説明

高官能性高分岐ポリウレア

1種以上のカーボネートと、少なくとも2個の1級及び/又は2級のアミノ基を有する1種以上のアミン、少なくとも3個の1級及び/又は2級のアミノ基を有する少なくとも1種のアミンとを反応させる工程を含む高官能性高分岐ポリウレアを製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボネートとポリアミンとを基礎として特別に合成された高官能性高分岐ポリウレア、及びこれを製造する方法に関する。
【0002】
本発明の高官能性高分岐ポリウレアは、例えば、接着促進剤及びチキソトロピック剤として、そしてペイント及びワニス、コーティング、接着剤、封止剤、注型用エラストマー及びフォームを製造するための基本要素として使用することができる。
【背景技術】
【0003】
ポリウレアは、通常、イソシアネートと水との、或いはイソシアネートとアミンとの反応により得られる。反応は、極めて発熱性であり、得られる生成物は不均一で、高い架橋度を有する。その結果、ポリウレアは一般に公知の有機溶剤に不溶である。この点については、非特許文献1(Becker/Braun, Kunststoff-Handbuch 第7巻, Polyurethane, Hanser-Verlag 1993)参照。
【0004】
ウレア(尿素)基を含む規定の構造の高官能性分岐ポリウレアは公知である。
【0005】
特許文献1(WO98/52995)には、1級及び3級のNCO基を有するイソシアネートとジアルカノールアミンとを用いて、シェル型(世代型)合成により製造することができる樹岐状高分岐ポリウレタンポリオールが記載されている。この合成により、分子中にウレタン基が極めて多いウレアウレタンが形成される(ウレア基のウレタン基に対する割合が1:2)。
【0006】
特許文献2(EP−A−1026185)には、保護基の技術を使用せずに、反応剤間における反応性の分子間相違を利用して、AB2及びAB3による特定の合成により製造する高分岐ポリウレタンの製造が記載されている。この反応は、2種の反応剤の一方を過剰に添加することにより停止する。ここでも、アミノアルコールが使用され、またウレタン基が結合基において優勢を占める(ウレア基のウレタン基に対する割合が1:2又は1:3)。
【0007】
特許文献3(DE−A−10030869)には、特定のイソシアネート−反応性成分が、アミノアルコール、及びウレア形成剤としてのジアミン及びトリアミンを含む、多官能ポリイソシアネート重付加生成物の製法が記載されている。しかしながら、これらのアミンは、アルコールと共に使用される。なぜなら、ジイソシアネートとジアミン又はトリアミンのみとの反応は、その発熱的性質のために、制御が不可能であるためである。
【0008】
高官能性高分岐ポリウレアが、非特許文献2(A. Kumar and E.W. Meijer, Chem. Commun. 1629 (1998))、及び非特許文献3(A. Kumar and E.W. Meijer, Polym. Prep. 39, (2), 619 (1998))に記載されている。ここに記載されている生成物は、3,5−ジアミノ安息香酸(1)から製造され、この3,5−ジアミノ安息香酸(1)は多数の反応工程を経て、アミノ−ブロックカルボン酸アジド(2)に転化される。次いで、保護基が除去され、3,5−ジアミノベンゾイルアジドは加熱され、窒素が除去されてポリウレアが得られる。生成物は、引用刊行物に、極めて溶解させるのが困難であると記載されている。
【0009】
【化1】

【0010】
非特許文献4(A.V. Ambade and A. Kumar, J. Polym. Sci. Part A, Polym. Chem. 39, 1295-1304 (2001))には、3,5−ジアミノベンゾイルアジド又は5−アミノイソフタロイルアジド(3)から同様に製造される高官能性高分岐ポリウレアが記載されている。
【0011】
【化2】

【0012】
得られる生成物は、全ての慣用溶剤に不溶であると、著者により同様に述べられている。
【0013】
アジド経路は、下記の点のため、特に技術的に魅力がない:
保護基技術を使用する多段階合成は製造コストが高くなる;
アジド反応性のため、芳香族ウレア生成物しか製造することができない;
芳香族カルボン酸アジド又は芳香族アミンの大規模な取扱いは、安全面で好ましくない。
【0014】
高官能性高分岐脂肪族ポリウレアは、特許文献4(WO98/50453)又は非特許文献5(N. Davis, Polym. Mat. Sci. Eng. 84, 2 (2001))に従って製造することもできる。ここに記載されているように、3個の1級アミン官能基、又は2個の1級と1個の2級アミン官能基を有するトリアミン(例、トリスアミノエチルアミン又はジプロピレントリアミン)を、ホスゲン類似化合物であるカルボニルジイミダゾールと反応させる。初めの生成物はイミダゾールであり、その後分子間反応して、ポリウレアを形成する。この合成法の不利は、一方で、カルボニルジイミダゾールの比較的高い価格、他方で得られる生成物が常に末端イミダゾール基を含んでおり、これは不安定で、加水分解時に尿素基に転化させなければならいことである。
