説明

高速フィルム形成性水性バリアコーティング

本発明は、ポリマー組成物と混合した際に、凝集性の連続フィルムの生成を可能にする組成物に関する。このフィルムは、水、グリース及び油に対する耐性を与えることを特徴とし、防湿性をもたらし、ワックス代替処理剤及びフレキシブル包装の上塗りとして使用できるが、他の基体上にも使用できる。このフィルムは、熱エネルギーを必要とせずに、超速硬速度で生成される。組成物は、i)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、ii)ポリビニルアルコール、並びにまた任意によりiii)酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体を含有する。また本発明は、方法及びコーティングされた基体をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続性かつ凝集性であるフィルム(film)の生成を可能にする新規な組成物に関する。前記フィルムは、熱エネルギーの必要なしに、超速硬速度で、耐水性、耐グリース性及び耐油性、剥離性、撥水性、耐湿性をもたらして、ワックス代替処理剤やフレキシブル包装の上塗りとして用いられる。本発明は、このようなコーティングされた材料から成形される包装、容器、食品包装材及び入れ物等にも関する。本発明は、それを作る方法にも関する。本発明は、例えば金属、繊維、木材、コンクリート及び関連建材を表面とする表面処理にも関する。
背景技術
【0002】
水性バリアコーティングは、紙や板紙に塗布される際に水を含むが、連続フィルムを生成するためにはこの水は除去されなければならない。欠陥がない連続フィルムの品質は、最適なバリア性を得る上で非常に重要である。
【0003】
乾燥プロセスは、普通、水を除去する。乾燥プロセスは、通常、液体に熱を与えて水を蒸発させる、熱プロセス(伝導、対流、放射)である。
【0004】
乾燥条件は、コーティングの性能に影響を与える最も重要な要因の一つである。不適切な乾燥条件を用いると、泡、ブリスター、ピンホール、又は亀裂等の品質の問題が生じる恐れがある。製造条件は、装置の種類、使用するコーティング及びコーティング重量に適合しなければならない。
【0005】
乾燥にかかるコストは、加工費の大部分を占め、エネルギー費が嵩むにつれ乾燥効率はますます重要になる。
【0006】
したがって、エネルギー環境及び石油資源の懸念がある際、加熱又は乾燥機の必要なしに、高いコーティング速度率を依然として有しながら、水性バリアコーティングを使用して紙に塗装できれば有益であろう。
発明の開示
【0007】
本発明は、ポリマー組成物を用いて乾燥フィルムの急速生成を可能にする組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、材料に耐湿性、耐油性及び耐グリース性を与える方法を提供することも目的とする。
【0009】
さらに本発明は、コーティング又はフィルムを生成する組成物の使用を提供することを目的とする。
【0010】
またさらに本発明は、フィルムコーティングを有する基体材料を提供することを目的とする。
【0011】
一側面において、本発明は、ポリマー組成物と混合したときに凝集性の連続フィルムを生成できる組成物に関する。このフィルムは、耐水性、耐グリース性及び耐油性、並びに防湿性をもたらすことを特徴とし、ワックス代替処理剤及びフレキシブル包装の上塗りとして使用することができるが、他の基体上にも使用できる。このフィルムは、熱エネルギーの必要なしに、超速硬速度で生成される。
【0012】
別の側面において、本発明は、i)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、並びにii)a)ポリビニルアルコール及びb)酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つの使用に関する。
【0013】
塩及びポリビニルアルコール及び/又は脂肪酸錯体は、個別に又は分散液の一部として前記のポリマー組成物に添加することができる。
【0014】
したがって、別の側面において、本発明は、i)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の金属塩、並びにii)a)ポリビニルアルコール及びb)酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つを含む触媒組成物に関する。
【0015】
本発明のさらなる側面は、i)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の二塩基性塩、ii)a)ポリビニルアルコール及びb)酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つ、並びにiii)ポリマー、コポリマー、又はポリマー混合物若しくはコポリマー混合物を含むポリマー組成物を含む、フィルム生成用の水性ポリマー組成物に関する。
【0016】
本発明の別の側面は、i)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の二塩基性塩、ii)a)ポリビニルアルコール及びb)酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つ、並びにiii)ポリマー、コポリマー、又はポリマー混合物若しくはコポリマー混合物を含むポリマー組成物のうち、任意の2つを含む予混合組成物に関する。
【0017】
さらに別の側面において、本発明は、本発明のポリマー組成物から生成されたフィルムでコーティングされた表面を有する基体に関する。
【0018】
本発明はさらに、本発明のフィルム生成用ポリマー組成物から生成されたフィルムを含むセルロース系の表面に関する。本発明はさらに、本発明のフィルム生成用ポリマー組成物から生成されたフィルムを含む金属製の表面に関する。本発明はさらに、本発明のフィルム生成用ポリマー組成物から生成されたフィルムを含む繊維に関する。本発明はさらに、本発明のフィルム生成用ポリマー組成物から生成されたフィルムを含むガラスに関する。
【0019】
本発明はさらに、熱エネルギー又はマイクロ波エネルギーを使用せずに水性ポリマー組成物を使用することを含む、表面をコーティングする方法に関する。
【0020】
一態様において、本発明は、使用する成分の種類のために、容易に生分解でき、且つリサイクル可能で再パルプ化可能な、コーティングされたシート材料を提供する。本発明は、グリース及び油による浸透に耐性があり、また水分による浸透にも耐性があるクラフト紙を包含する、セルロース系材料等のコーティングされたシート材料を提供する。したがって、本発明の態様は、オーブンに入れて使える容器、食品包装材、入れ物及び貯蔵容器のような、食品材料用、冷凍食品用の容器及び包装に関する。
【0021】
