説明

高圧放電ランプ、高圧放電ランプ点灯装置および照明装置

【課題】
封止予定部における小径筒部、電流導入導体およびこれらが形成する封着部の寸法関係を所定範囲内に規定して封着部のセラミックスに生じるクラック発生を抑制した高圧放電ランプ、高圧放電ランプ点灯装置および照明装置を提供する。
【解決手段】
高圧放電ランプは、包囲部1aおよび小径筒部1bを備えた透光性セラミックス放電容器1と、小径筒部の内部に挿入され、主として透光性セラミックス放電容器の小径筒部におけるセラミックスの融着によって上記小径筒部に封着された電流導入導体3と、電流導入導体に接続して透光性セラミックス放電容器内に封装された電極2と、放電媒体とを具備し、小径筒部のセラミックスの溶融により電流導入導体に封着して形成された封着部の直近における、小径筒部のセラミックスの断面積をSとし、電流導入導体の断面積をSとしたとき、比S/Sが数式1:0.037≦SW/ST≦0.363を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性セラミックス放電容器を備えた高圧放電ランプ、これを用いた高圧放電ランプ点灯装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の透光性セラミックス放電容器を備えた高圧放電ランプにおいては、電流導入導体を介して上記放電容器を封止するために、種々の態様が提案されたり、試みられたりしてきた。その中でも最も普及しているのは、ガラスフリットを用いる態様である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平06−196131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載されているようなガラスフリットを用いて透光性セラミックス放電容器を封止する場合、ガラスフリットの耐熱性が充分に高いとはいえないことから、ランプの寿命特性を得るためには封止部の温度を所要に抑制しなければならず、そのために以下の構成を採用する必要がある。
(1)放電空間を画成する包囲部の両端から小径筒部を管軸方向に延在させる、いわゆるキャピラリー構造を形成する。
(2)管壁負荷を小さくする。
【0005】
上記構成の採用により以下の問題が生じる。
【0006】
上記(1)の結果、ランプの全長が大きくなってしまう。これに伴って、さらに次の問題が派生する。
・キャピラリー部分が折損しやすくなる。
・封入するハロゲン化物などの放電媒体の封入量がキャピラリーを形成しない場合に比較して数倍以上、場合によっては10倍以上必要になる。その結果、コストアップ、放電媒体の安定性、放電媒体から放出される不純ガス増加に起因する始動性低下、白濁、黒化および電極損耗などの不具合が発生しやすくなる。
【0007】
上記(2)の実施によって温度が低下するので、ハロゲン化物の蒸発が充分に行われなくなり、蒸気圧を高めることができない。その結果、発光効率を所期の程度まで高くすることができない。また、発光特性は良好であるが反応性が高いハロゲン化物を用いることができない。
【0008】
本発明者らは、フリットガラスを用いないで透光性セラミックス放電容器を封着する研究を行った結果、フリットガラスレスの構成を見出した。このフリットガラスレスの構成は、種々の材料および構造を用いる幾つかの態様を含んでいる。
【0009】
しかしながら、比較的高い信頼性および安定性で封着することのできる構成は、透光性セラミックス放電容器の封着予定部のセラミックスを加熱溶融して、電流導入導体に溶着させる封止構造であることが分かった。
【0010】
そこで、本発明者は、透光性セラミックス放電容器の封止予定部のセラミックスを加熱溶融して、電流導入導体に溶着させる封止構造についてさらに研究した結果、以下のことが判明した。すなわち、封着部にクラックが場合によっては発生して透光性セラミックス放電容器が破壊したりリークしたりする不具合となり、封着の信頼性および安定性を阻害することがある。これには透光性セラミックス放電容器の封着に直接関係する小径筒部、電流導入導体およびこれらが形成する封着部の寸法関係が大きく影響している。
【0011】
本発明は、透透光性セラミックス放電容器の封止予定部を加熱溶融して、電流導入導体に溶着させる封止構造において、封止予定部における小径筒部、電流導入導体およびこれらが形成する封着部の寸法関係を所定範囲内に規定して封着部のセラミックスに生じるクラック発生を抑制した高圧放電ランプ、高圧放電ランプ点灯装置および照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明の高圧放電ランプは、包囲部および包囲部に接続して形成された小径筒部を備えた透光性セラミックス放電容器と;透光性セラミックス放電容器の小径筒部の内部に挿入され、主として透光性セラミックス放電容器の小径筒部におけるセラミックスの融着によって上記小径筒部に封着された電流導入導体と;電流導入導体に接続して透光性セラミックス放電容器内に封装された電極と;透光性セラミックス放電容器内に封入された放電媒体と;を具備し、小径筒部のセラミックスの溶融により電流導入導体に封着して形成された封着部の直近における、小径筒部の断面積をSとし、電流導入導体の断面積をSとしたとき、比S/Sが数式1:0.037≦S/S≦0.363を満足することを特徴としている。
【0013】
本発明は、以下の各態様を含む。
【0014】
