説明

高強度鋼繊維補強コンクリートを適用した合成構造のずれ止め構造

【課題】貫通鉄筋を用いることなく孔あき鋼板ジベル一箇所当たりのせん断耐力を向上できる高強度鋼繊維補強コンクリートを適用した合成構造のずれ止め構造を提供する。
【解決手段】橋梁の鋼桁11と鉄筋コンクリート橋脚10を接合、或いは橋梁の鋼桁11とプレストレスコンクリート桁20を接合すべく、その間に鋼殻13を設け、その鋼殻13内にコンクリートを充填して合成構造とするための合成構造のずれ止め構造において、前記鋼殻13の内面に孔あき鋼板ジベル14を設け、その鋼殻13内に、シリカヒュームと鋼繊維が混入された高強度鋼繊維補強コンクリートを充填するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の鋼桁と鉄筋コンクリート橋脚をつなぐ接合部、或いは鋼桁とプレストレスコンクリート桁をつなぐ接合部の合成構造に係り、特に接合部を高強度鋼繊維補強コンクリートを充填して接合するための高強度鋼繊維補強コンクリートを適用した合成構造のずれ止め構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁の鋼桁と鉄筋コンクリート橋脚をつなぐ接合部、橋梁の鋼桁とプレストレスコンクリート桁をつなぐ接合部は、図5、図6に示される構造が知られている。
【0003】
図5は、橋梁の鋼桁31と鉄筋コンクリート橋脚30をつなぐ接合部の合成構造を示したものである。この合成構造は、鉄筋コンクリートの橋脚30上に、橋脚30から延びた複数本の鉄筋32を覆うように鋼殻(接合部)33を設け、この鋼殻33を介して鋼桁31,31同士を接合するようにしたものである。鋼殻33の内面の補強板には、孔が多数設けられ、孔あき鋼板ジベル34となり、その孔35に貫通鉄筋36が挿通され、その後、鋼殻33内にコンクリートが充填されて合成効果を発揮する。
【0004】
図6は、橋梁の鋼桁31とプレストレスコンクリート桁40をつなぐ接合部の合成構造を示したものである。この合成構造は、鋼桁31とプレストレスコンクリート桁40間に四角形状の鋼殻33を設け、プレストレスコンクリート桁40から延びたPC鋼棒41を鋼殻33を通して鋼桁31側に突出させ、その突出したPC鋼棒41に押さえ板42を挿通し、そのPC鋼棒41のネジ部にナット43をねじ込んで、接合部にプレストレスを付与するようにさせて接合するようにしたものである。鋼殻33の内面の補強板には、孔が多数設けられ孔あき鋼板ジベル34となり、その孔あき鋼板ジベル34の孔35に貫通鉄筋36が挿通される。また鋼殻33内は、上下のPC鋼棒41間を仕切るように水平なダイヤフラム44と左右のPC鋼棒41間を仕切るように中ウェブ45が設けられる。この鋼殻33内にコンクリートが充填されて合成構造とされる。
【0005】
この図5、図6の合成構造において、鋼殻33内に、コンクリートのずれ止めとして、孔あき鋼板ジベル34を配置し、そこにコンクリートを充填することで、鋼桁31と鉄筋コンクリート橋脚30や鋼桁31とプレストレスコンクリート桁40間の力を伝達させる。
【0006】
一般に、橋梁構造物における鋼とコンクリートのずれ止めには、頭つきスタッドジベルや孔あき鋼板ジベルが用いられているが、このうち、接合部が図5、図6のような鋼殻に囲まれた閉空間となる場合には、鋼殻内側への頭つきスタッドジベルのスタッド溶接が製造上困難であることから、その内面の補強板に貫通孔をあけてジベルとなる図7に示したような孔あき鋼板ジベル34が主に用いられている(特許文献1,2)。さらに、孔あき鋼板ジベル34の孔35には、貫通鉄筋36を連続的に挿入配置し、最大せん断耐力の向上を図るとともに、孔35内のコンクリートせん断破壊を補強する機能を果たしている。また、この鋼殻33内に充填されるコンクリートは、圧縮強度が20〜55N/mm2の普通コンクリートが一般的に用いられている.
