高次モードファイバの利用により生成された連続スペクトル光の圧縮
【課題】高出力、低ノイズの単一の光源から出射される連続スペクトル光をスペクトルスライスし、発生した複数の異なる超短波長信号をfsレベルまで圧縮する全ファイバ構成パルス圧縮技術を提供する。
【解決手段】本願発明は、所定の波長範囲の少なくとも一部に所定の分散を示す高次モード(HOM)ファイバを含み、連続スペクトル光信号源によって導入される分散を補償するようHOMファイバの分散を選択する。連続スペクトル光を従来型の連続スペクトル光源に関連する基底モードからパルス圧縮を実行するために用いるHOMファイバによりサポートされる高次モードに変換すべく入力モード変換器を用いる。連続スペクトル信号の帯域幅をモード変換器の効果的な変換範囲とHOMファイバの所望の分散特性の両方に関わる帯域幅に限定すべくバンドパスフィルタを用いる。
【解決手段】本願発明は、所定の波長範囲の少なくとも一部に所定の分散を示す高次モード(HOM)ファイバを含み、連続スペクトル光信号源によって導入される分散を補償するようHOMファイバの分散を選択する。連続スペクトル光を従来型の連続スペクトル光源に関連する基底モードからパルス圧縮を実行するために用いるHOMファイバによりサポートされる高次モードに変換すべく入力モード変換器を用いる。連続スペクトル信号の帯域幅をモード変換器の効果的な変換範囲とHOMファイバの所望の分散特性の両方に関わる帯域幅に限定すべくバンドパスフィルタを用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続スペクトル光源(continuum generation source)から圧縮された出力パルスの生成、より詳しくは、蓄積されたスペクトル位相を除去し、出力を超短光パルス(例えば、フェムト秒(fs)、一般にサブピコ秒)に圧縮するためにファイバベースの連続スペクトル光源と連結された一つ以上の高次モード(HOM)ファイバ部分の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ分野の用途として、高出力、低ノイズの広帯域光源(連続スペクトル光源)に特に関心が持たれている。例えば、目下「スペクトルスライス」、つまり複数の異なる波長の信号(例えば、波長分割多重(WDM)信号)を発生させるために単一の光源を使用するということに向けた努力がなされている。したがって、そのような使い方は多数のレーザを単一の光源に置き換える潜在的な可能性を有している。他の用途としては、これに限られるものではないが、周波数測定、デバイスの特性付け、特殊ファイバの分散測定、および回折格子の伝送特性の測定を含む。これらいろいろな診断ツールのすべては、複数の異なる信号波長を生成することができる連続スペクトル光源の可用性によって大きく強化される。
【0003】
一般に、連続スペクトル光(continuum)の生成は光ファイバ内、導波路あるいは他のマイクロストラクチャーへの比較的高出力のレーザパルスの射出を含み、その場合レーザパルス列はファイバ内の非線形相互作用により顕著なスペクトルの広がりを呈する。通常、km長のファイバ中で持続時間がピコ秒(10−12秒)のオーダーの光パルスを用いて行われる今日の連続スペクトル光生成の努力は不運にも生成プロセスにおいてコヒーレンス性の劣化を示している。
【0004】
分散勾配が低く、かつ有効断面積が小さい、これ以降「高非線形ファイバ」、あるいはHNLFとして参照される、比較的新しい形式のゲルマニウムがドープされたシリカファイバが最近開発されている。HNLFの非線形係数はコアの小さなマイクロストラクチャーファイバで得られるものよりまだ小さいが、HNLFの小さな有効断面積により、係数は標準の伝送ファイバのそれよりも数倍大きい。HNLFおよびフェムト秒ファイバレーザを使う連続スペクトル光の生成はさまざまな情報源から報告されている。あるひとつの従来技術による構成は互いに融着接続された数多くの個別の部分から成るHNLFで形成されるHNLFベースの連続スペクトル光源を利用していて、それぞれは光源の波長において異なる分散値、および5から15平方ミクロンの間の有効断面積を有する。他の形式のHNLFベースの連続スペクトル光源はHNLFの分散値を修正するために生成後に処理を行い、生成された連続スペクトル光(generated continuum)のスペクトルの境界をさらに広げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,775,447号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スペクトルスライスのある特別な用途においては、所望の「超短」(例えば、fs、あるいはサブピコ秒)出力パルス幅を達成するために連続スペクトル光生成プロセスの間に蓄積されるスペクトルの位相が除去されねばならない。より詳しくは、HNLFを経る信号伝播の間に生成される負の分散を無効にするために分散補償が必要とされる。過去においては、この分散補償は一対のプリズムのようなバルクの光構成部品を用いることによって達成されている。バルクの光学要素を必要とせず、「全ファイバ」による解法を備えることが好ましい。しかし、短波長(つまり、約1300nm−1400nmにおけるHNLFのゼロ分散波長よりも短い波長)において、HNLFを出る連続スペクトル光は負にチャープされていて、再圧縮のために正分散ファイバを必要とする。短波長においてファイバ中に正分散を達成することは難しく、通常、マイクロストラクチャーファイバ、あるいはフォトニックバンドギャップファイバを必要とする。しかし、これらのファイバは両方とも比較的小さい、5−10μm2のオーダーの有効断面積Aeffを有するので、結果として非線形性の悪影響を受ける。
【0007】
したがって、連続スペクトル光源からスペクトル的にスライスされた要素をfsレベルにまで圧縮するための全ファイバ構成の技術に対する必要性がいまだにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来技術にいまだにある必要性が本発明によって対処され、それは連続スペクトル光源から圧縮された出力パルスの生成、より詳しくは蓄積されたスペクトル位相を除去し、出力を超短(例えば、fs)パルスに圧縮するために連続スペクトル光源と連結されたひとつ、あるいはそれ以上の高次モード(HOM)ファイバ部分の利用に関する。
【0009】
