説明

高炉出銑温度測定システム、高炉出銑温度測定方法、及びコンピュータプログラム

【課題】出銑口における溶銑の温度を連続的に精度良く且つ容易に測定することができるようにする。
【解決手段】CCDカメラ5で撮像された出銑流2の画像のデータから濃度ヒストグラムを算出し、算出した濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMを求める。そして、出銑流2の画像61のうち、溶銑の画像63及び溶融スラグ64の画像に重ならない位置に設定した外乱光測光エリア62内の平均濃度PAを求め、求めた平均濃度PAに溶銑の反射率Rを乗じて、背光雑音による濃度値PNを求める。さらに、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMから、背光雑音による濃度値PNを減算して溶銑における実際の濃度値PTを求め、求めた溶銑における実際の濃度値PTを用いて、溶銑における温度を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉出銑温度測定システム、高炉出銑温度測定方法、及びコンピュータプログラムに関し、特に、高炉に形成された出銑口から流出した溶銑の温度を測定するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
高炉の内部では、高温還元反応により溶銑と溶融スラグとが生成され、生成された溶銑と溶融スラグは、炉底に滴下して湯溜まりを形成する。高炉の炉底横の側壁部分には、出銑口が形成されており、この出銑口にはマッド材が充填されている。ドリル等を用いてマッド材が除去されて出銑口が開孔されると、溶銑と溶融スラグとの混合物が流出する。流出した溶銑と溶融スラグとの混合物は、出銑桶に到達し、出銑桶に沿って流れる。その後、溶銑と溶融スラグは、出銑桶の途中に形成されたスキンマで分離される。
以上のようにして出銑口から流出する溶銑の温度は、高炉内の高温熱場の状態により決まるので、高炉内の健全性を判断する上で重要な指標の一つとなる。
【0003】
そこで、溶銑の温度を測定する第1の従来技術として、スキンマにより溶融スラグと分離された溶銑に、所謂「使い捨てタイプ」の消耗型熱電対を浸漬させて溶銑の温度を測定する技術がある。かかる技術では、使い捨てにする熱電対のコストや、人手による測定の労力等の制約から、溶銑の測定は間欠的なものになってしまう。
【0004】
そこで、溶銑の温度を連続的に測定する第2の従来技術として、非接触型の放射温度計を出銑桶の上部に設置し、この放射温度計を用いて出銑桶を流れる溶銑の温度を測定する技術がある(特許文献1、2を参照)。
【0005】
ところで、出銑が開始されてから暫くの間(例えば数十分間)は、出銑桶(桶耐火物)による溶銑の抜熱が大きいために、溶銑の温度は、出銑口における溶銑の温度よりも低くなる(出銑口から出銑桶までの間で溶銑の温度が降下してしまう)。前述したように、第1及び第2の従来技術では、出銑桶における溶銑の温度を測定しているので、出銑口における温度よりも低い温度を測定してしまうことになる。また、出銑口から出銑桶までの間での溶銑の温度の降下分は一定ではないので、この温度の降下分を予測することは困難である。以上のように、第1及び第2の従来技術では、出銑口における溶銑の温度を精度良く測定することが困難であった。
【0006】
そこで、出銑口における溶銑の温度を測定する第3の技術として、消耗型金属管被覆光ファイバ温度計を、所定の送り出し速度で出銑口付近に送り込み、出銑口から流出した溶銑内部での熱放射を光ファイバ温度計で直接受光して、出銑口における溶銑の温度を測定する技術がある(特許文献3を参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平1−233329号公報
【特許文献2】特開平1−185422号公報
【特許文献3】特開平8−82553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した第3の従来技術では、光ファイバ温度計を昇降させる昇降装置や、光ファイバ温度計を溶銑に送り込むためのメジャーロール等の装置が必要になり、装置が大掛かりになる。また、出銑口からガスが噴出すること等によって、出銑口における溶銑及び溶融スラグが飛散する虞があるために、出銑口付近に置かれる装置に高い耐久性が要求される。
【0009】
以上のように、前述した従来の従来技術では、出銑口における溶銑の温度を精度良く測定することが容易ではないという問題点があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、出銑口における溶銑の温度を連続的に精度良く且つ容易に測定することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の高炉出銑温度測定システムは、高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布が、1次元又は2次元の濃度分布を示す画像として撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像のうち、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度を求める溶銑濃度導出手段と、前記出銑口から流出した溶融物の周囲にある物体が、前記溶融物の放射光により照らされて反射光を発することにより前記溶融物から発せられる雑音光に関わる画像の濃度を求める外乱濃度導出手段と、前記溶銑濃度導出手段により求められた溶銑を表す画像の濃度と、前記外乱濃度導出手段により求められた雑音光に関わる画像の濃度とを用いて、前記溶融物に含まれる溶銑の温度を算出する溶銑温度算出手段とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の高炉出銑温度測定方法は、高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布を、1次元又は2次元の濃度分布を示す画像として、撮像手段により撮像する撮像ステップと、前記撮像ステップにより撮像された画像のうち、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度を求める溶銑濃度導出ステップと、前記出銑口から流出した溶融物の周囲にある物体が、前記溶融物の放射光により照らされて反射光を発することにより前記溶融物から発せられる雑音光に関わる画像の濃度を求める外乱濃度導出ステップと、前記溶銑濃度導出ステップにより求められた溶銑を表す画像の濃度と、前記外乱濃度導出ステップにより求められた雑音光に関わる画像の濃度とを用いて、前記溶融物に含まれる溶銑の温度を算出する溶銑温度算出ステップとを有することを特徴とする。
【0012】
本発明のコンピュータプログラムは、高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布が、1次元又は2次元の濃度分布を示す画像として、撮像手段により撮像されると、その撮像された画像のうち、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度を求める溶銑濃度導出ステップと、前記出銑口から流出した溶融物の周囲にある物体が、前記溶融物の放射光により照らされて反射光を発することにより前記溶融物から発せられる雑音光に関わる画像の濃度を求める外乱濃度導出ステップと、前記溶銑濃度導出ステップにより求められた溶銑を表す画像の濃度と、前記外乱濃度導出ステップにより求められた雑音光に関わる画像の濃度とを用いて、前記溶融物に含まれる溶銑の温度を算出する溶銑温度算出ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布が、1次元又は2次元の濃度分布を示す画像として撮像されると、撮像された画像のうち、溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度を求めると共に、溶融物から発せられる雑音光に関わる画像の濃度を求める。そして、求めた溶銑を表す画像の濃度と、雑音光に関わる画像の濃度とを用いて、前記溶融物に含まれる溶銑の温度を算出する。
【0014】
出銑口から流出した溶融物を含む領域の画像に対して、溶融物の濃度情報に基づいて溶銑と溶融スラグを識別することが可能である。よって、溶銑と溶融スラグが未知の比率で混在した状態であっても、溶銑像の濃度を求め、溶銑の温度を正確に求めることができる。
【0015】
また、雑音光に関わる画像の濃度を求め、溶銑を表す画像の濃度と、雑音光に関わる画像の濃度とを用いて、溶融物に含まれる溶銑の温度を算出するようにしたので、溶融物を表す画像に、雑音光による影響がどの位存在しているのかを、出銑状態に関わらず定量的に把握することができる。よって、溶銑の温度をより一層容易に且つ正確に求めることができる。
【0016】
さらに、出銑口から流出した溶融物を含む領域の撮像画像を利用して溶銑の温度を求めるようにしたので、出銑口付近に装置を設置せずに、溶銑の温度を求めることができる。これにより、溶銑及び溶融スラグの熱放射や飛散等を、装置が受けてしまうことを防止することができ、装置の環境対策を比較的容易に行うことができる。
そして、以上のようにして求めた溶銑の温度を連続的に得ることができるので、求めた温度の変化や推移から、高炉の内部の熱状況を従来よりも迅速に且つ正確に把握することができ、高炉の操業をより安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、溶銑温度測定システムの構成の一例を示す図である。尚、図1では、高炉1全体のうち、出銑口1a付近の一部分のみを示している。
図1に示すように、高炉1の炉底横の側壁部分に形成された出銑口1aから、溶銑と溶融スラグとの混合物(溶融物)2が流出している。流出した溶銑と溶融スラグとの混合物2は、出銑桶3に到達し、出銑桶3に沿って流れる。また、出銑口1aと間隔を有して、桶カバー4が出銑桶3を囲むようにして形成されている。尚、以下の説明では、溶銑と溶融スラグとの混合物2を出銑流2と称する。
【0018】
図1に示すように、出銑口1aから流出した直後の出銑流2は、桶カバー4によって遮蔽されていない。本実施形態では、この出銑口1aから流出した直後の出銑流2の熱放射輝度分布を、横方向からモノクロのCCDカメラ5を用いて撮像するようにしている。
【0019】
本願発明者らは、露光時間(シャッタースピード)を極めて短くして、出銑口1aから流出した出銑流2の画像(熱放射輝度分布)を撮像すると、放射輝度の低い部分と、放射輝度の高い部分とが分離されるという知見を得た。このような知見は、従来から使用されていた放射温度計による測定や、肉眼による観察では得ることができなかったものである。
【0020】
具体的に、本実施形態では、CCDカメラ5の露光時間を1/10000秒として、出銑口1aから流出した出銑流2の画像(熱放射輝度分布)を、2次元の濃度分布を示す静止画像として撮像するようにした。
【0021】
ところで、CCDカメラ5では、0.4μm〜0.8μm程度の波長帯域の光についてのみ受光感度があり、しかもこの波長帯域内での受光感度は一定ではなく、特有の分光感度特性を有している。そこで、一定の狭い波長を有する光のみを透過する波長選択フィルタをCCDカメラ5に取り付けるようにするのが好ましい。このように波長選択フィルタを用いれば、溶銑の温度を算出するための放射率補正を容易に行うことができるからである。具体的に本実施形態では、中心透過波長が0.65μmの光学バンドパスフィルタを波長選択フィルタとして、CCDカメラ5に取り付けた。