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−70154号公報
【特許文献2】特開2000−319816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、設計合理化にともなう構造物のスリム化により、接合部も必要断面の縮小が進んでいる。その一方、所定のずれせん断耐力を確保するためのジベル数量は大きく変わらないことから、(1)ジベル配置が過密となり、さらにその弊害として、(2)貫通鉄筋の挿入が困難となり、図8に示すように、貫通鉄筋36の接続に機械式継手37を併用せざるを得ないといった施工上の問題が生じている。さらに、孔あき鋼板ジベル34間の隙間が狭まることによって(3)コンクリートの充填性が阻害され、未充填部が発生した場合は所定のせん断耐力が発揮できない、といった性能上の問題もうまれている。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、貫通鉄筋を用いることなく孔あき鋼板ジベル一箇所当たりのせん断耐力を向上できる高強度鋼繊維補強コンクリートを適用した合成構造のずれ止め構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、橋梁の鋼桁と鉄筋コンクリート橋脚を接合、或いは橋梁の鋼桁とプレストレスコンクリート桁を接合すべく、その間に鋼殻を設け、その鋼殻内にコンクリートを充填して合成構造とするための合成構造のずれ止め構造において、前記鋼殻の内面の補強板に孔を設けて孔あき鋼板ジベルを形成させ、その鋼殻内に、シリカヒュームと鋼繊維が混入された高強度鋼繊維補強コンクリートを充填することを特徴とする高強度鋼繊維補強コンクリートを適用した合成構造のずれ止め構造である。
【0011】
請求項2の発明は、高強度鋼繊維補強コンクリートは、水結合材比27〜35%で、材齢28日における圧縮強度が70N/mm2以上である請求項1記載の高強度鋼繊維補強コンクリートを適用した合成構造のずれ止め構造である。
【0012】
請求項3の発明は、高強度鋼繊維補強コンクリートの補強材として、長さ20〜60mmの鋼繊維を用い、この鋼繊維を、高強度鋼繊維補強コンクリートに対して容積比で0.5〜1.5%混入した請求項1又は2記載の高強度鋼繊維補強コンクリートを適用した合成構造のずれ止め構造である。
【0013】
請求項4の発明は、シリカヒュームを全粉体質量に対して7〜14質量%充填した高強度鋼繊維補強コンクリートを用いる請求項1記載の高強度鋼繊維補強コンクリートを適用した合成構造のずれ止め構造である。
【0014】
請求項5の発明は、高強度鋼繊維補強コンクリートは、水、セメント、シリカヒューム、膨張材、細骨材、最大寸法20mm以下の粗骨材、高性能AE減水剤又は高性能減水剤、空気量調整剤及び鋼繊維を、水結合材比27〜35%、細骨材率58〜63%、空気量4.0%以下として混練し、練り上げ時のスランプ値が20±2.5cmの流動性をもつ請求項1〜4のいずれかに記載の高強度鋼繊維補強コンクリートを適用した合成構造のずれ止め構造である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、鋼桁と鉄筋コンクリート橋脚や鋼桁とプレストレスコンクリート桁を接合する鋼殻の内面に孔あき鋼板ジベルを設け、その鋼殻内にシリカヒュームと鋼繊維が混入された高強度鋼繊維補強コンクリートを充填することで、高いせん断耐力及び引張耐力を有する合成構造のずれ止め構造とすることができるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態における橋梁の鋼桁と鉄筋コンクリート橋脚を接合する合成構造のずれ止め構造を示す部分破断斜視図である。
【図2】本発明の他の実施の形態における橋梁の鋼桁とプレストレスコンクリート桁とを接合する合成構造のずれ止め構造を示す部分破断斜視図である。
【図3】本発明において、高強度鋼繊維補強コンクリートを充填して形成したときの孔あき鋼板ジベルのせん断耐力を測定する押抜きせん断試験を説明する図ある。
【図4】図3の押し抜きせん断試験装置でせん断試験を行ったときの本発明と従来の普通コンクリートの荷重−相対ずれ変位の関係を示す図である。
【図5】従来の橋梁の鋼桁同士を鉄筋コンクリート橋脚上で接合する合成構造のずれ止め構造を示す部分破断斜視図である。
【図6】従来の橋梁の鋼桁とプレストレスコンクリート桁とを接合する合成構造のずれ止め構造を示す部分破断斜視図である。
