説明

高官能性アミン化合物およびその使用法

別の典型的な実施形態では、アミン官能性硬化剤は少なくとも7個のアミン水素官能基(AHF)および少なくとも約50のアミン水素当量(AHEW)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般に、硬化剤として有用なアミン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシドを生成するに当たって利用されることの多い製造工程は、フィラメント・ワインディング、引き抜き成形、注入成形、樹脂トランスファー成形(RTM)、真空補助RTM(VARTM)、および湿式積層または真空バッグ法などである。
【0003】
ポリオキシアルキレンアミン、または時に「ポリエーテルアミン」と呼ばれるアミンは、柔軟性を向上させ、繊維強化複合材料製造時の作業時間を延長させるエポキシ系の硬化剤として有用である。前記「作業時間」とは、前記エポキシ樹脂の反応性成分が最初に互いに混合されてから、その混合物が加工に適さなくなるまでの時間と定義される。前記作業時間中は、前記樹脂または前記樹脂を含む物質は、流し込むことができ、柔軟性があり、成形しやすく、またはその他鋳造できる形態にとどまる。
【0004】
ジオールおよびトリオールを基本としたポリエーテルアミンなど、および商品名JEFFAMINE(R)アミンなどの商品を含む低官能性ポリエーテルアミンが、エポキシ系硬化剤として利用されてきた。これらの低官能性アミンは、分子量が大きくなるにつれ、主にビスフェノールAのジグリシジル・エーテルを含む樹脂など、標準的な液体エポキシ樹脂の重合に用いる場合のガラス転移温度(Tg)が低くなる。低官能性ポリエーテルアミンの分子量が大きくなると、硬化中に表面が大気に触れた場合の望ましくないゲル化時間の延長、および前記アミンと二酸化炭素および水との反応などの関連する問題が生じる。この接触により表面が油状になる現象は、「アミンブラッシング」と呼ばれることが多い。
【0005】
他方、高官能性低分子量アミンは、反応基が高濃度となるため、ゲル化時間が短縮され、発熱温度が高くなる。発熱温度が高くなると、厚い部分で熱劣化が生じるため、成形される部分の断面の厚さに限界が生じる。そのような熱劣化は炭化として現われるか、望ましくない機械的性質が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
特定の実施形態では、アミン組成物は下記構造を有する:
【化1】

式中、平均して0.0w+x+y+z25であり、各Rは独立して水素、メチル、エチル、プロピル、およびブチルから成る群から選択することができる。
【0007】
別の典型的な実施形態では、アミン官能性硬化剤は少なくとも7個のアミン水素官能基(AHF)および少なくとも約50のアミン水素当量(AHEW)を有する。
【0008】
さらなる典型的な実施形態では、アミン官能性硬化剤は少なくとも5個のアミン水素官能基(AHF)および約115以上、約400以下のアミン水素当量(AHEW)を有する。
【0009】
さらなる実施形態では、アミン官能性硬化剤は少なくとも5個のアミン水素官能基(AHF)および約700以上、約2900以下の分子量(MW)を有する。
【0010】
別の典型的な実施形態では、アミン官能性硬化剤は少なくとも5個のアミン水素官能基(AHF)および式:AMW2000−222・AHFおよびAMW500・AHFに一致する平均分子量を有する。
【0011】
さらなる典型的な実施形態では、アミン官能性硬化剤は少なくとも7個のアミン水素官能基および約700以上、約5600以下の分子量(MW)を有する。
【0012】
さらなる実施形態では、硬化エポキシ樹脂の調製法は、上記のアミン官能性硬化剤のいずれか1つに沿ったアミン組成物または複数のアミン組成物を提供する工程、多官能性エポキシ樹脂を提供する工程、および前記多官能性エポキシ樹脂とポリアミン組成物とを互いに接触させる工程を含む。
【0013】
別の典型的な実施形態では、ポリ尿素の調製法は、有機ポリイソシアネートを提供する工程、上記アミン組成物または上記アミン官能性硬化剤のいずれか1つに沿ったアミン組成物を提供する工程、および前記有機ポリイソシアネートと上記ポリアミン組成物とを互いに接触させる工程を含む。
【詳細な説明】
【0014】
