説明

高眼圧の治療のための眼科用組成物

本発明は、緑内障及び患者の眼における眼内圧上昇をもたらす他の症状の治療のための、式(I)の強力なカリウムチャネルブロッカー化合物又はそれらの処方物の使用に関する。本発明はまた、哺乳動物、特にはヒトの眼に神経保護効果を付与するためのそのような化合物又は医薬適合性の塩、インビボ加水分解性のエステル、鏡像異性体、ジアステレオマー又はそれらの混合物の使用にも関し、式(II)は、C6−10アリール又はC3−10ヘテロシクリルを表し、該アリール又はヘテロシクリルは、Rから選択される1個から3個の基で場合によっては置換されており;Zは、(CHPO(OR)(OR)を表す。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本願は、米国仮出願番号第60/500,095号(2003年9月4日出願)の35U.S.C.119(e)に基づく優先権を主張する。
【0002】
緑内障とは、眼内圧が過度に上昇し眼が正常に機能できなくなる眼の変性疾患である。結果として、視神経乳頭に対する損傷を生じ得、視覚機能の不可逆的な喪失が起こる。治療を行わない場合、緑内障は最終的に盲目につながり得る。現在、大多数の眼科医が、高眼圧、すなわち、視神経乳頭損傷又は特徴的な緑内障視野欠損を伴わずに眼内圧が上昇した状態は、緑内障の発症の単なる最初期相を表すものであると考えている。
【0003】
緑内障及び眼内圧上昇を治療するための療法がいくつか存在するが、これらの薬剤の効力及び副作用面での特徴は理想的ではない。近年、カリウムチャネルブロッカーが眼内圧を低下させ、したがって、高眼圧及びそれに関連する変性眼状態の治療のためのさらなる方法をもたらすことが分かった。カリウムチャネルを遮断することにより液体分泌を減少させ、ある状況下では、平滑筋収縮を増大させることが可能であり、IOPを低下させ、眼における神経保護効果を有すると予想される(米国特許第5,573,758号及び第5,925,342号;Mooreら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci 38,1997;WO89/10757、WO94/28900及びWO96/33719を参照)。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、緑内障及び患者の眼における眼内圧上昇に関連する他の症状の治療における強力なカリウムチャネルブロッカー又はそれらの処方物の使用に関する。本発明はまた、哺乳動物種、特にはヒトの眼に神経保護効果を付与するための、そのような化合物の使用にも関する。さらに具体的には、本発明は、構造式I:
【0005】
【化5】

を有するインダゾール化合物を含有する新規リン酸塩、又は医薬適合性の塩、インビボ加水分解性エステル、鏡像異性体、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物を用いた、緑内障及び/又は高眼圧(眼内圧上昇)の治療にも関する(式中、
Rは、水素又はC1−6アルキルを表し;
及びRは、独立に、水素又はハロを表し;
は、N又はOを表し;
Xは、−(CHR−、−(CHRCO−を表し;
Yは、−CO(CH−、CH又は−CH(OR)−を表し;
Qは、CRを表し;
は、H又はC1−6アルキルを表し;
は、H、C1−6アルキル、−C(O)C1−6アルキル、−C(O)OC1−6アルキル、−SON(R)、−SO1−6アルキル、−SO6−10アリール、NO、CN又は−C(O)N(R)を表し;
は、水素、C1−10アルキル、OH、C2−6アルケニル、C1−6アルキルSR、−(CHO(CHOR、−(CH1−6アルコキシ、−(CH3−8シクロアルキル、−(CH3−10ヘテロシクリル、−N(R)、−COOR又は−(CH6−10アリールを表し、該アルキル、ヘテロシクリル又はアリールは、Rから選択される1個から3個の基で場合によっては置換されており;
は、水素、C1−10アルキル、−(CH3−8シクロアルキル、−(CH3−10ヘテロシクリル、−(CHCOOR、−(CH6−10アリール、−(CHNHR、−(CHN(R)、−(CHN(R、−(CHNHCOOR、−(CHN(R)COR、−(CHN(R)COR、−(CHNHCOR、−(CHCONH(R)、アリール、−(CH1−6アルコキシ、CF、−(CHSOR、−(CHSON(R)、−(CHCON(R)、−(CHCONHC(R)、−(CHCONHC(R)COR、−(CHCOR、ニトロ、シアノ又はハロゲンを表し、該アルキル、アルコキシ、ヘテロシクリル又はアリールは、Rの1個から3個の基で場合によっては置換されているか;
又は、R及びRは、介在するQと一緒に、O、S、C(O)又はNRの1個から2個の原子により場合によっては割り込まれ、場合によっては1個から4個の二重結合を有し、Rから選択される1個から3個の基で場合によっては置換されている、3−10員の炭素環式又は複素環式炭素環を形成しており;
及びRは、独立に、水素、C1−6アルコキシ、OH、C1−6アルキル、COOR、SOH、−O(CHN(R)、−O(CHCOR、−OPO(OH)、CF、OCF、−N(R)、ニトロ、シアノ、C1−6アルキルアミノ又はハロゲンを表し;
【0006】
【化6】

は、C6−10アリール又はC3−10ヘテロシクリルを表し、該アリール又はヘテロシクリルは、Rから選択される1個から3個の基で場合によっては置換されており;
Zは、(CHPO(OR)(OR)を表し;
は、水素又はC1−6アルキルを表し;
は、水素、C1−6アルキル、−(CHCOOR又は−(CHN(R)を表し、
は、−(CH3−8シクロアルキル、−(CH3−10ヘテロシクリル、C1−6アルコキシ又は−(CH5−10ヘテロアリール、−(CH6−10アリールを表し、該ヘテロシクリル、アリール又はヘテロアリールは、Rから選択される1個から3個の基で場合によっては置換されており;
は、F、Cl、Br、I、CF、N(R)、NO、CN、−COR、−CONHR、−CON(R、−O(CHCOOR、−NH(CHOR、−COOR、-OCF、−NHCOR、−SOR、−SONR、−SR、(C−Cアルキル)O−、−(CHO(CHOR、−(CH1−6アルコキシ、(アリール)O−、−(CHOH、(C−Cアルキル)S(O)−、HN−C(NH)−、(C−Cアルキル)C(O)−、(C−Cアルキル)OC(O)NH−、−(C−Cアルキル)NR(CH3−10ヘテロシクリル−R、−(C−Cアルキル)O(CH3−10ヘテロシクリル−R、−(C−Cアルキル)S(CH3−10ヘテロシクリル−R、−(C−Cアルキル)−C3−10ヘテロシクリル−R、−(CH−Z−C(=Z)N(R)、−(C2−6アルケニル)NR(CH3−10ヘテロシクリル−R、−(C2−6アルケニル)O(CH3−10ヘテロシクリル−R、−(C2−6アルケニル)S(CH3−10ヘテロシクリル−R、−(C2−6アルケニル)−C3−10ヘテロシクリル−R、−(C2−6アルケニル)−Z−C(=Z)N(R)、−(CHSOR、−(CHSOH、−(CHPO(OR)、C3−10シクロアルキル、C6−10アリール、C3−10ヘテロシクリル、C2−6アルケニル及びC−C10アルキルを表し、該アルキル、アルケニル、アルコキシ、ヘテロシクリル及びアリールは、C−Cアルキル、CN、NO、OH、CON(R)及びCOORから選択される1個から3個の基で場合によっては置換されており;
及びZは、独立に、NR、O、CH又はSを表し;
gは、0から1であり;
mは、0から3であり;
nは、0から3であり;
pは、0から3である。)。
【0007】
本発明のこの態様及び他の態様は、全体として、本発明の検証において実現されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、式Iの新規カリウムチャネルブロッカーに関する。本発明はまた、本明細書中で前述した式Iのカリウムチャネルブロッカーと医薬適合性の担体とを含有する組成物を投与、好ましくは、局所又は眼房内投与することによる、高眼圧を低下させるための、又は緑内障を治療するための方法にも関する。本発明はまた、高眼圧又は緑内障の治療用の薬物の製造のための式Iの化合物の使用にも関する。
【0009】
本化合物の実施形態において、pが、1から3である化合物である。
【0010】
本発明のある実施形態は、Yが、−CO(CHであり、全ての他の可変要素が本来記載されるとおりである場合に実現される。本発明の下位の実施形態は、nが0である場合に実現される。
【0011】
本発明の別の実施形態は、Yが、CH(OR)であり、全ての他の可変要素が本来記載されるとおりである場合に実現される。
【0012】
本発明の別の実施形態は、Zが、PO(OR)(OR)でありR及びRがHである場合に実現される。本発明の下位の実施形態は、R及びRがC1−6アルキルである場合に実現される。
【0013】
別の実施形態において、Rは、H、C1−6アルキル、−C(O)C1−6アルキル及び−C(O)N(R)から選択され、全ての他の可変要素は本来記載されるとおりである。
【0014】
別の実施形態において、Xは、−(CHR−であり、pは1から3であり、全ての他の可変要素は、本来記載されるとおりである。
【0015】
別の実施形態において、Xは、−(CHRCO−であり、pは1から3であり、全ての他の可変要素は、本来記載されるとおりである。
【0016】
別の実施形態において、
【0017】
【化7】

