説明

高圧放電灯点灯装置

【課題】スイッチング素子の損失を増やすことなくサージ電圧を低減する。
【解決手段】直流電源Vbと一次巻線T1の一端を接続し他端をFETQ1のドレインに接続しソースは基準電位点に接続する。二次巻線T2はランプ16点灯用電圧に昇圧されダイオードD3とコンデンサC5で整流し、DC/AC変換回路15に出力する。三次巻線T3はイグナイタ14の動作に必要な電圧に昇圧する。昇圧電圧はダイオードD2とコンデンサC4により整流してイグナイタ14に供給する。SWをオンすると直流電圧Vbが駆動制御回路12、DC/AC変換駆動回路13に供給されDC/DC変換回路10のスイッチング動作で二次巻線T2、三次巻線T3に電圧が発生しイグナイタ14のパルス電圧で放電灯16を放電破壊しDC/AC変換回路15の電力で点灯させる。サージ電圧低減部11は、DC/DC変換回路10のスイッチング動作時に発生するサージ電圧の低減を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高圧放電灯を始動点灯する放電灯点灯装置、直流電源を電圧変換して所望の電圧に変換する高圧放電灯点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトランスの一次側をスイッチングして昇圧された直流電圧を出力するDC/DC変換回路では、スイッチング素子がオフしたときにトランスの一次巻線の漏れインダクタンスにより発生するサージ電圧を低減するために、トランスの一次巻線と並列にコンデンサ、抵抗、ダイオードで構成するリセット回路を設けている。また、スイッチング素子に印加するサージ電圧を部品規格以内に低減するためコンデンサと抵抗等によるスナバ回路がスイッチング素子と並列に接続される。一例としてトランスの一次と二次の間にダイオードを接続し、二次巻線の両端にコンデンサを接続してサージエネルギーをバイパスする回路構成が知られている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2002−159171公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、スイッチング素子がオフしたとき発生するサージ電圧はトランスと並列に接続されたリセット回路とスイッチング素子と並列に接続したスナバ回路で吸収される。スイッチング素子の電圧規格以内にするためスナバ回路のコンデンサは容量を大きく、抵抗の値は小さくしなければならない。このため、スイッチングスピードが遅れて損失が大きくなる欠点がある。
【0004】
この発明の目的は、スイッチング素子の損失を増やすことなくサージ電圧を低減することが可能な高圧放電灯点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の高圧放電灯点灯装置は、直流電源の電圧を所望の電圧に昇圧させるDC/DC変換回路と、前記DC/DC変換回路で得られた直流電圧を、交流電圧に変換するDC/AC変換回路と、前記DC/AC変換回路に基づき生成された交流電圧を供給し、高圧放電灯の点灯に必要な電力を供給するとともに、前記高圧放電灯の始動に必要な所望のパルス電圧を発生させるイグナイタと、前記DC/DC変換回路を構成する所望の電圧に昇圧させるトランスの一次巻線と二次巻線間に接続したコンデンサとインダクタの直列回路とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、スイッチング素子の損失を増やすことなくサージ電圧を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、この発明の高圧放電灯点灯装置の一実施形態について説明するための回路構成図である。
【0008】
図1において、Vbは直流電源であり、10は、直流電源Vbの電圧を所定の値に昇圧させるDC−DC変換器である。直流電源Vbの正極は、スイッチSWを介してDC−DC変換回路10のトランスTRの一次巻線T1の一端に接続するとともに、直列接続されたビーズインダクタL1とコンデンサC1で構成されるサージ電圧低減部11を介して、二次巻線T2、三次巻線T3の一端にそれぞれ接続する。また、一次巻線T1の一端は、図示極性で接続されたコイルL2を介して駆動制御回路12とDC/AC変換駆動回路13にそれぞれ接続する。一次巻線T1の他端は、スイッチング用のN(Negative)チャネルMOS(Metal Oxide Semiconductor)型FET(Field Effect Transistor)Q1のドレインに接続する。また、一次巻線T1の両端には、並列接続された抵抗R1とコンデンサC2に、図示極性で接続されたダイオードD1で構成されるリセット回路9を直列接続する。
