説明

高熱伝導性熱定着ロール又は定着ベルト用熱硬化型シリコーンゴム組成物、定着ロール及び定着ベルト

【解決手段】 熱硬化型シリコーンゴム組成物に、ナトリウム含有量が0.3質量%以下で、平均粒子径1〜50μmの酸化亜鉛を配合した高熱伝導性熱定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
芯金外周にシリコーンゴム層が形成された定着ロールのシリコーンゴム層が上記組成物の硬化物である定着ロール。
耐熱性樹脂又は金属からなる基板の表裏面上にシリコーンゴム層が形成された定着ベルトのシリコーンゴム層を形成するシリコーンゴムが上記組成物を硬化させてなるものである定着ベルト。
【効果】 本発明の高熱伝導性シリコーンゴム組成物は、高熱伝導性で圧縮永久歪が小さく、高温下でも物性変化が小さいシリコーンゴムを形成し、定着ロール、定着ベルト用の被覆材として好適に使用でき、複写機やレーザービームプリンターのヒーターロールや加圧ロール等の定着ロール又は定着ベルトとして有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高熱伝導性シリコーンゴム組成物、及びこの組成物を用いて形成された定着ロール、定着ベルトに関し、更に詳しくは、高熱伝導性を有するにもかかわらず圧縮永久歪が小さく、かつ高温にさらされても、物性の変化が小さいシリコーンゴムを形成することができ、複写機やレーザービームプリンターのヒーターロールや加圧ロールなどの定着ロール及び定着ベルト用の被覆材として好適な高熱伝導性シリコーンゴム組成物、及びこの組成物を用いて形成された定着ロール及び定着ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、電気絶縁性、耐熱性、耐候性、難燃性に優れており、複写機やレーザービームプリンターのヒーターロールや加圧ロールなどの定着ロールの被覆材として用いられてきた。最近では、コピーの高速化、カラーコピーの普及に伴い定着ロールにも低硬度化が求められ、従来の金属又はフッ素樹脂では対応しきれなくなり、高熱伝導性のシリコーンゴムの上にフッ素樹脂を被覆するタイプが多く採用されている。特に、ここで用いられるヒートロール用のゴムには、機械立ち上げ時の待ち時間を短くするため、及び機械自体の省エネルギーの観点から、高熱伝導性が要求され、更には常時150〜230℃の高温にさらされるため、低圧縮永久歪が要求される。
【0003】
一方、温度上昇までの待ち時間の短縮や、プリンターのコンパクト化に対応するなどのために、ゴム層の厚さはより薄くなる方向にあり、従来の芯金にゴム層を被覆したロールではなく、より薄い金属や耐熱性の樹脂を無端ベルト状にした上にゴム層や離型層を被覆する定着ベルトタイプも使用されている。
【0004】
しかしながら、シリコーンゴム自体の熱伝導性は高くないため、上記現状に対応するためシリコーンゴムに高い熱伝導性を有するフィラーを添加する方法が一般的に行われている。このようなシリコーンゴムとしては、特許文献1(特開昭58−219259号公報)、特許文献2(特開平3―221982号公報)、特許文献3(特開平10−39666号公報)などで提案されているものが用いられてきた。これらは、従来から用いられてきたシリコーンゴムに、熱伝導性フィラーとしてシリカ、アルミナ、酸化マグネシウムなどが配合されているものである。しかし、これら充填剤は、いずれも高充填すると高温下ではその影響を受けて、シリコーンゴムが劣化してしまうという問題が生じる。
【0005】
従って、高熱伝導性かつ低圧縮永久歪であり、高温下でも物性変化が小さいシリコーンゴムを形成する高熱伝導性シリコーンゴム組成物の開発が望まれる。
【0006】
【特許文献1】特開昭58−219259号公報
【特許文献2】特開平3―221982号公報
【特許文献3】特開平10−39666号公報
【特許文献4】特開平11−158377号公報
【特許文献5】特開2000−302971号公報
【特許文献6】特開2003−12925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高熱伝導性で圧縮永久歪が小さく、かつ耐熱性にも優れ、定着ロールや定着ベルトの被覆材として好適に用いられるシリコーンゴム組成物、定着ロール及び定着ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため、高熱伝導性で圧縮永久歪が小さく、かつ耐熱性にも優れる材料について種々検討した結果、熱硬化型シリコーンゴム組成物に平均粒子径が1〜50μmで、ナトリウム含有量が0.3%(質量%、以下同様。)以下の酸化亜鉛、特に800〜1,600℃で焼成することにより得られる平均粒子径及びナトリウム含有量が上記範囲の酸化亜鉛を配合することにより、高熱伝導性で圧縮永久歪が小さく、耐熱性にも優れる定着ロールの被覆材として好適に用いられる熱硬化型シリコーンゴム組成物が得られ、この熱硬化型シリコーンゴム組成物で定着ロール又は定着ベルトのシリコーンゴム層を形成することで、高品質の定着ロール又は定着ベルトが得られることを見出した。
【0009】
なお、特許文献4(特開平11−158377号公報)には、加熱硬化型シリコーンゴム組成物に酸化亜鉛を配合したものが示されているが、酸化亜鉛については粒子径と表面処理についての記述があるのみであり、同様に特許文献5(特開2000−302971号公報)には、酸化亜鉛の製法について詳細に記載されているが、耐熱性に影響の大きい不純物含有量については全く触れられていない。更に、特許文献6(特開2003−12925号公報)においても、酸化亜鉛と結晶性シリカ粉の併用が示されているが、酸化亜鉛の純度や硬化ゴムの耐熱性については、全く記述されていない。