【0022】
また、本実施形態では、CCDカメラ5の温度校正を、黒体炉を用いて予め行っておくようにしている。ここで、温度校正とは、黒体放射輝度と、その黒体放射輝度の物体をCCDカメラ5で撮像して得られた画像の濃度との関係を、複数の温度(例えば3点以上)において求めておくことを言う。温度校正の結果は、画像処理装置6に保存される。ここで、本実施形態では、黒体放射輝度と、その黒体放射輝度の物体をCCDカメラ5で撮像して得られた画像の濃度との関係を示す検量線の他に、その検量線から求められる式であって、画像の濃度を温度に変換する濃度・温度変換式を、温度校正の結果として画像処理装置6に保存するようにしている。
【0023】
このようにして温度校正を行ったCCDカメラ5を用いて、出銑口1aから流出した出銑流2の画像を撮像する。本実施形態では、640×480画素のCCD(Charge Coupled Devices)を有するCCDカメラ5で、約0.4mmの分解能で出銑流を観察した。撮像時の露光時間は、前述したように1/10000秒である。撮像された出銑流2の画像のデータは、画像処理装置6に入力される。画像処理装置6は、入力した出銑流2の画像のデータから、濃度ヒストグラムを算出する。
【0024】
図2は、CCDカメラ5を用いて撮像された出銑流2の画像(図2(a))と、その画像における濃度ヒストグラム(図2(b))との一例を示した図である。尚、出銑流2の直径は、大凡100mmである。
図2(a)に示すような出銑流2の画像21について、画素毎の濃度を濃度階調に分解したものを横軸にし、その濃度階調毎の画素数を縦軸にしたものが、図2(b)に示す濃度ヒストグラム22となる。図2(b)に示す濃度ヒストグラム22において、濃度レベルの低い部分に出現している濃度分布23は、出銑流2の画像21における背景の画像21aに起因するものである。濃度レベルの高い部分には2つの濃度分布24、25が出現しており、これら2つの濃度分布24、25のうち、濃度レベルの低い方の濃度分布24は、溶銑の画像21bに起因するものであり、濃度レベルの高い方の濃度分布25は、溶融スラグ21cの画像に起因するものである。
【0025】
尚、溶銑及び溶融スラグの濃度レベルが1点に集中せずに分布を有する理由としては、例えば以下のことが挙げられる。第1に、炉内湯溜りの温度に分布やむらがあることが考えられる。第2に、流出する際にたまたま出銑流2の表面に存在する時間が長い流れ成分は、出銑口内壁や大気との接触により、瞬間的かつ局所的に温度低下することにより濃度レベルが下がることが考えられる。第3に、乱流となっている出銑流2の表面における波立ちの谷間で生じる放射光の多重反射によって見かけの放射率が高くなることにより、濃度レベルが大きくなることが考えられる。
【0026】
出銑流2に含まれる溶銑及び溶融スラグの比率や、出銑流2の流出量は、時々刻々変動する。そこで、出銑状態が異なる複数の出銑流の画像を撮像して濃度ヒストグラムの様子を見たところ、例えば図3に示すように、溶銑と溶銑スラグとの比率に対応して、両者の分布の形状も変化することが確認された。具体的に、図3(a)に示す濃度ヒストグラム31では、溶銑に起因する濃度分布32のピークが、溶融スラグに起因する濃度分布33のピークよりも大きくなっているのに対し、図3(b)に示す濃度ヒストグラム34では、溶融スラグに起因する濃度分布36のピークが、溶銑に起因する濃度分布35のピークよりも大きくなっている。
【0027】
以上のような濃度ヒストグラムにおいて、本願発明者らは以下のような知見を得た。
第1に、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMは、出銑流2の画像の分布形状には無関係であることが明らかになった。
【0028】
第2に、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMと、溶銑の温度との関係を、浸漬消耗型熱電対プローブを試験的に出銑流2に挿入して溶銑の温度を測定することによって調べたところ、溶銑の温度が高くなると、溶銑に起因するピークでの濃度値PMが大きくなる(画像21が明るくなる)ことが明らかになった。
第3に、CCDカメラ5が観測する可視光波長帯域での溶銑の溶射率で放射率補正を行うことにより、溶銑に起因するピークでの濃度値PMを用いて、溶銑の温度を計算することができることが明らかになった。
【0029】
第4に、前述した溶銑に起因するピークでの濃度値PMは、出銑流2を取り囲む周囲物体から発せられる反射光による影響を受けているので、この影響を補正することにより、溶銑の温度をより正確に計算することができることが明らかになった。以下、この第4の知見について、詳細に説明する。
【0030】
図4に、出銑流2を取り囲む周囲物体から発せられる反射光の様子の一例を示す。
出銑流2は1500℃以上の高温であるのに対し、出銑流2を取り囲む周囲物体7は常温である。よって、出銑口1a付近で熱放射光52を自ら発しているのは、出銑流2のみである。
【0031】
図4に示すように、出銑流2を取り囲む周囲物体7は、出銑流2から発せられる熱放射光52によって照らされて明るくなり、反射光(外乱光)51を発する。この反射光51の少なくとも一部は、出銑流2に到達する。そして、出銑流2に到達した反射光の少なくとも一部の光53が溶銑の表面で反射し、この反射した光53が雑音光としてCCDカメラ5に向かう。そして、この雑音光53は、出銑流2が発する熱放射光52に重畳され、背光雑音(迷光雑音)としてCCDカメラ5に取り込まれる。そうすると、濃度ヒストグラムにおいて、溶銑に起因するピークでの濃度値PMが、溶銑における実際の濃度値PTよりも大きくなる。
【0032】
