説明

高有効性のケトール酸レダクトイソメラーゼ酵素を用いたイソブタノールの発酵生産

ケトール酸レダクトイソメラーゼ酵素は、細菌および酵母におけるイソブタノール生合成経路においてステップとしてインビボで高有効性を示すことが同定された。これらのKARIは、分子系統解析によってSLSLクレードと呼ばれるものと同定されたクレードのメンバーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年9月29日に出願された米国仮特許出願第61/246,844号の優先権を主張するものであり、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、具体的にはイソブタノール生成のための産業微生物学および発酵の分野に関する。さらに具体的には、ケトール酸レダクトイソメラーゼ(KARI)酵素は、乳酸菌および酵母におけるイソブタノール生成のエンジニアリングされたイソブタノール生合成経路において有効性が高いことがわかった。
【背景技術】
【0003】
ブタノールは重要な産業化学物質であり、燃料添加剤として、プラスチック産業における原料化学物質として、ならびに食品および香料産業における食品用抽出溶媒として有用である。毎年、100〜120億ポンドのブタノールが石油化学的手段によって生成され、この汎用化学品に対する需要は高まる可能性が高い。
【0004】
微生物は、ブタノール生合成経路を発現することによってブタノールを生成するようにエンジニアリングされてきた。イソブタノール生合成経路が、特許文献1に開示されている。商業的に実現可能なイソブタノール生成を実現するには、非常に効率的なイソブタノール経路が必要である。この経路の第2のステップは、ケトール酸レダクトイソメラーゼ(KARI)によって触媒されるステップであり、アセト乳酸をジヒドロキシイソ吉草酸に変換する。活性の高いKARI酵素およびこれらの酵素のイソブタノール生合成経路における使用が、特許文献2に開示されている。
【0005】
イソブタノール生合成経路についてエンジニアリングされた微生物において、アセト乳酸をジヒドロキシイソ吉草酸に変換するステップを、イソブタノールの生成が最大限になるようにさらに改良する必要が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第20070092957号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第20080261230(A1)号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エンジニアリングされたイソブタノール生合成経路を有する宿主細胞においてより多くのイソブタノールが生成されるように、インビボにおけるアセト乳酸からジヒドロキシイソ吉草酸への変換に高い有効性を示すケトール酸レダクトイソメラーゼ(KARI)酵素を発現する宿主微生物細胞を提供する。高有効性のKARIは、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)およびストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)KARIを含む分子系統分類群に入る。
【0008】
本発明の一態様において、ケトール酸レダクトイソメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸分子を含む酵母細胞が提供される。ここで、前記ポリペプチドはKARIのSLSL Cladeのメンバーである。別の一態様において、酵母細胞は、サッカロミケス(Saccharomyces)、シゾサッカロミケス(Schizosaccharomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、カンジダ(Candida)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ヤロウイア(Yarrowia)、およびピキア(Pichia)からなる群から選択される属の酵母のメンバーである。
【0009】
別の態様において、前記SLSL Cladeは、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、リステリア(Listeria)、エンテロコッカス(Enterococcus)、マクロコッカス(Macrococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、ラクトバチルス(Lactobacillus)からなる群から選択される細菌に内在するケトール酸レダクトイソメラーゼからなる。
【0010】
別の態様において、ケトール酸レダクトイソメラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、および245からなる群から選択される配列と少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0011】
本発明の別の態様は、ケトール酸レダクトイソメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸分子を含むイソブタノール生成微生物細胞であり、ここで前記ポリペプチドはKARIのSLSL Cladeのメンバーである。
【0012】
別の態様において、前記微生物細胞は、エシェリキア(Escherichia)、ロドコッカス(Rhodococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、オエノコッカス(Oenococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、クロストリジウム(Clostridium)、ザイモモナス(Zymomonas)、サルモネラ(Salmonella)、ペディオコッカス(Pediococcus)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、クレブシエラ(Klebsiella)、パエニバチルス(Paenibacillus)、アルスロバクター(Arthrobacter)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、およびブレビバクテリウム(Brevibacterium)からなる群から選択される属の細菌細胞である。
【0013】
別の態様において、アセト乳酸をジヒドロキシイソ吉草酸に変換する方法が提供される。前記方法は、
a)ケトール酸レダクトイソメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸分子を含む酵母細胞を準備するステップ、ここで前記ポリペプチドはKARIのSLSL Cladeのメンバーであるステップと;
b)(a)の酵母細胞とアセト乳酸を接触させて、2,3−ジヒドロキシイソ吉草酸が生成されるステップと
を含む。
【0014】
別の態様において、イソブタノールの生成方法が提供される。前記方法は、
a)ケトール酸レダクトイソメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸分子を含む、イソブタノール生合成経路を備える微生物細胞を準備するステップ、ここで前記ポリペプチドは、KARIのSLSL Cladeのメンバーであるステップと;
b)ステップ(a)の微生物細胞を、イソブタノールが生成される条件下で増殖させるステップと
を含む。
【0015】
本明細書では、不活性化されたピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を少なくとも1つ有するようにエンジニアリングされ、配列番号:198、203、204、208、または211からなる群から選択されるプラスミドのコード領域を有するプラスミド、および配列番号:198、203、204、208、または211からなる群から選択されるプラスミドのコード領域と少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の同一性を有するコード領域を有するものを含む酵母細胞も提供される。また、少なくとも1つのピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を不活性化させるようにエンジニアリングされ、配列番号:198、203、204、208、または211からなる群から選択されるプラスミドのキメラ遺伝子を有するプラスミド、および配列番号:198、203、204、208、または211からなる群から選択されるプラスミドのキメラ遺伝子と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の同一性を有するキメラ遺伝子を有するものを含む酵母細胞も提供される。また、配列番号:198、203、204、208、または211の配列を有するプラスミド、および少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の同一性を有するものも提供される。
【0016】
本出願の一部分をなす以下の詳細な説明、図面、および添付の配列の説明から、本発明の様々な実施形態をさらに詳しく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】異なる3つのイソブタノール生合成経路を示す図である。
【図2】667の配列および95%配列同一性のカットオフを含む、KARIの分子系統樹を示す図である。円の外側の符号は、SLSL Cladeを示す。
【図3】KARI配列のSLSL Cladeを含む、図2の系統樹の一部分を示す図である。菱形は、ラクトバチルス目(Lactobacillales)のメンバーを示し、丸印は、バチルス目(Bacillales)のメンバーを示す。各小枝について95%同一性群を表す種を表に示す。
【図4】異なるKARI酵素についてイソブタノール生成酵母の増殖曲線を示すグラフである。SYK:単一酵母ILV5;SLK:単一L.ラクティスIlvC;SPK:単一Pf−5ilvC。
【図5】異なるKARI酵素についてイソブタノール生成酵母のイソブタノール力価を示すグラフである。SYK:単一酵母ILV5;SLK:単一L.ラクティスIlvC;SPK:単一Pf−5ilvC。
【0018】
本出願の一部分をなす以下の詳細な説明および添付の配列の説明から、本発明をさらに詳しく理解することができる。
【0019】
以下の配列は、37 C.F.R. 1.821−1.825(「Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures − the Sequence Rules」)に従うものであり、World Intellectual Property Organization(WIPO) Standard ST.25 (1998)ならびにEPOおよびPCTの配列表要件(Rules 5.2および49.5(a−bis)、ならびにSection 208およびAnnex C of the Administrative Instructions)と一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データに使用される記号およびフォーマットは、37 C.F.R. §1.822に記載の規則に従う。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
配列番号:110は、プラスミドpFP996の配列である。
【0024】
配列番号:111−121、123−126、130、131、133、134、13
6−141、143−148、151−154、156−159、161−163、165、166、168、170−173、177−181、186−197、199−202、205、206、209、210、213−222、224−243は、PCRおよび配列決定プライマーである。
【0025】
配列番号:122は、pyrFの配列である。
【0026】
配列番号:127は、リボソーム結合部位(RBS)である。
【0027】
配列番号:128は、プラスミドpDM20−ilvD(L.ラクティス(L.lactis))の配列である。
【0028】
配列番号:129は、プラスミドpDM1の配列である。
【0029】
配列番号:132は、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)に由来するRBSおよびilvDコード領域を含むPCR断片の配列である。
【0030】
配列番号:135は、sufオペロン(sufCおよびsufDの一部分)の5’部分を含む右ホモロジーアームDNA断片である。
【0031】
配列番号:142は、ネイティブsufプロモーターおよび上流の配列を含んでfeoBAオペロンになる左ホモロジーアームDNA断片である。
【0032】
配列番号:149は、プラスミドpTN6の配列である。
【0033】
配列番号:150は、Tn5IE−loxP−cm−Pspac−loxPカセットの配列である。
【0034】
配列番号:155は、Pnprプロモーターである。
【0035】
配列番号:160は、Pnpr−tnp融合DNA断片である。
【0036】
配列番号:164は、PgroEプロモーター配列である。
【0037】
配列番号:167は、kivD(o)コード領域をRBSと共に含むPCR断片である。
【0038】
配列番号:169は、RBSおよびsadB(o)コード領域を含むDNA断片である。
【0039】
配列番号:174は、プラスミドpFP352の配列である。
【0040】
配列番号:175は、プラスミドpDM5の配列である。
【0041】
配列番号:176は、lacI−PgroE/lacO断片である。
【0042】
配列番号:182は、プラスミドpDM5−PldhL1−ilvC(L.ラクティス(L.lactis))の配列である。
【0043】
配列番号:183は、L.プランタルム(L.plantarum)発現に最適化されたPF5−ilvCコドンに対するRBSおよびコード領域を含むDNA断片である。
【0044】
配列番号:184は、プラスミドpFP996−PldhL1の配列である。
【0045】
配列番号:185は、PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5)DNA断片である。
【0046】
配列番号:198は、プラスミドpYZ090の配列である。
【0047】
配列番号:203は、プラスミドpLH475−IlvC(L.ラクティス(L.lactis))の配列である。
【0048】
配列番号:204は、プラスミドpYZ091の配列である。
【0049】
配列番号:207は、プラスミドpLH532の配列である。
【0050】
配列番号:208は、プラスミドpYZ058の配列である。
【0051】
配列番号:211は、プラスミドpYZ067の配列である。
【0052】
配列番号:212は、pUC19−URA3rベクターの配列である。
【0053】
配列番号:223は、ilvD−FBA1t断片の配列である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明は、イソブタノール生成が改良されるようにエンジニアリングされた組換え宿主微生物細胞に関する。イソブタノールは、化石燃料の代替として使用するのに重要な化合物である。
【0055】
以下の略語および定義は、本明細書および特許請求の範囲の解釈に使用されることになる。
【0056】
本明細書では、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「含む(contains)」、もしくは「含んでいる(containing)」という用語、またはそれらの他の何らかの変形は、非排他的な包含を網羅するものとする。例えば、一連の要素を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素だけに限定されるわけではなく、明示的に列挙されていないまたはこのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、もしくは装置に固有でない他の要素を含むことができる。さらに、別段の明示的記載のない限り、「または」は、包含的またはを意味するが、排他的またはを意味するものではない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つによって満足される:Aは真であり(または存在する)かつBは偽であり(または存在しない)、Aは偽であり(または存在しない)かつBは真であり(または存在する)、ならびにAとBが共に真である(または存在する)。
【0057】
また、本発明の要素または成分に先行する不定冠詞「a」および「an」は、元素または成分の場合の数(すなわち、出現頻度)に関して非制限的であるものとする。したがって、「a」または「an」は、1つまたは少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、元素または成分の単数形は、数が明らかに単数であるものとする場合を除いて複数形も包含する。
【0058】
本明細書では、「発明」または「本発明」という用語は、非限定的な用語であり、特定の発明の任意の単一の実施形態を指すものではなく、本明細書および特許請求の範囲に記載するように可能な実施形態をすべて包含するものである。
【0059】
本明細書では、本発明の材料または反応物質の使用量を修飾する「約」という用語は、例えば実社会で濃縮物または使用溶液を作製するのに使用される典型的な測定手順および液体取扱い手順;これらの手順における不注意による誤り;組成物の作製または方法の実施に使用する材料の製造、供給源、または純度の差異などによって起こり得る数値量のばらつきを指す。「約」という用語は、特定の初期の混合物によって生ずる組成物の異なる平衡条件のために異なる量も包含する。「約」という用語で修飾されていようがいまいが、特許請求の範囲は、量に対して等価なものを含む。一実施形態において、「約」という用語は、報告された数値の10%以内、好ましくは報告された数値の5%以内を意味する。
【0060】
「イソブタノール生合成経路」という用語は、イソブタノールをピルビン酸から生成するための酵素経路を指す。
【0061】
「SLSL Clade」という用語は、分子系統解析によって同定されたKARI配列の枝を指すものであり、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、リステリア(Listeria)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、エンテロコッカス(Enterococcus)、マクロコッカス(Macrococcus)、およびラクトバチルス(Lactobacillus)に由来するKARIを包含する。図1および2は、それぞれSLSL Cladeと他のKARIとの関係およびSLSL Clade自体との関係を示す。
【0062】
「炭素基質」または「発酵性炭素基質」という用語は、本発明の宿主有機体による代謝が可能な炭素源、特に単糖、オリゴ糖、および多糖からなる群から選択される炭素源を指す。
【0063】
「遺伝子」という用語は、(5’非コード配列)の直前に制御配列および(3’非コード配列)の後にコード配列を場合によっては含む、特定のタンパク質として発現することが可能な核酸断片を指す。「ネイティブ遺伝子」は、それ独自の制御配列を有する自然界に見られる遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」はネイティブ遺伝子でなく、自然界で共には見られない制御およびコード配列を含む任意の遺伝子を指す。したがって、キメラ遺伝子は、異なる供給源に由来する制御配列とコード配列、または同じ供給源に由来するが、自然界に見られる様式とは異なる様式で配置された制御配列とコード配列を含んでもよい。「内在性遺伝子」は、有機体のゲノムのその天然の位置におけるネイティブ遺伝子を指す。「外来遺伝子」または「異種性遺伝子」は、宿主有機体に通常は見られないが、遺伝子移入により宿主有機体中に導入され、またはその発現を変更するようになど、そのネイティブ状態から何らかの方式で改変されている遺伝子を指す。外来遺伝子は、非ネイティブ有機体に挿入されたネイティブ遺伝子、またはキメラ遺伝子を含むことができる。「導入遺伝子」は、形質転換手順でゲノムに導入された遺伝子である。
【0064】
本明細書では、「コード領域」という用語は、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。「適切な制御配列」は、コード配列の上流(5’非コード配列)、範囲内、または下流(3’非コード配列)に位置し、転写、RNAプロセシングもしくは安定性、または関連コード配列の翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。制御配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位、およびステムループ構造を含むことができる。
【0065】
「プロモーター」という用語は、コード配列または機能性RNAの発現を調節することができるDNA配列を指す。一般に、コード配列は、プロモーター配列に対して3’に位置する。プロモーターは、全体としてネイティブ遺伝子に由来し、または自然界に見られる様々なプロモーターに由来する様々な要素から構成され、またはさらには合成DNAセグメントを含むものであってもよい。様々なプロモーターは、様々なタイプの組織もしくは細胞において、または様々な発達段階で、または様々な環境もしくは生理的状態に応答して、遺伝子の発現を指示できることを当業者は理解している。大部分のタイプの細胞において大部分の場合に遺伝子の発現を引き起こすプロモーターは、通常「構成プロモーター」と呼ばれる。大部分の場合、制御配列の正確な境界は完全には画定されないので、異なる長さのDNA断片が、同一のプロモーター活性を有する場合があることもさらに認識される。
【0066】
「機能的に連結された」という用語は、一方の機能が他方の機能によって影響を受けるような単一核酸断片上の核酸配列の結合を指す。例えば、プロモーターがコード配列の発現をもたらすことができるとき(すなわち、コード配列はプロモーターの転写調節下にあるということ)、プロモーターはそのコード配列と機能的に連結されている。制御配列にコード配列をセンスまたはアンチセンス方向に機能的に連結させることができる。
【0067】
本明細書では、「発現」という用語は、センスRNA(mRNA)の転写および安定な蓄積を指す。発現は、mRNAのポリペプチドへの翻訳を意味する場合もある。
【0068】
本明細書では、「形質転換」という用語は、核酸分子を宿主細胞に移入し、それがプラスミドとして維持され、またはゲノムに組み込まれ得ることを指す。形質転換核酸分子を含む宿主細胞は、「トランスジェニック」または「組換え」または「形質転換」細胞と呼ばれる。
【0069】
