説明

高周波誘導式焼却炉の焼却灰排出装置および方法

【課題】高周波誘導式焼却炉において、焼却灰中に未燃成分が含まれないように十分焼却することができ、かつ多量の処理が可能な焼却灰排出装置を提供する。
【解決手段】焼却筒11と火格子14と灰受け皿20とで分離可能に組み立てられる導電性の焼却器10であって高周波誘導式焼却炉30の電磁コイル31の電磁誘導域内に配置される焼却器10と、灰受け皿20を電磁誘導域から焼却炉外に移動させることができる灰受け皿昇降装置32と、焼却筒11を誘導域内に支持し必要に応じて焼却炉外に移動させることができる焼却筒台座34とで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可・難燃性廃棄物を焼却処分するための高周波誘導式焼却炉に適用する焼却灰排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所などの原子力施設から排出される廃棄物は、放射性の強度、燃焼の可否など、材料や形態に基づいて分別して、それぞれに適した処分がなされる。可・難燃性放射性廃棄物は焼却処理し、不燃性放射性廃棄物は溶融・圧縮減容させて保管処分や埋設処分にするのが一般的である。
なお、可・難燃性放射性廃棄物を焼却するときに発生する焼却灰を他の不燃性放射性廃棄物と一緒に溶融減容させて廃棄処分することにより、放射性廃棄物の処理設備を簡略化することができる。
【0003】
不燃性放射性廃棄物を加熱溶融させて減容するために、高周波加熱炉を用いることができる。セラミックスなどで形成されたキャニスタを高周波加熱炉の電磁コイル内に配置して誘導加熱し、キャニスタに不燃性放射性廃棄物を投入して溶融させて減容する。なお、金属などの導電性材料を溶融する場合は、キャニスタに収容された導電性材料に誘導電流が流れて発熱するので、キャニスタが導電性である必要はない。
焼却灰は、不燃性放射性廃棄物と一緒にキャニスタに投入することにより混同して溶融減容するので、保管処分や埋設処分を行うことができる。
【0004】
このような目的には、高周波誘導炉で構成した放射性廃棄物処理装置が利用できることは、既に特許文献1に開示されている。
開示された放射性廃棄物処理装置は、高周波誘導炉に金属製の導電性焼却器をセットして、焼却器に可・難燃物を投入して燃焼させるようにした高周波焼却炉であって、焼却筒と火格子と灰受け皿を分離可能に組み合わせた焼却器を高周波誘導炉の誘導域に収めて高周波誘導加熱して、高温化した焼却筒に焼却しようとする廃棄物を供給することにより可・難燃分を焼却する。
【0005】
可・難燃物は焼却筒の内で高温のため燃焼して灰化し焼却灰を発生する。焼却灰は、火格子の隙間から灰受け皿に落下するが、一部に未燃成分を含む場合がある。開示された放射性廃棄物処理装置では、灰受け皿が誘導加熱されるため、灰受け皿に積もる焼却灰に含まれる未燃分がさらに、高温化した灰受け皿あるいは堆積した焼却灰の熱で発火し燃焼して消滅する。
【0006】
このようにして生成した、未燃分の少ない減容化された焼却灰は、焼却灰排出装置により焼却器ごと炉外に引き出されて冷却後に回収され、次の溶融減容工程に供給される。溶融減容工程では、焼却灰を他の不燃性廃棄物に混ぜてキャニスタに投入し、高周波誘導加熱して減容する。キャニスタを使った溶融減容は、焼却灰を生成するために使った高周波誘導炉を利用した高周波誘導加熱によることができる。
開示された可・難燃性廃棄物処理装置は、比較的少量の廃棄物を処理すれば足りる原子力研究施設において適用の準備をしている。
【0007】
図8は、開示された可・難燃性廃棄物処理装置の運転手順を示す流れ図である。作業は、図8の(a)図、(b)図、(c)図の順に進行する。
