説明

高温で使用するための電気化学素子

陰極、陽極を有し、及び陰極と陽極との間に配置した電解質を有する電気化学素子であって、陰極は、活性材料として、Li/Liに対し、可逆的電位上限が4V以下のインターカレーション材料を含有し、電解質は、アニオンと、4個の炭素原子及び1個の窒素原子を持ったピロリジニウム環構造を有するカチオンとを含むイオン性液体を含有する該電気化学素子。実験では、このようなインターカレーション材料及びN−R−N−R−ピロリジニウム(R、Rはアルキル基であり、Rはメチルであってよく、Rはブチル又はヘキシルであってよい)を有する再充電可能な電池が約150℃の温度以下で使用するのに特に好適であり、石油及び/又はガスの生産井戸で使用できることを明らかにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温で使用するための電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学素子は、陰極、陽極、及び陰極と陽極との間に配置した電解質を有する。陰極及び陽極は、一般に金属の電流コレクター及びそれ自体で電流コレクター材料となり得る活性材料を含有する。自発的な化学反応の結果として電気を起こす電気化学電池は、化学電池と呼ばれている。外部電流源により非自発的化学反応を駆動する電気化学素子又は電池は、電解槽と呼ばれている。
【0003】
電解質は、移動可能なイオンによりイオン電流の形態で電気を伝導、運搬できる化合物又は化合物の組合わせである。電解質の例は、固体又は溶融状態の塩又は塩の混合物、或いは解離していないか、僅かしか解離していない溶剤中で塩のイオンに解離した塩又は塩の組合わせである。
【0004】
電気化学素子は、一次電池又は再充電可能な電池又は電気化学コンデンサーとして構成してよい。再充電可能な電池は、多くの場合、二次電池と呼ばれ、また再充電不可能な電池は、多くの場合、一次電池と呼ばれている。
【0005】
電池は、1個以上の電気化学電池を用いて電気を蓄える装置である。これらの電池は直列又は並列に接続できる。電池の物理的構造は、両電極を電解質で物理的に分離し、これにより両電極に貯蔵された化学薬品の直接反応が起こらないような構造である。両電極を外部回路で接続すると、化学電池は電流を生じる。電子は、外部回路を介して流れ、イオンは電解質を介して流れる。
【0006】
電極での反応は、一方の物質から他方の物質への電子の移動を含み、したがって、これら物質の還元、酸化を含むので、酸化還元反応と呼ばれる。酸化が起こる電極は陽極と呼ばれ、還元が起こる電極は陰極と呼ばれる。
【0007】
再充電可能な電池は、放電時に電流を生じる化学反応が化学的に容易に可逆できる電池又は電気化学電池である。再充電可能な電池は、その電極又は端子に電流を適用すると、再充電できる。再充電可能な電池は、蓄電容量を著しく低下させることなく、数百回再充電できることが好ましい。一次電池は、一回しか放電できず、その後、処分しなければならない。
【0008】
一次電池における正電極の活性材料は、放電プロセスで還元され、したがって、陰極材料としても知られている。逆に、負電極の材料は、陽極材料としても知られている。同じ名付けの変換は、充電状態の再充電可能な電池(化学電池)の活性材料に使用される。
【0009】
電池は、種々の用途で電気エネルギー源として広く使用されている。再充電可能な電池は、一次電池の交換や処分を避けるため、多くの用途に使用されている。更に、これらを使用することにより、一次電池の交換は事実上できないが、電池の再充電は実施できる所に到達するには困難でも装置の遠隔操作は可能である。このような場所の一例は、石油及びガス生産用の井戸掘削孔内である。下降孔(downhole)の場所は、到着困難であるばかりでなく、環境条件も60〜200℃の範囲の温度と厳しく、このような高温に適した電気化学素子を必要とする。
【0010】
殆どの電池は、特定の温度で使用するために構成され、特定温度を超えると電池中の化学化合物が不安定化、破解、溶融及び/又は蒸発するため、通常、蓋締めされている。電池の通常の操作温度は、−40〜+60℃である。
【0011】
再充電可能な電池化学が多数、開発されている。例えば鉛−酸、ニッケル−カドミウム、ニッケル−金属水素化物、及びリチウム(リチウム−金属及びリチウム−イオン)電池である。これらの電池のうち、リチウムは既知の低還元電位を有すること(基準水素電極に対し(versus)−3.045V)、3828mAh/g(リチウム7同位元素=Liに対し)という高い相対蓄電容量を有するため、最高のエネルギー密度が得られるので、リチウム化学による電池は最も関心がある。しかし、有機溶剤ベースの電解質を有する再充電可能電池のリチウム陽極上にリチウムの樹状突起を形成することは、安全性の懸念があった。これにより、リチウム陽極をインターカレーション材料で置換したリチウムイオン電池(Li−イオン)の開発が始まった。
【0012】
インターカレーション又は挿入化合物は、ゲスト(guest)種を貯蔵又は抽出できるホスト(host)化合物である。三次元インターカレーション材料の例は、LiMn及びLiTi12があり、これらの立方晶格子構造から/中に、ゲスト種としてリチウムイオンを可逆的に抽出及び/又は挿入できる。
【0013】
