説明

高精度かつ高耐久性のコンビネーションスクリーン版

【課題】 高精度の印刷が可能でかつ耐久性の高いコンビネーション版を提供する。
【解決手段】 画像形成用スクリーンと、画像形成用スクリーンを枠に支持する支持体用スクリーンとを備えるスクリーン印刷用のコンビネーションスクリーン版であって、支持体用スクリーンは、合成繊維からなる織物構造体であり、JIS L 1096の引張強さ及び伸び率測定に関するストリップ法に従い、支持体用スクリーンを縦糸または横糸に平行に幅50mm、つかみ間隔200mmとなるように切り出した短冊サンプルに、100mm/分の速度で引張り荷重をかけてゆくときの伸びと引張り荷重の曲線であるS−Sカーブから、引張り荷重100N/5cmと200N/cmの2点での伸び率及び引張り方向の糸数及び糸径を用いて、2点間の平均として算出した支持体用スクリーンの1軸引張りヤング率が、10000N/mm以上、40000N/mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PDP製造時における蛍光体印刷プロセスや、太陽電池の電極印刷、液晶シール印刷、基板の穴埋め印刷、コンデンサーの電極と誘電体の印刷、及びTABやCOF等のレジスト印刷といったエレクトロニクス関連等の精密パターン形成の分野で利用されるスクリーン印刷用のコンビネーションスクリーン版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、スクリーン印刷に用いられる版は、一定の張力を付与された状態で版枠に固定された所定メッシュのスクリーンの内部に感光性樹脂(エマルジョン)等で印刷パターンを形成して構成される。スクリーン印刷においては、スクリーンを被印刷面から一定距離(クリアランス)を隔てて配置し、そのスクリーンの弾性変形を利用して一時的に被印刷面に接触させ、且つその復元力に基づいて直ちに離隔させることによって、上記印刷パターンに従ってペーストをにじみなく高精度で塗布する。そのため、その版離れ性を確保する目的で、スクリーンに一定の張力が付与されているのである。
【0003】
このスクリーン印刷に用いられる版は、合成繊維スクリーンまたは金属繊維スクリーンに張力を掛けて樹脂や金属製の枠に接着固定した、枠内部のスクリーンが単一の素材からなる「全面張り版」と、先に合成繊維スクリーンを樹脂や金属製の枠に張り、その中央部に画像形成部用の金属繊維スクリーン等を接着した後、画像形成部用のスクリーンに重なる中央部の合成繊維スクリーンを切離し除去した「コンビネーション版」が使用されている。コンビネーション版における合成繊維スクリーンは、一般に、支持体スクリーンと呼ばれる。
【0004】
コンビネーション版においては、印刷時のクリアランスによる伸びを支持体スクリーンに負担させるため、支持体スクリーンには、弾性の高い、すなわちヤング率の低い素材であるナイロンやポリエステルからなる織物構造体を使用し、画像形成部には画像パターンの変形が少なくなるようヤング率の高い素材として金属繊維からなる織物構造体やメタルマスク等が使用されている。
【0005】
なお、画像形成部については印刷パターンと繊維が重なり、ペーストの通過を阻害するのを避けるために通常は枠に対して22°から30°程度の角度を持たせ、かつ枠の中心部に配置している。支持体スクリーンとなる織物構造体の繊維方向もこの画像形成部の繊維の方向に合わせて接合している。
【特許文献1】特開平8−76365号公報
【特許文献2】特開2007−62225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のコンビネーション版において使用されるナイロンやポリエステルのヤング率は、縦糸または横糸に平行に幅50mm、長さ200mmに切り出した短冊サンプルに、100mm/分の速度で引張り荷重をかけてゆくときの伸びと引張り荷重の曲線であるS−Sカーブから、引張り荷重100N/5cmと200N/5cmの2点での伸び率及び引張り方向の糸数及び糸径を用いて、2点間の平均として算出した画像形成用スクリーンの1軸引張りヤング率は2000N/mmから6000N/mm程度である。
【0007】
このようなヤング率の低い素材を支持体スクリーンとして使用すると、印刷時のスキージの摺動に伴う摩擦力による画像形成部のズレに対する抗力が弱く、印刷精度や版の耐久性が充分に得られないという課題があった。特許文献1では支持体スクリーンを2重とすることにより強い張力で支持体スクリーンを配設することを提案している。また、特許文献2では支持体スクリーンとしてステンレスからなる織物構造体を用い、さらに金属メッキを被覆させたものを使用することで印刷精度や版の耐久性を向上させる提案をしている。しかしながら、支持体スクリーンを2重にすることで強度を上げても、主に素材の特性に起因するヤング率の変化は少なく、印刷精度や耐久性の向上には限界がある。また支持体スクリーンに金属を用いてメッキ被覆を形成した場合には、画像形成部スクリーンとのヤング率の差が小さくなり、コンビネーション版としての機能が十分に発現せず、印刷精度や耐久性が劣ったり、製造工程の煩雑さから価格が高額になるなどの欠点がある。
【0008】