〔透光性セラミックス放電容器について〕 透光性セラミックス放電容器は、単結晶の金属酸化物例えばサファイヤと、多結晶の金属酸化物例えば半透明の気密性アルミニウム酸化物すなわち透光性多結晶アルミナセラミックス、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)、イットリウム酸化物(YOX)と、多結晶非酸化物例えばアルミニウム窒化物(AlN)のような光透過性および耐熱性を備えたセラミック材料からなり、内部に放電空間が外部に対して気密に形成される容器である。しかし、上記材料の中でも透光性多結晶アルミナセラミックスは、工業的に量産できて比較的容易に入手できるため、透光性セラミックス放電容器の構成材料として好適である。
【0015】
従来では思いもよらないことであったが、本発明者は、透光性セラミックスを比較的容易に溶融できることを見出した。本発明は、この発見に基づいてなされたものである。
【0016】
また、透光性多結晶アルミナセラミックスで一般的に使用されているものは、その結晶平均粒径が数十μmであるが、本発明においては、少なくとも小径筒部またはその封着予定部の結晶平均粒径が4μm以下のものが好適である。すなわち、上記部位の結晶平均粒径が4μm以下であると、小径筒部のセラミックスを溶融させて封止を行う際に、導入導体との馴染みが良好で、かつ溶融により小径筒部と電流導入導体とが接合した後の冷却時に、接合部やその近傍にクラックが発生しにくい。また、結晶平均粒径が1μm以下になると、接合によるクラック発生が極めて少なくなるので、より一層好適である。本発明においては特に優れている。さらに、結晶平均粒径が0.5μm以下になると、接合によるクラック発生が全く発生しなくなるので、最適である。
【0017】
上述した透光性セラミックス放電容器の少なくとも小径筒部の結晶平均粒径が4μm以下である態様において、結晶平均粒径が4μm以下になっている部位は、小径筒部のみであってもよいし、透光性セラミックス放電容器の全体であってもよい。また、所望により小径筒部以外の一部の部位において結晶平均粒径が4μm以下であってもよい。
【0018】
なお、透光性セラミックス放電容器における透光性とは、放電によって発生した光を透過して外部に導出できる程度に光透過性であることをいい、透明ばかりでなく、光拡散性であってもよい。そして、少なくとも放電空間を包囲する部分の主要部が透光性を備えていればよく、要すれば上記主要部以外の付帯的構造を備えているときには、当該部分は遮光性であってもよい。
【0019】
透光性セラミックス放電容器は、放電空間を包囲するために、包囲部を備えている。包囲部の内部すなわち放電空間が適当な形状、例えば球状、楕円球状、ほぼ円柱状などの形状をなしていることを許容する。放電空間の容積は、高圧放電ランプの定格ランプ電力、電極間距離などに応じてさまざまな値が選択され得る。例えば、液晶プロジェクタ用ランプの場合、0.5cc以下にすることができる。自動車前照灯用ランプの場合、0.05cc以下にすることができる。また、一般照明用ランプの場合、定格ランプ電力に応じて1cc以上および以下のいずれにすることもできる。
【0020】
また、透光性セラミックス放電容器は、包囲部に連通する小径筒部を備えている。小径筒部は、少なくとも後述する電流導入導体をそこに挿入し、かつその封止予定部が加熱溶融したときに電流導入導体と協働して封着部を形成することによって透光性セラミックス放電容器を封止するために機能する。そして、小径筒部における封着部の直近の断面積が後述する所定の関係となるような値に規定されている。また、後述する放電媒体を透光性セラミックス放電容器すなわち包囲部の内部へ封入するためにも機能させることができる。
【0021】
小径筒部の数は、一般的な一対の電極を封装する構成のためには2つであるが、配設する電流導入導体の数に応じて1つないし3つ以上の複数であることを許容する。一対の電極を封装するために2つの開口部を配設する場合、各小径筒部は、それぞれ離間した位置に配設されるが、好適には管軸に沿って離間対向している。なお、小径筒部を構成するセラミックスは遮光性であってもよい。
【0022】
本発明において、小径筒部は、その内部にキャピラリー構造を形成してもよいし、形成しなくてもよい。したがって、小径筒部の長さは本発明において特段限定されない。要するに、少なくとも小径筒部のセラミックスの溶融による電流導入導体との封着部を形成しやすい長さであればよい。上述の小径筒部の長さは、従来のフリットガラスを用いて封止する場合の小径筒部の長さより明らかに短くすることができる。
【0023】
透光性セラミックス放電容器を封止するために、小径筒部のセラミックスを溶融させる手段は、本発明において特段限定されない。例えば、小径筒部のセラミックスを加熱して、その溶融温度以上に温度を上昇させれば、セラミックスが溶融し、小径筒部に挿入されている電流導入導体の表面に馴染ませることができる。そうしたら、加熱を止めて馴染んだ個所を冷却すれば、セラミックスが固化して、電流導入導体が開口部に封着され、かつ小径筒部が封止される。小径筒部のセラミックスを加熱する手段は、例えばレーザーや反射鏡付ハロゲン電球などの熱線投射形の局部加熱手段、誘導加熱手段および電気ヒータなどを用いることができる。なお、レーザーとしては、例えばYAGレーザー、COレーザーなどを用いることができる。
【0024】
熱線投射形の上記局部加熱手段を用いて小径筒部の封着予定部の全周を加熱する場合、局部加熱手段を上記予定部に対して所定の離間位置、例えば予定部の側方に固定し、局部加熱手段を作動させながら透光性セラミックス放電容器の小径筒部および局部加熱手段のいずれか一方または双方を回転させれば、小径筒部の全周を均一に加熱することができる。しかし、所望により、小径筒部の延在方向、例えば管軸方向からレーザーを照射したり、固定的に配置された小径筒部の周囲に複数の局部加熱手段を配置したり、局部加熱手段を小径筒部の周囲に回転させたり、あるいは小径筒部の全周を包囲する加熱手段を配設したりすれば、透光性セラミックス放電容器を静止状態で加熱することもできる。
