高次空間モードからのバイアス誤差が低減された共振器光ファイバジャイロスコープ(RFOG)
【課題】高次空間モードからのバイアス誤差が低減された共振器光ファイバジャイロスコープを提供する。
【解決手段】共振器は、少なくとも、ループファイバ90、2つ又は3つ以上のいずれかのイン/アウト結合素子60、及び素子を循環ループ内へリンクするコネクタを備える。実施形態のいくつかでは、出力光を入力光から分離するのに方向性素子53、54を使用することができる。すべての実施形態において、モードフィルタ80が共振器内に配置されて、光検出器55,56に到達する光が、共振器内の少なくとも1つのモードフィルタにより少なくとも1回フィルタリングされることが保証される。空間モードフィルタリング及び偏光モードフィルタリングの双方を同時に実施できるように、モードフィルタは、空間モードフィルタ(単一モードファイバ又は単一モード導波路等)及び偏光モードフィルタ(偏光素子等)の双方を含むことができる。
【解決手段】共振器は、少なくとも、ループファイバ90、2つ又は3つ以上のいずれかのイン/アウト結合素子60、及び素子を循環ループ内へリンクするコネクタを備える。実施形態のいくつかでは、出力光を入力光から分離するのに方向性素子53、54を使用することができる。すべての実施形態において、モードフィルタ80が共振器内に配置されて、光検出器55,56に到達する光が、共振器内の少なくとも1つのモードフィルタにより少なくとも1回フィルタリングされることが保証される。空間モードフィルタリング及び偏光モードフィルタリングの双方を同時に実施できるように、モードフィルタは、空間モードフィルタ(単一モードファイバ又は単一モード導波路等)及び偏光モードフィルタ(偏光素子等)の双方を含むことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高次空間モードからのバイアス誤差が低減された共振器光ファイバジャイロスコープ(RFOG)に関する。
【背景技術】
【0002】
共振器光ファイバジャイロスコープ(RFOG)は、ファイバ共振リングキャビティを備える回転検知デバイスである。ジャイロが、リングキャビティ(共振器とも呼ばれる)の平面に垂直な軸の周りに非ゼロの回転速度を有するとき、2つの反対方向に伝播する光波の有効ラウンドトリップパス経路長は異なる。このいわゆるサニャック効果によって、リングキャビティは、便宜上、時計回り(CW)及び半時計回り(CCW)と呼ばれることが多い2つの反対方向について異なる共振周波数を示す。この共振周波数差は、ジャイロ回転速度に比例する。
【0003】
CW方向及びCCW方向におけるリングキャビティの共振周波数差を測定するために、単色光波が、双方の方向で共振器内へ結合され、それらの周波数は、共振特性のピーク(又はディップ。どのような光が共振器の外へ結合されるのかに依拠する)に別々にチューン/ロックされる。リングキャビティの「共振特性」又は単に「共振」という用語は、入力光周波数の関数としての共振器出力パワーの曲線を指す。この曲線は、通常、ピーク(又はディップ)の周期的なパターンを有し、これらピーク(又はディップ)の対応する周波数が共振周波数である。共振器内の光路長の1波長分だけ異なる、共振器の同じ空間モード及び偏光モードの隣接する2つのピーク(又はディップ)間の周波数差は、共振器の自由スペクトル間隔(FSR)である。これは、共振器のラウンドトリップ伝播時間によって決まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
精密な共振周波数測定のために、不要な空間モード及び偏光モードから生成される信号誤差を無視できるように、共振器キャビティは、単一の空間モード及び単一の偏光モードのみをサポートすべきである。従来技術の発明では、不要な偏光モードを抑制するために、高い偏光消光比(PER)を有する共振器内偏光子が提案されてきた。しかしながら、共振器光ファイバは、純粋な単一の空間モードをサポートすると仮定されることが多く、高次空間モードの影響の議論はほとんど存在していなかった。近年、光ファイバジャイロスコープにバンドギャップ中空コアファイバを使用して、(従来のソリッドコアファイバと比較して)その環境変化に対する低い感度、無視できる非線形屈折率、及び低い位相変動を活用することへの関心が高まっている。中空コアファイバジャイロスコープの研究中、時に設計により、時に設計又は製造プロセスのいずれかにおける不完全さに起因して、現在の市販の低損失中空コアファイバの高次空間モードのサポートは弱いおそれがあるということが判明した。ジャイロ性能に対する高次空間モードの影響の緩和方法を見出すことは、ますます重要になってきている。
【0005】
共振器ループファイバの高次空間モード、すなわち基本モード以外のモード、のサポートが弱い場合、ジャイロのバイアス安定性に対する影響が重要となる場合がある。モード分散に起因して、高次モードは、基本モードに対して異なる光路を進み、異なるラウンドトリップ位相遅延を有する。共振器の出力光が検出されるとき、高次モードからの光は、基本モードと干渉するおそれがあり、環境変化と共に変動する共振非対称性が生じる。この干渉は、2つの空間直交モードを空間的に平均化することによって或る程度抑制することができるが、この抑制は、例えば、検出される光が有限開口を通って進むか又は検出器が空間不均質性を有するとき、不完全な空間平均化によって損なわれるおそれがある。高次モードは、場合によっては強度が弱いが、高性能RFOGのバイアス安定性の厳しい制約因子になる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空間モードフィルタリングを通じて、共振器光ファイバジャイロスコープ(RFOG)のバイアス安定性に対する高次モードの影響を低減する。高次空間モードのラウンドトリップ損失は、共振器の内部に適切に配置された空間モードフィルタによって大きく増加し、その結果として、高次モードにより誘発されるバイアス誤差が非常に大きく低減される。
【0007】
本発明の一態様では、RFOGは、第1の端部及び第2の端部を有するループファイバ、少なくとも3つのポートA、B、及びCを有する第1のイン/アウト結合素子及び第2のイン/アウト結合素子、少なくとも3つのポート1、2、及び3を有する第1の方向性素子及び第2の方向性素子、第1の光源及び第2の光源、第1の検出器及び第2の検出器、並びに第1の端部及び第2の端部を有するモードフィルタを含む。(実質的に同じである第1又は第2の)イン/アウト結合素子は、光の相当量をポートAからポートBへ及びポートBからポートAへ結合する。光のわずかな量が、CからBへ及びBからCへ結合されるが、光がポートAからポートCへ及びポートCからポートAへ結合されることは防止される。(実質的に同じである第1又は第2の)方向性素子は、光の相当量をポート1からポート2へ、ポート2からポート3へ結合するが、光がポート1からポート3へ結合されることを防止する。
【0008】
RFOG共振器は、ループファイバの第1の端部及び第2の端部をそれぞれ第1のイン/アウト結合素子のポートA及び第2のイン/アウト結合素子のポートAに接続し、第1のイン/アウト結合素子のポートB及び第2のイン/アウト結合素子のポートBをそれぞれモードフィルタの第1の端部及び第2の端部することによって形成される。第1(第2の)の方向性素子は、ポート1において第1(第2)の光源から光を受信し、その光を、対応するポート2へ方向付ける。ポート2は、第1(第2)のイン/アウト結合素子のポートCに接続されている。光は、次に、第1(第2)のイン/アウト結合素子のポートBにおいて共振器内へ結合される。光は、共振器のCW(CCW)方向に循環する。CW(CCW)光のわずかな量は、第2(第1)のイン/アウト結合素子のポートCにおいて共振器の外へ結合され、第2(第1)の方向性素子のポート2へ方向付けられ、第2(第1)の検出器へ結合される。第2(第1)の検出器は、第2(第1)の方向性素子のポート3に接続されている。モードフィルタは、共振器の高次空間モードの大幅な抑制を提供する単一モードファイバ及び単一モード導波路等の単一モード光学素子を含む。加えて、1つの低損失偏光モードのみが共振器によってサポートされるように、偏光素子をモードフィルタに含めることもできる。
【0009】
すべての実施形態において、光検出器に到達する光は、共振器内の少なくとも1つのモードフィルタによってフィルタリングされる。これによって、基本モードとの干渉から不要なモードの影響が大きく低減/除去される。これは、共振周波数の正確な測定のために極めて重要であり、したがって、回転速度の正確な測定に極めて重要である。
【0010】
本発明の好ましい実施形態及び代替的な実施形態が、以下の図面を参照して以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】1つの空間モードフィルタ及び2つのイン/アウト結合素子をリングキャビティ内に有する対称RFOGの一実施形態を示す。
【図2】図1に示す構成と同様の構成を有するが、イン/アウト結合のためにファイバ結合器を使用し、モードフィルタとして単一モードファイバを使用する、RFOGの一実施形態を示す。
【図3】2つの空間モードフィルタ及び2つのイン/アウト結合素子をリングキャビティ内に有する対称RFOGの別の実施形態を示す。
【図4】図3に示す構成と同様の構成を有するが、イン/アウト結合のためにファイバ結合器を使用し、モードフィルタとして単一モードファイバを使用する、RFOGの一実施形態を示す。
【図5】2つの空間モードフィルタ及び2つのイン/アウト結合素子をリングキャビティ内に含む非対称RFOGの一実施形態を示す。
