説明

高温水にさらされる構造材料の応力腐食割れを軽減する方法

【課題】 高温水にさらされる構成要素の電気化学腐食電位を低下させる方法及びシステムを提供する。
【解決手段】 高温水系において高温水にさらされる構成要素の応力腐食割れを軽減する方法(68)は、高温水環境において、腐食電位条件を所望の低腐食電位まで低下させる工程(70)と、所望の低腐食電位により高温水環境と構造上連通する亀裂の中へ、亜鉛を含有する第1の材料が容易に搬送されるように、高温水環境の中へ第1の材料を導入する工程(72)と、から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、高温水系において高温水にさらされる構成要素の応力腐食割れを軽減することに関する。特に、本発明のいくつかの実施形態は、高温水系における応力腐食割れを軽減する際に、亜鉛及び低腐食電位の相助作用の利点を利用する。
【背景技術】
【0002】
原子炉、蒸気駆動タービン又は水脱気器などの多くの用途において、高温水は、応力腐食割れ、腐食、浸食などを引き起こすことにより、構造に悪影響を及ぼす。例えば、高温水は、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系合金、コバルト系合金及びジルコニウム系合金などの材料で、応力腐食割れ(SCC)を発生させる。応力腐食割れは、亀裂の先端部の腐食と組み合わされた状態で作用する静的引張り応力又は動的引張り応力によって広がる亀裂を含む。それらの応力は、構成要素間の熱膨張又は収縮の大きさの差、相対的に高い動作圧力又は動作圧力の変動、あるいは構成要素又はシステムの製造中又は組み立て中に実行される様々な処理の結果として起こる。例えば、溶接、冷間加工及び他の熱機械金属処理の結果、残留応力が発生することが多い。水の化学的性質、溶接、熱処理及び放射線によっても、金属又は合金の構成要素の応力腐食割れは、更に起こりやすくなる。
【0003】
酸素、高い放射線束が存在するなどの様々な条件の下で、応力腐食割れの発生速度が増加する。加圧水型軽水炉(PWR)及び沸騰水型軽水炉(BWR)などの原子炉の場合、高い放射線束は、原子炉冷却材の放射線分解を引き起こす。この分解により、酸素、過酸化水素、短寿命ラジカル及び様々な酸化種が生成される。これらの放射線分解生成物は、パイプ、ポンプ、弁、タービンなどの様々なシステム構成要素において、応力腐食割れの形成を促進する。沸騰水型軽水炉の動作温度及び動作圧力は、通常、288℃及び約7MPaであり、加圧水型軽水炉(「PWR」)の動作温度及び動作圧力は、約320℃及び約15MPaである。従って、原子炉構成要素における応力腐食割れの発生確率は高い。
【0004】
沸騰水型軽水炉において、応力腐食割れを起こしやすい材料の応力腐食割れを軽減する方法の1つは、水素水化学作用(HWC)を適用することである。これは、原子炉給水に水素ガスを添加することを含む。水素を添加すると、溶解酸素及び溶解過酸化水素などの酸化種のレベルが低下し、それにより、応力腐食割れが発生しにくくなる。残念なことに、水素水化学作用を利用する技術は、多くの場合、応力腐食割れ発生度を様々な構成要素において容認できるレベルまで効果的に低下させるために、大量の水素を必要とする。構成要素を貴金属触媒によって被覆するか又は貴金属触媒との合金を製造することにより、水素の需要を減少できる。水素の需要が減少するにもかかわらず、冷間加工材料、析出硬化材料又は照射材料などのいくつかの強度の高い材料で、応力腐食割れの発生を減少する更に効率のよい手段が存在する。
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0101953号明細書
【特許文献2】米国特許第6,714,618号公報
【特許文献3】米国特許第6,793,883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、応力腐食割れを軽減し且つ原子炉における動作線量率を減少するための新たな方式が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、高温水にさらされる構成要素の電気化学腐食電位を低下させる方法及びシステムを提供することにより、上記の要求及びその他の要求を満たす。
【0007】
1つの側面において、本発明は、高温水系において高温水にさらされる構成要素の応力腐食割れを軽減する方法を提供する。方法は、高温水環境において、電気化学腐食電位条件を所望の低電位まで低下させる工程と;所望の低腐食電位により高温水環境と構造上連通する亀裂の中へ、亜鉛を含有する第1の材料が容易に搬送されるように、高温水環境の中へ第1の材料を導入する工程とから成る。
【0008】
