説明

高圧電力ケーブルの劣化診断方法及び劣化診断用装置

【課題】 水トリー劣化に起因する微弱な高調波電流を検出する。
【解決手段】 三相一括による電流測定で高圧電力ケーブル1を流れる高調波電流が重畳された零相電流と相関する物理量を得る物理量検出手段2と、物理量検出手段2により得られた物理量のうち高圧電力ケーブル1を流れる零相電流と相関する成分を除く零相電流成分除去手段3と、零相電流成分除去手段3により高圧電力ケーブル1を流れる電流の零相電流と相関する成分を除かれた物理量に基づいて高圧電力ケーブル1を流れる高調波電流を求める電流測定手段4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧電力ケーブルの劣化診断方法及び劣化診断用装置に関する。さらに詳述すると、本発明は、水トリー等の高圧電力ケーブルの劣化に起因する微弱な高調波電流を検出して高圧電力ケーブルの劣化状態を診断する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧の高圧電力ケーブル線路においては、布設および保守管理の容易等から架橋ポリエチレン絶縁高圧電力ケーブル(以下、CVケーブルという)が主に使用されているが、このCVケーブルには、水トリーによる絶縁劣化の問題がある。水トリーとは、CVケーブルを水に浸した状態にしておくと、その水が、電界の影響を受けて、樹木が成長するような形で、そのケーブルの絶縁物内部に進展し、絶縁破壊を起こす現象である。この絶縁劣化現象は、ケーブル線路を保守管理する上で重要な診断事項となる。
【0003】
水トリー劣化したCVケーブルに電圧を印加すると、高調波電流、特に3倍高調波電流(3次高調波電流)が流れることが知られている。そこで、従来技術では、CVケーブルを電力系統から切り離したオフラインの状態で、当該CVケーブルに電圧を印加して、3倍高調波電流成分の有無を調べて、当該CVケーブルが水トリー劣化しているかどうかを診断している。
また、活線の状態で水トリー劣化を診断可能とする手法として、ファラデー効果を発現する光ファイバーを用いて、高圧電力ケーブルを流れる負荷電流(100A〜300A)とそれを基本電流とする高調波とに相関する物理量を得て、それが電気信号に変換される前に、電力ケーブルの劣化診断に不必要な負荷電流に基づく成分をキャンセルすることにより、基本波電流たる負荷電流よりも極めて微弱な高調波電流(300Aの負荷電流に対して600μA程度)に基づく電気信号のみを5桁程度のダイナクックレンジで得ることができるようにしたものが提案されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−85479
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のCVケーブルの水トリー劣化診断は、CVケーブルを電力系統から切り離したオフラインの状態で行われており、稼動状態(即ちオンライン)にあるCVケーブルの水トリー劣化診断は、実現されていない。これは、負荷電流と比較して、高調波電流が極めて微小であることが原因と考えられる。例えば300Aの負荷電流に含まれ得る3倍高調波電流は600μA程度である。そうすると、3倍高調波電流を検出する電流センサには、6桁のダイナミックレンジが求められるが、従来の電流センサを用いて6桁のダイナミックレンジを実現することは困難である。従って、微小な高調波電流を測定するために、単純に電流センサの感度を高めると、高調波電流と比較して極めて大きい負荷電流の値によって電流センサが飽和(オーバフロー、サチレーション)してしまう。
また、特許文献1の診断方法においても、負荷電流とそれを基本波とする高調波を検出対象とするため、診断が実現可能な5桁程度のダイナクックレンジが必要とされる程度には改善されたが、未だ十分なものとはいえず、さらなる改良が求められる。
【0006】
そこで本発明は、稼動状態にある高圧電力ケーブル(活線)に対しても、水トリー等の高圧電力ケーブルの劣化に起因する微弱な高調波電流を検出できる劣化診断方法及び劣化診断用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の高圧電力ケーブルの劣化診断方法は、三相一括による電流測定で高圧電力ケーブルを流れる電流と相関する物理量を得て、当該得られた物理量のうち高圧電力ケーブルを流れる零相電流と相関する成分を除き、当該除かれた後の物理量に基づいて零相電流に重畳する高調波電流を求め、当該高調波電流の大きさに基づいて高圧電力ケーブルの劣化を診断するようにしている。
【0008】
また、請求項2記載の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置は、高圧電力ケーブルを流れる電流と相関する物理量を検出する物理量検出手段と、物理量検出手段により検出された物理量のうち高圧電力ケーブルを流れる零相電流と相関する成分を除く零相電流成分除去手段と、零相電流成分除去手段により高圧電力ケーブルを流れる電流の零相電流と相関する成分を除かれた物理量に基づいて高圧電力ケーブルを流れる高調波電流を求める電流測定手段とを有するようにしている。
【0009】
