説明

高純度シリコン及びその製造方法

【解決課題】シリコンを溶融するときに、溶融し易く、且つ、表面酸化を受け難い高純度シリコン及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】棒状、粒状若しくは板状のシリコン、又は棒状、粒状及び板状のもののうちの少なくとも1種が複数接合したシリコンであり、径が2mmを超える部分の割合が75質量%以上であることを特徴とする高純度シリコン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度シリコン及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、太陽電池用高純度シリコン及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の太陽電池の普及に伴い、高純度シリコンの需要は急増している。従来、高純度の多結晶シリコンを製造する方法としてシーメンス法(Siemens Method)が挙げられる。シーメンス法はトリクロロシラン(SiHCl)を水素(H)によって還元する方法である。シーメンス法により製造される多結晶シリコンは純度がイレブン−ナイン(11−N)と非常に高く、半導体用シリコンとして使用されている。太陽電池用シリコンもこの半導体用シリコンとして製造された製品の一部を使用してきたが、11−Nほどの純度を必要としない点とシーメンス法が多くの電力を消費する点から、太陽電池用シリコンに適した安価な製造方法が求められている。
【0003】
このような中、太陽電池用シリコンの製造方法として、亜鉛還元法による多結晶シリコンの製造方法が提案されており、その反応は下記式(1):
SiCl + 2Zn = Si + 2ZnCl (1)
により示すものである。
【0004】
亜鉛還元法による多結晶シリコンの製造方法では、製造される多結晶シリコンの純度はシックス−ナイン(6−N)程度であり、半導体用シリコンに比べると純度は低いものの、シーメンス法と比較して5倍程度にも達する程反応効率に優れ且つ製造コストも有利な製造方法である。
【0005】
多結晶シリコンの製造方法としては、例えば、反応容器内で液体または気体状態の四塩化珪素を溶融亜鉛で還元し、生成した多結晶シリコンと塩化亜鉛とを含有する混合物を反応容器外に取り出し、前記混合物を分離容器に収容し、混合物中の塩化亜鉛を分離してのち、多結晶シリコンを分離容器から回収することを特徴とする多結晶シリコンの製造方法(特許文献1)や、反応容器内で液体または気体状態の四塩化珪素を溶融亜鉛で還元し、生成した多結晶シリコンと塩化亜鉛とを含有する混合物を反応容器外に取り出してのち、前記混合物中の塩化亜鉛を分離して、多結晶シリコンを回収する高純度シリコンの製造方法であって、分離された塩化亜鉛を電気分解して金属亜鉛と塩素を回収し、回収された金属亜鉛を再び前記四塩化珪素の還元剤として用いるとともに、回収された塩素を水素と合成させて塩化水素とし、前記四塩化珪素を生成するための金属シリコンの塩化処理に用いることを特徴とする高純度シリコンの製造方法(特許文献2)が報告されている。
【0006】
特許文献1および2はいずれも液体または気体状態の四塩化珪素を溶融亜鉛で還元している。しかし、溶融亜鉛を用いる方法では、多結晶シリコンが粉状となり、後処理の煩雑さや不純物処理の難しさ及びキャスティングの困難さのために高コストになるという問題がある。
【0007】
そこで、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気を用いて亜鉛還元法を行うシリコンの製造方法としては、例えば、鉛直方向に立設された反応管に加熱しながら反応管の側周面に設けられた亜鉛蒸気供給口より亜鉛蒸気を供給するとともに、四塩化珪素蒸気を前記亜鉛蒸気供給口よりも下方から反応管の中心軸に沿って上方に向かって吐出させて、反応管内の温度分布を側周面側よりも中心軸側のほうが低くなるようにしてシリコン粉を製造する方法が報告されている(特許文献3)。
【0008】
また、反応容器内に珪素化合物供給配管と亜鉛供給配管を有し、反応容器内の整流部材を通してシリコンを含む反応生成ガスを反応容器外に排出するシリコン製造装置も報告されている(特許文献4)。
【0009】
特許文献3、4はともにシリコンを含む反応生成ガスを反応容器外に排出するもので、得られるシリコンはシリコン粉である。ところが、粉状のシリコンはインゴット製造のために溶融する際、非常に熔解し難いという問題に加え、単位重量当たりの表面積が大きいことから純度が低くなり利用価値が乏しいという問題があった。
【0010】
このため、得られるシリコンの形状としてはある程度の大きさを有する針状又はフレーク状が好ましい。針状又はフレーク状のシリコンを製造する方法としては、例えば、高純度四塩化珪素及び高純度亜鉛をそれぞれ気化させて、ガス化雰囲気において反応を行うことにより、製品として取り出すシリコンの多くが針状又はフレーク状である太陽電池用高純度シリコンの製造方法が報告されている(特許文献5)。
【0011】
特許文献5では、反応炉の内部に通電可能なタンタル芯またはシリコン芯を有し、この芯棒の温度を反応温度よりも上げることで反応炉よりも芯棒に針状、フレーク状のシリコンを析出させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−011925号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平11−092130号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2009−107896号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2009−167022号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2004−018370号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、特許文献5では、針状又はフレーク状のシリコンが得られるものの、その粒径が小さいので、インゴットを生成するためにシリコンを溶融するときに、非常に溶融し難いという問題があり、加えて、単位重量当たりの表面積が大きいことから、表面酸化を受け易く、純度が低くなり、利用価値が乏しいという問題があった。
【0014】
そこで、本発明の目的は、シリコンを溶融するときに、溶融し易く、且つ、表面酸化を受け難い高純度シリコン及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気の供給方式及び四塩化珪素蒸気の供給口からの四塩化珪素蒸気の吹き出し線速度を選択することにより、径が大きな棒状、粒状若しくは板状のシリコン、又は棒状、粒状及び板状のもののうちの少なくとも1種が複数接合したシリコンが得られること、及びこのような形状のシリコンは、溶融し易く、且つ、表面積が小さいことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち、本発明(1)は、棒状、粒状若しくは板状のシリコン、又は棒状、粒状及び板状のもののうちの少なくとも1種が複数接合したシリコンであり、径が2mmを超える部分の割合が75質量%以上であることを特徴とする高純度シリコンを提供するものである。
【0017】
また、本発明(2)は、棒状、粒状若しくは板状のシリコン、又は棒状、粒状若しくは板状のもののうちの少なくとも1種が複数接合したシリコンであり、表面酸化指数が500〜2200であることを特徴とする高純度シリコンを提供するものである。
【0018】
また、本発明(3)は、反応炉の上部から四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給して、反応炉内で四塩化珪素と亜鉛を反応させてシリコンを生成させ、反応炉の下部から排出ガスを排出する縦型の反応炉において、
1又は2以上の四塩化珪素蒸気の供給口を設け、
該四塩化珪素蒸気を、各四塩化珪素蒸気の供給口から、吹き出し線速度25〜100cm/秒で供給し、
該反応炉に供給される該四塩化珪素蒸気が、該亜鉛蒸気により囲まれるように、該亜鉛蒸気を供給すること、
を特徴とする高純度シリコンの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シリコンを溶融するときに、溶融し易く、且つ、表面酸化を受け難い高純度シリコン及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の高純度シリコンの一例の写真である。
【図2】本発明の高純度シリコンの形状の形態例を示す模式図である。
【図3】本発明の高純度シリコンの形状の形態例を示す模式図である。
【図4】本発明の高純度シリコンの形状の形態例を示す模式図である。
【図5】本発明の高純度シリコンの製造方法で用いられる反応炉の形態例の模式的な端面図である。
【図6】図5中の反応炉の側壁部と炭化珪素棒と四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁と亜鉛蒸気の供給空間の区画壁とを示す端面図である。
【図7】四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の第2の形態例を示す模式図である。
【図8】四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の第3の形態例を示す模式図である。
【図9】反応炉の側壁部と析出棒の配置を示す模式的な端面図である。
【図10】本発明の高純度シリコンの製造方法に用いられる反応炉の形態例の模式的な端面図である。
【図11】図10中の反応炉の側壁部と析出棒と四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁と亜鉛蒸気の供給空間の区画壁とを示す端面図である。
【図12】本発明の高純度シリコンの製造方法に用いられる反応炉のうち、反応炉内に内挿容器内が設置されている形態例を示す模式的な端面図である。
