説明

高周波用インダクタ

【課題】高周波での近接効果による損失の増加を抑制する。
【解決手段】4ターン以上のソレノイドコイルとし、その中央部(1a,2a)の平均的な巻線ピッチよりも端部(1b,2b,1c,2c)の平均的な巻線ピッチを大きくする。
【効果】端部(1b,2b,1c,2c)の電線に磁界が集中するのを緩和できるため、高周波での近接効果による損失の増加を抑制することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波用インダクタに関し、さらに詳しくは、高周波での近接効果による損失の増加を抑制しうる構造とした高周波用インダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、丸線を円型のソレノイド巻きにした円型コイルを含む高周波用インダクタンス素子が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平08−078237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の高周波用インダクタンス素子では、1GHz以上の高周波になると、近接効果により損失が無視できないほど増加する問題点があった。また、表皮効果により抵抗値が無視できないほど増加する問題点があった。また、基板に実装する際、円形コイルであるためマウンターで吸着できない問題点があった。さらに、半田リフローに耐えるため、丸線の絶縁被覆の温度指数を高くしなけばならない問題点があった。
そこで、本発明の目的は、高周波での近接効果による損失の増加を抑制しうる高周波用インダクタを提供することにある。また、高周波での表皮効果による抵抗値の増加を抑制しうる高周波用インダクタを提供することにある。また、基板に実装する際、マウンターで吸着しうる高周波用インダクタを提供することにある。さらに、電線の絶縁被覆の温度指数を下げても半田リフローに耐えうる高周波用インダクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、4ターン以上のソレノイドコイルであって、中央部(1a,2a)の平均的な巻線ピッチよりも端部(1b,2b,1c,2c)の平均的な巻線ピッチを大きくしたことを特徴とする高周波用インダクタ(1,2)を提供する。
高周波での近接効果による損失は、ソレノイドコイルの端部の電線において支配的に生じる。これは、ソレノイドコイルの中央部では、中央部を挟む両側の電流が作る磁界同士が互いに打ち消しあうため中央部の電線を切る漏れ磁界が弱くなり、損失が小さくなるが、ソレノイドコイルの端部では、磁界同士が互いに打ち消しあうことがないため端部の電線に漏れ磁界が集中し、損失が大きくなるからである。
そこで、上記第1の観点による高周波用インダクタ(1,2)では、ソレノイドコイルの中央部(1a,2a)の平均的な巻線ピッチよりも端部(1b,2b,1c,2c)の平均的な巻線ピッチを大きくした。これにより、端部(1b,2b,1c,2c)の電線に磁界が集中するのを緩和できるため、高周波での近接効果による損失の増加を抑制することが出来る。
【0005】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による高周波用インダクタにおいて、電線が角線であることを特徴とする高周波用インダクタ(1,2)を提供する。
上記第2の観点による高周波用インダクタ(1,2)では、角線を用いるが、角線を丸線と比較すると、角線の表面の周長の方が丸線の表面の周長より長くなる。すなわち、表面近傍の断面積が大きくなる。よって、高周波での表皮効果による抵抗値の増加を抑制することが出来る。
【0006】
第3の観点では、本発明は、前記第1または第2の観点による高周波用インダクタ(1,2)において、電線が銀線または銀メッキ線であることを特徴とする高周波用インダクタ(1,2)を提供する。
上記第3の観点による高周波用インダクタ(1,2)では、銀線または銀メッキ線を用いるため、高周波抵抗を低減することが出来る。
【0007】
第4の観点では、本発明は、前記第1から第3のいずれかの観点による高周波用インダクタ(1,2)において、角型コイルであることを特徴とする高周波用インダクタ(1,2)を提供する。
上記第4の観点による高周波用インダクタ(1,2)では、角型コイルを用いるため、基板に実装する際、平面部分をマウンターで吸着することが出来る。
【0008】
第5の観点では、本発明は、前記第1から第4のいずれかの観点による高周波用インダクタ(1,2)において、下方へ突出した脚部(1d,2d,1e,2e)を両端に有することを特徴とする高周波用インダクタ(1,2)を提供する。
上記第5の観点による高周波用インダクタ(1,2)では、脚部(1d,2d,1e,2e)が下方へ突出しているため、半田リフローにより脚部(1d,2d,1e,2e)を基板に半田付けする時、脚部(1d,2d,1e,2e)には半田温度が直接加わっても、本体部には半田温度が直接加わらない。よって、電線の絶縁被覆の温度指数を下げても、半田リフローに耐えられるようになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高周波用インダクタによれば、高周波での近接効果による損失の増加を抑制することが出来る。また、高周波での表皮効果による抵抗値の増加を抑制することが出来る。また、基板に実装する際、マウンターで吸着することが出来る。さらに、電線の絶縁被覆の温度指数を下げても半田リフローに耐えることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1に係る高周波用インダクタ1を示す正面図である。図2は、同左側面図である。