【0009】
FETQ1のソースは抵抗R2を介して基準電位点に接続する。また、FETQ1のゲートは抵抗R3を介して基準電位点に接続する。FETQ1のゲートには抵抗R4を介してFETQ1を駆動する信号を生成する駆動制御回路12からの駆動信号を供給する。
【0010】
三次巻線T3の他端は、整流用のダイオードD2、抵抗R5を介してイグナイタ14用の電源として接続する。また、二次巻線T2、三次巻線T3の接続点は、図示極性で接続された整流用のダイオードD3を介してDC/AC変換回路15用の電源として出力端子Voから供給する。ダイオードD3には、コイルL3とコンデンサC3の直列回路を並列接続する。ダイオードD2,D3のカソード間にはコンデンサC4を接続する。
【0011】
出力端子Voと基準電位点間には直列接続された抵抗R6,R7を接続する。抵抗R6,R7の接続点に発生する電圧は、駆動制御回路12に供給する。また、基準電位点から抵抗R8を介して駆動制御回路12に供給するとともにDC/AC変換回路15に供給する。
【0012】
DC/AC変換駆動回路13は、DC/DC変換回路10で生成された直流電圧を、交流電圧に変換するフルブリッジ構成されるDC/AC変換回路15のスイッチング素子を駆動する駆動信号を供給する。イグナイタ14は放電灯16を始動させるパルス電圧を供給する。
【0013】
次に、図1の回路動作について図2の波形図とともに説明する。
スイッチSWをオンすると、コイルL2を介して駆動制御回路12、DC/AC変換駆動回路13に電源Vbの直流電圧がそれぞれ供給される。これにより駆動制御回路12が動作し、駆動制御回路12から図2(a)に示すFETQ1のゲートをオンオフ制御させる電圧VGSを供給する。FETQ1のオンオフに基づきドレイン・ソース間に、図2(b)に示す電圧VDSとドレインに流れるドレイン電流Id(図2(c))を発生させ、トランスTRに供給する。トランスTRでは一次巻線T1の巻線数と二次、三次巻線T2,T3の両端にそれぞれの巻線比に応じた交流電圧を生成する。
【0014】
三次巻線T3の両端に発生された交流電圧は、ダイオードD2、コンデンサC4により整流された例えば1KVの直流電圧を得て、イグナイタ15の入力端子Tcに供給する。
【0015】
二次巻線T2で発生された交流電圧は、ダイオードD3のアノード・カソード間に、図2(d)に示す電圧Vd3を得るとともに、ダイオードD3に図2(e)に示す電流Id3が流れる。電圧Vd3はコンデンサC5で平滑され、DC/DC変換回路10の出力として出力端子Voに、図2(f)の例えば400Vの直流電圧Vc5を出力し、これをDC/AC変換回路15に供給する。ダイオードD3に並列接続されたコイルL3、コンデンサC3の直列回路は、FETQ1の出力に基づいてスパイク電圧を抑制するためのものである。
【0016】
イグナイタ15では、例えば25KVの高電圧を生成して放電灯16に供給し、グロー放電させる。
【0017】
放電灯16がグロー放電からアーク放電に変化すると、放電灯16のインピーダンスは小さくなる。これにより、DC/DC変換回路10から出力される直流電圧は、例えば400Vから45V程度に低下し、この出力電圧を抵抗R6,R7で分割された電圧Vdを駆動制御回路12で演算し、分割電圧Vdと抵抗R8に流れる電流Ir8を掛け算した値となる駆動出力を、FETQ1のゲートに供給し、FETQ1のゲート電圧のオンデューティを制御するフィードバックを行い、出力電力が一定となるように制御する。
【0018】
FETQ1がオフのとき、ダイオードD1のアノードの電圧が高くなり、ダイオードD1を介してコンデンサC2に電圧がチャージされる。FETQ1がオンしたときダイオードD1のアノードの電圧が低くなり、コンデンサC2にチャージされた電圧を抵抗R1に吸収させる。ダイオードD1は、コンデンサC2にチャージされた電圧をFETQ1側に流れないようにする役割を果たす。このため、余分な電流がFETQ1に流れることによる効率低下を防止することができる。
【0019】
