併用することで加熱時間を短くできることが知られている。
【0004】
さらに、特許文献1には、高周波(マイクロ波)の吸収によって発熱する高周波発熱体(発熱体)を密着させた受け皿(調理皿)に食品を載せて、レンジ加熱(マイクロ波加熱)と加熱室上部に設けられたヒータ加熱(グリル加熱)を同時に行うことで、レンジ加熱によって受け皿の高周波発熱体は発熱し受け皿の表面を高温にして受け皿に接触している食品の面に焼き色を付け、ヒータ加熱によって被加熱物の表面側を加熱することで、食品の表面および裏面の両方を同時に焦げ目の付けられる高周波加熱調理機器用調理器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−52932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、加熱調理器において、調理を効率的に行い、手間を掛けないで調理時間を短縮できる調理方法が好まれている。
【0007】
そこで、特許文献1に示すように高周波発熱体を密着させた受け皿をレンジ加熱する場合、受け皿と高周波の供給部との距離が近いほど高周波は効率良く高周波発熱体に吸収され高周波発熱体の温度は高くなり、受け皿と高周波の供給部との距離が遠くなると高周波発熱体に吸収されるまでに高周波の出力は低下するため高周波発熱体の温度も低くなる課題がある。
【0008】
そのため、高周波発熱体を密着させた受け皿を使用してレンジ加熱と加熱室上部に設けられたヒータ加熱によって食品を加熱する場合、食品を載置した受け皿の設置を加熱室上部に近い上段のレールにすると、食品と加熱室上部に設けられた加熱手段との距離は近く食品の上面を焼く火力は強く、逆に食品の下面側は、下方に備える高周波の供給部から受け皿までの距離が遠くなるため、受け皿で仕切られた加熱室の下方で発生する高周波の損失が大きくなる。よって高周波発熱体の発熱温度は低くなり火力は弱くなる課題がある。
【0009】
また、食品を載置した受け皿の設置を加熱室下部に近い下段のレールにすると、食品と加熱室上部に設けられた加熱手段との距離は遠く食品の上面を焼く火力は弱く、逆に食品の下面側は、下方に備える高周波の供給部から受け皿までの距離が近くなるため、高周波は効率良く高周波発熱体に吸収される。よって発熱温度は高くなり火力が強くなる課題がある。
【0010】
さらに、食品を加熱するのに食品表面からの熱伝導のみによる加熱なので加熱に費やす時間を長く必要とする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の課題を解決するためになされるものであり、請求項1では、食品を収納する加熱室と、前記食品を載置する調理皿と、該調理皿を載置するテーブルプレートと、前記食品を加熱するマイクロ波を発生するマグネトロンと、前記マイクロ波を前記加熱室の加熱室底面に導く導波管と、該導波管と前記加熱室底面を連通しマイクロ波を通す開孔部と、該開孔部を通った前記マイクロ波を前記加熱室に放射するための回転アンテナとを設け、前記調理皿は、前記食品を載置する金属製の金属皿部と、該金属皿部の裏側に密着して貼り付けたマイクロ波を吸収して発熱する発熱体と、前記金属皿部を支え回動軸と該回動軸から2方向に距離の異なる高位置接地部と低位置接地部を備えた金属製の金属脚部と、前記金属脚部の回動軸を回動可能に支持する支持具部とを設け、前記金属脚部の前記回動軸から高位置接地部までの間はアンテナの役割を果すマイクロ波制御手段部で、前記調理皿を前記テーブルプレートに載置する時に、前記高位置接地部を外側に開いて前記テーブルプレートに接して載置した場合は、前記マイクロ波制御手段部の前記高位置接地部は前記回転アンテナの外周より外側に位置し、前記高位置接地部を内側に閉じて前記低位置接地部を前記テーブルプレートに接して載置した場合は、前記マイクロ波制御手段部は前記発熱体と前記回転アンテナの間に位置するようにしたものである。
【0012】
請求項2では、前記支持具部に前記金属皿部を支える低位置接地部を設け、前記金属脚部には前記マイクロ波制御手段部となる回動軸と高位置接地部とを設けたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、調理皿に載置した被加熱物を加熱する場合、グリル加熱による上面からの加熱とマイクロ波加熱により発熱する発熱体による下面からの加熱とマイクロ波による被加熱物の内部からの加熱を併用することで調理時間を短縮することができる。
