魚類用抗寄生虫症作用を有する組成物および寄生虫症を予防・治療する方法
【課題】 薬浴による処理を施せない海上生け簀で養殖される魚類について、経口投与可能な抗寄生虫症作用を有する組成物および寄生虫症を予防・治療する方法をを提供する。
【解決手段】 クジン、山豆根の粉砕物または抽出物等のマトリンを含有する魚類用の経口投与可能な寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物である。抽出物としては水及び/又はアルコール抽出物が好ましい。タイ類、ヒラメ類、フグ類等の海産魚類に有効に使用でき、白点虫等の扁形動物、ネオベネデニア等の原生動物等による寄生虫症に有効である。 マトリンを含有する組成物をマトリン換算で魚体重1kg当たり1〜50mg/日、クジン原末換算で魚体重1kg当たり10〜2000mg/日、あるいは山豆根原末換算で魚体重1kg当たり10〜2000mg/日を経口投与する魚類の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法である。
【解決手段】 クジン、山豆根の粉砕物または抽出物等のマトリンを含有する魚類用の経口投与可能な寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物である。抽出物としては水及び/又はアルコール抽出物が好ましい。タイ類、ヒラメ類、フグ類等の海産魚類に有効に使用でき、白点虫等の扁形動物、ネオベネデニア等の原生動物等による寄生虫症に有効である。 マトリンを含有する組成物をマトリン換算で魚体重1kg当たり1〜50mg/日、クジン原末換算で魚体重1kg当たり10〜2000mg/日、あるいは山豆根原末換算で魚体重1kg当たり10〜2000mg/日を経口投与する魚類の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類用の抗寄生虫症作用を有する組成物に関する。詳細には経口投与で効果を有する魚類用の抗寄生虫症作用を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
魚類の養殖業においては、近年種苗生産、飼育技術の向上により各種海産魚の集約的養殖が行われるようになり、ウィルス、細菌、原虫、寄生虫を原因とする感染症による産業的損害が大きくなっている。その中でも寄生虫症の被害が増大しており、その理由として有効な防除法の確立の遅れ等が挙げられる。例えば白点虫症は、西日本を中心にヒラメ・マダイ・トラフグ等の養殖現場において多発し、養殖魚の大量斃死をもたらしており、一つの養殖漁場で年間数億円の被害が発生するケースがある。白点虫症は寄生性原虫の繊毛虫類に属す白点虫Cryptocaryon irritansが魚の鰓や皮膚に寄生することによって生じる。増殖至適温度は18〜30℃である。白点虫の感染はマダイ、トラフグ、カンパチ、ヒラメなど数多くの海産魚で認められている。
【0003】
海面生簀で発生した場合の対処法は白点虫症が発生していない潮通しの良い海域に生簀を移動させることくらいである。この対処により水底シストに起因する感染及び、魚体中に存在する虫体に起因する感染の確立を軽減させることができる。また陸上施設での対処法は、本虫の存在しない水槽への移動を繰り返すことが有効である。すなわち水温25℃付近で本虫は、感染3〜4日で宿主を離脱しシストになること、シストからの孵化幼生の放出には4日以上要することなどを利用し、3日おきに魚を新しい水槽に移すことによって感染の拡大を防ぐことができる。しかしこの方法は多大な労力を必要とする。
特許文献1、2には、有効成分としてクジンが挙げられているが、これらの特許はAeromonas salmonicidaあるいはStreptococcus sp.等の微生物感染に対する効果を示しているものであり、寄生虫に対する効果を示すものではない。特許文献3には、いくつかの生薬に魚類の抗寄生虫作用があることが開示されている。
【0004】
クジン、山豆根は生薬として知られている。
<クジン(苦参、Sophorae Radix)>
基原:マメ科の苦参 Sophora flavescens Ait. (クララ)の根を乾燥したもの。
性味:味は苦、性は寒。(帰経:心・肝・小腸・大腸・胃経)
主成分:アルカロイド;マトリン(matrine)、オキシマトリン(oxymatrine)、sophoranolなど、フラボノイド;xanthohumol,
kurarinone, kuraridin, kuraridinol, kurarinolなどが知られている。
薬理作用:清熱燥湿・去風殺虫、利尿・解熱作用、抗真菌作用、抗トリコモナス作用、血圧降下作用、抗消化性潰瘍作用、中枢抑制作用、ホスフォジエステラーゼ阻害作用、肝障害抑制作用、止血作用、免疫賦活作用、抗面皰作用等が知られている。
薬効:滋養強壮、下痢、小便不利、あせも、水虫、黄疸、疥癬、悪瘡
薬効・用い方:苦参(くじん)は、苦味健胃、強壮、消炎、利尿、下痢止め、鎮痛剤としてや赤痢などの細菌性下痢、血便、腫毒に効き目があり、内蔵を丈夫にして食欲を増進させる効果もあるが、作用の強いアルカロイドのマトリン、オキシマトリンなどを含み、虚弱体質者の場合には副作用が表れる。
苦参6gに、水0.3リットルを加えて煎じ、その煎液を、水虫、あせも、かいせんの場合に塗布する。かやみや炎症性のはれものなどには効き目がある。かいせんには、生の根の汁を塗る。
クララの乾燥した茎葉(けいよう)300グラムに、約5リットルの水を加えて煎じたものは、農作物の害虫や牛馬など動物の皮膚寄生虫の駆除に効果がある。また、乾燥した茎葉を、適当に細かくして用いると、うじ虫の駆除になる。中国では、魚類の寄生虫症用薬浴剤としてクジンが販売されている。
用量:3〜15g。
注意: 全草(茎葉)には、有毒のマトリン、オキシマトリンなどのアルカロイドを含む。マトリンは、大脳を麻痺させて痙攣(けいれん)を起こし、呼吸運動神経麻痺で呼吸が止まり死に至るので、絶対に服用してはいけない。
