高耐食性めっき鋼材およびその製造方法
【課題】耐食性、意匠性、低電気抵抗等のNiめっき鋼材の特徴を損なうことなく、めっきピンホールに起因した鉄錆の発生を効果的に抑制した高耐食性めっき鋼材および製造方法の提供する。
【解決手段】Mnめっき、Niめっき、熱拡散処理の組み合わせにより、鋼母材上にFe−Mn拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層を有し、表層にNi層を有する高耐食性めっき鋼材、あるいは、鋼母材上にFe−Mn拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層を有し、表層にMn−Ni拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層を有する高耐食性めっき鋼材などを製造する方法及びめっき鋼材。
【解決手段】Mnめっき、Niめっき、熱拡散処理の組み合わせにより、鋼母材上にFe−Mn拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層を有し、表層にNi層を有する高耐食性めっき鋼材、あるいは、鋼母材上にFe−Mn拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層を有し、表層にMn−Ni拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層を有する高耐食性めっき鋼材などを製造する方法及びめっき鋼材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐食性めっき鋼材に関し、詳しくは高耐食性ニッケルめっき鋼材に関するものであり、特に比較的低付着量のNiめっきで耐食性が極めて良好なめっき鋼材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気電子器具、電池缶に代表される容器材料、バインダー等の日用家電部材等に用いられる鋼材には、耐食性、意匠性、低電気抵抗等の観点から多くの場合ニッケルめっきが施される。ニッケルは自然環境中で、また種々の薬品に対しても安定であり、また耐熱性にも優れ、その表面外観の変化も少ないことから、前記用途以外にも種々の展開が期待されている。しかしながら、ニッケルは電気的に鋼材よりも貴であるため、亜鉛系めっきのような犠牲防食作用は期待できず、通常用いられるめっき厚みでは不可避的に存在するめっきピンホール部からの鉄錆(赤錆)発生が問題となる場合がある。これを避けるためには、ニッケルの付着量を極端に大きくするといった経済的にきわめて不利な対策が必要となるため、その適用範囲は亜鉛系のめっき鋼材に比較すると極めて限定的であった。ニッケルの付着量を増やさずに、耐食性を確保する手段としてこれまでに、Fe−Ni拡散処理、下層めっき等を利用した技術が検討されているが、充分な効果を持つものは見出されていない。
【0003】
例えば、特許文献1では、Niめっき層の一部または全てをFe−Ni拡散層とし、かつ表層のFe露出率を30%以下とした高耐食性Niめっき鋼帯が示されている。Fe−Ni拡散層を設けることで、ピンホールは軽減され、また、貴なNiと卑なFeとの電位差腐食も緩和されることから、確実な耐食性向上効果が得られるものの、より厳しい腐食環境においては必ずしも十分とはいえない。特に、Ni付着量が40g/m2程度以下の少ない領域では全く不十分である。
【0004】
また、下層めっきは、Niめっきの下層にZn系のめっき層を設け、犠牲防食能を複合することで、ピンホールの存在を前提にしても耐食性を改善する技術思想であり、例えば、特許文献2では、燃料タンク用途に限定されたものであるが、下層にZnめっき層、上層にNiめっき層を有する鋼板が開示されている。この場合、ZnとNiの電位差が大きいことから、腐食環境によっては、Znの腐食が顕著に促進され、Niの表層に白錆(Znの錆)が浮き出ることで外観の悪化が顕著となるといった問題がある。また、下層のZnの付着量をかなり大きくしないと、短時間で赤錆が発生するといった問題がある。またこの構成の場合には、Znの沸点が低くまたFeやNiとの脆い金属間化合物を作りやすい等の影響のため、特許文献1のような拡散層を利用できないといった問題もあった。
【0005】
【特許文献1】特開平6−2104号公報
【特許文献2】特開昭62−27587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐食性、意匠性、低電気抵抗等のNiめっき鋼材の特徴を損なうことなく、めっきピンホールに起因した鉄錆の発生を効果的に抑制した高耐食性めっき鋼材およびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、Niめっき鋼材の耐食性向上にあたり、拡散層の付与および犠牲防食能の複合をコンセプトに種々検討を進めて本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明の高耐食性めっき鋼材の構成は、
(1)鋼母材上にFe−Mn拡散層とFe−Mn−Ni拡散層の少なくともいずれか一方の層を有し、さらに表層にNiめっき層を有する事を特徴とする、高耐食性めっき鋼材。
(2)表層の前記Niめっき層と、前記Fe−Mn拡散層または前記Fe−Mn−Ni拡散層との間に、Mn−Ni拡散層を有する事を特徴とする、(1)に記載の高耐食性めっき鋼材。
(3)鋼母材上にFe−Mn拡散層とFe−Mn−Ni拡散層の少なくともいずれか一方の層を有し、さらに表層にMn−Ni拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層を有する事を特徴とする、高耐食性めっき鋼材。
(4)最表層の前記Mn−Ni拡散層または前記Fe−Mn−Ni拡散層におけるNi濃度が60質量%以上であることを特徴とする、(3)に記載の高耐食性めっき鋼材。
(5)前記めっき層及び前記拡散層に含まれるNiの総付着量が5〜40g/m2であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の高耐食性めっき鋼材。
(6)前記めっき層及び前記拡散層に含まれるMnの総付着量が0.1〜20g/m2であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の高耐食性めっき鋼材。
である。
【0009】
また本発明は、高耐食性めっき鋼材の製造方法であり、その構成は、
(7)鋼材に、Mnめっき、Niめっきをこの順で施し、次いで熱拡散処理を行い、前記鋼材上にFe−Mn拡散層とFe−Mn−Ni拡散層の少なくともいずれか一方の層を設けることを特徴とする、高耐食性めっき鋼材の製造方法。
(8)鋼材に、Mnめっきを施し、次いで熱拡散処理を行い、前記鋼材上にFe−Mn拡散層を設けた後に、Niめっきを行うことを特徴とする、高耐食性めっき鋼材の製造方法。
(9)Niめっき後に更に熱拡散処理を行い、Mn−Ni拡散層設けることを特徴とする、(8)に記載の高耐食性めっき鋼材の製造方法。
(10)鋼材に、Mnめっき、Niめっきをこの順で施し、次いで熱拡散処理を行い、前記鋼材上にFe−Mn拡散層とFe−Mn−Ni拡散層の少なくともいずれか一方の層を設けた後に、Niめっきを行うことを特徴とする、高耐食性めっき鋼材の製造方法。
(11)前記熱拡散処理後のNiめっきの後に、更に熱拡散処理を行い、Mn−Ni拡散層又はFe−Mn−Ni拡散層を設けることを特徴とする、(10)に記載の高耐食性めっき鋼材の製造方法。