【0015】
特許文献5(US2002/0161113)には、ポリアミンとポリイソシアネートとの反応により高分岐ポリウレアを製造する方法が記載されている。反応剤は、−78℃で化合する。この方法は、工業規模での製品の製造にとっては余りにも複雑すぎる。
【0016】
【特許文献1】WO98/52995
【特許文献2】EP−A−1026185
【特許文献3】DE−A−10030869
【特許文献4】WO98/50453
【特許文献5】US2002/0161113
【非特許文献1】Becker/Braun, Kunststoff-Handbuch 第7巻, Polyurethane, Hanser-Verlag 1993
【非特許文献2】A. Kumar and E.W. Meijer, Chem. Commun. 1629 (1998)
【非特許文献3】A. Kumar and E.W. Meijer, Polym. Prep. 39, (2), 619 (1998
【非特許文献4】A.V. Ambade and A. Kumar, J. Polym. Sci. Part A, Polym. Chem. 39, 1295-1304 (2001)
【非特許文献5】N. Davis, Polym. Mat. Sci. Eng. 84, 2 (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
このため、本発明の第1の目的は、用途の要求に構造を容易に適応させることができ、その特定の構造に基づく、有利な特性、例えば高官能性、高反応性、及び有効な溶解性を有する脂肪族及び芳香族の高官能性高分岐ポリウレアを提供すること、及び高官能性高分岐ポリウレアの容易に実行可能な製造方法も提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的は、1種以上のカーボネートと、少なくとも2個の1級及び/又は2級のアミノ基を有する1種以上のアミン、及び/又は少なくとも3個の1級及び/又は2級のアミノ基を有する少なくとも1種のアミンとを反応させる工程を含む高官能性高分岐ポリウレアを製造する方法により達成される。
【0019】
本発明はこのようにして製造されたポリウレア自体も提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
好適なカーボネートは、脂肪族、芳香族又は脂肪族−芳香族混合カーボネートであり;C1〜C12アルキル基を有するジアルキルカーボネート等の脂肪族カーボネートが好ましい。例えば、エチレンカーボネート、1,2−又は1,3−プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ジナフチルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジへプチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、ジデシルカーボネート又はジドデシルカーボネートを挙げることができる。特に好ましく使用されるカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート及びジイソブチルカーボネートを挙げることができる。
【0021】
カーボネートは、例えば、対応するアルコール又はフェノールをホスゲンと反応させることにより製造することができる。さらに、これらは、対応するアルコール又はフェノールを貴金属、酸素又はNOxの存在下、COを用いて酸化的にカルボニル化することにより製造することができる。カーボネートの製造方法は、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第6版, 2000 Electronic Release, Wiley-VCHに記載されている。
【0022】
本発明によれば、カーボネートは、少なくとも2個の1級及び/又は2級のアミノ基を有する1種以上のアミン、少なくとも3個の1級及び/又は2級のアミノ基を有する少なくとも1種のアミンと反応させる。2個の1級及び/又は2級のアミノ基を有するアミンは、ポリウレア内の鎖延長を生み出し、一方3個の1級及び/又は2級のアミノ基を有するアミンは、得られる高官能性高分岐ポリウレアの分岐の役目を担う。
【0023】
カーボネート又はカルバメート基に対して反応性のある2個の1級及び/又は2級のアミノ基を有する好適なアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、N−アルキルエチレンジアミン、プロピレンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレンジアミン、N−アルキルプロピレンジアミン、ブチレンジアミン、N−アルキルブチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アルキルヘキサメチレンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ドデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、フェニレンジアミン、シクロへキシレンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−アミノプロピルシクロヘキシルアミン、3(4)−アミノメチル−1−メチルシクロヘキシルアミン、1,4−ジアミノ−4−メチルペンタン、アミン−末端ポリオキシアルキレンポリオール(ジェファミンズ(Jeffamines)として公知)又はアミン−末端ポリテトラメチレングリコールを挙げることができる。