本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」という用語は、細胞の中心的代謝の一部分ではない遺伝子を運搬する場合が多く、通常環状二本鎖DNA分子の形をとっている染色体外要素を指す。このような要素は、任意の供給源に由来する一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAの自己複製配列、ゲノム組込み配列、線状または環状であり得るファージまたは他のヌクレオチド配列とすることができ、多くのヌクレオチド配列は、選択された遺伝子産物のためのプロモーター断片およびDNA配列を適切な3’非翻訳配列と共に細胞に導入することができる特徴のある構築物に結合または組み換えられている。
【0070】
本明細書では、「コドン縮重」という用語は、コード化ポリペプチドのアミノ酸配列に影響を及ぼすことなく、ヌクレオチド配列の変異を可能にする遺伝暗号の性質を指す。当業者は、所与のアミノ酸を特定するのにヌクレオチドコドンを使用する際に、特定の宿主細胞によって示される「コドンバイアス」をよく知っている。したがって、宿主細胞の発現を改善するためのコード領域を合成するとき、コード領域を、そのコドン使用頻度が宿主細胞の好ましいコドン使用頻度に近づくように設計することが望ましい。
【0071】
様々な宿主の形質転換のための核酸分子のコード領域を指すような「コドン最適化」という用語は、DNAによってコードされたポリペプチドを変化させることなく、宿主有機体の典型的なコドン使用を反映するような核酸分子のコード領域におけるコドンの変化を指す。
【0072】
本明細書では、「単離された核酸断片」または「単離された核酸分子」は同義で使用されることにし、合成、非天然、または改変ヌクレオチド塩基を場合によっては含有する一本鎖または二本鎖であるRNAまたはDNAのポリマーを意味することにする。DNAのポリマーの形態をとる単離された核酸断片は、cDNA、ゲノムDNA、または合成DNAの1個または複数のセグメントを含んでもよい。
【0073】
核酸断片は、核酸断片の一本鎖の形態を温度および溶液イオン強度の適切な条件下で他の核酸断片とアニーリングすることができるとき、cDNA、ゲノムDNA、またはRNA分子など別の核酸断片と「ハイブリダイズ可能」である。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は周知であり、その例は、Sambrook, J.、Fritsch, E. F.およびManiatis, T.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY (1989年)、特に第11章、表11.1に記載される(参照により本明細書に全体として組み込まれる)。温度およびイオン強度の条件によって、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」が決まる。ストリンジェンシー条件は、中程度に類似の断片(遠縁関係にある有機体に由来する相同配列など)、高度に類似の断片(近縁関係にある有機体に由来する機能酵素を覆製する遺伝子など)を求めてスクリーニングするように調整することができる。ハイブリダイゼーション後の洗浄操作で、ストリンジェンシー条件が決まる。1組の好ましい条件では、6X SSC、0.5%SDS、室温で15分間で始め、次いで2X SSC、0.5%SDS、45℃で30分間を繰り返し、次いで0.2X SSC、0.5%SDS、50℃で30分間を2回繰り返す一連の洗浄操作が用いられる。1組のより好ましいストリンジェントな条件では、より高い温度が用いられ、洗浄操作は、0.2X SSC、0.5%SDSによる最後の30分間の洗浄操作2回の温度を60℃に上げた点以外は上記と同一である。1組の別の好ましい極めてストリンジェントな条件では、0.1X SSC、0.1%SDSによる最後の洗浄操作2回が65℃で行われる。1組の追加のストリンジェントな条件には、例えば0.1X SSC、0.1%SDS、65℃でのハイブリダイゼーション、および2X SSC、0.1%SDSと、その後に続く0.1X SSC、0.1%SDSによる洗浄操作が含まれる。
【0074】
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーによっては塩基間のミスマッチが起こり得るが、ハイブリダイゼーションには、2つの核酸が相補的配列を含むことが必要とされる。核酸をハイブリダイズするのに適切なストリンジェンシーは、当技術分野において周知である変数である核酸の長さおよび相補性の程度によって決まる。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が高いほど、それらの配列を有する核酸配列のハイブリッドのTm値が高くなる。核酸ハイブリダイゼーションの(より高いTmに対応する)相対的安定性は、以下の順序で低下する:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。100ヌクレオチド長を超えるハイブリッドの場合、Tmを算出する数式が導かれている(Sambrookら、上記9.50〜9.51を参照のこと)。より短い核酸、すなわちオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションの場合、ミスマッチの位置がより重要になり、オリゴヌクレオチドの長さによって、その特異性が決まる(Sambrookら、上記11.7〜11.8を参照のこと)。一実施形態において、ハイブリダイズ可能な核酸の長さは、少なくとも約10ヌクレオチドである。ハイブリダイズ可能な核酸の最小の長さは、好ましくは少なくとも約15ヌクレオチドであり、より好ましくは、少なくとも約20ヌクレオチドであり、その長さは、最も好ましくは少なくとも約30ヌクレオチドである。さらに、当業者は、温度および洗浄溶液の塩濃度を、プローブの長さなどの要因に応じて適宜調整できることを認識するであろう。
【0075】
「かなりの割合」のアミノ酸またはヌクレオチド配列とは、当業者が手作業によって配列を評価することにより、またはBLAST (Altschul, S. F.ら、J. Mol. Biol., 215巻:403〜410頁(1993年))などのアルゴリズムを使用したコンピュータ自動化配列比較および同定により、そのポリペプチドまたは遺伝子を推定同定するのに十分量のポリペプチドのアミノ酸配列または遺伝子のヌクレオチド配列を含む割合である。一般に、ポリペプチドまたは核酸配列を既知のタンパク質または遺伝子と相同であると推定同定するためには、10個以上の一続きの隣接するアミノ酸または30個以上のヌクレオチドが必要である。さらに、ヌクレオチド配列に関して、20〜30個の隣接するヌクレオチドを含む遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブを、配列依存性の遺伝子同定方法(例えば、サザンハイブリダイゼーション)および単離方法(例えば、細菌コロニーまたはバクテリオファージプラークのインサイチューハイブリダイゼーション)で使用することができる。さらに、プライマーを含む特定の核酸断片を得るために、塩基約17個の短いオリゴヌクレオチドをPCRで増幅用プライマーとして使用することができる。したがって、「かなりの割合」のヌクレオチド配列は、配列を含む核酸断片を特異的に同定および/または単離するのに十分量の配列を構成する。本明細書は、特定のタンパク質をコードする完全アミノ酸およびヌクレオチド配列を教示する。本明細書に報告される配列の恩恵を受ける当業者は、当業者に公知の目的のために、開示された配列をすべてまたはかなりの割合で今度は使用することができる。したがって、本発明は、添付の配列表に報告する完全配列、および上記に定義したかなりの割合の配列を含む。
【0076】
「相補的」という用語は、互いにハイブリダイズすることができるヌクレオチド塩基間の関係を説明するのに使用される。例えば、DNAに関して、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。
【0077】
当技術分野において公知である「同一性(%)」という用語は、配列を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド配列間または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当技術分野では、「同一性」は、適宜、このような配列のストリング間のマッチで決定されるポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」および「類似性」は、1)Computational Molecular Biology(Lesk, A. M.編) Oxford University:NY (1988年);2)Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith, D. W.編) Academic:NY (1993年);3)Computer Analysis of Sequence Data, Part I(Griffin, A. M.およびGriffin, H. G.編) Humania:NJ (1994年);4)Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje, G.編) Academic (1987年);5)Sequence Analysis Primer(Gribskov, M.およびDevereux, J.編) Stockton:NY(1991年)を含めて、公知の方法で容易に算出することができるが、これらに限定されない。
【0078】
好ましい同一性測定方法は、被検配列間の最高のマッチをもたらすように設計されている。同一性および類似性の測定方法は、一般に利用可能なコンピュータープログラムに体系化されている。配列アラインメントおよび同一性(%)の算出は、LASERGENEバイオインフォマティクス・コンピューティング・スイートのMegAlign(商標)プログラム(DNASTAR Inc.、(Madison,WI))を使用して行うことができる。配列のマルチプルアライメントは、Clustal Vと呼ばれ(HigginsおよびSharp、CABIOS.、5巻:151〜153頁(1989年);Higgins, D.G.ら、Comput. Appl. Biosci.、8巻:189〜191頁(1992年)によって記載されている)、LASERGENEバイオインフォマティクス・コンピューティング・スイートのMegAlign(商標)プログラム(DNASTAR Inc.)に見られるアライメント方法に対応する「Clustal Vアラインメント法」を含めて、アルゴリズムのいくつかの変形を包含する「Clustalアラインメント法」を使用して行われる。マルチプルアライメントでは、デフォルト値は、GAP PENALTY=10およびGAP LENGTH PENALTY=10に対応する。Clustal方法を使用したタンパク質配列のペアワイズアラインメントおよび同一性(%)算出のデフォルトパラメーターは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5、およびDIAGONALS SAVED=5である。核酸では、これらのパラメーターは、KTUPLE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4、およびDIAGONALS SAVED=4である。Clustal Vプログラムを使用した配列のアラインメントを行った後、同じプログラムの「配列距離」表を調べることによって「同一性(%)」を得ることが可能である。さらに、「Clustal Wアライメント法」が利用可能であり、Clustal Wと呼ばれ(HigginsおよびSharp、CABIOS.、5巻:151〜153頁(1989年); Higgins, D.G.ら、Comput. Appl. Biosci.、8巻:189〜191頁(1992年)によって記載されている)、LASERGENEバイオインフォマティクス・コンピューティング・スイートのMegAlign(商標)v6.1プログラム(DNASTAR Inc.)に見られるアラインメント方法に対応するものである。マルチプルアライメントのデフォルトパラメーター(GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=0.2、Delay Divergen Seqs(%)=30、DNA Transition Weight=0.5、Protein Weight Matrix=Gonnet Series、DNA Weight Matrix=IUB)。Clustal Wプログラムを使用した配列のアラインメントを行った後、同じプログラムの「配列距離」表を調べることによって「同一性(%)」を得ることが可能である。
【0079】
多くの配列同一性レベルが、ポリペプチドを他の種などから同定するのに有用であり、このようなポリペプチドは、同じまたは同様の機能または活性を有するものであることが当業者にはよく理解されるであろう。同一性(%)の有用な例としては、24%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、あるいは25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%など、24%から100%の任意の整数百分率は、本発明を説明するのに有用であり得る。適切な核酸断片は、上記の相同性を有するだけでなく、典型的には少なくとも50個のアミノ酸、好ましくは少なくとも100個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも150個のアミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも200個のアミノ酸、最も好ましくは少なくとも250個のアミノ酸を有するポリペプチドをコードする。
【0080】
「配列解析ソフトウェア」という用語は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の分析に有用な任意のコンピューターアルゴリズムまたはソフトウェアプログラムを指す。「配列解析ソフトウェア」は、市販されているものがあり、または独自に開発することができる。典型的な配列解析ソフトウェアは、1)GCGプログラムスイート(Wisconsin Package Version 9.0、Genetics Computer Group (GCG)、(Madison,WI));2) BLASTP、BLASTN、BLASTX (Altschulら、J. Mol. Biol.、215巻:403〜410頁(1990年));3) DNASTAR (DNASTAR, Inc.、(Madison,WI)); 4) Sequencher (Gene Codes Corporation、(Ann Arbor, MI));5) Smith−Watermanアルゴリズムを組込みFASTAプログラム(W. R. Pearson、Comput. Methods Genome Res.、[Proc. Int. Symp.] (1994年)、Meeting Date 1992年、111〜20、編集者:Suhai, Sandor、Plenum:New York,NY)を含むようになるが、これらに限定されるものではない。本出願の文脈において、配列解析ソフトウェアが解析に使用される場合、解析の結果は、別段の指定のない限り記載のプログラムの「デフォルト値」に基づくことになることが理解されよう。本明細書では、「デフォルト値」は、最初に初期化されると、ソフトウェアと共に元々搭載される任意のセットの値またはパラメーターを意味することになる。
【0081】
ここで使用される標準組換えDNAおよび分子クローニング技法は、当技術分野において周知であり、Sambrook, J.、Fritsch, E. F.およびManiatis, T.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,NY (1989年)(以降、「Maniatis」);ならびにSilhavy, T. J.、Bennan, M. L.、およびEnquist, L. W.、Experiments with Gene Fusions、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,NY (1984年);ならびにAusubel, F. M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Assoc. and Wiley−Interscience出版(1987年)によって説明されている。ここで使用される追加の方法は、Methods in Enzymology、194巻、Guide to Yeast Genetics and Molecular and Cell Biology(Part A、2004年、Christine GuthrieおよびGerald R. Fink(編)、Elsevier Academic Press、San Diego、CA)に記載されている。
【0082】
インビボで高効率のKARIの発見
米国特許出願公開第20070092957号明細書に開示されたイソブタノール生成の生合成経路を、図1に示す。生合成経路のステップを最大限に利用して、イソブタノール生成を最大にすることは望ましい。図1の全経路の第2ステップは、ケトール酸レダクトイソメラーゼ(KARI)による、アセト乳酸のジヒドロキシイソ吉草酸への変換である。出願人らによって、イソブタノール生合成経路で使用されるとき、酵母および細菌において、イソブタノール生成の、以前に他のKARIを使用して得られたレベルを上回る増大を実現するKARIが確認された。
【0083】
発現されたイソブタノール経路のKARIとしてラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)KARI(配列番号:67のコード配列;配列番号:68のタンパク質)を発現する酵母において、イソブタノールの生成は、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)KARI(配列番号:91のコード配列;配列番号:89のタンパク質)または出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)KARI(配列番号:92のコード配列;配列番号:93のタンパク質)のいずれかを使用したイソブタノール生成より増大していることがわかった。試験状態でのイソブタノール生成は、少なくともほぼ倍増した。一方、L.ラクティス(L.lactis)KARIのインビトロ活性は、P.フルオレッセンス(P.fluorescens)KARIのインビトロ活性を下回るものであった。発現されたイソブタノール経路のKARIとして、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)(配列番号:67のコード配列;配列番号:68のタンパク質)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)(配列番号:27のコード配列;配列番号:28のタンパク質)、ストレプトコッカス・サーモフィリス(Streptococcus thermophilis)(配列番号:55のコード配列;配列番号:56のタンパク質)、またはロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)(配列番号:39のコード配列;配列番号:40のタンパク質)由来のKARIを発現するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)において、イソブタノールの生成は、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)KARI(配列番号:90のコード配列;配列番号:89のタンパク質)を使用したイソブタノール生成より増大していることがわかった。試験状態でのイソブタノール生成は、少なくとも3倍増大した。イソブタノール生成の増大量は、宿主株、存在している他のイソブタノール経路酵素、培地、および培養条件などの因子に応じて変わることがある。イソブタノール生成は、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)KARIを使用したときに比べて、高有効性のKARIを使用したときは、細菌類と酵母との両方において少なくともほぼ倍増する。イソブタノール生成は、2倍、3倍、4倍、またはそれ以上増加し得る。
【0084】
本細胞および方法で使用することができる、イソブタノール生成に有効性が高いKARIは、KARIアミノ酸配列の分子系統解析によって同定された群のメンバーであるものである。シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)KARI Pf−5(配列番号:89)のBLAST解析による公共データベースから収集されたKARI配列について、分子系統解析を行った。KARI配列から、多重配列アラインメント(MSA)を作成し、公的に利用可能なJalviewプログラムの近隣結合法を使用して、MSAから配列の系統樹を作成した(Waterhouseら、(2009年)Bioinformatics doi:10.1093/bioinformatics/btp033)。得られた、95%以上の同一性を有するKARI配列が単一の配列で表わされる系統樹を図2に示す。このKARI配列の解析によって、上記のとおり試験されたラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)(配列番号:68)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)(配列番号:28)、ストレプトコッカス・サーモフィリス(Streptococcus thermophilis)(配列番号:56)およびロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)(配列番号:40)由来のKARIは、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、およびロイコノストック(Leuconostoc)の他の株由来のKARI、ならびにスタフィロコッカス(Staphylococcus)、リステリア(Listeria)、エンテロコッカス(Enterococcus)、マクロコッカス(Macrococcus)、およびラクトバチルス(Lactobacillus)種由来のKARIをさらに含むKARIの詳細に明らかにされた系統枝またはクレードのメンバーすべてであることが明らかになった。したがって、KARIのこのクレードをSLSL Cladeであると同定し、図1に示す。さらに、SLSL Cladeを含む系統樹の一部分を図3に示す。
【0085】