インターカレーション反応又は挿入反応は、ホストの大きな構造的変形なく、ゲスト種のホスト構造への導入又は除去を含む一般に可逆的な反応として定義される。最も厳密な意味では、インターカレーションとは、ゲストの二次元ホストへの挿入のことを言うが、この用語は、現在は普通、一次元及び三次元ホスト構造とも言う。一例は、TiS層へのリチウムの挿入:Li+TiS LiTiS(0≦x≦1)(本例は、IUPAC Compendium of Chmical Terminorogy,第2版,1997に記載されている)である。ここでxは、TiSにインターカレーションされるリチウムの可変量である。所定の限界(0≦x≦1)は、xが可逆的な方法で変化できる組成範囲を示す。これらの限界間では、LiTiSは、適当な対照電極(リチウムインターカレーションの場合は、リチウム金属)に対して測定すると、xの関数として特定の電位曲線を示す。各々、特定の可逆的組成範囲(x最小≦x≦x最大)と関連する特定の電位曲線を示す。これらの電位曲線は、可逆的インターカレーションの下限及び上限(それぞれRPL及びRPL及び平均電位V平均を特徴とする。幾つかの例を第1表に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
Mg/Mg2+に対して測定した電位は、基準水素電極(SHE)に対する既知の還元電位を用いて、Li/Liに対する電位に容易に変換できる。即ち、Li+e=Li−3.045V及びMg/Mg2++2e=Mg−2.375V。これはMg/Mg2+に対するMgMoの上方カットオフ電位2.0Vが、Li/Liに対して2.67Vになることを意味する。
【0016】
電池の分野では、いわゆる下方及び上方カットオフ電位を用いるのが普通である。これらの電位は、使用される活性材料のRPL電位とは必ずしも一致しない。カットオフ電位は、電池内のインターカレーション材料の組成を制御する手段で、蓄電容量の利用率を決定する。カットオフ電位をRPL値で規定される窓よりも広い窓に設定すると、活性材料及び/又は電解質の非可逆的酸化又は還元を生じ、最終的には、電池を破損する。カットオフ電位をRPL窓よりも小さい窓に設定すると、活性材料の蓄電容量の利用率は低くなるが、一般に電池の寿命は長くなる。現在のリチウム及びLiイオン電池は、MnO、LiCoO、LiNi0.8Co0.2及びLiMnのような正電極(陰極)材料を有する。グラファイト、MCMB及び石油コークスのような炭素質材料は、Li−イオン電池では、負電極(陽極)材料として使用される。このような陰極及び陽極材料の組合わせで作製した電池は、3〜4Vの魅力的な高電圧を示す。
【0017】
これらの電池で使用される電解質は、例えばエチレン−カーボネート(EC)、ジメチル−カーボネート(DMC)、プロピレン−カーボネート(PC)、エチル−メチル−カーボネート(EMC)のような有機溶剤(の混合物)に溶解した、例えばLiPF、LiBF、LiClO及びLiAsFのようなリチウム塩をベースとするものである。これらの溶剤は可燃性で、60℃より高い温度ではかなりの蒸気圧を示す。更にこれらの電解質は、例えば過充電又は内部ショートした場合、電池の温度が60℃よりも高くなると、他の電池成分と強く反応して、潜在的な危険を与える可能性がある。したがって、操作温度範囲は、約−40℃〜+80℃に限定される。この温度範囲は、水性電解質の場合と同様である。
【0018】
高温で操作できる再充電可能な電池化学は、溶融塩システム、例えば電解質の組成に従って350〜550℃で操作するLi//FeSシステム、又は220〜350℃で操作するNa//Sシステムで見られる。したがって、現在の再充電可能な電池技術の操作温度範囲は、約80〜220℃の間に隙間がある。この隙間の理由は、利用可能な電解質の熱特性が不十分である点にある。
【0019】
しかし、現在の一次電池技術は、このような温度の隙間を示さない。Li//SOClシステムは、−40℃〜+150℃で操作するか、或いはリチウムとマグネシウムとの合金により70〜200℃で操作している。この電池化学では電解質は、リチウム金属がSOClと接触する際の現場反応生成物である。
国際特許出願WO 01/15258(D.R.MacFarlene等)は、ピロリジニウム又は他のカチオンを含む固体状態導電材料を開示している。更に、リチウム電池の陽極は、リチウムインターカレーション材料を含有してよいと開示している。
【0020】
いわゆるイオン性液体の研究についての最近の進歩は、これらの材料が新世代の電池の電解質、特に高温電池に使用するのに、非常に有望な特性を有することを示している。イオン性液体は公知で、未熟成化学への適性について多くの配慮を得た。イオン性液体は、有機溶剤とは対照的に、不燃性、不揮発性で、しかも400℃までの広範な温度範囲に亘って化学的に安定である。更に、イオン性液体は、広範な電解質塩と混合でき、非常に高い電解質濃度が得られる。これら電解質の導電率は、同等の有機溶剤ベースのシステムに匹敵するか、時には更に高いこともある。イオン性液体の多くは、室温未満から始まって約400℃までの温度範囲に亘って液状である。
【0021】
D.R.MacFarlene等(Journal of Phys.Chem.B,103(20)1999,4164)の論文は、既知のイオン性液体のうち、ピロリジニウム族の幾つかの部材は、25℃においてガラス質−炭素電極間で測定して、5.5V以下の最も広い電気化学安定性窓を示すと開示している。この電解質安定性窓は、電解質が酸化も還元も受けない酸化−及び還元−電位により限定された電位範囲である。
【0022】
有機溶剤ベースの電解質では、インターカレーション化合物のような活性材料を含有する電解質を用いた場合よりもガラス質−炭素又は白金のような不活性電極を用いた場合の方が広い安定性窓が見られることが知られている。この場合、小さい方の電解質安定性窓は、電解質と活性材料との相互作用により見られる。更に、温度を上げると、この相互作用は増進し、一層小さい安定性窓となる。ピロリジニウムベースのイオン性液体の大きな安定性窓は、これらのイオン性液体を、高温での電解質の利用において特に関心を起こさせる。
【0023】
