説明

高熱伝導性の樹脂成形体

【課題】 より高い熱伝導性を示す樹脂成形体を提供すること。
【解決手段】 全芳香族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステル、全芳香族ポリ(エステル−アミド)、芳香族−脂肪族ポリ(エステル−アミド)、脂肪族ポリアゾメチン、および芳香族ポリエステル−カーボネートよりなる群から選ばれる一種以上の熱可塑性樹脂、ならびに20℃で10W/mK以上の熱伝導率を示す無機充填材からなる樹脂組成物を成形し、次いで加熱処理して得られる成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高熱伝導性の樹脂成形体に関する。更に詳しくは、半導体、抵抗体、コンデンサーなどの封止部品、基板、ハウジング等の電気・電子部品、熱交換器、軸受けなどの機器構成部品として有用な樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるエレクトロニクス技術の発達によって電気・電子機器の小型化・軽量化・高性能化が進むことに伴い、それらの材料も金属材料からプラスチックへの転換がすすんできている。電気・電子機器用の部品、例えば半導体、抵抗体、コンデンサー等の発熱部品の封止部品、基板、ハウジング等の部品、熱交換器、軸受けなどの機器構成部品等には機器内部の発熱に対する耐熱性とともに、放熱性の優れた部品が強く求められている。しかしながら、プラスチックは一般に熱伝導率の低い材料である。そのため、プラスチックに金属や熱伝導性の良好な無機充填材を添加して良熱伝導体とする方法が種々検討されている(特許文献1〜3)。
【0003】
【特許文献1】特開昭59−168042号公報
【特許文献2】特開昭61−91243号公報
【特許文献3】特開昭61−101513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、より高い熱伝導性を示す樹脂成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、全芳香族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステル、全芳香族ポリ(エステル−アミド)、芳香族−脂肪族ポリ(エステル−アミド)、脂肪族ポリアゾメチン、および芳香族ポリエステル−カーボネートよりなる群から選ばれる一種以上の熱可塑性樹脂、ならびに20℃で10W/mK以上の熱伝導率を示す無機充填材からなる樹脂組成物を成形し、次いで加熱処理して得られる成形体にかかるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の成形体は、高い熱伝導性を示すことから半導体、抵抗体、コンデンサーなどの封止部品、基板、ハウジング等の電気・電子部品、熱交換器、軸受けなどの熱放散性に優れた機器構成部品として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、全芳香族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステル、全芳香族ポリ(エステル−アミド)、芳香族−脂肪族ポリ(エステル−アミド)、脂肪族ポリアゾメチン、および芳香族ポリエステル−カーボネートよりなる群から選ばれる一種以上の熱可塑性樹脂であり、耐熱性に優れる。これらの中でも溶融時に光学的異方性を示すもの(液晶特性を示すもの)が成形加工性が優れるため更に好ましい。
【0008】
液晶特性を示す代表的な全芳香族ポリエステルとしては、下記米国特許に開示のものがある:3991013;3991014:4066620;4067852;4075262;4083829;4093959;4118372;4130545;4146702;4153779;4156070;4156365;4161470;4169933;4181792;4183895;4184996;4188476;4201856;4219461;4224433;4226970;4230817;4232143;4232144;4238598;4238599;4238600;4242496;4245082;4245084;4247514;4256624;4265802;4267304;4269965;4279803;4294955;4299756;4318841;4335232;4337190;4337191;4347349;4355134;4359569;4360658;4370466;4374228;4374261;4375530;および4377681。
液晶特性を示す代表的な芳香族−脂肪族ポリエステルは、W.J.Jacksonn,Jr.,H.F.KuhfussおよびT.F.Gray,Jr.、「自己強化熱可塑性ポリエステルX7G−A」、米国プラスチック工業会、強化プラスチック/複合材部会、第30回年次技術会議(1975)、セクシヨン17−D、ページ1〜4に開示されている、ポリエチレンテレフタレートとヒドロキシ安息香酸とのコポリマーである。このようなコポリマーはさらに次の文献にも開示されている:W.J.Jacksonn,Jr.,およびH.F.Kuhfuss、「液晶ポリマー:I.p−ヒドロキシ安息香酸コポリマーの製造と性質」、Journal of Polymer Science,Polymer Chemistry Edition,Vol.14,pp.2043−58(1976)。さらに、本出願人に譲渡された米国特許第4318842および4355133号も参照できる。
【0009】
液晶特性を示す代表的な全芳香族および芳香族−脂肪族ポリ(エステル−アミド)は、米国特許第4272625;4330457;4339375;4341688;4351917;4351918および4355132号に開示されている。
液晶特性を示す代表的な芳香族ポリアゾメチンは、米国特許第4048148および4122070号に開示されている。このようなポリマーの具体例としては、ポリ(ニトリロ−2−メチル−1,4−フエニレンニトリロエチリジン−1,4−フエニレンエチリジン);ポリ(ニトリロ−2−メチル−1,4−フエニレンニトリロメチリジン−1,4−フエニレンメチリジン);およびポリ(ニトリロ−2−クロロ−1,4−フエニレンニトリロメチリジン−1,4−フエニレンメチリジン)が挙げられる。
液晶特性を示す代表的な芳香族ポリエステル−カーボネートは米国特許第4107143;4284757;および4371660号に開示されている。
【0010】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂としては、得られる成形品の耐熱性及び電気特性が優れるため全芳香族ポリエステルが好ましく、更に好ましくは、下記式(I)