また、従来のコンビネーション版では画像形成部のスクリーンの繊維方向が枠に対して22°から30°程度の角度を持っており、支持体スクリーンの織物構造体の繊維もこの方向に合わせて配置してあるため、印刷時のスキージ摺動に伴う摩擦力により画像形成部が支持体スクリーンの繊維の方向、すなわち斜め方向にズレ易く、印刷精度や版の耐久性が充分に得られない、との問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、支持体用スクリーンとして合成繊維からなる高強度の織物構造体を用いることによりコンビネーション版としての高い機能を発現させ、さらに、織物構造体を構成する繊維の方向をコンビネーション版の枠方向にほぼ合わせることにより、高精度の印刷が可能でかつ耐久性の高いコンビネーション版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、第1の発明は、画像形成用スクリーンと、該画像形成用スクリーンを枠に支持する支持体用スクリーンとを備えるスクリーン印刷用のコンビネーションスクリーン版であって、支持体用スクリーンは、合成繊維からなる織物構造体であり、JIS L 1096の引張強さ及び伸び率測定に関するストリップ法に従い、支持体用スクリーンを縦糸または横糸に平行に幅50mm、つかみ間隔200mmとなるように切り出した短冊サンプルに、100mm/分の速度で引張り荷重をかけてゆくときの伸びと引張り荷重の曲線であるS−Sカーブから、引張り荷重100N/5cmと200N/5cmの2点での伸び率及び引張り方向の糸数及び糸径を用いて、2点間の平均として算出した前記支持体用スクリーンの1軸引張りヤング率が、10000N/mm以上、40000N/mm以下であるコンビネーションスクリーン版を提供するものである。
【0011】
さらに第2の発明は、上記第1の発明において、画像形成用スクリーンは、金属製メッシュであり、JIS L 1096の引張強さ及び伸び率測定に関するストリップ法に従い、画像形成用スクリーンを縦糸または横糸に平行に幅50mm、つかみ間隔200mmとなるように切り出した短冊サンプルに、100mm/分の速度で引張り荷重をかけてゆくときの伸びと引張り荷重の曲線であるS−Sカーブから、引張り荷重100N/5cmと200N/5cmの2点での伸び率及び引張り方向の糸数及び糸径を用いて、2点間の平均として算出した画像形成用スクリーンの1軸引張りヤング率が、50000N/mm以上であるコンビネーションスクリーン版を提供するものである。
【0012】
さらに第3の発明は、上記第1乃至第2のいずれかの発明において、支持体用スクリーンを構成する繊維のバイアス角度は、0°以上10°以下であるコンビネーションスクリーン版を提供するものである。
【0013】
さらに第4の発明は、上記第1乃至第3のいずれかの発明において、前記画像形成用スクリーンは、前記支持体用スクリーンの対角線の交点と前記画像形成用スクリーンの対角線の交点とが、印刷時におけるスキージの動作方向にずれを有して、支持体用スクリーンに配置されるコンビネーションスクリーン版を提供するものである。
【0014】
さらに第5の発明は、上記第1、3、または4のいずれかの発明において、画像形成用スクリーンは、金属製のメッシュまたはメタルマスクからなるコンビネーションスクリーン版を提供するものである。
【0015】
さらに第6の発明は、画像形成用スクリーンと、該画像形成用スクリーンを枠に支持する支持体用スクリーンとを備えるスクリーン印刷用のコンビネーションスクリーン版であって、支持体用スクリーンは、合成繊維からなる織物構造体であり、支持体用スクリーンを構成する繊維のバイアス角度は、0°以上10°以下であるコンビネーションスクリーン版を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、支持体用スクリーン部が合成繊維からなる織物構造体であり高いヤング率を有するために、印刷時の版離れ性に優れ、クリアランスを狭くすることができ、高精度の印刷が可能となり、かつ、高耐久性のスクリーン版とすることができる。また、支持体用スクリーン部を構成する繊維の向きをコンビネーションスクリーン版の枠部にほぼ平行に配設するため、スキージの摺動に対する画像形成用スクリーン部のズレに対する抵抗力が強くなり、さらに高精度の印刷が可能となる。また、スキージ動作の微小な変動による局部的な応力による塑性変形なども起こり難くなり耐久性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下に、本発明の実施形態である高印刷精度かつ高耐久性のコンビネーションスクリーン版について詳述する。
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態のコンビネーションスクリーン版を示す模式図である。本実施形態のコンビネーションスクリーン版100は、枠部101の中央部に画像形成用スクリーン部102があり、その周囲に支持体用スクリーン部103が配置してあるコンビネーションスクリーン版である。
【0019】
枠部101は、スクリーンに張力をかけ、これを保持する重要な機能を担っており、また、印刷機への取り付け部分でもあり、印刷時におけるインク流出を防止するなどの役割も有する。枠部1の材質は木材や、樹脂や、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄鋼及び鉄合金などの金属製の角パイプやダイカストが一般に使用されている。この中で、軽量であるうえ強度、耐薬品性や加工性の点からアルミニウム合金が特に広く使用されている。
【0020】
本実施形態で使用する枠部101は、どのような材質のものでも用いることはできるが、優れた印刷精度や耐久性を発揮させるには高い張力に対して安定な、高強度かつ温湿度の変化に対しても変形が少ないアルミニウム合金や鉄合金等の金属が望ましい。金属の角パイプを接合したものを用いる場合には、肉厚を厚くしたりパイプの内側にリブをつけて補強したものなどが望ましい。
【0021】
