説明

高屈折率接着剤

本発明は、少なくとも1.50の屈折率を有する感圧性接着剤を提供する。感圧性接着剤は、置換又は非置換カルバゾール基を含有する少なくとも1つのモノマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧性及び加熱活性化接着剤に関する。より具体的には、本発明は、高屈折率を有する接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧性接着剤(「PSA」)は、本明細書では、室温で永続的粘着性を示す接着剤として定義される。この特性により、感圧性接着剤は、ほんの軽い指圧のみで適用してもしっかりと接着することが可能になる。PSAは、特性:接着力、貼着力、伸縮性、及び弾性のバランスがとれている。接着力は、表面への迅速な接着と、加圧時に生じる接着強度(しばしば、「剥離強度」として測定される)の両方を指す。貼着力は、「剪断強度」又は剪断力に供したときの適用されたPSAの破壊に対する抵抗性を指す。伸縮性は、低応力下で伸長する能力を指す。弾性は、材料が、伸ばされたとき収縮力を示し、力が解除されたとき収縮する特性を示す。
【0003】
加熱活性化接着剤(「HA」)は、本明細では、室温では非粘着性であるが、高温で一時的に粘着性になり、基材に接着することができる接着剤として定義される。この活性化温度では又はそれより高い温度では、加熱活性化接着剤はPSAと同じ特徴、すなわち、接着力、貼着力、伸縮性、及び弾性を有する。これらの接着剤は、通常、室温を超えるT又は融点(T)を有する。温度がT又はT超に上昇したとき、貯蔵弾性率は通常低下し、接着剤は粘着性になる。
【0004】
感圧性及び加熱活性化接着剤は、光学製品における用途を含む多様な用途を有する。ある光学的用途では、接着剤の屈折率(RI)を、適用する基材の屈折率に一致させることが有用である。この屈折率の一致は、グレア及び反射率を低減することにより、構成体の光学特性を高める。グレアは、本明細書では、450〜650ナノメートルの範囲にわたる平均反射率として定義され、反射率は、本明細書では、表面上の放射束入射の一部が、基部が表面であり、入射光を含む同じ半球に戻るプロセスとして定義される(Handbook of Optics,2nd ed.,McGraw−Hill,Inc.,1995を参照)。しばしば、基材は1.48〜1.65の範囲の屈折率を有する高分子材料であり、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート(PMMA)は1.489のRIを有し、ポリカーボネートは1.585のRIを有し、ポリエチレンテレフタレート(PET)は1.64のRIを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
典型的なPSA及び加熱活性化接着剤は、約1.47以下の屈折率を有する。これらのPSAを光学的用途で用いる場合、グレア及び反射率が生じる場合がある。したがって、このような高屈折率を有する接着剤に対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1.50の屈折率を有する接着剤を提供する。これらの感圧性及び加熱活性化接着剤は、基材、又は被接着体が同様に高屈折率を有する場合、光学的用途に特に好適である。本発明の感圧性接着剤は、有利に、グレア及び反射率を低減する屈折率の一致を可能にする。
【0007】
多くの実施形態では、本発明は更に、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%の光透過率値を有する、光学的に透明である接着剤を提供する。用語「光透過率値」は、550nmの波長における合計入射光線の百分率として、光源へ後方反射しない、又はフィルムにより吸収されない光の百分率を意味する(放射された光/光源×100)。接着剤は更に、2%未満のヘイズ、好ましくは1%未満のヘイズを有する。
【0008】
本発明の接着剤は、カルバゾール基を含有する少なくとも1つのモノマーを含む。本発明の1つの態様は、(a)(メタ)アクリル酸エステルモノマーからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーと、(b)カルバゾール基を含有する少なくとも1つのモノマーとの共重合化反応生成物を含む感圧性接着剤である。本明細書で使用するとき、用語「(メタ)アクリル」又は「(メタ)アクリレート」は、アクリル及びメタクリル(又はアクリレート及びメタクリレート)の両方を含む。
【0009】
本発明の別の態様は、(a)少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、(b)置換又は非置換カルバゾール基を含有する少なくとも1つのモノマーと、(c)酸官能性モノマーを含有する少なくとも1つと、の共重合化反応生成物を含む感圧性接着剤である。
【0010】
更に、本発明の別の態様は、(a)少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、(b)置換又は非置換カルバゾール基を含有する少なくとも1つのモノマーと、(c)少なくとも1つの酸官能性モノマーを含むか又は含まないものと、更に(d)構成成分(a)、(b)、及び(c)のモノマーと共重合可能な少なくとも1つの非酸含有極性モノマーと、の共重合化反応生成物を含む感圧性接着剤である。
【0011】
本発明の感圧性接着剤は、他のモノマー、架橋剤、及び他の添加剤をを含んでもよいか又は含まなくてもよい。
【0012】
本発明の別の実施形態は、本発明の感圧性接着剤でコーティングされた基材である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、少なくとも1.50の屈折率を有する接着剤に関する。好ましくは、接着剤は、少なくとも1.54の屈折率を有する。
【0014】
本発明の感圧性接着剤は高屈折率を有し、更に良好なバランスの感圧性接着剤に関連する4つの特性:接着力、貼着力、伸縮性、及び弾性を有する。接着剤は、使用温度でDahlquist基準(Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology,D.Satas,2nd ed.,page172(1989)に記載)を満たす。この基準は、良好な感圧性接着剤を、1×10−6cm/ダインを超える1秒クリープコンプライアンスを有するものとして定義する。あるいは、弾性率は1次近似まではコンプライアンスの逆数であるため、感圧性接着剤は100kPa(1×10ダイン/cm)未満の剪断弾性率を有する接着剤として定義してもよい。
【0015】
屈折率は、本明細書では、約583.9ナノメートル(nm)の波長でナトリウムの黄色光を放射している状態の、自由空間における電磁放射線の速度の、その材料中の放射速度に対する比であると理解される、材料(例えば、モノマー又はその重合化生成物)の絶対屈折率として定義される。屈折率は、既知の方法を使用して測定でき、一般にAbbe屈折計を使用して測定される。