本発明においては、熱硬化型シリコーンゴム組成物に、耐熱性に悪影響を与える不純物のうち、特にナトリウム含有量が通常使用されている酸化亜鉛(ナトリウム含有量は通常0.1〜2%程度)に比較して少ない平均粒子径1〜50μmの酸化亜鉛を配合することにより、高熱伝導性を有するにもかかわらず圧縮永久歪が小さく、かつ高温にさらされても物性の変化が小さいシリコーンゴムを形成する高熱伝導性シリコーンゴム組成物を得ることができたものである。
【0010】
従って、本発明は、
(i)熱硬化型シリコーンゴム組成物100質量部に、ナトリウム含有量が0.3%以下で、平均粒子径が1〜50μmの酸化亜鉛を50〜800質量部配合したことを特徴とする高熱伝導性熱定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物、
(ii)芯金の外周面にシリコーンゴム層が形成されてなる定着ロールにおいて、シリコーンゴム層が上記の高熱伝導性シリコーンゴム組成物の硬化物であることを特徴とする定着ロール、
(iii)耐熱性樹脂又は金属からなる基板の表裏面上にシリコーンゴム層が形成されてなる定着ベルトにおいて、シリコーンゴム層を形成するシリコーンゴムが上記の高熱伝導性シリコーンゴム組成物を硬化させてなるものであることを特徴とする定着ベルト
を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高熱伝導性シリコーンゴム組成物は、高熱伝導性を有するにもかかわらず圧縮永久歪が小さく、かつ高温にさらされても物性の変化が小さいシリコーンゴムを形成することができ、定着ロール、定着ベルト用の被覆材として好適に使用でき、本発明の高熱伝導性シリコーンゴム組成物でシリコーンゴム層を形成した定着ロール又は定着ベルトは、複写機やレーザービームプリンターのヒーターロールや加圧ロール等の定着ロール又は定着ベルトとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明のシリコーンゴム組成物は、熱硬化型シリコーンゴム組成物に、特定範囲のナトリウム含有量及び平均粒子径を有する酸化亜鉛を配合したものである。
【0013】
ここで、熱硬化型シリコーンゴム組成物としては、付加反応硬化型と有機過酸化物硬化型のいずれのシリコーンゴム組成物も使用できるが、特に付加反応硬化型シリコーンゴム組成物が好ましい。
【0014】
付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の例としては、
(A)1分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン: 100質量部
(B)1分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:
(A)成分中のアルケニル基に対して珪素原子に直結する水素原子のモル比が
0.4〜5となる量
(C)付加反応触媒 触媒量
を含有してなることを特徴とするシリコーンゴム組成物が挙げられる。
【0015】
ここで、(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を有し、室温で液状又は生ゴム状のものであり、例えば、下記平均組成式(1)で示されるものが使用される。
dSiO(4-d)/2 (1)
(式中、Rは互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換1価炭化水素基であり、dは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5の範囲の正数である。)
【0016】
上記式(1)において、Rのうち少なくとも2個はアルケニル基(特に炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6である)であることが必要である。
この場合、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等が挙げられるが、特にビニル基が好ましい。
【0017】
また、上記アルケニル基の含有量は、オルガノポリシロキサン中1.0×10-6〜5.0×10-3mol/g、特に5.0×10-6〜1.0×10-3mol/gであることが好ましい。アルケニル基の含有量が1.0×10-6mol/gより少ないと架橋が不十分でゲル状になってしまうおそれがあり、5.0×10-3mol/gより多いと架橋密度が高くなりすぎて、脆いゴムとなってしまうおそれがある。なお、上記アルケニル基は、分子鎖末端の珪素原子に結合していても、分子鎖途中の珪素原子に結合していても、両者に結合していてもよいが、組成物の硬化速度、硬化物の物性等の点から、本発明で用いるオルガノポリシロキサンは、少なくとも分子鎖末端の珪素原子に結合したアルケニル基を含んだものであることが好ましい。
【0018】
一方、上記Rで示されるアルケニル基以外の炭素原子数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換1価炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられる。なお、全R中の90モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0019】
