説明

高架橋用角折れ防止装置

【課題】高架橋構造物の対向端部における角折れを防止することで地震時における列車走行性を向上させる。
【解決手段】本発明に係る高架橋用角折れ防止装置4は、ラーメン高架橋と調整桁の対向端部を跨ぐように該対向端部に配置してあり、装置本体41、該装置本体に付属するアンカーボルト42及び該アンカーボルトに螺合されるナット47で構成してある。装置本体41は、対向端部の床版コンクリートに載置される鋼製ボックス体44,44と、該鋼製ボックス体に短手側縁部が溶接等でそれぞれ接合され鋼製ボックス体44の底部と平行になるように配置された角折れ防止用鋼板43とを備えるとともに、鋼製ボックス体44の底部に形成されたボルト孔45にアンカーボルト42を挿通できるようになっている。鋼製ボックス体44は、無収縮モルタルを充填できるとともに、該無収縮モルタルにアンカーボルト42の基端側を定着できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として鉄道用高架橋に用いる高架橋用角折れ防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高架橋においては、道路用か鉄道用かにかかわらず、地震時における安全性の確保が重要となるが、鉄道用の高架橋においては、橋軸方向に沿って敷設された軌道上を走行する列車の走行安全性についての十分な検討が不可欠である。
【0003】
一方、鉄道用の高架橋は、支持地盤の違いや地上の交通状況等に応じて、ラーメン高架橋、調整桁、架道橋といったさまざまな種類の高架橋構造物から適宜選択使用されており、全体としては、相異なる複数の高架橋構造物が橋軸方向に沿って配列されたものとなる。
【0004】
そのため、鉄道用高架橋は、場所によって異なる地震時挙動を呈することになり、例えば橋軸方向に沿って隣接する2つのラーメン高架橋が互いに異なる固有周期で橋軸直交方向に振動し、これら2つのラーメン高架橋がそれらの端部において相対的な変位を生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭55−148805号公報
【特許文献2】特開平9−13319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる相対的な変位のうち、鉛直軸線廻りの角度ずれである角折れは、大規模地震動による構造物の塑性化が進むにつれて、列車走行性に及ぼす影響が大きくなることがわかってきた。
【0007】
しかしながら、角折れについての調査やその防止策については必ずしも十分ではなく、地震時の列車走行性を改善する余地が残されていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、高架橋構造物の対向端部における角折れを防止することによって地震時における列車走行性を向上させることが可能な高架橋用角折れ防止装置を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る高架橋用角折れ防止装置は請求項1に記載したように、橋軸方向に沿って隣接配置された高架橋構造物の対向端部を跨ぐように該対向端部に配置される高架橋用角折れ防止装置において、
【0010】
前記対向端部のそれぞれの床版コンクリートに載置される鋼製ボックス体と、該各鋼製ボックス体を相互に連結する角折れ防止用鋼板と、前記各鋼製ボックス体の底部に形成されたボルト孔にそれぞれ挿通されるアンカーボルトとからなり、前記各鋼製ボックス体は、それらの内側に固化材を充填することにより該固化材に前記アンカーボルトの基端側を定着できるようになっているものである。
【0011】
また、本発明に係る高架橋用角折れ防止装置は、前記アンカーボルトの基端近傍に定着板を設けたものである。
【0012】
また、本発明に係る高架橋用角折れ防止装置は、前記角折れ防止用鋼板を補剛する補剛板を該角折れ防止用鋼板に立設したものである。
【0013】
また、本発明に係る高架橋用角折れ防止装置は、前記角折れ防止用鋼板を前記鋼製ボックス体の底部と平行に配置するとともに、前記対向端部に配置された状態において前記補剛板が前記角折れ防止用鋼板の上側に位置するように前記補剛板を前記角折れ防止用鋼板の上面に立設したものである。
【0014】
また、本発明に係る高架橋用角折れ防止装置は、前記角折れ防止用鋼板を前記鋼製ボックス体の底部と平行に配置するとともに、前記対向端部に配置された状態において前記補剛板が前記床版コンクリートの構造物境界に設けられた水止めコンクリートを跨ぐことができるように該補剛板を門型状又はアーチ状に形成して前記角折れ防止用鋼板の下面に垂設したものである。