本発明の上記の特徴、側面及び利点、並びにその他の特徴、側面及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより、更によく理解されるであろう。図中、同一の図中符号は、一貫して同一の部分を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下の説明中、図面に示されるいくつかの図を通して、同一の図中符号は、同一の又は対応する部分を示す。また、「最上部」、「底部」、「外側」及び「内側」などの用語は、便宜上使用される言葉であり、限定する意味を持つと解釈されてはならないことも理解される。更に、本発明の1つの特定の面が1つの群に属する複数の要素及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを具備する又は少なくとも1つから構成されると述べられる場合、例外なく、その面は、群の要素のうちのいずれかを個別に具備するか又はその群のその他の要素のうちのいずれかと組み合わされた形で具備するか、あるいは群の要素のうちのいずれかから個別に構成されるか又はその群のその他の要素のうちのいずれかと組み合わされた形で構成されることが理解される。一般に図面を参照する場合、図は、本発明の好ましい一実施形態を説明する目的で示され、本発明をその実施形態に限定することは意図されないことを理解すべきである。
【0010】
種々のシステム及び装置において、腐食電位を低下し(例えば、貴金属を塗布する、水素を使用するなどの方法により)且つ亜鉛を塗布することにより、応力腐食割れは、かなり減少又は軽減される。この場合、腐食電位の低下により、亜鉛は、種々の構造(例えば、パイプ、タービン、圧力容器など)の酸化物膜の内部へ更に容易に浸透するか、又は取り込まれることが可能になる。酸化物及び亀裂の内部への亜鉛の浸透/取り込みが増加すると、腐食電位を低下させることにより得られる応力腐食割れの減少又は軽減の程度と比較して、より大きく応力腐食割れを減少又は軽減できる。その結果、低腐食電位技術と亜鉛塗布技術を組み合わせることにより、冷間加工材料、析出硬化材料又は照射材料などの強度の高い材料の応力腐食割れを適切に軽減できる。いくつかの実施形態においては、以下に更に詳細に説明されるように、高温水系は、亜鉛を含有する材料のナノ粒子、すなわち、亜鉛ナノ粒子によって処理される。更に、腐食電位を低下させるために、貴金属を含有する材料のナノ粒子などの触媒ナノ粒子が高温水系に塗布される。それらの技術については、以下に、いくつかの可能な適用用途、特に、腐食電位の低下と亜鉛塗布の組み合わせから得られる効果に関して詳細に説明する。
【0011】
例えば、図1は、腐食電位を低下し且つ原子炉内部の湿潤部分の中へ亜鉛を伝播するように処理された沸騰水型軽水炉の一実施形態を示す。この沸騰水型原子炉の動作中、給水は、給水入口12及び給水スパージャ14を経て原子炉圧力容器10の内部へ受け入れられる。給水スパージャ14は、原子炉圧力容器の内側の周囲に沿って給水を散布するための複数の適切な開口部を有するリング形パイプである。炉心スプレー入口11は、炉心スプレーライン13を経て炉心スプレースパージャ15に水を供給する。給水スパージャ14からの給水は、降水管環状間隙16を通って下方へ流れる。降水管環状間隙16は、原子炉圧力容器10と炉心シュラウド18との間の環状領域である。
【0012】
図示される炉心シュラウド18は、炉心20を取り囲むステンレス鋼の円筒である。炉心20は、多数の燃料集合体22(図1には、2つの2×2燃料集合体アレイのみが示される)を具備する。各燃料集合体22は、トップガイド19及び底部炉心プレート21により支持される。降水管環状間隙16を通って流れた水は、炉心下部プレナム24へ流れる。その後、水は、炉心20の内部に配置された燃料集合体22に侵入し、そこで、沸騰境界層(図示せず)が形成される。水と蒸気との混合物は、シュラウドヘッド28の下方の炉心上部プレナム26に入る。炉心上部プレナム26は、炉心20から出て、垂直スタンドパイプ30に入る蒸気と水との混合物の間を離間又は分離する。垂直スタンドパイプ30は、シュラウドヘッド28の上方に配置され、炉心上部プレナム26と流れ連通する。
【0013】
蒸気と水との混合物は、スタンドパイプ30を通って流れ、気水分離器32、例えば、軸流遠心型気水分離器に入る。分離された液体の水は、その後、混合プレナム33の中で給水と混合され、その混合物は、降水管環状間隙16を経て炉心20に戻る。蒸気は、蒸気乾燥器34を通過し、蒸気ドーム36に入る。蒸気は、蒸気出口38を経て原子炉圧力容器から取り出される。
【0014】
沸騰水型軽水炉は、冷却材再循環系を更に含む。冷却材再循環系は、炉心20を通して、所望の出力密度を実現するのに十分な強制対流流れを形成する。水の一部は、降水管環状間隙16の下端部から再循環水出口43を経て引き出され、遠心再循環ポンプ(図示せず)により、強制的に再循環水入口45を経てジェットポンプアセンブリ42(複数のジェットポンプアセンブリのうちの1つのみが示される)に流入される。図示される沸騰水型軽水炉は、2つの再循環ポンプを有する。各再循環ポンプは、複数のジェットポンプアセンブリに対して駆動流れを形成する。加圧された駆動水は、入口昇水管47、エルボ48及び入口ミキサ46を順次経て、各ジェットポンプノズル44に供給される。典型的な沸騰水型軽水炉は、16〜24の入口ミキサを有する。
【0015】
