説明

高電圧発生回路、イオン発生装置及び静電霧化装置

【課題】ブレークオーバー電流と保持電流とが同等の値を有するスイッチング素子の場合でも、安定したスイッチング動作を確保することができる高電圧発生回路、イオン発生装置及び静電霧化装置を提供する。
【解決手段】スイッチング部14と昇圧部17との間に、昇圧部17とは結合していないインダクタンス23を接続する。インダクタンス23は、スイッチング素子15がターンオンしたとき、スイッチング素子15に逆起電力の誘起電圧Vkを発生する。このため、ブレークオーバー電流が保持電流と同等の値をとるスイッチング素子15を使用したとき、スイッチング素子15の確実なターンオフを狙って充電電流Irを保持電流以上に設定しても、ターンオン時には、スイッチング素子15の負荷電流Isが保持電流を下回る。よって、スイッチング素子15が確実にターンオフに移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極等に高電圧を印加する高電圧発生回路、イオン発生装置及び静電霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家電製品の分野では、イオン粒子を空気中に放出可能なイオン発生装置や、ナノメータサイズの帯電微粒子水を空気中に放出可能な静電霧化装置等が広く普及してきている。これら装置は、放電電極に高電圧を印加することにより、イオン発生装置の場合はイオン粒子を、静電霧化装置の場合は帯電微粒子水を、それぞれ空気中に放出する。
【0003】
この種のイオン発生装置や霧化静電装置には、図7に示すような高電圧発生回路81(例えば特許文献1等参照)が設けられている。高電圧発生回路81には、電源部82から出力された直流電力を充電可能な充電部83が設けられている。充電部83は、抵抗84及びコンデンサ85の直列回路からなる。抵抗84及びコンデンサ85の中間端子と、電源部82の−端子との間には、充電部83の電圧によりスイッチング状態が切り換わるスイッチング部86が接続されている。スイッチング部86は、スイッチング素子87及びダイオード88の直列回路からなる。
【0004】
充電部83のコンデンサ85とスイッチング部86のダイオード88との間には、1次側の電圧を昇圧する昇圧部89が接続されている。昇圧部89の2次側には、昇圧部89から出力された2次電圧を整流する整流部90が接続されている。整流部90は、ダイオード91及びコンデンサ92の回路からなる。整流部90には、整流後の高電圧が印加される高電圧出力部93が接続されている。高電圧出力部93は、いわゆる放電電極であり、高電圧が印加されると、イオン粒子や帯電微粒子水を発生する。
【0005】
ここで、電源部82から直流電圧が充電部83に供給されると、抵抗84に流れる充電電流I1によって、充電部83のコンデンサ85が充電される。このとき、図8に示すスイッチング素子87の特性波形図のように、コンデンサ85の充電電圧V1が所定電圧、つまりスイッチング素子87のブレークオーバー電圧に達すると、スイッチング素子87がターンオンして導通状態となる。よって、コンデンサ85に充電された電荷が放電され、昇圧部89の1次側に電圧が印加される。
【0006】
スイッチング素子87がターンオンすると、コンデンサ85から出力された放電電流I2が昇圧部89の1次側を通り、これがスイッチング素子87の負荷電流I3となって流れる。なお、スイッチング素子87の負荷電流I3は、抵抗84による充電電流I1と、コンデンサ85からの放電電流I2とを合わせた電流となっている。このとき、コンデンサ85の放電によるパルス電圧が昇圧部89の1次側にかかり、昇圧部89の2次側からインパルス状の高電圧が出力される。
【0007】
整流部90にインパルス状の高電圧が入力されると、この高電圧がダイオード91及びコンデンサ92によって順電圧の期間に整流され、正の直流高電圧を高電圧出力部93に出力される。高電圧出力部93に直流高電圧が印加されると、放電電極にてコロナ放電が発生し、放電電極からイオン粒子や帯電微粒子水が発生する。
【0008】