三相の高圧電力ケーブルの各線にはそれぞれ大容量の負荷電流が流れているが、各線間の負荷電流の間には各々120°の位相差があるため、三相一括で電流測定すると互いに相殺しあう。理想的には電流は0となるが、現実には振幅・位相差に若干のずれが生ずるため、僅かな零相電流が流れる。この零相電流は、各線を流れる負荷電流に比べて遙かに小さく、例えば0.1A〜10A程度である。そこで、三相一括による電流測定で高圧電力ケーブルに流れる電流(零相電流とこれに重畳する高調波電流)に相関する物理量を測定してから、この物理量を電気信号に変換する前に、高圧電力ケーブルの劣化診断に不必要な零相電流に基づく成分をキャンセルする。これにより、零相電流と比較して極めて微弱な高調波電流に基づく電気信号のみを得ることができる。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置において、物理量検出手段は、光源と、光源が発生する光を伝送し且つ高圧電力ケーブルを流れる電流によってファラデー効果を発現する光伝送媒体とを有し、光伝送媒体は、高圧電力ケーブルを流れる電流によって光伝送媒体を通る光の偏光面が回転するように配置され、零相電流成分除去手段は、補償用電流を発生する補償用電流発生手段と、補償用電流が流れる補償用導線とを有し、補償用導線は、光伝送媒体を通る光の偏光面の回転を、補償用電流によって高圧電力ケーブルを流れる零相電流と相関する分だけ戻すように配置され、電流測定手段は、光伝送媒体を通る光の偏光面の回転角に基づいた電気信号を出力する手段を有するようにしている。
【0011】
したがって、光源から照射され光伝送媒体内を通過する光の偏光面は、高調波電流が重畳された零相電流の影響を受けてファラデー効果により回転するが、補償用電流が補償用導線を流れることにより、零相電流に相当する分だけ逆回転する。したがって、電流測定手段に入力される光の偏光面の回転角は、零相電流に相関する分はキャンセルされ、高調波電流に相関するもののみとなる。これにより、零相電流と比較して極めて微弱な高調波電流に基づく電気信号のみを得ることができる。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、請求項2記載の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置において、物理量検出手段は、高圧電力ケーブルを囲うように配置され尚且つ高圧電力ケーブルを流れる電流によって発生する磁界を検出するものであり、零相電流成分除去手段は、補償用電流を発生する補償用電流発生手段と、補償用電流が流れる補償用導線とを有し、補償用導線は、高圧電力ケーブルを流れる電流に起因して物理量検出手段で検出された磁界を、補償用電流によって高圧電力ケーブルを流れる零相電流と相関する分だけ打ち消すように物理量検出手段に巻き回され、電流測定手段は、物理量検出手段で検出された磁界の大きさに基づいた電気信号を出力する手段を有するようにしている。
【0013】
この場合、高圧電力ケーブルを流れる高調波電流が重畳された零相電流の影響を受けて発生する磁界が、物理量検出手段により検出される。一方、補償用電流が補償用導線を流れることによって、高圧電力ケーブルを流れる電流に起因して物理量検出手段で検出された磁界のうち、高圧電力ケーブルを流れる零相電流と相関する分だけがキャンセルされる。したがって、電流測定手段では、高圧電力ケーブルを流れる高調波電流のみに起因して生じた磁界に応じた電気信号が出力される。これにより、零相電流と比較して極めて微弱な高調波電流に基づく電気信号のみを得ることができる。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、請求項3または4に記載の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置において、補償用電流発生手段は、高圧電力ケーブルを流れる電流と相関する物理量を検出して当該物理量に基づいた電気信号を出力する電気信号生成手段と、電気信号生成手段により得られた電気信号のうち目的とする周波数成分を抽出する手段と、電気信号生成手段により得られた電気信号の位相および振幅を調節する手段とを有するものとしている。したがって、電気信号生成手段では、高圧電力ケーブルを流れる電流に対応した電気信号を出力する。この電気信号は、目的とする周波数成分を抽出され、位相が適正化され、振幅(ゲイン)が適正化されて、補償用電流として調整される。
【0015】
また、請求項6記載の発明は、請求項3または4に記載の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置において、補償用電流発生手段は、電流測定手段において出力される電気信号を取得する電気信号取得手段と、電気信号取得手段により得られた電気信号のうち目的とする周波数成分を抽出する手段と、電気信号取得手段により得られた電気信号の位相および振幅を調節する手段とを有するものとしている。この場合、電流測定手段が出力する電気信号を利用して補償用電流を生成し、ネガティブフィードバックをかける構成となる。
【0016】
また、請求項7記載の発明は、請求項2から6のいずれかに記載の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置において、電流測定手段により高圧電力ケーブルを流れる3倍高調波電流を求めるようにしている。したがって、例えば、高圧電力ケーブルの任意の区間ごと(例えば高圧電力ケーブルの接続部ごと)に、3倍高調波電流を測定し、区間の両端で測定された3倍高調波電流の差をとって、当該差の大きさに基づいて、当該区間において高圧電力ケーブルが水トリー劣化しているか否か診断できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の高圧電力ケーブルの劣化診断方法および装置によれば、三相の高圧電力ケーブルの各線を流れる負荷電流に比べて2桁ほど小さな零相電流をとし、しかもそれに重畳した微弱な高調波電流に基づく物理量のみを電気信号に変換して得ることができので、微弱な高調波電流に基づく電気信号を高感度で検出することができる。