上記オルガノポリシロキサンの構造は、通常、主鎖がジオルガノシロキサン単位((R)2SiO2/2単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基((R)3SiO1/2単位)で封鎖された基本的には直鎖状構造を有するジオルガノポリシロキサンであるが、部分的にはRSiO3/2単位やSiO4/2単位を含んだ分岐状の構造、環状構造などであってもよい。
【0020】
(A)成分の例としては、下記一般式で示される化合物などが挙げられる。
【化1】

【0021】
なお、上記一般式中のRは、アルケニル基は含まない。上記式中のm、nはm≧1、n≧0の整数であり、m+nはこのオルガノポリシロキサンの分子量又は粘度を上記の値とする数である。
【0022】
(B)成分の液状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に珪素原子と結合する水素原子(Si−H基)を少なくとも2個含有し、25℃での粘度が1,000mPa・s以下(通常、0.5〜1,000mPa.s、特に1〜500mPa.s)のものが好適である。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子中のSi−H基と前記(A)成分中のオルガノポリシロキサンの珪素原子に結合したアルケニル基とが、ヒドロシリル付加反応により架橋することにより組成物を硬化させるための硬化剤として作用するものである。
【0023】
(B)成分の上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(2)
R’efSiO[4-(e+f)]/2 (2)
(式中、R’は互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換1価炭化水素基であり、e,fは、e=0.7〜2.1、好ましくは0.8〜2.0、f=0.001〜1.0、好ましくは0.01〜1.0、かつe+f=0.8〜3.0、好ましくは1.0〜2.5を満足する正数である。)
で示され、1分子中に少なくとも2個(通常、2〜300個)、好ましくは3個以上(例えば3〜150個、より好ましくは3〜100個程度の珪素原子に結合した水素原子(Si−H基)を有するものが挙げられる。
【0024】
ここで、R’の1価炭化水素基としては、上記平均組成式(1)のRとして例示したものと同様のものを挙げることができるが、脂肪族不飽和基を有しないものが好ましい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状等いずれの構造であってもよく、1分子中の珪素原子の数(又は重合度)は2〜300個、特に4〜150個程度の室温(25℃)で液状のものが好適に用いられる。なお、珪素原子に結合する水素原子は分子鎖末端、分子鎖の途中のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。
【0025】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしてより具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0026】
なお、上記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分中のアルケニル基に対して、珪素原子に直結する水素原子のモル比が0.4〜5となる量、好ましくは0.5〜2.5となる量である。モル比が0.4より小さいと、架橋密度が低くなりすぎて硬化したシリコーンゴムの耐熱性に悪影響を与え、5より大きいと脱水素反応による発泡の問題が生じ、更に耐熱性に悪影響を与える場合がある。
【0027】
(C)成分の付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコ−ルとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテ−ト等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属系触媒が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量、即ち、組成物を硬化するために必要な量であり、通常、金属量として(A)成分及び(B)成分の合計量に対し、0.5〜1,000ppm、特に1〜500ppm程度であることが好ましい。
【0028】
過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物の例としては、
(D)1分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン: 100質量部
(E)有機過酸化物 触媒量
を含有してなることを特徴とするシリコーンゴム組成物である。
【0029】
(D)成分のオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(3)
1nSiO(4-n)/2 (3)
(上記式中R1は同一又は異種の非置換又は置換1価炭化水素基、nは1.98〜2.02の正数である。)
で示すことができる。
【0030】