図8(a)に示すように、焼却筒と灰受け皿を組み合わせた導電性の焼却器が台座に搭載されて、台座ごと高周波誘導炉の電磁コイル中に差し入れられ、電磁誘導を受けると焼却筒の温度が800〜900℃になる。可・難燃性放射性廃棄物は可燃性の投入容器に収めて、焼却筒に投入し加熱して燃焼させる。可・難燃性放射性廃棄物が焼却されたときに発生する焼却灰は、火格子の隙間を通って灰受け皿の上に落下して積もる。灰受け皿の底板も電磁コイルの電磁誘導により高温化しているので、焼却灰に未燃炭素成分が含まれている場合は、未燃炭素成分が発火して焼却する。なお、焼却器と電磁コイルの間にセラミック製のスリーブを介装して、炉の内壁が放射性汚物に汚染されないようにすることが好ましい。
【0008】
図8(b)に示すように、焼却作業が終了すると台座が下げられ、焼却器が高周波誘導炉の外に取り出され、図示しないコンベアなどで所定の灰回収装置付近まで搬送される。なお、スリーブを焼却器と一緒に台座に搭載して引き出し可能にすると、スリーブも簡単に清掃できるようになる。
【0009】
さらに、図8(c)に示すように、灰回収装置において、焼却筒と灰受け皿を分離して、焼却灰吸引回収装置で灰受け皿に堆積した焼却灰を吸引回収する。また、灰受け皿、火格子、焼却筒は、焼却灰吸引回収装置で吸引して清掃し、再び焼却器に組み立てて繰り返し利用する。吸引回収した燃焼灰は可燃性の投入容器に移される。燃焼灰を収容した投入容器は、高周波加熱炉に装着されたキャニスタに不燃性放射性廃棄物と共に投入されて高周波加熱され、溶融される。
なお、小型の焼却灰吸引回収装置を使用すれば、焼却器は分解せずにそのまま焼却灰の堆積と吸引回収をすることができる。
【0010】
1日の可・難燃性放射性廃棄物の処理量が50kg以下程度と少ない場合において、廃棄物を昼間の運転で焼却して未燃分を含まない焼却灰を灰受け皿に貯める。焼却作業を終了したら夜間に放置して炉内で冷却し、翌日、焼却器を炉外に引き出して適宜の場所に運び、灰受け皿の焼却灰を吸引して可燃性の投入容器に移す。
焼却灰を投入容器に収容し、高周波誘導炉とキャニスタを用いて不燃性放射性廃棄物の溶融減容を行うようにするとよい。灰受け皿の燃焼灰を入れた投入容器をキャニスタに投入して、不燃性放射性廃棄物と一緒に溶融してもよい。
このように、高周波誘導炉を共用して、可・難燃性放射性廃棄物の焼却と不燃性放射性廃棄物の減容を交互に行うことで、効率的に廃棄物の処理を行うことができる。
【0011】
なお、キャニスタの中で可・難燃性材料や未燃炭素を焼却する場合は、キャニスタの奥まで十分な量の酸素を供給する機構が必要であり、また燃焼ゾーンに大きな炉容積が必要になるので、高周波加熱炉が大規模で複雑な装置となって経済的でない。
【0012】
しかし、廃棄物処理量が大きくなって、焼却灰の1日の処理量が灰受け皿に搭載できる量を超えるようになれば、従来装置の可・難燃性廃棄物処理装置あるいは焼却灰排出装置で隔日に稼働させるのでは間に合わないことになる。また、従来装置では、可・難燃性放射性廃棄物を焼却するために使う焼却筒が毎回冷却してしまい、次に高周波誘導炉に格納して可・難燃性放射性廃棄物を焼却するときには、改めて高温状態まで加熱する必要があり、立ち上がり時間が掛かる上、エネルギを余分に使って運転コストが高くなるので問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−192099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、焼却灰中に未燃成分が含まれないように十分焼却することができ、かつ多量の処理が可能な、高周波誘導式焼却炉の焼却灰排出装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する本発明の高周波誘導式焼却炉の焼却灰排出装置は、焼却筒と火格子と灰受け皿とで分離可能に組み立てられる導電性の焼却器であって高周波誘導式焼却炉の電磁コイルの電磁誘導域内に配置される焼却器と、灰受け皿を電磁誘導域から焼却炉外に移動させることができる灰受け皿昇降装置と、焼却筒を誘導域内に支持し必要に応じて焼却炉外に移動させることができる焼却筒台座とで構成される。