本実施形態の画像形成用スクリーン部102としては、金属のステンレスメッシュが好適に使用される。しかしながら、ステンレスメッシュに限定されるものではなく、一般にメタルマスクと呼ばれる、金属の箔やプレートをエッチング処理やレーザー処理したり電鋳法にて作成した多孔性の金属プレートや、ステンレスより高強度材料であるタングステンや高強度鋼の線材で製織したメッシュや、多孔性のプラスティックフィルムやシート、また高強度の合成繊維やガラス繊維で製織したメッシュや、これら素材を組み合わせたり複合したものなどを用いることができる。
【0022】
本実施形態のコンビネーションスクリーン版100における支持体用スクリーン部103の機能は、印刷時に生じる版の変形を負担することにより、画像形成用スクリーン部102の変形を極力少なくして精度の高い印刷を達成することである。
【0023】
本実施形態のコンビネーションスクリーン版100で用いる支持体用スクリーン部103は、合成繊維からなる織物構造体であり、その織物構造体の1軸引張りヤング率が、引張り荷重100N/5cmと200N/5cmの2点区間における平均値として10000N/mm以上、40000N/mm以下となるものである。
【0024】
ここで用いた1軸引張りヤング率は、JIS L-1096の引張強さ及び伸び率測定に関するストリップ法に則って測定される。すなわち、支持体用スクリーン部103を縦糸または横糸に平行に幅50mm、つかみ間隔200mmとなるように切り出した短冊サンプルに、100mm/分の速度で引張り荷重をかけてゆくときの伸びと引張り荷重の曲線(S−Sカーブ)から算出するものである。
【0025】
図2に代表的なS−Sカーブを模式的に示した。試験サンプルは織物構造体であるため、単一な糸を引張る場合のS−Sカーブから算出される、すなわち素材固有のヤング率とは異なり、特に引張り荷重が小さいときに織物構造を特徴づけるパターンを示す。
【0026】
本実施形態では、一般的なスクリーン印刷での印刷時にスクリーンに懸かる荷重の目安とされる、引張り荷重100N/5cmと200N/5cmの2点での伸び率(ε、ε)および引張り方向の糸数、糸径を用いて、2点間の平均としての1軸引張りヤング率を算出する。具体的には、糸径Dμm、縦横の1インチ当たりの糸の本数、すなわちメッシュ数nの織物の場合には、引張り荷重100N/5cmと200N/5cmの2点での伸び率(ε、ε)とすると、1軸引張りヤング率(N/mm)=(200-100)×1000000/(ε−ε)/(π/4×D×D×n×50/25.4)で算出される。
【0027】
なお、上記式において、メッシュ数nは1インチ当たりの糸の本数を意味しており、サンプルとして50mm幅の中にある糸本数を算出する為に「50/25.4」を用いている。
【0028】
本実施形態の支持体用スクリーン部103に用いることが可能な10000N/mm以上の高強度を有する材質としては、例えば、アラミド、ポリアリレート、超高分子量ポリエチレン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール(PBT)、ポリパラフェニレンベンゾビスイミダゾール(PBI)、炭素繊維、その他液晶ポリマーや、上記材質を主成分とした2種以上の素材、例えば芯鞘型複合繊維などがある。
【0029】
また、上記で例示した高強度を有する材質と組み合わせたり、または合成樹脂のフィルムを1枚または2枚以上ラミネートするなどして、織物と合成樹脂とを一体としたフィルムまたはシート状の織物複合体として支持体用スクリーン部103を構成する場合には、上記例示の高強度を有する材質の他、フッ素系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、6−ナイロン、66−ナイロン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、変成ポリフェニレンエーテル(PPE)などを用いることもできる。
【0030】
支持体用スクリーン部103の縦方向と横方向の1軸引張りヤング率は同等であることが望ましいが、異なっていてもかまわない。異なる場合には縦方向と横方向の1軸引張りヤング率が共に10000N/mm以上である事が望ましい。支持体用スクリーン部103の1軸引張りヤング率が10000N/mm未満であると、印刷時のインクの転写すなわち版離れのための被印刷物とスクリーンとのクリアランスを小さくできず、画像形成用スクリーン部2が安定せずに不規則にズレたりズレ量が大きくなる。また、スキージ動作の微小な変動による局部的な応力により、画像形成用スクリーン部102の塑性変形なども起こりやすくなり耐久性に悪影響を及ぼす。
【0031】
また、支持体用スクリーン部103の1軸引張りヤング率が40000N/mmより大きくなると、合成繊維からなる織物構造体として安定に製造することが困難になるばかりでなく、製造できても画像形成用のスクリーン部102の1軸引張りヤング率との差が少なくなり、支持体としての機能が弱くなるため耐久性への悪影響が著しくなる。
【0032】
本実施形態の支持体用スクリーン部103で用いる合成繊維糸は、モノフィラメントでもマルチフィラメントでもよく、また、例えば縦糸をマルチフィラメント、横糸をモノフィラメントとするなど併用して用いることでもよい。支持体用スクリーン部103で用いる合成繊維糸の断面形状は、通常の丸断面のほか、扁平や、中空や、多孔や、三角や、十字などの異形断面など、どのような形状でも用いることができる。また、合成繊維糸の断面素材は単一の成分からなる単一糸でも、性質の異なる複数の成分からなる複合糸でもよい。
【0033】
さらに、本実施形態の支持体用スクリーン部103の織り構造についても特に制限は無く、平織り、綾織、朱子織り、斜子織りなどを用いることができる。支持体用スクリーン部103としては1枚の織物に限定されるものではなく、織り構造の同じものや異なるものを2枚以上組み合わせて用いることでもよく、上記織物に合成樹脂のフィルムを1枚または2枚以上ラミネートするなどして、上記織物と合成樹脂とを一体としたフィルムまたはシート状の織物複合体であってもよい。