ところで、特許文献1には、微粒子発生量を多くするために、充電電流I1を一定にする技術思想が開示されている。また、オンしたスイッチング素子87をより確実にオフするために、一定の充電電流I1をスイッチング素子87の保持電流以下に設定する技術思想も開示されている。よって、オフ動作時、コンデンサ85からの放電電流I2が「0」になれば、スイッチング素子87に流れる電流は充電電流I1のみになるので、スイッチング素子87は必ずターンオフされ、安定したスイッチング動作が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−18905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、スイッチング素子87には、図8に示すようなブレークオーバー電流が保持電流よりも小さい特性を有する種類(スイッチング素子87a)の他に、図9に示すようなブレークオーバー電流が保持電流と同等の値をとる種類(スイッチング素子87b)も存在する。なお、スイッチング素子87aは、ブレークオーバー電流が低い型の種類である。一方、スイッチング素子87bは、ブレークオーバー電流が高い型の種類である。
【0011】
特許文献1の技術思想は、スイッチング素子87aの場合、充電電圧V1がブレークオーバー電圧に達したとき、回路に流れる電流(充電電流I1)はブレークオーバー電流を超えてスイッチング素子87aがオンするので、問題なく有効である。一方、スイッチング素子87bの場合は、充電電流I1を保持電流以下に設定すると、充電電圧V1がブレークオーバー電圧に達しても、そのときに回路に流れる電流(充電電流I1)がブレークオーバー電流に達しないため、スイッチング素子87bがオン状態に移行できず、高電圧を出力できない問題が発生する可能性があった。
【0012】
これを解決する一例としては、スイッチング素子87bにおいて、充電電流I1を保持電流以上に設定し、オフ動作時、昇圧トランスのリーケージインダクタンスによる誘起電圧を利用して、スイッチング素子87bの負荷電流I3を保持電流以下にする方法が想定される。しかし、高電圧発生回路81を安価かつ小型にするには、昇圧トランスを効率のよいものとする必要があり、こうなると逆にリーケージインダクタンスが期待できなくなるので、トレードオフの関係から採用には不向きである。
【0013】
また、特許文献1の技術思想は、安定したオフ動作の確保のために充電電流I1を保持電流以下に設定しているが、こうすると充電部83のコンデンサ85を充電するのに時間がかかってしまう。このため、特許文献1の技術思想では、スイッチング素子87bの発振周波数を高くすることができず、2次側の出力電圧を所望の高電圧まで高めることができない問題もあった。
【0014】
本発明の目的は、ブレークオーバー電流と保持電流とが同等の値を有するスイッチング素子の場合でも、安定したスイッチング動作を確保することができる高電圧発生回路、イオン発生装置及び静電霧化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記問題点を解決するために、本発明では、電源部から取得した直流電圧を充電部にて充電し、この充電電圧がスイッチング素子のブレークオーバー電圧に達すると該スイッチング素子がターンオンし、前記スイッチング素子に流れる電流が保持電流より低い値になると該スイッチング素子がターンオフし、前記スイッチング素子がこのオンオフを繰り返すことにより生成したパルス状の電圧を、昇圧部にて昇圧して出力する高電圧発生回路において、前記ターンオン時に前記スイッチング素子に流れる電流を該スイッチング素子から抜くことにより、前記スイッチング素子のターンオフの動作を確保する安定化部を備えたことを要旨とする。
【0016】
本発明では、前記安定化部は、前記昇圧部の昇圧に関係しないインダクタンスであることを要旨とする。
本発明では、前記安定化部は、前記ターンオン時、前記スイッチング素子に接続されたスイッチング部材をオンさせることにより、前記スイッチング素子に流れる電流を別経路に流して抜くスイッチング回路であることを要旨とする。
【0017】
本発明では、前記スイッチング回路には、抵抗及びコンデンサが設けられ、当該抵抗及びコンデンサのCR時定数によって、前記スイッチング素子から抜く電流値が設定可能となっていることを要旨とする。
【0018】