【0016】
本発明の感圧性接着剤は、少なくとも1つのカルバゾールモノマーを含む(メタ)アクリレート接着剤である。感圧性接着剤は、少なくとも1つの非三級アルコールの(メタ)アクリル酸エステルと、少なくとも1つ以上の酸官能性モノマーとを含んでよく、更に1つ以上の非酸官能性極性モノマーを含むか又は含まない。本発明の感圧性接着剤は、架橋剤のような接着剤の物理的特性を改善するために添加してよい他のモノマー、及び粘着付与剤又は可塑剤のような他の添加剤をを含むか又は含まない。
【0017】
本発明の感圧性接着剤で有用な(メタ)アクリルモノマーは、典型的には、総モノマー100重量部に対して、約5〜約95重量部、好ましくは10〜90重量部の範囲で存在する。有用なアクリルモノマーとしては、そのアルキル基が約1〜約12個の炭素原子、好ましくは約4〜8個の炭素原子を含む、非三級アルキルアルコールのモノマー性アクリル又はメタクリル酸エステル、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む。
【0018】
好適な(メタ)アクリルエステルモノマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸と、1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−メチル−1−ブタノール、1−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール等のような非三級アルキルアルコールとのエステルからなる群から選択されるもの、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。このようなモノマー性アクリル又はメタクリル酸エステルは、当該技術分野において既知であり、市販されている。
【0019】
好ましくは、アクリレートモノマーは、結果として得られる接着剤に低ガラス転移温度(T)を付与するよう選択される。このモノマーは、典型的には、ホモポリマーの関数として測定したとき、0℃未満、より好ましくは−20℃未満のTを有する。Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology,D.Satas,2nd ed.,page399(1989)を参照してよい。
【0020】
カルバゾールモノマーは、高屈折率アクリルモノマーであり、好ましくはその全てが70℃以下のホモポリマーガラス転移温度を有する。これらのカルバゾールモノマーは、単独で又は他のアクリルモノマーの存在下で重合したとき、別の方法で入手可能なものより高いRIを有するPSAが得られる。モノマー比を調節することにより、少なくとも1.50のRIを有するPSAを作製することが可能である。典型的には、接着剤は、総モノマー100重量部に対して、95〜約5重量部、好ましくは90〜10重量部のカルバゾールモノマーを含む。
【0021】
本発明の芳香族モノマーは、以下の一般式により表される:
【0022】
【化1】

【0023】
式中、
は、−O−、−S−、又は−NR−、ここで、RはH又はC〜Cアルキルである、であり、好ましくはXは−O−であり、
は、1つ以上のエーテル酸素原子及び1つ以上のペンダントヒドロキシ基を含有するか又は含有しない、炭素数1〜8個のアルキレンであり、
nは、1〜3であり、
は、H又はCHのいずれかである。
【0024】
特定の好ましい実施形態では、Rは、炭素数1〜8個のアルキレン、すなわち、−C2a−(式中、aは1〜8である)である。他の実施形態では、Rは、1つ以上のカテナリーエーテル酸素原子を含有してよく、例えば、−C2b−O−C2c−(式中、b及びcは少なくとも1であり、b+cは2〜8である)である。別の実施形態では、Rは、ペンダントヒドロキシ基を含有してよく、例えば、−C2b−CH(OH)−C2c−(式中、b及びcは少なくとも1であり、b+cは2〜8である)である。必要に応じて、カルバゾール基を臭素化して、得られる接着剤の屈折率を上昇させることができる。しかしながら、このような臭素置換はまた、接着剤のTgも上昇させる場合がある。
【0025】
式Iの化合物(式中、Rは6〜8である)は、新規であると考えられる。これらの化合物は、R≦4である同族体より著しく低いTを有するが、高屈折率を保持し、それ故高屈折率PSAとして有用であることが更に見出されている。ホモ及びコポリマーは、必要に応じて可塑剤及び粘着付与剤とブレンドしてもよいか又はブレンドしなくてもよい。
【0026】
Donatas Satas,Handbook of Pressure Sensitive Adhesives,1st Edition,Von Nostrand Rheinhold,NY,1982によると、「ガラス転移温度は室温におけるポリマーの剛性の正確な測定値でもなく、感圧性特性の正確な測定値でもない。感圧性接着剤用途のためのポリマーの好適性を予測すること、及びコポリマーの特性に対するコモノマーの効果を予測することは、容易かつ便利な方法である」。
【0027】
式Iのカルバゾール含有モノマー(式中、n=0)は、(メタ)アクリロイル化合物(エステル又は酸ハロゲン化物のような)と、カルバゾール化合物との単純な縮合により調製できる。式Iの化合物(式中、n=1〜3である)は、求核−XH基を有するカルバゾール化合物をまず式Z−R−XH(式中、Zはハロゲン化物のような脱離基である)の化合物でアルキル化し、続いて以下のように(メタ)アクリロイル化合物と縮合する、2段階合成により調製できる。
【0028】
【化2】

【0029】
式Iのカルバゾールモノマーを調製する他の方法は、当業者に明らかである。例えば、式I(式中、n=2である)のモノマーは、カルバゾール化合物をエチレンカーボネートと反応させ、続いて(メタ)アクリロイル化合物と縮合させることにより調製できる。
【0030】
接着剤コポリマーは更に、酸官能性モノマーを含んでよく、ここで、酸官能基はカルボン酸のような本質的に酸、又はアルカリ金属カルボン酸塩のようなそれらの塩であってもよい。有用な酸官能性モノマーとしては、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和スルホン酸、エチレン性不飽和ホスホン酸、及びこれらの混合物から選択されたものが挙げられるが、これらに限定されない。このような化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、オレイン酸、β−カルボキシエチルアクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸、及びこれらの混合物から選択されたものが挙げられる。
【0031】
それらの入手可能性のため、本発明の酸官能性モノマーは一般に、エチレン性不飽和カルボン酸、すなわち(メタ)アクリル酸から選択される。更により強酸が望ましい場合、酸性モノマーとしては、エチレン性不飽和スルホン酸及びエチレン性不飽和ホスホン酸が挙げられる。酸官能性モノマーは、存在するとき、一般に、総モノマー100重量部を基準として、1〜15重量部、好ましくは1〜10重量部の量で使用される。電子的用途のようないくつかの実施形態では、酸官能性モノマーは、このような装置の性能に悪影響を与えるため、存在しない。
