説明

高圧放電灯の点灯装置

【課題】安定に放電しちらつきが生ぜず、しかも放電が偏らず寿命の長い高圧放電灯を得ることが可能な片口金型の高圧放電灯の点灯装置を提供すること。
【解決手段】交流ランプ電流を高圧放電灯の一対の電極に供給して高圧放電灯を点灯させる場合に、前記ランプ電流の半周期の所定数分の1で電流パルスを発生させ、該電流パルスの極性を前記ランプ電流の極性と同一にするとともに、前記電流パルスをその発生した半周期の後の部分で前記ランプ電流に重畳させる高圧放電灯の点灯装置において、 前記一対の電極の温度差に基づいて、前記電流パルスの高さを非対称とした高圧放電灯の点灯装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電灯、特に自動車用前照灯など、片口金型の高圧放電灯の点灯に用いられる点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧放電灯用の従来の点灯装置では、例えば特許文献1に記載されているように、直流電流を発生させる電圧供給源の入力側は電圧を供給するための電源に接続され、この電圧供給源の出力側には直流電流を交流電流に変換する転流器が接続される。そして、その出力側に接続された高圧放電灯を交流波形のランプ電流によって点灯させる。
【0003】
このような交流のランプ電流により高圧放電灯を点灯する点灯装置では、ランプ電流の極性反転があるので、電極の温度バランスを取ることが難しく放電の安定性が悪く、そのためフリッカと呼ばれるちらつき現象が生じていた。このちらつき現象は、自動車の前照灯に用いられる高圧放電灯において特に顕著である。この問題に対して上記特許文献1に記載の点灯装置では、電圧供給源に電流パルス発生手段を接続する。この電流パルス発生手段によりランプ電流の後半部分にランプ電流と同極性の電流パルスを重畳することにより、放電の安定度を向上させ、ちらつきを抑制する。
【0004】
しかし、このような特許文献1記載の点灯方法を用いた高圧放電灯において、定電力による点灯を前提とすると、パルス状の電流が加算された分だけ、その時間以外の時間帯では、ランプ電流を低下させなければならなくなる。これにより、放電が不安定になり、ちらつきが発生することがわかった。
【0005】
特に、水銀を封入しない高圧放電灯の点灯では、水銀を封入した高圧放電灯の場合よりも、点灯初期の電力投入時間を長くすると共に、その間、大電流を流す必要がある。したがってその時間中に電極が変形や溶解しないように、電極は太く設計する必要があり、このことがさらに放電の不安定さ、ちらつきの発生を増加させる。
【0006】
一方、自動車の前照灯などの片口金型の高圧放電灯では、図3に示すような構造を有する。即ち、発光管31内に対向して設けられた電極32a,32bに、金属箔33a,33bが接続されており、これらの金属箔33a,33bに外部から電力を加えるための外部リード線34a,34bが接続されている。このような構造の片口金型高圧放電灯では、図3に示すように、口金方向には積極的に放熱されるが、反対方向の放熱は、前者に比べて圧倒的に少ないため、放電が生ずる電極32a,32bの先端の温度が違ってしまう。この電極の先端温度の違いは、発光分布の不均一を生ずると共に放電灯の寿命を著しく短くしてしまう。
【0007】
この問題点を解決するために、特許文献2では、高圧放電灯に加えられる矩形波電流の幅を変えている。しかしこのような高圧放電灯では、上述の放電の不安定性、ちらつきを
防止することができない。
【特許文献1】特表平10−501919号公報(第7頁〜11頁、図1,2,4)