は、Rから選択される1個から3個の基で場合によっては置換されている、6員のヘテロアリール又はフェニルである。本発明の下位の実施形態は、
【0018】
【化8】

が、ピリジルである場合に実現される。
【0019】
本発明のさらに別の実施形態は、Rが、水素又はC1−6アルキルであり、全ての他の可変要素が本来記載されるとおりである場合に実現される。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態は、ZがPO(OR)(OR)であり、R及びRが、独立に、水素、C1−10アルキル又はC1−6アルキルOHであり、Yが、−CO(CHである場合に実現される。
【0021】
本発明の別の実施形態は、Rが、F、Cl、Br、I、CF、N(R)、NO、CN、−CONHR、−CON(R、−O(CHCOOR、−NH(CHOR、−COOR、−OCF、−NHCOR、−SOR−、−SONR、−SR、(C−Cアルキル)O−、−(CHO(CHOR、−(CH1−6アルコキシ、(アリール)O−、−(CHOH、(C−Cアルキル)S(O)−、HN−C(NH)−、(C−Cアルキル)C(O)−、−(CHPO(OR)、C2−6アルケニル及びC−C10アルキルから選択され、該アルキル及びアルケニルが、C−Cアルキル及びCOORから選択される1個から3個の基で場合によっては置換されている場合に実現され;
本発明の式Iの化合物の例は、
ジ−tert−ブチル4−{[1−(3,3−ジメチル−2−オキソブチル)−6−メトキシ−1−H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ベンジルホスフェート;
4−{[1−(3,3−ジメチル−2−オキシブチル)−6−メトキシ−1−H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ベンジル リン酸二水素;
2−[(5−{[1−(3,3−ジメチル−2−オキソブチル−6−メトキシ−1−H−インダゾール−3−イル)カルボニル}ピリジン−2−イル)オキシ]エチル リン酸二水素;
(5−{[1−3,3−ジメチル−2−オキソブチル)−6−メトキシ−1H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ピリジン−2−イル)メチル リン酸二水素;
2−(5−{[1−(3,3−ジメチル−2−オキソブチル)−6−メトキシ−1H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ピリジン−2−イル)−2,2−ジフルオロエチル リン酸二水素;及び
2−(5−{[7−ブロモ−1−(3,3−ジメチル−2−オキソブチル)−6−メトキシ−1H−インダゾール−3−イル]カルボニル}プリジン−2−イル)−2,2−ジフルオロエチル リン酸二水素、
若しくは医薬適合性の塩、インビボ加水分解性のエステル、鏡像異性体、ジアステレオマー又はそれらの混合物である。本発明の下位の実施形態は、本化合物が、一ナトリウム又は二ナトリウムの形態である場合に実現される。
【0022】
本発明は、別段の断りがない限り、下記に定義される用語を用いて本明細書中で詳述する。
【0023】
本発明の化合物は、不斉中心、キラル軸及びキラル面を有し得、ラセミ化合物、ラセミ混合物として、及び個々のジアステレオマーとして生じ得、光学異性体を含む全てのあり得る異性体が本発明に含まれる(E.L.Eliel及びS.H.Wilen Stereochemistry of Carbon Compounds(John Wiley and Sons,New York 1994)、特に、1119−1190頁を参照)。
【0024】
いかなる可変要素(例えば、アリール、複素環、R、Rなど)がいかなる構成において1回を上回って現れる場合も、各々の出現に対するそれらの定義はそれぞれ出現時ごとに独立である。また、置換基/又は可変要素の組合せはそのような組合せが安定な化合物を生じる場合にのみ許容される。
【0025】
「アルキル」という用語は、他に定義されない限り、1個から10個の炭素原子を含有する一価アルカン(炭化水素)誘導基を意味する。それは直鎖、分枝鎖又は環状であり得る。好ましいアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが含まれる。アルキル基がアルキル基で置換されると言われる場合、それは「分枝アルキル基」と交換可能に用いられる。
【0026】
シクロアルキルは、他に定義されない限り、交互二重結合又は共鳴二重結合を炭素原子間に持たない、3個から15個の炭素原子を含有するアルキルの一種である。これは、縮合している1個から4個の環を含み得る。そのようなシクロアルキル要素の例には、これらに限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが含まれる。
【0027】
アルケニルは、C−Cアルケニルである。
【0028】
アルコキシは、酸素橋を介して結合する、指示された数の炭素原子のアルキル基を意味し、本明細書中で述べられているように、アルキル基は場合によっては置換されている。これらの基は直鎖又は分枝鎖配置のいずれかにある指示された長さの基であり、長さが2炭素原子以上である場合、これらは二重結合又は三重結合を含み得る。そのようなアルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、三級ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、ヘキソキシ、イソヘキソキシ、アリルオキシ、プロパルギルオキシなどである。
【0029】
ハロゲン(ハロ)は、塩素、フッ素、ヨウ素又は臭素を意味する。
【0030】
アリールは、芳香族環、例えば、フェニル、置換フェニルなど、ならびに、縮合環、例えば、ナフチル、フェナントレニルなどを意味する。したがって、アリール基は、少なくとも6原子を有する少なくとも1つの環を含み、22個以下の原子を含有する5個以下のそのような環が存在し、隣接する炭素原子又は適切なヘテロ原子間に交互(共鳴)二重結合が存在する。アリール基の例は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナントリル、アントリル又はアセナフチル及びフェナントレニル、好ましくは、フェニル、ナフチル又はフェナントレニルである。アリール基は、同様に、定義されるように置換され得る。好ましい置換アリールにはフェニル及びナフチルが含まれる。
【0031】
ヘテロシクリル又は複素環式という用語は、本明細書中で用いられる場合、飽和又は不飽和のいずれかであり、炭素原子並びに、N、O、及びSからなる群より選択される1個から4個のヘテロ原子からなり、そして上記で定義される複素環のいずれかがベンゼン環に縮合するあらゆる二環式基を含む、安定な3員から7員単環式又は安定な8員から11員二環式複素環を表す。この複素環は、安定な構造を生み出すあらゆるヘテロ原子又は炭素原子において結合し得る。縮合複素環系は、炭素環式環を含み得、ただ1つの複素環を含むことが必要である。複素環又は複素環式という用語は、ヘテロアリール部分を含む。このような複素環式要素の例には、これらに限定されるものではないが、アゼピニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、クロマニル、シンノリニル、ジヒドロベンゾフリル、ジヒドロベンゾチエニル、ジヒドロベンゾチオピラニル、ジヒドロベンゾチオピラニルスルホン、ジヒドロピロリル、1,3−ジオキソラニル、フリル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、イソクロマニル、イソインドリニル、イソキノリニル、イソチアゾリジニル、イソチアゾリル、イソチアゾリジニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、2−オキソアゼピニル、オキサゾリル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、ピリジル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、キノキサリニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアゾリル、チアゾリニル、チエノフリル、チエノチエニル及びチエニルが含まれる。好ましくは、複素環は、2−アゼピノニル、ベンズイミダゾリル、2−ジアザピノニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロピロリル、イミダゾリル、2−イミダゾリジノニル、インドリル、イソキノリニル、モルホリニル、ピペリジル、ピペラジニル、ピリジル、ピロリジニル、2−ピペリジノニル、2−ピリミジノニル、2−ピロリジノニル、キノリニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリニル及びチエニルから選択される。
【0032】
「ヘテロ原子」という用語は、独立の基準で選択されるO、S又はNを意味する。
【0033】
「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1個のヘテロ原子、O、S又はNを含有し、炭素又は窒素原子が結合点であり、1個又は2個のさらなる炭素原子が、O又はSから選択されるヘテロ原子で場合によっては置換されており、かつ1個から3個のさらなる炭素原子が窒素ヘテロ原子で場合によっては置換されている、5個又は6個の環原子を有する単環式芳香族炭化水素基、又は8から10原子を有する二環式芳香族基を意味し、該ヘテロアリール基は、本明細書中で述べられているように場合によっては置換されている。そのような複素環式要素の例には、これらに限定されるものではないが、ベンズイミダゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンズオキサゾリル、クロマニル、シンノリニル、ジヒドロベンゾフリル、ジヒドロベンゾチエニル、ジヒドロベンゾチオピラニル、ジヒドロベンゾチオピラニルスルホン、フリル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、イソクロマニル、イソインドリニル、イソキノリニル、イソチアゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、キノキサリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリル、チエノフリル、チエノチエニル、チエニル及びトリアゾリルが含まれる。さらなる窒素原子が第1の窒素及び酸素又はイオウと共に存在し、例えば、チアジアゾールをもたらし得る。
【0034】
本発明は、高眼圧又は緑内障の治療を必要とする患者に、式Iの化合物のうちの1つを単独で、又は次の有効成分、すなわち、抗β−アドレナリン作動薬、例えば、チモロール、ベタキソロール、レボベタキソロール、カルテオロール、レボブノロール、副交感神経作動薬、例えば、エピネフリン、アイオピジン、ブリモニジン、クロニジン、パラ−アミノクロニジン、炭酸脱水酵素阻害薬、例えば、ドルゾラミド、アセタゾラミド、メタゾラミド又はブリンゾラミド、EP4アゴニスト(WO02/24647、WO02/42268、EP1114816、WO01/46140、PCT出願番号CA2004000471及びWO01/72268で開示されているようなもの。)、プロスタグランジン、例えば、ラタノプロスト、トラバプロスト、ウノプロストン、レスキュラ、S1033(米国特許第5,889,052号;第5,296,504号;第5,422,368号及び第5,151,444号に記載の化合物)又は降圧性脂質、例えば、ルミガン及び、米国特許第5,352,708号に記載の化合物など;米国特許第4,690,931号で開示されている神経保護剤、とりわけ、メマンチンを含む、WO94/13275に記載のエリプロジル及びR−エリプロジル;PCT/US00/31247に記載の5−HT2受容体のアゴニスト、とりわけ、フマル酸1−(2−アミノプロピル)−3−メチル−1H−イミダゾール−6−オール及び2−(3−クロロ−6−メトキシ−インダゾール−1−イル)−1−メチル−エチルアミン又はそれらの混合物の1又は複数と組合せて投与することによる、高眼圧又は緑内障治療の組成物及び方法にも関する。降圧性脂質(基本プロスタグランジン構造のα鎖連結上のカルボン酸基が電気化学的に中性の置換基で置換されている。)の例は、カルボン酸基がC1−6アルコキシ基、例えば、OCH(PGF2a 1−OCH)又はヒドロキシ基(PGF2a 1−OH)で置換されているものである。
【0035】
好ましいカリウムチャネルブロッカーは、カルシウム活性化カリウムチャネルブロッカーである。より好ましいカリウムチャネルブロッカーは、高コンダクタンスのカルシウム活性化カリウム(Maxi−K)チャネルブロッカーである。Maxi−Kチャネルは、神経、平滑筋及び上皮組織において一般的であり、膜電位及び細胞内Ca2+によって開閉するイオンチャネルのファミリーである。
【0036】
本発明は、maxi−Kチャネルが、それが遮断された場合に、正味の溶質及びHO流出を阻害することによって房水産生を阻害し、それ故にIOPを低下させるという知見に基づく。この知見から、maxi−Kチャネルブロッカーが他の眼科的機能不全、例えば、黄斑浮腫及び黄斑変性の治療に有用であることが示唆される。IOPを低下させることにより網膜及び視神経への血流が促進されることは公知である。したがって、本発明の化合物は、黄斑浮腫及び/又は黄斑変性の治療に有用である。本発明はまた、これらの疾患の治療用の薬物の製造のための式Iの化合物の使用にも関する。