【0025】
次に、透光性セラミックス放電容器を製作するには、包囲部を一体的に成形して形成してもよいし、複数の構成部材を接合させたり、嵌合させたりして形成してもよい。例えば、包囲部の他に小径の筒部などの付帯的構造を備えている場合、包囲部の両端または一端に付帯的構造を最初から一体に成形することができる。しかし、例えば包囲部と、付帯的構造とを、それぞれ別に仮焼結してから所要に接合させて、全体を焼結することにより、一体の透光性セラミックス放電容器を形成することもできる。また、筒状部分と端板部分とをそれぞれ別に仮焼結してから接合して、全体を焼結することにより、一体化された包囲部を形成することもできる。
【0026】
〔電流導入導体について〕 電流導入導体は、後述する電極に電圧を印加して、電極に電流を供給し、かつ小径筒部を協働して透光性セラミックス放電容器を封止するために機能する導体である。そのために、透光性セラミックス放電容器の小径筒部の内部に挿入されている先端側の部分が電極に接続し、基端側が透光性セラミックス放電容器の外部に露出している。また、小径筒部と協働して形成する封着部の直近における電流導入導体の断面積が後述する所定の値に規定されている。なお、上記において、透光性セラミックス放電容器の外部に露出しているとは、透光性セラミックス放電容器から外部へ突出していてもよいし、また突出していなくてもよいが、外部から給電できる程度に外部に臨んでいればよい。
【0027】
次に、電流導入導体の封着部直近の断面積について説明する。本発明においては、上記断面積をSとし、前述の小径筒部のセラミックスにおける封着部直近の断面積をSとしたとき、比S/Sが数式1:0.037≦S/S≦0.363を満足するように構成されている。この条件を満足する電流導入導体の断面積は、従来のフリットガラスを用いる封着構造に用いられてきた電流導入導体の断面積より小さくなっている。このため、小径筒部のセラミックスと電流導入導体の間に熱膨張率の差があったとしても、その差に起因して生じる応力が低減してクラック発生が抑制される。しかしながら、電流導入導体が細くなりすぎると、電流導入導体の通電抵抗が無視できない程度の大きくなり、発熱による電力損失が生じるので、上記の範囲内である必要がある。なお、封着部直近の位置とは、封着部の端から管軸方向に0.2〜1mm程度離間し、かつ電流導入導体の封着部におけるのと同じ材質の部分に対向する位置である。
【0028】
上記のように断面積を、数式1を満足するように規定する場合の一般的および好適な電流導入導体の直径は、以下のとおりである。すなわち、
1.定格ランプ電力800W以下の場合、電流導入導体の直径は2.5mm以下、好適には1.8mm以下であるのがよい。
2.以下同様に400W以下の場合、1.5mm以下、好適には1.2以下であるのがよい。
3.100W以下の場合、0.5mm以下、好適には0.5mm以下であるのがよい。
【0029】
ところで、電流導入導体は、封着性金属またはサーメットを用いて構成できる。
【0030】
封着性金属としては、その熱膨張係数が透光性セラミックス放電容器の小径筒部を構成している透光性セラミックスのそれと近似している導電性金属であるニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)などの金属やサーメットなどを用いることができる。また、透光性セラミックス放電容器の材料に透光性多結晶アルミナセラミックスなどのアルミニウム酸化物を用いる場合、ニオブおよびタンタルは、平均熱膨張係数がアルミニウム酸化物とほぼ同一であり、またモリブデンはその平均熱膨張係数が上記酸化物のそれと接近しているから、封止に好適である。イットリウム酸化物およびYAGの場合も差が少ない。窒化アルミニウムを透光性セラミックス放電容器に用いる場合には、電流導入導体にジルコニウムを用いるとよい。また、電流導入導体を複数の材料部分を接合して形成することもできる。例えば、一部を上記のグループから選択した金属の部分とし、この金属部分にサーメットを管軸方向に接合したり、管軸と直交する周方向に接合したりした構成とすることができる。そして、電流導入導体の少なくとも一部にサーメットを用いる場合、当該サーメットの部分で透光性セラミックス放電容器の小径筒部と電流導入導体との間の封着を行うことができる。
【0031】
上記サーメットは、その構成材料のセラミックスが例えばアルミナセラミックスで、金属が上記グループから選択された一種または複数種の金属、例えばモリブデンまたはタングステンからなるものを用いることができる。また、電流導入導体の透光性セラミックス放電容器に封着されるサーメット部分は、少なくともニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)およびタングステンなどの金属成分と、アルミナ、YAGおよびイットリアなどのセラミックス成分とを含み、金属成分の含有比率が5〜60質量%であることを許容する。
【0032】
そうして、サーメットが上記のような構成であると、加熱手段による封着予定部を加熱した際に、加熱の仕方にもよるが、一般的には透光性セラミックス放電容器では熱吸収が生じにくい。これに対して、サーメット表面では熱吸収が大きくなり、その結果サーメットの表面が加熱されて温度上昇し、さらに透光性セラミックス放電容器の小径筒部に伝熱されることで封着予定部が溶融する。