SLSL CladeのメンバーであるいずれのKARIも、本細胞および方法で使用することができる。本明細書で同定されたこの系統枝のメンバーとしては、表1に配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、および245として記載されているものを含めて、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、リステリア(Listeria)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、エンテロコッカス(Enterococcus)、マクロコッカス(Macrococcus)、およびラクトバチルス(Lactobacillus)という様々な種に由来するKARIが挙げられる。これらのKARIのコード領域配列は、それぞれ配列番号:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、および244を有する。表1の配列のいずれかと99%以上の同一性を有する配列の大部分は記載されていないが、これらも本細胞および方法で使用することができ、上記のバイオインフォマティクス解析を使用して、当業者によって容易に同定される。したがって、表1の配列と少なくとも約99%の同一性を有する配列は、本細胞で使用することができる。
【0086】
KARIのSLSL CLadeに属する追加のKARIは、当業者に周知である文献およびバイオインフォマティクスデータベースで容易に同定することができる。バイオインフォマティクスを使用したコード配列および/またはタンパク質配列の同定は、典型的には本明細書に記載されているものなど、KARIをコードする配列またはコードされたアミノ酸配列に関して公的に利用可能なデータベースの(上記の)BLAST検索によって行われる。上記の分子系統解析を使用して、あるKARIがSLSL Cladeのメンバーであるかどうかを判断することができる。追加のKARIとしては、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、および245のKARIアミノ酸配列のいずれかと少なくとも約80〜85%、85%〜90%、90%〜95%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するSLSL Cladeのメンバーであるものが挙げられる。同一性は、GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=0.1、およびタンパク質重量マトリックスのGonnet 250シリーズというデフォルトパラメーターを用いたClustal Wアラインメント法に基づくものである。
【0087】
さらに、本明細書に記載された配列または当技術分野で列挙されているものを使用して、自然界における他の相同体を同定することができる。例えば、本明細書に記載されるKARIをコードする核酸断片をそれぞれ使用して、相同タンパク質をコードする遺伝子を単離することができる。配列依存性プロトコルを用いた相同遺伝子の単離は、当技術分野において周知である。配列依存性プロトコルの例としては、1)核酸ハイブリダイゼーションの方法;2)核酸増幅技術の様々な使用によって例示されるDNAおよびRNA増幅方法[例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、Mullisら、米国特許第4,683,202号明細書;リガーゼ連鎖反応(LCR)、Tabor, S.ら、Proc. Acad. Sci. USA 82巻:1074頁(1985年);または鎖置換増幅(SDA)、Walkerら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89巻:392頁(1992年)];および3)ライブラリー構築および相補性によるスクリーニングの方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
酵母および細菌細胞におけるKARI発現
上記のKARIはいずれも、酵母または細菌細胞において発現して、アセト乳酸をジヒドロキシイソ吉草酸に変換することができ、イソブタノール生合成経路におけるステップを実現する。宿主細胞とすることができる酵母細胞としては、サッカロミケス(Saccharomyces)、シゾサッカロミケス(Schizosaccharomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、カンジダ(Candida)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ヤロウイア(Yarrowia)、イサチェンキア(Issatchenkia)、およびピキア(Pichia)という属に属するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。宿主細胞とすることができる細菌細胞としては、エシェリキア(Escherichia)、ロドコッカス(Rhodococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、オエノコッカス(Oenococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、クロストリジウム(Clostridium)、ザイモモナス(Zymomonas)、サルモネラ(Salmonella)、ペディオコッカス(Pediococcus)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、クレブシエラ(Klebsiella)、パエニバチルス(Paenibacillus)、アルスロバクター(Arthrobacter)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、およびブレビバクテリウム(Brevibacterium)という属に属するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ラクトコッカス(Lactococcus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、オエノコッカス(Oenococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、およびストレプトコッカス(Streptococcus)などの乳酸菌(LAB)である宿主細胞が特に有用である。
【0089】
上記のKARIコード領域を発現する方法は、当業者に周知である。例えば、酵母における遺伝子発現方法は公知であり、Methods in Enzymology、194巻、Guide to Yeast Genetics and Molecular and Cell Biology(Part A、2004年、Christine GuthrieおよびGerald R. Fink(編)、Elsevier Academic Press、San Diego,CA)などに記載されている。
【0090】
典型的には、所望のKARIのコード領域は、コード領域を標的細胞における発現のためのプロモーターに機能的に連結させることによって、キメラ遺伝子の一部分として構築される。終結制御領域をキメラ発現遺伝子に含むことができ、細菌細胞発現には、リボソーム結合部位を含むことができる。コード領域は、当業者に公知であるようにエンジニアリングされた特定の宿主細胞における発現に最適化されたコドンとすることができる。
【0091】
酵母における発現に使用することができるプロモーターは、例えば構成プロモーターFBA1、TDH3、ADH1、およびGPM1、ならびに誘導プロモーターGAL1、GAL10、およびCUP1である。酵母における発現にキメラ遺伝子コンストラクトで使用することができる好適な転写ターミネーターとしては、FBA1t、TDH3t、GPM1t、ERG10t、GAL1t、CYC1t、およびADH1tが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
適切なプロモーター、転写ターミネーター、およびコード領域を大腸菌(E.coli)−酵母シャトルベクターにクローニングし、酵母細胞に形質転換することができる。これらのベクターによって、大腸菌(E.coli)株と酵母株の両方で伝播が可能になる。典型的には、ベクターは、所望の宿主における自律増殖または染色体組込みを可能にする選択マーカーおよび配列を含む。酵母において典型的に使用されるプラスミドは、シャトルベクターpRS423、pRS424、pRS425、およびpRS426(American Type Culture Collection、Rockville,MD)であり、大腸菌(E.coli)複製開始点(例えば、pMB1)、酵母2μ複製開始点、および栄養選択性マーカーを含む。これらの4つのベクター用の選択マーカーは、HIS3(ベクターpRS423)、TRP1(ベクターpRS424)、LEU2(ベクターpRS425)、およびURA3(ベクターpRS426)である。キメラ遺伝子を含む発現ベクターの構築は、大腸菌(E.coli)において標準分子クローニング技法で、または酵母においてギャップ修復組換え方法で行うことができる。キメラ遺伝子は、プラスミドから発現させてもよく、細胞ゲノムに組み込んでもよい。細菌細胞におけるキメラ遺伝子の発現のためのプロモーターは多数であり、当業者によく知られている。これらには、lac、ara、tet、trp、lPL、lPR、T7、tac、およびtrcプロモーター(大腸菌(Escherichia coli)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、およびシュードモナス(Pseudomonas)における発現に有用);バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、およびパエニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans)における発現に有用なamy、apr、およびnprプロモーター、ならびに様々なファージプロモーター;nisA(グラム陽性細菌における発現に有用、Eichenbaumら、Appl. Environ. Microbiol.、64巻(8号):2763〜2769頁(1998年));および合成P11プロモーター(ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)における発現に有用、Rudら、Microbiology、152巻:1011〜1019頁(2006年))が含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに、L.プランタルム(L.plantarum)のldhL1およびfabZ1プロモーターは、LABにおけるキメラ遺伝子の発現に有用である。fabZ1プロモーターは、(3R)−ヒドロキシミリストイル−[アシルキャリアータンパク質]デヒドラターゼをコードする第1の遺伝子fabZ1を有するオペロンの転写を指図する。
【0093】
終結制御領域も、好ましい宿主に固有の様々な細菌遺伝子に由来することがある。
【0094】
種々の細菌細胞の形質転換に有用なベクターは通常のものであり、EPICENTRE(登録商標)(Madison,WI)、Invitrogen Corp.(Carlsbad,CA)、Stratagene(La Jolla,CA)、およびNew England Biolabs, Inc.(Beverly,MA)などの企業から市販されている。ある種のベクターは、広範囲の宿主細菌において複製することができ、接合により移入させることができる。pRK404および関連した3つのベクター:pRK437、pRK442、pRK442(H)のアノテーション付き完全配列が利用可能である。これらの誘導体は、グラム陰性細菌における遺伝子操作のために役立つツールであるとわかった(Scottら、Plasmid、50巻(1号):74〜79頁(2003年))。ある範囲のグラム陰性細菌において機能することができるプロモーターを有する、広宿主域のInc P4プラスミドRSF1010のいくつかのプラスミド誘導体も利用可能である。プラスミドpAYC36およびpAYC37は、グラム陰性細菌における異種性遺伝子発現が可能になるように、複数のクローニング部位に沿って活性なプロモーターを有する。バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)およびラクトバチルス(Lactobacillus)の形質転換に有用なベクターのなかには、pAMβ1およびその誘導体(Renaultら、Gene、183巻:175〜182頁(1996年);およびO’Sullivanら、Gene、137巻:227〜231頁(1993年));pMBB1およびpMBB1の誘導体であるpHW800(Wyckoffら、Appl. Environ. Microbiol.、62巻:1481〜1486頁(1996年));接合プラスミドpMG1(Tanimotoら、J. Bacteriol.、184巻:5800〜5804頁(2002年));pNZ9520(Kleerebezemら、Appl. Environ. Microbiol.、63巻:4581〜4584頁(1997年));pAM401(Fujimotoら、Appl. Environ. Microbiol.、67巻:1262〜1267頁(2001年));およびpAT392(Arthurら、Antimicrob. Agents Chemother.、38巻:1899〜1903頁(1994年))が含まれる。ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)由来のプラスミドも複数報告されている(van Kranenburgら、Appl. Environ. Microbiol.、71巻(3号):1223〜1230頁(2005年))。
【0095】
電気穿孔や接合など、当技術分野において公知である方法を用いて、ベクターまたはプラスミドを宿主細胞に導入することができる。
【0096】
イソブタノール生成用の宿主細胞
本明細書に記載されるKARIを含めて、イソブタノール生合成経路についてエンジニアリングされた酵母および細菌細胞は、追加の改変を加えてもよい。イソブタノール合成へのフラックスを増大させる改変など、宿主細胞を改良する何らかの改変を行うことができる。
【0097】
例えば、使用することができる酵母細胞を、少なくとも1つのピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)遺伝子が不活性化され、pdc細胞を生成するようにエンジニアリングすることができ、したがってピルビン酸のアセトアルデヒドへの変換が低減され、より多くのピルビン酸がイソブタノール経路に流れることができる。酵母は、ピルビン酸デカルボキシラーゼをコードする1つまたは複数の遺伝子を有することがある。例えば、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)およびシゾサッカロミケス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)においてはピルビン酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子が1つ存在し、サッカロミケス(Saccharomyces)においてはPDC1、PCD5、およびPDC6遺伝子によってコードされるピルビン酸デカルボキシラーゼのアイソザイムが3つ存在する。使用される酵母細胞が、1つを超える発現された(活性)PDC遺伝子を有する場合、活性PDC遺伝子はそれぞれ、不活性化され、それによってpdc細胞を生成する。例えば、出芽酵母(S.cerevisiae)において、PDC1、PDC5、およびPDC6遺伝子を不活性化することができる。もっとも、PDC6など、PDC遺伝子が、使用される発酵条件下で活性でない場合は、この遺伝子を不活性化する必要がない。
【0098】
ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性をもたないサッカロミケス(Saccharomyces)株がATCCからAccession #200027および#200028で入手可能である。さらに、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20090305363号明細書および本明細書の実施例1に記載されるように、酵母を、内因性活性PDC遺伝子が不活性化されるようにエンジニアリングすることができる。
【0099】
さらに、使用することができる酵母細胞を、グルコース抑制が低減されるようにエンジニアリングすることができる。クラブトリーポジティブな酵母において起こるグルコース抑制は、高グルコースの存在下に、呼吸代謝および非グルコース炭素源の利用に関与する遺伝子の発現の抑制が起こる現象である(Gancedo、(1998年)、Microbiol. Mol. Bio. Rev.、62巻:334〜361頁)。2009年9月29日出願の米国仮特許出願第61/246709号明細書には、pdc表現型およびイソブタノール経路と組み合わせた、グルコース抑制を低減させた酵母細胞は、イソブタノール生成および高グルコースにおける増殖を改善したという知見が開示されている。参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第61/246709号明細書に記載のように、グルコース抑制を下記などの方法で低減することができる:(1)グルコース抑制効果に関与する転写因子の発現の変更、例えば、Hap1転写アクチベーターの発現の増大、またはMig1もしくはMig2転写リプレッサーの発現の低減、(2)SCFユビキチン−リガーゼ複合体の構成要素であり、グルコース抑制経路における1次的因子であると思われるGRR1(グルコース抑制耐性)の発現の低減、(3)HXT1、HXT2、HX3、HXT4、HXT5、HXT6、および/またはHXT7を含めて、ヘキソーストランスポーター遺伝子の不活性化によるグルコース輸送能力の減弱、あるいは(4)内因性ヘキソキナーゼ2遺伝子(HXK2)の欠失。上記遺伝子の発現の変更は、本明細書の実施例1に例示するものを含めて、当技術分野において周知である方法でエンジニアリングすることができる。
【0100】
例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20100112655号明細書に記載されているように、使用することができる乳酸菌(LAB)細胞を、乳酸デヒドロゲナーゼ活性が低減されるようにエンジニアリングすることができ、したがって乳酸のピルビン酸からの生成が低減されて、別の経路へのピルビン酸のフラックスが増大する。LABは、乳酸デヒドロゲナーゼをコードする1つまたは複数の遺伝子、典型的には1つ、2つまたは3つの遺伝子を有することができる。例えば、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)は、乳酸デヒドロゲナーゼをコードする3つの遺伝子(ldhL2、ldhD、およびldhL1と呼ばれる)を有する。ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)は、乳酸デヒドロゲナーゼをコードする1つ遺伝子(ldhLと呼ばれる)を有し、ペディオコッカス・ベントサセウス(Pediococcus pentosaceus)は、ldhDおよびldhLと呼ばれる2つの遺伝子を有する。1つを超える乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が、使用される増殖条件下で活性であるとき、これらの活性遺伝子をそれぞれ、本明細書の実施例1のように発現が低減されるように改変することができる。
【0101】
さらに、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20100081182号明細書に開示されるように、LAB宿主細胞を、Fe−Sクラスター形成タンパク質の発現が増大されるようにエンジニアリングして、イソブタノール経路のFe−Sクラスターを必要とするジヒドロキシ酸デヒドラターゼ酵素の活性を改善することができる。例えば、本明細書の実施例2に記載のように、Fe−Sクラスター形成タンパク質をコードする内因性sufオペロンの発現を増大させることができる。
【0102】
本明細書で提供される細胞において有用であり得る追加の改変としては、(参照により本明細書に組み込まれる)米国特許出願公開第20090305363号明細書に記載のように、グリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を低減させる改変、(参照により本明細書に組み込まれる)米国特許出願公開第20100120105号明細書に記載のように、Entner−Doudoroff経路または還元当量のバランスを介して炭素フラックスの増大を実現する宿主細胞への改変が挙げられる。酵母ミトコンドリアにおける分枝鎖アミノ酸生合成に関与するある種の酵素の活性を低減させた酵母細胞については、(参照により本明細書に組み込まれる)米国特許出願公開第20100129887号明細書に記載されており、異種タンパク質の活性に補因子としてFe−Sクラスターの結合が必要とされるそれらの活性を増大させた酵母株については、(参照により本明細書に組み込まれる)米国特許出願公開第20100081179号明細書に記載されている。他の改変としては、米国仮特許出願第61/290,639号明細書に記載されている二重の役割を果たすヘキソキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする内因性ポリヌクレオチドにおける改変、米国仮特許出願第61/380563号明細書に記載されているピルビン酸を利用する生合成経路におけるステップを触媒するポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの組込みが挙げられる(引用されている仮出願は両方とも、参照により本明細書にそれらの全体として組み込まれる)。
【0103】
さらに、Fe−Sクラスター生合成に影響を及ぼすポリペプチドをコードする内在性遺伝子において少なくとも1つの欠失、突然変異、および/または置換を含む宿主細胞については、(参照により本明細書に組み込まれる)米国仮特許出願第61/305333号明細書に記載されており、ホスホケトラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含む宿主細胞およびホスホトランスアセチラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含む宿主細胞については、米国仮特許出願第61/356379号明細書に記載されている。
【0104】
上記の改変を有する宿主細胞をエンジニアリングする方法は、当技術分野において周知である。遺伝子発現の方法としては、KARIの発現について上述されたものが挙げられる。遺伝子不活性化の方法としては、コードする遺伝子の全部または一部分の欠失、コードされたタンパク質を発現することができないように、コードする遺伝子にDNA断片を(プロモーターまたはコード領域で)挿入すること、突然変異をコード領域に導入し、機能タンパク質が発現されないように終止コドンまたはフレームシフトを加えること、および1つまたは複数の突然変異をコード領域に導入して、アミノ酸を非機能タンパク質が発現されるように変更することが挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、発現をアンチセンスRNAまたは干渉RNAの発現によってブロックすることができ、コサプレッションを生じる構築物を導入することができる。
【0105】
イソブタノール生成