この場合、R1としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される、互いに同一又は異種の好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8の非置換又は置換の1価炭化水素基が挙げられる。
【0031】
また、nは1.98〜2.02の正数であり、このオルガノポリシロキサンは分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基などで封鎖されたものとすることができるが、本発明において、このオルガノポリシロキサンは分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する必要があり、R1のうち0.001〜10モル%、特に0.01〜5モル%がアルケニル基、特にビニル基であることが好ましい。このアルケニル基は、分子鎖末端の珪素原子に結合していても、分子鎖途中の珪素原子に結合していても、両者に結合していてもよい。
【0032】
このオルガノポリシロキサンの構造は基本的には直鎖状構造を有するが、部分的には分岐状の構造、環状構造などであってもよい。分子量については、特に限定なく粘度の低い液状のものから、粘度の高い生ゴム状のものまで使用できるが、硬化してゴム状弾性体になるためには、重合度が100〜10万、特に150から2万であることが好ましい。
【0033】
(E)成分の有機過酸化物は、(D)成分の架橋反応を促進するための触媒として使用されるものであれば如何なるものでも良く、従来公知のものを使用することができる。具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、パラメチルベンゾイルパーオキサイド、オルトメチルベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、クミル−t−ブチルパーオキサイド等の塩素原子を含まない有機過酸化物が用いられ、特に、常圧熱気加硫用としては、ベンゾイルパ−オキサイド、パラメチルベンゾイルパーオキサイド、オルトメチルベンゾイルパーオキサイドのアシル系有機過酸化物が好ましい。これらの有機過酸化物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
これら有機過酸化物の添加量は、触媒量であり、硬化速度に応じて適宜選択すればよいが、特に(D)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対し0.1〜10質量部、特に0.3〜5質量部が好適である。0.1質量部未満では架橋が不十分であり、10質量部を超えても硬化速度の向上は望めず、コスト的に不利となる場合がある。
【0035】
本発明において、上記熱硬化型シリコーンゴム組成物に配合する酸化亜鉛は、本発明組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの熱伝導率を向上させるための成分である。ここで、酸化亜鉛の形状は特に限定されず、球状、不定形状のいずれでも良いが、酸化亜鉛の平均粒子径は1〜50μm、好ましくは2〜30μm、より好ましくは3〜20μmである。平均粒子径が1μm未満では、熱伝導率を向上させるために多量に配合するのが困難な場合があり、50μmを超えると、ゴム物性を低下させる悪影響が大きくなってしまう場合がある。
【0036】
更に、本発明では、酸化亜鉛中に含有するナトリウムが0.3%以下、好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.1%以下であることが重要である。ナトリウム含有量が0.3%を超えると、配合したシリコーンゴム組成物の圧縮永久歪が低下し、耐熱性も悪くなってしまう。なお、ナトリウム含有量は0%でもよい。このようなナトリウム低含有量の酸化亜鉛は、高温における焼成処理や水洗などの工程によって得ることができる。
【0037】
なお、上記平均粒子径は、例えばレーザー光回折法等の分析手段を使用した粒度分布計により、重量平均値(又はメジアン径)等として求めることができ、ナトリウム含有量は炎光光度測定法により求めることができる(以下、同様)。
【0038】
上記特定の平均粒子径及びナトリウム含有量を有する酸化亜鉛の工業的製造方法としては、乾式法と湿式法に大別され、いずれの方法で製造したものを使用してもかまわないが、どちらの製法の場合でも、最終的に800〜1,600℃、特に900〜1,400℃の焼成工程を経て製造することが好ましい。焼成工程が800℃未満では、酸化亜鉛の活性を低下させるのに不十分で、シリコーンゴム組成物に配合すると耐熱性に悪影響を与えてしまう場合がある。1,600℃を超える温度では、装置面でもエネルギー面でもコスト的に不利となる場合がある。
【0039】
また、上記酸化亜鉛として、その表面をオルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン、シラノール又はアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン等の有機珪素化合物により処理したものを用いても良い。このような酸化亜鉛の表面処理は、予め表面処理した表面処理済みの酸化亜鉛を用いても良いが、酸化亜鉛を(A)成分に配合する際に、同時に上記表面処理剤を添加して酸化亜鉛を表面処理しても良い。
【0040】