【特許文献2】特開平6−163167号公報(図1、2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来の片口金型高圧放電灯の問題点に鑑みてなされたもので、安定に放電しちらつきが生ぜず、しかも放電が偏らず寿命の長い高圧放電灯を得ることが可能な片口金型の高圧放電灯の点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1によれば、交流ランプ電流を高圧放電灯の一対の電極に供給して高圧放電灯を点灯させる場合に、前記ランプ電流の半周期の所定数分の1で電流パルスを発生させ、該電流パルスの極性を前記ランプ電流の極性と同一にするとともに、前記電流パルスをその発生した半周期の後の部分で前記ランプ電流に重畳させる高圧放電灯の点灯装置において、 前記一対の電極の温度差に基づいて、前記電流パルスの高さを非対称としたことを特徴とする高圧放電灯の点灯装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安定に放電しちらつきが生ぜず、しかも放電が偏らず寿命の長い高圧放電灯を得ることが可能な片口金型高圧放電灯の点灯装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1に本発明一実施形態の点灯装置の回路構成例を示す。この高圧放電灯の点灯装置は、直流電源V1、スイッチSW1、DC/DCコンバータ回路1、出力電圧検出回路2、出力電流検出回路3、DC/ACコンバータ回路4、イグナイタ5、片口金型の高圧放電灯6、及びこれらを制御する制御回路から構成されている。
【0012】
DC/DCコンバータ回路1に含まれるトランスTは、一次側のトランスT1と、二次側のトランスT2,T3から成る。降圧又は昇圧を行うDC/DCコンバータ回路1では、コンデンサC1、スイッチング素子Q1、パワーMOS駆動回路11、PWMコンパレータ12、鋸歯状波発生回路13及びトランスT1により、トランスTの1次側が、構成される。トランスT2、ダイオードD1、コンデンサC2によりDC/ACインバータ回路4につながるトランスTの2次側が構成される。また、トランスT3、ダイオードD2及びコンデンサC3により、イグナイタ5につながるトランスTの2次側が、構成される。
【0013】
トランスTの1次側の接続関係を説明する。例えばMOSFETであるスイッチング素子Q1は、直流電源V1、スイッチSW1およびトランスT1に、直列に接続されており、スイッチング素子Q1のゲートにはパワーMOS駆動回路11が接続されている。
【0014】
パワーMOS駆動回路11には、PWMコンパレータ12の出力端子が接続され、PWMコンパレータ12の非反転入力端子には、鋸歯状波発生回路13の出力端子が接続されている。コンデンサC1は、スイッチSW1を介して、直流電源V1に並列に接続されている。後で詳述するように、この実施形態は、DC/DCコンバータ回路のパワーMOS駆動回路11にPWMコンパレータ12から供給されるパルスの幅を変える点に特徴がある。
【0015】
DC/ACインバータ回路4につながる、トランスTの2次側の接続関係を説明する。トランスT2は、ダイオードD1に直列に接続され、コンデンサC2は、ダイオードD1を介して、トランスT2に並列に接続されている。次に、イグナイタ5につながるトランスTの2次側の接続関係を説明する。トランスT3は、トランスT2とダイオードD1との中点、ダイオードD2と直列接続され、イグナイタ5への出力を構成している。コンデンサC3は、ダイオードD2を介して、トランスT3に並列に接続されている。
【0016】
出力電圧検出回路2は、直列接続された抵抗R1、R2及びR3から成り、この出力電圧検出回路2は、コンデンサC2よりも出力側に、かつコンデンサC2に並列に接続されている。出力電流検出回路3は抵抗R4から成り、出力電圧検出回路2とDC/ACインバータ回路4との間で、かつそれぞれの低圧側に接続されている。
【0017】
DC/ACインバータ回路4は、例えばMOSFETから成るスイッチング素子Q2,Q3,Q4,Q5と、駆動回路14,15,16,17と、矩形低周波発生回路18、バッファBUF、インバータINVで構成される。接続関係は、スイッチング素子Q2とQ3、およびスイッチング素子Q4とQ5がそれぞれ直列接続されており、それらがDC/DCコンバータ回路2の出力端に並列に接続され、いわゆるフルブリッジの回路構成になっている。
【0018】