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、耐食性、意匠性、低電気抵抗等のNiめっき鋼材の特徴を損なうことなく、犠牲防食効果を複合することでめっきピンホールに起因した鉄錆の発生を効果的に抑制した高耐食性めっき鋼材が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明の高耐食性めっき鋼材の第一の構成は、鋼母材上にFe−Mn拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層或いは両方の層を有し、表層にNi層を有する事を特徴とする。その代表的な構成の一例を模式図として図1〜図6に示す。拡散層は後述の熱処理による元素の拡散の結果形成された層である。これらの構成は、GDS(Glow Discharge Spectrometry)や、AES(Auger Electron Spectroscopy)等の手法で表層から深さ方向の元素分布を観察する方法や、あるいはSEM(Scanning Electron Microscope)、EDS(Energy Dispersive X−ray Spectrometer)、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)等の手法で断面の元素分布を観察する手法によって特定することが可能である。図1〜図6における表層Ni層は、拡散層形成の際に一部未拡散のまま残った層でも構わないし、また拡散層形成後に再度Niめっきされた層であっても構わない。Fe−Mn拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層は、厳しい加工においてもめっき層の損傷を抑制することができるし、また鋼母材とめっき表層との電位ギャップを緩和し、電気化学的な腐食を抑制する作用がある。鋼母材との電位ギャップをより緩和するとの観点から、図1〜図3に示したように、表層Ni層の下層にMn−Ni拡散層が存在することが望ましく、この構成にすることで比較的低いめっき付着量でも良好な耐食性が得られる。最表層にNi層を有する本願の第一の構成は、光沢外観を重視する場合、あるいは強アルカリ等の薬品に対する耐性を重視する場合に好ましい構成である。
【0013】
本発明の高耐食性めっき鋼材の第二の構成は、鋼母材上にFe−Mn拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層或いは両方の層を有し、表層にMn−Ni拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層を有する事を特徴とする。その代表的な構成の一例を模式図として図7〜図11に示す。拡散層については前述のとおり、厳しい加工でのめっき層損傷の抑制、及び鋼母材とめっき表層との電位ギャップを緩和による電気化学的な腐食抑制作用がある。又、合金層である拡散層が最表層にあることで、有機物との密着性や、有機溶媒に対する耐食性に優れ、塗装される用途や有機溶媒に接触するような用途に好ましい。耐食性を考慮すると、前記最表層のMn−Ni拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層におけるNi濃度は60質量%以上であることが望ましい。最表層におけるNi濃度とは、AES等の手法で表層から深さ方向の元素分布を行い、最表層部に不可避的に存在する酸化膜の酸素強度がベースレベルまで低下した深さ(通常、数nm〜数十nm)におけるNi濃度として定義されるものである。
【0014】
本発明の高耐食性めっき鋼材は、前記の構成をとる範囲においては、その耐食性は、NiおよびMnの総付着量(拡散層、めっき層合計での付着量)に依存し、その範囲は、Niは5〜40g/m2、Mnは0.1〜20g/m2である。Niが5g/m2未満では、耐食性が不足し、40g/m2を超えても効果が飽和するので不経済である。より望ましいNi付着量範囲は、10g/m2以上であり、この範囲でより高度の耐食性が得られる。一方、Mnは0.1g/m2未満では、犠牲防食能が発揮されずNiのピンホールを通して赤錆が発生する。また、20g/m2を超えても効果が飽和し不経済であり、また腐食環境での変色が発生しやすい場合がある。より望ましいMn付着量範囲は、1g/m2以上であり、この範囲でより高度の耐食性が得られる。
【0015】
つぎに本発明の高耐食性めっき鋼材の製造方法について説明する。その方法は下記の5つの方法である。第一の方法は、鋼材に、Mnめっき、Niめっきをこの順で施し、次いで熱拡散処理を行うことを特徴とする。第二の方法は、鋼材に、Mnめっきを施し、次いで熱拡散処理を行い、その後Niめっきを行うことを特徴とする。第三の方法は、鋼材に、Mnめっき、Niめっきをこの順で施し、次いで熱拡散処理を行い、その後Niめっきを行うことを特徴とする。第四の方法は、鋼材に、Mnめっきを施し、次いで熱拡散処理を行い、その後Niめっきを行い、再度熱拡散処理を行うことを特徴とする。第五の方法は、鋼材に、Mnめっき、Niめっきをこの順で施し、次いで熱拡散処理を行い、その後更にNiめっきを行い、再度熱拡散処理を行うことを特徴とする。いずれの方法も、MnめっきおよびNiめっきおよび熱拡散処理を必須要件としており、それぞれの必須要件と製造方法について以下に詳細な説明をする。
【0016】
Mnめっきは特に限定されるものではなく、純Mnに加えて、不可避的不純物レベルのC,N,S,O,P,B,Fe,Co,Sn,Cu,Zn,Ni等を含んだものであってもよい。ただし、C,N,S,Oについては、めっき層の均一性や平滑度の改善のために添加される、いわゆる光沢添加剤、半光沢添加剤、レべリング添加剤等の取り込まれたものであってもよく、その場合、めっき層中の濃度は痕跡量〜0.1質量%程度の範囲である。まためっきの手段は、電気めっき、無電解めっきを問わないが電気めっきが一般的である。めっき浴には硫酸浴、塩化浴等が用いられる。
【0017】
Niめっきは特に限定されるものではなく、純Niに加えて、C,N,S,O,P,B,Fe,Co,Sn,Cu,Mn等を含んだものであってもよい。これら元素は不可避的不純物以外にも、積極的に添加された場合のものも含む。例えば、C,N,S,Oについては、Niめっき層の硬度や平滑度の改善のために添加される、いわゆる光沢添加剤、半光沢添加剤、レべリング添加剤等の取り込まれたものであって、そのめっき層中の濃度は痕跡量〜0.1質量%程度の範囲である。P,Bについては、後述する無電解めっきの還元剤として取り込まれたものの他に、めっき層の耐薬品性や硬度の改善のために添加されたものも含み、そのめっき層中の濃度は痕跡量〜15質量%程度の範囲である。Fe,Co,Sn,Cu,Mnについては、めっき層の耐薬品性や硬度の改善のために添加されたものを含み、そのめっき層中の濃度は痕跡量〜50質量%程度の範囲である。いずれの元素も前記した上限を超えるとめっき層を脆くしたりまた接触抵抗悪化させるなどの弊害が発生するので好ましくない。まためっきの手段は、電気めっき、無電解めっきを問わない。電気めっきの場合には、硫酸浴、塩化浴、ワット浴、スルファミン酸浴等が用いられる。無電解めっきの場合には、還元剤として次亜りん酸や、ほう素化合物などが用いられる。また、必要に応じてNiめっきの前処理として、アルカリ性水溶液や酸性水溶液によるスプレー処理や浸漬処理を行うことができる。
【0018】
熱拡散処理は、通常の加熱方式で行うことができ、バッチ加熱方式、連続加熱方式いずれも用いられる。また両方を併用することも可能である。尚、めっきを施す鋼材の材質特性を考慮すると、加熱拡散処理と焼鈍処理を同時に行う事が好ましく、この場合の加熱処理は通常の焼鈍用の炉で行うことができ、バッチ焼鈍、連続焼鈍のいずれを用いても良く、また両方を併用することも可能である。その条件を記述するなら、バッチ加熱或いはバッチ焼鈍においては、鋼材温度を450〜650℃、好ましくは500〜600℃の範囲で、数時間〜数十時間、好ましくは6〜24時間処理を行い、連続加熱或いは連続焼鈍においては、鋼材温度を700〜900℃、好ましくは700〜850℃の範囲で、均熱時間を数秒〜数十分間、通常は、10秒〜120秒で処理を行う。