【0033】
また、金属成分の含有量が60質量%以下なので、透光性セラミックス放電容器の熱膨張率に大きな差がなく、透光性セラミックス放電容器が直接モリブデンに接触した場合と比較して、高圧放電ランプを点灯した際のヒートショックによる破損およびリークが生じにくい。
【0034】
上記サーメットは、上記とは異なる以下の観点からすれば、金属成分の含有比率が50〜80質量%であるのが好ましい。
【0035】
すなわち、主としてサーメットの導電性を重視する観点からすれば、金属成分の含有比率を上記の範囲内にあるようにすれば、十分な導電性を得ることができる。そして、サーメットが上記のような構成であれば、所要の導電性を有するサーメットであっても、そ
の直径を小さくすることができるので、本発明による封着がより一層容易になる。
【0036】
しかし、金属成分の含有量が80質量%を超えると、透光性セラミックス放電容器との間の熱膨張率差が大きくなりすぎるので、所望の封着を得るのが困難になる。また、金属成分の含有量が50質量%になると、所望の導電性を得るのがやや困難になる。
【0037】
また、金属成分の含有量が60質量%以下にすれば、透光性セラミックス放電容器の熱膨張率に大きな差がなく、透光性セラミックス放電容器が直接モリブデンに接触した場合と比較して、高圧放電ランプを点灯した際のヒートショックによる破損およびリークが生じにくい。
【0038】
さらに、所望により少なくとも封着予定部におけるサーメットを、主として封着性を良好に構成した第1のサーメットが外周側に位置し、主として導電性を良好にした第2のサーメットを中心側に位置する傾斜構造とすることもできる。なお、この場合、第1および第2のサーメットを段階傾斜構造または無段階傾斜構造とすることができる。
【0039】
さらにまた、電流導入導体には、主として透光性セラミックス放電容器の小径筒部に封着する部分と、主として電極を支持する部分との機能がある。そこで、各部分をそれぞれの機能に対して最適化するために、各部分を別の材料を用いたり、別のサイズや構造にして形成し、かつそれらを接続して電流導入導体を構成したりすることがきる。例えば、主として透光性セラミックス放電容器の小径筒部に封着する部分をサーメットとし、主として電極を支持する部分を耐ハロゲン性金属により形成することが既知である。本発明においても主たる機能に応じた材料、サイズおよび形状などの仕様を異ならせて、これらを管軸方向に接続して電流導入導体を構成することを許容する。しかし、本発明においては、所望により電流導入導体のほぼ全長を通じて同一材質の導電性部材を用いることもできる。
【0040】
〔電極について〕 電極は、透光性セラミックス放電容器の内部に後述する放電媒体の放電を生起させる手段である。電極は、一般的にその一対が透光性セラミックス放電容器の内部において電極間でアーク放電が生起されるように離間対向して配設される。なお、本発明においては、少なくとも1個の電極が上記導入導体に接続して透光性セラミックス放電容器内に封装されている。
【0041】
また、電極は、電流導入導体に接続して透光性セラミックス放電容器内の所定位置に支持されている。例えば、電極の基端が電流導入導体の透光性セラミックス放電容器の内部側に位置する先端部に接続される。
【0042】
さらに、電極を電極主部または/および電極軸部により構成することができる。電極主部は、放電の起点となる部分で、したがって主として陰極およびまたは陽極として作用する部分であり、所望により電極軸部を介さないで直接電流導入導体に接続することができる。また、電極主部の表面積を大きくして放熱を良好にするために、必要に応じてタングステンのコイルを巻装したり、電極軸部より径大にしたりすることができる。電極が電極軸部を備えている場合、電極軸部は、電極主部と一体に、または溶接されて、電極主部の背面から後方へ突出して電極主部を支持し、かつ、電流導入導体に接続する。なお、所望により電極軸部と電流導入導体の先端部を単一のタングステンにより一体化させることができる。
【0043】
さらにまた、電極の材料には、タングステン、ドープドタングステン、トリエーテッドタングステン、レニウムまたはタングステン−レニウム合金などを用いることができる。
【0044】
さらにまた、一対の電極を用いる場合、交流点灯形の場合にはそれらを対称構造とするが、直流点灯形の場合には、非対称構造にすることができる。
【0045】
〔放電媒体について〕 放電媒体は、その放電により所望の発光を得るための手段であるが、本発明においてその構成が特段限定されない。例えば、下記に列挙する態様であることを許容する。しかし、好ましくは発光金属のハロゲン化物、ランプ電圧形成媒体および希ガスにより構成される。なお、本発明において、「高圧放電」とは、イオン化媒体の点灯中の圧力が大気圧以上になる放電をいい、いわゆる超高圧放電を含む概念である。
【0046】
発光金属のハロゲン化物は、主として可視光を発光する発光金属のハロゲン化物であり、既知の各種金属ハロゲン化物を採用することができる。すなわち、発光金属の金属ハロゲン化物は、発光色、平均演色評価数Raおよび発光効率などについて所望の発光特性を備えた可視光の放射を得るため、さらには透光性セラミックス放電容器のサイズおよび入力電力に応じて、既知の金属ハロゲン化物の中から任意所望に選択することができる。例えば、ナトリウム(Na)、スカンジウム(Sc)、希土類金属(ジスプロシウム(Dy)、ツリウム(Tm)、ホルミウム(Ho)、プラセオジム(Pr)、ランタン(La)およびセリウム(Ce)など)、タリウム(Tl)、インジウム(In)およびリチウム(Li)からなるグループの中から選択された一種または複数種のハロゲン化物を用いることができる。