本発明では、電源部から取得した直流電圧を充電部にて充電し、この充電電圧が高電圧発生回路のスイッチング素子のブレークオーバー電圧に達すると該スイッチング素子がターンオンし、前記スイッチング素子に流れる電流が保持電流より低い値になると該スイッチング素子がターンオフし、前記スイッチング素子がこのオンオフを繰り返すことにより生成したパルス状の電圧を、昇圧部にて昇圧し、昇圧後の高電圧を放電電極に印加して、当該放電電極からイオン粒子を放出するイオン発生装置において、前記高電圧発生回路は、前記ターンオン時に前記スイッチング素子に流れる電流を該スイッチング素子から抜くことにより、前記スイッチング素子のターンオフの動作を確保する安定化部を備えたことを要旨とする。
【0019】
本発明では、電源部から取得した直流電圧を充電部にて充電し、この充電電圧が高電圧発生回路のスイッチング素子のブレークオーバー電圧に達すると該スイッチング素子がターンオンし、前記スイッチング素子に流れる電流が保持電流より低い値になると該スイッチング素子がターンオフし、前記スイッチング素子がこのオンオフを繰り返すことにより生成したパルス状の電圧を、昇圧部にて昇圧し、昇圧後の高電圧を放電電極及び対向電極の間に印加して、当該放電電極に発生した帯電微粒子水を前記対向電極から放出する静電霧化装置において、前記高電圧発生回路は、前記ターンオン時に前記スイッチング素子に流れる電流を該スイッチング素子から抜くことにより、前記スイッチング素子のターンオフの動作を確保する安定化部を備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ブレークオーバー電流と保持電流とが同等の値を有するスイッチング素子の場合でも、安定したスイッチング動作を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態の静電霧化装置のブロック図。
【図2】高電圧発生回路の回路図。
【図3】高電圧発生回路の概略構成を示すブロック図。
【図4】第2実施形態の高電圧発生回路の回路図。
【図5】別例のイオン発生装置の概略を示す構成図。
【図6】他の別例の静電霧化装置のブロック図。
【図7】従来の高電圧発生回路の回路図。
【図8】ブレークオーバー電流が保持電流よりも小さい特性を有するスイッチング素子の特性波形図。
【図9】ブレークオーバー電流が保持電流と同等の値をとるスイッチング素子の特性波形図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した高電圧発生回路、イオン発生装置及び静電霧化装置の第1実施形態を図1〜図3に従って説明する。
【0023】
図1に示すように、静電霧化装置1には、電源2から電源電力を入力する電源回路3が設けられている。電源回路3には、静電霧化装置1のコントロールユニットであるマイクロコンピュータ4が接続されている。マイクロコンピュータ4は、ペルチェ用電源回路5を介してペルチェユニット6の放電電極7に接続されている。ペルチェユニット6には、放電電極7の向かい側に対向電極8が設けられている。
【0024】
静電霧化装置1には、放電電極7に高電圧を出力する高電圧発生回路9が設けられている。高電圧発生回路9は、入力側が電源回路3に接続されるとともに、出力側が放電電極7に接続されている。高電圧発生回路9は、電源回路3から取得した電圧を直流の高電圧(例えば数1000kV)に変換し、この直流高電圧を放電電極7に出力する。
【0025】
放電電極7がマイクロコンピュータ4によってペルチェ方式により冷却されると、放電電極7の表面に水分が付着する。この状態で高電圧発生回路9から放電電極7に高電圧が印加されると、放電電極7にはマイナスに帯電した水が付着するとともに、放電電極7と対向電極8との間に、放電電極7に付着した水を吸引する力が発生する。そして、放電電極7に付着した水の吸引力と重力とのバランスが臨界点に達すると、放電電極7に付着した水が分裂をし始め、最終的にミスト状の帯電微粒子水となって外部に放出される。
【0026】
図2及び図3に示すように、高電圧発生回路9には、電源部10から出力された直流電力を充電可能な充電部11が設けられている。電源部10は、電源2及び電源回路3によって構成される電源部分である。充電部11は、抵抗12及びコンデンサ13の直列回路からなる。充電部11は、電源部10から直流電力が供給されたとき、抵抗12に流れる充電電流Irにてコンデンサ13を蓄電する。また、電源部10は、電源回路3において高電圧発生回路9に電力供給を行う部分のことを言う。