で示される構造単位、下記式(II)

(xは、1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニレン、および2,6−ナフチレンからなる群から選ばれる構造単位を表す)で示される構造単位、下記式(III)

で示される構造単位、および下記式(IV)

で示される構造単位が適宜エステル結合してなるものが得られる成形品の熱伝導率が高められるため好ましい。
【0011】
ここで構造単位(I)は、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位であり、液晶性発現の観点から、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する構造単位は、全構造単位に対して30〜80モル%が好ましく、より好ましくは40〜70モル%である。さらに好ましくは、50〜60モル%である。
【0012】
構造単位(II)は、ヒドロキノン、4,4’―ジヒドロキシビフェニルおよび2,6−ジヒドロキシナフタレンからなる群から選ばれる化合物に由来する構造単位からなり、耐熱性、コストの点で4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来することが好ましく、熱伝導性の点で2,6−ジヒドロキシナフタレンに由来することが好ましい。構造単位(II)としては、分子中に異なる2種以上が混じっていてもよい。
【0013】
構造単位(III)としては、例えば、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸に由来する構造単位などが挙げられ、構造単位(III)としては、分子中に異なる2種以上が混じっていてもよい。入手性、耐熱性の点から、2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来することが好ましい。
【0014】
構造単位(IV)は、テレフタル酸、イソフタル酸およびフタル酸からなる群から選ばれる化合物に由来する構造単位からなり、分子中に異なる2種以上が混じっていてもよい。耐熱性の観点からテレフタル酸またはテレフタル酸とイソフタル酸との混合物に由来することが好ましい。
【0015】
構造単位(II)と構造単位(III)および(IV)とのモル比は、(II)/{(III)+(IV)}=(95/100)〜(100/95)であることが好ましい。また、構造単位(III)と構造単位(IV)との比は、低線膨張性の観点から(III)/(IV)=(100/0)〜(50/50)であることが好ましい。さらに好ましくは(100/0)〜(70/30) である。(III)の割合が少ないと重合反応の取り扱いも難しくなる。
【0016】
該全芳香族ポリエステルは重合度が低すぎると、機械特性が顕著に低下するため、極限粘度は0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。また重合度が高すぎると、溶融粘度や溶液粘度が高くなり、加工性が低下するため、極限粘度は5以下、好ましくは3以下が好ましい。機械特性、加工性のバランスで、最も好ましい範囲は、0.5〜3である。
【0017】
該芳香族ポリエステルの合成方法としては、脂肪酸無水物を用いて水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合により重合する公知の方法を採用することができる。例えば、特開2002−220444号公報、特開2002−146003号公報に記載の方法等が挙げられる。得られる樹脂の熱安定性の点で、アシル化および脱酢酸重縮合時にN原子を2個以上含む複素環状化合物を添加する特開2002−146003号公報に記載の方法がより好ましい。
【0018】
本発明で用いられる液晶特性を示す熱可塑性樹脂を、他の液晶特性を示す熱可塑性樹脂または液晶特性を示さない熱可塑性樹脂と混合して用いるときは、得られる混合物が液晶特性を示す範囲で混合することが好ましい。
【0019】
本発明で使用される無機充填材は、樹脂組成物の熱伝導率を高めるため20℃で10W/mK以上の高熱伝導性を示す無機充填材を使用することが好ましい。20℃で10W/mKの熱伝導率を示す無機充填材としては、例えば窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ダイヤモンド、炭素、および金属を挙げることができ、これらからなる群より選ばれる高熱伝導性無機物が好ましく用いられ、さらに好ましくは窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、および酸化ケイ素からなる群より選ばれる高熱伝導性無機物が用いられる。無機充填材は、二種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
上記金属としては、周期表第4〜6族第4〜6周期にあたる金属、第13〜14族第2〜3周期にあたる金属(1989年IUPAC分類法)、Mg、Fe、およびPbの群から選ばれる1種の金属またはこれらの中から選ばれる2種類以上の合金が良好な熱伝導性を付与できるので好ましい。
【0021】
無機充填材の形状としては、特に限定されないが繊維状、粉末状などが挙げられる。繊維状の場合は、繊維径が0.1〜5.0μmでアスペクト比が3以上のものが好ましく、より好ましくは、繊維径が0.1〜5.0μmでアスペクト比が10以上のものである。繊維径が小さすぎると樹脂への混合が困難であるため好ましくない。また、繊維径が大きすぎると樹脂組成物のフィルムなどへの加工性に劣る。
【0022】