【0037】
IOPを低下させるmaxi−Kチャネルブロッカーは、神経保護効果を与えるために有用であると考えられている。これらはまた、IOPを低下させることにより、網膜及び視神経乳頭の血流速度を上昇させ、網膜及び視神経の酸素を増加させるために効果的であると考えられており、それらが組み合わされると視神経の健康状態に有益である。その結果、本発明はさらに、網膜及び視神経乳頭の血流速度を上昇させ、網膜及び視神経の酸素圧を上昇させ、ならびに神経保護効果を与えるか、又はそれらを組み合わせた効果を与える方法に関する。本発明はまた、これらの疾患の治療用の薬物の製造のための式Iの化合物の使用にも関する。
【0038】
市販薬物の中にはカリウムチャネルアンタゴニストとして機能するものが多く存在する。これらのうち最も重要なものには、化合物グリブリド、グリピジド及びトルブタミドが含まれる。これらのカリウムチャネルアンタゴニストは、抗糖尿病薬として有用である。糖尿病を治療するために、本発明の化合物をこれらの化合物の1又は複数と組み合わせ得る。本発明はまた、糖尿病の治療用の薬物の製造のための式Iの化合物の使用にも関する。
【0039】
カリウムチャネルアンタゴニストはまた、クラス3の抗不整脈薬としても、及びヒトにおける急性梗塞の治療にも用いられる。アパミン、イベリオトキシン、カリブドトキシン、ノキシウストキシン、カリオトキシン、デンドロトキシン(類)、肥満細胞脱顆粒(MCD)ペプチド及びβ−ブンガロトキシン(β−BTX)を含む多くの天然毒素がカリウムチャネルを遮断することが知られている。不整脈を治療するために、本発明の化合物をこれらの化合物の1又は複数と組み合わせ得る。本発明はまた、不整脈の治療用の薬物の製造のための、これらの化合物と組み合わせた式Iの化合物の使用にも関する。
【0040】
うつ病は、神経伝達物質放出の減少に関連する。うつ病の現在の治療には、神経伝達物質取り込みのブロッカー、及び神経伝達物質の寿命を延長させるように作用する神経伝達物質分解に関与する酵素の阻害剤が含まれる。
【0041】
アルツハイマー病も神経伝達物質放出の低下を特徴とする。抗コリンエステラーゼ剤(例えば、フィソスチグミン(エセリン)及びタクリン(テトラヒドロアミノクリジン))などのコリン作動性増強剤;他の部分にあまり影響を与えずに神経細胞の代謝に影響を与えるヌートロピック(例えば、ピラセタム、オクシラセタム;及び、メシル酸エルゴロイド及びニモジピンを含むカルシウムチャネル遮断薬の混合物など、脳の脈管構造に影響を与える薬物といった3種類のクラスの薬物がアルツハイマー病の治療において研究されている。脳ドーパミン及びノルエピネフリンを増加させるモノアミンオキシダーゼB阻害剤であるセレジリンは、報告によると、一部のアルツハイマー患者において穏やかな改善をもたらす。アルミニウムキレート剤は、アルツハイマー病がアルミニウム毒性によるものであると考える人々が関心を寄せている。神経安定薬及び抗不安薬を含む行動に影響を与える薬物が使用されている。抗不安薬は、作用の穏やかな精神安定剤であるが、神経安定薬よりも効果が少ない。本発明は、カリウムチャネルアンタゴニストとして有用な新規化合物に関する。本発明はまた、うつ病及びアルツハイマー病の治療用の薬物の製造のための式Iの化合物の使用にも関する。
【0042】
本発明の化合物は、アルツハイマー病の治療において、抗コリンエステラーゼ剤、例えば、フィソスチグミン(エセリン)及びタクリン(テトラヒドロアミノクリジン)、ヌートロピック、例えば、ピラセタム、オキシラセタム、メシル酸エルゴロイド、選択的カルシウムチャネルブロッカー、例えば、ニモジピン、又はモノアミンオキシダーゼB阻害剤、例えば、セレギリンと組み合わせることができる。本発明の化合物はまた、不整脈の治療において、アパミン、イベリオトキシン、カリブドトキシン、ノキシウストキシン、カリオトキシン、デンドロトキシン(類)、肥満細胞脱顆粒性(MCD)ペプチド、β−ブンガロトキシン(β−BTX)又はそれらの組合せと組み合わせることができる。本発明の化合物はさらに、糖尿病を治療するために、グリブリド、グリピジド、トルブタミド又はそれらの組合せと組み合わせることができる。
【0043】
本明細書における実施例は請求される発明を説明するものであり、それを限定するものではない。請求される各化合物はカリウムチャネルアンタゴニストであり、したがって、神経伝達物質放出を最大にするために細胞を脱分極状態に維持することが望ましい、既述の神経学的障害において有用である。有効なカリウムチャネル遮断を達成するようにヒトを含む哺乳動物に投与することができる組成物を生成させるために、本発明において生成される化合物を、適切かつ公知の医薬適合性の賦形剤と容易に組み合わせる。
【0044】
医薬において用いるため、式Iの化合物の塩は医薬適合性の塩である。しかし、他の塩は、本発明による化合物又はそれらの医薬適合性の塩の調製において有用であり得る。本発明の化合物が酸性である場合、適切な「医薬適合性の塩」は、無機塩基及び有機塩基を含む医薬適合性の非毒性塩基から調製される塩を指す。無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが含まれる。特に好ましいものは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。医薬適合性の有機非毒性塩基から誘導される塩には、一級、二級及び三級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩が含まれる。好ましい医薬適合性の塩は、ナトリウム塩又はカリウム塩である。しかし、調製中にその塩の単離を促進するために、医薬適合性であるか否かにかかわらず、選択した溶媒中でより溶解性の低い塩が好ましいものであり得る。
【0045】
本発明の化合物が塩基性である場合、塩は無機及び有機酸を含む医薬適合性の非毒性酸から調製し得る。そのような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などが含まれる。特に好ましいものは、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸及び酒石酸である。
【0046】
上述の医薬適合性の塩及び他の典型的な医薬適合性の塩の調製は、Bergら、“Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.,1977:66:1−19によって十分に説明されている。
【0047】
インビボ加水分解性のエステルは、親化合物を生成させるためにヒトの体内で加水分解される医薬適合性のエステルである。このようなエステルは、例えば、試験動物に試験化合物を静脈内投与し、続いて試験動物の体液を調べることにより同定することができる。
【0048】
本明細書中で用いられる場合、「組成物」という用語は、特定の成分を特定の量含有する生成物、ならびに、特定の量の特定の成分の組合せから、直接又は間接的に得られるあらゆる生成物を包含することが意図される。
【0049】
本発明による化合物をヒト被験者に投与する場合、1日投与量は、通常、処方する医師により、一般には個々の患者の年齢、体重、性別及び応答、ならびに、患者の症状の重症度に従って変化する投与量をもって決定される。
【0050】
用いられるmaxi−Kブロッカーは、治療上有効な量で、静脈内、皮下、局所、経皮、非経口又は当業者に公知の他のあらゆる方法で投与することができる。
【0051】
眼用医薬組成物が、溶液、懸濁液、軟膏、クリームの形態で、又は固形挿入物として、眼への局所投与に好ましく適応させられる。この化合物の眼用処方には、0.01ppmから1%、特には、0.1ppmから1%の医薬が含有され得る。その用量が眼内圧の低下、緑内障の治療、血流速度上昇又は酸素圧増加において有効であるならば、より高い用量、例えば約10%、又はより低い用量を用いることができる。1回量では、化合物 0.1ngから5000μg、好ましくは1ngから500μg、特には10ngから100μgをヒトの眼に適用し得る。
【0052】
本化合物を含有する医薬調製物は、非毒性医薬有機担体又は非毒性医薬無機担体と都合よく混合し得る。医薬適合性の担体の典型は、例えば、水、水及び水混和性溶媒、例えば、低級アルカノール又はアルアルカノールの混合液、植物油、ポリアルキレングリコール、石油ベースのゼリー、エチルセルロース、オレイン酸エチル、カルボキシメチル−セルロース、ポリビニルピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル及び他の従来用いられる許容可能な担体である。医薬調製品はまた、非毒性補助物質、例えば、乳化剤、保存剤、湿潤剤、増粘剤など、例えば、ポリエチレングリコール200、300、400及び600、カルボワックス1,000、1,500、4,000、6,000及び10,000、抗菌性化合物、例えば、四級アンモニウム化合物、冷滅菌特性を有することが公知であり、かつ使用しても有害ではないフェニル水銀塩、チメロサール、メチル及びプロピルパラベン、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、緩衝性成分、例えば、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、グルコン酸緩衝液及び他の従来の成分、例えば、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン、オレイン酸塩、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチレート、ジオクチルナトリウムスルホスクシネート、モノチオグリセロール、チオソルビトール、エチレンジアミン四酢酸などを含み得る。加えて、適切な眼用ビヒクルをこの目的のための担体媒体として用いることができ、これには従来のリン酸緩衝液ビヒクル系、等張性ホウ酸ビヒクル、等張性塩化ナトリウムビヒクル、等張性ホウ酸ナトリウムビヒクルなどが含まれる。医薬調製品はまた、微粒子処方物の形態でもあり得る。医薬調製品はまた、固体挿入物の形態でもあり得る。例えば、固体水溶性ポリマーを本医薬品の担体として用い得る。挿入物の形成に用いられるポリマーは、あらゆる水溶性の非毒性ポリマー、例えば、セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、(ヒドロキシ低級アルキルセルロース)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース;アクリレート、例えば、ポリアクリル酸塩、エチルアクリレート、ポリアクチルアミド;天然産物、例えば、ゼラチン、アルギン酸塩、ペクチン、トラガカント、カラヤ、コンドルス(chondrus)、寒天、アラビアゴム;デンプン誘導体、例えば、酢酸デンプン、ヒドロキシメチルデンプンエーテル、ヒドロキシプロピルデンプン、ならびに、他の合成誘導体、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、中性化カルボポール及びキサンタンガム、ジェランガム及び該ポリマーの混合物であり得る。
【0053】
本発明の処方物の投与に適する被検体には、霊長類、ヒト及び他の動物、特には、ヒト及びペット動物や家畜、例えば、ネコ及びイヌが含まれる。
【0054】
医薬調製品は、非毒性補助物質、例えば、使用しても有害ではない抗菌性化合物、例えば、チメロサール、塩化ベンズアルコニウム、メチル及びプロピルパラベン、臭化ベンジルドデシニウム、ベンジルアルコール又はフェニルエタノール;緩衝性成分、例えば、塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム又はグルコン酸緩衝液;及び他の従来の成分、例えば、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチレート、エチレンジアミン四酢酸などを含み得る。
【0055】
眼用溶液又は懸濁液は、眼内の許容し得るIOPレベルを維持することが必要となるたびに投与し得る。哺乳動物の眼への投与は1日約1回又は2回であることが意図される。
【0056】
局所眼投与については、併用療法の場合において、本発明の新規処方物は、単位投与量が、有効成分の治療上有効量、又は、併用療法の場合には、その倍数を含有するように配合された、溶液、ゲル、軟膏、懸濁液又は固体挿入物の形態をとり得る。
【0057】
実例として与える次に挙げる実施例は、本発明の例証である。
【0058】
実施例で用いる用語の定義は以下の通りである:
SM−出発物質、
DMSO−ジメチルスルホキシド、
TLC−薄層クロマトグラフィー、
SGC−シリカゲルクロマトグラフィー、
PhMgBr−フェニル臭化マグネシウム、
h=hr=時間、
THF−テトラヒドロフラン、
DMF−ジメチルホルムアミド、
min−分、
LC/MS−液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(質量分析)、
HPLC−高速液体クロマトグラフィー、
PyBOP−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、
equiv=eq=等量、
NBS−N−ブロモスクシンアミド及び
AIBN−2,2’−アゾビスイソブチロニトリル。
【0059】
スキーム1から5に従い、適切な場合には改変を行い、本発明の化合物を調製することができる。
【0060】
【化9】

