説明

高度に精製された無傷の大豆胚軸を取得する方法

本発明は、主として大豆胚軸および大豆割砕物の混合物である大豆(またはソーヤ)材料を加工する方法に関するものである。特に本発明は、前記大豆材料を、好ましくは凹凸付き円筒形機器の使用による遠心力に付すことにより、形態の相違に基づいて大豆胚軸画分を大豆割砕物画分から分離する方法を提供する。前もってこの大豆材料から、大豆外皮、大豆子葉、丸大豆、および大豆大割砕物画分の主要部分を、大きさおよび/または重さの相違に基づく従来の分離方法(例えば吸引)により除去しておくのが好ましい。本発明はさらに、大豆胚軸濃縮物ならびに例えば大豆胚軸(または胚芽もしくは胚)油および/または食品の製造のためのその使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品技術分野に関するものであり、高度に精製された無傷の大豆胚軸を取得する方法を対象とする。特に本発明は、本質的に大豆胚芽および大豆割砕物を含む大豆材料を、主要量の損傷のない胚芽を有する大豆胚芽濃縮物に分離する方法を提供する。さらに本発明は、大豆胚芽濃縮物およびその使用、例えば、大豆胚芽油および/または食品の製造のためのその使用を提供する。
【0002】
背景
大豆は何千年もの間、油および蛋白の供給源として利用されてきた。収穫の大半は植物油用に溶媒抽出し、その後脱脂した大豆ミールを飼料として利用する。収穫のごく一部が人間によりそのまま消費される。大豆製品は、まさに多種多様の加工食品に登場する。
【0003】
未加工の大豆は本質的に3つの主要部分:外皮と称される外部被覆、身または子葉とも称される2個の半割大豆;および胚芽または胚とも称される胚軸、を含んでいる。
【0004】
従来型の大豆加工では、油抽出を容易にし大豆ミール中の繊維量を減らすため、しばしば外皮を除去する。典型的には、大豆から油を生産する場合、最終油製品および脱脂ケーキの品質向上のために、まず、選別工程で、茎、さやおよび他の種子といった異物を始発原料の大豆から取り除く。次いで、この材料をロール粉砕機で粉砕し、それにより、外皮、割砕物(=破砕された子葉の部分)および胚軸の混合物が得られる。油の品質に悪影響を及ぼすであろう色素のような成分を含有する外皮の殆どを、例えば振動篩または空気選別装置を用いて一連の吸引および篩過工程によって大まかに取り除く。次に、細胞構造を破壊してその後の油抽出を可能にするため、割砕物および胚軸を合してフレーク状とし、その後、n−ヘキサンによる抽出で粗油を得、最後にこれを精製して大豆油を得る。このような従来型のプロセスでは、胚軸画分のうち幾らかが子葉と共に加工され、そして幾らかは意図せずして外皮と共に吸引除去されることがある。
【0005】
大豆は、植物性エストロゲンの一種であるゲニステインおよびダイゼインといったイソフラボンを含有し、これらは一部の栄養学者や医師により癌の予防に有用であると考えられている。イソフラボンの濃度分布は大豆全体に均一ではない。胚軸のイソフラボン含有量(重量パーセントベースで)は、典型的には子葉のイソフラボン含有量の少なくとも約3倍、しばしば10倍またはそれ以上である。その結果、一部の健康食品製造者は、イソフラボンの供給源として大豆胚軸に注目してきた。大豆胚軸濃縮物を生産し、大豆胚軸濃縮物を抽出し、大豆胚軸油および大豆胚軸ミールを得ることができる。
【0006】
このような大豆胚芽濃縮物を生産する技術方法は先行技術に記載されている。典型的には、胚芽および子葉または子葉の一部(割砕物とも呼ばれる)の間の、大きさ、重さおよび重力の差を利用した機械的分離方法が報告されている。
【0007】
例えばWO96/10341号は、清浄した大豆を割裂し、その後得られた生成物を篩過して、大きな子葉片(割砕物)を含む画分ならびに小さな割砕物、胚芽および外皮を含む第二画分を得る工程を含む、実質的に純粋な大豆胚芽を取得する、大豆の加工方法を開示している。次いで、空気中での浮遊挙動の差に基づく分離工程により、胚芽をこの第二画分から除去する。
【0008】
加工技術の別の例がEP1142489号に開示されているがこれは、大豆を清浄し、その清浄された豆を割裂し、割れた豆をさらに、例えばフレーク化および油の製造といった加工に付すことを含む、大豆の加工方法を報告している。この開示された方法では、割砕した豆を、篩および空気選別装置といった分離装置を用いて分離する。主要成分として外皮および胚芽を含む画分を分離し、空気選別により集める。この画分から空気選別により外皮部分を除去し、残った胚芽部分を濃縮する。EP1142489号に開示の方法はしたがって、吸引された外皮および胚芽の混合物からの胚芽の精製を対象としている。
【0009】
上記のような大豆胚芽の性質に鑑み、当技術分野では大豆胚芽を大豆の残存部分から分離し、純粋で損傷のない大豆胚芽を取得できる方法に対するニーズがある。しかしながら、先行技術の方法がしばしば直面する問題には、高い製造コストおよび投資、回収される胚芽が少量であること、損傷された胚芽により胚芽中の栄養が消失および/または破壊されること、不純物が非常に多い胚芽が回収されることなどがある。
【0010】
上記の点を考慮すると、当技術分野では上に述べた問題の少なくとも幾つかを克服した、大豆胚芽を分離する改良法に対するニーズが依然として存在する。
【0011】
発明の概要
本発明は、子葉、割砕物、外皮および胚芽の混合物を含む大豆生成物から、実質的に純粋で損傷のない大豆胚軸を分離する方法を対象とする。さらに本発明は特に、前記大豆割砕物および大豆胚芽の間の形態の相違に基づき、実質的に大豆割砕物および大豆胚芽を含む混合物から大豆胚芽を分離する方法を提供する。
【0012】
第一の態様では、本発明はここに、以下の工程を含む大豆加工方法を提供する:
a)丸大豆を破砕して、子葉、割砕物、外皮および胚芽を含む大豆生成物(2)とし、
b)前記大豆生成物(2)を、実質的に大豆割砕物および大豆胚芽を含む大豆材料(5)へと富化し、そして、