【図13】本発明の高純度シリコンの製造方法に用いられる反応炉のうち、反応炉内に内挿容器内が設置されている形態例を示す模式的な端面図である。
【図14】比較例2の高純度シリコンの製造に用いられた反応炉を示す端面図である。
【図15】図14中の反応炉の側壁部と炭化珪素棒と四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁と亜鉛蒸気の供給管とを示す端面図である。
【図16A】本発明の実施例1で得られた5.6mm超の径を有するシリコンの写真である。
【図16B】本発明の実施例1で得られた5.6mm超の径を有するシリコンの拡大写真である。
【図17A】本発明の実施例1で得られた4mm超5.6mm以下の径を有するシリコンの写真である。
【図17B】本発明の実施例1で得られた4mm超5.6mm以下の径を有するシリコンの拡大写真である。
【図18A】本発明の実施例1で得られた2mm超4mm以下の径を有するシリコンの写真である。
【図18B】本発明の実施例1で得られた2mm超4mm以下の径を有するシリコンの拡大写真である。
【図19A】本発明の実施例1で得られた1mm超2mm以下の径を有するシリコンの写真である。
【図19B】本発明の実施例1で得られた1mm超2mm以下の径を有するシリコンの拡大写真である。
【図20A】本発明の実施例1で得られた0.1mm超1mm以下の径を有するシリコンの写真である。
【図20B】本発明の実施例1で得られた0.1mm超1mm以下の径を有するシリコンの拡大写真である。
【図21A】本発明の実施例1で得られた0.1mm以下の径を有するシリコンの写真である。
【図21B】本発明の実施例1で得られた0.1mm以下の径を有するシリコンの拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の高純度シリコンは、棒状、粒状若しくは板状のシリコン、又は棒状、粒状及び板状のもののうちの少なくとも1種が複数接合したシリコンである。なお、棒状、粒状及び板状のもののうちの少なくとも1種が複数接合したシリコンとは、棒状、粒状及び板状のシリコンのうちのいずれか1種の形状のシリコンが複数接合したシリコン、又は棒状、粒状及び板状のシリコンのうちの2種以上の形状のシリコンが複数接合したシリコンである。
【0022】
本発明の高純度シリコンの形状について、図1〜図4を参照して説明する。図1は、本発明の高純度シリコンの一例の写真である。図2〜図4は、本発明の高純度シリコンの形状の形態例を示す模式図である。図1に示すシリコンは、棒状のシリコンと、粒状のシリコンとが、多数接合したシリコンの塊である。そして、図1中のシリコンの塊を形成している棒状のシリコン及び粒状のシリコンの大部分は、2mm以上の径を有するシリコンである。
【0023】
本発明の高純度シリコンとしては、図2に示すように、棒状のシリコン1a同士が接合したもの、棒状のシリコン1aに、粒状のシリコン2aが接合したもの、棒状のシリコン1a及び粒状のシリコン2aの多数が接合し合っているもの等が挙げられる。また、棒状のシリコンには、棒状のシリコンの表面の膨らみのような形状の粒状のシリコン2bが接合しているものがある。また、本発明の高純度シリコンとしては、棒状のシリコン同士が接合したものとして、例えば、図3に示すように、棒状のシリコン1bの幹部に、枝部の棒状のシリコン1cが接合した、樹枝状のものが挙げられ、更に、図3に示すような樹枝状のシリコンの枝部の棒状シリコン1cに、棒状のシリコンが接合しているものが挙げられる。また、本発明の高純度シリコンとしては、図4中、(A)に示すような棒状のシリコンや、(B)に示すような粒状のシリコンが挙げられる。また、本発明の高純度シリコンとしては、他には、板状のシリコン同士が複数接合したシリコンや、板状のシリコンと棒状のシリコンが接合したシリコン等が挙げられる。
【0024】
本発明の高純度シリコンは、棒状、粒状若しくは板状のシリコン、又は棒状、粒状及び板状のもののうちの少なくとも1種が複数接合したシリコンであり、全シリコンに対する径が2mmを超える部分の割合は、75質量%以上、好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85質量%以上であることを特徴とする高純度シリコンである。高純度シリコン中の径が2mmを超える部分の割合が上記範囲にあることにより、表面酸化等の周辺環境による汚染を受け難く且つ溶融のときに溶融し易くなる。
【0025】
更に、本発明の高純度シリコンは、全シリコンに対する径が4mmを超える部分の割合は、好ましくは1質量%以上、特に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。高純度シリコン中の径が4mmを超える部分の割合が上記範囲にあることにより、表面酸化を受け難く且つ溶融のときに溶融し易くなるという効果が更に高くなる。
【0026】
本発明の高純度シリコン中の径が2mmを超える部分の割合は、以下の手順により測定される。先ず、測定対象のシリコンをポリエチレン製の袋に入れ、手で解すことができる程度で接合し合っているシリコンを解す。次いで、手で解した後のシリコンに、60〜80MPaの荷重を負荷し、長さが30mm以下になるまで、シリコンを砕く。次いで、目開きが2mmの篩で、砕いた後のシリコンを篩い、篩上のシリコンの質量と、篩下のシリコンの質量を測定し、シリコンの全量(すなわち、篩上と篩下のシリコンの合計質量)に対する2mmを超える部分の質量(すなわち、篩上のシリコンの質量)の割合(百分率(%))を求める。また、4mmを超える部分の割合についても、目開きが2mmの篩に代えて、目開きが4mmの篩を用いる以外は、同様な手順で測定される。
【0027】
本発明の高純度シリコンにおいて、例えば、径が2mmを超えるシリコンとは、目開きが2mmの篩で、砕いた後のシリコンを篩った後の篩上のシリコンであり、その径とは、例えば、図4中、(A)に示す棒状のシリコンの場合は、符号41cで示す長さを指し、(B)に示す粒状のシリコンの場合は、符号41dで示す長さを指す。また、図1、図2及び図3に示すような棒状又は粒状のシリコンが複数接合したシリコンの場合、粒状のシリコンの接合がない部分では、棒状部分の径、すなわち、符号41aに示す長さがシリコンの径であり、また、粒状のシリコン(2a、2b)が接合している部分では、粒状のシリコンも含めた長さ、すなわち、符号41b、41cに示す長さがシリコンの径である。
【0028】
本発明の高純度シリコンは、棒状、粒状若しくは板状のシリコン、又は棒状、粒状及び板状のもののうちの少なくとも1種が複数接合したシリコンであり、表面酸化指数が500〜2200、好ましくは500〜2000、特に好ましくは500〜1800であることを特徴とする高純度シリコンである。高純度シリコンの表面酸化指数が上記範囲にあることにより、表面酸化等の周辺環境による汚染を受け難く且つ溶融のときに溶融し易くなる。
【0029】
表面酸化指数とは、高純度シリコンの単位質量当たりの表面積の大きさを示す指標であり、表面酸化指数の値が大きいほど、高純度シリコンの単位質量当たりの表面積が大きいことを示し、また、表面酸化指数の値が小さいほど、高純度シリコンの単位質量当たりの表面積が小さいことを示す。そして、表面酸化指数は、棒状、粒状若しくは板状のシリコン、又は棒状、粒状及び板状のもののうちの少なくとも1種が複数接合したシリコンの径の大小を示す指標でもある。つまり、表面酸化指数が大きいほど、シリコンの径が小さいことを示し、また、表面酸化指数が小さいほど、シリコンの径が大きいことを示す。
【0030】
なお、本発明の高純度シリコンの表面酸化指数は、以下の手順により測定される。先ず、測定対象のシリコンをポリエチレン製の袋に入れ、手で解すことができる程度で接合し合っているシリコンを解す。次いで、手で解した後のシリコンに、60〜80MPaの荷重を負荷し、長さが30mm以下になるまで、シリコンを砕く。次いで、砕いたシリコンA(g)を秤量し、シリコン同士が重なり合わないようにアルミナ製の皿に敷きつめ、電気炉に入れる。次いで、電気炉内に空気を1NL/分の流量で供給しながら、昇温速度300℃/時間で、室温から1150℃まで昇温する。次いで、電気炉内に空気を1NL/分の流量で供給したまま、1150℃で、24時間保持する。次いで、電気炉内に空気を1NL/分の流量で供給しながら、降温速度100℃/時間で、1150℃から室温まで降温する。次いで、測定試料を取り出し、テフロン(登録商標)容器に移し、純水12mLと50%フッ酸水溶液1mLを加え、室温で5時間保持する。次いで、4%ホウ酸水溶液を加えて過剰量のフッ化水素を中和する。次いで、中和後の水溶液中のシリコン元素濃度を、ICP−AES(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、IRIS Advantage/RP型)にて測定する。次いで、中和後の水溶液の質量及びシリコン元素濃度から、水溶液中の全シリコン元素の質量B(g)を算出する。次いで、次式:
表面酸化指数=(B/A)×1,000,000
により、表面酸化指数を求める。
【0031】
本発明の高純度シリコンは、棒状、粒状若しくは板状のシリコン、又は棒状、粒状及び板状のもののうちの少なくとも1種が複数接合したシリコンであり、シーメンス法で得られるようなブロック状のシリコンや、シリコンを溶融して得られるようなシリコンインゴットとは、形状が異なる。
【0032】
本発明の高純度シリコンの嵩密度は、好ましくは0.8〜1.2g/cm、特に好ましくは0.8〜1.0g/cm、更に好ましくは0.85〜0.95g/cmである。
【0033】
本発明の高純度シリコンは、亜鉛還元法にて製造されるため、亜鉛を含有する。本発明の高純度シリコンの亜鉛含有量は、特に限定されないが、好ましくは10〜10000質量ppb、特に好ましくは10〜1000質量ppb、更に好ましくは10〜300質量ppbである。高純度シリコン中の亜鉛含有量が、上記範囲にあることにより、6−N以上の高純度の単結晶シリコンインゴットや多結晶シリコンインゴットを製造することができる。