【0015】
本発明に係る高架橋用角折れ防止装置においては、高架橋構造物の対向端部が鉛直軸線廻りに相対回転したとき、橋軸方向に沿った相対変位が該対向端部に生じ、それに伴って対向端部の床版コンクリートに取り付けられた鋼製ボックス体同士が互いに離間しようとするが、該鋼製ボックス体の間には角折れ防止用鋼板を介在させてあり、かかる角折れ防止用鋼板がその圧縮引張剛性を発揮して鋼製ボックス体同士の離間を抑制する。
【0016】
そのため、地震時において各高架橋構造物がそれぞれ異なる固有周期で橋軸直交方向に振動したとしても、高架橋構造物の対向端部に生じる角折れが未然に防止されることとなり、かくして地震時における列車の走行安全性が格段に向上する。
【0017】
また、本発明においては、対向端部のそれぞれの床版コンクリートにアンカーボルトの先端側を定着するとともに、これらのアンカーボルトが鋼製ボックス体の底部に形成されたボルト孔に挿通されるように、鋼製ボックス体を各床版コンクリートにそれぞれ載置し、次いで、各鋼製ボックス体の内側に固化材を充填することで、該固化材にアンカーボルトの基端側を定着するようにしたので、全体を鋼材で形成する場合に比べ、装置全体の軽量化や製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0018】
本発明に係る高架橋用角折れ防止装置は、対向端部に生じる相対変位を角折れ防止用鋼板の圧縮引張剛性で抑制するものであるため、固定支承にのみ適用され、可動支承には適用されない。
【0019】
高架橋構造物としては、少なくともラーメン高架橋、調整桁又は架道橋(桁橋)に本発明を適用することができるとともに、それらから橋軸方向に沿った隣接配置の組み合わせを任意に選択することが可能であり、例えばラーメン高架橋と調整桁との組み合わせをはじめ、ラーメン高架橋同士の組み合わせが可能である。
【0020】
本発明に係る高架橋用角折れ防止装置は、床版コンクリートの上面であって軌道スラブとダクト部の間に設置される場合をはじめ、水平設置面を有する任意の部位に設置することができる。
【0021】
アンカーボルトは、建築土木用に広く使用されているものから適宜選択使用することが可能であって、鋼製ボックス体のボルト孔に挿通した後、ナットで締め付けるようにすれば、固化材の定着作用と相俟って、鋼製ボックス体を床版コンクリートに強固に固定することができる。
【0022】
ここで、アンカーボルトの基端近傍に定着板を設けるようにしたならば、アンカーボルトに引抜き方向の力が作用した場合、定着板と鋼製ボックス体の底部との間に拡がる固化材に円錐台状の圧縮ストラットが形成され、かかる圧縮ストラットが引抜き方向の力に抵抗するため、ナットを用いることなく、ナットと同等かそれ以上の力で鋼製ボックス体を床版コンクリートに固定することができる。加えて、上述した圧縮ストラットは、定着板の下面から斜め下方に向けて形成されるため、鋼製ボックス体の底部に作用する圧縮応力の面積が拡がり、かくして、ボルト孔の径を大きくしてアンカーボルトの挿通可能範囲を拡げることが可能となり、床版コンクリートに埋設された鉄筋とアンカーボルトとの干渉を未然に回避することができる。
【0023】
角折れ防止用鋼板は、鋼製ボックス体を介して入力する対向端部の相対変位に対して十分な圧縮引張力で抵抗できるよう、断面積や鋼材種などを適宜決定すればよいが、角折れ防止用鋼板を補剛する補剛板を該角折れ防止用鋼板に立設したならば、圧縮力に伴う座屈を防止することができる。
【0024】
補剛板の配置構成に関しては、角折れ防止用鋼板を鋼製ボックス体の底部と平行に配置するとともに、対向端部に配置された状態において補剛板が角折れ防止用鋼板の上側に位置するように、該補剛板を角折れ防止用鋼板の上面に立設した構成とすることができる。
【0025】
また、角折れ防止用鋼板を鋼製ボックス体の底部と平行に配置するとともに、対向端部に配置された状態において補剛板が床版コンクリートの構造物境界に設けられた水止めコンクリートを跨ぐことができるように、該補剛板を門型状又はアーチ状に形成して角折れ防止用鋼板の下面に垂設した構成とすることができる。
【0026】
水止めコンクリートは、高架橋構造物の対向端部の隙間から雨水が滴り落ちるのを防止するため、構造物境界に向けて上向き勾配となるように形成されたものであり、上述のように補剛板を形成したならば、補剛板と水止めコンクリートとの干渉を未然に回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置の設置状況を示した側面図。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図。
