説明

高粘性液体燃料加温システム

【課題】貯蔵タンクに貯蔵された高粘性液体燃料を加温する際のドレインの排出がなく、しかもドレインハンマー現象の発生を防止して加温温度ムラを低減する。
【解決手段】高粘性液体加温燃料システムは、貯蔵タンク11に貯蔵された高粘性液体燃料を適正温度に加温するためのものである。高粘性液体加温燃料システムは、貯蔵タンク内に配管され、加温用液体が循環する加温液体用配管21と、貯蔵タンク外に配置され、加温液体用配管が連結されて加温用液体を加温する加温装置22とを有し、加温装置は太陽熱によって加温用液体を加温する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原油などの高粘性液体燃料を加温して流動性を確保するための高粘性液体燃料加温システムに関し、特に、液体燃料貯蔵タンク中に貯蔵された高粘性液体燃料を加温するための高粘性液体燃料加温システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、火力発電所などで用いられる原油などの高粘性液体燃料は、タンカーなどから燃料貯蔵タンク(以下単に貯蔵タンクと呼ぶ)に送られ、ここで一旦貯蔵される。そして、貯蔵タンクから送油管などを介してボイラー装置に送られ、ボイラー装置で燃焼が行われる。ボイラー装置で発生した蒸気は、例えば、蒸気タービンに送られて、蒸気タービンの駆動によって発電機が駆動されて発電が行われる。
【0003】
ところで、原油は高粘性を有しているため、温度が低下すると、粘りが増加して流動性が低下してしまい、ポンプなどによって良好にボイラー装置に送油することが困難となってしまう。このため、貯蔵タンク内の原油を加温して適正な温度に維持するようにしている。
【0004】
従来、貯蔵タンク内の原油を加温する際には、蒸気が用いられ(例えば、ボイラー装置から抽出した蒸気)、貯蔵タンク内に蒸気管を敷設(配管)し、蒸気管に蒸気を循環させることによって、貯蔵タンク内の原油を加温している。
【0005】
例えば、ボイラー装置から抽出した蒸気を、ボイラー装置と貯蔵タンクとの間に敷設された蒸気管を介して貯蔵タンクに循環させて、貯蔵タンク内の原油を加温して適正な温度に維持するようにしている。この際、火力発電所の中央制御室において、貯蔵タンク内の原油温度を監視して、その監視結果に応じて、蒸気管に備えられた遮断弁を開閉制御することによって貯蔵タンク内の原油温度を適正温度に調整するようにしている。
【0006】
一方、タンカーで海上輸送された原油など備蓄基地に陸揚げする際において、原油が外気の低温の影響を受けて粘りを増して、ポンプ動力による陸揚げが困難になることを防止するため、加温ユニットを用いて原油を蒸気によって加温するようにしたものが知られており、ここでは、加温ユニットは、ユニット本体の胴板と、胴板内に配置されて槽内の荷油が流通する多数の油通管と、各油通管に接触させる蒸気を胴板内に導入する蒸気入口管(入口部)と、蒸気を胴板の内部空間から排出する蒸気出口管と有し、複数の加温ユニットを互いに蒸気入口管及び蒸気出口管で蒸気管により接続して、蒸気を各加温ユニットに循環させて原油の加温を行うようにしている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−211491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、蒸気管を循環する蒸気によって、貯蔵タンク内の原油などの高粘性液体燃料を加温した際に、加温後のドレインを単に大気中に排出して捨てており、蒸気の有効利用という観点からは好ましてものではない。
【0008】
さらに、高粘性液体燃料を加温後においては、所謂ウォータハンマー現象と同様の、ドレインハンマー現象が生じることがあり、このドレインハンマー現象によって蒸気管(配管)が損傷を受けるという課題がある。
【0009】
加えて、従来、貯蔵タンク内の原油などの高粘性液体燃料を適正な温度に加温しようとする際には、上述のように蒸気管に備えられた遮断弁をオン/オフ制御して、貯蔵タンクに蒸気を循環させるか否か(つまり、蒸気を流すか又は流さないか)によって温度維持を実行しているため、不可避的に加温温度にムラが生じてしまうという課題もある。
【0010】