本発明のさらに別の側面において、本発明にしたがってフィルムコーティングを生成するための、上記のi)及びiii)を含む組成物が提供される。
好ましい態様の説明
【0022】
本発明は、熱を加える必要なしに超高速でフィルムを生成する、ワックスを含まない水性コーティングに関する。これは、優れた耐水性(不粘着性)、耐グリース性及び耐油性、並びに良好な防湿性をもたらす。
【0023】
機能的なコーティングの成功は、一般に、均一なコーティングを有することで決まる。欠陥がない連続フィルムは、バリア性にとって特に重要である。コーティングにおけるフィルム生成は、液体から固体状態への変化を要する。これは、水の蒸発及び分散粒子の合体によって行われる。ポリマーは、最初、連続水相によって分離されたばらばらの球体として存在している。水は、蒸発によって、また多孔質基体への浸透によって、除去される。濃度が高くなるにしたがって、ポリマー粒子は互いに接近する。この特殊な場合において、水は基体に急速に吸収され、球体又は粒子はますます密接になる。
【0024】
最終的に、球体は過密に密集するようになり、球体間のスペースが毛細管力を生じる。最密充填が起こるにしたがって、水の毛細管力が球体又は粒子同士を引き寄せて凝集性の連続フィルムを生成する。
【0025】
フィルム生成の容易さは、通称Tgのポリマーのガラス転移温度、粒径、配合成分及び乾燥プロセス中に達する温度に依存する。
【0026】
本発明は、ステアリン酸カルシウム等の塩がフィルム生成の速度に影響を与える全く別の方法に関する。ステアリン酸カルシウム等の塩は、最低フィルム生成温度を低下させることにより合体剤として作用する。また、ステアリン酸カルシウム等の塩は、乳化剤として働き、混合液の表面張力を低下させる。これにより、コーティングが表面を完全に湿らせ、コーティング中に存在する水が多孔質紙基体に浸透することによって急速に水分除去される。
【0027】
ポリビニルアルコール又はクロム等の金属イオンの脂肪酸錯体、又はポリビニルアルコール及び脂肪酸錯体の両方が存在すると、フィルム生成速度が向上し、同時に剥離性、撥水性、並びに水、水蒸気、グリース及び油に対する耐性を包含する、より良好なフィルム特性を得るのに役立つ。
【0028】
したがって本発明の水性バリアコーティングは、熱を必要とせずに、欠陥がない凝集性の連続フィルムを急速に生成する。この新規な水性バリアコーティング組成物の、速硬性乾燥フィルム生成という概念により、バリアコーティングの技術は、熱源が不十分である、又は存在しないサイズプレス塗工機、スプレー塗工機、カーテン式塗工機及びフレキソ等の非従来的な装置まで適用範囲を広げることが可能になる。
【0029】
本明細書の用語、触媒組成物は、i)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、ii)a)ポリビニルアルコール及びb)酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つの予混合物を意味することを意図している。
【0030】
本明細書の用語、フィルム生成用ポリマー組成物は、i)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、ii)a)ポリビニルアルコール及びb)酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つ、並びにiii)ポリマー、コポリマー、又はポリマー混合物若しくはコポリマー混合物を含むポリマー組成物、を含む組成物を意味することを意図している。
【0031】
本発明のフィルム生成用ポリマー組成物を空気に晒すと、その組成物から、例えばその表面上に生成するフィルム等のフィルム生成が起こることが見出された。したがって、本発明の一側面は、i)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、ii)酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体、並びにiii)ポリマー、コポリマー、又はポリマー混合物若しくはコポリマー混合物を含むポリマー組成物のうち、2つ以下を含む予混合物に関する。
【0032】
ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩は、通常、これらの酸の二塩基性金属塩であり、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛;ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、又はミリスチン酸亜鉛;パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸カルシウム及びパルミチン酸亜鉛から選択できる。塩は、エマルジョン若しくは分散液の形態、又は無溶媒状態であってもよい。
【0033】
好適な態様において、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩は、ステアリン酸の金属塩、すなわち金属ステアレートである。より典型的には、金属ステアレートは、ステアリン酸の二塩基性金属塩であり、例えばステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウム、又はステアリン酸亜鉛である。
【0034】
ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛の分散液は、Devflo 50LPH、Devflo 50C及びDevflo 40 RZlの商標で販売されている。例えば、BASF又はRohm & Haas製の、市販のステアリン酸分散液又はエマルジョンも非常に適している。
【0035】
酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体は、触媒組成物の及びフィルム生成用ポリマー組成物の好ましい成分である。Quilon(商標)の脂肪酸金属錯体は、特に好適であることが見出されている。その他の好適な剥離性コーティング材としては、例えば、鉄(+3)−脂肪酸錯体及びチタン(+4)−脂肪酸錯体が挙げられる。上記のような脂肪酸の三価金属錯体で良好な結果が得られている。したがって、酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体は、ウェルナー錯体、C〜C18脂肪酸の三価金属錯体、C〜C18脂肪酸の四価金属錯体、例えばクロム−C〜C18−脂肪酸錯体、鉄(+3)−C〜C18脂肪酸錯体、又はチタン(+4)−C〜C18脂肪酸錯体から選択できる。
【0036】
特定の理論に制約されるものではないが、酸化状態が少なくとも+3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体は、ある特定の態様において、以下の構造式を有する。