典型的な実施形態では、本開示は少なくとも4個の水酸基を有するポリオールまたは多価アルコールに基づき、エポキシ硬化剤またはポリ尿素を形成するための併用反応物質として有用なアミン化合物に関する。特定の実施形態では、前記アミン化合物はアルコキシル化ペンタエリスリトールまたはアルコキシル化ジペンタエリスリトールを基本としている。例えば、ペンタエリスリトールとエチレン、プロピレン、またはブチレンオキシドとの反応生成物などの四官能性ポリオールは還元的にアミン化し、8個以上の官能基を有するエポキシ硬化剤を提供することができる。一例として、前記アミン化合物は硬化生成物に望ましい機械的性質を提供することに加え、望ましい反応性および加工特性を提供する。
【0015】
典型的な実施形態では、前記アミン化合物は多数のアミン水素官能基(AHF)を有する。アミン水素官能基(AHF)は、前記アミン化合物の各第1級または第2級アミン窒素原子に結合した水素数の合計と定義される。特に、前記アミン化合物の各第1級アミンは前記アミン水素官能基(AHF)に2個分貢献し、前記アミン化合物の各第2級アミンは前記アミン水素官能基(AHF)に1個分貢献し、前記アミン化合物の各第3級アミンは前記アミン水素官能基(AHF)に0個分貢献する。従って、例えば4個の第1級アミン基を含むアミン化合物は8個のアミン水素官能基(AHF)を有する。別の例では、3個の第1級アミン基を有するアミン化合物は6個のアミン水素官能基(AHF)を有する。さらなる例では、3個の第1級アミン基と1個の第2級アミン基を有するアミン化合物は7個のアミン水素官能基(AHF)を有する。例えば、前記アミン化合物のアミン水素官能基(AHF)は、1若しくはそれ以上の第1級アミン基を第2級アミン基に変換することで変化させることができる。
【0016】
特定の実施形態では、前記アミン化合物は少なくとも5個のアミン水素官能基(AHF)を有する。さらに詳しくは、前記アミン化合物は、少なくとも7個、さらには少なくとも8個など、少なくとも6個のアミン水素官能基(AHF)を有することができる。典型的な実施形態では、前記アミン水素官能基(AHF)は13個以下など、14個以下である。
【0017】
前記アミン化合物は、さらにアミン水素当量(AHEW)で特徴付けられる。前記アミン水素当量(AHEW)は、前記アミン化合物の平均分子量を前記アミン水素官能基(AHF)で割ったものと定義される。典型的な実施形態では、前記アミン水素当量(AHEW)は、約70以上、約115以上、またはさらに約120以上など、約50以上とすることができる。さらなる例では、前記アミン水素当量(AHEW)は約400以下とすることができる。例えば、前記アミン水素当量(AHEW)は約300以下、約200以下、またはさらに約150以下など、約350以下とすることができる。特に、前記アミン化合物は約115〜約400の範囲、さらに約115〜約150の範囲など、約50〜約400の範囲のアミン水素当量(AHEW)を有することができる。特に、前記アミン化合物は5個以上の官能基を有し、少なくとも50のAHEWを有する。
【0018】
さらに、前記アミン化合物は約670以上、約700以上、またはさらに約800以上など、約600以上の平均分子量を有することができる。前記アミン化合物の平均分子量は約5600以下とすることができる。例えば、前記平均分子量は約2900以下、約2000以下、またはさらに約1500以下など、約4800以下とすることができる。特
に、前記平均分子量は約700〜約4800、またはさらに約800〜約1500など、約600〜約5600の範囲とすることができる。
【0019】
特に、望ましい平均分子量は、様々な応用分野において、少なくとも一部は前記アミン水素官能基(AHF)と関連付けることができる。特定の実施形態では、前記アミン化合物の望ましい平均分子量(AMW)は前記アミン水素官能基(AHF)の関数である。例えば、前記アミン化合物のAMWは式:AMW2000−222・AHFおよびAMW0により、下限を設定することができる。別の例では、前記アミン化合物のAMWは式:AMW<400・AHFにより、上限を設定することができる。
【0020】