本発明において、酸化亜鉛の配合量は、熱硬化型シリコーンゴム組成物100質量部に対して50〜800質量部、特に100〜600質量部の範囲が好ましい。50質量部未満では十分な熱伝導性が得られない場合があり、800質量部を超えるとゴム物性の低下が著しいばかりか、配合すること自体も困難である場合がある。
【0041】
本発明の熱硬化型シリコーンゴム組成物においては、更に、特定平均粒子径を有する酸化鉄を配合することが好ましい。この酸化鉄を添加することにより、本発明組成物を硬化して得られるシリコーンゴムのゴムの耐熱性を更に向上させることができる。特に本発明においては、上記酸化亜鉛に特定平均粒子径の酸化鉄を併用することより、酸化亜鉛の添加による耐熱性の低下を抑制すると共に、フッ素系樹脂を被覆した定着ロール又は定着ベルトとした時に、表層であるフッ素系樹脂層との接着耐久性を向上させる効果がある。
【0042】
このような酸化鉄としては、平均粒子径が0.01〜0.5μm、特に0.02〜0.3μm、より好ましくは0.05〜0.20μmのものが好適である。平均粒子径が0.01μm未満では、配合・分散が困難となる場合があり、0.5μmを超えると、十分な耐熱性が得られない場合がある。
【0043】
この場合、酸化鉄は2価鉄あるいは3価鉄の酸化物であっても、2価鉄と3価鉄とを含む酸化物であっても良い。また、その表面をオルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン、シラノール又はアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン等の有機珪素化合物により処理したものを用いても良い。なお、このような表面処理酸化鉄としては、予め表面処理したものを用いても良く、また、未処理の酸化鉄を(A)成分に配合する際に、酸化鉄と表面処理剤とを同時に添加して表面処理しても良い。
【0044】
上記酸化鉄の配合量は、熱硬化型シリコーンゴム組成物100質量部に対して0.1〜20質量部、特に0.5〜15質量部の範囲が好ましい。酸化鉄の配合量が0.1質量部未満では、耐熱性向上効果が発揮されない場合があり、20質量部を超えると、ゴム組成物の流動性を損ない、ゴム硬化物の物性も低下してしまう場合がある。
【0045】
これら酸化亜鉛、酸化鉄などの無機粉体は、常温でプラネタリーミキサーやニーダーなどの機器を用いて組成物中に混合することができる。また、混合温度は常温でも加熱下でもよいが、上記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び(C)及び(E)成分である硬化触媒を添加する前であれば、100〜200℃の高温下で混合することもできる。
【0046】
本発明の熱硬化型シリコーンゴム組成物には、酸化亜鉛に加えて、更に熱伝導性を向上させるなどの目的で、粉砕石英、アルミナ、酸化マグネシウムなどの酸化亜鉛以外の熱伝導性成分を配合しても良いが、これら他の熱伝導性成分の配合量は、熱硬化性シリコーンゴム組成物100質量部に対して500質量部以下(0〜500質量部)、好ましくは20〜300質量部程度とすることができる。
【0047】
また、必要に応じて、沈降防止や硬化ゴムの高強度化などの目的で、乾式シリカ(煙霧質シリカ又はヒュームドシリカ)を配合することができる。このような乾式シリカとしては、通常、BET法による比表面積が50〜400m2/g、特に100〜350m2/g程度の微粒子が好適であり、具体的には親水性シリカ、疎水性シリカが挙げられる。
【0048】
乾式シリカの配合量は、熱硬化型シリコーンゴム組成物100質量部に対して20質量部以下、特に0.5〜15質量部の範囲であることが好ましい。配合量が20質量部を超えると、ゴム組成物の流動性が低下するだけでなく、硬化物の圧縮永久歪も悪化してしまう場合がある。更に、後述する湿式シリカ等のシリカ系充填剤を配合する場合は、シリカ系充填剤の総配合量は、1〜50質量部、特に1〜20質量部の範囲が望ましい。
【0049】
上記シリコーンゴム組成物には、その他必要に応じて湿式シリカ(沈降シリカ)、珪藻土などのシリカ充填剤、クレイ、炭酸カルシウム、二酸化チタン等の充填剤、酸化セリウム、水酸化セリウム等の耐熱性向上剤、接着性や成形加工性を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、難燃性を付与させる窒素化合物、ハロゲン化合物などを添加混合してもよい。
【0050】
本発明の熱硬化型シリコーンゴム組成物は、芯金の外周面にシリコーンゴム層が介在された定着ロール、又は耐熱性樹脂あるいは金属の薄膜からなる無端ベルト等の基材の表裏面上にシリコーンゴム層が介在された定着ベルトにおけるシリコーンゴム層の形成、あるいは、更に前記シリコーンゴム層上にフッ素系樹脂コーティング剤又はフッ素系樹脂チューブなどによるフッ素系樹脂層が表層として形成されたフッ素系樹脂被覆定着ロール又はフッ素系樹脂被覆定着ベルトにおけるシリコーンゴム層の形成に好適に使用され、本発明の熱硬化型シリコーンゴム組成物でシリコーンゴム層が形成された定着ロール及び定着ベルトは、高熱伝導性、低圧縮永久歪で、耐熱性が高く、複写機、レーザービームプリンター等に有効に使用することができる。
【0051】
この場合、上記定着ロール又は定着ベルトの芯金又はベルト基材の材質、寸法等はロール又はベルトの種類に応じて適宜選定し得るが、定着ロールにおけるシリコーンゴム層の厚さは、好ましくは0.1〜5.0mm、より好ましくは0.3〜3.0mmであり、0.1mmより薄いとロールとしての弾性が不十分となる場合があり、5.0mmを超えると、熱伝導率が悪くなってしまう場合がある。