図4(a)に示す出銑流2aと、図4(b)に示す出銑流2bは、温度が同じであって太さ(流径)が異なるものとする。図4(b)に示すように出銑流2bが太くなると、出銑流2bから発せられる熱放射光52d〜52hは、図4(a)に示す熱放射光52a〜52cより大きくなり、周囲物体7がより明るく照らされる。よって、図4(a)に示す反射光51a〜51cよりも、図4(b)に示す反射光51d〜51hが大きくなり、CCDカメラ5に取り込まれる雑音光53bも、図4(a)に示す雑音光53aより大きくなる(すなわち、背光雑音が大きくなる)。従って、出銑流2bが太くなるほど、背光雑音が増大し、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMが、溶銑における実際の濃度値PTよりも大きくなり、測定誤差も大きくなる。
【0033】
また、反射光51の大きさは、出銑流2の太さの他に、出銑流2の温度や、溶銑と溶融スラグとの比率等にも依存する。よって、出銑流2の温度や、溶銑及び溶融スラグの比率等も、出銑流2の太さと同様に測定誤差に影響を与える。
【0034】
以上のように、背光雑音による測定誤差は一定ではなく、出銑過程により変動する。
出銑流2の画像21に含まれる溶銑の画像21bの濃度値から放射測温の原理で溶銑の温度を正確に求めることは困難である。前述したように、出銑流2の太さ、出銑流2の温度、及び溶銑と溶融スラグとの比率等の種々の要因によって背光雑音の大きさが異なるので、出銑流2の画像21に含まれる溶銑の画像21bの濃度値に、背光雑音がどの程度含まれているのかを正確に把握して測温値を補正することが困難だからである。
【0035】
そこで、本実施形態では、以下のようにして溶銑における実際の濃度値PTを求め、求めた濃度値PTを用いて溶銑の温度を求めるようにしている。
まず、画像処理装置6は、前述したようにしてCCDカメラ5で撮像された出銑流2の画像のデータを入力し、入力した出銑流2の画像のデータから、濃度ヒストグラムを算出する。そして、画像処理装置6は、算出した濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMを求める。
濃度ヒストグラムにおける背景に起因する濃度分布は、常にほぼ同一形状である。背景は、常温近傍で温度変化がないからである。そこで、本実施形態では、以下のようにして溶銑に起因するピークでの濃度値PMを求めるようにしている。
【0036】
まず、図2に示すように、背景の画像21aに起因する濃度分布23における高濃度側(高輝度側)の裾野部分の所定の濃度レベルに、予め始点Kを指定しておく。そして、始点Kから高濃度側(高輝度側)の方向にピーク検出処理を実行する。このピーク検出処理では、例えば、隣り合う濃度レベルで画素数(度数)の多寡を比較する処理を逐次進めることにより最初に得られた画素数の変曲点を、溶銑に起因するピークとし、そのピークでの濃度値を、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMとする処理が行われる。
【0037】
このようにして、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMを求めた後に、画像処理装置6は、出銑流2の画像に含まれる背光雑音による濃度値PNを求める(推定する)。
図5は、CCDカメラ5を用いて撮像された出銑流2の画像に対して設定された外乱光測光エリアの例を示した図である。この外乱光測光エリア内の画像の濃度値を用いることにより、背光雑音による濃度値PNが求められる。
図5(a)は、流径が比較的細い出銑流2(出銑初期)の画像61aに対して設定された外乱光測光エリア62を示し、図5(b)は、流径が比較的太い出銑流2(出銑後期)の画像61bに対して設定された外乱光測光エリア62を示している。
【0038】
本実施形態では、図5(a)、(b)に示すように、外乱光測光エリア62は、溶銑の画像63a、63b及び溶融スラグの画像64a、64bに重ならないように、画像61a、61b内の所定の位置に設定される。具体的に本実施形態では、外乱光測光エリア62を、画像61a、61bの上端部付近に設定するようにしている。また、本実施形態では、図5(a)、(b)に示すように、出銑流2の状態に関わらず、同じ外乱光測光エリア62を画像61a、61bに対して設定するようにしている。
【0039】
画像処理装置6は、以上のようにして設定した外乱光測光エリア62内の平均濃度PAを計算する。そして、計算した外乱光測光エリア62内の平均濃度PAと、溶銑の反射率Rとを用いて、以下の(1)式により、背光雑音による濃度値PNを求める。
N=R×PA ・・・(1)
ここで、溶銑の反射率Rは、物理的に検証されている値を使用する。具体例を挙げると、溶銑の反射率Rは約0.6である。
【0040】
次に、画像処理装置6は、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMと、背光雑音による濃度値PNとを用いて、以下の(2)式により、溶銑における実際の濃度値PTを求める。
T=PM−PN ・・・(2)
【0041】
次に、画像処理装置6は、CCDカメラ5に対して黒体炉を用いて行われた温度校正の結果(例えば前述した濃度・温度変換式)を用いて、溶銑における実際の濃度値PTから、溶銑における見かけの温度TMを算出する。
前述したように、CCDカメラ5の温度校正では、黒体放射輝度と、その黒体放射輝度の物体をCCDカメラ5で撮像して得られた画像の濃度との関係を求めている。ところが、実際の溶銑は黒体ではなく1未満の放射率を有しており、黒体と異なる放射率を有している。よって、前述したように算出した溶銑における見かけの温度TMは、この放射率の相違に起因する誤差が生じている。そこで、この放射率の相違による影響を考慮して、溶銑における見かけの温度TMから溶銑における実際の温度TTを求める演算を行うのが好ましい。