【0005】
<山豆根>
基原:マメ科の広豆根(Sophora subprostrata)の根を乾燥したもの。
性味:味は苦、性は寒。(帰経:心・肺経)
主成分:マトリン、マトリン-n-オキシド、anagyrine、methylcytisine、genistin、フェノール性物質
薬理作用:清熱利咽、消炎作用、抗腫瘍作用
臨床応用:咽喉や歯鹹の実熱の腫脹疼痛に、玄参・桔梗などを配合している。射干・牛旁子を配合して、たとえば喉痛方を使用してもよい。ただし咽喉の虚火による腫脹疼痛には適していない。ガン(とくに肺ガン・喉頭ガンの初期)に対する補助薬として、白花蛇舌草・魚腥草などを配合して用いる。ただし、治療効果については観察を続ける必要がある。子宮頸部炎や口内炎に、山豆根の粉末を外用すると消炎効果がある。
用量:内服には6〜9g。粉末は2〜6g、外用は適量。
【0006】
【特許文献1】特許第2535555号公報
【特許文献2】特許第2535559号公報
【特許文献3】特許第3366991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
養殖の現場では白点虫等の寄生虫に対して有効な物質が求められていた。本発明は、白点虫等の寄生虫に対し高い抗寄生虫活性を有し、薬剤の副作用や魚への薬剤残留による影響が極めて少ない組成物を提供することを課題とする。すなわち、閉鎖された池や陸上水槽で養殖される魚種と異なり、海上の生け簀における養殖では、周辺環境への影響に配慮する必要性が高く、また、閉鎖されていないから生け簀内の薬浴剤の濃度を長時間維持するということは不可能であり、閉鎖された水中で長時間薬浴することも困難である。したがって、本発明は、海上の生け簀等で養殖される海産魚にも使用できるよう経口投与で有効な組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
副作用や薬物残留による魚、環境への影響が少ない成分を求めて広く天然物質を探索した結果、生薬であるクジンの抽出物に海産魚白点虫に対する優れた防除効果を見いだした。実施例6の試験例に示すようにクジン以外の各種生薬についても抗寄生虫症作用を検討した。いくつかの生薬はin vitroで効果を示したが、経口投与で十分な効果を示したのはクジン、山豆根だけであった。
【0009】
本発明は、下記の(1)〜(7)の寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物を要旨とする。
(1)マトリンを含有する魚類用の経口投与可能な寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
(2)マトリンを含有する組成物がクジン、山豆根の粉砕物または抽出物である(1)の寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
(3)クジンの抽出物が水及び/又は有機溶媒抽出物である(2)の寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
(4)魚類が海産魚類である(1)〜(3)の寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
(5)魚類が分類上スズキ目、フグ目、カレイ目、サケ目、ナマズ目、コイ目に属する魚種である(1)〜(3)いずれかの寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
(6)寄生虫症が原生動物繊毛虫類、又は、扁形動物単生綱に属する寄生虫によるものである(1)〜(5)いずれかの寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
(7)寄生虫症が原生動物繊毛虫類に属する白点虫、ブルークリネラ、キロドネラ、エピスチリス、スクーチカ、トリコジナ、ネオベネデニア、又は、扁形動物単生綱に属するネオベネデニア、ダクチロギルス、シュードダクチロギルス、ミクロコチレ、ビバギナ、ヘテラキシネ、ヘテロボツリウム、ネオヘテロボツリウムによるものである(1)〜(5)いずれかの寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
【0010】
本発明は、下記の(8)〜(16)の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法を要旨とする。
(8)マトリンを含有する組成物を経口投与して魚類の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
(9)マトリン換算で魚体重1kg当たり1〜50mg/日、クジン原末換算で魚体重1kg当たり10〜2000mg/日、あるいは山豆根原末換算で魚体重1kg当たり10〜2000mg/日を経口投与するものである(8)の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
(10)マトリンを含有する組成物を添加した飼料を給餌して魚類の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
(11)飼料が、マトリンを含有する組成物を養魚用飼料にマトリン換算で0.002〜0.1%、クジン原末換算で0.1〜5%、あるいは山豆根原末換算で0.1〜5%添加したものである(10)の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
(12)マトリンを含有する組成物が苦味成分が溶出しにくくなるよう加工されたものである(10)又は(11)の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
(13)マトリンを含有する組成物の苦味成分が溶出しにくくなるための加工がカプセル化、マイクロカプセル化、コーティングされた錠剤化、又は、水不溶性成分と共に粉末化したものである(12)の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
