高次構造的に制約された副甲状腺ホルモン(PTH)アナログ
本発明は新規なP1Rポリペプチドアンタゴニストを提供する。これらのアンタゴニストは、短縮型PTHおよびPRHrPポリペプチド中の選択された位置にアミノ酸置換を含み、かつレセプターの膜近傍(「J」)ドメインに選択的に結合することによって機能する。このJドメインは、7つの膜貫通ドメインおよび細胞外ループにわたるレセプターの領域である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、高次構造的に制約された副甲状腺ホルモン(PTH)および副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrT)アナログ、ならびにこれらのアナログの調製方法および使用方法に関する。
【0002】
連邦政府によって資金援助された研究開発に関する言及
米国特許審査便覧310の下での言及。米国政府は、本発明における一括払いライセンス、および米国国立衛生研究所によって授与された補助金番号DK-11794の規約によって提供されるような道理にかなった規約に基づいて他者にライセンスを与えるよう特許権者に要求するために限定された状況における権利を有する。
【0003】
本発明の開発の間に実施された研究の一部は米国政府の補助金を利用した。米国政府は本発明に特定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
背景技術
副甲状腺ホルモン
副甲状腺ホルモン(PTH)(84アミノ酸ペプチド)は、ヒト体内のイオン化血液カルシウムの主要なレギュレーターである(Kronenberg, H.M., et al.、Handbook of Experimental Pharmacology, Mundy, G.R. and Martin, T.J. (編)、pp.185-201、Springer-Verlag, Heidelberg (1993))。カルシウム濃度の調節は、胃腸、骨格、神経、神経筋、および心臓血管の系の通常の機能のために必要である。PTHの合成および放出は主に血清カルシウムレベルによって制御され;低レベルはホルモンの合成と放出の両方を刺激し、高レベルはそれらを抑制する。PTHは、次に、カルシウム交換の3つの部位:腸、骨、および腎臓において、血液へのカルシウムの流入を直接的または間接的に促進することによって、血清カルシウムレベルを維持する。PTHは、活性型ビタミンDの腎臓合成を促進することによって、正味の胃腸のカルシウム吸収に寄与する。PTHは、骨再吸収細胞である破骨細胞の分化を刺激することによって間接的にカルシウム再吸収を促進する。これはまた、腎臓に対する少なくとも3つの主要な効果:尿細管カルシウム再吸収の刺激、リン酸クリアランスの増強、および活性型ビタミンDの合成を完成する酵素の増加の促進を媒介する。PTHは、主としてアデニル酸シクラーゼおよび/またはホスホリパーゼCのレセプター媒介活性化を通してこれらの効果を発揮すると考えられている。
【0005】
カルシウムホメオスタシスの破壊は、多くの臨床的障害(例えば、重篤な骨疾患、貧血、腎臓機能障害、潰瘍、筋障害、および神経障害)を生じる可能性があり、通常、副甲状腺ホルモンのレベルの変化を生じる状態から生じる。高カルシウム血症は、血清カルシウムレベルの上昇によって特徴付けられる状態である。これはしばしば、過度のPTH産生が副甲状腺の損傷(例えば、腺腫、過形成、または癌腫)の結果として起こる原発性副甲状腺機能亢進症と関連する。別の型の高カルシウム血症である悪性体液性高カルシウム血症(HHM)は、最も一般的な新生物随伴症候群である。これは、大部分の場合において、PTHとアミノ酸相同性を共有するタンパク質ホルモンの1つのクラスの腫瘍(例えば、扁平上皮癌、腎臓癌、卵巣癌、または膀胱癌)による産生から生じると考えられる。これらのPTH関連タンパク質(PTHrP)は、PTHの腎臓および骨格の特定の作用を模倣するようであり、これらの組織におけるPTHレセプターと相互作用すると考えられている。
【0006】
PTH誘導体
PTH誘導体は、アミノ酸置換を有するポリペプチドを含むか、または全長分子と比較して短縮される。PTHの14アミノ酸、21アミノ酸、および34アミノ酸のアミノ末端短縮型、ならびにC末端短縮型が研究された。さらに、短縮型ポリペプチド中のアミノ酸置換もまた研究された。
【0007】
合成PTH(1-34)は、大部分の細胞に基づくアッセイ系において完全な生物活性を示し、動物における骨質量に対してタンパク質同化性効果を有し、かつ閉経後の骨粗鬆症の女性における骨折のリスクを減少させることが最近示された(Neer, R.M., et al., N.E.J.M. 344:1434-1441 (2001); Dempster, D.W., et al., Endocr Rev 14:690-709 (1993))。PTHは、アデニリルシクラーゼ/cAMPおよびホスホリパーゼC/イノシトールリン酸(IP)シグナル伝達経路と共役する、クラスIIGタンパク質結合ヘプタヘリックスレセプターであるPTH/PTHrPレセプター(P1R)に対して作用する(Rippner, H., et al., Science 254:1024-1026 (1991))。欠失分析研究は、PTHのアミノ末端残基が、P1Rを刺激してcAMPおよびIPシグナル伝達経路を活性化する際に決定的な役割を果たすことを示した(Tregear, G.W., et al., Endocrinology 93:1349-1353 (1973); Takasu, H., et al., Biochemistry 38:13453-13460 (1999))。架橋およびレセプター変異誘発研究は、PTHのアミノ末端部分の残基が、レセプターの膜近傍領域中に存在する7つの膜貫通ヘリックスの細胞外ループおよび細胞外末端と相互作用することを示した。
【0008】
大部分の現在のP1Rアンタゴニストは、PTH(1-34)またはPTHrP(1-36)のN-末端短縮型アナログ(例えば、PTHrP(5-36))である。これらのアンタゴニストは、レセプターのアミノ末端の細胞外(「N」)ドメインを高い結合親和性で認識する。しかし、N末端短縮は、PTHまたはPTHrPペプチドがレセプターを通してシグナル伝達することを不可能にし、それによってアンタゴニストとして作用する。
【0009】
α-ヘリックス安定化剤
PTHおよびPTHrPの最初の34アミノ酸は、高親和性P1R結合およびP1R媒介シグナル伝達応答の強力な誘導のために必要な情報を含む(Nerr, RM, et al., N.E.J.M. 344:1434-1441 (2001))。PTHの短いN末端フラグメント、例えば、PTH(1-14)およびPTH(1-11)は極度に弱い結合親和性を示すが(Kd>>100μM)、それにも関わらず、PTH(1-34)の効力(EC50〜2nM)よりも実質的に弱い効力(EC50s≧100μM)であるが、cAMPシグナル伝達応答を誘発することが可能である(Luck, MD et al., Molecular Endocrinology 13:670-680 (1999))。一連の修飾されたPTH(1-14)およびPTH(1-11)アナログが、PTH(1-34)の効力に近いか、または完全に等しい程のシグナル伝達効力を示すことが最近発見されている(Shimizu, M. et al., Endocrinology 142:3068-3074 (2001); Shimizu, M. et al., J. Biol. Chem. 276:490003-49012 (2001); Shimizu, M. et al., J. Biol. Chem. 275:21836-21843 (2000))。
【0010】
このような型の修飾因子の1つは、塩基性リジン残基と酸性アスパルテームまたはグルタミン酸残基との間で形成される側鎖から側鎖へのアミド架橋であるラクタム架橋である(Condon, SM. et al., J. Am. Chem. Soc. 122:3007-3014 (2000))。ラクタム架橋形成は、それによってペプチドの生物活性コンホメーションが推定される可能性のある周知の方法である(同文献を参照されたい)。ヒトPTH(1-31)および(1-34)(hPTH)における、残基13と17の間;18と22の間;および26と30の間のラクタム架橋の組み込みは、ヘリックスコンホメーションを保持しながら生物活性を示した(同文献を参照されたい)。さらに、hPTH(1-31)およびhPTH(1-34)のこれらの修飾は、α-ヘリックスがPTHのN末端部分についての好ましい生物活性コンホメーションであり得ることを示唆する(Shimizu, N. et al., J.Biol.Chem. 276:490003-49012 (2001))。
【0011】
最近、1位および/または3位におけるα,α-二置換アミノ酸、α-アミノ-イソ酪酸(Aib)を含むPTH(1-14)アナログが、これらの位置にアラニンを含むそれらの対応物ペプチドよりも、10から100倍高い親和性およびcAMPシグナル伝達強度を有することもまた発見された(Shimizu, N. et al., J. Biol. Chem. 276:49003-49012 (2001))。
【発明の開示】
【0012】
発明の要旨
本発明は新規なP1Rポリペプチドアンタゴニストを提供する。これらのアンタゴニストは、短縮型PTHおよびPRHrPポリペプチド中の選択された位置にアミノ酸置換を含み、かつレセプターの膜近傍(「J」)ドメインに選択的に結合する。このJドメインは、7つの膜貫通ヘリックスおよび細胞外ループを含むレセプター(P1R)の領域である。P1RのJドメインに結合する、本発明のN末端PTHアンタゴニストアナログは、PTH/P1R機能亢進に関連する状態(例えば、原発性副甲状腺機能亢進症、ヤンセン軟骨形成不全症)を治療するために有用である。さらに、これらのアナログは、P1Rに結合する他のリガンド(例えば、低分子PTH模倣化合物)を同定するために有用である(例えば、高スループットスクリーニングを利用して)。さらに、これらのアナログは、それらの選択性について、例えば、Jドメインについて、P1Rリガンドを薬理学的に分析するために使用可能である。
【0013】
本発明は、ポリペプチドPTH(1-21)、PTH (1-20)、PTH(1-19)、PTH(1-18)、PTH(1-17)、PTH(1-16)、PTH(1-15)、PTH(1-14)、PTH (1-13)、PTH(1-12)、PTH(1-11)およびPTH(1-10)の誘導体を提供し、ここで、上記誘導体は、P1RのJドメインに選択的に結合し、P1R活性のアンタゴニストまたは逆アゴニストとして作用する。本発明はまた、このようなペプチドを作製する方法を提供する。さらに、本発明は、レセプター-リガンドアッセイにおけるこのようなペプチドの使用のための組成物および方法を含む。さらに、本発明は、PTHのレベルの上昇と関連する状態(例えば、高カルシウム血症を含む)および副甲状腺機能亢進症に関連する状態を治療する際のこのようなペプチドの使用のための組成物および方法を提供する。
【0014】
1つの局面において、本発明は
からなる群より選択されるペプチド;アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそれらのフラグメント;それらの薬学的に許容される塩;およびそれらのN-もしくはC-誘導体に関し:ここでX01およびX03はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Ac5c、Ac3c、Deg、AibまたはAc5c、Ac3c、Deg、もしくはAibのデサミノ型)であり;X02はTrp、Bpa、ArgまたはValであり;X04はMetまたはNleであり;X05はGln、DegまたはAsnであり;X06はHarまたはLeuであり;X07はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Aib)、AlaまたはGlyであり;およびX08はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Aib)、Trp、TyrまたはHisである。本発明の1つの態様において、上記のペプチドは
;アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそれらのフラグメント;それらの薬学的に許容される塩;およびそれらのN-もしくはC-誘導体から本質的になり、ここでX01およびX03はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Ac5c、Ac3c、Deg、AibまたはAc5c、Ac3c、Deg、もしくはAibのデサミノ型)であり;X02はTrp、Bpa、ArgまたはValであり;X04はMetまたはNleであり;X05はGln、DegまたはAsnであり;X06はHarまたはLeuであり;X07はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Aib)、AlaまたはGlyであり;およびX08はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Aib)、Trp、TyrまたはHisである。
【0015】
本発明はさらに、SEQ ID NO:1のペプチドのフラグメント、特に
に及ぶ。本発明はさらに、上記のペプチドの薬学的に許容される塩およびそれらのペプチドのN-またはC-誘導体を含む。本発明の態様は、上記に列挙されたポリペプチドのいずれかに及び、ここで上記ポリペプチドはC末端アミドを含む。
【0016】
本発明の別の局面は、
からなるペプチドに関し、ここで、X01およびX02はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Ac5c、Ac3c、Deg、またはAib)であり、X03はAib、Gln、Deg、またはAsnであり、X04はMetまたはNleであり、X05はHarまたはLeuであり、X06はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Aib)、Ala、またはGlyであり、X08はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Aib)またはLysであり、およびX07はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Aib)、TrpまたはHisであり、X08はArgまたはGluでありかつX09はTyrまたはMetであり;ここで上記ペプチドはP1RのJドメインに選択的に結合する。
【0017】
本発明はさらに、SEQ ID NO:6のペプチドのフラグメント、特に、
に及ぶ。本発明はさらに、上記のペプチドの薬学的に許容される塩およびそれらのペプチドのN-またはC-誘導体を含む。本発明の態様は、上記に列挙されたポリペプチドのいずれかに及び、ここで上記ポリペプチドはC末端アミドを含む。
【0018】
本発明はさらに、放射性標識、蛍光標識、生物発光標識、または化学発光標識からなる群より選択される標識で標識された上記のポリペプチドのいずれかに及ぶ。1つの態様において、放射性標識は125Iまたは99mTcである。
【0019】
本発明に従うペプチドの態様は以下を含む:
【0020】
別の局面において、本発明は、上記のペプチドのいずれかを作製する方法に関し、この方法は、ペプチドが固相合成によって合成される方法を含む。本発明はまた、上記のペプチドのいずれかを作製する方法に関し、ここでペプチドはFMOCによって保護される。
【0021】
本発明のさらなる局面において、本発明はまた、本発明のペプチドおよび薬学的に許容される賦形剤および/または生理食塩水もしくは生理学的に緩衝化された溶液などの薬学的に許容される溶液を含む薬学的組成物を提供する。
【0022】
本発明はまた、PTH活性の増加によって特徴付けられる哺乳動物の状態(例えば、高カルシウム血症など)を治療するための方法を提供し、この方法は、本発明のペプチドの有効量をその必要がある対象に投与する工程を含む。本発明の1つの態様は、高カルシウム血症などの状態に及ぶ。さらなる態様は、約0.01μg/kg/日〜約1.0μg/kg/日のポリペプチドの有効量を使用することを含み、ここで、ポリペプチドは非経口的に、皮下的に、または経鼻吸入法によって投与されてもよい。
【0023】
本発明のなおさらなる局面に従って、本発明はまた、リガンド-レセプターアッセイにおいてJ-ドメイン選択的ペプチドを使用するための方法を提供する。この方法に従って、ペプチドは、放射性標識、蛍光標識、生物発光標識、または化学発光標識からなる群より選択される標識で標識されてもよい。適切な放射性標識の例は125Iまたは99mTcである。
【0024】
本発明はさらに、PTH-1レセプターを有する哺乳動物細胞におけるcAMPの増加をブロックする方法に関し、この方法は、cAMPの増加をブロックするために十分な量の本発明のポリペプチドと細胞を接触される工程を含む。
【0025】
発明の詳細な説明
定義
単数形(「a」「an」「the」)などは、他に示されない限り、複数形を含んでもよい。また、単数形への言及は複数形を含む。それゆえに、例えば、ペプチドは複数のペプチドもまた含む。
【0026】
アミノ酸配列:本願におけるアミノ酸配列は、アミノ酸についての1文字または3文字のいずれかの記号表示を使用する。これらの記号表示は当業者に周知であり、例えば、Cooper, G.M., The Cell 1997, ASM Press, Washington, D.C. またはAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, 1994などの多数の容易に入手可能な参考文献において見出され得る。例えば、Ser-3-->Alaまたは[Ala3]ペプチドのように配列における置換が言及される場合、これは、ポリペプチドのN末端からの3番目のセリンが、別のアミノ酸、この例においてはアラニンで置換されていることを意味する。
【0027】
本出願において、「Aib」とはα-アミノイソブチル酪酸をいう;「Har」とはホモアルギニンをいう;「Nle」とはノルロイシンをいう;AC3Cとは1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸をいう;AC5Cとは1-アミノシクロペンタン-1-カルボン酸をいう;Harとはホモアルギニンをいう;Degとはジエチルグリシンをいう;および他のアミノ酸は慣用的な1文字コードまたは3文字コードのいずれかで示される。
【0028】
タンパク質の生物学的活性:この表現はポリペプチドの任意の生物学的活性をいう。これらの活性の例には、SEQ ID NO:1またはその誘導体の化合物の代謝的または生理学的機能(類似の活性または改善された活性、または望ましくない副作用の減少を伴う活性を含む)が含まれるがこれらに限定されない。上記の化合物の抗原性活性および免疫原性活性もまた含まれる。
【0029】