【0032】
接着剤コポリマーは更に、酸官能性モノマーを除く他の極性モノマーを含んで、感圧性接着剤の貼着強度を高めることができる。有用な極性モノマーとしては、アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、N−ビニルラクタム、及びN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。例証となる例としては、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
好ましい非酸極性モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、及びこれらの混合物が挙げられる。一般に、非酸極性モノマーは、典型的には、総モノマー100重量部を基準として、約0〜約12重量部、好ましくは約2〜約8重量部の範囲で存在する。
【0034】
感圧性接着剤を非粘着性にしない量の、他のビニルモノマーを添加して、性能を改善したり、コストを下げたりすること等ができる。使用するとき、接着剤ポリマーに有用なビニルモノマーとしては、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル)、スチレン、置換スチレン(例えば、α−メチルスチレン)、及びこれらの混合物が挙げられる。そのようなビニルモノマーは一般に、総モノマー100重量部を基準として0〜5重量部、好ましくは1〜5重量部で使用される。
【0035】
モノマーの共重合性混合物は、連鎖移動剤を更に含んで、結果として得られるコポリマーの分子量を制御できる。有用な連鎖移動剤の例としては、アルコール、メルカプタン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるようなものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい連鎖移動剤は、イソオクチルチオグリコレートである。混合物は、総モノマー混合物100重量部を基準として、最大約0.5重量部、典型的には約0.01〜約0.5重量部、使用する場合、好ましくは約0.05重量部〜約0.2重量部の連鎖移動剤を更に含んでよい。
【0036】
ポリ(メタ)アクリレート感圧接着剤の貼着力を増大させるために、架橋剤を接着剤組成物中へ組み込んでよい。主たる2つのタイプの化学架橋剤は、代表的なものである。第1の架橋添加剤は、多官能アジリジン、イソシアネート、オキサゾール及びエポキシ化合物のような熱架橋剤である。アジリジン架橋剤の1例は、1,1’−(1,3−フェニレンジカルボニル)−ビス−(2−メチルアジリジン)(CAS番号7652−64−4)である。その他のビスアミド架橋剤は、米国特許第6,893,718号(Melanconら)に記載されている。一般的な多官能性イソシアネート架橋剤は、トリメチロールプロパントルエンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、及び当該技術分野において既知のその他のものである。このような化学的架橋剤は、重合後に溶剤系PSAに添加して、コーティングされた接着剤のオーブン乾燥中に、熱によって活性化することができる。
【0037】
ビスアミド架橋剤は、式IIであってよく、
【0038】
【化3】

【0039】
式中、
それぞれのRは、H及びC2n+1からなる群から独立して選択され(ここで、
nは、1〜5の範囲の整数である)、
は、フェニル、置換フェニル、トリアジン、及び−C2m−(式中、mは1〜10の範囲の整数である)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される二価のラジカルである。
【0040】
本発明にて有用な多官能性オキサゾリン架橋剤は、2−オキサゾリン、2−オキサジン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される基を、1分子あたり2つ以上含有するものである。好ましい1,3−オキサジル複素環式化合物は、1,3−オキサゾリンであり、特に好ましい1,3−オキサゾリンは、2−フェニル−2−オキサゾリンである。ビスオキサゾリンは、典型的には、ポリカルボン酸から誘導され、このようなポリカルボン酸としては、芳香族酸、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、5−t−ブチルイソフタル酸、トリメシン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいポリカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸及びトリメシン酸が挙げられる。
【0041】
本発明にて有用な多官能性1,3−オキサジル複素環式化合物は、対応する、ポリカルボン酸及びアルカノールアミンのエステルの反応により、都合よく調製することができる。ビスオキサゾリンを含むポリ(1,3−オキサジル複素環式)化合物の非限定的な例は、以下の式IIIによって表される核を有するものである。
【0042】
【化4】

【0043】
式中、Aは、1個〜20個の炭素原子を有する、環式若しくは非環式脂肪族族又は置換環式若しくは非環式脂肪族部分、又は6個〜20個の炭素原子を有する、芳香族(アリール)単核若しくは多核又は脂肪族置換アリール残基、及び約2〜200,000の反復単位を含むポリマー若しくはオリゴマー残基からなる群から選択され、
は、独立して、H、CH、CHCH、又はCを表し、
及びRは、独立して、H又はCHを表し、好ましくはR及びRは、両方共にCHとなることはなく、
xは、0又は1の整数を表し、
nは、2以上の整数、好ましくは2又は3である。
【0044】
