説明

高温空気燃焼ボイラシステム

【課題】省エネルギ化を可能とした高温空気燃焼ボイラシステムを提供する。
【解決手段】ボイラ火炉1の炉壁に、微粉炭を噴出する微粉炭バーナ5と高温燃焼用空気を噴出する燃焼空気ノズル6とを設け、燃焼空気ノズル6に空気予熱器4で予熱された燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給ライン11が接続され、煙道15と燃焼用空気供給ライン11とをエアエジェクタ18を有する排ガス抽出ライン16で接続し、エアエジェクタ18に、排ガス排気ライン12より低温の排ガスを吸引しエアエジェクタ18に作動流体として供給する作動流体供給ライン19を接続し、エアエジェクタ18により排ガス抽出ライン16を介して抽出しされた高温の排ガスが燃焼用空気に混合され、高温燃焼用空気として燃焼空気ノズル6に供給される様構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粉炭を高温空気燃焼させる高温空気燃焼ボイラシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高温の燃焼用空気を燃料とは分離した空気ノズルで供給し、高温状態とした炉内に微粉炭を噴射し、還元雰囲気で燃焼させる高温空気燃焼方式のボイラ装置(以下、高温空気燃焼ボイラ装置)がある。高温空気燃焼ボイラ装置では、炉内を高温にできることから、火炉の小型化が可能であり、又酸素濃度の低い還元雰囲気で燃焼を行わせることができるので、窒素酸化物発生を抑制することができるという利点がある。
【0003】
高温空気燃焼では、燃焼用空気を600℃〜800℃程度迄昇温させる必要がある。燃焼用空気を昇温させる方法としては、大気を昇圧させると共にボイラ排ガスと熱交換させ、更に加熱手段を用いて600℃〜800℃程度迄昇温させる方法があり、又他の方法としてボイラ排ガスを直接空気に混合させ、昇温する方法がある。
【0004】
前者の方法では加熱手段による昇温が必要であり、加熱手段を別途必要とすること、更に加熱の為のエネルギを必要とする等の問題があり、後者の方法では高温の排ガスを抽出する手段が必要であるが、抽出する手段としてブロアが用いられる場合は、排ガスの高温に耐えられない、若しくは寿命が短い等の問題がある。又、高温の排ガスを抽出する手段として特許文献1に示されるものがある。
【0005】
特許文献1では、常温の空気を昇圧してエアエジェクタの作動流体として用い、エアエジェクタにより火炉より排ガスを抽出し、作動流体(空気)と混合された高温燃焼空気として供給する様にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−265299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は斯かる実情に鑑み、燃焼用空気を昇温させる熱源としてエアエジェクタで抽出した排ガスを使用し、エアエジェクタの作動流体として常温より高温の排ガスを用いることで、より省エネルギ化を可能とした高温空気燃焼ボイラシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ボイラ火炉と、該ボイラ火炉に煙道を介して設けられた熱回収部と、該熱回収部からの排ガスを排気する排ガス排気ラインと、該排ガス排気ラインに設けられた空気予熱器と、前記ボイラ火炉の炉壁に設けられ微粉炭を噴出する微粉炭バーナと高温燃焼用空気を噴出する燃焼空気ノズルとを有し、微粉炭を炉内に噴出して高温空気燃焼させる高温空気燃焼ボイラシステムであって、前記燃焼空気ノズルに前記空気予熱器で予熱した燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給ラインが接続され、前記煙道と前記燃焼用空気供給ラインとが排ガス抽出ラインによって接続され、該排ガス抽出ラインにエアエジェクタが設けられると共に該エアエジェクタに作動流体供給ラインが接続され、該作動流体供給ラインは前記排ガス排気ラインの前記熱回収部より下流側に接続され、前記排ガス排気ラインより低温の排ガスを吸引し、前記エアエジェクタに作動流体として供給し、該エアエジェクタにより前記排ガス抽出ラインを介して高温の排ガスが抽出され、前記燃焼用空気に前記高温の排ガスが混合され、前記燃焼用空気が昇温され、高温燃焼用空気として前記燃焼空気ノズルに供給される様構成された高温空気燃焼ボイラシステムに係るものである。