即ち、バックグラウンドとして大きな負荷電流が流れていても、検出対象となるのは負荷電流に比べて2桁ほど小さな零相電流とそれに重畳した微弱な高調波電流に相関する物理量であるため、4桁程度のダイナミックレンジの測定器により微弱な高調波電流を高感度で検出することが可能となる。しかも、高調波電流を検出するために、高圧電力ケーブルを電力系統から切り離す必要が無く、活線状態(即ちオンライン)にある高圧電力ケーブルの劣化診断が可能となる。このため、実用化するに十分に現実的なダイナミックレンジのオーダーとなり、高圧電力ケーブルの水トリーを活線状態で診断可能となった。そこで、例えば、地中に布設してしまう高圧電力ケーブルを、オンラインで常時または定期監視することも可能となる。
さらに、三相一括で測定するので、3本を捩って1本の高圧電力ケーブルとしている場合には、その束のまま測定できるため、線を1本1本分離する手間が省け、測定が楽になる。ここで、3本まとめた状態で三相一括で測定することから、そのうちのどれに水トリーがあるのか判別できるかどうかという点が不明となるが、これは発生位相に注目することで容易に判別できる。
【0018】
さらに、請求項3記載の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置によれば、鉄心等を用いた電流センサと比較して空間占有率を低減できる効果がある。また、光伝送媒体として常磁性体である光ファイバを採用することで、ファラデー回転(ファラデー効果による光の偏光面の回転)自体が飽和することがないので、検出感度を上げても、飽和(オーバフロー、サチレーション)の問題は生じない。
【0019】
また、請求項4記載の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置によれば、鉄心等を用いて安価に劣化診断用装置を構成できる。
【0020】
さらに、請求項5記載の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置によれば、フィードバックを構成しないため、信号処理に遅延を生じることなく、リアルタイムに近い処理が可能になる。
【0021】
さらに、請求項6記載の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置によれば、電流測定手段が出力する電気信号を利用して補償用電流を生成するので、電気信号生成手段を別途設ける必要がなく、コストや施工上で有利である。
【0022】
さらに、請求項7記載の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置によれば、3倍高調波電流の有無を調べることにより、高圧電力ケーブルの水トリー劣化の診断を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1に本発明の高圧電力ケーブルの劣化診断方法及び高圧電力ケーブルの劣化診断用装置の実施の一形態を示す。本発明の高圧電力ケーブルの劣化を診断する方法では、三相の高圧電力ケーブル1を流れる電流(零相電流とそれに重畳する高調波電流)と相関する物理量を三相一括による電流測定で得て、その物理量のうち高圧電力ケーブル1を流れる零相電流と相関する成分を除き、当該除かれた後の物理量に基づいて高圧電力ケーブル1を流れる高調波電流を求め、当該高調波電流の大きさに基づいて高圧電力ケーブル1の劣化を診断するようにしている。
【0025】
上記方法は、高圧電力ケーブル1の劣化診断用装置として装置化される。この高圧電力ケーブル1の劣化診断用装置は、三相一括による電流測定の際に高圧電力ケーブル1を流れる零相電流とそれに重畳する高調波電流と相関する物理量を検出する物理量検出手段2と、物理量検出手段2により検出された物理量のうち高圧電力ケーブル1を流れる零相電流と相関する成分を除く零相電流成分除去手段3と、零相電流成分除去手段3により高圧電力ケーブル1を流れる電流のうちの零相電流と相関する成分を除かれた物理量に基づいて高圧電力ケーブル1を流れる高調波電流を求める電流測定手段4とを有して構成される。
【0026】
水トリー劣化したCVケーブルには、高調波、中でも3倍高調波電流が流れることが知られている。従って、例えば、CVケーブルの任意の区間ごと(例えばCVケーブルの接続部ごと)に、3倍高調波電流を測定し、区間の両端で測定された3倍高調波電流の差をとって、当該差がゼロでなければ、或いは当該差の絶対値が一定値以上であれば、当該区間においてCVケーブルが水トリー劣化していると考えられる。本実施形態では、対象となる高圧電力ケーブルをCVケーブル1とし、対象となる劣化態様を水トリーとして、本発明をCVケーブル1の水トリー劣化診断方法及びCVケーブル1の水トリー劣化診断用装置として具現化する例について説明する。本実施形態では、電流測定手段4によりCVケーブル1を流れる3倍高調波電流を求めるようにしている。例えば本実施形態において、CVケーブル1の各線を流れる負荷電流の周波数は50Hzとした場合、三相一括による電流測定で検出される零相電流の周波数も50Hzであり、3倍高調波電流とは150Hzの周波数成分のみを有する電流成分のことを指す。
【0027】