(14)マトリンを含有する組成物がクジン、山豆根の粉砕物または抽出物である(8)〜(13)いずれかの寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
(15)抽出物が水及び/又は有機溶媒抽出物である(14)の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
(16)飼料がモイストペレット、EP(Extruded Pellet)である(10)〜(13)いずれかの寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組成物は生薬として知られているものであるから、ヒト、動物における使用経験がある組成物であり、安全性や環境への影響などの点での心配が少なく使いやすい。魚類に経口投与することにより抗寄生虫症作用を発現するので、薬浴に適さない海産魚等の抗寄生虫症薬として使用できる。本発明の組成物は寄生虫症の感染を抑制する効果とやや弱いが寄生虫を駆除する効果を有し、適切な使用方法により寄生虫症を治癒させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のマトリン(matrine)とは、式1に示す構造を有する化合物である。マメ科クララ (Sophora Flavescens)の根(これを生薬では苦参と呼ぶ)に含まれるアルカロイドで、苦味が強い。
【0013】
【化1】
【0014】
マトリンを含有する生薬としては、苦参、山豆根が知られている。マトリンは水溶性であり、これら生薬から抽出することができる。また、合成品も販売されている。
クジンはマメ科クララ (Sophora Flavescens)の根であり、山豆根はマメ科広豆根(Sophora subprostrata)の根である。本発明において、クジンおよび山豆根は、生、乾燥品、粉砕物、粉末、抽出物等いずれの形態で用いることも可能である。魚に経口投与する際の状況に応じて適宜選択すればよい。安定した効果を得るためには有効成分の含量を一定に保つことができる抽出物を液状、粉末状等にして用いるのがよい。
【0015】
本発明において魚類とは、淡水産魚、海水産魚のいずれも含む。淡水産魚の場合、養殖池、水槽が閉鎖系であることが多く、薬浴の対象になりやすいので、必ずしも本発明の経口投与可能な組成物を使用する必要ない場合もあるが、薬浴よりも経口投与によるメリットがある場合には淡水産魚にも使用できる。本発明の組成物は広い範囲の寄生虫症に効果があると考えられるので、寄生虫症が知られているあらゆる魚類に使用できる。分類上スズキ目、フグ目、カレイ目、サケ目、ナマズ目、コイ目に属する魚種などが例示される。具体的には、スズキ目の魚類では、マダイ(タイ科)、イシダイ(イシダイ科)、イシガキダイ(イシダイ科)、クロダイ(タイ科)、カサゴ(フサカサゴ科)、ティラピア(カワスズメ科)、スズキ(スズキ科)、アカメ(アカメ科)、マハタ(ハタ科)、クエ(ハタ科)、チャイロマルハタ(ハタ科)、キジハタ(ハタ科)、サラサハタ(ハタ科)、アカマダラハタ(ハタ科)、ブリ(アジ科)、カンパチ(アジ科)、ヒラマサ(アジ科)、シマアジ(アジ科)等、フグ目では、トラフグ(フグ科)等が、カレイ目では、ヒラメ(ヒラメ科)、ターボット(スコプタルムス科)等が、サケ目では、ニジマス(サケ科)、ギンザケ(サケ科)、大西洋サケ(サケ科)等が、また、淡水魚では、ナマズ目のアメリカナマズ(イクタルルス科)等、コイ目の金魚(コイ科)、コイ(コイ科)等、スズキ目のディスカス(カワスズメ(シクリッド)科)等が例示される。
【0016】
本発明における寄生虫症とは寄生虫の寄生により発症する魚類の疾病であり、養殖魚における寄生虫症としては、原生動物繊毛虫類に属する白点虫、ブルークリネラ、キロドネラ、エピスチリス、スクーチカ、トリコジナ、ネオベネデニア、又は、扁形動物単生綱に属するネオベネデニア、ダクチロギルス、シュードダクチロギルス、ミクロコチレ、ビバギナ、ヘテラキシネ、ヘテロボツリウム、ネオヘテロボツリウムなどが知られている。本発明の組成物はこれらの寄生虫症に有用である。
本発明において予防及び/又は治療用とは、予防は寄生虫が魚に寄生することを抑制する作用を意味し、治療とは寄生した寄生虫を除去し、治癒させる作用を意味する。
本発明において経口投与とは、本発明の組成物を錠剤、顆粒、カプセルなどの製剤として直接魚に投与すること、あるいは、飼料に添加(原料に混合、液状にして浸漬、コーティングするなど)して飼料と一緒に摂取させるなどを意味する。
【0017】
本発明のマトリンを含有する組成物とは、マトリンを含有する生薬の生または乾燥品の裁断物、粉砕物など、あるいは、水、熱水、アルコール等の有機溶媒などによる抽出物を意味する。マトリンの合成品を使用することも可能であるが、価格が高価である。
クジンにおいて、単に熱水で抽出される成分だけでなく、アルコールにより抽出される成分を併用することにより抗寄生虫症作用が増強されることが示された。マトリンは水溶性であることから、マトリン以外の成分が機能していると考えられる。実施例に示されるように熱水抽出してから、残渣をアルコール抽出しても良いし、水とアルコールの混合溶液により抽出してもよい。例えば、水にエタノールを20〜50%程度加えた混合液で本発明の成分を抽出することができる。上記マトリン以外の成分はアルコールを加えたクロロホルム溶媒にも溶解する。酢酸エチル、アセトン等の極性の高い有機溶媒を抽出溶媒とすることもできる。
【0018】
本発明は、マトリンを含有する組成物を経口投与して魚類の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法である。本発明のマトリンを含有する組成物は、マトリン換算で魚体重1kg当たり1〜50mg/日、クジン原末換算で魚体重1kg当たり10〜2000mg/日、あるいは山豆根原末換算で魚体重1kg当たり10〜2000mg/日を経口投与する。好ましくは、マトリン換算で魚体重1kg当たり3〜15mg/日、クジン原末換算で魚体重1kg当たり30〜500mg/日、あるいは山豆根原末換算で魚体重1kg当たり30〜500mg/日を経口投与する。