【0014】
また、マイクロ波の供給部から遠い位置に調理皿を載置して加熱した時でも、マイクロ波の損出を少なくして効率良くマイクロ波を調理皿の発熱体まで供給できる。
【0015】
さらに、マイクロ波の供給部より近い位置に調理皿を載置して加熱した時でも、発熱体へのマイクロ波の過度な供給量を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の加熱調理器本体を前面側から見た斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】第1実施例による加熱調理器の調理皿の金属脚部を開いた状態の斜視図である。
【図4】第1実施例による加熱調理器の調理皿の金属脚部を開いた状態の正面図である。
【図5】第1実施例による加熱調理器の調理皿の金属脚部を開いた状態を裏面から見た斜視図である。
【図6】第1実施例による加熱調理器の調理皿の金属脚部を閉じた状態の斜視図である。
【図7】第1実施例による加熱調理器の調理皿の金属脚部を閉じた状態の正面図である。
【図8】第1実施例による加熱調理器の調理皿の金属脚部を閉じた状態を裏面から見た斜視図である。
【図9】第1実施例による加熱調理器の加熱室(図1のB−B断面図)に調理皿の金属脚部を開いて載置した説明図である。
【図10】第1実施例による加熱調理器の加熱室(図1のB−B断面図)に調理皿の金属脚部を閉じて載置した説明図である。
【図11】第2実施例による加熱調理器の調理皿の金属脚部を閉じた状態の斜視図である。
【図12】第2実施例による加熱調理器の調理皿の金属脚部を閉じた状態の正面図である。
【図13】第2実施例による加熱調理器の調理皿の金属脚部を開いた状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の加熱調理器を、加熱手段としてヒータとマグネトロンを備えた電気式オーブンレンジを例にとって説明する。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例を上記した図1から図10に従って説明する。
【0019】
図において、加熱調理器の本体1には、加熱する食品を入れる加熱室28を備え、加熱室28に入れた食品をマグネトロン33から発生するマイクロ波やヒータの熱によって加熱調理する。
【0020】
ドア2は、加熱室28に食品を出し入れするために開閉するもので、ドア2を閉めることで加熱室28を密閉状態にし、食品を加熱する時に使用する高周波の漏洩を防止し、ヒータの熱を封じ込め、効率良く加熱することを可能とする。
【0021】
取っ手9は、ドア2に取り付けられ、ドア2の開閉を容易にするもので、手で握りやすい形状になっている。
【0022】
ガラス窓3は、調理中の食品の状態が確認できるようにドア2に取り付けられ、ヒータ等の発熱による高温に耐えるガラスを使用している。
【0023】
表示部5と操作部6は、ドア2の前面下側の操作パネル4に設けられ、操作部6には、高周波加熱を設定するマイクロ波加熱設定キー6a、グリル加熱やオーブン加熱を選択できるヒータ加熱設定キー6b、高周波出力の加熱強さと加熱時間等を入力するための設定ダイヤル6d、加熱を開始するスタートキー6cが設けられ、表示部5には、操作部6から入力された内容や調理の進行状態を表示するようになっている。
【0024】
外枠7は、加熱調理器の本体1の上面と左右側面を覆うキャビネットである。
【0025】
後板10は、外枠7の後面を形成するもので、その上部には外部排気ダクト18が取り付けられ、食品から排出した蒸気や本体1の内部の部品を冷却した後の冷却風を排出する。
【0026】
外部排気ダクト18は、排気の排出方向は本体1の上部方向で且つ前面側に排気することで、背面を壁面に寄せた時でも排気によって壁面を汚すことがない。
【0027】
機械室20は、加熱室底面28aと本体1の底板21との間の空間部に設けられ、底板21上には食品を加熱するためのマグネトロン33、マグネトロン33に接続された導波管47、マグネトロン33に電源を供給するインバータ基板22、加熱手段や加熱時間などを制御する制御手段(図示無し)が組み込まれている。