【0027】
抵抗12及びコンデンサ13の中間端子と、電源部10の−端子との間には、充電部11の電圧によりスイッチング状態が切り換わるスイッチング部14が接続されている。スイッチング部14は、スイッチング素子15及びダイオード16の直列回路からなり、充電部11のコンデンサ13の電圧によりスイッチング素子15のオンオフが切り換わる。スイッチング素子15は、例えばサイリスタやサイダック等からなる。スイッチング素子15は、自身にかかる電圧がブレークオーバー電圧に達すると、ターンオンして導通状態となる。また、ターンオンしたスイッチング素子15は、自身に流れる負荷電流Isが保持電流以下になると、ターンオフする。
【0028】
本例のスイッチング素子15は、背景技術の図9に示すような、ブレークオーバー電流と保持電流とが同等の値を有する特性を持つ種類が使用されている。また、スイッチング素子15の確実なターンオンを確保するために、抵抗12の充電電流Irは、スイッチング素子15の保持電流以上に設定されている。抵抗12の充電電流Irをスイッチング素子15の保持電流以上にする設定は、例えば抵抗12を低い値とすることにより行う。
【0029】
充電部11のコンデンサ13とスイッチング部14のダイオード16との間には、1次側の電圧を昇圧する昇圧部17が接続されている。昇圧部17には、昇圧トランスが使用されている。昇圧部17は、スイッチング部14がオンするタイミングで発生する1次電圧を、所定電圧に昇圧して2次側に出力する。
【0030】
昇圧部17の2次側には、昇圧部17から出力された2次電圧を直流に整流する整流部18が接続されている。整流部18は、ダイオード19及びコンデンサ20の回路からなる。整流部18は、整流後の直流の高電圧を高電圧出力部21、つまり放電電極7に印加する。
【0031】
スイッチング部14のダイオード16と昇圧部17の1次側との間には、スイッチング部14のオフ動作を安定に実行させる安定化部22が設けられている。安定化部22は、充電部11のコンデンサ13と、スイッチング部14と、昇圧部17の1次側とに対し、直列に接続されている。安定化部22は、昇圧部17に対して結合のない、つまり昇圧に関係しないインダクタンス23からなる。インダクタンス23の誘起電圧Vkは、スイッチング素子15にかかる電圧に対して負電圧となっている。
【0032】
次に、本例の高電圧発生回路9の動作を、図2を用いて説明する。
電源部10から充電部11に直流電力が供給されると、抵抗12に流れる充電電流Irによってコンデンサ13が充電される。そして、コンデンサ13の充電電圧Vcが所定電圧、つまりスイッチング素子15のブレークオーバー電圧に達すると、スイッチング素子15がターンオンして導通状態となる。これにより、コンデンサ13に充電された電荷が昇圧部17の1次側に放電される。
【0033】
スイッチング素子15がターンオンすると、コンデンサ13の放電電流Icが負荷電流Isの一部となって、昇圧部17の1次側と、結合のないインダクタンス23とに流れる。なお、スイッチング素子15の負荷電流Isは、抵抗12による充電電流Irと、コンデンサ13からの放電電流Icとを合わせた電流となっている。コンデンサ13が放電したとき、昇圧部17の1次側には電圧がかかり、この電圧が昇圧部17によって昇圧されて、昇圧部17の2次側から高電圧が出力される。
【0034】
また、コンデンサ13の放電によるパルス電圧は、結合のないインダクタンス23にかかるため、インダクタンス23には、逆起電力として誘起電圧Vkが発生する。このため、スイッチング素子15がターンオンしてから暫くすると、スイッチング素子15の負荷電流Isが保持電流以下となり、スイッチング素子15がターンオフする。
【0035】
そして、コンデンサ13の充電電圧Vcがスイッチング素子15のブレークオーバー電圧に達することによるスイッチング素子15のターンオンと、スイッチング素子15の負荷電流Isが保持電流以下になることによるスイッチング素子15のターンオフとが繰り返し実行される。このため、昇圧部17の1次側に矩形波のパルス電圧がかかり、昇圧部17の2次側からは、インパルス状の高電圧が出力される。インパルス状とは、波形が急激に最高値まで上昇し、そこから緩やかに下降する波形形状のことを言う。
【0036】