【0034】
本発明の高純度シリコンのリン含有量は、特に限定されないが、好ましくは50質量ppb以下、特に好ましくは20質量ppb以下である。本発明の高純度シリコンのホウ素含有量は、特に限定されないが、好ましくは50質量ppb以下、特に好ましくは20質量ppb以下である。
【0035】
なお、高純度シリコンの純度及び不純物の含有量の分析は高周波誘導プラズマ発光分析法(ICP−AES)により求められる。その分析方法は、以下に示す通りである。
測定試料のシリコン1.5gに、50%フッ化水素酸16mlと50%硝酸30mlを加えて、完全に溶解させた後、蒸発乾固させる。次いで、1%硝酸5mlで定溶し、ICP−AES(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製iCAP 6500型/RP型)により不純物濃度を測定して、高純度シリコンの純度及び不純物の含有量を算出する。
【0036】
本発明の高純度シリコンは、棒状、粒状若しくは板状のシリコン、又は棒状、粒状及び板状のもののうちの少なくとも1種が複数接合したシリコンなので、簡便に粉砕することができる。そのため、本発明の高純度シリコンは、析出物の回収、運搬、溶融工程での溶融炉への充填等、取り扱いが容易である。一方、シーメンス法で得られるようなブロック状のシリコンは、粉砕が容易ではなく、析出物の回収、運搬、溶融工程での溶融炉への充填等、取り扱いが困難である。
【0037】
また、本発明の高純度シリコンは、従来の亜鉛還元法により得られるシリコンに比べ、径が大きいので、表面積が小さい。そのため、本発明の高純度シリコンは、従来の亜鉛還元法により得られる細い針状又は微粒子状のシリコンに比べ、表面酸化や周辺環境からの不純物の付着等、環境汚染がされ難い。
【0038】
また、本発明の高純度シリコンは、従来の亜鉛還元法により得られるシリコンに比べ、径が大きなシリコンなので、溶融し易い。
【0039】
これらのことから、本発明の高純度シリコンは、シリコンを溶融してシリコンインゴットを製造するための、溶融用シリコン原料として、優れている。例えば、本発明の高純度シリコンを溶融させ、得られる溶融シリコンから、多結晶シリコンインゴットを製造することができ、また、cz法やfz法にて単結晶を作製することもできる。
【0040】
本発明の高純度シリコンの製造方法について、図5〜図7を参照して説明する。図5は、本発明の高純度シリコンの製造方法に用いられる反応炉の形態例の模式的な端面図である。また、図6は、図5中の反応炉の側壁部(反応炉)と炭化珪素棒と四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁と亜鉛蒸気の供給空間の区画壁とを示す端面図であり、x−x線で水平方向に切ったときの端面図である。図6では、説明の都合上、図示したもの以外の記載を省略した。なお、図5及び図6では、析出棒として炭化珪素棒を用いる場合の形態例を代表例として記載したが、本発明では、析出棒は炭化珪素棒に限定されるものではない。
【0041】
図5中、反応炉20は、縦長の円筒形状を有する側壁部31と、側壁部31の上下を塞ぐ蓋部32(32a、32b)と、反応炉20を加熱するためのヒーター5と、からなる。反応炉20の上部には、四塩化珪素蒸気9の供給管7及び亜鉛蒸気10の供給管8が付設されており、反応炉20の下部には、排出ガス11を排出するための排出管6が付設されている。反応炉20内には、固定部材4を介して4本の炭化珪素棒(析出棒)3が設置されている。また、固定部材4には、四塩化珪素蒸気の供給空間を区画するための四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材13と、亜鉛蒸気の供給空間を区画するための亜鉛蒸気の供給空間の区画部材14と、が固定されている。四塩化珪素蒸気の供給管7は、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材13に繋がっており、亜鉛蒸気の供給管8は、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材14に繋がっている。そして、固定部材4が、側壁部1の内壁に形成されている炉内壁つば部12に引っ掛けられることより、炭化珪素棒3は、反応炉20の内部に下向きに突き出るように設置される。また、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材13と、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材14とが、反応炉20の上部に設置されている。なお、側壁部31と蓋部32とは、例えば、それぞれのつば部の間にシール材を挟み込み、つば部同士をボルト締めすること等により、密閉されている。
【0042】
四塩化珪素蒸気の供給管7の一端は、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材13に繋がっており、他端は、四塩化珪素の蒸発器に繋がっている。また、亜鉛蒸気の供給管8の一端は、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材14に繋がっており、他端は、亜鉛の蒸発器に繋がっている。また、排出管6は、排出ガス11、すなわち、四塩化珪素と亜鉛が反応する際に生成する塩化亜鉛ガス及び未反応ガスである四塩化珪蒸気及び亜鉛蒸気を回収するための回収装置に繋がっている。
【0043】
図5及び図6に示すように、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材13は、円筒形状の区画壁131と円形の上側部材とからなる。また、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材14は、円筒形状の内側の区画壁141と、円筒形状の外側の区画壁142と、ドーナツ形状の上側部材とからなる。そして、区画壁131と、区画壁141と、区画壁142とは、四塩化珪素蒸気の供給空間132の中心と同心円状に設置されている。
【0044】
反応炉として、反応炉20を用いる本発明の高純度シリコンの製造方法について説明する。先ず、ヒーター5により反応炉20内を加熱しておき、次いで、四塩化珪素及び亜鉛をそれぞれの蒸発器により気化させて、四塩化珪素蒸気9を四塩化珪素蒸気の供給管7から、亜鉛蒸気10を亜鉛蒸気の供給管8から、反応炉20内に供給しつつ、排出ガス11を該排出管6から、反応炉20の外へ排出する。このとき、反応炉20内では、四塩化珪素と亜鉛が反応して、シリコンが生成するが、反応炉20内には、炭化珪素棒(析出棒)3が設置されているので、生成したシリコンが、炭化珪素棒(析出棒)3に析出する。そして、反応炉20の上部から四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給し、反応炉20の下部から排出ガス11を排出しているので、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気は、反応炉20の上部から下向きに移動しており、その流れに沿うように炭化珪素棒(析出棒)3が存在しているので、炭化珪素棒(析出棒)3を覆うように、シリコンの結晶が成長する。また、四塩化珪素と亜鉛の反応により、塩化亜鉛も生成するが、塩化亜鉛ガスは、未反応の四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気と共に、排出ガス11として、排出管6から外へ排出される。
【0045】
このとき、四塩化珪素蒸気9は、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材13に先ず供給されるので、区画部材13により区画されている四塩化珪素蒸気の供給空間132内に拡散する。四塩化珪素蒸気9は、四塩化珪素蒸気の供給空間132に拡散後、四塩化珪素蒸気の供給口133から、反応炉20内に供給される。また、亜鉛蒸気10は、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材14に先ず供給されるので、区画部材14により区画されている亜鉛蒸気の供給空間143内に拡散する。亜鉛蒸気10は、亜鉛蒸気の供給空間143に拡散後、亜鉛蒸気の供給口144から、反応炉20内に供給される。このことにより、反応炉20内へ、四塩化珪素蒸気9が、亜鉛蒸気10に囲まれるようにして、四塩化珪素蒸気9及び亜鉛蒸気10が供給される。なお、反応炉20では、四塩化珪素蒸気の供給口133の形状は円形であり、また、亜鉛蒸気の供給口144の形状はドーナツ形状である。
【0046】
そして、四塩化珪素蒸気の供給口133からの四塩化珪素蒸気9の吹き出し線速度25〜100cm/秒で、反応炉20内に四塩化珪素蒸気9を供給する。
【0047】
すなわち、本発明の高純度シリコンの製造方法は、反応炉の上部から四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給して、反応炉内で四塩化珪素と亜鉛を反応させてシリコンを生成させ、反応炉の下部から排出ガスを排出する縦型の反応炉において、
1又は2以上の四塩化珪素蒸気の供給口を設け、
該四塩化珪素蒸気を、各四塩化珪素蒸気の供給口から、吹き出し線速度25〜100cm/秒で供給し、
該反応炉に供給される該四塩化珪素蒸気が、該亜鉛蒸気により囲まれるように、該亜鉛蒸気を供給すること、
を特徴とする高純度シリコンの製造方法である。
【0048】
本発明の高純度シリコンの製造方法に係る反応炉の形状は、反応炉の上部から反応炉内に供給された四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気が、反応炉の上部から下部に向かって下向きに移動しながら反応するような形状、すなわち、縦長の形状である。言い換えると、反応炉の形状は、原料蒸気及び排出ガスが、反応炉の上部から下部に向かって流れる形状である。
【0049】