【0028】
加熱室底面28aは、略中央部が凹状に窪んでおり、その中に回転アンテナ26が設置され、マグネトロン33より放射されるマイクロ波は、導波管47,回転アンテナ駆動手段46の出力軸46aが貫通する開孔部47aを通して回転アンテナ26の下面に流入し、該回転アンテナ26で拡散されて加熱室28に放射される。回転アンテナ26は回転アンテナ駆動手段46の出力軸46aに連結されている。
【0029】
加熱室28の後部には、熱風ユニット11が取り付けられ、該熱風ユニット11内には加熱室28内の空気を効率良く循環させる熱風ファン32が取り付けられ、加熱室奥壁面28bには空気の通り道となる吸気孔31と吹出し孔30が設けられている。
【0030】
熱風ファン32は、熱風ケース11aの外側に取り付けられた熱風モータ13の駆動により回転し、熱風ヒータ14で循環する空気を加熱する。
【0031】
加熱室28の天面の裏側には、上ヒータ12が取り付けられている。上ヒータ12は、マイカ板にヒータ線を巻き付けて平面状に形成し、加熱室28の天面裏側に押し付けて固定し、加熱室28の天面を加熱して加熱室28内の食品を輻射熱によって焼くものである。
【0032】
さらに、加熱室底面28aには、複数個の重量検出手段25が設けられている。例えば前側左右に右側重量センサ25aと左側重量センサ25b、後側中央に奥側重量センサ25cが設けられ、その重量検出手段25にはテーブルプレート24が載置されている。
【0033】
食品の重量は、各重量検出手段25の検出した食品重量の合計で求められる。
【0034】
テーブルプレート24は、後述する調理皿16や食品を載置するためのもので、ヒータ加熱とマイクロ波加熱の両方に使用できるように耐熱性を有し、かつ、マイクロ波の透過性が良く、衛生面でも問題がない磁器等の材料で成形されている。
【0035】
調理皿16は、アルミ等の熱伝導性の高い金属板の表面を凹凸加工した金属皿部34の裏面に後述する発熱体35を密着し、さらに、金属製の金属脚部37を支持具部36によって回動可能に取り付けたものである。
【0036】
また、調理皿16は、テーブルプレート24に載置した時、加熱室壁面28cとの間に加熱室底面28a側から供給されるマイクロ波を調理皿16の上方に供給できる隙間をあけられる大きさとしている。
【0037】
その隙間の寸法は、加熱に使用するマイクロ波の波長をλ(周波数2.45GHzのマイクロ波の場合は、マイクロ波波長λが約120mm)とすると、遮断波長λ/2(60mm)以上の隙間(空間)を必要とする。ここでは、隙間の一辺は、加熱室28の奥行きと幅の各々の寸法が該当し、本実施例の加熱室28の奥行き寸法は322mm、幅寸法は400mmと前記遮断波長λ/2以上に十分な寸法が確保されているので、調理皿16と加熱室壁面28cとの隙間の寸法は、調理皿16が加熱室28に入る程度の隙間で十分であり、現実的には調理皿16と加熱室壁面28cとの間でスパークの発生しない程度の距離を設けている。
【0038】
発熱体35は、マイクロ波を吸収して発熱する物体であり、本実施例ではシリコンにフェライト粉末を混合した素材を、図4や図5に示すように金属皿部34の形状に合わせて加工したものであり、金属皿部34の裏面に密着して貼り付けている。
【0039】
支持具部36は、導電性が無く耐熱性の高いPPS等の樹脂で構成されており、金属皿部34に固定され後述する金属脚部37を回動可能に支持している。
【0040】
金属脚部37は、金属の丸棒を曲げ加工したもので、調理皿16の高さを二種類の異なる高さに調整できるように、回動可能な回動軸37aから2方向に距離の遠い高位置接地部37bと距離の近い低位置接地部37cを備え、その形状は、図4の正面断面図に示すように、回動軸37aを挟んで高位置接地部37bと低位置接地部37cが略への字形状を示している。
【0041】
また、回転軸37aから高位置接地部37bまでは、その一辺の長さをマイクロ波の波長λ(周波数2.45GHzのマイクロ波の場合は、マイクロ波波長λが約120mm)のλ/2の整数倍(60mm,120mm,180mm)にして、マイクロ波を伝送・制御しやすい長さに設定したマイクロ波制御手段部である。
【0042】