本発明は、貯蔵タンクに貯蔵された高粘性液体燃料を加温する際ドレインの排出がなく、しかもドレインハンマー現象の発生を防止して加温温度ムラを低減できる高粘性液体燃料加温システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明は、貯蔵タンクに貯蔵された高粘性液体燃料を適正温度に加温するための高粘性液体加温燃料システムであって、前記貯蔵タンク内に配管され、加温用液体が循環する加温液体用配管と、前記貯蔵タンク外に配置され、前記加温液体用配管が連結されて前記加温用液体を加温する加温装置とを有し、前記加温装置は太陽熱によって前記加温用液体を加温するようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
(1)に記載の高粘性液体加温燃料システムでは、加温用液体(例えば、水)を太陽熱によって加温して、この加温用液体によって貯蔵タンク内の高粘性液体燃料を加温するようにしたので、高粘性液体燃料を加温する際のドレインの排出がなく、しかもドレインハンマー現象の発生を防止して加温温度ムラを低減できる。
【0013】
(2) 本発明は、(1)に記載の高粘性液体燃料加温システムにおいて、前記加温装置は前記加温液体用配管が通過する太陽熱パネルを有することを特徴とするものである。
【0014】
(2)に記載の高粘性液体燃料加温システムでは、太陽熱パネルを用いて高粘性液体燃料を加温する際に、コストを削減して容易に貯蔵タンク内の高粘性液体燃料を温度ムラなく加温することができる。
【0015】
(3) 本発明は、(1)又は(2)に記載の高粘性液体燃料加温システムにおいて、前記加温装置は、第1及び第2の熱交換部を有し、前記第1の熱交換部が前記加温液体用配管に接続され、前記第2の熱交換部にバックアップ蒸気が供給されており、前記第1及び前記第2の熱交換部の間で熱交換を行って前記加温用液体を加温するようにしたことを特徴とするものである。
【0016】
(3)に記載の高粘性液体燃料加温システムでは、第1及び第2の熱交換部によってバックアップ蒸気を用いて加温用液体を加温するようにしたので、必要に応じて加温用液体を早急に加温することができ、その結果、高粘性液体燃料を速やかに加温することができる。
【0017】
(4) 本発明は、(3)に記載の高粘性液体燃料加温システムにおいて、前記バックアップ蒸気はバックアップ蒸気配管によって前記第2の熱交換部に与えられ、前期バックアップ蒸気配管には当該バックアップ蒸気配管を開閉するための遮断弁が備えられていることを特徴とするものである。
【0018】
(4)に記載の高粘性液体燃料加温システムでは、バックアップ蒸気配管に遮断弁が備えられているので、加温用液体を速やかに加温したい場合にのみ遮断弁を開けばよく、蒸気を有効に利用することができる。
【0019】
(5) 本発明は、(1)〜(4)のいずれかに記載の高粘性液体加温システムにおいて、前記加温液体用配管には当該加温液体用配管からの前記高粘性液体燃料の漏れを検知するための漏れ検知手段が備えられていることを特徴とするものである。
【0020】
(5)に記載の高粘性液体燃料加温システムでは、加温液体用配管に加温液体用配管からの高粘性液体燃料の漏れを検知するための漏れ検知手段が備えられているので、加温液体用配管に穴などが開いた場合の検知を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、加温用液体を太陽熱によって加温して、この加温用液体によって貯蔵タンク内の高粘性液体燃料を加温するようにしたので、高粘性液体燃料を加温する際のドレインの排出がなく、しかもドレインハンマー現象の発生を防止して加温温度ムラを低減できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態による高粘性液体燃料加温システムの一例について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では火力発電所で用いられる原油などの高粘性液体燃料を加温する際について説明するが、火力発電所に備えられる貯蔵タンクだけではなく、原油などの高粘性液体燃料を貯蔵する設備に同様にして適用することができる。
【0023】
図1は火力発電所の発電設備を概略的に示すブロック図であり、図1において、貯蔵タンク11には原油(高粘性液体燃料)が貯蔵されており、この貯蔵タンク11から送油ポンプ12によって送油管13を介してボイラー装置14に原油が燃料として供給される。
【0024】
一方、ボイラー装置14に燃焼用空気が供給され、ボイラー装置14で原油が燃焼する。復水器15から復水(水)が復水ポンプ16によってボイラー装置14に供給される。そして、ボイラー装置14によって水が加熱され蒸気となって蒸気タービン17に供給され、これによって蒸気タービン17が駆動される。