【0034】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態のコンビネーションスクリーン版200を示す模式図であり、枠部201の中央部に画像形成用スクリーン部202があり、その周囲に支持体用スクリーン部203を配置してある。画像形成用スクリーン部202としてステンレスメッシュが多く使用されるが、画像パターンとメッシュ金属糸とが重なり、印刷時におけるインクの転写・パターン形成の阻害を回避したり、スキージ動作を滑らかにして過度な負荷がスクリーンにかからぬよう、画像形成用スクリーン部202のメッシュ金属糸は枠部201の縦辺201a、201cまたは横辺201b、201dに対して22°から30°程度のバイアス角度を持たせて配置している。
【0035】
本実施形態のコンビネーションスクリーン版200では、図3に示すように、合成繊維の織物構造体からなる支持体用スクリーン部203は、支持体用スクリーン部203を構成する繊維203aの枠部1の縦辺201a、201cまたは横辺201b、201dのいずれかと交差することによりなす角度のうち小さい方の角度であるバイアス角度Bが0°以上10°以下、すなわちほぼ平行に配置されることに特徴がある。ここで、支持体用スクリーン部203が2枚以上の織物を組み合わせて構成されているような場合にあっては、支持体用スクリーン部203を構成する少なくとも1方向の繊維が枠部1の縦辺201a、201cまたは横辺の201b、201dいずれかとほぼ平行に配置されてあればよい。なお、本実施形態の説明において、縦辺とはスキージの動作方向(図中のA)に平行となる枠部201の辺201a、201cを表し、横辺とはスキージの動作方向に垂直となる枠部201の辺201b、201dを表すものとする。
【0036】
従来のコンビネーション版では支持体用スクリーンを構成する繊維が、画像形成用スクリーンのメッシュ金属糸のバイアス角度に合わせて、枠の縦辺または横辺に対して22°から30°程度のバイアス角度を持って配置しているために、印刷時に画像形成用スクリーン上をスキージが摺動する動きに連動して、画像形成用スクリーンがバイアス角度の方向すなわち斜め方向にズレ易くなり精度が劣る印刷となる。
【0037】
これに対して、本実施形態のコンビネーションスクリーン版200では支持体用スクリーン部203を構成する繊維203aは、バイアス角度Bが0°以上10°以下、すなわち、ほぼ平行に配置されるので、スキージの摺動する動き(図中のA)に連動した斜め方向へのズレは抑制される。スキージの摺動方向と支持体用スクリーン部203を構成する繊維のバイアス角度がほぼ一致しているので、スキージの摺動に対する画像形成用スクリーンのズレへの抵抗力は強くなり高精度の印刷が可能となる。また、スキージ動作の微小な変動による局部的な応力により、画像形成用スクリーン部202の塑性変形なども起こり難くなり耐久性が向上する。
【0038】
ここで、支持体用スクリーン部203を構成する繊維のバイアス角度Bが0°以上10°以下とは、角度の測定方向、すなわち右回り、左回りを区別するものではなく、支持体用スクリーン部203を構成する繊維203aと枠部201の縦辺201a、201cまたは横辺201b、201dのいずれかとがなす角度の絶対値が0°以上10°以下であることを意味するものである。また、支持体用スクリーン部203を構成する繊維203aは通常縦と横が直交しており、枠部201も通常は矩形であることから、本実施形態で用いる支持体用スクリーン部3を構成する繊維の角度は0°以上45°以下で全ての配置を表わすものとする。
【0039】
支持体用スクリーン部203を構成する繊維のバイアス角度Bが10°より大きくなると、スキージの摺動に連動して画像形成用スクリーン部202のズレが大きくなったり、版の局所的な歪などが生じやすくなり、印刷面での相対的な位置精度が劣る結果となる。特に、支持体用スクリーン部203を構成する繊維のバイアス角度Bが20°より大きくなると印刷精度、版の耐久性のいずれにおいても一層劣ることとなる。
【0040】
また、本発明の第2実施形態のコンビネーションスクリーン版200において、画像形成用スクリーン部202の周囲に配置した支持体用スクリーン部203が合成繊維からなる織物構造体で、支持体用スクリーン部203の1軸引張りヤング率が、引張り荷重100N/5cmと200N/5cmの2点区間における平均値として10000N/mm以上、40000N/mm以下である場合には、印刷精度と版の耐久性はより一層優れたものとなる。
【0041】
(第3実施形態)
図4は、本発明における第3の実施形態のコンビネーションスクリーン版を模式的に示すものであり、上記第1の実施形態または第2の実施形態のコンビネーションスクリーン版において、画像形成用スクリーン部302の両対角線の交点位置(以後この位置をSCPと呼ぶ)を、支持体用スクリーン部303が枠部301と内接する囲われた領域の両対角線の交点位置(以後この位置をFCPと呼ぶ)とはずらした構成としている。本実施形態のコンビネーションスクリーン版300は、印刷時にスキージがFCPからSCPに向けて図中のA方向に摺動するよう印刷機に固定して用いるよう、画像形成用スクリーン部302へのパターンを形成するものとする。
【0042】