また、金属脚部37の高位置接地部37bを調理皿16に対して外側に開いて(図3,図4,図5)、高位置接地部37bをテーブルプレート24に接して載置した時、マイクロ波制御手段部の高位置接地部37bは回転アンテナ26の外周より外側(加熱室28の庫内壁側)に位置するように設定(図9)している。この時の調理皿16の高さはテーブルプレート24から見て高い位置になる。
【0043】
また、金属脚部37の高位置接地部37bを調理皿16に対して内側に閉じて(図6,図7,図8)、高位置接地部37bを調理皿16の下方に収納し、低位置接地部37cをテーブルプレート24に接して載置した時、高位置接地部37bを備えるマイクロ波制御手段部は発熱体35と回転アンテナ26の間に位置するように設定(図10)している。この時の調理皿16の高さはテーブルプレート24から見て低い位置になる。
【0044】
さらに、調理皿16は全て耐熱性の高い材料で構成されているため、オーブンやグリルなど、加熱室28内が高温になる電熱ヒータを利用した加熱調理に利用することも可能である。
【0045】
そして、調理皿16を収納する時は、金属脚部37の高位置接地部37bを調理皿16に対して内側に閉じることで高さを低くして収納することが可能である。
【0046】
本実施例は、以上の構成からなり、次に動作について図9を用いハンバーグの焼き上げを例に説明する。
【0047】
調理は、グリル加熱とマイクロ波加熱を使用して、被加熱物15の両面に焦げ目を付け、同時に内部も加熱しながら焼き上げるものである。
【0048】
被加熱物15のハンバーグは厚みも薄いので、両表面に焦げ目を付ける過程で十分に内部まで火を通すことが可能で、内部からの加熱を強くする必要のない調理である。そのため、調理皿16を上ヒータ12に近づけるように金属脚部37の高位置接地部37bを調理皿16に対して開いてテーブルプレート24に載置する。
【0049】
加熱時間の設定は、手動でも可能であるが、重量センサ25を使用して、テーブルプレート24に載置している調理皿16の重量を風袋引きすることで、被加熱物15の正味重量を検出し、被加熱物15の重量に応じて加熱時間を設定することも可能である。
【0050】
調理を開始すると、グリル加熱は、上ヒータ12に通電を開始し、加熱室28の天面を加熱して直接被加熱物15の上面側の表面に焦げ目を付けながら被加熱物15の内部まで加熱する。
【0051】
また、マイクロ波加熱は、マグネトロン33より放射されたマイクロ波は、導波管47を通り加熱室底面28aに設けられた回転アンテナ駆動手段46の出力軸46aが貫通する開孔部47aを通って回転アンテナ26の下面に流入し、該回転アンテナ26で拡散されて加熱室28内に放射される。放射されたマイクロ波は、調理皿16の裏面に貼り付けられた発熱体35に吸収されることで発熱体35が発熱し、金属皿部34に接触している被加熱物15の表面に焼きながら焦げ目を付ける。また、調理皿16と加熱室壁面28cとの間に設けられている隙間を通過して、調理皿16に載置した被加熱物15に吸収されることで被加熱物15の内部からも加熱する。
【0052】
マイクロ波の動きを詳細に説明すると、加熱室底面28aに備えられた回転アンテナ26より拡散されて放射されたマイクロ波は、調理皿16の裏面に貼り付けられた発熱体35に吸収されるものと、回転アンテナ26の外周より外側に載置された金属脚部37によって効率良く発熱体35に伝達されるものと、調理皿16と加熱室壁面28cとの隙間を通過して調理皿16の上面に放射されるものとに大別される。
【0053】
金属脚部37によって伝送・制御されるマイクロ波は、金属脚部37の回転軸37aから高位置接地部37bまでの一辺のマイクロ波制御手段部によるもので、金属脚部37の回転軸37aから高位置接地部37bまでの一辺の長さがマイクロ波の波長λ(周波数2.45GHzのマイクロ波の場合は、マイクロ波波長λが約120mm)のλ/2の整数倍(60mm,120mm,180mm)に設定されているためである。そのマイクロ波制御手段部の働きは、加熱室底面28aに備えられた回転アンテナ26より拡散されて加熱室壁面28c方向に放射されたマイクロ波を捕らえ、調理皿16と加熱室壁面28cとの間を通過して調理皿16の上面に放射されるマイクロ波量を抑制し、捕らえたマイクロ波を調理皿16の発熱体35に効率良く伝送するもので、調理皿16で仕切られた加熱室28の加熱室底面28a側で発生するマイクロ波の損出を少なくしている。