反応炉内は1,000℃程度の温度となるため、反応炉の材質としては、透明石英、不透明石英、焼結石英などの石英、炭化珪素、窒化珪素等が挙げられ、強度面からは、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、また、温度勾配に起因するひび割れが起き難い点からは、石英、窒化珪素が好ましい。また、反応炉の構造等によっては、反応時の加熱温度に耐えられるのであれば、反応炉の材質としては、特に制限されない。また、反応炉の側壁部と蓋部が、異なる材質であってもよい。
【0050】
反応炉の大きさは、特に限定されないが、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気の供給条件によって、適宜選択される。一般的には、好ましくは、反応炉の縦方向の長さは、1,000〜6,000mmであり、円筒形状の場合、直径が200〜2,000mmである。
【0051】
反応炉では、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段が、反応炉の上部に付設される。また、排出管は、反応炉の下部に付設される。そして、反応炉では、反応炉内で原料蒸気の下方向の流れが形成され、反応炉内で四塩化珪素と亜鉛の反応を起こさせることができるような位置(上下方向の位置)に、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段と、排出管とが付設される。
【0052】
反応炉の側壁の周囲には、ヒーターが設置される。ヒーターとしては、電気ヒーターが好ましい。
【0053】
本発明の高純度シリコンの製造方法に係る反応炉には、1又は2以上の四塩化珪素蒸気の供給口が設けられている。図5及び図6に示す形態例の反応炉(反応炉20)では、四塩化珪素蒸気の供給口の数は、1つであるが、これに限定されるものではなく、四塩化珪素蒸気の供給口の数は、2以上であってもよい。なお、本発明では、図5及び図6に示す形態例の反応炉のように、四塩化珪素蒸気が、四塩化珪素蒸気の供給管から、一旦、四塩化珪素蒸気の供給空間に供給された後、反応炉内に供給される反応炉の場合、四塩化珪素蒸気の供給口とは、四塩化珪素蒸気の供給空間からの出口となる開口を指し、また、四塩化珪素蒸気が、四塩化珪素蒸気の供給管から、直接、反応炉内に供給される反応炉の場合、四塩化珪素蒸気の供給口とは、四塩化珪素蒸気の供給管の出口となる開口を指す。そして、本発明の高純度シリコンの製造方法では、四塩化珪素蒸気を、四塩化珪素蒸気の供給口から、反応炉内へ供給する。
【0054】
本発明の高純度シリコンの製造方法では、反応炉内に供給される四塩化珪素蒸気が、亜鉛蒸気により囲まれるように、亜鉛蒸気の供給口から反応炉内へ、亜鉛蒸気を供給する。なお、四塩化珪素蒸気が、亜鉛蒸気に囲まれているとは、水平方向に反応炉を切った断面で見たときに、四塩化珪素蒸気が、亜鉛蒸気で囲まれているということを指す。言い換えると、本発明の高純度シリコンの製造方法では、反応炉内に、四塩化珪素蒸気の縦方向の流れと、その流れの周りを囲む亜鉛蒸気の流れと、が形成されるように、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給する。
【0055】
本発明の高純度シリコンの製造方法に係る反応炉は、四塩化珪素蒸気が、亜鉛蒸気により囲まれるように、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を反応炉内に供給することができる四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段を有する反応炉であれば、特に制限されない。
【0056】
四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段としては、例えば、図5及び図6に示すような、四塩化珪素蒸気の供給空間132を区画するための四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁131と、四塩化珪素蒸気の供給空間132を囲む亜鉛蒸気の供給空間143を区画するための亜鉛蒸気の供給空間の内側の区画壁141及び外側の区画壁142とを有し、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁131と、亜鉛蒸気の供給空間の区画壁141及び142とが、四塩化珪素蒸気の供給空間132の中心と同心円状に設けられている形態例が挙げられる。図5及び図6に示す四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例では、四塩化珪素蒸気の供給管7も四塩化珪素蒸気供給手段の一部であり、また、亜鉛蒸気の供給管8も亜鉛蒸気供給手段の一部である。
【0057】
すなわち、四塩化珪素蒸気供給手段及び該亜鉛蒸気供給手段の第1の形態例(以下、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(A)とも記載する。)では、四塩化珪素蒸気の供給空間を区画するための四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁と、亜鉛蒸気の供給空間を区画するための亜鉛蒸気の供給空間の区画壁とを有し、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁と、亜鉛蒸気の供給空間の区画壁とが、四塩化珪素蒸気の供給空間の中心と同心円状に設けられている。また、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(A)では、四塩化珪素蒸気の供給空間内で、四塩化珪素蒸気が均一に拡散されるように、四塩化珪素蒸気の供給管7の区画部材への接続位置や本数を適宜選択することができ、また、亜鉛蒸気の供給空間内で、亜鉛蒸気が均一に拡散されるように、亜鉛蒸気の供給管8の区画部材への接続位置や本数を適宜選択することができる。
【0058】
また、四塩化珪素蒸気供給手段及び該亜鉛蒸気供給手段としては、他に、図7に示す形態例が挙げられる。図7に示す形態例(四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の第2の形態例(以下、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(B)とも記載する。))では、固定部材4に、炭化珪素棒(析出棒)3と、四塩化珪素蒸気の供給管の分岐管21と、亜鉛蒸気の供給管の分岐管22とが固定されている。そして、四塩化珪素蒸気の供給管の分岐管21により囲まれる空間の外側に、亜鉛蒸気の供給管の分岐管22が設置されている。図7に示す形態例によれば、四塩化珪素蒸気が、亜鉛蒸気により囲まれるように、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給することができる。図7に示す形態例では、四塩化珪素蒸気の供給管の分岐管21の出口の開口213が、四塩化珪素蒸気の供給口であり、また、亜鉛蒸気の供給管の分岐管22の出口の開口214が、亜鉛蒸気の供給口である。なお、図示しないが、四塩化珪素蒸気の供給管の分岐管21は、四塩化珪素蒸気の供給管9に、亜鉛蒸気の供給管の分岐管22は、亜鉛蒸気の供給管10に繋がっている。図7中、(A)は、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(B)を平面方向で切ったときの端面図であり、(B)のx−x線の端面であり、また、(B)は、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(B)の設置部位の近傍を垂直方向に切った端面図である。
【0059】
また、四塩化珪素蒸気供給手段及び該亜鉛蒸気供給手段としては、他に、図8に示す形態例が挙げられる。図8に示す形態例(四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の第3の形態例(以下、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)とも記載する。))では、固定部材4に、炭化珪素棒(析出棒)3と、四塩化珪素蒸気の供給室23と、亜鉛蒸気の供給室24とが固定されている。四塩化珪素蒸気の供給管7は、四塩化珪素蒸気の供給室23に繋がっており、亜鉛蒸気の供給管8は、亜鉛蒸気の供給室24に繋がっている。そして、固定部材4が、側壁部31の内壁に形成されている炉内壁つば部12に引っ掛けられることより、炭化水素棒(析出棒)3は、反応炉20の内部に下向きに突き出るように設置され、また、四塩化珪素蒸気の供給室23と、亜鉛蒸気の供給室24とは、反応炉20の上部に設置される。
【0060】
四塩化珪素蒸気の供給室23は、円筒形状の側壁231と円形の上側部材及び底部材とからなる。また、亜鉛蒸気の供給室24は、円筒形状の内側の側壁241と、円筒形状の外側の側壁242と、ドーナツ形状の上側部材及び底部材とからなる。そして、側壁231と、側壁241と、側壁242とは、四塩化珪素蒸気の供給室23の中心と同心円状に設置されている。
【0061】
四塩化珪素蒸気の供給室23の側壁又は底部材には、四塩化珪素蒸気の供給口232が形成されている。また、亜鉛蒸気の供給室24の側壁又は底部材には、亜鉛蒸気の供給口243が形成されている。なお、図8中、(A)は、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)を平面方向で切ったときの端面図であり、(B)のx−x線の端面であり、また、(B)は、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)の設置部位の近傍を垂直方向に切った端面図である。
【0062】
すなわち、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)は、四塩化珪素蒸気の供給口が形成されている四塩化珪素蒸気の供給室と、四塩化珪素蒸気の供給室を囲むように設置され、亜鉛蒸気の供給口が形成されている亜鉛蒸気の供給室とを有する。
