説明

高所作業車

【課題】ブーム式高所作業車を橋脚下側に配置し、伸縮ブームの旋回・伸縮・起伏移動と垂直昇降多段マストの上昇によって、工事目標位置へ安全にバスケットをアプローチさせ、橋の側壁上方まで作業可能とする高所作業車を提供する。
【解決手段】走行ユニット5と、走行ユニット上の旋回台8と、一端を旋回台上部に軸支し、伸縮自在であると共に、支点を軸として起伏可能に延在している伸縮ブーム2と、伸縮ブームの支点の反対側に回動可能であると共に、昇降自在に取り付けられた垂直昇降多段マスト3と、垂直昇降多段マストの最上段マストに取り付けられたバスケット4とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋脚・橋梁側壁の工事等に用いられる高所作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、橋脚・橋梁側壁等は経年劣化することから、定期的な点検はもとより所定年数毎に補修工事する必要があることが良く知られている。
【0003】
図3(b)は従来の垂直タイプの高所作業車を示す図である。図4は従来の直伸タイプの高所作業車を示す図である。図5は従来の屈伸タイプの高所作業車を示す図である。
【0004】
図3(a)に示すように、橋脚301は敷地内(C部)に建設されているが、道路又は私有地(B部)がすぐに隣接する場合がある。
図3(b)は、道路又は私有地(B部)に、垂直タイプの高所作業車300を搬入する場合を示している。道路の場合は道路占有許可を取得し交通規制しながら、私有地が田畑の場合は地盤整備後に車両を搬入し工事していた。
道路占有許可が取れず、または地盤整備が困難の場合は図3(c)のように、敷地内(B部)に足場303を補修工事箇所の高架橋外側面(A面)まで迫り出す形状に組み、工事していた。
このように、従来の垂直タイプ高所作業車300は、バスケット(作業床)4が垂直移動のみである為、搬入場所において、補修工事以外の工数が必要となる問題があった。
【0005】
図4(a)は、直伸タイプの高所作業車400を高架橋301下に搬入し、伸縮ブーム2の伸長・上昇操作にて、補修工事箇所の高架橋外側面(A面)近くへアプローチしていた。しかし、バスケット(作業床)4の作業面が高架橋外側面(A面)から離れるという問題があった。
図4(b)は、バスケット4を旋回した状態で補修工事箇所の高架橋外側面(A面)に寄せる図である。バスケット4の旋回範囲は、一般的に左右90°又は100°程度であるので、作業範囲が限定されるという問題があった。
図4(c)は、伸縮ブーム2の伸長・上昇操作によって、補修工事箇所の高架橋外側面(A面)近くへのアプローチは可能であるが、より高い壁面位置へアプローチする場合は、バスケット4と高架橋外側壁の下面角(D部)が接近してしまい、作業の危険性が高くなるという問題があった。
【0006】
図5(a)は、先端屈伸アーム付高所作業車500を高架橋301下に搬入し、伸縮ブーム2の伸長・上昇操作にて、補修工事箇所の高架橋外側面(A面)近くへアプローチしていた。壁面上部への移動も、伸縮ブーム2の伸長・上昇操作によってアプローチしていた。アーム上部501の起伏角度は垂直方向まで可能である長いアームを備える場合は(通常のアーム長さは1.5m程度)、その範囲内でアプローチが可能であるが、伸縮ブーム2の伸長・上昇の操作移動は効率が悪いという問題があった。
さらに、図5(b)に示すように、バスケット4を壁面に寄せる場合ブームが高架橋外側壁の下面角(D部)に接近し、作業の危険性が高くなるという問題があった。
【0007】
従来の高所作業車について、直伸タイプ高所作業車400が特許文献1に、先端屈伸アーム付高所作業車500が特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開2004−175561
【特許文献2】特開2001−31389
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、足場を組む/地盤整備する必要が無く、ブーム式高所作業車を橋梁下の敷地内に設置し、高所作業車の伸縮ブームの伸長・上昇操作と垂直昇降多段マストの昇降操作にて、橋梁外側面の工事を効率よく作業可能とする。さらに、橋の側壁の高さが高い場合でも、バスケットを旋回させる必要も無く、伸縮ブームの起伏範囲内であって垂直昇降多段マストの昇降範囲内であれば、壁面に十分手の届く範囲で作業可能であり、バスケットは高架橋外側壁の下面角から安全な離隔距離を確保し、アプローチの際の危険性が低くなり、壁面上部まで補修工事可能とする高所作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、走行手段を備えたブーム式高所作業車において、走行ユニット上に旋回自在に取り付けられた旋回台と、旋回台上部に取り付けられた支持片の支点と、一端を支点に軸支し、伸縮自在であると共に起伏可能に延在している伸縮ブームと、支点と伸縮ブームとの取り付け部分の反対側に位置し、昇降自在に取り付けられた垂直昇降多段マストと、垂直昇降多段マストの最上段マストに取り付けられたバスケットとを備える構成とした。