誘導体または機能的誘導体:用語「誘導体」または「機能的誘導体」は、PTH分子の「変異体」、「誘導体」、または「化学的誘導体」を含むことが意図される。分子の「変異体」、例えば、SEQ ID NO:1その誘導体の化合物またはなどは、完全な分子またはそのフラグメントのいずれかに対して実質的に類似する分子をいう。分子の「アナログ」、例えば、SEQ ID NO:1またはその誘導体の化合物などは、SEQ ID NO:1の分子またはそのフラグメントのいずれかに実質的に類似する非天然分子を意味する。
【0030】
PTH誘導体は、同じサイズのネイティブなPTHポリペプチドと比較してポリペプチドにおける変化を含む。ネイティブなPTH(1-14)ポリペプチドの配列はSEQ ID NO:17(ヒトPTH(1-21))またはSEQ ID NO:18(ラットPTH(1-21))の最初の14アミノ酸である。分子は、両方の分子におけるアミノ酸の配列が実質的に同一である場合、および両方の分子が同様の生物学的活性を有する場合に、別の分子に対して「実質的に同様である」といわれる。従って、この用語は、1つの分子が他方において見出されないさらなるアミノ酸残基を含むか、またはアミノ酸残基の配列が同一でない場合においてでさえ、この用語は本明細書において使用されるように、同様の活性を有する2つの分子が、変異体、誘導体、またはアナログと見なされることが可能である。しかし、PTH誘導体は、ネイティブな分子と実質的に同様の生物学的活性を有する必要はない。ある場合において、PTH誘導体は、ネイティブなPTHとは実質的に異なる活性を有し得る。例えば、誘導体は、PTHレセプターのアンタゴニストまたはアゴニストのいずれかであり得る。
【0031】
本明細書中で使用される場合、分子は、これが通常その分子の一部ではないさらなる化学的部分を含む場合、別の分子の「化学的誘導体」であるといわれる。このような部分は、分子の溶解性、吸収、生物学的半減期などを改善することが可能である。この部分は、代替的に、その分子の任意の望ましくない副作用を除去または減弱するなど、その分子の毒性を減少させる。このような副作用を媒介することが可能である部分の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences(1980)に開示されており、当業者には明らかである。
【0032】
フラグメント:分子の「フラグメント」、例えば、SEQ ID NO:1またはその誘導体などは、これらの分子の任意のポリペプチドサブセットをいう。
【0033】
融合タンパク質:用語「融合タンパク質」は、例えば、次にさらなるアミノ酸リーダーポリペプチド配列が連結される、そのN末端に連結された「選択的切断部位」を伴うかまたは伴わない、SEQ ID NO:1またはその誘導体などの化合物を含む融合タンパク質を意図する。
【0034】
Jドメイン:Jドメインは、7つの膜貫通ドメインおよび細胞外ループを含むレセプターの領域に広がるP1Rのドメインである。
【0035】
ポリペプチド:ポリペプチドおよびペプチドは交換可能に使用される。ポリペプチドという用語は、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合、すなわち、ペプチドアイソスターによって互いに結合された2つまたはそれ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質をいう。「ポリペプチド」とは、短い鎖(一般的にはペプチド、オリゴペプチド、またはオリゴマー)と、長い鎖(一般的には、タンパク質)の両方をいう。ポリペプチドは、遺伝子にコードされる20個のアミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよく、天然のプロセス(例えば、翻訳後プロセシング)によって、または当技術分野において周知の化学修飾技術によってのいずれかで修飾されたアミノ酸配列を含む。このような修飾は基本的な教科書およびより詳細な研究論文、ならびに研究文献に十分に記載されている。修飾はポリペプチドのどこで行われることも可能であり、これには、ペプチドバックボーン、アミノ酸側鎖、およびアミノ末端およびカルボキシル末端が含まれる。同じ型の修飾が所定のポリペプチドのいくつかの部位において同じかまたは異なる程度で存在してもよいことが認識される。また、所定のポリペプチドは多くの型の修飾を含んでもよい。
【0036】
ポリペプチドは分枝していてもよく、およびこれらは、分枝を伴ってまたは伴わずに環状であってもよい。環状、分枝、および環状分枝のポリペプチドは翻訳後修飾から生じてもよく、または合成方法によって作製してもよい。修飾には、以下が含まれる:アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環状化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解的プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化などのタンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加、およびユビキチン化。例えば、Proteins-Structure and Molecular Properties, 第2版, T.E. Creighton, W.H. Freeman and Company, New York, 1993およびWold, F., Posttranslational Protein Modifications:Perspective and Prospests, 1〜12頁, Posttranslational Covalent Modification of Proteins, B.C. Johnson編, Academic Press, New York, 1983; Seifter et al.,「Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors」, Methods in Enzymol. 182:626-646 (1990)およびRattan et al.,「Protein Synthesis:Posttranslational Modifications and Aging」, Ann NY Acad Sci 663:48-62 (1992)を参照されたい。
【0037】
PTHアナログ-構造的特性および機能的特性
α-アミノイソ酪酸(Aib)は、短いN末端PTHペプチドアナログに導入された。様々な極性溶媒または非極性溶媒の中で実施されたPTH(1-34)アナログの多数のNMR研究は、一般的に、2つのドメインの二次構造:ほぼSer-17からVal-31までに拡がる安定なC末端ヘリックス、およびSer-3からLys-13まで変動的に拡がるより短くかつより安定でないアミノ末端ヘリックスを示した。これらの2つのドメインはベンドまたはターン領域によって接続されている。
最近のPTH(1-34)の結晶学的研究は、Ser-3からHis-32までに拡がり、かつ中央部分にわずかな15°のベンドのみを含む連続的なα-ヘリックスを示した。しかし、NMRデータは、N末端ヘリックスが比較的弱いことを示す。ヘリックス安定化修飾(Aib残基の導入など)は、P1Rレセプターへの結合親和性に関して顕著な利点を提供し、PTH(1-34)と比較し得る結合親和性を有する短いペプチド(≦14アミノ酸)を生じる。
【0038】
単純な非注入方法によって送達可能であるために十分に小さく、かつP1RのJドメインに結合することによってアンタゴニストまたは逆アゴニストとして作用する、PTHまたはPTHrPの新規な「最小化」改変体が本明細書に記載される。本発明の改変体は、ポリペプチドの最初の21アミノ酸における置換を含む。この新規なポリペプチドは、成熟PTHポリペプチドのアミノ酸配列1〜21、1〜20、1〜19、1〜18、1〜17、1〜16、1〜15、1〜14、1〜13、1〜12、1〜11、および1〜10に対応する。より短い改変体(≦PTH1-14)は、2,000ダルトン未満の分子量を有する。
【0039】
ネイティブPTH(1-21)ペプチドの一次アミノ酸配列(N末端からC末端)は
であるのに対して、ネイティブラットPTH(1-21)の一次配列は
である。
【0040】
タンパク質が産生されるとき、本明細書中に記載される化合物は、溶液相または固相のペプチド合成の技術および組み合わせ化学を用いたインサイチュー合成による産生に対して受容可能である。特に、固相ペプチド合成技術は、ヒトPTHの産生において首尾よく適用され、かつこれらの化合物の産生のために使用されることが可能である(手引きとしては、Kimura et al., 前記、およびFairwell et al., Biochem. 22:2691 (1983)を参照されたい)。比較的大スケールでのヒトPTHの産生における成功は、Goud et al., J. Bone Min. Res. 6(8):781 (1991)によって報告されている。合成的ペプチド合成アプローチは、一般的に、自動合成装置および固相としての適切な樹脂の使用を伴い、この固相に、SEQ ID NO:1またはその誘導体の配列を有するペプチドの、所望の化合物のC末端アミノ酸が結合される。次いで、N末端方向でのペプチドの伸長が、FMOCまたはBOCのいずれかに基づく化学的プロトコールを使用して、代表的には、合成が完了するまで、適切に保護された型の次の所望のアミノ酸を首尾よくカップリングすることによって達成される。次いで、保護基が、通常は樹脂からのペプチドの切断と同時にペプチドから切断され、次いで、ペプチドが、従来的な技術、例えば、溶媒としてアセトニトリルを使用し、イオン対剤としてトリフルオロ酢酸を使用する逆相HPLCを使用して、単離および精製される。このような手順は、一般的には、多数の刊行物に記載されており、例えば、Stewart and Young,「Solid Phase Peptide Synthesis」第2版, Pierce Chemical Company, Rockford, IL (1984)が参照され得る。ペプチド合成アプローチは、例えば、遺伝子によってコードされていないアミノ酸(例えば、Aibなど)を取り込む、SEQ ID NO:1およびその誘導体などの産生のために必要であることが理解される。
【0041】
本発明の他の局面に従い、置換基は、当技術分野において公知である標準的な方法によって、本発明の化合物のN末端アミノ酸の遊離のアミンに結合されることが可能である。例えば、アルキル基(例えば、C1-12アルキル)は還元的アルキル化を使用して結合され得る。ヒドロキシアルキル基(例えば、C1-12ヒドロキシアルキル)はまた、還元的アルキル化を使用して結合され得、ここで、遊離のヒドロキシ基はt-ブチルエステルで保護される。アシル基(例えば、COE1)は、遊離の酸(例えば、E1COOH)をN末端アミノ酸の遊離のアミノにカップリングすることによって結合され得る。さらに、ポリペプチドのC末端の可能な化学修飾は本発明の範囲内に含まれる。これらの修飾は、レセプターへの結合親和性を改変することが可能である。
【0042】
P1RのJ-ドメインについての選択性を保持し、かつ拮抗作用または逆アゴニスト活性もまた保持する、例えば、二次構造もしくは三次構造の変化、および/または安定性の変化を有するSEQ ID NO:1およびその誘導体などの化合物もまた、本発明の範囲内にあることが意図される。このような誘導体は、ラクタム環状化、ジスルフィド結合、または当業者に公知である他の手段を通して達成されるかもしれない。
【0043】
本発明の化合物の有用性および投与
本発明の化合物またはその誘導体は、P1Rのアンタゴニストまたは逆アゴニストとして作用するそれらの能力に部分的に起因して複数の用途を有する。本発明のペプチドの複数の用途には、とりわけ、PTHもしくはPTHrPの活性および/または産生の増加によって症状が現れる哺乳動物の様々な状態の予防および治療、診断用プローブ、診断用プローブとしての使用のための抗体を調製するための抗原、ならびに分子量マーカーとしてさえの用途が含まれる。PTHポリペプチドにおいて1つまたは複数のアミノ酸を特異的に置換可能であることは、特定の分子量のポリペプチドの構築を可能にする。
【0044】
特に、本発明の化合物は、高カルシウム血症の予防および治療的処置のため、ならびに副甲状腺機能亢進症、ヤンセン軟骨形成不全症、またはそれに関連する状態の治療のために示される。
【0045】
特定の態様において、本発明の化合物、またはその塩は、PTHレセプターのアンタゴニストを必要とする状態についての治療の必要がある患者を治療するために必要な量で投与される。ある態様において、これらの化合物は、1日あたり約0.01〜1μg/kg体重の間、好ましくは1日あたり約0.07〜約0.2μg/kg体重の間で投与される。50kgのヒト女性対象については、生物学的に活性な化合物の1日の用量は、約0.5〜約50μg、好ましくは約3.5〜約10μgである。ウマ、イヌ、およびウシなどの他の哺乳動物においては、より多い用量が必要とされ得る。この投薬量は、最も有効な結果を達成するために必要とされるように、単回投与によって、複数回適用によって、または制御放出を介して、好ましくは注射によって毎日1回以上、従来的な薬学的組成物中で送達されてもよい。例えば、この投薬量は、経鼻吸入法によって、従来的な薬学的組成物中で送達されてもよい。
【0046】
正確な用量および組成物、ならびに最も適切な送達治療プログラムの選択は、とりわけ、本発明の選択された化合物の薬理学的特性、治療される状態の性質および重篤度、ならびにレシピエントの身体的状態および精神的鋭敏さによって影響される。
【0047】
代表的な送達治療プログラムには、非限定的に、経口、非経口、皮下、経皮(transcutaneous)、筋肉内および静脈内、直腸、口腔(舌下を含む)、経皮(transdermal)、および鼻内吸入が含まれる。
【0048】
薬学的に許容される塩は、毒性の副作用を伴うことなく、本発明の化合物の望ましい生物学的活性を保持する。このような塩の例は、(a)無機酸、例えば、塩酸、臭化水素、硫酸、リン酸、硝酸などとともに形成された酸付加塩;および有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などとともに形成された酸付加塩;(b)多価金属カチオン、例えば、亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウムなどとともに形成された塩基付加塩;またはN,N'-ジベンジルエチレンジアミンもしくはエチレンジアミンから形成された有機カチオンとともに形成された塩基付加塩;あるいは(c)(a)および(b)の組み合わせ、例えば、タンニン酸亜鉛塩などである。薬学的に許容される緩衝液には、生理食塩水またはリン酸緩衝化生理食塩水が含まれるがこれらに限定されない。当業者に公知である許容される保存剤もまた、これらの溶液に含まれる。PTHと同様に、PTH変異体は、所定の臨床的状態を治療する際に有用な他の薬剤と組み合わせて投与してもよい。
【0049】
本発明のさらなる局面は、本発明の活性成分化合物または本発明のその誘導体、またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される非毒性担体と混合して含む薬学的組成物に関する。上述のように、このような組成物は、非経口(皮下、経皮(transcutaneous)、筋肉内、または静脈内)投与のために、特に液体溶液または懸濁物の形態で;経口または口腔投与のために、特に錠剤またはカプセルの形態で;直腸、経皮(transdermal)投与のために;および鼻内投与のために、特に粉末、鼻滴下剤、またはエアロゾルの形態で調製することが可能である。
【0050】
本発明の組成物は、単位投薬量形態で便利に投与することが可能であり、かつ薬学分野において周知の方法のいずれかによって、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第17版, Mack Publishing Company, Easton, Pa (1985)(参照により本明細書に組み入れられる)に記載されるように調製することが可能である。非経口投与のための処方物は、賦形剤として、滅菌水または生理食塩水、プロピレングリコールなどのアルキレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物由来のオイル、水素化ナフタレンなどを含んでもよい。経口投与のために、処方物は、胆汁酸塩またはアシルカルニチンの付加によって増強されることが可能である。鼻投与のための処方物は固体であってもよく、賦形剤、例えば、ラクトースまたはデキストランを含んでもよく、または鼻滴下剤もしくは定量スプレーの形態での使用のための水性もしくは油性溶液であってもよい。口腔投与のために、代表的な賦形剤には、糖、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルファ化でんぷんなどが含まれる。
【0051】
鼻投与のために製剤化された場合、鼻粘膜を横切る吸収は、例えば、約0.2〜15重量パーセントの間の範囲、好ましくは約0.5〜4重量パーセントの間の範囲、最も好ましくは約2重量パーセントの量の、グリコール酸、コール酸、タウロコール酸、エトコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、デヒドロコール酸、グリコデオキシコール酸、シクロデキストリンなどの界面活性剤である酸によって増強することが可能である。
【0052】
長期間の間、例えば、1週間から1年間の期間の間にわたっての、対象への本発明の化合物の送達は、所望の放出期間、十分に活性な成分を含む制御放出系の単回投与によって達成することが可能である。様々な制御放出系、例えば、モノリシックまたはリザーバー型マイクロカプセル、デポー移植物、浸透圧ポンプ、ベシクル、ミセル、リポソーム、経皮パッチ、イオン泳動装置、および代替的な注射可能投薬形態をこの目的のために利用することが可能である。活性成分の送達が所望される部位への局在化は、いくつかの制御放出装置のさらなる特徴であり、これは特定の障害の治療において有益性を証明し得る。
【0053】
制御放出処方物の1つの形態は、Kent, Lewis, Sanders, and Tice, 米国特許第4,675,189号の先駆的な研究において記載されたようなコポリ(乳酸/グリコール酸)などのゆっくりと分解する、非毒性、非抗原性のポリマー中に分散もしくはカプセル化されたポリペプチドまたはその塩を含む。この化合物、またはそれらの比較的不溶性の塩はまた、コレステロールもしくは他のマトリックスペレット、またはシラストマー(silastomer)マトリックス移植物中に処方されることが可能である。さらなる徐放性のデポー移植物、または注射可能な処方物は当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson編, Marcel Dekker, Inc., New York, 1978およびR.W. Baker, Controlled Release of Biologically Active Agents, John Wiley & Sons, New York, 1987を参照されたい。