【図6】図5に示す構成と同様の構成を有するが、イン/アウト結合のためにファイバ結合器を使用し、モードフィルタとして単一モードファイバを使用する、非対称RFOGの一実施形態を示す。
【図7】2つの空間モードフィルタ及び3つのイン/アウト結合素子をリングキャビティ内に有する対称RFOGの一実施形態を示す。
【図8】図7に示す構成と同様の構成を有するが、イン/アウト結合のために1つのファイバ結合器及び2つのマイクロ光学素子を使用し、モードフィルタとして単一モードファイバを使用する、RFOGの一実施形態を示す。
【図9】2つの空間モードフィルタ及び3つのイン/アウト結合素子をリングキャビティ内に有する対称RFOGの別の実施形態を示す。
【図10】図9に示す構成と同様の構成を有するが、イン/アウト結合のために1つのファイバ結合器及び2つのマイクロ光学素子を使用し、モードフィルタとして単一モードファイバを使用する、RFOGの一実施形態を示す。
【図11】図10に示す構成と同様の構成を有するが、イン/アウト結合のために3つのファイバ結合器を使用し、モードフィルタとして単一モードファイバを使用する、RFOGの一実施形態を示す。
【図12】2つの空間モードフィルタ及び3つのイン/アウト結合素子をリングキャビティ内に有する対称RFOGの別の実施形態を示す。
【図13】図12に示す構成と同様の構成を有するが、イン/アウト結合のために3つのファイバ結合器を使用し、モードフィルタとして単一モードファイバを使用する、RFOGの一実施形態を示す。
【図14】2つの空間モードフィルタ及び3つのイン/アウト結合素子をリングキャビティ内に有する対称RFOGの別の実施形態を示す。
【図15】図14に示す構成と同様の構成を有するが、イン/アウト結合のために3つのファイバ結合器を使用し、モードフィルタとして単一モードファイバを使用する、RFOGの一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、リングキャビティを有する共振器光ファイバジャイロスコープ(RFOG)での使用について本発明が説明される。リングキャビティは、分離光学素子及び/又は導波路光学素子を含むことができることが理解されるべきである。「空間モード」という用語は、一般に、導波路のモード、分離光学素子のモード、及び光学素子間の自由空間のモードを含む。本発明は、共振器(リングキャビティ)の不要な高次空間モードの抑制に焦点を当てるが、これは、不要な偏光モードの抑制を無視することを意味するものではない。「単一空間モードフィルタ」又は単に「モードフィルタ」は、明示的に言及されていない場合には、一方の偏光モードを大幅に抑制し、他方の偏光モードを通過させる(空間モードフィルタリング素子に加えて)高度偏光素子を含むことができる。モードフィルタにおける偏光素子は、偏光導波路、偏光ファイバ、及び偏光子とすることができる。
【0013】
理想的なRFOGは、回転速度を求めるのに使用される共振周波数の正確な測定のために、自身のリングキャビティにおいて単一モードをサポートすべきである。いわゆる「単一モード」は、偏光状態又は空間場分布のいずれかの意味で、光の特殊な状態として定義される。単一モードは、リングに沿った各点において、前のラウンドトリップの直前の光場に対して、一定の減衰係数及び一定の位相遅延を除き、共振器のラウンドトリップ後にその状態を再現する。したがって、同じモードで進む連続した光波は、リング内の各点において強め合って干渉する。時に、このモードは、「固有モード」と呼ばれる。ラウンドトリップ場振幅透過(round-trip field amplitude transmission)及び位相シフトを記述する複素係数は、モードの「固有値」と呼ばれる。共振器が1つの固有モードしかサポートしない限り、CW方向及びCCW方向のそれぞれには実質的に1つの共振しか存在しない。共振周波数差は、したがって、正確に求めることができる。本発明の一実施形態は、1つの固有モードのみを有するリング共振器を有効に作製すること、すなわち、1つの固有モード(基本モード)を除くすべてが、双方の伝播方向でその固有値の大きさについて事実上ゼロ振幅透過(zero amplitude transmission)(ゼロモジュラス)を有する共振器を作製することである。また、共振器の基本固有モードが、より大きな信号対雑音に対して高いフィネスで共振することも本発明の目的である。すなわち、固有値の大きさができるだけ1に近くなることも本発明の目的である。2つ以上の固有モードが共振器によってサポートされているとき、重なり合う可能性のある複数の共振が存在することになり、回転検知での使用を目的とした共振線形(信号共振、すなわち基本モードの共振)に歪み及び非対称性が生じ、したがって、ジャイロ出力の中にバイアス誤差が生じる。さらに、オフ共振モードからの少量の光は、検出プロセスにおける不完全な空間平均化又は偏光依存損失を介して、基本モードの共振で進む光と干渉する可能性がある。共振器に空間モードフィルタを使用して、ジャイロバイアス性能に対する不要な空間モードの影響を低減することが可能である。本発明は、RFOGにおいてモードフィルタを有するいくつかの実施形態を提供する。
【0014】
図1は、モードフィルタを有するRFOG20の一実施形態を示す。RFOG20は、光源51及び52、方向性光学素子53及び54、光検出器55及び56、共振器イン/アウト結合素子60、70、ファイバループ90、並びにモードフィルタ80を含む。方向性光学素子53、54は、ポート1からポート2へ光を方向付けることができるがポート1における光がポート3に入力するのを大幅に阻止でき且つポート2からポート3へ光を方向付けることができる光サーキュレータ、ファイバ結合器若しくは単にミラー、又はそれらの組み合わせとすることができる。共振器イン/アウト結合素子60及び70は、それぞれ少なくとも3つのポート61〜63及び71〜73を有する光学素子である。素子60は、光がポート62から63へ伝播することを可能にする。素子70は、光が大きな損失なくポート72から73へ伝播することを可能にする。加えて、素子60、70は、それぞれポート61とポート63との間及びポート71とポート73との間の光の結合(伝播)を提供するが、光がそれぞれポート61と62との間及びポート71と72との間で伝播することを妨げる。イン/アウト結合素子60及び70は、その最も単純な形態において部分反射ミラーとすることができるが、ファイバ結合器、導波路結合器、及びビームスプリッタ等の他のデバイスも可能である。
【0015】
光源51及び52から生成された光波は、それぞれ方向性結合素子53及び54のポート1内へ結合される。素子53及び54は、入力光の相当量をポート2へ方向付け、それら入力光の相当量をそれぞれイン/アウト結合素子60のポート61及びイン/アウト結合素子70のポート71内へ結合する。ポート61及び71に入力する光のわずかな量は、共振器のそれぞれCW方向及びCCW方向に伝播するように、それぞれポート63及び73に方向付けられる。ポート63及び73においてCW(CCW)方向で共振器内へ結合された光波は、モードフィルタ80、他方の素子70及び60、ファイバループ90を連続して伝播し、それぞれポート62又は72においてそれぞれ元の素子60又は70に入る。その光の相当量は、光が共振器内を再循環するように、ポート63又は73に方向付けられる。ポート73、63内へ結合されたCW(CCW)光のほんのわずかの量は、それぞれポート71、61において共振器の外へ結合され、それぞれ方向性素子54、53のポート2へ伝播する。方向性素子54、53は、共振周波数の検出のために、その受信光をそれぞれ光検出器56、55へ方向付ける。
【0016】
図1のRFOG構成において、モードフィルタ80は、共振器の高次空間モード(基本モード以外のモード)の抑制において極めて重要な役割を果たす。1つのモードしかモードフィルタによってサポートされないので、共振器の中をラウンドトリップ走行した後、サポートされたモードは、そのモード分布を再現できる共振器の唯一の固有モードとなる。通常ならば、ループファイバ90内に2つ以上のモードが存在することによってサポートされ得る共振器の高次空間モードは、モードフィルタ80によって実質的に拒否される。光検出器55、56に到達する光が共振器の単一の固有モードからのものとなるように、共振器の外へ結合されるすべての光波は、少なくとも1回モードフィルタ80を通過する。これによって、1次モードとの不要なモードの干渉が取り除かれ、その結果、共振周波数が正確に検出される。この実施形態の別の利点は、モードフィルタ80がCW伝播波及びCCW伝播波の双方に共通であるということであり、その結果として、CW光波及びCCW光波に関する対称度がより高いということである。これによって、CW共振器及びCCW共振器の双方に共通のバイアス誤差をキャンセルすることが助けられる。
【0017】