【0061】
【化10】

【0062】
スキーム1及び2において、ニトロアニソールは、NBS、AIBN及び過酸化ベンゾイルを用いて臭素化する。シアン化カリウムを用いたブロモニトロアニソールの処理により、シアノニトロアニソールを得た。アミンへのニトロ基の転換は、水素添加により遂行する。次に、そのアミンを亜硝酸ナトリウム及びHClで処理し、インダゾール環を得る。この反応において、アニリン部分のニトロ化によりジアゾニウムが生成したらすぐに、酸性シアン化ベンジルにより分子内にそれを捕捉する。得られた誘導体の互変異性化により、インダゾール核を得る。ニトリルをグリニャールで処理し、続いて得られたイミノマグネシウム錯体を加水分解し、所望するアルキル/アリールケトンを得る。
【0063】
【化11】

【0064】
【化12】

【0065】
【化13】

【0066】
(調製実施例1)
【0067】
【化14】

【0068】
500mLのフラスコに、NaH 336mmol(13.44g;60%)を入れた。アルゴン下で、DMSO 150mLを添加し、続いて5℃でシアン酢酸エチル 32mL(2.2等量;352mmol)を滴下添加した。全て添加した後、その反応系を室温まで1時間にわたり温めた。粉末として出発ニトロベンゼン誘導体 30gを添加(160mmol)した。その反応混合物を密閉系中で90℃にて8時間加熱した。酸性化及び標準的処理により、未精製の油状残渣を得て、それをシリカゲルカラムで精製し、所望する結晶性生成物39gを得て、それを脱炭酸し、次のようにベンジルニトリルを得た。上記で得たSM 38gを1N 炭酸ナトリウム 400mLに溶解した。均一溶液をrtにて2日間撹拌した。TLC分析により、反応の完了が示された。その反応混合物を酸性化し、酢酸エチルで抽出(100mLx4)した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、残渣をSGCに供し、所望する生成物を得た。
【0069】
1H NMR CDCL3:7.72(1H,d,J=3Hz);7.61(1H,d,J=8.5Hz);7,25(1H,dd,J=3及び8.5Hz);4.17(2H,s);3.94(3H,s)。LCMS[M+H]=193。
【0070】
(調製実施例2)
【0071】
【化15】

【0072】
ベンジルニトリル誘導体 10gをTHF 20mLに溶解し、続いて、メタノール 50mLで希釈した。その反応混合物を圧力管に取り、Pd−C(10% wt/10mol %)を添加し、その反応混合物に40psiで水素添加した。NO基の還元に必要な量の水素を消費した後、その反応を停止させた。TLC分析から、スポットからスポットへの転換が示された。その反応混合物をceliteのパッドで濾過し、その濾過液を固体になるまで濃縮し、次の段階で直接使用した。未精製アニリン誘導体(52mmolを2N HCl(150mL)中で溶解/懸濁し、5℃に冷却し、続いて水 10mL中の亜硝酸ナトリウム 5.4gを添加した。その反応混合物を室温に徐々に温めながら1時間撹拌した。TLC分析により、SMが完全に消費され、新しいスポットが形成されたことが示された。その反応混合物を酢酸エチルで抽出し(100mLx4);有機相を回収し、乾燥させ、濃縮した。その残渣をSGCで精製し、所望する生成物を得た。LCMS[M+H]=174。
【0073】
(調製実施例3)
【0074】
【化16】

【0075】
調製実施例2から得たニトリル(1.5g)をドライTHF 20mLに溶解し、アルゴン下で5℃にてPhMgBr(THF中1M)3等量を添加した。その反応混合物を室温にて1時間撹拌した。水及び1N HCl(15mL)を添加することにより、その反応を慎重に不活性化した。不活性化した反応混合物を室温にて1時間撹拌し、次に、酢酸エチルで抽出し(20mLx3);合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、固体残渣になるまで濃縮し、それをトルエンを用いて3回共沸させた。LCMS[M+H]=253。
【0076】
(調製実施例4)
【0077】
【化17】

【0078】
インダゾール 4.15gを量り取り、2回のトルエン(100mL)洗浄で水を共沸させ、ロータリーエバポレーターによりトルエン共沸を遂行した。高真空下で完全に乾燥させ、アルゴンパージを行った。アルゴン下で、40mL ドライTHF及び92mL ドライエーテル中に溶解した。氷水浴で5℃に冷却した。イソプロピルマグネシウムクロライド 3等量(THF中の2M 溶液 6mL)を入れ、室温にて0.5時間撹拌した。1N HCl(240mL)を慎重に加え、1時間撹拌した。TLCで反応を監視した。EtOAcで抽出し、ロータリーエバポレーターにかけ、所望する生成物を得た。
【0079】
LCMS[M+H]=219。
【0080】
(調製実施例5)
【0081】
【化18】

【0082】
段階A:
【0083】
【化19】

【0084】
酢酸中の二臭化物(23.2g、実施例1、段階3の副生成物)の溶液に、酢酸ナトリウム(22.5g)を添加した。その混合物を油浴中に置き、反応が完了するまで数時間還流させた。その混合物を室温に冷却し、次に、氷/水に注ぎ、灰白色の固体として、所望する化合物を得た。その固体を濾過により単離し、窒素雰囲気下で乾燥させた。
【0085】
H NMR(CDCl):δ10.23(1H,s);8.19(1H,d);7.02(1H,dd);6.96(1H,d);3.90(3H,s)。
【0086】
段階B:
【0087】
【化20】

【0088】
段階Aからの中間体に、オルトギ酸トリエチル(40ml)を添加し、数時間130℃に加熱した。得られた混合物を濃縮して乾燥させ、褐色の固体として表題化合物を得た。
【0089】
H NMR(DMSO):δ10.08(1H,s);7.98(1H,d);7.25(1H,d);7.02(1H,dd);6.81(1H,s);3.82(3H,s);3.52(4H,q);1.11(6H,t)。
【0090】
(実施例1)
【0091】
【化21】

【0092】
ジ−tert−ブチル4−{[1−(3,3−ジメチル−2−オキソブチル)−6−メトキシ−1−H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ベンジルホスフェート
段階1
【0093】
【化22】

【0094】
エチレングリコール 400mL中のフルオロ−アセトフェノン 100gを室温にてヒドラジン(0.624mol、20g)とともに4時間撹拌し、その後、その反応混合物を150℃に48時間加熱した。TLC分析により、反応が完了したことが示された。その反応混合物をジクロロメタンと食塩水とに分配した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、固体になるまで蒸発させた。ヘキサン/ジクロロメタンから再結晶化させ、インダゾールを得た。
【0095】
1H NMR(CDCL3):7.5(1H,d,7.5Hz);6.8(2H,m);3.8(3H,s);2.55(3H,s)LCMS[M+H]=163。
【0096】
段階2
【0097】
【化23】

【0098】
6−メトキシ−3−メチル−1−H tert−ブチル−6−メトキシ−3−メチル−インダゾール1−インダゾール−カルボキシレート
トリエチルアミン1.1等量を含有するMeCN 1Lに、インダゾール 78gを溶解し、DMAP 0.2等量を−5℃に冷却し;続いて、MeCN 200mL中のBoc2O(1.1等量)をゆっくりと添加した。rtでその反応物を2時間撹拌した後、その反応混合物を油状になるまで蒸発させ、それをEtOAcと食塩水との間で分配し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。その残渣を短いSGCに添加し、ヘキサン中の15% EtOAcで溶出した。蒸発させ、生成物を得た。
【0099】
1H NMR(CDCL3):7.6(1H,bs);7.42(1H,d,J=7.5Hz);6.85(1H,dd);3.8(3H,s);2.5(3H,s);1.7(9H,s)。
【0100】
LCMS[M+H]=263。
【0101】
段階3
【0102】
【化24】

【0103】
インダゾール 100gをCCl 600mLに溶解し、続いて、NBS 1.1等量及びBzO 0.2等量を添加した。反応混合物をアルゴンで真空パージし、太陽灯からの光の存在下で5時間還流させた。反応混合物をSGのパッドで濾過し、濃縮した。残った油状物質を短いSGCで精製した。純粋な臭化物 85gを得た。混合した分画から、ジブロモ誘導体を得た。
【0104】
一臭化物:1H NMR(CDCL3):7.7(1H,d,7.5Hz);7.6(1H,bs);6.95(1H,dd);4.7(2H,s);3.9(3H,s);1.7(9H,s);
二臭化物:1H NMR(CDCL3):8.05(1H,d,J=7.5Hz);7.6(1H,bs);7.0(1H,dd);6.85(1H,s);3.9(3H,s);1.7(9H,s);
段階4
【0105】
【化25】

