説明

高炉炉頂ガス清浄設備及び高炉炉頂ガス清浄方法

【課題】高炉炉頂ガスの熱エネルギーを有効に回収し、発電量を増加させるとともに、乾式集塵機での結露を防止することができる高炉炉頂ガス清浄設備及び高炉炉頂ガス清浄方法を提案する。
【解決手段】TRT8の電力回収効率を大きく左右している乾式集塵機3の温度降下・制約を回避するべく、乾式集塵機3前で熱交換器5にて高炉炉頂ガスから熱媒で熱回収し、集塵後に熱交換器6にて復熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉炉頂ガス清浄設備及び高炉炉頂ガス清浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高炉には、高炉炉頂ガスの持つ温度及び圧カエネルギーを電力として回収するために、炉頂圧力発電機(TRT)が設置されるとともに、高炉炉頂ガス中のダストを除去する集塵設備が設置されている。従来の集塵設備には乾式集塵機と湿式集塵機の2種類がある。
【0003】
図6は湿式集塵機の例を示し、高炉1から高炉炉頂ガスを1段目の重力沈降式除塵器2で除塵し、2段目の湿式集塵機4で集塵し、TRT8で発電する。10はセプタム弁である。
【0004】
湿式集塵機においては、高炉炉頂ガス中のダスト集塵のための散水によりTRT入側の高炉炉頂ガス温度が低下し、TRTの発電量が低下している。そこで、TRT入側の高炉炉頂ガス温度の低下を抑えてTRT発電量を増加するために、図7に示すように、1段目に重力沈降式除塵器2を配置し、2段目に湿式集塵機4とこれに並列に乾式集塵機3を設置して、高炉操業安定時に、高炉炉頂ガスを乾式集塵機3で除塵することが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−249808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乾式集塵機は電力回収効率を高めるために考えられたシステムであるが、高炉吹抜時等により高炉炉頂ガス温度が乾式集塵機のろ布本体の耐熱温度を超えると、ろ布保護のために炉頂散水により強制的にガス温度を下げている。その結果、TRT入側の高炉炉頂ガス温度が低下してTRTの発電能力にロスが発生している。
【0006】
また、休風立上時のガス温度が低い時に高炉炉頂ガス中の水分がろ布に結露しダストの付着、固化が発生して乾式集塵機を運転できないために結露対策として湿式集塵機を並列に設置することから、システムが複雑となり低コスト化ができないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、現状のTRT設備では未回収となっている温度エネルギーを有効に回収し、発電量を増加させるとともに、乾式集塵機での結露を防止することができる高炉炉頂ガス清浄設備及び高炉炉頂ガス清浄方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、高炉炉頂ガスのTRT入口温度を高めることで、回収電力を増加できることに着目して、TRT設備の電力回収効率を大きく左右している集塵設備の温度降下・制約を回避するべく、集塵設備前で高炉炉頂ガスから熱媒で熱回収し、集塵後に復熱することに特徴がある。
【0009】
本発明では、乾式集塵機のガス入側とガス出側にそれぞれ熱交換器を配設するとともに、それらの熱交換器間に蓄熱体を設け、乾式集塵機前の熱交換器で高炉炉頂ガスの熱エネルギーを回収して蓄熱体へ蓄熱することで高炉炉頂ガス温度を乾式集塵機ろ布本体耐熱温度以下とし、蓄熱体で蓄えた熱エネルギーにより乾式集塵機後の熱交換器で再度、高炉炉頂ガスを加熱する。
【0010】
乾式集塵機は、高炉休風立上時に高炉炉頂ガス温度が低い場合、高炉炉頂ガス中の水分が乾式集塵機のろ布に結露が発生し、ダストが付着・固化することで運転に支障をきたすが、休風前に蓄熱体に蓄えた熱で乾式集塵機前の熱交換器で高炉炉頂ガスを予熱することにより結露を防止することができる。
【0011】
また、熱媒を冷却する冷却装置を熱媒の循環路に設けることにより、高炉炉頂ガス温度が吹き抜け時に異常上昇した時に熱媒を冷却して沸点を超えないようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、乾式集塵機前後に熱交換器とその熱交換器間に蓄熱体を設置することで、高炉炉頂ガスのTRT入口温度を上昇させることにより、TRT発電量を上昇させることができる。