本実施形態における物理量検出手段2は、光源5と、その光源5が発生する光を伝送し且つ高圧電力ケーブル1を流れる零相電流とそれに重畳する高調波電流によってファラデー効果を発現する光伝送媒体6とを有するものとしている。光源5は、特に限定されるものではなく、例えば半導体レーザなどの周知の光源を採用して良い。光伝送媒体6は、例えば光ファイバである。光伝送媒体6としての光ファイバは、高圧電力ケーブル1を流れる零相電流とそれに重畳する高調波電流によって光伝送媒体6を通る光の偏光面が回転するように、高圧電力ケーブル1に巻き付けるように配置される。光伝送媒体6としての光ファイバを高圧電力ケーブル1(三相一括)に巻き付けることにより、周回積分したことになり、高圧電力ケーブル1を流れる零相電流とそれに重畳する高調波電流に応じた信号を検出することができる。例えば本実施形態では、電流測定手段4の感度を高めるために、光伝送媒体6としての光ファイバを高圧電力ケーブル1の周囲に複数回巻き回すようにしている。
【0028】
本実施形態における零相電流成分除去手段3は、補償用電流を発生する補償用電流発生手段7と、補償用電流が流れる補償用導線8とを有するものとしている。補償用導線8は、光伝送媒体6を通る光の偏光面の回転を、補償用電流によって高圧電力ケーブル1を流れる零相電流と相関する分だけ戻すように、光伝送媒体6と直交するように配置される。ここで、本実施形態では、補償用電流を小さく抑える等のために、光伝送媒体6を補償用導線8の周囲に複数回巻き回すようにしている。尚、光伝送媒体6を補償用導線8の周囲に複数回巻き回すと共に、補償用導線8を更に光伝送媒体6に複数回巻き回すようにしても良い。また、光伝送媒体6を補償用導線8の周囲に巻き回さずに、補償用導線8を光伝送媒体6に複数回巻き回すようにしても良い。
【0029】
光伝送媒体6を高圧電力ケーブル1の周囲に巻き回す巻数、光伝送媒体6を補償用導線8の周囲に巻き回す巻数、補償用導線8を光伝送媒体6に巻き回す巻数、補償用電流の大きさは、高圧電力ケーブル1を流れる電流に起因する光伝送媒体6を通る光の偏光面の回転を、補償用電流によって、高圧電力ケーブル1を流れる零相電流と相関する分だけ戻すことができるように調整される。例えば、光伝送媒体6を高圧電力ケーブル1の周囲に巻き回す巻数n1と、光伝送媒体6を補償用導線8の周囲に巻き回す巻数n2と、補償用導線8を光伝送媒体6に巻き回す巻数n3と、高圧電力ケーブル1を流れる零相電流の大きさIと、補償用電流の大きさIとの関係は、次式が成立するように設定される。
【0030】
<数1>
×n=I×n×n
【0031】
また、光伝送媒体6を補償用導線8の周囲に巻き回す方向、補償用導線8を光伝送媒体6の周囲に巻き回す方向、補償用電流の方向は、高圧電力ケーブル1を流れる電流に起因する光伝送媒体6を通る光の偏光面の回転を、補償用電流によって、高圧電力ケーブル1を流れる零相電流と相関する分だけ戻すように、設定される。
【0032】
光伝送媒体6における光の進行方向の端は、電流測定手段4に接続される。この電流測定手段4は、光伝送媒体6を通る光の偏光面の回転角を検出し、当該回転角に基づいて電気信号を出力する光検出器9を有している。尚、この光検出器9には、ファラデー効果を利用した周知の電流計に用いられ、偏光ビームスプリッタ、偏光子、フォトダイオード等を備えるO/E(光・電気)変換回路など有して構成される周知の装置を採用して良い。また、本実施形態の電流測定手段4は、光検出器9より出力された電気信号を増幅する増幅器10と、光検出器9より出力された電気信号のうち目的とする周波数成分を抽出する手段11と、電気信号をデジタル化して記憶する記憶装置12とを更に有するようにしている。増幅器には、例えば周知のアンプ10を採用して良い。光検出器9より出力された電気信号のうち目的とする周波数成分を抽出する手段には、例えば本実施形態では、3倍高調波成分である150Hzを中心とする狭帯域のバンドパスフィルタ11を用いている。また、記憶装置12は、例えば図示しないが、周知のA−D変換器と、周知の書換可能なメモリとで構成される。
【0033】
また、本実施形態における補償用電流発生手段7は、高圧電力ケーブル1を流れる零相電流と相関する物理量を検出して当該物理量に基づいた電気信号を出力する電気信号生成手段13と、電気信号生成手段13により得られた電気信号のうち目的とする周波数成分を抽出する手段14と、電気信号生成手段13により得られた電気信号の位相および振幅を調節する手段15,16とを有するようにしている。
【0034】
電気信号生成手段13は、高圧電力ケーブル1を切断等することなく、稼動状態即ちオンラインの状態にある高圧電力ケーブル1を流れる零相電流に応じた電気信号を得ることができる手段である。この電気信号生成手段13の構成は、特に限定されるものではない。例えば、図示を省略するが、光源と、この光源が発生する光を伝送し且つ高圧電力ケーブル1を流れる零相電流によってファラデー効果を発現する光ファイバと、この光ファイバを通る光の偏光面の回転角に基づいて電気信号を出力する光検出器とを備えた周知のファイバ形電流計を、電気信号生成手段13として利用できる。また、図示を省略するが、高圧電力ケーブル1を囲うように配置されると共に開閉可能に構成される環状鉄心に、コイルを巻いて、当該コイルから電磁誘導に起因する電気信号を得る周知の鉄心型CTまたはクランプ電流計を、電気信号生成手段13として利用できる。さらに、図示を省略するが、高圧電力ケーブル1を囲うように配置されると共にギャップ(隙間)部が設けられている環状鉄心と、環状鉄心のギャップ部に配置されて環状鉄心内の磁束を測定するホール素子と、環状鉄心に巻き回されるコイルとを有し、環状鉄心中内に磁束が生じないように環状鉄心に巻き回されたコイルに流れる電流を調整する周知のクリップオン電流計を、電気信号生成手段13として利用できる。さらに、図示を省略するが、高圧電力ケーブル1を囲うように配置されると共にギャップ(隙間)部が設けられている環状鉄心と、環状鉄心のギャップ部に配置されて当該ギャップ部における磁界の強さに応じた光量の光信号を出力する光CTセンサと、この光信号を電気信号に変換するO/E(光・電気)変換回路等を有する周知のギャップ付鉄心形光CT(光電流変成器)を、電気信号生成手段13として利用できる。例えば本実施形態では、鉄心型CTを電気信号生成手段13として用いている。