寄生虫は寄生虫によってその生活環が異なる。例えば、白点虫の場合、孵化した幼生が宿主(魚)に感染すると鰓や皮膚の上皮組織に袋状の囲いを作ってその中で成長する。25℃では3〜4日間で宿主から離脱し、水中にシストとして浮遊する。25℃では4日から2週間で再び幼生が孵化し、宿主に感染する。したがって、魚についている寄生虫を除いても水中にいるシストからの幼生が再び寄生することになり完全に寄生虫症を治療することにならない。隔離された陸上養殖はともかく、海の生け簀では常に寄生虫症の危険がある。例えば、白点虫の場合、海水温が18℃以上になると感染の危険がある。したがって、本発明の組成物は海水温が18℃以上になる時期継続して使用するのがよい。それが無理な場合でも、感染した場合は上述のような生活環を考慮し、少なくとも1ヶ月以上連続して使用する必要がある。その他の寄生虫症に用いる場合もそれぞれの生活環を考慮してサイクルが一巡する期間以上継続して使用するのが好ましい。
本発明のマトリンを含有する組成物を飼料に添加して摂餌させる場合、その魚種の1日当たりの摂餌量によって、必要なマトリンが摂取されるように飼料中の濃度を調節すればよい。魚種によって体重当たりの摂餌量が異なり、また、成長段階によっても異なるので、適宜調節する必要があるが、通常多くの養殖魚では、1日当たり魚体重の3%程度の量の飼料が与えられる。その場合、マトリンを含有する組成物を養魚用飼料にマトリン換算で0.002〜0.1%、クジン原末換算で0.1〜5%、あるいは山豆根原末換算で0.1〜5%添加する。好ましくは、マトリンを含有する組成物を養魚用飼料にマトリン換算で0.005〜0.05%、クジン原末換算で0.3〜2%、あるいは山豆根原末換算で0.3〜2%添加する。
【0019】
飼料の原料は、通常その魚種用の飼料として使用されているものなら何でもよく、飼料原料により、本発明の効果が影響を受けることはない。モイストペレットの場合、多獲魚等の冷凍品を主原料として、魚粉、糟糠類、ビタミン類、ミネラル類などを添加して成型して製造する。EPの場合、魚粉、糟糠類、ビタミン類、ミネラル類などをエクストルーダ等を用いてペレット状に成型される。本発明のマトリンを含有する組成物はこれら原料に混合してペレットに仕上げることができる。
本発明の組成物は、苦味を有するので、魚種や成長度合いによって摂餌量の減少が認められることがある。その場合、飼料の表面に噴霧するような添加方法よりも、原料に添加してペレットを製造するような、飼料の内側に多く含有させて表面の苦味が少なくなるような添加方法が適している。また、本発明の組成物に苦味がマスクされるような加工を施すのもよい。具体的には、一般に苦味のある薬剤に行われる、カプセル化、マイクロカプセル化、糖衣などの皮膜が施された錠剤化、コーティングされた顆粒化、あるいは、カゼイン、カラギーナン等の水不溶性成分と共に粉末化して水溶性成分が容易に放出されない形態にする等が例示される。いずれにしても魚類は飼料を飲みこむので、飼料の表面から苦味が溶け出しにくい状態にすればよい。
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
<クジン抽出物の調整1>
乾燥クジン粉砕物(ダイセル化成品社製)と熱水を1:10(w/v)の割合で混合し、ディスパーサー(バイオミキサー;日本精機製作所社製)でクジンの成分を溶出させた(30分間)。本抽出液を8000rpm、15分間遠心分離し、上清をミリポアフィルター(0.22μm、ミリポア社製)でろ過して熱水抽出物を得た。また、残った沈殿物にエタノール(和光純薬社製)を1:5(w/v)の割合で混合し、恒温槽で80℃まで加熱してディスパーサーで溶出させた(30分間)。抽出液を8000rpm、15分間遠心分離し、上清をミリポアフィルターでろ過して熱水抽出残渣のエタノール抽出物を得た。
【実施例2】
【0021】
<クジン抽出物の調整2>
乾燥クジン粉砕物(ダイセル化成品社製)と熱水を1:10(w/v)の割合で混合し、100℃に加温した恒温槽内で1時間静置しクジン成分を溶出させた。本抽出液を8000rpm、15分間遠心分離し、上清をミリポアフィルター(0.22μm、ミリポア社製)でろ過してクジン抽出物を得た。
【実施例3】
【0022】
<添加飼料の製造例1>
実施例1で得られたクジン抽出物を用いて固形飼料を製造した。即ち、EP飼料(日本水産株式会社、稚魚用D−1、D−2、マダイ育成用Dシリーズ)1kgに、実施例1で得たクジン熱水抽出物50ml及び熱水抽出残渣のエタノール抽出物25mlを噴霧した後、乾燥機で40℃、5時間かけ乾燥させた。このようにして、原末換算で0.5%含有する固形飼料を得た。
【実施例4】
【0023】
<添加飼料の製造例2>
実施例2で得られたクジン抽出物を用いて固形飼料を製造した。即ち、EP飼料(日本水産株式会社、稚魚用D−1、D−2、マダイ育成用Dシリーズ)1kgに、実施例2で得たクジン抽出物50mlを噴霧した後、乾燥機で40℃、5時間かけ乾燥させた。このようにして、原末換算で0.5%含有する固形飼料を得た。
【実施例5】
【0024】
<クジン抽出物の海産の白点虫に対する効果(in vitro 試験)>
海水1mlに対し実施例1のクジン熱水抽出物1μlを溶解したもの(0.01%溶液に白点虫孵化仔虫を浸漬し、抗白点虫効果を確認した。
浸漬して2時間後に孵化仔虫の死亡数を計測し、効果を判断した。供試した寄生虫は200個体以上とした。浸漬時の水温は20℃、25℃とした。コントロール区は海水のみとした。
この結果、白点虫孵化仔虫はコントロール区では96%以上が生存したのに対し、クジン区では全寄生虫の死亡が確認され、本抽出物が白点虫に対し優れた効果を有することが示された。