【0042】
具体的に、溶銑における実際の温度TTと、溶銑における見かけの温度TMとの関係は、理論的に以下の(3)式で表される。
ln(ε)=C2/λ・(1/TT−1/TM) ・・・(3)
ここで、εは溶銑の放射率であり、λは観測波長(波長選択フィルタの透過波長)である。C2はプランクの第2定数(=1.44×104[μm・K])である。このような放射率に対する温度補正演算は放射測温で一般的に行われる。
画像処理装置6は、(3)式を用いて、溶銑における実際の温度TTを求め、求めた温度TTを表示する等してユーザに報知する。以上のような処理をリアルタイムで繰り返して実行することにより、出銑中の溶銑の温度を連続的に測定してユーザに報知することができる。
以上のように、本実施形態では、CCDカメラ5と画像処理装置6とを用いて、溶銑温度測定システムが構成されることになる。
【0043】
次に、図6のフローチャートを参照しながら、溶銑温度測定システムに設けられた画像処理装置6の動作の一例を説明する。
まず、ステップS1において、出銑口1aから流出した出銑流2の画像を、CCDカメラ5から入力するまで待機する。
出銑口1aから流出した出銑流2の画像を入力すると、ステップS2に進み、入力した出銑流2の画像のデータから、濃度ヒストグラムを算出する。そして、算出した濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMを、前述したピーク検出処理を行って求める。
【0044】
次に、ステップS3において、ステップS1で入力した画像に対して、外乱光測光エリア62を設定し、設定した外乱光測光エリア62の平均濃度PAを計算する。尚、本実施形態では、外乱光測光エリア62の形状、大きさ、及び位置は、予め定められているものとする。
次に、ステップS4において、ステップS3で計算した外乱光測光エリア62内の平均濃度PAに、溶銑の反射率Rを乗じて、背光雑音による濃度値PNを求める((1)式を参照)。
【0045】
次に、ステップS5において、ステップS2で求めた、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMから、ステップS4で求めた、背光雑音による濃度値PNを減じて、溶銑における実際の濃度値PTを求める((2)式を参照)。
次に、ステップS6において、CCDカメラ5に対して行われた温度校正のデータ結果(例えば黒体炉の黒体放射輝度をCCDカメラ5で撮像して測定対象温度と画像濃度との関係を実測して決定した濃度・温度変換式のデータ)を用いて、溶銑における実際の濃度値PTから、溶銑における見かけの温度TMを算出する。さらに、前述した(3)式を用いて放射率補正演算を実行して、溶銑における実際の温度TTを求める。放射率の値は予め指定しておく。求めた溶銑温度TTの時系列データを表示する。
【0046】
次に、ステップS7において、測定終了指示がユーザによりなされたか否かを判定する。この判定の結果、測定終了指示がユーザによりなされていない場合には、測定終了指示がなされるまで、ステップS1〜S7を繰り返し行う。
【0047】
図7は、本実施形態の手法で求めた溶銑の温度と、浸漬消耗型熱電対プローブを用いて測定した溶銑の温度と、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMから求めた溶銑の温度とを示した図である。
ここで、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMから求めた溶銑の温度とは、(1)式及び(2)式の計算を行わずに、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMから、溶銑における見かけの温度を算出し、算出した温度を(3)式に代入して求めた溶銑の温度を言う。
【0048】
図7において、実線は、本実施形態の手法で求めた溶銑の温度を示し、黒丸(●)は、浸漬消耗型熱電対プローブを用いて測定した溶銑の温度を示し、破線は、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMから求めた溶銑の温度を示す。
ここで、浸漬消耗型熱電対プローブを用いた測定は、出銑口1a付近の出銑流2に浸漬消耗型熱電対プローブを浸漬させて溶銑の温度を直接的に測定しているので、測定される温度の信頼性は極めて高い。
【0049】
図7に示すように、本実施形態のように背光雑音の画像への影響の補正を行って溶銑の温度を求めた場合の方が、その補正を行わずに溶銑の温度を求めた場合よりも、浸漬消耗型熱電対プローブによる測定温度(真の温度)に近い温度を求めることができ、当然ながら、浸漬消耗型熱電対プローブのように間欠的な測定ではなく、連続的な測定を行うことができる。
【0050】
尚、本実施形態では、以上のような処理を行う画像処理装置6として、画像入出力ボードを備えたパソコンを使用している。画像処理装置6のハードウェア構成は、例えば、図8に示すようなものになる。
【0051】
図8において、画像処理装置6は、CPU101と、ROM102と、RAM103と、キーボード(KB)104のキーボードコントローラ(KBC)105と、CRTディスプレイ(CRT)106のCRTコントローラ(CRTC)107と、ハードディスク(HD)108及びフレキシブルディスク(FD)109のディスクコントローラ(DKC)110と、画像入出力ボード(PIB)111のコントローラ(IC)112とが、システムバス113を介して互いに通信可能に接続された構成としている。
【0052】
CPU101は、ROM102或いはHD108に記憶されたソフトウェア、或いはFD109より供給されるソフトウェアを実行することで、システムバス103に接続された各構成部を総括的に制御する。