従来のコンビネーション版では、枠の中央部に画像形成用スクリーンがあり、その周囲に支持体用スクリーンを配置してある。すなわち、画像形成用スクリーンの両対角線の交点位置と、枠の両対角線の交点位置とは版作成上の誤差の範囲内で一致するよう設計されている。本実施形態のコンビネーションスクリーン版によれば、FPCとSPCとを結ぶ線上の方向にスキージが摺動し、かつ、FPCがSPCよりも印刷時におけるスキージ動作の始点側に配置される構成とすることにより、さらに印刷精度が向上することを見出し発明を完成したものである。
【0043】
画像形成用スクリーン部302は、スキージの摺動に伴う摩擦力により、スキージの始点側から終点側へ向けた図中のA方向にせん断応力を受けている。この応力は、始点側の支持体用スクリーン部303には引張り応力が追加する方向へと作用し、終点側の支持体用スクリーン部303には、画像形成用スクリーン部302を支持している張力が緩和される方向へと働く。ここで、FPCをSPCよりスキージ動作の始点側に配置することにより、終点側の支持体用スクリーン部303に追加される引張り応力による変位分を低減することができ、一層の高精度印刷が可能となる。
【0044】
ここで、FPCとSPCとのズレ量は画像形成用スクリーン部302の寸法と、支持体用スクリーン部303が枠部301と内接する囲われた領域の寸法とにより適宜決めればよい。
【0045】
画像形成用スクリーン部302および支持体用スクリーン部303が枠部301と内接する囲われた領域共に矩形であり、両者の縦片の寸法l、lの比が1/2〜2/3であるコンビネーション版の場合では、FPCとSPCのズレ量dは、画像形成用スクリーン部302のスキージの摺動方向辺長lの3%から40%の範囲での設定で効果があり、特に、支持体用スクリーン部303の配置対称性を考慮すると5%から25%が好適である。
【0046】
(第4実施形態)
本実施形態のコンビネーションスクリーン版400は、第1から第3の実施形態において、画像形成用スクリーン部402が金属メッシュからなり、かつ、その1軸引張りヤング率が、引張り荷重100N/5cmと200N/5cmの2点区間における平均値として50000N/mm以上のコンビネーションスクリーン版である。
【0047】
本発明の第1実施形態と同様に、画像形成用スクリーン部402の1軸引張りヤング率は、JIS L-1096に則って測定される。すなわち、画像形成用スクリーン部2を縦糸または横糸に平行に幅50mm、長さ200mmに切り出した短冊サンプルに、100mm/分の速度で引張り荷重をかけてゆくときの伸びと引張り荷重の曲線(S−Sカーブ)から算出するものである。
【0048】
本実施形態でも、一般的なスクリーン印刷での印刷時にスクリーンに懸かる荷重の目安とされる、引張り荷重100N/5cmと200N/cmの2点での伸び率(ε、ε)および引張り方向の糸数、糸径を用いて、2点間の平均としての1軸引張りヤング率を算出する。
【0049】
このような高い1軸引張りヤング率を示す金属メッシュのうちでも、特に、1軸引張りヤング率が、引張り荷重100N/5cmと200N/5cmの2点区間における平均値で80000N/mm以上の、いわゆるスーパーステンレスと呼ばれる特殊加工を行ったステンレス線材で製織したものや、タングステン線材で製織したものは特に好適である。金属メッシュの場合には、縦方向と横方向とで1軸引張りヤング率が大きく異なる場合が多い。印刷時にスキージを通して金属メッシュに印加される圧力は縦・横両方向への張力として働くことになる。このような理由から金属メッシュのヤング率としては縦方向と横方向の算術平均値で表すことでよい。
【0050】
(コンビネーション版の作成方法)
次に本発明におけるコンビネーション版の代表的な作成方法について以下に記述する。なお本発明では紗張り以降の乳剤塗布や露光・現像等の工程については従来の方法を適宜選択すればよく、コンビネーション版の紗張りの方法についてのみを記述するものとする。また、ここで述べた作成方法に限定されるものではなく、版を作成するのに適したいかなる冶具や設備、方法を用いる事でもかまわない。
【0051】
第1の作成方法は、接着後の張力低下分を考慮した高めの張力で支持体用スクリーンを枠1に紗張りした後、所定寸法の画像形成用スクリーンを支持体用スクリーンの所定位置に接着し、その後画像形成用スクリーン部にある支持体用スクリーンを切断除去するものであり、従来の多くのコンビネーション版はこの方法で作成されている。
【0052】
第1の方法によれば支持体用スクリーンを切断除去することにより、その張力は低下するものの、あらかじめ高い張力を掛けて枠1に設置されるため、面内における張力分布を均一化することができる。しかしながら、本発明における高いヤング率を有する支持体用スクリーンを用いる時には、画像形成用スクリーンのヤング率との差が小さくなると切断除去による張力低下が著しくなるため、この低下分を十分に考慮することが必要になる。
【0053】
第2の作成方法は、支持体用スクリーンを紗張り機上にて軽く張力を掛けた仮の紗張り状態(第1ステップ)とし、所定寸法の画像形成用スクリーンを支持体用スクリーンの所定位置に接着し、その後画像形成用スクリーン部にある支持体用スクリーンを切断除去する。さらに紗張り機に所定の張力をかけて(第2ステップ)支持体用スクリーンを枠1に接着する方法である。
【0054】
第2の方法によれば、第1の方法における支持体用スクリーンの張力の低下を考慮する必要もなく、第2ステップでの張力の印加により所定の張力を有する版の作成が可能となる。
【0055】
第3の作成方法は、支持体スクリーンと画像形成用スクリーンとの両方にほぼ同一の所定張力を掛けた状態で接着し、その後不要部分を切断除去するというものである。
【0056】