【0013】
また、高炉炉頂ガスの吹抜け等による高炉炉頂ガスの高温時においては、高炉炉頂ガスを熱交換器で冷却するとともに、加熱された熱媒により蓄熱体に蓄熱し、高炉休風立上時には、蓄熱体で加熱された熱媒をガス入側の熱交換器に循環させることにより、低温の高炉炉頂ガス中の水分が熱交換器のチューブや乾式集塵機のろ布に結露するのを防止することが可能となる。
【0014】
また、高炉炉頂ガスを熱交換器で冷却することにより乾式集塵機のみで高炉炉頂ガスの集塵が可能となることから湿式集塵機そのものが不用となり、設備費の低価格化、短工事化が可能となる。
【0015】
また、熱媒の冷却装置を熱媒の循環路に設けて、高温の高炉炉頂ガスにより熱媒温度が異常上昇した時に、熱媒を冷却装置により冷却することで熱媒が沸点を超えないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は本発明の高炉炉頂ガス清浄設備の一実施例を示す図である。
【0018】
図1において、高炉1から排出された高炉炉頂ガスは、重力沈降式の除塵器2に導入される。除塵器2の出側には高炉炉頂ガスの温度を計測する温度測定器(図示せず)を配設し、高炉炉頂ガスの温度により熱媒循環路の弁の開閉及び流量の制御を行う。除塵器2から排出された高炉炉頂ガスは乾式集塵機3へ送られて集塵された後、TRT8へ送られ発電に供される。10はセプタム弁である。
【0019】
本発明の高炉炉頂ガス清浄設備では、乾式集塵機3のガス入側及びガス出側にそれぞれ熱交換器5,6が配置され、熱交換器5,6には熱媒が熱媒循環ポンプ9により循環される。熱交換器5,6の熱媒入側と熱媒出側はバイパス配管11,12が配設される。
【0020】
熱交換器5,6間の熱媒の循環路には蓄熱体7が配置されている。蓄熱体7は鋳物ブロックに複数の熱媒通路を形成して連通させ、この熱媒通路に熱媒を通すことにより鋳物ブロックに蓄熱する。蓄熱体7にはバイパス弁を有するバイパス配管が設けられる。
【0021】
乾式集塵機3のガス入側の熱交換器5で高炉炉頂ガスの熱回収をし、その熱を熱交換器5,6間に設置した蓄熱体7に蓄え、高炉炉頂ガス温度低下時には、蓄熱体7で蓄えておいた熱で加熱した熱媒を循環させることでその熱をガス出側の熱交換器6により高炉炉頂ガスに復熱する。
【0022】
次に、本発明の高炉炉頂ガス清浄方法について説明する。
【実施例1】
【0023】
図2は高炉炉頂ガス温度が乾式集塵機のろ布の耐熱温度以上の場合の熱媒の循環経路を示す図である。
【0024】
高炉炉頂ガスが乾式集塵機のろ布の耐熱温度(約180℃)以上で、且つ高炉炉頂装入装置の各機器保護のための炉頂散水開始温度(350℃に設定)以下の範囲の場合、高炉炉頂ガス温度が乾式集塵機3のろ布の耐熱温度を超えているので冷却する必要がある。そのため、乾式集塵機3のガス入側の熱交換器5に熱媒を通して高炉炉頂ガスを冷却して乾式集塵機3の布の耐熱温度(180℃)以下にする。熱交換器5で加熱された熱媒は蓄熱体7を通して蓄熱する。
【0025】
乾式集塵機3を出た高炉炉頂ガスは温度が低下しているので、発電量を増加させるため、乾式集塵機3のガス出側の熱交換器6へ蓄熱体7の蓄熱で加熱された熱媒を通して高炉炉頂ガスをTRT耐熱温度(約240℃に設定)を超えないように加熱し、約225℃まで温度を上げて、TRTへ導入して発電に供する。
【0026】
図3は熱交換器を備えた本発明と熱交換器を備えていない場合の発電量を示すグラフである。高温操業の本実施例により、発電量が増加することが分かる。また、熱交換器を備えていない場合は高炉炉頂ガスが約160℃で炉頂散水を開始するが、本発明では高炉炉頂ガスが180℃〜350℃においては、炉頂散水が不要となる。
【実施例2】
【0027】
図4は高炉休風立上時の熱媒の循環経路を示す図である。
【0028】
高炉休風立上時、高炉炉頂ガスは低温なので、乾式集塵機3のガス入側の熱交換器5を蓄熱体7に蓄えておいた熱により加熱された熱媒を通して熱交換器5を循環させる。
【0029】
乾式集塵機3のガス入側の熱交換器5を熱媒で加熱することにより、熱交換器5のチューブや乾式集塵器3のろ布に結露によるダストの付着・固化を防止することができる。
【実施例3】
【0030】
図5は高温の高炉炉頂ガスにより熱媒温度が異常上昇した場合の熱媒の循環経路を示す図である。
【0031】