高官能性の出発原料から生成されるアミンのAHEWを変化させるため、オキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはブチレンオキシド)の追加を制御することで、前記出発原料のポリオールの分子量を調節することができる。ブチレンオキシドの反応により前記ポリオール鎖を終止させると、最終生成物のアミンの立体障害が大きくなる可能性がある。従って、そのような出発原料から調製したアミンの反応性は、プロピレンオキシドを用いて前記ポリオール出発原料の末端を終止させた場合に得られるアミンの反応性よりも著しく低い。前記末端の終止にエチレンオキシドを使用すると立体障害がさらに低くなるため、最終的なアミンの反応性が高くなる。さらに、エチレンオキシドでキャップしたポリオールから生成したアミンの反応性が高くなると、アミン化の工程中にそのようなアミンが部分的に縮合するため、前記出発原料から通常理解される官能性よりもさらに高くなる。一例では、エチレンオキシドで前記出発原料のポリオールを部分的にキャップする方法を戦略として利用し、前記硬化剤の平均分子官能性を増加させることができるが、選択した量のカップリングが終了すると、さらに遅く反応する硬化剤がまだ得られる。
【0021】
特定の例では、前記アミン化合物がアルコキシル化ポリオール化合物から生成され、前記ポリオール化合物は少なくとも約4個の水酸基を有する。前記アミン化合物の生成に出発原料として利用できるポリオールの例には、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジ−ペンタエリスリトール、およびそのアルコキシレート単独または互いの混合物が含まれる。代わりに、マンニッヒポリオール、アミンポリオール、スクロース/グリコールポリオール、スクロース/グリセリンポリオール、スクロース/アミンポリオール、ソルビトールポリオール、またはそのいずれかの組み合わせなどの高官能性ポリオールを利用することもできる。
【0022】
前記ポリオールをアルコキシル化し、分子量を増加させることができるため、最終アミンのアミン水素当量(AHEW)を操作することができる。例えば、ポリオールまたはそのアルコキシレートは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、またはそのいずれかの組み合わせによってアルコキシル化することができる。特に、異なる種を用いて連続的にアルコキシル化することにより、前記最終アミン化合物に望ましい性質を提供することができる。例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを用いてアルコキシル化を行った後、ブチレンオキシドを用いてアルコキシル化することにより、これらのポリオールから生成されるアミン化合物の反応性に影響する立体障害を提供することができる。別の例では、プロピレンオキシドにより連続的にアルコキシル化した後、エチレンオキシドでアルコキシル化することにより、最終アミン化合物の反応性を向上させることができる。アルコキシル化の条件には、温度範囲90〜160℃、圧力範囲40〜100psiでオキシドの反応に十分な時間、アルコール開始剤をオキシドおよび触媒と接触させる工程を含むことができる。
【0023】
アルコキシル化ポリオールのアルコール基は、還元的アミノ化によりアミンに変換することができる。例えば、前記ポリオールは水素および過剰なアンモニアの存在下、還元的
にアミノ化することができる。詳しい加工条件には、高収率でアミンに変換できる十分な時間、圧力範囲1200〜2500psi、温度範囲180〜240℃で前記ポリオールを過剰なアンモニアおよび水素、および適切なアミノ化触媒と接触させる工程を含む。
【0024】
特定の実施形態では、前記アミン化合物はアルコキシル化ペンタエリスリトールを基本とし、下記の一般式(I)を有し:
【化2】

【0025】
式中、平均して0.0w+x+y+z25.0であり、各Rは独立して水素、メチル、エチル、プロピル、およびブチルから成る群から選択することができる。
【0026】
例えば、w、x、y、およびzの合計は、4.0〜10.0の範囲など、4.0〜13.0の範囲とすることができる。特定の例では、w、x、y、およびzの合計は、4.0〜5.0の範囲とすることができる。別の例では、w、x、y、およびzの合計は、8.0〜9.0の範囲とすることができる。
【0027】
特定の実施形態では、前記アミン基に隣接したR基の選択が前記アミンの反応性に影響する。例えば、エチル、プロピルまたはブチル基が立体障害を与え、その結果、反応性が低下する。対照的に、Rの代わりに水素を用いると反応性が上昇する。
【0028】