c)前記大豆材料(2)から前記大豆胚軸濃縮物(6)を分離する。好ましくはこの分離は、大豆胚芽および大豆割砕物の形態差に基づいている。
【0013】
好ましい実施態様では、前記大豆胚芽は、凹凸付き円筒形機器中で前記大豆材料に遠心力をかけることにより分離する。
【0014】
本方法は、胚芽を損傷することなく割砕物および胚芽を良好に分離でき、その結果、本方法に従って実質的に純粋で損傷のない大豆胚芽を回収することができる。さらに本方法は、大豆胚芽とほぼ同じ大きさおよび重さを持つ小割砕物から胚芽を分離することを可能にする。丸大豆の加工という本技術分野における先行技術を考慮すると、本方法は斬新で独特であると考えられる。何故なら、特にこの分野の先行技術は典型的には子葉、割砕物、外皮および胚芽を含む大豆生成物の混合物を分離するための異なったアプローチを教示しているためである。即ち、振動篩および/または空気選別装置を使用した従来の分離装置による分離であり、これらによる分離は全て分離しようとする材料の密度差(例えば、重さおよび/または大きさの相違)に基づいて実施される。加えて本方法は、先行技術で実行可能であると考えられている方法を超えたものであり、何故なら、ほぼ同じ密度を有する大豆割砕物および大豆胚芽を含む画分が従来技術を用いてもはや分離できない場合に、先行技術でなされてきたこととは違って、本方法がこの材料のさらなる分離を提供するためである。したがって特異なことに本方法は、先行技術と比較して相対的に多くの胚芽を大豆材料から抽出することを可能にする。
【0015】
実質的に割砕物および胚芽を含む大豆材料は、本発明により様々な方法で取得できる。
【0016】
第一の実施態様では、実質的に胚芽および割砕物を含む大豆材料を、以下の工程によって取得する:
【0017】
方法a:
a1)中等度の吸引(11a)により、大豆生成物(2)を、実質的に外皮を含む外皮画分(3a)ならびに本質的に子葉、割砕物および胚芽を含む剥皮画分(4a)に分離し、そして、
a2)前記剥皮画分を1以上の篩過および/または吸引工程(12a)に付すことにより、前記剥皮画分を、子葉に富む画分(8)ならびに実質的に大豆割砕物および胚芽を含む大豆材料に分離する。この工程において残存している若干の外皮もまた除去され得る。
【0018】
方法aを適用すると、剥皮画分(4a)から大豆材料(5)の主要部分が生じる。効率または収量を考慮すると、外皮画分(3a)からの(追加の)大豆材料(5)の分離を、篩過および/または吸引(13a)を用いて実施できる。
【0019】
この第一の実施態様の方法に代わり、第二の実施態様は、実質的に胚芽および割砕物を含む大豆材料を以下の工程によって取得する方法に関するものである:
【0020】
方法b:
b1)強い吸引(11b)により、大豆生成物(2)を、実質的に外皮、胚芽および幾らかの小割砕物を含む外皮画分(3b)および実質的に子葉および割砕物を含む剥皮画分(4b)に分離し、そして、
b2)前記外皮画分(3b)を、前記外皮ならびに前記小割砕物および胚芽の間の大きさおよび/または重さの相違に基づく1以上の分離工程(13b)に付すことにより、前記外皮画分(3b)から外皮を分離する。
【0021】
方法bを適用すると、外皮画分(3b)から大豆材料(5)の主要部分が生じる。効率または収量を考慮すると、剥皮画分(4b)からの(追加の)大豆材料(5)の分離を、篩過および/または吸引(12b)を用いて実施できる。
【0022】
製造の容易性、より少ない投資、およびより良好な結果という理由で、方法bより方法aが好ましいとされる。
【0023】
このようにして、上記に開示した両実施態様は、ほぼ同じ大きさおよび重さである割砕物および胚芽を実質的に含む大豆材料を生産する。さらに、分離しようとする材料間の大きさおよび/または重さの相違に基づいている、適用される分離技術は、通常、大豆胚芽を著しく損傷することはない。本方法はさらに、異なる分離画分に由来する大豆胚芽の回収、濃縮、ひいては価格安定化を、単純且つ効率的な方法で可能にする。加えて、思いがけないことに、この画分において割砕物と比較して大きさおよび/または重さにあまり相違を示さない胚芽を、上に述べた本方法の工程を用いてさらに分離することができる。
【0024】
本発明はさらに、前記大豆割砕物および大豆胚芽材料の総量を基準にして80重量%を超える大豆材料を包含する。好ましくはこの重量%は85%を超え、さらに好ましくは90または95%を超えさえする。別の好ましい実施態様では、前記大豆材料は、上に開示した二つの実施態様の方法のうち少なくとも幾つかの工程を実施することにより取得され、または取得可能である。
【0025】
別の好ましい実施態様では、破砕する前に、丸大豆を好ましくは60℃〜80℃で1〜10分間加熱する。こうした前処理は、過剰な割砕物を生成させたり大豆胚芽を損傷させたりすることなく、後に続く大豆の割裂および剥皮を容易にさせる。
【0026】
本方法に従って得られる大豆胚芽をさらに加工することができる。その一例においては、前記大豆胚芽を超臨界CO抽出に付し、その抽出された大豆胚芽から大豆胚芽油を製造する工程を含む方法が提供される。したがって本発明は、栄養価を保持している損傷のない大豆胚芽を主として含む大豆胚芽生成物から大豆胚芽油を回収し、改善された官能および栄養品質を有する胚芽油を生成するための有効な方法を提供する。さらに、大豆胚芽油を製造するために適用されるこの技術は、大豆胚芽の栄養価の保持を可能にし、且つ完全に無毒である。
【0027】
別の態様では、本発明は、大豆胚芽濃縮物ならびに例えば植物ステロールに富む大豆胚芽油および/または食品および/またはサプリメントおよび/または低コレステロール製品を製造するためのその使用に関するものである。
【0028】
特に本発明は、85重量%を超える大豆胚芽を含む大豆胚芽濃縮物を提供し、好ましくはこのうち少なくとも60、70、80、90重量%が実質的に損傷のない大豆胚芽である。
【0029】
別の好ましい実施態様では、前記大豆胚芽濃縮物は、本発明に従う方法を実施することにより取得されまたは取得可能である。