本発明によれば、HOMファイバが連続スペクトル光源の出力部に配されて、蓄積されたスペクトル位相の少なくとも一部を除去する(つまり、連続スペクトル光の生成の間に蓄積される位相の特性に依存して符号が正、あるいは負である分散補償を行なう)ために使用され、それによって所望のパルス圧縮を生じる。HOMファイバは、例えば所定の波長範囲にわたる正分散領域で、波長の関数として所定の分散特性(大きさ、および勾配)を示す。(長周期グレーティング(LPG)などの)入力モード変換器がHOMファイバの入力部に配され、伝播するモードを、連続スペクトル光出力部における基底モードLP01からHOMファイバによりサポートされる(LP02などの)高次モードに変換する。また、入力モード変換器は強いモード変換をもたらす所定の動作帯域幅を有する。信号経路に沿ってバンドパスフィルタが配され、HOMファイバの所望の分散特性、および強いモード変換ができる入力モード変換器領域の両方に関わる好ましい範囲を超える波長成分を除去することによって、分散補償され、圧縮された出力パルスをもたらす。HOMファイバの長さは、光位相、およびプリチャープの線形、および非線形光源の両方を補償するために必要とされる分散補償の量によって決定される。
【0010】
本発明の実施例によれば、バンドパスフィルタは連続スペクトル光源の出力部に配され、入力モード変換器に帯域幅が限定された連続スペクトル信号を渡す。この場合、入力変換器、およびHOMファイバの好ましい動作領域を超える連続スペクトル光出力のスペクトル領域はさらに信号経路に沿って伝播することを阻止される。
【0011】
他の実施例において、バンドパスフィルタがHOMファイバの出力部に配され、分散補償されなかった残りの波長成分を出力パルスの流れから除去するために使われて、分散補償され、圧縮された出力パルスだけをもたらす。
【0012】
本発明のさらに別の実施例において、第二のモード変換器(例えば、LPG)がHOMファイバの出力部に配されて、必要であれば圧縮されたパルスのモードを再変換して基底のLP01に戻す。この場合においては、バンドパスフィルタは第二のモード変換器の使用可能な帯域幅も考慮に入れる。
【0013】
本発明の他の更なる実施例が以下の一連の議論の間に、かつ付属する図面の参照によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるHOMファイバベースのパルス圧縮を含む実例的な連続スペクトル光源を図解する。
【図2】非線形光システムからの実例的な連続スペクトル光出力のグラフである。
【図3】HOMファイバの実例的な部分の分散特性のグラフであって、関心のある波長範囲に沿う正分散の領域を示す。
【図4】HOMファイバにサポートされるLP02モード光信号の像である。
【図5】本発明の他の実施例を示し、図1の実施例に出力モード変換器を導入している。
【図6】本発明のさらに別の実施例を示し、非線形光システムの出力部に直列に配される一対の(異なる帯域幅の)バンドパスフィルタを利用している。
【図7】バンドパスフィルタがHOMファイバの出力部に配される本発明の実施例を示す。
【図8】図7の実施例の変形を示し、HOMファイバとバンドパスフィルタとの間に出力モード変換器を導入している。
【図9】本発明の特別な構成を示し、入力、および出力モード変換器として一対の長周期グレーティング(LPG)を用いている。
【図10】図5のシステムに沿った波長1550nmにおけるフェムト秒パルスから生成される連続スペクトル光に得られる伝送スペクトルをプロットしたグラフである。
【図11a】本発明のHOMモジュール内の圧縮前の自己相関信号のプロットを含む図である。
【図11b】本発明のHOMモジュール内の圧縮後の自己相関信号のプロットを含む図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明により連続スペクトル光源の出力部においてパルス圧縮をもたらす実例的な構成を図解している。この特定の実施例において、実例的な連続スペクトル光源は、非線形光システム12に結合されたフェムト秒(fs)エルビウムレーザパルス源10を含む。実例的なレーザパルス源は、例えば、繰返し率33MHz、平均パワー7mW、半値全幅(FWHM)パルス幅188fsで1580nmの入力波長においてパルスを生成する。実例的な非線形光システムは高非線形ファイバ(HNLF)部分から成る。この図には示されていないが、システム12に入射する信号のパワーを増強するために、レーザ10と非線形光システム12との間の信号経路にファイバ増幅器が含まれてもよい。
【0016】
光システム12の非線形特性は、伝播するパルスに程度が異なる色分散をもたらし、その結果、例えば、850nmから2.7μm以上の波長範囲に広がる連続スペクトル光出力を生成することが知られている。図2はパルス源10と非線形光システム12との組合せによって生成される実例的な連続スペクトル光を図解している。この実例的な全ファイバ連続スペクトル光源の完全な説明が、この出願の譲受人に譲渡され、参照のためここに引用される、2004年8月10日にJ.W.Nicholson他に交付された米国特許6,775,447に見出される。
【0017】
上に述べたように、図2に示される連続スペクトル光はその後スペクトルに沿って異なる波長で複数の超短パルスに「スライス」される。これらの波長スライスは高密度波長分割多重(DWDM)などの用途における使用に適していて、単一のレーザ源から複数の異なる波長源を生成することが可能である。また、スライスされたパルスは元の発生パルスと一時的に同期するので、連続スペクトル光のスペクトルスライスは好都合でもある。しかし、超短パルス幅を達成するために、連続スペクトル光生成の間に非線形光システム12に沿って蓄積されるスペクトルの位相(正または負の分散)が除去(あるいは少なくとも部分的に除去)されねばならない。ps/nm−kmとして表される分散は入力、および出力信号の間に位相のずれとして測定されるものである。分散勾配、つまり、光信号の経路に沿う分散の変化の割合、は非線形光システム12の出力部に存在する信号の特性に影響を与える他の要因である。分散、および分散勾配のいずれもが連続スペクトル光生成に使われる非線形光システムのある特定のパラメータによって特長付けられる。
【0018】
本発明により、一片の高次モード(HOM)ファイバ20が生成された連続スペクトル光に分散を導入するために使われ、それは非線形光システム12の出力部に存在する分散、少なくともその一部、を補償するために所望する度合いの分散(および関連する分散勾配)をもたらすように選択される長さLのHOMファイバ20である。大多数で、かつ目下興味のある波長の場合、生成される連続スペクトル光は初期段階で正常(負)分散を示すので、HOMファイバ20は異常(正)分散をもたらすように構成される。非線形光システム12の出力部に存在する分散の勾配はしばしば無視されるパラメータであるが、信号がシステム12を経て伝播するときの位相の展開に関する情報をもたらす。したがって、HOMファイバ20の特性は入力としてそれに加えられる信号に存在する分散勾配に本質的に適合するように設計される。