【図7】孔あき鋼板ジベルと貫通鉄筋を示す図である。
【図8】複数の孔あき鋼板ジベルに機械式継手を用いて貫通鉄筋を貫通させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0018】
図1は、橋梁の鋼桁と鉄筋コンクリート橋脚を接合する合成構造のずれ止め構造を示したものである。
【0019】
この合成構造は、鉄筋コンクリートの橋脚10上に、橋脚10から延びた複数本の鉄筋12を覆うように例えば四角形状の鋼殻(接合部)13を設け、この鋼殻13を介して鋼桁11,11同士を接合するようにしたものである。鋼殻13の内面には、補強板に孔を設けた孔あき鋼板ジベル14が垂直方向に所定間隔で多数設けられてなり、その後、鋼殻13内に高強度鋼繊維補強コンクリートが充填されて合成構造とされる。なお鋼殻13は、図示例では橋脚10の形状に合わせて四角形状としたが、例えば橋脚10が円柱状であれば、円形状の鋼殻に形成する。
【0020】
これにより、鋼桁11,11と橋脚10の鉄筋12と孔あき鋼板ジベル14とは高強度鋼繊維補強コンクリートにより一体に接合されたずれ止め構造とされる。
【0021】
図2は、橋梁の鋼桁11とプレストレスコンクリート桁20をつなぐ接合部の合成構造を示したものである。
【0022】
この合成構造は、鋼桁11とプレストレスコンクリート桁20間に、例えば四角形状の鋼殻13を設け、プレストレスコンクリート桁20から延びた上下左右4本のPC鋼棒21を、鋼殻13を通して鋼桁11側に突出させ、その突出したPC鋼棒21に押さえ板22を挿通し、そのPC鋼棒21のネジ部にナット23をねじ込んで、接合部にプレストレスを付与するようにさせて接合するようにしたものである。
【0023】
鋼殻13の内面には、桁方向に沿って孔あき鋼板ジベル14が多数設けられる。また鋼殻13内は、上下のPC鋼棒21間を仕切るように水平なダイヤフラム24と左右のPC鋼棒21間を仕切るように中ウェブ25が設けられる。その後、この鋼殻13内に高強度鋼繊維補強コンクリートが充填されて合成構造とされる。
【0024】
これにより、鋼桁11とプレストレスコンクリート桁20と孔あき鋼板ジベル14とは高強度鋼繊維補強コンクリートにより一体に接合されたずれ止め構造とされる。
【0025】
本発明において、図1、図2に示した合成構造における孔あき鋼板ジベル14の配置の過密を解決するために、ジベル配置間隔を広げても支障のないものとするものである。そのためには、孔あき鋼板ジベル14の1個あたりのずれせん断耐力を向上させる必要があり、その手段として、孔15に充填するコンクリートを、従来の圧縮強度が20〜55N/mm2の普通コンクリートに代えて、水結合材比27〜35%程度とした、圧縮強度が70N/mm2以上となる高強度鋼繊維補強コンクリートを適用するものである。
【0026】
また、従来例で説明した、貫通鉄筋の挿入の困難性を解決するために、貫通鉄筋を排除し、それに代わる補強材として、長さ20〜60mm、好ましくは長さ30mmの鋼繊維を容積比で0.5〜1.5%混入した高強度鋼繊維補強コンクリートとするものである。
【0027】
また、コンクリートの充填性の阻害を解決するために、コンクリートは、練りあがり時の流動性が高く、スランプ値で20±2.5cmとなるような、高流動コンクリートとした。
【0028】
本発明では、これらの3つの解決策を統合して、孔あき鋼板ジベル14に高流動かつ、高強度の鋼繊維補強コンクリートを用いて、従来の問題をすべて解決した新しいずれ止め構造を提案するものである。
【0029】
しかしながら、これらの特性の組み合わせに伴い予想される大きな弊害としては、以下がある。
【0030】
1)一般に高強度コンクリートに鋼繊維を混入した場合、練りあがりの流動性が極端に低下する。
【0031】
2)一般に高流動コンクリートに鋼繊維を混入した場合、振動締め固めの際に、鋼繊維が分離(沈降)してしまう。
【0032】
以上の問題を解決する手段として、本発明では、コンクリートの材料面で以下の解決策を講じた。
【0033】
すなわち、コンクリート材料として、シリカヒュームを混入して練り上がり時の粘性を高めることで、振動締め固めによる鋼繊維の分離を防ぐようにし、細骨材率を60%程度かつ高性能AE減水剤または高性能減水剤を添加して、充填性を阻害しない流動性の高い高流動かつ、高強度の鋼繊維補強コンクリートとしたものである。
【0034】