高炉吹き抜け時の高温の高炉炉頂ガスにより熱媒温度が異常上昇した時には、熱媒を冷却装置13により冷却することで熱媒が沸点(約340℃)を超えないようにする。熱交換器5による冷却と熱交換器6による加熱は実施例2と同様に熱媒を循環させて行う。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の高炉炉頂ガス清浄設備の一実施例を示す図である。
【図2】高炉炉頂ガス温度が乾式集塵機のろ布の耐熱温度以上の場合の熱媒の循環経路を示す図である。
【図3】熱交換器を備えた本発明と熱交換器を備えていない場合の発電量を示すグラフである。
【図4】高炉休風立上時の熱媒の循環経路を示す図である。
【図5】高温の高炉炉頂ガスにより熱媒温度が異常上昇した場合の熱媒の循環経路を示す図である。
【図6】従来の湿式集塵機のみを設置した場合の概略図である。
【図7】従来の乾式集塵機と湿式集塵機を並列に設置した場合の概略図である。
【符号の説明】
【0033】
1:高炉
2:除塵器
3:乾式集塵機
4:湿式集塵機
5:ガス入側の熱交換器
6:ガス出側の熱交換器
7:蓄熱体
8:TRT
9:ポンプ
10:セプタム弁
11:バイパス配管
12:バイパス配管
13:冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉炉頂ガスを除塵器及び乾式集塵機を通して清浄後、炉頂圧力発電機に導入する炉頂ガス清浄設備において、
前記乾式集塵機のガス入側及びガス出側に、高炉炉頂ガスと熱媒との間で熱交換する熱交換器を配設したことを特徴とする高炉炉頂ガス清浄設備。
【請求項2】
前記ガス入側の熱交換器の熱媒出側配管をガス出側の熱交換器の熱媒供給側に連結し、前記ガス出側の熱交換器の熱媒出側配管を前記ガス入側の熱交換器の熱媒供給側に連結したことを特徴とする請求項1に記載の高炉炉頂ガス清浄設備。
【請求項3】
前記ガス入側の熱交換器の熱媒出側配管に蓄熱体を配設し、ガス出側の熱交換器の熱媒出側配管に循環ポンプを配設したことを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉炉頂ガス清浄設備。
【請求項4】
前記除塵器のガス出側に高炉ガスの温度を計測する温度計を配設したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高炉ガス清浄設備。
【請求項5】
ガス入側の熱交換器及びガス出側の熱交換器のそれぞれの熱媒入側配管と熱媒出側配管の途中にバイパス配管を配設したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高炉炉頂ガス清浄設備。
【請求項6】
ガス出側の熱交換器の熱媒出側と前記ガス入側の熱交換器の熱媒供給側を連結する配管に熱媒の冷却装置を配設したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高炉炉頂ガス清浄設備。
【請求項7】
高炉炉頂ガスを除塵器及び乾式集塵機を通過させて清浄後、炉頂圧力発電機に導入する高炉炉頂ガス清浄方法において、
前記乾式集塵機のガス入側及びガス出側にそれぞれ熱交換器を配設し、高炉ガスの温度が所定の温度以上で炉頂散水開始温度以下のときはガス入側の熱交換器で高炉炉頂ガスを冷却し、ガス出側の熱交換器で高炉炉頂ガスを加熱することを特徴とする高炉炉頂ガス清浄方法。
【請求項8】
高炉炉頂ガスを除塵器及び乾式集塵機を通過させて清浄後、炉頂圧力発電機に導入する高炉炉頂ガス清浄方法において、
前記乾式集塵機のガス入側及びガス出側にそれぞれ熱交換器を配設し、高炉炉頂ガスの温度が所定の温度以下のときはガス出側の熱交換器をバイパス配管に切替えることを特徴とする高炉炉頂ガス清浄方法。
【請求項9】
高炉炉頂ガスを除塵器及び乾式集塵機を通過させて清浄後、炉頂ガスタービンに導入する高炉炉頂ガス清浄方法において、
前記乾式集塵機のガス入側及びガス出側にそれぞれ熱交換器を配設し、高炉ガスの温度が炉頂散水開始温度を超えたときはガス入側の熱交換器で高炉炉頂ガスを冷却し、ガス出側の熱交換器をバイパス配管に切替えて冷却装置で冷却して循環させることを特徴とする高炉炉頂ガス清浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−46113(P2007−46113A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232246(P2005−232246)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】