ここで、図1の要部の波形を示した図3とサージ電圧低減部11を備えた図1のトランスTRの一次巻線T1、二次巻線T2、FETQ1を等価的に示した図4を参照しながら、FETQ1がオンオフを繰り返し、オフする毎にトランスTRの漏れインダクタンスにより発生するサージ電圧の低減について説明する。
【0020】
図3(a)は、トランスTRの二次巻線T2と三次巻線T3の接続点からサージ電圧低減部11に電流I11の波形を、図3(b)はサージ電圧低減部11にコンデンサC1のみある場合の電流波形を示したものである。
【0021】
図4のL1l、L2lはそれぞれトランスの一次巻線T1、二次巻線T2の漏れインダクタンスを示し、Lは一次巻線T1と二次巻線T2の合成インダクタンスである。FETQ1がオフのときに漏れインダクタンスL1lに流れる電流をi1とした場合、漏れインダクタンスL1lに蓄えられエネルギーPL1lは、1/2×L1l×i1で表され、図2(b)に示すようにFETQ1のドレイン・ソース間電圧Vdsの立ち上がり電圧にサージ電圧を発生させる。
【0022】
このサージ電圧は、サージ電圧低減部11のコンデンサC1で吸収され、図3(b)に示すようにサージ電圧のレベルは減少する。しかし、図3(a)に示すようにサージ電圧発生に伴う高周波成分Hfのノイズが発生する。この高周波成分HfをコンデンサC1に直列接続されたコイルL1で吸収し、図3(a)に示すように高周波成分Hfが低減された波形を生成する。この結果FETQ1のオンオフに基づきドレイン・ソース間には、図2(b’)に示すサージ電圧やこのサージ電圧に尾を引く格好で発生した高周波成分Hfが低減された電圧VDSを得ることができる。
【0023】
このように、トランスTRの一次巻線T1と二次巻線T2および三次巻線T3の接続点との間に、インダクタL1とコンデンサC1から構成されるサージ電圧低減部11を接続したことにより、FETQ1がオン/オフを繰り返し、オフする毎にトランスTRの漏れインダクタンスにより発生するサージ電圧は、サージ電圧低減部11によるサージ電圧低減効果で低減させることができる。
【0024】
この発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、例えばトランスTRの二次、三次巻線T2,T3の巻き方向を図1とはそれぞれ逆にしてもよい。この場合、ダイオードD3のオンタイミングの動作が逆になる違いはあるものの、同じようにFETQ1に過大なサージ電圧が印加されることを防止ことが可能となる。また、DC/AC変換回路15はフルブリッジ構成のものとしたが、ハーフブリッジのものであっても、同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施形態について説明するための回路構成図。
【図2】図1の動作を説明するための波形図。
【図3】図1の動作を説明するための波形図。
【図4】図1の効果について説明するための等価回路図。
【符号の説明】
【0026】
Vb 直流電源
L1 インダクタ
C1 コンデンサ
TR トランス
T1 一次巻線
T2 二次巻線
T3 三次巻線
10 DC−DC変換器
11 サージ電圧低減部
12 駆動制御回路
13 DC/AC変換駆動回路
14 イグナイタ
15 DC/AC変換回路
16 放電灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の電圧を所望の電圧に昇圧させるDC/DC変換回路と、
前記DC/DC変換回路で得られた直流電圧を、交流電圧に変換するDC/AC変換回路と、
前記DC/AC変換回路に基づき生成された交流電圧を供給し、高圧放電灯の点灯に必要な電力を供給するとともに、前記高圧放電灯の始動に必要な所望のパルス電圧を発生させるイグナイタと、
前記DC/DC変換回路を構成する所望の電圧に昇圧させるトランスの一次巻線と二次巻線間に接続したコンデンサとインダクタの直列回路とを具備したことを特徴とする高圧放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−5077(P2007−5077A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182100(P2005−182100)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】