このシリカヒュームは、主成分の85%以上がSiO2で、そのうち大部分が非晶質で、完全な球形で、粒径は1μm以下、平均粒径0.1μmであり、比表面積は、150,000〜220,000cm2/g、密度は2.1〜2.2g/cm3、かさ密度0.2〜0.3g/cm3であり、石灰石微粉末の比表面積3000〜8000cm2/gより格段に比表面積が高い。
【0035】
本発明における高強度鋼繊維補強コンクリートは、通常のコンクリートに比べ高いせん断耐力及び引張耐力を有するため、従来構造に対して孔あき鋼板ジベルの個数の低減や貫通鉄筋の省略が図れることから、鋼材間のあきも広がり、コンクリートの充填性も高まる。またコンクリートにひび割れ発生後も鋼繊維が、ひび割れ幅の増長を防げることから、長期耐久性の向上も期待される。
【0036】
この高強度鋼繊維補強コンクリートは、水、セメント、シリカヒューム、膨張材、細骨材、最大寸法20mm以下の粗骨材、高性能AE減水剤又は高性能減水剤、空気量調整剤及び鋼繊維を、水結合材比27〜35%、空気量4.0%以下として混練して、練り上げ時に、流動性を有して初期施工性を有するものとし、且つシリカヒュームを全体粉体量の7〜14質量%で充填することで、良好な流動性を示す。
【0037】
また、膨張材の混入量は、水結合材の総質量に対して3〜6質量%、鋼繊維の混入量は容積に対して0.5〜1.5%の範囲で混練して作製する。
【0038】
これにより、高強度鋼繊維補強コンクリートは、流動性を示すスランプ試験(JISA 1101)にて、20±2.5cmの流動性を示し、材齢28日における圧縮強度が70N/mm2以上である特徴を有する。
【0039】
混入する鋼繊維は、長さを20〜60mm、好ましくは30mmとし、直径を0.4〜0.8mm、好ましくは0.6mm、さらにフック型に端部を処理された形状のものを、コンクリート全容量の0.5〜1.5%、好ましくは1.0%混入する。
【0040】
この際、鋼殻13内に充填される高強度鋼繊維補強コンクリートは、練り上げ直後の性状として流動性を有するため、狭いところや薄いところへも入り込むことができて、十分な充填性を確保することができると共に鋼繊維の分離もない。
【0041】
又、上記高強度鋼繊維補強コンクリートは、前記したように一般的な湿潤養生で材齢28日における圧縮強度が70N/mm2以上となるようにしてあるものであるため、上記型枠内への充填、打設終了後は、特殊な養生、たとえば、給熱養生等の特殊な養生を施すことなく、一般的な湿潤養生で済ませることが可能である。
【0042】
以上により、本発明は、孔あき鋼板ジベル1箇所あたりのせん断耐力が、従来の2〜3倍となる。これによって、鋼桁同士の鉄筋コンクリート橋脚上での接合部、或いは鋼桁とプレストレスコンクリート桁の接合部が、鋼殻に囲まれた閉空間であっても、(1)ジベルの必要数量を低減、および(2)貫通鉄筋の省略を果たすことができ、従来複雑であった鋼材配置を簡略化できるとともに、懸念されていたコンクリート充填性も十分確保できる。さらに、コンクリートの(3)振動締め固めに伴う鋼繊維の分離も生じないため、優れた合成効果を発揮することができる。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
水、普通ポルトランドセメント、シリカヒューム、膨張材、細骨材、最大径20mmの粗骨材、高性能AE減水剤、鋼繊維で構成され、水結合材比を33%、シリカヒュームを添加率10%(対水結合材)、膨張材を添加率5.8%(対水結合材)、細骨材率60%、鋼繊維の体積混入1.0%(鋼繊維;長さ30mm、径0.6mmの両端を折り曲げたフック形状)として高強度鋼繊維補強コンクリートを混練した。
【0044】
(比較例1)
シリカヒュームと鋼繊維を除き実施例1と同じ材料で普通コンクリートを混練した。
【0045】
次に、実施例1と比較例1のコンクリートを適用した孔あき鋼板ジベルのずれせん断試験を行った。
【0046】
図3(a)、図3(b)は、「頭付きスタッドの押抜き試験方法(案)」(日本鋼構造協会)に準拠した試験装置の概要を示し、図3(a)は正面図、図3(b)は図3(a)の平断面図である。
【0047】
この試験装置は、中心の鋼部材(H鋼)16の両側に孔あき鋼板ジベル14を取り付け、その孔あき鋼板ジベル14が取り付けられた鋼部材16の両側に、実施例1の高強度鋼繊維補強コンクリートと比較例1の普通コンクリートを用いた試験コンクリートブロック17を成型し、その鋼部材16の上端から荷重Fを負荷して、鋼部材16と試験コンクリートブロック17の相対ずれ変位を測定するもので、鋼部材16は、その下端が、試験コンクリートブロック17の載置面18から15mm程度浮くようにされ、試験コンクリートブロック17と鋼部材16に歪みゲージ19を図示のように4箇所取り付けて、荷重Fに対する鋼部材16と試験コンクリートブロック17との相対ずれ変位を計測するものである。