図1において、光の非常に多くの割合(「x」という)は、CW方向及びCCW方向の双方で、光ファイバループ90から空間フィルタ80に渡り、ファイバループ90に戻ることが重要である。これは、方向性結合器素子54及び53への光を含めて、光のほんの一部(「y」という)しかリング共振器の外へ引き出されないことも意味する。図1は、これが、結合素子60及び70によって引き起こされていることを示している。結合素子60及び70は、(ポート62から63へ及びポート72から73への)高い透過係数並びにポート63から61へ及びポート73から71への低い反射係数を有する反射器を有するものとして示されている。これは、所望の高いx値及び低いy値を達成する1つの方法であり、これら所望の高いx値及び低いy値は、ジャイロにおける信号対雑音比を最適化することに基づいている。上記技法は、図示するように結合素子60及び70の透過モードを使用すると言われる。図1において、結合素子60及び70は反射モードでも示すことができることに留意しなければならない。すなわち、結合素子60及び70の内部の光学素子が、高い反射率及び低い透過率を有する場合である。この場合、ここでは図示しないが、必要な高いx値及び低いy値を成し遂げるために、コイルファイバ90の端部が、結合素子60のポート61及び結合素子70のポート71に取り付けられ、方向性結合器素子53及び54は、結合素子60のポート62及び結合素子70のポート72にそれぞれ取り付けられる。以下の図面及び実施形態は、結合素子の透過モードの光学部品類を使用する場合を示すことがある。しかしながら、反射モードの光学部品類も、図1について説明したものと同様のポートの再配列で使用することができ、これらの変更は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。ファイバ結合器の場合、当業者には知られているように、ポートの再配列は、(低い結合比ではなく)高い結合比の結合器を含むように、結合器のリードを切り替えることによって成し遂げることができる。
【0018】
ファイバ/導波路デバイスは、時に、潜在的に、より小さなフォームファクタ、より大きな耐久性、及び改善された信頼性のために、バルク素子を備えるデバイスよりも好ましい。図2は、図1に示す構成と同様の構成を有するが、ファイバ形態におけるコンポーネントを有するRFOG100を示す。この実施形態では、イン/アウト結合は、単一モードファイバ結合器120及び130によって実行される。代表的な2×2ファイバ結合器120、130の場合、第1のポート121と第2のポート123との間及び第1のポート131と第2のポート133との間並びに第2のポート123と第3のポート124との間及び第2のポート133と第3のポート134との間に光結合がある。RFOG100は、モードフィルタリングを実行する1本の単一モードフィルタファイバ140を含む。ファイバ140は、1つの空間/偏光モードのみをサポートする偏光単一モードファイバとすることができる。ポート121、123、124、125、131、133、134、135における結合器ファイバ及びモードフィルタファイバ140は、好ましくは、同じタイプの単一モードファイバである。結合器ファイバ124、123、140、133、及び134は、追加の接続(スプライス)が必要ないように単一のファイバとすることができる。素子122及び132は、ループファイバ90の端部をそれぞれポート124及び134における単一モード結合器ファイバに接続する。素子122、132は、単一モード結合器ファイバとループファイバ90との間で光の相当量を結合するファイバスプライス及び/又は光学素子である。この実施形態におけるCW方向及びCCW方向での光の伝播は、図1について説明したものと同様である。ループファイバ90、結合器120、130、及びモードフィルタ140を含む共振器内の不要な高次空間モードが大幅に取り除かれるように、共振器の外へ結合されるすべての光波は、モードフィルタ140を少なくとも1回通過しなければならない。
【0019】
ループファイバは、本発明のすべての実施形態で必須(明示的に言及)とは限らないが、好ましくは、単一空間モード(又は、理想的には「単一モード」である)で光をできるだけ多く伝導する。このようにして、共振器における損失が最小にされる。共振器内の光学素子及びファイバ間の接続(例えば、スプライス)は、できるだけ小さな損失を提供すべきである。
【0020】
図3は、異なる構成を有するRFOG200の別の実施形態を示す。RFOG200は、図1に示す1つのモードフィルタの代わりに2つのモードフィルタ250及び260を含む。光源51及び52、方向性素子53及び54、光検出器55及び56、並びにイン/アウト結合素子60及び70は、それらの位置が互いに対して変更されていることを除いて、図1に示すものと同じである。光源51及び52から生成された光波は、それぞれCW方向、CCW方向で共振器内へ結合された後、それぞれ素子53及び60、素子54及び70によってそれぞれモードフィルタ250、260に向けて方向付けられる。すべての光は、イン/アウト結合素子60、70によって共振器の外の検出器55、56に結合される前に、少なくとも1回2つのモードフィルタ250、260を通過する。ループファイバ90は、フィルタ250と260との間に配置される。2つのモードフィルタ250、260は、単一モードフィルタよりも高レベルのモード抑制を提供することもできるし、製造の際の利便性(より低いコスト)を提供することもできる。2つのモードフィルタ250、260及び2つのイン/アウト結合素子60、70が実質的に同じ(互いの鏡像)であるとき、この構成は、高い対称性を有し、これは、寄生光波に起因するCW波及びCCW波への位相寄与を強制的にCW方向及びCCW方向に共通にすることによって、バイアス誤差をキャンセルするのに有利と考えられる。
【0021】
図4は、図3に近い構成を有するが、イン/アウト結合素子に対してファイバ結合器120、130を使用するRFOG300の一実施形態を示す。図2のものと同様の単一モードファイバ結合器120及び130は、イン/アウト結合素子として同様に使用される。素子122及び132は、図2に示すものと同一のファイバスプライス及び/又は光学素子である。しかしながら、光波は、(図2と比較して)結合器の異なる部分から共振器内へ注入される。単一モードファイバフィルタ360及び350は、それぞれ接続素子122、132を通じてそれぞれ結合器120、130をループファイバ90に接続する。フィルタ350、360は、モードフィルタとして機能するために、1つの空間モードのみをサポートする。ファイバ340は、2つの結合器120、130を接続し、好ましくは、RFOG300においてより有効なモードフィルタリングを行うために単一モードファイバである。実際には、ファイバ340、350、及び360は、追加の接続(スプライス)が必要ないように、好ましくは、1本の単一モードファイバを形成する。加えて、RFOG300のすべてのファイバは、不要な偏光モードを抑制するために偏光ファイバとすることができる。この実施形態では、すべての光は、共振器の外へ結合される前にモードフィルタ350、360のそれぞれを少なくとも1回通過する。この共振器は、CW方向及びCCW方向に関して対称である。
【0022】
図5は、2つのモードフィルタを有するRFOG400の別の実施形態を示す。簡単にするために、イン/アウト結合素子420及び430は、部分反射ミラーによって表されている。しかしながら、イン/アウト結合素子420、430としてミラーを使用することにこの実施形態を限定することが意図されているわけではない。部分反射ミラーと同等/同様のビーム方向付け機能を有するファイバ結合器、サーキュレータ、及び導波路等の任意の光学デバイスをRFOG400で使用することができ、また、以下の実施形態においてミラーがイン/アウト結合素子として示されている場合に使用することができる。この実施形態では、CW伝播方向及びCCW伝播方向の双方の光波は、素子420によって共振器内へ結合され、素子430によって外の検出器56及び55に結合される。CW光が、検出器56に当たる前にモードフィルタ440を少なくとも1回通過しなければならないように、モードフィルタ440はミラー420と430との間に配置される。CCW光が、検出器55に到達する前にモードフィルタ450を少なくとも1回通過しなければならないように、モードフィルタ450は、ミラー430とループファイバ端部551との間に配置される。再循環する光波は、必要なモードフィルタリングを達成するために、各ラウンドトリップでモードフィルタ440及び450の双方によってモードフィルタリングされる。この構成は、共振器内のCW光路及びCCW光路に関して対称ではないが、図1〜図4に示す方向性素子53及び54に、出力ビームを入力ビームから分離してもらう必要がなく、これによって、コンポーネント数を削減することができ、したがって、RFOGのコストを下げることができる。
【0023】
図6は、図5に示すRFOG400のファイバ結合器バージョンにおけるRFOG500を示す。結合器120、130、光源51及び52、検出器55及び56、コネクタ122及び132、並びにループファイバ90は、図2及び図4に示すものと同じである。しかしながら、それらの配列は変更されている。結合器120は、CW方向及びCCW方向の双方で光を共振器内へ結合する。結合器130は、光を共振器の外の検出器56及び55に結合する。単一モードファイバモードフィルタ540は、2つの結合器120、130の間に配置され、単一モードファイバ550は、結合器130とループファイバ90との間に配置され、単一モードファイバ560は、結合器120とループファイバ90との間に配置される。単一モードファイバ540、550、及び560は、余分な接続及びスプライスが必要とされないように単一の一本のファイバを形成することが望ましい。
【0024】
RFOGの上記実施形態は、すべて、2つのイン/アウト結合素子を共振器内に有する。対称的な構成を有する実施形態(例えば、図1〜図4に示す実施形態)の場合、このタイプのRFOGには、方向性光学素子(例えば、素子53及び54)が、入力ビームと出力ビームとを分離するのに必要とされる。非対称な構成(例えば、図5及び図6に示す構成)は、2つのイン/アウト結合素子を有するRFOGにおける余分な方向性素子の使用を回避するために採用することができる。しかしながら、3つ以上のイン/アウト結合素子が使用される場合に、RFOGにおいて対称性を達成することが可能である。以下の実施形態では、3つのイン/アウト結合素子を有する対称RFOGにおけるモードフィルタの配置が論述される。さらに多くの個数の結合素子への拡張も可能であるが、より多くの結合素子が共振器内で使用されると、より高い共振器ラウンドトリップ損失に関連した信号対雑音性能の劣化のために、あまり望ましくない。