【0009】
又本発明は、前記排ガス排気ラインの前記空気予熱器の下流側に集塵装置が設けられ、前記作動流体供給ラインは前記排ガス排気ラインの前記集塵装置の下流側に接続された高温空気燃焼ボイラシステムに係るものである。
【0010】
又本発明は、前記作動流体供給ラインは前記空気予熱器の上流側に接続され、前記作動流体供給ラインに第2サイクロン集塵機、ガス再循環送風機が設けられた高温空気燃焼ボイラシステムに係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ボイラ火炉と、該ボイラ火炉に煙道を介して設けられた熱回収部と、該熱回収部からの排ガスを排気する排ガス排気ラインと、該排ガス排気ラインに設けられた空気予熱器と、前記ボイラ火炉の炉壁に設けられ微粉炭を噴出する微粉炭バーナと高温燃焼用空気を噴出する燃焼空気ノズルとを有し、微粉炭を炉内に噴出して高温空気燃焼させる高温空気燃焼ボイラシステムであって、前記燃焼空気ノズルに前記空気予熱器で予熱した燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給ラインが接続され、前記煙道と前記燃焼用空気供給ラインとが排ガス抽出ラインによって接続され、該排ガス抽出ラインにエアエジェクタが設けられると共に該エアエジェクタに作動流体供給ラインが接続され、該作動流体供給ラインは前記排ガス排気ラインの前記熱回収部より下流側に接続され、前記排ガス排気ラインより低温の排ガスを吸引し、前記エアエジェクタに作動流体として供給し、該エアエジェクタにより前記排ガス抽出ラインを介して高温の排ガスが抽出され、前記燃焼用空気に前記高温の排ガスが混合され、前記燃焼用空気が昇温され、高温燃焼用空気として前記燃焼空気ノズルに供給される様構成されたので、前記作動流体には排ガスが用いられ、排ガスは常温より高い温度を有しており、前記エアエジェクタで抽出される高温の排ガスの温度が低下するのを抑制し、高温の状態を維持して高温の排ガスを燃焼用空気に混合させることができ、省エネルギ化が図れるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第2の実施例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0014】
先ず、図1に於いて本発明の第1の実施例を説明する。
【0015】
図1に於いて、1は火炉、2は再加熱器、節炭器等が配設された熱回収部、3は排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置、4は排ガスの余熱を熱源とした空気予熱器、5は炉壁に設けられた所要数の微粉炭バーナ、6は炉壁に設けられた燃焼空気ノズル、7は燃焼用空気を送出する燃焼空気送風機、8は排気ガスを排出する排ガス送風機を示している。
【0016】
前記微粉炭バーナ5と前記燃焼空気ノズル6とは水平方向に所定ピッチで交互に配設されている。又、前記微粉炭バーナ5、前記燃焼空気ノズル6は上下に複数段(図示では2段を例示している)配設され、前記微粉炭バーナ5と前記燃焼空気ノズル6は上下で隣接する配置となっている。即ち、前記微粉炭バーナ5と前記燃焼空気ノズル6とは、水平方向、上下方向でそれぞれ交互に配置されている。
【0017】
尚、交互に配設された前記微粉炭バーナ5と前記燃焼空気ノズル6は、一段であってもよい。
【0018】
前記微粉炭バーナ5には微粉炭ミル(図示せず)から微粉炭と空気の混合流である微粉炭・空気混合流(以下、微粉炭混合流)が供給される様になっている。
【0019】
前記燃焼空気ノズル6には燃焼用空気供給ライン11が接続され、該燃焼用空気供給ライン11の上流端には前記燃焼空気送風機7が設けられている。前記燃焼用空気供給ライン11には前記空気予熱器4が設けられている。
【0020】
前記熱回収部2には排ガス排気ライン12が設けられ、該排ガス排気ライン12には前記熱回収部2から下流側に向って前記脱硝装置3、前記空気予熱器4、集塵装置13、例えば電気集塵装置或はバグフィルタが設けられている。前記空気予熱器4では、脱硝後の排ガスと前記燃焼空気送風機7から送出された燃焼用空気とが熱交換される様になっている。