【0025】
蒸気タービン17の駆動よって発電機(G)18が駆動されて発電が行われる。蒸気タービン17を通過した蒸気は復水器15に至り、ここで冷却水によって復水されて、水となり、再び復水ポンプ16によってボイラー装置14に送られる(なお、復水器15において必要に応じて給水が行われる)。
【0026】
ところで、原油は高粘性を有しているため、温度が低下すると粘りが増加し、その流動性が低下する。そして、原油の流動性が低下すると、送油ポンプ12によって原油を良好にボイラー装置14に送油できないという事態が生じてしまう。
【0027】
このため、貯蔵タンク11内の原油を加温して、その流動性が低下しないようにする必要がある。原油の流動性低下を防止するため、貯蔵タンク11内の原油を加温することが行われており、一般に、貯蔵タンク11内の原油は、貯蔵タンク11の内壁面に施されたコーティングを考慮して、55℃〜60℃の温度(適正温度)に加温され、その流動性を維持するようにしている。
【0028】
図2は本発明の実施の形態による高粘性液体燃料加温システムの一例を示すブロック図である。図2において、貯蔵タンク11には、加温液体用配管21が配管されており、この加温液体用配管21には、加温液体として、例えば、水が循環する。この加温液体用配管21には、例えば、熱交換器である加温装置22が接続され、この加温装置22は、貯蔵タンク11の近傍に配置されている。加温装置22は太陽熱温水器(以下太陽熱パネルという)23を有しており、後述するように、太陽熱パネル23によって加温液体用配管21中の水が加温される。
【0029】
加温装置22と貯蔵タンク11との間において、加温液体用配管21には漏油検知器24が配設されており、この漏油検知器24によって貯蔵タンク11から加温液体用配管21に漏れた油を検知する(加温液体用配管21に穴が開いた場合などには、貯蔵タンク11内の圧力は、加温液体用配管21内の圧力よりも高くなるので、貯蔵タンク11内の原油は加温液体用配管21に漏れることになり、この原油を漏油検知器24で検知する)。
【0030】
一方、加温装置22には加温液体補給用の補給配管25が接続され、さらに、蒸気をバックアップ蒸気として供給するためのバックアップ蒸気配管26が接続されている。このバックアップ蒸気配管26は、例えば、ボイラー装置14との間で配管され、ボイラー装置14から抽出した蒸気を加温装置22に供給し、加温装置22を通過して蒸気はボイラー装置14に戻される。
【0031】
図3は加温装置22を太陽熱パネル23とともに詳細に示す図である。図3において、加温液体用配管21中の加温用水は、循環用ポンプ31によって加温液体用配管21を循環している。加温液体用配管21は太陽熱パネル23を細管として配管されており、太陽熱パネル23で加温用水は加温されその温度が上昇する。そして、加温後、加温用水は貯蔵タンク11に送られて、貯蔵タンク11内の原油を加温する。その後、加温用水は再び太陽熱パネル23で加温されることになる。
【0032】
なお、図示はしないが、貯蔵タンク11には温度センサーなどの温度検知器が備えられており、この温度センサーによって貯蔵タンク11内の原油の温度を検知し、これによって、循環用ポンプ31の回転速度、つまり、加温用水の循環量を調整する。つまり、循環用ポンプ31は、例えば、制御装置32によって駆動制御される。この際、制御装置32には、加温装置22の出口側で加温用水の温度を検知する水温計33から検知水温が入力されようにすることが望ましい。
【0033】
そして、制御装置32には、原油温度、加温用水温度、及び加温水循環量の相関関係を示す相関データが記憶されており、制御装置32は重油温度及び検出水温に応じて加温水循環量を相関データから得て、循環用ポンプ31の回転速度を制御し、原油温度を適正温度に維持する。
【0034】
ところで、加温装置22は第1及び第2の熱交換部22a及び22bを有しており、太陽熱パネル23を通過した加温用水(つまり、加温液体用配管21)は第1の熱交換部22aを通過した後、加温装置22を出る。一方、バックアップ蒸気配管26は第2の熱交換部22bに連結されている(なお、図2においては、説明の便宜上、バックアップ蒸気配管26は一本のみが示されている)。
【0035】
従って、第1及び第2の熱交換部22a及び22bとの間で熱交換が行われて、第1の熱交換部22aを通過する加温用水は、第2の熱交換部22bを通過するバックアップ蒸気によって加温されることになる。