【0010】
本発明が提供する高所作業車において、旋回台内部では、車両運転可能であると共に、伸縮ブームの制御及び垂直昇降多段マストの制御が可能である。
【0011】
本発明が提供する高所作業車において、垂直昇降多段マストは、伸縮ブームに対し、回動可能である。
【0012】
本発明が提供する高所作業車において、支点と伸縮ブームとの取り付け部分の反対側に設けられた平行取りシリンダにより、伸縮ブームが起伏した時でも、垂直昇降多段マストとバスケットとが地面に対し垂直状態を保つことを特徴とする。
【0013】
本発明が提供する高所作業車において、バスケットは折畳み式であってもよい。
また、バスケット内では、車両運転可能であると共に、伸縮ブームの制御及び垂直昇降多段マストの制御が可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の高所作業車は、ブーム式高所作業車を橋梁下の敷地内に設置し、高所作業車の伸縮ブームの伸長・上昇操作と垂直昇降多段マストの昇降操作にて、橋梁外側面の工事を効率よく補修工事可能とするので、足場を組む必要も無く、地盤整備を行う必要も無いので、短期の工事工数となる。
【0015】
補修工事箇所の高架橋外側面が高い場合でも、伸縮ブームの起伏範囲内であって垂直昇降多段マストの昇降範囲内であれば、バスケットを旋回させる必要が無く、上方まで十分手の届く範囲で補修工事可能である。さらに、バスケットは高架橋外側壁の下面角から安全な離隔距離を確保できるので、アプローチの際の危険性が低くなる。
【0016】
また、平行取りシリンダにより、伸縮ブームが起伏した時でも、垂直昇降多段マストとバスケットとが地面に対し垂直状態を保ち、安全性が確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明による高所作業車の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0018】
図1は本発明の走行手段を備えたブーム式高所作業車の構成図である。図2(a)〜(f)は、本発明の高所作業車を用いた作業手順を示す図である。
【0019】
図1に示すように、ブーム式高所作業車の走行ユニット5と、走行ユニット5の上部に取り付けられた旋回台8と、旋回台8上部に取り付けられた支持片7に設けられた支点1を軸として延在する伸縮ブーム2を備える。伸縮ブーム2は、支点1を起点として伸縮自在であると共に起伏可能でもある。
支点1と伸縮ブーム2との取り付け部分の反対側には、垂直昇降多段マスト3が昇降自在に取り付けられている。
バスケット4は、伸縮ブーム2の伸縮機能により内外移動し、起伏機能により上昇する。さらにバスケット4は、垂直昇降多段マスト3の昇降機能により、垂直方向へ上下移動が可能となる。
【0020】
垂直昇降多段マスト3の最上段マストには、バスケット4が取り付けられている。このバスケット4は、折畳み式であってもよく、折畳み式であれば収納時に場所を取らない。
【0021】
ここで、旋回台8内部において、高所作業車の車両運転、伸縮ブーム2制御と垂直昇降多段マスト3の制御が可能である。さらに、バスケット4内においても同様の運転及び制御が可能である為、伸縮ブーム2を伸長起伏させ、垂直昇降多段マスト3を上昇させた状態でも、高所作業車の移動が可能となる。
【0022】
また、車体設置位置と高架橋壁面との位置関係により、バスケット4の作業面と高架橋壁面が対面しない場合は、伸縮ブーム2に対する垂直昇降多段マスト3の回動機能を用いて、バスケット4の作業面を壁面に対面させることができる。
【0023】
平行取りシリンダ6は、支点1を起点として伸縮ブーム2が起伏している時に、垂直昇降多段マスト3とバスケット4が、地面に対して確実に垂直状態を保たせる機構である。これにより、伸縮ブーム2の起伏角度が大きくなっても、バスケット4の安全性が確保される。
【0024】
図2は、本発明の高所作業車を用いた作業手順を説明する。
【0025】
まず、高所作業車を補修工事が必要とされる橋脚下301へ搬入する。図2(a)の通り、伸縮ブーム2が最も下方に位置する状態で搬入し、車両が補修工事箇所の高架橋外側面(A面)に対し平行に位置するように配置する。ここで、車両の水平機構は従来技術と同様であるので、説明を省略する。