式(I)のアミン化合物は少なくとも2個の第1級アミン、少なくとも3個の第1級アミン、またさらには少なくとも4個の第1級アミンなど、少なくとも1個の第1級アミンを有することができる。代わりに、前記アミンの1個若しくはそれ以上を第2級アミンに変換することができる。
【0029】
式(I)のアミン化合物は、約800以上など、約600以上の平均分子量を有する。さらに、前記アミン化合物は、約70以上、またはさらに約115以上など、約50以上のアミン水素当量(AHEW)を有することができる。
【0030】
上述のポリアミンを使用することに加え、上述のアミンを互いに結合させるか、先行技術のアミンと結合させるか、またはそのいずれかの組み合わせとし、アミン組成物を形成することができる。組み合わせて使用できるアミンは、例えば、N−アミノエチルピペラジン(“AEP”);ジエチレントリアミン(“DETA”);トリエチレンテトラミン(“TETA”);テトラエチレンペンタミン(“TEPA”);2−メチルペンタメチレンジアミン(Dytek(R) A−DuPont);1,3−ペンタンジアミン(DYTEK(R)EPの名称でInvista North America S.A.R.L. Corporationから市販されている。DYTEKはInvista North America S.A.R.L. Corporationの登録商標である);トリメチルヘキサメチレンジアミン(2,2,4−および2,4,4−異性体の1:1混合物がVESTAMIN(R) TMDの名称で市販されている。VESTAMINはEvonik Industries AGの登録商標である);ポリアミド硬化剤;ポリアミドアミン硬化剤;マンニッヒ塩基型硬化剤;ビス(アミノメチル)シクロヘキシルアミン(“1,3−BAC”);イソホロンジアミン(“IPDA”);メンタンジアミン;ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン(“PACM”);2,2’−ジメチルビス(p−アミノシクロヘキシル)メンタン(“DMDC”);ジメチルジシクロヘキシルメタン);1,2−ジアミノシクロヘキサン;1,4−ジアミノシクロヘキサン;メタ−キシレンジアミン(“m−XDA”);ノルボルナンジアミン(“NBDA”);メタ−フェニレンジアミン(“m−PDA”);ジアミノジフェニルスルホン(“DDS”または“DADS”);メチレンジアニリン(“MDA”);JEFFAMINE(R) D−230アミン(Huntsman);JEFFAMINE(R) D−400アミン(Huntsman);JEFFAMINE(R) T−403アミン(Huntsman);ジエチルトルエンジアミン(“DETDA”)、またはそのいずれかの組み合わせを含む。
【0031】
本明細書で提供されたアミン、その組み合わせ、および工程は、望ましい硬化時間および低粘性などの望ましい加工性質を有するエポキシ系を提供する上で特に有益である。
【0032】
前記アミン化合物はエポキシ樹脂と反応させ、硬化エポキシ樹脂を形成させることができる。適切な多官能性エポキシ樹脂は、少なくとも2個のエポキシ末端基を有する式
【化3】

のエポキシ樹脂であって、
【0033】
nが0〜約4であるもの;以下の構造を有するDGEBF(ビスフェノールFのジグリシジルエーテル):
【0034】
【化4】

【0035】
HuntsmanのARALDITE(R) GY 285エポキシなど);およびHuntsmanのTACTIX(R) 742エポキシなど、以下のような三官能基以上のエポキシ樹脂を含む。
【0036】
【化5】

【0037】
D.E.N.(R) 438エポキシ樹脂、ARALDITE(R) EPN 1180エポキシ樹脂、D.E.N.(R) 431エポキシ樹脂などのエポキシ官能性ノボラック樹脂も前記工程での使用に適している。D.E.N.はThe Dow Chemical Companyの登録商標であり、ARALDITEはThe Huntsman Corporationの登録商標である。分子構造に少なくとも2個のエポキシ基を含む物質はすべてふさわしく、限定されるものではないが上述の物質を含み、そのような物質は便宜的に「多官能性エポキシ樹脂」と呼ばれる。
【0038】