本発明の実施形態は、沸騰水型軽水炉に関して説明されるが、沸騰水型軽水炉の内部における使用に限定されない。本発明の実施形態は、高温水環境又は腐食しやすい環境に構造要素がさらされる他のシステムで利用されてもよい。そのような構造は、加圧水型軽水炉(PWR)、蒸気/ガス駆動タービン、水脱気器、ジェットポンプ、蒸気ボイラ、熱交換器、超臨界蒸気ボイラ、プロセス用水配管又は冷却水配管などを含む。ジェットポンプ56の概略図が図2に示される。ジェットポンプ56の構成要素、特にノズル58は、高速で流れる高温水にさらされ、応力腐食割れを生じやすい。タービン60の概略横断面図は図3に示される。タービンは、運動流体(液体又は気体)の運動エネルギーを機械エネルギーに変換する。図示されるタービンは、軸又は円板64に装着された一連のブレード62を有する。ブレードに対して蒸気が強制的に供給されることにより、発電機に結合された軸が回転する。ブレード62、ダブテール及びシュラウド66などのタービン構成要素において、特に、運動流体が高温の液体である場合、応力腐食割れは性能上の重大な問題である。特に、構成要素が、冷間加工材料、析出効果材料又は照射材料などの高い降伏強さを有する材料から製造されている場合、応力腐食割れを軽減しようとした以前の努力は、効果的であるとはいえない。冒頭で述べたように、また、以下に詳細に説明されるように、本発明の技術の実施形態は、腐食電位の低下によって亜鉛材料が隙間又は亀裂の中へより効果的に浸透できるように、亜鉛材料を塗布することと組み合わせて腐食電位を低下させることにより、多様な材料及び腐食環境において応力腐食割れを軽減する。
【0016】
以下の説明の中で使用される用語「高温水」は、50℃〜約350℃、好ましくは、約50℃〜約300℃の温度を有する水を含むと考えてよい。また、水を含む蒸気相及び液相を含むあらゆる2相流体も含まれる。ナノ粒子は、主に100nm未満の大きさ及び500nm未満の平均粒径を有する粒子を含んでもよい。いくつかの実施形態においては、一次粒径は50nm未満又は更に小さい10nm未満である。いくつかの実施形態では、平均粒径は250nm未満又は更に小さい100nmであり、あるいは更に小さい50nm未満である。金属面上のアノード領域からカソード領域へ向かう電子の流れによって発生する電気化学腐食電位は、腐食が起こる熱力学的傾向を表す尺度であり、応力腐食割れを判定するときの基本パラメータである。低腐食電位とは、一般に、約100mV〜約200mVである沸騰水型軽水炉が動作する正規の動作条件の下での電位より低い腐食電位である。いくつかの実施形態においては、腐食電位は100mVより低い(標準水素電極に関して)。いくつかの実施形態では、標準水素電極に関して、腐食電位は、相対的に0mVより低く、更には−200mVより低く、更には−500mVより低い。
【0017】
本発明の一実施形態に従って、図4は、高温水系において高温水にさらされる構成要素の応力腐食割れを軽減する方法68を示したフローチャートである。図示される方法68は、ブロック70において、高温水環境で腐食電位条件を所望の低腐食電位まで低下させることと;ブロック72において、所望の低腐食電位によって高温水環境と構造上連通する亀裂又は隙間の中へ、亜鉛を含む第1の材料を容易に搬送できるように、第1の材料を高温水環境の中へ導入することとを含む。いくつかの実施形態においては、例えば、亜鉛の塩、亜鉛の酸化物、亜鉛の有機金属化合物などの多様な形態の亜鉛添加物は、高温水の中でイオン(例えば、Zn++及びZnOH)になり、従って、亀裂の内部への亜鉛の搬送は、高腐食電位(負イオンを亀裂の内部へ送り込み、Zn++などの正イオンを亀裂から追い出す)が存在することによって抑止される。本発明の実施形態によれば、低腐食電位条件(正規の腐食電位条件と比較した場合)の下で導入された亜鉛は、狭い隙間の中へ相対的に小さい抵抗で相対的に広い範囲にわたり亜鉛を浸透させるのに効果的であり、それにより、応力腐食割れを軽減する。
【0018】
腐食電位を所望の低い値まで低下させる方法は多様である。例えば、水素注入の実行、オキシダントが存在しない条件の実現、あるいは絶縁材料又は貴金属触媒を低水素注入と組み合わせて適用するなどの方法により、所望の低腐食電位条件が実現されてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態においては、高温水中に還元種を導入することにより、腐食電位の低下を実現できる。還元種は、一般に、酸化種と反応して、水又は他の安定種を形成する種を意味する。還元種の例には、水素、アルコール、ヒドラジン、アンモニア及びそれらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。例えば、給水の中へ所望の量の水素ガスが導入されてもよい。本発明の一実施形態に従って応力腐食割れを軽減する方法74のフローチャートを示す図5を参照して説明する。方法は、ステップ76において、高温水の中へ還元種を導入することを含む。還元種が原子炉容器に到達すると、ブロック78に示されるように、還元種は、酸素及び過酸化水素などの放射線分解により形成された酸化種と反応して、水を改質する。