所要イオンのイオン導電率を得るため、イオン性液体に電解質塩(例えばリチウム塩)を添加すれば、電気化学素子での電解質として使用できることが知られている。イオン性液体という用語は、文献に十分には定義されていないが、一般には溶融塩、又は十分に又はほぼ十分に解離したイオンからなる液体を言う。したがって、室温のイオン性液体は、室温で液体状態のイオン性液体である。“室温”は、25℃に近いが、80℃のように高くてよい温度と定義することが多い。したがって、この公開文献で“イオン性液体”として分類する化合物の全てが80℃未満の融点を持つわけではない。
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲で、イオン性液体は、操作温度範囲において液体である“イオン性化合物”として定義する。イオン性液体は、イオン性化合物の液体混合物を含有してよい。
60℃未満の温度で使用するために構成した電気化学素子では、電解質層は、溶剤に溶解すると、イオンに解離する塩を含む電解質溶液のように、イオン導電率を有する広範な材料を含有してよいことが知られている。
【0025】
USP 5,827,602(Covalent Associates,Inc.)は、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、及びトリアゾリウムを含むカチオンをベースとする疎水性イオン性液体を開示している。これらイオン性液体を電気化学電池又はコンデンサーに使用することも開示している。これらイオン性液体を取込んだ安定な機能性再充電可能電池を示すと共に、操作温度範囲を請求した証拠はない。
【0026】
USP 5,965,054(Covalent Associates,Inc.)は、極性有機液体又は液体二酸化硫黄に溶解した塩を含む電解質に、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、及びトリアゾリウムを含むカチオンをベースとする疎水性イオン性液体を使用することを開示している。極性溶剤を使用すると、既知の電解質を高温で利用するには、蒸気の生成により、不適当になることが知られている。これらイオン性液体を取込んだ安定な機能性再充電可能電池を示すと共に、操作温度範囲を請求した証拠はない。
【0027】
USP 6,326,104(Electrochemical Systems,Inc.)は、ピラソリウムカチオンを含むイオン性液体をベースとする電解質を使用することを開示している。この従来技術文献は、リチウム再充電可能電池(LiMn陰極及びリチウム金属陽極)に関連する4つの例において、1つの電池は50℃で試験し、3つの電池は室温で試験した例を挙げている。全ての電池は、予想容量及び/又はフェーディングよりも低いことを示した。即ち、潜在的な使用可能性を指示するだけである。またイオン性液体:1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム−テトラフルオロボレート及び1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム−テトラフルオロボレートが金属リチウムに対し不安定であるとの記載されている。
【0028】
USP 5,855,809(Arizona Board of Reagents)は、イオン性液体:XPNPOX,XPNCH,XPNSOX,XSOCH,CHCOX、及びCHCHNPX(但し、Xはハロゲン原子)をベースとする電解質を使用することを開示している。1つの電池試験の結果が、電解質として0.7(AlCl/SONPCl)中の0.3LiAlClを有する、LiMn陰極及びリチウム金属陽極について示されている。しかし、この特許の図16は、LiMn(0≦x≦1)陰極及びリチウム金属陽極を有する電池について、xの関数としての既知の電圧勾配を示していない。しかも、充電容量は、放電容量の2倍であり、これは効率が悪いことを意味している。更に、この電池の作動は50サイクルを超えて可逆的であったと述べている。
【0029】
USP 6,552,843(Innovative Technology Licensing LLC)は、N−メチル−ピロリジニウム、ピロリジニウム、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム、1−N−ブチル−ピリジニウム、2−メチル−1−メチル−ピロリニウム又は1−エチル−イミダソリウムをベースとするカチオンを含むイオン性液体ベースの電解質を有する、電磁放射線の伝播制御用可逆的電着装置を開示している。可逆的電着装置は、電解槽としてしか操作できない電気化学装置である。更に、電極はインターカレーション材料を含有しない。
【0030】
国際特許出願WO 02/063073(M.R.Mattes,W.Lu)は、電極の活性材料として共役重合体を含むイオン性液体を電気化学装置に使用することを開示している。イオン性液体の作用は、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、トリアゾリウム、アンモニウム、ピロリジニウム、ピロリニウム、ピロリウム、及びピペリジニウムによるものである。共役重合体は、重合体鎖に平行して単結合及び二重結合を交互に並べた重合体材料である。この従来技術文献には、電池に関連したデータは開示されていない。
【0031】
+60℃より高温で使用する電気化学素子が、国際特許出願WO 0180344及びWO 0209215で知られている。これら公知の電気化学素子は、高温で蒸発する重合体バインダーを実質的に含まない粒状電解質層を有する。粒状電解質層を使用する利点は、粒子間の物理的接触面積が比較的小さく、その結果、陰極と陽極間の粒子を経由するイオンの移動が限定されると共に、素子の電気出力は中庸となる。これらの従来技術文献から知られる電池は、約100℃以下の温度で使用するのに適当で、また電気出力は限定される。このような出力は、電解質中の固体状態の粒子間の限定された接触面積の結果であると予想される。