別の実施形態では、アミンを有機ポリイソシアネートと反応させ、ポリ尿素を形成することができる。これらのポリイソシアネートには、MDI系疑似プレポリマーなど、Huntsman Corp.からRUBINATE(R) 9480、RUBINATE(R) 9484、およびRUBINATE(R) 9495として市販されているものなどの標準的なイソシアネート組成物を含む。MONDUR(R) MLなどの液化MDIは、前記イソシアネートのすべてまたは一部として使用することができる。典型的なイソシアネートには、米国特許第4,748,192号明細書で報告されている種類の脂肪族イソシアネートを含むことができる。従って、これには典型的に脂肪族ジイソシアネートを含み、より具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネートなど、脂肪族ジイソシアネートの三量体型またはビウレティック(biuretic)型、またはテトラメチルキシレンジイソシアネートなど、テトラアルキルキシレンジイソシアネートの二官能性単量体を含む。シクロヘキサンジイソシアネートも好ましい脂肪族イソシアネートと考えられる。他の有用な脂肪族ポリイソシアネートは米国特許第4,705,814号明細書に報告されており、そのすべてが本明細書内に引用され組み込まれている。これには、1,12−ドデカンジイソシアネートおよび1,4−テトラメチレンジイソシアネートなど、例えばアルキレンラジカルに4〜12炭素原子を有するアルキレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートを含む。1,3および1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、およびこれらの異性体の望ましい混合物、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート);4,4’−,2,2’−および2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、および対応する異性体混合物などの脂環式ジイソシアネートについても報告されている。さらに、様々な芳香族ポリイソシアネートを利用し、発泡ポリ尿素エラストマーを形成することができる。典型的な芳香族ポリイソシアネートには、p−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、バイトリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートフェニル)メタン、ビス(3−メチル−3−イソ−シアネートフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−イソシアネートフェニル)メタン、および4,4
’−ジフェニルプロパンジイソシアネートを含む。使用できる他の芳香族ポリイソシアネートは、約2〜約4個の官能基を有する、メチレンで架橋されたポリフェニルポリイソシアネート混合物である。これらの後者のイソシアネート化合物は、一般に対応するメチレンで架橋されたポリフェニルポリアミンのホスゲン化によって生成し、ポリフェニルポリアミンは、塩酸および/または他の酸性触媒存在下、ホルムアルデヒドとアニリンなどの第1級芳香族アミンとの反応により慣習的に生成される。ポリアミンおよびそれに対応するメチレンで架橋されたポリフェニルポリイソシアネートを調製する工程は、文献、および例えば米国特許第2,683,730号、第2,950,263号、第3,012,008号、第3,344,162号、および第3,362,979号明細書など、多くの特許に報告されており、そのすべてが参考として本明細書内に組み込まれる。通常、メチレンで架橋されたポリフェニルポリイソシアネート混合物は約20〜約100重量パーセントのメチレンジフェニルジイソシアネートの異性体を含み、残りは、より高官能性で分子量も大きいポリメチレンポリフェニルジイソシアネートである。その典型的なものは、約20〜約100重量パーセントのジフェニルジイソシアネート異性体を含むポリフェニルポリイソシアネートであり、そのうち約20〜約95重量パーセントは4,4’−異性体であり、残りは分子量が大きく、高官能性のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートであり、官能基の平均数は約2.1〜約3.5である。これらのイソシアネート混合物は既知の市販されている物質であり、米国特許第3,362,979号明細書で報告されている工程により調製することができる。好適な芳香族ポリイソシアネートは、メチレンビス(4−フェニルイソシアネート)つまり「MDI」である。