【0063】
四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)では、四塩化珪素蒸気9は、四塩化珪素蒸気の供給室23に先ず供給されるので、四塩化珪素蒸気の供給室23内で拡散する。四塩化珪素蒸気9は、四塩化珪素蒸気の供給室23に拡散後、四塩化珪素蒸気の供給口232から反応炉20内に供給される。また、同様に、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)では、亜鉛蒸気10は、亜鉛蒸気の供給室24に先ず供給されるので、亜鉛蒸気の供給室24内で拡散する。亜鉛蒸気10は、亜鉛蒸気の供給室24に拡散後、亜鉛蒸気の供給口243から反応炉20内に供給される。そして、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)では、四塩化珪素蒸気の供給口232により囲まれる空間の外側に、亜鉛蒸気の供給口243が設けられているので、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)によれば、四塩化珪素蒸気が、亜鉛蒸気により囲まれるように、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を反応炉内に供給することができる。
【0064】
四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)では、四塩化珪素蒸気9は、反応炉20への供給前に、予め、四塩化珪素蒸気の供給室23内で均一に拡散されるので、例えば、四塩化珪素蒸気の供給室23に繋がる四塩化珪素蒸気の供給管7の数が1本であったとしても、各四塩化珪素蒸気の供給口233から、均一に四塩化珪素蒸気が供給され、また、亜鉛蒸気9は、反応炉20への供給前に、予め、亜鉛蒸気の供給室24内で均一に拡散されるため、例えば、亜鉛蒸気の供給室24に繋がる亜鉛蒸気の供給管8の数が1本であったとしても、各亜鉛蒸気の供給口243から、均一に亜鉛蒸気が供給される。
【0065】
また、該四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)では、四塩化珪素蒸気の供給口232及び亜鉛蒸気の供給口243の形成位置及び数を適宜選択することにより、四塩化珪素蒸気の供給空間の形成位置及び亜鉛蒸気の形成位置の設計が容易となる。
【0066】
本発明の高純度シリコンの製造方法では、反応炉中の四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気との上下方向の供給位置は、特に制限されないが、四塩化珪素蒸気が亜鉛蒸気より下方から供給される形態例が好ましい。このような四塩化珪素蒸気が亜鉛蒸気より下方から供給される形態例としては、例えば、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(A)では、図5に示すように、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁131の下端の位置(上下方向の位置)を、亜鉛蒸気の供給空間の区画壁141の下端の位置(上下方向の位置)より下方にする形態例が挙げられ、また、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(B)では、図7中の四塩化珪素蒸気の供給管の分岐管21の反応炉内への出口の位置(上下方向の位置)を、亜鉛蒸気の供給管の分岐管22の反応炉内への出口の位置(上下方向の位置)より下方にする形態例が挙げられ、また、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)では、図8中の四塩化珪素蒸気の供給口232の形成位置(上下方向の位置)を、亜鉛蒸気の供給口243の形成位置(上下方向の位置)より下方にする形態例が挙げられる。
【0067】
本発明の高純度シリコンの製造方法では、四塩化珪素蒸気を、各四塩化珪素蒸気の供給口から、吹き出し線速度25〜100cm/秒、好ましくは吹き出し線速度30〜90cm/秒で、反応炉内に供給する。四塩化珪素蒸気の吹き出し線速度が上記範囲にあることにより、径が大きいシリコンが得られる。四塩化珪素蒸気の吹き出し線速度が、上記範囲未満だと、四塩化珪素蒸気の横方向への拡散速度が相対的に大きくなるために、四塩化珪素蒸気の層流が乱れて乱流が発生してしまうので、シリコンの径が小さくなり、また、上記範囲を超えると、シリコンの析出が下方向へ伸び易くなるため、シリコンの径が小さくなる。
【0068】
本発明の高純度シリコンの製造方法では、反応炉内に、各亜鉛蒸気の供給口から、吹き出し線速度25cm/秒以上且つ四塩化珪素蒸気の吹き出し線速度の0.5〜2倍で、亜鉛蒸気を供給することが好ましく、吹き出し線速度30cm/秒以上且つ四塩化珪素蒸気の吹き出し線速度の1〜1.5倍で、亜鉛蒸気を供給することが特に好ましい。亜鉛蒸気の吹き出し線速度が上記範囲にあることにより、径が大きいシリコンが得られるという効果が高まる。
【0069】
四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の供給量比率(モル比)は、四塩化珪素蒸気:亜鉛蒸気=0.7:2〜1.3:2であり、好ましくは0.8:2〜1.2:2であり、特に好ましくは0.9:2〜1.1:2である。また、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気は、窒素ガス等の不活性ガスで希釈されていてもよく、その場合、四塩化珪素蒸気の希釈率は、体積割合((四塩化珪素蒸気+不活性ガス)/四塩化珪素蒸気)で、好ましくは1.01〜1.5、特に好ましくは1.02〜1.3であり、亜鉛蒸気の希釈率は、体積割合((亜鉛蒸気+不活性ガス)/亜鉛蒸気)で、好ましくは1.005〜1.3、特に好ましくは1.01〜1.2である。
【0070】
亜鉛の沸点は、「化学便覧」(日本化学会編)によると907℃であるため、反応炉内の温度が、亜鉛の沸点である907℃以上になるように、反応炉を加熱する。反応炉内の温度は、907〜1,200℃、好ましくは930〜1,100℃である。また、反応炉内の圧力は、好ましくは0〜700kPaG、特に好ましくは0〜500kPaGである。上記範囲に反応条件を設定することで、該炭化珪素棒に安定的に高純度シリコンを析出させることが可能となる。
【0071】
本発明の高純度シリコンの製造方法に係る反応炉には、析出棒が設置される。析出棒としては、例えば、炭化珪素棒、窒化珪素棒、タンタル棒、シリコン棒が挙げられる。特に、強度面や、不純物の混入による高純度シリコンへの影響が少ないという点で、析出棒としては、炭化珪素棒が好ましい。析出棒は、反応炉内に設置される。析出棒の形状としては、角柱状、円柱状が好ましく、特に、円柱状が好ましい。析出棒の形状が円柱状の場合、析出棒の直径は、強度や加工面から、1〜20cmが好ましく、2〜10cmが特に好ましい。また、固定部材4の下側から排出管6の上側の間に存在する析出棒の長さは、固定部材4の下側から排出管6の上側までの縦方向の長さに対し5〜120%が好ましく、20〜100%が特に好ましく、40〜90%が更に好ましい。なお、後述する反応炉内に内挿容器を設置する形態では、内挿容器の蓋となる固定部材4の下側から該排出管6の上側の間に存在する該析出棒の長さが、固定部材4の下側から該排出管6の上側までの縦方向の長さに対し5〜120%が好ましく、20〜100%が特に好ましく、40〜90%が更に好ましい。
【0072】
析出棒のうち炭化珪素棒は、炭化珪素の成形体であるが、通常、炭化珪素の成形体は、多数の細孔を有する多孔質体である。そして、炭化珪素棒は、多孔質の炭化珪素にシリコンが含浸されているシリコン含浸炭化珪素棒であることが、含浸されているシリコンが、反応により生成するシリコンの結晶の種となり、炭化珪素棒へのシリコンの析出を促進できる点で好ましい。シリコン含浸炭化珪素棒では、炭化珪素:含浸シリコンの質量比が、80:20〜95:5であることが好ましく、80:20〜90:10が特に好ましい。シリコン含浸炭化珪素棒は、多孔質の炭化珪素棒を、溶融シリコン中に浸漬し、溶融シリコンを炭化珪素の孔に含浸させることにより得られる。
【0073】
また、シリコンが含浸されていない多孔質の炭化珪素棒であっても、反応炉内に設置され、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応が行われた場合、反応の初期の段階では、炭化珪素棒の外側近傍の多孔質構造内で、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気との接触が起こり、そこでシリコンが生成するので、炭化珪素棒の外側近傍は、孔内にシリコンが含浸されているのと同様な状態になる。そのため、シリコンが含浸されていない多孔質の炭化珪素棒でもよく、特に、炭化珪素棒が繰り返し使用される場合は、シリコンが含浸されていない多孔質の炭化珪素棒は、繰り返し使用により、シリコンが含浸されている多孔質の炭化珪素棒と同様な状態になる。
【0074】
析出棒の設置本数は、特に制限されず、1本であっても2本以上であってもよい。また、析出棒の設置位置は、特に限定されない。例えば、図9に示すように、炭化珪素棒(析出棒)が4本(A)又は3本(B)の場合、炭化珪素棒3(析出棒)は、側壁部(反応炉)31の中心を中心とする円19上に、等間隔に設置されることが好ましい。なお、炭化珪素棒(析出棒)の設置本数及び設置位置は、原料蒸気の供給条件等の反応条件、反応炉の大きさ等により、高純度シリコンが効率よく析出するように、適宜選択される。
【0075】
析出棒の設置方法であるが、図5では、炭化珪素棒(析出棒)3が固定部材4に固定され、固定部材4が、炉内壁つば部12に引っ掛けられることにより、炭化珪素棒(析出棒)が、反応炉内に設置される旨を記載したが、これに限定されるものではない。例えば、図5中、排出管6の付設位置より下方にも炉内壁つば部を形成させ、その炉内壁つば部に、炭化珪素棒(析出棒)の固定用の固定部材を引っ掛け、固定部材の上側から反応炉内に上向きに突き出すように炭化珪素棒(析出棒)を設置する方法や、蓋部2bに、炭化珪素棒(析出棒)を固定する方法等、反応炉の下から上に向かって、炭化珪素棒(析出棒)を立てるように設置する方法が挙げられる。