【0019】
HOMファイバは、ある波長範囲において高い、正分散(例えば、1080nmにおける+55ps/nm−kmの分散D)を示し、従来のパルス圧縮技術により得られるAeffよりも数倍大きい有効断面積(Aeff)(一般に、HOMファイバのAeffは従来技術に対する5−10μm2に比較して、40−50μm2のオーダーである)を有するとして知られている。ある状況においては、連続スペクトル光は異常分散を示すので、HOMファイバ部分は超短パルスが生成されるように十分な量の負分散を導入するように構成されるということが理解されるべきである。
【0020】
図3は、正分散の生成に関連する波長範囲(λ1−λ2)(つまり、約900nmから1200nm)を示す陰をつけた部分Aで、HOMファイバの実例的な部分によって示される分散を描いている。正分散の特定の領域はHOMファイバの特性パラメータと関連しているので、正分散の波長範囲を生成される連続スペクトル光の波長範囲と互いに関連するように調整されてもよい。
【0021】
図4は、実例的なHOMファイバ内の高次モード信号(この場合、LP02モード)として伝播する光信号の写真である。この実例的なファイバに対して、有効断面積(Aeff)は動作波長1080nmについて約44μm2であると測定された。本発明の目的に対して、HOMファイバのこれらの両方の特性(所望の波長範囲における正分散、および比較的大きな有効断面積)はパルス圧縮構成が達成され、連続スペクトル光源と共に使用されることを可能にする。
【0022】
非線形光システム12からの出力連続スペクトル光は基底LP01モード信号として伝播されるので、伝播する基底LP01モードをHOMファイバ20によってサポートされる高次モードに遷移させるためにモード変換器が本発明の構成に必要とされる。図1において、伝播する信号のエネルギーを基底モードからHOMファイバ20に関わる高次モード(例えば、LP02モード)に移すために、入力モード変換器24が非線形光システム12の出力部とHOM20の入力部との間に配される。入力モード変換器24は図1で(λa−λb)として示される、強いモード変換が起こる波長範囲をも示す。図1にはHOMファイバ20と入力モード変換器24の組合せがHOMモジュール26を形成するとして示される。
【0023】
図2の連続スペクトル光のスペクトルをHOMファイバ20の分散特性と比較すると、HOMファイバ20が正分散をもたらす波長範囲(λ1−λ2)(図2において範囲Bとして示される波長範囲(λ1−λ2))は、生成される連続スペクトル光の波長範囲よりも小さい。さらに、入力モード変換器24の中でLP02モードに結合されず、LP01モードに留まっている光は伝播し続け、HOMファイバ20を通過するにつれて(好ましくない)分散蓄積の増加を示す。もっとも強いモード変換が生じる波長範囲(λa−λb)が図2において範囲Cとして示される。示される値は実例的な例であり、現実に、λaはλ1よりも小さく、かつ/あるいはλbはλ2よりも大きい場合がある。
【0024】
したがって、本発明により、バンドパスフィルタ(BPF)22がパルス圧縮装置に含まれ、HOMファイバ20の正分散特性に関わる波長範囲(λ1−λ2)、および入力モード変換器の動作帯域幅(λa−λb)よりも大きくない帯域幅(λi−λii)を有するように選択される。この関係は以下のように表される。
λi≧λ1、λa、および
λii≦λ2、λb
BPF22の実例的な通過帯域(λi−λii)が図2に陰をつけた部分Dとして示される。明らかに、より狭い帯域幅が使われてもよいが、しかしより狭い帯域幅は出力部により長い圧縮パルスを出す。バンドパスフィルタ22は、グレーティングフィルタ、バルクの光デバイス、あるいはそれに類するものなど任意の適当な形式のフィルタを含む場合がある。
【0025】
図1の特定の実施例においては、BPF22は非線形光システム12と入力モード変換器24との間に配される。したがって、BPF22は入力モード変換器24への入力として加えられる連続スペクトル光の信号の波長範囲を制限し、HOMファイバ20内へ連続して伝播する不要なLP01モードの光を排除する。また、BPF22の帯域幅はHOM20内の正分散の波長領域に一致するように選択されるので、HOM20に加えられる信号はパルス圧縮が生じるときに分散補償される。
【0026】
図5は、図1の構成を用いる本発明の他の実施例を示し、この場合、出力モード変換器28がHOMモジュール26に含まれ、HOMファイバ20の出力部に配される。第二のモード変換器が含まれることにより、圧縮された出力パルスの基底モード(LP01)信号への再変換をもたらす。出力モード変換器28は波長範囲(λa2−λb2)にわたって強いモード変換を表すとして示され、それは入力モード変換器24の波長範囲とは異なる場合がある。出力モード変換器が採用される状況においては、好ましい通過帯域範囲を選択するときに、このデバイスの特性も考慮に入れて、BPF22が構成されることが好ましい。
【0027】
図6は、非線形光システム12とHOMファイバ20との間に直列に配される一対のバンドパスフィルタを利用する本発明の特定の実施例を示す。特に、この実施例は、例えば1050−1500nmの通過帯域(λi1−λii1)を示す第一のバンドパスフィルタ、および例えば1050−1080nmの通過帯域(λi2−λii2)を示す第二のより狭いバンドパスフィルタ32を含むとして示される。バンドパスフィルタ30、および32は非線形光システム12の出力部とモード変換器24への入力部との間に直列に配される。したがって、入力モード変換器24はバンドパスフィルタ32のより狭い1050−1080nm帯域幅内で強いモード変換をもたらすように構成される。これら特定のフィルタの通過帯域の値、また、、(単一のフィルタ、あるいはより多数のフィルタの代わりに)一対のフィルタの使用は、単に実例的な例であり、さまざまな他のインライン型フィルタ構成がHOMパルス圧縮モジュールに加えられる信号の帯域幅を適切に限定するために使われてよいということが理解されるべきである。
【0028】