【化1】


式中、Mは金属イオンの金属であり、R’は溶媒であり、この溶媒の中で金属錯体が分散又は乳化しており、Xは塩素等のハロゲンである。
【0037】
金属イオンは、好適には、ペンタヒドロキシ(テトラデカノアト)ジクロム、テトラデカノアトクロムクロリドヒドロキシド及びオクタデカノアトクロム酸ヒドロキシド等におけるクロムである。これらは、従来からQuilon(商標)C又はC−9、Quilon(商標)M及びQuilon(商標)Sとして知られている。Quilon(商標)L、Quilon(商標)L−11及びQuilon(商標)Hと任意の前記の混合物もまた金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体として好適である。
【0038】
したがって、Quilon錯体は、Quilon C、Quilon L、Quilon M、Quilon H、又はQuilon Sであってもよく、特定の性質を与える。
【0039】
脂肪酸のQuilon(商標)金属錯体は、脂肪酸のウェルナークロム錯体である。本発明の好適な態様は、酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体として、ウェルナークロム錯体等のウェルナー錯体を含む。
【0040】
クロム等の、酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC11〜C18脂肪酸錯体が特に好適であることが見出されている。
【0041】
酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体は、好適な溶媒中の分散液、懸濁液、エマルジョン、又は溶液の形態であってもよい。溶媒は、水、アルコール、水混和性有機溶媒、アルコール混和性有機溶媒及びこれらの組み合わせであってもよい。好適なアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロポノール(proponol)、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール及びシクロヘキサノールが挙げられる。好適な水又はアルコール混和性有機溶媒としては、アセトニトリル、酢酸エチル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及び石油エーテルが挙げられる。
【0042】
成分(ii)として単独で用いられる、又は成分(ii)としての金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体と併用されるポリビニルアルコールは、好適にはポリビニルアルコール水溶液であり、ポリビニルアルコールの重量濃度は、溶液の重量に対して、通常、約10重量%である。ポリビニルアルコールは、部分的ないし完全に加水分解されていてもよい。好適なポリビニルアルコール溶液として、Celanese製Celvolの商標で入手可能なものが挙げられる。
【0043】
ポリビニルアルコール溶液は、通常、約28cpsから約32cpsの粘度、約5から約7.5のpHを有してもよく、ポリビニルアルコールは、850,000から130,000の範囲の重量平均分子量及び44,000から68,000の範囲の数平均分子量を有する。
【0044】
本発明の重要な側面は、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、並びにポリビニルアルコール及び/又は酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体の、表面上にフィルムを調製するための使用に関する。これらの成分は、分散液、懸濁液、エマルジョン、又は溶液の形態等で、個別に又は混合液として添加することができる。
【0045】
本発明の重要な側面は、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、並びにa)ポリビニルアルコール及びb)酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つの水性混合液に関する。本発明の触媒組成物は、分散液、懸濁液、エマルジョン、又は溶液の形態であってもよい。本発明の利点は、本発明の触媒組成物が水性であって、依然として表面上に急速にフィルムを生成できる点である。水性混合液という用語は、少なくとも30%(v/v)、例えば少なくとも40%、より典型的には少なくとも50%の溶媒が水である、分散液、懸濁液、エマルジョン、又は溶液を意味することを意図している。
【0046】
ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、並びにa)ポリビニルアルコール及びb)酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つの水性混合液の非常に好適な態様において、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩は、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛からなる群から選択される。
【0047】
ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、並びにa)ポリビニルアルコール及びb)酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つの水性混合液のさらに非常に好適な態様において、金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体は、Quilon(商標)Cの化学組成を有するもの等のクロム−C〜C18脂肪酸錯体である。非常に好適な態様において、本発明の触媒組成物は、ステアリン酸カルシウムとa)ポリビニルアルコール及びb)Quilon(商標)Cのうちの少なくとも1つを含む。
【0048】
本発明の水性触媒組成物におけるi)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩の、ii)a)ポリビニルアルコール及びb)金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つに対する比は、最終的に触媒組成物と混合するポリマー組成物の性質並びに被覆される表面の性質によって変動してくる。通常、水性触媒組成物におけるi)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩の、ii)a)ポリビニルアルコール及びb)金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つに対する比は、約5:1から20:1の範囲、例えば約7:1から20:1、例えば約5:1から15:1、より典型的には約7:1から15:1の範囲である。