【0024】
上記アミンは、2個の1級アミノ基を有することが好ましく、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ドデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、フェニレンジアミン、シクロへキシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−アミノプロピルシクロヘキシルアミン、3(4)−アミノメチル−1−メチルシクロヘキシルアミン、1,4−ジアミノ−4−メチルペンタン、アミン−末端ポリオキシアルキレンポリオール(Jeffaminesとして公知)又はアミン−末端ポリテトラメチレングリコールを挙げることができる。
【0025】
特に、ブチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、フェニレンジアミン、シクロへキシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、アミン−末端ポリオキシアルキレンポリオール(Jeffaminesとして公知)又はアミン−末端ポリテトラメチレングリコールが好ましい。
【0026】
カーボネート又はカルバメート基に対して反応性のある3個以上の1級及び/又は2級のアミノ基を有する好適なアミンとしては、例えば、トリス(アミノエチル)アミン、トリス(アミノプロピル)アミン、トリス(アミノヘキシル)アミン、トリスアミノヘキサン、4−アミノメチル−1,8−オクタメチレンジアミン、トリスアミノノナン、ビス(アミノエチル)アミン、ビス(アミノプロピル)アミン、ビス(アミノブチル)アミン、ビス(アミノペンチル)アミン、ビス(アミノヘキシル)アミン、N−(2−アミノエチル)プロパンジアミン、メラミン、オリゴマー性ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(3−アミノプロピル)ブチレンジアミン、3官能価以上のアミン末端ポリオキシアルキレンポリオール(Jeffaminesとして公知)、3官能価以上のポリエチレンイミン、3官能価以上のポリプロピレンイミンを挙げることができる。
【0027】
3個以上の1級及び/又は2級のアミノ基を有する好ましいアミンは、トリス(アミノエチル)アミン、トリス(アミノプロピル)アミン、トリス(アミノヘキシル)アミン、トリスアミノヘキサン、4−アミノメチル−1,8−オクタメチレンジアミン、トリスアミノノナン、ビス(アミノエチル)アミン、ビス(アミノプロピル)アミン、ビス(アミノブチル)アミン、ビス(アミノペンチル)アミン、ビス(アミノヘキシル)アミン、N−(2−アミノエチル)プロパンジアミン、メラミン、又は3官能価以上のアミン末端ポリオキシアルキレンポリオール(Jeffaminesとして公知)である。
【0028】
3個以上の1級及び/又は2級のアミノ基を有する特に好ましいアミンは、トリス(アミノエチル)アミン、トリス(アミノプロピル)アミン、トリス(アミノヘキシル)アミン、トリスアミノヘキサン、4−アミノメチル−1,8−オクタメチレンジアミン、トリスアミノノナン、又は3官能価以上のアミン末端ポリオキシアルキレンポリオール(Jeffaminesとして公知)である。
【0029】
上記アミンの混合物を使用することもできるのは当然である。
【0030】
一般に、2個の1級又は2級のアミノ基を有するアミンのみならず、3個以上の1級又は2級のアミノ基を有するアミンも使用される。この種のアミン混合物はまた、平均アミン官能価によって特徴づけられ得る(この場合、未反応の3級アミノ基は無視される)。従って、例えば、ジアミンとトリアミンとの等モル混合物は、2.5の平均官能価を有する。本発明の反応では、平均官能価が2.1〜10、特に2.1〜5のアミン混合物を使用することが好ましい。
【0031】
高官能性高分岐ポリウレアを形成するためのカーボネートとジアミン又はポリアミンとの反応は、カーボネート中のアルコール又はフェノール結合の除去(脱離)を伴う。カーボネートの1分子が2個のアミノ基と反応すると、その後アルコール又はフェノールの2個の分子が脱離し、1個の尿素結合が形成する。カーボネートの1分子が唯1個のアミノ基と反応すると、その後アルコール又はフェノールの1分子が脱離してカルバメート基が形成する。
【0032】