【0016】
灰受け皿を電磁誘導域から外部に移動させた後に、新しい灰受け皿を電磁誘導域に搬入して焼却器を形成させることができる。
火格子は、焼却筒に固定されていてもよいが、灰受け皿に固定されて、灰受け皿と一緒に炉外に取り出されて清掃できるようになっていてもよい。
また、焼却器と電磁コイルの間にスリーブを介装して、このスリーブも焼却筒と共に炉外に取り出せるようになっていてもよい。
【0017】
本発明の焼却灰排出装置を用いるときは、電磁コイルの誘導域内に据えた焼却筒に廃棄物を投入して燃焼させ、発生する焼却灰を火格子から灰受け皿に落下させ、未燃成分を灰受け皿で完全に燃焼させる。灰受け皿を清掃するときは、廃棄物の投入を止めて、灰受け皿において未燃成分を完全に燃焼させた後に、灰受け皿を焼却炉から取り出し、新しい灰受け皿を持ち込んで元の灰受け皿の位置に据える。
焼却炉から取り出した灰受け皿は、誘導焼却炉外の適宜の場所に搬送して適宜に冷却して、後工程の回収工程において焼却灰吸引回収装置により焼却灰を回収して、溶融減容する材料として次の溶融固化工程に供給する。また、灰受け皿自体も清掃して、再度焼却筒に組み込むための新しい灰受け皿として準備する。
【0018】
焼却炉内の焼却筒から分離して排除した灰受け皿は、焼却筒には新しい灰受け皿があてがわれているので、次の交換時までゆっくりと冷却して焼却灰を除去し、灰受け皿を清掃することができる。
灰受け皿は電磁コイル内にある時に、焼却灰自体の高温と、灰受け皿底板の誘導発熱により、収容した焼却灰中の未燃成分を確実に燃焼するので、灰受け皿から回収した放射性の焼却灰等は、キャニスタにそのまま収納して、同じ、あるいは別に用意された、高周波誘導式焼却炉を使って溶融し減容させて効率的に廃棄処理することができる。
【0019】
本発明の焼却灰排出装置を用いれば、焼却灰を回収するときに、焼却筒から分離した灰受け皿のみを炉外に持ち出して処理するので、残された焼却筒は炉内に据えられたままになっていて、冷却されない。したがって、次の可・難燃性放射性廃棄物を焼却処分するときには、焼却筒を加熱する時間が不要になり稼働時間が増加し、焼却筒を昇温させるエネルギが不要になり省エネルギになるばかりでなく、必要なときに直ちに焼却処分をすることができ、作業の効率が向上する。
【0020】
また、本発明の焼却灰排出装置では、焼却灰を堆積させた灰受け皿を搬出すると直ぐに新しい灰受け皿を焼却筒にあてがうことができるので、焼却作業を長期に中断する必要がない。
このように、本発明の焼却灰排出装置は、大量の可・難燃性放射性廃棄物を処理する必要がある場合にも、作業を連続化して、よく対応することができる。
【0021】
また、上記課題を解決する本発明の高周波誘導式焼却炉の焼却灰排出方法は、焼却筒と火格子と灰受け皿とで分離可能に組み立てられる導電性の焼却器であって高周波誘導式焼却炉の電磁コイルの電磁誘導域内に配置される焼却器と、灰受け皿を電磁誘導域から焼却炉外に移動させることができる灰受け皿昇降装置と、焼却筒を誘導域内に支持し必要に応じて焼却炉外に移動させることができる焼却筒台座とで構成される高周波誘導式焼却炉に適用するものである。
【0022】
本発明の焼却灰排出方法は、焼却器を電磁誘導域に保持して電磁誘導により焼却器を加熱し、焼却対象物を焼却器に投入して焼却し、焼却灰を灰受け皿に堆積させる焼却ステップと、焼却作業が終了したときに、灰受け皿を焼却筒から分離し降下させる待避ステップと、電磁誘導域に支持したままの焼却筒に新しい灰受け皿をあてがって焼却器を形成する交換ステップと、下に降ろして焼却炉から外した灰受け皿は処理位置に搬送して冷却する冷却ステップと、冷却後灰受け皿の中の焼却灰を吸引して適所に排出する排出ステップと、を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明の焼却灰排出方法を用いると、焼却作業が終了したときに、焼却灰を堆積させた灰受け皿を焼却筒から分離し搬出すると共に、電磁誘導域に支持したままの焼却筒に新しい灰受け皿をあてがうので、焼却工程をほぼ連続的に実施することができ、大量処理が可能である。また、焼却筒は冷却しないで繰り返し使用するので省エネルギおよび稼働時間増大の効果がある。