【0021】
前記火炉1の排ガス出口の煙道15に排ガス抽出ライン16の上流端が接続され、該排ガス抽出ライン16の下流端は前記燃焼用空気供給ライン11の前記空気予熱器4より下流側に接続されている。又、前記排ガス抽出ライン16には上流側より、サイクロン集塵機17、エアエジェクタ18が設けられている。
【0022】
該エアエジェクタ18には作動流体供給ライン19が接続され、該作動流体供給ライン19は前記排ガス排気ライン12の集塵装置13より下流側に接続され、前記排ガス排気ライン12にはガス再循環送風機20が設けられている。
【0023】
以下、第1の実施例の作用について説明する。
【0024】
尚、前記火炉1の燃焼状態は、定常の高温空気燃焼が実現されているものとする。又、高温空気燃焼が実現される迄(炉内が定常高温空気燃焼となる高温に達する迄)はガスバーナ、オイルバーナ、微粉炭バーナ等による過渡的な燃焼が行われる。
【0025】
火炉1からの排ガスは、前記熱回収部2を経て前記脱硝装置3で脱硝され、前記空気予熱器4を経て前記集塵装置13で排ガス中の塵埃が除去され、前記排ガス送風機8により吸引され、排出される。尚、前記集塵装置13から吸引される排ガスの温度は150℃程度となっている。
【0026】
前記燃焼空気送風機7から送出された燃焼用空気は、前記空気予熱器4で排ガスと熱交換され、250℃〜350℃に予熱される。
【0027】
前記作動流体供給ライン19を介して前記集塵装置13から排気される排ガスの一部が前記ガス再循環送風機20により吸引され、更に該ガス再循環送風機20によって昇圧されて作動流体として前記エアエジェクタ18に供給される。上記した様に、前記ガス再循環送風機20が吸引する排ガスの温度は150℃程度と低温であるので、前記ガス再循環送風機20は特に耐熱用の送風機を使用しなくてもよい。
【0028】
前記エアエジェクタ18に作動流体が供給されることで、前記排ガス抽出ライン16を介して前記煙道15から排ガスが抽出される。抽出された排ガスは、前記サイクロン集塵機17を経ることでフライアッシュ(灰塵)が除去され、前記排ガス抽出ライン16を経て前記空気予熱器4からの燃焼用空気と混合される。
【0029】
前記煙道15を流れる排ガスは、前記火炉1を出た直後であり、1300℃〜800℃と高温である(以下、抽出した排ガスを高温排ガスと称す)。前記作動流体は、常温の空気ではなく、150℃の排ガスであり、又作動流体の流量は、抽出する排ガス流量に対して少ないので、高温排ガスの温度低下を少なく抑えることができる。
【0030】
高温排ガスを前記燃焼用空気に混合させることで、燃焼用空気の温度を600℃〜800℃に昇温させることができ、高温燃焼用空気として前記燃焼空気ノズル6に供給することができる。又、燃焼用空気に高温排ガスを混合させることで、高温燃焼用空気の酸素濃度を16%程度に減少させることができ、炉内での還元燃焼雰囲気を実現する。
【0031】
尚、図示していないが、前記作動流体供給ライン19又は前記排ガス抽出ライン16に、或は前記作動流体供給ライン19と前記排ガス抽出ライン16とに流量調整ダンパを設けることで高温排ガスの抽出流量、即ち燃焼用空気に混合させる高温排ガスの流量を調整することができる。又、前記燃焼用空気供給ライン11に流量調整ダンパ(図示せず)を設けることで、燃焼用空気の流量を調整することができる。
【0032】
上記した様に、前記排ガス抽出ライン16と前記燃焼用空気供給ライン11とは別ラインとなっており、それぞれ個別に流量調整が行えるので、高温燃焼用空気の温度調整、流量調整を燃焼状態に適合させる様制御することができる。
【0033】
前記微粉炭バーナ5からは微粉炭混合流が高温の炉内に噴出され、微粉炭混合流中の微粉炭は、噴出された後、炉内で燃焼用空気と接触し、発火し、還元雰囲気で燃焼し、高温空気燃焼が行われる。
【0034】
図2により、第2の実施例を説明する。尚、図2中、図1中で示したものと同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0035】
第2の実施例では、エアエジェクタ18の作動流体としてより高温の排ガスを使用する様にしたものであり、第1の実施例に対し作動流体供給ライン22を変更したものである。