【0052】
一方、定着ベルトにおけるシリコーンゴム層の厚さは、好ましくは0.05〜2.0mm、より好ましくは0.1〜1.0mmであり、0.05mm未満では、均一な厚さに成形するのが困難となる場合があり、1.0mmを超えると、熱伝導性が悪くなり、不経済となる場合がある。
【0053】
また、シリコーンゴム組成物の成形、硬化法も適宜選定し得、通常の方法を採用することができ、例えば注入成形、移送成形、射出成形、コーティング等の成形法により成形でき、組成物は加熱により硬化することができる。
【0054】
本発明の熱硬化型シリコーンゴム組成物の硬化条件は特に制限されないが、120〜200℃、特に130〜180℃で、3分から1時間硬化させ、更に180〜220℃で、1〜12時間ポストキュアすることが好ましい。
【0055】
本発明においては、硬化後のシリコーンゴムの熱伝導率が0.5W/m・℃以上(例えば0.5〜5W/m・℃)、特に0.6〜3W/m・℃であることが好ましく、0.5W/m・℃に満たないと、トナーの定着が不十分になってしまう場合がある。
【0056】
上記シリコーンゴム層を介して外層に形成されるフッ素系樹脂層は、フッ素系樹脂コーティング材やフッ素系樹脂チューブなどにより形成できる。フッ素系樹脂コーティング材を用いる場合は、例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)のラテックスや、ダイエルラテックス(ダイキン工業社製、フッ素系ラテックス)等を上記シリコーンゴム層の外周面上に積層すればよい。
【0057】
フッ素系樹脂チューブとしては、市販品を使用し得、例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、フッ化エチレン−プロピレン共重合体樹脂(FEP)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリフッ化ビニル樹脂等のチューブを用いることができる。フッ素系樹脂チューブを用いて定着ロールを製造する場合は、例えば芯金と上記チューブとの間に本発明のシリコーンゴム組成物を充填して硬化させる方法によりシリコーン樹脂層を形成することができる。なお、本発明のシリコーン樹脂層を形成するには、特にPFAチューブを用いたものが好適である。
【0058】
なお、フッ素樹脂コーティング剤又はフッ素樹脂系チューブ層とシリコーンゴム層との接触面は、コロナ放電処理、ナトリウムナフタレン法、液体アンモニア法、スパッタエッチング法、エキシマレーザー処理などにより処理して、シリコーンゴムとの接着を有利にすることが好ましい。更に、接着耐久性を向上させるためにプライマー処理を使用しても良い。
【0059】
このフッ素系樹脂層の厚さは、適宜選定されるが、0.1〜100μm、特に1〜50μmとすることが好ましく、0.1μmより薄いとロールの硬度が小さくなり、供給される紙がスリップする場合があり、100μmより厚いとロールの硬度が高くなり、ニップ幅が取れず、定着後の画像が不良となる場合がある。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において部はいずれも質量部である。
【0061】
[実施例1]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度300)100部、補強性シリカ充填剤として比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル社製 R−972)1部、フェニルトリメトキシシラン5部、湿式法で製造した水酸化亜鉛を水洗し、これを1,000℃で焼成することによって得られた、平均粒子径が3μmでナトリウム含有量が0.05%の酸化亜鉛270部、平均粒子径0.10μmの酸化鉄3部をプラネタリーミキサーに入れ、150℃で2時間攪拌した。
【0062】
冷却後、この混合物を3本ロールにかけて、更に充填剤を分散させた後、再びプラネタリーミキサーに戻し、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度17、Si−H基量0.0060mol/g)を2.3部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05部、白金触媒(Pt濃度1%)0.1部を添加し、15分撹拌してシリコーンゴム組成物(1)を得た。
【0063】
このシリコーンゴム組成物(1)を用い、120℃で10分間プレスキュアし、更に200℃で4時間オーブンキュアしてシリコーンゴム硬化物サンプルを作成し、JIS K 6249に準じて、硬度及び圧縮永久歪を測定した結果及び熱伝導計QTM−3(京都電子社製)で熱伝導率を測定した結果を表1に記した。また、ゴム硬化物を230℃のオーブンに300時間放置した後の硬度、圧縮永久歪を測定し、同様に表1に記した。熱伝導率を熱伝導計QTM−3(京都電子社製)で測定した結果、0.71W/m・℃であった。
【0064】