粉末状の場合の形状は、通常、粒径0.05〜300μm、好ましくは粒径0.1〜200μm、さらに好ましくは粒径0.1〜50μmの粒子状とするのがよい。粒径が大きすぎると樹脂組成物の表面を悪化させ、また粒径が小さすぎると熱伝導性の向上効果に劣り、また成形し難くなるため好ましくない。
【0023】
無機充填材の樹脂への配合量としては、目的とする熱伝導率、強度に応じて広い範囲から選択可能である。好ましくは樹脂100重量部に対して、5〜500重量部、更に好ましくは20〜400重量部の範囲で充填するのがよい。配合量が少ないと、熱伝導性の向上が乏しく、また、多すぎると生産性の面で困難且つ該樹脂組成物の成形物が脆いものになってしまう。
【0024】
本発明の成形体は用途に応じて、電気絶縁体または導電体とすることができる。絶縁体とするときには、上記の好ましい高熱伝導性無機物のうち窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素およびダイヤモンドから一種または二種以上が選択され、導電体とするときには、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭素、および金属の少なくとも一種を含む組み合わせとするとよい。
【0025】
本発明においては無機充填材の表面をカップリング剤で表面処理することにより、樹脂との界面の親和性、接合性および充填剤の疎水性を高めて用いることができる。該カップリング剤の処理量としては、通常、無機充填材の合計量100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは、0.5〜2重量部の割合で処理したものを用いるのが好ましい。処理量が少ないと樹脂と充填材の界面の親和性、接合性の向上効果が望めないため、該無機物の供給性、機械物性、熱伝導性の向上に寄与するところが少なく、該無機物の疎水性も向上せず、樹脂組成物の耐環境性も向上しない。また、処理量が多すぎると、それ以上の効果は望めないばかりか熱伝導性を低下させる恐れがあり好ましくない。
【0026】
斯かる目的に使用できるカップリング剤としては、特に制限はなく、各種のものを用いることができるが、具体例としてはシラン系およびチタネート系カップリング剤を挙げることができる。シラン系カップリング剤としては、例えば、γ−メルカプト−プロピル−トリメトキシシラン、2−スチリル−エチル−トリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノ−プロピル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、γ−グリシドキシ−プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン等が挙げられ、これらを単独、あるいは二種以上を混合して使用することができる。
【0027】
また、チタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネート、イソプロピルトリジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N,N−ジアミノエチル)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルフォスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルフォスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジドデシルフォスフェート)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)フォスフェートチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)エチレンチタネート等が挙げられ、これらを単独、あるいは2種以上を混合して使用することができる。又、シラン系カップリング剤とチタネート系カップリング剤を併用することもできる。
【0028】
カップリング剤による処理にあたっては、無機充填材と共に直接樹脂に添加してもよいが、予めカップリング剤で充填剤を表面処理して使用することが好ましい。加工特性、機械的、電気的特性、熱的特性、表面特性および光安定性を改良するため、更に本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤を本発明の組成物中に配合しうる。このような添加剤の例としては、微粒状充填材、強化充填材、可塑剤、滑材、離型材、付着防止剤、酸化防止剤、熱および光安定剤、難燃材、顔料、染料などが挙げられる。
【0029】
本発明で用いられる樹脂組成物は、例えば無機充填材を熱可塑性樹脂と予めドライブレンドにより、混合し、熱可塑性樹脂を可塑化して無機充填材と混合することによって得ることができる。本発明で用いられる樹脂組成物の成形方法としては、押し出し成形、射出成形を好適に用いることができ、射出成形がより好適である。また、本発明で用いられる樹脂組成物は、一旦ペレッートとして保存、流通させ、必要に応じて目的の形状に成形することもできる。本発明の樹脂組成物の成形にあたっては、フィルム状に成形する際には押し出し成形、インフレーション成形、Tダイ成形、によって得ることができ、更には熱可塑性樹脂を溶媒に溶かし、その溶媒に充填材を懸濁させ、次いで溶媒を除去する方法によっても得ることができる。
【0030】