本明細書に記載されたようにインビボで高有効性であるKARIを有する本細胞は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20070092957(A1)号明細書に開示され、図1に示されるものなどの生合成経路を使用して、イソブタノールを生成する。
【0106】
米国特許出願公開第20070092957(A1)号に記載のように、イソブタノール生合成経路例におけるステップは、
− 例えば、EC番号2.2.1.69で知られるアセト乳酸合成酵素(ALS)によって触媒されるピルビン酸からアセト乳酸への変換(図1経路ステップa);
− 例えば、EC番号1.1.1.86で知られるアセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ、別名ケトール酸レダクトイソメラーゼ(KARI)によって触媒されるアセト乳酸から2,3−ジヒドロキシイソ吉草酸への変換(図1経路ステップb);
− 例えば、EC番号4.2.1.9で知られるアセトヒドロキシ酸デヒドラターゼ、別名ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(DHAD)によって触媒される2,3−ジヒドロキシイソ吉草酸からα−ケトイソ吉草酸への変換(図1経路ステップc);
− 例えば、EC番号4.1.1.72または4.1.1.1で知られる分枝鎖α−ケト酸デカルボキシラーゼによって触媒されるα−ケトイソ吉草酸からイソブチルアルデヒドへの変換(図1経路ステップd);および
− 例えば、EC番号1.1.1.265で知られるが、他のアルコールデヒドロゲナーゼ(具体的には、EC 1.1.1.1または1.1.1.2)に分類されることもある分枝鎖アルコールデヒドロゲナーゼによって触媒されるイソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換(図1経路ステップe)
を含む。
【0107】
代替経路のステップf、g、h、I、j、およびkの場合、基質から生成物への変換、およびこれらの反応に関与する酵素は、米国特許出願公開第20070092957(A1)号明細書に記載されている。
【0108】
これらの酵素の発現に使用することができる遺伝子、および追加の2つのイソブタノール経路用の遺伝子については、米国特許出願公開第20070092957(A1)号明細書に記載されており、使用することができる追加の遺伝子は、上述されたように当業者に周知のことであるが、文献およびバイオインフォマティクス手法を使用して同定することができる。さらに、そこに記載される配列を使用して、上述されたように当技術分野において周知である配列依存性プロトコルを用いて、相同タンパク質をコードする遺伝子を単離することができる。
【0109】
例えば、使用することができる代表的ALS酵素のなかには、バチルス(Bacillus)のalsSおよびクレブシエラ(Klebsiella)のbudBによってコードされるものも含まれる(Gollopら、J. Bacteriol.、172巻(6号):3444〜3449頁(1990年);Holtzclawら、J. Bacteriol.、121巻(3号):917〜922頁(1975年))。バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)(DNA:配列番号:69;タンパク質:配列番号:70)、クレブシエラ・ニューモニアエ(Klebsiella pneumoniae)(DNA:配列番号:72;タンパク質:配列番号:73)、およびラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)(DNA:配列番号:74;タンパク質:配列番号:75)由来のALS、ならびにラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)における発現に最適化されたバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)alsコード領域(配列番号:71)が本明細書に記載されている。使用することができる追加のalsコード領域およびコードされたタンパク質としては、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(DNA:配列番号:76;タンパク質:配列番号:77)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)(DNA:配列番号:78;タンパク質:配列番号:79)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)(DNA:配列番号:80;タンパク質:配列番号:81)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)(DNA:配列番号:82;タンパク質:配列番号:83)、ビブリオ・アングスツム(Vibrio angustum)(DNA:配列番号:84;タンパク質:配列番号:85)、およびバチルス・セレウス(Bacillus cereus)(DNA:配列番号:86;タンパク質:配列番号:87)由来のものが挙げられる。ピルビン酸をアセト乳酸に変換する配列番号:70、73、75、77、79、81、83、85、または87を有するもののうちのいずれか1つと少なくとも約80〜85%、85%〜90%、90%〜95%、または少なくとも約96%、97%、または98%の配列同一性を有するアセト乳酸合成酵素をコードするals遺伝子を使用することができる。同一性は、GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=0.1、およびタンパク質重量マトリックスのGonnet 250シリーズというデフォルトパラメーターを用いたClustal Wアラインメント法に基づくものである。
【0110】
さらに、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20090305363号明細書は、B.サブティリス(B.subtilis)AlsS配列の100の最近傍であり、それらのいずれも使用することができるアセト乳酸合成酵素を表す系統樹を提供する。本株で使用することができる追加のAls配列は、当業者に周知である文献およびバイオインフォマティクスデータベースで同定することができる。バイオインフォマティクスを使用したコード配列および/またはタンパク質配列の同定は、典型的には本明細書に記載されているものなど、既知のAlsをコードする配列またはコードされたアミノ酸配列に関して公的に利用可能なデータベースの(上記の)BLAST検索によって行われる。同定は、以上に指定したClustal Wアラインメント法に基づいている。さらに、上記のように、本明細書に列挙された配列または当技術分野で列挙されているものを使用して、自然界における他の相同体を同定することができる。
【0111】
酵母におけるアセト乳酸合成酵素のサイトゾル発現は、アセト乳酸合成酵素タンパク質をコードする配列を含むが、ミトコンドリア標的化シグナル配列を含まない遺伝子で形質転換することによって実現される。酵母における遺伝子発現方法は、当技術分野において公知である(例えば、Methods in Enzymology、194巻、Guide to Yeast Genetics and Molecular and Cell Biology(Part A、2004年、Christine GuthrieおよびGerald R. Fink(編)、Elsevier Academic Press、San Diego,CAを参照のこと)。キメラ遺伝子(プロモーターおよびターミネーターを含む)を用いた発現、ベクター、クローニング法、および組込み方法は、上述の通りである。
【0112】
使用することができるKARI酵素は、上述の通りである。追加のKARI酵素があれば、本明細書に記載されるKARI酵素と一緒に使用できることも考えられる。好適なKARI酵素としては、米国特許出願公開第20080261230号明細書、同第20090163376号明細書、および同第20100197519号明細書(これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものが挙げられる。
【0113】
例えば、使用することができるDHAD酵素は、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)(DNA:配列番号:94;タンパク質配列番号:95)もしくはストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)(DNA:配列番号:96;タンパク質配列番号:97)のilvD遺伝子、または出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)(DNA:配列番号:98;タンパク質配列番号:99)のILV3遺伝子に由来するものとすることができる。使用することができる追加のDHAD配列を得るのに使用することができる追加のDHAD配列は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20100081154号明細書に開示されている。この参考文献には、使用することができる追加のDHAD配列を得るための説明も含まれている。
【0114】
例えば、使用することができる分枝鎖ケト酸デカルボキシラーゼ酵素としては、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)(DNA:配列番号:100;タンパク質配列番号:101)のkivD遺伝子、ならびにラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)(配列番号:102)における発現に最適化されたコドンであるL.ラクティス(L.lactis)kivDコード領域、および上述されたようにバイオインフォマティクスを使用して当業者が同定することができる他のものに由来するものが挙げられる。
【0115】
例えば、使用することができる分枝鎖アルコールデヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1.265で知られるが、他のアルコールデヒドロゲナーゼ(具体的には、EC 1.1.1.1または1.1.1.2)に分類されることもある。これらの酵素は、NADH(還元型ニコチンアミド−アデニンジヌクレオチド)および/またはNADPHを電子供与体として利用し、使用することができる分枝鎖アルコールデヒドロゲナーゼ酵素およびそれらのコード領域の配列は、米国特許出願公開第20070092957(A1)号明細書に記載されている。
【0116】
さらに、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20090269823号明細書に開示されている、アクロモバクター・キシロソキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)(DNA:配列番号:103、タンパク質配列番号:104)であると同定された細菌の環境単離物から単離された新規ブタノールデヒドロゲナーゼsadBは、イソブチルアルデヒドをイソブタノールに変換する最後のステップに有用である。L.プランタルム(L.plantarum)(配列番号:105)における発現に最適化されたsadBコード領域を使用することができる。さらに、ウマ肝臓由来のアルコールデヒドロゲナーゼ(HADH;出芽酵母(S.cerevisiae)における発現に最適化されたコドン;DNA:配列番号:106;タンパク質配列番号:107)、および上述されたようにバイオインフォマティクスを使用して当業者によって容易に同定された他のもの。追加のアルコールデヒドロゲナーゼについては、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第61/290,636号明細書に記載されている。
【0117】
乳酸デヒドロゲナーゼ活性を実質的に含まないLAB細胞におけるDHADの活性の改善は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20100081183号明細書に開示された。さらに、鉄−硫黄クラスター形成タンパク質の発現を増大させて、DHADの活性を改善することが、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010−0081182号明細書に開示されている。
【0118】
米国特許出願公開第20070092957(A1)号明細書には、キメラ遺伝子の構築およびLABの遺伝子工学が記載されており、開示された生合成経路を使用するイソブタノール生成にはラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)が例示されている。当業者に周知であるように、経路酵素発現のためのキメラ遺伝子は、細胞中で複製プラスミド上に存在し、または細胞ゲノムに組み込まれることがある。米国特許出願公開第20070092957(A1)号明細書には、キメラ遺伝子の構築および酵母の遺伝子工学がさらに記載されており、開示された生合成経路を使用するイソブタノール生成には出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)が例示されている。遺伝子構築および発現についてのさらなる説明は、上記および本明細書の実施例に記載されている。
【0119】
生成のための増殖
本明細書に開示する細菌および酵母細胞は、イソブタノール生成用の発酵培地で増殖させることができる。最大の生成には、生成宿主として使用される株が、増強されたイソブタノール耐性を有し、および高い炭化水素利用率を有することが好ましい。これらの特性は、突然変異誘発と選択、遺伝子工学によって付与されることもあり、または自然のものであることもある。
【0120】
細胞は、好適な炭素基質を含有する発酵培地中で増殖される。適切な基質としては、グルコースやフルクトースなどの単糖、ラクトースもしくはスクロースなどのオリゴ糖、デンプンもしくはセルロースなどの多糖、またはそれらの混合物、ならびにチーズホエー透過物、コーンスティープリカー、シュガービート糖蜜、および大麦麦芽などの再生可能なフィードストックの未精製混合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。他の炭素基質としては、エタノール、ラクタート、スクシナート、またはグリセロールを挙げることができる。さらに、発酵性糖は、例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2007/0031918(A1)号)明細書に記載されているように、再生可能なセルロースまたはリグノセルロースバイオマスから、前処理および糖化のプロセスを経て誘導することができる。したがって、本発明において利用される炭素の供給源は、多種多様な炭素含有基質を包含することができ、有機体の選択によって限定されるだけになると考えられる。
【0121】
発酵培地は、適切な炭素源に加えて、イソブタノールの生成にとって必要である培養物の増殖および酵素経路の促進に適した、当業者に公知の適切な鉱物、塩、補因子、緩衝液、および他の成分を含有しなければならない。
【0122】
培養条件
典型的には、適切な培地中、細菌細胞は、約25℃から約40℃の範囲の温度で増殖され、酵母細胞は、約20℃から約37℃の範囲の温度で増殖される。好適な増殖培地は、工業的に調製された一般的な培地であり、使用する特定の細胞の増殖に適した培地は、微生物学または発酵科学の当業者には公知であろう。
【0123】
細菌の場合、発酵に適したpH範囲はpH5.0〜pH9.0であり、pH6.0〜pH8.0が初期条件として好ましい。酵母の場合、発酵に適したpH範囲は、pH3.0〜pH7.5であり、pH4.5〜pH6.5が初期条件として好ましい。
【0124】
発酵は、好気性または嫌気性条件下で行うことができ、嫌気性または微好気性条件が好ましい。
【0125】
イソブタノールの生成は、バッチ、フェドバッチ、または連続プロセスを使用して実施することができること、公知の発酵モードならいずれも適しているはずであることが考えられる。さらに、細胞を基質に全細胞触媒として固定化し、イソブタノール生成の発酵条件にかけることができると考えられる。
【0126】
イソブタノールの発酵培地からの単離方法
生合成されたイソブタノールは、ABE発酵について当技術分野において公知である方法を使用して発酵培地から単離することができる(例えば、Durre、Appl. Microbiol. Biotechnol.、49巻:639〜648頁(1998年)、Grootら、Process. Biochem.、27巻:61〜75頁(1992年)、およびそれらの引用文献を参照のこと)。例えば、固体は、発酵培地から遠心、濾過、デカンテーションなどによって除去することができる。次いで、イソブタノールは、蒸留、共沸蒸留、液液抽出、吸着、ガスストリッピング、膜蒸留、または浸透気化などの方法を使用して発酵培地から単離することができる。
【実施例】
【0127】
下記の実施例において、本発明をさらに説明する。本発明の好ましい実施形態を示すこれらの実施例は、例として挙げられているだけのものであると理解されたい。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認することができ、その趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明を様々な使用および条件に適応させるために本発明の様々な変更および修正を行うことができる。
【0128】
略語の意味は以下の通りである:「s」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「psi」は平方インチ当たりポンドを意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「d」は日を意味し、「μl」はマイクロリットルを意味し、「ml」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「mm」はミリメートルを意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「mM」はミリモルを意味し、「M」はモルを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmol」はマイクロモルを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「PCR」はポリメラーゼ連鎖反応を意味し、「OD」は光学密度を意味し、「OD600」は600nmの波長で測定された光学密度を意味し、「kDa」はキロダルトンを意味し、、「g」は引力定数を意味し、「bp」は塩基対を意味し、「kbp」はキロベース対を意味し、「%w/v」は重量/容量%を意味し、「%v/v」は容量/容量%を意味し、「wt%」は重量パーセントを意味し、「HPLC」は高速液体クロマトグラフィーを意味し、「GC」はガスクロマトグラフィーを意味する。
【0129】
実施例で使用される標準組換えDNAおよび分子クローニング技法は、当技術分野において周知であり、Sambrook, J.、Fritsch, E. F.およびManiatis, T.、Molecular Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor,NY(1989年) (Maniatis)、ならびにT. J. Silhavy、M. L. Bennan、およびL. W. Enquist、 Experiments with Gene Fusions、Cold Spring Harbor Laboratory Press、 Cold Spring Harbor,N.Y.(1984年)、ならびにAusubel, F. M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Assoc. and Wiley−Interscience出版(1987年)、ならびにMethods in Yeast Genetics、2005年、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,NYによって記載されている。
【0130】
細菌培養物の維持および増殖に適した材料および方法は、当技術分野において周知である。以下の実施例での使用に適した技法は、Manual of Methods for General Bacteriology (Phillipp Gerhardt, R. G. E. Murray, Ralph N. Costilow, Eugene W. Nester, Willis A. Wood, Noel R.
Krieg and G. Briggs Phillips編), American Society for Microbiology, Washington,DC. (1994年))、またはThomas D. Brock、Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology、第2版、Sinauer Associates, Inc.、Sunderland,MA (1989年)に記載のように見ることができる。別段の指定のない限り、細菌細胞の増殖および維持に使用される試薬、制限酵素、および材料はすべて、Aldrich Chemicals (Milwaukee,WI)、BD Diagnostic Systems (Sparks,MD)、Life Technologies (Rockville,MD)、またはSigma Chemical Company (St. Louis,MO)から入手した。微生物株は、別段の注記のない限りAmerican Type Culture Collection (ATCC)、(Manassas,VA)から入手した。下記の実施例で使用されるオリゴヌクレオチドプライマーを表3に示す。オリゴヌクレオチドプライマーはすべて、Sigma−Genosys(Woodlands, TX)、Integrated DNA Technologies(Coralsville,IA)、またはInvitrogen Corp(Carlsbad,CA)によって合成された。
【0131】
DNA断片を、Qiaquick PCR Purification Kit(Qiagen Inc.、Valencia,CA)で精製した。プラスミドDNAを、QIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen Inc.、Valencia,CA)で調製した。L.プランタルム(L.plantarum)PN0512ゲノムDNAを、MasterPure DNA Purification Kit(Epicentre、Madison,WI)で調製した。
【0132】
合成完全培地は、Amberg、BurkeおよびStrathern、2005年、Methods in Yeast Genetics、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,NYに記載されている。
【0133】
形質転換