そして、スイッチング素子Q2とQ3、スイッチング素子Q4とQ5とのそれぞれの接続点から、DC/ACインバータ回路4の出力端が設けられ、イグナイタ5の入力端子に接続されている。スイッチング素子Q2,Q3,Q4,Q5のそれぞれのゲートには、駆動回路14,15,16,17が接続されており、駆動回路15、16はバッファBUF、駆動回路14、17はインバータINVをそれぞれ介し、さらに後述するSW2を介して、矩形低周波発生回路18に接続されている。
【0019】
イグナイタ5は、DC/ACコンバータ回路4の交流出力を入力され片口金型の高圧放電灯6を点灯させる。
【0020】
片口金型の高圧放電灯6は、放電空間に水銀を含まず、金属ハロゲン化物および希ガスを代わりに蒸発させて発光させるランプであり、DC/ACインバータ回路4の出力端に、イグナイタ5のパルストランス(図示せず)を介して、接続される。
【0021】
また、DC/DCコンバータ回路1のスイッチング素子Q1を制御するための制御回路の構成として、差動増幅回路7、基準電圧源V2、抵抗R8、点灯検出回路21、点灯時間計時タイマー22、目標電力値設定回路23、除算回路24、消灯時間計時タイマー25、スイッチSW2、差動増幅回路8、遅延回路26、論理回路27、スイッチSW3、フリップフロップ28、トランジスタTR1、抵抗R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15が用いられている。
【0022】
点灯検出回路21で点灯が検知されると、その検知信号は点灯時間計時タイマー22及び消灯時間計時タイマー25に入力され、点灯時間計時タイマー22は所定時間後に、矩形低周波発生回路18の出力が、バッファBUF及びインバータINVに供給されるように、スイッチSW2を制御する。
【0023】
差動増幅回路7及び差動増幅器8は、各々演算増幅器、ダイオード、抵抗、コンデンサから成る。差動増幅回路7の演算増幅器の入力の非反転入力端子には出力電圧検出回路2の抵抗R1と抵抗R2、R3との間の電圧検出点が接続される。また演算増幅器の反転入力端子には、基準電圧源V2がそれぞれ接続され、演算増幅器の出力端子にはダイオードD3が直列に接続されている。また、差動増幅器7の演算増幅器とダイオードとの直列接続には、並列に、抵抗とコンデンサが接続されている。そして、差動増幅回路7の出力端子は、抵抗R8を介して、PWMコンパレータ12の反転入力端子に接続されている。
【0024】
差動増幅回路8の演算増幅器の非反転入力端子には、出力電流検出回路3の抵抗R4とDC/ACインバータ回路4との間の電圧検出点が接続される。この演算増幅器の反転入力端子には除算回路24が接続されている。
【0025】
除算回路24には、出力電圧検出回路2の抵抗R2と抵抗R3との間の電圧検出点と、点灯検出回路21、点灯時間計時タイマー22を介して、目標電力値設定回路23とが接続されている。また、点灯時間計時タイマー22には、消灯時間計時タイマー23を介して点灯検出回路21が接続されている。また、点灯時間計時タイマー22には、入力が入ると所定時間後に切り替わるスイッチSW2が接続されている。目標電力値設定回路23には、入力が入ると開閉されるスイッチSW3が接続されている。そして、差動増幅回路8の出力端子は、抵抗R8を介してPWMコンパレータ12の反転入力端子に接続されている。
【0026】
また、PWMコンパレータ12の反転入力端子には、抵抗R9の一端が接続される。抵抗R9の他端は抵抗R10の一端と接続され、抵抗R10の他端は直流電源V1のマイナス端子に接続されている。
【0027】
一方、矩形低周波発生回路18の出力端子と、遅延回路26の出力端子は論理回路27の2入力とされる。この論理回路27は排他的論理和の反転信号を出力する回路である。この論理回路27の出力端子はスイッチSW3の一端に接続される。スイッチSW3の他端はフリップフロップ28の入力端子に接続され、このフリップフロップ28の2つの出力端子は抵抗R11と抵抗R14の一端に各々接続されている。抵抗R11の他端はトランジスタTR1のベース及び抵抗R12の一端に接続される。抵抗R14の他端はトランジスタTR2のベース及び抵抗R15の一端に接続される。抵抗R12の他端及び抵抗R15の他端は直流電源V1のマイナス端子に接続される。トランジスタTR1のコレクタは抵抗R9と抵抗R10の接続点に接続されている。トランジスタTR2のコレクタは、抵抗R13を介して抵抗R9と抵抗R10の接続点に接続されている。トランジスタTR1とTR2のエミッタは直流電源V1のマイナス端子に接続されている。