具体的方法の1例としては、第1の方法すなわち従来の方法にて所定の張力を掛けた状態の画像形成用スクリーンを設置したコンビネーション版を準備する。このとき用いる支持体用スクリーンは本発明におけるものであってもよいが、作業性などの点からは従来のもので十分である。さらに枠1に所定の張力で支持体用スクリーンを紗張りし、先に準備したコンビネーション版の画像形成用スクリーンの周辺部分で、支持体用スクリーンに接着固定する。その後先に準備したコンビネーション版を画像形成用スクリーンの周辺部分で切離し除去し、さらに枠1に張られた支持体用スクリーンの画像形成用スクリーンと重畳する部分を切離し除去する。
【0057】
第3の方法によれば、支持体用スクリーンと画像形成用スクリーンとにあらかじめ同等の張力を掛けた状態で接着を行っているので、不要部分の切離し除去を行うことによる両スクリーン間での張力変動を無くすことができる。従って両スクリーン面内での張力均一化の達成が容易となり、作成工程は複雑になるものの、高精度、高耐久性版の作成には好適である。
【0058】
第4の作成方法は、あらかじめ中央部を繰り抜いた支持体用スクリーンに画像形成用スクリーンを接着した一体スクリーンを用い、全面張り版と呼ばれる単一の合成繊維スクリーンからなるスクリーン版と同様の方法によりコンビネーション版を作成するものである。
【0059】
第1から第4のいずれの方法においても、支持体用スクリーンのバイアス角度は本発明所定の角度で設定すればよく、また画像形成用スクリーンとの接着に用いる接着剤はゴム系、シアノアクリレート系、エポキシ系、紫外線硬化型など十分な接着強度を有するものであればどのようなタイプでも良く、作業性や使用するインクの特性などを考慮して適宜選定すればよい。さらに接着は1回塗布で行っても良く、仮接着後、本接着するなど複数回に分けて接着したり2種以上の接着剤を用いるなどでもかまわない。
【0060】
以上説明したように、本発明の各実施形態のコンビネーションスクリーン版によれば、支持体用スクリーン部が合成繊維からなる織物構造体で、高いヤング率を有するために印刷時の版離れ性に優れ、クリアランスを狭くすることができ、高精度の印刷が可能となり、かつ、高耐久性のスクリーン版とすることができる。また、支持体用スクリーン部を構成する繊維の向きをコンビネーションスクリーン版の枠部にほぼ平行に配設するため、スキージの摺動に対する画像形成用スクリーン部のズレに対する抵抗力が強くなり、さらに高精度の印刷が可能となる。また、スキージ動作の微小な変動による局部的な応力による塑性変形なども起こり難くなり耐久性が向上する。また、画像形成用スクリーン部の中心部が、支持体用スクリーン部が枠部と内接する囲われた領域の中心部よりスキージ動作の終点側に配置されるため、さらに高精度の印刷が可能となる。
【実施例】
【0061】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
枠部として、アルミ製枠体(外形寸法:860mm×860mm、内形寸法:730mm×730mm、厚さ30mm、肉厚2mmの中空構造)を用いた。画像形成用スクリーン部は500mm×500mmの大きさで、30μmの線径で250メッシュに織り込まれたステンレススクリーンメッシュ(SUS250、株式会社NBCメタルメッシュ製)の縦糸方向を枠に対して23°とし、支持体用スクリーン部にはポリアリレート製の繊維径45μmの糸を1インチ当たり縦横とも160本、すなわち160メッシュに織り込まれたV160(NBC株式会社製、商品名Vスクリーン)の縦糸方向を枠に対して23°で配置してコンビネーションスクリーン版とし、更に画像形成部に感光性乳剤を10μm塗布し、300mm×300mmの印刷パターンを形成した。ここで、画像形成用スクリーン部の中央部での張力は、テンションゲージSTG-75B(サン技研社製)を用いた測定で1.0mmであり、クリアランスは3.2mmであった。
【0063】
(実施例2)
支持体用スクリーン部をポリアリレート製のV280(NBC株式会社製、商品名Vスクリーン)に変更した以外は、実施例1と同じ仕様の版を作成した。ここで、画像形成用スクリーン部の中央部での張力は、0.95mmであり、クリアランスは3.1mmであった。
【0064】
(実施例3)
支持体用スクリーン部をポリアリレート製のV330(NBC株式会社製、商品名Vスクリーン)に変更した以外は、実施例1と同じ仕様の版を作成した。ここで、画像形成用スクリーン部の中央部での張力は、0.9mmであり、クリアランスは3.0mmであった。
【0065】
(実施例4)
支持体用スクリーン部の縦糸方向を枠部に対して0°に変更した以外は、実施例1と同じ仕様の版を作成した。ここで、画像形成用スクリーン部の中央部での張力は、1.0mmであり、クリアランスは3.2mmであった。
【0066】
(実施例5)
支持体用スクリーン部としてポリエステル製のUX230T(NBC株式会社製)を用い、縦糸方向を枠部に対して0°に変更した以外は、実施例1と同じ仕様の版を作成した。ここで、画像形成用スクリーン部の中央部での張力は、1.0mmであり、クリアランスは3.6mmであった。
【0067】
(実施例6)
支持体用スクリーン部の縦糸方向を枠部に対して10°に変更した以外は、実施例5と同じ仕様の版を作成した。ここで、画像形成用スクリーン部の中央部での張力は、1.0mmであり、クリアランスは3.6mmであった。
【0068】
(実施例7)
支持体用スクリーン部の縦糸方向を枠部に対して10°に変更した以外は、実施例1と同じ仕様の版を作成した。ここで、画像形成用スクリーン部の中央部での張力は、1.0mmであり、クリアランスは3.2mmであった。
【0069】
(実施例8)
画像形成用スクリーン部を高強度ステンレス紗HS230(アサダメッシュ株式会社製)に変更した以外は、実施例4と同じ仕様の版を作成した。ここで、画像形成用スクリーン部の中央部での張力は、0.8mmであり、クリアランスは2.5mmであった。