【0054】
また、調理皿16と加熱室壁面28cとの間の隙間を通過できるのは、その隙間の一辺の寸法が加熱室28の奥行き322mm、幅は400mmとマイクロ波の遮断波長λ/2以上に十分な寸法が確保され、調理皿16と壁面28c間でスパークの発生しない程度の隙間を設けているためである。
【0055】
但し、金属脚部37の回転軸37aから高位置接地部37bまでの長さと、壁面28cと調理皿16間の隙間は、被加熱物15の両面を焼き上げるのに必要とする条件によって調整する必要がある。その条件は、被加熱物15に対して上ヒータ12の火力、上ヒータ12との距離、レンジ加熱のマイクロ波の出力の強さによる発熱体35の発熱量、被加熱物15を内部から加熱するために必要とするマイクロ波の出力によって決定される。
【0056】
被加熱物15がハンバーグなどのように厚みが薄い場合は、被加熱物15の内部から加熱するマイクロ波の出力は弱くても、両表面を焼き上げるまでの時間があれば表面からの熱伝導によって内部も程よく加熱される。そのため、調理皿16と加熱室壁面28cとの間を通過して調理皿16の上面に放射されるマイクロ波の出力は、回転アンテナ26の外周より外側に載置された金属脚部37によって抑制している。
【0057】
調理は、調理皿16の表面を形成している波状の凹凸加工の凹部によって、被加熱物15の内部に含まれる余分な水分や脂分を排出しながらおいしく焼き上げる。
【0058】
次に、焼き豚の焼き上げについて図10を用いて説明する。
【0059】
調理は、前記同様に、グリル加熱とレンジ加熱を使用して、被加熱物15の両面に焦げ目を付け同時に内部から加熱しながら焼き上げるもので、大きな肉で作る場合でも短時間で焼き上げる。この場合、表面の焦げを抑えながら内部からの加熱を強めにして焼き上げる必要のある料理である。
【0060】
この様な場合、上ヒータ12と調理皿16に載置した被加熱物15との距離を遠くして火力を弱くし、調理皿16の発熱体35の発熱温度も低くし、調理皿16上面へ送るマイクロ波の出力を大きくする必要があるので、調理皿16の金属脚部37の高位置接地部37bを調理皿16に対して内側に閉じて、低位置接地部37cがテーブルプレート24に接するように載置する。
【0061】
調理を開始すると、グリル加熱は、直接被加熱物15の表面に焦げ目を付けながら被加熱物15を焼き、レンジ加熱は、加熱室底面28aに備えられた回転アンテナ26より拡散されて放射されたマイクロ波が、高位置接地部37bを調理皿16に対して内側に閉じたマイクロ波制御手段部の金属脚部37によって抑制され、調理皿16の裏面に貼り付けられた発熱体35に吸収されるマイクロ波の出力を弱くして発熱体35の発熱温度を低くし、前記抑制した分のマイクロ波を閉じたアンテナの役割を果す金属脚部37によって加熱室壁面28c方向に伝送し、調理皿16と加熱室壁面28cとの隙間を通過させて調理皿16の上面に放射される。
【0062】
この時のマイクロ波の動きを詳細に説明すると、加熱室底面28aに備えられた回転アンテナ26より拡散されて放射されたマイクロ波は、直接調理皿16の裏面に貼り付けられた発熱体35に吸収されるものと、高位置接地部37bを調理皿16に対して内側に閉じたマイクロ波制御手段部の金属脚部37によって効率良く加熱室壁面28c方向に伝送され、調理皿16と加熱室壁面28cとの間を通過して、調理皿16の上面に放射されるものとに大別される。
【0063】
そのため、調理皿16がテーブルプレート24に対して低く載置され、加熱室底面28aと調理皿16との間隔が狭くても、放射されたマイクロ波は発熱体35に必要以上に吸収されることなく、調理皿16に載置された被加熱物15に効率良く伝達される。
【実施例2】
【0064】
本発明の第2実施例の加熱調理器について、図11〜図13を参照して説明する。
【0065】
第1実施例との違いは、金属脚部37にはマイクロ波制御手段部となる回転軸37aと高位置接地部37bの一辺を設け、低位置接地部37cを支持具部36側に設けたもので、調理で、表面の焦げを抑えながら内部からの加熱を強めにして焼き上げる時は、金属脚部37を調理皿16に対して内側に閉じることで、調理皿16の下方に樹脂製の支持具部36が突き出た形状となり、支持具部36の低位置接地部37cがテーブルプレート24に接して載置されるものである。また、両表面に焦げ目を付ける過程で十分に内部まで火が通り、マイクロ波による内部からの加熱をあまり必要としない調理の場合は、金属脚部37を調理皿16に対して外側に開くことで、金属脚部37の高位置接地部37bがテーブルプレート24に接して載置されるものである。
