説明

高耐久セメント系成形品製造における養生方法

【課題】セメント系成形品の養生時に、加熱した養生水の中に生じる気相がセメントと水との水和反応を妨げるのを防ぐ。
【解決手段】密封可能な耐圧容器1内に、全体が養生水10中に浸漬するようセメント成形品Aを配置する。耐圧容器1内に加圧した水11、水蒸気12、空気を圧入して容器1内の飽和蒸気圧以上に高める。養生水10を加熱・昇温する。養生水10から激しく気相が生じることなく、成形品Aのセメント成分の水和反応を妨げない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタルやコンクリートのセメント系材料を用いて製造するALC版、コンクリートパイル、電柱などのプレキャスト成形品の製造方法に関するものであり、特に高耐久に製造可能なその養生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セメントを成分として含むモルタルやコンクリートを材料として製造するALC版、PCパイル、電柱などのプレキャスト成形品を製造する際、それらの強度を早期に発現させると共に、骨材を水熱反応させ、高強度化を図る製造方法として「オートクレーブ養生(高温高圧蒸気養生)」が工業化されている。しかしながら、オートクレーブ養生を施した成形品は、養生終了後の長さ変化率(乾燥収縮率)が大きく、膨張材の膨張効率も悪いなど、寸法制御に問題があった。
【0003】
この課題を解決する手段として本件出願人は、特開平11−180785号「モルタル又はコンクリート部材の製造方法」、特開2000−53476号「ケミカルプレストレス部材の製造方法」、特開2000−319077号「コンクリート成形品の高温高圧水中養生装置およびこの養生装置を用いたコンクリート成形品の養生方法」、並びにPCT国際公開99/62843「ケミカルプレストレスコンクリート成形品の製造方法、およびその製造方法にも好適に用いられるコンクリート成形品の高温高圧水中養生装置、並びにこの養生装置を用いたコンクリート成形品の養生方法」などの発明を提案している。
既に提案したこれら発明は、蒸気の中で成形品を養生するのではなく、「成形品を常時水に漬かった状態に維持する」、つまりは高温高圧水中養生を要件としている。「蒸気」ではなく、「水」に浸漬することで、セメントと水との反応、つまりは水和反応がより促進され、より多量のセメント成分が固化して均一な充填構造を形成する結果、成形品の強度が増すものである。
【0004】
このような従来の高温高圧水中養生を行う場合、密封可能な耐圧容器を使用し、容器内の養生水中に成形品を沈め、容器を密封した後、養生水を加熱して沸騰させ、発生した蒸気を容器内に充満させることによって高圧雰囲気を作り出していた。加熱によって養生水から発生した蒸気が充満することによって密封容器内の圧力が高まり、引いては養生水の圧力が高まることによって、成形品が高温高圧の養生水に浸漬することになるのである。
【0005】
しかしながらこのような養生方法では、「養生水が沸騰した後に、容器内の圧力が目標とする圧力に達している」現象が生じていると言える。沸騰は、液内の圧力が飽和蒸気圧以上になり、外部の圧力以上になった結果、液相内に微小な気相(気泡)が発生し、体積の増加とともに水の上面に達する現象である。つまり液体の中に気泡が生じて、それが激しく水の表面から蒸気となって放出される状態である。この蒸気が容器内に充満し、圧力が増加し、容器内が高圧となっていたわけである。
【0006】
一方、モルタルやコンクリートは、セメントと水が反応して固化し始めると、その内部には無数の間隙が生じる。その間隙は外表面から内側に連続しているものもあり、セメントと反応した後に生じる空隙(気相)と、未だ反応していない水が間隙内に存在しているが、養生水を加熱して沸騰させてしまうと、この隙間内の水にも気相(気泡)が生じて、隙間内の水を外へ押出してしまうことになってしまう。セメントの水和反応は液相で起る反応、つまりセメントと水との反応は、液体状の水が存在する空間でのみ生じるのであり、その空間にのみ反応生成物が充填する。また、水中に気泡が生じて水蒸気雰囲気となってしまうと、その空間でのセメントと水の反応は極端に遅くなり、したがって水和反応を阻害するという事態も生じる。結局、成形品を養生水の中に十分に浸漬させていたとしても、その内部の間隙では気相(気泡)が妨げとなって期待通りの水和反応が行われなくなり、セメントの固化が期待通りに進まないという事態を招いていた。