【0032】
国際特許出願WO2004/082059は、二次リチウム電池のようなエネルギー貯蔵装置に使用される各種ピロリジニウムをベースとする室温イオン性液体を開示している。
この従来技術文献は、イオン性液体が電解質を作るのに使用できることを示している。
【特許文献1】国際特許出願WO 01/15258
【特許文献2】USP 5,827,602
【特許文献3】USP 5,965,054
【特許文献4】USP 6,326,104
【特許文献5】USP 5,855,809
【特許文献6】USP 6,552,843
【特許文献7】国際特許出願WO 02/063073
【特許文献8】国際特許出願WO 0180344
【特許文献9】国際特許出願WO 0209215
【特許文献10】国際特許出願WO2004/082059
【特許文献11】国際特許出願WO/02/063073
【非特許文献1】Journal of Phys.Chem.B,103(20)1999,4164
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
出願人は、ピロリジニウムをベースとするイオン性液体を含む特定の活性材料と電解質との組合わせだけが、特に60〜150℃の温度で可逆的操作性の再充電可能な電池となり得ることを今回、見い出した。
本発明の目的は、高温で使用するのに好適な電気化学素子を提供することである。
本発明の更なる目的は、再充電可能な電池として使用するのに好適で、50℃を超える温度、特に60〜150℃の範囲の温度で効率的なエネルギー供給源として使用できる電気化学素子を提供することである。
【0034】
更に本発明の目的は、内部の温度が60〜200℃である可能性があるか、摂氏数百℃である可能性がある、石油又はガスの生産井戸のような地下の井戸掘削孔に、再充電可能な電池により電気エネルギーを発生する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明の電気化学素子は、陰極、陽極、及び陰極と陽極との間に配置した電解質を有し、電解質は、アニオンと、ピロリジニウム環構造を有するカチオンとを含むイオン性液体を含有し、陽極の活性材料は、Li/Liに対し、可逆的電位上限が4V以下のインターカレーション材料を含有するものである。
【0036】
出願人は、Li/Liに対し、4Vを超える可逆的電位上限を有するインターカレーション材料は、可逆的に使用するには不適当であることを発見した。特に70℃より高温で使用した場合、電解質とインターカレーション材料との相互作用により、これら材料及び/又は電解質の崩壊が起きて、容量が低下すると考えられる。
【0037】
Li/Liに対し、4V以下の可逆的電位上限を有する好適なインターカレーション材料は、LiFePO、LiFe(PO、LiMn12、LiMn、MnO、FeS、LiV、V、TiS、TiO、LiTi、LiTi(PO、NaTi(PO、TiP、LiV、LiTi12、LiCrTiO、LiTi、CuO、MgMo、LiFeN、LiMnNである。特に好適なインターカレーション材料は、LiFePO、LiMn12、TiS、LiTi12及びLiCrTiOである。
【0038】
WO 01/15258は、ピロリジニウム又は他のカチオンを含む固体状態導電材料を開示している。更に、リチウム電池の陽極は、リチウムインターカレーション材料を含有してよいと開示している。
【0039】
固体状態導電材料は、イオン性液体よりもイオン導電率が低いと考えられる。本発明に従って、電気化学素子に、固体状態導電材料の代りにイオン性液体を使用すると、高い動力密度が得られ、したがって、電気化学素子の性能が一層良くなる。
【0040】
本明細書及び特許請求の範囲で使用した活性インターカレーション材料は、電極において酸化還元反応に参加するインターカレーション材料として定義する。
【0041】
活性インターカレーション材料を使用する代りに、電気化学素子の陽極は、共役重合体を含有してよい。国際特許出願WO/02/063073は、陽極又は陰極に活性材料の主成分として共役重合体を含有する電気化学素子を開示している。
【0042】
本発明の電気化学素子は、高温、例えば50℃より高温、特に60〜150℃の温度で、一次電池又は再充電可能な電池又は電気化学コンデンサーとして使用するために構成してよい。更に、ピロリジニウム環構造は、式N−R−N−R−ピロリジニウム(但し、R及びRはアルキル基であり、またRはメチル、 Rはブチル又はヘキシルである)を有することが好ましい。
【0043】
イオン性液体のアニオンは、好ましくは以下の化合物のいずれかを含有する。
・ClO、AsF、PF、BF、ハロゲンイオン、N(CF、N(CFSO(“TFSI”)、CFSO、N(CHSO、N(CSO、B(C、C(CFSO
【0044】
アルカリ塩は、以下の化合物のいずれかを含有してよいリチウム塩を含むことも好ましい。
・LiN(CFSO(“LiTFSI”)、LiCFSO、LiClO、LiBF、LiPF、LiAsF、LiB(C、LiC(CFSO
或いは、この塩はMgCFSO又はMg(ClOを含有してよい。
【0045】
陰極は、活性材料として、また質量での(by mass)主成分として、好適にはLiTi12、Li4−yMgTi12(0≦y≦1)、LiCrTiO、VO、TiS、LiMn12、Li4−yMgMn12(0≦y≦1)、又はLi1−yFePO(但し、M=Mg、Nb、Zr、Ti又はAl;0≦y≦0.02)を含有する。
【0046】
陽極は、活性材料として、好適にはリチウム、LiTi12、Li4−yMgTi12(0≦y≦1)、LiCrTiOを含有する。