【0028】
トランジスタTR1と抵抗R11とR12の構成は、トランジスタTR2と抵抗R14,抵抗R15の構成と同じである。抵抗R9と抵抗R10の接続点に、トランジスタTR1のコレクタは直接接続され、トランジスタTR2のコレクタは、抵抗R13を介して接続されている。
【0029】
次に、本発明のこの実施形態の回路動作を説明する。スイッチSW1が閉じられると、例えば、十数Vから数十Vの自動車用バッテリーである直流電源V1により、コンデンサC1に電圧が生じる。このコンデンサC1は、直流電源の出力電流の変化による微小な電圧変動を抑える働きをする。
【0030】
コンデンサC1に電圧が生じると、図示していないが、差動増幅回路7の演算増幅器に電圧が供給される。このとき、この演算増幅器の非反転入力端子の電圧はゼロであり、反転入力端子には、基準電圧源V2が接続されていることから、この演算増幅器からは、ローレベルが出力される。この電圧がダイオードD3を介して、PWMコンパレータ12の反転入力端子に入力され、鋸歯状波発生回路13の出力の鋸歯状波と比較され、PWMコンパレータ12の出力としてPWM波が生成される。そしてPWMコンパレータ12の出力電圧はパワーMOS駆動回路11に入力され、スイッチング素子Q1をスイッチングさせる。
【0031】
トランスTの2次側では、1次側でスイッチング素子Q1がスイッチング動作したことにより、昇圧された電圧が生じる。トランスT2で生じた電圧による電流は、ダイオードD1を介して、コンデンサC2を充電する。コンデンサC2の両端の電圧は、出力電圧検出回路2の抵抗R1、R2と抵抗R3とで分圧検出され、その検出結果は差動増幅回路7の演算増幅器の非反転入力端子に入力されている。
【0032】
差動増幅器7の演算増幅器の反転入力端子の入力には、基準電圧源V2が接続されており、基準電圧源V2よりも入力電圧値が低い場合は、PWMコンパレータ12の反転入力端子には入力がないため、トランスTの2次側の電圧を昇圧するように作用し、コンデンサC2の電圧を高くする。ここで、演算増幅器に並列に接続された抵抗は、演算増幅器の利得調整のために挿入されており、コンデンサC6は出力の位相を遅らせて、点灯装置全体の動作を安定化させるために使用されている。
【0033】
トランスT3で生じた電圧による電流は、ダイオードD2と抵抗R5を介して、イグナイタ5のコンデンサ(図示せず)を充電する。このコンデンサは、主にトランスT3からの電圧を平滑するための平滑コンデンサとして使用される。このコンデンサの電圧が、十分に高くなると、パルストランス(図示せず)に電流が流れ始める。これにより、高圧放電灯6に高圧パルスが印加され、高圧放電灯6が絶縁破壊を起こし、グロー放電をする。ここで、図示していないがイグナイタ5の入力端子に並列にコンデンサが接続されており、高圧放電灯6に印加された高圧パルスが、DC/ACインバータ回路4に逆流しないようにするためのフィルタとしてこのコンデンサは作用する。この時点までは、スイッチSW2は、駆動回路14,15,16,17と矩形低周波発生回路18との接続が遮断された状態となっている。
【0034】
高圧放電灯6が絶縁破壊を生じてグロー放電が起こると、コンデンサC2に充電されていた電荷が、DC/ACインバータ回路4を介して、ランプ電流として高圧放電灯6に急激に流れる。この電流により、高圧放電灯6は、グロー放電からアーク放電に移行し、点灯を開始する。この直後の点灯は、比較的長い時間、同じ極性を維持する直流点灯と呼ばれる点灯状態を維持する。
【0035】