整流部18は、昇圧部17の2次側から出力されたインパルス状の高電圧を、ダイオード19及びコンデンサ20により順電圧の期間のみ整流し、正の直流高電圧を高電圧出力部21に出力する。正の直流高電圧が高電圧出力部21の放電電極7に印加されると、放電電極7においてコロナ放電が発生し、これにより放電電極7から帯電微粒子水が発生する。
【0037】
以上により、本例においては、充電電流Irを保持電流以上に設定したので、スイッチング素子15が図9に示す特性を持つ型の種類であっても、スイッチング素子15の確実なターンオンが確保される。また、ターンオン時には、結合のないインダクタンス23によりスイッチング素子15に逆起電力(負電圧)がかけられて、スイッチング素子15から電流が抜かれる。よって、スイッチング素子15の確実なターンオンを狙って充電電流Irを保持電流以上に設定しても、結合のないインダクタンス23の逆起電力にてスイッチング素子15の負荷電流Isが保持電流を下回るので、スイッチング素子15のターンオフも確保される。従って、スイッチング素子15のターンオン及びターンオフの両方の動作が確保されるので、スイッチング素子15の安定したオンオフ動作を確保することが可能となる。
【0038】
また、スイッチング素子15の負荷電流Isを、結合のないインダクタンス23によって抜くことが可能となれば、充電電流Irを高くしてもスイッチング素子15のターンオフは確保されるので、充電電流Irを高く設定することは何ら問題ない。よって、充電電流Irを高くできれば、その分だけ高電圧発生回路9の発振周波数を高くすることも可能となる。従って、高電圧発生回路9から出力される電圧値を、所望の高電圧まで高く設定することが可能となる。
【0039】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)高電圧発生回路9に安定化部22を設けたので、ブレークオーバー電流と保持電流とが同等の値を有するスイッチング素子15の場合でも、スイッチング素子15の安定したオンオフ動作を確保することができる。また、高電圧発生回路9の発振周波数を高くすることも可能となるので、所望の高電圧を得ることもできる。
【0040】
(2)安定化部22としてインダクタンス23を使用するので、安定化部22を安価に済ませることができる。また、安定化部22の構成を、インダクタンス23を設けるだけという簡素な構成で済ますこともできる。
【0041】
(3)安定化部22をインダクタンス23とすれば、インダクタンス23は配置場所を問わないので、例えばインダクタンス23を高電圧発生回路9のみならず、昇圧部17に組み込むことも可能となる。よって、安定化部22の配置自由度が増すことになる。また、インダクタンス23(安定化部22)は、パターン巻線によって部品を省略することもできる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図4に従って説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態に記載の安定化部22の構成を変更したのみの実施例である。よって、第1実施形態と同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0043】
図4に示すように、本例の安定化部22は、スイッチング素子15の負荷電流Isを、別のスイッチング素子にて抜くスイッチング回路50からなる。本例のスイッチング回路50は、スイッチング素子15のターンオン時、充電電流Irを別経路に流すことにより、スイッチング素子15に流れる負荷電流Isを抜いて、負荷電流Isを保持電流よりも低い値、つまりスイッチング素子15をターンオフさせる構成となっている。
【0044】
以下説明すると、充電部11の抵抗12と、電源部10の−端子との間には、抵抗51、トランジスタ52及び抵抗53の直列回路が接続されている。トランジスタ52は、コレクタ端子が抵抗51を介して抵抗12及びコンデンサ13の中間端子に接続され、エミッタ端子が抵抗53を介してグランドに接地されている。また、トランジスタ52のベース端子は、抵抗54を介してスイッチング素子15及びダイオード16の中間端子に接続されている。トランジスタ52のベース端子及び抵抗54の中間端子とグランドとの間には、コンデンサ55が接続されている。なお、トランジスタ52がスイッチング部材に相当する。