【0026】
次に、支点1を起点として伸縮ブーム2を上方に起伏させる。図2(b)の通り、伸縮ブーム2を短縮させたまま(基本位置)起伏させる。
図から明らかなように、伸縮ブーム2を起伏させても、平行取りシリンダ6により、バスケット4は地面との垂直状態を保っている。
【0027】
そして、伸縮ブーム2を伸長させる。図2(c)は、バスケット4を補修工事箇所の高架橋外側面(A面)より外に位置する所まで伸縮ブーム2を伸長させた図である。
この図からも明らかなように、伸縮ブーム2を伸長させても、平行取りシリンダ6により、バスケット4は地面との垂直状態を保ち続ける。
【0028】
さらに、補修工事開始目標位置(ここでは高架橋外側壁の下部)付近まで起伏させる。
図2(d)からも明らかなように、伸縮ブーム2の起伏角度が大きくなっても、バスケット4は地面との垂直状態を保っている。
【0029】
また、補修工事開始目標位置付近より(図2(d))、補修工事箇所の高架橋外側面(A面)より外に位置する所まで伸長させた伸縮ブーム2(図2(c))を、作業者の作業範囲内へと伸縮ブーム2を短縮させる。図2(e)は、補修工事開始を示す図である。従来例の図4(c),図5(b)と比較して、高架橋外側壁の下面角(D部)への接近が無く、アプローチの際の危険性が低いことが分かる。
【0030】
最後に、図2(f)は、補修工事箇所の高架橋外側面(A面)の下方より補修工事を開始し、垂直昇降多段マスト3を上昇させながら、順次上方へバスケット4を移動させている図である。垂直昇降多段マスト3の垂直方向の上昇により、より高所の補修工事目標位置においても作業が可能となることが分かる。なお、図示の通り、バスケット4は地面との垂直状態を維持している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の走行手段を備えたブーム式高所作業車の構成図である。
【図2】本発明の高所作業車を用いた作業を示す図である。
【図3】従来の垂直タイプの高所作業車を示す図である。
【図4】従来の直伸タイプの高所作業車を示す図である。
【図5】従来の屈伸タイプの高所作業車を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 支点
2 伸縮ブーム
3 垂直昇降多段マスト
4 バスケット
5 走行ユニット
6 平行取りシリンダ
7 支持片
8 旋回台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行手段を備えたブーム式高所作業車において、
走行ユニットと、
前記走行ユニット上に旋回自在に取り付けられた旋回台と、
前記旋回台上部に取り付けられた支持片の支点と、
一端を前記支点に軸支し、伸縮自在であると共に起伏可能に延在している伸縮ブームと、
前記支点と前記伸縮ブームとの取り付け部分の反対側に位置し、昇降自在に取り付けられた垂直昇降多段マストと、
前記垂直昇降多段マストの最上段マストに取り付けられたバスケットとを備えることを特徴とする高所作業車。
【請求項2】
請求項1に記載の高所作業車において、
前記旋回台内部では、車両運転可能であると共に、前記伸縮ブームの制御及び前記垂直昇降多段マストの制御が可能であることを特徴とする高所作業車。
【請求項3】
請求項1に記載の高所作業車において、
前記垂直昇降多段マストは、伸縮ブームに対し、回動可能であることを特徴とする高所作業車。
【請求項4】
請求項1に記載の高所作業車において、
前記支点と前記伸縮ブームとの取り付け部分の反対側に設けられた平行取りシリンダにより、
前記伸縮ブームが起伏した時でも、前記垂直昇降多段マストと前記バスケットとが地面に対し垂直状態を保つことを特徴とする高所作業車。
【請求項5】
請求項1に記載の高所作業車において、
前記バスケットは折畳み式であることを特徴とする高所作業車。
【請求項6】
請求項1に記載の高所作業車において、
前記バスケット内では、車両運転可能であると共に、前記伸縮ブームの制御及び前記垂直昇降多段マストの制御が可能であることを特徴とする高所作業車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−190861(P2009−190861A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34774(P2008−34774)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(594173430)株式会社エスマック (5)
【出願人】(591075630)株式会社アクティオ (33)
【出願人】(591075641)東鉄工業株式会社 (36)
【Fターム(参考)】