【0076】
また、炭化珪素棒(析出棒)の温度を、反応炉内の温度よりも高温に設定するために、炭化珪素棒(析出棒)の内部には、加熱用のヒーターが装備されていてもよい。例えば、反応炉内の温度(反応炉の側壁温度)を930℃とした場合、炭化珪素棒(析出棒)を1,000℃とすることで、炭化珪素棒(析出棒)により選択的にシリコンを析出させることが可能となる。また、炭化珪素は、熱伝導率が高く輻射熱を多く受ける材質であるため、炭化珪素棒の場合、反応炉の側壁からの輻射熱を多く受けることになり、炭化珪素棒を加熱しなくてもある程度選択的に炭化珪素棒にシリコンを析出させることが可能である。
【0077】
本発明の高純度シリコンの製造方法では、窒素ガス等の不活性ガスの供給管を反応炉に付設して、不活性ガスを反応炉内に供給することができる。本発明では、不活性ガスを反応炉内への供給することにより、反応炉内に外気が侵入するのを防止することができる。
【0078】
本発明の高純度シリコンの製造方法では、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気の供給を止めることにより、高純度シリコンの製造を終了する。その後、反応炉を冷却し、高純度シリコンが析出した析出棒を、反応炉の外に取り出す。例えば、図5の形態例では、四塩化珪素蒸気の供給管7や亜鉛蒸気の供給管8等の付設部材を外した後、反応炉20の上側の蓋部32aを開け、側壁部31の上側から、炭化珪素棒(析出棒)3を取り出す。そして、析出した高純度シリコンを炭化珪素棒から掻き落して、高純度シリコンを得る。また、反応炉の炉壁に高純度シリコンが析出していた場合は、それも掻き落して回収する。
【0079】
高純度シリコンを掻き出した後の炭化珪素棒は、再び、本発明の高純度シリコンの製造方法にて、使用される。また、再使用する前に、炭化珪素棒を、純水又は塩酸、硝酸、フッ化水素酸等の酸などで洗浄してもよい。
【0080】
本発明の高純度シリコンの製造方法では、四塩化珪素蒸気の供給空間の中心に、析出棒が設置されていてもよい。四塩化珪素蒸気の供給空間の中心に、析出棒が設置されている形態例の反応炉としては、図10及び図11に示す反応炉26が挙げられる。反応炉26内には、固定部材4を介して1本の炭化珪素棒(析出棒)3が設置されている。また、固定部材4には、四塩化珪素蒸気の供給空間332を区画するための四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材33と、亜鉛蒸気の供給空間342を区画するための亜鉛蒸気の供給空間の区画部材34と、が固定されている。四塩化珪素蒸気の供給管7は、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材33に繋がっており、亜鉛蒸気の供給管8は、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材34に繋がっている。そして、固定部材4が、側壁部31の内壁に形成されている炉内壁つば部12に引っ掛けられることより、炭化珪素棒3は、反応炉26の内部に下向きに突き出るように設置され、また、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材33と、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材34とは、反応炉26の上部に設置される。なお、図10は、本発明の高純度シリコンの製造方法に用いられる反応炉の形態例の模式的な断面図である。また、図11は、図10中の反応炉の側壁部(反応炉)と炭化珪素棒と四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁と亜鉛蒸気の供給空間の区画壁とを示す端面図であり、x−x線で水平方向に切ったときの端面図である。
【0081】
反応炉26では、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材33は、円筒形状の区画壁331と円形の上側部材とからなる。また、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材34は、円筒形状の区画壁341と、ドーナツ形状の上側部材とからなる。そして、区画壁331と、区画壁341とは、四塩化珪素蒸気の供給空間332の中心と同心円状に設置されている。なお、反応炉26では、四塩化珪素蒸気の供給空間側の亜鉛蒸気の供給空間は、区画壁331により区画されている。
【0082】
そして、反応炉26では、四塩化珪素蒸気9は、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材33に先ず供給されるので、区画部材33により区画されている四塩化珪素蒸気の供給空間332内に拡散する。四塩化珪素蒸気9は、四塩化珪素蒸気の供給空間332に拡散後、四塩化珪素蒸気の供給口333から、反応炉20内に供給される。また、亜鉛蒸気10は、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材34に先ず供給されるので、区画部材34により区画されている亜鉛蒸気の供給空間342内に拡散する。亜鉛蒸気10は、亜鉛蒸気の供給空間342に拡散後、亜鉛蒸気の供給口343から、反応炉20内に供給される。このことにより、四塩化珪素蒸気9が、亜鉛蒸気10に囲まれるようにして、反応炉20内へ、四塩化珪素蒸気9及び亜鉛蒸気10が供給される。なお、反応炉26では、四塩化珪素蒸気の供給口333の形状はドーナツ形状であり、また、亜鉛蒸気の供給口343の形状はドーナツ形状である。
【0083】
また、本発明の多結晶シリコンの製造方法では、反応炉内に内挿容器が設置されていてもよい。内挿容器の材質としては、透明石英、不透明石英、焼結石英などの石英、炭化珪素、窒化珪素等が挙げられ、強度面からは、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、また、温度勾配に起因するひび割れが起き難い点からは、石英、窒化珪素が好ましい。
【0084】
以下では、本発明の高純度シリコンの製造方法に係る反応炉に、内挿容器が設置されている形態例について、図12及び図13を参照して説明する。なお、以下では、反応炉内に内挿容器が設置されていない形態例と異なる点のみ説明し、同様な点については省略する。図12及び図13は、本発明の高純度シリコンの製造方法に係る反応炉のうち、反応炉内に内挿容器が設置されている形態例を示す模式的な端面図である。
【0085】
図12中、反応炉30a内には、側面が円筒形状であり底面が円形の内挿容器25が設置されている。内挿容器25の上側には、内挿容器25の蓋として、固定部材4が直接設置されている。固体部材4には、炭化珪素棒(析出棒)3と、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材13と、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材14とが固定されている。反応炉30aには、反応炉30a内に窒素ガス16を供給するための窒素ガス供給管151が付設されている。側壁31の内壁に形成されている炉内つば部12に引っ掛けるようにして、窒素ガス管の固定部材29が設置されており、窒素ガス管の固定部材29には、窒素ガス供給管151が固定されている。内挿容器25の下部には、内挿容器25内から排出ガス11を排出するための排出口27が形成されており、排出ガス11が、排出口27を経て、排出管6から該反応炉30aの外に排出されるようになっている。
【0086】
図12に示す形態例は、反応炉内に内挿容器を設置し、固定部材を内挿容器の蓋も兼ねさせて、内挿容器の上側に設置することにより、炭化珪素棒(析出棒)を内挿容器内に下向きに突き出すように設置する形態例である。
【0087】
図13に示す形態例は、図12に示す形態例の炭化珪素棒(析出棒)3を、内挿容器の蓋を兼ねる固定部材ではなく、内挿容器25の底に固定する形態例である。図13に示す形態例では、炭化珪素棒(析出棒)を内挿容器内に上向きに突き出すように設置されている。
【0088】
図12及び図13では、側壁部31の上側には、炉内つば部12が形成され且つ窒素ガス管の固定部材29が設置されている旨記載したが、本発明の高純度シリコンの製造方法に係る反応炉においては、窒素ガス管の固定部材29を使用しない場合は、炉内つば部12は形成されていなくてもよい。
【0089】
本発明の高純度シリコンの製造方法のうち、反応炉内に内挿容器を設置する形態例は、内挿容器内に析出棒を設置して、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を内挿容器内に供給して、内挿容器内で、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行い、高純度シリコンを析出棒に析出させる形態例である。
【0090】
本発明の高純度シリコンの製造方法のうち、反応容器内に内挿容器を設置する形態例では、図12及図13に示すように、窒素ガス等の不活性ガスの供給管を該反応炉に付設して、不活性ガスを該反応炉内への供給し、排出ガスとして排出管6から排出することにより、反応炉内に外気が侵入するのを防止すると共に、不活性ガスを反応炉の側壁と内挿容器との隙間に流すことで、排出ガスや内挿容器内へ供給されるべき原料蒸気(四塩化珪素蒸気、亜鉛蒸気)が反応炉の側壁と該内挿容器との隙間に漏れて、高純度シリコンが反応炉の側壁に析出するのを防止することができる。また、本発明の高純度シリコンの製造方法において、不活性ガスの供給管を反応炉に付設して、不活性ガスを該反応炉内に供給する場合、図12及び図13に示すように、反応炉30の上側の蓋部32aから不活性ガスを供給し、排出ガス11として排出管6から不活性ガスを排出してもよいし、他には、例えば、反応炉30の上側の蓋部32aに付設した複数の不活性ガスの供給管により不活性ガスを供給してもよいし、あるいは、反応炉30の上側の蓋部32a及び反応炉30の下側の蓋部32bに付設した不活性ガスの供給管より不活性ガスを供給してもよい。