【図3】本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置の設置状況を示した平面図。
【図4】本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置を示した全体斜視図。
【図5】同じく高架橋用角折れ防止装置の図であり、(a)は平面図、(b)はB−B線方向から見た矢視図、(c)はC−C線に沿う断面図、(d)はD−D線に沿う断面図。
【図6】本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置の設置状況を示した図であり、(a)は平面図、(b)はE−E線に沿う断面図。
【図7】高架橋用角折れ防止装置4の作用を説明した平面図。
【図8】変形例に係る高架橋用角折れ防止装置を示した全体斜視図。
【図9】別の変形例に係る高架橋用角折れ防止装置を示した全体斜視図。
【図10】変形例に係る高架橋用角折れ防止装置の作用を説明した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る高架橋用角折れ防止装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0029】
図1乃至図3は、本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置の設置状況を示した図であり、図1は橋軸直交方向から見た側面図、図2は図1のA−A線方向に沿った断面図、図3は平面図である。
【0030】
これらの図でわかるように、本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置4は、橋軸方向に沿って順次配置されたラーメン高架橋2a、調整桁3及びラーメン高架橋2bのうち、固定支承(図示せず)を介して連結された調整桁3とラーメン高架橋2bとの連結箇所に適用されたものであり、ラーメン高架橋2bと対向する調整桁3の端部を対向端部5、調整桁3と対向するラーメン高架橋2bの端部を対向端部6とし、これらの対向端部5,6を跨ぐように該対向端部に配置してある。
【0031】
高架橋用角折れ防止装置4は、床版コンクリート9の上面であって軌道スラブ7とダクト8の間に2ヶ所設けてあり、図4及び図5でわかるように、装置本体41、該装置本体に付属するアンカーボルト42及び該アンカーボルトに螺合されるナット47で構成してある。
【0032】
装置本体41は、対向端部5,6の床版コンクリート9,9に載置される鋼製ボックス体44,44と、該鋼製ボックス体に短手側縁部が溶接等でそれぞれ接合され鋼製ボックス体44の底部と平行になるように配置された角折れ防止用鋼板43とを備えるとともに、鋼製ボックス体44の底部に形成されたボルト孔45にアンカーボルト42を挿通できるようになっている。
【0033】
角折れ防止用鋼板43は、鋼製ボックス体44,44から対向端部5,6の相対変位が入力したとき、該相対変位に対して十分な圧縮引張力で抵抗できるよう、その断面積や鋼材種などを適宜設定する。
【0034】
一方、角折れ防止用鋼板43には、高架橋用角折れ防止装置4が対向端部5,6に設置された状態において、その下面となる側に4枚の補剛板46を垂設してあり、圧縮力に伴う角折れ防止用鋼板43の面外座屈を防止するようになっている。
【0035】
補剛板46は、それらの上縁を直線状に形成する一方、下縁については両端から離間するにつれて斜めに傾斜させ、両端から一定距離だけ離れた中央区間では直線状に形成してあり、かかる門型形状によって、角折れ防止用鋼板43を補剛しつつ、後述する水止めコンクリートとの干渉を回避することができるようになっている。
【0036】
各鋼製ボックス体44は、その内部を2枚の仕切壁で3等分してあるとともに、該3等分された区画ごとに3ヶ所、計9ヶ所のボルト孔45を底部に形成してあり、該ボルト孔にアンカーボルト42を1本ずつ、計9本のアンカーボルト42を挿通することができるようになっている。
【0037】
また、鋼製ボックス体44は、上述した各区画に固化材としての無収縮モルタルを充填できるようになっているとともに、該無収縮モルタルにアンカーボルト42の基端側を定着できるようになっている。
【0038】
図6は、高架橋用角折れ防止装置4を対向端部5,6の床版コンクリート9,9に設置した様子を示した図である。