【0025】
図7は、2つのモードフィルタ640、650、及び3つのイン/アウト結合素子620、630、670を有する対称RFOG600の一実施形態を示す。光波は、CW方向及びCCW方向で素子670(例えば、部分反射ミラー)によって共振器内へ結合される。光は、(CW光については)素子630によって共振器の外へ一部結合され、(CCW光については)素子620によって共振器の外へ一部結合される。モードフィルタ640は、入力結合素子670と出力結合素子620との間に配置され、モードフィルタ650は、入力結合素子670と出力結合素子630との間に配置される。すべての光波は、共振器の外へ結合される前に、1つのモードフィルタ640又は650を少なくとも1回通らなければならない。光波は、別々の素子によって共振器の内及び外へ結合されるので、方向性素子を使用してそれらを分離する必要はない。モードフィルタ640及び650並びに素子620及び630が実質的に同じであることを条件に、RFOG600の構成は、CW伝播波及びCCW伝播波に関して実質的に対称である。
【0026】
図8は、図7に示す構成と同様の構成を有するが、入力結合のためにファイバ結合器770を使用し、出力結合のために2つの3ポート光学素子720、730を使用し、モードフィルタ740、750として単一モードファイバを使用するRFOG700の一実施形態である。入力光波は、結合器770によって共振器内へ結合される。結合器770は、前の実施形態で説明したものと同じ結合器とすることができる。単一モードファイバモードフィルタ740は、入力結合器770と3つのポートを有する光学素子720との間に配置され、単一モードファイバモードフィルタ750は、入力結合器770と3つのポートを有する光学素子730との間に配置される。素子720は、第1のポート721と第2のポート722との間で光の相当量を透過し、素子730は、第1のポート731と第2のポート732との間で光の相当量を透過し、これによって、光波が共振器の中を循環することが可能になる。第1のポート721、731からそれぞれ第2のポート722、732へ伝播する光のわずかな量は、光検出器55、56へ出力するためにそれぞれ第3のポート723、733へ結合される。第2のポート722、732からそれぞれ第3のポート723、733へ光が結合することはできない。この実施形態における光の伝播は、前述したものと同様であり、当業者に理解可能である。したがって、ここでは、詳細な説明は繰り返さない。
【0027】
図9は、図7に示す実施形態と同様のRFOG610の一実施形態を示す。しかしながら、光源51、52の位置と検出器55、56の位置とが入れ替わっている。CW(CCW)光源からの光は、それぞれ素子620、630によって共振器内に結合されて、それぞれCW方向及びCCW方向に伝播する。素子670は、CW(CCW)方向に共振器を伝播する光のわずかな量をそれぞれ検出器56、55に結合する。すべての光波が、共振器の外の検出器55、56へ結合される前に、モードフィルタ640、650の少なくとも一方を少なくとも1回通らなければならないように、モードフィルタ640は、入力結合素子620と出力結合素子670との間に配置され、モードフィルタ650は、入力結合素子630と出力結合素子670との間に配置される。この場合も、この実施形態は、CW波及びCCW波に関して対称である。
【0028】
図10は、光源の位置と検出器の位置とが入れ替わっていることを除いて、図8に示す実施形態と同様のRFOG710の一実施形態である。この実施形態は、光伝播シーケンスにおいて、図9に示す構成と同様であるが、出力素子670は、モードフィルタリング能力を有する単一モードファイバ結合器と取り替えられている。CW(CCW)光波は、それぞれ素子720、730によって共振器内へ結合される。それらの光波は、ファイバ結合器770によってそれぞれ外の検出器56、55へ結合される。すべての光波が、共振器の外の検出器へ結合される前に、少なくとも1つのモードフィルタを少なくとも1回通らなければならないように、モードフィルタ740、750の位置は、図8と同一である。
【0029】
図11は、入力結合素子720及び730がそれぞれファイバ結合器820及び830に取り替えられていることを除いて、図10と同様のRFOG800の一実施形態を示す。結合器820及び830は、結合器770と同様であり、好ましくは、フィルタリング能力を有する単一モードファイバ結合器である。CW光源及びCCW光源からの光は、それぞれ結合器リード823及び833を介して共振器内に結合され、共振器内をそれぞれCW方向及びCCW方向で進む。第2の結合器リード840及び850は、それぞれコネクタ122及び132によってループファイバ90に接続される。コネクタ122及び132は、図2〜図4に示すコネクタと同様である。モードフィルタ740及び750は、図8及び図10に示す機能と同じ機能を有し、回転検知に使用される基本モード以外のモードの大幅な抑制を行う。
【0030】
図12は、対称RFOG612のさらに別の実施形態を示す。光源51及び52からの入力光波は、それぞれ素子620及び630によって、それぞれCW方向及びCCW方向で共振器内へ結合される。CW光及びCCW光は、素子670によって共振器の外のそれぞれ検出器55、56内へ結合される。この構成では、モードフィルタ640は、入力結合素子620とループファイバ端部との間に配置され、モードフィルタ650は、入力結合素子630とループファイバ端部との間に配置される。共振器を出るすべての光波は、共振器の外の検出器へ向けて結合される前に、双方のモードフィルタを少なくとも1回強制的に伝播させられる。
【0031】
図13は、図11に示す実施形態と同様であるが、光波が結合器リード921及び931から共振器内へ結合される、RFOG900の一実施形態である。モードフィルタ940は、結合器920とループファイバ90の端部との間に配置され、モードフィルタ950は、結合器930とループファイバ90の端部との間に配置され、これらの配置は、同様に機能する素子を通る光伝播のシーケンスにおいて、図12に示す構成と同様である。フィルタ940及び950内にあるファイバ並びにリード922及び932を形成するファイバは、ファイバコネクタ(スプライス)及び光モード場の不一致からの光損失を回避できるように、単一の1本の単一モードファイバを形成することが好ましい。
【0032】
図14及び図15は、それぞれ図12及び図13に示す実施形態と同様であるが、光源の位置と検出器の位置とが入れ替わっている、実施形態(RFOG614、910)である。同一の素子は、同じラベリング番号によって示され、それらの機能は明らかである。
【0033】
図面及び実施形態の多くにおいて、CW(CCW)光波の一部がCCW(CW)光源に向けて伝播し得ることに留意しなければならない。光波がレーザ動作と干渉して、レーザ動作を不安定にすることを防止するために、方向性光アイソレータがすべての実施形態に含まれて、光波が反対方向のレーザ内に結合されないようにすることが重要である。これらのアイソレータは、レーザの出力近くの光路に組み込むこともできるし、方向性素子53及び54に含めることもできる。加えて、信号光波との寄生干渉が回避されるように、すべての光学素子は、好ましくは、後方反射を実質的に有しないように選択又は設計される。
【0034】
上で述べたように、本発明の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく多くの変更を行うことができる。したがって、本発明の範囲は、好ましい実施形態の開示によって限定されるものではない。それどころか、本発明は、続く特許請求の範囲を参照することによって専ら判断されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高次空間モードからのバイアス誤差が低減された共振器光ファイバジャイロスコープ(RFOG)に関する。
【背景技術】
【0002】
共振器光ファイバジャイロスコープ(RFOG)は、ファイバ共振リングキャビティを備える回転検知デバイスである。ジャイロが、リングキャビティ(共振器とも呼ばれる)の平面に垂直な軸の周りに非ゼロの回転速度を有するとき、2つの反対方向に伝播する光波の有効ラウンドトリップパス経路長は異なる。このいわゆるサニャック効果によって、リングキャビティは、便宜上、時計回り(CW)及び半時計回り(CCW)と呼ばれることが多い2つの反対方向について異なる共振周波数を示す。この共振周波数差は、ジャイロ回転速度に比例する。
【0003】
CW方向及びCCW方向におけるリングキャビティの共振周波数差を測定するために、単色光波が、双方の方向で共振器内へ結合され、それらの周波数は、共振特性のピーク(又はディップ。どのような光が共振器の外へ結合されるのかに依拠する)に別々にチューン/ロックされる。リングキャビティの「共振特性」又は単に「共振」という用語は、入力光周波数の関数としての共振器出力パワーの曲線を指す。この曲線は、通常、ピーク(又はディップ)の周期的なパターンを有し、これらピーク(又はディップ)の対応する周波数が共振周波数である。共振器内の光路長の1波長分だけ異なる、共振器の同じ空間モード及び偏光モードの隣接する2つのピーク(又はディップ)間の周波数差は、共振器の自由スペクトル間隔(FSR)である。これは、共振器のラウンドトリップ伝播時間によって決まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