【0054】
PTHアナログレセプター-シグナル伝達活性
ホルモン作用の発現の決定的な段階は、標的細胞の原形質膜表面上のレセプターとホルモンの相互作用である。ホルモン-レセプター相互作用の形成は、様々な生物学的応答を誘発するために細胞への細胞外シグナルの伝達を可能にする。
【0055】
本明細書中に記載されるポリペプチドは、cAMP蓄積アッセイ法を使用して、それらのアンタゴニスト性特性または逆性アゴニスト性特性についてスクリーニングすることが可能である。1つのそのようなアッセイにおいて、細胞表面にPTH-1レセプターを発現する細胞は、2mM IBMX(3-イソブチル-1-メチル-キサンチン、Sigma, St.Louis, MO)の存在下で、37℃で5〜60分間、ネイティブPTH(1-84)とともにインキュベートされる。サイクリックAMPの蓄積は特異的ラジオイムノアッセイ法によって測定される。PTH-1レセプターへの結合についてネイティブPTH(1-84)もしくはPTH(1-34)、またはそれらの任意のフラグメントと競合し、かつcAMP蓄積に対するネイティブPTH(1-84)またはPTH(1-34)の効果を阻害する化合物は、競合的アンタゴニストと見なされる。このような化合物は高カルシウム血症を治療するために有用である。
【0056】
逆に、PTH-1レセプターへの結合についてネイティブPTH(1-84)またはPTH(1-34)と競合しないが、なおネイティブPTH(1-84)またはPTH(1-34)によるcAMP蓄積の活性化を妨害する(おそらくレセプター結合部位をブロックすることによって)本明細書中に記載されるPTHアナログまたはその誘導体は、非競合的アンタゴニストと見なされる。このような化合物もまた、高カルシウム血症を治療するために有用である。
【0057】
PTHアナログの治療的使用
高カルシウム血症のある型は、PTHおよびPTHrPおよびPTH-1およびPTH-2レセプターの間の相互作用に関連する。高カルシウム血症は、血清カルシウムレベルの異常な上昇が存在する状態である;これはしばしば、他の疾患(副甲状機能亢進症、骨粗鬆症、乳房、肺、および前立腺の癌腫、頭頸部および食道の類表皮癌、多発性骨髄腫、ならびに副腎腫を含む)に伴う。
【0058】
「アゴニスト」とは、PTH-1レセプターによって媒介される細胞応答を増強または強化することが可能であるリガンドが意図される。「アンタゴニスト」とは、PTH-1レセプターによって媒介される細胞応答を阻害することが可能であるリガンドが意図される。本発明の任意のペプチドが、「アゴニスト」または「アンタゴニスト」、すなわちこのような細胞応答を増強、または阻害することが可能である化合物として分類されるかどうかを、当技術分野で公知のタンパク質リガンド/レセプター細胞応答または結合アッセイ法(本願において他の箇所に記載されているものを含む)を使用して決定することが可能である。
【0059】
本発明のなおさらなる局面に従うと、PTH-1レセプターの変化した作用、または過度の作用から生じる医学的な障害を治療するための方法が提供され、この方法は、患者のPTH-1レセプターの活性化を阻害するために十分な本発明の化合物またはその誘導体の治療有効量をその患者に投与する工程を含む。
【0060】
この態様において、PTH-1レセプターの作用の変化から生じる障害を有すると疑われている患者は、PTH-1レセプターの選択的アンタゴニストである本発明の化合物または本発明のその誘導体を使用して治療することが可能である。このようなアンタゴニストには、PTH-1レセプター媒介細胞活性化を妨害すると決定された(本明細書中に記載されるアッセイ法によって)本発明の化合物もしくは本発明のその誘導体、または同様の特性を有する他の誘導体が含まれる。
【0061】
アンタゴニストを投与するために、本発明の化合物またはその誘導体は、一般的には、適切な担体または賦形剤(例えば、生理食塩水など)中で製剤化されることによって医薬の製造において使用され、およびPTH-1レセプターに結合する本発明の化合物またはその誘導体の適切な阻害を提供する投薬量で、静脈内、筋肉内、皮下、経口、鼻内で投与される。代表的な投薬量は、kg体重あたり1日あたり1ng〜10mgのペプチドである。
【0062】
本発明は、本発明の精神または範囲またはその任意の態様から逸脱することなく、広範な組成のパラメーター、濃度、投与の様式、および条件の範囲内で実施され得ることが当業者によって認識される。
【0063】
本明細書において本発明を十分に記載してきたが、本発明は、例示目的で提供される特定の実施例に対する参照によって、より容易に理解される。本発明は、本明細書中で特定されない限り、本明細書の限定を意図するものではない。
【0064】
実施例
以下のプロトコールおよび実験の詳細は、以下に続く実施例において言及される。
【0065】
ペプチド
ペプチドは、自動化ペプチドシンセサイザー(モデル430A PE, Applied Biosystems, Foster City, CA、またはモデル396 MBS Advanced Chem Tect, Louisville, KY)上で、FMOC主鎖保護基ケミストリー、カップリング反応のためにHBTU/HOBt/DIEA (1:1:2 モル比)、およびTFA媒介切断/側鎖-脱保護(MGH Biopolymer Synthesis Facility, Boston, MA)を使用して調製する。すべてのペプチドをC18含有カートリッジ上での吸着により脱塩し、HPLCによってさらに精製する。乾燥ペプチド粉末を10mM 酢酸中で再構成し、-80℃で保存する。各ペプチドの純度、同一性、およびストック濃度は、分析用HPLC、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)質量スペクトル分析、およびアミノ酸分析によって保証する。放射性標識を、125I-Na(2,200 Ci/mmol、NEN)およびクロラミン-Tを使用して実施する;得られる放射性リガンドをHPLCによって精製する。
【0066】
細胞培養
細胞株HKRK-B28(Shimizu, et al., Biochem. 41:13224-33 (2002))を、フクロネズミ/ラットハイブリッドP1RをコードするプラスミドDNAを用いる安定なトランスフェクションによって、ブタ腎臓細胞株LLC-PK1から誘導した。これは細胞あたり〜280,000レセプターを発現する。HKRK-B7細胞株を、ヒトP1RをコードするDNAを用いる安定なトランスフェクションによって、LLC-PK1細胞株から誘導した。HKRK-B7細胞は、細胞あたり約950,000ヒトP1Rを発現する(Takasu, H., et al., J. Bone Miner. Res. 14:11-20 (1999))。これらの細胞を、COS-7細胞およびSaOS-2-BlO細胞と同様に、T-75フラスコ(75mm2)中の、ウシ胎仔血清(10%)、ペニシリンG(20単位/ml)、硫酸ストレプトマイシン(20μg/ml)およびアンホテリシンB(0.05μg/ml)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、5% CO2を含む加湿大気中で、27℃で培養した。EGTA/トリプシンのストック溶液および抗生物質はGIBCOからである;ウシ胎仔血清はHyclone Laboratories(Logan, UT)からである。COS-7を24ウェルプレート中で継代培養し、野生型ヒトP1Rまたは残基(24-181)が欠失している短縮型ヒトP1RをコードするプラスミドDNA(200ng/ウェル)でトランスフェクトする(Shimizu, M., et al., J. Biol. Chem. 275:21836-21843 (2000))。これを塩化セシウム/臭化エチジウム密度勾配遠心分離、および製造業者の推奨する手順に従って、FuGENE 6トランスフェクション試薬(Roche Indianapolis IN)によって精製する。24ウェルプレート中のすべての細胞を新鮮な培地で処理し、アッセイの12〜24時間前に33℃に移す。
【0067】
cAMP刺激
ペプチドアナログによる細胞の刺激を、24ウェルプレート中で実施する。細胞を0.5 mLの結合緩衝液(50 mM Tris-HCI、100 mM NaCl、5 mM KCl、2 mM CaCl2、5% 熱不活化ウシ血清、0.5% ウシ胎仔血清、HClでpH 7.5に調整)ですすぎ、200μLのcAMPアッセイ緩衝液(2 mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン、1 mg/mLウシ血清アルブミン、35mM Hepes-NaOH, pH 7.4を含むダルベッコ改変イーグル培地)および様々な量のペプチドアナログを含む100μLの結合緩衝液で処理する(最終容量=300μL)。培地を、室温での30〜60分間のインキュベーションの後に除去し、細胞をドライアイス上で凍結し、0.5 mLの50 mM HClで溶解し、再度凍結する(-80℃)。希釈した溶解物のcAMP含量をラジオイムノアッセイによって測定する。EC50応答値を、非線形回帰を使用して計算する(以下を参照されたい)。
【0068】
競合結合
結合反応を、24ウェルプレート中で、HKRK-B28細胞、HKRK-B7細胞、またはCOS-7細胞を用いて実施する。細胞を0.5mLの結合緩衝液ですすぎ、次いで、様々な量の未標識競合リガンドを含む100μLの結合緩衝液、および125I-[M]PTH(1-21)、125I-[Aib1,3,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Tyr15]PTH(1-15)NH2、または125I-[Aib1,3,M]PTH(1-21)を含む約100,000cpmの100μLの結合緩衝液で連続的に処理する(約26fmol;最終容量=300μL)。インキュベーションは4℃で4〜6時間であり、この時間にほぼ平衡状態が達成された。次いで、細胞を氷上に配置し、結合媒体を除去し、単層を0.5mLの冷結合緩衝液で3回すすぐ。次に、細胞を0.5mLの5N NaOHで溶解し、放射能を計数する。各トレーサーについておよび各実験において、非特異的結合を、1μMの濃度の同じ非標識ペプチドの存在下で結合する放射能として測定し、全体で〜1%の放射能が各トレーサーに加えられた。最大の特異的結合(B0)は、非特異的結合について補正された、競合リガンドの非存在下において結合した全体の放射能である。非線形回帰を使用して、結合IC50値を計算する(以下を参照されたい)。26fmolの125I-[Aib1,3,M]PTH(1-21)を用いる研究から誘導された相同の競合結合データのスキャッチャード変換が、単一のクラスの結合部位ならびにヨード化されたリガンドおよびヨード化されていないリガンドの等しい親和性を仮定して、見かけの平衡解離定数(kDapps)およびリガンド結合部位の総数(Bmax)の見積もりのために利用される。
【0069】
イノシトールリン酸産生の刺激
上記のようにP1R-WTでトランスフェクトされたCOS-7細胞を、0.1%ウシ血清アルブミンおよび[3H]ミオ-イノシトール(NEN, Boston, MA)(2μCi/mL)を含み、血清を含まない、イノシトールを含まないDMEMで、アッセイの16時間前に処理する。アッセイの時点で、細胞を、LiCl(30mM)を含む結合緩衝液ですすぎ、PTHアナログを含むかまたは含まない同じ緩衝液で処理する。次いで、細胞を、37℃で40分間インキュベートし、その後、緩衝液を除去し、0.5mLの氷冷5%トリクロロ酢酸溶液に置き換える。氷上で3時間後、溶解物を収集し、エチルエーテルで2回抽出する。次いで、溶解物をイオン交換カラムに適用し(0.5mLレジンベッド)、以前に記載されたように全イノシトールリン酸を溶出させ(Berridge, M. J., et al.,Biochem. J. 212:473-482 (1983))、液体シンチレーションカクテル中で計数する。
【0070】
実施例1:結果
PTH誘導体の結合アッセイをHKRK-B28細胞において実施した。親のペプチドの誘導体、
を、示されるように1位、2位、および/または3位で置換した。結合アッセイ(15℃で4時間)を、125I-[Aib1,3,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Tyr15]PTH(1-15)NH2を用いて実施した。結果は、親のペプチドが、試験された誘導体の最高の親和性で結合したことを示す(図2および3(A))。
【0071】
親のペプチド[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2および示されるように1位、2位、および/または3位で置換されたその誘導体を、HKRK-B28細胞におけるcAMPアゴニスト応答についてアッセイした(図3(C)および図4)。アッセイはRTで30分間実施した。親のペプチドは完全に強力かつ効率的なアゴニストとして機能し、Deg1,3-置換アナログは部分的なアゴニストであり、かつBpa2-置換アナログはアゴニスト活性を欠いている。これらの結果は、cAMP産生を刺激する際の2位の決定的な役割を示す。
【0072】
これらのアナログは、ヤンセン病を有する患者に由来する構成的に活性な変異型ヒトP1R、P1R-H223RおよびP1R-H223R/T410Pを発現するCOS-7細胞において逆アゴニストとして挙動する(図7AおよびC)。アナログ[desNH2-Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2は、構成的に活性な変異型レセプターP1R-T41OPを発現するCOS-7細胞において逆アゴニストとして挙動する(図7B)。いずれのアナログも、「ロックオンされた」P1Rであると思われる構成的に活性な変異型レセプターP1R-I458Rを発現するCOS-7細胞において逆アゴニストではなかった。これらの結果は、新規なアナログのP1R-選択性を実証する。
【0073】
P1R-delNtを発現するCOS-7細胞において、[Deg1,3,BPA2,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Arg19,Tyr21]PTH(1-21)NH2は、[Aib1,3,Tyr34]hPTH(1-34)NH2、および[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2の両方を強力に阻害したのに対して、[ILe5,Trp23,Tyr36]PTHrP(5-36)NH2は、いずれのアゴニストリガンドについてもこのレセプター構築物に対しては不活性であった(図8B)。これらの結果は、[Deg1,3,BPA2,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Arg19,Tyr21]PTH(1-21)NH2が、強力なJ-ドメイン選択性アンタゴニストであることを実証する。インタクトなヒトP1R(図6A)に対する[Deg1,3,BPA2,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Arg19,Tyr21]PTH(1-21)NH2および[ILe5,Trp23,Tyr36]PTHrP(5-36)NH2のアンタゴニスト作用の違いは、野生型P1Rを安定に発現するHKRK-B7細胞において実施された競合研究における、これらのアナログについて観察された同様のIC50値によって示されるように、このレセプターについての結合親和性の違いに起因しない(図9)。これらの結果はさらに、[Deg1,3,BPA2,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Arg19,Tyr21]PTH(1-21)NH2が、拮抗作用を達成するために新たなメカニズムを利用することをさらに例証し、このメカニズムは、従来的な短縮型アンタゴニスト、[ILe5,Trp23,Tyr36]PTHrP(5-36)NH2によって使用されるものとは異なっている。
【0074】
[Deg1,3,BPA2,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Arg19,Tyr21]PTH(1-21)NH2および[Deg1,3,Bpa2,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(1-14)NH2がアンタゴニストとして機能する薬理学的メカニズムを図10において調べた。本研究において、アゴニスト[Aib1,3,Tyr34]hPTH(1-34)NH2によって誘発される用量応答曲線に対する、10mMにおけるアンタゴニストの効果をHKRK-B7細胞において調べた。いずれのアンタゴニストの存在も、アゴニスト応答曲線の右側でかつ平行なシフトを生じたが、真の漸近線は曲線上では達成されず、これらの結果は、非競合的な阻害のメカニズムに対して、競合的な阻害のメカニズムと完全に一致している。
【0075】
P1Rアンタゴニストの「N」対「J」ドメインの選択性を、COS-7細胞において調べた(図8)。cAMP拮抗作用アッセイを、野生型P1R(A)、またはP1R Nドメインの大部分(残基24-181)を欠失しているP1R誘導体(P1R-delNt)(B)でトランスフェクトされたCOS-7細胞中で実施した。細胞を、親和性/効力のためにNドメインとJドメインの両方を利用するアゴニスト[Aib1,3,Tyr34]hPTH(1-34)NH2([Aib1,3]PTH(1-34))、または親和性/効力のためにJドメインのみを利用する[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2([Ac5c1]PTH(1-14))を、説明に示されている濃度で用いて処理し、その結果、アンタゴニストの非存在下(なし)でのcAMP応答の最大半減を誘発した。アナログPTHrP(5-36)およびDeg1,3,Bpa2-PTH(1-21)を、示されるように1×10-5Mで加えた。WTレセプターに対して、PTHrP(5-36)は、Deg1,3,Bpa2-PTH(1-21)よりもより効率的にPTH(1-34)と拮抗するが、PTH(1-21)アナログは、PTHrP(5-36)よりもより効率的にPTH(1-14)と拮抗する。P1R-delNtに対しては、Deg1,3,Bpa2-PTH(1-21)は、いずれのアゴニストとも拮抗するのに対して、PTHrP(5-36)は、アンタゴニスト能力を欠いている。従って、PTHrP(5-36)は、Nドメイン選択性アンタゴニストであり、一方Deg1,3,Bpa2-PTH(1-21)はJ-ドメイン選択性アンタゴニストである。アナログDeg1,3,Bpa2-PTH(1-14)は、これらのアッセイにおいてDeg1,3,Bpa2-PTH(1-21)と同様の挙動を示した。
【0076】