【0049】
本発明の非常に好適な態様において、本発明の触媒組成物は、ステアリン酸カルシウム並びにa)ポリビニルアルコール及びb)Quilon(商標)Cのうちの少なくとも1つを5:1から15:1、例えば約7:1から15:1の重量比で含む。一態様において、ステアリン酸カルシウム並びにa)ポリビニルアルコール及びb)Quilon(商標)Cのうちの少なくとも1つは、17から1.5の比で合わせた。
【0050】
本発明の触媒組成物は、無溶媒で、i)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、並びにii)a)ポリビニルアルコール及びb)金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つの組み合わせを含んでもよい。或いは、本発明の触媒組成物は、i)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、並びにii)a)ポリビニルアルコール及びb)金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つの組み合わせを、前記金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体を分散又は懸濁させた溶媒中で分散、溶解、又は懸濁させて含んでもよい。さらに別の選択肢として、本発明の触媒組成物は、水又は水性混合液の中で分散、溶解、又は懸濁していてもよい、i)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、並びにii)a)ポリビニルアルコール及びb)金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つの組み合わせであって、当該水性混合液が典型的には水及び1種又は2種以上の溶媒を含み、i)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、並びにii)a)ポリビニルアルコール及びb)金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つの各々を分散、溶解、若しくは懸濁させた上記組み合わせを含んでもよい。
【0051】
i)ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛、並びにii)a)ポリビニルアルコール及びb)Quilon(商標)C等のクロム−C〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つ及び水を含む本発明の態様において、15〜20対1〜2対1〜2、例えば17対1.5対1.5の比で成分が存在する。
【0052】
本発明の触媒組成物は、iii)ポリマー、コポリマー、又はポリマー混合物若しくはコポリマー混合物を含むポリマー組成物と合わせることにより、フィルム生成用ポリマー組成物を生成する。したがって本発明のさらなる側面は、i)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、ii)a)ポリビニルアルコール及びb)酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つ、並びにiii)ポリマー、コポリマー、又はポリマー混合物若しくはコポリマー混合物を含むポリマー組成物を含むフィルム生成用ポリマー組成物に関する。典型的な態様において、フィルム生成用ポリマー組成物は、フィルム生成用水性ポリマー組成物である。非常に典型的な態様において、フィルム生成用水性ポリマー組成物は、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛、a)ポリビニルアルコール及びb)Quilon(商標)C等のクロム−C〜C18脂肪酸錯体のうちの少なくとも1つ、水、並びにポリマー、コポリマー、又はポリマー混合物若しくはコポリマー混合物を含むポリマー組成物を含む。
【0053】
ポリマー、コポリマー、又はポリマー混合物若しくはコポリマー混合物は、通常、水分散性のポリマー又はコポリマーであり、フィルム生成性のポリマー又はコポリマーである。好ましい態様において、水分散性フィルム生成性ポリマー又はコポリマーは、約−60から105℃のガラス転移温度を有し、非ブロッキングフィルムを生成するように好適に選択される。
【0054】
本発明の特に好ましい態様において、成分(ii)は、ポリビニルアルコール、又は金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体と一緒にしたポリビニルアルコールである。
【0055】
バリアコーティング組成物において水分に耐性を示す架橋性ポリマーとして使用できるポリマーとしては、これらに限定されないが、以下のポリマー及びコポリマーが挙げられる。
・ポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)及びポリ(1−ペネテニレン(penetenylene))等のポリ(ジエン)、
【0056】
・ポリ(ベンジルアクリレート)、ポリ(ブチルアクリレート)(単数又は複数)、ポリ(2−シアノブチルアクリレート)、ポリ(2−エトキシエチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ポリ(フルオロメチルアクリレート)、ポリ(5,5,6,6,7,7,7−ヘプタフルオロ−3−オキサへプチルアクリレート)、ポリ(ヘプタフルオロ−2−プロピルアクリレート)、ポリ(へプチルアクリレート)、ポリ(ヘキシルアクリレート)、ポリ(イソボルニルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(3−メトキシブチルアクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(ノニルアクリレート)、ポリ(オクチルアクリレート)、ポリ(プロピルアクリレート)及びポリ(p−トリルアクリレート)等のポリ(アクリレート)、
【0057】
・ポリビニルアクリレート、フッ化炭素及びフッ化重合体、
・ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N−ブチルアクリルアミド)、ポリ(N,N−ジブチルアクリルアミド)、ポリ(N−ドデシルアクリルアミド)及びポリ(モルホリルアクリルアミド)等のポリ(アクリルアミド)、
【0058】
・ポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリ(オクチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(2−クロロエチルメタクリレート)、ポリ(2−シアノエチルメタクリレート)、ポリ(ドデシルメタクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(1,1,1−トリフルオロ−2−プロピルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロプロピルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸)、アタクチック、イソタクチック、シンジオタクチック及びヘテロタクチック等の様々な形態のポリ(メチルメタクリレート)、並びにポリ(プロピルメタクリレート)等のポリ(メタクリル酸)及びポリ(メタクリル酸エステル)、
【0059】
・ポリ(4−カルボキシフェニルメタクリルアミド)等のポリ(メタクリルアミド)、
・ポリ(ブチルクロロアクリレート)、ポリ(エチルエトキシカルボニルメタクリレート)、ポリ(メチルフルオロアクリレート)及びポリ(メチルフェニルアクリレート)等の、その他のα−及びβ−置換のポリ(アクリレート)及びポリ(メタクリレート)、
【0060】
・ポリ(ブトキシエチレン)、ポリ(エトキシエチレン)、ポリ(エチルチオエチレン)等のポリ(ビニルエーテル)、
・ポリ(ドデカフルオロブトキシエチレン)、ポリ(2,2,2−トリフルオロエトキシトリフルオロエチレン)、ポリ(ヘキシルオキシエチレン)、ポリ(メトキシエチレン)及びポリ(2−メトキシプロピレン)、
【0061】
・ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(1,1−ジクロロエチレン)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(1,1−ジクロロ−2−フルオロエチレン)、ポリ(1,1−ジフルオロエチレン)、ポリ(メタクリロニトリル)、ポリ(塩化ビニル)及びポリ(塩化ビニリデン)等の、ポリ(ハロゲン化ビニル)及びポリ(ビニルニトリル)、
【0062】
・ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(4−ブチリルオキシベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(4−エチルベンゾイルオキシエチレン)、ポリ[(トリフルオロアセトキシ)エチレン]、ポリ[(ヘプタフルオロブチリルオキシ)エチレン]、ポリ(ホルミルオキシエチレン)、ポリ[(2−メトキシベンゾイルオキシ)エチレン]、ポリ(ピバロイルオキシエチレン)及びポリ(プロピオニルオキシエチレン)等の、ポリ(ビニルエステル)、
【0063】
・ポリ(4−アセチルスチレン)、ポリ[3−(4−ビフェニリル)スチレン]、ポリ(4−[(2−ブトキシエトキシ)メチル]スチレン)、ポリ(4−ブトキシメチルスチレン)、ポリ(4−ブトキシスチレン)、ポリ(4−ブチルスチレン)、ポリ(4−クロロ−2−メチルスチレン)、ポリ(2−クロロスチレン)、ポリ(2,4−ジクロロスチレン)、ポリ(2−エトキシメチルスチレン)、ポリ(4−エトキシスチレン)、ポリ(3−エチルスチレン)、ポリ(4−フルオロスチレン)、ポリ(ペルフルオロスチレン)、ポリ(4−ヘキシルスチレン)、ポリ[4−(2−ヒドロキシエトキシメチル)スチレン]、ポリ[4−(1−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)スチレン]、ポリ(2−メトキシメチルスチレン)、ポリ(2−メトキシスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(2−メチルスチレン)、ポリ(4−メトキシスチレン)、ポリ(4−オクタノイルスチレン)、ポリ(4−フェノキシスチレン)、ポリ(4−フェニルスチレン)、ポリ(4−プロポキシスチレン)及びポリ(スチレン)等の、ポリ(スチレン)、
【0064】
・ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(テトラヒドロフラン)、ポリ(オキセタン)、ポリ(オキシブタジエン)、ポリ[オキシクロロメチル)エチレン]、ポリ(オキシ−2−ヒドロキシトリメチレンオキシ−1,4−フェニレンメチレン−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシ−2,6−ジメトキシ−1,4−フェニレン)及びポリ(オキシ−1,3−フェニレン)等の、ポリ(オキシド)、
・ビスフェノールAのポリカーボネート及びポリ[オキシカルボニルオキシ−4,6−ジメチル]−1,2−フェニレンメチレン−3,5−ジメチル−1,2−フェニレン]等の、ポリ(カーボネート)、
【0065】
・ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ[(1,2−ジエトキシカルボニル)エチレン]、ポリ[(1,2−ジメトキシカルボニル)エチレン]、ポリ(オキシ−2−ブテニレンオキシセバコイル)、ポリ[ジ(オキシエチレン)オキシアジポイル]、ポリ(オキシエチレンオキシカルボニル−1,4−シクロへキシレンカルボニル)、ポリ(オキシエチレンオキシイソフタロイル)、ポリ[ジ(オキシエチレン)オキシオキサリル]、ポリ[ジ(オキシエチレン)オキシスクシニル]、ポリ(オキシエチレンオキシテレフタロイル)、ポリ(オキシ−1,4−フェニレンイソプロピリデン−1,4−フェニレンオキシセバコイル)及びポリ(オキシ−1,3−フェニレンオキシイソフタロイル)等の、ポリ(エステル)、
・ポリ(オキシカルボニル−1,4−フェニレンメチレン−1,4−フェニレンカルボニル)及びポリ(オキシイソフタロイル)等の、ポリ(酸無水物)、
【0066】
・ポリ(オキシカルボニルイミノヘキサメチレンイミノカルボニルオキシデカメチレン)、ポリ(オキシエチレンオキシカルボニルイミニオヘキサメチレンイミノカルボニル)、ポリ(オキシエチレンオキシカルボニルイミノ−1,4−フェニレントリメチレン−1,4−フェニレンイミノカルボニル)、ポリ(オキシドデカメチレンオキシカルボニルイミノデカメチレンイミノカルボニル)及びポリ(オキシテトラメチレンオキシカルボニルイミノ−1,4−フェニレンメチレン−1,4−フェニレンイミノカルボニル)等の、ポリ(ウレタン)、
・ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ[オキシ(メチル)フェニルシリレン]及びポリ(オキシジフェニルシリレン−1,3−フェニレン)等の、ポリ(シロキサン)、
【0067】
・ポリ[オキシカルボニルジ(オキシ−1,4−フェニレン)スルホニル−1,4−フェニレンオキシ−1,4−フェニレン]、ポリ(オキシ−1,4−フェニレンスルフィニル−1,4−フェニレンオキシ−1,4−フェニレンカルボニル−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシ−1,4−フェニレンスルホニル−1,4−フェニレン)及びポリ(スルホニル−1,3−シクロへキシレン)等の、ポリ(スルホン)及びポリ(スルホンアミド)、