このブロック78の反応は、金属面の付近で水中に溶解した酸化種の濃度を低下し、それにより、ブロック80に示されるように、腐食電位を低下させる。ブロック82に示されるように、高温水の中へ亜鉛を含む材料が導入される。低腐食電位条件の下で、添加された亜鉛は、容易に亀裂内に浸透し、亀裂の広がりを阻止し、その結果、応力腐食割れを軽減できる。いくつかの実施形態においては、亜鉛を含有する材料は、亜鉛、酸化亜鉛、窒化亜鉛、酢酸亜鉛又は亜鉛を含有する他の有機金属化合物、あるいはそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態においては、導入される亜鉛は、ナノ粒子の形態である。亜鉛を含有する材料は、粉末、ペレット、非分散金属形態、被覆基板又は被覆膜、化学合金又は機械合金、部分飽和溶液、飽和溶液又はコロイド懸濁液、あるいはそれらの組み合わせの形態で導入されてもよい。それらの再組み合わせ反応の速度は、局所照射野、水の流量及び他の変数によって決まり、従って、反応に使用される水素の量は、高温水系内部の領域ごとに異なる。
【0020】
いくつかの実施形態においては、図6の方法86に示されるような低腐食電位条件は、ブロック88に示されるように、高温水にさらされる構造要素を触媒面を形成するための貴金属触媒によって被覆することにより実現されてもよい。物理気相成長(例えば、グロー放電スパッタリング、マグネトロン利用スパッタリング又は電気めっき)、無電界めっき、RFスパッタリング、プラズマ又は高速酸素燃料溶射プロセスによる溶射、ワイヤアーク又は化学気相成長、拡散ボンディング、熱機械クラッディングを含む多様な蒸着技術が被覆に使用されてよい。ブロック90に示されるように、触媒面は、オキシダントと還元体の再組み合わせを促進する。その結果、ブロック92に示されるように、腐食電位は低下される。低下された腐食電位の利点を利用し、亀裂内部への浸透を促進することにより、構成要素の応力腐食割れの減少を実現する(ブロック96に示される)ために、亜鉛を含有する材料が高温水の中へ導入される(ブロック94)。亜鉛を含有する材料は、上記の実施形態に関して説明したようなどのような形態であってもよい。
【0021】
図7の方法98により示されるような他のいくつかの実施形態においては、腐食電位条件を低下させることは、複数の触媒ナノ粒子を高温水環境の中へ導入すること(ブロック100)を含む。触媒ナノ粒子の例には、パラジウム、プラチナ、オスミウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、レニウム、その酸化物、その窒化物、その合金又はそれらの種々の組み合わせから成るナノ粒子がある。更に、触媒ナノ粒子は、プラチナ又はパラジウム又はオスミウム又はルテニウム又はイリジウム又はロジウムを含有する他の化合物を含んでもよい。そのような化合物は、金属間相又は固相溶液を含む。複数の触媒ナノ粒子は触媒面を形成し、その面において、還元種は、少なくとも1つの酸化種と反応することにより高温水中で少なくとも1つの酸化種の濃度を低下し、それにより、腐食電位の低下を実現する。いくつかの実施形態においては、複数の触媒ナノ粒子を導入する動作は、高温水環境で複数の触媒ナノ粒子の濃度を約5ppb(千万分率)〜約200ppbの範囲にすることを含む。ブロック104に示されるように、亜鉛を含有する材料は、高温水の中へ導入される。低腐食電位条件の下にあるため、隙間又は亀裂の内部への亜鉛の浸透は更に容易になり、それが応力腐食割れの軽減を実現することを助ける。
【0022】
腐食電位を低下させる目的で、現場で触媒ナノ粒子を高温水の中へ導入するために、いくつかの方法を利用できる。高温水系の中でコロイド懸濁液を形成するように、触媒ナノ粒子を均質に導入できる。この場合、触媒ナノ粒子は、ブラウン運動によって懸濁液中に無限にとどまる。あるいは、触媒ナノ粒子は、不均質に導入されてもよい。
【0023】
まず、適切な流体媒体を使用して、触媒ナノ粒子の濃縮溶液又は懸濁液を調製することにより、触媒ナノ粒子は、高温水の中へ導入されてもよい。その後、触媒ナノ粒子の濃縮懸濁液を原子炉給水へ送り出すことができる。そのような濃縮溶液又は懸濁液を形成するのに適切な媒体は、水;メタノール、エタノール、プロパノール又はnブタノールなどのアルコール;低カルボン酸、例えば、酢酸、プロピオル酸及び酪酸などの酸;又はアセトン及びアセチルアセトンなどのケトン;並びにそれらの組み合わせを含む。触媒ナノ粒子は、非分散金属形態で原子炉給水に導入されてもよい。別の実施形態においては、触媒ナノ粒子を遷移金属酸化物粉末及び遷移金属粉末のうちの少なくとも一方と混合し、粉末混合物を形成できる。遷移金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化鉄などを含有してもよく、遷移金属粉末は、ジルコニウム、イットリウム、鉄、亜鉛、ハフニウム、セリウムなどを含有してもよい。まず、触媒ナノ粒子と、遷移金属酸化物粉末及び遷移金属粉末のうちの一方とを含む成形ペレットを形成し、次に、成形ペレットを高温水の中へ送り出すことにより、触媒ナノ粒子が高温水の中へ導入されてもよい。
【0024】