【0035】
電気信号生成手段13により得られた電気信号のうち目的とする周波数成分を抽出する手段として、例えば本実施形態では、3倍高調波(本実施形態においては150Hz)よりも下の周波数を通過させるローパスフィルタ14を用いている。これにより、零相電流成分(本実施形態においては50Hz周波数成分)の電気信号を得るようにしている。但し、ローパスフィルタ14を用いるものに限定されず、零相電流成分の電気信号を得るために、既知または新規のフィルタを単独でまたは組み合わせて用いても良い。また、電気信号生成手段13により得られた電気信号の位相を調節する手段として、例えば本実施形態では、フェーズシフタ15を用いている。また、電気信号生成手段13により得られた電気信号の振幅(ゲイン)を調節する手段として、周知の増幅器(アンプ)16を用いている。本実施形態における補償用導線8は、補償用電流が流れる閉回路を構成するようにアンプ16に電気的に接続される。
【0036】
以上のように構成される高圧電力ケーブル1の劣化診断用装置によれば、次のようにして、高圧電力ケーブル1を流れる3倍高調波電流を検出することができる。ここで、高圧電力ケーブル1を流れる電流には、零相電流に3倍高調波電流が重畳されているとする。
【0037】
即ち、光源5から照射され光伝送媒体6内を通過する光の偏光面は、光伝送媒体6が高圧電力ケーブル1に巻き回されたコイル部17において、高圧電力ケーブル1を流れる零相電流とそれに重畳する3倍高調波電流の影響を受けてファラデー効果により回転する。
【0038】
一方、電気信号生成手段13では、高圧電力ケーブル1を流れる零相電流とそれに重畳する3倍高調波電流に対応した電気信号を出力する。この電気信号は、ローパスフィルタ14を通過することにより、3倍高調波以上の成分が除去される。更に、この電気信号は、フェーズシフタ15により位相が適正化され、アンプ16により振幅(ゲイン)も適正化され、これにより補償用電流が生成される。そして、この補償用電流は補償用導線8を流れる。
【0039】
光伝送媒体6が補償用導線8に巻き回されたコイル部18において、高圧電力ケーブル1を流れる零相電流とそれに重畳する3倍高調波電流の影響を受けて回転した光の偏光面が、零相電流に相当する分だけ逆回転する。したがって、光検出器9に入力される光の偏光面の回転角は、零相電流に相関する分はキャンセルされ、3倍高調波電流に相関するもののみとなる。光検出器9では、高圧電力ケーブル1を流れる3倍高調波電流に起因する光の偏光面の回転角が電気信号に変換される。光検出器9より出力される電気信号は、必要な検出感度を実現するために増幅器10で増幅され、バンドパスフィルタ11により3倍高調波成分以外の電気信号が除去され、デジタル化されて記憶装置12に記憶される。従って、記憶装置12に記憶された情報に基づいて、3倍高調波電流の有無を調べ、CVケーブル1が水トリー劣化しているかどうかを診断することができる。
【0040】
本実施形態の高圧電力ケーブル1の劣化診断方法及び高圧電力ケーブル1の劣化診断用装置によれば、高圧電力ケーブル1を流れる零相電流とそれに重畳する高調波電流とに相関する検出された物理量(本実施形態では光信号)について、電気信号に変換する前に、高圧電力ケーブル1の劣化診断に不必要な零相電流に基づく成分をキャンセルしている。従って、零相電流と比較しても微弱な高調波電流に基づく電気信号のみを得ることができ、微弱な高調波電流に基づく電気信号を高感度で検出することができる。また、光伝送媒体6として常磁性体である光ファイバを採用することで、ファラデー回転(ファラデー効果による光の偏光面の回転)自体が飽和することがないので、光伝送媒体6としての光ファイバを高圧電力ケーブル1に巻き回す回数を多くして検出感度を上げても、飽和(オーバフロー、サチレーション)の問題は生じない。即ち、バックグラウンドに大きな負荷電流が存在していても、微弱な高調波電流を高感度で検出することが可能となる。しかも、本発明の構成によれば、高調波電流を検出するために、高圧電力ケーブル1を電力系統から切り離す等の必要は無い。従って、稼動状態(即ちオンライン)にあるCVケーブル1の水トリー劣化診断が可能となる。例えば、地中に布設してしまうCVケーブル1を、オンラインで常時または定期監視することも可能となる。尚、三相一括で測定するので、3本を捩って1本の高圧電力ケーブルとしている場合(トリプレックスと呼ばれる)には、その束のまま測定できる。勿論、3本を捩っていない高圧電力ケーブルでもそのまま適用できることはいうまでもない。ここで、3本まとめた状態で三相一括で測定することから、そのうちのどれに水トリーがあるのか判別できるかどうかという点が不明となるが、これは発生位相に注目することで容易に判別できる。即ち、さらに、三相一括で測定するので、3本を捩って1本の高圧電力ケーブルとしている場合には、その束のまま測定できるため、線を1本1本分離する手間が省け、測定が楽になる。ここで、3本まとめた状態で三相一括で測定することから、そのうちのどれに水トリーがあるのか判別できるかどうかという点が不明となるが、これは発生位相に注目することで容易に判別できる。例えば、三倍高調波信号は劣化している高圧送電ケーブルの電圧と同位相で発生するため、検出された三倍高調波と各相の電圧を比較し、発生位相のそろっている相が水トリー劣化しているものと判別できる。より、具体的には、生波形が参照可能な場合はオシロスコープ上で見比べて発生位相を比較することにより判別できる。また、信号が微小でロックインアンプを使わざるを得ない場合には、どれか一相の電圧を参照信号としてロックインアンプに入れ(内部で3倍にし)、第三次高調波にロックインをかけると、参照信号との位相差が測定される。それが一致しているか、+120度か、−120度かで容易に判別できる。