【実施例6】
【0025】
<クジン抽出物の海産のネオベネデニアに対する効果(in vitro 試験)>
実施例5と同様の試験を、ネオベネデニア(ハダ虫)の孵化仔虫ならびに幼虫を用いて行った。浸漬して2時間後にネオベネデニアの孵化仔虫は死亡数を、成虫については萎縮した数を計測し、効果を判断した。供試した寄生虫は30個体以上とし、浸漬時の水温は20℃、25℃とした。なお、コントロール区は海水のみとした。
この結果、ネオベネデニアはコントロール区では95%以上が生存したのに対し、クジン区では全寄生虫の死亡が確認され、本抽出物はネオベネデニアに対しても優れた駆虫効果を有することが示された。
以上の結果から、本発明のクジン抽出物は扁形動物(白点虫)、原生動物(ネオベネデニア)と分類が大きく異なる寄生虫に対し、駆虫効果を有することが示された。よって、その有効性は魚類寄生虫全般と考えられる。
<試験例>
また、クジン以外の生薬として表1に示す各種の生薬について実施例5と同様の試験系で寄生虫に対する効果を試験した。各抽出物は実施例1と同様の方法によったこのin vitroの試験系では表1に示すようにいくつかの生薬が抗寄生虫作用を示した。しかし、これらは経口投与した場合には効果が無いか弱いものであり、経口投与で十分な効果を有していたのはクジンのみであった。
【0026】
【表1】
【実施例7】
【0027】
<マダイにおけるクジン抽出物添加飼料の抗海産白点虫効果>
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重39.3g)各区8尾を用いて、白点虫に対するクジン抽出物の飼料添加効果を検討した。試験区は、クジン抽出物を原末換算でそれぞれ0.0%、0.05%、0.1%、0.5%、1.0%添加した飼料を給餌する区(コントロール区、クジン0.05%区、クジン0.1%区、クジン0.5%区、クジン1.0%区)の計5区とした。また給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。
クジン抽出物添加飼料は実施例3と同様の方法により、噴霧する熱水抽出物とエタノール抽出物の量を調節して製造した。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始3週間後に、各水槽に40,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることにより行った。その後2日間、試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は24〜25℃であった。試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。補正値とは各試験区間の魚の大きさの差を補正するために、「補正値=寄生数/魚体重2/3」により表される。
試験の結果、コントロール区、クジン0.05%区、クジン0.1%区、クジン0.5%区、およびクジン1.0%区の白点虫寄生数はそれぞれ、169.1±62.3個体/尾(平均値±標準偏差)、201.9±56.3個体/尾、144.4±36.1個体/尾、80.3±44.2個体/尾、72.4±17.4個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図1に示した。クジン0.5%区及びクジン1.0%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。したがって、クジン抽出物添加飼料をマダイに投与することにより、白点虫の感染を阻止できることが示された。本発明の抽出物を原末換算で0.5〜1%重量パーセント量添加した飼料が経口投与により抗寄生虫症作用を有することが示された。
【実施例8】
【0028】
<マダイにおけるクジン抽出物添加飼料の抗海産白点虫効果(短期投与)>
実施例7では白点虫による攻撃前に、予め3週間本抽出物添加飼料を給餌した。本実施例では白点虫による攻撃前に本抽出物添加飼料を4日間の給餌とし、短期間投与での抗白点虫効果を検討した。
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重31.1g)各区10尾を用いて、白点虫による攻撃試験を行った。試験区は、クジン抽出物を原末換算で0.5%添加した飼料を給餌する区(クジン0.5%区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計2区とした。給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。クジン抽出物添加飼料は実施例3の製造法により製造した飼料を使用した。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始4日後に、各水槽に40,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることで行った。その後2日間試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は24〜25℃であった。なお、試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
コントロール区およびクジン0.5%区の白点虫寄生数はそれぞれ、313.3±111.5個体/尾(平均値±標準偏差)、179.6±69.6個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図2に示した。0.5%クジン区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。したがって、短期間投与においても白点虫の感染を阻止することが示された。
【実施例9】
【0029】
<マダイにおけるクジン抽出物添加飼料の白点虫駆虫効果(感染本虫に対する駆虫効果)>