更に別の実施形態においては、基板を触媒ナノ粒子によって被覆して、少なくとも1つの被覆基板を形成し、その被覆基板を高温水の中へ送り出すことにより、触媒ナノ粒子が高温水の中へ導入される。触媒ナノ粒子は、高温水蒸気の中に入ると基板から離脱し、高温水流れの中でコロイド懸濁液を形成する。
【0025】
原子炉の種々の動作段階の間に、触媒ナノ粒子は、高温水の中に導入されてもよい。先に説明された実施形態のいずれにおいても、原子炉の全出力運転、冷却運転、ヒートアップ、高温待機又は低出力運転の間に、触媒ナノ粒子は、高温水中に供給されてもよい。
【0026】
高温水の中で触媒ナノ粒子の完全な混合が起こりうる場所であれば、原子炉構造内のどの場所で触媒ナノ粒子が高温水の中へ導入されてもよい。触媒ナノ粒子が高温水の中へ導入されてもよい場所は、残留熱除去(PHR)配管、再循環配管、給水ライン、炉心デルタPライン、ジェットポンプ計装ライン、制御棒駆動冷却水ライン、水位制御ポイント、原子炉冷却材浄化(RWCU)系などである。触媒ナノ粒子の導入中、注入の目的に使用されない種々のラインは、冷却材系のその他の部分に対して開放又は閉鎖されてもよい。
【0027】
図8の方法106により示されるようないくつかの実施形態においては、腐食電位の所望の低下を実現するために必要とされる還元種の量を制限するために、還元種の導入(ステップ108)に続いて触媒ナノ粒子が導入されてもよい。例えば、ステップ110において、適切な媒体の中で触媒ナノ粒子のスラリが調製され、スラリは高温水の中へ導入される。複数の触媒ナノ粒子は触媒面を形成し、その面において、還元種が少なくとも1つの酸化種と反応することにより、高温水中の少なくとも1つの酸化種の濃度を低下し、その結果、腐食電位の低下を実現する。ステップ114において、亜鉛を含有する材料が高温水の中へ導入される。腐食電位が低下された条件の下で、亜鉛は、亀裂の内部へ更によく浸透し、それにより、それ以上の亀裂の広がりを阻止する。いくつかの実施形態においては、亜鉛を含有する材料は、亜鉛又は酸化亜鉛又は窒化亜鉛又は酢酸亜鉛、又は亜鉛を含有する他の有機金属化合物、あるいはそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、亜鉛は、ナノ粒子の形態で導入される。亜鉛を含有する材料は、粉末、ペレット、非分散金属形態、被覆基板又はそれらの組み合わせの形態で導入されてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態において、腐食電位条件を低下させることは、複数の誘電体ナノ粒子を導入することを含む。いくつかの実施形態では、図9に方法116として示されるように、誘電体ナノ粒子は、触媒金属ナノ粒子と共に添加されてもよい。例えば、誘電体ナノ粒子のいくつかの実施形態は、ジルコニウム又はハフニウム又はニオブ又はタンタル又はイットリウム又はタングステン又はバナジウム又はチタニウム又はモリブデン又はクロム又はセリウム又はゲルマニウム又はスカンジウム又はランタン又はその酸化物、あるいはそれらの組み合わせを含む非貴金属を含有してもよい。ナノ粒子が高温水の中へ導入されると、ナノ粒子は水中でコロイド状に分散し、高温水の不都合な効果を妨げる。特に、触媒ナノ粒子は触媒作用により、水素と酸素との再組み合わせ運動の効率を上げ、その結果、湿潤面の電気化学腐食電位を低下させる。誘電体ナノ粒子は、原子炉の面に対して電気絶縁層を形成する。電気絶縁という用語は、電気絶縁層の下方にある構造要素の材料の酸化物より電気絶縁性が高いことを意味する。ナノ粒子の一部、例えば、触媒貴金属成分及び/又は誘電体成分は、高温水と接触する構成要素の面にも付着し、継続して応力腐食割れを軽減する。構成要素の面に一旦付着した後、ナノ粒子は、動作中に他の構成要素面に再び付着するか又は高温水の中にコロイド状に分散することもある。
【0029】
原子炉冷却材の中へナノ粒子を導入すると、ナノ粒子は、コロイド状に分散し、水中の静電力に応答する。その結果、原子炉の種々の構成要素面において、ナノ粒子の再分布が起こる。更に、ナノ粒子を使用することにより、被覆粒子と比較して表面積が拡大するため、触媒効率は大幅に改善される。また、そのようなナノ粒子は、既存の隙間又は亀裂の内部へ浸透又は拡散できるので、亀裂の成長を抑止する。
【0030】
一実施形態においては、図9のブロック118に示されるように、誘電体ナノ粒子及び触媒ナノ粒子の双方を含むナノ粒子の混合物は、スラリとして製造される。ステップ120において、スラリは高温水の中へ導入される。別の実施形態では、各ナノ粒子は、誘電体成分及び触媒成分の双方から成る混合物として製造される。その場合、触媒成分の全て又は一部は、高温水の中に浸漬されたときに高温水と接触する。ここで開示されるようにナノ粒子を使用することにより、溶解水素/酸素レベルなどの変数を絶えず監視する必要なく、電気化学腐食電位を低下できるので好都合である。一般に、沸騰水型軽水炉及び他の原子炉において、そのような変数を正確に監視することは困難である。ステップ122において、亜鉛を含有する材料がペレットとして成形され、ブロック124に示されるように、ペレットは高温水の中へ導入される。