【0068】
・ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−3、ナイロン−4,6、ナイロン−5,6、ナイロン−6,3、ナイロン−6,2、ナイロン−6,12及びナイロン−12等の、ポリ(アミド)、
・ポリ(アセチルイミノエチレン)及びポリ(バレリルイミノエチレン)等の、ポリ(イミン)、
・ポリ(2,6−ベンゾイミダゾールジイル−6,2−ベンゾイミダゾールジイルオクタメチレン)等の、ポリ(ベンゾイミダゾール)、
【0069】
・アミローストリアセテート、セルローストリアセテート、セルローストリデカノエート、エチルセルロース及びメチルセルロース等の、炭水化物、
・並びにこれらのポリマー混合物及びコポリマー、例えばポリ(アクリロニトリル−co−スチレン)とポリ(e−カプロラクトン)又はポリ(エチルメタクリレート)又はポリ(メチルメタクリレート)との混合物、
【0070】
・ポリ(アクリロニトリル−co−塩化ビニリデン)とポリ(ヘキサメチレンテレフタレート)との混合物、
・ポリ(アリルアルコール−co−スチレン)とポリ(ブチレンアジペート)又はポリ(ブチレンセバケート)との混合物、ポリ(n−アミルメタクリレート)とポリ(塩化ビニル)との混合物、
・ビスフェノールAポリカーボネートとポリ(e−カプロラクトン)又はポリ(エチレンアジペート)又はポリ(エチレンテレフタレート)又はノボラック樹脂との混合物、
【0071】
・ポリ(ブタジエン)とポリ(イソプレン)との混合物、
・ポリ(ブタジエン−co−スチレン)と水素化ロジンのグリセロールエステルとの混合物、
・ポリ(ブチルアクリレート)とポリ(塩素化エチレン)又はポリ(塩化ビニル)との混合物、
・ポリ(ブチルアクリレート−co−メチルメタクリレート)とポリ(塩化ビニル)との混合物、
・ポリ(ブチルメタクリレート)とポリ(塩化ビニル)との混合物、
・ポリ(ブチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)又はポリ(酢酸ビニル−co−塩化ビニリデン)との混合物、
・ポリ(e−カプロラクトン)とポリ(クロロスチレン)又はポリ(酢酸ビニル−co−塩化ビニリデン)との混合物、
【0072】
・酢酸セルロースとポリ(塩化ビニリデン−co−スチレン)との混合物、
・酢酸セルロース−ブチレートとポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)との混合物、
・ポリ(塩素化エチレン)とポリ(メチルメタクリレート)との混合物、
・ポリ(塩素化塩化ビニル)とポリ(n−ブチルメタクリレート)又はポリ(エチルメタクリレート)又はポリ(バレロラクトン)との混合物、
【0073】
・ポリ(クロロプレン)とポリ(エチレン−co−メチルアクリレート)との混合物、
・ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)とポリ(a−メチルスチレン−co−スチレン)又はポリ(スチレン)との混合物、
・ポリ(エチルアクリレート)とポリ(塩化ビニル−co−塩化ビニリデン)又はポリ(塩化ビニル)との混合物、
【0074】
・ポリ(エチルメタクリレート)とポリ(塩化ビニル)との混合物、
・ポリ(エチレンオキシド)とポリ(メチルメタクリレート)との混合物、
・ポリ(スチレン)とポリ(ビニルメチルエーテル)との混合物及び
・ポリ(バレロラクトン)とポリ(酢酸ビニル−co−塩化ビニリデン)との混合物。
【0075】
水分散性のフィルム生成は、通常、以下のものを含む群から選択される。
−通常は分散液中にある、スチレンブタジエンコポリマー、
−通常は分散液中にある、変性スチレンブタジエンコポリマー、
−通常は分散液中にある、スチレン/アクリレートコポリマー、
−通常は分散液中にある、カルボキシル化されたポリスチレン、
−通常はエマルジョン中にある、アクリル/ポリアクリルポリマー、
−ポリ酢酸ビニル、
−ポリビニルアルコール、
−ポリ酢酸ビニル−エチレン、
−ポリビニルアクリレート、
−大豆タンパク質重合体、
−通常は分散液中にある、トウモロコシ製ゼイン(タンパク質)又はデンプン、
−変性プロピレン系分散剤であるポリオレフィン分散剤、
−エステルガム分散剤及び
−ポリ塩化ビニリデン。
【0076】
本発明は、耐水性、耐グリース性及び耐油性、並びに防湿性をもたらし、ワックス代替処理剤やフレキシブル包装の上塗りとして使用可能な、凝集性の連続フィルムを、熱エネルギーを必要とせずに、超速硬速度で生成することを可能にする新規な組成物に関する。熱エネルギーを加える必要性がないことは、産業的、商業的、プラント製造及び経済的観点から劇的な利点を有する。ワックスが存在しなくても耐水性、耐グリース性及び耐油性、並びに防湿性を備える凝集性の連続フィルムを与え得ることには、劇的な環境上の意味があるばかりでなく、石油系製品の変動しやすいコストを考えると経済面においても劇的な考慮が払われるのである。
【0077】
用語、熱エネルギーが存在しない、又は熱エネルギーを加える必要性がないとは、ヒーター、オーブン、又は他の直接的加熱装置が本発明のフィルム生成プロセスに必要とされないことを意味することを意図している。本プロセスは、直接の加熱なしで生じる。別段指定しない限り、このフィルム生成プロセスは、約0から50℃、典型的には約10から45℃、例えば15から40℃の温度、典型的には15から35℃の周囲温度で生じる。
【0078】
触媒組成物は、水性ポリマー組成物が熱を加えずに第1の、大きい速度(first rate)でフィルムを生成できるようにする。触媒組成物は、水性ポリマー組成物が熱を加えずに、表面に組成物を塗布してから1分未満でフィルムを生成できるようにする。触媒組成物は、水性ポリマー組成物が熱を加えずに、またワックスを使用せずにフィルムを生成できるようにする。ワックスを含まない組成物(wax free composition)、ワックスがない(free of wax)、ワックスなしで(without wax)の用語は、ポリマー組成物及び0.1%未満のワックス、典型的には0%のワックスを有する、結果として得られるフィルムを意味することを意図している。
【0079】
本発明のフィルム生成用ポリマー組成物は、水素化ロジンのグリセロールエステルの水分散液等の粘着付与樹脂を任意により含むことができる。
【0080】
本発明のフィルム生成用ポリマー組成物は、層状に剥離された粘土、カオリン、マイカ、タルク又は混合物、ケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミニウム水和物及びこれらの混合物からなる群から選択される充填剤を任意により含むことができる。
【0081】