すなわち、CPU101は、所定の処理シーケンスに従った処理プログラムを、ROM102、或いはHD108、或いはFD109から読み出して実行することで、前述した処理動作を実現するための制御を行う。
【0053】
RAM103は、CPU101の主メモリ或いはワークエリア等として機能する。
KBC105は、KB104や図示していないポインティングデバイス等からの指示入力を制御する。
【0054】
CRTC107は、CRT106の表示を制御する。
DKC110は、ブートプログラム、種々のアプリケーション、編集ファイル、ユーザファイル、ネットワーク管理プログラム、及び本実施の形態における所定の処理プログラム等を記憶するHD108及びFD109とのアクセスを制御する。
IC112は、PIB111に接続されたCCDカメラ5等の装置との間で行われる画像データの入出力を制御する。
【0055】
以上のように本実施形態では、CCDカメラ5で撮像された出銑流2の画像のデータから濃度ヒストグラムを算出し、算出した濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMを求める。そして、出銑流2の画像61のうち、溶銑の画像63及び溶融スラグ64の画像に重ならない位置に設定した外乱光測光エリア62内の平均濃度PAを求め、求めた平均濃度PAに溶銑の反射率Rを乗じて、背光雑音による濃度値PNを求める。さらに、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMから、背光雑音による濃度値PNを減算して溶銑における実際の濃度値PTを求め、求めた溶銑における実際の濃度値PTを用いて、溶銑における温度を求める。
【0056】
このように、CCDカメラ5で撮像された出銑流2の画像のデータから濃度ヒストグラムを算出して、溶銑に起因する濃度分布と、溶融スラグに起因する濃度分布とを明確に分けるようにしたので、溶銑と溶融スラグが未知の比率で混在した状態であっても、溶銑の温度を容易に且つ正確に求めることができる。
【0057】
また、出銑流2の画像61内の位置であって、溶銑の画像63及び溶融スラグ64の画像に重ならない位置に設定した外乱光測光エリア62内の平均濃度PAに、溶銑の反射率Rを乗じて、背光雑音による濃度値PNを求めるようにしたので、溶銑の画像63及び溶融スラグの画像64に、背光雑音による影響がどの位存在しているのかを、出銑状態に関わらず定量的に把握することができる。よって、溶銑の温度をより一層容易に且つ正確に求めることができる。
【0058】
さらに、出銑口1a付近に装置を設置せずに、出銑口1aから離れた位置に配設されたCCDカメラ5で撮像された出銑流2の画像を用いて溶銑の温度を求めるようにしたので、溶銑及び溶融スラグの熱放射や飛散等を、装置が受けてしまうことを防止することができ、装置の環境対策を比較的容易に行うことができる。
そして、以上のようにして求めた溶銑の温度を連続的に得ることができるので、求めた温度の変化や推移から、高炉1の内部の熱状況を従来よりも迅速に且つ正確に把握することができ、高炉1の操業をより安定させることができる。
【0059】
尚、本実施形態では、CCDカメラ5の分解能を約0.4mmとし、露光時間を1/10000秒としたが、CCDカメラ5の分解能及び露光時間は、これらに限定されない。ただし、CCDカメラ5の分解能は1mm以下が好ましく、露光時間は1/5000秒以下であることが好ましい。このように、CCDカメラ5の分解能を1mm以下にするのは、溶融スラグの細部に存在する、2mm程度のサイズの線状又は点状の部分を捉えるためである。また、露光時間は1/5000秒以下にするのは、高速で且つ乱流状態で移動する出銑流2を、像流れすることなく静止させて観察することができるようにするためである。
【0060】
具体的に、CCDカメラ5の分解能を1mm以下にすると共に、露光時間を1/5000秒以下にすると、例えば、図9(a)に示すように、濃度ヒストグラム91に、溶銑を表す部分のピーク92と、溶融スラグを表す部分のピーク93とが明確に存在する。これに対し、CCDカメラ5の分解能を1mm以下にすると共に、露光時間を1/5000秒以下にしないと、図9(b)に示すように、濃度ヒストグラム91に、溶銑を表す部分のピーク92と、溶融スラグを表す部分のピーク93とが個別に存在しなくなり、溶銑の温度を求めることができなくなる虞がある。よって、CCDカメラ5の分解能は1mm以下が好ましく、露光時間は1/5000秒以下であることが好ましい。
【0061】
また、本実施形態では、CCDカメラ5を用いて出銑流2の画像を撮像するようにしたが、必ずしもCCDカメラ5を用いる必要はない。例えば、CCD以外のセンサ(例えばCMOSセンサ)を撮像素子として用いたカメラ、銀塩フィルムを用いたスチールカメラ等の撮像装置をCCDカメラ5の代わりに用いることができる。
【0062】
さらに、本実施形態では、出銑流2の画像(熱放射輝度分布)を、2次元の濃度分布を示す静止画像として撮像するようにしたが、例えば1次元のリニアアレイカメラを用いて、1次元の濃度分布を示す画像を撮像し、撮像した1次元の濃度分布を示す画像から濃度ヒストグラムを算出して、前述したようにして溶銑の温度を求めるようにしてもよい。
また、1次元のリニアアレイカメラで時間的に連続して露光時間が短い高速シャッターで撮像を繰り返し、カメラの素子配列方向と時間方向とを直行させて2次元の濃度分布を示す画像を形成し、形成した2次元の濃度分布を示す画像から濃度ヒストグラムを算出して、前述したようにして溶銑の温度を求めるようにしてもよい。
【0063】
さらに、出銑流2の狭い1点のみを観察するビームスポット撮像装置をCCDカメラ5の代わりに用いてもよい。このビームスポット撮像装置を用いて、時間的に連続して露光時間が短い高速シャッターで撮像を繰り返し、時間方向に1次元の濃度分布を示す画像を形成し、形成した1次元の濃度分布を示す画像から濃度ヒストグラムを算出して、前述したようにして溶銑の温度を求めるようにしてもよい。