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)PN0512を、下記の手順で形質転換した:1%グリシン(Sigma−Aldrich、St. Louis,MO)を含有する ラクトバチルス(Lactobacilli)MRS培地(Accumedia、Neogen Corporation、Lansing、MI)5mlに、PN0512細胞を播種し、30℃で一晩増殖させた。1%グリシン含MRS培地100mlに、一晩培養物を0.1のOD600まで播種し、30℃で0.7のOD600まで増殖させた。細胞を、3700xgで8分間、4℃で収穫し、1mMの冷MgCl(Sigma−Aldrich、St. Louis,MO)100mlで洗浄し、3700xgで8分間、4℃で遠心し、冷30%PEG−1000(Sigma−Aldrich、St. Louis,MO)100mlで洗浄し、3700xgで20分間、4℃で再び遠心し、次いで1mlの冷30%PEG−1000に再懸濁した。60μlの細胞を、ギャップ1mmの冷エレクトロポレーションキュベット中で、約100ngのプラスミドDNAと混合し、BioRad Gene Pulser(Hercules,CA)で1.7kV、25μF、および400Ωにおいて電気穿孔した。500mMスクロース(Sigma−Aldrich、St. Louis,MO)および100mMのMgClを含有するMRS培地1mlに、細胞を再懸濁し、30℃で2時間インキュベートし、1または2μg/mlのエリスロマイシンを含有するMRS培地(Sigma−Aldrich、St. Louis,MO)に蒔き、次いでPack−Anaeroサシェ(三菱ガス化学株式会社、日本、東京)が入っている嫌気性ボックスに入れ、30℃でインキュベートした。
【0134】
HPLC方法
発酵副生物組成物の分析は当業者に周知である。例えば、1つの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)方法は、Shodex SH−1011カラムをShodex SH−Gガードカラム(両方とも、Waters Corporation、(Milford,MA)から入手可能)と共に利用し、屈折率(RI)で検出した。クロマトグラフ分離は、0.01M HSOを移動相として、流量0.5mL/分およびカラム温度50 ℃で使用して実現される。イソブタノール保持時間は約47.6分である。
【0135】
実施例1
ilvD組込み型ベクターおよびPN0512ΔldhDΔldhL1::ilvDLl組込み株の構築
この実施例は、DHADの発現のため、L.プランタルム(L.plantarum)株PN0512ΔldhDΔldhL1の染色体へのラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)ilvD遺伝子の組込みを説明する。L.プランタルム(L.plantarum)PN0512ΔldhDΔldhL1の構築は、米国仮特許出願第61/100786号明細書の実施例1に記載された。この株は、主要な乳酸デヒドロゲナーゼをコードする2つの遺伝子:ldhDおよびldhL1について欠失している。この二重欠失体は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)PN0512(ATCC株 #PTA−7727)において作製された。
【0136】
2段階相同組換え手順に基づくプロセスを使用して、遺伝子ノックアウトが構築されて、無マーカー遺伝子欠失体が得られた(Ferainら、1994年、J. Bact.、176巻:596頁)。この手順では、シャトルベクターpFP996(配列番号:110)が利用された。pFP996は、グラム陽性細菌用のシャトルベクターである。これは、大腸菌(E.coli)とグラム陽性細菌において複製することができる。pBR322(ヌクレオチド#2628から5323)およびpE194(ヌクレオチド#43から2627)からの複製開始点を含む。pE194は、本来グラム陽性細菌であるスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(HorinouchiおよびWeisblum J. Bacteriol.、(1982年)、150巻(2号):804〜814頁)から単離された小型プラスミドである。pFP996において、複数のクローニング部位(ヌクレオチド#1から50)は、EcoRI、BglII、XhoI、SmaI、ClaI、KpnI、およびHindIII用の制限部位を含む。抗生物質耐性マーカーは2つ存在する;一方は、アンピシリン耐性のものであり、他方はエリスロマイシン耐性のものである。選択のため、大腸菌(E.coli)における形質転換にはアンピシリンを使用し、L.プランタルム(L.plantarum)における選択にはエリスロマイシンを使用した。
【0137】
DNAの2つのセグメントはそれぞれ、900から1200bpの配列を所期の欠失の上流または下流に含むものであるが、プラスミドにクローニングして、2つの遺伝子クロスオーバー用の相同性領域を提供した。細胞を、世代数(30〜50)を増加するのに増殖させて、クロスオーバー事象が起こることを可能にした。最初のクロスオーバー(シングルクロスオーバー)では、プラスミドがプラスミド上の2つの相同性領域のうちの1つを介した相同組換えにより染色体に組み込まれた。第2のクロスオーバー(ダブルクロスオーバー)事象では、野生型配列または所期の遺伝子欠失体が得られた。最初の組込み事象を引き起こした配列間のクロスオーバーは野生型配列をもたらし、他の相同性領域間クロスオーバーは所望の欠失体をもたらすはずである。第2のクロスオーバー事象を、抗生物質感受性によりスクリーニングした。シングルおよびダブルのクロスオーバー事象を、PCRおよびDNA配列決定により分析した。
【0138】
ΔldhD
ldhD遺伝子を欠失させるためのノックアウトカセットは、EcoRI部位を含むTop D F1(配列番号:111)とTop D R1(配列番号:112)のプライマーを有する上流フランキング領域であるPN0512ゲノムDNAから増幅させることによって作製した。ldhDのコード配列の一部分を含む下流の相同性領域を、Bot D F2(配列番号:113)とXhoI部位を含むBot D R2(配列番号:114)のプライマーで増幅させた。2つの相同性領域を、以下の通りPCR SOEにより合わせた。0.9kbpの上流および下流PCR生成物をゲル精製した。PCR生成物を、PCR反応において等量で混合し、プライマーTop D F1およびBot D R2で再増幅させた。1.8kbpの最終PCR生成物をゲル精製し、TOPOをpCR4BluntII−TOPO(Invitrogen)にクローニングして、ベクターpCRBluntII::ldhDを作製した。ldhD遺伝子の内部欠失を保有している組込み型ベクターを作製するために、pFP996をEcoRIおよびXhoIで消化し、5311−bpの断片をゲル精製した。ベクターpCRBluntII::ldhDをEcoRIおよびXhoIで消化し、1.8kbpの断片をゲル精製した。T4 DNAリガーゼを使用して、ldhDノックアウトカセットとベクターを連結させ、ベクターpFP996::ldhD koを得た。
【0139】
エレクトロコンピテントなラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)PN0512細胞を調製し、pFP996::ldhD koで形質転換し、1μg/mlのエリスロマイシンを含有するMRSに蒔いた。シングルクロスオーバー事象(sco)を得るために、形質転換体を、MRS培地中、37℃で約50世代継代培養した。増殖した後、単一コロニーについて、一定分量ずつを、1μg/mlのエリスロマイシンを含有するMRS上に蒔いた。プライマーldhD Seq F1(配列番号:115)およびDチェックR(配列番号:116)を使用したPCR増幅により、エリスロマイシン耐性コロニーをスクリーニングして、野生型とsco事象を保有するクローンとを識別した。ダブルクロスオーバーを有するクローンを得るために、sco株を、20mMのD,L−ラクタート含MRS培地(Sigma、St. Louis,MO)中、37℃で約30世代継代培養し、次いで単一コロニーについて、ラクタート含MRS上に蒔いた。コロニーを摘出し、ラクタート含MRSおよび1μg/mlのエリスロマイシンを含有するラクタート含MRS上にパッチして、エリスロマイシンに感受性を示すコロニーを見出した。感受性を示すコロニーを、プライマーDチェックR(配列番号:116)およびDチェックF3(配列番号:1117)を使用したPCR増幅によりスクリーニングした。野生型コロニーは3.2kbpの生成物をもたらし、PN0512ΔldhDと呼ばれる欠失クローンは2.3kbpのPCR生成物をもたらした。
【0140】
ΔldhDΔldhL1
ダブルΔldhL1ΔldhD欠失株を作製するために、PN0512ΔldhD株において、ldhL1遺伝子の欠失を行った。ldhL1遺伝子を欠失させるためのノックアウトカセットを、PN0512ゲノムDNAから増幅させた。ldhL1左ホモロジーアームは、BglII制限部位を含むプライマーoBP31(配列番号:118)およびXhoI制限部位を含むプライマーoBP32(配列番号:119)を使用して増幅させた。ldhL1右ホモロジーアームは、XhoI制限部位を含むプライマーoBP33(配列番号:120)およびXmaI制限部位を含むプライマーoBP34(配列番号:121)を使用して増幅させた。ldhL1左ホモロジーアームを、BglII/XhoI部位にクローニングし、ldhL1右ホモロジーアームを、pFP996の誘導体であるpFP996pyrFΔermのXhoI/XmaI部位にクローニングした。pFP996pyrFΔermは、pFP996におけるエリスロマイシンコード領域の代わりに、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)PN0512由来のオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼをコードするpyrF配列(配列番号:122)を含む。第2の相同クロスオーバーを単離するために、プラスミド由来のpyrF遺伝子は、ΔpyrF株における化学物質5−フルオロオロチン酸と一緒に有効的な対抗選択方法として使用することができる。XmaI消化の後に、ldhL1ホモロジーアームを含むXmaI断片を単離し、pFP996のXmaI制限部位にクローニングし、900bpの左相同性領域および1200bpの右相同性領域が得られ、ベクターpFP996−ldhL1−アームが作製された。
【0141】
PN0512ΔldhDを、pFP996−ldhL1−アームで形質転換し、ラクタート(20mM)およびエリスロマイシン(1μg/ml)を含有するラクトバチルス(Lactobacilli)MRS培地中、30℃で約10世代増殖させた。次いで、形質転換体を、MRS+ラクタート中、非選択的条件下に、一連の播種により37℃で約50世代増殖させた後、ラクタートおよびエリスロマイシン(1μg/ml)を含有するMRS上に培養物を蒔いた。単離物を、染色体特異的プライマーoBP49(配列番号:123)およびプラスミド特異的プライマーoBP42(配列番号:124)を使用して、コロニーPCRにより、シングルクロスオーバーについてスクリーニングした。シングルクロスオーバー組込み体を、ラクタート含MRS中で、非選択的条件下に37℃で、一連の播種により約40世代増殖させた後、培養物をラクタート含MRS培地上に蒔いた。単離物をラクタート含MRSプレートにパッチし、37℃で増殖し、次いでラクタートおよびエリスロマイシン(1μg/ml)を含むMRSプレート上にパッチした。エリスロマイシン感受性単離物を、染色体特異的プライマーoBP49(配列番号:123)およびoBP56(配列番号:125)を使用して、コロニーPCRにより、野生型または欠失第2クロスオーバーの有無についてスクリーニングした。野生型配列は、3505bpの生成物をもたらし、欠失配列は、2545bpの生成物をもたらした。欠失体は、PCR生成物を配列決定することによって確認し、プライマーoBP42(配列番号:124)およびoBP57(配列番号:126)を用いたコロニーPCRにより、プラスミドが存在していないことを検査した。
【0142】
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)PN0512ダブルldhDldhL1欠失株をPNP0001と称した。ΔldhD欠失体は、ldhD開始コドンがアミノ酸332の279を経由したその上流に83bpを含むものであった。ΔldhL1欠失体は、最終アミノ酸を経由したfMetを含むものであった。
【0143】
第2のクロスオーバー事象が野生型配列、または欠失体でなく所期の組込み体をもたらした点以外は、同じ2段階相同組換え手順で、pFP996シャトルベクターを使用して、ldhL1プロモーターから発現されたL.ラクティス(L.lactis)ilvDコード領域の単一コピーの染色体組込み体が構築されて、上記の無マーカー組込み体を得た。DNAの2つのセグメントは、配列を所期の組込み部位の上流および下流に含むものであるが、プラスミドにクローニングして、2つの遺伝子クロスオーバーのための相同性領域を提供した。
【0144】
組込みによって、ilvDコード領域がPN0512ΔldhDΔldhL1株におけるldhL1プロモーターの下流に配置されることになるような、2つの遺伝子クロスオーバー用の相同性領域が提供されるように、2つのDNAセグメント(ホモロジーアーム)を設計した。プラスミドにクローニングした左右のホモロジーアームはそれぞれ、約1200塩基対であった。左ホモロジーアームは、Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを使用して、BglII制限部位を含むプライマーBP31(配列番号:118)およびXhoI制限部位を含むプライマーoBP32(配列番号119)を用いて、L.プランタルム(L.plantarum)PN0512ゲノムDNAから増幅させた。右ホモロジーアームは、Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを使用して、XhoI制限部位を含むプライマーoBP33(配列番号:120)およびXmaI制限部位を含むプライマーoBP34(配列番号:121)を用いて、L.プランタルム(L.plantarum)PN0512ゲノムDNAから増幅させた。左ホモロジーアームをBglIIおよびXhoIで消化し、右ホモロジーアームをXhoIおよびXmaIで消化した。2つのホモロジーアームは、T4 DNAリガーゼで連結させて、pFP996の対応する制限部位になり、適切な制限酵素で消化された後、ベクターpFP996−ldhL1アームが形成される。
【0145】
ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)(配列番号:94)由来のilvDコード領域およびリボソーム結合配列(RBS;配列番号:127)を含むDNA断片を、pDM20−ilvD(L.ラクティス(L.lactis))(配列番号:128)から増幅させた。pDM20−ilvD(L.ラクティス(L.lactis))の構築は、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第61/100809号明細書に記載された。このプラスミドは、PCRによるL.ラクティス亜種ラクティス(L.lactis subsp. lactis)NCDO2118(NCIMB 702118)由来のilvDコード領域[Godonら、J. Bacteriol.、(1992年)、174巻:6580〜6589頁]および5”PCRプライマーにおいて追加されたリボソーム結合配列(配列番号:1127)を含むpDM20である。pDM20は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)ATCC14917プラスミドpLF1由来の最小pLF1レプリコン(約0.7Kbp)およびpemK−pemI毒素−抗毒素(TA)、pACYC184由来のP15Aレプリコン、大腸菌(E.coli)とL.プランタルム(L.plantarum)の両方における選択用のクロラムフェニコール耐性マーカー、ならびにP30合成プロモーターを含む改変されたpDM1(配列番号:129)である[Rudら、Microbiology、(2006年)152巻:1011〜1019頁]。マルチクローニング部位で置換された、lacZ領域に及ぶヌクレオチド3281〜3646を欠失させることによって、ベクターpDM1を改変した。Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを用いて、XhoI部位を含むoBP120(配列番号:1130)、ならびにDrdI、PstI、HindIII、およびBamHI部位を含むoBP182(配列番号:131)を使用して、pDM1由来のP30プロモーターを増幅させた。得られたPCR生成物およびpDM1ベクターをXhoIおよびDrdIで消化した。これによって、lacZおよびP30が脱落する。PCR生成物とpDM1消化の大型断片を連結させて、ベクターpDM20を生成した。ここでは、P30プロモーターが再挿入され、XhoIおよびDrdI制限部位によって結合された。
【0146】
Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを使用して、pDM20−ilvD(L.ラクティス(L.lactis))を鋳型として使用し、XhoI制限部位を含むプライマーoBP246(配列番号:133)およびXhoI制限部位を含むプライマーoBP237(配列番号:134)を用いて、ilvDコード領域およびRBSを含むDNA断片(配列番号:132)をPCRにより得た。XhoIで消化した後、得られたPCR生成物とpFP996−ldhL1アームをT4 DNAリガーゼで連結させた。ベクター特異的プライマーoBP57(配列番号:126)およびilvD特異的プライマーoBP237(配列番号:134)を使用して、クローンを、左ホモロジーアームにおけるldhL1プロモーター同じ配向のインサートについて、PCRによりスクリーニングした。正しく配向されたインサートを有するクローンをpFP996−ldhL1アーム−ilvDLlと名付けた。
【0147】
L.ラクティス(L.lactis)ilvDード領域の組込みは、L.プランタルム(L.plantarum)PN0512ΔldhDΔldhL1をpFP996−ldhL1アーム−ilvDLlで形質転換することによって得られた。0.5%グリシン(Sigma−Aldrich、St. Louis,MO)を含有するラクトバチルス(Lactobacilli)MRS培地(Accumedia、Neogen Corporation、Lansing、MI)5mlに、PN0512ΔldhDΔldhL1を播種し、30℃で一晩増殖させた。0.5%グリシン含MRS培地100mlに、一晩培養物を0.1のOD600まで播種し、30℃で0.7のOD600まで増殖させた。細胞を、3700xgで8分間、4℃で収穫し、1mMの冷MgCl(Sigma−Aldrich、St. Louis,MO)100mlで洗浄し、3700xgで8分間、4℃で遠心し、冷30%PEG−1000(Sigma−Aldrich、St. Louis,MO)100mlで洗浄し、3700xgで20分間、4℃で再び遠心し、次いで1mlの冷30%PEG−1000に再懸濁した。60μlの細胞を、ギャップ1mmの冷エレクトロポレーションキュベット中で、約100ngのプラスミドDNAと混合し、BioRad Gene Pulser(Hercules,CA)で 1.7kV、25μF、および400Ωにおいて電気穿孔した。500mM スクロース(Sigma−Aldrich、St. Louis,MO)および100mM MgClを含有するMRS培地1mlに、細胞を再懸濁し、30℃で2時間インキュベートし、次いで2μg/mlのエリスロマイシンを含有するMRS培地(Sigma−Aldrich、St. Louis,MO)に蒔いた。
【0148】
ilvD特異的プライマーoBP237(配列番号:134)およびoBP246(配列番号:133)を使用して、形質転換体をPCRによりスクリーニングした。形質転換体を、エリスロマイシン(1μg/ml)を含有するラクトバチルス(Lactobacilli)MRS培地中、30℃で約8世代、次いでラクトバチルス(Lactobacilli)MRS培地中、一連の播種により37℃で、約40世代増殖させた。培養物を、エリスロマイシン(0.5μg/ml)を含有するラクトバチルス(Lactobacilli)MRS培地上に蒔いた。単離物を、染色体特異的プライマーoBP49(配列番号:123)およびプラスミド特異的プライマーoBP42(配列番号:124)を使用して、コロニーPCRにより、シングルクロスオーバーについてスクリーニングした。
【0149】
シングルクロスオーバー組込み体を、ラクトバチルス(Lactobacilli)MRS培地中、一連の播種により37℃で約43世代増殖させた。培養物をMRS培地上に蒔いた。コロニーをMRSプレートにパッチし、37℃で増殖させた。次いで、単離物を、エリスロマイシン(0.5μg/ml)を含有するMRS培地上にパッチした。エリスロマイシン感受性単離物を、染色体特異的プライマーoBP49(配列番号:123)およびoBP56(配列番号:125)を使用して、(コロニー)PCRにより、野生型または組込み第2クロスオーバーの有無についてスクリーニングした。野生型配列は、2600bpの生成物をもたらし、組込み配列は、4300bpの生成物をもたらした。組込み体は、PCR生成物を配列決定することによって確認し、同定された組込み株を、PN0512ΔldhDΔldhL1::ilvDLlと称した。
【0150】
実施例2
sufオペロンプロモーター組込み型ベクターおよびPN0512ΔldhDΔldhL1::ilvDLlsuf::P5P4組込み株の構築
この実施例は、L.プランタルム(L.plantarum)PN0512ΔldhDΔldhL1::ilvDLlの染色体への2つのプロモーターの組込みを説明する。プロモーターをsufオペロンの上流に組み込んだ。sufオペロンの遺伝子産物は、Fe−Sクラスターアセンブリを担うものである。プロモーター組込みによって、内因性Fe−Sクラスターマシナリーの発現が増大した株になる。
【0151】
上述されたように、シャトルベクターpFP996(配列番号:110)を使用して、sufオペロン染色体プロモーター組込み体が、2段階相同組換え手順で構築されて、無マーカー組込み体が得られた。
【0152】
sufオペロンプロモーター組込み型ベクターを3段階で構築した。第1のステップにおいて、sufオペロンの5’部分(sufCおよびsufDの一部分)を含む右ホモロジーアーム断片をpFP996にクローニングした。第2のステップにおいて、合成プロモーターであるP5およびP4[Rudら、Microbiology、(2006年)、152巻:1011頁]を、右アームの上流に位置するpFP996−右アームクローンにクローニングした。最終のステップにおいて、ネイティブsufプロモーターおよび上流の配列を含んでfeoBAオペロンになる左ホモロジーアーム断片を、P5P4プロモーターの上流に位置するpFP996−P5P4−右アームクローンにクローニングした。