【0036】
バックアップ蒸気配管26には遮断弁26aが備えられており、例えば、貯蔵タンク11内の原油温度を早急に加温したい場合などにおいて、火力発電所の中央制御室からの指令によって遮断弁26aを開き、第2の熱交換部22bにバックアップ蒸気を供給する。これによって、第1の熱交換部22aを通過する加温用水が急速に加温され、その結果、貯蔵タンク11内の原油を速やかに加温することができる。
【0037】
なお、通常の場合には、バックアップ蒸気配管26に備えられた遮断弁26aは閉じられている。また、補給配管25には、開閉バルブ25aが備えられ、加温液体用配管21内の水が不足した際には、開閉バルブ25aを開いて、加温液体用配管21に水を補給する。
【0038】
上述のように、水などの加温用液体を太陽熱パネル23で加温して、貯蔵タンク11内の原油を加温するようにしたので、蒸気によって加温する場合に比べて、貯蔵タンク11内の原油温度を適正温度に維持することが容易となり、しかも従来のように蒸気を廃棄することもなく、ドレインハンマー現象が生じることがない。
【0039】
また、太陽熱によって加温液体を加温して、貯蔵タンク11内の原油を加温しているので、ランニングコストを低減することができる。このように、本発明による高粘性液体燃料加温システムでは、貯蔵タンクに貯蔵された高粘性液体燃料を加温する際のドレイン排出がなく、しかもドレインハンマー現象の発生を防止して加温温度ムラを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態による高粘性液体燃料加温システムが用いられる発電設備の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態による高粘性液体燃料加温システムの一例を示すブロック図である。
【図3】図2に示す加温装置を詳細に示す図である。
【符号の説明】
【0041】
11 貯蔵タンク
12 送油ポンプ
13 送油管
14 ボイラー装置
15 復水器
16 復水ポンプ
17 蒸気タービン
18 発電機
21 加温液体用配管
22 加温装置
23 太陽熱温水器(太陽熱パネル)
24 漏油検知器
25 補給配管
26 バックアップ蒸気配管
31 循環用ポンプ
32 制御装置
33 水温計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵タンクに貯蔵された高粘性液体燃料を適正温度に加温するための高粘性液体燃料加温システムであって、
前記貯蔵タンク内に配管され、加温用液体が循環する加温液体用配管と、
前記貯蔵タンク外に配置され、前記加温液体用配管が連結されて前記加温用液体を加温する加温装置とを有し、
前記加温装置は太陽熱によって前記加温用液体を加温するようにしたことを特徴とする高粘性液体燃料加温システム。
【請求項2】
前記加温装置は前記加温液体用配管が通過する太陽熱パネルを有することを特徴とする請求項1記載の高粘性液体燃料加温システム。
【請求項3】
前記加温装置は、第1及び第2の熱交換部を有し、
前記第1の熱交換部が前記加温液体用配管に接続され、
前記第2の熱交換部にバックアップ蒸気が供給されており、
前記第1及び前記第2の熱交換部の間で熱交換を行って前記加温用液体を加温するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の高粘性液体燃料加温システム。
【請求項4】
前記バックアップ蒸気はバックアップ蒸気配管によって前記第2の熱交換部に与えられ、前期バックアップ蒸気配管には当該バックアップ蒸気配管を開閉するための遮断弁が備えられていることを特徴とする請求項3記載の高粘性液体加温燃料システム。
【請求項5】
前記加温液体用配管には当該加温液体用配管からの前記高粘性液体燃料の漏れを検知するための漏れ検知手段が備えられていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の高粘性液体燃料加温システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−293844(P2009−293844A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146709(P2008−146709)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】