【0012】
この高周波用インダクタ1は、絶縁被覆銀メッキ銅角線を、角型に9.25ターン巻いたソレノイドコイルである。
高周波用インダクタ1のコイル長を8区画に等分割したときの中央の2区画を中央部1aとし、その中央部1aの両側の3区画ずつを端部1b,1cとするとき、中央部1aの平均的な巻線ピッチよりも端部1b,1cの平均的な巻線ピッチが大きくなっている。
また、高周波用インダクタ1の最両端の下辺は下方へ突出し、基板に半田付けするための脚部1d,1eになっている。脚部1d,1eの下面は、絶縁被覆を剥離し、半田メッキされている。
【0013】
寸法例を示すと、角線は0.08mm×0.08mmの正方形断面である。角型は1mm×1mmの正方形である。コイル長は1.7mmである。中央部1aの平均的な巻線ピッチは0.1mmであり、端部1b,1cの平均的な巻線ピッチは0.21mmである。脚部1d,1eは、コイル本体の下面より下方へ0.1mmだけ突出している。
【0014】
実施例1の高周波用インダクタ1によれば、次の効果が得られる。
(1)中央部1aの平均的な巻線ピッチよりも端部1b,1cの平均的な巻線ピッチが大きく、端部(1b,1c)に磁界が集中するのを緩和できるため、高周波での近接効果による損失の増加を抑制することが出来る。
(2)角線の方が丸線よりも表面近傍の断面積が大きくなるため、高周波での表皮効果による抵抗値の増加を抑制することが出来る。
(3)銀メッキ線を用いるため、高周波抵抗を低減することが出来る。
(4)上面が平面状であるため、基板に実装する際、上面をマウンターで吸着することが出来る。
(5)脚部1d,1eが下方へ突出しているため、半田リフローにより脚部1d,1eを基板に半田付けする時、脚部1d,1eには半田温度が直接加わっても、本体部には半田温度が直接加わらない。よって、角線の絶縁被覆の温度指数を下げても、半田リフローに耐えられる。
【実施例2】
【0015】
図3は、実施例2に係る高周波用インダクタ2を示す正面図である。図4は、同左側面図である。
【0016】
この高周波用インダクタ2は、絶縁被覆銀角線を、角型に9.25ターン巻いたソレノイドコイルである。
高周波用インダクタ2のコイル長を8区画に等分割したときの中央の2区画を中央部2aとし、その中央部2aの両側の3区画ずつを端部2b,2cとするとき、中央部2aの平均的な巻線ピッチよりも端部2b,2cの平均的な巻線ピッチが大きくなっている。
また、高周波用インダクタ2の最両端の下辺は下方へ突出し、基板に半田付けするための脚部2d,2eになっている。脚部2d,2eの下面は、絶縁被覆を剥離し、半田メッキされている。
【0017】
寸法例を示すと、角線は0.08mm×0.08mmの正方形断面である。角型は1mm×1mmの正方形である。コイル長は1.2mmである。中央部2aの平均的な巻線ピッチは0.2mmであり、端部2b,2cの平均的な巻線ピッチは0.14mmである。脚部2d,2eは、コイル本体の下面より下方へ0.1mmだけ突出している。
【0018】
実施例2の高周波用インダクタ2によれば、実施例1の高周波用インダクタ2の効果に加えて、端部2b,2cの機械的強度が向上するため、撓みにより中央部2aが上下し難くなり、振動に強くなる。
【実施例3】
【0019】
ターン数が4ターン以上あれば、本発明を実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の高周波用インダクタは、例えば1GHz程度以上の高周波回路に使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1に係る高周波用インダクタを示す正面図である。
【図2】実施例1に係る高周波用インダクタを示す左側面図である。
【図3】実施例2に係る高周波用インダクタを示す正面図である。
【図4】実施例2に係る高周波用インダクタを示す左側面図である。
【符号の説明】
【0022】
1,2 高周波用インダクタ
1a,2a 中央部
1b,1c,2b,2c 端部
1d,1e,2d,2e 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4ターン以上のソレノイドコイルであって、中央部(1a,2a)の平均的な巻線ピッチよりも端部(1b,2b,1c,2c)の平均的な巻線ピッチを大きくしたことを特徴とする高周波用インダクタ(1,2)。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波用インダクタにおいて、電線が角線であることを特徴とする高周波用インダクタ(1,2)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の高周波用インダクタ(1,2)において、電線が銀線または銀メッキ線であることを特徴とする高周波用インダクタ(1,2)。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の高周波用インダクタ(1,2)において、角型コイルであることを特徴とする高周波用インダクタ(1,2)。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の高周波用インダクタ(1,2)において、下方へ突出した脚部(1d,2d,1e,2e)を両端に有することを特徴とする高周波用インダクタ(1,2)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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