実施例7、8に示すように、クジン抽出物添加飼料をマダイに給餌することで、白点虫感染を阻止できることが判明した。本実施例では、本発明の飼料がマダイに感染した白点虫に対し駆虫作用を有するか否かを検討した。
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重13.3g)各区20尾を用いて、白点虫による攻撃試験を行った。試験区は、クジン抽出物を原末換算で0.5%添加した飼料を給餌する区(クジン0.5%区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計2区とした。給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。クジン抽出物添加飼料は実施例3の製造法により製造した飼料を使用した。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容し、1週間の通常の飼料で馴致後、各水槽に100,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることで行った。感染3時間後から3日間各試験飼料を給餌した。試験期間中の水温は18.5〜19.5℃であった。なお、試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
コントロール区および0.5%クジン区の白点虫寄生数はそれぞれ、179.8±78.9個体/尾(平均値±標準偏差)、133.6±48.7個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図3に示した。クジン0.5%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.05)が、補正値においては両区に有意差(P=0.072)は認められなかった。この結果から、クジン抽出物添加飼料の抗寄生虫効果には駆虫作用よりも感染阻止作用の方が大きく関与していると考えられた。
【実施例10】
【0030】
<マダイにおけるクジン抽出物添加飼料の白点虫感染に対する治療・生残改善効果>
実施例7〜9の試験では、白点虫により攻撃して3日後に供試魚の鰓への白点虫寄生数を調べて、その効果を判定した。本試験では白点虫により攻撃してから約2ヶ月間試験飼料で継続飼育し、長期間投与における本抽出物添加飼料の抗白点虫効果(治療・生残改善効果)を調べた。
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重8.0g)各区50尾を用いて、白点虫による攻撃試験を行った。試験区は、クジン抽出物を原末換算で0.5%添加した飼料を給餌する区(クジン0.5%区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計2区とした。給餌量は、各区とも飽食とした。クジン抽出物添加飼料は実施例3の製造法により製造した飼料を使用した。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容し、3週間各試験飼料で馴致後、各水槽に70,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることで行った。その後各試験飼料にて63日間継続飼育した。試験期間中の水温は、17.5〜24.5℃であり、その推移を図4に示した。なお、試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、毎日の死亡個体数を記録し飼育期間中の生残率を比較すること、および攻撃開始20日および30日後に各区5尾をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
攻撃開始20日後のコントロール区およびクジン0.5%区の白点虫寄生数はそれぞれ、206.2±17.5個体/尾(平均値±標準偏差)、28.7±59.4個体/尾であり、これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図5に示した。クジン0.5%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。攻撃開始30日後のコントロール区およびクジン0.5%区の白点虫寄生数はそれぞれ、1302.0±577.3個体/尾(平均値±標準偏差)、5.0±11.2個体/尾であり、これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図6に示した。クジン0.5%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。さらに、コントロール区の魚の摂餌は白点虫感染によって低下しており、この時のサンプリング魚の平均魚体重はコントロール区が13.3g、クジン0.5%区が14.6gであった。コントロール区は攻撃開始31日後から斃死が始まり、34日後に全滅した(図7)。一方、クジン0.5%区は試験終了まで斃死は認められなかった。終了時にクジン0.5%区の生残魚の鰓を観察したが、白点虫は観察されなかった。したがって、クジン添加飼料は白点虫感染魚の生残に対しても効果を有すること、治療効果を有することが示された。
【実施例11】
【0031】
<熱水抽出物と熱水抽出残渣のエタノール抽出物の抗白点虫効果の比較と両抽出物添加による相乗効果の検討>
生薬の一般的な抽出方法は熱水抽出であり、クジンも例外ではない。実施例7〜10では、熱水抽出物および熱水抽出残渣のエタノール抽出物の両方を飼料に添加して評価した。本試験では、熱水抽出物、エタノール抽出物、および併用の抗寄生虫活性について調べた。