【0030】
さらに別の態様では、本発明は、大豆胚芽油および例えば食品製造のためのその使用に関するものである。特に本発明は、総脂肪酸の重量%に関して10〜30重量%、好ましくは12〜28重量%、より好ましくは15〜25重量%、最も好ましくは18〜23重量%の量のリノレン酸(C18:3)を有する大豆胚芽油に関するものでもある。別の好ましい実施態様では、前記大豆胚芽油は、本発明に係る大豆胚芽濃縮物から製造されまたは製造可能である。本発明は、高濃度の植物ステロールおよび/またはトコフェノールおよび/またはリノレン酸%を有する大豆胚芽油を提供する。特に本発明は、また少なくとも5%、好ましくは6%、より好ましくは7%、最も好ましくは5.0〜7.2%の大豆植物ステロール量を有する大豆胚芽油に関するものでもある。さらに本発明は、少なくとも0.10%、より好ましくは少なくとも0.20%、最も好ましくは少なくとも0.25%、そして好ましくは0.40%未満の大豆トコフェロール量を有する大豆胚芽油に関するものである。さらに、本発明は、実質的にレシチンを含まない大豆胚芽油に関するものでもある。
【0031】
健康機能表示の付いた低コレステロール機能食品(例えばマーガリンなど)への大豆植物ステロールの加減は、当技術分野で周知である(Benecolを参照されたい)。これらの市販されている大豆植物ステロールは通常、ヘキサン抽出された一般的な粗製大豆油の精製過程で得られる。これらは、蒸気脱臭段階中に得られる揮発成分中に見出すことができ、そこから凝縮によって単離できる。
【0032】
乾燥後、本発明に従って生産された高純度且つ無傷の大豆胚芽濃縮物から超臨界CO抽出により得られた大豆胚芽油は、大豆ホスファチド(レシチン)を含有せず、前精製(脱ガム)されていると考えられ、当然大量の大豆植物ステロール(例えば7.2%)および大豆トコフェロール(例えば0.26%)を含有する。
【0033】
さらに別の態様では、本発明は大豆胚芽ミールおよび例えば食品、サプリメント、医薬品または化粧品の製造のためのその使用に関するものである。本発明は、2.0%を上回る、好ましくは2.5%を上回る重量%のイソフラボンを含む大豆胚芽ミールを提供する。特別な実施態様では、この大豆胚芽濃縮物はさらに、2.6重量%を上回る、好ましくは3.2%を上回るサポニンを含む。
【0034】
さらに別の態様では、本発明はさらに、本発明に係る大豆胚芽濃縮物または大豆胚芽油の、食品への使用、および本明細書に定義される大豆胚芽濃縮物もしくは大豆胚芽油を含むまたはそれらでできている食品に関するものである。
【0035】
本発明の特徴をより良く示すための見識と共に、幾つかの好ましい実施態様および実施例を、添付した図面を参照して以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明に係る方法の工程を示すフローチャートである。
【図2】図2は、物質収支の例および幾つかの生産フローを示す。
【0037】
発明の詳細な説明
方法
本発明は大豆(Glycine max)を加工する方法に関するものである。本明細書で使用する「ソイ」および「大豆」および「ソーヤ」という語は同義語であることに留意されたい。
【0038】
大豆の主要部分は、本明細書で外皮と称される外部被覆;本明細書で子葉または内胚乳と称される2個の半割大豆;および本明細書で胚軸と称される胚または胚芽を包含する。成熟した豆の外皮は硬く、子葉および胚芽を、損傷およびその後の(特に油の)酸化から保護している。
【0039】
この文脈における「丸大豆」という用語は、破砕工程をまだ受けておらず、豆の全構成要素、即ち外皮、2個の半割大豆、および胚芽を含んでいる大豆を指す。
【0040】
本明細書で使用する「子葉」という用語は、損傷のない半割豆を指すことを意図している。
【0041】
本発明において使用する「割砕物」または「大豆割砕物」という用語は、子葉の断片を指すことを意図している。よってこの用語は、損傷された半割豆および半割豆より小さい子葉の断片をも包含する。割砕物は一般に比較的ランダム且つ不規則な形態の子葉断片で構成されており、子葉を破砕または割裂した後に得られる。
【0042】
図1に関連して、本発明は、
a)大豆材料(5)から、大豆胚軸濃縮物(6)および小大豆割砕物(9)を分離し(この分離は、前記大豆胚軸および前記大豆割砕物の間の形態差(14)に基づく)、
b)大きさおよび/または重さの差に基づく伝統的な分離方法(例えば吸引)を利用して、大豆生成物(2)から大豆外皮、大豆子葉、および大きな大豆割砕物画分を除去することにより、主として大豆割砕物および大豆胚芽を含む前記大豆材料(5)を富化し、
c)丸大豆(1)を、ごく限られた部分、例えば子葉、割砕物、外皮および胚軸に破砕(10)することにより、大豆生成物(2)を取得する、
工程を含む方法を提供する。
【0043】
場合により、さらに初期の工程において、出発材料、即ち丸大豆を、破砕前に、茎、さや、雑草、砂、金属粒子および小石といった異物を除去することにより最初に清浄化してもよい。
【0044】
場合による、もう一つの工程においては、下流の加工を容易にするため、大豆を前処理(7)することもできる。一実施態様では、前処理は、例えば下流の加工、特に破砕中における大量の割砕物の生成を回避するため、前記丸大豆を60℃〜80℃で1〜10分間加熱することを含み得る。
【0045】
次に、上の方法の工程c)に従って丸大豆を破砕する。破砕(10)は、摩擦、衝撃応力、剪断応力などを利用する任意の既知の装置により実施できる。例えば、ロール粉砕機またはゴム製ローラー等により大豆を割裂することができる。典型的には大豆油圧搾目的のためには、大豆を平均8個の「等しい大きさの」破片(割砕物)に破砕する。本発明に従い、好ましくは大豆を予熱後に、そして大豆子葉および胚芽の損失(粉末)、細胞損傷、破壊および/または損傷を回避または少なくとも低減するために、衝撃式製粉機を使用して、丸大豆を2個の半割大豆に割裂することに留意されたい。破砕工程の結果、子葉、割砕物、外皮および胚軸(および丸大豆のごく微量の破片もまた依然として存在し得る)の混合物を含む大豆生成物が得られる。