【0019】
本発明の第一の製造方法は、前述の条件にてMnめっき、Niめっき、熱拡散処理を行うものである。熱拡散処理の後に調質圧延を行うことも好適であり、その際のロール粗度を調整することでめっき鋼材の表面粗度を制御することも可能である。
【0020】
本発明の第二の製造方法は、前述の条件にてMnめっき、熱拡散処理を行い、その後でNiめっきを行うものである。熱拡散処理後あるいはNiめっき後のいずれで調質圧延を行うことも好適であり、その際のロール粗度を調整することでめっき鋼材の表面粗度を制御することも可能である。なお、熱拡散処理の際にMn表層に安定な酸化膜が形成されやすいため、Niめっきの前処理は通常よりも強化する(例えば、浸漬の処理時間を長くしたり、スプレーの吹き付け量を増やしたりする)必要がある。
【0021】
本発明の第三の製造方法は、前述の第二の製造方法にてMnめっき、熱拡散処理、Niめっきを行った後に、二度目の熱拡散処理を行うものである。この場合には、鋼材の材質を考慮すると、はじめの熱拡散処理は連続焼鈍による高温処理、後の熱拡散処理は、バッチ焼鈍による低温処理とすることが望ましい。このように二度の熱拡散処理を行うことで、めっき層の構造を任意に制御することが可能となる。すなわち、例えば、図9のようなめっき層の構造をMnめっき、Niめっきの後に一度の熱拡散処理で形成しようとすると、少しの温度のばらつきで、下層がFe−Mn−Ni拡散層になったり、表層までFe−Mn−Ni拡散層になったりと安定性に欠けるが、Mnめっき、熱拡散処理、Niめっき、熱拡散処理という工程であれば、容易に図9のようなめっき構造を形成することができる。この製造方法の場合にも熱拡散処理後、あるいはNiめっき後、あるいは再熱拡散処理後のいずれかで調質圧延を行うことも好適であり、その際のロール粗度を調整することでめっき鋼材の表面粗度を制御することが可能である。
【0022】
本発明の第四の製造方法は、前述の条件にてMnめっき、Niめっき、熱拡散処理を行い、その後再度Niめっきを行うものである。熱拡散処理後あるいはNiめっき後のいずれで調質圧延を行うことも好適であり、その際のロール粗度を調整することでめっき鋼材の表面粗度を制御することが可能である。
【0023】
本発明の第五の製造方法は、MnめっきとNiめっき、熱拡散処理、Niめっき、熱拡散処理の工程であり、二度の熱拡散処理を行うものである。このように二度の熱拡散処理を行うことで、めっき層の構造を任意に制御することが可能となる。この場合にも、鋼材の材質を考慮すると、はじめの熱拡散処理は連続焼鈍による高温処理、後の熱拡散処理は、バッチ焼鈍による低温処理とすることが望ましい。また、この製造方法の場合にも熱拡散処理後、あるいはNiめっき後、あるいは再熱拡散処理後のいずれで調質圧延を行うことも好適であり、その際のロール粗度を調整することでめっき鋼材の表面粗度を制御することが可能である。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【0025】
(実施例1〜3)
Nb,Ti複合添加の極低炭素鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっき1g/m2、表2に示す条件で電気Niめっき15g/m2をこの順で行い、その後熱拡散処理を行った。最後に調質圧延を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、700〜850℃の温度範囲(実施例1:700℃、実施例2:800℃、実施例3:850℃)にて30秒の均熱処理を行った。
【0026】
(実施例4〜8)
Nb,Ti複合添加の極低炭素鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっき0.1〜25g/m2、表2に示す条件で電気Niめっき20g/m2をこの順で行い、その後熱拡散処理を行った。最後に調質圧延を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、780℃にて20秒の均熱処理を行った。
【0027】
(実施例9〜13)
Nb,Ti複合添加の極低炭素鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっき1g/m2、表2に示す条件で電気Niめっき3〜50g/m2をこの順で行い、その後熱拡散処理を行った。最後に調質圧延を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、800℃にて20秒の均熱処理を行った。
【0028】
(実施例14)
Nb,Ti複合添加の極低炭素鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっき5g/m2、を行い、その後熱拡散処理を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、810℃にて30秒の均熱処理を行った。酸洗処理後、表2に示す条件でめっき浴に市販の半光沢添加剤3g/lを添加した浴にて電気Niめっき20g/m2を行い、最後に調質圧延を行った。
【0029】
(実施例15)
B添加の低炭素Alキルド鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっき7g/m2、を行い、その後熱拡散処理を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、790℃にて20秒の均熱処理を行った。酸洗処理後、表2に示す条件で電気Niめっき20g/m2を行い、その後バッチ焼鈍炉にて、450℃8時間の後熱拡散処理を行った。最後に調質圧延を行った。
【0030】
(実施例16)
Nb,Ti複合添加の極低炭素鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっき1g/m2、表2に示す条件で電気Niめっき5g/m2をこの順で行い、その後熱拡散処理を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、800℃にて30秒の均熱処理を行った。その後、調質圧延を行った。更にその後、脱脂、酸洗処理の後、表2に示す条件でめっき浴に市販の光沢添加剤10g/lを添加した浴にて電気Niめっき20g/m2を行った。
【0031】
(実施例17)
原板として、B添加の低炭素Alキルド鋼板(未再結晶鋼板)を用いる以外は実施例16と同一の条件で製造した。
【0032】
(実施例18)
B添加の低炭素Alキルド鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっき20g/m2、を行い、その後熱拡散処理を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、790℃にて30秒の均熱処理を行った。酸洗処理後、表2に示す条件で電気Niめっき5g/m2を行い、その後バッチ焼鈍炉にて、550℃8時間の後熱拡散処理を行った。最後に調質圧延を行った。
【0033】
(実施例19)