図7は本発明の他の実施例を示し、この場合、BPF22はHOMファイバ20の出力部に配される。なんら先にフィルタを通すことない場合、HOMファイバ20の出力パルスは、正分散に関わる分散補償された圧縮パルス(つまり、波長範囲(λ1−λ2)内)、および、さらなる負分散を経験した、おそらく基底モード信号である剰余信号の両方を含む。この場合、BPF22は信号の剰余部分の更なる伝播を阻止する通過帯域を有し、分散補償され、圧縮されたパルスだけが装置を出て行けるように選択される。図5の実施例のように、さらに図7の実施例は、出力モード変換器28の先に配されるBPF22を有する出力モード変換器を含むように構成されてよい。図8は、出力モード変換器28の先に位置するBPF22を有する、入力モード変換器24、および出力モード変換器28の両方を利用する本発明の実例的なパルス圧縮構成を図解している。この場合、BPF22は、強いモード変換が生じる出力モード変換器28の帯域幅(λa2−λb2)も考慮に入れる帯域幅を示す。
【0029】
図9は、図5に図解される本発明の実施例の特定な構成を示す。この構成において、入力、および出力モード変換器24、28は長周期グレーティング(LPG)の形を取る。モード変換器としてLPGを使用することは、LPGが光ファイバ部分に直接的に形成され、著しい信号損失をもたらすことなくHOMファイバ12の終端に溶融接続されるために本発明の好ましい実施例であると考えられる。
【0030】
図10は、図9の実施例について非線形光システム12の出力部からHOMモジュール26の出力部へのパルス圧縮の生成をグラフ化している。プロットIは非線形光システム12の出力部におけるスペクトルを図解している。プロットIIはフィルタ30および32を使用することにより生成される狭いスペクトルである。最後に、プロットIIIはHOMモジュール26の出力部におけるスペクトルを示す。
【0031】
フィルタを通した連続スペクトル光の自己相関もHOMモジュール26の入力、および出力部において測定され、その結果が図11に示される。詳しくは、図11(a)はHOMモジュール26への入力部における自己相関を図解し、図11(b)はHOMモジュール26の出力部における自己相関を図解する。図11(a)のプロットで、時間目盛はピコ秒(ps)で測定されるとして示され、自己相関は幅が数ピコ秒であると示される。それに対して、図11(b)の自己相関パルスの時間目盛はフェムト秒(fs)で測定され、幅が約98fsであるとして示されて、それは66fsパルスFWHMの値に一致する。これらの結果は分散値Dが+55ps/nm−km、かつ有効断面積Aeffが44μm2であるHOMファイバ20と関連している。他の値の分散、および有効断面積が使われてもよいが、どのような場合でも本発明にしたがい形成されるHOMモジュールはいろいろな形式の連続スペクトル光源に対してパルス圧縮を実行することが出来るということが理解されるべきである。
【0032】
このように述べられた発明から、発明の実施例は多くのやり方で変えられてよい。そのような変更は本発明の精神、および範囲から逸脱するものであると見なされるべきではなく、当業者に明らかであるすべてのそのような修正は以下の請求の範囲内に含まれるものであると意図されるものである。
【符号の説明】
【0033】
10 フェムト秒(fs)エルビウムレーザパルス源
12 非線形光システム
20 HOMファイバ
22 バンドパスフィルタ(BPF)
24 入力モード変換器
26 HOMモジュール
28 出力モード変換器
30、32 バンドパスフィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は連続スペクトル光源(continuum generation source)から圧縮された出力パルスの生成、より詳しくは、蓄積されたスペクトル位相を除去し、出力を超短光パルス(例えば、フェムト秒(fs)、一般にサブピコ秒)に圧縮するためにファイバベースの連続スペクトル光源と連結された一つ以上の高次モード(HOM)ファイバ部分の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ分野の用途として、高出力、低ノイズの広帯域光源(連続スペクトル光源)に特に関心が持たれている。例えば、目下「スペクトルスライス」、つまり複数の異なる波長の信号(例えば、波長分割多重(WDM)信号)を発生させるために単一の光源を使用するということに向けた努力がなされている。したがって、そのような使い方は多数のレーザを単一の光源に置き換える潜在的な可能性を有している。他の用途としては、これに限られるものではないが、周波数測定、デバイスの特性付け、特殊ファイバの分散測定、および回折格子の伝送特性の測定を含む。これらいろいろな診断ツールのすべては、複数の異なる信号波長を生成することができる連続スペクトル光源の可用性によって大きく強化される。
【0003】
一般に、連続スペクトル光(continuum)の生成は光ファイバ内、導波路あるいは他のマイクロストラクチャーへの比較的高出力のレーザパルスの射出を含み、その場合レーザパルス列はファイバ内の非線形相互作用により顕著なスペクトルの広がりを呈する。通常、km長のファイバ中で持続時間がピコ秒(10−12秒)のオーダーの光パルスを用いて行われる今日の連続スペクトル光生成の努力は不運にも生成プロセスにおいてコヒーレンス性の劣化を示している。
【0004】
分散勾配が低く、かつ有効断面積が小さい、これ以降「高非線形ファイバ」、あるいはHNLFとして参照される、比較的新しい形式のゲルマニウムがドープされたシリカファイバが最近開発されている。HNLFの非線形係数はコアの小さなマイクロストラクチャーファイバで得られるものよりまだ小さいが、HNLFの小さな有効断面積により、係数は標準の伝送ファイバのそれよりも数倍大きい。HNLFおよびフェムト秒ファイバレーザを使う連続スペクトル光の生成はさまざまな情報源から報告されている。あるひとつの従来技術による構成は互いに融着接続された数多くの個別の部分から成るHNLFで形成されるHNLFベースの連続スペクトル光源を利用していて、それぞれは光源の波長において異なる分散値、および5から15平方ミクロンの間の有効断面積を有する。他の形式のHNLFベースの連続スペクトル光源はHNLFの分散値を修正するために生成後に処理を行い、生成された連続スペクトル光(generated continuum)のスペクトルの境界をさらに広げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,775,447号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スペクトルスライスのある特別な用途においては、所望の「超短」(例えば、fs、あるいはサブピコ秒)出力パルス幅を達成するために連続スペクトル光生成プロセスの間に蓄積されるスペクトルの位相が除去されねばならない。より詳しくは、HNLFを経る信号伝播の間に生成される負の分散を無効にするために分散補償が必要とされる。過去においては、この分散補償は一対のプリズムのようなバルクの光構成部品を用いることによって達成されている。バルクの光学要素を必要とせず、「全ファイバ」による解法を備えることが好ましい。しかし、短波長(つまり、約1300nm−1400nmにおけるHNLFのゼロ分散波長よりも短い波長)において、HNLFを出る連続スペクトル光は負にチャープされていて、再圧縮のために正分散ファイバを必要とする。短波長においてファイバ中に正分散を達成することは難しく、通常、マイクロストラクチャーファイバ、あるいはフォトニックバンドギャップファイバを必要とする。しかし、これらのファイバは両方とも比較的小さい、5−10μm2のオーダーの有効断面積Aeffを有するので、結果として非線形性の悪影響を受ける。