【0007】
また、上記した高温高圧水中養生では、養生水を沸騰させるため、養生水が蒸気となって容器内に蒸発し、成形品全体を水の中に浸漬してあっても、蒸発によって養生水水面が下がり、養生水表面から露出してしまい、水中養生効果が十分に得られないことがあった。大型の耐圧容器使用の場合において、養生水加熱の効率化を図るために、耐圧容器内に小型の水槽を入れて養生水を張り、この中に成形品を配置して浸漬するような場合は、沸騰して蒸気となった養生水が冷却時に小型の水槽の外に落ちて、やはり養生水が減少してしまうという事態を招いていた。
【0008】
更には、セメントの水和反応の進行自体も、容器内の高圧雰囲気の造成を阻害していたと考えられる。セメントは自身の水和反応によって反応物が占めていた体積より小さい体積の生成物となる。その結果、新たな空隙(気相)を作り出すため、水和反応が進行するにつれて成形品の間隙内の圧力が低下し、これも期待通りの強度が得られていなかった原因と考えられる。
【特許文献1】特開平11−180785号公報
【特許文献2】特開2000−53476号公報
【特許文献3】特開2000−319077号公報
【特許文献4】国際公開99−62843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、養生水が加熱されて蒸発沸騰することによって養生水の中に生じる気相が、セメントと水との水和反応を阻害しようとする点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため本発明は、養生水に気相を生じさせないよう加圧・昇温することにより、成形品内部の間隙水内に、一様なセメントと水との水和反応を生じさせるようにするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る高耐久セメント成形品製造における養生方法は、養生水中に気相が生じないように加圧・昇温するため、成形品内部の間隙中にも気相が生じない。従って成形品間隙中でのセメントと水の水和反応が妨げられず、固化が促進され、圧縮強度の大きな製品が製造可能となる。また、固体がより均一に充填したセメント硬化体が得られるため、劣化原因物質が外部から浸入し難くなり、より耐久的な成形品が得られる。更に、養生後の成形品の収縮率も小さくなる。
【0012】
容器内の圧力が飽和蒸気圧以上であり、養生水は沸騰することがなく、水が蒸発して成形品が空気に晒されるということが生じず、成形品全体において良好に水中養生が可能である。水や蒸気などを容器内に圧力を加圧し続けることによって、水和反応によって成形品から空隙が生じても、容器内の圧力は低下せず、高圧養生が損なわれない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明では、耐圧容器内の圧力を高めて水和作用を促進するとともに、養生水を沸騰させないようにして、水中に気相が発生しないよう維持することを最も主要な特徴とする。
【0014】
本発明で養生するセメント系成形品とは、セメントを含む材料を型枠に入れて成形したもので、コンクリートパイル、コンクリートポールやキャスクなど、様々な部材としてプレキャスト成形されるものを指す。使用されるセメントの種類としては、普通、早強及び超早強等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントにシリカ、高炉スラグ、或いはフライアッシュを混和した各種混合セメントなど、広い意味での各種セメントが使用可能である。また、ポルトランドセメントに、シリカ、高炉スラグ或いはフライアッシュ等を、JIS等によって定められた混和率を超えて配合したセメントも使用可能であり、シリカヒューム等の活性シリカやメタカオリン等といった粘土鉱物の焼成物や未焼成物を配合したセメントも使用可能である。更に、セメントに膨張材を配合した膨張セメントも使用可能である。ここで膨張材としては、酸化カルシウム膨張材、アウイン系膨張材、アルミネート膨張材等、各種膨張材の使用が可能である。その他、収縮低減剤や減水剤などの使用も妨げるものではない。
【0015】
以上のセメントを、細骨材や粗骨材などの骨材、水と混練し、型枠に投入して成形する。本発明に係る養生方法を行うまで、型枠内に材料を存置する時間は限定されないが、型枠から脱型しても形状が安定しているようになる所要に時間、型枠内に置く。この脱型した成形品を、密封可能な耐圧容器の中に収納する。