B添加の低炭素Alキルド鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっきを20g/m2、表2に示す条件で電気Niめっき10g/m2をこの順で行い、その後熱拡散処理を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、800℃にて30秒の均熱処理を行った。その後、調質圧延を行った。更にその後、脱脂、酸洗処理の後、表2に示す条件で電気Niめっき5g/m2を行った。その後バッチ焼鈍炉にて、450℃8時間の後熱拡散処理を行った。最後に調質圧延を行った。
【0034】
(実施例20)
最初の電気Mnめっきの付着量が8g/m2であること以外は実施例19と同一の条件で製造した。
【0035】
(実施例21)
二度目の熱拡散処理条件が、バッチ焼鈍炉にて、550℃12時間の処理であること以外は実施例19と同一の条件で製造した。
【0036】
(比較例1)
Nb,Ti複合添加の極低炭素鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表2に示す条件で電気Niめっき45g/m2を行い、その後熱拡散処理を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、800℃にて30秒の均熱処理を行った。その後、調質圧延を行った。
【0037】
(比較例2)
Nb,Ti複合添加の極低炭素鋼板(再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっき5g/m2、表2に示す条件で電気Niめっき20g/m2をこの順で行った。その後、調質圧延を行った。
【0038】
(比較例3)
Nb,Ti複合添加の極低炭素鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表2に示す条件で電気Niめっき20g/m2、表1に示す条件で電気Mnめっき5g/m2をこの順で行い、その後熱拡散処理を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、780℃にて30秒の均熱処理を行った。その後、調質圧延を行った。
【0039】
(評価方法)
(1)平板耐食性(赤錆)
平板サンプルで、JISZ2371の塩水噴霧試験を3日間行い、赤錆(鉄錆)発生状況を目し観察し、発生皆無を○、僅かでも発生を×と評価した。さらに塩水噴霧試験4日間でも赤錆発生皆無のものは◎と評価した。
(2)平板耐食性(変色)
平板サンプルで、10%伸び加工を施した後、JISZ2371の塩水噴霧試験を3日間行い、色彩色度計により、試験前後でのサンプル表面の色差を測定した。なお、サンプル表面の一部に赤錆が見られるものは、赤錆発生の無い部分で評価した。色差が繰り返し測定誤差範囲内(<1)のものを○、それ以上を×と評価した。さらに塩水噴霧試験4日間でも色差が繰り返し測定誤差範囲内(<1)のものは◎と評価した。
(3)加工耐食性(赤錆)
サンプルに10%伸び加工を施した後、JISZ2371の塩水噴霧試験を3日間行い、赤錆(鉄錆)発生状況を目し観察し、発生皆無を○、僅かでも発生を×と評価した。さらに塩水噴霧試験4日間でも赤錆発生皆無のものは◎と評価した。
(4)加工耐食性(変色)
サンプルに10%伸び加工を施した後、JISZ2371の塩水噴霧試験を3日間行い、色彩色度計により、試験前後でのサンプル表面の色差を測定した。なお、サンプル表面の一部に赤錆が見られるものは、赤錆発生の無い部分で評価した。色差が繰り返し測定誤差範囲内(<1)のものを○、それ以上を×と評価した。さらに塩水噴霧試験4日間でも色差が繰り返し測定誤差範囲内(<1)のものは◎と評価した。
(5)接触抵抗
60℃98%RH雰囲気に10日間保持した後、山崎精機研究所製電気接点シュミレータCRS−1を用い、荷重100gにて接触抵抗を測定した。10mΩ未満を○、10mΩ以上を×と評価した。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
各サンプルのめっき層構造とNi,Mn付着量および性能評価結果を表3に示す。なお、めっき層構造は、GDSおよびAESによる表層からの深さ方向元素分析により決定したものであり、Ni,Mn付着量は、めっき層、拡散層を全て塩酸水溶液により溶解し、ICP分析により付着量を定量したものである。
【0044】
この表から分かるように本発明の実施例では、Niの付着量が少ない範囲において良好な耐食性を示した。一方、Mnを含む拡散層を有しない比較例1においては、加工耐食性が本発明の実施例と比べ大きく劣り、Ni層のピンホール起因の赤錆の発生が目立った。また、拡散層を有しない比較例2においては、加工耐食性が本発明の実施例と比べ大きく劣り、赤錆の発生のみならず、Mn層の腐食を原因とする変色も目立った。また、NiめっきとMnめっきの順序を変えた比較例3においては、平板耐食性・加工耐食性の双方の評価で、変色が目立ち、接触抵抗も増加した。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の鋼材は、電気電子器具、電池缶に代表される容器材料、バインダー等の日用家電部材等はもちろんのこと、従来Niめっきが適用されていなかった部材まで幅広く適用できる可能性があり、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図7】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図8】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図9】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図10】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図11】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐食性めっき鋼材に関し、詳しくは高耐食性ニッケルめっき鋼材に関するものであり、特に比較的低付着量のNiめっきで耐食性が極めて良好なめっき鋼材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気電子器具、電池缶に代表される容器材料、バインダー等の日用家電部材等に用いられる鋼材には、耐食性、意匠性、低電気抵抗等の観点から多くの場合ニッケルめっきが施される。ニッケルは自然環境中で、また種々の薬品に対しても安定であり、また耐熱性にも優れ、その表面外観の変化も少ないことから、前記用途以外にも種々の展開が期待されている。しかしながら、ニッケルは電気的に鋼材よりも貴であるため、亜鉛系めっきのような犠牲防食作用は期待できず、通常用いられるめっき厚みでは不可避的に存在するめっきピンホール部からの鉄錆(赤錆)発生が問題となる場合がある。これを避けるためには、ニッケルの付着量を極端に大きくするといった経済的にきわめて不利な対策が必要となるため、その適用範囲は亜鉛系のめっき鋼材に比較すると極めて限定的であった。ニッケルの付着量を増やさずに、耐食性を確保する手段としてこれまでに、Fe−Ni拡散処理、下層めっき等を利用した技術が検討されているが、充分な効果を持つものは見出されていない。
【0003】
例えば、特許文献1では、Niめっき層の一部または全てをFe−Ni拡散層とし、かつ表層のFe露出率を30%以下とした高耐食性Niめっき鋼帯が示されている。Fe−Ni拡散層を設けることで、ピンホールは軽減され、また、貴なNiと卑なFeとの電位差腐食も緩和されることから、確実な耐食性向上効果が得られるものの、より厳しい腐食環境においては必ずしも十分とはいえない。特に、Ni付着量が40g/m2程度以下の少ない領域では全く不十分である。
【0004】