有用な多官能性オキサゾリン架橋剤としては、4,4’−5,5’−テトラヒドロ−2,2’−ビスオキサゾール(つまり、2,2’−ビス(2−オキサゾリン));2,2’−(アルカンジイル)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール]、例えば、2,2’−(1,4−ブタンジイル)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール]及び2,2’−(1,2−エタンジイル)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール];2,2’−(アリーレン)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール]、例えば、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール];2,2’−(1,5−ナフタレニル)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール]及び2,2’−(1,8−アントラセニル)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール];スルホニル、オキシ、チオ又はアルキレンビス2−(アリーレン)[4,5−ジヒドロオキサゾール]、例えば、スルホニルビス2−(1,4−フェニレン)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール]、オキシビス2−(1,4−フェニレン)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール]、チオビス2−(1,4−フェニレン)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール]及びメチレンビス2−(1,4−フェニレン)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール];2,2’,2’’−(アリーレントリス[4,5−ジヒドロオキサゾール]、例えば、2,2’,2’’−(1,3,5−フェニレントリス[4,5−ジヒドロオキサゾール];2,2’,2’’,2’’’−(アリーレンテトラ[4,5−ジヒドロオキサゾール]、例えば、2,2’,2’’,2’’’−(1,2,4,5−フェニレンテトラ[4,5−ジヒドロオキサゾール]並びに末端オキサゾリン基を有するオリゴマー及びポリマー材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
典型的には、このような架橋剤は、接着剤コポリマー100pph(固体で)あたり約0.05〜1.0pphの量で用いられる。
【0046】
別の実施形態では、フリーラジカルに依存して架橋反応を行う化学的な架橋剤を用いてよい。例えば、過酸化物のような試薬は、フリーラジカル供給源として機能する。十分に加熱した場合、これらの前駆体は、ポリマーの架橋反応を生じさせる、水素引き抜き反応によりフリーラジカルを発生させる。一般的なフリーラジカル生成試薬は、過酸化ベンゾイルである。フリーラジカル発生剤はほんの少量のみ必要であるが、架橋反応を達成するためには、一般にビスアミド試薬に必要とされる温度よりも高い温度を必要とする。
【0047】
第2の種類の化学架橋剤は、高強度の紫外線(UV)光によって活性化される感光性架橋剤である。アクリルPSAに使用される2つの一般的な感光性架橋剤は、ベンゾフェノン、及び米国特許第4,737,559号に記載されているような共重合性芳香族ケトンモノマーである。溶液ポリマーに後から添加し、紫外線によって活性化することができる別の光架橋剤は、トリアジン、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−s−トリアジンである。これらの架橋剤は、中圧水銀ランプ又はUVブラックライトのような人工光源から発生する紫外線によって活性化される。
【0048】
多官能性アクリレートのようなポリエチレン性不飽和化合物は、バルク又は乳化重合プロセスにおいて架橋剤として有用である。ポリエチレン性不飽和化合物の例としては、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ビスフェノール−Aジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジ−、トリ−、及びテトラアクリレート、並びに1,12−ドデカンジオールジアクリレートのようなポリアクリル官能性モノマー;アリルメタクリレート、2−アリルオキシカルボニルアミドエチルメタクリレート、及び2−アリルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなオレフィン性アクリル官能性モノマー;アリル2−アクリルアミド−2,2−ジメチルアセテート;ジビニルベンゼン;2−(エテニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(エチニルオキシ)−1−プロペン、4−(エチニルオキシ)−1−ブテン、及び4−(エテニルオキシ)ブチル−2−アクリルアミド−2,2−ジメチルアセテートのようなビニルオキシ基置換官能性モノマー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
ポリエチレン性不飽和架橋剤は、典型的には、接着剤コポリマー固体100重量部を基準として、0.05〜約1重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部存在する。
【0050】
架橋はまた、ガンマ線又は電子線放射線のような高エネルギー電磁放射線を使用して達成してもよい。この場合、追加の架橋剤を必要としない場合がある。
【0051】
共重合に続いて、他の添加剤を、結果として得られるアクリレート又はメタクリレートコポリマーとブレンドしてよい。例えば、適合する粘着付与剤及び/又は可塑剤を添加して、PSAの最終的な粘着及び剥離特性を最適化するのに役立つ場合がある。このような粘着付与剤の使用は、Handbook of Pressure−Sensitive Adhesive Technology,edited by Donatas Satas(1982)に記載されているように、当該技術分野において一般的である。
【0052】
有用な粘着付与剤の例としては、ロジン、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の接着剤に添加してもよい可塑剤は、広範な市販の材料から選択することができる。
【0053】
代表的な可塑剤としては、ポリオキシエチレンアリールエーテル、ジアルキルアジパート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジパート、トルエンスルホンアミド、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジベンゾエート、ポリオキシプロピレンアリールエーテル、ジブトキシエトキシエチルフォルマール、及びジブトキシエトキシエチルアジパートが挙げられる。使用するとき、粘着付与剤は、好ましくはコポリマー100重量部あたり約50重量部を超えない量で添加され、可塑剤はコポリマー100重量部あたり最大約50重量部の量で添加してよい。
【0054】
好ましくは、添加される粘着付与剤及び/又は可塑剤はいずれも、少なくとも1.50の屈折率を有し、その結果それらを組み込んでも感圧性接着剤の屈折率は低下しない。Handbook of Plasticizers,George Wypych,Editor,ChemTec Publishing,Toronto−Scarborough,Ontario,Canada,ISBN 1−895198−29−1、及びWypych,Anna,Plasticizers Database(2nd Electronic Edition).ChemTec Publishing.を参照してよい。オンラインバージョンは、