【0041】
次に、図2を用いて、本発明の第2の実施形態について説明する。尚、図2中で、既に説明した実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0042】
本実施形態における物理量検出手段は、高圧電力ケーブル1を囲うように配置され尚且つ高圧電力ケーブル1を流れる電流によって発生する磁界を検出する物であり、例えば鉄心2’である。この鉄心2’は、例えば閉路を成す環状であり、開閉不能であっても良いが、高圧電力ケーブル1への取り付けが簡単であるように開閉可能であるものが好ましい。また、本実施形態における電流測定手段4は、物理量検出手段としての鉄心2’に生じた磁界の大きさに基づいた電気信号を出力する手段であり、例えば鉄心2’に巻回されたコイル23を有している。但し、物理量検出手段および電流測定手段4の構成は、本実施形態の例に限定されるものではない。例えば、図示しないが、物理量検出手段を、高圧電力ケーブル1を囲うように配置されると共にギャップ(隙間)部が設けられている環状鉄心とし、電流測定手段4を、環状鉄心のギャップ部に配置されて当該ギャップ部における磁界の強さに応じた光量の光信号を出力する光CTセンサと、光CTセンサが出力する光信号を電気信号に変換するO/E(光・電気)変換回路とを有するものとしても良い。また、本実施形態の電流測定手段4は、上述の実施形態と同様に、コイル23より出力された電気信号を増幅する増幅器10と、コイル23により出力された電気信号のうち目的とする周波数成分を抽出する手段(例えばバンドパスフィルタ)11と、電気信号をデジタル化して記憶する記憶装置12とを有するようにしている。
【0043】
零相電流成分除去手段3は、補償用電流を発生する補償用電流発生手段7と、補償用電流が流れる補償用導線8’とを有している。この補償用導線8’は、高圧電力ケーブル1を流れる電流に起因して鉄心2’で検出された磁界を、補償用電流によって高圧電力ケーブル1を流れる零相電流と相関する分だけ打ち消すように鉄心2’に巻き回されている。本実施形態では、補償用電流を小さく抑える等のために、補償用導線8’を鉄心2’に複数回巻き回すようにしている。
【0044】
補償用導線8’を鉄心2’に巻き回す巻数、補償用電流の大きさは、高圧電力ケーブル1を流れる電流に起因して鉄心2’で検出された磁界を、補償用電流によって高圧電力ケーブル1を流れる零相電流と相関する分だけ打ち消すように、調整される。例えば、補償用導線8’を鉄心2’に巻き回す巻数Nと、補償用電流の大きさIと、高圧電力ケーブル1を流れる零相電流の大きさIとの関係は、次式が成立するように設定される。
【0045】
<数2>
=I×N
【0046】
補償用電流発生手段7は、例えば、高圧電力ケーブル1を流れる電流と相関する物理量を検出して当該物理量に基づいた電気信号を出力する電気信号生成手段13と、電気信号生成手段13により得られた電気信号のうち目的とする周波数成分を抽出する手段(例えばローパスフィルタ)14と、電気信号生成手段13により得られた電気信号の位相および振幅を調節する手段(例えばフェーズシフタとアンプ)15,16とを有する上述の実施形態と同様の構成のものである。
【0047】
以上のように構成される高圧電力ケーブル1の劣化診断用装置によれば、次のようにして、高圧電力ケーブル1を流れる高調波電流、特に3倍高調波電流を検出することができる。ここで、高圧電力ケーブル1を流れる零相電流には3倍高調波電流が重畳されている。即ち、高圧電力ケーブル1を流れる零相電流とそれに重畳する3倍高調波電流の影響を受けて高圧電力ケーブル1の周囲に磁界が発生し、鉄心2’により当該磁界が検出(ピックアップ)される。一方、補償用電流発生手段7により補償用電流が生成され、この補償用電流が補償用導線8’を流れる。補償用電流が補償用導線8’を流れることによって、高圧電力ケーブル1を流れる零相電流とそれに重畳する高調波電流に起因して鉄心2’で検出された磁界のうち、高圧電力ケーブル1を流れる零相電流と相関する分だけがキャンセルされる。したがって、コイル23では、高圧電力ケーブル1を流れる3倍高調波電流に起因して生じた磁界に応じた電気信号が出力される。この電気信号は、必要な検出感度を実現するために増幅器10で増幅され、バンドパスフィルタ11により3倍高調波成分以外の電気信号が除去され、デジタル化されて記憶装置12に記憶される。従って、記憶装置12に記憶された情報に基づいて、3倍高調波電流の有無を調べて、CVケーブル1が水トリー劣化しているかどうかを診断することができる。
【0048】