【0031】
ナノ粒子は、球形、ほぼ球形、葉巻形、棒形及び三日月形などのシングルローブ形状並びに四面体、ラズベリー形、どんぐり形、ダンベル形などのマルチローブ形状を含めた多様な形態を有してもよい。ナノ粒子の大きさ分布は、単分散、双峰又は多分散のいずれであってもよい。一実施形態においては、ナノ粒子は約500ナノメートル(nm)未満の平均直径を有し、別の実施形態では、ナノ粒子は約100nm未満の平均直径を有する。更に別の実施形態においては、ナノ粒子は約50nm未満の平均直径を有する。
【0032】
ナノ粒子は、粒子の凝集の量を広範囲にばらつかせるような従来の技術を使用して形成される。金属(非貴金属及び貴金属)の化学量論比が最終製品の金属の比を確定することは、当業者には理解されるであろう。いくつかの実施形態においては、ナノ粒子の独自の特性を利用するために、ナノ粒子は分散される。粒子分散を、湿潤、粒子の分離及び安定化という3段階に分割できる。湿潤後、凝集体の分解は、通常、衝突又は摩損により実現される。ナノ粒子を分散させるために使用される方法は、超音波エネルギー、強制混合、強制噴霧などを含む。ナノ粒子は、一旦分散されると、ブラウン運動によって無限にコロイド懸濁液の状態にとどまることができる。
【0033】
高温水中に存在する酸化種は、酸素(O)、過酸化水素(H)及びOHなどの種々のラジカルを含む。還元種は、水素(H)、ヒドラジン(N)、アンモニア(NH)、アルコールなどを含む。好ましい一実施形態においては、触媒ナノ粒子は触媒面を形成し、その面において、水素は、酸素及び過酸化水素と反応して水を形成する。還元体は、高温原子炉冷却材の中に平衡濃度で既に存在していてもよい。あるいは、還元体は、高温水の中へ導入され、高温水に溶解されてもよい。そのような一実施形態では、高温水中のHの比が約1:8の重量により判定される値を有するように、ある量の水素ガスが高温水の中へ導入される。
【0034】
誘電体ナノ粒子は、非貴金属材料を含むのが好ましい。ナノ粒子を製造するのに適する誘電体材料は、無機化合物、有機金属化合物、金属、ゼオライト、金属酸化物などを含む。非貴金属の例としては、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、イットリウム、イッテルビウム、タングステン、バナジウム、チタン、モリブデン、クロム、セリウム、ゲルマニウム、スカンジウム、ランタン及びニッケルがあるが、これらに限定されない。また、炭素又はケイ素などの導体特性又は半導体特性を有する非貴金属を使用することも可能である。以上挙げた非貴金属は、単独で使用されてもよく、あるいは他の非貴金属又は非金属と混合した状態で使用されてもよい。
【0035】
触媒ナノ粒子と誘電体ナノ粒子との比は、所望の用途によって決まり、どのような比が採用されてもよいため、それぞれの用途で大きく異なる。原子炉冷却材の中へ導入されるとき、触媒ナノ粒子の濃度は、約100ppb未満であるのが好ましく、約1ppt(兆分率)〜約10ppbであるのが更に好ましく、約10ppt〜約1ppbであるのがいっそう好ましい。誘電体ナノ粒子の濃度は、約100ppb未満であるのが好ましく、約1ppt〜約10ppbであるのが更に好ましく、約10ppt〜約1ppbであるのがいっそう好ましい。
【0036】
本発明の一実施形態においては、不均質な触媒場所を提供し、保護絶縁層を形成するために、構成要素面の上にナノ粒子が付着される。しかし、別の実施形態では、ナノ粒子の大部分は、高温水中でコロイド懸濁液の状態を保つのに十分なほど浮揚している。このコロイド懸濁液の中で、ナノ粒子は、高温水中における酸化種と還元種との反応に対して均質な触媒として作用し、また、誘電体ナノ粒子が原子炉面に近接しているために、絶縁特性を提供する。ナノ粒子を高温水に供給するこの方法では、最初にナノ粒子が原子炉の中へ導入されるときに、N‐16含有種の生成を最小限に抑えるために、還元体(例えば、H)の注入を一時的に中断することが必要になる場合もある。貴金属粉末による処理のために反応成分を除去する必要をなくすように、ナノ粒子を原子炉給水の中へ直接注入することにより、現場で反応成分の電気化学腐食電位を低下できる。ナノ粒子は、原子炉の動作中に原子炉給水に供給されても良い。その場合、コスト高を招く複雑な原子炉の運転停止作業は回避される。あるいは、ナノ粒子は、定期的な原子炉運転停止期間中に原子炉給水に添加されてもよい。それぞれの原子炉のニーズに応じて、原子炉内部の高温水の中へ所定量のナノ粒子を連続して又は所定の時間間隔で間欠的に導入できる。高温原子炉冷却材中で、触媒ナノ粒子の所定の濃度を得るために、所定量の触媒ナノ粒子を原子炉の中へ導入できる。
【0037】