http://www.knovel.com/knovel2/Toc.jsp?BookID=976&VerticalID=0
で入手可能である。
【0055】
有用な高屈折率可塑剤としては、芳香族リン酸エステル、フタレート、安息香酸エステル、芳香族スルホンアミド、及び一部のロジンが挙げられる。リン酸エステル及びフタレートが好ましい。代表的な可塑剤としては、ジエチレングリコールジベンゾエート(1.5424 n25/D)、4−(tert−ブチル)フェニルジフェニルホスフェート(1.555 n25/D)、トリメチルフェニルホスフェート(1.5545 n25/D)、トリフェニルホスフェート(1.5575 n25/D)、フェニルメチルベンゾエート(1.56 n25/D)、ジエチレングリコールジベンゾエート(1.5424 n25/D)、ブチルベンジルフタレート(1.537 n25/D)、ロジンのメチルエステル(1.531 n20/D)、アルキルベンジルフタレート(1.526 n25/D)、ブチル(フェニルスルホニル)アミン(1.525 n20/D)、ベンジルフタレート(1.518 n25/D)、トリメチルトリメリテート(1.523 (n20/D)、及び2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート(1.51 (n20/D)が挙げられる。
【0056】
更に、光学的用途では、粘着付与剤、可塑剤及び他の添加剤は、低い色、すなわち、<3、好ましくは<1のガードナー値(Gardner value)を有するべきである。更に、可塑剤は、ポリマーマトリックス及び重合媒体に適合性である、すなわち混和性であるように選択すべきである。
【0057】
接着剤組成物の性能を向上させるために、他の添加剤を加えることができる。例えば、レべリング剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、酸素阻害剤、湿潤剤、レオロジー変性剤、消泡剤、殺生物剤、染料、色素等をこれに包含することができる。これらの添加剤及びその使用の全てが、当該技術分野において周知である。これらの化合物のいずれも、接着特性及び光学特性に悪影響を及ぼさない限り使用できることが理解される。
【0058】
UV吸収剤及びヒンダードアミン光安定剤も本組成物に対する添加剤として有用である。UV吸収剤及びヒンダードアミン光安定剤は、最終硬化製品への紫外線の有害な影響を減少させるように作用し、それによりコーティングの耐候性、又は亀裂、黄変及び層間剥離に対する耐性を高める。好ましいヒンダードアミン光安定剤は、CIBA−GEIGY Corporation,Hawthorne,NYからTinuvin(商標)144として入手可能なビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]ブチルプロパンジオエートである。
【0059】
総モノマー組成物を基準として5重量部未満の濃度である下記のUV吸収剤及びこれらの組み合わせは、望ましい結果を生じ得る:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル1−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ブチルプロパンジオエート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−ヒドロキシル−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、α−(3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシルフェニル)−1−オキソプロピル)−ω−ヒドロキシ、及びBASF Wyandotte Inc.,Parsippany,NJから販売されるUvinul(登録商標)D−50及びMS−40。しかしながら、UV吸収剤の濃度は、組成物の総重量を基準として1〜5%の範囲内が好ましい。
【0060】
本明細書の接着剤コポリマーは、任意の従来のフリーラジカル重合法により調製してもよく、これには溶液、放射、バルク、分散、乳化、及び懸濁プロセスが含まれる。光学的用途では、溶液、UV及びバルクプロセスが好ましい。他のプロセスは、光学特性に影響を及ぼす可能性のある複屈折性物質又は異物を導入してよい。
【0061】
接着剤コポリマーは、米国特許番号第3,691,140号(Silver)、同第4,166,152号(Bakerら)、同第4,636,432号(Shibanoら)、同第4,656,218号(Kinoshita)及び同第5,045,569号(Delgado)に開示されたような懸濁重合を介して調製してよい。好ましくは、(メタ)アクリレートコポリマーは、フリーラジカル反応開始剤の存在下において乳化重合プロセスにより調製される。
【0062】
本発明に使用される(メタ)アクリレート接着剤コポリマーの調製に有用な水溶性及び油溶性反応開始剤は、熱に暴露するとモノマー混合物の(共)重合を開始するフリーラジカルを生成する反応開始剤である。水溶性反応開始剤は、乳化重合により(メタ)アクリレートポリマーを調製するのに好ましい。好適な水溶性反応開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物;上記過硫酸塩と、メタ重亜硫酸ナトリウム及び重亜硫酸ナトリウムからなる群から選択されるもののような還元剤との反応生成物のような酸化還元反応開始剤;並びに4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)及びその可溶性塩(例えば、ナトリウム、カリウム)からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい水溶性反応開始剤は、過硫酸カリウムである。好適な油溶性反応開始剤としては、いずれもE.I.du Pont de Nemours Co.から入手可能な、VAZO64(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル))及びVAZO52(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル))のようなアゾ化合物、過酸化ベンゾイル及び過酸化ラウロイルのような過酸化物、並びにこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい油溶性熱反応開始剤は、(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル))である。使用するとき、反応開始剤は、モノマー構成成分100重量部を基準として、約0.05重量部〜約1重量部、好ましくは約0.1重量部〜約0.5重量部の感圧接着剤を含んでよい。
【0063】