本実施形態の高圧電力ケーブル1の劣化診断方法及び高圧電力ケーブル1の劣化診断用装置によれば、高圧電力ケーブル1を流れる零相電流とそれに重畳する高調波電流と相関する検出された物理量(本実施形態では磁気信号)について、電気信号に変換する前に、高圧電力ケーブル1の劣化診断に不必要な零相電流に基づく成分をキャンセルしている。従って、零相電流と比較して極めて微弱な高調波電流に基づく電気信号のみを得ることができ、微弱な高調波電流に基づく電気信号を高感度で検出することができる。磁気信号を電気信号に変換する前に、磁気信号の零相電流成分をキャンセルしているので、コイル23の巻数を多くしても、飽和(オーバフロー、サチレーション)の問題は生じない。即ち、バックグラウンドに大きな零相電流が存在していても、微弱な高調波電流を高感度で検出することが可能となる。しかも、本発明の構成によれば、高調波電流を検出するために、高圧電力ケーブル1を電力系統から切り離す等の必要は無い。従って、稼動状態(即ちオンライン)にあるCVケーブル1の水トリー劣化診断も可能となる。例えば、地中に布設してしまうCVケーブル1を、オンラインで常時または定期監視することも可能となる。
【0049】
次に、図3を用いて、本発明の第3の実施形態について説明する。尚、図3中で、既に説明した実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0050】
本実施形態における補償用電流発生手段7は、電流測定手段4において出力される電気信号を取得する電気信号取得手段24と、電気信号取得手段24により得られた電気信号のうち目的とする周波数成分を抽出する手段14と、電気信号取得手段24により得られた電気信号の位相および振幅を調節する手段15,16とを有するようにしている。
【0051】
電流測定手段4は、例えば第1の実施形態のおいて既に説明した光検出器9を有するものである。目的とする周波数成分を抽出する手段は、例えば既に説明したローパスフィルタ14である。電気信号の位相を調節する手段は、例えば既に説明したフェーズシフタ15である。電気信号の振幅を調節する手段は、例えば既に説明した増幅器(アンプ)16である。例えば本実施形態における電気信号取得手段24は、光検出器9とローパスフィルタ14とを電気的に接続する導線である。光検出器9は、増幅器10に対して電気信号を出力すると共に、補償用電流発生手段7の構成要素であるローパスフィルタ14に対しても電気信号を出力する。
【0052】
以上のように構成される高圧電力ケーブル1の劣化診断用装置では、電流測定手段4が出力する電気信号を利用して補償用電流を生成し、ネガティブフィードバックをかける構成となる。図1に示す高圧電力ケーブル1の劣化診断用装置のように、電気信号生成手段13を設ける必要がないので、コストや施工上で有利である。高圧電力ケーブル1を流れる高調波電流を検出する動作原理及び効果は、図1に示す高圧電力ケーブル1の劣化診断用装置と同様である。
【0053】
次に、図4を用いて、本発明の第4の実施形態について説明する。尚、図4中で、既に説明した実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0054】
本実施形態における補償用電流発生手段7は、電流測定手段4において出力される電気信号を取得する電気信号取得手段24と、電気信号取得手段24により得られた電気信号のうち目的とする周波数成分を抽出する手段14と、電気信号取得手段24により得られた電気信号の位相および振幅を調節する手段15,16とを有するようにしている。電流測定手段4は、例えば第2の実施形態のおいて既に説明したコイル23を有するものである。目的とする周波数成分を抽出する手段は、例えば既に説明したローパスフィルタ14である。電気信号の位相を調節する手段は、例えば既に説明したフェーズシフタ15である。電気信号の振幅を調節する手段は、例えば既に説明した増幅器(アンプ)16である。例えば本実施形態における電気信号取得手段24は、光検出器9とローパスフィルタ14とを電気的に接続する導線である。コイル23は、増幅器10に対して電気信号を出力すると共に、補償用電流発生手段7の構成要素であるローパスフィルタ14に対しても電気信号を出力する。
【0055】
以上のように構成される高圧電力ケーブル1の劣化診断用装置によれば、電流測定手段4が出力する電気信号を利用して補償用電流を生成し、ネガティブフィードバックをかける構成となる。図2に示す高圧電力ケーブル1の劣化診断用装置のように、電気信号生成手段13を設ける必要がないので、コストや施工上で有利である。高圧電力ケーブル1を流れる高調波電流を検出する動作原理及び効果は、図2に示す高圧電力ケーブル1の劣化診断用装置と同様である。
【0056】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本発明において対象となる劣化の態様は水トリーには必ずしも限らない。また、検出対象となる高調波電流は必ずしも3倍高調波電流には限らない。例えば、ファラデー効果を利用したセンサは応答周波数範囲が広いことに着目して、部分放電信号など他の劣化信号を同時に検出するようにしても良い。また、本発明において対象となる高圧電力ケーブル1は、CVケーブルに必ずしも限らない。本発明は、水トリー等の劣化に起因して微弱な高調波電流を生じ得る高圧電力ケーブル1に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置の実施の一形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置の他の実施形態を示す概略構成図である。
【図3】本発明の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置の更に他の実施形態を示す概略構成図である。