精密な共振周波数測定のために、不要な空間モード及び偏光モードから生成される信号誤差を無視できるように、共振器キャビティは、単一の空間モード及び単一の偏光モードのみをサポートすべきである。従来技術の発明では、不要な偏光モードを抑制するために、高い偏光消光比(PER)を有する共振器内偏光子が提案されてきた。しかしながら、共振器光ファイバは、純粋な単一の空間モードをサポートすると仮定されることが多く、高次空間モードの影響の議論はほとんど存在していなかった。近年、光ファイバジャイロスコープにバンドギャップ中空コアファイバを使用して、(従来のソリッドコアファイバと比較して)その環境変化に対する低い感度、無視できる非線形屈折率、及び低い位相変動を活用することへの関心が高まっている。中空コアファイバジャイロスコープの研究中、時に設計により、時に設計又は製造プロセスのいずれかにおける不完全さに起因して、現在の市販の低損失中空コアファイバの高次空間モードのサポートは弱いおそれがあるということが判明した。ジャイロ性能に対する高次空間モードの影響の緩和方法を見出すことは、ますます重要になってきている。
【0005】
共振器ループファイバの高次空間モード、すなわち基本モード以外のモード、のサポートが弱い場合、ジャイロのバイアス安定性に対する影響が重要となる場合がある。モード分散に起因して、高次モードは、基本モードに対して異なる光路を進み、異なるラウンドトリップ位相遅延を有する。共振器の出力光が検出されるとき、高次モードからの光は、基本モードと干渉するおそれがあり、環境変化と共に変動する共振非対称性が生じる。この干渉は、2つの空間直交モードを空間的に平均化することによって或る程度抑制することができるが、この抑制は、例えば、検出される光が有限開口を通って進むか又は検出器が空間不均質性を有するとき、不完全な空間平均化によって損なわれるおそれがある。高次モードは、場合によっては強度が弱いが、高性能RFOGのバイアス安定性の厳しい制約因子になる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空間モードフィルタリングを通じて、共振器光ファイバジャイロスコープ(RFOG)のバイアス安定性に対する高次モードの影響を低減する。高次空間モードのラウンドトリップ損失は、共振器の内部に適切に配置された空間モードフィルタによって大きく増加し、その結果として、高次モードにより誘発されるバイアス誤差が非常に大きく低減される。
【0007】
本発明の一態様では、RFOGは、第1の端部及び第2の端部を有するループファイバ、少なくとも3つのポートA、B、及びCを有する第1のイン/アウト結合素子及び第2のイン/アウト結合素子、少なくとも3つのポート1、2、及び3を有する第1の方向性素子及び第2の方向性素子、第1の光源及び第2の光源、第1の検出器及び第2の検出器、並びに第1の端部及び第2の端部を有するモードフィルタを含む。(実質的に同じである第1又は第2の)イン/アウト結合素子は、光の相当量をポートAからポートBへ及びポートBからポートAへ結合する。光のわずかな量が、CからBへ及びBからCへ結合されるが、光がポートAからポートCへ及びポートCからポートAへ結合されることは防止される。(実質的に同じである第1又は第2の)方向性素子は、光の相当量をポート1からポート2へ、ポート2からポート3へ結合するが、光がポート1からポート3へ結合されることを防止する。
【0008】
RFOG共振器は、ループファイバの第1の端部及び第2の端部をそれぞれ第1のイン/アウト結合素子のポートA及び第2のイン/アウト結合素子のポートAに接続し、第1のイン/アウト結合素子のポートB及び第2のイン/アウト結合素子のポートBをそれぞれモードフィルタの第1の端部及び第2の端部することによって形成される。第1(第2の)の方向性素子は、ポート1において第1(第2)の光源から光を受信し、その光を、対応するポート2へ方向付ける。ポート2は、第1(第2)のイン/アウト結合素子のポートCに接続されている。光は、次に、第1(第2)のイン/アウト結合素子のポートBにおいて共振器内へ結合される。光は、共振器のCW(CCW)方向に循環する。CW(CCW)光のわずかな量は、第2(第1)のイン/アウト結合素子のポートCにおいて共振器の外へ結合され、第2(第1)の方向性素子のポート2へ方向付けられ、第2(第1)の検出器へ結合される。第2(第1)の検出器は、第2(第1)の方向性素子のポート3に接続されている。モードフィルタは、共振器の高次空間モードの大幅な抑制を提供する単一モードファイバ及び単一モード導波路等の単一モード光学素子を含む。加えて、1つの低損失偏光モードのみが共振器によってサポートされるように、偏光素子をモードフィルタに含めることもできる。
【0009】
すべての実施形態において、光検出器に到達する光は、共振器内の少なくとも1つのモードフィルタによってフィルタリングされる。これによって、基本モードとの干渉から不要なモードの影響が大きく低減/除去される。これは、共振周波数の正確な測定のために極めて重要であり、したがって、回転速度の正確な測定に極めて重要である。
【0010】
本発明の好ましい実施形態及び代替的な実施形態が、以下の図面を参照して以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】1つの空間モードフィルタ及び2つのイン/アウト結合素子をリングキャビティ内に有する対称RFOGの一実施形態を示す。
【図2】図1に示す構成と同様の構成を有するが、イン/アウト結合のためにファイバ結合器を使用し、モードフィルタとして単一モードファイバを使用する、RFOGの一実施形態を示す。
【図3】2つの空間モードフィルタ及び2つのイン/アウト結合素子をリングキャビティ内に有する対称RFOGの別の実施形態を示す。
【図4】図3に示す構成と同様の構成を有するが、イン/アウト結合のためにファイバ結合器を使用し、モードフィルタとして単一モードファイバを使用する、RFOGの一実施形態を示す。
【図5】2つの空間モードフィルタ及び2つのイン/アウト結合素子をリングキャビティ内に含む非対称RFOGの一実施形態を示す。
【図6】図5に示す構成と同様の構成を有するが、イン/アウト結合のためにファイバ結合器を使用し、モードフィルタとして単一モードファイバを使用する、非対称RFOGの一実施形態を示す。
【図7】2つの空間モードフィルタ及び3つのイン/アウト結合素子をリングキャビティ内に有する対称RFOGの一実施形態を示す。
【図8】図7に示す構成と同様の構成を有するが、イン/アウト結合のために1つのファイバ結合器及び2つのマイクロ光学素子を使用し、モードフィルタとして単一モードファイバを使用する、RFOGの一実施形態を示す。
【図9】2つの空間モードフィルタ及び3つのイン/アウト結合素子をリングキャビティ内に有する対称RFOGの別の実施形態を示す。
【図10】図9に示す構成と同様の構成を有するが、イン/アウト結合のために1つのファイバ結合器及び2つのマイクロ光学素子を使用し、モードフィルタとして単一モードファイバを使用する、RFOGの一実施形態を示す。
【図11】図10に示す構成と同様の構成を有するが、イン/アウト結合のために3つのファイバ結合器を使用し、モードフィルタとして単一モードファイバを使用する、RFOGの一実施形態を示す。
【図12】2つの空間モードフィルタ及び3つのイン/アウト結合素子をリングキャビティ内に有する対称RFOGの別の実施形態を示す。
【図13】図12に示す構成と同様の構成を有するが、イン/アウト結合のために3つのファイバ結合器を使用し、モードフィルタとして単一モードファイバを使用する、RFOGの一実施形態を示す。
【図14】2つの空間モードフィルタ及び3つのイン/アウト結合素子をリングキャビティ内に有する対称RFOGの別の実施形態を示す。
【図15】図14に示す構成と同様の構成を有するが、イン/アウト結合のために3つのファイバ結合器を使用し、モードフィルタとして単一モードファイバを使用する、RFOGの一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、リングキャビティを有する共振器光ファイバジャイロスコープ(RFOG)での使用について本発明が説明される。リングキャビティは、分離光学素子及び/又は導波路光学素子を含むことができることが理解されるべきである。「空間モード」という用語は、一般に、導波路のモード、分離光学素子のモード、及び光学素子間の自由空間のモードを含む。本発明は、共振器(リングキャビティ)の不要な高次空間モードの抑制に焦点を当てるが、これは、不要な偏光モードの抑制を無視することを意味するものではない。「単一空間モードフィルタ」又は単に「モードフィルタ」は、明示的に言及されていない場合には、一方の偏光モードを大幅に抑制し、他方の偏光モードを通過させる(空間モードフィルタリング素子に加えて)高度偏光素子を含むことができる。モードフィルタにおける偏光素子は、偏光導波路、偏光ファイバ、及び偏光子とすることができる。
【0013】