また本発明は、地下の井戸掘削孔に、本発明の電気化学素子により得られる電気エネルギーを供給する方法も提供する。井戸掘削孔は、石油及び/又はガス生産井戸又は地熱井戸の一部を形成してよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
図面の簡単な説明
本発明を添付図面により更に詳細に説明する。
図1A、1B、1Cは、4個の炭素原子及び1個の窒素原子の環構造を有する3種のピロリジニウムカチオンを示す。
【0048】
図2は、モル比0.38:0.62でP14TFSI中にLiTFSIを含有すると共に、LiTi12陰極及びリチウム金属陽極を有する電池の110℃における充電、放電容量を示すグラフである。容量は、活性質量及び理論容量に対するサンプルの予想容量の百分率として示す。
【0049】
図3は、モル比0.38:0.62でP14TFSI中にLiTFSIを含有すると共に、LiTi12陰極及びリチウム金属陽極を有する電池の110℃におけるサイクル数7、107、207についての電圧曲線を示すグラフである。
【0050】
図4は、P16TFSI中に2.0モル/kgLiTFSIを含有すると共に、LiTi12陰極及びリチウム金属陽極を有する電池の110℃における充電、放電容量を示すグラフである。容量は、活性質量及び理論容量に対するサンプルの予想容量の百分率として示す。
【0051】
図5は、モル比0.40:0.60でP14TFSI中にLiTFSIを含有すると共に、TiS陰極及びリチウム金属陽極を有する電池の110℃における充電、放電容量を示すグラフである。
【0052】
図6は、モル比0.40:0.60でP14TFSI中にLiTFSIを含有すると共に、TiS陰極及びリチウム金属陽極を有する電池の110℃におけるサイクル数50についての電圧曲線を示すグラフである。
【0053】
図7は、モル比0.30:0.70でP44TFSI中にLiTFSIを含有すると共に、LiTi12陰極及びリチウム金属陽極を有する電池の150℃における充電、放電容量を示すグラフである。容量は、活性質量及び理論容量に対するサンプルの予想容量の百分率として示す。
【0054】
図8は、LiMn陰極及びリチウム金属陽極を有する3個の電池の電位曲線を示すグラフである。電池Aは、25℃において、有機溶剤をベースとする基準電解質を含有し、予想される特定の電位曲線を示す。電池B、Cは、110℃において、ピロリジニウムをベースとする電解質を含有し、始動時の電池の故障を示す。
【0055】
図9は、モル比0.40:0.60でP14TFSI中にLiTFSIを含有する、LiFePO陰極及びリチウム金属陽極についての110℃における特定の平坦な電位曲線を示す。
【0056】
発明の詳細な説明
図1Aは、ピロリジニウム化合物が正帯電した4個の炭素原子及び1個の窒素原子の環構造を有することを示す。ここに示した化合物は、式N−R−N−R−ピロリジニウム(但し、R及びRはアルキル基であり、またR〜R10は、H;F;分岐しても、置換してもよく、また複素原子を含有してもよい別個のアルキル基;置換してもよく、また複素原子を含有してもよい別個のフェニル基;のいずれかである)を有する。本発明の電気化学素子において、Rはメチル、Rはブチル又はヘキシルであるか、或いはR=Rはブチルであることが好ましい。
【0057】
図1Bは、1−ブチル−1−メチル−ピロリジニウムの化学構造を示し、図1Cは、1−ブチル−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−メチル−ピロリジニウムの化学構造を示す。
【0058】
以下に説明する製造法及び試験法を用いてピロリジニウムをベースとするイオン性液体を含有する電解質を作り、試験した。電解質は、ピロリジニウムをベースとするイオン性液体とリチウム塩とを混合して、合成した。以下の頭字語を用いた。
14=1−メチル−1−ブチル−ピロリジニウム
16=1−メチル−1−ヘキシル−ピロリジニウム
44=ジブチル−ピロリジニウム
TFSI=ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
=N(CFSO
【0059】
14TFSI及びP16TFSI(Merck KGaAから入手)を動的減圧下、90℃で48時間乾燥した。塩LiTFSI(LiN(CFSO、3M)及び過塩素酸リチウム(LiClO、Alfa Aesarから入手)を動的減圧下、130℃で48時間乾燥した。乾燥後、これらの材料をヘリウム充填グローブボックス(水分 <5ppm)に入れた。イオン性液体及び塩の適量を混合して、透明で安定な以下のイオン性液体を作製した。
14TFSI中に5モル%LiTFSI含有
0.62モルP14TFSI中に0.38モルLiTFSI含有
0.60モルP14TFSI中に0.40モルLiTFSI含有
16TFSI中に2.0モル/kg LiTFSI含有
14TFSI中に1.0モル/kg LiClO含有
0.70モルP44TFSI中に0.30モルLiTFSI含有
【0060】
電極は、LiCrTiO、LiTi12、LiTi、LiFePO及びTiSで作り、次のように塗布した。
電極は、活性材料のペーストを用いて、ドクターブレード法によりアルミニウム又は銅箔電流コレクター上に作製した。ペーストは、通常、活性材料を80重量%、導電剤を10〜13重量%、1−メチル−ピロリドン(Merck KGaA)に溶解したバインダーを7〜10重量%を含有する。導電剤は、カーボンブラック(2〜10%、MMMのSuperP)とグラファイト(0〜10重量%、TimcalのKS4)との混合物である。バインダーは、ポリビニリデンフルオリド(PVDF、Solvayから入手)又はポリメチルメタクリレート(PMMA)のいずれかである。LiCrTiO及びLiFePOは建物内で合成し、LiTi12はHohsen Corporation Japanから入手し、TiはAlfa Aesarから入手し、LiMnはSedemaから入手した。塗膜は、140℃で約15分間乾燥し、Durstonロールミルを用いて高密度化し、更に動的減圧下、80℃で一晩乾燥した。最後に、1〜2mAhの通常容量を有する直径15mmのサンプルを打抜きし、試験に用いた。