【0016】
本発明で使用する密封可能な耐圧容器としては、従来のオートクレーブ養生に用いる圧力釜も考えられる。しかしながら、通常この圧力釜は横置き型であるため、養生終了後ハッチを開けた際に高温養生水が流出することが考えられるので、例えば縦型の圧力容器に水を満たし、その中に成形品を沈めた状態で養生するのが好ましい。
【0017】
耐圧容器の中に成形品を配置し、成形品は全体が養生水の中に浸漬するようにする。つまりは、成形品の外表面が全て養生水の中に浸っている状態にしておく。この状態で養生水の圧力を高める。養生水の圧力を高めるには、容器内に養生水を一杯に充満し、その中に更に水を加圧注入して、圧力を高める手段がある。また耐圧容器内に養生水を充満せずに、容器内の一部のみ、例えば半分程度の高さまで入れ、この養生水に完全に成形品を沈めた後、容器内に蒸気や、空気などの気体を圧入することによって、容器内の圧力を高める手段も採用可能である。このように容器の一部だけに養生水を入れる方法であると、後に述べる養生水の加熱の時間やエネルギーも節約でき、耐圧容器開閉時の養生水の流出量も少なくて済む。大型の耐圧容器内に、小型の容器を入れ、この中で成形品を水中養生する場合も同様である。圧入する気体としては大気をそのまま使用してもよいが、加熱して圧入した方が、養生水が冷めなくて好適である。また、水や蒸気や気体は、耐圧容器内に圧入した後、バルブを閉めて容器内に密封することによって圧力を維持してもよいが、養生時間中圧入し続けて、当初の圧力を維持することも可能である。圧入し続けることによって、成形品のセメントが水と水和反応を起こして体積が収縮し、その結果空隙が発生しても、加圧し続けることによって容器内の圧力を当初の飽和蒸気圧以上に維持することが可能である。或いは、耐圧容器内にて成形品全体が浸るよう養生水を充填し、そうして耐圧容器を密封した後、後述するように養生水の加熱によって生じる水の体積膨張によって、容器内の圧力を高めることもできる。
【0018】
前記したように、耐圧容器内の圧力を高めるとともに、養生水の温度を上げる。温度を上げるには、加熱容器内に備えてあるヒーターを使用するのが好適である。その温度としては120〜200℃が好ましく、より好ましくは130〜180℃が好適である。ただし温度を上げても、養生水には気相、つまりは気泡が生じないようにすることが重要で、養生水が沸騰に至らないように維持するのが要件である。言い換えれば、容器内の圧力が飽和蒸気圧以上を保つことが要件である。前記したように容器内の圧力を高めれば、それにつれて養生水の沸点温度も高くなる。例えば純粋な水であれば、気圧が1hPa(mb)高くなると、沸点は0.027℃上昇する。1気圧は1013.25hPaであるから、2気圧は2026.5hPaである。気圧が2気圧となれば、沸点は127℃程度となる。言い換えれば、容器内の圧力が2気圧に保たれているとき、養生水の温度が沸点温度の127度以上に達すれば、飽和蒸気圧に達して、激しく養生水から気相が発生する。つまりは沸騰する。容器内の気圧が3気圧であれば、養生水の温度が沸点の154℃に達しなければ、沸騰して飽和水蒸気圧に達することはない。本願発明では養生水中に気相が生じないようにするのであるから、容器内の圧力を液状水の温度に対応する飽和水蒸気圧以上に保ち、温度を沸点に達する以下に維持しておけばよい。例えば容器内の圧力を3気圧に保つ場合、養生水の温度を例えば130℃に保てば、養生水は沸騰することなく、気相が生じない。つまりは成形品内部の間隙内においても気相が生じず、間隙も含めた成形品全体が養生水の中に浸漬された状態を保つことになる。ただし、養生水の温度が上昇して沸点に近くなり、僅かに発生する気相(気泡)程度であれば、本発明の実施を妨げる程度ではなく、あくまで沸点或いはそれに近接した温度における激しい気相の発生を避ける意味である。
以上の方法は、養生水温度を沸点以下にしておくことで飽和蒸気圧に達しないようにする方法であるが、容器の構造が外側から内側を目視できる窓を有している場合であれば、養生水から激しく気相が出ていないことを確認して、内部の圧力が飽和蒸気圧以上であることを認識できるのは言うまでもない。
【0019】