理想的なRFOGは、回転速度を求めるのに使用される共振周波数の正確な測定のために、自身のリングキャビティにおいて単一モードをサポートすべきである。いわゆる「単一モード」は、偏光状態又は空間場分布のいずれかの意味で、光の特殊な状態として定義される。単一モードは、リングに沿った各点において、前のラウンドトリップの直前の光場に対して、一定の減衰係数及び一定の位相遅延を除き、共振器のラウンドトリップ後にその状態を再現する。したがって、同じモードで進む連続した光波は、リング内の各点において強め合って干渉する。時に、このモードは、「固有モード」と呼ばれる。ラウンドトリップ場振幅透過(round-trip field amplitude transmission)及び位相シフトを記述する複素係数は、モードの「固有値」と呼ばれる。共振器が1つの固有モードしかサポートしない限り、CW方向及びCCW方向のそれぞれには実質的に1つの共振しか存在しない。共振周波数差は、したがって、正確に求めることができる。本発明の一実施形態は、1つの固有モードのみを有するリング共振器を有効に作製すること、すなわち、1つの固有モード(基本モード)を除くすべてが、双方の伝播方向でその固有値の大きさについて事実上ゼロ振幅透過(zero amplitude transmission)(ゼロモジュラス)を有する共振器を作製することである。また、共振器の基本固有モードが、より大きな信号対雑音に対して高いフィネスで共振することも本発明の目的である。すなわち、固有値の大きさができるだけ1に近くなることも本発明の目的である。2つ以上の固有モードが共振器によってサポートされているとき、重なり合う可能性のある複数の共振が存在することになり、回転検知での使用を目的とした共振線形(信号共振、すなわち基本モードの共振)に歪み及び非対称性が生じ、したがって、ジャイロ出力の中にバイアス誤差が生じる。さらに、オフ共振モードからの少量の光は、検出プロセスにおける不完全な空間平均化又は偏光依存損失を介して、基本モードの共振で進む光と干渉する可能性がある。共振器に空間モードフィルタを使用して、ジャイロバイアス性能に対する不要な空間モードの影響を低減することが可能である。本発明は、RFOGにおいてモードフィルタを有するいくつかの実施形態を提供する。
【0014】
図1は、モードフィルタを有するRFOG20の一実施形態を示す。RFOG20は、光源51及び52、方向性光学素子53及び54、光検出器55及び56、共振器イン/アウト結合素子60、70、ファイバループ90、並びにモードフィルタ80を含む。方向性光学素子53、54は、ポート1からポート2へ光を方向付けることができるがポート1における光がポート3に入力するのを大幅に阻止でき且つポート2からポート3へ光を方向付けることができる光サーキュレータ、ファイバ結合器若しくは単にミラー、又はそれらの組み合わせとすることができる。共振器イン/アウト結合素子60及び70は、それぞれ少なくとも3つのポート61〜63及び71〜73を有する光学素子である。素子60は、光がポート62から63へ伝播することを可能にする。素子70は、光が大きな損失なくポート72から73へ伝播することを可能にする。加えて、素子60、70は、それぞれポート61とポート63との間及びポート71とポート73との間の光の結合(伝播)を提供するが、光がそれぞれポート61と62との間及びポート71と72との間で伝播することを妨げる。イン/アウト結合素子60及び70は、その最も単純な形態において部分反射ミラーとすることができるが、ファイバ結合器、導波路結合器、及びビームスプリッタ等の他のデバイスも可能である。
【0015】
光源51及び52から生成された光波は、それぞれ方向性結合素子53及び54のポート1内へ結合される。素子53及び54は、入力光の相当量をポート2へ方向付け、それら入力光の相当量をそれぞれイン/アウト結合素子60のポート61及びイン/アウト結合素子70のポート71内へ結合する。ポート61及び71に入力する光のわずかな量は、共振器のそれぞれCW方向及びCCW方向に伝播するように、それぞれポート63及び73に方向付けられる。ポート63及び73においてCW(CCW)方向で共振器内へ結合された光波は、モードフィルタ80、他方の素子70及び60、ファイバループ90を連続して伝播し、それぞれポート62又は72においてそれぞれ元の素子60又は70に入る。その光の相当量は、光が共振器内を再循環するように、ポート63又は73に方向付けられる。ポート73、63内へ結合されたCW(CCW)光のほんのわずかの量は、それぞれポート71、61において共振器の外へ結合され、それぞれ方向性素子54、53のポート2へ伝播する。方向性素子54、53は、共振周波数の検出のために、その受信光をそれぞれ光検出器56、55へ方向付ける。
【0016】
図1のRFOG構成において、モードフィルタ80は、共振器の高次空間モード(基本モード以外のモード)の抑制において極めて重要な役割を果たす。1つのモードしかモードフィルタによってサポートされないので、共振器の中をラウンドトリップ走行した後、サポートされたモードは、そのモード分布を再現できる共振器の唯一の固有モードとなる。通常ならば、ループファイバ90内に2つ以上のモードが存在することによってサポートされ得る共振器の高次空間モードは、モードフィルタ80によって実質的に拒否される。光検出器55、56に到達する光が共振器の単一の固有モードからのものとなるように、共振器の外へ結合されるすべての光波は、少なくとも1回モードフィルタ80を通過する。これによって、1次モードとの不要なモードの干渉が取り除かれ、その結果、共振周波数が正確に検出される。この実施形態の別の利点は、モードフィルタ80がCW伝播波及びCCW伝播波の双方に共通であるということであり、その結果として、CW光波及びCCW光波に関する対称度がより高いということである。これによって、CW共振器及びCCW共振器の双方に共通のバイアス誤差をキャンセルすることが助けられる。
【0017】
図1において、光の非常に多くの割合(「x」という)は、CW方向及びCCW方向の双方で、光ファイバループ90から空間フィルタ80に渡り、ファイバループ90に戻ることが重要である。これは、方向性結合器素子54及び53への光を含めて、光のほんの一部(「y」という)しかリング共振器の外へ引き出されないことも意味する。図1は、これが、結合素子60及び70によって引き起こされていることを示している。結合素子60及び70は、(ポート62から63へ及びポート72から73への)高い透過係数並びにポート63から61へ及びポート73から71への低い反射係数を有する反射器を有するものとして示されている。これは、所望の高いx値及び低いy値を達成する1つの方法であり、これら所望の高いx値及び低いy値は、ジャイロにおける信号対雑音比を最適化することに基づいている。上記技法は、図示するように結合素子60及び70の透過モードを使用すると言われる。図1において、結合素子60及び70は反射モードでも示すことができることに留意しなければならない。すなわち、結合素子60及び70の内部の光学素子が、高い反射率及び低い透過率を有する場合である。この場合、ここでは図示しないが、必要な高いx値及び低いy値を成し遂げるために、コイルファイバ90の端部が、結合素子60のポート61及び結合素子70のポート71に取り付けられ、方向性結合器素子53及び54は、結合素子60のポート62及び結合素子70のポート72にそれぞれ取り付けられる。以下の図面及び実施形態は、結合素子の透過モードの光学部品類を使用する場合を示すことがある。しかしながら、反射モードの光学部品類も、図1について説明したものと同様のポートの再配列で使用することができ、これらの変更は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。ファイバ結合器の場合、当業者には知られているように、ポートの再配列は、(低い結合比ではなく)高い結合比の結合器を含むように、結合器のリードを切り替えることによって成し遂げることができる。
【0018】
ファイバ/導波路デバイスは、時に、潜在的に、より小さなフォームファクタ、より大きな耐久性、及び改善された信頼性のために、バルク素子を備えるデバイスよりも好ましい。図2は、図1に示す構成と同様の構成を有するが、ファイバ形態におけるコンポーネントを有するRFOG100を示す。この実施形態では、イン/アウト結合は、単一モードファイバ結合器120及び130によって実行される。代表的な2×2ファイバ結合器120、130の場合、第1のポート121と第2のポート123との間及び第1のポート131と第2のポート133との間並びに第2のポート123と第3のポート124との間及び第2のポート133と第3のポート134との間に光結合がある。RFOG100は、モードフィルタリングを実行する1本の単一モードフィルタファイバ140を含む。ファイバ140は、1つの空間/偏光モードのみをサポートする偏光単一モードファイバとすることができる。ポート121、123、124、125、131、133、134、135における結合器ファイバ及びモードフィルタファイバ140は、好ましくは、同じタイプの単一モードファイバである。結合器ファイバ124、123、140、133、及び134は、追加の接続(スプライス)が必要ないように単一のファイバとすることができる。素子122及び132は、ループファイバ90の端部をそれぞれポート124及び134における単一モード結合器ファイバに接続する。素子122、132は、単一モード結合器ファイバとループファイバ90との間で光の相当量を結合するファイバスプライス及び/又は光学素子である。この実施形態におけるCW方向及びCCW方向での光の伝播は、図1について説明したものと同様である。ループファイバ90、結合器120、130、及びモードフィルタ140を含む共振器内の不要な高次空間モードが大幅に取り除かれるように、共振器の外へ結合されるすべての光波は、モードフィルタ140を少なくとも1回通過しなければならない。
【0019】