遊離のペプチドとして、または潜在的にPTH-1レセプターとの複合体である、これらのアナログの直接的構造分析は、リガンドがPTH-1レセプターに対してアゴニストとして作用することを可能にする、リガンド構造への価値ある洞察を提供することが可能である。この点に関して、本明細書に記載されるデータセットから導き出される情報は、PTH-1レセプターについてのペプチド模倣物の設計において有用であり得る。ネイティブなPTHペプチド配列の観点からこの問題に取り組むことは、ペプチドバックボーン鎖における各位置で可能であるコンホメーションの多様性により困難である。Aibなどの立体化学的に制約されるアミノ酸の組み込みは、これが予測可能なペプチド構造の核となるように働くので、この問題を軽減する。従って、このアプローチは、PTH-1レセプターについてのペプチド性または非ペプチド性のアゴニストのデノボ設計を容易にし得る。骨粗鬆症を治療する際のPTH(1-34)の有用性が最近明らかとなったので(Neer, R.M., et al., N.E.J.M. 344:1434-1441 (2001))、このようなアゴニストは重要な医学的インパクトを有するであろう。
【0077】
ネイティブPTHとの相互作用のコンピュータモデルが開発されている(Jin, L., et al., J. Biol. Chem. 275:27238-27244 (2000); Rolz, C., and Mierke, D. F., Biophysical Chemistry (2000))。短縮型PTH-1レセプター、P1R-delNtを用いる上記の実験は、PTHアナログとPTHレセプターとの間の相互作用に関するいくつかの洞察を提供する。なぜなら、これらは、1位および3位におけるAib置換の増強効果が、細胞外ループおよび膜貫通ドメインを含むレセプターの膜近傍領域(Jドメイン)を通して媒介されることを実証するからである。この知見は、PTH/PTH-1レセプター相互作用に関する累積的架橋および変異のデータと一致しており、これらは、PTHの(1-14)ドメインにおける残基が、独占的ではないとしても、主として、アミノ末端細胞外ドメイン(Nドメイン)とは反対に、レセプターのJドメインと相互作用すること示している。
【0078】
現在、2つのモードの拮抗作用がP1Rにおいて認識されている。Nドメイン阻害(A)は、PTHrP(5-36)アナログおよびPTHrP(7-34)アナログなどの大部分の従来的なP1Rアンタゴニストによって利用され、リガンドの(21-34)領域とP1R Nドメインの間の相互作用からの結合エネルギーの誘導に主として基づく。このメカニズムは、PTH(1-34)などのNドメイン依存性アゴニストの阻害のために効果的であるが、PTH(1-19)などのNドメイン非依存性アゴニストの阻害のためには効果的ではない。Jドメイン阻害(B)は、本明細書に記載される新規なアナログによって利用され、リガンドの(1-20)領域とP1RのJドメインとの間の相互作用からの結合エネルギーの誘導に主としてまたは全体的に基づく。この結果はまた、1位、2位、および/または3位の修飾の効果に拮抗することが、Jドメインを通して媒介されることを実証する。このメカニズムは、PTH(1-14)アナログなどのJドメイン依存性アゴニストの阻害のために効果的であるが、PTH(1-34)などのNドメイン依存性アゴニストの阻害のためには効果的ではない。このような分子がJドメインに結合すると思われることから、Jドメイン選択性アンタゴニストは、PTH模倣物として作用する低分子を特徴付けするために有用である。
【0079】
これまで、理解の明確化の目的のために例証および例示によっていくぶん詳細に本発明を完全に記載してきたが、本発明は、広範かつ等価な範囲の条件、製剤、およびその他のパラメーターを用いて、本発明を改変または変更することによって実施されることが可能であること、ならびにこのようは改変および変更は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されることは、当業者に明らかである。
【0080】
本明細書中上記に言及されたすべての刊行物、特許、および特許出願は、各々の個別の刊行物、特許、および特許出願が具体的かつ個別に参照により組み入れられることが示されるのと同程度に、その全体がおよび参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】利用したPTHアナログおよびそれらのアミノ酸配列を示す。すべてのペプチドはラットPTH配列に由来する。非従来的なアミノ酸には、ホモアルギニン(Har)、ノルロイシン(Nle);1-アミノイソ酪酸(Aib);1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(Ac3c)、ジエチルグリシン(Deg)、1-アミノシクロペンタン-1-カルボン酸(Ac5c)が含まれる。ペプチドにアンタゴニスト特性を付与するアミノ酸は太字体で示す。星印はヨード化されたチロシンを示す。
【図2】HKRR-B28細胞におけるPTHアナログの結合を示す。親のペプチドは[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2であり、かつその誘導体を、示されるように1位、2位、および/または3位で置換した。結合アッセイを、125I-[Aib1,3,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Tyr15]PTH(1-15)NH2を用いて実施した。データは示された実験の数(n)からであり、各々を全く同じに行った。
【図3】HKRK-B28細胞における機能的応答を示す。結合(AおよびB)ならびにcAMPアゴニズム/部分的アゴニズムアッセイ(C)を、HKRK-B28細胞において実施した。親のペプチドは[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2であり、かつその誘導体を、示されるように1位、2位、および/または3位で置換した。結合アッセイ(15℃で4時間)を、125I-[Aib1,3,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Tyr15]PTH(1-15)NH2トレーサーを用いて実施した。cAMPアッセイを室温で30分間実施した。親と比較して、置換アナログは減少したアゴニスト活性を示した。
【図4】HKRK-B28細胞におけるcAMP応答を示す。親のペプチド[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2、ならびに示されるように1位、2位、および/または3位で置換したその誘導体を、HKRK-B28細胞におけるcAMPアゴニスト応答についてアッセイした。親のペプチドは完全に強力かつ効率的なアゴニストとして機能し、Deg1,3-置換アナログは部分的なアゴニストであり、かつBpa2-置換アナログはアゴニスト活性を欠いている。
【図5】HK-RK-B28細胞における拮抗作用アッセイを示す。cAMP拮抗作用アッセイをHKRK-B28細胞中で実施した。細胞を、Jドメイン選択性アゴニスト、[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2(親)(10nM)と、単独で(なし)または候補アンタゴニストペプチド(10μM)とともに処理した。この候補アンタゴニストペプチドは、示されるように1位、2位、および/もしくは3位で置換した親のPTH(1-14)ペプチドの誘導体、または[I5,W23,Y36]PTHrP(5-36)アナログであった。星印は、アンタゴニストで処理していない細胞(なし)と比較した、cAMPレベルの有意な減少を示す。
【図6】COS-7細胞中の拮抗作用アッセイを示す。cAMP拮抗作用アッセイを、野生型P1R(A)またはP1R N末端ドメインの代わりにP1RのTM1につながれたPTHの最初の9残基を有する構成的に活性なP1R誘導体(挿入、B)でトランスフェクトされたCOS-7細胞中で実施した。Aにおいて、細胞を、Jドメイン選択性アゴニスト、[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2(親)(1nM)と、単独で(なし)または候補アンタゴニストペプチド(10μM)とともに処理した。この候補アンタゴニストペプチドは、示されるように1位、2位、および/もしくは3位で置換した親のPTH(1-14)ペプチドの誘導体、または[I5,W23,Y36]PTHrP(5-36)アナログであった。星印は、アンタゴニストで処理していない細胞(なし)と比較した、cAMPレベルの有意な減少を示す。
【図7】COS-7細胞における逆アゴニスト応答を示す。COS-7細胞を、構成的に活性なP1R:P1R-H223R (A)、P1R-T41OP (B)、P1R-H223R/T410P (C)、またはP1R-I458R (D)でトランスフェクトし、次いで、ペプチドの非存在下で(なし)または示されるアンタゴニスト/逆アゴニストペプチド(10μM)の存在下でのいずれかでインキュベートし(30分間、室温)、cAMPをRIAによって測定した。星印は、未処理細胞(なし)と比較した、cAMPレベルの有意な減少を示す。
【図8】COS-7細胞におけるPIRアンタゴニストの「N」対「J」ドメインの選択性を示す。cAMP拮抗作用アッセイを、野生型P1R(A)、またはP1R Nドメインの大部分(残基24-181)を欠失しているP1R誘導体(P1R-delNt)(B)でトランスフェクトされたCOS-7細胞中で実施した。細胞を、アンタゴニストの非存在下(なし)でのcAMP応答の最大半減を誘発するように、親和性/効力のためにNドメインとJドメインの両方を利用するアゴニスト[Aib1,3,Tyr34]hPTH(1-34)NH2([Aib1,3]PTH(1-34))、または親和性/効力のためにJドメインのみを利用する[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2([Ac5c1]PTH(1-14))を、説明に示されている濃度で用いて処理した。アナログPTHrP(5-36)およびDeg1,3,Bpa2-PTH(1-21)を、示されるように1×10-5Mで加えた。WTレセプターに対して、PTHrP(5-36)は、Deg1,3,Bpa2-PTH(1-21)よりもより効率的にPTH(1-34)アナログと拮抗するが、PTH(1-21)アナログは、PTHrP(5-36)よりもより効率的にPTH(1-14)と拮抗する。P1R-delNtに対しては、Deg1,3,Bpa2-PTH(1-21)は、いずれのアゴニストとも拮抗するのに対して、PTHrP(5-36)は、アンタゴニスト能力を欠いている。従って、PTHrP(5-36)は、Nドメイン選択性アンタゴニストであり、一方Deg1,3,Bpa2-PTH(1-21)はJ-ドメイン選択性アンタゴニストである。アナログDeg1,3,Bpa2-PTH(1-14)は、これらのアッセイにおいてDeg1,3,Bpa2-PTH(1-21)と同様の挙動を示した。
【図9】HKRK-B7細胞における競合結合アッセイを示す。結合アッセイを、トレーサー放射性リガンドとして125I-[Aib1,3,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Tyr15]PTH(1-15)NH2を、および示された非放射性ペプチドを競合物として使用し、野生型hP1Rを発現するHKRK-B7細胞において実施した。PTH(1-34)は[Tyr34]hPTH(1-34)NH2である。
【図10】P1R-delNtに対する競合的拮抗作用を示す。P1R-delNtでトランスフェクトされたCOS-7細胞を、図の説明に示されるように、様々な濃度のアゴニスト[Aib1,3,Tyr34]hPTH(1-34)NH2([Aib1,3]PTH(1-34))を用いて、アンタゴニストの非存在下で、または各々1×10-5Mのアンタゴニスト[Deg1,3,Bpa2,M]PTH(1-14)もしくは[Deg1,3,Bpa2,M]PTH(1-21)の存在下のいずれかで刺激した。各アンタゴニストは、アゴニスト用量-応答曲線の平行な右方向へのシフトを生じ、これは、阻害の競合メカニズムと一致している。
【図11】本発明のPTH誘導体とP1RレセプターのJドメインとの間の相互作用のモデルである。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、高次構造的に制約された副甲状腺ホルモン(PTH)および副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrT)アナログ、ならびにこれらのアナログの調製方法および使用方法に関する。
【0002】
連邦政府によって資金援助された研究開発に関する言及
米国特許審査便覧310の下での言及。米国政府は、本発明における一括払いライセンス、および米国国立衛生研究所によって授与された補助金番号DK-11794の規約によって提供されるような道理にかなった規約に基づいて他者にライセンスを与えるよう特許権者に要求するために限定された状況における権利を有する。
【0003】
本発明の開発の間に実施された研究の一部は米国政府の補助金を利用した。米国政府は本発明に特定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
背景技術
副甲状腺ホルモン
副甲状腺ホルモン(PTH)(84アミノ酸ペプチド)は、ヒト体内のイオン化血液カルシウムの主要なレギュレーターである(Kronenberg, H.M., et al.、Handbook of Experimental Pharmacology, Mundy, G.R. and Martin, T.J. (編)、pp.185-201、Springer-Verlag, Heidelberg (1993))。カルシウム濃度の調節は、胃腸、骨格、神経、神経筋、および心臓血管の系の通常の機能のために必要である。PTHの合成および放出は主に血清カルシウムレベルによって制御され;低レベルはホルモンの合成と放出の両方を刺激し、高レベルはそれらを抑制する。PTHは、次に、カルシウム交換の3つの部位:腸、骨、および腎臓において、血液へのカルシウムの流入を直接的または間接的に促進することによって、血清カルシウムレベルを維持する。PTHは、活性型ビタミンDの腎臓合成を促進することによって、正味の胃腸のカルシウム吸収に寄与する。PTHは、骨再吸収細胞である破骨細胞の分化を刺激することによって間接的にカルシウム再吸収を促進する。これはまた、腎臓に対する少なくとも3つの主要な効果:尿細管カルシウム再吸収の刺激、リン酸クリアランスの増強、および活性型ビタミンDの合成を完成する酵素の増加の促進を媒介する。PTHは、主としてアデニル酸シクラーゼおよび/またはホスホリパーゼCのレセプター媒介活性化を通してこれらの効果を発揮すると考えられている。
【0005】
カルシウムホメオスタシスの破壊は、多くの臨床的障害(例えば、重篤な骨疾患、貧血、腎臓機能障害、潰瘍、筋障害、および神経障害)を生じる可能性があり、通常、副甲状腺ホルモンのレベルの変化を生じる状態から生じる。高カルシウム血症は、血清カルシウムレベルの上昇によって特徴付けられる状態である。これはしばしば、過度のPTH産生が副甲状腺の損傷(例えば、腺腫、過形成、または癌腫)の結果として起こる原発性副甲状腺機能亢進症と関連する。別の型の高カルシウム血症である悪性体液性高カルシウム血症(HHM)は、最も一般的な新生物随伴症候群である。これは、大部分の場合において、PTHとアミノ酸相同性を共有するタンパク質ホルモンの1つのクラスの腫瘍(例えば、扁平上皮癌、腎臓癌、卵巣癌、または膀胱癌)による産生から生じると考えられる。これらのPTH関連タンパク質(PTHrP)は、PTHの腎臓および骨格の特定の作用を模倣するようであり、これらの組織におけるPTHレセプターと相互作用すると考えられている。
【0006】
PTH誘導体
PTH誘導体は、アミノ酸置換を有するポリペプチドを含むか、または全長分子と比較して短縮される。PTHの14アミノ酸、21アミノ酸、および34アミノ酸のアミノ末端短縮型、ならびにC末端短縮型が研究された。さらに、短縮型ポリペプチド中のアミノ酸置換もまた研究された。
【0007】
合成PTH(1-34)は、大部分の細胞に基づくアッセイ系において完全な生物活性を示し、動物における骨質量に対してタンパク質同化性効果を有し、かつ閉経後の骨粗鬆症の女性における骨折のリスクを減少させることが最近示された(Neer, R.M., et al., N.E.J.M. 344:1434-1441 (2001); Dempster, D.W., et al., Endocr Rev 14:690-709 (1993))。PTHは、アデニリルシクラーゼ/cAMPおよびホスホリパーゼC/イノシトールリン酸(IP)シグナル伝達経路と共役する、クラスIIGタンパク質結合ヘプタヘリックスレセプターであるPTH/PTHrPレセプター(P1R)に対して作用する(Rippner, H., et al., Science 254:1024-1026 (1991))。欠失分析研究は、PTHのアミノ末端残基が、P1Rを刺激してcAMPおよびIPシグナル伝達経路を活性化する際に決定的な役割を果たすことを示した(Tregear, G.W., et al., Endocrinology 93:1349-1353 (1973); Takasu, H., et al., Biochemistry 38:13453-13460 (1999))。架橋およびレセプター変異誘発研究は、PTHのアミノ末端部分の残基が、レセプターの膜近傍領域中に存在する7つの膜貫通ヘリックスの細胞外ループおよび細胞外末端と相互作用することを示した。
【0008】
大部分の現在のP1Rアンタゴニストは、PTH(1-34)またはPTHrP(1-36)のN-末端短縮型アナログ(例えば、PTHrP(5-36))である。これらのアンタゴニストは、レセプターのアミノ末端の細胞外(「N」)ドメインを高い結合親和性で認識する。しかし、N末端短縮は、PTHまたはPTHrPペプチドがレセプターを通してシグナル伝達することを不可能にし、それによってアンタゴニストとして作用する。
【0009】
α-ヘリックス安定化剤
PTHおよびPTHrPの最初の34アミノ酸は、高親和性P1R結合およびP1R媒介シグナル伝達応答の強力な誘導のために必要な情報を含む(Nerr, RM, et al., N.E.J.M. 344:1434-1441 (2001))。PTHの短いN末端フラグメント、例えば、PTH(1-14)およびPTH(1-11)は極度に弱い結合親和性を示すが(Kd>>100μM)、それにも関わらず、PTH(1-34)の効力(EC50〜2nM)よりも実質的に弱い効力(EC50s≧100μM)であるが、cAMPシグナル伝達応答を誘発することが可能である(Luck, MD et al., Molecular Endocrinology 13:670-680 (1999))。一連の修飾されたPTH(1-14)およびPTH(1-11)アナログが、PTH(1-34)の効力に近いか、または完全に等しい程のシグナル伝達効力を示すことが最近発見されている(Shimizu, M. et al., Endocrinology 142:3068-3074 (2001); Shimizu, M. et al., J. Biol. Chem. 276:490003-49012 (2001); Shimizu, M. et al., J. Biol. Chem. 275:21836-21843 (2000))。