【0064】
また、前述したように、波長選択フィルタを用いれば、温度校正を容易に行うことができ好ましいが、必ずしも波長選択フィルタを用いる必要はない。このように波長選択フィルタを用いない場合には、CCDカメラ5等の撮像装置の検出波長帯域における撮像装置の分光感度特性、溶銑の分光放射率、ならびに黒体放射の分光特性から、溶銑の実効放射率を求めるようにする。具体的には、撮像装置の受光感度範囲内において、撮像装置の分光特性と熱放射(黒体放射)の分光特性で波長毎に重み付けした上で波長平均した溶銑の放射率を用いるようにするのが好ましい。また、出銑流2そのものを用いて温度校正を行うようにしてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、算出した濃度ヒストグラムをそのまま用いてピーク検出処理を行うようにしたが、予め濃度ヒストグラムの平滑化処理を行い、平滑化処理を行った濃度ヒストグラムを用いてピーク検出処理を行うようにしてもよい。このようにすれば、濃度ヒストグラムの波形に細かい雑音が乗っている場合でも、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMを正確に求めることが可能になる。
【0066】
また、出銑流2における溶銑の温度は、概ね1450〜1600℃の範囲で変動する。よって、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMの存在範囲もある程度予測することができる。そこで、予め予測した存在範囲内でピーク検出処理を行うようにしてもよい。このようにすれば、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMを迅速に求めることが可能になる。
【0067】
さらに、外乱光測光エリア62の位置は、溶銑63a、63bの画像及び溶融スラグの画像64a、64bに重ならない位置であって、画像61a、61b内の位置であれば、図5に示した位置に限定されない。
また、外乱光測光エリア62の大きさ及び形状は、外乱光測光エリア62の平均濃度を適切に求めることができれば、どのようなものであってもよいが、外乱光測光エリア62の平均濃度から、背光雑音による濃度値PNを求めるので、外乱光測光エリア62の大きさは、可及的に大きい方が好ましい。
【0068】
さらに、本実施形態では、出銑流2の状態に関わらず、同じ外乱光測光エリア62を画像61a、61bに対して設定するようにしたが、出銑状態に応じて異なる外乱光測光エリアを設定するようにしてもよい。
また、画像処理装置6が有する機能を複数の装置に分担させて行わせるようにしてもよい。
【0069】
(本発明の他の実施形態)
前述した実施形態の機能を実現するべく各種のデバイスを動作させるように、該各種デバイスと接続された装置あるいはシステム内のコンピュータに対し、前記実施形態の機能を実現するためのソフトウェアのプログラムコードを供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUあるいはMPU)に格納されたプログラムに従って前記各種デバイスを動作させることによって実施したものも、本発明の範疇に含まれる。
【0070】
また、この場合、前記ソフトウェアのプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそのプログラムコードをコンピュータに供給するための手段、例えば、かかるプログラムコードを格納した記録媒体は本発明を構成する。かかるプログラムコードを記憶する記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0071】
また、コンピュータが供給されたプログラムコードを実行することにより、前述の実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)あるいは他のアプリケーションソフト等と共同して前述の実施形態の機能が実現される場合にもかかるプログラムコードは本発明の実施形態に含まれることは言うまでもない。
【0072】
さらに、供給されたプログラムコードがコンピュータの機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに格納された後、そのプログラムコードの指示に基づいてその機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合にも本発明に含まれることは言うまでもない。
【0073】
なお、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態を示し、溶銑温度測定システムの構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を示し、CCDカメラを用いて撮像された出銑流の画像と、その画像における濃度ヒストグラムとの一例を示した図である。
【図3】本発明の実施形態を示し、溶銑と溶銑スラグとの比率が異なる場合の出銑流の画像の一例を示した図である。
【図4】本発明の実施形態を示し、出銑流を取り囲む周囲物体から発せられる反射光の様子の一例を示した図である。
【図5】本発明の実施形態を示し、CCDカメラを用いて撮像された出銑流2の画像に対して設定された外乱光測光エリアの例を示した図である。
【図6】本発明の実施形態を示し、溶銑温度測定システムに設けられた画像処理装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態を示し、本実施形態の手法で求めた溶銑の温度と、浸漬消耗型熱電対プローブを用いて測定した溶銑の温度と、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値から求めた溶銑の温度とを示した図である。