【0153】
右ホモロジーアームDNA断片(配列番号:135)は、Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを使用して、XmaI制限部位を含むプライマーAA199(配列番号:136)およびKpnI制限部位を含むプライマーAA200(配列番号:137)を用いて、L.プランタルム(L.plantarum)PN0512ゲノムDNAからPCR増幅させた。XmaIおよびKpnIで消化した後、右ホモロジーアーム PCR断片とpFP996をT4 DNAリガーゼで連結させて、pFP996−sufCDが形成された。2つの部分相補的プライマー配列を用いて、PCRを行うことによって、プロモーターであるP5およびP4を含むDNA断片を生成した。XhoI部位、P5プロモーター配列、およびP4プロモーター配列の一部分を含むプライマーAA203(配列番号:138)を、XmaI部位およびP4プロモーター配列を含むプライマーAA204(配列番号:139)と組み合わせ、Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを用いて、PCRを行った。次いで、Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを用いて、得られたPCR生成物をプライマーAA206(配列番号:140)およびプライマーAA207(配列番号:141)で増幅させた。XhoIおよびXmaIで消化した後、P5P4 PCR生成物とpFP996−sufCDを連結させて、pFP996−P5P4−sufCDが形成された。左ホモロジーアームDNA断片(配列番号:142)は、Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを使用して、EcoRI制限部位を含むプライマーAA201(配列番号:143)およびXhoI制限部位を含むプライマーAA202(配列番号:144)を用いて、L.プランタルム(L.plantarum)PN0512ゲノムDNAから増幅させた。EcoRIおよびXhoIで消化した後、左ホモロジーアームとpFP996−P5P4−sufCD をT4 DNAリガーゼで連結させて、pFP996−feoBA−P5P4−sufCDが形成された。ベクターは配列決定によって確認された。ベクターは、5つの塩基対欠失(TTGTT)を有し、上流P5プロモーターにおいて−35の6量体の一部分を包含するものであった。
【0154】
上述されたように、sufオペロンの上流への合成プロモーター(P5P4)の組込み体は、L.プランタルム(L.plantarum)PN0512ΔldhDΔldhL1::ilvDLlをpFP996−feoBA−P5P4−sufCDで形質転換することによって得られた。形質転換体を、エリスロマイシン(2μg/ml)を含有するラクトバチルス(Lactobacilli)MRS培地中、30℃で約20世代増殖させた。培養物を、エリスロマイシン(0.5μg/ml)を含有するラクトバチルス(Lactobacilli)MRS培地上に蒔いた。単離物を、染色体特異的プライマーAA209(配列番号:145)およびプラスミド特異的プライマーAA210(配列番号:146)を用いて、コロニーPCRにより、シングルクロスオーバーについてスクリーニングした。シングルクロスオーバー組込み体を、ラクトバチルス(Lactobacilli)MRS培地中、一連の播種により37℃で約30世代増殖させた。培養物をMRS培地上に蒔いた。単離物を、エリスロマイシン感受性についてスクリーニングした。単離物を、P5特異的プライマーAA211(配列番号:147)および染色体特異的プライマーoBP126(配列番号:148)を使用して、(コロニー)PCRにより、野生型または組込み第2クロスオーバーの有無についてスクリーニングした。同定された組込み株を、PN0512ΔldhDΔldhL1::ilvDLlsuf::P5P4と称した。
【0155】
実施例3
Tn5−トランスポゾンベクター(pTN6)の構築およびPgroE−kivD(o)−sadB(o)カセットの組込みのためのその使用
Tn5は、大腸菌(E.coli)において特徴が十分に明らかにされている細菌トランスポゾンである(Johnson & Reznikoff、Nature、(1983年)304巻:280〜282頁)。乳酸菌(LAB)のTn5によって媒介される転移系が、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第61/246717号明細書に記載された。この実施例では、LABの染色体へのランダム遺伝子組込みの送達系としてのTn5−トランスポゾンベクターの使用が、開発された。開発されたTn5−トランスポゾンベクター(pTN6)(配列番号:149)は、大腸菌(E.coli)−L.プランタルム(L.plantarum)シャトルベクターである。プラスミドpTN6は、トランスポザーゼ遺伝子(tnp)、トランスポザーゼ認識ヌクレオチド 配列Tn5IE(19塩基対内側端部)およびTn5OE(19塩基対外側端部)、2つの抗生物質耐性マーカー;一方は、クロラムフェニコール耐性のもの、他方は、エリスロマイシン耐性のもの、大腸菌(E.coli)のP15A複製開始点、温度感受性であるL.プランタルム(L.plantarum)のpE194複製開始点(HorinouchiおよびWeisblum、J. Bacteriol.、(1982年)、150巻:804〜814頁)、ならびに2つのloxPヌクレオチド配列(34塩基対)を含む。クロラムフェニコール耐性遺伝子は、Creリコンビナーゼによるその後の切除のためのloxP部位によってフランキングされている。BamHI、NotI、ScaI、およびSpeIのための制限部位を含む複数のクローニング部位(MSC)は、loxP部位とTn5OE部位の間に位置する。クロラムフェニコール耐性遺伝子、2つのloxP部位、およびMCSは、Tn5IEとTn5OEによってフランキングされている。
【0156】
Tn5−トランスポゾンベクターpTN6を構築するために、第1に、Tn5IE、loxP、クロラムフェニコール耐性遺伝子(cm)、およびloxPを含む1,048bpのTn5IE−loxP−cm−loxPカセットが、Genscript Corp(Piscataway,NJ)によって合成された(配列番号:150)。Tn5IE−loxP−cm−Pspac−loxPカセットを、pUC57ベクター(Genscript Corp、Piscataway,NJ)でクローニングし、プラスミドpUC57−Tn5IE−loxP−cm−loxPを生成した。クロラムフェニコール耐性遺伝子は、大腸菌(E.coli)とL.プランタルム(L.plantarum)の両方における選択のためにspacプロモーターの制御下に発現される(Yansura & Henner、(1984年)、Proc Natl Acad Sci USA.、81巻:439〜443頁)。プラスミドpUC57−Tn5IE−loxP−cm−loxPをNsilおよびSacIで消化し、1,044bpのTn5IE−loxP−cm−loxP断片をゲル精製した。プラスミドpFP996(配列番号:110)をNsiIおよびSacIで消化し、pBR322およびpE194の複製開始点を含む4,417bpのpFP996断片をゲル精製した。Tn5IE−loxP−cm−loxP断片と4,417bpのpFP996断片を連結させて、pTnCmが形成された。
【0157】
第2に、pTnCm上のpBR322複製開始点をP15A複製開始点で置換した。プラスミドpTnCmをAatIIおよびSalIで消化し、pE194複製開始点およびTn5IE−loxP−cm−loxPカセットを含む2,524bpのpTnCm断片をゲル精製した。Phusion High−Fidelity PCR Master Mix(New England Biolabs、Ipswich,MA)を使用することによって、SalI制限部位および19bpTn5OEヌクレオチド配列を含むプライマーT−P15A(SalITn5OE)(配列番号:151)およびAatII制限部位を含むプライマーB−P15A(AatII)(配列番号:152)を用いて、913bpのp15A複製開始点を、pACYC184 [ChangおよびCohen、J. Bacteriol.、(1978年)134巻:1141〜1156頁]からPCR増幅させた。P15A断片は、SalIおよびAatII制限酵素で消化した後、2,524bpのpTnCm断片と連結させて、pTN5が形成された。
【0158】
第3に、エリスロマイシン耐性遺伝子(erm)を、pTN5上のHindIII部位にクローニングした。Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを使用することによって、NsiI制限部位を含むプライマーT−erm(HindIII)(配列番号:153)およびNsiI制限部位を含むプライマーB−erm(HindIII)(配列番号:154)を用いて、1,132bpのエリスロマイシン耐性遺伝子(erm)DNA断片を、ベクターpFP996(配列番号:110)からPCR増幅により生成し、pTN5上のHindIII制限部位にクローニングして、pTN5−ermが生成された。
【0159】
最後に、トランスポザーゼをコードするtnp遺伝子配列を、SOE(オーバーラップ伸長によるスプライシング)PCRにより、npr(バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)由来の中性プロテアーゼ)プロモーター[Nagarajanら、J. Bacteriol、(1984年)、159巻:811〜819頁]に融合し、pTN5−erm上のNsiI部位にクローニングした。Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを使用することによって、NsiI制限部位を含むT−Pnpr(NsiI)(配列番号:156)および17bpの重なり配列を含む B−Pnpr(tnp)(配列番号:157)のプライマーセットを用いて、Pnprプロモーター(配列番号:155)を含むDNA断片を、pBE83から [Nagarajanら、Appl Environ Microbiol、(1993年)、59巻:3894〜3898頁]からPCR増幅させた。Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを使用することによって、21bpの重なり配列を含むT−tnp(Pnpr)(配列番号:1158)およびNsiI制限部位を含むB−tnp(NsiI)(配列番号:159)のプライマーセットを用いて、tnpコード領域(配列番号:108)を、pUTmTn5−(Sharpeら、Appl Environ Microbiol、(2007年)、73巻:1721〜1728頁)からPCR増幅させた。2つの反応のPCR生成物を混合し、外側プライマー(T−Pnpr(NsiI)およびB−tnp(NsiI))を使用して増幅させると、Pnpr−tnp融合DNA断片(配列番号:160)が生成した。プラスミドpTN5−ermをNsiIで消化し、仔ウシ小腸由来ホスファターゼ(Calf Intestinal Phosphatase)(New England Biolabs,MA)で処理して、自己連結を防止した。消化されたpTN5−ermベクターとNsiIで消化させたPnpr−tnp断片を連結させた。連結混合物を、電気穿孔で大腸菌(E.coli)Top10細胞(Invitrogen Corp、Carlsbad,CA)に形質転換した。形質転換体を、37℃で25μg/mLのクロラムフェニコールを含有するLBプレート上で選択した。次いで、Pnpr−tnpカセットの外側プライマーを用いて、形質転換体をコロニーPCRによりスクリーニングし、プライマーpTnCm(711)(配列番号:161)、pTnCm(1422)(配列番号:162)、およびpTnCm(3025)(配列番号:163)を用いてDNA配列決定により確認した。得られたプラスミドをpTN6と名付けた。
【0160】
このTn5−トランスポゾンベクターpTN6を、PN0512ΔldhDΔldhL1::ilvDLlsuf::P5P4株の染色体へのPgroE−kivD(o)−sadB(o)カセットの組込みのためのランダム遺伝子送達系として使用した。Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを使用することによって、SalIおよびKpnI制限部位を含むT−groE(SalIKpnI)(配列番号:165)およびBamHI制限部位を含むB−groE(BamHI)(配列番号:166)のプライマーセットを用いて、PgroEプロモーターを含むDNA断片(YuanおよびWong、J. Bacteriol、(1995年)177巻:5427〜5433頁)(配列番号:164)を、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のゲノムDNAからPCR増幅させた。得られた154bpのPgroEプロモーター断片は、SalIおよびBamHI制限酵素で消化した後、プラスミドpTN6のSalIおよびBamHI部位にクローニングし、pTN6−PgroEが形成された。ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)由来の分枝鎖ケトール酸デカルボキシラーゼをコードするkivD遺伝子のコード領域は、L.プランタルム(L.plantarum)における発現に最適化されたコドンであった。RBSを含むkivD(o)と呼ばれる最適化されたコード領域配列(配列番号:90)は、Genscript Corp(Piscataway,NJ)によって合成された。RBSを一緒に含むkivD(o)コード領域(配列番号:167)を、pUC57ベクターでクローニングして、プラスミドpUC57−kivD(o)が生成された。プラスミドpUC57−kivD(o)をBamHIおよびNotIで消化し、1,647bpのRBS−kivD(o)断片をゲル精製した。RBS−kivD(o)断片を、pTN6−PgroE上のBamHIおよびNotI制限部位にクローニングして、pTN6−PgroE−kivD(o)が生成された。プライマーT−groE(SalIKpnI)およびkivD(o)R(配列番号:165および168)を用いて、正確なクローンをコロニーPCRにより確認し、予想されたサイズの1,822bpの断片が生成された。次いで、米国特許出願第12/430356号明細書に記載されていた、アクロモバクター・キシロソキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)由来の分枝鎖アルコールデヒドロゲナーゼのsadB遺伝子コード領域を、pTN6−PgroE−kivD(o)のkivD(o)コード領域の下流にクローニングした。A. キシロソキシダンス(A. xylosoxidans)sadBコード領域は、L.プランタルム(L.plantarum)における発現に最適化されたコドンであった。RBSを含むsadB(o)と呼ばれる新しいコード領域(配列番号:105)は、Genscript Corp(Piscataway,NJ)によって合成され、pUC57ベクターでクローニングされ、プラスミドpUC57−sadB(o)が生成された。Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを使用することによって、NotI制限部位を含むT−sadB(o)(NotI)(配列番号:170)およびNotI制限部位を含むB−sadB(o)(NotI)(配列番号:171)のプライマーセットを用いて、RBSおよびsadB(o)コード領域を含む1,089bpのDNA断片(配列番号:169)を、pUC57−sadB(o)からPCR増幅させた。RBS−sadB(o)遺伝子断片は、NotIで消化した後、pTN6−PgroE−kivD(o)のNotI制限部位にクローニングして、pTN6−PgroE−kivD(o)−sadB(o)が生成された。kivD(o)1529(配列番号:172)およびB−spac(cm)(配列番号:173)プライマーを用いて、正確なクローンを、DNA配列決定により確認した。この構築においては、sadB(o)およびkivD(o)コード領域が、PgroEプロモーター由来のオペロンにおいて発現される。
【0161】
一般方法に記載のように、得られたプラスミドpTN6−PgroE−kivD(o)−sadB(o)を、電気穿孔によりPN0512ΔldhDΔldhL1::ilvDLlsuf::P5P4に形質転換した。7.5μg/mlのクロラムフェニコールを補充したラクトバチルス(Lactobacilli)MRS培地上で、形質転換体を選択した。クロラムフェニコール耐性コロニーを、7.5μg/mlのクロラムフェニコールを含有するラクトバチルス(Lactobacilli)MRS培地中、許容温度30℃で、約10世代増殖させた。培養物を、新鮮なMRS培地中、1/100の希釈で播種し、ラクトバチルス(Lactobacilli)MRS培地中、一連の播種により37℃で約20世代増殖させた。培養物を、7.5μg/mlのクロラムフェニコールを含有するラクトバチルス(Lactobacilli)MRS上に蒔いた。単離物を、1.5μg/mlのエリスロマイシンを含有するラクトバチルス(Lactobacilli)MRSプレート上のコロニーを再び画線することにより、トランスポゾンに沿って染色体に組み込まれたPgroE−kivD(o)−sadB(o)カセットを含むと推定されたエリスロマイシン感受性コロニーについてスクリーニングした。kivD(o)配列特異的プライマーKivD(o)1529およびsadB(o)配列特異的プライマーB−sadB(o)(NotI)を用いて、コロニーPCRにより、トランスポゾンによって媒介された組込み体は、予想されたサイズのPCR生成物(1,220bp)を生成したことが確認された。
【0162】
染色体に由来するloxP部位によってフランキングされているクロラムフェニコール耐性マーカーを切除するために、Creリコンビナーゼを発現するヘルパープラスミドpFP352(配列番号:174)を、一般方法に記載されたプロトコルに従って、トランスポゾンによって媒介された組込み体に形質転換し、1.5μg/mlのエリスロマイシンを含有するラクトバチルス(Lactobacillus)MRSプレート上、30℃で増殖させた。Creリコンビナーゼは、loxP部位間での組換えによってクロラムフェニコールマーカーを染色体から切除する。エリスロマイシン耐性形質転換体をMRS培地に播種し、37℃で約10世代増殖させた。培養物を、抗生物質を含まないラクトバチルス(Lactobacilli)MRS上に蒔き、30℃で増殖させた。単離物を、1.5μg/mlのエリスロマイシンを含有するラクトバチルス(Lactobacilli)MRSプレートとクロラムフェニコール(7.5μg/ml)を含有するラクトバチルス(Lactobacilli)MRSプレートで別々に、コロニーの増殖を試験して、pFP352の損失およびクロラムフェニコールマーカーの除去を評価することによって、エリスロマイシンとクロラムフェニコールの両方の感受性コロニーについてスクリーニングした。最後に、プライマーB−groE(BamHI)を用いて、ゲノムDNA配列決定により、組込み体を確認した。MasterPure DNA Purification(登録商標)キット(Enpicentre、Inc.、Madison,WI)を使用して、ゲノムDNAを調製した。DNA配列決定の結果によって、PgroE−kivD(o)−sadB(o)カセットを、1,4−α−D−グルカン鎖のセグメントから同様のグルカン鎖における第一級ヒドロキシ基への移動を触媒するグリコーゲン分枝酵素をコードするglgB遺伝子のコード領域内に挿入したことが示された。得られた組込み体は、PN0512ΔIdhDΔldhL1::ilvD(Ll)suf::P5P4 glgB::Tn5−PgroE−kivD(o)−sadB(o)と名付けた。
【0163】
実施例4
pDM5−PldhL1−ilvC(L.ラクティス(L.lactis))ベクターの構築
本実施例の目的は、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)NCDO2118(NCIMB 702118)[Godonら、J. Bacteriol.、(1992年)174巻:6580〜6589頁]由来のケトール酸レダクトイソメラーゼのilvCコード領域(配列番号:67)のpDM5ベクターへのクローニングを説明することである。
【0164】
pDM1のP30プロモーターを、lacOオペレーター配列およびlacI リプレッサー遺伝子に融合させたB.サブティリス(B.subtilis)groEプロモーター(PgroE)で置換することによって、プラスミドpDM5(配列番号:175)を構築した。プラスミドpDM1は実施例1に記載されている。プラスミドpHTO1(Mo Bi Tec、Goettingen,Germany)をSacIで消化し、Klenow断片で処理して、平滑末端を作製し、BamHIで消化し、次いで1,548bpのlacI−PgroE/lacO断片(配列番号:176)をゲル精製した。lacI−PgroE/lacO断片を、P30プロモーターの代わりにpDM1のKpnI部位(Klenow断片による平滑末端化)およびBamHI部位にクローニングして、pDM5が形成された。
【0165】
ldhL1(ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)PN0512由来のL−乳酸デヒドロゲナーゼ)プロモーター(PldhL1)およびラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)NCDO2118由来のilvCコード領域を含むDNA断片PldhL1−ilvC(L.ラクティス(L.lactis))を、SOE(オーバーラップ伸長によるスプライシング)PCRにより生成した。Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを使用することによって、NotI制限部位を含むT−ldhL1(NotI)(配列番号:177)および19bpの重なり配列を含むB−ldhLI(CLI)(配列番号:178)のプライマーセットを用いて、PldhL1プロモーターを含むDNA断片を、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)PN0512のゲノムDNAからPCR増幅させた。Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを使用することによって、17bpの重なり配列を含むT−CLI(ldh)(配列番号:179)およびPvuI制限部位を含むB−CLI(PvuI)(配列番号:180)のプライマーセットを用いて、ilvCコード領域を、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)NCDO2118のゲノムDNAからPCR増幅させた。2つの断片のPCR生成物を混合し、外側プライマーT−ldhL1(NotI)およびB−CLI(PvuI)を使用して増幅させて、PldhL1−ilvC(L.ラクティス(L.lactis))融合DNA断片が生成された。プラスミドpDM5をNotIおよびPvuI制限酵素で消化し、NotIおよびPvuI制限酵素で消化した後、PldhL1−ilvC(L.ラクティス(L.lactis))カセットと連結させた。連結混合物を、電気穿孔で大腸菌(E.coli)Top10細胞(Invitrogen Corp、Carlsbad,CA)に形質転換した。形質転換体を、37℃で25μg/mLのクロラムフェニコールを含有するLBプレート上で選択した。次いで、PldhL1−ilvC(L.ラクティス(L.lactis))カセットの外側プライマーを用いて、形質転換体をコロニーPCRによりスクリーニングし、T−ldhL1(NotI)(配列番号:177)およびpDM(R)new(配列番号:181)を用いてDNA配列決定により確認した。得られたプラスミドは、pDM5−PldhL1−ilvC(L.ラクティス(L.lactis))(配列番号:182)と名付けた。