次に、内面に付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーNo.101A/B(信越化学工業社製)を塗付した直径14mm、長さ250mm、厚さ50μmのPFA樹脂チューブの内側に、表面に上記プライマーを塗付した直径10mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトを上記チューブの内面から等距離になる位置に配置して固定し、チューブとシャフトとの間にこのシリコーンゴム組成物(1)を充填し、150℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアして、アルミニウムシャフトの外周面上にシリコーンゴム層が形成され、このシリコーンゴム層の外周面上に、更にフッ素樹脂層が形成された定着ロールを得た。このときのシリコーンゴム層の厚さは2.0mmであった。この定着ロールを電子写真複写機に装着してA4サイズの複写紙を1万枚複写したが、画像に全く問題はなかった。
【0065】
[実施例2]
両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された側鎖にビニル基を有するジメチルポリシロキサン(重合度350、ビニル基含有量0.0072mol/100g)100部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル社製R−972)0.5部、下記一般式(I)
【化2】


で示されるシロキサン化合物8部、平均粒子径が10μmでナトリウム含有量が0.02%の酸化亜鉛280部、平均粒子径が5μmの石英粉80部、平均粒子径0.16μmの酸化鉄6部をプラネタリーミキサーに入れ、室温(23℃)で2時間攪拌を行った。この混合物を3本ロールにかけて充填剤の分散を行った後、再びプラネタリーミキサーに戻し、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度17、Si−H基量0.0060mol/g)を0.84部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05部、白金触媒(Pt濃度1%)0.1部を添加し、15分撹拌を続けてシリコーンゴム組成物(2)を得た。このシリコーンゴム組成物を用い、120℃で10分間プレスキュアし、更に200℃で4時間オーブンキュアしてシリコーンゴム硬化物サンプルを作成し、実施例1と同様に、硬度、圧縮永久歪、熱伝導率、及び耐熱試験後の硬度、圧縮永久歪を測定した。結果を表1に記した。
【0066】
次に、このシリコーンゴム組成物(2)を幅250mm、周囲150mm、厚み100μmのプライマー処理をしたポリイミド樹脂薄膜無端ベルト上にリングコート法により0.4mmの厚さで塗布し、150℃で30分加熱硬化した。また、プライマー処理をした厚み25μmのPFAチューブにシリコーンゴムを積層したポリイミド樹脂薄膜ベルトを挿入し、120℃で60分加熱し、更に200℃で4時間、オーブン内でポストキュアして定着ベルトを作製した。この定着ベルトを電子複写機に装着し、1万枚複写したが画像に全く問題はなかった。
【0067】
[実施例3]
ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約5000であるゴム状オルガノポリシロキサン100部に比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル社製アエロジル200)5部、両末端水酸基を有するジメチルポリシロキサン(重合度10)を10部ニーダー中で均一に混合し、150℃で2時間熱処理を行って、ベースコンパウンドを得た。このベースコンパウンド100部に平均粒子径が3μmでナトリウム含有量が0.05%の酸化亜鉛350部、平均粒子径0.10μmの酸化鉄3部を2本ロールにて添加し、さらに硬化剤として2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン0.5部を加えた後、170℃で10分間プレスキュアし、更に200℃で4時間オーブンキュアしてシリコーンゴム硬化物サンプルを作成し、実施例1と同様に、硬度、圧縮永久歪、熱伝導率、及び耐熱試験後の硬度、圧縮永久歪を測定した。結果を表1に記した。
【0068】
次に、内面に過酸化物硬化型シリコーンゴム用プライマーNo.23(信越化学工業社製)を塗付した直径13mm、長さ250mm、厚さ50μmのPFA樹脂チューブの内側に、表面に上記プライマーを塗付した直径10mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトを上記チューブの内面から等距離になる位置に配置して固定し、チューブとシャフトとの間にこのシリコーンゴム組成物(3)を充填し、150℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアして、アルミニウムシャフトの外周面上にシリコーンゴム層が形成され、このシリコーンゴム層の外周面上に、更にフッ素樹脂層が形成された定着ロールを得た。このときのシリコーンゴム層の厚さは1.5mmであった。この定着ロールを電子写真複写機に装着してA4サイズの複写紙を1万枚複写したが、画像に全く問題はなかった。
【0069】
[比較例1]
実施例1のシリコーンゴム組成物(1)で平均粒子径が3μmでナトリウム含有量が0.05%の酸化亜鉛に替えて、平均粒子径が5μmでナトリウム含有量が0.5%の酸化亜鉛を同量配合した以外は実施例1と同様にして得られたものをシリコーンゴム組成物(4)とした。このシリコーンゴム組成物(4)を用い、120℃で10分間プレスキュアし、更に200℃で4時間オーブンキュアしてシリコーンゴム硬化物サンプルを作成し、実施例1と同様に、硬度、圧縮永久歪、熱伝導率、及び耐熱試験後の硬度、圧縮永久歪を測定した結果を表1に記した。