【図4】本発明の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置の更に他の実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0058】
1 CVケーブル(高圧電力ケーブル)
2 物理量検出手段
2’ 鉄心(物理量検出手段)
3 零相電流成分除去手段
4 電流測定手段
5 光源
6 光ファイバ(光伝送媒体)
7 補償用電流発生手段
8,8’ 補償用導線
9 光検出器(光の偏光面の回転角に基づいた電気信号を出力する手段)
13 電気信号生成手段
14 ローパスフィルタ(目的とする周波数成分を抽出する手段)
15 フェーズシフタ(位相を調節する手段)
16 アンプ(振幅を調節する手段)
23 コイル(磁界の大きさに基づいた電気信号を出力する手段)
24 電気信号取得手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相一括による電流測定で高圧電力ケーブルを流れる電流と相関する物理量を得て、当該得られた物理量のうち前記高圧電力ケーブルを流れる零相電流と相関する成分を除き、当該除かれた後の物理量に基づいて前記零相電流に重畳する高調波電流を求め、当該高調波電流の大きさに基づいて高圧電力ケーブルの劣化を診断する方法。
【請求項2】
高圧電力ケーブルを流れる電流と相関する物理量を検出する物理量検出手段と、前記物理量検出手段により検出された物理量のうち前記高圧電力ケーブルを流れる零相電流と相関する成分を除く零相電流成分除去手段と、前記零相電流成分除去手段により前記高圧電力ケーブルを流れる零相電流と相関する成分を除かれた物理量に基づいて前記高圧電力ケーブルを流れる高調波電流を求める電流測定手段とを有することを特徴とする高圧電力ケーブルの劣化診断用装置。
【請求項3】
前記物理量検出手段は、光源と、前記光源が発生する光を伝送し且つ前記高圧電力ケーブルを流れる電流によってファラデー効果を発現する光伝送媒体とを有し、前記光伝送媒体は、前記高圧電力ケーブルを流れる電流によって前記光伝送媒体を通る光の偏光面が回転するように配置され、前記零相電流成分除去手段は、補償用電流を発生する補償用電流発生手段と、前記補償用電流が流れる補償用導線とを有し、前記補償用導線は、前記光伝送媒体を通る光の偏光面の回転を、補償用電流によって前記高圧電力ケーブルを流れる零相電流と相関する分だけ戻すように配置され、前記電流測定手段は、前記光伝送媒体を通る光の偏光面の回転角に基づいた電気信号を出力する手段を有することを特徴とする請求項2記載の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置。
【請求項4】
前記物理量検出手段は、前記高圧電力ケーブルを囲うように配置され尚且つ前記高圧電力ケーブルを流れる電流によって発生する磁界を検出する物であり、前記零相電流成分除去手段は、補償用電流を発生する補償用電流発生手段と、前記補償用電流が流れる補償用導線とを有し、前記補償用導線は、前記高圧電力ケーブルを流れる電流に起因して前記物理量検出手段で検出された磁界を、補償用電流によって前記高圧電力ケーブルを流れる零相電流と相関する分だけ打ち消すように前記物理量検出手段に巻き回され、前記電流測定手段は、前記物理量検出手段で検出された磁界の大きさに基づいた電気信号を出力する手段を有することを特徴とする請求項2記載の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置。
【請求項5】
前記補償用電流発生手段は、高圧電力ケーブルを流れる電流と相関する物理量を検出して当該物理量に基づいた電気信号を出力する電気信号生成手段と、前記電気信号生成手段により得られた電気信号のうち目的とする周波数成分を抽出する手段と、前記電気信号生成手段により得られた電気信号の位相および振幅を調節する手段とを有することを特徴とする請求項3または4に記載の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置。
【請求項6】
前記補償用電流発生手段は、前記電流測定手段において出力される電気信号を取得する電気信号取得手段と、前記電気信号取得手段により得られた電気信号のうち目的とする周波数成分を抽出する手段と、前記電気信号取得手段により得られた電気信号の位相および振幅を調節する手段とを有することを特徴とする請求項3または4に記載の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置。
【請求項7】
前記電流測定手段により前記高圧電力ケーブルを流れる3倍高調波電流を求めるようにしたことを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の高圧電力ケーブルの劣化診断用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−205992(P2007−205992A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27395(P2006−27395)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【出願人】(000241957)北海道電力株式会社 (78)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(000242644)北陸電力株式会社 (112)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【Fターム(参考)】