【発明の効果】
【0024】
本発明の高周波誘導式焼却炉の焼却灰排出装置および方法により、焼却炉で発生する焼却灰を大量に処理することが可能になるので、原子力発電施設などで大量に発生する放射性廃棄物を的確に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の1実施例に係る高周波誘導式焼却炉の焼却灰排出装置における処理工程に係る状態遷移図である。
【図2】本実施例の焼却灰回収工程における状況を示す図面である。
【図3】本実施例において使用する焼却器の立面断面図である。
【図4】本実施例において使用する焼却器の平面図である。
【図5】本実施例の焼却灰排出手順において焼却炉に係る部分を示す流れ図である。
【図6】本実施例の焼却灰排出手順において吸引排出装置に係る部分を示す流れ図である。
【図7】本実施例に使用する焼却器の別の態様を示す図面である。
【図8】従来の高周波誘導式焼却炉の焼却灰排出装置における処理工程に係る状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図番の異なる図面においても、同一の機能を備えた構成要素には同一の参照番号を付して、理解の容易化を図った。
【0027】
図1と図2は、本発明の1実施例に係る高周波誘導式焼却炉の焼却灰排出装置における処理工程に係る状態遷移図である。
高周波誘導式焼却炉30は電磁コイル31を備えていて、電磁コイル31に電流を流して、電磁誘導作用の強い領域(電磁誘導域)に導電性の焼却器10を配置すると、電磁誘導により焼却器10を発熱させることができる。
焼却器10は金属など導電性の材料で製作され、たとえば図3の断面立面図と図4の平面図に示したように、焼却筒11と火格子14と灰受け皿20で構成される。
【0028】
焼却筒11は、円筒体の上端部に焼却筒鍔12、下端部の内側に火格子受梁13、下端部の外側に支持脚15を備える。焼却筒11の円筒部は、電磁コイル31により誘導電流が流れて発熱し、焼却筒11に収容された可・難燃性の物体を加熱して燃焼させる。焼却筒鍔12は、焼却筒11の上縁を外側に拡径したもので、焼却筒11に焼却したい材料を投下するときに外側にこぼれにくくするために設けられる。
また、火格子受梁13は、火格子14を載置して焼却筒11の底に支持するために設けられる。さらに、支持脚15は、焼却筒11の外縁に固定され、先端を焼却筒台座34の上面に載せて支持することにより、焼却筒11を電磁誘導域内に保持することができる。
【0029】
火格子14は、多数の隙間を有する金属製のプレートで、たとえばエキスパンドメタルなどで形成することができる。火格子14は、電磁コイル31により誘導電流を生起して発熱し、火格子14の上に載っている材料を加熱して燃焼させる。また、物体が燃焼して発生した焼却灰など細かい物体は、火格子14に設けられる多数の隙間から落下して、灰受け皿20に溜まる。
【0030】
灰受け皿20は、底板21と側壁22が設けられて上面が解放された皿状容器である。灰受け皿20が電磁コイル31の電磁誘導域に収納されているときは、電磁コイル31により底板21に誘導電流が誘起されて発熱し、収容された焼却灰50を加熱して焼却灰に含まれた未燃炭素成分を完全燃焼させて、未燃炭素成分を含まない焼却灰を得ることができる。
たとえば、焼却筒11で可・難燃性放射性廃棄物の80%を燃焼させ、灰受け皿20で残りの20%を燃焼させることができる。
【0031】
灰受け皿20は、灰受け皿昇降装置32に載せられて、上下に移動することができる。