【0039】
同図に示すように、高架橋用角折れ防止装置4を対向端部5,6に跨設するには、まず、対向端部5,6のそれぞれの床版コンクリート9,9にアンカーボルト42の先端側を定着する。
【0040】
ここで、床版コンクリート9,9には、対向端部5,6の隙間δから雨水が滴り落ちるのを防止するため、構造物境界に向けて上向き勾配となる水止めコンクリート62,62を形成してあるが、補剛板46を門型状に形成したことにより、かかる水止めコンクリート62,62にぶつけることなく、高架橋用角折れ防止装置4を床版コンクリート9,9に跨設するすることができる。
【0041】
アンカーボルト42は、いわゆる、あと施工アンカー工事で床版コンクリート9に固定することが可能であり、例えば床版コンクリート9,9に挿入穴を9本ずつ計18本を穿孔形成し、挿入穴の内部をブロアやブラシで清掃した後、接着系アンカー工法で用いるカプセルを挿入し、次いで、先端を斜めにカットした状態でアンカーボルト42を挿入して硬化させればよい。
【0042】
次に、鋼製ボックス体44,44の底部に形成されたボルト孔45にアンカーボルト42を挿通させながら、鋼製ボックス体44,44を床版コンクリート9,9にそれぞれ載置する。
【0043】
次に、ナット47をアンカーボルト42に螺合して締め付けることで、装置本体41を床版コンクリート9,9に固定し、かかる状態で鋼製ボックス体44,44の内側に無収縮モルタル61を充填することで、該無収縮モルタルにアンカーボルト42の基端側を定着する。
【0044】
高架橋用角折れ防止装置4が設置された高架橋構造物に地震動が作用したとき、高架橋構造物である調整桁3とラーメン高架橋3bは、図7(a)に示すように鉛直軸線廻りに相対回転し、それらの対向端部5,6には橋軸方向に沿った相対変位が生じる。なお、同図では、反時計廻りの相対回転を想定したため、橋軸方向に沿った相対変位は、同図右側が支配的となる。
【0045】
かかる橋軸方向に沿った相対変位に伴い、対向端部5,6の床版コンクリート9,9に取り付けられた鋼製ボックス体44,44同士は同図(b)に示すように、互いに離間しようとするが、該鋼製ボックス体には角折れ防止用鋼板43を連結してあり、かかる角折れ防止用鋼板43がその圧縮引張剛性を発揮して鋼製ボックス体44,44同士の離間を抑制する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置4によれば、角折れ防止用鋼板43がその圧縮引張剛性を発揮して鋼製ボックス体44,44同士の離間を抑制するので、地震時において各高架橋構造物がそれぞれ異なる固有周期で橋軸直交方向に振動したとしても、高架橋構造物の対向端部5,6に生じる角折れが未然に防止されることとなり、かくして地震時における列車の走行安全性が格段に向上する。
【0047】
また、本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置4によれば、対向端部5,6のそれぞれの床版コンクリート9,9にアンカーボルト42の先端側を定着するとともに、これらのアンカーボルト42が鋼製ボックス体44の底部に形成されたボルト孔45に挿通されるように、鋼製ボックス体44,44を各床版コンクリート9,9にそれぞれ載置し、次いで、各鋼製ボックス体44の内側に無収縮モルタル61を充填することで該無収縮モルタルにアンカーボルト42の基端側を定着するようにしたので、全体を鋼材で形成する場合に比べ、装置全体の軽量化や製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0048】
また、本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置4によれば、角折れ防止用鋼板43に4枚の補剛板46を立設するようにしたので、圧縮力に伴う角折れ防止用鋼板43の面外座屈を未然に防止することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る高架橋用角折れ防止装置4によれば、補剛板46を門型状に形成したことにより、水止めコンクリート62,62との干渉を回避することが可能となる。
【0050】
本実施形態では、角折れ防止用鋼板43を鋼製ボックス体44の底部と平行に配置するとともに角折れ防止用鋼板43の下面に4枚の補剛板46を垂設したが、これに代えて図8に示すように、対向端部5,6に設置された状態において角折れ防止用鋼板43の上面となる側に帯状をなす4枚の補剛板81を並列配置し該補剛板を角折れ防止用鋼板43の上面側に立設してもよい。