ループファイバは、本発明のすべての実施形態で必須(明示的に言及)とは限らないが、好ましくは、単一空間モード(又は、理想的には「単一モード」である)で光をできるだけ多く伝導する。このようにして、共振器における損失が最小にされる。共振器内の光学素子及びファイバ間の接続(例えば、スプライス)は、できるだけ小さな損失を提供すべきである。
【0020】
図3は、異なる構成を有するRFOG200の別の実施形態を示す。RFOG200は、図1に示す1つのモードフィルタの代わりに2つのモードフィルタ250及び260を含む。光源51及び52、方向性素子53及び54、光検出器55及び56、並びにイン/アウト結合素子60及び70は、それらの位置が互いに対して変更されていることを除いて、図1に示すものと同じである。光源51及び52から生成された光波は、それぞれCW方向、CCW方向で共振器内へ結合された後、それぞれ素子53及び60、素子54及び70によってそれぞれモードフィルタ250、260に向けて方向付けられる。すべての光は、イン/アウト結合素子60、70によって共振器の外の検出器55、56に結合される前に、少なくとも1回2つのモードフィルタ250、260を通過する。ループファイバ90は、フィルタ250と260との間に配置される。2つのモードフィルタ250、260は、単一モードフィルタよりも高レベルのモード抑制を提供することもできるし、製造の際の利便性(より低いコスト)を提供することもできる。2つのモードフィルタ250、260及び2つのイン/アウト結合素子60、70が実質的に同じ(互いの鏡像)であるとき、この構成は、高い対称性を有し、これは、寄生光波に起因するCW波及びCCW波への位相寄与を強制的にCW方向及びCCW方向に共通にすることによって、バイアス誤差をキャンセルするのに有利と考えられる。
【0021】
図4は、図3に近い構成を有するが、イン/アウト結合素子に対してファイバ結合器120、130を使用するRFOG300の一実施形態を示す。図2のものと同様の単一モードファイバ結合器120及び130は、イン/アウト結合素子として同様に使用される。素子122及び132は、図2に示すものと同一のファイバスプライス及び/又は光学素子である。しかしながら、光波は、(図2と比較して)結合器の異なる部分から共振器内へ注入される。単一モードファイバフィルタ360及び350は、それぞれ接続素子122、132を通じてそれぞれ結合器120、130をループファイバ90に接続する。フィルタ350、360は、モードフィルタとして機能するために、1つの空間モードのみをサポートする。ファイバ340は、2つの結合器120、130を接続し、好ましくは、RFOG300においてより有効なモードフィルタリングを行うために単一モードファイバである。実際には、ファイバ340、350、及び360は、追加の接続(スプライス)が必要ないように、好ましくは、1本の単一モードファイバを形成する。加えて、RFOG300のすべてのファイバは、不要な偏光モードを抑制するために偏光ファイバとすることができる。この実施形態では、すべての光は、共振器の外へ結合される前にモードフィルタ350、360のそれぞれを少なくとも1回通過する。この共振器は、CW方向及びCCW方向に関して対称である。
【0022】
図5は、2つのモードフィルタを有するRFOG400の別の実施形態を示す。簡単にするために、イン/アウト結合素子420及び430は、部分反射ミラーによって表されている。しかしながら、イン/アウト結合素子420、430としてミラーを使用することにこの実施形態を限定することが意図されているわけではない。部分反射ミラーと同等/同様のビーム方向付け機能を有するファイバ結合器、サーキュレータ、及び導波路等の任意の光学デバイスをRFOG400で使用することができ、また、以下の実施形態においてミラーがイン/アウト結合素子として示されている場合に使用することができる。この実施形態では、CW伝播方向及びCCW伝播方向の双方の光波は、素子420によって共振器内へ結合され、素子430によって外の検出器56及び55に結合される。CW光が、検出器56に当たる前にモードフィルタ440を少なくとも1回通過しなければならないように、モードフィルタ440はミラー420と430との間に配置される。CCW光が、検出器55に到達する前にモードフィルタ450を少なくとも1回通過しなければならないように、モードフィルタ450は、ミラー430とループファイバ端部551との間に配置される。再循環する光波は、必要なモードフィルタリングを達成するために、各ラウンドトリップでモードフィルタ440及び450の双方によってモードフィルタリングされる。この構成は、共振器内のCW光路及びCCW光路に関して対称ではないが、図1〜図4に示す方向性素子53及び54に、出力ビームを入力ビームから分離してもらう必要がなく、これによって、コンポーネント数を削減することができ、したがって、RFOGのコストを下げることができる。
【0023】
図6は、図5に示すRFOG400のファイバ結合器バージョンにおけるRFOG500を示す。結合器120、130、光源51及び52、検出器55及び56、コネクタ122及び132、並びにループファイバ90は、図2及び図4に示すものと同じである。しかしながら、それらの配列は変更されている。結合器120は、CW方向及びCCW方向の双方で光を共振器内へ結合する。結合器130は、光を共振器の外の検出器56及び55に結合する。単一モードファイバモードフィルタ540は、2つの結合器120、130の間に配置され、単一モードファイバ550は、結合器130とループファイバ90との間に配置され、単一モードファイバ560は、結合器120とループファイバ90との間に配置される。単一モードファイバ540、550、及び560は、余分な接続及びスプライスが必要とされないように単一の一本のファイバを形成することが望ましい。
【0024】
RFOGの上記実施形態は、すべて、2つのイン/アウト結合素子を共振器内に有する。対称的な構成を有する実施形態(例えば、図1〜図4に示す実施形態)の場合、このタイプのRFOGには、方向性光学素子(例えば、素子53及び54)が、入力ビームと出力ビームとを分離するのに必要とされる。非対称な構成(例えば、図5及び図6に示す構成)は、2つのイン/アウト結合素子を有するRFOGにおける余分な方向性素子の使用を回避するために採用することができる。しかしながら、3つ以上のイン/アウト結合素子が使用される場合に、RFOGにおいて対称性を達成することが可能である。以下の実施形態では、3つのイン/アウト結合素子を有する対称RFOGにおけるモードフィルタの配置が論述される。さらに多くの個数の結合素子への拡張も可能であるが、より多くの結合素子が共振器内で使用されると、より高い共振器ラウンドトリップ損失に関連した信号対雑音性能の劣化のために、あまり望ましくない。
【0025】
図7は、2つのモードフィルタ640、650、及び3つのイン/アウト結合素子620、630、670を有する対称RFOG600の一実施形態を示す。光波は、CW方向及びCCW方向で素子670(例えば、部分反射ミラー)によって共振器内へ結合される。光は、(CW光については)素子630によって共振器の外へ一部結合され、(CCW光については)素子620によって共振器の外へ一部結合される。モードフィルタ640は、入力結合素子670と出力結合素子620との間に配置され、モードフィルタ650は、入力結合素子670と出力結合素子630との間に配置される。すべての光波は、共振器の外へ結合される前に、1つのモードフィルタ640又は650を少なくとも1回通らなければならない。光波は、別々の素子によって共振器の内及び外へ結合されるので、方向性素子を使用してそれらを分離する必要はない。モードフィルタ640及び650並びに素子620及び630が実質的に同じであることを条件に、RFOG600の構成は、CW伝播波及びCCW伝播波に関して実質的に対称である。
【0026】
図8は、図7に示す構成と同様の構成を有するが、入力結合のためにファイバ結合器770を使用し、出力結合のために2つの3ポート光学素子720、730を使用し、モードフィルタ740、750として単一モードファイバを使用するRFOG700の一実施形態である。入力光波は、結合器770によって共振器内へ結合される。結合器770は、前の実施形態で説明したものと同じ結合器とすることができる。単一モードファイバモードフィルタ740は、入力結合器770と3つのポートを有する光学素子720との間に配置され、単一モードファイバモードフィルタ750は、入力結合器770と3つのポートを有する光学素子730との間に配置される。素子720は、第1のポート721と第2のポート722との間で光の相当量を透過し、素子730は、第1のポート731と第2のポート732との間で光の相当量を透過し、これによって、光波が共振器の中を循環することが可能になる。第1のポート721、731からそれぞれ第2のポート722、732へ伝播する光のわずかな量は、光検出器55、56へ出力するためにそれぞれ第3のポート723、733へ結合される。第2のポート722、732からそれぞれ第3のポート723、733へ光が結合することはできない。この実施形態における光の伝播は、前述したものと同様であり、当業者に理解可能である。したがって、ここでは、詳細な説明は繰り返さない。
【0027】