【0066】
動作の説明については実施例1と同じなので説明を省略する。
【0067】
以上説明したように、本実施例によれば、調理皿に載置した被加熱物を加熱する場合、グリル加熱による上面からの加熱とマイクロ波加熱により発熱する発熱体による下面からの加熱とマイクロ波による被加熱物の内部からの加熱を併用することで調理時間を短縮することができる。
【0068】
また、マイクロ波の供給部から遠い位置に調理皿を載置して加熱した時でも、マイクロ波の損出を少なくして効率良くマイクロ波を調理皿の発熱体まで供給できる。
【0069】
さらに、マイクロ波の供給部より近い位置に調理皿を載置して加熱した時でも、発熱体へのマイクロ波の過度な供給量を防止することができる
【符号の説明】
【0070】
1 加熱調理器の本体
2 ドア
12 上ヒータ
15 被加熱物
16 調理皿
26 回転アンテナ
28 加熱室
34 金属皿部
35 発熱体
36 支持具部
37 金属脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収納する加熱室と、
前記食品を載置する調理皿と、
該調理皿を載置するテーブルプレートと、
前記食品を加熱するマイクロ波を発生するマグネトロンと、
前記マイクロ波を前記加熱室の加熱室底面に導く導波管と、
該導波管と前記加熱室底面を連通しマイクロ波を通す開孔部と、
該開孔部を通った前記マイクロ波を前記加熱室に放射するための回転アンテナとを設け、
前記調理皿は、
前記食品を載置する金属製の金属皿部と、
該金属皿部の裏側に密着して貼り付けたマイクロ波を吸収して発熱する発熱体と、
前記金属皿部を支え回動軸と該回動軸から2方向に距離の異なる高位置接地部と低位置接地部を備えた金属製の金属脚部と、
前記金属脚部の回動軸を回動可能に支持する支持具部とを設け、
前記金属脚部の前記回動軸から高位置接地部までの間はアンテナの役割を果すマイクロ波制御手段部で、
前記調理皿を前記テーブルプレートに載置する時に、
前記高位置接地部を外側に開いて前記テーブルプレートに接して載置した場合は、前記マイクロ波制御手段部の前記高位置接地部は前記回転アンテナの外周より外側に位置し、
前記高位置接地部を内側に閉じて前記低位置接地部を前記テーブルプレートに接して載置した場合は、
前記マイクロ波制御手段部は前記発熱体と前記回転アンテナの間に位置することを特徴する高周波加熱調理器。
【請求項2】
前記支持具部に前記金属皿部を支える低位置接地部を設け、
前記金属脚部には前記マイクロ波制御手段部となる回動軸と高位置接地部とを設けたことを特徴とする請求項1に記載の高周波加熱調理器。
【請求項3】
食品を載置する調理皿と、
該調理皿を載置するテーブルプレートと、
該テーブルプレートを底面に備えた加熱室と、
マイクロ波を発生するマグネトロンと、
該マグネトロンで発生したマイクロ波を前記加熱室に導く導波管と、
該導波管を介して前記加熱室に導かれたマイクロ波を拡散する回転アンテナと、
食品を収納する加熱室と、を具備し、
前記調理皿は、
金属皿部と、
該金属皿部の裏側に設けられ、マイクロ波を吸収することで発熱する発熱体と、
前記金属皿部を低い位置で使用するときに、前記金属皿部を支持する第1の脚部と、
前記金属皿部を高い位置で使用するときに、前記金属皿部を支持する第2の脚部と、
で構成されており、
前記金属皿部を低い位置で使用するときには、前記第2の脚部を、前記回転アンテナと前記発熱体の間に配置することを特徴とする高周波加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−228029(P2011−228029A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94589(P2010−94589)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】