【0051】
図9は、変形例に係る高架橋用角折れ防止装置94を示したものであり、装置本体41及び該装置本体に付属するアンカーボルト92からなる。
【0052】
ここで、アンカーボルト92は、通常のアンカーボルトとは異なり、その基端に円形の定着板93を設けてあり、定着板93は、鋼製ボックス体44の底部との間に拡がる無収縮モルタルに圧縮ストラットを形成することで、ナットに代わって引抜き力に抵抗するようになっている。
【0053】
高架橋用角折れ防止装置94を対向端部5,6に跨設するには、鋼製ボックス体44,44の底部に形成されたボルト孔45にアンカーボルト92を先行して挿通し、次いで、上述の実施形態と同様の手順に従い、その先端側を対向端部5,6のそれぞれの床版コンクリート9,9に定着する。
【0054】
次に、鋼製ボックス体44,44の内側に無収縮モルタル61を充填することで、該無収縮モルタルにアンカーボルト92の基端側を定着する。
【0055】
本変形例においては、アンカーボルト92に引抜き方向の力が作用した場合、図10に示すように、定着板93と鋼製ボックス体44の底部との間の無収縮モルタル61に円錐台状の圧縮ストラットが形成され、かかる圧縮ストラットが引抜き方向の力に抵抗する。
【0056】
そのため、ナットを用いることなく、ナットと同等かそれ以上の力で鋼製ボックス体44を床版コンクリート9に固定することができる。加えて、上述した圧縮ストラットは、定着板93の下面から斜め下方に向けて形成されるため、鋼製ボックス体44の底部に作用する圧縮応力の面積が拡がる。
【0057】
したがって、ボルト孔45の径を大きくしてアンカーボルト92の挿通可能範囲を拡げることが可能となり、床版コンクリート9に埋設された鉄筋とアンカーボルト92との干渉を未然に回避することができる。
【0058】
また、本実施形態では、門型状に形成した補剛板46を採用したが、水止めコンクリート62,62との干渉を防ぐ形状としては、かかる門型状に限定されるものではなく、例えばアーチ状に形成してもかまわない。
【符号の説明】
【0059】
2b ラーメン高架橋(高架橋構造物)
3 調整桁(高架橋構造物)
4,64 高架橋用角折れ防止装置
5,6 対向端部
9 床版コンクリート
42,92 アンカーボルト
43 角折れ防止用鋼板
44 鋼製ボックス体
45 ボルト孔
46,81 補剛板
61 無収縮モルタル(固化材)
62 水止めコンクリート
93 定着板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋軸方向に沿って隣接配置された高架橋構造物の対向端部を跨ぐように該対向端部に配置される高架橋用角折れ防止装置において、
前記対向端部のそれぞれの床版コンクリートに載置される鋼製ボックス体と、該各鋼製ボックス体を相互に連結する角折れ防止用鋼板と、前記各鋼製ボックス体の底部に形成されたボルト孔にそれぞれ挿通されるアンカーボルトとからなり、前記各鋼製ボックス体は、それらの内側に固化材を充填することにより該固化材に前記アンカーボルトの基端側を定着できるようになっていることを特徴とする高架橋用角折れ防止装置。
【請求項2】
前記アンカーボルトの基端近傍に定着板を設けた請求項1記載の高架橋用角折れ防止装置。
【請求項3】
前記角折れ防止用鋼板を補剛する補剛板を該角折れ防止用鋼板に立設した請求項1又は請求項2記載の高架橋用角折れ防止装置。
【請求項4】
前記角折れ防止用鋼板を前記鋼製ボックス体の底部と平行に配置するとともに、前記対向端部に配置された状態において前記補剛板が前記角折れ防止用鋼板の上側に位置するように前記補剛板を前記角折れ防止用鋼板の上面に立設した請求項3記載の高架橋用角折れ防止装置。
【請求項5】
前記角折れ防止用鋼板を前記鋼製ボックス体の底部と平行に配置するとともに、前記対向端部に配置された状態において前記補剛板が前記床版コンクリートの構造物境界に設けられた水止めコンクリートを跨ぐことができるように該補剛板を門型状又はアーチ状に形成して前記角折れ防止用鋼板の下面に垂設した請求項3記載の高架橋用角折れ防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−17192(P2011−17192A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162720(P2009−162720)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【Fターム(参考)】