【0106】
3−(ブロモメチル)−6−メトキシ−t−ブチル−3−ホルミル−6−メトキシ−1−H−インダゾール 1−H−インダゾール−1−カルボキシレート
臭化物 5gをDMSO 10mLに溶解し、0℃に冷却し、続いて、TMANO(トリメチルアミンN−オキシド)2.5等量を添加した。反応物を0.5時間撹拌し、次に、標準的処理及びSGパッドの濾過を行い、定量的に所望する生成物を得た。LCMS[M+H]=277。
【0107】
1H NMR(CDCL3):10.2(1H,s);8.1(1H,d,J=7.5Hz);7.6(1H,bs);7.0(1H,dd);3.9(3H,s);1.7(9H,s);
段階5
【0108】
【化26】

【0109】
高真空下でガラス製品を火力乾燥した。そのフラスコ中の純粋なヨード−ベンジルアルコール誘導体(3.6g、10mmol)に、イソプロピルMgCl(5mL、2M溶液)をゆっくりと添加した。rtにて2時間撹拌した後、15mL THF中のインダゾール誘導体(1.1g、4mmol)を添加した。その反応混合物をrtにて2時間撹拌した。LC−MSにより、反応完了が示された。その反応混合物を30mL NHCl飽和溶液に注ぎ、続いて、40mL エーテルを添加した。その有機層を分離し、水層をエーテル(40mL)により抽出した。合わせた有機層をKCO飽和溶液(2x30mL)、水(40mL)及び食塩水(20mL)で洗浄した。溶媒を除去し、その残渣をさらに精製せずに次の段階の反応に使用した。LCMS[M+H]=499。
【0110】
段階6及び7
【0111】
【化27】

【0112】
20mL ジクロロメタン中のインダゾール(未精製、段階5より)の溶液に、5g celite及びPCC(MW 215.56、〜2等量)4.3gを添加した。その反応混合物をrtにて2時間撹拌した。LC−MSにより、反応が完了したことが示された。LCMS[M+H]=497。その反応混合物を濾過した。溶媒を除去し、残渣を10mL MeOHに溶解し、20mL 2N HClを添加した。rtで1時間撹拌した後、LCMS及びTLC分析により、反応が完了したことが示された。その反応混合物をEtOAcで抽出(2x30mL)した。溶媒を除去し、残渣をさらに精製せずに次の段階の反応に使用した。LCMS[M+H]=283。
【0113】
段階8
【0114】
【化28】

【0115】
15mL アセトン中のインダゾール(段階7からの342mg 未精製生成物、〜10mmol)の溶液に、KCO 1.5g及び1.5mL ブロモピナコロン(Mw 179.06、d1.326、2.0g、11mmol)を添加した。その反応混合物を80℃にて密封試験管中で2時間撹拌した。塩を濾別した後、溶媒を除去し、残渣をHPLCで精製し、白色の固体生成物を得た。
【0116】
1H NMR(CDCL3)=8.3(3H,m);7.5(1H,d,J=7.5Hz);7.05(1H,dd);7.6(1H,bs);5.4(2H,s);4.8(2H,bs);3.9(3H,s);1.38(9H,s)。
【0117】
LCMS[M+H]=381。
【0118】
段階9及び10
【0119】
【化29】

【0120】
ジ−t−ブチル−4−{[1−(3,3−ジメチル−2−オキソブチル)−6−メトキシ−1−H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ベンジルホスフェート
CHCl 20mL中のインダゾール−ベンジルアルコール誘導体(1.02g、2.68mmol)の溶液に、CHCN中の0.45M 1H−テトラゾール 15mLを添加し、続いて、ジ−tert−ブチルN,N−ジエチルホスホールアミダイト(diethylphosphoramidite)(0.8mL、d0.896、Mw 249.34、2.87mmol、1.1等量)を添加した。30分間の撹拌後、その反応混合物を−40℃に冷却し、5mL DCM中のMCPBA(85%、2g、Mw 172.57、9.8mmol)の溶液を添加した。その反応混合物をrtに温め、10分間撹拌した。10mL 10% NaHSO溶液を添加し、過剰なMCPBAを不活性化した。rtにて15分間撹拌した。その反応混合物をエーテル及び水で処理した。その有機層を分離し、水で洗浄した。溶媒を除去し、生成物(残渣)をさらに精製せずに、次の段階の反応(実施例2)で使用した。
【0121】
(実施例2)
【0122】
【化30】

【0123】
実施例1の段階10において得られた未精製生成物に、EtOAc中のHCl(0℃にて5分間EtOAcに通したHCl)を添加し、室温にて4時間撹拌した。溶媒を除去した。その残渣を逆相HPLCで精製し、白色の固体生成物として所望する化合物を得た。
【0124】
1H NMR(CD3OD):8.25(2H,d,J=7.5Hz);8.18(1H,d,J=7.5Hz);7.6(2H,d,J=7.5Hz);7.0(1H,dd);6.9(1H,bs);5.65(2H,s);5.1(2H,bs);3.9(3H,s);1.35(9H,s);
LCMS[M+H]=460。
【0125】
(実施例3)
【0126】
【化31】

【0127】
1−(3−{[6−(2−ヒドロキシエトキシ)ピリジン−3−イル]カルボニル−6−メトキシ−1−H−インダゾール−1−イル)−3,3−ジメチルブタン−2−オン
段階A:
【0128】
【化32】

【0129】
6−クロロピリジン−3−イル)−6−メトキシ−1−H−インダゾール−3−イル)−メタノン
THF(10mL)中の5−ヨード−2−クロロピリジン(2.56g、10.78mmol)の溶液に、−78℃にてiPrMgBrを滴下添加した。その反応物を1時間撹拌し、その後、THF(5mL)中の溶液として中間体1(1.71g、6.10mmol)を添加した。2時間後、その反応を1N NaOHで不活性化し、EtOAcで抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、真空で濃縮した。トルエン(50mL)中の未精製生成物の溶液に、MnO(2.173g、25.0mmol)を添加し、その反応混合物を130℃に加熱した。1時間後、その反応が完了し、celiteのパッドを介して濾過し、真空で濃縮した。未精製生成物をTHF(10mL)中に溶解し、1N HCl 4mLを滴下添加した。TLC分析により完了したことが示されるまでその反応系をRTにて撹拌した。その反応混合物を0℃に冷却し、固体沈殿物を回収した。H NMR(CDOD)δ:3.900(3H,s),7.013(1H,d),7.062(1H,s),7.627(1H,d),8.672(1H,d),9.306(1H,s)。
【0130】
段階B:
【0131】
【化33】

【0132】
1−{3−[6−クロロピリジン−3−イル)カルボニル]−6−メトキシ−1−H−インダゾール−1−イル)−3,3−ジメチルブタン−2−オン
DMF(14mL)中の段階Aからの中間体(1.00g、3.48mmol)及びCsCO(3.396g、10.45mmol)の溶液に、1−クロロピナコロン(0.681mL、5.22mmol)を添加した。40分後、その反応が完了し、HOで不活性化した。その反応混合物をEtOAcで抽出し、合わせた有機層をHO、食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、真空中で濃縮し、所望する生成物を得た。H NMR(CDOD)δ:1.344(9H,s),3.888(3H,s),6.947(1H,s),7.043(1H,d),7.625(1H,d),8.221(1H,d),8.624(1H,d),9.257(1H,d)。
【0133】
段階C:
【0134】
【化34】

【0135】
1−{3−[6−(2−ヒドロキシエトキシ)ピリジン−3−イル)カルボニル]−6−メトキシ−1−H−インダゾール−1−イル)−3,3−ジメチルブタン−2−オン
NaH(鉱油中の60% 分散液)40.6mg(1.036mmol)をヘキサンで3回洗浄し、窒素下で乾燥させた。エチレングリコール(1mL)をドライNaHに添加し、その反応物を60℃にて20分間撹拌した。その反応混合物に、段階Bからの中間体(100mg、0.259mmol)をTHF(1.5mL)中の溶液として添加した。その反応物を一晩、60℃にて撹拌し続けた。完了時に、THFを真空中で除去し、EtOAcで希釈し、HO、食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィーを介して未精製残渣を精製した。
【0136】
1.376(9H,s),3.889(3H,s),4.021(2H,m),4.608(2H,m),5.429(2H,s),6.543(1H,s),6.223(1H,d),7.054(1H,d),8.336(1H,d),8.541(1H,d),9.310(1H,s)。
【0137】
(実施例4)
【0138】
【化35】

【0139】
2−[(5-{[1−(3,3−ジメチル−2−オキソブチル−6−メトキシ−1−H−インダゾール−3−イル)カルボニル}ピリジン−2−イル)オキシ]エチル リン酸二水素
CHCl(5mL)中の実施例3、段階Cからの中間体(160mg、0.388mmol)の溶液に、RTにてテトラゾール(1.29mL、0.582mmol、0.45M/CHCN)及びジ−tert−ブチル ジエチルホスホールアミダイト(diethylphosphoramidite)(0.129mL、0.465mmol)を添加した。0.5時間後に、その反応が完了し、0℃にて過酢酸(0.072mL、0.582mmol)を添加した。その反応混合物を重亜硫酸ナトリウム飽和溶液で不活性化し、EtOAcで希釈し、重炭酸ナトリウム飽和溶液、HO及びNaCl飽和溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、真空中で乾燥するまで蒸発させた。未精製の残渣をSiOでクロマトグラフィーにかけた。EtOAc中のリン酸エステルの溶液を0℃に冷却し、飽和するまでその混合物に99% HClガスを泡立てて通気した。固体の沈殿物を回収し、EtOAc/エーテルから再結晶化させ、最終生成物を得た。
【0140】
H NMR(CDOD)δ:1.350(9H,s),3.887(3H,s),4.353(2H,m),4.652(2H,m),5.696(2H,s),6.929(1H,s),7.024(1H,d),7.072(1H,d),8.199(1H,d),8.638(1H,d),9.217(1H,s)。
【0141】
(実施例5)
【0142】
【化36】