【0010】
このような型の修飾因子の1つは、塩基性リジン残基と酸性アスパルテームまたはグルタミン酸残基との間で形成される側鎖から側鎖へのアミド架橋であるラクタム架橋である(Condon, SM. et al., J. Am. Chem. Soc. 122:3007-3014 (2000))。ラクタム架橋形成は、それによってペプチドの生物活性コンホメーションが推定される可能性のある周知の方法である(同文献を参照されたい)。ヒトPTH(1-31)および(1-34)(hPTH)における、残基13と17の間;18と22の間;および26と30の間のラクタム架橋の組み込みは、ヘリックスコンホメーションを保持しながら生物活性を示した(同文献を参照されたい)。さらに、hPTH(1-31)およびhPTH(1-34)のこれらの修飾は、α-ヘリックスがPTHのN末端部分についての好ましい生物活性コンホメーションであり得ることを示唆する(Shimizu, N. et al., J.Biol.Chem. 276:490003-49012 (2001))。
【0011】
最近、1位および/または3位におけるα,α-二置換アミノ酸、α-アミノ-イソ酪酸(Aib)を含むPTH(1-14)アナログが、これらの位置にアラニンを含むそれらの対応物ペプチドよりも、10から100倍高い親和性およびcAMPシグナル伝達強度を有することもまた発見された(Shimizu, N. et al., J. Biol. Chem. 276:49003-49012 (2001))。
【発明の開示】
【0012】
発明の要旨
本発明は新規なP1Rポリペプチドアンタゴニストを提供する。これらのアンタゴニストは、短縮型PTHおよびPRHrPポリペプチド中の選択された位置にアミノ酸置換を含み、かつレセプターの膜近傍(「J」)ドメインに選択的に結合する。このJドメインは、7つの膜貫通ヘリックスおよび細胞外ループを含むレセプター(P1R)の領域である。P1RのJドメインに結合する、本発明のN末端PTHアンタゴニストアナログは、PTH/P1R機能亢進に関連する状態(例えば、原発性副甲状腺機能亢進症、ヤンセン軟骨形成不全症)を治療するために有用である。さらに、これらのアナログは、P1Rに結合する他のリガンド(例えば、低分子PTH模倣化合物)を同定するために有用である(例えば、高スループットスクリーニングを利用して)。さらに、これらのアナログは、それらの選択性について、例えば、Jドメインについて、P1Rリガンドを薬理学的に分析するために使用可能である。
【0013】
本発明は、ポリペプチドPTH(1-21)、PTH (1-20)、PTH(1-19)、PTH(1-18)、PTH(1-17)、PTH(1-16)、PTH(1-15)、PTH(1-14)、PTH (1-13)、PTH(1-12)、PTH(1-11)およびPTH(1-10)の誘導体を提供し、ここで、上記誘導体は、P1RのJドメインに選択的に結合し、P1R活性のアンタゴニストまたは逆アゴニストとして作用する。本発明はまた、このようなペプチドを作製する方法を提供する。さらに、本発明は、レセプター-リガンドアッセイにおけるこのようなペプチドの使用のための組成物および方法を含む。さらに、本発明は、PTHのレベルの上昇と関連する状態(例えば、高カルシウム血症を含む)および副甲状腺機能亢進症に関連する状態を治療する際のこのようなペプチドの使用のための組成物および方法を提供する。
【0014】
1つの局面において、本発明は
からなる群より選択されるペプチド;アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそれらのフラグメント;それらの薬学的に許容される塩;およびそれらのN-もしくはC-誘導体に関し:ここでX01およびX03はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Ac5c、Ac3c、Deg、AibまたはAc5c、Ac3c、Deg、もしくはAibのデサミノ型)であり;X02はTrp、Bpa、ArgまたはValであり;X04はMetまたはNleであり;X05はGln、DegまたはAsnであり;X06はHarまたはLeuであり;X07はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Aib)、AlaまたはGlyであり;およびX08はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Aib)、Trp、TyrまたはHisである。本発明の1つの態様において、上記のペプチドは
;アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそれらのフラグメント;それらの薬学的に許容される塩;およびそれらのN-もしくはC-誘導体から本質的になり、ここでX01およびX03はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Ac5c、Ac3c、Deg、AibまたはAc5c、Ac3c、Deg、もしくはAibのデサミノ型)であり;X02はTrp、Bpa、ArgまたはValであり;X04はMetまたはNleであり;X05はGln、DegまたはAsnであり;X06はHarまたはLeuであり;X07はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Aib)、AlaまたはGlyであり;およびX08はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Aib)、Trp、TyrまたはHisである。
【0015】
本発明はさらに、SEQ ID NO:1のペプチドのフラグメント、特に
に及ぶ。本発明はさらに、上記のペプチドの薬学的に許容される塩およびそれらのペプチドのN-またはC-誘導体を含む。本発明の態様は、上記に列挙されたポリペプチドのいずれかに及び、ここで上記ポリペプチドはC末端アミドを含む。
【0016】
本発明の別の局面は、
からなるペプチドに関し、ここで、X01およびX02はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Ac5c、Ac3c、Deg、またはAib)であり、X03はAib、Gln、Deg、またはAsnであり、X04はMetまたはNleであり、X05はHarまたはLeuであり、X06はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Aib)、Ala、またはGlyであり、X08はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Aib)またはLysであり、およびX07はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Aib)、TrpまたはHisであり、X08はArgまたはGluでありかつX09はTyrまたはMetであり;ここで上記ペプチドはP1RのJドメインに選択的に結合する。
【0017】
本発明はさらに、SEQ ID NO:6のペプチドのフラグメント、特に、
に及ぶ。本発明はさらに、上記のペプチドの薬学的に許容される塩およびそれらのペプチドのN-またはC-誘導体を含む。本発明の態様は、上記に列挙されたポリペプチドのいずれかに及び、ここで上記ポリペプチドはC末端アミドを含む。
【0018】
本発明はさらに、放射性標識、蛍光標識、生物発光標識、または化学発光標識からなる群より選択される標識で標識された上記のポリペプチドのいずれかに及ぶ。1つの態様において、放射性標識は125Iまたは99mTcである。
【0019】
本発明に従うペプチドの態様は以下を含む:
【0020】
別の局面において、本発明は、上記のペプチドのいずれかを作製する方法に関し、この方法は、ペプチドが固相合成によって合成される方法を含む。本発明はまた、上記のペプチドのいずれかを作製する方法に関し、ここでペプチドはFMOCによって保護される。
【0021】
本発明のさらなる局面において、本発明はまた、本発明のペプチドおよび薬学的に許容される賦形剤および/または生理食塩水もしくは生理学的に緩衝化された溶液などの薬学的に許容される溶液を含む薬学的組成物を提供する。
【0022】
本発明はまた、PTH活性の増加によって特徴付けられる哺乳動物の状態(例えば、高カルシウム血症など)を治療するための方法を提供し、この方法は、本発明のペプチドの有効量をその必要がある対象に投与する工程を含む。本発明の1つの態様は、高カルシウム血症などの状態に及ぶ。さらなる態様は、約0.01μg/kg/日〜約1.0μg/kg/日のポリペプチドの有効量を使用することを含み、ここで、ポリペプチドは非経口的に、皮下的に、または経鼻吸入法によって投与されてもよい。
【0023】
本発明のなおさらなる局面に従って、本発明はまた、リガンド-レセプターアッセイにおいてJ-ドメイン選択的ペプチドを使用するための方法を提供する。この方法に従って、ペプチドは、放射性標識、蛍光標識、生物発光標識、または化学発光標識からなる群より選択される標識で標識されてもよい。適切な放射性標識の例は125Iまたは99mTcである。
【0024】
本発明はさらに、PTH-1レセプターを有する哺乳動物細胞におけるcAMPの増加をブロックする方法に関し、この方法は、cAMPの増加をブロックするために十分な量の本発明のポリペプチドと細胞を接触される工程を含む。
【0025】
発明の詳細な説明
定義
単数形(「a」「an」「the」)などは、他に示されない限り、複数形を含んでもよい。また、単数形への言及は複数形を含む。それゆえに、例えば、ペプチドは複数のペプチドもまた含む。
【0026】
アミノ酸配列:本願におけるアミノ酸配列は、アミノ酸についての1文字または3文字のいずれかの記号表示を使用する。これらの記号表示は当業者に周知であり、例えば、Cooper, G.M., The Cell 1997, ASM Press, Washington, D.C. またはAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, 1994などの多数の容易に入手可能な参考文献において見出され得る。例えば、Ser-3-->Alaまたは[Ala3]ペプチドのように配列における置換が言及される場合、これは、ポリペプチドのN末端からの3番目のセリンが、別のアミノ酸、この例においてはアラニンで置換されていることを意味する。
【0027】
本出願において、「Aib」とはα-アミノイソブチル酪酸をいう;「Har」とはホモアルギニンをいう;「Nle」とはノルロイシンをいう;AC3Cとは1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸をいう;AC5Cとは1-アミノシクロペンタン-1-カルボン酸をいう;Harとはホモアルギニンをいう;Degとはジエチルグリシンをいう;および他のアミノ酸は慣用的な1文字コードまたは3文字コードのいずれかで示される。
【0028】
タンパク質の生物学的活性:この表現はポリペプチドの任意の生物学的活性をいう。これらの活性の例には、SEQ ID NO:1またはその誘導体の化合物の代謝的または生理学的機能(類似の活性または改善された活性、または望ましくない副作用の減少を伴う活性を含む)が含まれるがこれらに限定されない。上記の化合物の抗原性活性および免疫原性活性もまた含まれる。
【0029】
誘導体または機能的誘導体:用語「誘導体」または「機能的誘導体」は、PTH分子の「変異体」、「誘導体」、または「化学的誘導体」を含むことが意図される。分子の「変異体」、例えば、SEQ ID NO:1その誘導体の化合物またはなどは、完全な分子またはそのフラグメントのいずれかに対して実質的に類似する分子をいう。分子の「アナログ」、例えば、SEQ ID NO:1またはその誘導体の化合物などは、SEQ ID NO:1の分子またはそのフラグメントのいずれかに実質的に類似する非天然分子を意味する。
【0030】
PTH誘導体は、同じサイズのネイティブなPTHポリペプチドと比較してポリペプチドにおける変化を含む。ネイティブなPTH(1-14)ポリペプチドの配列はSEQ ID NO:17(ヒトPTH(1-21))またはSEQ ID NO:18(ラットPTH(1-21))の最初の14アミノ酸である。分子は、両方の分子におけるアミノ酸の配列が実質的に同一である場合、および両方の分子が同様の生物学的活性を有する場合に、別の分子に対して「実質的に同様である」といわれる。従って、この用語は、1つの分子が他方において見出されないさらなるアミノ酸残基を含むか、またはアミノ酸残基の配列が同一でない場合においてでさえ、この用語は本明細書において使用されるように、同様の活性を有する2つの分子が、変異体、誘導体、またはアナログと見なされることが可能である。しかし、PTH誘導体は、ネイティブな分子と実質的に同様の生物学的活性を有する必要はない。ある場合において、PTH誘導体は、ネイティブなPTHとは実質的に異なる活性を有し得る。例えば、誘導体は、PTHレセプターのアンタゴニストまたはアゴニストのいずれかであり得る。
【0031】
本明細書中で使用される場合、分子は、これが通常その分子の一部ではないさらなる化学的部分を含む場合、別の分子の「化学的誘導体」であるといわれる。このような部分は、分子の溶解性、吸収、生物学的半減期などを改善することが可能である。この部分は、代替的に、その分子の任意の望ましくない副作用を除去または減弱するなど、その分子の毒性を減少させる。このような副作用を媒介することが可能である部分の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences(1980)に開示されており、当業者には明らかである。
【0032】
フラグメント:分子の「フラグメント」、例えば、SEQ ID NO:1またはその誘導体などは、これらの分子の任意のポリペプチドサブセットをいう。
【0033】
融合タンパク質:用語「融合タンパク質」は、例えば、次にさらなるアミノ酸リーダーポリペプチド配列が連結される、そのN末端に連結された「選択的切断部位」を伴うかまたは伴わない、SEQ ID NO:1またはその誘導体などの化合物を含む融合タンパク質を意図する。
【0034】
Jドメイン:Jドメインは、7つの膜貫通ドメインおよび細胞外ループを含むレセプターの領域に広がるP1Rのドメインである。
【0035】
ポリペプチド:ポリペプチドおよびペプチドは交換可能に使用される。ポリペプチドという用語は、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合、すなわち、ペプチドアイソスターによって互いに結合された2つまたはそれ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質をいう。「ポリペプチド」とは、短い鎖(一般的にはペプチド、オリゴペプチド、またはオリゴマー)と、長い鎖(一般的には、タンパク質)の両方をいう。ポリペプチドは、遺伝子にコードされる20個のアミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよく、天然のプロセス(例えば、翻訳後プロセシング)によって、または当技術分野において周知の化学修飾技術によってのいずれかで修飾されたアミノ酸配列を含む。このような修飾は基本的な教科書およびより詳細な研究論文、ならびに研究文献に十分に記載されている。修飾はポリペプチドのどこで行われることも可能であり、これには、ペプチドバックボーン、アミノ酸側鎖、およびアミノ末端およびカルボキシル末端が含まれる。同じ型の修飾が所定のポリペプチドのいくつかの部位において同じかまたは異なる程度で存在してもよいことが認識される。また、所定のポリペプチドは多くの型の修飾を含んでもよい。
【0036】
ポリペプチドは分枝していてもよく、およびこれらは、分枝を伴ってまたは伴わずに環状であってもよい。環状、分枝、および環状分枝のポリペプチドは翻訳後修飾から生じてもよく、または合成方法によって作製してもよい。修飾には、以下が含まれる:アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環状化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解的プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化などのタンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加、およびユビキチン化。例えば、Proteins-Structure and Molecular Properties, 第2版, T.E. Creighton, W.H. Freeman and Company, New York, 1993およびWold, F., Posttranslational Protein Modifications:Perspective and Prospests, 1〜12頁, Posttranslational Covalent Modification of Proteins, B.C. Johnson編, Academic Press, New York, 1983; Seifter et al.,「Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors」, Methods in Enzymol. 182:626-646 (1990)およびRattan et al.,「Protein Synthesis:Posttranslational Modifications and Aging」, Ann NY Acad Sci 663:48-62 (1992)を参照されたい。
【0037】
PTHアナログ-構造的特性および機能的特性
α-アミノイソ酪酸(Aib)は、短いN末端PTHペプチドアナログに導入された。様々な極性溶媒または非極性溶媒の中で実施されたPTH(1-34)アナログの多数のNMR研究は、一般的に、2つのドメインの二次構造:ほぼSer-17からVal-31までに拡がる安定なC末端ヘリックス、およびSer-3からLys-13まで変動的に拡がるより短くかつより安定でないアミノ末端ヘリックスを示した。これらの2つのドメインはベンドまたはターン領域によって接続されている。
最近のPTH(1-34)の結晶学的研究は、Ser-3からHis-32までに拡がり、かつ中央部分にわずかな15°のベンドのみを含む連続的なα-ヘリックスを示した。しかし、NMRデータは、N末端ヘリックスが比較的弱いことを示す。ヘリックス安定化修飾(Aib残基の導入など)は、P1Rレセプターへの結合親和性に関して顕著な利点を提供し、PTH(1-34)と比較し得る結合親和性を有する短いペプチド(≦14アミノ酸)を生じる。
【0038】