また、下層めっきは、Niめっきの下層にZn系のめっき層を設け、犠牲防食能を複合することで、ピンホールの存在を前提にしても耐食性を改善する技術思想であり、例えば、特許文献2では、燃料タンク用途に限定されたものであるが、下層にZnめっき層、上層にNiめっき層を有する鋼板が開示されている。この場合、ZnとNiの電位差が大きいことから、腐食環境によっては、Znの腐食が顕著に促進され、Niの表層に白錆(Znの錆)が浮き出ることで外観の悪化が顕著となるといった問題がある。また、下層のZnの付着量をかなり大きくしないと、短時間で赤錆が発生するといった問題がある。またこの構成の場合には、Znの沸点が低くまたFeやNiとの脆い金属間化合物を作りやすい等の影響のため、特許文献1のような拡散層を利用できないといった問題もあった。
【0005】
【特許文献1】特開平6−2104号公報
【特許文献2】特開昭62−27587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐食性、意匠性、低電気抵抗等のNiめっき鋼材の特徴を損なうことなく、めっきピンホールに起因した鉄錆の発生を効果的に抑制した高耐食性めっき鋼材およびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、Niめっき鋼材の耐食性向上にあたり、拡散層の付与および犠牲防食能の複合をコンセプトに種々検討を進めて本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明の高耐食性めっき鋼材の構成は、
(1)鋼母材上にFe−Mn拡散層とFe−Mn−Ni拡散層の少なくともいずれか一方の層を有し、さらに表層にNiめっき層を有する事を特徴とする、高耐食性めっき鋼材。
(2)表層の前記Niめっき層と、前記Fe−Mn拡散層または前記Fe−Mn−Ni拡散層との間に、Mn−Ni拡散層を有する事を特徴とする、(1)に記載の高耐食性めっき鋼材。
(3)鋼母材上にFe−Mn拡散層とFe−Mn−Ni拡散層の少なくともいずれか一方の層を有し、さらに表層にMn−Ni拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層を有する事を特徴とする、高耐食性めっき鋼材。
(4)最表層の前記Mn−Ni拡散層または前記Fe−Mn−Ni拡散層におけるNi濃度が60質量%以上であることを特徴とする、(3)に記載の高耐食性めっき鋼材。
(5)前記めっき層及び前記拡散層に含まれるNiの総付着量が5〜40g/m2であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の高耐食性めっき鋼材。
(6)前記めっき層及び前記拡散層に含まれるMnの総付着量が0.1〜20g/m2であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の高耐食性めっき鋼材。
である。
【0009】
また本発明は、高耐食性めっき鋼材の製造方法であり、その構成は、
(7)鋼材に、Mnめっき、Niめっきをこの順で施し、次いで熱拡散処理を行い、前記鋼材上にFe−Mn拡散層とFe−Mn−Ni拡散層の少なくともいずれか一方の層を設けることを特徴とする、高耐食性めっき鋼材の製造方法。
(8)鋼材に、Mnめっきを施し、次いで熱拡散処理を行い、前記鋼材上にFe−Mn拡散層を設けた後に、Niめっきを行うことを特徴とする、高耐食性めっき鋼材の製造方法。
(9)Niめっき後に更に熱拡散処理を行い、Mn−Ni拡散層設けることを特徴とする、(8)に記載の高耐食性めっき鋼材の製造方法。
(10)鋼材に、Mnめっき、Niめっきをこの順で施し、次いで熱拡散処理を行い、前記鋼材上にFe−Mn拡散層とFe−Mn−Ni拡散層の少なくともいずれか一方の層を設けた後に、Niめっきを行うことを特徴とする、高耐食性めっき鋼材の製造方法。
(11)前記熱拡散処理後のNiめっきの後に、更に熱拡散処理を行い、Mn−Ni拡散層又はFe−Mn−Ni拡散層を設けることを特徴とする、(10)に記載の高耐食性めっき鋼材の製造方法。
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、耐食性、意匠性、低電気抵抗等のNiめっき鋼材の特徴を損なうことなく、犠牲防食効果を複合することでめっきピンホールに起因した鉄錆の発生を効果的に抑制した高耐食性めっき鋼材が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明の高耐食性めっき鋼材の第一の構成は、鋼母材上にFe−Mn拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層或いは両方の層を有し、表層にNi層を有する事を特徴とする。その代表的な構成の一例を模式図として図1〜図6に示す。拡散層は後述の熱処理による元素の拡散の結果形成された層である。これらの構成は、GDS(Glow Discharge Spectrometry)や、AES(Auger Electron Spectroscopy)等の手法で表層から深さ方向の元素分布を観察する方法や、あるいはSEM(Scanning Electron Microscope)、EDS(Energy Dispersive X−ray Spectrometer)、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)等の手法で断面の元素分布を観察する手法によって特定することが可能である。図1〜図6における表層Ni層は、拡散層形成の際に一部未拡散のまま残った層でも構わないし、また拡散層形成後に再度Niめっきされた層であっても構わない。Fe−Mn拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層は、厳しい加工においてもめっき層の損傷を抑制することができるし、また鋼母材とめっき表層との電位ギャップを緩和し、電気化学的な腐食を抑制する作用がある。鋼母材との電位ギャップをより緩和するとの観点から、図1〜図3に示したように、表層Ni層の下層にMn−Ni拡散層が存在することが望ましく、この構成にすることで比較的低いめっき付着量でも良好な耐食性が得られる。最表層にNi層を有する本願の第一の構成は、光沢外観を重視する場合、あるいは強アルカリ等の薬品に対する耐性を重視する場合に好ましい構成である。
【0013】
本発明の高耐食性めっき鋼材の第二の構成は、鋼母材上にFe−Mn拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層或いは両方の層を有し、表層にMn−Ni拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層を有する事を特徴とする。その代表的な構成の一例を模式図として図7〜図11に示す。拡散層については前述のとおり、厳しい加工でのめっき層損傷の抑制、及び鋼母材とめっき表層との電位ギャップを緩和による電気化学的な腐食抑制作用がある。又、合金層である拡散層が最表層にあることで、有機物との密着性や、有機溶媒に対する耐食性に優れ、塗装される用途や有機溶媒に接触するような用途に好ましい。耐食性を考慮すると、前記最表層のMn−Ni拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層におけるNi濃度は60質量%以上であることが望ましい。最表層におけるNi濃度とは、AES等の手法で表層から深さ方向の元素分布を行い、最表層部に不可避的に存在する酸化膜の酸素強度がベースレベルまで低下した深さ(通常、数nm〜数十nm)におけるNi濃度として定義されるものである。
【0014】