ここで、出力電圧検出回路2では、抵抗R1及び抵抗R2と抵抗R3の分圧により、電圧が検出されており、この分圧電圧が点灯検出回路21に入力されている。点灯検出回路21では、コンデンサC2の電荷が高圧放電灯6に供給されて、電圧が降下したことを検知する。この検知により、点灯時間計時タイマー22の計時を開始させ、計時開始から所定の時間が経過した後に、スイッチSW2が切り替わる。これにより、駆動回路14〜17と矩形低周波発生回路18が接続された状態になる。
【0036】
スイッチS2が切り替わると、矩形低周波が、バッファBUFとインバータINVを介して、駆動回路14〜17に入力され、スイッチング素子Q2〜Q5がオンオフ制御される。このオンオフ制御は、スイッチング素子Q2、Q5がオンのとき、スイッチング素子Q3、Q4がオフ、スイッチング素子Q2、Q5がオフのとき、スイッチング素子Q3、Q4がオンとなる2種類の状態、すなわちスイッチング素子Q2〜Q5が極性反転を繰り返す。
【0037】
このスイッチング素子Q2〜Q5の極性反転動作により、DC/ACインバータ回路4の出力側には、略矩形波の交流電力が発生し、高圧放電灯6が安定時の点灯に移行する。
【0038】
ここで、「略矩形波」とは、矩形波が持つような瞬時の立ち上がり、立ち下がりや、平坦な特性に近い波形を有している場合をいう。すなわち、立ち上がり、立ち下がりに数マイクロ秒程度かかっていたり、基本的には平坦な特性を有しながらも、ある部分が突出または陥没していたりするような波形の場合も含んでいる。
【0039】
次に、高圧放電灯6の定電力制御について説明する。この定電力制御は、出力電圧検出回路2と出力電流検出回路3の測定結果によってなされる。出力電圧検出回路2の電圧検出の結果は、除算回路24に入力される。さらに、除算回路24には、点灯時間計時回路22からの出力により動作する目標電力値設定回路23により、その状態において高圧放電灯6に供給すべき電力(目標電力値)も入力される。したがって、除算回路24では、目標電力値が抵抗R1と抵抗R2の接続点の電位により除算され、除算回路24は理想の電流値にするための信号が出力される。この出力信号は、差動増幅回路8の演算増幅器の反転入力端子に入力される。
【0040】
一方、差動増幅回路8の演算増幅器の非反転入力端子には、電流検出回路3の電流検出結果が入力され、その比較による信号がPWMコンパレータ12の反転入力端子に入力される。PWMコンパレータ12の出力はパワーMOS駆動回路11に入力されており、この入力信号に応じて、スイッチング素子Q1のデューティー比が変化する。これにより、高圧放電灯6が定電力制御されることになる。
【0041】
また、PWMコンパレータ12の反転入力端子には、極性反転の所定時間前にスイッチング素子Q1に電圧を増加させる信号を送り、極性反転時には電圧増加の信号を停止させる信号を送るための回路が接続されている。この回路の動作について、図2に示した波形図を用いて、極性反転中のDC/DCコンバータ回路の電圧を高める動作について説明する。
【0042】
矩形低周波発生回路18から出力された矩形波(図2(a))と、矩形低周波発生回路18出力と同じ波形でしかも所定時間遅れた遅延回路26から発せられた矩形波(図2(b))とは、論理回路27において、EX−NOR、すなわち排他的論理和の反転が取られてパルス状の出力波形が得られる(図2(c))。
【0043】
この図2(c)に示したパルス状の出力波形が、スイッチSW3を介してフリップフロップ回路28に入力される。フリップフロップ回路28のQ1出力端子に図2(d)に示す波形が出力され、Q2端子に図2(e)に示す波形が出力される。図2の波形図に示すように、論理回路27の出力のパルスが、フリップフロップ回路28で振り分けられたようになる。
【0044】
フリップフロップ回路Q1の出力(d)が低レベルにあれば、トランジスタTR1はオフ状態にあるが、高レベルになると、このトランジスタTR1はオン状態になり、PWMコンパレータ12の反転入力端子は、抵抗R8と、抵抗R9の分圧電位になる。また、フリップフロップ回路Q2の出力(e)が低レベルにあれば、トランジスタTR2はオフ状態にあるが、高レベルになると、このトランジスタTR2はオン状態になり、PWMコンパレータ12の反転入力端子は、抵抗R8と、抵抗R9及び抵抗R13の分圧電位になる。