【0091】
本発明の高純度シリコンの製造方法のうち、反応容器内に内挿容器を設置する形態例が終了すると、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気の供給を止め、反応炉を冷却した後、表面に高純度シリコンが析出した析出棒及び内部に高純度シリコンが析出した内挿容器を、反応炉の外に取り出す。例えば、図12及び図13の形態例では、四塩化珪素蒸気の供給管7や亜鉛蒸気の供給管8等の付設部材を外した後、反応炉30の下側の蓋部32bを開け、側壁部31の下側から、固定部材に固定されている炭化珪素棒(析出棒)3ごと内挿容器25を取り出す。そして、表面に析出した高純度シリコンを炭化珪素棒(析出棒)から掻き落して、内部に析出した高純度シリコンを内挿容器内から掻き出して、高純度シリコンを得る。
【0092】
高純度シリコンを掻き出した後の内挿容器は、再び、本発明の高純度シリコンの製造方法にて、使用される。また、再使用する前に、内挿容器を、純水又は塩酸、硝酸、フッ化水素酸等の酸などで洗浄してもよい。
【0093】
本発明の高純度シリコンの製造方法では、四塩化珪素蒸気の吹き出し線速度を、好ましくは四塩化珪素蒸気の吹き出し線速度及び亜鉛蒸気の吹き出し線速度を、特定の範囲に制御しているので、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気とを層流で接触させることができる。そのため、四塩化珪素分子と亜鉛分子が緩やかな水平方向への拡散によって、穏やかに接触して反応して、シリコンを生成するので、径の大きなシリコンが生成し易くなる。そして、析出棒に付着した生成シリコンは、反応場に留められるので、径が大きなシリコンの結晶へと成長する。
【0094】
このとき、本発明の高純度シリコンの製造方法では、縦型の反応炉内で、四塩化珪素蒸気が、亜鉛蒸気で囲まれるように、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給しているので、四塩化珪素蒸気の層と亜鉛蒸気の層との間で副生する塩化亜鉛(ZnCl)を、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気が下方向へと追い出すため、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気との反応の効率が良くなり、シリコンの結晶の成長が促進される。
【0095】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0096】
(実施例1)
下記反応炉において、亜鉛蒸気の供給管から950℃に加熱して気化させた亜鉛蒸気を窒素ガスと共に、反応炉内に供給し、四塩化珪素蒸気の供給管から950℃に加熱して気化させた四塩化珪素蒸気を反応炉内に供給しつつ、反応炉内を950℃にして、四塩化珪素と亜鉛の反応を行った。このとき、四塩化珪素の供給速度が19.3g/分、四塩化珪素蒸気の供給口333からの四塩化珪素蒸気の吹き出し線速度が35cm/秒、亜鉛の供給速度が13.5g/分、亜鉛蒸気の供給口343からの亜鉛蒸気の吹き出し線速度が35cm/秒となるように、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給した。
<反応炉(図10に示す形態例)>
反応炉:内径300mm×長さ2,500mmの石英製反応管を使用
炭化珪素棒:シリコン含浸炭化珪素棒、炭化珪素:含浸シリコンの質量比は85:15、外径20mm×長さ1,000mm、本数1本(四塩化珪素蒸気の供給空間332の中心に設置)
反応炉出口の排出管内径:100mm
四塩化珪素蒸気の供給空間332の内径:35mm
亜鉛蒸気の供給空間342の径:内径50mm、外径53.4mm
排出管の位置:排出管6の下側が反応炉の下側の蓋部32bの上面より700mm上側
【0097】
そして、24時間反応を行った後、冷却し、炭化珪素棒を固定部材ごと反応炉の外に取り出した。炭化珪素棒にシリコンが析出していることが確認された。次いで、炭化珪素棒からシリコンを掻き落して、シリコンを得た。得られたシリコンの収率は、供給原料に対し70%であり、シリコン中の亜鉛の含有量は290質量ppb、リンの含有量は17質量ppb、ホウ素の含有量は13質量ppbであった。
また、得られたシリコンの径の分布を測定し、その結果を表1に示す。その結果から、径が2mmを超える部分の割合は、86.5質量%であった。また、得られたシリコンの嵩密度を測定したところ、0.90g/cmであった。また、得られたシリコンの表面酸化指数を測定したところ、1235であった。
【0098】
(分析方法)
<シリコンの径の分布>
先ず、測定対象のシリコンをポリエチレン製の袋に入れ、手で解すことができる程度で接合しているシリコンを解した。次いで、手で解した後のシリコンに、60〜80MPaの荷重を負荷し、長さが30mm以下になるまで、シリコンを砕いた。次いで、砕いたシリコン250gを内径150mm、目開きが0.1mm、1mm、2mm、4mm及び5.6mmの篩(ステンレス製)で順に篩い、各篩上のシリコンの質量と、目開き0.1mmの篩の篩下のシリコンの質量を測定し、これらの合計質量と、各篩上のシリコンの質量から、径の分布を求めた。
実施例1において、篩分けによって得られた5.6mm超の径を有するシリコンの写真を図16Aに、篩分けによって得られた4mm超5.6mm以下の径を有するシリコンの写真を図17Aに、篩分けによって得られた2mm超4mm以下の径を有するシリコンの写真を図18Aに、篩分けによって得られた1mm超2mm以下の径を有するシリコンの写真を図19Aに、篩分けによって得られた0.1mm超1mm以下の径を有するシリコンの写真を図20Aに、篩分けによって得られた0.1mm以下の径を有するシリコンの写真を図21Aに示した。なお、図16〜図21中、Bは、各径のシリコンを拡大した写真である。
【0099】
<嵩密度>
製造したシリコンの充填性を評価する為に、嵩密度の測定を行った。先ず、予め空重量を測定しておいた容量1LのPFA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂)製ビーカーに、製造したシリコンをビーカーを軽く叩きながらゆっくりと500cmの位置まで入れ、重量を測定した。測定重量からビーカーの空重量を差し引いて、ビーカー内に入ったシリコンの重量C(g)を算出した。次いで、次式:
嵩密度=C/500(g/cm
により、嵩密度を求めた。
【0100】
<表面酸化指数>
先ず、測定対象のシリコンをポリエチレン製の袋に入れ、手で解すことができる程度で接合しているシリコンを解した。次いで、手で解した後のシリコンに、60〜80MPaの荷重を負荷し、長さが30mm以下になるまで、シリコンを砕いた。次いで、砕いたシリコン9gを秤量し、シリコン同士が重なり合わないようにアルミナ製の皿に敷きつめ、電気炉に入れた。次いで、電気炉内に空気を1NL/分の流量で供給しながら、昇温速度300℃/時間で、室温から1150℃まで昇温し、次いで、電気炉内に空気を1NL/分の流量で供給したまま、1150℃で、24時間保持し、次いで、電気炉内に空気を1NL/分の流量で供給しながら、降温速度100℃/時間で、1150℃から室温まで降温した。次いで、測定試料を取り出し、テフロン(登録商標)容器に移し、純水12mLと50%フッ酸水溶液1mLを加え、室温で5時間保持した。次いで、4%ホウ酸水溶液を加えて過剰量のフッ化水素を中和した。次いで、中和後の水溶液中のシリコン元素濃度を、ICP−AES(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、IRIS Advantage/RP型)にて測定し、中和後の水溶液の質量及びシリコン元素濃度から、水溶液中の全シリコン元素の質量B(g)を算出した。次いで、次式:
表面酸化指数=(B/9)×1,000,000
により、表面酸化指数を求めた。
【0101】
(実施例2)
四塩化珪素蒸気の供給口333からの四塩化珪素蒸気の吹き出し線速度が70cm/秒となるように、四塩化珪素蒸気の供給空間332の径を28.5mmとしたこと、及び亜鉛蒸気の供給口343からの亜鉛蒸気の吹き出し線速度が70cm/秒となるように、亜鉛蒸気の供給空間342の外径を51.9mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で行い、シリコンを得た。
その結果、得られたシリコンの収率は、供給原料に対し68%であり、シリコン中の亜鉛の含有量は460質量ppb、リンの含有量は20質量ppb、ホウ素の含有量は20質量ppbであった。
また、得られたシリコンの径の分布を測定した結果を表1に示す。その結果から、径が2mmを超える部分の割合は、76.5質量%であった。また、得られたシリコンの嵩密度は、0.89g/cmであり、表面酸化指数は、1779であった。
【0102】
(比較例1)
四塩化珪素蒸気の供給口333からの四塩化珪素蒸気の吹き出し線速度が18cm/秒となるように、四塩化珪素蒸気の供給空間332の径を45mmとしたこと、及び亜鉛蒸気の供給口343からの亜鉛蒸気の吹き出し線速度が18cm/秒となるように、亜鉛蒸気の供給空間342の外径を56mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で行い、シリコンを得た。
その結果、得られたシリコンの収率は、供給原料に対し70%であり、シリコン中の亜鉛の含有量は11,000質量ppb、リンの含有量は87質量ppb、ホウ素の含有量は60質量ppbであった。
また、得られたシリコンの径の分布を測定した結果を表1に示す。その結果から、径が2mmを超える部分の割合は、18.3質量%であった。また、得られたシリコンの嵩密度は、0.72g/cmであり、表面酸化指数は、3610であった。