【0046】
本方法の次の工程b)は、前記大豆生成物を、実質的に大豆割砕物および大豆胚芽を含む大豆材料に富化することを含む。このような大豆材料を製造する方法をさらに詳細に以下に述べる。
【0047】
上記に定義の方法の工程a)は、次に前記大豆材料(5)から大豆胚芽を分離することを対象とする。より詳細には、前記工程は、ほぼ同じ密度、即ち同じ重さおよび/または大きさを有する大豆割砕物から大豆胚芽を分離することを含む。丸大豆を加工する本方法は、実質的に割砕物および胚芽を含む大豆材料(5)を、割砕物(9)に富む画分および大豆胚芽に富む画分(6)(本明細書では大豆胚軸濃縮物とも称される)に分離する工程を含む。本分離方法は、分離されるべき大豆胚芽と、大豆割砕物の間の形態差に基づいている。この形態差は、滑り易さまたは滑らかさの差をももたらす。
【0048】
似通った大きさおよび/または重さを持つ大豆胚芽および大豆割砕物を分離するために、大きさおよび/または重さの差に基づく分離技術を利用する先行技術は、これまでうまくいっていない。ここに本出願人は、驚くべきことに、このような割砕物および胚芽の形態差(および結果として生じる滑り易さ)を、大豆胚芽から大豆割砕物を効果的に分離するために利用できることを発見した。特に、先行技術で利用された技術とは対照的に、本出願人は、分離しようとする成分の間の密度差を必要としない分離技術を開発した。さらに、本分離技術は、割砕物からの胚芽の分離を実現するための振動および/または揺動を必要としない。
【0049】
本明細書で使用する「形態差」という用語は、ほぼ同じ大きさおよび/または重さを持つ大豆胚芽および大豆割砕物が形態に相違を示す事実を指す。形態差は例えば、損傷のない胚芽は一般に、表面に多くの平坦面(破砕による)を示す割砕物より細長く、且つ滑らかな表面を有するという事実を含む。その結果、損傷のない胚芽は割砕物よりずっと滑り易い。損傷のない胚芽の、より細長い形態は、時に「バナナ」形態と呼ばれる。
【0050】
より詳細には、本発明に係る方法は、前記大豆材料を遠心力に付し、前記大豆材料を、割砕物に富む画分および大豆胚芽に富む画分に分離する工程を含む。この分離工程は、実際には凹凸付き円筒形機器によって実施できる。
【0051】
本明細書で使用する「凹凸付き円筒形機器」という用語は、凹凸があり回転できる円筒形ドラムを含む機器を指すことを意図している。本文脈において「円筒形ドラム」という用語は、その最も広い意義において理解すべきであり、実質的に一定の直径を有するドラムのみならず、前記ドラムの長さによって異なる直径を有するドラムをも含む。例えばこのようなドラムは、円筒形、円錐形、多角形ドラムまたは可変曲率を持つその他の形態を有するドラムであってよい。
【0052】
本文脈において、凹凸付き円筒形機器によって適用される遠心力または回転力が重要であることに留意されたい。何故なら本出願人は、特に、分離しようとする成分間の密度差が僅かであるという事実を考慮すると、分離しようとする材料間の密度差に基づく、振動または揺動技術を利用する分離は、結局はあまり有効でないことに気付いたからである。
【0053】
一実施態様では、前記の凹凸付き円筒形機器は「凹凸付きシリンダー」に対応する。凹凸付きシリンダーは、回転するシリンダーおよび可動式分離トラフを有する装置である。大抵はシリンダーの回転速度は変えることができる。このシリンダーの内面には小さな凹凸がある。この凹凸は、理想的には1個の単一粒子が各々のポケットに受け取られるような設計となっている。凹凸付きシリンダーは遠心力の原理で作動し、シリンダーの速度により、粒子の集合体から粒子を浮揚させて凹凸内に保持し、その後、浮揚した粒子が重力により凹凸から落下する点まで凹凸が反転するに至る。これらの浮揚した粒子が分離トラフ中に落下する時に分離が起こる。
【0054】
この円筒形機器は、胚芽および割砕物が良好な分離が行われるに充分な時間、重力および遠心力によって凹凸内に保持されるような速度で回転せねばならない。(損傷のない)胚軸はバナナ様形態であってかなり滑り易く、シリンダー内に再び落下するが、一方割砕物は、凹凸内により長くとどまり、より高く浮揚され、溝またはトラフ(その位置は調節できる)内に落下する可能性がより高い。故に、好ましい実施態様では、この方法は、前記大豆材料を少なくとも重力の0.1倍、好ましくは少なくとも重力の0.2倍の遠心力に付すことを含む。別の好ましい実施態様では、凹凸付き円筒形機器は、20〜60rpmを含む速度で回転させることができる。
【0055】
別の好ましい実施態様では、凹凸は、大豆胚軸を一時的に収容する形態および形状を有する。これらは通常ボール様形状であり、直径約3mmである。好ましくは凹凸は水滴の形状であり、それは、この形状がより容易且つ良好な分離をもたらすためである。凹凸の水滴形状(凹凸の片側は約45°の角度(中に落下し易い)を有し;他の側はほぼ90°の角度(脱出が困難)を有する)は、割砕物を凹凸内に極めて良好に保持する。通常1mmx2.5mmx2.5mmの寸法を有する(よって多くの破面を持ち、細長くない)(小)割砕物は、完全に凹凸内に落下する。割砕物は或る高さにおいてのみ凹凸から脱出でき、それらは殆どトラフ内に落下する。これに対して、約4mmx1.5mmx2mmの寸法を有する損傷のない胚軸は、凹凸内に落下はできるが、それらの形態(滑り易い)および細長さ故に凹凸から容易に滑り出る。
【0056】
実際には、本発明に従い、実質的に大豆割砕物および大豆胚芽を含む大豆材料を、コンベアを通って回転シリンダーの中央へと、装置内に供給することができる。シリンダーが回転するにつれ、胚芽および割砕物が重力のために異なる軸位(または角度もしくは高さ)で凹凸から落下する。
【0057】