【0143】
1−(3−{[6−(ヒドロキシメチル)ピリジン−3−イル)カルボニル}−6−メトキシ−1H−インダゾール−1−イル)−3,3−ジメチルブタン2−オン
段階A:
【0144】
【化37】

【0145】
(6−メトキシ−1H−インダゾール−3−イル)6-メチルピリジン−3−イル)メタノン
THF(15mL)中の5−ブロモ−2−メチルピリジン(736mg、4.31mmol)の溶液に、−78℃でnBuLi(2.156mL、5.39mmol、ヘキサン中2.5M)を滴下添加した。この反応物を1時間撹拌し、その後、中間体1(1.00g、3.59mmol)をTHF(5mL)中の溶液として添加した。出発物質を2時間後に消費し、その反応物を1N NaOHで不活性化し、EtOAcで抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。トルエン(20mL)中の未精製生成物の溶液にMnO(0.414g、4.77mmol)を添加し、その反応混合物を130℃に加熱した。1時間後、その反応が完了し、celiteのパッドを介して濾過し、真空で濃縮した。その未精製生成物をTHF中で溶解し、1N HCl 4mLを滴下添加した。1時間後、反応混合物を0℃に冷却し、固体沈殿物を回収した。H NMR(DMSO)δ:2.553(3H,s),3.832(3H,s),7.000(1H,d),7.089(1H,s),7.451(1H,d),8.100(1H,d),8.430(1H,d),9.220(1H,s)。
【0146】
段階B:
【0147】
【化38】

【0148】
1−{6−メトキシ−3−[6−メチルピリジン−3−イル)カルボニル]−1H−インダゾール−1−イル)−3,3−ジメチルブタン−2−オン
実施例3の段階Bで述べたようにしてこの化合物を調製した。
【0149】
H NMR(CDCl)δ:1.38(9H,s),2.65(3H,s),3.85(3H,s),5.22(2H,s),6.56(1H,s),7.05(1H,d),7.32(1H,d),8.34(1H,d),8.45(1H,d),9.50(1H,s)。
【0150】
段階C:
【0151】
【化39】

【0152】
1−(3−{[6−(ヒドロキシメチル)ピリジン−3−イル)カルボニル]−1H−インダゾール−1−イル)−3,3−ジメチルブタン−2−オン
CHCl中の段階Bからの中間体(74mg、0.202mmol)の撹拌溶液に、0℃にてMCPBA(67mg、0.303mmol)を添加した。1.5時間後に、TLCにより反応が完了したことが示され、その反応混合物を真空中で濃縮した。未精製残渣をEtOAcに溶解し、重亜硫酸ナトリウム飽和溶液、HO、食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィーを介して精製した。N−オキシドをCHClに溶解し、0℃にてTFAAを滴下添加した。2時間後、その反応物を真空中で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーを介して精製した。
【0153】
H NMR(CDCl)δ:1.373(9H,s),3.898(3H,s),4.882(2H,s),5.428(2H,s),6.564(1H,s),7.066(1H,d),7.429(1H,d),8.352(1H,d),8.581(1H,d),9.541(1H,s)。
【0154】
(実施例6)
【0155】
【化40】

【0156】
(5−{[1−3,3−ジメチル−2−オキソブチル)−6−メトキシ−1H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ピリジン−2−イル)メチル リン酸二水素
実施例4で述べたようにしてこの化合物を調製し、生成物をEtOAc及びヘキサンから再結晶化させた。
【0157】
H NMR(CDOD)δ:1.340(9H,s),3.884(3H,s),5.235(2H,d),5.687(2H,s),6.937(1H,s),7.036(1H,d),7.840(1H,d),8.210(1H,d),8.797(1H,d),9.430(1H,s)。
【0158】
(実施例7)
【0159】
【化41】

【0160】
1−(3−{[6−(1,1−ジフルオロ−2−ヒドロキシエチル)ピリジン−3−イル]カルボニル}−6−メトキシ−1−インダゾール−1−イル)−3,3−ジメチルブタン−2−オン
段階A:
【0161】
【化42】

【0162】
エタノール中の2−ピリジン酢酸、5−ブロモ−α,α−ジフルオロ−、エチルエステル(13.4g;“Ero,H.;Haneko,Y.;Sakamoto,T.Chem Pharm.Bull.2000,48,982.”に従い調製。)の溶液に、0℃にて水素化ホウ素ナトリウム(2.3g)を分割添加した。0℃にて1時間撹拌した後、その混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。その有機層を1N NaOH水溶液、食塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮し、未精製アルコールを得た。塩化メチレン中のその未精製アルコールに、0℃にてイミダゾール(4.1g)及びTBS−Cl(8.3g)を添加した。その混合物を1時間撹拌した。その反応物を0.1N HCl水溶液に注ぎ、塩化メチレンで抽出した。その有機層を食塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、蒸発させた。その残渣をシリカゲル(100% 塩化メチレン)で精製し、無色の油状物質として所望する化合物を得た。
【0163】
H NMR(CDCl):δ8.75(1H,d);7.95(1H,dd);7.57(1H,d);4.20(2H,t);0.82(9H,s);0.02(6H,s)。
【0164】
段階B:
【0165】
【化43】

【0166】
実施例3、段階Aに対して述べたものと同様の手順により、所望する化合物を調製した。
【0167】
H NMR(DMSO):δ9.35(1H,d);8.65(1H,dd);8.14(1H,d);7.88(1H,d);7.10(1H,d);7.03(1H,dd);4.05(2H,t);3.85(3H,s)。
【0168】
LC−MS(M+H)=334.2。
【0169】
段階C:
【0170】
【化44】

【0171】
実施例3、段階Bに対して述べたものと同様の手順により、所望する化合物を調製した。この化合物をシリカゲルにより精製(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)し、ヘキサン/酢酸エチルから結晶化させた。
【0172】
H NMR(CHCl):δ9.53(1H,d);8.71(1H,dd);8.35(1H,d);7.88(1H,d);7.08(1H,dd);6.57(1H,d);5.44(2H,s);4.32(2H,t);3.91(3H,s);1.38(9H,s)。
LC−MS(M+H)=432.3。
【0173】
(実施例8)
【0174】
【化45】

【0175】
2−(5−{[1−(3,3−ジメチル−2−オキソブチル)−6−メトキシ−1H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ピリジン−2−イル)−2,2−ジフルオロエチル リン酸二水素
実施例4に述べるようにしてこの化合物を調製した。最終生成物を逆相液体クロマトグラフィー(HO中20−90%アセトニトリル)を介して精製した。
【0176】
H NMR(CDOD)δ:1.341(9H,s),3.888(3H,s),4.586(2H,m),5.704(2H,s),6.938(1H,s),7.046(1H,d),7.897(1H,d),8.215(1H,d),8.727(1H,d),9.457(1H,s)。
【0177】
(実施例9)
【0178】
【化46】

【0179】
2−(5−{[7−ブロモ−1−(3,3−ジメチル−2−オキソブチル)−6−メトキシ−1H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ピリジン-2−イル)−2,2−ジフルオロエチル リン酸二水素
段階A:
【0180】
【化47】

【0181】
クロロホルム中の実施例7、段階Cからの中間体に、0℃にて臭素をゆっくりと添加した。その反応物を0℃にて5分間撹拌し、重亜硫酸ナトリウム溶液に注いだ。その混合物を塩化メチレンで抽出した。有機層をMgSOで乾燥させ、濃縮した。残渣を結晶化(ヘキサン/酢酸エチル)により精製した。
【0182】
H NMR(CHCl):δ9.51(1H,d);8.69(1H,dd);8.45(1H,d);7.88(1H,d);7.14(1H,d);5.97(2H,s);4.31(2H,t);4.04(3H,s);1.38(9H,s)。
【0183】
LC−MS(M+H)=512.1。
【0184】
段階B:
【0185】
【化48】

【0186】
実施例4に対して述べたものと同様の手順により、所望する化合物を調製した。この化合物を酢酸エチルから結晶化させた。
【0187】
1H NMR(CD3OD):δ9.44(1H,d);8.74(1H,dd);8.39(1H,d);7.92(1H,d);7.28(1H,d);6.57(1H,d);6.08(2H,s);4.61(2H,m);4.01(3H,s);1.33(9H,s)。
【0188】
(実施例10)
【0189】
【化49】

【0190】
1−(3−{[6−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン−3−イル]カルボニル}−6−メトキシ−1H−インダゾール−1−イル)−3,3−ジメチルブタン−2−オン
段階A:
【0191】
【化50】

【0192】
トルエン中の2,5−ジブロモピリジン(2.4g)の溶液に、トリブチルアリル スズ(3.4mL)及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.7g)を窒素雰囲気下で添加した。その混合物を数時間還流させ、減圧下で濃縮した。「ウェットエーテル」で残渣を再溶解し、DBU(3mL)をゆっくりと添加し、混濁した溶液を得た。その混合液をシリカゲルのパッドで濾過し、濃縮した。残渣を塩化メチレン/メタノール=1/1溶液に溶解し、−78℃に冷却した。反応混合液が青色になるまで、この溶液にオゾンを泡立てて通気した。その反応物を0℃に温め、水素化ホウ素ナトリウム(0.5g)を分割添加した。0℃にて1時間撹拌した後、その混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。その有機層を1N NaOH水溶液、食塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮し、未精製アルコールを得た。このアルコールをシリカゲルにより精製(塩化メチレン/酢酸エチル=1/1)し、所望するアルコールを得た。塩化メチレン中のアルコールの溶液にイミダゾール(0.4g)及びTUBS−Cl(0.8g)を0℃にて添加した。その混合物を1時間撹拌した。その反応物を0.1N HCl水溶液に注ぎ、塩化メチレンで抽出した。その有機層を食塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、蒸発させた。残渣をシリカゲルにより精製(100%塩化メチレン)し、所望する化合物を得た。
【0193】
H NMR(CDCl):δ8.61(1H,d);7.73(1H,dd);7.14(1H,d);3.97(2H,t);2.96(2H,t);0.86(9H,s);−0.02(6H,s)。
【0194】
段階B:
【0195】
【化51】