【0061】
測定はいずれも、ポリプロピレン(PP)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ガスケット付きか又は304鋼電池中に高温バイトン(viton)Oリングを付けたCR2320型コイン電池(coincell)(直径23mm、高さ2mm、304鋼;Hohsen Corporation Japanから入手)を用いて行った。電池はいずれも、グローブボックス中で組立てた。通常、電池は、缶内に:電極、直径21mmのガラス繊維マット(GF/C型、Whatman)、ガスケット、1mlポリエチレン製ピペットによる電解質4〜5滴、直径17mm、厚さ0.38mmのリチウム円盤(Chemetall)、直径17mm、厚さ0.2mmのプレス用板(pressing plate)、直径15mmの波形スプリング、及びテープで絶縁したキャップを積重ねて作製した。必要に応じて、電解質は、粘度を低下させるため、約100℃に暖めた。これらの電池は、手動のCR2320クリンプ加工具(Hohsen Corporation Japan)中で閉じた。
【0062】
電池の試験
Maccor S4000電池テスターを用いて、電池を気候室(精度:±0.1℃)内の空気中で循環した(引続き、充電、放電する)。これらの電池に、0.1〜1.0C−速度の範囲に亘って種々の電流密度を与えた。1サイクル内では、放電及び充電について電流は一定で同じであった。ここで1C−速度とは、活性材料の質量及び特定の蓄電容量から計算して、1時間内で電池を完全充電するのに必要な電流として定義する。したがって、理想的には0.1C−速度の放電は、10時間続き、2.0C−速度は、0.5時間続く。
【実施例】
【0063】
例I:“LiTi12陰極、リチウム金属陽極、及びP14TFSI中にLiTFSIを含有する電解質を有する再充電可能な電池の110℃での試験”
前述の方法に従ってコイン電池を作製した。LiTi12は、アルミニウム電流コレクター上のバインダーとしてPvdF付き陰極材料として用いた。電解質は、モル比0.38:0.62でP14TFSI中に溶解したLiTFSIの混合物である。電池は、110℃、1.0〜2.0Vで242回循環させた。
【0064】
最初の29サイクルでは電流は、0.1〜1.0℃の間で変動した。図2は、放電、充電容量をサンプルの予想容量の百分率として示す。この電池には、良好な速度能力及び高い効率と共に、極めて安定な循環挙動が見られた。図3の電圧曲線は、同一電流密度について第7、107及び207回目のサイクルでのLiTi12対リチウムの通常の電圧曲線を示す。ここで同一電流密度は、活性材料が変化せず、かつその保全性(integrity)を緩めないことを示す。
【0065】
例II:“LiTi12陰極、リチウム金属陽極、及びP16TFSI中にLiTFSIを含有する電解質を有する再充電可能な電池の110℃での試験”
前述の方法に従ってコイン電池を作製した。LiTi12は、アルミニウム電流コレクター上のバインダーとしてPvdF付き陰極材料として用いた。電解質は、P16TFSI中に溶解したLiTFSIの2.0モル/kg混合物である。電池は、110℃、1.0〜2.0Vで150回循環させた。
【0066】
最初の29サイクルでは電流は、0.1〜1.0℃の間で変動した。図4は、放電、充電容量をサンプルの予想容量の百分率として示す。この電池には、良好な速度能力及び高い効率と共に、極めて安定な循環挙動が見られた。
【0067】
例III:“TiS陰極、リチウム金属陽極、及びP14TFSI中にLiTFSIを含有する電解質を有する再充電可能な電池の110℃での試験”
前述の方法に従ってコイン電池を作製した。TiSは、アルミニウム電流コレクター上のバインダーとしてPvdF付き陰極材料として用いた。電解質は、モル比0.40:0.60でP14TFSI中に溶解したLiTFSIの混合物である。電池は、110℃において、1.8〜2.5Vで13回、更に1.5〜2.5Vで87回循環させた。
【0068】
図5は、放電、充電容量をサンプルの予想容量の百分率として示す。低カットオフ電圧を低下させると、容量は実質的に増加した。初期の若干のフェーディングとは別に、循環はかなり安定で、また高効率であった。図6の電圧曲線は、第50回目のサイクルでのTiS対リチウムの通常の電圧曲線を示す。
【0069】
例IV:“LiTi12陰極、リチウム金属陽極、及びP46TFSI中にLiTFSIを含有する電解質を有する再充電可能な電池の150℃での試験”
前述の方法に従ってコイン電池を作製した。LiTi12は、アルミニウム電流コレクター上のバインダーとしてPvdF付き陰極材料として用いた。電解質は、モル比0.30:0.70でP46TFSI(ジブチル−ピロリジニウム−TFSI)中に溶解したLiTFSIの混合物である。電池は、150℃、1.0〜2.0Vで60回循環させた。電流は、0.1、0.5、及び1.0C−速度間で変化した。
【0070】
図7は、放電、充電容量をサンプルの予想容量の百分率として示す。150℃でさえ、循環安定性は非常に良好で、またこれらの電解質を高温電池に使用することを示す110℃の場合と同様であった。
【0071】
例V:“4.1VのLiMn陰極、リチウム金属陽極、及びP14TFSI又はP16TFSI中にLiTFSIを含有する電解質を有する再充電可能な電池の110℃での試験”