【0007】
したがって、連続スペクトル光源からスペクトル的にスライスされた要素をfsレベルにまで圧縮するための全ファイバ構成の技術に対する必要性がいまだにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来技術にいまだにある必要性が本発明によって対処され、それは連続スペクトル光源から圧縮された出力パルスの生成、より詳しくは蓄積されたスペクトル位相を除去し、出力を超短(例えば、fs)パルスに圧縮するために連続スペクトル光源と連結されたひとつ、あるいはそれ以上の高次モード(HOM)ファイバ部分の利用に関する。
【0009】
本発明によれば、HOMファイバが連続スペクトル光源の出力部に配されて、蓄積されたスペクトル位相の少なくとも一部を除去する(つまり、連続スペクトル光の生成の間に蓄積される位相の特性に依存して符号が正、あるいは負である分散補償を行なう)ために使用され、それによって所望のパルス圧縮を生じる。HOMファイバは、例えば所定の波長範囲にわたる正分散領域で、波長の関数として所定の分散特性(大きさ、および勾配)を示す。(長周期グレーティング(LPG)などの)入力モード変換器がHOMファイバの入力部に配され、伝播するモードを、連続スペクトル光出力部における基底モードLP01からHOMファイバによりサポートされる(LP02などの)高次モードに変換する。また、入力モード変換器は強いモード変換をもたらす所定の動作帯域幅を有する。信号経路に沿ってバンドパスフィルタが配され、HOMファイバの所望の分散特性、および強いモード変換ができる入力モード変換器領域の両方に関わる好ましい範囲を超える波長成分を除去することによって、分散補償され、圧縮された出力パルスをもたらす。HOMファイバの長さは、光位相、およびプリチャープの線形、および非線形光源の両方を補償するために必要とされる分散補償の量によって決定される。
【0010】
本発明の実施例によれば、バンドパスフィルタは連続スペクトル光源の出力部に配され、入力モード変換器に帯域幅が限定された連続スペクトル信号を渡す。この場合、入力変換器、およびHOMファイバの好ましい動作領域を超える連続スペクトル光出力のスペクトル領域はさらに信号経路に沿って伝播することを阻止される。
【0011】
他の実施例において、バンドパスフィルタがHOMファイバの出力部に配され、分散補償されなかった残りの波長成分を出力パルスの流れから除去するために使われて、分散補償され、圧縮された出力パルスだけをもたらす。
【0012】
本発明のさらに別の実施例において、第二のモード変換器(例えば、LPG)がHOMファイバの出力部に配されて、必要であれば圧縮されたパルスのモードを再変換して基底のLP01に戻す。この場合においては、バンドパスフィルタは第二のモード変換器の使用可能な帯域幅も考慮に入れる。
【0013】
本発明の他の更なる実施例が以下の一連の議論の間に、かつ付属する図面の参照によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるHOMファイバベースのパルス圧縮を含む実例的な連続スペクトル光源を図解する。
【図2】非線形光システムからの実例的な連続スペクトル光出力のグラフである。
【図3】HOMファイバの実例的な部分の分散特性のグラフであって、関心のある波長範囲に沿う正分散の領域を示す。
【図4】HOMファイバにサポートされるLP02モード光信号の像である。
【図5】本発明の他の実施例を示し、図1の実施例に出力モード変換器を導入している。
【図6】本発明のさらに別の実施例を示し、非線形光システムの出力部に直列に配される一対の(異なる帯域幅の)バンドパスフィルタを利用している。
【図7】バンドパスフィルタがHOMファイバの出力部に配される本発明の実施例を示す。
【図8】図7の実施例の変形を示し、HOMファイバとバンドパスフィルタとの間に出力モード変換器を導入している。
【図9】本発明の特別な構成を示し、入力、および出力モード変換器として一対の長周期グレーティング(LPG)を用いている。
【図10】図5のシステムに沿った波長1550nmにおけるフェムト秒パルスから生成される連続スペクトル光に得られる伝送スペクトルをプロットしたグラフである。
【図11a】本発明のHOMモジュール内の圧縮前の自己相関信号のプロットを含む図である。
【図11b】本発明のHOMモジュール内の圧縮後の自己相関信号のプロットを含む図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明により連続スペクトル光源の出力部においてパルス圧縮をもたらす実例的な構成を図解している。この特定の実施例において、実例的な連続スペクトル光源は、非線形光システム12に結合されたフェムト秒(fs)エルビウムレーザパルス源10を含む。実例的なレーザパルス源は、例えば、繰返し率33MHz、平均パワー7mW、半値全幅(FWHM)パルス幅188fsで1580nmの入力波長においてパルスを生成する。実例的な非線形光システムは高非線形ファイバ(HNLF)部分から成る。この図には示されていないが、システム12に入射する信号のパワーを増強するために、レーザ10と非線形光システム12との間の信号経路にファイバ増幅器が含まれてもよい。
【0016】
光システム12の非線形特性は、伝播するパルスに程度が異なる色分散をもたらし、その結果、例えば、850nmから2.7μm以上の波長範囲に広がる連続スペクトル光出力を生成することが知られている。図2はパルス源10と非線形光システム12との組合せによって生成される実例的な連続スペクトル光を図解している。この実例的な全ファイバ連続スペクトル光源の完全な説明が、この出願の譲受人に譲渡され、参照のためここに引用される、2004年8月10日にJ.W.Nicholson他に交付された米国特許6,775,447に見出される。