本発明の高耐食性めっき鋼材は、前記の構成をとる範囲においては、その耐食性は、NiおよびMnの総付着量(拡散層、めっき層合計での付着量)に依存し、その範囲は、Niは5〜40g/m2、Mnは0.1〜20g/m2である。Niが5g/m2未満では、耐食性が不足し、40g/m2を超えても効果が飽和するので不経済である。より望ましいNi付着量範囲は、10g/m2以上であり、この範囲でより高度の耐食性が得られる。一方、Mnは0.1g/m2未満では、犠牲防食能が発揮されずNiのピンホールを通して赤錆が発生する。また、20g/m2を超えても効果が飽和し不経済であり、また腐食環境での変色が発生しやすい場合がある。より望ましいMn付着量範囲は、1g/m2以上であり、この範囲でより高度の耐食性が得られる。
【0015】
つぎに本発明の高耐食性めっき鋼材の製造方法について説明する。その方法は下記の5つの方法である。第一の方法は、鋼材に、Mnめっき、Niめっきをこの順で施し、次いで熱拡散処理を行うことを特徴とする。第二の方法は、鋼材に、Mnめっきを施し、次いで熱拡散処理を行い、その後Niめっきを行うことを特徴とする。第三の方法は、鋼材に、Mnめっき、Niめっきをこの順で施し、次いで熱拡散処理を行い、その後Niめっきを行うことを特徴とする。第四の方法は、鋼材に、Mnめっきを施し、次いで熱拡散処理を行い、その後Niめっきを行い、再度熱拡散処理を行うことを特徴とする。第五の方法は、鋼材に、Mnめっき、Niめっきをこの順で施し、次いで熱拡散処理を行い、その後更にNiめっきを行い、再度熱拡散処理を行うことを特徴とする。いずれの方法も、MnめっきおよびNiめっきおよび熱拡散処理を必須要件としており、それぞれの必須要件と製造方法について以下に詳細な説明をする。
【0016】
Mnめっきは特に限定されるものではなく、純Mnに加えて、不可避的不純物レベルのC,N,S,O,P,B,Fe,Co,Sn,Cu,Zn,Ni等を含んだものであってもよい。ただし、C,N,S,Oについては、めっき層の均一性や平滑度の改善のために添加される、いわゆる光沢添加剤、半光沢添加剤、レべリング添加剤等の取り込まれたものであってもよく、その場合、めっき層中の濃度は痕跡量〜0.1質量%程度の範囲である。まためっきの手段は、電気めっき、無電解めっきを問わないが電気めっきが一般的である。めっき浴には硫酸浴、塩化浴等が用いられる。
【0017】
Niめっきは特に限定されるものではなく、純Niに加えて、C,N,S,O,P,B,Fe,Co,Sn,Cu,Mn等を含んだものであってもよい。これら元素は不可避的不純物以外にも、積極的に添加された場合のものも含む。例えば、C,N,S,Oについては、Niめっき層の硬度や平滑度の改善のために添加される、いわゆる光沢添加剤、半光沢添加剤、レべリング添加剤等の取り込まれたものであって、そのめっき層中の濃度は痕跡量〜0.1質量%程度の範囲である。P,Bについては、後述する無電解めっきの還元剤として取り込まれたものの他に、めっき層の耐薬品性や硬度の改善のために添加されたものも含み、そのめっき層中の濃度は痕跡量〜15質量%程度の範囲である。Fe,Co,Sn,Cu,Mnについては、めっき層の耐薬品性や硬度の改善のために添加されたものを含み、そのめっき層中の濃度は痕跡量〜50質量%程度の範囲である。いずれの元素も前記した上限を超えるとめっき層を脆くしたりまた接触抵抗悪化させるなどの弊害が発生するので好ましくない。まためっきの手段は、電気めっき、無電解めっきを問わない。電気めっきの場合には、硫酸浴、塩化浴、ワット浴、スルファミン酸浴等が用いられる。無電解めっきの場合には、還元剤として次亜りん酸や、ほう素化合物などが用いられる。また、必要に応じてNiめっきの前処理として、アルカリ性水溶液や酸性水溶液によるスプレー処理や浸漬処理を行うことができる。
【0018】
熱拡散処理は、通常の加熱方式で行うことができ、バッチ加熱方式、連続加熱方式いずれも用いられる。また両方を併用することも可能である。尚、めっきを施す鋼材の材質特性を考慮すると、加熱拡散処理と焼鈍処理を同時に行う事が好ましく、この場合の加熱処理は通常の焼鈍用の炉で行うことができ、バッチ焼鈍、連続焼鈍のいずれを用いても良く、また両方を併用することも可能である。その条件を記述するなら、バッチ加熱或いはバッチ焼鈍においては、鋼材温度を450〜650℃、好ましくは500〜600℃の範囲で、数時間〜数十時間、好ましくは6〜24時間処理を行い、連続加熱或いは連続焼鈍においては、鋼材温度を700〜900℃、好ましくは700〜850℃の範囲で、均熱時間を数秒〜数十分間、通常は、10秒〜120秒で処理を行う。
【0019】
本発明の第一の製造方法は、前述の条件にてMnめっき、Niめっき、熱拡散処理を行うものである。熱拡散処理の後に調質圧延を行うことも好適であり、その際のロール粗度を調整することでめっき鋼材の表面粗度を制御することも可能である。
【0020】
本発明の第二の製造方法は、前述の条件にてMnめっき、熱拡散処理を行い、その後でNiめっきを行うものである。熱拡散処理後あるいはNiめっき後のいずれで調質圧延を行うことも好適であり、その際のロール粗度を調整することでめっき鋼材の表面粗度を制御することも可能である。なお、熱拡散処理の際にMn表層に安定な酸化膜が形成されやすいため、Niめっきの前処理は通常よりも強化する(例えば、浸漬の処理時間を長くしたり、スプレーの吹き付け量を増やしたりする)必要がある。
【0021】
本発明の第三の製造方法は、前述の第二の製造方法にてMnめっき、熱拡散処理、Niめっきを行った後に、二度目の熱拡散処理を行うものである。この場合には、鋼材の材質を考慮すると、はじめの熱拡散処理は連続焼鈍による高温処理、後の熱拡散処理は、バッチ焼鈍による低温処理とすることが望ましい。このように二度の熱拡散処理を行うことで、めっき層の構造を任意に制御することが可能となる。すなわち、例えば、図9のようなめっき層の構造をMnめっき、Niめっきの後に一度の熱拡散処理で形成しようとすると、少しの温度のばらつきで、下層がFe−Mn−Ni拡散層になったり、表層までFe−Mn−Ni拡散層になったりと安定性に欠けるが、Mnめっき、熱拡散処理、Niめっき、熱拡散処理という工程であれば、容易に図9のようなめっき構造を形成することができる。この製造方法の場合にも熱拡散処理後、あるいはNiめっき後、あるいは再熱拡散処理後のいずれかで調質圧延を行うことも好適であり、その際のロール粗度を調整することでめっき鋼材の表面粗度を制御することが可能である。
【0022】
本発明の第四の製造方法は、前述の条件にてMnめっき、Niめっき、熱拡散処理を行い、その後再度Niめっきを行うものである。熱拡散処理後あるいはNiめっき後のいずれで調質圧延を行うことも好適であり、その際のロール粗度を調整することでめっき鋼材の表面粗度を制御することが可能である。
【0023】
本発明の第五の製造方法は、MnめっきとNiめっき、熱拡散処理、Niめっき、熱拡散処理の工程であり、二度の熱拡散処理を行うものである。このように二度の熱拡散処理を行うことで、めっき層の構造を任意に制御することが可能となる。この場合にも、鋼材の材質を考慮すると、はじめの熱拡散処理は連続焼鈍による高温処理、後の熱拡散処理は、バッチ焼鈍による低温処理とすることが望ましい。また、この製造方法の場合にも熱拡散処理後、あるいはNiめっき後、あるいは再熱拡散処理後のいずれで調質圧延を行うことも好適であり、その際のロール粗度を調整することでめっき鋼材の表面粗度を制御することが可能である。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【0025】
(実施例1〜3)