耐圧容器内での養生時間は、限定されるものではないが、2〜8時間程度が好ましく、4〜6時間程度がより好ましい。その後常温まで冷却する時間は、成形品が常温までに冷却されるに十分な時間であれば特に限定されるものでなく、冷却条件に応じ、表面の温度勾配が過度に大きくならない範囲がよい。実用上は9〜12時間程度が好適である。
また、水、蒸気、気体のうち、複数を選択して耐圧容器内に圧入し、内部の圧力を飽和蒸気圧以上に維持する手段も採用できる。
【実施例1】
【0020】
図1に示すのは、本発明の実施例に使用した耐圧容器1の正面図であり、縦置き型であって、下部の器体2の上部に開閉のためのハッチ3が設けてある。ハッチ3はクランプ機構によって下部の器体3に圧着可能で、容器1内の空間を密封可能である。器体3の底部には電源式のヒーター4が設けられている。ハッチ3には、容器1内に水や蒸気を圧入可能なバルブ付きの挿入管5と、容器1内の空気を抜くバルブ付きの脱気管6が連結されている。容器1の下部には、水を排水可能なバルブ付きの排水管7が設けられている。8は容器1内の圧力を測定する圧力計であり、9は養生水の温度を測る温度計である。温度計で温度を検知する位置は、容器1内で養生水10が早期に高温になる部分が好適で、実施例で言えば、ヒーター4の直上辺りが好適と言える。
【0021】
この発明の実施例の効果を試験した成形品Aは、セメントとして普通ポルトランドセメントを使用し、このセメント100重量部に対し、これに細骨材150重量部、粗骨材210重量部を混ぜ、水セメント比36%で、混練したものである。混和材としては、膨張材を20重量部添加してある。このようなセメント系硬化材料であるコンクリートを型枠に入れて成形したブロック状成形品Aを脱型した後、耐圧容器1に収納して養生した。
【0022】
図2に示すのは、この発明の実施例1に使用した耐圧容器1の断面図であり、容器1内に養生水10を一杯に充満し、挿入管5から水11を加圧注入している。容器1内の圧力が所定まで高められた時点で水11の圧入を止めて挿入管5のバルブを閉め、容器1内を密閉する。この状態でヒーター4によって養生水10を加熱する。圧力計8に示されている圧力から、その圧力における飽和蒸気圧を割り出し、養生水10の温度をそれ以下に保つよう温度計9によって監視する。養生水10はその沸点温度以下に保たれるため、飽和蒸気圧以上とならず、養生水10の中に気相(気泡)は発生しないか、発生しても少なく抑えられる。これにより成形品Aの表面だけでなく、間隙においても気相がセメントの水和反応を妨げることがなく、その反応が促進され、強度が大きく高耐久のセメント系成形品を製造可能となる。
【0023】
次の表1の上段に示す表は、この実施例1の試験によって得られた成形品の圧縮強度と長さ変化率である。比較例1は水を圧入しない試験条件での比較値であり、それ以下の各実施例において水を圧入したときの値よりも圧縮強度において低く、長さ変化率も大きい値となっている。上段の表に記した水の圧入圧力は、養生温度に対応する飽和蒸気圧に対する相対値であって、例えば試験条件1−1の場合には水の圧入圧力は養生水の飽和水蒸気圧よりも0.5MPa大きいことになる。下段に示すのは、試験条件1−1におけるその水の圧入圧力の絶対値を示している。
【0024】
【表1】

【実施例2】
【0025】
実施例2は、耐圧容器1内に、その容量の80%まで養生水10を溜め、挿入管から飽和水蒸気12を圧入した場合である。この実施例2を行ったその容器1の断面図を図3に示す。この実施例では、飽和水蒸気12を圧入するとともに、ヒーター4によって養生水10を加熱して、養生水10が飽和水蒸気圧に達する以前まで昇温した。つまりは養生水10は高温となるが、沸騰はしていない状態である。この試験例を次の表2に記載してある。圧入圧力とは、飽和水蒸気によって、1気圧に加えて加圧した圧力である。従って、試験例2−1における0.5MPaとは、加圧圧力が0.5MPaであって、容器1内の圧力は1.5MPaとなる。この実施各例と比較するためのふたつの試験条件2−0と2−0’は、本発明実施例の飽和水蒸気を圧入しなかった比較例1,2である。比較例1は、従来のオートクレーブ養生による比較例で、比較例2は、例えば特開平11−180785などで提案されている「高温高圧水養生」を用いた例である。上述したように、「高温高圧養生」とは、高圧蒸気を注入するなどの別途圧力手段を用いずに、養生水10を沸騰させて耐圧容器1内の圧力を高圧にする方法である。これら比較例と実施例2−1〜2−6を比較すると、実施各例は全てにおいて製品の圧縮強度が比較例より高くなっており、養生終了後の長さ変化率においても、より収縮が小さい、或いは膨張しているという結果が出ている。それも、圧入圧力が高くなればなる程、圧縮強度の面でも長さ変化率の面でも、好結果を得ている。これは、容器1内の圧力が高くなればなる程、沸点温度、つまりは飽和水蒸気圧が高くなり、それ以下の圧力に保つ本発明では、圧力が高くなればなる程、養生水の温度を高くすることが出来、温度と圧力の高さが水和反応をより促進するものと考えられる。