乳化技術による重合は、乳化剤(emulsifier)(乳化剤(emulsifying agent)又は界面活性剤と呼ばれる場合もある)の存在を必要とする場合がある。本発明に有用な乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0064】
好ましくは、乳化重合は、アニオン性界面活性剤(1種又は複数)の存在下で行われる。界面活性剤濃度の有用な範囲は、乳化感圧性接着剤の全てのモノマーの総重量を基準として約0.5〜約8重量パーセント、好ましくは約1〜約5重量パーセントである。
【0065】
あるいは、コポリマーは、溶媒重合、分散重合、及び無溶媒バルク重合の従来の技術が挙げられるが、これらに限定されない技術により重合することができる。モノマー混合物は、前述のように、コモノマーを重合させるのに有効な種類及び量の重合開始剤、特に熱反応開始剤又は光反応開始剤を含んでよい。
【0066】
典型的な溶液重合法は、モノマー、好適な溶媒、及び任意の連鎖移動剤を反応槽に加え、フリーラジカル反応開始剤を添加し、窒素でパージし、反応槽をバッチサイズ及び温度に応じて反応が完了するまで、典型的には約1時間〜約20時間、高温で、典型的には約40℃〜100℃の範囲に維持することによって実施される。溶媒の例は、メタノール、テトラヒドロフラン、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、及びエチレングリコールアルキルエーテルである。それらの溶媒は、単独で又はそれらの混合物として使用することができる。
【0067】
典型的な光重合法では、モノマー混合物に、光重合開始剤(すなわち、光反応開始剤)の存在下で紫外(UV)線を照射してよい。好ましい光反応開始剤には、Ciba Speciality Chemical Corp.,Tarrytown,NYからIRGACURE及びDAROCURの商品名で入手可能なものであり、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(IRGACURE 651)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IRGACURE 2959)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン(IRGACURE 369)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907)、及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(DAROCUR 1173)が挙げられる。特に好ましい光反応開始剤は、IRGACURE819、651、184及び2959である。
【0068】
米国特許第4,619,979号及び同第4,843,134号(Kotnourら)に記載されている連続フリーラジカル重合法のような無溶媒重合法;米国特許第5,637,646号(Ellis)に記載されているバッチ反応器を使用する本質的に断熱の重合法;並びに米国特許第5,804,610号(Hamerら)に記載されている、パッケージ化されたプレ接着剤組成物を重合するために記載された方法を使用して、ポリマーを調製することもできる。
【0069】
本発明の接着剤を、従来のコーティング技術を用いて種々の可撓性及び非可撓性裏材上にコーティングして、接着剤コーティングされた材料を製造してよい。可撓性基材は、本明細書では、テープ裏材として従来利用される任意の材料として定義され、又は任意の他の可撓性材料であってよい。例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリメチル(メタ)アクリレート(PMMA)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、及びエチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。非可撓性基材の例としては、金属、金属化ポリマーフィルム、インジウムスズ酸化物でコーティングされたガラス及びポリエステル、PMMAプレート、ポリカーボネートプレート、ガラス、又はセラミックシート材料が挙げられるが、これらに限定されない。接着剤でコーティングされたシート材料は、ラベル、テープ、サイン、カバー、標識インデックス、ディスプレイコンポーネント、タッチパネル等のような接着剤組成物を利用することが従来知られている任意の物品の形態をとることができる。
【0070】
上記組成物は、特定の基材に適するように調整された従来のコーティング技術を使用して基材にコーティングされる。例えば、これらの組成物は、ローラーコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、及びダイコーティングのような方法により、様々な固体基材に適用され得る。これらの種々のコーティング法は、組成物を可変の厚さで基材上に定置することを可能にし、それにより組成物をより広い範囲で使用することを可能にする。コーティング厚さは変動してもよいが、2〜500マイクロメートル(乾燥厚さ)、好ましくは約25〜250マイクロメートルのコーティング厚さが考えられる。
【0071】
接着剤エマルション(接着剤コポリマー及び水を含む)を、続いて実施するコーティングのために任意の所望の濃度であってもよいが、典型的には30〜70重量%の水分、及びより典型的には50〜65重量%の水分である。エマルションを更に希釈することにより、又は一部乾燥させることにより、所望の濃度を得ることができる。
【実施例】
【0072】
本発明は、以下の非限定的な例及び試験方法を参照して更に記載される。部、パーセント及び比は全て、特に明記されていない限り重量基準である。
【0073】
重合法
感圧性接着剤は、従来のフリーラジカル重合及び好適なリビングラジカル重合法により調製できる。好適な重合方法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、及びバルク重合が挙げられる。以下の構成成分を用いた。
【0074】
【表1】

【0075】
乳化重合:一般的手順
全ての構成成分を500mLのビーカーに添加し、表IIIに示す量で、水性及び有機相が均質になるまで混合してよい。次いで混合物を2分間ワーリングブレンダー内でホモジナイズして、重合用エマルションを調製してよい。エマルションをガラス瓶に入れ、窒素でパージすることにより脱酸素化してよい。瓶を密閉し、回転水浴中に置いて、本質的に完全な重合に作用させてよい。重合後、ラテックスをチーズクロスを通して濾過して、コーティング及び評価前に凝塊を除去してよい。ポリマーラテックスを37マイクロメートル(1.5mil)ポリエステルフィルム上にコーティングして、約25マイクロメートル(〜1mil)の乾燥コーティング厚さを提供してよい。コーティングされたフィルムを平衡化し、その後接着力試験方法に記載したように、約23℃及び相対湿度50%の条件下で試験した。平衡化したフィルムを利用して、屈折率を測定してよい。
【0076】