【0017】
上に述べたように、図2に示される連続スペクトル光はその後スペクトルに沿って異なる波長で複数の超短パルスに「スライス」される。これらの波長スライスは高密度波長分割多重(DWDM)などの用途における使用に適していて、単一のレーザ源から複数の異なる波長源を生成することが可能である。また、スライスされたパルスは元の発生パルスと一時的に同期するので、連続スペクトル光のスペクトルスライスは好都合でもある。しかし、超短パルス幅を達成するために、連続スペクトル光生成の間に非線形光システム12に沿って蓄積されるスペクトルの位相(正または負の分散)が除去(あるいは少なくとも部分的に除去)されねばならない。ps/nm−kmとして表される分散は入力、および出力信号の間に位相のずれとして測定されるものである。分散勾配、つまり、光信号の経路に沿う分散の変化の割合、は非線形光システム12の出力部に存在する信号の特性に影響を与える他の要因である。分散、および分散勾配のいずれもが連続スペクトル光生成に使われる非線形光システムのある特定のパラメータによって特長付けられる。
【0018】
本発明により、一片の高次モード(HOM)ファイバ20が生成された連続スペクトル光に分散を導入するために使われ、それは非線形光システム12の出力部に存在する分散、少なくともその一部、を補償するために所望する度合いの分散(および関連する分散勾配)をもたらすように選択される長さLのHOMファイバ20である。大多数で、かつ目下興味のある波長の場合、生成される連続スペクトル光は初期段階で正常(負)分散を示すので、HOMファイバ20は異常(正)分散をもたらすように構成される。非線形光システム12の出力部に存在する分散の勾配はしばしば無視されるパラメータであるが、信号がシステム12を経て伝播するときの位相の展開に関する情報をもたらす。したがって、HOMファイバ20の特性は入力としてそれに加えられる信号に存在する分散勾配に本質的に適合するように設計される。
【0019】
HOMファイバは、ある波長範囲において高い、正分散(例えば、1080nmにおける+55ps/nm−kmの分散D)を示し、従来のパルス圧縮技術により得られるAeffよりも数倍大きい有効断面積(Aeff)(一般に、HOMファイバのAeffは従来技術に対する5−10μm2に比較して、40−50μm2のオーダーである)を有するとして知られている。ある状況においては、連続スペクトル光は異常分散を示すので、HOMファイバ部分は超短パルスが生成されるように十分な量の負分散を導入するように構成されるということが理解されるべきである。
【0020】
図3は、正分散の生成に関連する波長範囲(λ1−λ2)(つまり、約900nmから1200nm)を示す陰をつけた部分Aで、HOMファイバの実例的な部分によって示される分散を描いている。正分散の特定の領域はHOMファイバの特性パラメータと関連しているので、正分散の波長範囲を生成される連続スペクトル光の波長範囲と互いに関連するように調整されてもよい。
【0021】
図4は、実例的なHOMファイバ内の高次モード信号(この場合、LP02モード)として伝播する光信号の写真である。この実例的なファイバに対して、有効断面積(Aeff)は動作波長1080nmについて約44μm2であると測定された。本発明の目的に対して、HOMファイバのこれらの両方の特性(所望の波長範囲における正分散、および比較的大きな有効断面積)はパルス圧縮構成が達成され、連続スペクトル光源と共に使用されることを可能にする。
【0022】
非線形光システム12からの出力連続スペクトル光は基底LP01モード信号として伝播されるので、伝播する基底LP01モードをHOMファイバ20によってサポートされる高次モードに遷移させるためにモード変換器が本発明の構成に必要とされる。図1において、伝播する信号のエネルギーを基底モードからHOMファイバ20に関わる高次モード(例えば、LP02モード)に移すために、入力モード変換器24が非線形光システム12の出力部とHOM20の入力部との間に配される。入力モード変換器24は図1で(λa−λb)として示される、強いモード変換が起こる波長範囲をも示す。図1にはHOMファイバ20と入力モード変換器24の組合せがHOMモジュール26を形成するとして示される。
【0023】
図2の連続スペクトル光のスペクトルをHOMファイバ20の分散特性と比較すると、HOMファイバ20が正分散をもたらす波長範囲(λ1−λ2)(図2において範囲Bとして示される波長範囲(λ1−λ2))は、生成される連続スペクトル光の波長範囲よりも小さい。さらに、入力モード変換器24の中でLP02モードに結合されず、LP01モードに留まっている光は伝播し続け、HOMファイバ20を通過するにつれて(好ましくない)分散蓄積の増加を示す。もっとも強いモード変換が生じる波長範囲(λa−λb)が図2において範囲Cとして示される。示される値は実例的な例であり、現実に、λaはλ1よりも小さく、かつ/あるいはλbはλ2よりも大きい場合がある。
【0024】
したがって、本発明により、バンドパスフィルタ(BPF)22がパルス圧縮装置に含まれ、HOMファイバ20の正分散特性に関わる波長範囲(λ1−λ2)、および入力モード変換器の動作帯域幅(λa−λb)よりも大きくない帯域幅(λi−λii)を有するように選択される。この関係は以下のように表される。
λi≧λ1、λa、および
λii≦λ2、λb
BPF22の実例的な通過帯域(λi−λii)が図2に陰をつけた部分Dとして示される。明らかに、より狭い帯域幅が使われてもよいが、しかしより狭い帯域幅は出力部により長い圧縮パルスを出す。バンドパスフィルタ22は、グレーティングフィルタ、バルクの光デバイス、あるいはそれに類するものなど任意の適当な形式のフィルタを含む場合がある。
【0025】
図1の特定の実施例においては、BPF22は非線形光システム12と入力モード変換器24との間に配される。したがって、BPF22は入力モード変換器24への入力として加えられる連続スペクトル光の信号の波長範囲を制限し、HOMファイバ20内へ連続して伝播する不要なLP01モードの光を排除する。また、BPF22の帯域幅はHOM20内の正分散の波長領域に一致するように選択されるので、HOM20に加えられる信号はパルス圧縮が生じるときに分散補償される。
【0026】
図5は、図1の構成を用いる本発明の他の実施例を示し、この場合、出力モード変換器28がHOMモジュール26に含まれ、HOMファイバ20の出力部に配される。第二のモード変換器が含まれることにより、圧縮された出力パルスの基底モード(LP01)信号への再変換をもたらす。出力モード変換器28は波長範囲(λa2−λb2)にわたって強いモード変換を表すとして示され、それは入力モード変換器24の波長範囲とは異なる場合がある。出力モード変換器が採用される状況においては、好ましい通過帯域範囲を選択するときに、このデバイスの特性も考慮に入れて、BPF22が構成されることが好ましい。