本発明においては、このように成形して成形物を得た後に、加熱処理して成形体を得る。この加熱処理の方法は成形物が溶融する温度よりも低い温度で保温する加熱処理を行う方法(加熱処理法1)あるいは<成形物が溶融する温度よりも50℃低い温度>〜<成形物が溶融する温度>の範囲内に急に加熱し、その温度から微速昇温(好ましくは昇温速度0.1〜5℃/分の割合)により<成形物が溶融する温度より1〜20℃高い温度>まで昇温させる方法(加熱処理法2)により熱伝導性が高められる。ここで成形物が溶融する温度とは示差走査熱量測定法(DSC)により成形物を20℃/分の速度で昇温させて溶融させ、50℃/分の速度で50℃まで急冷し、次いで再度20℃/分の速度で昇温させた場合に得られる融解ピーク(ここで融解ピークとは熱可塑性樹脂の溶融粘度が最も低下する温度の近傍にみられるピークを意味する)の温度である。
加熱処理法1においては加熱処理温度は<成形物が溶融する温度より80℃低い温度>〜<成形物が溶融する温度>が好ましい。また加熱処理法2においては微速昇温をせずに、速すぎる昇温速度で昇温すると成形体が熱劣化のため着色等の不具合が生じることがあり、好ましくない。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。しかし本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
【0032】
[合成例]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 987.95g(5.25モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル 486.47g(2.612モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸 513.45g(2.375モル)、無水酢酸 1174.04(11.5モル)および触媒として1−メチルイミダゾール 0.194gを添加し、室温で15分間攪拌した後、攪拌しながら昇温した。内温が145℃となったところで、同温度を保持したまま1時間攪拌し、触媒である1−メチルイミダゾール 5.83gをさらに添加した。
次に、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から310℃まで3時間30分かけて昇温した。同温度で2時間保温して全芳香族ポリエステルを得た。得られた芳香族ポリエステルを室温に冷却し、粉砕機で粉砕して、全芳香族ポリエステルの粉末(粒子径は約0.1mm〜約1mm)を得た。
得られた粉末をイナートオーブンにて25℃から250℃まで1時間かけて昇温したのち、同温度から325℃まで10時間かけて昇温し、次いで同温度で12時間保温して固相重合させた。その後、固相重合した後の粉末を冷却し、冷却後の粉末について融点(融解ピークの温度)を測定したところ、340℃であった。
【0033】
比較例1
合成例により得られた全芳香族ポリエステルに酸化アルミニウム粉末(龍森(株)製球状アルミナAO−502)が70重量%になるよう混合後、二軸押し出し機(池貝鉄工(株)製PCM−30)を用いて、シリンダー温度 360℃で造粒し、樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を120℃で3時間乾燥後、射出成形機(日精樹脂工業(株)製PS40E5ASE型)を用いて、シリンダー温度 370℃、金型温度 130℃で64mm×13mm×3mmの棒状試験片を成形した。またこの試験片を用いてJIS R2618に準拠して熱線法により熱伝導率の測定を行った。その結果、熱伝導率は2.8W/mKであった。
【0034】
実施例1
比較例1で得た棒状試験片をイナートオーブンにて25℃から325℃まで1時間かけて昇温したのち、同温度で2時間保温して加熱処理を行った。その後、冷却後の棒状試験片について比較例1と同様の方法で熱伝導率測定を行った。その結果、熱伝導率は3.3W/mKであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全芳香族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステル、全芳香族ポリ(エステル−アミド)、芳香族−脂肪族ポリ(エステル−アミド)、脂肪族ポリアゾメチン、および芳香族ポリエステル−カーボネートよりなる群から選ばれる一種以上の熱可塑性樹脂、ならびに20℃で10W/mK以上の熱伝導率を示す無機充填材からなる樹脂組成物を成形し、次いで加熱処理して得られる成形体。
【請求項2】
無機充填材が、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ダイヤモンド、炭素および金属からなる群より選ばれる高熱伝導性無機物である請求項1記載の成形体。
【請求項3】
熱可塑性樹脂が、液晶特性を示す全芳香族ポリエステルである請求項1または2記載の成形体。
【請求項4】
全芳香族ポリエステルが、下記式(I)

で示される構造単位、下記式(II)

(xは、1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニレン、および2,6−ナフチレンからなる群から選ばれる構造単位を表す)で示される構造単位、下記式(III)

で示される構造単位、および下記式(IV)

で示される構造単位が適宜エステル結合してなる全芳香族ポリエステルである請求項3記載の成形体。

【公開番号】特開2006−57005(P2006−57005A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240585(P2004−240585)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】