バルク重合:一般的手順
表IVに示した量の、モノマー構成成分を、250mLのガラス瓶中で混合して、それにIRGACURE651(総モノマー重量の0.2%)を添加した。瓶の内容物を十分に混合し、窒素でパージすることにより脱酸素化してよい。ナイフコーターを用いて、下塗りされた38マイクロメートル(1.5mil)のポリエステルフィルムと剥離ライナとの間の厚さが約50〜80マイクロメートル(〜2ないし3mil)になるように、混合物をコーティングしてよい。得られたコーティングを、蛍光黒色光(約680ミリジュール/cm)下で紫外線を用いて重合させ、その後接着力試験方法に記載したように、約23℃及び相対湿度50%の条件下で試験してよい。平衡化したフィルムを利用して、上述のように屈折率を測定してよい。
【0077】
試験方法
実施例のPSAでコーティングされた可撓性シート材料を評価するために用いた試験方法は業界で標準的な試験である。標準的な試験は、米国材料試験協会(ASTM),Philadelphia,PA及びPressure Sensitive Tape Council(PSTC)の様々な刊行物に記載されている。
【0078】
引き剥がし接着力(ASTM D3330−78 PSTC−1(11/75))
引き剥がし接着力は、特定の角度及び除去速度で測定される、試験パネルからコーティングされた可撓性シート材料を取り除くのに必要な力である。実施例では、この力は、コーティングされたシートの幅100mmあたりのニュートン(N/100mm)で表される。手順は以下の通りである:
1.幅12.7mmのコーティングされたシートを、少なくとも12.7線状cmでフィルムに接触する清潔なガラスの試験プレートの水平面に適用した。2kgの硬質ゴムローラを用いて、ストリップを適用した。
【0079】
2.コーティングされたストリップの自由端を、それ自体ほぼ接触するよう折り返し、よって除去角度は180°になる。自由端を接着力試験機の秤に取り付ける。
【0080】
3.ガラスの試験プレートを、1分あたり0.3メートルの一定速度で秤から離れてプレートを移動させることができる、引張試験機の金具に固定する。
【0081】
4.テープをガラス表面から引き剥がしたときの、読み取り値をニュートンで記録する。試験中に観察された数の範囲の平均としてデータを報告する。
【0082】
屈折率の測定
接着剤の屈折率を、Erma Inc.,of Tokyo,Japanにより製造され、Fisher Scientificにより販売されているAbbe屈折計を用いて測定した。
【0083】
ガラス転移(T)の測定
加熱活性化接着剤のTを、TA Instruments,New Castle,DE,USAにより製造された、示差走査熱量計(DSC)Q200機器を用いて測定した。
【0084】
ヘイズの測定
接着剤フィルムのヘイズ及び透過率を、ASTM D1003に従ってBYK Gardner分光光度計で測定し、A2値として報告してよく、この値はタングステンフィラメント電球(約2854Kの相関温度で作動する)の光下におけるヘイズを表す。
【0085】
調製例1
6−カルバゾール−9−イル−ヘキサン−1−オルの合成:
500mLの3つ口丸底フラスコに25gのカルバゾール、218gのジメチルホルムアミド、45.5gの炭酸カリウム、及び43gの6−クロロ−1−ヘキサノールを添加した。反応混合物を150℃で6時間加熱し、室温に冷却した。500gの酢酸エチルを添加し、250gの水で、次いで50gの濃HClを含む250gの水で、次いで250gの飽和ブラインで洗浄した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去して、58gの茶色の半固体を得た。粗生成物を、溶出液としてジクロロメタンを用いて、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーカラムを用いて精製した。ガスクロマトグラフィーにより、濃縮した生成物の画分が33.3gの白色固体生成物(純度〜90%)として得られた。
【0086】
アクリル酸6−カルバゾール−9−イル−ヘキシルエステルの合成
500mLの3つ口丸底フラスコに33gの6−カルバゾール−9−イル−ヘキサン−1−オル、170gのトルエン、2.2gのPTSA、10.7gのアクリル酸、及び0.07gのヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)を添加した。混合物を加熱還流し、Dean−Stark trapを用いて共沸蒸留により水を除去した。5時間還流した後、1gの追加のアクリル酸を添加し、混合物を更に1時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、100gの5%HCl水、次いで100gの10%炭酸ナトリウム水、次いで100gの飽和ブラインで洗浄した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。
【0087】
粗生成物を、溶出液としてクロロホルムを用いて、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーカラムを用いて精製した。ガスクロマトグラフィーにより、濃縮した生成物の画分が24gの透明な液体生成物(純度>99%)として得られた。正確なモノマーの分子量をGC/MSにより確認した。モノマーの屈折率は1.5905であり、ホモポリマーのTは45℃であった。
【0088】
調製例2
8−カルバゾール−9−イル−オクタン−1−オルの合成:
250mLの丸底フラスコに10gのカルバゾール、90gのジメチルホルムアミド、18.2gの炭酸カリウム、及び20.6gの8−クロロオクタノールを添加した。反応混合物を150℃で6時間加熱し、続いて室温に冷却した。200gの酢酸エチルを添加し、反応混合物を200gの水で、10gの濃HClを含む200gの水で、次いで150gの飽和ブライン溶液で3回洗浄した。溶媒を減圧下で除去して、〜30gの黄色の油を得、これをカラムクロマトグラフィーにより精製して、18gの8−カルバゾール−9−イル−オクタン−1−オルを得た。
【0089】
アクリル酸8−カルバゾール−9−イル−オクチルエステルの合成
250mLの丸底フラスコに、17.5gの上記生成物、80gのトルエン、5.1gのアクリル酸、0.04gのMEHQ、及び1.0gのパラトルエンスルホン酸(PTSA)を添加した。混合物を加熱還流し、Dean−Stark trapを用いて共沸蒸留により水を除去した。6時間後、反応混合物を室温にし、通常通り洗浄した。溶媒を揮散させて、17グラムの黄色の油を得た。カラムクロマトグラフィーを用いて精製して、GCにより7gのアクリル酸8−カルバゾール−9−イル−オクチルエステルモノマー(純度>96%)を得た。モノマーの屈折率は1.5830であり、ホモポリマーのTは23℃であった。
【0090】
溶液重合:一般的手順