【0048】
この結果を図4に示した。図4において、曲線aは実施例1の高強度鋼繊維補強コンクリートを、曲線bは比較例1の普通コンクリートを示している。
【0049】
図4より、比較例1の普通コンクリートを適用した孔あき鋼板ジベルの最大ずれせん断耐力(ジベル1箇所あたり)が91kNであったのに対し、実施例1の高強度鋼繊維補強コンクリートを適用した場合の最大ずれせん断耐力は235kNであった。
【0050】
これにより、本発明の高強度鋼繊維補強コンクリートは、従来の普通コンクリートより、約2.5倍のせん断耐力を有することを確認した。
【0051】
(実施例2)
実施例1の高強度鋼繊維補強コンクリートを用いて、材齢28日において規定の圧縮強度試験を実施した結果、コンクリート強度(圧縮強度)は、鋼繊維混入率1.0%の配合で、104N/mm2、水結合比33%の配合で、118.6N/mm2であることが確認された。さらに、材齢28日において規定の曲げ引張試験を実施した結果、水結合比33%の配合比で、コンクリートの曲げ強度は10.5N/mm2、破壊エネルギーは3.47N/mm、水結合材比27%の配合では、コンクリートの曲げ強度は12.1N/mm2、破壊エネルギーは4.14N/mmであることが確認された。さらに練り上がり後のコンクリートは、規定の試験により、いずれの混入量のコンクリートでもスランプ値が20±2.5cmで、且つ骨材等の分離が生じていないことを確認した。
【符号の説明】
【0052】
10 橋脚
11 鋼桁
13 鋼殻
14 孔あき鋼板ジベル
20 プレストレスコンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の鋼桁と鉄筋コンクリート橋脚を接合、或いは橋梁の鋼桁とプレストレスコンクリート桁を接合すべく、その間に鋼殻を設け、その鋼殻内にコンクリートを充填して合成構造とするための合成構造のずれ止め構造において、前記鋼殻の内面の補強板に孔を設けて孔あき鋼板ジベルを形成させ、その鋼殻内に、シリカヒュームと鋼繊維が混入された高強度鋼繊維補強コンクリートを充填することを特徴とする高強度鋼繊維補強コンクリートを適用した合成構造のずれ止め構造。
【請求項2】
高強度鋼繊維補強コンクリートは、水結合材比27〜35%で、材齢28日における圧縮強度が70N/mm2以上である請求項1記載の高強度鋼繊維補強コンクリートを適用した合成構造のずれ止め構造。
【請求項3】
高強度鋼繊維補強コンクリートの補強材として、長さ20〜60mmの鋼繊維を用い、この鋼繊維を、高強度鋼繊維補強コンクリートに対して容積比で0.5〜1.5%混入した請求項1又は2記載の高強度鋼繊維補強コンクリートを適用した合成構造のずれ止め構造。
【請求項4】
シリカヒュームを全粉体質量に対して7〜14質量%充填した高強度鋼繊維補強コンクリートを用いる請求項1記載の高強度鋼繊維補強コンクリートを適用した合成構造のずれ止め構造。
【請求項5】
高強度鋼繊維補強コンクリートは、水、セメント、シリカヒューム、膨張材、細骨材、最大寸法20mm以下の粗骨材、高性能AE減水剤又は高性能減水剤、空気量調整剤及び鋼繊維を、水結合材比27〜35%、細骨材率58〜63%、空気量4.0%以下として混練し、練り上げ時のスランプ値が20±2.5cmの流動性をもつ請求項1〜4のいずれかに記載の高強度鋼繊維補強コンクリートを適用した合成構造のずれ止め構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−196098(P2011−196098A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64393(P2010−64393)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者:社団法人 日本建築学会 発行所:社団法人 日本建築学会 刊行物名:第8回複合・合成構造の活用に関するシンポジウム 講演集 発行年月日:平成21年11月5日
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】