純粋なMDI、MDIの疑似プレポリマー、修飾された純粋なMDIなどは、ポリ尿素の調製に有用である。純粋なMDIは固体であり、使用する上で不便なことが多いため、本明細書ではMDIまたはメチレンビス(4−フェニルイソシアネート)系の液体製剤を使用している。本明細書内に参考のため組み込まれる米国特許第3,394,164号明細書では、液体MDI製剤について説明している。より一般的には、ウレトニミンで修飾された純粋なMDIも含まれる。この生成物は、触媒存在下、純粋なMDIを加熱することにより作られる。前記液体生成物は、純粋なMDIと修飾されたMDIの混合物である。また、イソシアネートの用語はイソシアネートの疑似プレポリマーまたはポリイソシアネートを含み、活性水素を含む物質を有する。「有機ジ−イソシアネート」は前述のイソシアネートを含むことがある。
【0039】
特に、前記アミン化合物、アミン組成物、およびその方法に関する実施形態は、望ましい技術的利点を提供する。第1級アミンを含み、高AHEW値のエポキシ硬化剤では、通常、特定の化学量論の最終的なエポキシ形成において、アミン基(およびエポキシ基も)の濃度が低下する。これは、エポキシコーティングの形成における性能上の利点であるが、その理由は、エポキシコーティング表面のアミン基濃度が低くなると、二酸化炭素や水分など、空気中からの汚染物質の吸着を少なくできるためである。空気と接触しているときの二酸化炭素および水分の取り込み量が減少することにより、アミン硬化エポキシコーティング形成の表面から「アミンブラッシュ」として知られている有害な現象を抑制または消失させることができる。前記形成のゲル化時間が延長した場合、AHEWのみが大きくてもアミンブラッシュが生じる傾向は抑制されない。これは、アミンとエポキシドとの反応の前に、空気と流動性のアミン含有製剤との接触時間が長くなるためと考えられる。しかし、同じ化合物で高AHEWと高官能性を組み合わせると、系のゲル化が早くなるため、固定され、発生しうるブラッシングの量が制限される。そのため、4個以上の官能基を有するポリオールのアミノ化による硬化、特にペンタエリスリトール誘導体による硬化は、網状重合体の形成に用いる場合、特に有利になると考えられる。
【0040】
特に、アミン化合物を用いることで、硬化性エポキシ形成時のアミン基の濃度が制限されるが、比較的穏やかな反応で前記系のゲル化が促される。これにより、厚い部分がある成形品の発熱温度が低くなるという利点があり、光による黄変の抑制など、硬化中に表面
が空気に触れるアミンブラッシュ形成に伴う様々な問題が生じる可能性が少なくなる。特に、ゲル化時間が比較的低い変換率で始まり、反応の発熱が穏やかになる程度に末端基の反応が緩徐であれば、形成の許容範囲が大きくなる。
【0041】
エポキシ樹脂に一般的に用いられる脂肪族アミン化合物43種類のうち、平均AHFが4を超えるのは6種類のみであった。官能基が最も多い(6個)付加体ではない硬化剤はポリアルキレンエーテルアミン(つまり、JEFFAMINE(R) T−403アミン、JEFFAMINE(R) T−3000アミン、およびJEFFAMINE(R) T−5000アミン、すべてHuntsman Corp.製)であった。官能基が6個以上存在する種を有する唯一の硬化剤は、粘度の高いアミンエポキシ付加化合物(以下に詳述)とテトラエチレンペンタミン(TEPA)であり、そのAHEWは比較的低く約30であり、AHEWが低いことと高官能性が合わさり、反応性が非常に高くなっている。
【0042】
高官能性で低AHEW値の脂肪族アミン系とは対照的に、ペンタエリスリトール、ジ−ペンタエリスリトールなどの高官能性の出発原料から作られるアルコキシレートの場合、分子量が十分な(そのためAHEWも十分な)高官能性アミンの利点は、高官能性にもかかわらず、穏やかな、さらには遅い反応性、および長い作業時間を提供できる点である。エポキシ樹脂製剤では、高官能性と高AHEW値で特徴付けられるアミンを利用する他の利点は、エポキシド当量(EEW)が約180〜200のビスフェノールA型樹脂のジグリシジルエーテルなど、標準的な液体エポキシ樹脂を用いると、混合比と粘度比がさらに厳密に適合し、混合が容易となり、混合前に2成分系の両方の系の間で充填剤がより均一に分配される点である。
【0043】