表Iに示す量で、全ての構成成分を120gの容量を有するガラス瓶に計り取った。瓶の内容物を、5分間、1分あたり1リットルの流量で窒素をパージすることにより脱酸素化した。瓶を密閉し、60℃で24時間回転水浴中に置いて、本質的に完全な重合に作用させた。ポリマー溶液に、架橋剤として更に0.10重量部のビスアミドを固体で添加することにより、接着剤フィルムを調製した。ポリマー溶液を、37マイクロメートル(1.5mil)のポリエステルフィルム上にコーティングして、25マイクロメートル(〜1mil)の乾燥コーティング厚を提供した。70℃のオーブンで10分間加熱した後、コーティングされたフィルムを平衡化し、その後接着力試験方法に記載したように、約23℃及び相対湿度50%の条件下で試験した。平衡化したフィルムを利用して屈折率を測定した。
【0091】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ペンダントカルバゾール基を有するモノマー単位と、b)アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、のコポリマーを含む接着剤。
【請求項2】
前記コポリマーが、c)酸官能性モノマー単位を更に含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記ペンダントカルバゾール基を有する重合したモノマー単位が、式:
【化1】

式中、
及びXは、それぞれ独立して−O−、−S−、又は−NR−、ここで、RはH又はC〜Cアルキルである、であり、
は、1つ以上のカテナリーエーテル酸素原子又はペンダントヒドロキシ基を含有するか又は含有しない炭素数1〜8のアルキレンであり、
nは、1〜3であり、
は、H又はCHのいずれかである、である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項4】
総モノマー100重量部あたり、5〜95重量部の量のカルバゾールモノマー単位を含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項5】
が、酸素である、請求項3に記載の接着剤。
【請求項6】
が、炭素数6〜8のアルキレンである、請求項3に記載の接着剤。
【請求項7】
nが、1である、請求項3に記載の接着剤。
【請求項8】
屈折率が、少なくとも1.50である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項9】
前記アルキル(メタ)アクリレートモノマーが、約1〜約12の炭素数の非三級アルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルから選択される、請求項1に記載の接着剤。
【請求項10】
前記アルコールが、1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−メチル−1−ブタノール、1−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の接着剤。
【請求項11】
前記芳香族モノマーと共重合可能な少なくとも1つの非酸含有極性モノマーを更に含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項12】
前記極性モノマーが、アクリルアミド、N,N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、N−ビニルラクタム、及びN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、エチレン性不飽和ニトリル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の接着剤。
【請求項13】
前記極性モノマーが、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の接着剤。
【請求項14】
前記酸官能性モノマーが、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和スルホン酸、及びエチレン性不飽和ホスホン酸から選択される、請求項2に記載の接着剤。
【請求項15】
前記エチレン性不飽和カルボン酸が、アクリル酸、メタクリル酸、及びイタコン酸から選択される、請求項2に記載の接着剤。
【請求項16】
架橋剤を更に含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項17】
可塑剤を更に含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項18】
前記可塑剤が、少なくとも1.5の屈折率を有する、請求項17に記載の接着剤。
【請求項19】
a)5〜95重量部のペンダントカルバゾール基を有する前記モノマー単位と、
b)95〜55重量部の前記アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、
c)0〜15重量部の酸官能性モノマー単位と、
d)0〜15重量部の極性モノマーと、
e)0〜5重量部の他のモノマーと、を有するコポリマーであって、
前記モノマーの合計が100重量部であるコポリマーを含み、
更に可塑剤を含むか又は含まない、請求項1に記載の接着剤。
【請求項20】
a)10〜90重量部のペンダントカルバゾール基を有するモノマー単位と、
b)90〜10重量部のアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、
c)1〜15重量部の酸官能性モノマー単位と、
d)0〜15重量部の極性モノマーと、
e)0〜5重量部の他のモノマーと、を有するコポリマーであって、
前記モノマーの合計が100重量部であるコポリマーを含み、
更に可塑剤を含むか又は含まない、請求項19に記載の接着剤。
【請求項21】
前記接着剤が、加熱活性化接着剤である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項22】
少なくとも85%の光透過率値を有する、請求項1に記載の接着剤。
【請求項23】

【化2】

式中、
は、−O−、−S−、又は−NR−、ここで、RはH又はC〜Cアルキルである、であり、
は、1つ以上のカテナリーエーテル酸素原子又はペンダントヒドロキシ基を含有するか又は含有しない炭素数6〜8のアルキレンであり、
nは、1であり、
は、H又はCHのいずれかである、化合物。
【請求項24】
請求項23に記載の前記化合物のホモポリマー又はコポリマーを含む接着剤。

【公表番号】特表2011−502202(P2011−502202A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532106(P2010−532106)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/078740
【国際公開番号】WO2009/058513
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】