前述の方法に従って、3種のコイン電池を作製した。LiMnは、304鋼電流コレクター上のバインダーとしてPvdF付き陰極材料として用いた。電解質は、
A.EC/DMC 2:1w/w中の1M LiPF
B.0.95モルP14TFSIに溶解した0.05モルLiTFSI
C.P16TFSIに溶解した1モル/kg LiTFSI
である。
【0072】
これらの電池を、3.5〜4.3Vで、電解質Aについては25℃で、また電解質B、Cについては110℃で充電、放電した。電流は、0.1C−速度である。
図8は、これら3種の電池の電位曲線を示す。電解質Aを有する対照電池は、充電、放電が対称的なLiMnについての予想の特徴的電位曲線を示す。電解質Bを有する電池は、4Vよりも高い電位に達せず、失敗した。電解質Cを有する電池は、非常に少ない帯電容量及び更に少ない放電容量を示した。LiMn特有の電位曲線はなくなり、容量は急速に減退した。これらの試験から、ピロリジニウムをベースとする電解質は、Li/Liに対し4Vよりも高い可逆的電位上限を有するインターカレーション材料と併用できないことが判る。
【0073】
例VI:“3.4VのLiFePO陰極、リチウム金属陽極、及びP14TFSI又はP16TFSI中にLiTFSIを含有する電解質を有する再充電可能な電池の110℃での試験”
前述の方法に従って、3種のコイン電池を作製した。LiFePOは、アルミニウム電流コレクター上のバインダーとしてPvdF付き陰極材料として用いた。電解質は、モル比0.40:0.60でP14TFSI中に溶解したLiTFSIの混合物である。電池は、110℃において、上方カットオフ電位として3.0〜3.8Vで循環させた。電流は、0.1C−速度である。
【0074】
図9は、充電、放電に対し対称的であるLiFePOの特徴的平坦な電位曲線を示す。この試験から、ピロリジニウムをベースとする電解質は、Li/Liに対し4V以下の可逆的電位上限を有するインターカレーション材料と併用できることが判る。
【0075】
例I〜VI及び図1〜9から、ピロリジニウムをベースとするイオン性液体電解質及び可逆的電位上限(RPL)がLi/Liに対し4V以下のインターカレーション材料を有する試験電池は、少なくとも150℃以下の高温で再充電可能な電池として使用するのに好適であることが判る。
【0076】
更に、これらの例から、再充電可能電池に使用するのに好適な材料は、以下の材料であることが判る。
・活性インターカレーション材料としてLiTi12、LiMn12、LiCrTiO及びTiS
【0077】
また他の公知のインターカレーション材料、例えばLi1+yMgMn2−yO(〜2.9V挿入、0≦y≦1/3)、LiMgNi0.5−yMn1.5(〜2.9V挿入、0≦y≦0.5)、LiMn(〜2.9V挿入)、LiMnN及びLiFeNも使用できると考えられる。
・電流コレクター材料としてアルミニウム及び鋼SUS304
【0078】
他の材料、例えばニッケル、銅、金、白金、カーボン及びグラファイトも電流コレクター材料として使用できると考えられる。
・ バインダー材料としてPvdF及びPMMA
【0079】
他の公知のバインダー材料、例えばPTFE、PCTFE、ECTFE、ETFE及びFEPも好適なバインダー材料として使用できると考えられる。
【0080】
カーボンブラック及びグラファイトの代りに又は一緒に、金属発泡体又は同様に多孔質であるが電気導電性の構造体、ガラス状カーボン、又は金属粉末も、電極の導電性母材として使用できると考えられる。これは、カーボンブラック及び/又はグラファイトが電池中で他の材料と不必要な副反応を起こす場合の利点となり得る。
【0081】
・分離材料として多孔質ガラス繊維マット
例えばAl、MgO、Li−β−アルミナを含む多孔質層も分離材料として好適と考えられる。
14TFSI、P16TFSI及びP44TFSIと、LiTFSI及び/又はLiClOとの混合物。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1A、1B、1Cは、各々、4個の炭素原子及び1個の窒素原子の環構造を有するピロリジニウムカチオンを示す。
【図2】モル比0.38:0.62でP14TFSI中にLiTFSIを含有すると共に、LiTi12陰極及びリチウム金属陽極を有する電池の110℃における充電、放電容量を示すグラフである。
【図3】モル比0.38:0.62でP14TFSI中にLiTFSIを含有すると共に、LiTi12陰極及びリチウム金属陽極を有する電池の110℃におけるサイクル数7、107、207についての電圧曲線を示すグラフである。
【図4】P16TFSI中に2.0モル/kgLiTFSIを含有すると共に、LiTi12陰極及びリチウム金属陽極を有する電池の110℃における充電、放電容量を示すグラフである。
【図5】モル比0.40:0.60でP14TFSI中にLiTFSIを含有すると共に、TiS陰極及びリチウム金属陽極を有する電池の110℃における充電、放電容量を示すグラフである。
【図6】モル比0.40:0.60でP14TFSI中にLiTFSIを含有すると共に、TiS陰極及びリチウム金属陽極を有する電池の110℃におけるサイクル数50についての電圧曲線を示すグラフである。
【図7】モル比0.30:0.70でP44TFSI中にLiTFSIを含有すると共に、LiTi12陰極及びリチウム金属陽極を有する電池の150℃における充電、放電容量を示すグラフである。
【図8】LiMn陰極及びリチウム金属陽極を有する3個の電池の電位曲線を示すグラフである。
【図9】モル比0.40:0.60でP14TFSI中にLiTFSIを含有する、LiFePO陰極及びリチウム金属陽極についての110℃における特定の平坦な電位曲線を示す。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極、陽極、及び陰極と陽極との間に配置した電解質を有する電気化学素子であって、電解質は、アニオンと、ピロリジニウム環構造を有するカチオンとを含むイオン性液体を含有し、陰極の活性材料は、Li/Liに対し、可逆的電位上限が4V以下のインターカレーション材料を含有する該電気化学素子。