【0045】
ここで、スイッチング素子15がターンオンし、抵抗12の充電電流Irとコンデンサ13からの放電電流Icとがスイッチング素子15の負荷電流Isとなって昇圧部17の1次側に流れたとする。このとき、スイッチング部14のダイオード16において順方向電圧が発生し、抵抗54に電流が流れ、コンデンサ55が充電される。
【0046】
コンデンサ55の充電時、コンデンサ55の充電電圧Vrが所定電圧、つまりベース−エミッタ電圧に達すると、トランジスタ52のコレクタ−エミッタ間が導通状態となる。このため、充電部11の抵抗12を流れる電流は、スイッチング素子15とトランジスタ52とに分流され、結果、スイッチング素子15の負荷電流Isが保持電流を下回り、スイッチング素子15がターンオフする。
【0047】
スイッチング素子15がターンオフすると、コンデンサ55の充電電圧Vrが徐々に低下していく。このとき、コンデンサ55の充電電圧Vrがベース−エミッタ電圧以下となると、トランジスタ52のコレクタ−エミッタ間が遮断され、抵抗12による充電電流Irにてコンデンサ13が再充電される。
【0048】
この後は、コンデンサ13の充電、スイッチング素子15のターンオン、トランジスタ52のオン、スイッチング素子15のターンオフ、トランジスタ52のオフという一連の動作が繰り返し実行される。これにより、昇圧部17の1次側に矩形波のパルス電圧がかかり、昇圧部17の2次側からは、インパルス状の高電圧が出力される。よって、高電圧発生回路9から直流高電圧が放電電極7に印加され、放電電極7から帯電微粒子水が放出される。
【0049】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1)に加え、以下の効果を得ることができる。
(4)安定化部22をトランジスタ、抵抗及びコンデンサの汎用デバイスからなるスイッチング回路50としたので、安定化部22の構成を安価に済ませることができる。
【0050】
(5)抵抗54及びコンデンサ55のCR時定数を調整すれば、ターンオン時にスイッチング素子15から抜く電流量を適宜調整することができる。よって、高電圧発生回路9の発振周波数を高くするために充電電流Irを高めに設定しても、抵抗54及びコンデンサ55のCR時定数を調整することにより、スイッチング素子15の確実なターンオフが確保される。よって、スイッチング素子15のオンオフ動作の確保と、発振周波数を高くすることによる所望の高電圧確保とを両立することができる。
【0051】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・第1及び第2実施形態において、図5に示すように、本例の高電圧発生回路9をイオン発生装置61に採用してもよい。イオン発生装置61は、高電圧発生回路9から高電圧を放電電極7に印加することにより、放電電極7からイオン粒子を発生するものである。
【0052】
・第1及び第2実施形態において、図6に示すように、高電圧発生回路9から出力される高電圧を対向電極8に印加して、2極間に電位差を持たせるものでもよい。
・第1及び第2実施形態において、放電電極7(対向電極8)は複数設けられていてもよい。
【0053】
・第1及び第2実施形態において、スイッチング素子15は、ブレークオーバー電流と保持電流とがほぼ同じ値をとるものであれば、素子種類は特に限定されない。
・第1及び第2実施形態において、高電圧発生回路9の電源2は、直流電源に限定されず、例えば商用の交流電源を直流に整流して、これを電源としてもよい。
【0054】
・第1及び第2実施形態において、昇圧部17は、トランス以外の部材を使用してもよい。
・第1及び第2実施形態において、安定化部は、第1実施形態に示すインダクタンス23や、第2実施形態に示すスイッチング回路50に限定されない。要は、ターンオン時にスイッチング素子15から電流を抜くことができるものであれば、どのようなものを使用してもよい。
【0055】
・第1実施形態において、昇圧部17に結合されないインダクタンス23は、昇圧部17に部品として一体に組み込まれているものでもよい。
・第2実施形態において、スイッチング回路50は、実施形態に述べた抵抗51,53,54、トランジスタ52及びコンデンサ55により構成される回路に限定されず、使用するデバイスは適宜変更可能である。
【0056】