【0047】
ランプ電圧形成媒体は、ランプ電圧を形成するのに効果的な媒体であり、例えば水銀または下記の金属のハロゲン化物を用いることができる。すなわち、ランプ電圧形成媒体としてのハロゲン化物は、点灯中の蒸気圧が相対的に大きくて、かつ、可視域の発光量が上記発光金属による可視域の発光量に比較して少ない金属、例えばアルミニウム(Al)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、マンガン(Mn)などのハロゲン化物が好適である。
【0048】
希ガスは、始動ガスおよび緩衝ガスとして作用し、キセノン(Xe)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、ネオン(Ne)などを単体でまたは混合して用いることができる。
【0049】
1.発光金属のハロゲン化物+水銀+希ガス:いわゆる水銀入りのメタルハライドランプの構成である。
【0050】
2.発光金属のハロゲン化物+ランプ電圧形成媒体としてのハロゲン化物+希ガス:環境負荷の大きな水銀を用いないいわゆる水銀フリーのメタルハライドランプの構成である。
【0051】
3.水銀+希ガス:いわゆる高圧水銀ランプの構成である。
【0052】
4.希ガス:希ガスとしてXeを用いると、いわゆるキセノンランプの構成である。
【0053】
次に、発光金属のハロゲン化物は、ハロゲンとしてよう素、臭素、塩素またはフッ素のいずれか一種または複数種を用いることができる。
【0054】
〔本発明のその他の構成について〕 本発明の必須構成要件ではないが、所望により以下の構成の一部または全部を具備することにより、高圧放電ランプの機能が付加されたり、性能が向上したりする。
【0055】
(1)(外管について) 本発明の高圧放電ランプは、透光性セラミックス放電容器が大気中に露出した状態で点灯するように構成することができる。しかし、要すれば、透光性セラミックス放電容器を外管内に収納することができる。なお、外管内は、真空、ガス入り、または大気に連通した雰囲気にすることもできる。
【0056】
(2)(反射鏡について) 本発明の高圧放電ランプは、反射鏡を一体化して具備することができる。
【0057】
第2の発明の高圧放電ランプは、包囲部および包囲部に接続して形成された小径筒部を備えた透光性セラミックス放電容器と;透光性セラミックス放電容器の小径筒部の内部に挿入され、主として透光性セラミックス放電容器の小径筒部におけるセラミックスの溶融によって上記小径筒部に封着された電流導入導体と;電流導入導体に接続して透光性セラミックス放電容器内に封装された電極と;透光性セラミックス放電容器内に封入された放電媒体と;を具備し、小径筒部のセラミックスの溶融により電流導入導体に封着して形成された封着部の最大外径をφで、長さをLとし、封着部の直近における小径筒部の外径をφとしたとき、比φ/φ(%)が数式2:100≦φ/φ≦200を満足し、かつ比L/φ(%)が数式3:100≦L/φ≦300することを特徴としている。
【0058】
本発明は、封着部のサイズの寸法比を規定することで封着時のクラック発生を抑制している。
封着部のサイズは、小径筒部の直径および肉厚、封着時の加熱時間、加熱領域、加熱手段および加熱方法などに影響されて変化する。したがって、本発明の規定する範囲内に入るように封着部を形成するには、上記パラメータを適宜選定して封着すればよい。例えば、レーザー照射により封止予定部を局部加熱し、その際にレーザーおよび透光性セラミックス放電容器を相対的に、好ましくは透光性セラミックス放電容器を10〜500回転/分、好適には100〜300回転/分の割合で回転させ、さらには所要によりレーザー出力を加減して封止予定部のセラミックスを溶融させる。
【0059】
数式2:100≦φ/φ≦200および数式3:100≦L/φ≦300をともに満足する範囲内であれば、点灯可能な封着部が得られるが、上記範囲を逸脱すると、点灯可能な封着部が得られなくなる。なお、加熱封着工程において、レーザーおよび透光性セラミックス放電容器の相対的回転を行う場合、その回転数が高くなりすぎると、封着部が短くなりすぎて数式3の下限値から逸脱してクラックが発生しやすくなる。
【0060】
本発明において、その他の構成については第1の発明に関して説明した構成を所望により適宜採用することを許容する。
【0061】
次に、本発明の高圧放電ランプ点灯装置は、前記本発明の高圧放電ランプと;高圧放電ランプを点灯する点灯回路と;を具備していることを特徴としている。
【0062】
本発明において、点灯回路は、どのような構成であってもよい。また、交流点灯および直流点灯のいずれの点灯方式であってもよい。交流点灯の場合、例えばインバータを主体とする電子化点灯回路を構成することができる。所望により、インバータの入力端子間に接続する直流電源に昇圧チョッパまたは降圧チョッパなどの直流−直流間変換回路を付加することができる。直流点灯の場合、例えば上記直流−直流間変換回路を主体とする電子化点灯回路を構成することができる。
【0063】
本発明の照明装置は、照明装置本体と;照明装置本体に配設された本発明の高圧放電ランプと;高圧放電ランプを点灯する点灯回路と;を具備していることを特徴としている。
【0064】
本発明において、照明装置は、高圧放電ランプを光源とする全ての装置を含む概念である。例えば、屋外用および屋内用の各種照明器具、自動車前照灯、画像または映像投射装置、標識灯、信号灯、表示灯、化学反応装置、検査装置などである。
【0065】