【0103】
(比較例2)
四塩化珪素の供給速度を19.3g/分に代えて57.9g/分とし、四塩化珪素蒸気の供給口333からの四塩化珪素蒸気の吹き出し線速度が140cm/秒となるように、四塩化珪素蒸気の供給空間332の径を30.9mmとしたこと、及び亜鉛の供給速度を13.5g/分に代えて40.5g/分とし、亜鉛蒸気の供給口343からの亜鉛蒸気の吹き出し線速度が140cm/秒となるように、亜鉛蒸気の供給空間342の外径を53.2mmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で行い、シリコンを得た。
その結果、得られたシリコンの収率は、供給原料に対し56%であり、シリコン中の亜鉛の含有量は1,200質量ppb、リンの含有量は140質量ppb、ホウ素の含有量は40質量ppbであった。
また、得られたシリコンの径の分布を測定した結果を表1に示す。その結果から、径が2mmを超える部分の割合は、8.7質量%であった。また、得られたシリコンの嵩密度は、0.54g/cmであり、表面酸化指数は、7348であった。
(比較例3)
下記反応炉において、亜鉛蒸気の供給管から950℃に加熱して気化させた亜鉛蒸気を窒素ガスと共に、反応炉内に供給し、四塩化珪素蒸気の供給管から950℃に加熱して気化させた四塩化珪素蒸気を反応炉内に供給しつつ、反応炉内を950℃にして、四塩化珪素と亜鉛の反応を行った。このとき、四塩化珪素の供給速度が19.3g/分、四塩化珪素蒸気の供給口51からの四塩化珪素蒸気の吹き出し線速度が35cm/秒、亜鉛の供給速度が13.5g/分、亜鉛蒸気の供給口52からの亜鉛蒸気の吹き出し線速度が85cm/秒となるように、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給した。
<反応炉(図14に示す形態例)>
反応炉:内径300mm×長さ2,500mmの石英製反応管を使用
炭化珪素棒:シリコン含浸炭化珪素棒、炭化珪素:含浸シリコンの質量比は85:15、外径20mm×長さ1,000mm、本数1本(四塩化珪素蒸気の供給空間50の中心に設置)
反応炉出口の排出管内径:100mm
四塩化珪素蒸気の供給空間50の内径:35mm
亜鉛蒸気の供給口52の内径:12mm
排出管の位置:排出管6の下側が反応炉の下側の蓋部32bの上面より700mm上側
なお、図14に示す反応炉では、図14及び図15に示すように、亜鉛蒸気の供給空間を区画する区画壁がないので、亜鉛蒸気は、亜鉛蒸気の供給管8の端部から、直接、反応炉内に供給され、一旦、亜鉛蒸気の供給空間で拡散されるようなことがない。そのため、亜鉛蒸気は、四塩化珪素蒸気を囲むようにして、供給されることはなく、亜鉛蒸気の供給管8の開口50側に偏って、四塩化珪素蒸気に供給される。
【0104】
そして、24時間反応を行った後、冷却し、炭化珪素棒を固定部材ごと反応炉の外に取り出した。炭化珪素棒にシリコンが析出していることが確認された。次いで、炭化珪素棒からシリコンを掻き落して、シリコンを得た。得られたシリコンの収率は、供給原料に対し70%であり、シリコン中の亜鉛の含有量は5,100質量ppb、リンの含有量は40質量ppb、ホウ素の含有量は35質量ppbであった。
また、得られたシリコンの径の分布を測定し、その結果を表1に示す。その結果から、径が2mmを超える部分の割合は、52.8質量%であった。また、得られたシリコンの嵩密度を測定したところ、0.77g/cmであった。また、得られたシリコンの表面酸化指数を測定したところ、2488であった。
【0105】
【表1】

【0106】
(溶解試験)
実施例1及び2、比較例1、2及び3で得られたシリコンを用いて、以下の試験を行った。
・溶解性
シリコン200gを内径100mm、高さ50mmの石英るつぼに充填し、アルゴンガス雰囲気下で1400℃に加熱し、シリコンが完全に溶融するまでの時間を測定した。その結果、実施例1で得られたシリコンは2時間で、実施例2で得られたシリコンは2.5時間で、比較例1で得られたシリコンは5時間で、比較例3で得られたシリコンは4時間で、完全に溶融したが、比較例2で得られたシリコンは5時間経過しても、一部不溶解分が残り、完全に溶融することは無かった。
・砕き易さ
シリコン1kgをポリエチレン製の袋に入れ、手で解すことができる程度で接合しているシリコンを解した後、80MPaの荷重を負荷し、長さが30mm以下になるまで、シリコンを砕くのに要した時間を測定した。その結果、実施例1及び2、比較例1及び2、3で得られたシリコンとも30分〜1時間の間で砕き終えることができた。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明によれば、径の大きい高純度シリコンを提供できるので、環境による汚染が少なく、且つ、溶融工程の溶融効率を高くすることができるので、高効率且つ高純度のシリコンインゴットを製造できる。
【符号の説明】
【0108】
1 棒状のシリコン
2 粒状のシリコン
3 炭化珪素棒
4 固定部材
5 ヒーター
6 排出管
7 四塩化珪素蒸気の供給管
8 亜鉛蒸気の供給管
9 四塩化珪素蒸気
10 亜鉛蒸気
11 排出ガス
12 炉内壁つば部
13 四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材
14 亜鉛蒸気の供給空間の区画部材
16 窒素ガス
20、26、30a、30b 反応炉
21 四塩化珪素蒸気の供給管の分岐管
22 亜鉛蒸気の供給管の分岐管
23 四塩化珪素蒸気の供給室
24 亜鉛蒸気の供給室
25 内挿容器
27 排出口
29 窒素ガスの固定部材
31 反応炉の側壁
32、32a、32b 蓋部
33、50、132、332 四塩化珪素蒸気の供給空間
34、143、342 亜鉛蒸気の供給空間
41 シリコンの径
131 四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁
51、133、213、232、333 四塩化珪素蒸気の供給口
141 内側の亜鉛蒸気の供給空間の区画壁
142 外側の亜鉛蒸気の供給空間の区画壁
52、144、214、243、343 亜鉛蒸気の供給口
151 窒素ガスの供給管
161 中心側の空間
181 側壁側の空間
231 側壁
241 中心側の側壁
242 側壁側の側壁
331 四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁
341 亜鉛蒸気の供給空間の区画壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状、粒状若しくは板状のシリコン、又は棒状、粒状及び板状のもののうちの少なくとも1種が複数接合したシリコンであり、径が2mmを超える部分の割合が75質量%以上であることを特徴とする高純度シリコン。
【請求項2】
径が4mmを超える部分の割合が10質量%以上であることを特徴とする請求項1記載の高純度シリコン。
【請求項3】
棒状、粒状若しくは板状のシリコン、又は棒状、粒状及び板状のもののうちの少なくとも1種が複数接合したシリコンであり、表面酸化指数が500〜2200であることを特徴とする高純度シリコン。
【請求項4】
嵩密度が0.8〜1.2g/cmであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の高純度シリコン。
【請求項5】
亜鉛の含有量が10〜10000質量ppbであることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の高純度シリコン。
【請求項6】
リンの含有量が20質量ppb以下であり、ホウ素の含有量が20質量ppb以下であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の高純度シリコン。
【請求項7】
反応炉の上部から四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給して、反応炉内で四塩化珪素と亜鉛を反応させてシリコンを生成させ、反応炉の下部から排出ガスを排出する縦型の反応炉において、
1又は2以上の四塩化珪素蒸気の供給口を設け、
該四塩化珪素蒸気を、各四塩化珪素蒸気の供給口から、吹き出し線速度25〜100cm/秒で供給し、
該反応炉に供給される該四塩化珪素蒸気が、該亜鉛蒸気により囲まれるように、該亜鉛蒸気を供給すること、
を特徴とする高純度シリコンの製造方法。
【請求項8】
前記反応炉が、四塩化珪素蒸気の供給空間を区画するための四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁と、該四塩化珪素蒸気の区画壁を囲むように設置され、亜鉛蒸気の供給空間を区画するための亜鉛蒸気の供給空間の区画壁と、を有し、該四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁と該亜鉛蒸気の供給空間の区画壁とが、該四塩化珪素蒸気の供給空間の中心と同心円状に設置されている反応炉であることを特徴とする請求項7記載の高純度シリコンの製造方法。
【請求項9】
前記四塩化珪素蒸気の供給空間の中心に、析出棒が設置されていることを特徴とする請求項8記載の高純度シリコンの製造方法。
【請求項10】
前記亜鉛蒸気を、各亜鉛蒸気の供給口から、吹き出し線速度25cm/秒以上で供給し、且つ、亜鉛蒸気の吹き出し線速度が、四塩化珪素蒸気の吹き出し線速度の0.5〜2倍であることを特徴とする請求項7〜9いずれか1項記載の高純度シリコンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【公開番号】特開2013−14501(P2013−14501A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−128609(P2012−128609)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【Fターム(参考)】