単純な非注入方法によって送達可能であるために十分に小さく、かつP1RのJドメインに結合することによってアンタゴニストまたは逆アゴニストとして作用する、PTHまたはPTHrPの新規な「最小化」改変体が本明細書に記載される。本発明の改変体は、ポリペプチドの最初の21アミノ酸における置換を含む。この新規なポリペプチドは、成熟PTHポリペプチドのアミノ酸配列1〜21、1〜20、1〜19、1〜18、1〜17、1〜16、1〜15、1〜14、1〜13、1〜12、1〜11、および1〜10に対応する。より短い改変体(≦PTH1-14)は、2,000ダルトン未満の分子量を有する。
【0039】
ネイティブPTH(1-21)ペプチドの一次アミノ酸配列(N末端からC末端)は
であるのに対して、ネイティブラットPTH(1-21)の一次配列は
である。
【0040】
タンパク質が産生されるとき、本明細書中に記載される化合物は、溶液相または固相のペプチド合成の技術および組み合わせ化学を用いたインサイチュー合成による産生に対して受容可能である。特に、固相ペプチド合成技術は、ヒトPTHの産生において首尾よく適用され、かつこれらの化合物の産生のために使用されることが可能である(手引きとしては、Kimura et al., 前記、およびFairwell et al., Biochem. 22:2691 (1983)を参照されたい)。比較的大スケールでのヒトPTHの産生における成功は、Goud et al., J. Bone Min. Res. 6(8):781 (1991)によって報告されている。合成的ペプチド合成アプローチは、一般的に、自動合成装置および固相としての適切な樹脂の使用を伴い、この固相に、SEQ ID NO:1またはその誘導体の配列を有するペプチドの、所望の化合物のC末端アミノ酸が結合される。次いで、N末端方向でのペプチドの伸長が、FMOCまたはBOCのいずれかに基づく化学的プロトコールを使用して、代表的には、合成が完了するまで、適切に保護された型の次の所望のアミノ酸を首尾よくカップリングすることによって達成される。次いで、保護基が、通常は樹脂からのペプチドの切断と同時にペプチドから切断され、次いで、ペプチドが、従来的な技術、例えば、溶媒としてアセトニトリルを使用し、イオン対剤としてトリフルオロ酢酸を使用する逆相HPLCを使用して、単離および精製される。このような手順は、一般的には、多数の刊行物に記載されており、例えば、Stewart and Young,「Solid Phase Peptide Synthesis」第2版, Pierce Chemical Company, Rockford, IL (1984)が参照され得る。ペプチド合成アプローチは、例えば、遺伝子によってコードされていないアミノ酸(例えば、Aibなど)を取り込む、SEQ ID NO:1およびその誘導体などの産生のために必要であることが理解される。
【0041】
本発明の他の局面に従い、置換基は、当技術分野において公知である標準的な方法によって、本発明の化合物のN末端アミノ酸の遊離のアミンに結合されることが可能である。例えば、アルキル基(例えば、C1-12アルキル)は還元的アルキル化を使用して結合され得る。ヒドロキシアルキル基(例えば、C1-12ヒドロキシアルキル)はまた、還元的アルキル化を使用して結合され得、ここで、遊離のヒドロキシ基はt-ブチルエステルで保護される。アシル基(例えば、COE1)は、遊離の酸(例えば、E1COOH)をN末端アミノ酸の遊離のアミノにカップリングすることによって結合され得る。さらに、ポリペプチドのC末端の可能な化学修飾は本発明の範囲内に含まれる。これらの修飾は、レセプターへの結合親和性を改変することが可能である。
【0042】
P1RのJ-ドメインについての選択性を保持し、かつ拮抗作用または逆アゴニスト活性もまた保持する、例えば、二次構造もしくは三次構造の変化、および/または安定性の変化を有するSEQ ID NO:1およびその誘導体などの化合物もまた、本発明の範囲内にあることが意図される。このような誘導体は、ラクタム環状化、ジスルフィド結合、または当業者に公知である他の手段を通して達成されるかもしれない。
【0043】
本発明の化合物の有用性および投与
本発明の化合物またはその誘導体は、P1Rのアンタゴニストまたは逆アゴニストとして作用するそれらの能力に部分的に起因して複数の用途を有する。本発明のペプチドの複数の用途には、とりわけ、PTHもしくはPTHrPの活性および/または産生の増加によって症状が現れる哺乳動物の様々な状態の予防および治療、診断用プローブ、診断用プローブとしての使用のための抗体を調製するための抗原、ならびに分子量マーカーとしてさえの用途が含まれる。PTHポリペプチドにおいて1つまたは複数のアミノ酸を特異的に置換可能であることは、特定の分子量のポリペプチドの構築を可能にする。
【0044】
特に、本発明の化合物は、高カルシウム血症の予防および治療的処置のため、ならびに副甲状腺機能亢進症、ヤンセン軟骨形成不全症、またはそれに関連する状態の治療のために示される。
【0045】
特定の態様において、本発明の化合物、またはその塩は、PTHレセプターのアンタゴニストを必要とする状態についての治療の必要がある患者を治療するために必要な量で投与される。ある態様において、これらの化合物は、1日あたり約0.01〜1μg/kg体重の間、好ましくは1日あたり約0.07〜約0.2μg/kg体重の間で投与される。50kgのヒト女性対象については、生物学的に活性な化合物の1日の用量は、約0.5〜約50μg、好ましくは約3.5〜約10μgである。ウマ、イヌ、およびウシなどの他の哺乳動物においては、より多い用量が必要とされ得る。この投薬量は、最も有効な結果を達成するために必要とされるように、単回投与によって、複数回適用によって、または制御放出を介して、好ましくは注射によって毎日1回以上、従来的な薬学的組成物中で送達されてもよい。例えば、この投薬量は、経鼻吸入法によって、従来的な薬学的組成物中で送達されてもよい。
【0046】
正確な用量および組成物、ならびに最も適切な送達治療プログラムの選択は、とりわけ、本発明の選択された化合物の薬理学的特性、治療される状態の性質および重篤度、ならびにレシピエントの身体的状態および精神的鋭敏さによって影響される。
【0047】
代表的な送達治療プログラムには、非限定的に、経口、非経口、皮下、経皮(transcutaneous)、筋肉内および静脈内、直腸、口腔(舌下を含む)、経皮(transdermal)、および鼻内吸入が含まれる。
【0048】
薬学的に許容される塩は、毒性の副作用を伴うことなく、本発明の化合物の望ましい生物学的活性を保持する。このような塩の例は、(a)無機酸、例えば、塩酸、臭化水素、硫酸、リン酸、硝酸などとともに形成された酸付加塩;および有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などとともに形成された酸付加塩;(b)多価金属カチオン、例えば、亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウムなどとともに形成された塩基付加塩;またはN,N'-ジベンジルエチレンジアミンもしくはエチレンジアミンから形成された有機カチオンとともに形成された塩基付加塩;あるいは(c)(a)および(b)の組み合わせ、例えば、タンニン酸亜鉛塩などである。薬学的に許容される緩衝液には、生理食塩水またはリン酸緩衝化生理食塩水が含まれるがこれらに限定されない。当業者に公知である許容される保存剤もまた、これらの溶液に含まれる。PTHと同様に、PTH変異体は、所定の臨床的状態を治療する際に有用な他の薬剤と組み合わせて投与してもよい。
【0049】
本発明のさらなる局面は、本発明の活性成分化合物または本発明のその誘導体、またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される非毒性担体と混合して含む薬学的組成物に関する。上述のように、このような組成物は、非経口(皮下、経皮(transcutaneous)、筋肉内、または静脈内)投与のために、特に液体溶液または懸濁物の形態で;経口または口腔投与のために、特に錠剤またはカプセルの形態で;直腸、経皮(transdermal)投与のために;および鼻内投与のために、特に粉末、鼻滴下剤、またはエアロゾルの形態で調製することが可能である。
【0050】
本発明の組成物は、単位投薬量形態で便利に投与することが可能であり、かつ薬学分野において周知の方法のいずれかによって、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第17版, Mack Publishing Company, Easton, Pa (1985)(参照により本明細書に組み入れられる)に記載されるように調製することが可能である。非経口投与のための処方物は、賦形剤として、滅菌水または生理食塩水、プロピレングリコールなどのアルキレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物由来のオイル、水素化ナフタレンなどを含んでもよい。経口投与のために、処方物は、胆汁酸塩またはアシルカルニチンの付加によって増強されることが可能である。鼻投与のための処方物は固体であってもよく、賦形剤、例えば、ラクトースまたはデキストランを含んでもよく、または鼻滴下剤もしくは定量スプレーの形態での使用のための水性もしくは油性溶液であってもよい。口腔投与のために、代表的な賦形剤には、糖、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルファ化でんぷんなどが含まれる。
【0051】
鼻投与のために製剤化された場合、鼻粘膜を横切る吸収は、例えば、約0.2〜15重量パーセントの間の範囲、好ましくは約0.5〜4重量パーセントの間の範囲、最も好ましくは約2重量パーセントの量の、グリコール酸、コール酸、タウロコール酸、エトコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、デヒドロコール酸、グリコデオキシコール酸、シクロデキストリンなどの界面活性剤である酸によって増強することが可能である。
【0052】
長期間の間、例えば、1週間から1年間の期間の間にわたっての、対象への本発明の化合物の送達は、所望の放出期間、十分に活性な成分を含む制御放出系の単回投与によって達成することが可能である。様々な制御放出系、例えば、モノリシックまたはリザーバー型マイクロカプセル、デポー移植物、浸透圧ポンプ、ベシクル、ミセル、リポソーム、経皮パッチ、イオン泳動装置、および代替的な注射可能投薬形態をこの目的のために利用することが可能である。活性成分の送達が所望される部位への局在化は、いくつかの制御放出装置のさらなる特徴であり、これは特定の障害の治療において有益性を証明し得る。
【0053】
制御放出処方物の1つの形態は、Kent, Lewis, Sanders, and Tice, 米国特許第4,675,189号の先駆的な研究において記載されたようなコポリ(乳酸/グリコール酸)などのゆっくりと分解する、非毒性、非抗原性のポリマー中に分散もしくはカプセル化されたポリペプチドまたはその塩を含む。この化合物、またはそれらの比較的不溶性の塩はまた、コレステロールもしくは他のマトリックスペレット、またはシラストマー(silastomer)マトリックス移植物中に処方されることが可能である。さらなる徐放性のデポー移植物、または注射可能な処方物は当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson編, Marcel Dekker, Inc., New York, 1978およびR.W. Baker, Controlled Release of Biologically Active Agents, John Wiley & Sons, New York, 1987を参照されたい。
【0054】
PTHアナログレセプター-シグナル伝達活性
ホルモン作用の発現の決定的な段階は、標的細胞の原形質膜表面上のレセプターとホルモンの相互作用である。ホルモン-レセプター相互作用の形成は、様々な生物学的応答を誘発するために細胞への細胞外シグナルの伝達を可能にする。
【0055】
本明細書中に記載されるポリペプチドは、cAMP蓄積アッセイ法を使用して、それらのアンタゴニスト性特性または逆性アゴニスト性特性についてスクリーニングすることが可能である。1つのそのようなアッセイにおいて、細胞表面にPTH-1レセプターを発現する細胞は、2mM IBMX(3-イソブチル-1-メチル-キサンチン、Sigma, St.Louis, MO)の存在下で、37℃で5〜60分間、ネイティブPTH(1-84)とともにインキュベートされる。サイクリックAMPの蓄積は特異的ラジオイムノアッセイ法によって測定される。PTH-1レセプターへの結合についてネイティブPTH(1-84)もしくはPTH(1-34)、またはそれらの任意のフラグメントと競合し、かつcAMP蓄積に対するネイティブPTH(1-84)またはPTH(1-34)の効果を阻害する化合物は、競合的アンタゴニストと見なされる。このような化合物は高カルシウム血症を治療するために有用である。
【0056】
逆に、PTH-1レセプターへの結合についてネイティブPTH(1-84)またはPTH(1-34)と競合しないが、なおネイティブPTH(1-84)またはPTH(1-34)によるcAMP蓄積の活性化を妨害する(おそらくレセプター結合部位をブロックすることによって)本明細書中に記載されるPTHアナログまたはその誘導体は、非競合的アンタゴニストと見なされる。このような化合物もまた、高カルシウム血症を治療するために有用である。
【0057】
PTHアナログの治療的使用
高カルシウム血症のある型は、PTHおよびPTHrPおよびPTH-1およびPTH-2レセプターの間の相互作用に関連する。高カルシウム血症は、血清カルシウムレベルの異常な上昇が存在する状態である;これはしばしば、他の疾患(副甲状機能亢進症、骨粗鬆症、乳房、肺、および前立腺の癌腫、頭頸部および食道の類表皮癌、多発性骨髄腫、ならびに副腎腫を含む)に伴う。
【0058】
「アゴニスト」とは、PTH-1レセプターによって媒介される細胞応答を増強または強化することが可能であるリガンドが意図される。「アンタゴニスト」とは、PTH-1レセプターによって媒介される細胞応答を阻害することが可能であるリガンドが意図される。本発明の任意のペプチドが、「アゴニスト」または「アンタゴニスト」、すなわちこのような細胞応答を増強、または阻害することが可能である化合物として分類されるかどうかを、当技術分野で公知のタンパク質リガンド/レセプター細胞応答または結合アッセイ法(本願において他の箇所に記載されているものを含む)を使用して決定することが可能である。
【0059】
本発明のなおさらなる局面に従うと、PTH-1レセプターの変化した作用、または過度の作用から生じる医学的な障害を治療するための方法が提供され、この方法は、患者のPTH-1レセプターの活性化を阻害するために十分な本発明の化合物またはその誘導体の治療有効量をその患者に投与する工程を含む。
【0060】
この態様において、PTH-1レセプターの作用の変化から生じる障害を有すると疑われている患者は、PTH-1レセプターの選択的アンタゴニストである本発明の化合物または本発明のその誘導体を使用して治療することが可能である。このようなアンタゴニストには、PTH-1レセプター媒介細胞活性化を妨害すると決定された(本明細書中に記載されるアッセイ法によって)本発明の化合物もしくは本発明のその誘導体、または同様の特性を有する他の誘導体が含まれる。
【0061】
アンタゴニストを投与するために、本発明の化合物またはその誘導体は、一般的には、適切な担体または賦形剤(例えば、生理食塩水など)中で製剤化されることによって医薬の製造において使用され、およびPTH-1レセプターに結合する本発明の化合物またはその誘導体の適切な阻害を提供する投薬量で、静脈内、筋肉内、皮下、経口、鼻内で投与される。代表的な投薬量は、kg体重あたり1日あたり1ng〜10mgのペプチドである。
【0062】
本発明は、本発明の精神または範囲またはその任意の態様から逸脱することなく、広範な組成のパラメーター、濃度、投与の様式、および条件の範囲内で実施され得ることが当業者によって認識される。
【0063】
本明細書において本発明を十分に記載してきたが、本発明は、例示目的で提供される特定の実施例に対する参照によって、より容易に理解される。本発明は、本明細書中で特定されない限り、本明細書の限定を意図するものではない。
【0064】
実施例
以下のプロトコールおよび実験の詳細は、以下に続く実施例において言及される。
【0065】
ペプチド
ペプチドは、自動化ペプチドシンセサイザー(モデル430A PE, Applied Biosystems, Foster City, CA、またはモデル396 MBS Advanced Chem Tect, Louisville, KY)上で、FMOC主鎖保護基ケミストリー、カップリング反応のためにHBTU/HOBt/DIEA (1:1:2 モル比)、およびTFA媒介切断/側鎖-脱保護(MGH Biopolymer Synthesis Facility, Boston, MA)を使用して調製する。すべてのペプチドをC18含有カートリッジ上での吸着により脱塩し、HPLCによってさらに精製する。乾燥ペプチド粉末を10mM 酢酸中で再構成し、-80℃で保存する。各ペプチドの純度、同一性、およびストック濃度は、分析用HPLC、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)質量スペクトル分析、およびアミノ酸分析によって保証する。放射性標識を、125I-Na(2,200 Ci/mmol、NEN)およびクロラミン-Tを使用して実施する;得られる放射性リガンドをHPLCによって精製する。
【0066】
細胞培養
細胞株HKRK-B28(Shimizu, et al., Biochem. 41:13224-33 (2002))を、フクロネズミ/ラットハイブリッドP1RをコードするプラスミドDNAを用いる安定なトランスフェクションによって、ブタ腎臓細胞株LLC-PK1から誘導した。これは細胞あたり〜280,000レセプターを発現する。HKRK-B7細胞株を、ヒトP1RをコードするDNAを用いる安定なトランスフェクションによって、LLC-PK1細胞株から誘導した。HKRK-B7細胞は、細胞あたり約950,000ヒトP1Rを発現する(Takasu, H., et al., J. Bone Miner. Res. 14:11-20 (1999))。これらの細胞を、COS-7細胞およびSaOS-2-BlO細胞と同様に、T-75フラスコ(75mm2)中の、ウシ胎仔血清(10%)、ペニシリンG(20単位/ml)、硫酸ストレプトマイシン(20μg/ml)およびアンホテリシンB(0.05μg/ml)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、5% CO2を含む加湿大気中で、27℃で培養した。EGTA/トリプシンのストック溶液および抗生物質はGIBCOからである;ウシ胎仔血清はHyclone Laboratories(Logan, UT)からである。COS-7を24ウェルプレート中で継代培養し、野生型ヒトP1Rまたは残基(24-181)が欠失している短縮型ヒトP1RをコードするプラスミドDNA(200ng/ウェル)でトランスフェクトする(Shimizu, M., et al., J. Biol. Chem. 275:21836-21843 (2000))。これを塩化セシウム/臭化エチジウム密度勾配遠心分離、および製造業者の推奨する手順に従って、FuGENE 6トランスフェクション試薬(Roche Indianapolis IN)によって精製する。24ウェルプレート中のすべての細胞を新鮮な培地で処理し、アッセイの12〜24時間前に33℃に移す。