【0027】
図6は、非線形光システム12とHOMファイバ20との間に直列に配される一対のバンドパスフィルタを利用する本発明の特定の実施例を示す。特に、この実施例は、例えば1050−1500nmの通過帯域(λi1−λii1)を示す第一のバンドパスフィルタ、および例えば1050−1080nmの通過帯域(λi2−λii2)を示す第二のより狭いバンドパスフィルタ32を含むとして示される。バンドパスフィルタ30、および32は非線形光システム12の出力部とモード変換器24への入力部との間に直列に配される。したがって、入力モード変換器24はバンドパスフィルタ32のより狭い1050−1080nm帯域幅内で強いモード変換をもたらすように構成される。これら特定のフィルタの通過帯域の値、また、、(単一のフィルタ、あるいはより多数のフィルタの代わりに)一対のフィルタの使用は、単に実例的な例であり、さまざまな他のインライン型フィルタ構成がHOMパルス圧縮モジュールに加えられる信号の帯域幅を適切に限定するために使われてよいということが理解されるべきである。
【0028】
図7は本発明の他の実施例を示し、この場合、BPF22はHOMファイバ20の出力部に配される。なんら先にフィルタを通すことない場合、HOMファイバ20の出力パルスは、正分散に関わる分散補償された圧縮パルス(つまり、波長範囲(λ1−λ2)内)、および、さらなる負分散を経験した、おそらく基底モード信号である剰余信号の両方を含む。この場合、BPF22は信号の剰余部分の更なる伝播を阻止する通過帯域を有し、分散補償され、圧縮されたパルスだけが装置を出て行けるように選択される。図5の実施例のように、さらに図7の実施例は、出力モード変換器28の先に配されるBPF22を有する出力モード変換器を含むように構成されてよい。図8は、出力モード変換器28の先に位置するBPF22を有する、入力モード変換器24、および出力モード変換器28の両方を利用する本発明の実例的なパルス圧縮構成を図解している。この場合、BPF22は、強いモード変換が生じる出力モード変換器28の帯域幅(λa2−λb2)も考慮に入れる帯域幅を示す。
【0029】
図9は、図5に図解される本発明の実施例の特定な構成を示す。この構成において、入力、および出力モード変換器24、28は長周期グレーティング(LPG)の形を取る。モード変換器としてLPGを使用することは、LPGが光ファイバ部分に直接的に形成され、著しい信号損失をもたらすことなくHOMファイバ12の終端に溶融接続されるために本発明の好ましい実施例であると考えられる。
【0030】
図10は、図9の実施例について非線形光システム12の出力部からHOMモジュール26の出力部へのパルス圧縮の生成をグラフ化している。プロットIは非線形光システム12の出力部におけるスペクトルを図解している。プロットIIはフィルタ30および32を使用することにより生成される狭いスペクトルである。最後に、プロットIIIはHOMモジュール26の出力部におけるスペクトルを示す。
【0031】
フィルタを通した連続スペクトル光の自己相関もHOMモジュール26の入力、および出力部において測定され、その結果が図11に示される。詳しくは、図11(a)はHOMモジュール26への入力部における自己相関を図解し、図11(b)はHOMモジュール26の出力部における自己相関を図解する。図11(a)のプロットで、時間目盛はピコ秒(ps)で測定されるとして示され、自己相関は幅が数ピコ秒であると示される。それに対して、図11(b)の自己相関パルスの時間目盛はフェムト秒(fs)で測定され、幅が約98fsであるとして示されて、それは66fsパルスFWHMの値に一致する。これらの結果は分散値Dが+55ps/nm−km、かつ有効断面積Aeffが44μm2であるHOMファイバ20と関連している。他の値の分散、および有効断面積が使われてもよいが、どのような場合でも本発明にしたがい形成されるHOMモジュールはいろいろな形式の連続スペクトル光源に対してパルス圧縮を実行することが出来るということが理解されるべきである。
【0032】
このように述べられた発明から、発明の実施例は多くのやり方で変えられてよい。そのような変更は本発明の精神、および範囲から逸脱するものであると見なされるべきではなく、当業者に明らかであるすべてのそのような修正は以下の請求の範囲内に含まれるものであると意図されるものである。
【符号の説明】
【0033】
10 フェムト秒(fs)エルビウムレーザパルス源
12 非線形光システム
20 HOMファイバ
22 バンドパスフィルタ(BPF)
24 入力モード変換器
26 HOMモジュール
28 出力モード変換器
30、32 バンドパスフィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続スペクトル光信号のパルス圧縮を提供するシステムであって、
連続スペクトル光信号の少なくとも規定の帯域幅(λ1−λ2)にわたって予め定められた分散特性を示す高次モード(HOM)ファイバの部分を含み、前記予め定められた分散特性が、前記連続スペクトル光信号の中に存在する蓄積されたスペクトル位相の少なくとも一部を補償するように選択され、前記HOMファイバの部分はその出力部において圧縮された光パルスを生成し、さらに、
前記連続スペクトル光信号の基底モードを規定の変換器帯域幅(λa−λb)にわたって高次モード光信号に変換する、前記HOMファイバの部分への入力部に配置された入力モード変換器と、
分散補償され圧縮された光出力パルスを提供するために、前記連続スペクトル光信号を受信し且つ前記連続スペクトル光信号を帯域幅の範囲(λi−λii)に限定するバンドパスフィルタとを含み、前記λi及びλiiは、λi≧λ1、λa及びλii≦λ2、λbである、システム。
【請求項2】
前記バンドパスフィルタは複数のバンドパスフィルタをさらに含み、前記複数のバンドバスフィルタが、直列に配置され、その各々が異なる帯域幅を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