1種又は2種以上のカーボネートと1種又は2種以上のアミンとの反応は、溶剤中で行うことができる。この場合、一般に、それぞれの反応剤に対して不活性である溶剤であればどれでも使用することができる。有機溶剤、例えばデカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド又はソルベント・ナフサにおける実施が好ましい
本発明の方法の好ましい一態様において、反応はバルクで(即ち不活性溶剤無しで)行われる。アミンとカーボネート又はカルバメートとの反応中に遊離するアルコール又はフェノールは、蒸留により、適宜減圧下で、分離され、反応の平衡から除去される。これによっても、反応が加速される。
【0033】
アミンとカーボネート又はカルバメートとの間の反応を加速するために、触媒又は触媒混合物を添加することも可能である。好適な触媒は、一般にカルバメート又は尿素の形成に触媒作用を示す化合物である。例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩、3級アミン、アンモニウム化合物、又はアルミニウム、スズ、亜鉛、チタン、ジルコニウム又はビスマスの有機化合物を挙げることができる。例として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又は炭酸セシウム、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノナン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、イミダゾール(例、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、及び1,2−ジメチルイミダゾール)、チタンテトラブトキシド、酸化ジブチルスズ、ジブチルスズジラウレート、スズジオクトエート、ジルコニウムアセチルアセトネート又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0034】
触媒の添加は、使用されるアミンの量に対して、質量で、一般に50〜10000ppm、好ましくは100〜5000ppmの量でなされる。
【0035】
反応に続いて、言い換えれば、さらなる変更なしに、本発明の方法で製造された高官能性高分岐ポリウレアは、アミノ基又はカルバメート基で終結する。このポリウレアは、極性溶剤、例えば水、アルコール(例、メタノール、エタノール、ブタノール)、アルコール/水混合物、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレンカーボネート、又はプロピレンカーボネートに容易に溶解する。
【0036】
本発明の高官能性ポリウレアは、尿素基を有し、そして少なくとも3個、好ましくは少なくとも6個、特に少なくとも10個の官能基を有する生成物である。極めて多数の官能基を有する生成物は、望ましくない特性、例えば高粘度又は劣った溶解性を示すかもしれないが、一般に、官能基の数の上限は無い。本発明の高官能性ポリウレアは、一般に200個を超える官能基、好ましくは100個を超える官能基を有するものではない。ここでは、官能基は、1級、2級又は3級アミノ基、又はカルバメート基を意味する。さらに、高官能性高分岐ポリウレアは、別の官能基を含むことも可能である。このような官能基は高分岐ポリマーの合成(以下参照)に関係するものではない。これらの付加的官能基は、1級及び2級のアミノ基に加えて別の官能基を含むジアミン又はポリアミンにより導入され得る。
【0037】
以下の試験において、新規な高官能性高分岐ポリウレアの合成が主として説明される。
【0038】
高官能性ポリウレアの製造の場合、カーボネート基又はカルバメート基と反応性のある少なくとも2個のアミノ基を有するアミンの、ジカーボネートに対する比は、得られる最も簡単な縮合生成物(以下、縮合生成物(A)と呼ぶ)が、平均で、1個のカルバメート基と、カルバメート基と反応性のある1個を超えるアミノ基とを含むか、或いはカルバメート基と反応性のある1個のアミノ基と、1個を超えるカルバメート基とを含むように、設定することができる。ジカーボネートとジアミン又はポリアミンとの縮合生成物(A)からもたらされる最も簡単な構造は、配列XYn又はXnY(但し、nは、一般に1と6の間の数であり、好ましくは1と4の間の数、さらに好ましくは1と3の間の数であり、Xはカルバメート基を表し、Yはこれと反応するアミノ基を表す)を含んでいる。反応性基(この場合、単一基として存在する)は、下記に「焦点の基」として記されている。
【0039】
例えば、カーボネートと2官能アミンとからの最も簡単な生成物(A)の製造において、モル比は1:1であり、そして平均で、型XYの分子が得られ、これは一般式1で示されている。
【0040】
【化3】

【0041】
R及びR1は、ここでは、所望の脂肪族、芳香族又は芳香脂肪族(アリール脂肪族)基である。
【0042】
モル比は1:1での、カーボネートと3官能アミンとからの最も簡単な生成物(A)の製造により、平均で、型XY2の分子が得られ、これは一般式2で示されている。この場合、焦点の基はカルバメート基である。
【0043】
【化4】