【0067】
cAMP刺激
ペプチドアナログによる細胞の刺激を、24ウェルプレート中で実施する。細胞を0.5 mLの結合緩衝液(50 mM Tris-HCI、100 mM NaCl、5 mM KCl、2 mM CaCl2、5% 熱不活化ウシ血清、0.5% ウシ胎仔血清、HClでpH 7.5に調整)ですすぎ、200μLのcAMPアッセイ緩衝液(2 mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン、1 mg/mLウシ血清アルブミン、35mM Hepes-NaOH, pH 7.4を含むダルベッコ改変イーグル培地)および様々な量のペプチドアナログを含む100μLの結合緩衝液で処理する(最終容量=300μL)。培地を、室温での30〜60分間のインキュベーションの後に除去し、細胞をドライアイス上で凍結し、0.5 mLの50 mM HClで溶解し、再度凍結する(-80℃)。希釈した溶解物のcAMP含量をラジオイムノアッセイによって測定する。EC50応答値を、非線形回帰を使用して計算する(以下を参照されたい)。
【0068】
競合結合
結合反応を、24ウェルプレート中で、HKRK-B28細胞、HKRK-B7細胞、またはCOS-7細胞を用いて実施する。細胞を0.5mLの結合緩衝液ですすぎ、次いで、様々な量の未標識競合リガンドを含む100μLの結合緩衝液、および125I-[M]PTH(1-21)、125I-[Aib1,3,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Tyr15]PTH(1-15)NH2、または125I-[Aib1,3,M]PTH(1-21)を含む約100,000cpmの100μLの結合緩衝液で連続的に処理する(約26fmol;最終容量=300μL)。インキュベーションは4℃で4〜6時間であり、この時間にほぼ平衡状態が達成された。次いで、細胞を氷上に配置し、結合媒体を除去し、単層を0.5mLの冷結合緩衝液で3回すすぐ。次に、細胞を0.5mLの5N NaOHで溶解し、放射能を計数する。各トレーサーについておよび各実験において、非特異的結合を、1μMの濃度の同じ非標識ペプチドの存在下で結合する放射能として測定し、全体で〜1%の放射能が各トレーサーに加えられた。最大の特異的結合(B0)は、非特異的結合について補正された、競合リガンドの非存在下において結合した全体の放射能である。非線形回帰を使用して、結合IC50値を計算する(以下を参照されたい)。26fmolの125I-[Aib1,3,M]PTH(1-21)を用いる研究から誘導された相同の競合結合データのスキャッチャード変換が、単一のクラスの結合部位ならびにヨード化されたリガンドおよびヨード化されていないリガンドの等しい親和性を仮定して、見かけの平衡解離定数(kDapps)およびリガンド結合部位の総数(Bmax)の見積もりのために利用される。
【0069】
イノシトールリン酸産生の刺激
上記のようにP1R-WTでトランスフェクトされたCOS-7細胞を、0.1%ウシ血清アルブミンおよび[3H]ミオ-イノシトール(NEN, Boston, MA)(2μCi/mL)を含み、血清を含まない、イノシトールを含まないDMEMで、アッセイの16時間前に処理する。アッセイの時点で、細胞を、LiCl(30mM)を含む結合緩衝液ですすぎ、PTHアナログを含むかまたは含まない同じ緩衝液で処理する。次いで、細胞を、37℃で40分間インキュベートし、その後、緩衝液を除去し、0.5mLの氷冷5%トリクロロ酢酸溶液に置き換える。氷上で3時間後、溶解物を収集し、エチルエーテルで2回抽出する。次いで、溶解物をイオン交換カラムに適用し(0.5mLレジンベッド)、以前に記載されたように全イノシトールリン酸を溶出させ(Berridge, M. J., et al.,Biochem. J. 212:473-482 (1983))、液体シンチレーションカクテル中で計数する。
【0070】
実施例1:結果
PTH誘導体の結合アッセイをHKRK-B28細胞において実施した。親のペプチドの誘導体、
を、示されるように1位、2位、および/または3位で置換した。結合アッセイ(15℃で4時間)を、125I-[Aib1,3,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Tyr15]PTH(1-15)NH2を用いて実施した。結果は、親のペプチドが、試験された誘導体の最高の親和性で結合したことを示す(図2および3(A))。
【0071】
親のペプチド[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2および示されるように1位、2位、および/または3位で置換されたその誘導体を、HKRK-B28細胞におけるcAMPアゴニスト応答についてアッセイした(図3(C)および図4)。アッセイはRTで30分間実施した。親のペプチドは完全に強力かつ効率的なアゴニストとして機能し、Deg1,3-置換アナログは部分的なアゴニストであり、かつBpa2-置換アナログはアゴニスト活性を欠いている。これらの結果は、cAMP産生を刺激する際の2位の決定的な役割を示す。
【0072】
これらのアナログは、ヤンセン病を有する患者に由来する構成的に活性な変異型ヒトP1R、P1R-H223RおよびP1R-H223R/T410Pを発現するCOS-7細胞において逆アゴニストとして挙動する(図7AおよびC)。アナログ[desNH2-Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2は、構成的に活性な変異型レセプターP1R-T41OPを発現するCOS-7細胞において逆アゴニストとして挙動する(図7B)。いずれのアナログも、「ロックオンされた」P1Rであると思われる構成的に活性な変異型レセプターP1R-I458Rを発現するCOS-7細胞において逆アゴニストではなかった。これらの結果は、新規なアナログのP1R-選択性を実証する。
【0073】
P1R-delNtを発現するCOS-7細胞において、[Deg1,3,BPA2,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Arg19,Tyr21]PTH(1-21)NH2は、[Aib1,3,Tyr34]hPTH(1-34)NH2、および[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2の両方を強力に阻害したのに対して、[ILe5,Trp23,Tyr36]PTHrP(5-36)NH2は、いずれのアゴニストリガンドについてもこのレセプター構築物に対しては不活性であった(図8B)。これらの結果は、[Deg1,3,BPA2,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Arg19,Tyr21]PTH(1-21)NH2が、強力なJ-ドメイン選択性アンタゴニストであることを実証する。インタクトなヒトP1R(図6A)に対する[Deg1,3,BPA2,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Arg19,Tyr21]PTH(1-21)NH2および[ILe5,Trp23,Tyr36]PTHrP(5-36)NH2のアンタゴニスト作用の違いは、野生型P1Rを安定に発現するHKRK-B7細胞において実施された競合研究における、これらのアナログについて観察された同様のIC50値によって示されるように、このレセプターについての結合親和性の違いに起因しない(図9)。これらの結果はさらに、[Deg1,3,BPA2,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Arg19,Tyr21]PTH(1-21)NH2が、拮抗作用を達成するために新たなメカニズムを利用することをさらに例証し、このメカニズムは、従来的な短縮型アンタゴニスト、[ILe5,Trp23,Tyr36]PTHrP(5-36)NH2によって使用されるものとは異なっている。
【0074】
[Deg1,3,BPA2,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Arg19,Tyr21]PTH(1-21)NH2および[Deg1,3,Bpa2,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(1-14)NH2がアンタゴニストとして機能する薬理学的メカニズムを図10において調べた。本研究において、アゴニスト[Aib1,3,Tyr34]hPTH(1-34)NH2によって誘発される用量応答曲線に対する、10mMにおけるアンタゴニストの効果をHKRK-B7細胞において調べた。いずれのアンタゴニストの存在も、アゴニスト応答曲線の右側でかつ平行なシフトを生じたが、真の漸近線は曲線上では達成されず、これらの結果は、非競合的な阻害のメカニズムに対して、競合的な阻害のメカニズムと完全に一致している。
【0075】
P1Rアンタゴニストの「N」対「J」ドメインの選択性を、COS-7細胞において調べた(図8)。cAMP拮抗作用アッセイを、野生型P1R(A)、またはP1R Nドメインの大部分(残基24-181)を欠失しているP1R誘導体(P1R-delNt)(B)でトランスフェクトされたCOS-7細胞中で実施した。細胞を、親和性/効力のためにNドメインとJドメインの両方を利用するアゴニスト[Aib1,3,Tyr34]hPTH(1-34)NH2([Aib1,3]PTH(1-34))、または親和性/効力のためにJドメインのみを利用する[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2([Ac5c1]PTH(1-14))を、説明に示されている濃度で用いて処理し、その結果、アンタゴニストの非存在下(なし)でのcAMP応答の最大半減を誘発した。アナログPTHrP(5-36)およびDeg1,3,Bpa2-PTH(1-21)を、示されるように1×10-5Mで加えた。WTレセプターに対して、PTHrP(5-36)は、Deg1,3,Bpa2-PTH(1-21)よりもより効率的にPTH(1-34)と拮抗するが、PTH(1-21)アナログは、PTHrP(5-36)よりもより効率的にPTH(1-14)と拮抗する。P1R-delNtに対しては、Deg1,3,Bpa2-PTH(1-21)は、いずれのアゴニストとも拮抗するのに対して、PTHrP(5-36)は、アンタゴニスト能力を欠いている。従って、PTHrP(5-36)は、Nドメイン選択性アンタゴニストであり、一方Deg1,3,Bpa2-PTH(1-21)はJ-ドメイン選択性アンタゴニストである。アナログDeg1,3,Bpa2-PTH(1-14)は、これらのアッセイにおいてDeg1,3,Bpa2-PTH(1-21)と同様の挙動を示した。
【0076】
遊離のペプチドとして、または潜在的にPTH-1レセプターとの複合体である、これらのアナログの直接的構造分析は、リガンドがPTH-1レセプターに対してアゴニストとして作用することを可能にする、リガンド構造への価値ある洞察を提供することが可能である。この点に関して、本明細書に記載されるデータセットから導き出される情報は、PTH-1レセプターについてのペプチド模倣物の設計において有用であり得る。ネイティブなPTHペプチド配列の観点からこの問題に取り組むことは、ペプチドバックボーン鎖における各位置で可能であるコンホメーションの多様性により困難である。Aibなどの立体化学的に制約されるアミノ酸の組み込みは、これが予測可能なペプチド構造の核となるように働くので、この問題を軽減する。従って、このアプローチは、PTH-1レセプターについてのペプチド性または非ペプチド性のアゴニストのデノボ設計を容易にし得る。骨粗鬆症を治療する際のPTH(1-34)の有用性が最近明らかとなったので(Neer, R.M., et al., N.E.J.M. 344:1434-1441 (2001))、このようなアゴニストは重要な医学的インパクトを有するであろう。
【0077】
ネイティブPTHとの相互作用のコンピュータモデルが開発されている(Jin, L., et al., J. Biol. Chem. 275:27238-27244 (2000); Rolz, C., and Mierke, D. F., Biophysical Chemistry (2000))。短縮型PTH-1レセプター、P1R-delNtを用いる上記の実験は、PTHアナログとPTHレセプターとの間の相互作用に関するいくつかの洞察を提供する。なぜなら、これらは、1位および3位におけるAib置換の増強効果が、細胞外ループおよび膜貫通ドメインを含むレセプターの膜近傍領域(Jドメイン)を通して媒介されることを実証するからである。この知見は、PTH/PTH-1レセプター相互作用に関する累積的架橋および変異のデータと一致しており、これらは、PTHの(1-14)ドメインにおける残基が、独占的ではないとしても、主として、アミノ末端細胞外ドメイン(Nドメイン)とは反対に、レセプターのJドメインと相互作用すること示している。
【0078】
現在、2つのモードの拮抗作用がP1Rにおいて認識されている。Nドメイン阻害(A)は、PTHrP(5-36)アナログおよびPTHrP(7-34)アナログなどの大部分の従来的なP1Rアンタゴニストによって利用され、リガンドの(21-34)領域とP1R Nドメインの間の相互作用からの結合エネルギーの誘導に主として基づく。このメカニズムは、PTH(1-34)などのNドメイン依存性アゴニストの阻害のために効果的であるが、PTH(1-19)などのNドメイン非依存性アゴニストの阻害のためには効果的ではない。Jドメイン阻害(B)は、本明細書に記載される新規なアナログによって利用され、リガンドの(1-20)領域とP1RのJドメインとの間の相互作用からの結合エネルギーの誘導に主としてまたは全体的に基づく。この結果はまた、1位、2位、および/または3位の修飾の効果に拮抗することが、Jドメインを通して媒介されることを実証する。このメカニズムは、PTH(1-14)アナログなどのJドメイン依存性アゴニストの阻害のために効果的であるが、PTH(1-34)などのNドメイン依存性アゴニストの阻害のためには効果的ではない。このような分子がJドメインに結合すると思われることから、Jドメイン選択性アンタゴニストは、PTH模倣物として作用する低分子を特徴付けするために有用である。
【0079】
これまで、理解の明確化の目的のために例証および例示によっていくぶん詳細に本発明を完全に記載してきたが、本発明は、広範かつ等価な範囲の条件、製剤、およびその他のパラメーターを用いて、本発明を改変または変更することによって実施されることが可能であること、ならびにこのようは改変および変更は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されることは、当業者に明らかである。
【0080】
本明細書中上記に言及されたすべての刊行物、特許、および特許出願は、各々の個別の刊行物、特許、および特許出願が具体的かつ個別に参照により組み入れられることが示されるのと同程度に、その全体がおよび参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】利用したPTHアナログおよびそれらのアミノ酸配列を示す。すべてのペプチドはラットPTH配列に由来する。非従来的なアミノ酸には、ホモアルギニン(Har)、ノルロイシン(Nle);1-アミノイソ酪酸(Aib);1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(Ac3c)、ジエチルグリシン(Deg)、1-アミノシクロペンタン-1-カルボン酸(Ac5c)が含まれる。ペプチドにアンタゴニスト特性を付与するアミノ酸は太字体で示す。星印はヨード化されたチロシンを示す。
【図2】HKRR-B28細胞におけるPTHアナログの結合を示す。親のペプチドは[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2であり、かつその誘導体を、示されるように1位、2位、および/または3位で置換した。結合アッセイを、125I-[Aib1,3,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Tyr15]PTH(1-15)NH2を用いて実施した。データは示された実験の数(n)からであり、各々を全く同じに行った。
【図3】HKRK-B28細胞における機能的応答を示す。結合(AおよびB)ならびにcAMPアゴニズム/部分的アゴニズムアッセイ(C)を、HKRK-B28細胞において実施した。親のペプチドは[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2であり、かつその誘導体を、示されるように1位、2位、および/または3位で置換した。結合アッセイ(15℃で4時間)を、125I-[Aib1,3,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Tyr15]PTH(1-15)NH2トレーサーを用いて実施した。cAMPアッセイを室温で30分間実施した。親と比較して、置換アナログは減少したアゴニスト活性を示した。
【図4】HKRK-B28細胞におけるcAMP応答を示す。親のペプチド[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2、ならびに示されるように1位、2位、および/または3位で置換したその誘導体を、HKRK-B28細胞におけるcAMPアゴニスト応答についてアッセイした。親のペプチドは完全に強力かつ効率的なアゴニストとして機能し、Deg1,3-置換アナログは部分的なアゴニストであり、かつBpa2-置換アナログはアゴニスト活性を欠いている。
【図5】HK-RK-B28細胞における拮抗作用アッセイを示す。cAMP拮抗作用アッセイをHKRK-B28細胞中で実施した。細胞を、Jドメイン選択性アゴニスト、[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2(親)(10nM)と、単独で(なし)または候補アンタゴニストペプチド(10μM)とともに処理した。この候補アンタゴニストペプチドは、示されるように1位、2位、および/もしくは3位で置換した親のPTH(1-14)ペプチドの誘導体、または[I5,W23,Y36]PTHrP(5-36)アナログであった。星印は、アンタゴニストで処理していない細胞(なし)と比較した、cAMPレベルの有意な減少を示す。