照明装置本体は、照明装置から高圧放電ランプおよび点灯回路を除いた残余の部分をいう。
【0066】
点灯回路は、照明装置本体から離間した位置に配置されるのであってもよい。
【発明の効果】
【0067】
第1および第2の発明によれば、透光性セラミックス放電容器の封止予定部を加熱溶融して、電流導入導体に溶着させる封止構造において、封止予定部における小径筒部、電流導入導体およびこれらが形成する封着部の寸法関係を所定範囲内に規定して封着部のセラミックスに生じるクラック発生を抑制した高圧放電ランプ、高圧放電ランプ点灯装置および照明装置を提供することができる。
【0068】
また、第1の発明によれば、小径筒部のセラミックスの断面積Sと電流導入導体の断面積Sとを数式1を満足する範囲内に規定したことにより、電流導入導体の断面積が小さいので、電流導入導体とこれに融着するセラミックスとの熱膨張率の差に基づいて生じる応力が小さくなるため、封着部のセラミックスに発生するクラックを抑制することができる。一方、電流導入導体の断面積が小さすぎることのない範囲に設定されているので、ランプ電流が電流導入導体に流れることによって電流導入導体に発生する電力ロスが増大しすぎることがない。
【0069】
さらに、第2の発明によれば、形成された封着部の最大外径φ、長さLおよび電流導入導体外径を数式2および数式3をともに満足する範囲内に規定したことにより、電流導入導体の直径が封着時の応力が低減してクラック発生を効果的に抑制するとともに、封着部を小形にして高圧放電ランプ全体の小形化に寄与させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0071】
図1ないし図4は、本発明の高圧放電ランプにおける第1の実施形態としての自動車前照灯用メタルハライドランプを示し、図1はランプ全体の正面図、図2は発光管の拡大断面図、図3は発光管の封着部の外観の一例を示す正面図、図4は発光管の要部拡大断面図である。自動車前照灯用メタルハライドランプMHLは、発光管IT、リード線L1、L2、絶縁チューブT、外管OTおよび口金Bを主たる部品として構成されている。
【0072】
発光管ITは、透光性セラミックス放電容器1、電流導入導体2、電極3および放電媒体からなり、封着部SPを有している。
【0073】
透光性セラミックス放電容器1は、図2に示すように、透光性セラミックスを主材料として一体成形により形成されており、包囲部1aおよび一対の小径筒部1b、1bを具備している。包囲部1aは、肉厚がほぼ一定な中空の紡錘形状に成形され、内部に同様形状の放電空間1cが形成されている。放電空間1cの内容積は、約0.05cc以下である。一対の小径筒部1b、1bは、それぞれが包囲部1aの管軸方向の両端から一体に延長された比較的短くて細い筒状部分によって形成されている。そして、その封止予定部に封着部SPが形成されている。また、封着部SPの直近における断面積が前記数式1(0.037≦S/S≦0.363)を満足するように設定されている。
【0074】
上記封着部SPは、図3および図4に示すように、主として小径筒部1bのセラミックスが溶融し表面張力で管軸方向に収縮し、かつ管軸と直交する方向に膨出ないし収縮して異形な形状をなしている。また、封着部SPは、セラミックス中に後述する電流導入導体2の構成物質が固溶して固溶体を構成していることが多く、この場合にはセラミックスの固有色と異なる色に変色している。さらに、封着部SPのサイズは、以下のとおりであり、前記数式2および数式3をともに満足している。すなわち、最大外径はφで、管軸方向の長さはLで示されている。なお、封着部SPの直近における小径筒部1bの直径はφで示されている。
【0075】
電流導入導体2は、サーメットやニオブ棒などからなり、透光性セラミックス放電容器1のそれぞれの小径筒部1bに挿入され、かつ少なくとも小径筒部1bのセラミックスの溶融により封着されている。図示の形態において、電流導入導体2は、ニオブ部2a、サーメット部2bおよびモリブデン部2cの直列接合体から構成されている。ニオブ部2aは電流導入導体2の基端側に位置し、モリブデン部2cは先端側に位置し、サーメット部2bは中間に位置している。そして、ニオブ部2aおよびサーメット部2bに跨る部位において封着部SPが形成されている。なお、図示形態において、封着部SPの直近位置は、封着部SPの端から管軸方向に0.2〜1mm程度離間した領域で、かつサーメット部2bに対向している部分である。
【0076】
したがって、電流導入導体2の先端部は小径筒部1b内に挿入されていて、基端部は透光性セラミックス放電容器1の外部へ露出している。なお、小径筒部1bは、電流導入導体2を封着する際に、加熱されて十分に溶融すると、表面張力により軸方向に凝縮しながら径方向に膨出して図3および図4に示すように楕円球状ないし涙滴状に変形した封着部SPを形成する傾向がある。
【0077】
電極3は、タングステン線からなり、軸方向の先端部、中間部および基端部にわたり軸部の直径が同じで、かつ先端部および中間部の一部が放電空間1c内に露出している。また、電極3は、その基端部が電流導入導体2の先端部に溶接により接続していることによって、透光性セラミックス放電容器1の管軸方向に沿って支持されている。なお、電極3の中間部と小径筒部1bの内面との間に管軸方向に短いわずかな隙間gすなわちキャピラリーが形成されている。しかし、このキャピラリーは、フリットガラスを用いて透光性セラミックス放電容器を封止する従来の高圧放電ランプにおけるそれに比較すると、明らかに短くすることができる。
【0078】