【0196】
実施例5、段階A及びBに対して述べたものと同様の手法により、所望する化合物を調製した。この化合物をシリカゲルにより精製(ヘキサン/酢酸エチル=1/3)した。
【0197】
H NMR(CHCl):δ9.53(1H,d);8.54(1H,dd);8.35(1H,d);7.37(1H,d);7.07(1H,dd);6.56(1H,d);5.45(2H,s);4.11(2H,t);3.90(3H,s);3.18(2H,t);1.38(9H,s)。
【0198】
LC−MS(M+H)=396.2。
【0199】
機能的アッセイ
A.Maxi−Kチャネル
化合物の活性は以下のアッセイによって定量することもできる。
【0200】
Maxi−Kチャネルの阻害剤の同定は、HEK−293細胞においてチャネルのα及びβ1サブユニット両方をトランスフェクションした後、及びHEK−293細胞の内在性カリウムコンダクタンスを選択的に排除するカリウムチャネルブロッカーとインキュベーションした後の、発現されたMaxi−Kチャネルの細胞静止電位設定能力に基づく。maxi−Kチャネル阻害剤が存在しない状態において、トランスフェクションを行ったHEK−293細胞は、maxi−Kチャネルの活動の結果であるE(−80mV)に近い、内部が負である過分極膜電位を示す。maxi−KチャネルブロッカーとのインキュベーションによりMaxi−Kチャネルを遮断することにより、細胞の脱分極が起こる。膜電位の変化は、2種類の成分、ドナーであるクマリン(CCDMPE)及びアクセプターであるオキサノール(DiSBAC(3))を用いる電圧感受性蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)色素ペアで決定することができる。
【0201】
オキサノールは親油性陰イオンであり、膜電位に従って膜全体に分布する。正常条件下で、細胞の内側が外側に対して負である場合、オキサノールは膜の外葉に蓄積し、クマリンの励起によりFRETが生じる。膜脱分極を導く条件では、オキサノールは細胞の内部に向かって再分布し、結果として、FRETが減少する。このように、比の変化(ドナー/アクセプター)が膜脱分極の後に増大し、それにより試験化合物がmaxi−Kチャネルを積極的に遮断するか否かが決定される。
【0202】
HEK−293細胞は、American Type Culture Collection,12301 Parklawn Drive,Rockville,Maryland,20852から、受託番号ATCC CRL−1573として得た。この微生物への公共アクセスに関するいかなる制限も、特許の発行時に取消し不能な形で撤廃されるものとする。
【0203】
HEK−293細胞におけるmaxi−Kチャネルのα及びβ1サブユニットのトランスフェクションは以下のように行った:100mmの組織培養用処理済みシャーレに、シャーレあたり3x10細胞の密度でHEK−293細胞をプレーティングし、合計で5枚のシャーレを調製した。10%ウシ胎仔血清、1xL−グルタミン、及び1xペニシリン/ストレプトマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)からなる培地中で、37℃、10%COにて、細胞を増殖させた。Maxi−K hα(pCIneo)及びMaxi−K hβ1(pIRESpuro)DNAをトランスフェクションするために、150μl FuGENE6TMを血清非含有/フェノールレッド非含有DMEM 10mLに滴下添加し、室温で5分間インキュベーションした。次に、そのFuGENE6TM溶液を、各プラスミドDNA 25μgを含有するDNA溶液に滴下添加し、室温にて30分間インキュベーションした。このインキュベーション時間の後、FuGENE6TM/DNA溶液 2mlを細胞の各プレートに滴下添加し、上記と同じ条件下で2日間、細胞を増殖させた。第2日の最後に、600μg/ml G418及び0.75μg/mlピューロマイシンの両者を添加したDMEMからなる選択培地のもとに細胞を置いた。別々のコロニーが形成されるまで細胞を増殖させた。5個のコロニーを集め、6ウェル組織培養用処理済みシャーレに移した。合計で75個のコロニーを回収した。コンフルエントの単層が得られるまで細胞を増殖させた。その後、maxi−Kチャネルα及びβ1サブユニットが存在するか否かを調べるために、125I−イベリオトキシン−D19Y/Y36Fのチャネルへの結合を監視するアッセイを用いて細胞を試験した。次に、VIPR装置で蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)ABS技術を用いて、トランスフェクションしたHEK−293細胞の膜電位に対するmaxi−Kチャネルの制御能を監視する機能的アッセイを行い、125I−イベリオトキシン−D19Y/Y36F結合活性を発現する細胞を評価した。最大のシグナル対ノイズ比を示すコロニーを限界希釈した。このために、約5細胞/mlとなるように細胞を再懸濁し、ウェルあたり約1個の細胞が添加されるように、96ウェル組織培養用処理済みプレートの個々のウェルに200μlを添加した。全部で2枚の96ウェルプレートを作製した。コンフルエント単層が形成された際に、6ウェル組織培養用処理済みプレートに細胞を移した。全部で62ウェルを移した。コンフルエント単層が得られた際に、FRET−機能的アッセイを用いて細胞を試験した。最良のシグナル対ノイズ比を示すトランスフェクション細胞を同定し、次の機能的アッセイで用いた。
【0204】
機能的アッセイについて:
次に、トランスフェクション細胞(2E+06細胞/mL)を96ウェルのポリ−D−リジンプレートに約100,000細胞/ウェルの密度でプレーティングし、約16時間から24時間インキュベーションする。培地を細胞から吸引除去し、細胞をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS) 100μlで1回洗浄する。1ウェル当たり、D−PBS中の約9μMクマリン(CCDMPE)−0.02%プルロニック−127 100μLを添加し、ウェルを暗所で約30分間インキュベーションする。細胞をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水 100μlで2回洗浄し、140mM NaCl、0.1mM KCl、2mM CaCl、1mM MgCl、20mM Hepes−NaOH、pH7.4、10mM グルコース中の約4.5μM オキサノール(DiSBAC(3)) 100μLを添加する。HEK−293細胞の内在性カリウムコンダクタンスの阻害剤 3μMを添加する。maxi−Kチャネルブロッカーを添加し(約0.01μMから約10μM)、暗所で室温にて約30分間細胞をインキュベーションする。
【0205】
プレートを電圧/イオンプローブリーダー(VIPR)機器にセットし、CCDMPE及びDiSBAC(3)の両者の蛍光放射を10秒間記録する。この時点で、高カリウム溶液:140mM KCl、2mM CaCl、1mM MgCl、20mM Hepes−KOH、pH7.4、10mM グルコース 100μlを添加し、両色素の蛍光放射をさらに10秒間記録する。CCDMPE/DiSBAC(3)比は、高カリウム溶液を添加する前は1に等しい。maxi−Kチャネル阻害剤が存在しない状態において、高カリウム溶液を添加した後の比は1.65−2.0の間で変動する。既知の標準化合物又は試験化合物のいずれかによってMaxi−Kチャネルが完全に阻害される場合、この比は1のままである。したがって、蛍光比の濃度依存性変化を監視することにより、Maxi−Kチャネル阻害剤の活性を判定することができる。
【0206】
本発明の化合物は、約1nMから約20μM、より好ましくは、約10nMから約500nMの範囲のIC50で蛍光比の濃度依存性阻害を生じることが分かった。
【0207】
B.高コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルにおける化合物効果の電気生理学的アッセイ
方法:maxi−Kチャネルのα−サブユニットを構成的に発現するCHO細胞又はα−及びβ−サブユニットの両者を構成的に発現するHEK293細胞より切除した膜パッチから、従来の技術(Hamillら,1981,Pflugers Archiv.391,85−100)を用いて、室温で、高コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(maxi−K)チャネルを介して流れる電流のパッチクランプ記録を行った。ガラス毛細管(Garner#7052又はDrummondカスタム ホウケイ酸ガラス1−014−1320)を2段階で引いて、約1〜2ミクロンの先端径を有するマイクロピペットを得た。通常どおり、150mM KCl、10mM Hepes(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンメタンスルホン酸)、1mM Mg、0.01mM Caを含有し、KOHでpH7.20に調整した溶液をピペットに充填した。原形質膜とそのピペットとの間に高抵抗(>10オーム)シールを形成した後、ピペットを細胞から引き抜き、切り出された裏返しの膜パッチを形成させた。150mM KCl、10mM Hepes、5mM EGTA(エチレングリコールビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸)、1μMから5μMの遊離Ca濃度を得るのに十分なCaを含有し、KOHでpHを7.2に調整したバス溶液中に、このパッチを切り入れた。例えば、4.193mM Caを添加して、22℃で1μMの遊離濃度を得た。EPC9増幅器(HEKA Elektronic、Lambrect、Germany)を電圧の制御及び膜パッチを横断して流れる電流の測定に用いた。ヘッドステージへの入力をAg/AgCl線でピペット溶液に接続し、増幅器のアースを、0.2M KClに溶解した寒天を充填したチューブで覆われたAg/AgCl線でバス溶液に接続した。maxi−K電流であることは、膜電位及び細胞内カルシウム濃度に対するチャネル開口確率の感度により確認した。
【0208】
データの取得はPULSEソフトウェア(HEKA Elektroic)によって制御し、PULSEFIT(HEKA Elektronic)及びIgor(Wavemetrics、Oswego、OR)ソフトウェアを用いる後の解析のためにMacIntoshコンピュータ(Apple Computers)のハードドライブに保存した。
【0209】
結果:
maxi−Kチャネルにおける本発明の化合物の効果を、切り出した裏返し膜パッチにおいてバス溶液の一定の表面灌流で調べた。膜電位を−80mVに保持し、maxi−Kチャネルを一時的に開口させるために、正の膜電位(通常、+50mV)への短い(100−200ms)電圧段階を15秒ごとに1回適用した。各実験における陽性対照として、カルシウムを添加せずに、1mM EGTAを標準バス溶液に添加することにより得た低濃度カルシウム(<10nM)にこのパッチを一時的に曝露した後、パルス電位においてmaxi−K電流を排除した。各実験において遮断されたチャネルの割合を、膜パッチの内側に指定された化合物を適用することによって生じるピーク電流の減少から算出した。遮断の定常状態レベルが得られるまで化合物を適用した。各化合物濃度で得られる遮断率をHill式とフィットさせることにより、チャネル遮断のK値を算出した。本発明に記載の化合物によるチャネル遮断のK値は0.01nMから10μMを上回る範囲をとる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式I:
【化1】