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重55g)各区9尾を用いて、白点虫による攻撃試験を行った。試験区は、クジン熱水抽出物を原末換算で0.5%または1.0%添加した飼料を給餌する区(クジン熱水抽出0.5%区、クジン熱水抽出1%区)、クジン熱水抽出残差のエタノール抽出物を0.5%または1.0%添加した飼料を給餌する区(クジンエタノール抽出0.5%区、クジンエタノール抽出1.0%区)、クジン熱水抽出物を0.5%およびクジン熱水抽出残差エタノール抽出物を0.5%添加した飼料を給餌する区(クジン熱水抽出0.5%+エタノール抽出0.5%区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計6区とした。給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。熱水抽出物と熱水抽出残差エタノール抽出物は実施例1の方法により製造した。これら抽出物を添加した飼料を実施例3の製造法により製造した。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始3週間後に、各水槽に50,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることにより行った。その後2日間、試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は20〜23℃であった。試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
コントロール区、クジン熱水抽出0.5%区、クジン熱水抽出1.0%区、クジンエタノール抽出0.5%区、クジンエタノール抽出1.0%区およびクジン熱水抽出0.5%+エタノール抽出0.5%区の白点虫寄生数はそれぞれ、259.6±57.0個体/尾(平均値±標準偏差)、111.9±48.1個体/尾、125.8±41.1個体/尾、210.4±47.2個体/尾、201.0±54.8個体/尾、76.0±48.5個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図7に示した。クジン熱水抽出0.5%区、クジン熱水抽出1.0%区およびクジン熱水抽出0.5%+エタノール抽出0.5%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。したがって、抗白点虫効果をもたらす有効成分は熱水抽出物に多く含まれることが判明した。しかしながら、クジン熱水抽出0.5%+エタノール抽出0.5%区の寄生数は、クジン熱水抽出0.5%区と比較し少ない傾向があり(P=0.16)、クジン熱水抽出1.0%区と比較した場合は有意に少ない結果となった(P<0.05)。したがって、クジン熱水抽出物とエタノール抽出物両方を餌に添加することで、熱水抽出物単独添加と比べ効果が増強されることが考えられた。すなわち、有効成分は熱抽出物およびエタノール抽出物両方に含まれることが判明した。
【実施例12】
【0032】
<熱水抽出物および熱水抽出残渣エタノール抽出物添加による抗白点虫相乗効果有無の検討(追試)>
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重6g)各区5尾を用いて、白点虫による攻撃試験を行った。試験区は、クジン水抽出物を原末換算で0.5%添加した飼料を給餌する区(クジン熱水抽出0.5%区)、クジン熱水抽出物を0.5%およびクジン熱水抽出残渣エタノール抽出物を0.5%添加した飼料を給餌する区(クジン熱水抽出0.5%+エタノール抽出0.5%区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計3区とした。給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。
クジン抽出物は実施例1と同様にして得た。クジン含有飼料は、実施例3と同様にして得た。コントロール区は、市販の初期試料用ペレットのみを給餌した。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始3週間後に、各水槽に50,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることにより行った。その後2日間、試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は24〜25℃であった。試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
コントロール区、クジン熱水抽出0.5%区、およびクジン熱水抽出0.5%+エタノール抽出0.5%区の白点虫寄生数はそれぞれ、146.4±33.2個体/尾(平均値±標準偏差)、31.0±17.9個体/尾、10.4±4.3個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図9に示した。クジン熱水抽出0.5%区およびクジン熱水抽出0.5%+エタノール抽出0.5%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。また、クジン熱水抽出0.5%+エタノール抽出0.5%区の寄生数は、クジン熱水抽出0.5%区と比較し、有意に少ない結果となった(P<0.05)。クジン熱水抽出物と熱水抽出物残渣エタノール抽出物両方を餌に添加することで、熱水抽出物単独添加と比べ効果が増強されることが再現された。
【実施例13】
【0033】
<有効成分の検討−マトリン添加飼料の抗白点虫効果>
クジンの有効成分の一つとして、アルカロイドのマトリンが挙げられる。そこで、マトリン添加飼料の抗白点虫効果について検討した。
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重55g)各区10尾を用いて、白点虫による攻撃試験を行った。試験区は、市販されているマトリン(ICN