【請求項2】
電気化学素子が、一次電池又は再充電可能な電池又は電気化学コンデンサーである請求項1に記載の電気化学素子。
【請求項3】
電気化学素子が、50℃より高温で使用するために構成される請求項1に記載の電気化学素子。
【請求項4】
電気化学素子が、60〜200℃で使用するために構成される請求項3に記載の電気化学素子。
【請求項5】
ピロリジニウム環構造が、式N−R−N−R−ピロリジニウム(但し、R及びRはアルキル基である)を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気化学素子。
【請求項6】
ピロリジニウム環構造が、式N−メチル−N−ブチル−ピロリジニウムを有する請求項5に記載の電気化学素子。
【請求項7】
ピロリジニウム環構造が、式N−メチル−N−ヘキシル−ピロリジニウムを有する請求項5に記載の電気化学素子。
【請求項8】
ピロリジニウム環構造が、
【化1】


(但し、R〜R10は、H;F;分岐しても、置換してもよく、また複素原子を含有してもよい別個のアルキル基;置換してもよく、また複素原子を含有してもよい別個のフェニル基;のいずれかである)
である請求項1に記載の電気化学素子。
【請求項9】
イオン性液体のアニオンが以下の化合物:ClO、PF、BF、AsF、ハロゲンイオン、N(CF、N(CFSO、CFSO、N(CHSO、N(CSO、B(C、C(CFSOのいずれかを含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気化学素子。
【請求項10】
電解質が更に塩を含有する請求項1に記載の電気化学素子。
【請求項11】
塩が、アルカリ塩、特にリチウム塩、更に特に以下の化合物:LiN(CFSO、LiCFSO、LiClO、LiBF、LiPF、又はLiAsF、LiB(C、LiC(CFSOのいずれかを含むリチウム塩を含有する請求項10に記載の電気化学素子。
【請求項12】
塩がMgCFSO又はMg(ClOを含有する請求項10に記載の電気化学素子。
【請求項13】
陰極の活性材料が、質量での主成分としてインターカレーション材料を含有する請求項1〜12のいずれか1項に記載の電気化学素子。
【請求項14】
陰極が、活性材料の質量での主成分として、以下の化合物:LiTi12、LiTi、Li4−yMgTi12(0≦y≦1)、V、LiMn12、Li4−yMgMn12(0≦y≦1)のいずれかを含有する請求項13に記載の電気化学素子。
【請求項15】
陰極が、活性材料の質量での主成分として、LiCrTiOを含有する請求項13に記載の電気化学素子。
【請求項16】
陰極が、活性材料の質量での主成分として、TiSを含有する請求項13に記載の電気化学素子。
【請求項17】
陰極が、活性材料の質量での主成分として、Li1−yFePO(但し、M=Mg、Nb、Zr、Ti、Al;0≦y≦0.02)を含有する請求項13に記載の電気化学素子。
【請求項18】
陽極が、活性材料の質量での主成分として、リチウム金属を含有する請求項1に記載の電気化学素子。
【請求項19】
陽極が、活性材料の質量での主成分として、以下の化合物:LiTi12、LiCrTiO、LiTi、Li4−yMgTi12(0≦y≦1) のいずれかを含有する請求項1に記載の電気化学素子。
【請求項20】
陰極が、活性材料の質量での主成分として、Li1−aFePO(0≦a≦1)を含有し、陽極が、活性材料の質量での主成分として、Li(4−y)+bMgTi12(0≦b≦3、0≦y≦1)を含有する請求項1に記載の電気化学素子。
【請求項21】
陰極が、活性材料の質量での主成分として、Li(4−y)+aMgMn12(0≦a≦1、0≦y≦1)を含有し、陽極が、活性材料の質量での主成分として、Li(4−y)+bMgTi12(0≦b≦3、0≦y≦1)を含有する請求項1に記載の電気化学素子。
【請求項22】
陰極及び/又は陽極が、バインダーとしてポリビニリデンフルオリド(PVDE)を含有する請求項1に記載の電気化学素子。
【請求項23】
陰極及び/又は陽極が、バインダーとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含有する請求項1に記載の電気化学素子。
【請求項24】
地下の井戸掘削孔に、請求項1〜23のいずれか1項に記載の電気化学素子により電気エネルギーを供給する方法。
【請求項25】
井戸掘削孔が石油及び/又はガス生産井戸又は地熱井戸の一部を形成する請求項24に記載の方法。
【請求項26】
井戸掘削孔が石油及び/又はガス生産井戸の一部を形成し、及び/又はこの井戸から石油及び/又はガスが生産されると共に、石油及び/又はガスの流れが、請求項1〜23のいずれか1項に記載の電気化学素子を動力とする電気的下降孔監視装置及び/又は制御装置により監視及び/又は制御される請求項24に記載の方法。


【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2007−517364(P2007−517364A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546146(P2006−546146)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053182
【国際公開番号】WO2005/064733
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】