放電媒体は、発光金属のハロゲン化物、ランプ電圧形成用媒体および希ガスからなる。ランプ電圧形成用媒体は、水銀またはランプ電圧計形容用ハロゲン化物からなる。なお、ランプ電圧形成用ハロゲン化物は、蒸気圧が高くて発光金属のハロゲン化物との共存下で可視域の発光量が発光金属の発光量に比較して少ない金属のハロゲン化物である。
【0079】
リード線L1、L2は、それぞれの先端が電流導入導体2、2の基端に溶接により接続して発光管ITを支持している。リード線L1は、管軸に沿って延在して後述する口金B内に導出され、図示されていない中央に配設されたピン状をなす他方の口金端子に接続している。リード線L2は、中間部が後述する外管OTに沿って折り返されて口金B内に導入されて口金Bの外周面に配設されたリング状をなす一方の口金端子t1に接続している。
【0080】
絶縁チューブTは、セラミックスのチューブからなり、リード線L2を被覆している。
【0081】
外管OTは、紫外線カット性能を備えており、内部に発光管ITを収納していて、両端の縮径部4(図では右方の一端のみが示されている。)がリード線L2にガラス溶着している。しかし、外管OTの内部は気密ではなく、外気に連通している。
【0082】
口金Bは、自動車前照灯用として規格化されているもので、発光管ITおよび外管OTを中心軸に沿って植立して支持していて、自動車前照灯の背面から内部へ着脱可能に装着される。また、装着時に電源側のランプソケットと接続し得るように筒状部の外周面に配設されたリング状をなす一方の口金端子t1と、筒状部の内部に形成された一端開放の凹部内において中央で軸方向に突出して配設されたピン状をなす他方の口金端子とを備えて構成されている。
【実施例1】
【0083】
実施例1は、図1ないし図3に示す高圧放電ランプである。
透光性セラミックス放電容器:一体成形の透光性アルミナセラミックス製、
包囲部;最大内径6mm、最大内径5mm、肉厚0.5mm、
小径筒部;外径2.7mm、内径0.7mm、長さ5mm
電流導入導体 :Mo-Al2O3=50:50体積%のサーメット棒、直径0.65mm
電極 :電極間距離3mm
放電媒体 :DyI3-NdI3-CsI=3mg、Xe0.5気圧
定格ランプ電力 :35W

【実施例2】
【0084】
透光性セラミックス放電容器:一体成形の透光性アルミナセラミックス製、
包囲部;最大内径6mm、最大内径5mm、肉厚0.5mm、
小径筒部;外径1.7mm、内径0.4mm、長さ5mm
電流導入導体 :Mo-Al2O3=50:50体積%のサーメット棒、直径0.35mm
その他の仕様は、実施例1と同じである。

【0085】
図5は、小径筒部および電流導入導体の封着部の直近における断面積比とクラック発生率および電力ロス発生率との関係を示すグラフである。図において、横軸の封着体断面積の比率は小径筒部および電流導入導体の封着部の直近における断面積比を示し、縦軸の左側がクラック発生率%(◆)、右側が電力ロス発生率%(■)を、それぞれ示している。
【0086】
図から理解できるように、小径筒部および電流導入導体の封着部の直近における断面積比(封着体断面積の比率)が0.037〜0.363の範囲内であれば、クラック発生率および電力ロス発生率がともに顕著に低減する。なお、上記において、電力ロスとは、電流導入導体の通電部断面積不足により、ランプ電力に対して1%以上の電力損失が電流導入導体で発生して熱ロスとなることを意味する。したがって、電力ロス発生率は、電流導入導体が細すぎて無視できない発熱不良が発生する割合を示す。
【0087】
実用的なランプ性能を得るためには、熱ロスによる効率低下や(放電媒体が小径筒部内に滞留する分を見込んで封入量を決めることによる)放電媒体の封入量の増加に伴う不純物増加、始動不調、短寿命および特性不安定化を抑制する必要がある。このため、小径筒部をあまり大径にできない。そのため、図6における横軸の封着導体断面積の比率が小さいほど実質的に電流導入導体の断面積、特に封着部における電流導入導体部分であるところの封着導体の断面積が小さくなる傾向になる。ランプ仕様ごとの定格ランプ電流に対して電流導入導体、特に封着導体の断面積がある一定範囲より小さくなると、温度上昇により電流導入導体での抵抗発熱が電流導入導体の温度を明確に上昇させるようになる。そうなると、温度上昇により電流導入導体の抵抗率が急増するにもかかわらず、ほぼ同じランプ電流が流れるので、抵抗発熱はさらに増大し、電流導入導体の温度をさらに上昇させることになる。その結果、さらに抵抗発熱が増加し、さらなる温度上昇につながるといった連鎖サイクルが生じ、結果として図6の曲線(四角)の左側の領域に示されているように、ある横軸値以下で比較的急激に発熱(電力ロス)が増加する現象が生じる。
【0088】
図7は、封着部のサイズである封着部の最大外径、長さおよび封着部の直近における小径筒部の外径を変えた高圧放電ランプを製作して点灯試験をした結果を示すグラフである。図において、横軸は比φ/φを、縦軸は比L/φを、それぞれ示す。
【0089】
図から理解できるように、比φ/φが100〜200(%)、比L/φが100〜300%)の範囲内であれば、封着が良好で点灯可能であるが、上記の範囲を逸脱すると、点灯不可となる。
【0090】
図7は本発明の高圧放電ランプ点灯装置における一実施形態を示すブロック回路図である。本発明の高圧放電ランプ点灯装置は、第1または第2の本発明の高圧放電ランプMHLと、高圧放電ランプMHLを点灯する点灯回路とを具備している。なお、本形態において、その点灯回路が低周波交流点灯回路方式を採用している。
【0091】
本形態において、点灯回路は、電子化されていて、直流電源DC、昇圧チョッパBUT、フルブリッジ形インバータFBIおよびイグナイタIGを具備しており、自動車前照灯用メタルハライドランプMHLを点灯する。