・第1及び第2実施形態において、高電圧発生回路9から整流部18を省略して、パルス状の高電圧を出力する回路としてもよい。
・第1及び第2実施形態において、高電圧発生回路9から出力される電圧は、正又は負のどちらでもよい。
【0057】
・第1及び第2実施形態において、高電圧発生回路9は、静電霧化装置1やイオン発生装置61に使用されることに限らず、その他の機器や装置に使用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…静電霧化装置、7…放電電極、8…対向電極、9…高電圧発生回路、10…電源部、11…充電部、15…スイッチング素子、17…昇圧部、18…整流部、22…安定化部、23…インダクタンス、50…スイッチング回路、52…スイッチング部材としてのトランジスタ、54…抵抗、55…コンデンサ、61…イオン発生装置、Vc…充電電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部から取得した直流電圧を充電部にて充電し、この充電電圧がスイッチング素子のブレークオーバー電圧に達すると該スイッチング素子がターンオンし、前記スイッチング素子に流れる電流が保持電流より低い値になると該スイッチング素子がターンオフし、前記スイッチング素子がこのオンオフを繰り返すことにより生成したパルス状の電圧を、昇圧部にて昇圧して出力する高電圧発生回路において、
前記ターンオン時に前記スイッチング素子に流れる電流を該スイッチング素子から抜くことにより、前記スイッチング素子のターンオフの動作を確保する安定化部を備えた
ことを特徴とする高電圧発生回路。
【請求項2】
前記安定化部は、前記昇圧部の昇圧に関係しないインダクタンスである
ことを特徴とする請求項1に記載の高電圧発生回路。
【請求項3】
前記安定化部は、前記ターンオン時、前記スイッチング素子に接続されたスイッチング部材をオンさせることにより、前記スイッチング素子に流れる電流を別経路に流して抜くスイッチング回路である
ことを特徴とする請求項1に記載の高電圧発生回路。
【請求項4】
前記スイッチング回路には、抵抗及びコンデンサが設けられ、当該抵抗及びコンデンサのCR時定数によって、前記スイッチング素子から抜く電流値が設定可能となっている
ことを特徴とする請求項3に記載の高電圧発生回路。
【請求項5】
電源部から取得した直流電圧を充電部にて充電し、この充電電圧が高電圧発生回路のスイッチング素子のブレークオーバー電圧に達すると該スイッチング素子がターンオンし、前記スイッチング素子に流れる電流が保持電流より低い値になると該スイッチング素子がターンオフし、前記スイッチング素子がこのオンオフを繰り返すことにより生成したパルス状の電圧を昇圧部にて昇圧し、昇圧後の高電圧を放電電極に印加して、当該放電電極からイオン粒子を放出するイオン発生装置において、
前記高電圧発生回路は、
前記ターンオン時に前記スイッチング素子に流れる電流を該スイッチング素子から抜くことにより、前記スイッチング素子のターンオフの動作を確保する安定化部を備えた
ことを特徴とするイオン発生装置。
【請求項6】
電源部から取得した直流電圧を充電部にて充電し、この充電電圧が高電圧発生回路のスイッチング素子のブレークオーバー電圧に達すると該スイッチング素子がターンオンし、前記スイッチング素子に流れる電流が保持電流より低い値になると該スイッチング素子がターンオフし、前記スイッチング素子がこのオンオフを繰り返すことにより生成したパルス状の電圧を昇圧部にて昇圧し、昇圧後の高電圧を放電電極及び対向電極の間に印加して、当該放電電極に発生した帯電微粒子水を前記対向電極から放出する静電霧化装置において、
前記高電圧発生回路は、
前記ターンオン時に前記スイッチング素子に流れる電流を該スイッチング素子から抜くことにより、前記スイッチング素子のターンオフの動作を確保する安定化部を備えた
ことを特徴とする静電霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−90417(P2012−90417A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234477(P2010−234477)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】