【0045】
したがって、PWMコンパレータ12の反転入力端子には、図2(f)に示すように、交互に、深さの異なる切れ込みdp1,dp2を有する波形が入力されることになる。この波形はPWMコンパレータ12からデューティ比の変化としてパワーMOS駆動回路11に入力される。
【0046】
したがって、高圧放電灯のランプ電流は図2(g)に示すような波形となる。このランプ電流波形の後端に重畳パルスH1,H2を有しており、これらのパルスの大きさh1、h2は異なり交互に現れる。
【0047】
図3に片口金型の高圧放電灯6の構成を示す。この片口金型の高圧放電灯6は、口金31にリード線32a,32bが接続されており、これに金属箔33a,33bが接続され、これらの金属箔33a,33bには、放電空間34中に突出した電極35a,35bが接続されている。
【0048】
片口金であるために放熱が左右で異なり、電極温度を等しくすることが難しい。そのため、温度が高い方の電極では溶融を、また低い方の電極ではスパッタリングを起こしやすくなる。
【0049】
そこで、図2(g)に示した大きな重畳パルスH1が電極35bに加わるように高圧放電灯6にランプ電流を流す。このようにすれば、片口金型の高圧放電灯6の両電極に、同程度の電圧がかかるように放電を行わせることが可能となる。
【0050】
図2(f)に加えられる波形の切り込みの深さdp1、dp2は、図1に示す抵抗R8と抵抗R9の値の分圧比、抵抗R8の値と抵抗R9と抵抗R13の値の合計値との分圧比により決まるので、抵抗R13の値を調整することにより、上記切り込みの深さdp1、dp2を適切な値にすることができる。
【0051】
またこの実施形態では、極性反転の直前にランプ電流を重畳して電極を加熱してから極性反転を行うため、点灯初期に大電力を投入される自動車の前照灯用高圧放電灯などの様に相対的に太い電極を用いた放電灯でもちらつきの発生を防止することができる。さらに、点灯初期に定格電力よりも大きな電力を投入して光束の立ち上がりを早める自動車の前照灯の場合、図5に点灯時間と投入電力の関係を示すように、例えば最大電力は75W、定格電力は35Wのものが実用化されているが、ランプ電流を重畳した時の最大電力が75W以下であれば、素子耐量などを増加する必要はない。すなわち、点灯装置のコスト上昇や大型化を伴うことなく、高圧放電灯におけるちらつきの発生を防止できる。
【0052】
ところで、上記実施形態では、片口金型の高圧放電灯6に加えるランプ電流に重畳させるパルスの高さを、口金31から遠い方の電極35aに供給される電流では高く、口金31から近い方の電極35bに供給される電流では低くなるように変えていた。
【0053】
しかし本発明は重畳されるパルスの高さを変えるのでなく、これらパルスの幅を変えるようにすることも可能である。図4にこの実施形態の場合に、片口金型の高圧放電灯6の電極に加える電流波形を示す。この例では、口金から遠い方の電極35aに加える電流に重畳されるパルスH3の幅w1は口金に近い方の電極35bに加える電流に重畳されるパルスH4の幅w2よりも広くしている。このように重畳されるパルスの幅を変えるには図2に示す回路において、フリップフロップ回路28の出力するパルス幅を変えることによりなされる。
【0054】
このようにして、電極35aによる放電と電極35bによる放電を均等に行わせることができ、高圧放電灯6の寿命を長くすることが可能となる。
【0055】
以上述べたように、一方の電流方向が終了して他方に切り替わる前にスイッチSW1を閉じて出力電流を増加させ、所定時間後に極性反転動作を行い、極性反転が終了した時点でスイッチSW1を開放させる。別方向の極性反転時にはスイッチSW2を閉じて所定時間経過した後に極性反転を行い、極性反転が終了した時点でスイッチSW2を開放する。これによって、図2(g)に示すような、重畳されるパルス電流の高さ(量)が極性毎に異なる波形を生成することが可能となる。