Nb,Ti複合添加の極低炭素鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっき1g/m2、表2に示す条件で電気Niめっき15g/m2をこの順で行い、その後熱拡散処理を行った。最後に調質圧延を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、700〜850℃の温度範囲(実施例1:700℃、実施例2:800℃、実施例3:850℃)にて30秒の均熱処理を行った。
【0026】
(実施例4〜8)
Nb,Ti複合添加の極低炭素鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっき0.1〜25g/m2、表2に示す条件で電気Niめっき20g/m2をこの順で行い、その後熱拡散処理を行った。最後に調質圧延を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、780℃にて20秒の均熱処理を行った。
【0027】
(実施例9〜13)
Nb,Ti複合添加の極低炭素鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっき1g/m2、表2に示す条件で電気Niめっき3〜50g/m2をこの順で行い、その後熱拡散処理を行った。最後に調質圧延を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、800℃にて20秒の均熱処理を行った。
【0028】
(実施例14)
Nb,Ti複合添加の極低炭素鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっき5g/m2、を行い、その後熱拡散処理を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、810℃にて30秒の均熱処理を行った。酸洗処理後、表2に示す条件でめっき浴に市販の半光沢添加剤3g/lを添加した浴にて電気Niめっき20g/m2を行い、最後に調質圧延を行った。
【0029】
(実施例15)
B添加の低炭素Alキルド鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっき7g/m2、を行い、その後熱拡散処理を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、790℃にて20秒の均熱処理を行った。酸洗処理後、表2に示す条件で電気Niめっき20g/m2を行い、その後バッチ焼鈍炉にて、450℃8時間の後熱拡散処理を行った。最後に調質圧延を行った。
【0030】
(実施例16)
Nb,Ti複合添加の極低炭素鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっき1g/m2、表2に示す条件で電気Niめっき5g/m2をこの順で行い、その後熱拡散処理を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、800℃にて30秒の均熱処理を行った。その後、調質圧延を行った。更にその後、脱脂、酸洗処理の後、表2に示す条件でめっき浴に市販の光沢添加剤10g/lを添加した浴にて電気Niめっき20g/m2を行った。
【0031】
(実施例17)
原板として、B添加の低炭素Alキルド鋼板(未再結晶鋼板)を用いる以外は実施例16と同一の条件で製造した。
【0032】
(実施例18)
B添加の低炭素Alキルド鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっき20g/m2、を行い、その後熱拡散処理を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、790℃にて30秒の均熱処理を行った。酸洗処理後、表2に示す条件で電気Niめっき5g/m2を行い、その後バッチ焼鈍炉にて、550℃8時間の後熱拡散処理を行った。最後に調質圧延を行った。
【0033】
(実施例19)
B添加の低炭素Alキルド鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっきを20g/m2、表2に示す条件で電気Niめっき10g/m2をこの順で行い、その後熱拡散処理を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、800℃にて30秒の均熱処理を行った。その後、調質圧延を行った。更にその後、脱脂、酸洗処理の後、表2に示す条件で電気Niめっき5g/m2を行った。その後バッチ焼鈍炉にて、450℃8時間の後熱拡散処理を行った。最後に調質圧延を行った。
【0034】
(実施例20)
最初の電気Mnめっきの付着量が8g/m2であること以外は実施例19と同一の条件で製造した。
【0035】
(実施例21)
二度目の熱拡散処理条件が、バッチ焼鈍炉にて、550℃12時間の処理であること以外は実施例19と同一の条件で製造した。
【0036】
(比較例1)
Nb,Ti複合添加の極低炭素鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表2に示す条件で電気Niめっき45g/m2を行い、その後熱拡散処理を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、800℃にて30秒の均熱処理を行った。その後、調質圧延を行った。
【0037】
(比較例2)
Nb,Ti複合添加の極低炭素鋼板(再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表1に示す条件で電気Mnめっき5g/m2、表2に示す条件で電気Niめっき20g/m2をこの順で行った。その後、調質圧延を行った。
【0038】
(比較例3)
Nb,Ti複合添加の極低炭素鋼板(未再結晶鋼板)を原板として、脱脂、酸洗処理の後、表2に示す条件で電気Niめっき20g/m2、表1に示す条件で電気Mnめっき5g/m2をこの順で行い、その後熱拡散処理を行った。熱拡散処理は、連続焼鈍炉にて、5%H2含有N2雰囲気(露点−40℃)にて、780℃にて30秒の均熱処理を行った。その後、調質圧延を行った。
【0039】
(評価方法)
(1)平板耐食性(赤錆)
平板サンプルで、JISZ2371の塩水噴霧試験を3日間行い、赤錆(鉄錆)発生状況を目し観察し、発生皆無を○、僅かでも発生を×と評価した。さらに塩水噴霧試験4日間でも赤錆発生皆無のものは◎と評価した。
(2)平板耐食性(変色)
平板サンプルで、10%伸び加工を施した後、JISZ2371の塩水噴霧試験を3日間行い、色彩色度計により、試験前後でのサンプル表面の色差を測定した。なお、サンプル表面の一部に赤錆が見られるものは、赤錆発生の無い部分で評価した。色差が繰り返し測定誤差範囲内(<1)のものを○、それ以上を×と評価した。さらに塩水噴霧試験4日間でも色差が繰り返し測定誤差範囲内(<1)のものは◎と評価した。
(3)加工耐食性(赤錆)
サンプルに10%伸び加工を施した後、JISZ2371の塩水噴霧試験を3日間行い、赤錆(鉄錆)発生状況を目し観察し、発生皆無を○、僅かでも発生を×と評価した。さらに塩水噴霧試験4日間でも赤錆発生皆無のものは◎と評価した。
(4)加工耐食性(変色)
サンプルに10%伸び加工を施した後、JISZ2371の塩水噴霧試験を3日間行い、色彩色度計により、試験前後でのサンプル表面の色差を測定した。なお、サンプル表面の一部に赤錆が見られるものは、赤錆発生の無い部分で評価した。色差が繰り返し測定誤差範囲内(<1)のものを○、それ以上を×と評価した。さらに塩水噴霧試験4日間でも色差が繰り返し測定誤差範囲内(<1)のものは◎と評価した。
(5)接触抵抗