【0044】
モル比は1:1での、カーボネートと4官能アミンとからの最も簡単な生成物(A)の製造により、平均で、型XY3の分子が得られ、これは一般式3で示されている。この場合も、焦点の基はカルバメート基である。
【0045】
【化5】

【0046】
カーボネート:3官能アミンのモル比は2:1で、カーボネートと3官能アミンとを反応させた場合、平均で、型X2Yの最も簡単な生成物が得られ、これは一般式4で示されている。この場合、焦点の基はアミノ基である。
【0047】
【化6】

【0048】
2官能化合物を、さらに成分、例えばカーボネート又はジアミンに添加した場合、この効果は、鎖長を延ばすことであり、例えば、式5に示されている。これにより、平均で型XY2の分子がもたらされ;焦点の基はカルバメートである。
【0049】
【化7】

【0050】
式1〜5に例として示された簡単な縮合生成物(A)は、分子間で反応して、高官能性重縮合生成物(以下で、重縮合生成物(P)と呼ばれる)を形成する。縮合生成物(A)への反応、及び重縮合生成物(P)への反応は、通常、0〜250℃、好ましくは60〜160℃の温度で、溶剤無しで、或いは溶剤中で行われる。
【0051】
縮合生成物(A)の性質を考慮して、縮合反応により、分岐はあるが架橋は無い種々の構造を有する重縮合生成物(P)を形成することが可能である。さらに、重縮合生成物(P)は、カルバメート焦点基と、カルボネート又はカルバメートと反応性の2個を超えるアミン(アミノ)とを含むか、或いは焦点基としての、カルボネート又はカルバメートと反応性のアミンと、2個を超えるカルバメートを含んでいる。反応性基の数は、使用される縮合生成物(A)の特性及び重縮合の程度に関係する。
【0052】
例えば、縮合生成物(A)は、一般式2に従って、3倍の分子間縮合により反応して、2種の異なる重縮合生成物(P)を形成し、一般式6及び7に再現されている
【0053】
【化8】

【0054】
式2〜7において、R及びR1は、所望の脂肪族、芳香族又は芳香脂肪族(アリール脂肪族)基である。
【0055】
分子間重縮合反応を終結(停止)させるために、種々の選択肢がある。例えば、温度を、反応が停止して、生成物(A)又は重縮合生成物(P)が貯蔵安定性を示すようになる範囲まで低下させることにより行うことができる。
【0056】
別の態様において、縮合生成物(A)の分子間反応により、所望の重合度の重縮合生成物(P)が存在するようになるや否や、生成物(P)の焦点基に対して反応性の基を含む生成物(製品)を生成物(P)に添加することにより反応を終結させることができる。従って、焦点基がカルバメート基である場合、例えば、モノアミン、ジアミン又はポリアミンを添加することができる。アミノ焦点基の場合、アミンと反応する、モノ−、ジ−又はポリ−ウレタン、モノ−、ジ−又はポリ−イソシアネート、アルデヒド、ケトン又は酸誘導体を生成物(P)に添加することができる。
【0057】
加えて、分子間重縮合反応を、適当な触媒を添加することにより、或いは適当な温度を選択することにより制御することも可能である。さらに、ポリマー(P)の平均分子量は、出発成分の組成、及び滞留時間により調節することができる。高温で製造された縮合生成物(A)及び重縮合生成物(P)は、通常、室温で、比較的長時間に亘って安定である。
【0058】
本発明の高官能性高分岐ポリウレアの製造は、バッチで、半連続又は連続で操作される反応器又は反応器カスケードにおいて、0.1ミリバール〜20バール、好ましくは3ミリバール〜3バールの圧力範囲内で行われる。
【0059】
反応条件を前記のように設定し、適宜、適当な溶剤を選択することにより、本発明の生成物を、その製造後、さらなる精製なしにさらに加工することが可能である。
【0060】
別の好ましい態様において、本発明のポリウレアは、他の官能基を含んでいても良い。この場合、官能化は、カーボネートと1種又は2種以上のアミンとの反応中に、換言すると分子量が増大している重縮合反応中に、或いは重縮合の終了後、続いて得られたポリエステルウレアを官能化することにより、行うことができる。
【0061】
分子量増大前又は増大中に、成分(その成分はアミノ基又はカルバメート基に加えて、別の官能基を含んでいる)を加える場合、得られる生成物は、ランダムに分布した別の官能基(即ち、カルバメート基又はアミノ基以外)を有するポリウレアである。
【0062】
例えば、上記重縮合前又は重縮合中に、成分(その成分はアミノ基又はカルバメート基に加えて、ヒドロキシル基、メルカプト基、3級アミノ基、エーテル基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラン基、シロキサン基、アリール基又は長鎖アルキル基を含んでいる)を加えることができる。
【0063】
官能化に添加することができるヒドロキシル含有成分としては、例えば、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ブタノールアミン、2−アミノ−1−ブタノール、2−(ブチルアミノ)エタノール、2−(シクロヘキシルアミノ)エタノール、2−(2’−アミノエトキシ)エタノール又はアンモニアの高級アルコキシル化生成物、4−ヒドロキシピペリジン、1−ヒドロキシエチルピペラジン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタン又はトリス(ヒドロキシルエチル)アミノメタンを挙げることができる。