【図6】COS-7細胞中の拮抗作用アッセイを示す。cAMP拮抗作用アッセイを、野生型P1R(A)またはP1R N末端ドメインの代わりにP1RのTM1につながれたPTHの最初の9残基を有する構成的に活性なP1R誘導体(挿入、B)でトランスフェクトされたCOS-7細胞中で実施した。Aにおいて、細胞を、Jドメイン選択性アゴニスト、[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2(親)(1nM)と、単独で(なし)または候補アンタゴニストペプチド(10μM)とともに処理した。この候補アンタゴニストペプチドは、示されるように1位、2位、および/もしくは3位で置換した親のPTH(1-14)ペプチドの誘導体、または[I5,W23,Y36]PTHrP(5-36)アナログであった。星印は、アンタゴニストで処理していない細胞(なし)と比較した、cAMPレベルの有意な減少を示す。
【図7】COS-7細胞における逆アゴニスト応答を示す。COS-7細胞を、構成的に活性なP1R:P1R-H223R (A)、P1R-T41OP (B)、P1R-H223R/T410P (C)、またはP1R-I458R (D)でトランスフェクトし、次いで、ペプチドの非存在下で(なし)または示されるアンタゴニスト/逆アゴニストペプチド(10μM)の存在下でのいずれかでインキュベートし(30分間、室温)、cAMPをRIAによって測定した。星印は、未処理細胞(なし)と比較した、cAMPレベルの有意な減少を示す。
【図8】COS-7細胞におけるPIRアンタゴニストの「N」対「J」ドメインの選択性を示す。cAMP拮抗作用アッセイを、野生型P1R(A)、またはP1R Nドメインの大部分(残基24-181)を欠失しているP1R誘導体(P1R-delNt)(B)でトランスフェクトされたCOS-7細胞中で実施した。細胞を、アンタゴニストの非存在下(なし)でのcAMP応答の最大半減を誘発するように、親和性/効力のためにNドメインとJドメインの両方を利用するアゴニスト[Aib1,3,Tyr34]hPTH(1-34)NH2([Aib1,3]PTH(1-34))、または親和性/効力のためにJドメインのみを利用する[Ac5c1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14]PTH(l-14)NH2([Ac5c1]PTH(1-14))を、説明に示されている濃度で用いて処理した。アナログPTHrP(5-36)およびDeg1,3,Bpa2-PTH(1-21)を、示されるように1×10-5Mで加えた。WTレセプターに対して、PTHrP(5-36)は、Deg1,3,Bpa2-PTH(1-21)よりもより効率的にPTH(1-34)アナログと拮抗するが、PTH(1-21)アナログは、PTHrP(5-36)よりもより効率的にPTH(1-14)と拮抗する。P1R-delNtに対しては、Deg1,3,Bpa2-PTH(1-21)は、いずれのアゴニストとも拮抗するのに対して、PTHrP(5-36)は、アンタゴニスト能力を欠いている。従って、PTHrP(5-36)は、Nドメイン選択性アンタゴニストであり、一方Deg1,3,Bpa2-PTH(1-21)はJ-ドメイン選択性アンタゴニストである。アナログDeg1,3,Bpa2-PTH(1-14)は、これらのアッセイにおいてDeg1,3,Bpa2-PTH(1-21)と同様の挙動を示した。
【図9】HKRK-B7細胞における競合結合アッセイを示す。結合アッセイを、トレーサー放射性リガンドとして125I-[Aib1,3,Nle8,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Tyr15]PTH(1-15)NH2を、および示された非放射性ペプチドを競合物として使用し、野生型hP1Rを発現するHKRK-B7細胞において実施した。PTH(1-34)は[Tyr34]hPTH(1-34)NH2である。
【図10】P1R-delNtに対する競合的拮抗作用を示す。P1R-delNtでトランスフェクトされたCOS-7細胞を、図の説明に示されるように、様々な濃度のアゴニスト[Aib1,3,Tyr34]hPTH(1-34)NH2([Aib1,3]PTH(1-34))を用いて、アンタゴニストの非存在下で、または各々1×10-5Mのアンタゴニスト[Deg1,3,Bpa2,M]PTH(1-14)もしくは[Deg1,3,Bpa2,M]PTH(1-21)の存在下のいずれかで刺激した。各アンタゴニストは、アゴニスト用量-応答曲線の平行な右方向へのシフトを生じ、これは、阻害の競合メカニズムと一致している。
【図11】本発明のPTH誘導体とP1RレセプターのJドメインとの間の相互作用のモデルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる群より選択されるペプチドであって、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、または1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;および
(d)そのN-またはC-誘導体;
ここで、
X01およびX03はそれぞれα-ヘリックス安定化残基であり、
X02はTrp、Bpa、Arg、またはValであり、
X04はMetまたはNleであり、
X05はGln、Deg、またはAsnであり、
X06はHarまたはLeuであり、
X07はα-ヘリックス安定化残基、AlaまたはGlyであり、
X08はα-ヘリックス安定化残基、Trp、Tyr、またはHisであり、および
ここで、該ペプチドはP1RのJドメインに選択的に結合する、ペプチド。
【請求項2】
α-ヘリックス安定化残基が、Ac5c、Ac3c、Deg、Aib、またはAc5c、Ac3c、Deg、もしくはAibのデサミノ型からなる群より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項4】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項5】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項6】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項7】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項8】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項9】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項10】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項11】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項12】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項13】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項14】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項15】
以下からなる群より選択されるペプチドであって、
(a)
(b)アミノ酸1〜20、1〜19、1〜18、1〜17、1〜16、もしくは1〜15を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
ここで、
X01およびX02はα-ヘリックス安定化残基であり、
X02はAib、Gln、Deg、またはAsnであり、
X03はMetまたはNleであり、
X04はHarまたはLeuであり、
X05はα-ヘリックス安定化残基、AlaまたはGlyであり、
X06はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Aib)、またはLysであり、
X07はα-ヘリックス安定化残基、Trp、またはHisであり、
X08はArgまたはGluでありかつX09はTyrまたはMetであり;および
ここで該ペプチドはP1RのJドメインに選択的に結合する、ペプチド。
【請求項16】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項15記載のペプチド。
【請求項17】
標識される、請求項1または15記載のペプチド。
【請求項18】
蛍光標識で標識される、請求項17記載のペプチド。
【請求項19】
化学発光標識で標識される、請求項17記載のペプチド。
【請求項20】
生物発光標識で標識される、請求項17記載のペプチド。
【請求項21】
放射活性標識で標識される、請求項17記載のペプチド。
【請求項22】
125Iで標識される、請求項21記載のペプチド。
【請求項23】
99mTcで標識される、請求項21記載のペプチド。
【請求項24】
PTHレセプターを請求項17記載の標識されたペプチドおよび候補レセプターリガンドと接触させる工程、ならびにレセプターに結合した標識を測定する工程を含む、PTHレセプターリガンドを同定するための競合結合アッセイ。
【請求項25】
PTHレセプターまたはそのフラグメントもしくは誘導体を、請求項17記載の標識されたペプチドおよび候補レセプターリガンドと接触させる工程、ならびにレセプターに結合した標識を測定する工程を含む、PTHレセプターリガンドを分析するための競合結合アッセイ。
【請求項26】
請求項1または15記載のペプチド、および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
【請求項27】
請求項1または15記載のペプチドの阻害有効量をその必要がある対象に投与する工程を含む、PTHもしくはPTHrPの活性または産生の増加によって特徴付けられる哺乳動物の状態を治療するための方法。
【請求項28】
請求項1または15記載のペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む組成物の阻害有効量をその必要がある対象に投与する工程を含む、PTHもしくはPTHrPの活性または産生の増加によって特徴付けられる哺乳動物の状態を治療するための方法。
【請求項29】
治療される状態が高カルシウム血症である、請求項26または27記載の方法。
【請求項30】
治療される状態が悪性高カルシウム血症である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
骨質量を増加させるためのペプチドの有効量が約0.01μg/kg/日〜約1.0μg/kg/日である、請求項26または27記載の方法。
【請求項32】
投与の方法が非経口的である、請求項26または27記載の方法。
【請求項33】
投与の方法が皮下的である、請求項26または27記載の方法。
【請求項34】
投与の方法が経鼻吸入法である、請求項26または27記載の方法。
【請求項35】
ペプチドが固相合成によって合成される、請求項1または15記載のペプチドを作製する方法。
【請求項36】
ペプチドがFMOCによって保護される、請求項1または15記載のペプチドを作製する方法。
【請求項1】
以下からなる群より選択されるペプチドであって、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、または1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;および
(d)そのN-またはC-誘導体;
ここで、
X01およびX03はそれぞれα-ヘリックス安定化残基であり、
X02はTrp、Bpa、Arg、またはValであり、
X04はMetまたはNleであり、
X05はGln、Deg、またはAsnであり、
X06はHarまたはLeuであり、
X07はα-ヘリックス安定化残基、AlaまたはGlyであり、
X08はα-ヘリックス安定化残基、Trp、Tyr、またはHisであり、および
ここで、該ペプチドはP1RのJドメインに選択的に結合する、ペプチド。
【請求項2】
α-ヘリックス安定化残基が、Ac5c、Ac3c、Deg、Aib、またはAc5c、Ac3c、Deg、もしくはAibのデサミノ型からなる群より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項4】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項5】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項6】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項7】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項8】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項9】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項10】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項11】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項12】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項13】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項14】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜9、1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項1記載のペプチド。
【請求項15】
以下からなる群より選択されるペプチドであって、
(a)
(b)アミノ酸1〜20、1〜19、1〜18、1〜17、1〜16、もしくは1〜15を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
ここで、
X01およびX02はα-ヘリックス安定化残基であり、
X02はAib、Gln、Deg、またはAsnであり、
X03はMetまたはNleであり、
X04はHarまたはLeuであり、
X05はα-ヘリックス安定化残基、AlaまたはGlyであり、
X06はα-ヘリックス安定化残基(例えば、Aib)、またはLysであり、
X07はα-ヘリックス安定化残基、Trp、またはHisであり、
X08はArgまたはGluでありかつX09はTyrまたはMetであり;および
ここで該ペプチドはP1RのJドメインに選択的に結合する、ペプチド。
【請求項16】
ペプチドが、
(a)
(b)アミノ酸1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメント;
(c)その薬学的に許容される塩;または
(d)そのN-もしくはC-誘導体;
より選択される、請求項15記載のペプチド。
【請求項17】
標識される、請求項1または15記載のペプチド。
【請求項18】
蛍光標識で標識される、請求項17記載のペプチド。
【請求項19】
化学発光標識で標識される、請求項17記載のペプチド。
【請求項20】
生物発光標識で標識される、請求項17記載のペプチド。
【請求項21】
放射活性標識で標識される、請求項17記載のペプチド。
【請求項22】
125Iで標識される、請求項21記載のペプチド。
【請求項23】
99mTcで標識される、請求項21記載のペプチド。
【請求項24】
PTHレセプターを請求項17記載の標識されたペプチドおよび候補レセプターリガンドと接触させる工程、ならびにレセプターに結合した標識を測定する工程を含む、PTHレセプターリガンドを同定するための競合結合アッセイ。
【請求項25】
PTHレセプターまたはそのフラグメントもしくは誘導体を、請求項17記載の標識されたペプチドおよび候補レセプターリガンドと接触させる工程、ならびにレセプターに結合した標識を測定する工程を含む、PTHレセプターリガンドを分析するための競合結合アッセイ。
【請求項26】
請求項1または15記載のペプチド、および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
【請求項27】
請求項1または15記載のペプチドの阻害有効量をその必要がある対象に投与する工程を含む、PTHもしくはPTHrPの活性または産生の増加によって特徴付けられる哺乳動物の状態を治療するための方法。
【請求項28】
請求項1または15記載のペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む組成物の阻害有効量をその必要がある対象に投与する工程を含む、PTHもしくはPTHrPの活性または産生の増加によって特徴付けられる哺乳動物の状態を治療するための方法。
【請求項29】
治療される状態が高カルシウム血症である、請求項26または27記載の方法。
【請求項30】
治療される状態が悪性高カルシウム血症である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
骨質量を増加させるためのペプチドの有効量が約0.01μg/kg/日〜約1.0μg/kg/日である、請求項26または27記載の方法。
【請求項32】
投与の方法が非経口的である、請求項26または27記載の方法。
【請求項33】
投与の方法が皮下的である、請求項26または27記載の方法。
【請求項34】
投与の方法が経鼻吸入法である、請求項26または27記載の方法。
【請求項35】
ペプチドが固相合成によって合成される、請求項1または15記載のペプチドを作製する方法。
【請求項36】
ペプチドがFMOCによって保護される、請求項1または15記載のペプチドを作製する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−537980(P2007−537980A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520353(P2006−520353)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/022830
【国際公開番号】WO2005/009358
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(505352507)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/022830
【国際公開番号】WO2005/009358
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(505352507)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】
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