したがって本発明は、実質的に損傷のない大豆胚芽を大量に取得する方法を提供する。本発明に従って高純度の大豆胚芽を分離する本方法は、従来法と比較して高収量および/または濃度で胚芽を分離でき、そして、大量の大豆胚芽を一度に分離できるという重要な利点を有する。さらに、もう一つの重要な利点は、胚芽が、胚芽中の機能的栄養素の破壊を伴わない方法を用いる単純なプロセスによって分離され、それにより、天然の状態の胚芽成分の保持が可能になることである。
【0058】
本発明はさらに、工程a)もしくはb)を存在させる必要、またはc)を工程a)および/またはb)と組み合わせる必要のない、前記大豆胚芽(6)を前記大豆材料(2)から分離する工程c)(この分離は、前記大豆胚芽および前記大豆割砕物の間の形態差に基づいている)を含む方法に関するものである。
【0059】
分離された大豆割砕物(9)および大豆胚芽(6)はいずれも、別々にさらなる加工を施すことができる。
【0060】
大豆胚芽の加工は、トースティング、蒸気処理、焙煎、製粉、凝集化、コーティング、フレーク化、抽出またはこれらの任意の組み合わせを包含できるがこれらに限定される訳ではない。同時に価値ある香味が生み出される。これは特に大豆胚芽を焙煎した場合に当てはまる。
【0061】
一例では、大豆胚芽をトースティングおよび粉砕して大豆粉を形成させることができる。例えば、大豆胚芽を粉砕または製粉して、例えば、その後種々の動物飼料もしくは人間の食品のサプリメントとしてブレンドもしくは別個に使用できる乾燥粉末または粉を生産することができる。
【0062】
別の例では、大豆胚芽をまず溶媒抽出して大豆胚芽油を抽出し、得られた脱脂大豆胚芽ミールを、大豆イソフラボンおよび/または大豆サポニンの生産のための出発材料として利用できる。
【0063】
特定の実施態様では、大豆胚芽の抽出は、大豆胚芽濃縮物を超臨界CO抽出に付し、抽出された大豆胚芽から大豆胚芽油を製造することを含む。上記のプロセスを利用して大量の大豆胚芽が得られることから、一般に商業的量の大豆胚芽油を商業的に実現可能なコストで生産することもできると推定される。
【0064】
大豆材料およびその製造
本方法の工程b)に従い、実質的に大豆胚芽および大豆割砕物を含む大豆材料が提供される。この文脈における「実質的に含む」という用語は、合わせて大豆材料の総量の80%を超える、好ましくは85、90、または95重量%を超える量を構成する割砕物および胚芽を含む大豆材料を指すことを意図している。この大豆材料は、図1に説明するように様々な方法で取得できる。
【0065】
第一の実施態様では、実質的に胚芽および割砕物を含む大豆材料を、以下の工程により取得する:
【0066】
方法a:
a1)中等度の吸引(11a)により、大豆生成物(2)を、実質的に外皮を含む外皮画分(3a)ならびに実質的に子葉、割砕物および胚芽を含む剥皮画分(4a)に分離し、そして、
a2)前記の剥皮画分を1以上の篩過および/または吸引工程(12a)に付すことにより、前記剥皮画分を、子葉に富む画分(8)ならびに実質的に大豆割砕物および胚芽を含む大豆材料に分離する。この工程において残存している若干の外皮もまた除去され得る。
【0067】
方法aを適用すると、剥皮画分(4a)から大豆材料(5)の主要部分が生じる。効率または収量を考慮すると、外皮画分(3a)からの(追加の)大豆材料(5)の分離を、篩過および/または吸引(13a)を用いて実施できる。
【0068】
この第一の実施態様の方法に代わり、第二の実施態様は、実質的に胚芽および割砕物を含む大豆材料を以下の工程により取得する方法に関するものである:
【0069】
方法b:
b1)強い吸引(11b)により、大豆生成物(2)を、実質的に外皮、胚芽および幾らかの小割砕物を含む外皮画分(3b)および本質的に子葉および割砕物を含む剥皮画分(4b)に分離し、そして、
b2)前記外皮画分(3b)を、前記外皮ならびに前記小割砕物および胚芽の間の大きさおよび/または重さの相違に基づく1以上の分離工程(13b)に付すことにより、前記外皮画分(3b)から外皮を分離する。
【0070】
方法bを適用すると、外皮画分(3b)から大豆材料(5)の主要部分が生じる。効率または収量を考慮すると、剥皮画分(4b)からの(追加の)大豆材料(5)の分離を、篩過および/または吸引(12b)を用いて実施できる。
【0071】
生産の容易性、より少ない投資、およびより良好な結果という理由で、方法bより方法aが好ましいとされる。
【0072】
先行技術を利用すると、大豆胚芽は一般に外皮を含む画分に含まれることになる。ここに本発明は、剥皮大豆画分から大豆胚芽を富化する新たな方法を提供するのみならず、さらに本方法は、前記外皮画分から、時に意図せずして外皮と共に吸引され外皮画分に含まれる大豆胚芽および大豆割砕物を富化する方法を提供する。
【0073】
分離された外皮画分および剥皮画分
本発明によれば、子葉、割砕物、外皮および胚芽を含む大豆生成物(2)の、外皮画分(3a/b)および剥皮画分(4a/b)への分離は、大豆生成物から(主として)外皮を除去することを包含する。分離は、例えば吸引機または空気式洗浄機といった当業者に公知の適当な任意の手段を利用して、好ましくは吸引により実施する。
【0074】
外皮画分は実質的には外皮および、外皮と共に吸引された残量の(小)割砕物および胚芽を含む。この文脈において「実質的に外皮を含む」という用語は、その画分の総重量の75%を超える、好ましくは80%を超えるまたは、さらに好ましくは85%を超える量の外皮を有する画分を指すことを意図している。故に、外皮画分中の小割砕物および胚芽の量は、最大で25%、好ましくはその画分の20%もしくは15重量%未満である。
【0075】
「実質的に子葉、割砕物および胚芽を含む」(特に方法aの場合、胚芽を含んでいる)剥皮画分とは、合わせてこの画分の総量の80%を超える、好ましくは85、90、もしくは95重量%を超える量の子葉、割砕物および胚芽を含む画分を指す。
【0076】
本方法のその後の工程では、外皮画分および/または剥皮画分に含まれる胚芽(および小割砕物)をさらに分離、精製および濃縮する。
【0077】
剥皮画分の加工