【0070】
(実施例9)
画像形成用スクリーン部の両対角線の交点位置(FPC)を、支持体用スクリーン部が枠部と内接する囲われた領域の両対角線の交点位置(SPC)から6cmずらした構成とした以外は、実施例4と同じ仕様の版を作成した。この版を印刷時にスキージがFPCからSPCに向けて摺動するよう印刷機に固定して用いる。ここで、画像形成用スクリーン部の中央部での張力は、1.0mmであり、クリアランスは3.4mmであった。
【0071】
(比較例1)
支持体用スクリーン部としてポリエステル製のUX160H(NBC株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同じ仕様の版を作成した。ここで、画像形成用スクリーン部の中央部での張力は、1.0mmであり、クリアランスは3.4mmであった。
【0072】
(比較例2)
支持体用スクリーン部として23μmの線径で400メッシュに織り込まれたステンレススクリーン(SUS400、株式会社NBCメタルメッシュ製)を用いた以外は、実施例1と同じ仕様の版を作成した。ここで、画像形成用スクリーン部の中央部での張力は、0.85mmであり、クリアランスは2.8mmであった。
【0073】
(比較例3)
画像形成用スクリーン部として23μmの線径で400メッシュに織り込まれたステンレススクリーン(SUS400、株式会社NBCメタルメッシュ製)を用いた以外は、実施例3と同じ仕様の版を作成した。ここで、画像形成用スクリーン部の中央部での張力は、0.9mmであり、クリアランスは3.0mmであった。
【0074】
(比較例4)
支持体用スクリーン部としてポリエステル製のUX230T(NBC株式会社製)を用い、縦糸方向を枠部に対して15°に変更した以外は、実施例1と同じ仕様の版を作成した。ここで、画像形成用スクリーン部の中央部での張力は、1.0mmであり、クリアランスは3.6mmであった。
【0075】
実施例1〜9、比較例1〜4の画像形成部および支持体部に用いたスクリーンの種類、バイアス角度、1軸引張ヤング率の値を表1に示した。
【0076】
【表1】



【0077】
実施例および比較例で作成したコンビネーション版の各々について、以下に示す印刷機及び印刷条件により印刷試験を行った。
印刷機:マイクロテック製MT−1000TVC
スキージ:ウレタンゴム製平スキージ
スキージ硬度:70°
スキージ角度:70°
スキージ幅:400mm
印刷速度:100mm/sec
総圧:130Kpa
実印圧:+30Kpa
使用ペースト:セイコーアドバンス製US200、粘度120ポイズ(25℃)
印刷対象:ポリエステルフィルム
温湿度:22℃〜23℃、50〜60%
なお、クリアランスは各版において版離れできる最小の距離とした。
【0078】
(印刷結果の評価方法)
図5に示すように、300mm角の印刷パターンを100mm間隔に区切り、スキージ移動方向をY方向、それに垂直の方向をX方向とし、Y、X方向それぞれ4つの距離を測定した。また300mm角の印刷パターンの2つの対角線方向をZ方向として距離を測定した。X、Y、Z合計10点の各々の測定値と、基準となる値との偏差の絶対値の算術平均値で印刷精度を評価した。初期の印刷精度としては、100枚目の印刷物の測定値を版の値を基準とした偏差の絶対値で評価した。また耐久性の評価としては、1500枚目の印刷物の測定値を、版の値を基準とした偏差の絶対値でそれぞれ評価した。
【0079】
評価結果として初期の印刷精度として各測定位置での偏差の絶対値と平均値とを表2に示した。
【0080】
【表2】



【0081】
また、耐久性の評価結果を表3に示した。
【0082】
【表3】



【0083】
支持体部スクリーンにポリエステルを使用した、通常用いられるコンビネーション版の例である比較例1に比べ、支持体部スクリーンに1軸引張りヤング率が10000N/mm2以上のVスクリーンを用いた実施例1〜3では初期の印刷精度、耐久性ともに優れており、特にヤング率が高くなるほど初期精度、耐久性とも良好な結果を示している。
【0084】
しかしながら、画像形成部スクリーンのヤング率と支持体部スクリーンのヤング率の差が小さくなると、コンビネーション版としての機能が十分に発現しないことが考えられる。比較例2では画像形成部スクリーンのヤング率の約60%のヤング率を示すスクリーンを支持体部に使用した場合の例であり、初期の印刷精度は良好であるが耐久性が劣るという、ステンレススクリーンの全面張り版と類似した結果となった。また、比較例3で示すように、画像形成部スクリーンに1軸引張りヤング率が50000N/mm2以下のスクリーンを用いた場合も同様に、初期の印刷精度は良好であるものの耐久性が劣るとの結果となった。
【0085】
実施例の4〜7では支持体用スクリーンを構成する繊維のバイアス角度が枠に対して0°または10°の場合の結果であり、初期の印刷精度および耐久性において優れている。特に1軸引張りヤング率が10000N/mm2以上のVスクリーンを用いた実施例4及び実施例7においてはバイアス角度が23°の実施例1に対してもきわめて優れている。
【0086】
実施例8においては画像形成部スクリーンに1軸引張りヤング率が80000N/mm2以上の高強度のステンレススクリーンを用いることにより版テンションをさらに高めることが可能となり、版離れのクリアランスを小さくとれ、初期の印刷精度、耐久性共に極めて優れた結果が得られている。
【0087】
また実施例9においては、画像形成用スクリーン部の両対角線の交点位置(FPC)を、支持体用スクリーン部が枠部と内接する囲われた領域の両対角線の交点位置(SPC)から6cmずらした構成とし、FPCを印刷時のスキージの摺動方向の始点側となるよう配置することにより、画像形成部スクリーンを中心部に配置した実施例4よりも初期の印刷精度、耐久性共に一層優れた結果となっている。