本発明のフィルム生成用ポリマー組成物は、内部サイジング剤、例えばアルキルケトンダイマー(AKD)及び/又はアルキル無水コハク酸(ASA)を任意により含むことができる。
【0082】
本発明のフィルム生成用ポリマー組成物は、分散剤、増粘剤、消泡剤、スリップ剤、滑り止め剤、レオロジー調整剤、顔料、サセプタ材料、架橋剤、触媒、難燃剤、バイオサイド及び湿潤剤を任意により含むことができる。
【0083】
顔料をフィルム生成用組成物に添加して、コーティングされた基体又はシート材料の表面に所望の外観を与えることができる。例えば、コーティングされたシート材料の、食品が接触する表面は白色であることが望ましい場合がある。茶色のクラフト紙を基体シート材料として使用する場合、二酸化チタンをバリアコーティング組成物に添加して該組成物を白色にし、バリアコーティング組成物を塗布した際にシート材料の、食品が接触する表面を白色にすることができる。DuPont製の二酸化チタン顔料、TI−PURE(登録商標)900等の顔料は、バリアコーティングに好適な顔料である。バリアコーティング組成物の性能を著しく劣化しない限り、その他の顔料又は分散剤も好適となり得る。
【0084】
分散剤をフィルム生成用組成物に添加して、塗布前の組成物中の充填剤及び顔料粒子を包含する任意の成分の分散及び懸濁を助長し、懸濁液を安定化することができる。様々な分散剤のうち任意のものを使うことができる。例えば、ピロリン酸四ナトリウム(「TSPP」)及びヘキサメタリン酸ナトリウム等の分散剤は、この目的に適している。少量の細かい金属粉末若しくはフレーク、例えばアルミニウム粉末若しくはフレークをバリアコーティング組成物又は剥離性コーティング組成物にサセプタ材料として添加することが望ましい場合がある。
【0085】
急速乾燥するフィルム生成用バリアコーティング組成物は、好適には、全量100%に対して重量%で以下のものを含む。
−ステアリン酸カルシウム、アルミニウム、亜鉛の分散液:5〜55%、好ましくは17〜27%
−金属イオンのC11〜C18脂肪酸錯体(Quilon L、C、又はS):0.2〜7.5%、好ましくは1〜3%
−ポリマー又は混合物の分散液:25〜80%、好ましくは80〜50%
−充填剤(粉末又はスラリー分散液):0〜30%
−添加剤:0〜5%、好ましくは0〜3%
【0086】
本発明のフィルム生成用組成物は、熱エネルギーを加える必要なしに、溶液、分散液、エマルジョン、懸濁液の形態、又は無溶媒の形態で、フィルムを生成するために材料の表面に適用される。前記材料は、セルロース系、金属製、繊維、セメント、砂、石、又はガラスであってもよい。セルロース系材料としては、板紙、クラフト紙を包含するあらゆる紙、カード、木材が挙げられる。数多くの使用のうちのいくつかとして挙げられるのは、冷凍食品、食品包装、ベーキング用の紙、段ボール板紙、段ボール箱、例えばファストフードの直営店等のハンバーガーやサンドイッチ等の消耗品及び非消耗品用の包装材料における使用である。各々が本発明のフィルム生成用組成物から調製されるフィルムを含む、平鍋、深鍋及びベーキングトレイ等の金属製表面も想定される。各々が本発明のフィルム生成用組成物から調製されるフィルムを含む、家具や木製建築材料も想定される。各々が本発明のフィルム生成用組成物から調製されるフィルムを含む、セメント、屋外タイル及び舗装材料等も想定される。
【0087】
前記成分ii)、即ちポリビニルアルコール及び/又は金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体の使用は好ましいが、許容可能なフィルム生成用組成物が本発明としてのi)及び前記成分iii)によって提供されることが見出されている。特に成分i)が比較的高い濃度にある場合である。典型的には、これらの組成物は全量100%に対して成分i)を20〜40重量%を含有し、成分iii)を80〜60重量%含有する。

【0088】
上述の新規な組成物を説明するために、以下の例を提供して本発明の好ましい態様をさらに与える。前記新規な水性バリアコーティング組成物につき、全量100%に対して重量%単位で表す。
【0089】
(例1)
Devflo 50C:18.0%
Quilon C:2.0%
Styronal 4606X:80.0% (スチレン−ブタジエンの水分散液の商標)
【0090】
(例2)
Devflo 50C:17.5%
Quilon C:2.5%
Styronal 4606X:40.0%
Acronal S728:40.0% (スチレン n−ブチルアクリレートの水分散液の商標)
【0091】
(例3)
Devflo 50C:17.5%
Quilon C:2.5%
Styronal 4606X:50.0%
Alsibronz 39:10.0%
Polyplate P:10.0%
Polygloss 90:19.6%
Tamol 850:0.2% (ナフタレンスルホン酸縮合物の商標)
Defoamer colloid 963:0.2%
【0092】
(例4)
Devflo 50LPH:18.0%
Quilon C:2.0%
Styronal 4606X:80.0%
【0093】
(例5)
Devflo 50LPH:17.5%
Quilon C:2.5%
Styronal 4606X:40.0%
Acronal S728:40.0%
【0094】
(例6)
Devflo 50LPH:17.5%
Quilon C:2.5%
Styronal 4606X:50.0%
Alsibronz 39:10.0%
Polyplate P:10.0%
Polygloss 90:19.6%
Tamol 850:0.2%
Defoamer colloid 963:0.2%
【0095】
(例7)
Devflo 40RZl:18.0%
Quilon C:2.0%
Styronal 4606X:80.0%
【0096】
(例8)
Quilon C: 7.2から0.2%
PVOH(10%水溶液) 16.8から1.8%
Devflo 50C(ステアレート分散液) 36.0から18.0%
Styronal 4606X(ポリマー又はコポリマーの分散液) 40.0から80.0%
【0097】
(例9)
PVOH(10重量%水溶液) 6.0から10.0%
Devflo 50C(ステアレート) 54.0から10.0%
Styronal 4606X(ポリマー又はコポリマーの分散液) 40.0から80.0%
【0098】
本明細書におけるすべてのパーセンテージは、他に規定されない限り、重量単位である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩およびii)ポリビニルアルコールの、ワックスを含まないコーティング又はフィルムを生成するための使用。
【請求項2】
i)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、ii)ポリビニルアルコール、並びにiii)酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体のワックスを含まないコーティング又はフィルムを生成するための使用。