一つの態様では、本方法は、剥皮画分に含まれる胚芽の分離および精製を含む。これは方法aのために最も重要であることから、本発明者等はこの段落ではこの方法に注目する。さらに詳細には、本発明は、前記剥皮画分(4)を1以上の篩過および/または吸引工程に付すことにより、剥皮画分(4a)を、子葉に富む画分(8)ならびに実質的に大豆割砕物および胚芽を含む大豆材料(5)に分離する工程を含む。本工程は、子葉、割砕物、および胚芽の間の重力および密度の相違を利用することにより、篩および/または空気選別装置といった分離装置を使用して実施できる。
【0078】
本明細書で使用する「子葉に富む画分」とは、実質的に子葉および子葉と共に意図せずして分離された大割砕物の残存量を含む画分を指す。「実質的に子葉を含む」子葉に富む画分という用語は、この画分の総量の80%を超える、好ましくは85、90、または95重量%を超える子葉を含む画分を指すことを意図している。この画分をさらに加工して例えば大豆粉を生産することができる。
【0079】
外皮画分の加工
別の態様では、本方法は、外皮画分に含まれる胚芽の分離および精製を含む。これは方法bのために最も重要であることから、本発明者等はこの段落ではこの方法に注目する。さらに詳細には、本発明は、外皮画分を1以上の篩過および/または吸引工程に付すことにより、前記外皮画分(3b)から外皮を分離する工程を含む。上記と同様に、本工程もまた、一方の外皮ならびに他方の割砕物および胚芽の間の重力および密度の相違を利用することにより、篩および/または空気選別装置といった分離装置を使用して実施できる。
【0080】
図2は、物質収支の例および幾つかの生産フローを示す。この図は本発明の効果を正確に推定する助けとなるに相違ない。
【0081】
生成物
本発明はさらに、本方法の少なくとも幾つかの工程を実施することにより取得されまたは取得可能である生成物に関するものである。
【0082】
第一の態様では、本発明は、実質的に大豆割砕物および大豆胚芽を含む、そして特に当該材料の総量を基準として80重量%を超える割砕物および胚芽を含む、大豆材料に関するものである。この材料から、本方法に従って大豆胚芽をさらに富化する。前記大豆材料は、上記に定義した方法の少なくとも幾つかの工程を実施することにより取得されまたは取得可能である。
【0083】
別の態様では本発明は、85%を超える、好ましくは90%を超える、より好ましくは95重量%を超える大豆胚芽を含み、このうち好ましくは少なくとも60%、好ましくは70%を超える、より好ましくは80%を超える、そして最も好ましくは90重量%を超える量が本質的に損傷のない大豆胚芽である、大豆胚芽濃縮物に関するものである。本発明に係る大豆胚芽は、特にそれらの比較的「損傷のない」特性に関して、優れた栄養的および/または官能的性質を有する。損傷されると、大豆胚芽油は空気と接触することになり、酸化を受け、結果として官能的および/または栄養的性質の劣った製品または胚芽となる。
【0084】
本明細書で使用する「損傷のない胚芽」とは、破壊されていない無傷の胚芽を意味する。「損傷のない」胚軸はバナナ様形態を持ち、かなり滑り易く細長い。損傷のない胚芽は目視によって、そして例えば胚芽の実質上全長に延びている細い線として見える「シーム」の存在によって見分けがつく。
【0085】
好ましい実施態様では、本方法は、85重量%を超える、好ましくは90重量%を超える、または95重量%を超えさえする大豆胚芽(そのうち60重量%以上、好ましくは70または80もしくは90重量%以上もが損傷のない)を有する大豆胚芽濃縮物を得ることを可能にする。
【0086】
前記大豆胚芽濃縮物は、本方法を実施することにより取得されまたは取得可能である。
【0087】
本発明はさらに、本明細書に定義した大豆胚芽濃縮物の、食品への使用に関するものである。本発明の大豆胚芽は、様々な種類の食品の基礎を作り、またはその活性成分となり得る。この文脈における最も広い意義で使用される「食品」という用語は、人間の食物および動物の食物(即ち飼料)を指し、且つそれらを包含する。好ましい態様では、この食物は人間が消費するためのものである。食物は、使用および/または適用様式および/または投与様式に応じて、溶液または固体の形態であってよい。本発明に係る大豆胚芽濃縮物が(適切な加熱処理および/または製粉の後に)使用できる食品の非限定的例には、例えばベーカリー製品、クッキー、パスタ製品、スナック、栄養補助バー製品があるが、栄養補助飲料、またはドリンクも包含される。
【0088】
一つの例では、大豆胚芽を200〜230℃の熱風で焙煎できる。このようにして得られた焙煎胚芽を、朝食用シリアル、キャンディーバー、ベーカリー製品および紅茶の成分として使用できる。別の例では、大豆胚芽を乾燥し粉砕して、種々の食物および健康製品、ホメオパシー製品、動物用医薬品、フィットネス製品、ペットフードサプリメントに使用するための粉末を得ることができる。さらなる選択肢として、食品用途に使用するため、胚芽を抽出し、パフさせ、膨張させ、加水分解し、そして/または発酵させることができる。
【0089】
例えばさらに別の態様では、大豆胚芽を有機溶媒、例えばヘキサン、エタノール、イソプロパノールなどもしくはそれらの組み合わせで、またはより自然な溶媒、例えば超臨界COで抽出して、大豆胚芽油を得ることができる。得られた大豆胚芽油は、多くの(濃縮された)植物栄養素またはその他の興味深い成分を含有する。本発明に係る大豆胚芽油(ヘキサンまたはSC COを用いて大豆胚軸濃縮物を抽出した後)は、5%〜7.2%の総植物ステロール(重量)、好ましくは6%〜7.2%の総植物ステロール(重量)を含む。総植物ステロールには特に、β−シトステロール、スティグマステロール、Δ7−スティグマステロール、カンペステロール、ブラシカステロール、Δ7−アヴェナステロール、シトロスタジエノール、コレステロールが包含される。
【0090】