【0056】
一方、時間的に重畳量を変更するには、同様にスイッチSW1が閉じている時間とスイッチSW2が閉じている時間とを非対称にすることで図4に示すような波形を生成することが可能となる。なお、この場合はスイッチSW1とスイッチSW2とを兼用することも可能であり、例えばマイクロコンピュータなどのポートで時間的変化を持たせることもできる。
【0057】
ところで、放電灯に加える電流に重畳するパルスの高さと幅の両方を非対称にして電極35a,35bからの放電を均一にすることも可能である。また、ランプ電流の高さを変えたくないときには重畳するパルスの幅を変えることができ、ランプ電流の周波数を変えたくないときには重畳するパルスの高さを変えるなど、本発明は適宜組み合わせて実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明一実施形態による点灯装置の回路構成例を示す図。
【図2】図1に示した本発明一実施形態の点灯装置の動作を説明するための波形図。
【図3】本発明を適用される片口金型高圧放電灯の構造を示す図。
【図4】本発明の他の実施形態を説明するための波形図。
【図5】自動車前照灯用の水銀を含まない高圧放電灯における投入電力の特性を示す図。
【符号の説明】
【0059】
1・・・DC/DCコンバータ回路、
2・・・出力電圧検出回路、
3・・・出力電流検出回路、
4・・・DC/ACコンバータ回路、
5・・・イグナイタ、
6・・・高圧放電灯、
11・・・パワーMOS駆動回路、
13・・・鋸歯状波発生回路、
14,15,16,17・・・駆動回路、
BUF・・・バッファ、
INV・・・インバータ、
18・・・矩形低周波発生回路、
21・・・点灯検出装置、
22・・・点灯時間計時タイマー
23・・・目標電力値設定回路、
24・・・除算回路、
25・・・消灯時間計時タイマー、
26・・・遅延回路、
27・・・論理回路、
28・・・フリップフロップ回路
31・・・口金、
32a,32b・・・リード線、
33a,33b・・・金属箔、
34・・・真空部、
35a,35b・・・電極、
V1・・・直流電源、
V2・・・基準電圧源、
SW1,SW2,SW3・・・スイッチ、
T,T1,T2,T3・・・トランス、
Q1,Q2,Q3,Q4・・・スイッチング素子、
D1,D2・・・ダイオード、
C1,C2・・・コンデンサ、
TR1・・・トランジスタ、
R1,R2,R3,R4,R5,R8,R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15・・・抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流ランプ電流を高圧放電灯の一対の電極に供給して高圧放電灯を点灯させる場合に、前記ランプ電流の半周期の所定数分の1で電流パルスを発生させ、該電流パルスの極性を前記ランプ電流の極性と同一にするとともに、前記電流パルスをその発生した半周期の後の部分で前記ランプ電流に重畳させる高圧放電灯の点灯装置において、
前記一対の電極の温度差に基づいて、前記電流パルスの高さを非対称としたことを特徴とする高圧放電灯の点灯装置。
【請求項2】
交流ランプ電流を高圧放電灯の一対の電極に供給して高圧放電灯を点灯させる場合に、前記ランプ電流の半周期の所定数分の1で電流パルスを発生させ、該電流パルスの極性を前記ランプ電流の極性と同一にするとともに、前記電流パルスをその発生した半周期の後の部分で前記ランプ電流に重畳させる高圧放電灯の点灯装置において、
前記一対の電極の温度差に基づいて、前記電流パルスの幅を異ならせてなることを特徴とする高圧放電灯の点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−286460(P2006−286460A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106257(P2005−106257)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】