灰受け皿昇降装置32は、灰受け皿20を搭載して、灰受け皿20を電磁誘導域の中に支持された焼却筒11の直下の位置と、焼却筒11の直下の位置から焼却筒台座34の下面を潜って横に移動させることができる位置との間を移動できるように上面高さを変位させる。
【0032】
また、焼却筒台座34は、焼却筒11の支持脚15の先端を支えることにより、焼却筒11を電磁コイル31の電磁誘導域に対応する位置に配置する機能を有する。焼却筒台座34は、焼却筒11を常時電磁誘導域内に配置する機能に加えて、焼却筒11が汚れたときにはこれを清掃するために電磁コイル31の外に引き出す機能を有する。このため、焼却筒台座34も、灰受け皿昇降装置32と同等の上下動機構を備えている。
【0033】
なお、炉内壁が燃焼に伴い発生する放射性物質を含む灰などの付着物に汚染されないようにするセラミック製のスリーブ16が焼却器10と炉内壁の間に設けられており、焼却筒台座34に支持されている。したがって、焼却筒11を引き出すときには、スリーブ16も一緒に外に引き出されて、必要に応じて清掃を受けることができる。
なお、スリーブ16は汚染の状況からさほどの頻度で清掃する必要がないので、焼却筒台座34以外の器具に支持されて必要なときにのみ引き出すようにしてもよい。
【0034】
灰受け皿昇降装置32と焼却筒台座34は、一方が焼却灰受け皿20、他方が焼却筒11の搬出と対象は異なっていても、殆ど同じ動作をすればよいので、機構上極めてよく類似している。ただし、焼却筒台座34の軸に灰受け皿20が通過できる径を有する孔を設けて、灰受け皿昇降装置32はこの孔に嵌って上下に移動する機能を有する。
【0035】
図5と図6は、焼却灰排出手順を示す流れ図である。図5は電磁コイルに係る手順を示し、図6は電磁コイルから待避した灰受け皿の取り扱いを説明する図面である。
可・難燃性放射性廃棄物から生成した焼却灰を捕捉するため、灰受け皿20を焼却筒11の直下に配置して焼却器10を構成する(S11)。
【0036】
次に、電磁コイル31に電流を流し電磁誘導域を活性化して、焼却器10に誘導電流を生起させて発熱させ(S12)、焼却器10を800〜900℃程度まで加熱する。
そこで、焼却したい可・難燃性放射性廃棄物を適宜の大きさに切り出し投入容器や袋に入れて高温の焼却筒11の中に投入する(S13)。すると可・難燃性放射性廃棄物は焼却筒11の中で燃焼し、燃焼に伴って焼却灰が生成し、火格子14の隙間から洩れ落ちて灰受け皿20の底板21の上に積もる。
焼却処分する可・難燃性放射性廃棄物には、布、紙、木、綿、酢酸ビニル、塩化ビニル、ポリエチレン、ネオプロピレンゴム、アクリル樹脂、イオン交換樹脂などがある。
【0037】
灰受け皿20に堆積した焼却灰50がある基準量を越えたとき、あるいは予定の廃棄物を全て処理したとき、あるいは予定の時刻が来たときなど、灰受け皿20に堆積した焼却灰50を排出するべき状態になるまで(S14)、可・難燃性放射性廃棄物を焼却筒11に投入して焼却する作業を繰り返す。S12からS14までの作業を、焼却ステップと呼ぶことができる。
図1(a)は、焼却筒11における焼却処理が進んで、灰受け皿20にある程度の焼却灰50が堆積している状態を示している。
【0038】
焼却作業が進行して、堆積した焼却灰50を排出する必要が生じたときには(S14)、電磁コイル31の給電を継続して焼却筒11を加熱したまま、可・難燃性放射性廃棄物の供給を停止し、灰受け皿昇降装置32を駆動して、灰受け皿20を焼却筒11直下の位置から横方向に待避できる位置まで取り下げる(S15)。S15の作業を待避ステップと呼ぶことができる。
【0039】
灰受け皿20を待避させたら、清掃済みの灰受け皿20を改めて焼却筒11の下に配置して、焼却灰を受け止められるようにする(S16)。S16の作業を交換ステップと呼ぶことができる。
図1(b)は、灰受け皿20の交換作業を説明する図面、図1(c)は、灰受け皿20を焼却筒11直下の位置から待避し焼却灰吸引回収装置40を備えた焼却灰処理場に搬送される状況を表す図面である。