【請求項3】
i)ミリスチン酸、パルミチン酸及び及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、並びにii)ポリビニルアルコールを含む組成物。
【請求項4】
i)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、ii)ポリビニルアルコール、並びにiii)酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体を含む組成物。
【請求項5】
分散液、エマルジョン、溶液、又は懸濁液の形態の、請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩が、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛からなる群から選択される、請求項3〜5までのいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体が、クロム−C〜C18脂肪酸錯体である、請求項4〜6までのいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
a)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、b)ポリビニルアルコール、並びにc)ポリマー、コポリマー、又はポリマー混合物若しくはコポリマー混合物を含むポリマー組成物を含む組成物。
【請求項9】
d)酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
分散液、エマルジョン、溶液、又は懸濁液の形態の、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項11】
ポリマー組成物が、スチレンブタジエンコポリマー、変性スチレンブタジエンコポリマー、スチレン/アクリレートコポリマー、カルボキシル化ポリスチレン、アクリルポリマー/ポリアクリルポリマー、ポリ酢酸ビニル;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル−エチレン、ポリビニルアクリレート;大豆タンパクポリマー;トウモロコシ・ゼイン(タンパク質)、デンプン、変性プロピレン系分散液としてのポリオレフィン分散液;及びポリ塩化ビニリデンからなる群から選択されるポリマー、コポリマー、又はポリマー混合物若しくはコポリマー混合物を含む、請求項8〜10までのいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
a)を20〜40重量%並びにb)及びc)を80〜60重量%含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
I.a)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、b)ポリビニルアルコール、並びにc)ポリマー、コポリマー、又はポリマー混合物若しくはコポリマー混合物を含むポリマー組成物を合わせるステップと、
II.50℃未満の温度で材料上にフィルムを生成させるステップと
を含む、水、水蒸気、油及びグリースに対する耐性を材料に与える方法。
【請求項14】
ステップI)が、a)、b)及びc)をd)酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体と合わせるステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップI)において、a)が20〜40重量%含まれ、b)及びc)が80〜60重量%含まれる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
a)における塩がステアリン酸カルシウムである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
a)対b)の比が5:1〜20:1である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
a)i)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、ii)ポリビニルアルコール及び酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体、並びにiii)ポリマー、コポリマー、又はポリマー混合物若しくはコポリマー混合物を含むポリマー組成物を合わせるステップと、
b)熱エネルギー又はマイクロ波エネルギーを加えずに、フィルムを生成させるステップと
を含む、水、水蒸気、油及びグリースに対する耐性を材料に与える方法。
【請求項19】
酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体をi)、ii)及びiii)と合わせる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
a)ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のうちの1種又は2種以上の塩、b)ポリビニルアルコール、並びにc)ポリマー、コポリマー、又はポリマー混合物若しくはコポリマー混合物を含むポリマー組成物を含むフィルム生成用組成物で表面をコーティングし、50℃未満の温度でフィルムコーティングを生成させることによって生成される、フィルムコーティングを有する表面を持つ基体を含む材料。
【請求項21】
フィルム生成用組成物が、d)酸化状態が少なくとも3の金属イオンのC〜C18脂肪酸錯体をさらに含む、請求項20に記載の材料。
【請求項22】
フィルム生成用組成物が、a)を20〜40重量%並びにb)及びc)を80〜60重量%含む、請求項20に記載の材料。
【請求項23】
基体がセルロース系材料、金属系材料、ガラス系材料、繊維系材料、コンクリート材料、木材及び建材から選択される、請求項20〜22までのいずれかに記載の材料。

【公表番号】特表2012−528900(P2012−528900A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513424(P2012−513424)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000847
【国際公開番号】WO2010/139070
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(511294176)レテック エフ3 テクノロジーズ、エスイーシー (1)
【Fターム(参考)】