【0036】
前記作動流体供給ライン22の上流端を前記排ガス排気ライン12の脱硝装置3より上流側に接続し、熱回収部2から排気されたガスを作動流体として吸引する。前記排ガス排気ライン12とエアエジェクタ18とを接続する前記作動流体供給ライン22に、上流側(排ガス排気ライン12側)から第2サイクロン集塵機23、ガス再循環送風機20が設けられる。
【0037】
該ガス再循環送風機20は、前記第2サイクロン集塵機23を介して、前記排ガス排気ライン12から排ガスを作動流体として吸引する。
【0038】
前記脱硝装置3の上流側を流れる排ガスの温度は、350℃〜400℃である。又該排ガスは、除塵されていない状態であるのでフライアッシュを含んでいる。排ガスが前記第2サイクロン集塵機23を通過することでフライアッシュが除去され、又排ガスの温度は300℃〜350℃程度迄低下する。従って、前記ガス再循環送風機20が吸引する排ガスの温度は、300℃〜350℃程度と低温であり、通常の送風機を使用することができる。
【0039】
前記ガス再循環送風機20で昇圧された作動流体が、前記エアエジェクタ18に供給されることで、該エアエジェクタ18により高温排ガスが抽出される。又、作動流体が300℃〜350℃程度と温度が高いことから、高温排ガスの温度低下が抑制できる。従って、燃焼用空気に混合する高温排ガスの温度が高くなることから、燃焼用空気の温度を第1の実施例より更に高くすることができ、高温空気燃焼を実現する自由度を高めることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 火炉
2 熱回収部
3 脱硝装置
4 空気予熱器
5 微粉炭バーナ
6 燃焼空気ノズル
7 燃焼空気送風機
8 排ガス送風機
11 燃焼用空気供給ライン
12 排ガス排気ライン
13 集塵装置
15 煙道
16 排ガス抽出ライン
17 サイクロン集塵機
18 エアエジェクタ
19 作動流体供給ライン
20 ガス再循環送風機
22 作動流体供給ライン
23 第2サイクロン集塵機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ火炉と、該ボイラ火炉に煙道を介して設けられた熱回収部と、該熱回収部からの排ガスを排気する排ガス排気ラインと、該排ガス排気ラインに設けられた空気予熱器と、前記ボイラ火炉の炉壁に設けられ微粉炭を噴出する微粉炭バーナと高温燃焼用空気を噴出する燃焼空気ノズルとを有し、微粉炭を炉内に噴出して高温空気燃焼させる高温空気燃焼ボイラシステムであって、前記燃焼空気ノズルに前記空気予熱器で予熱した燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給ラインが接続され、前記煙道と前記燃焼用空気供給ラインとが排ガス抽出ラインによって接続され、該排ガス抽出ラインにエアエジェクタが設けられると共に該エアエジェクタに作動流体供給ラインが接続され、該作動流体供給ラインは前記排ガス排気ラインの前記熱回収部より下流側に接続され、前記排ガス排気ラインより低温の排ガスを吸引し、前記エアエジェクタに作動流体として供給し、該エアエジェクタにより前記排ガス抽出ラインを介して高温の排ガスが抽出され、前記燃焼用空気に前記高温の排ガスが混合され、前記燃焼用空気が昇温され、高温燃焼用空気として前記燃焼空気ノズルに供給される様構成されたことを特徴とする高温空気燃焼ボイラシステム。
【請求項2】
前記排ガス排気ラインの前記空気予熱器の下流側に集塵装置が設けられ、前記作動流体供給ラインは前記排ガス排気ラインの前記集塵装置の下流側に接続された請求項1の高温空気燃焼ボイラシステム。
【請求項3】
前記作動流体供給ラインは前記空気予熱器の上流側に接続され、前記作動流体供給ラインに第2サイクロン集塵機、ガス再循環送風機が設けられた請求項1の高温空気燃焼ボイラシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−19552(P2013−19552A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150707(P2011−150707)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】