【0064】
官能化に使用することができるメルカプト含有成分としては、例えばシステアミン(cysteamine)を挙げることができる。3級アミノ基について、高分岐ポリウレアを、例えばN−メチルジエチレントリアミン又はN,N−ジメチルエチレンジアミンを用いて官能化することが可能である。エーテル基について、高分岐ポリウレアを、アミン末端ポリエーテル(Jeffaminesとして公知)を用いて官能化することが可能である。酸基について、高分岐ポリウレアを、例えば、アミノカルボン酸、アミノスルホン酸、又はアミノホスホン酸を用いて官能化することが可能である。ケイ素含有基について、高分岐ポリウレアを、ヘキサメチルジシラザンを用いて官能化することが可能である。長鎖アルキル基について、高分岐ポリウレアを、長鎖アルキル基を有するアルキルアミン又はアルキルイソシアネートを用いて官能化することができる。
【0065】
さらにまた、ポリウレアを、アミノ基又はカルバメート基とは異なる官能基を有する少量のモノマーを用いて、官能化することも可能である。例えば、2個又は3個以上の官能価を有するアルコール(カーボネート又はカルバメート基によりポリウレアに導入され得る)を挙げることができる。従って、例えば、疎水性を長鎖アルカンジオールを加えることにより得ることができ、一方、ポリエチレンオキシドジオール又はトリオールによりポリウレアに親水性を付与することができる。
【0066】
アミノ基、カーボネート基又はカルバメート基以外の、重縮合前又は重縮合中に導入される上記官能基は、アミノ基、カルバメート基及びカーボネート基の合計に対して、一般に0.1〜80モル%、好ましくは1〜50モル%の量で導入される。
【0067】
アミノ基含有高官能性高分岐ポリウレアの続く官能化は、例えば、酸基、イソシアネート基、ケト基又はアルデヒド基を含む分子、又は活性2重結合(例、アクリル2重結合)を含む分子を添加することにより行うことができる。例えば、アクリル酸又はマレイン酸及びその誘導体との反応及び必要によりその後の加水分解によって酸基含有ポリウレアを得ることができる。
【0068】
さらに、アミノ基含有高官能性ポリウレアを、アルキレンオキシド(例、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシド)と反応させるにより、高官能性ポリウレアポリオールに転化することが可能である。
【0069】
プロトン酸による塩形成、或いはアルキル化剤(例、ハロゲン化メチル又は硫酸ジアルキル)によるアミノ官能基の4級化により、高官能性高分岐ポリウレアを水溶性又は水乳化性に調整することが可能である。
【0070】
疎水化の達成は、アミン末端高官能性高分岐ポリウレアを、アミノ基に対して反応性を有する、飽和又は不飽和長鎖カルボン酸、その誘導体と反応させることにより、或いは脂肪族又は芳香族イソシアネートと反応させることにより行うことができる。
【0071】
末端がカルバメート基であるポリウレアは、長鎖アルキルアミン又は長鎖脂肪族モノアルコールとの反応により得ることができる。
【0072】
本発明の方法の大きな利点は、その経済性にある。縮合物(A)又は重縮合物(P)を形成する反応のみならず、別の官能基を有するポリウレアを形成するための(A)又は(P)の反応も、1基の反応装置で行うことができ、技術的、経済的の両方で有利である。
【0073】
本発明はまた、本発明の高官能性高分岐ポリウレアを、接着促進剤及びチキソトロピック剤として、そしてペイント及びワニス、コーティング、接着剤、封止剤、注型用エラストマー及びフォームを製造するための成分として使用する方法も提供する。
【0074】
本発明を下記の実施例により説明する。
【実施例】
【0075】
一般的手順:
アミン又はアミン混合物、ジアルキルカーボネート、及び触媒(アミンの質量に対するppm)を、表1に従い一緒に、撹拌器、還流凝縮器及び内部温度計を備えた三ッ口フラスコに導入し、混合物を145℃に加熱した。反応時間の増大と共に、遊離するモノアルコールの蒸発冷却が確保されていることによる、反応混合物の温度低下が見られ、約125〜135℃となる。3時間の還流下における反応の後、還流凝縮器を下降凝縮器(descending condenser)に交換し、モノアルコールを蒸留除去し、反応温度をゆっくり155℃に上げた。アルコールの発生の終了後、反応混合物を室温に冷却し、その後検出器として屈折計を用いてゲル・パーミエーション・クロマトグラフィにより分析した。移動相としてヘキサフルオロイソプロパノールを用い、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を分子量の決定の標準として用いた。
【0076】
【表1】

【0077】
TAEA: トリス(アミノエチル)アミン
DETA: ジエチレントリアミン