大豆胚芽油は、総脂肪酸(重量)に関して18%〜23%のリノレン酸、好ましくは総脂肪酸に関して19%;20%;21%;22%〜23%のリノレン酸を含む。通常この大豆胚芽油は、先行技術由来の大豆胚芽油に比較して高濃度の総植物ステロールおよびリノレン酸を含む。これらの化合物を測定する方法については、本発明者等は再度EP1142489号に言及したいと思う。
【0091】
植物ステロール(および植物スタノール)は近年健康効果で有名であり、特にそのLDL−コレステロール低下効果(特に肥満種で)の故に有名である。リノレン酸は多くの不飽和脂肪酸の1つであり、これら不飽和酸を高い比率で含む油は健康にとって有益であると考えられる。
【0092】
本発明に係る大豆油は実質的にレシチンを含まない。
【0093】
前記大豆胚芽油は、本発明に従って大豆胚芽濃縮物から取得されまたは取得可能である。
【0094】
本発明はさらに、本明細書に定義したこのような大豆胚芽油の、上記で定義した食品への利用に関するものである。本発明はさらに、本明細書に定義した大豆胚芽濃縮物または大豆胚芽油を含む食品に関するものである。
【0095】
別の態様では、本発明はさらに、大豆胚芽油ならびに例えば食品および/またはサプリメントおよび/またはコレステロール低下製品および/または化粧品および/または医薬品および/または栄養補助食品を製造するためのそれらの使用に関するものである。
【0096】
好ましくは前もって製粉、粉砕および/または破砕しておいた大豆胚軸濃縮物から油を抽出した後、残留生成物を得る。この残留生成物を大豆胚芽ミールと呼ぶ。大豆胚芽は約10重量%の大豆胚芽油(これは実質的にイソフラボンを含まない)を含有することから、大豆胚軸ミール残留物は最初の大豆胚芽重量の約90%である。大豆胚軸濃縮物中の大豆胚軸が高濃度(高度に精製されている)および無傷であるおかげで、大豆胚軸濃縮物は高濃度のイソフラボン(アグルコン)およびサポニンを含み得る。その結果、脱油大豆胚芽ミールは、2.0%を超える、好ましくは2.5%を超える、但し好ましくは3.5%を下回る重量%のイソフラボンを含む。さらに、この大豆胚芽ミールは、1.1%を超える、好ましくは1.4%を超える重量%のイソフラボンアグルコンを含む。その上、この大豆胚芽ミールは、2.6%を超える、好ましくは3.2%を超える、但し好ましくは4.5%を下回る重量%のサポニンを含む。
【0097】
この脱油大豆胚芽ミールは、高感度油成分が実質的に除去されているため、酸化に対して非常に安定である。
【0098】
別の態様では、本発明はさらに、大豆胚芽ミールならびに例えば食品および/またはサプリメントおよび/またはコレステロール低下製品および/または化粧品および/または医薬品および/または栄養補助食品を製造するためのそれらの使用に関するものである。
【0099】
本発明を以下の実施例を用いてより詳細に記載する。しかしながら、本実施例は本発明の説明のために記載するものであり、本発明を限定するものではないということは言うまでもない。
【0100】
実施例
実施例1:大豆胚芽濃縮物の製造
本実施例は本発明による方法を説明するものである。
丸大豆を注意深く選別し、茎、石などの夾雑物を取り除いた。次に、清浄した大豆を約75℃になるまで5分間加熱し、引き続いて衝撃式製粉機で元の大きさのほぼ1/2となるまで(子葉または半割となるまで)破砕して、外皮、胚芽、割砕物および子葉の混合物を得た。次いで中等度の吸引により混合物から外皮部分を除去し(方法a)、主に子葉、割砕物および胚芽を生成する剥皮部分を分離する。
【0101】
篩過によって子葉(および大割砕物)を、そして吸引によって残余の外皮を分離することにより、剥皮画分をさらに小割砕物および胚芽に富むようにした。剥皮部分を大きさ/重量/重力の相違により分離すると、ほぼ同じ密度を持つ胚および小割砕物の混合物が剥皮部分から回収される。
【0102】
水滴形状の凹凸(直径約3mm)を有するシリンダーマントル(直径0.6m)を持つ凹凸付きシリンダーWestrup A/S、TR-620を40rpmの回転速度で稼働させた。この回転は、重力の約0.537倍の遠心力を生む。
【0103】
凹凸付きシリンダーを1回ラン(通過)させた後の大豆胚軸濃縮物(シリンダーマントルから取り出す)は、純度93%(重量ベース)および非損傷性83.4%(濃縮物の総重量25gのうち20.85gが無傷の胚軸であった)であった。
【0104】
実施例2:大豆胚軸油およびミールの製造ならびに組成
本実施例は大豆胚芽油の製造および組成を説明するものである。この大豆胚芽油は、実施例1由来の大豆胚軸濃縮物からヘキサンまたは超臨界COで抽出した。
【0105】
ヘキサンで抽出した大豆胚芽油は、総脂肪酸(重量)中、5.2%の総植物ステロール(重量)および21.3%のリノレン酸(C18:3)を含む。この油はさらに、総脂肪酸(重量)中、C16:0(13.8%);C18:0(3.5%);C18:1(7.2%);C18:2(53.5%)といった他の脂肪酸;ならびに残余の脂肪酸(0.7%)を含有する。この油はさらに2230ppm(重量)の総トコフェロールを含有する。
【0106】
抽出前に胚芽を直径750μm未満に製粉した。超臨界CO(250bar;40℃)で抽出(6時間)した大豆胚芽油は、総脂肪酸(重量)中、7.2%の総ステロール(重量)および22.1%のリノレン酸(C18:3)を含む。この油はさらに、総脂肪酸(重量)中、C16:0(13.1%);C18:0(3.3%);C18:1(7.4%);C18:2(53.2%)といった他の脂肪酸;ならびに残余の脂肪酸(0.9%)を含有する。この油はさらに2620ppm(重量)の総トコフェロールを含有する。さらに、この油は実質的にレシチンを含まない。
【0107】
この大豆胚芽ミール画分は、2.64%のイソフラボン(このうちイソフラボンアグルコン1.48%)および3.42%のサポニンを含んでいた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)丸大豆を破砕して、子葉、割砕物、外皮および胚芽を含む大豆生成物(2)とし、