60℃98%RH雰囲気に10日間保持した後、山崎精機研究所製電気接点シュミレータCRS−1を用い、荷重100gにて接触抵抗を測定した。10mΩ未満を○、10mΩ以上を×と評価した。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
各サンプルのめっき層構造とNi,Mn付着量および性能評価結果を表3に示す。なお、めっき層構造は、GDSおよびAESによる表層からの深さ方向元素分析により決定したものであり、Ni,Mn付着量は、めっき層、拡散層を全て塩酸水溶液により溶解し、ICP分析により付着量を定量したものである。
【0044】
この表から分かるように本発明の実施例では、Niの付着量が少ない範囲において良好な耐食性を示した。一方、Mnを含む拡散層を有しない比較例1においては、加工耐食性が本発明の実施例と比べ大きく劣り、Ni層のピンホール起因の赤錆の発生が目立った。また、拡散層を有しない比較例2においては、加工耐食性が本発明の実施例と比べ大きく劣り、赤錆の発生のみならず、Mn層の腐食を原因とする変色も目立った。また、NiめっきとMnめっきの順序を変えた比較例3においては、平板耐食性・加工耐食性の双方の評価で、変色が目立ち、接触抵抗も増加した。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の鋼材は、電気電子器具、電池缶に代表される容器材料、バインダー等の日用家電部材等はもちろんのこと、従来Niめっきが適用されていなかった部材まで幅広く適用できる可能性があり、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図7】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図8】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図9】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図10】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【図11】本発明の高耐食性めっき鋼材の構成の一例を示す模式図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼母材上にFe−Mn拡散層とFe−Mn−Ni拡散層の少なくともいずれか一方の層を有し、さらに表層にNiめっき層を有する事を特徴とする、高耐食性めっき鋼材。
【請求項2】
表層の前記Niめっき層と、前記Fe−Mn拡散層または前記Fe−Mn−Ni拡散層との間に、Mn−Ni拡散層を有する事を特徴とする、請求項1に記載の高耐食性めっき鋼材。
【請求項3】
鋼母材上にFe−Mn拡散層とFe−Mn−Ni拡散層の少なくともいずれか一方の層を有し、さらに表層にMn−Ni拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層を有する事を特徴とする、高耐食性めっき鋼材。
【請求項4】
最表層の前記Mn−Ni拡散層または前記Fe−Mn−Ni拡散層におけるNi濃度が60質量%以上であることを特徴とする、請求項3に記載の高耐食性めっき鋼材。
【請求項5】
前記めっき層及び前記拡散層に含まれるNiの総付着量が5〜40g/m2であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の高耐食性めっき鋼材。
【請求項6】
前記めっき層及び前記拡散層に含まれるMnの総付着量が0.1〜20g/m2であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の高耐食性めっき鋼材。
【請求項7】
鋼材に、Mnめっき、Niめっきをこの順で施し、次いで熱拡散処理を行い、前記鋼材上にFe−Mn拡散層とFe−Mn−Ni拡散層の少なくともいずれか一方の層を設けることを特徴とする、高耐食性めっき鋼材の製造方法。
【請求項8】
鋼材に、Mnめっきを施し、次いで熱拡散処理を行い、前記鋼材上にFe−Mn拡散層を設けた後に、Niめっきを行うことを特徴とする、高耐食性めっき鋼材の製造方法。
【請求項9】
Niめっき後に更に熱拡散処理を行い、Mn−Ni拡散層設けることを特徴とする、請求項8に記載の高耐食性めっき鋼材の製造方法。
【請求項10】
鋼材に、Mnめっき、Niめっきをこの順で施し、次いで熱拡散処理を行い、前記鋼材上にFe−Mn拡散層とFe−Mn−Ni拡散層の少なくともいずれか一方の層を設けた後に、Niめっきを行うことを特徴とする、高耐食性めっき鋼材の製造方法。
【請求項11】
前記熱拡散処理後のNiめっきの後に、更に熱拡散処理を行い、Mn−Ni拡散層又はFe−Mn−Ni拡散層を設けることを特徴とする、請求項10に記載の高耐食性めっき鋼材の製造方法。
【請求項1】
鋼母材上にFe−Mn拡散層とFe−Mn−Ni拡散層の少なくともいずれか一方の層を有し、さらに表層にNiめっき層を有する事を特徴とする、高耐食性めっき鋼材。
【請求項2】
表層の前記Niめっき層と、前記Fe−Mn拡散層または前記Fe−Mn−Ni拡散層との間に、Mn−Ni拡散層を有する事を特徴とする、請求項1に記載の高耐食性めっき鋼材。
【請求項3】
鋼母材上にFe−Mn拡散層とFe−Mn−Ni拡散層の少なくともいずれか一方の層を有し、さらに表層にMn−Ni拡散層またはFe−Mn−Ni拡散層を有する事を特徴とする、高耐食性めっき鋼材。
【請求項4】
最表層の前記Mn−Ni拡散層または前記Fe−Mn−Ni拡散層におけるNi濃度が60質量%以上であることを特徴とする、請求項3に記載の高耐食性めっき鋼材。
【請求項5】
前記めっき層及び前記拡散層に含まれるNiの総付着量が5〜40g/m2であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の高耐食性めっき鋼材。
【請求項6】
前記めっき層及び前記拡散層に含まれるMnの総付着量が0.1〜20g/m2であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の高耐食性めっき鋼材。
【請求項7】
鋼材に、Mnめっき、Niめっきをこの順で施し、次いで熱拡散処理を行い、前記鋼材上にFe−Mn拡散層とFe−Mn−Ni拡散層の少なくともいずれか一方の層を設けることを特徴とする、高耐食性めっき鋼材の製造方法。
【請求項8】
鋼材に、Mnめっきを施し、次いで熱拡散処理を行い、前記鋼材上にFe−Mn拡散層を設けた後に、Niめっきを行うことを特徴とする、高耐食性めっき鋼材の製造方法。
【請求項9】
Niめっき後に更に熱拡散処理を行い、Mn−Ni拡散層設けることを特徴とする、請求項8に記載の高耐食性めっき鋼材の製造方法。
【請求項10】
鋼材に、Mnめっき、Niめっきをこの順で施し、次いで熱拡散処理を行い、前記鋼材上にFe−Mn拡散層とFe−Mn−Ni拡散層の少なくともいずれか一方の層を設けた後に、Niめっきを行うことを特徴とする、高耐食性めっき鋼材の製造方法。
【請求項11】
前記熱拡散処理後のNiめっきの後に、更に熱拡散処理を行い、Mn−Ni拡散層又はFe−Mn−Ni拡散層を設けることを特徴とする、請求項10に記載の高耐食性めっき鋼材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−203497(P2009−203497A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44932(P2008−44932)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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