図9は、図7に示す実施形態と同様のRFOG610の一実施形態を示す。しかしながら、光源51、52の位置と検出器55、56の位置とが入れ替わっている。CW(CCW)光源からの光は、それぞれ素子620、630によって共振器内に結合されて、それぞれCW方向及びCCW方向に伝播する。素子670は、CW(CCW)方向に共振器を伝播する光のわずかな量をそれぞれ検出器56、55に結合する。すべての光波が、共振器の外の検出器55、56へ結合される前に、モードフィルタ640、650の少なくとも一方を少なくとも1回通らなければならないように、モードフィルタ640は、入力結合素子620と出力結合素子670との間に配置され、モードフィルタ650は、入力結合素子630と出力結合素子670との間に配置される。この場合も、この実施形態は、CW波及びCCW波に関して対称である。
【0028】
図10は、光源の位置と検出器の位置とが入れ替わっていることを除いて、図8に示す実施形態と同様のRFOG710の一実施形態である。この実施形態は、光伝播シーケンスにおいて、図9に示す構成と同様であるが、出力素子670は、モードフィルタリング能力を有する単一モードファイバ結合器と取り替えられている。CW(CCW)光波は、それぞれ素子720、730によって共振器内へ結合される。それらの光波は、ファイバ結合器770によってそれぞれ外の検出器56、55へ結合される。すべての光波が、共振器の外の検出器へ結合される前に、少なくとも1つのモードフィルタを少なくとも1回通らなければならないように、モードフィルタ740、750の位置は、図8と同一である。
【0029】
図11は、入力結合素子720及び730がそれぞれファイバ結合器820及び830に取り替えられていることを除いて、図10と同様のRFOG800の一実施形態を示す。結合器820及び830は、結合器770と同様であり、好ましくは、フィルタリング能力を有する単一モードファイバ結合器である。CW光源及びCCW光源からの光は、それぞれ結合器リード823及び833を介して共振器内に結合され、共振器内をそれぞれCW方向及びCCW方向で進む。第2の結合器リード840及び850は、それぞれコネクタ122及び132によってループファイバ90に接続される。コネクタ122及び132は、図2〜図4に示すコネクタと同様である。モードフィルタ740及び750は、図8及び図10に示す機能と同じ機能を有し、回転検知に使用される基本モード以外のモードの大幅な抑制を行う。
【0030】
図12は、対称RFOG612のさらに別の実施形態を示す。光源51及び52からの入力光波は、それぞれ素子620及び630によって、それぞれCW方向及びCCW方向で共振器内へ結合される。CW光及びCCW光は、素子670によって共振器の外のそれぞれ検出器55、56内へ結合される。この構成では、モードフィルタ640は、入力結合素子620とループファイバ端部との間に配置され、モードフィルタ650は、入力結合素子630とループファイバ端部との間に配置される。共振器を出るすべての光波は、共振器の外の検出器へ向けて結合される前に、双方のモードフィルタを少なくとも1回強制的に伝播させられる。
【0031】
図13は、図11に示す実施形態と同様であるが、光波が結合器リード921及び931から共振器内へ結合される、RFOG900の一実施形態である。モードフィルタ940は、結合器920とループファイバ90の端部との間に配置され、モードフィルタ950は、結合器930とループファイバ90の端部との間に配置され、これらの配置は、同様に機能する素子を通る光伝播のシーケンスにおいて、図12に示す構成と同様である。フィルタ940及び950内にあるファイバ並びにリード922及び932を形成するファイバは、ファイバコネクタ(スプライス)及び光モード場の不一致からの光損失を回避できるように、単一の1本の単一モードファイバを形成することが好ましい。
【0032】
図14及び図15は、それぞれ図12及び図13に示す実施形態と同様であるが、光源の位置と検出器の位置とが入れ替わっている、実施形態(RFOG614、910)である。同一の素子は、同じラベリング番号によって示され、それらの機能は明らかである。
【0033】
図面及び実施形態の多くにおいて、CW(CCW)光波の一部がCCW(CW)光源に向けて伝播し得ることに留意しなければならない。光波がレーザ動作と干渉して、レーザ動作を不安定にすることを防止するために、方向性光アイソレータがすべての実施形態に含まれて、光波が反対方向のレーザ内に結合されないようにすることが重要である。これらのアイソレータは、レーザの出力近くの光路に組み込むこともできるし、方向性素子53及び54に含めることもできる。加えて、信号光波との寄生干渉が回避されるように、すべての光学素子は、好ましくは、後方反射を実質的に有しないように選択又は設計される。
【0034】
上で述べたように、本発明の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく多くの変更を行うことができる。したがって、本発明の範囲は、好ましい実施形態の開示によって限定されるものではない。それどころか、本発明は、続く特許請求の範囲を参照することによって専ら判断されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング共振器を有する共振器光ファイバジャイロスコープであって、
前記リング共振器の時計回り(CW)方向及び反時計回り(CCW)方向に伝播する光を別々に生成するように構成された2つの光源と、
前記リング共振器の内部を循環する前記CW光及び前記CCW光に関連した光を別々に受信するための第1の検出器及び第2の検出器とを備え、
前記リング共振器は、
ループファイバと、
前記光源からの光を前記ループファイバ内へ方向付け、前記ループファイバの内部を循環する光を前記第1の検出器及び前記第2の検出器へ方向付ける少なくとも2つの光結合素子と、
前記リング共振器の前記CW方向及び前記CCW方向の光の高次空間モードを抑制するように構成された少なくとも1つの単一モードフィルタであって、前記第1の検出器及び前記第2の検出器によって受信された前記光は、該少なくとも1つの単一モードフィルタを少なくとも1回通過する、少なくとも1つの単一モードフィルタと
を備える、ジャイロスコープ。
【請求項2】
前記少なくとも2つの光結合素子は、2つの光結合素子を備え、該2つの結合素子の第1のものは、光を前記共振器の前記CW方向に結合し且つ前記共振器の前記CCW方向に循環する光を前記第1の検出器へ結合するように構成され、該2つの結合素子の第2のものは、光を前記共振器の前記CCW方向に結合し且つ前記共振器の前記CW方向に循環する光を前記第2の検出器へ結合するように構成され、該2つの光学素子のそれぞれは、方向性光学素子、及び光ファイバ結合器又はミラーの一方を含む、請求項1に記載のジャイロスコープ。
【請求項3】
前記少なくとも2つの光結合素子は、3つの光結合素子を備え、前記第2の光結合素子及び前記第3の光結合素子は、光を前記共振器の前記CW方向及び前記CCW方向へ別々に結合するように構成され、
前記第1の結合素子は、前記共振器の前記CW方向及び前記CCW方向で伝播する光の一部をそれぞれ前記第1の検出器及び前記第2の検出器へ結合するように構成される、請求項1に記載のジャイロスコープ。
【請求項1】
リング共振器を有する共振器光ファイバジャイロスコープであって、
前記リング共振器の時計回り(CW)方向及び反時計回り(CCW)方向に伝播する光を別々に生成するように構成された2つの光源と、
前記リング共振器の内部を循環する前記CW光及び前記CCW光に関連した光を別々に受信するための第1の検出器及び第2の検出器とを備え、
前記リング共振器は、
ループファイバと、
前記光源からの光を前記ループファイバ内へ方向付け、前記ループファイバの内部を循環する光を前記第1の検出器及び前記第2の検出器へ方向付ける少なくとも2つの光結合素子と、
前記リング共振器の前記CW方向及び前記CCW方向の光の高次空間モードを抑制するように構成された少なくとも1つの単一モードフィルタであって、前記第1の検出器及び前記第2の検出器によって受信された前記光は、該少なくとも1つの単一モードフィルタを少なくとも1回通過する、少なくとも1つの単一モードフィルタと
を備える、ジャイロスコープ。
【請求項2】
前記少なくとも2つの光結合素子は、2つの光結合素子を備え、該2つの結合素子の第1のものは、光を前記共振器の前記CW方向に結合し且つ前記共振器の前記CCW方向に循環する光を前記第1の検出器へ結合するように構成され、該2つの結合素子の第2のものは、光を前記共振器の前記CCW方向に結合し且つ前記共振器の前記CW方向に循環する光を前記第2の検出器へ結合するように構成され、該2つの光学素子のそれぞれは、方向性光学素子、及び光ファイバ結合器又はミラーの一方を含む、請求項1に記載のジャイロスコープ。
【請求項3】
前記少なくとも2つの光結合素子は、3つの光結合素子を備え、前記第2の光結合素子及び前記第3の光結合素子は、光を前記共振器の前記CW方向及び前記CCW方向へ別々に結合するように構成され、
前記第1の結合素子は、前記共振器の前記CW方向及び前記CCW方向で伝播する光の一部をそれぞれ前記第1の検出器及び前記第2の検出器へ結合するように構成される、請求項1に記載のジャイロスコープ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−27739(P2011−27739A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−162943(P2010−162943)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162943(P2010−162943)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】
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