ナノ粒子は、原子炉の様々な動作段階の間に、高温水の中へ導入されてよい。先に説明された実施形態のいずれにおいても、原子炉の全出力運転、冷却運転、ヒートアップ、高温待機又は低出力運転の間に、ナノ粒子が高温水に供給されてもよい。更に、高温水中でナノ粒子が完全に混合される場所であれば、原子炉構造内部のどの場所でナノ粒子が高温水の中へ導入されてもよい。ナノ粒子が高温水の中へ導入されてもよい場所は、残留熱除去(RHR)配管、再循環配管、給水ライン、炉心デルタPライン、ジェットポンプ計装ライン、制御棒駆動冷却水ライン、水位制御ポイント、原子炉冷却材浄化(RWCU)系などを含む。触媒ナノ粒子の導入中、注入に使用されない種々のラインは、冷却材系のその他の部分に対して開放又は閉鎖されてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態においては、高温水にさらされる構成要素を電気絶縁性材料によって被覆することにより、低腐食電位が実現される。電気絶縁性という用語は、被覆の下方に位置する構造要素の材料の酸化物より電気絶縁性が高いことを意味する。それらの金属合金被覆膜の上には種々の絶縁層が形成されてもよいが、高温水に適用される場合には、それらの合金の酸化物、炭化物及び窒化物が一般に最も適合している。ジルコニウム系合金の場合、絶縁層は、その合金の酸化物であってもよいであろう。これは、ジルコニアを含むと考えられる。ジルコニア(ZrO)は、空気中又は水中で自然発生的に形成されるので、第1に選択されてよい適切な材料であり、溶射により塗布されてもよい。また、ジルコニアは、構造的にも(例えば、剥離しにくく、環境が要因となって起こる亀裂を生じにくい)、化学的にも(例えば、溶解又は反応しない)、高温水の中で非常に安定している。ジルコニア又は他の形態のジルコニウム合金は、様々に異なる粒径で入手できるので、溶射パラメータを自在に調整でき、絶縁層を形成するために、溶射、スパッタリング、物理気相成長又は化学気相成長が使用される。また、アルミナが選択されてもよい。288℃の水中におけるアルミナの溶解速度は、ジルコニアより速いが、それでも非常に遅い。高温水の中で溶解しにくいこと及び高温水系の正規の動作条件の下で剥離しにくいことを含めて、高温水環境の中で機械的及び化学的に安定しているのであれば、他の種々の金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物又は金属ホウ化物も適している。尚、金属合金被覆膜の表面上に形成される絶縁層は、高温水にさらされたときに孔、亀裂又は隙間の中で形成される絶縁層(例えば、酸化物)と同一でなくてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態においては、亜鉛を含有する材料を高温水の中へ導入する動作は、亜鉛を含有する複数のナノ粒子を導入することを含む。いくつかの実施形態では、亜鉛を含有する材料は、亜鉛又は酸化亜鉛又は窒化亜鉛又は酢酸亜鉛又は亜鉛を含有する他の有機金属化合物、あるいはそれらの組み合わせを含んでもよい。上述の実施形態で説明されたように、亜鉛を含有する材料は、粉末、ペレット、非分散金属形態、被覆基板又はそれらの組み合わせの形態で導入されてもよい。次に、亜鉛のナノ粒子を含む本発明のいくつかの実施形態に従って、応力腐食割れを軽減する方法126を示す図10を参照して説明する。方法は、ステップ128において、亜鉛のナノ粒子及び触媒ナノ粒子を供給することと、ステップ130において、ナノ粒子のスラリを製造することと、ステップ132において、スラリを導入することとを含む。いくつかの実施形態においては、狭い隙間に侵入しやすく、従って、亀裂の成長を阻止する亜鉛のナノ粒子が好ましい。
【0040】
触媒ナノ粒子及び亜鉛を採用する実施形態においては、触媒ナノ粒子及び亜鉛を含有する1つ以上の材料が併せて導入されてもよく、あるいは別個に導入されてもよい。いくつかの実施形態では、触媒ナノ粒子及び亜鉛の供給源を高温水の中へ導入することは、触媒ナノ粒子及び亜鉛を粉末又はスラリ又はペレット又は被覆基板又は非分散金属形態、あるいはそれらの組み合わせの形態で導入することを含む。一般に、触媒ナノ粒子及び亜鉛は、高温水中で触媒粒子及び亜鉛の所定の濃度を実現するように、高温水の中へ導入される。いくつかの実施形態においては、亜鉛の濃度は、1ppbより高いか又は約50ppb〜100ppbの範囲である。あるいは、いくつかの実施形態においては、触媒ナノ粒子の濃度は200ppbより低い。触媒ナノ粒子及び亜鉛の供給源は、所定の量の供給源を提供するように、高温水の中へ連続して導入されてもよく、あるいは間欠的に導入されてもよい。
【0041】
酸化物膜の内部に亜鉛を取り込み、受動電流密度を低下させることにより、特に長時間にわたり、亜鉛が再不活性化運動エネルギーを向上することはよく知られている。図11に示されるように、10ppbの亜鉛が存在する場合、亀裂成長速度(CGR)は減少する。これは、亜鉛が、ステンレス鋼の上で、より多くの欠陥のない酸化物膜の形成を促進したことを示唆する。更に、図12では、水素を含有する高温水の中で、低腐食電位(2.9×10−8mm/s〜8.3×10−9mm/s)のとき、亜鉛が亀裂成長速度を減少することが実証される。
【0042】