b)前記大豆生成物(2)を、実質的に大豆割砕物および大豆胚芽を含む大豆材料(5)へと富化し、そして、
c)前記大豆材料(2)から前記大豆胚芽(6)を分離するここで、この分離は、前記大豆胚芽および前記大豆割砕物の間の形態差に基づいている、
工程を含む、丸大豆を加工する方法。
【請求項2】
前記分離工程を凹凸付き円筒形機器によって実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記大豆材料が、前記材料の総量の80重量%を超える大豆割砕物および大豆胚芽を含む、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記大豆材料が、
a1)中等度の吸引(11a)により、前記大豆生成物(2)を、実質的に外皮を含む外皮画分(3a)ならびに実質的に子葉、割砕物および胚芽を含む剥皮画分(4a)に分離し、そして、
a2)1以上の篩過および/または吸引工程により、前記剥皮画分(4a)を前記大豆材料(5)へと富化する、
工程によって得られる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
1以上の篩過および/または吸引工程により、前記外皮画分(3a)を前記大豆材料(5)へと富化することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記大豆材料が、
b1)強い吸引(11b)により、前記大豆生成物(2)を、外皮、胚芽および割砕物を含む外皮画分(3b)ならびに実質的に子葉および割砕物を含む剥皮画分(4b)に分離し、そして、
b2)1以上の篩過および/または吸引工程により、前記外皮画分(3b)を前記大豆材料(5)へと富化する、
工程によって得られる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
破砕前に前記丸大豆を60〜80℃で1〜10分間加熱する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記大豆胚芽を超臨界CO抽出に付し、抽出された大豆胚芽から大豆胚芽油および大豆胚芽ミールを製造する工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
大豆材料を大豆胚軸濃縮物および大豆割砕物に分離するための、凹凸付き円筒形機器の使用。
【請求項10】
前記凹凸付き円筒形機器のシリンダードラムが大豆胚軸を一時的に収容するための形態および形状を有する円筒形マントルを含む、請求項9に記載の凹凸付き円筒形機器の使用。
【請求項11】
前記大豆材料を、少なくとも重力の0.1倍、好ましくは少なくとも重力の0.2倍の遠心力に付す、請求項9または10に記載の凹凸付き円筒形機器の使用。
【請求項12】
85重量%を超える大豆胚芽を含み、このうち少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90重量%が本質的に損傷のない大豆胚芽である、大豆胚芽濃縮物。
【請求項13】
請求項12に記載の、請求項1〜7のいずれかに記載の方法を実施することにより得ることができる、大豆胚芽濃縮物。
【請求項14】
少なくとも5%、より好ましくは少なくとも6%、最も好ましくは少なくとも7重量%の量の大豆植物ステロールを有する、請求項1〜8のいずれかに記載の大豆胚軸濃縮物および/または請求項12または13に記載の大豆胚芽濃縮物から得ることができる大豆胚芽油。
【請求項15】
総脂肪酸重量%の10〜30重量%、好ましくは12〜28重量%、より好ましくは15〜25重量%、最も好ましくは18〜23重量%の量のリノレン酸(C18:3)を有する、請求項14に記載の大豆胚芽油。
【請求項16】
少なくとも0.10%、より好ましくは少なくとも0.20%、最も好ましくは少なくとも0.25重量%の量の大豆トコフェロールを有する、請求項14または15に記載の大豆胚芽油。
【請求項17】
実質的にレシチンを含まない、請求項14〜16のいずれかに記載の大豆胚芽油。
【請求項18】
2.0%を上回る、好ましくは2.5%を上回る重量%のイソフラボンを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の大豆胚軸濃縮物および/または請求項12または13に記載の大豆胚芽濃縮物から得られる大豆胚芽ミール。
【請求項19】
2.6%を上回る、好ましくは3.2%を上回る重量%のサポニンをさらに含む、請求項18に記載の大豆胚芽ミール。
【請求項20】
請求項12もしくは13のいずれかに記載の大豆胚芽濃縮物、または請求項14〜17のいずれかに記載の大豆胚芽油、または請求項18もしくは19のいずれかに記載の大豆胚芽ミールの、食品、サプリメント、医薬組成物または化粧品における使用。
【請求項21】
請求項12〜13のいずれかに記載の大豆胚芽濃縮物、または請求項14〜17のいずれかに記載の大豆胚芽油、または請求項18もしくは19のいずれかに記載の大豆胚芽ミールを含む食品。
【請求項22】
前記大豆材料の総量に対して80重量%を超える大豆割砕物および大豆胚芽を含む大豆材料。
【請求項23】
請求項22に記載され請求項4〜7のいずれかに記載の方法により得ることができる大豆材料。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−530275(P2011−530275A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521441(P2011−521441)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060473
【国際公開番号】WO2010/015284
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(511034505)
【氏名又は名称原語表記】ALPRO COMM.VA.
【Fターム(参考)】