このシリコーンゴム組成物(4)を用いて、実施例1と同様に定着ロールを作成し、この定着ロールを電子写真複写機に装着してA4サイズの複写紙を複写したところ、5500枚付近より、やや画像が乱れ始め、1万枚複写後組み込んだ定着ロールを観察すると、表面に無数のシワがみられた。
【0070】
[比較例2]
実施例2のシリコーンゴム組成物(2)で、平均粒子径が10μmでナトリウム含有量が0.02%の酸化亜鉛に替えて、平均粒子径が12μmでナトリウム含有量が0.7%の酸化亜鉛を配合した以外は実施例2と同様にして得られたものをシリコーンゴム組成物(5)とした。このシリコーンゴム組成物(5)を用い、120℃で10分間プレスキュアし、更に200℃で4時間オーブンキュアしてシリコーンゴム硬化物サンプルを作成し、実施例1と同様に、硬度、圧縮永久歪、熱伝導率、及び耐熱試験後の硬度、圧縮永久歪を測定した結果を表1に記した。
このシリコーンゴム組成物(5)を用いて、実施例2と同様に定着ベルトを作成し、この定着ベルトを電子写真複写機に装着してA4サイズの複写紙を複写したところ、7200枚付近より画像が乱れ始め、1万枚複写後、装着した定着ベルトを観察すると、表面に縞状の模様が見られた。
【0071】
[比較例3]
実施例3のシリコーンゴム組成物(3)で、平均粒子径が3μmでナトリウム含有量が0.05%の酸化亜鉛に替えて、平均粒子径が5μmでナトリウム含有量が0.5%の酸化亜鉛を同量配合した以外は実施例3と同様にして得られたものをシリコーンゴム組成物(6)とした。このシリコーンゴム組成物(6)を用い、120℃で10分間プレスキュアし、更に200℃で4時間オーブンキュアしてシリコーンゴム硬化物サンプルを作成し、実施例1と同様に、硬度、圧縮永久歪、熱伝導率、及び耐熱試験後の硬度、圧縮永久歪を測定した結果を表1に記した。
このシリコーンゴム組成物(6)を用いて、実施例3と同様に定着ロールを作成し、この定着ロールを電子写真複写機に装着してA4サイズの複写紙を複写したところ、200枚付近より画像が乱れ始め、500枚複写後、装着した定着ロールを観察したところ、ロール表面の一部に凹凸が見られた。
【0072】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化型シリコーンゴム組成物100質量部に、ナトリウム含有量が0.3質量%以下で、平均粒子径が1〜50μmの酸化亜鉛を50〜800質量部配合したことを特徴とする高熱伝導性熱定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
熱硬化型シリコーンゴム組成物が付加反応硬化型シリコーンゴム組成物である請求項1記載の高熱伝導性熱定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
熱硬化型シリコーンゴム組成物が有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物である請求項1記載の高熱伝導性熱定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
硬化後のゴムの熱伝導率が、0.5W/m・℃以上である請求項1、2又は3記載の高熱伝導性定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
更に、平均粒子径が0.01〜0.5μmの酸化鉄を0.1〜20質量部配合したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の高熱伝導性熱定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
芯金の外周面にシリコーンゴム層が形成されてなる定着ロールにおいて、シリコーンゴム層が請求項1乃至5のいずれか1項記載の高熱伝導性シリコーンゴム組成物の硬化物であることを特徴とする定着ロール。
【請求項7】
芯金の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素系樹脂層が形成されてなる定着ロールにおいて、シリコーンゴム層が請求項1乃至5のいずれか1項記載の高熱伝導性シリコーンゴム組成物の硬化物であることを特徴とするフッ素系樹脂被覆定着ロール。
【請求項8】
耐熱性樹脂又は金属からなる基板の表裏面上にシリコーンゴム層が形成されてなる定着ベルトにおいて、シリコーンゴム層を形成するシリコーンゴムが請求項1乃至5のいずれか1項記載の高熱伝導性シリコーンゴム組成物を硬化させてなるものであることを特徴とする定着ベルト。
【請求項9】
耐熱性樹脂又は金属からなる基板の表裏面上にシリコーンゴム層を介してフッ素系樹脂層が形成されてなる定着ベルトにおいて、シリコーンゴム層を形成するシリコーンゴムが請求項1乃至5のいずれか1項記載の高熱伝導性シリコーンゴム組成物を硬化させてなるものであることを特徴とするフッ素系樹脂被覆定着ベルト。

【公開番号】特開2006−336668(P2006−336668A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158485(P2005−158485)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】