DAPMA: ジ(アミノプロピル)メチルアミン
HDA: ヘキサメチレンジアミン
IPDA: イソホロンジアミン
DEC: ジエチルカーボネート
DMC: ジメチルカーボネート
DBTL: ジブチルスズジラウレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のカーボネートと、少なくとも2個の1級及び/又は2級のアミノ基を有する1種以上のアミン、少なくとも3個の1級及び/又は2級のアミノ基を有する少なくとも1種のアミンとを反応させる工程を含む高官能性高分岐ポリウレアを製造する方法。
【請求項2】
2個の1級及び/又は2級のアミノ基を有するアミンを反応させ、且つ該アミンが、エチレンジアミン、N−アルキルエチレンジアミン、プロピレンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N−アルキルプロピレンジアミン、ブチレンジアミン、N−アルキルブチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アルキルヘキサメチレンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ドデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、フェニレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−アミノプロピルシクロヘキシルアミン、3(4)−アミノメチル−1−メチルシクロヘキシルアミン、1,4−ジアミノ−4−メチルペンタン、アミン末端ポリオキシアルキレンポリオール(ジェファミンズとして公知)又はアミン末端ポリテトラメチレングリコールから構成される群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも3個の1級及び/又は2級のアミノ基を有する少なくとも1種のアミンが、ビス(アミノエチル)アミン、ビス(アミノプロピル)アミン、ビス(アミノブチル)アミン、トリス(アミノエチル)アミン、トリス(アミノプロピル)アミン、トリス(アミノヘキシル)アミン、トリスアミノヘキサン、4−アミノメチル−1,8−オクタメチレンジアミン、トリスアミノノナン、N−(2−アミノエチル)プロパンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(3−アミノプロピル)ブタンジアミン、メラミン、オリゴマー性ジアミノジフェニルメタン、3官能価以上のアミン末端ポリオキシアルキレンポリオール、3官能価以上のポリエチレンイミン及び3官能価以上のポリプロピレンイミンから構成される群から選択される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
カーボネートが、エチレンカーボネート、1,2−又は1,3−プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ジナフチルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、ジデシルカーボネート、及びジドデシルカーボネートから構成される群から選択される請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
平均アミン官能価が2.1〜10のアミン又はアミン混合物を反応させる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
1種又は2種以上のカーボネートと1種又は2種以上のアミンとの反応を溶剤中で行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
溶剤が、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びソルベントナフサから構成される群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
反応を、不活性溶剤の非存在下に行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法により製造された高官能性高分岐ポリウレア。
【請求項10】
請求項9に記載の高官能性高分岐ポリウレアを、接着促進剤及びチキソトロピック剤として、そしてペイント及びワニス、コーティング、接着剤、封止剤、注型用エラストマー及びフォームを製造するための成分として使用する方法。

【公表番号】特表2007−510053(P2007−510053A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538743(P2006−538743)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012468
【国際公開番号】WO2005/044897
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】