【0088】
以上、本発明によれば、支持体用スクリーン部が合成繊維からなる織物構造体で、高いヤング率を有するために印刷時の版離れ性に優れ、クリアランスを狭くすることができ、高精度の印刷が可能となり、かつ、高耐久性のスクリーン版とすることができる。また、支持体用スクリーン部を構成する繊維の向きを枠にほぼ平行に配設するため、スキージの摺動に対する画像形成用スクリーン部のズレに対する抵抗力が強くなり、さらに高精度の印刷が可能となる。また、スキージ動作の微小な変動による局部的な応力による塑性変形なども起こり難くなり耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1実施形態のコンビネーション版の模式図である。
【図2】1軸引張りヤング率の計算に用いるS−Sカーブの例である。
【図3】本発明の第2実施形態のコンビネーション版の模式図である。
【図4】本発明の第3実施形態のコンビネーション版の模式図である。
【図5】印刷結果の評価位置を表す図である
【符号の説明】
【0090】
100 :コンビネーション版
101 :枠部
102 :画像形成用スクリーン部
103 :支持体用スクリーン部
200 :コンビネーション版
201 :枠部
201a ,201c :縦枠部
201b ,201d :横枠部
202 :画像形成用スクリーン部
203 :支持体用スクリーン部
203a :繊維
300 :コンビネーション版
301 :枠部
302 :画像形成用スクリーン部
303 :支持体用スクリーン部
A :スキージの摺動方向
B :バイアス角度
ε1 :引張荷重100N/5cm時の伸び率
ε2 :引張荷重200N/5cm時の伸び率
FCP :画像形成用スクリーン部の両対角線の交点位置
SCP :支持体用スクリーン部の両対角線の交点位置
d :FCPとSCPの距離(ズレ)
1 :画像形成用スクリーン部の1辺の長さ
2 :支持体用スクリーン部の1辺の長さ
、X、X、X :X方向距離の測定位置
、Y、Y、Y :Y方向距離の測定位置
、Z :Z方向距離の測定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成用スクリーンと、該画像形成用スクリーンを枠に支持する支持体用スクリーンとを備えるスクリーン印刷用のコンビネーションスクリーン版であって、
前記支持体用スクリーンは、合成繊維からなる織物構造体であり、
JIS L 1096の引張強さ及び伸び率測定に関するストリップ法に従い、前記支持体用スクリーンを縦糸または横糸に平行に幅50mm、つかみ間隔200mmとなるように切り出した短冊サンプルに、100mm/分の速度で引張り荷重をかけてゆくときの伸びと引張り荷重の曲線であるS−Sカーブから、引張り荷重100N/5cmと200N/5cmの2点での伸び率及び引張り方向の糸数及び糸径を用いて、前記2点間の平均として算出した前記支持体用スクリーンの1軸引張りヤング率が、10000N/mm以上、40000N/mm以下であることを特徴とするコンビネーションスクリーン版。
【請求項2】
前記画像形成用スクリーンは、金属製メッシュであり、
JIS L 1096の引張強さ及び伸び率測定に関するストリップ法に従い、前記画像形成用スクリーンを縦糸または横糸に平行に幅50mm、つかみ間隔200mmとなるように切り出した短冊サンプルに、100mm/分の速度で引張り荷重をかけてゆくときの伸びと引張り荷重の曲線であるS−Sカーブから、引張り荷重100N/5cmと200N/5cmの2点での伸び率及び引張り方向の糸数及び糸径を用いて、前記2点間の平均として算出した前記画像形成用スクリーンの1軸引張りヤング率が、50000N/mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のコンビネーションスクリーン版。
【請求項3】
前記支持体用スクリーンを構成する繊維のバイアス角度は、0°以上10°以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のコンビネーションスクリーン版。
【請求項4】
前記画像形成用スクリーンは、前記支持体用スクリーンの対角線の交点と前記画像形成用スクリーンの対角線の交点とが、印刷時におけるスキージの動作方向にずれを有して、前記支持体用スクリーンに配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれかにコンビネーションスクリーン版。
【請求項5】
前記画像形成用スクリーンは、金属製のメッシュまたはメタルマスクからなることを特徴とする請求項1、3、または4のいずれかに記載のコンビネーションスクリーン版。
【請求項6】
画像形成用スクリーンと、該画像形成用スクリーンを枠に支持する支持体用スクリーンとを備えるスクリーン印刷用のコンビネーションスクリーン版であって、
前記支持体用スクリーンは、合成繊維からなる織物構造体であり、
前記支持体用スクリーンを構成する繊維のバイアス角度は、0°以上10°以下であることを特徴とするコンビネーションスクリーン版。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−279899(P2009−279899A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136795(P2008−136795)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(391018341)株式会社NBCメッシュテック (59)
【Fターム(参考)】