【0040】
なお、灰受け皿昇降装置を複数準備して、先の灰受け皿を取り下ろした灰受け皿昇降装置とは別の灰受け皿昇降装置を使って所定位置に配置するようにしてもよいが、1基の灰受け皿昇降装置を使って、先に取り下ろした灰受け皿20を灰受け皿昇降装置32の上から取り外して別の場所に運び、代わりに清掃済みの灰受け皿20を同じ灰受け皿昇降装置32の上に載せて持ち上げ、焼却筒11の下面位置に配置するようにしてもよい。
このとき、電磁コイル31は作動したまま焼却筒11は800〜900℃を保持しているので、廃受け皿20を焼却筒11の下に配置すると直ぐに、焼却筒11に対して可・難燃性放射性廃棄物を供給して焼却する作業を継続することができる(S13)。
【0041】
一方、焼却筒11の位置から取り下ろした灰受け皿20は、図6に表した手順に従い、焼却灰を収容したまま、焼却灰処理場に搬送される(S21)。焼却灰処理場では、灰受け皿20が適当な低温まで冷却するのを待って(S22)、焼却灰吸引回収装置40を用いて焼却灰を吸い出し搬送して、図外の投入容器に収容する(S23)。
S22を冷却ステップと呼び、S23を排出ステップと呼ぶことができる。
その後、必要があれば、灰受け皿20を清掃して(S24)、清掃済みの灰受け皿20を焼却炉の近くに運び、次に使用するまで待機させる(S25)。
【0042】
図2は、焼却灰処理場における作業と、高周波誘導炉における作業は、互いに独立して行うことができることを表している。高周波誘導炉において可・難燃性放射性廃棄物を焼却筒11に供給して焼却処理し、焼却灰50を灰受け皿20に貯めている間に、焼却灰処理場では、灰受け皿20の冷却、焼却灰吸引回収装置40による焼却灰の吸引排出、灰受け皿20の清掃などの作業を、都合のよい任意のタイミングで実施することができる。
【0043】
本実施例の高周波誘導式焼却炉の焼却灰排出装置および排出方法によれば、焼却筒と灰受け皿で構成される焼却器全体を取り外して冷却して焼却灰を排出するのではなく、焼却灰が堆積した灰受け皿だけを取り下ろして代わりに清掃済みの灰受け皿を焼却筒の下に配置させるので、可・難燃性放射性廃棄物の焼却処理を継続することができるため、焼却炉をほぼ連続的に操業させて大量の焼却処分が行える。たとえば、従来の装置ではバッチ処理により1時間当たり10kg程度の処理能力しかなかったのに対して、本実施例の装置では、1時間当たり100〜150kgの焼却処分が可能になる。
【0044】
さらに、本実施例の焼却灰排出装置および排出方法で得られる焼却灰には未燃炭素成分が殆ど含まれないので、不燃性放射性廃棄物と混合して溶融による減容処理を行うことができ、効率的な廃棄処分をすることができる。
また、焼却筒は電磁誘導域に保持して高温状態に保たれるので、立ち上がり時間を短縮するばかりでなく、冷却後に再度加温するエネルギの無駄を防ぐと共に、稼働時間を確保でき、効率的に運転することができる。
【0045】
なお、焼却筒11の外壁に固定される支持脚15は、灰受け皿20を跨いで焼却筒台座34に先端を支持されるようにするため、灰受け皿20の外径を超えるスパンを持つ必要がある。
焼却筒11は支持脚15で下から支持する代わりに、適宜な手段を用いて上から吊り降ろして電磁コイル31の電磁誘導域内に支持するようにすることもできる。上から吊り降ろす場合は、電磁コイル31の下に焼却筒台座34を備える必要が無く、灰受け皿昇降装置32が単独で上下運動や搬送作業を行えばよいので、高周波誘導炉の下に設ける装置が簡便化する。
【0046】
図7は、本実施例に使用する焼却器の別の態様を示す図面である。この態様では、火格子24が灰受け皿20に固定され、可・難燃性放射性廃棄物を焼却する間は火格子24を焼却筒11の底部分に挿入して焼却器を形成し、焼却灰を排出処理するときは電磁コイル31の電磁誘導域内から灰受け皿20と一緒に取り降ろされて、焼却灰処理場に搬送されるようになっている。
【0047】