高官能性と高AHEW値が組み合わさった場合に示される、アミン硬化剤のさらに別の利点は、AHEWが比較的高値のそのようなアミンでは、硬化生成物のガラス転移温度(Tg)が比較的低くなることが予想されるが、高官能性により架橋が多くなるため、硬化ポリマーのTgが上昇する点である。
【0044】
上述のアミン化合物は一般にアミン水素官能基が多く(典型的には6個以上)、AHEWが比較的高値であるという特徴が組み合わさっており、この点は、エポキシアミン付加体は別として、現在利用できるエポキシ硬化剤にはみられない特徴である。エポキシアミン付加体は、著しく化学量論的に過剰なアミンとエポキシ樹脂との反応により生じ、その混合物がまだゲル化していないアミン混合物である。エポキシアミン付加体は、アミンブラッシングの問題を軽減する方法として広く利用されているが、その使用には不利な点がある。高官能性と高AHEW値を同時に得る方法としてのエポキシアミン付加体の不利な点は以下の点である:
【0045】
1)そのような付加体に含まれる水酸基の数が多いため、粘度が大きく上昇し、混合とその後のエポキシ形成時の脱気が困難になる。
【0046】
2)合成時の付加体分子のカップリングにより分子量が過剰に大きくなることを避けるため、過剰なアミンを使用し付加体混合物のAHEWを低下させるか、そうでなければ工程数を増やし、前記混合を分割することになる。
【0047】
3)最終的なポリマーのアミン濃度は減少しないため、AHEWの低い物質と同様に、大気中の水分と二酸化炭素が吸着する可能性があることを意味する。
【0048】
4)前記付加反応は追加の合成ステップであるため、工程が複雑になり、生成物の費用がかさむ。
【0049】
特定の実施形態では、前記アミン組成物はエポキシアミン付加体を含まない。
【0050】
例:
【0051】
ペンタエリスリトールアルコキシレートから2種類のアミン化合物を調製し、エポキシド当量が約184のビスフェノールA系の標準的な液体エポキシ樹脂の重合に用いた。アミノ化は標準的な方法により行っている。
【0052】
例1−8.5モルのプロピレンオキシドによりアルコキシル化したペンタエリスリトール系アミンを用いたエポキシ樹脂の硬化
【0053】
このアミンの湿式実験分析によれば、前記アミンのAHEWは1アミン水素当量あたり約85.9gである。エポキシ硬化について、前記アミンのAHFは8である。
【0054】
例1の生成物の89.11部と液体ビスフェノールA系エポキシ樹脂のエポキシ樹脂の190.89部(エポキシド当量184)を混合し、80℃で3時間焼成した後、ガラス鋳型に入れ、125℃で2時間焼成し、呼び厚さ1/8インチの充填されていない鋳造物を生成することにより、鋳造を行った。DSC(示差走査熱量測定)により加熱速度を毎分20℃として測定した場合、このポリマーのTgは98.6℃であった。機械的検査では、曲げ強度が20,600psi、引っ張り強度が10,200psi、引張係数(tensile modulus)が446,000psiであることが示されている。
【0055】
例2−8.5モルのプロピレンオキシド、その後5モルのブチレンオキシドによりアルコキシル化したペンタエリスリトール系アミンを用いたエポキシ樹脂の硬化
【0056】
このアミンの湿式実験分析によれば、前記アミンのAHEWはアミン水素当量あたり約126gである。エポキシ硬化について、前記アミンのAHFは8である。
【0057】
化学量論1:1でこのアミンの106.76部と液体ビスフェノールA系エポキシ樹脂のエポキシ樹脂の173.24部(エポキシド当量184)を混合し、110℃で2時間焼成した後、125℃で2時間焼成し、呼び厚さ1/8インチの充填されていない鋳造物を生成することにより、鋳造を行った。DSC(示差走査熱量測定)により加熱速度を毎分20℃として測定した場合、このポリマーのガラス転移温度(Tg)は64℃である。
【0058】
一方、JEFFAMINE(R) D−400アミンはAHEWが115、AHFが4であるが、このようなアミンを56部の化学量論数1:1で用い、液体ビスフェノールA系エポキシ樹脂のエポキシ樹脂のエポキシ樹脂の100部(エポキシド当量184)を加工すると、前記アミンのAHEWはわずかに低くなるが、得られたTgは56℃である。
【0059】
機械的検査では、前記ペンタエリスリトール系アミンを標準的なビスフェノールA系液体エポキシ樹脂の重合に用いた場合、曲げ強度が17,900psi、引っ張り強度が7200psi、引張係数が467,000psiであることが示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の構造を有するアミン組成物であって:
【化1】

式中、平均して0.0w+x+y+z25.0であり、各Rは水素、メチル、エチル、プロピル、およびブチルから成る群から選択されるアミン組成物。
【請求項2】
請求項1記載のアミン組成物において、平均して4.0w+x+y+z5.0である。
【請求項3】
請求項1記載のアミン組成物において、平均して8.0w+x+y+z9.0である。
【請求項4】
少なくとも5個のアミン水素官能基(AHF)および少なくとも約50のアミン水素当量(AHEW)を有するアミン官能性硬化剤。
【請求項5】
請求項4記載のアミン官能性硬化剤において、前記アミン官能性硬化剤はアルコキシル化ポリオール化合物から生成されるものである。
【請求項6】
請求項5記載のアミン官能性硬化剤において、前記アルコキシル化ポリオール化合物が少なくとも約4個の水酸基を有するものである。
【請求項7】
請求項5記載のアミン官能性硬化剤において、前記アルコキシル化ポリオール化合物がエリスリトール、ペンタエリスリトール、ジ−ペンタエリスリトール、およびその組み合わせから成る群から選択されるポリオールを有するものである。
【請求項8】
請求項5記載のアミン官能性硬化剤において、前記アルコキシル化ポリオール化合物が多官能性ポリオールである。
【請求項9】
請求項5記載のアミン官能性硬化剤において、前記アルコキシル化ポリオール化合物がマンニッヒポリオール、アミンポリオール、スクロース/グリコールポリオール、スクロース/グリセリンポリオール、スクロース/アミンポリオール、ソルビトールポリオール、およびその組み合わせから成る群から選択されるポリオールを有するものである。
【請求項10】
請求項4記載のアミン官能性硬化剤において、前記AHEWは約70以上、400以下である。
【請求項11】
請求項4記載のアミン官能性硬化剤において、前記AHEWは約115以上、150以下である。
【請求項12】
請求項4記載のアミン官能性硬化剤において、前記AHFは7以上である。
【請求項13】
請求項4記載のアミン官能性硬化剤において、前記AHFは8以上である。
【請求項14】
請求項4記載のアミン官能性硬化剤において、前記アミン官能性硬化剤は少なくとも3個の第1級アミン基を含むものである。
【請求項15】
請求項4記載のアミン官能性硬化剤において、前記アミン官能性硬化剤は少なくとも4個の第1級アミン基を含むものである。
【請求項16】
請求項4記載のアミン官能性硬化剤において、前記アミン官能性硬化剤の分子量は約600以上である。
【請求項17】
請求項4記載のアミン官能性硬化剤において、前記アミン官能性硬化剤の分子量は約800以上、約1500以下である。
【請求項18】
アミン官能性硬化剤を形成する方法であって、
ポリオールを提供する工程と、
前記ポリオールをアルコキシル化し、アルコキシル化ポリオール化合物を形成する工程と、
前記アルコキシル化ポリオール化合物をアミン化する工程と、
からなる方法。
【請求項19】
請求項18記載のアミン官能性硬化剤を形成する方法において、前記ポリオールをアルコキシル化する工程は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、およびその組み合わせから成る群から選択されるオキシドにより前記ポリオールをアルコキシル化することからなるものである。
【請求項20】
請求項18記載のアミン官能性硬化剤を形成する方法において、前記ポリオールをアルコキシル化する工程は、エチレンオキシドにより前記ポリオールをアルコキシル化し、ブチレンオキシドにより前記ポリオールをアルコキシル化することからなるものである。

【公表番号】特表2010−521563(P2010−521563A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553792(P2009−553792)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/056947
【国際公開番号】WO2008/112952
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(505318547)ハンツマン ペトロケミカル コーポレイション (17)
【Fターム(参考)】