【0092】
直流電源DCは、例えば自動車のバッテリーからなる。
【0093】
昇圧チョッパBUTは、その入力端が直流電源DCに接続している。
【0094】
フルブリッジ形インバータFBIは、その入力端が昇圧チョッパBUTの出力端に接続している。
【0095】
イグナイタIGは、フルブリッジ形インバータFBIの低周波交流出力を入力して高電圧始動パルスを発生し、始動時に後述する自動車前照灯用メタルハライドランプMHLの一対の電極間に印加する。
【0096】
自動車前照灯用メタルハライドランプMHLは、図1および図2に示す構成であり、フルブリッジ形インバータFBIの出力端間に接続して低周波交流点灯する。
【0097】
図8は、本発明の照明装置における一実施形態としての自動車前照灯を示す概念的側面図である。図において、11は前照灯本体、12は高圧放電ランプ点灯装置、13は自動車前照灯用メタルハライドランプである。
【0098】
前照灯本体11は、容器状をなし、内部に反射鏡11a、前面にレンズ11bおよび図示を省略しているランプソケットなどを備えている。
【0099】
高圧放電ランプ点灯装置12は、図7に示す回路構成を備えていて、主点灯回路12Aおよび始動器12Bを具備している。主点灯回路12Aは、図3の昇圧チョッパBUTおよびフルブリッジ形インバータFBIを主構成要素として構成されている。始動器12Bは、同じくイグナイタIGを主構成要素として構成されている。
【0100】
自動車前照灯用メタルハライドランプ13は、上記ランプソケットに装着されて点灯する。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の高圧放電ランプにおける第1の実施形態としての自動車前照灯用メタルハライドランプを示す正面図
【図2】同じく発光管の拡大断面図
【図3】同じく発光管の封着部の外観の一例を示す正面図
【図4】同じく発光管の拡大断面図
【図5】小径筒部および電流導入導体の封着部の直近における断面積比とクラック発生率および電力ロス発生率との関係を示すグラフ
【図6】封着部のサイズである封着部の最大外径、長さおよび封着部の直近における小径筒部の外径を変えた高圧放電ランプを製作して点灯試験をした結果を示すグラフ
【図7】本発明の高圧放電ランプ点灯装置における一実施形態を示すブロック回路図
【図8】本発明の照明装置における一実施形態としての自動車前照灯を示す概念的側面図
【符号の説明】
【0102】
1…透光性セラミックス放電容器、1a…包囲部、1b…小径筒部、2…電流導入導体、IT…発光管、SP…封着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包囲部および包囲部に接続して形成された小径筒部を備えた透光性セラミックス放電容器と;
透光性セラミックス放電容器の小径筒部の内部に挿入され、主として透光性セラミックス放電容器の小径筒部におけるセラミックスの融着によって上記小径筒部に封着された電流導入導体と;
電流導入導体に接続して透光性セラミックス放電容器内に封装された電極と;
透光性セラミックス放電容器内に封入された放電媒体と;
を具備し、小径筒部のセラミックスの溶融により電流導入導体に封着して形成された封着部の直近における、小径筒部のセラミックスの断面積をSとし、電流導入導体の断面積をSとしたとき、比S/Sが数式1:0.037≦S/S≦0.363を満足することを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
電流導入導体は、その直径が定格ランプ電力800W以下に対して2.5mm以下で、400W以下に対して1.5mm以下で、100W以下に対して0.5mm以下であることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
包囲部および包囲部に接続して形成された小径筒部を備えた透光性セラミックス放電容器と;
透光性セラミックス放電容器の小径筒部の内部に挿入され、主として透光性セラミックス放電容器の小径筒部におけるセラミックスの溶融によって上記小径筒部に封着された電流導入導体と;
電流導入導体に接続して透光性セラミックス放電容器内に封装された電極と;
透光性セラミックス放電容器内に封入された放電媒体と;
を具備し、小径筒部のセラミックスの溶融により電流導入導体に封着して形成された封着部の最大外径をφSで、長さをLとし、封着部の直近における小径筒部の外径をφTとしたとき、比φS/φT(%)が数式2:100≦φ/φ≦200を満足し、かつ比LS/φT(%)が数式3:100≦LS/φT≦300することを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一記載の高圧放電ランプと;
高圧放電ランプを点灯する点灯回路と;
を具備していることを特徴とする高圧放電ランプ点灯装置。
【請求項5】
照明装置本体と;
照明装置本体に配設された請求項1ないし3のいずれか一記載の高圧放電ランプと;
高圧放電ランプを点灯する点灯回路と;
を具備していることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−108713(P2008−108713A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247195(P2007−247195)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】