火格子24は、焼却筒11より汚れが激しくより高い頻度で清掃する必要があるので、焼却筒11から分離して灰受け皿昇降装置32で操作することにより、より高い頻度で焼却灰処理場に運ばれて清掃を受けられるようにすることがより好ましい。
なお、火格子24は火格子受梁26を備えた環状の支持環27で支持し、支持環27は数本の火格子支持柱25で灰受け皿20の底板から支持されている。支持環を数本の柱で支持しているので、底板上に落下する焼却灰50が底板に拡がって大量に貯めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の高周波誘導式焼却炉の焼却灰排出装置および排出方法は、より大量の可・難燃性放射性廃棄物を焼却して焼却灰を効率的に減容することができるので、原子力施設などの放射性廃棄物処分設備などに利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 焼却器
11 焼却筒
12 焼却筒鍔
13 火格子受梁
14 火格子
15 支持脚
16 スリーブ
20 灰受け皿
21 底板
22 側壁
24 火格子
25 火格子支持脚
26 火格子受梁
30 高周波誘導炉
31 電磁コイル
32 灰受け皿昇降装置
34 焼却筒台座
40 焼却灰吸引回収装置
50 焼却灰

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却筒と火格子と灰受け皿とで相互に分離可能に組み立てられ、高周波誘導式焼却炉の電磁コイルの電磁誘導域に配置される導電性の焼却器と、前記焼却筒と分離させた前記灰受け皿を前記誘導域から前記高周波誘導式焼却炉の外に移動させることができる灰受け皿昇降装置と、前記焼却筒を前記誘導域の内に支持し必要に応じて前記高周波誘導式焼却炉外に移動させることができる焼却筒支持装置とで構成される高周波誘導式焼却炉の焼却灰排出装置。
【請求項2】
前記灰受け皿昇降装置により前記灰受け皿を搬出した後に、新しく灰受け皿を導入して前記誘導域にある前記焼却筒と合わせて焼却器を組み立てることができることを特徴とする、請求項1記載の高周波誘導式焼却炉の焼却灰排出装置。
【請求項3】
前記火格子が前記焼却筒に付帯するように支持されていることを特徴とする請求項1又は2記載の高周波誘導式焼却炉の焼却灰排出装置。
【請求項4】
前記火格子が前記灰受け皿に付帯するように支持されていることを特徴とする請求項1又は2記載の高周波誘導式焼却炉の焼却灰排出装置。
【請求項5】
焼却筒と火格子と灰受け皿とで分離可能に組み立てられる導電性の焼却器であって高周波誘導式焼却炉の電磁コイルの電磁誘導域内に配置される焼却器と、灰受け皿を電磁誘導域から焼却炉外に移動させることができる灰受け皿昇降装置と、焼却筒を誘導域内に支持し必要に応じて焼却炉外に移動させることができる焼却筒台座とで構成される高周波誘導式焼却炉に適用する焼却灰排出方法であって、
焼却器を電磁誘導域に保持して電磁誘導により焼却器を加熱し、焼却対象物を焼却器に投入して焼却し、焼却灰を灰受け皿に堆積させる焼却ステップと、
焼却作業が終了したときに、灰受け皿を焼却筒から分離し降下させる待避ステップと、
電磁誘導域に支持したままの焼却筒に新しい灰受け皿をあてがって焼却器を形成する交換ステップと、
下に降ろして焼却炉から外した灰受け皿は処理位置に搬送して冷却する冷却ステップと、
冷却後灰受け皿の中の焼却灰を吸引して適所に排出する排出ステップと、
を備える高周波誘導式焼却炉の焼却灰排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−180971(P2012−180971A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44063(P2011−44063)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】