【0166】
実施例5
pDM5−PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)5)ベクターの構築
本実施例の目的は、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)PF5由来のケトール酸レダクトイソメラーゼのilvCコード領域の発現ベクターへのクローニングを説明することである。
【0167】
P.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5 ilvCコード領域は、主要な宿主としてラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)における発現に最適化されたコドンであった。RBSを一緒に含むilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5)またはilvC(Pf5)と呼ばれるこの最適化されたコード領域(配列番号:183)は、Genscript Corp(Piscataway,NJ)によって合成された。コード領域ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5)およびRBS断片を、pUC57ベクターでクローニングし、プラスミドpUC57−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5)を生成し、次いでXhoI−KpnI断片であるpFP996−PldhL1(配列番号:184)にサブクローニングして、pFP996−PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5)が形成された。pFP996−PldhL1は、実施例4に記載されたPldhL1 DNA断片を含む。ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)PN0512)プロモーター(PldhL1)由来のldhL1(L−乳酸デヒドロゲナーゼおよびシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)PF5由来のilvCコード領域を含むPldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5)DNA断片(配列番号:185)は、NotI制限部位を含むT−ldhL1(NotI)(配列番号:186)およびEcoRV制限部位を含むB−CPf(o)(EcoRV)(配列番号:187)のプライマーセットを用いて、pFP996−PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5)からPCRにより生成した。1,297bpのPldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5)断片をNotIおよびEcoRVで消化し、pDM1−ilvD(L.ラクティス(L.lactis))のNotI部位およびPvuII部位に連結させて、pDM1−ilvD(L.ラクティス(L.lactis))−PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5)を生成した。pDM1−ilvD(L.ラクティス(L.lactis))の構築は、米国仮特許出願第61/100810号明細書の実施例1に以下の通り記載されている。
【0168】
プライマー3T−ilvDLI(BamHI)(配列番号:188)および5B−ilvDLI(NotI)(配列番号:189)を用いて、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)ilvDコード領域(配列番号:94)を、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)NCDO2118ゲノムDNAからPCR増幅させた。Puregene Gentra Kit(QIAGEN;Valencia,CA)を用いて、L.ラクティス亜種ラクティス(L.lactis subsp. lactis)NCDO2118ゲノムDNAを調製した。1.7KbpのL.ラクティス(L.lactis)ilvD PCR生成物(ilvDLI)をNotIで消化し、DNAポリメラーゼのKlenow断片で処理して、平滑末端を作製した。得られたL.ラクティス(L.lactis)ilvDコード領域断片をBamHIで消化し、QIAGENゲル抽出キット(QIAGEN)を使用して、ゲル精製した。プラスミドpDM1をApaLIで消化し、DNAポリメラーゼのKlenow断片で処理して、平滑末端を作製し、次いでBamHIで消化した。ゲル精製したL.ラクティス(L.lactis)ilvDコード領域断片を、プラスミドpDM1のBamHIおよびApaLI(平滑)部位に連結した。連結混合物を、大腸菌(E.coli)Top10細胞(Invitrogen;Carlsbad,CA)に形質転換した。形質転換体を、選択のためにLBクロラムフェニコールプレート上に蒔いた。陽性クローンをSalI消化によりスクリーニングし、予想されたサイズの5.3Kbpを有する1断片が得られた。陽性クローンを、DNA配列決定によりさらに確認した。正確なクローンは、pDM1−ilvD(L.ラクティス(L.lactis))と名付けた。これは、P30から発現されたL.ラクティス(L.lactis)ilvDコード領域を有するものである。
【0169】
pDM1−ilvD(L.ラクティス(L.lactis))−PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5)のP30プロモーターを、lacOオペレーター配列およびlacIリプレッサー遺伝子に融合させたB.サブティリス(B.subtilis)groEプロモーター(PgroE)で置換した。プラスミドpHTO1(Mo Bi Tec、Goettingen,Germany)をSacIで消化し、Klenow断片で処理して、平滑末端を作製し、BamHIで消化し、次いで1,548bpのlacI−PgroE/lacO断片(配列番号:176)をゲル精製した。lacI−PgroE/lacO DNA断片を、P30プロモーターの代わりにpDM1−ilvD(L.ラクティス(L.lactis))−PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5)のKpnI部位(Klenow断片による平滑末端)およびBamHI部位にクローニングして、pDM5−ilvD(L.ラクティス(L.lactis))−PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5)が生成された。
【0170】
ilvD(L.ラクティス(L.lactis))断片を除去するために、pDM5−ilvD(L.ラクティス(L.lactis))−PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5)をNotIおよびBamHIで消化し、CIPで処理して、平滑末端を作製した。pDM5主鎖、ldhL1プロモーター(PldhL1)、およびP.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5 ilvCコード領域を含む6,207bpのDNA断片をゲル精製し、自己連結させ、pDM5−PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5)が生成された。
【0171】
実施例6
pDM5−PldhL1−ilvC(S.ミュータンス(S.mutans))、pDM5−PldhL1−ilvC(S.サーモフィルス(S.thermophilus))、およびpDM5−PldhL1−ilvC(L.メセンテロイデス(L.mesenteroides))ベクターの構築
本実施例の目的は、ケトール酸レダクトイソメラーゼ用のストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)UA159 ilvCコード領域(コード配列番号:27;タンパク質配列番号:28)、ケトール酸レダクトイソメラーゼ用のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)LMD−9 ilvCコード領域((コード配列番号:55;タンパク質配列番号:56)、およびケトール酸レダクトイソメラーゼ用のロイコノストック・メセンテロイデス亜種メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides)ATCC8293 ilvCコード領域(コード配列番号:39;タンパク質配列番号:40)の発現ベクターへのクローニングを説明することである。
【0172】
S.ミュータンス(S.mutans)、S.サーモフィルス(S.thermophilus)、およびL.メセンテロイデス(L.mesenteroides)ilvCコード領域を、実施例4および5のL.ラクティス(L.lactis)およびP.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5 ilvC遺伝子と同じプロモーターの制御下にクローンするために、まずベクターpDM5−PldhL1−MCSを構築した。Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを使用して、NotI制限部位を含むプライマーAA234(配列番号:190)、ならびにマルチクローニング部位(MCS)用の複数の制限部位およびDrdI制限部位を含むプライマーAA179(配列番号:191)を用いて、L.プランタルム(L.plantarum)PN0512ゲノムDNA由来のldhL1プロモーターを増幅させた。得られたDNA断片をNotIおよびDrdIで消化した。ベクターpDM5−PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)Pf5)をNotIおよびDrdIで消化し、より大型の断片(4712bp)をゲル精製して、PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)Pf5)配列を除去した。ゲル精製された断片と消化されたPldhL1−MCS PCRを連結させて、特異な制限部位KasI、PacI、AvrII、SacI、およびPmeIを有するベクターpDM5−PldhL1−MCSを作製した。ベクターはPCRおよび配列決定によって確認された。
【0173】
Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを使用して、AvrII制限部位およびリボソーム結合配列を含むプライマーAA235(配列番号:192)、ならびにSacI制限部位を含むプライマーAA236(配列番号:193)を用いて、S.ミュータンス(S.mutans)UA159ゲノムDNA由来のストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)UA159 ilvCコード領域(配列番号:27)を増幅させた。Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを使用して、AvrII制限部位およびリボソーム結合配列を含むプライマーAA237(配列番号:194)、ならびにSacI制限部位を含むプライマーAA238(配列番号::195)を用いて、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)LMD−9(ATCC BAA−491)ilvCコード領域(配列番号:55)を、コロニーPCRにより増幅させた。Phusion High−Fidelity PCR Master Mixを使用して、AvrII制限部位およびリボソーム結合配列を含むプライマーAA239(配列番号:196)、ならびにSacI制限部位を含むプライマーAA240(配列番号::197)を用いて、L.メセンテロイデス亜種メセンテロイデス(L.mesenteroides subsp. mesenteroides)ATCC 8293ゲノムDNA由来のロイコノストック・メセンテロイデス亜種メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides)ATCC 8293 ilvCコード領域(配列番号:39)を増幅させた。3つのilvC遺伝子をAvrIIおよびSacIで切断し、個別にpDM5−PldhL1−MCSの対応する制限部位に連結させ、AvrIIおよびSacIで消化の後、ベクターpDM5−PldhL1−ilvC(S.ミュータンス(S.mutans))、pDM5−PldhL1−ilvC(S.サーモフィルス(S.thermophilus))、およびpDM5−PldhL1−ilvC(L.メセンテロイデス(L.mesenteroides))が作製された。ベクターはPCRおよび配列決定によって確認された。
【0174】
実施例7
ベクターpDM5−PldhL1−ilvC(L.ラクティス(L.lactis))、pDM5−PldhL1−ilvC(S.ミュータンス(S.mutans))、pDM5−PldhL1−ilvC(S.サーモフィルス(S.thermophilus))、pDM5−PldhL1−ilvC(L.メセンテロイデス(L.mesenteroides))、またはpDM5−PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)Pf5)を含むPN0512ΔIdhDΔldhL1::ilvD(Ll)suf::P5P4glgB::Tn5−PgroE−kivD(o)−sadB(o)を使用したイソブタノールの生成
本実施例の目的は、ベクターpDM5−PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)Pf5)を含むPN0512ΔIdhDΔldhL1::ilvD(Ll)suf::P5P4 glgB::Tn5−PgroE−kivD(o)−sadB(o)に比べて、ベクターpDM5−PldhL1−ilvC(L.ラクティス(L.lactis))、pDM5−PldhL1−ilvC(S.ミュータンス(S.mutans))、pDM5−PldhL1−ilvC(S.サーモフィルス(S.thermophilus))、またはpDM5−PldhL1−ilvC(L.メセンテロイデス(L.mesenteroides))を含むPN0512ΔIdhDΔldhL1::ilvD(Ll)suf::P5P4 glgB::Tn5−PgroE−kivD(o)−sadB(o)において、イソブタノールの生成が増大していることを説明することである。
【0175】
イソブタノール生合成経路の遺伝子を発現させる組換えラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)を構築するために、PN0512ΔIdhDΔldhL1::ilvD(Ll)suf::P5P4 glgB::Tn5−PgroE−kivD(o)−sadB(o)のコンピテント細胞を、一般方法に記載されているように調製し、プラスミドpDM5−PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)Pf5)、pDM5−PldhL1−ilvC(L.ラクティス(L.lactis))、pDM5−PldhL1−ilvC(S.ミュータンス(S.mutans))、pDM5−PldhL1−ilvC(S.サーモフィルス(S.thermophilus))、またはpDM5−PldhL1−ilvC(L.メセンテロイデス(L.mesenteroides))で形質転換して、それぞれPN0512ΔIdhDΔldhL1::ilvD(Ll)suf::P5P4 glgB::Tn5−PgroE−kivD(o)−sadB(o)/ pDM5−PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)Pf5)、PN0512ΔIdhDΔldhL1::ilvD(Ll)suf::P5P4 glgB::Tn5−PgroE−kivD(o)−sadB(o)/ pDM5−PldhL1−ilvC(L.ラクティス(L.lactis))、PN0512ΔIdhDΔldhL1::ilvD(Ll)suf::P5P4 glgB::Tn5−PgroE−kivD(o)−sadB(o)/ pDM5−PldhL1−ilvC(S.ミュータンス(S.mutans))、PN0512ΔIdhDΔldhL1::ilvD(Ll)suf::P5P4 glgB::Tn5−PgroE−kivD(o)−sadB(o)/ pDM5−PldhL1−ilvC(S.サーモフィルス(S.thermophilus))、およびPN0512ΔIdhDΔldhL1::ilvD(Ll)suf::P5P4 glgB::Tn5−PgroE−kivD(o)−sadB(o)/ pDM5−PldhL1−ilvC(L.メセンテロイデス(L.mesenteroides))を得た。イソブタノール経路の第1の酵素であるアセト乳酸合成酵素は、内在性遺伝子からの自然発現により準備した。
【0176】
PN0512ΔIdhDΔldhL1::ilvD(Ll)suf::P5P4 glgB::Tn5−PgroE−kivD(o)−sadB(o)を含むベクターの5つの株pDM5−PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)Pf5)、pDM5−PldhL1−ilvC(L.ラクティス(L.lactis))、pDM5−PldhL1−ilvC(S.ミュータンス(S.mutans))、pDM5−PldhL1−ilvC(S.サーモフィルス(S.thermophilus))、またはpDM5−PldhL1−ilvC(L.メセンテロイデス(L.mesenteroides))を、培養試験管中、10μg/mlのクロラムフェニコールを含有するラクトバチルス(Lactobacilli)MRS培地に播種し、30℃で1晩好気培養した。1晩培養物を使用して、120mlの血清ビンに、100mM 3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)pH7、10μg/mlクロラムフェニコール、40μMクエン酸第二鉄、および0.5mMシステインを含有するMRS培地20mlを初期OD600 0.3になるまで播種した。培養物を、振盪(100RPM)しながら37℃で72時間嫌気増殖させた。培養物の試料を、3700xgで10分間、4℃で遠心し、上澄液を、0.2μmのフィルター(Pall Life Sciences、Ann Arbor,MI)に通して濾過した。濾過した上澄液は、カラムHP−Innowax Polyethylene Glycol Innowax Polyethylene Glycol(19091N−113、Agilent Technologies、Santa Clara,CA)および炎イオン化検出を備えたGCで分析した。表3の結果は、これら5株についてイソブタノールの生成を示している。PN0512ΔIdhDΔldhL1::ilvD(Ll)suf::P5P4 glgB::Tn5−PgroE−kivD(o)−sadB(o)含有ベクターpDM5−PldhL1−ilvC(L.ラクティス(L.lactis))によって生成されたイソブタノールの量は4.9mMであり、これは、PN0512ΔIdhDΔldhL1::ilvD(Ll)suf::P5P4 glgB::Tn5−PgroE−kivD(o)−sadB(o)含有ベクターpDM5−PldhL1−ilvC(P.フルオレッセンス(P.fluorescens)Pf5)によって生成されたイソブタノールレベル(1.0mM)より約5倍高い。他のKARIはそれぞれ、イソブタノール生成がPf5より少なくとも3倍高かった。
【0177】
【表4】

【0178】
実施例8
酵母におけるイソブタノール生成のための様々なKARI酵素の発現
ベクター構築
2つのプラスミドの系を使用して、酵母におけるイソブタノール経路をエンジニアリングした。ケトール酸レダクトイソメラーゼ(KARI)およびアセト乳酸合成酵素(ALS)の発現用の第1のプラスミドを、pYZ090(配列番号:198)と称した。pYZ090は、酵母CUP1プロモーター(nt位2〜449)から発現されたバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)(nt位457〜2172)由来のalsS遺伝子のコード領域と、その後に続くALS発現用のCYC1ターミネーター(nt位2181〜2430)を有するキメラ遺伝子、および酵母ILV5プロモーター(2433〜3626)から発現されたラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)(nt位3634〜4656)由来のilvC遺伝子のコード領域と、その後に続くKARI発現用のILV5 ターミネーター(nt位4682〜5304)を有するキメラ遺伝子が含まれるように構築された。このベクターにおけるL.ラクティス(L.lactis)KARIコード領域は、LLKARI−PmeI(配列番号:199)およびLLKARI−SfiI 配列番号:200)のプライマーセット、ならびにpLH475−IlvC(Ll)を鋳型として使用して、PCRにより得られたDNA断片であった。pLH475−IlvC(Ll)を構築するために、実施例4に上述したことであるが、IlvC(Lactis)−FおよびIlvC(Lactis)−R(配列番号:201および202)のプライマーセットを用いて、鋳型としてpDM5−PldhL1−ilvC(L.ラクティス(L.lactis))を使用して、ilvC−Llコード領域を増幅させた。PCR生成物をAvrIIおよびSfiIで消化し、pLH475をベースとしたベクターの対応する部位にクローニングし、コンストラクトpLH475−IlvC(Ll)(配列番号:203)、別名pLH475−IlvC(L.ラクティス(L.lactis))を作製した。
【0179】
プラスミドpYZ091(配列番号:204)は、L.ラクティス(L.lactis)ilvCコード領域が、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas
fluorescens)ilvCコード領域(ilvC(Pf−5)と置換されている点以外、pYZ090と同じである。IlvC(Pf−5)コード領域は、pILVCy−PmeII(配列番号:205)およびpilvCy−SfiI(配列番号:206)のプライマーセットを用いて、pLH532を鋳型DNAとして使用してで増幅させた。pLH532(配列番号:207)は、pHR81ベクター(ATCC #87541)であり、ILV5コード領域(nt位8118〜9167)がFBAプロモーター(nt位7454〜8110)とCYC1ターミネーター(nt位9176〜9425)との間に位置し、P.フルオレッセンス(P. fluorescence)Pf−5(nt位10192〜11208)由来のIlvCコード領域が、ILV5プロモーター(nt位11200〜12390)とILV5ターミネーター(nt位9434〜10191)の間に位置する。この遺伝子は、配列番号:207の配列pLH532の逆補体である。Pf−5コード領域は、出芽酵母(S.cerevisiae)における発現に最適化されたコドンであった。
【0180】
プラスミドpYZ058(配列番号:208)は、L.ラクティス(L.lactis)ilvCコード領域が、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)ILV5コード領域(ILV5(Sc))で置換されている点以外、pYZ090と同じである。ミトコンドリアシグナルペプチドを含まない出芽酵母(S.cerevisiae)ILV5コード領域は、pilv5−PmeI(配列番号:209)およびpilv5−SfiI(配列番号:210)のプライマーセットを用いて、pLH532を鋳型DNAとして使用して増幅させた。
【0181】
残部のイソブタノール経路の遺伝子を含む第2のプラスミドは、pYZ067(配列番号:211)と称した。このベクターは、下記のキメラ遺伝子が含まれるように構築された:1)酵母FBA1プロモーター(nt位1161〜2250)から発現されたC末端のLumioタグ(nt位2260〜3996)を有するS.ミュータンス(S.mutans)UA159由来のilvD遺伝子のコード領域と、その後に続くジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(DHAD)発現用のFBA1ターミネーター(nt位4005〜4317)、2)酵母GPM1プロモーター(nt5819〜6575)から発現されたウマ肝臓ADH(nt4680〜5807)のコード領域と、その後に続くアルコールデヒドロゲナーゼ発現用のADH1ターミネーター(nt位4356〜4671)、および3)酵母TDH3プロモーター(nt位8830−9493)から発現されたラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)(nt位7175〜8821)由来のKivD遺伝子のコード領域と、その後に続くケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼ発現用のTDH3ターミネーター。
【0182】
イソブタノール生成宿主株
2009年9月29日出願の米国仮特許出願第61/246,709号明細書に記載されている遺伝子型BY4700 pdc6::PGPM1−sadB−ADH1t pdc1::PPDC1−ilvD−FBA1t Δhis3 Δhxk2 pdc5::kanMX4を有するNYLA84株を、イソブタノール生成に使用した。この株は、出芽酵母(S.cerevisiae)の内因性PDC1、PDC5、およびPDC6遺伝子の挿入−不活性化によって構築した。PDC1、PDC5、およびPDC6遺伝子は、ピルビン酸デカルボキシラーゼの主要な3つのアイソザイムをコードする。
【0183】
pdc6::PGPM1−sadB組込みカセットおよびPDC6欠失の構築:
pdc6::PGPM1−sadB−ADH1t−URA3r組込みカセットは、pRS425::GPM−sadB(上述)由来のGPM−sadB−ADHtセグメント(配列番号:156)をpUC19−URA3r由来のURA3r遺伝子に結合させることによって作製した。pUC19−URA3r(配列番号:212)は、インビボでの相同組換えおよびURA3マーカーの除去が可能になるように75bpの相同性反復配列によってフランキングされているpRS426(ATCC #77107)由来のURA3マーカーを含む。2つのDNAセグメントは、SOE PCR(Hortonら、(1989年)Gene 77巻:61〜68頁によって記載されている)により、鋳型としてpRS425::GPM−sadBおよびpUC19−URA3rプラスミドDNAを使用
して、Phusion DNAポリメラーゼ(New England Biolabs Inc.、Beverly,MA;カタログ番号F−540S)、ならびにプライマー114117−11Aから114117−11D(配列番号:213、214、215、および216)、および114117−13Aと114117−13B(配列番号:217および218)を用いて結合させた。
【0184】
SOE PCR(114117−13Aおよび114117−13B)の外側プライマーは、それぞれPDC6プロモーターおよびターミネーターの上流および下流の領域と相同である約50bpの5’および3’領域を含むものであった。標準遺伝子操作(Methods in Yeast Genetics、2005年、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、201〜202頁)を使用して、完成したカセットPCR断片をBY4700(ATCC # 200866)に形質転換し、形質転換体を、ウラシルを含まず、2%グルコースを補充した合成完全培地上に30℃で維持した。形質転換体は、プライマー112590−34Gおよび112590−34H(配列番号:219および220)、ならびに112590−34Fおよび112590−49E(配列番号:221および222)を使用して、PCRによりスクリーニングして、PDC6座における組込みとPDC6コード領域の欠失を検証した。URA3rマーカーは、標準プロトコルに従って、2%グルコースおよび5−FOAを補充した合成完全培地上に30℃で蒔くことによってリサイクルした。マーカー除去は、コロニーを5−FOAプレートからSD−URA培地にパッチして、増殖の有無を検証することによって確認した。得られた同定された株は、遺伝子型:BY4700 pdc6::PGPM1−sadB−ADH1tを有するものである。
【0185】
pdc1::PPDC1−ilvD組込みカセットおよびPDC1欠失の構築:
pdc1::PPDC1−ilvD−FBA1t−URA3r組込みカセットは、SOE PCR(Hortonら、(1989年)、Gene、77巻:61〜68頁によって記載されている)により、鋳型としてpLH468およびpUC19−URA3rプラスミドDNAを使用して、Phusion DNAポリメラーゼ(New England Biolabs Inc.、Beverly、MA;カタログ番号F−540S)およびプライマー114117−27Aから114117−27D(配列番号:224、225、226および227)を用いて、pLH468(上述)由来のilvD−FBA1tセグメント(配列番号:223)をpUC19−URA3r由来のURA3r遺伝子に結合させることによって作製した。
【0186】
SOE PCR(114117−27Aおよび114117−27D)の外側プライマーは、PDC1プロモーターの下流およびPDC1コード配列の下流の領域と相同である約50bpの5’および3’領域を含むものであった。標準遺伝子操作(Methods in Yeast Genetics、2005年、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、201〜202頁)を使用して、完成したカセットPCR断片をBY4700 pdc6::PGPM1−sadB−ADH1tに形質転換し、形質転換体を、ウラシルを含まず、2%グルコースを補充した合成完全培地上に30℃で維持した。形質転換体は、プライマー114117−36Dおよび135(配列番号:228および229)、ならびにプライマー112590−49Eおよび112590−30F(配列番号:222および230)を使用して、PCRによりスクリーニングして、PDC1座における組込みおよびPDC1コード配列の欠失を検証した。URA3rマーカーは、標準プロトコルに従って、2%グルコースおよび5−FOAを補充した合成完全培地上に30℃で蒔くことによってリサイクルした。マーカー除去は、コロニーを5−FOAプレートからSD−URA培地にパッチして、増殖の有無を検証することによって確認した。得られた同定された株「NYLA67」は、遺伝子型:BY4700 pdc6::PGPM1−sadB−ADH1t pdc1::PPDC1−ilvD−FBA1tを有するものである。
【0187】
HIS3欠失
内因性HIS3コード領域を欠失するために、his3::URA3r2カセットをURA3r2鋳型DNA(配列番号:231)からPCR増幅させた。URA3r2は、インビボでの相同組換えおよびURA3マーカーの除去が可能になるように500bpの相同性反復配列によってフランキングされているpRS426(ATCC #77107)由来のURA3マーカーを含む。Phusion DNAポリメラーゼおよびプライマー114117−45Aおよび114117−45B(配列番号:232および233)を使用して、PCRを行い、約2.3kbのPCR生成物が生成された。各プライマーのHIS3部分は、HIS3プロモーターの上流の5’領域およびコード領域の下流の3’領域に由来するものであった。したがって、URA3r2マーカーの組込みによって、HIS3コード領域の置換が起こる。標準遺伝子操作(Methods in Yeast Genetics、2005年、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,NY、201〜202頁)を使用して、PCR産物をNYLA67に形質転換し、得られた形質転換体を、ウラシルを含まず、2%グルコースを補充した合成完全培地上で30℃において選択した。ヒスチジンを含まず、2%グルコースを補充した合成完全培地上で、形質転換体を30℃でレプリカ平板法にかけることによって正確な組込みが検証されるように、形質転換体をスクリーニングした。URA3rマーカーは、標準プロトコルに従って、2%グルコースおよび5−FOAを補充した合成完全培地上に30℃で蒔くことによってリサイクルした。マーカー除去は、コロニーを5−FOAプレートからSD−URA培地にパッチして、増殖の有無を検証することによって確認した。NYLA73と呼ばれる得られた同定された株は、遺伝子型:BY4700 pdc6::PGPM1−sadB−ADH1t pdc1::PPDC1−ilvD−FBA1t Δhis3を有するものである。
【0188】
pdc5::kanMX組込みカセットおよびPDC5欠失の構築:
Phusion DNAポリメラーゼならびにプライマーPDC5::KanMXFおよびPDC5::KanMXR(配列番号:234および235)を使用して、pdc5::kanMX4カセットを、株YLR134W染色体DNA(ATCC No. 4034091)からPCR増幅させ、約2.2kbのPCR生成物が生成された。各プライマーのPDC5部分は、PDC5プロモーターの上流の5’領域およびコード領域の下流の3’領域に由来するものであった。したがって、kanMX4マーカーの組込みによって、PDC5コード領域の置換が起こる。標準遺伝子操作(Methods in Yeast Genetics、2005年、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,NY、201〜202頁)を使用して、PCR産物をNYLA73に形質転換し、得られた形質転換体を、1%エタノールおよびジェネテシン(200μg/ml)を補充したYP培地上で30℃において選択した。形質転換体は、プライマーPDC5koforおよびN175(配列番号:236および237)を使用して、PCRによりスクリーニングして、PDC座における正確な組込みおよびPDC5コード領域の置換を検証した。同定された正確な形質転換体は、遺伝子型:BY4700 pdc6::PGPM1−sadB−ADH1t pdc1::PPDC1−ilvD−FBA1t Δhis3 pdc5::kanMX4を有する。株は、NYLA74と名付けた。
【0189】
HXK2(ヘキソキナーゼII)の欠失:
Phusion DNAポリメラーゼならびにプライマー384および385(配列番号:238および239)を使用して、hxk2::URA3rカセットを、URA3r2鋳型(上述)からPCR増幅させ、約2.3kbのPCR生成物が生成された。各プライマーのHXK2部分は、HXK2プロモーターの上流の5’領域およびコード領域の下流の3’領域に由来するものであった。したがって、URA3r2マーカーの組込みによって、HXK2コード領域の置換が起こる。標準遺伝子操作(Methods in Yeast Genetics、2005年、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,NY、201〜202頁)を使用して、PCR産物をNYLA73に形質転換し、得られた形質転換体を、ウラシルを含まず、2%グルコースを補充した合成完全培地上で30℃において選択した。形質転換体は、プライマーN869およびN871(配列番号:240および241)を使用して、PCRによりスクリーニングして、HXK2座における正確な組込みおよびHXK2コード領域の置換を検証した。URA3r2マーカーは、標準プロトコルに従って、2%グルコースおよび5−FOAを補充した合成完全培地上に30℃で蒔くことによってリサイクルした。マーカー除去は、コロニーを5−FOAプレートからSD −URA培地にパッチして、増殖の有無を検証することによって、またプライマーN946およびN947(配列番号:242および243)を使用して、PCRによって、正確なマーカー除去を検証することによって確認した。NYLA83と呼ばれる得られた同定された株は、遺伝子型:BY4700 pdc6::PGPM1−sadB−ADH1t pdc1::PPDC1−ilvD−FBA1t Δhis3 Δhxk2を有するものである。
【0190】
pdc5::kanMX組込みカセットおよびPDC5欠失の構築
pdc5::kanMX4カセットは、上述のようにPCR増幅させた。上述のように、PCR断片をNYLA83に形質転換し、形質転換体を選択し、スクリーニングした。NYLA84と呼ばれる同定された正確な形質転換体は、遺伝子型:BY4700 pdc6::PGPM1−sadB−ADH1t pdc1::PPDC1−ilvD−FBA1t Δhis3 Δhxk2 pdc5::kanMX4を有する。
【0191】
イソブタノール生成
LiAc/PEG法を使用して、プラスミドpYZ067をpYZ090、pYZ091またはpYZ058に沿って、酵母株NYLA84に形質転換し、形質転換体を、2%グルコースおよび0.1%エタノール(SEG)を補充した(ヒスチジンおよびウラシルを含まない)酵母ドロップアウト培地画は言っている酵母寒天培養プレート上で選択した。30℃で5〜6日後、炭素源として0.1%エタノールおよび2%グルコースを含有する同様の寒天板(SEGプレート)に、個々のコロニーをパッチし、30℃で2〜3日間培養し、下記の振盪フラスコ試験を行った。
【0192】
個々のコロニーのパッチを、まず3mlのSEG(2%グルコース、0.1%EtOH)培地に播種し、150rpmの回転ドラム中、30℃で1晩(20時間)増殖させた。20mlのSEG培地が入っている125mlのフラスコに、1晩培養物をOD600 約0.3になるまで播種し、しっかりと蓋を閉めた。150rpmで振盪しながら、培養物を30℃で増殖させた。一般方法であるHPLCによる分析用に、様々な時点でサンプリングを行った。
【0193】
図4および5に示す結果から、L.ラクティス(L.lactis)由来のIlvCコード領域を含む酵母株は、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)由来のilvCおよび出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来のILV5を含む酵母株より、速く増殖し、多くのイソブタノールを生成したことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケトール酸レダクトイソメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸分子を含む酵母細胞であって、該リペプチドが、KARIのSLSLクレードのメンバーである、上記酵母細胞。
【請求項2】
SLSLクレードが、スタフィロコッカス、リステリア、エンテロコッカス、マクロコッカス、ストレプトコッカス、ラクトコッカス、ロイコノストック、ラクトバチルスからなる群から選択される細菌に内在するケトール酸レダクトイソメラーゼからなる、請求項1に記載の酵母細胞。
【請求項3】
ケトール酸レダクトイソメラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、および245からなる群から選択される配列と少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の酵母細胞。
【請求項4】
細胞が、サッカロミセス、シゾサッカロミセス、ハンゼヌラ、カンジダ、クルイベロミセス、ヤロウイア、イサチェンキア、およびピキア(Pichia)からなる群から選択される属の酵母のメンバーである、請求項1に記載の酵母細胞。
【請求項5】
ケトール酸レダクトイソメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸分子を含むイソブタノール生成微生物細胞であって、該ポリペプチドが、KARIのSLSLクレードのメンバーである、上記微生物細胞。
【請求項6】
SLSLクレードが、スタフィロコッカス、リステリア、エンテロコッカス、マクロコッカス、ストレプトコッカス、ラクトコッカス、ロイコノストック、ラクトバチルスからなる群から選択される細菌に内在するケトール酸レダクトイソメラーゼからなる、請求項5に記載の微生物細胞。
【請求項7】
ケトール酸レダクトイソメラーゼ活性をコードするポリペプチドが、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、および245からなる群から選択される配列と少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項5に記載の微生物細胞。
【請求項8】
細胞が細菌細胞または酵母細胞である、請求項5に記載の宿主微生物細胞。
【請求項9】
宿主細胞が、エシェリキア、ロドコッカス、シュードモナス、バチルス、エンテロコッカス、ラクトコッカス、ラクトバチルス、ロイコノストック、オエノコッカス、ペディオコッカス、ストレプトコッカス、クロストリジウム、ザイモモナス、サルモネラ、ペディオコッカス、アルカリゲネス、クレブシエラ、パエニバチルス、アルスロバクター、コリネバクテリウム、およびブレビバクテリウムからなる群から選択される属の細菌細胞である、請求項8に記載の宿主微生物細胞。
【請求項10】
宿主細胞が、サッカロミセス、シゾサッカロミセス、ハンゼヌラ、カンジダ、クルイベロミセス、ヤロウイア、イサチェンキア、およびピキアからなる群から選択される属の酵母細胞である、請求項8に記載の宿主微生物細胞。
【請求項11】
アセト乳酸をジヒドロキシイソ吉草酸に変換する方法であって、
a)ケトール酸レダクトイソメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸分子を含む酵母細胞を備えるステップであって、ここで該ポリペプチドはKARIのSLSLクレードのメンバーである、該ステップと;
b)(a)の酵母細胞とアセト乳酸を接触させるステップであって、ここで2,3−ジヒドロキシイソ吉草酸が生産される、該ステップと;を含む、上記方法。
【請求項12】
SLSLクレードが、スタフィロコッカス、リステリア、エンテロコッカス、マクロコッカス、ストレプトコッカス、ラクトコッカス、ロイコノストック、ラクトバチルスからなる群から選択される細菌に内在するケトール酸レダクトイソメラーゼからなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
イソブタノールを生産する方法であって、
a)ケトール酸レダクトイソメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸分子を含む、イソブタノール生合成経路を含む微生物細胞を備えるステップであって、ここで該ポリペプチドは、KARIのSLSLクレードのメンバーである、該ステップと;
b)ステップ(a)の微生物細胞を、イソブタノールが生成される条件下で増殖させるステップと;
を含む、上記方法。
【請求項14】
SLSLクレードが、スタフィロコッカス、リステリア、エンテロコッカス、マクロコッカス、ストレプトコッカス、ラクトコッカス、ロイコノストック、ラクトバチルスからなる群から選択される細菌に内在するケトール酸レダクトイソメラーゼからなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ケトール酸レダクトイソメラーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、および245からなる群から選択される配列と少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
酵母細胞であって、不活化されたピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を少なくとも1つ有するようにエンジニアリングされ、配列番号:198、203、204、208、または211からなる群から選択されるプラスミドのコード領域と少なくとも約80%同一性を有するコード領域を有するプラスミドを含む、上記酵母細胞。
【請求項17】
酵母細胞であって、不活化されたピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を少なくとも1つ有するようにエンジニアリングされ、配列番号:198、203、204、208、または211からなる群から選択されるプラスミドのキメラ遺伝子と少なくとも約80%の同一性を有するキメラ遺伝子を有するプラスミドを含む、上記酵母細胞。
【請求項18】
配列番号:198、203、204、208、または211の配列を有するプラスミド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−505740(P2013−505740A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532274(P2012−532274)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/050724
【国際公開番号】WO2011/041415
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(310011310)ビュータマックス・アドバンスド・バイオフューエルズ・エルエルシー (24)
【Fターム(参考)】