本発明のいくつかの特徴のみを図示し、説明したが、当業者には、数多くの変形及び変更が思い浮かぶであろう。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨の範囲内に入るそのような全ての変形及び変更を含むことが意図されると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に従ったいくつかの特徴を有する従来の沸騰水型軽水炉を概略的に示した一部破断斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に従ったいくつかの特徴を有するジェットポンプを示した概略図である。
【図3】本発明の実施形態に従ったいくつかの特徴を有するタービンを概略的に示した一部破断斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に基づき、高温水系において高温水にさらされる構成要素の応力腐食割れを軽減するひとつの方法を示したフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に基づき、高温水系において高温水にさらされる構成要素の応力腐食割れを軽減するひとつの方法を示したフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に基づき、高温水系において高温水にさらされる構成要素の応力腐食割れを軽減するひとつの方法を示したフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に基づき、高温水系において高温水にさらされる構成要素の応力腐食割れを軽減するひとつの方法を示したフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に基づき、高温水系において高温水にさらされる構成要素の応力腐食割れを軽減するひとつの方法を示したフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態に基づき、高温水系において高温水にさらされる構成要素の応力腐食割れを軽減するひとつの方法を示したフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態に基づき、高温水系において高温水にさらされる構成要素の応力腐食割れを軽減するひとつの方法を示したフローチャートである。
【図11】増感合金600の亀裂成長速度に対する溶解亜鉛の効果を示したグラフである。
【図12】高温水中における316SSの亀裂成長速度を低下させる際の亜鉛の効果を示した応力腐食割れ長さと時間との関係を表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温水系で高温水にさらされる構成要素の応力腐食割れを軽減する方法(68)において、
(a)高温水環境の中で腐食電位条件を所望の低腐食電位まで低下させること(70)と、
(b)所望の低腐食電位によって、前記高温水環境と構造的に連通する亀裂の内部へ、亜鉛を含有する第1の材料が容易に搬送されるように、前記高温水環境の中へ前記第1の材料を導入すること(72)と、
を含む方法。
【請求項2】
腐食電位条件を低下させることは、第2の材料を含む複数の触媒ナノ粒子を前記高温水環境の中へ導入すること(102)を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記複数の触媒ナノ粒子は、500nm未満の平均粒径を有する請求項2記載の方法。
【請求項4】
腐食電位条件を低下させることは、第2の材料を含む複数の誘電体ナノ粒子を導入することを含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
腐食電位条件を所望の低腐食電位まで低下させることは、標準水素電極に対する測定で、腐食電位を約−500ミリボルト〜約100ミリボルトの範囲の値まで腐食電位を低下させるために、有効な量の第2の材料を提供することを含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
腐食電位条件を低下させることは、還元種を導入することを含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記第1の材料を導入することは、前記第1の材料を含む複数のナノ粒子を導入することを含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記触媒ナノ粒子の供給源及び前記亜鉛を含有する材料は、別個に又は併せて導入される請求項2記載の方法。
【請求項9】
前記高温水系は、原子炉又は蒸気タービン又は水脱気器又はジェットポンプである請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記原子炉は、沸騰水型軽水炉である請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−312783(P2006−312783A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−125396(P2006−125396)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】