【0026】
【表2】

【実施例3】
【0027】
次の表3に示すのは、セメント系成型品Aを養生水10内に浸漬し、空気を圧入して容器1内の圧力を高めた場合である。この場合も、空気を圧入しなかった比較試験例3−0と比較して、空気を圧入した実施各例3−1〜3−6までの数値は、圧縮強度及び長さ変化率の双方において優れた結果を得ている。
【0028】
【表3】

【実施例4】
【0029】
表4に示すのは、耐圧容器1内に養生水10を充填し、この養生水10内に成形品Aを浸漬し、養生水10をヒーター4によって加熱して膨張させることによって、容器1内の圧力を高めた場合である。比較例1及び2は容器1内への水の充填率をそれぞれ70%と80%とした場合であって、加熱して養生水が膨張しても容器1内に充満し切れず、養生水10の圧力を十分に高めることが出来なかったものと推察できる。従って、養生水の飽和蒸気圧以上に養生水10の圧力を保つことが出来なかった結果であると考えられる。これに対し、実施例4−1〜4−3では、養生水10を容器1内にほぼ充満、或いは完全に充満させた状態で養生水10を昇温したため、容器1内の養生水の圧力が高まり、飽和蒸気圧以上を維持して良好な数値を得たものである。
【0030】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】耐圧容器の正面図である。
【図2】実施例1を実施した耐圧容器の断面図である。
【図3】実施例2を実施した耐圧容器の断面図である。
【符号の説明】
【0032】
A 成形品
1 耐圧容器
2 器体
3 ハッチ
4 ヒーター
5 挿入管
6 脱気管
7 排水管
8 圧力計
9 温度計
10 養生水
11 水
12 飽和水蒸気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封可能な耐圧容器中に、全体が養生水中に浸漬するようセメント系成形品を配置し、その養生水中に気相が生じないよう昇温するとともに、耐圧容器内の圧力を高め、セメント系成形品は養生中常に水中に浸漬した状態に保持してなる高耐久セメント系成形品製造における養生方法。
【請求項2】
耐圧容器内に水を圧入して充満させることによって耐圧容器内の圧力を高め、その圧力を養生水の飽和蒸気圧以上に維持することを特徴とする請求項1記載の高耐久セメント系成形品製造における養生方法。
【請求項3】
耐圧容器内に蒸気を圧入して耐圧容器内の圧力を高め、その圧力を養生水の飽和蒸気圧以上に維持することを特徴とする請求項1記載の高耐久セメント系成形品製造における養生方法。
【請求項4】
耐圧容器内に空気などの気体を圧入して容器内の圧力を高め、その圧力を養生水の飽和蒸気圧以上に維持することを特徴とする請求項1記載の高耐久セメント系成形品製造における養生方法。
【請求項5】
耐圧容器内にてセメント系成形品が浸漬するよう養生水を充填し、この養生水を加熱・膨張させることによって耐圧容器内の圧力を高め、その圧力を養生水の飽和蒸気圧以上に維持することを特徴とする請求項1記載の高耐久セメント系成形品製造における養生方法。
【請求項6】
耐圧容器内に水、蒸気、気体のうち、複数を選択して耐圧容器内に圧入し、容器内部の圧力を飽和蒸気圧以上に維持することを特徴とする請求項1記載の高耐久セメント系成形品製造における養生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−99544(P2007−99544A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289465(P2005−289465)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(599011687)学校法人 中央大学 (110)
【Fターム(参考)】