の化合物若しくは医薬適合性の塩、インビボ加水分解性のエステル、鏡像異性体、ジアステレオマー又はそれらの混合物:
(式中、
Rは、水素又はC1−6アルキルを表し;
及びRは、独立に、水素又はハロを表し;
は、N又はOを表し;
Xは、−(CHR−、−(CHRCO−を表し;
Yは、−CO(CH−、CH又は−CH(OR)−を表し;
Qは、CRを表し;
は、H又はC1−6アルキルを表し;
は、H、C1−6アルキル、−C(O)C1−6アルキル、−C(O)OC1−6アルキル、−SON(R)、−SO1−6アルキル、−SO6−10アリール、NO、CN又は−C(O)N(R)を表し;
は、水素、C1−10アルキル、OH、C2−6アルケニル、C1−6アルキルSR、−(CHO(CHOR、−(CH1−6アルコキシ、−(CH3−8シクロアルキル、−(CH3−10ヘテロシクリル、−N(R)、−COOR又は−(CH6−10アリールを表し、該アルキル、ヘテロシクリル又はアリールは、Rから選択される1個から3個の基で場合によっては置換されており;
は、水素、C1−10アルキル、−(CH3−8シクロアルキル、−(CH3−10ヘテロシクリル、−(CHCOOR、−(CH6−10アリール、−(CHNHR、−(CHN(R)、−(CHN(R、−(CHNHCOOR、−(CHN(R)COR、−(CHN(R)COR、−(CHNHCOR、−(CHCONH(R)、アリール、−(CH1−6アルコキシ、CF、−(CHSOR、−(CHSON(R)、−(CHCON(R)、−(CHCONHC(R)、−(CHCONHC(R)COR、−(CHCOR、ニトロ、シアノ又はハロゲンを表し、該アルキル、アルコキシ、ヘテロシクリル又はアリールは、Rの1個から3個の基で場合によっては置換されているか;
又は、R及びRは、介在するQと一緒に、O、S、C(O)又はNRの1個から2個の原子により場合によっては割り込まれ、場合によっては1個から4個の二重結合を有し、Rから選択される1個から3個の基で場合によっては置換されている、3−10員の炭素環式又は複素環式炭素環を形成しており;
及びRは、独立に、水素、C1−6アルコキシ、OH、C1−6アルキル、COOR、SOH、−O(CHN(R)、−O(CHCOR、−OPO(OH)、CF、OCF、−N(R)、ニトロ、シアノ、C1−6アルキルアミノ又はハロゲンを表し;
【化2】

は、C6−10アリール又はC3−10ヘテロシクリルを表し、該アリール又はヘテロシクリルは、Rから選択される1個から3個の基で場合によっては置換されており;
Zは、(CHPO(OR)(OR)を表し;
は、水素又はC1−6アルキルを表し;
は、水素、C1−6アルキル、−(CHCOOR又は−(CHN(R)を表し、
は、−(CH3−8シクロアルキル、−(CH3−10ヘテロシクリル、C1−6アルコキシ又は−(CH5−10ヘテロアリール、−(CH6−10アリールを表し、該ヘテロシクリル、アリール又はヘテロアリールは、Rから選択される1個から3個の基で場合によっては置換されており;
は、F、Cl、Br、I、CF、N(R)、NO、CN、−COR、−CONHR、−CON(R、−O(CHCOOR、−NH(CHOR、−COOR、-OCF、−NHCOR、−SOR、−SONR、−SR、(C−Cアルキル)O−、−(CHO(CHOR、−(CH1−6アルコキシ、(アリール)O−、−(CHOH、(C−Cアルキル)S(O)−、HN−C(NH)−、(C−Cアルキル)C(O)−、(C−Cアルキル)OC(O)NH−、−(C−Cアルキル)NR(CH3−10ヘテロシクリル−R、−(C−Cアルキル)O(CH3−10ヘテロシクリル−R、−(C−Cアルキル)S(CH3−10ヘテロシクリル−R、−(C−Cアルキル)−C3−10ヘテロシクリル−R、−(CH−Z−C(=Z)N(R)、−(C2−6アルケニル)NR(CH3−10ヘテロシクリル−R、−(C2−6アルケニル)O(CH3−10ヘテロシクリル−R、−(C2−6アルケニル)S(CH3−10ヘテロシクリル−R、−(C2−6アルケニル)−C3−10ヘテロシクリル−R、−(C2−6アルケニル)−Z−C(=Z)N(R)、−(CHSOR、−(CHSOH、−(CHPO(OR)、C3−10シクロアルキル、C6−10アリール、C3−10ヘテロシクリル、C2−6アルケニル及びC−C10アルキルを表し、該アルキル、アルケニル、アルコキシ、ヘテロシクリル及びアリールは、C−Cアルキル、CN、NO、OH、CON(R)及びCOORから選択される1個から3個の基で場合によっては置換されており;
及びZは、独立に、NR、O、CH又はSを表し;
gは、0から1であり;
mは、0から3であり;
nは、0から3であり;
pは、0から3である。)。
【請求項2】
Yが、−CO(CHであり、pが、1から3であり、Xが、−(CHR又は−(CHRCO−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Zが、PO(OR)(OR)であり、R及びRが、独立に、水素、C1−10アルキル又はC1−6アルキルOHであり、Yが、−CO(CHである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
【化3】

が、Rから選択される1個から3個の基で場合によっては置換されている、6員のヘテロアリール又はフェニルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
【化4】

が、Rから選択される1個から3個の基で場合によっては置換されているピリジルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
ジ−tert−ブチル4−{[1−(3,3−ジメチル−2−オキソブチル)−6−メトキシ−1−H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ベンジルホスフェート;
4−{[1−(3,3−ジメチル−2−オキシブチル)−6−メトキシ−1−H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ベンジル リン酸二水素;
2−[(5−{[1−(3,3−ジメチル−2−オキソブチル−6−メトキシ−1−H−インダゾール−3−イル)カルボニル}ピリジン−2−イル)オキシ]エチル リン酸二水素;
(5−{[1−3,3−ジメチル−2−オキソブチル)−6−メトキシ−1H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ピリジン−2−イル)メチル リン酸二水素;
2−(5−{[1−(3,3−ジメチル−2−オキソブチル)−6−メトキシ−1H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ピリジン−2−イル)−2,2−ジフルオロエチル リン酸二水素;及び
2−(5−{[7−ブロモ−1−(3,3−ジメチル−2−オキソブチル)−6−メトキシ−1H−インダゾール−3−イル]カルボニル}プリジン−2−イル)−2,2−ジフルオロエチル リン酸二水素
若しくは医薬適合性の塩、インビボ加水分解性のエステル、鏡像異性体、ジアステレオマー又はそれらの混合物である、化合物。
【請求項7】
一ナトリウム又は二ナトリウム塩の形態の、ジ−tert−ブチル4−{[1−(3,3−ジメチル−2−オキソブチル)−6−メトキシ−1−H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ベンジルホスフェート;
一ナトリウム又は二ナトリウム塩の形態の、4−{[1−(3,3−ジメチル−2−オキシブチル)−6−メトキシ−1−H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ベンジル リン酸二水素;
一ナトリウム又は二ナトリウム塩の形態の、2−[(5−{[1−(3,3−ジメチル−2−オキソブチル−6−メトキシ−1−H−インダゾール−3−イル)カルボニル}ピリジン−2−イル)オキシ]エチル リン酸二水素;
一ナトリウム又は二ナトリウム塩の形態の、(5−{[1−3,3−ジメチル−2−オキソブチル)−6−メトキシ−1H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ピリジン−2−イル)メチル リン酸二水素;
一ナトリウム又は二ナトリウム塩の形態の、2−(5−{[1−(3,3−ジメチル−2−オキソブチル)−6−メトキシ−1H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ピリジン−2−イル)−2,2−ジフルオロエチル リン酸二水素;及び
一ナトリウム又は二ナトリウム塩の形態の、2−(5−{[7−ブロモ−1−(3,3−ジメチル−2−オキソブチル)−6−メトキシ−1H−インダゾール−3−イル]カルボニル}ピリジン−2−イル)−2,2−ジフルオロエチル リン酸二水素である、化合物。
【請求項8】
高眼圧又は緑内障の治療用の薬物の製造のための、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項9】
黄斑浮腫、黄斑変性、網膜及び視神経乳頭血流速度上昇、網膜及び視神経酸素圧上昇の治療及び/又は神経保護効果のための薬物の製造のための、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項10】
カリウムチャネルを含有する哺乳類細胞の再分極又は過分極の予防用の薬物又はアルツハイマー病、うつ病、認知障害及び/又は不整脈疾患の治療用の薬物の製造のための、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項11】
糖尿病の治療用の薬物の製造のための、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項12】
請求項1に記載の式Iの化合物及び医薬適合性の担体を含む組成物。
【請求項13】
前記式Iの化合物が、局所製剤として適用され、該局所製剤が、溶液又は懸濁液として投与され、場合によってはキサンタンガム又はジェランガムを含有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
抗β−アドレナリン作動薬、副交感神経作動薬、交感神経模倣薬、炭酸脱水酵素阻害薬、EP4アゴニスト、プロスタグランジン若しくはその誘導体、降圧性脂質、神経保護剤及び/又は5−HT2受容体アゴニストからなる群に属する有効成分の1つ又は複数が場合よっては添加される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記抗β−アドレナリン作動薬が、チモロール、ベタキソロール、レボベタキソロール、カルテオロール又はレボブノロールであり;前記副交感神経作動薬が、ピロカルピンであり;前記交感神経模倣薬が、エピネフリン、ブリモニジン、アイオピジン、クロニジン又はパラ−アミノクロニジンであり、前記炭酸脱水酵素阻害薬が、ドルゾラミド、アセタゾラミド、メタゾラミド又はブリンゾラミドであり;前記プロスタグランジンが、ラタノプロスト、トラバプロスト、ウノプロストン、レスキュラ又はS1033であり、前記降圧性脂質が、ルミガンであり、前記神経保護剤が、エリプロジル、R−エリプロジル又はメマンチンであり;前期5−HT2受容体アゴニストが、フマル酸1−(2−アミノプロピル)−3−メチル−1H−イミダゾール−6−オール又は2−(3−クロロ−6−メトキシ−インダゾール−1−イル)−1−メチル−エチルアミンである、請求項14に記載の組成物。

【公表番号】特表2007−504233(P2007−504233A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525389(P2006−525389)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2004/028266
【国際公開番号】WO2005/026128
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】