【図8】本発明の実施形態を示し、画像処理装置6のハードウェア構成の一例を示した図である。
【図9】本発明の実施形態を示し、撮像条件が異なる場合の濃度ヒストグラムの一例を示した図である。
【符号の説明】
【0075】
1 高炉
1a 出銑口
2 出銑流
3 出銑桶
4 桶カバー
5 CCDカメラ
6 画像処理装置
21 出銑流の画像
22、31、34 濃度ヒストグラム
23 背景に起因する濃度分布
24、32、35 溶銑に起因する濃度分布
25、33、36 溶融スラグに起因する濃度分布
51、53 反射光(外乱光)
52 熱放射光
61 出銑流の画像
62 外乱光測光エリア
63 溶銑の画像
64 溶融スラグの画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布が、1次元又は2次元の濃度分布を示す画像として撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像のうち、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度を求める溶銑濃度導出手段と、
前記出銑口から流出した溶融物の周囲にある物体が、前記溶融物の放射光により照らされて反射光を発することにより前記溶融物から発せられる雑音光に関わる画像の濃度を求める外乱濃度導出手段と、
前記溶銑濃度導出手段により求められた溶銑を表す画像の濃度と、前記外乱濃度導出手段により求められた雑音光に関わる画像の濃度とを用いて、前記溶融物に含まれる溶銑の温度を算出する溶銑温度算出手段とを有することを特徴とする高炉出銑温度測定システム。
【請求項2】
前記外乱濃度導出手段は、前記撮像された画像のうち、前記溶融物を表す画像と異なる領域の画像の濃度を用いて、前記溶融物から発せられる雑音光に関わる画像の濃度を求めることを特徴とする請求項1に記載の高炉出銑温度測定システム。
【請求項3】
前記外乱濃度導出手段は、前記撮像された画像のうち、前記溶融物を表す画像と異なる領域の画像の平均濃度に、前記溶融物に含まれる溶銑の反射率を乗じて、前記溶融物から発せられる雑音光に関わる画像の濃度を求めることを特徴とする請求項2に記載の高炉出銑温度測定システム。
【請求項4】
前記溶銑濃度導出手段は、前記撮像された画像の濃度と画素数との関係を示す濃度ヒストグラムを算出し、算出した濃度ヒストグラムのうち、溶銑相当部分における濃度ヒストグラムがピークを示す点での濃度値を、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度として求めることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の高炉出銑温度測定システム。
【請求項5】
前記撮像手段の分解能が1mm以下であり、
前記撮像手段における撮像時の露光時間が1/5000秒以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の高炉出銑温度測定システム。
【請求項6】
前記溶銑温度算出手段は、前記溶銑濃度導出手段により求められた溶銑を表す画像の濃度から、前記外乱濃度導出手段により求められた雑音光に関わる画像の濃度を減算した濃度値と、予め求めた温度校正の結果とを用いて、前記溶融物に含まれる溶銑の温度を算出することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の高炉出銑温度測定システム。
【請求項7】
高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布を、1次元又は2次元の濃度分布を示す画像として、撮像手段により撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップにより撮像された画像のうち、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度を求める溶銑濃度導出ステップと、
前記出銑口から流出した溶融物の周囲にある物体が、前記溶融物の放射光により照らされて反射光を発することにより前記溶融物から発せられる雑音光に関わる画像の濃度を求める外乱濃度導出ステップと、
前記溶銑濃度導出ステップにより求められた溶銑を表す画像の濃度と、前記外乱濃度導出ステップにより求められた雑音光に関わる画像の濃度とを用いて、前記溶融物に含まれる溶銑の温度を算出する溶銑温度算出ステップとを有することを特徴とする高炉出銑温度測定方法。
【請求項8】
高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布が、1次元又は2次元の濃度分布を示す画像として、撮像手段により撮像されると、その撮像された画像のうち、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度を求める溶銑濃度導出ステップと、
前記出銑口から流出した溶融物の周囲にある物体が、前記溶融物の放射光により照らされて反射光を発することにより前記溶融物から発せられる雑音光に関わる画像の濃度を求める外乱濃度導出ステップと、
前記溶銑濃度導出ステップにより求められた溶銑を表す画像の濃度と、前記外乱濃度導出ステップにより求められた雑音光に関わる画像の濃度とを用いて、前記溶融物に含まれる溶銑の温度を算出する溶銑温度算出ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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