高次モードの圧縮された光パルスを基底モードの出力光信号に再変換する、前記HOMファイバの部分の出力部に結合された出力モード変換器をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記入力モード変換器が長周期グレーティング(LPG)を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記バンドパスフィルタが前記入力モード変換器の入力部の前に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記バンドパスフィルタが前記HOMファイバの部分の出力部に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記HOMファイバがLP02モード信号をサポートする、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記HOMファイバが高次モードをサポートし、前記入力モード変換器は基底モードと高次モードとの間の変換を提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
光信号を圧縮する方法であって、
a)連続スペクトル光信号を基底モードで生成するステップと、
b)前記連続スペクトル光信号を動作波長範囲(λa−λb)で高次モード信号に変換するステップと、
c)ステップb)の変換された信号を、規定の帯域幅(λ1−λ2)に沿って存在する蓄積されたスペクトル位相を補償するよう選択された分散と長さとを有する高次モード(HOM)ファイバの部分に射出するステップと、
d)第一の規定された波長λiよりも小さく、かつ第二の規定された波長λiiよりも大きい波長を除去するために前記光信号をフィルタリングするステップとを含み、前記λi及びλiiは、λi≧λ1、λa及びλii≦λ2、λbであり、さらに、
e)前記HOMファイバの部分の出力部に圧縮された光パルスを生成するステップとを含む、方法。
【請求項10】
前記ステップa)が、
i)入力光パルス列を生成するために第一の波長で動作する入力光パルス源を提供するステップと、
ii)入力光パルス列を高非線形ファイバ(HNLF)の部分に結合し、基底モードで連続スペクトル光信号を生成するステップとを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項1】
連続スペクトル光信号のパルス圧縮を提供するシステムであって、
連続スペクトル光信号の少なくとも規定の帯域幅(λ1−λ2)にわたって予め定められた分散特性を示す高次モード(HOM)ファイバの部分を含み、前記予め定められた分散特性が、前記連続スペクトル光信号の中に存在する蓄積されたスペクトル位相の少なくとも一部を補償するように選択され、前記HOMファイバの部分はその出力部において圧縮された光パルスを生成し、さらに、
前記連続スペクトル光信号の基底モードを規定の変換器帯域幅(λa−λb)にわたって高次モード光信号に変換する、前記HOMファイバの部分への入力部に配置された入力モード変換器と、
分散補償され圧縮された光出力パルスを提供するために、前記連続スペクトル光信号を受信し且つ前記連続スペクトル光信号を帯域幅の範囲(λi−λii)に限定するバンドパスフィルタとを含み、前記λi及びλiiは、λi≧λ1、λa及びλii≦λ2、λbである、システム。
【請求項2】
前記バンドパスフィルタは複数のバンドパスフィルタをさらに含み、前記複数のバンドバスフィルタが、直列に配置され、その各々が異なる帯域幅を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
高次モードの圧縮された光パルスを基底モードの出力光信号に再変換する、前記HOMファイバの部分の出力部に結合された出力モード変換器をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記入力モード変換器が長周期グレーティング(LPG)を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記バンドパスフィルタが前記入力モード変換器の入力部の前に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記バンドパスフィルタが前記HOMファイバの部分の出力部に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記HOMファイバがLP02モード信号をサポートする、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記HOMファイバが高次モードをサポートし、前記入力モード変換器は基底モードと高次モードとの間の変換を提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
光信号を圧縮する方法であって、
a)連続スペクトル光信号を基底モードで生成するステップと、
b)前記連続スペクトル光信号を動作波長範囲(λa−λb)で高次モード信号に変換するステップと、
c)ステップb)の変換された信号を、規定の帯域幅(λ1−λ2)に沿って存在する蓄積されたスペクトル位相を補償するよう選択された分散と長さとを有する高次モード(HOM)ファイバの部分に射出するステップと、
d)第一の規定された波長λiよりも小さく、かつ第二の規定された波長λiiよりも大きい波長を除去するために前記光信号をフィルタリングするステップとを含み、前記λi及びλiiは、λi≧λ1、λa及びλii≦λ2、λbであり、さらに、
e)前記HOMファイバの部分の出力部に圧縮された光パルスを生成するステップとを含む、方法。
【請求項10】
前記ステップa)が、
i)入力光パルス列を生成するために第一の波長で動作する入力光パルス源を提供するステップと、
ii)入力光パルス列を高非線形ファイバ(HNLF)の部分に結合し、基底モードで連続スペクトル光信号を生成するステップとを含む、請求項9に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【公開番号】特開2011−53688(P2011−53688A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193107(P2010−193107)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(509094034)オーエフエス ファイテル,エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(509094034)オーエフエス ファイテル,エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】
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