Biomedical Inc社製)を飼料1kgに外添で0、20、100、500mg添加した飼料を給餌する区(コントロール区、マトリン20mg区、マトリン100mg区、マトリン500mg区)の計4区とした。給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。
マトリン含有飼料の製造は、マトリンを有機溶剤に溶解し、市販の初期飼料用ペレットに噴霧することで行った。マトリンを100mg/100mLの割合でエタノールに溶解し、本溶解溶液を市販の初期飼料用ペレット1kgに対し、マトリン20mg区では20mL、マトリン100mg区では100mL、マトリン500mg区では500mLをそれぞれ噴霧した。噴霧後、飼料を40℃で5時間乾燥させた。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始3週間後に、各水槽に50,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることにより行った。その後2日間、試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は24〜25℃であった。試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
コントロール区、マトリン20mg区、マトリン100mg区、マトリン500mg区の白点虫寄生数はそれぞれ、345.9±134.1個体/尾(平均値±標準偏差)、380.6±108.0個体/尾、281.6±90.9個体/尾、153.4±78.4個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図10に示した。マトリン500mg区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。したがって、クジン抽出物中の抗白点虫有効成分の一つはマトリンであることが判明した。
【実施例14】
【0034】
<マトリン添加飼料の抗白点虫効果(追試)>
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重55g)各区16尾を用いて、白点虫による攻撃試験を行った。試験区は、マトリンを飼料1kgに外添で500mg添加した飼料を給餌する区(マトリン500mg区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計2区とした。給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。
マトリン添加飼料は実施例14同様に製造した。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始9日後に、各水槽に50,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることにより行った。その後2日間、試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は24〜25℃であった。試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
コントロール区、マトリン500mg区の白点虫寄生数はそれぞれ、38.7±20.6個体/尾(平均値±標準偏差)、7.6±5.9個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図11に示した。マトリン500mg区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較して有意に少ない値となった(P<0.01)。実施例14の結果が再現された。
【実施例15】
【0035】
<クジン以外のマトリンを含む生薬抽出物の抗白点虫効果>
生薬である山豆根の抽出物は、クジン同様にマトリンを含むことが知られている。そこで、山豆根抽出物添加飼料の白点虫に対する防除効果を検討した。
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重65g)各区8尾を用いて、白点虫による攻撃試験を行った。試験区は、山豆根20%エタノール抽出物を原末換算で0.5または1.0%添加した飼料を給餌する区(山豆根0.5%区、山豆根1.0%区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計3区とした。給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。
山豆根20%エタノール抽出物は、実施例2と同様にして得、山豆根含有飼料は実施例4と同様にして製造した。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始18日後に、各水槽に110,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることにより行った。その後2日間、試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は24〜25℃であった。試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
コントロール区、山豆根0.5%区、山豆根1.0%区の白点虫寄生数はそれぞれ、444.3±131.2個体/尾(平均値±標準偏差)、235.9±73.0個体/尾、146.3±55.6個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図12に示した。山豆根0.5%区、山豆根1.0%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。したがって、マトリンを含む生薬抽出物添加飼料は白点虫感染に対し有効であることが確認された。
【実施例16】
【0036】
<クジン抽出物添加飼料のマダイ摂餌に及ぼす影響とその改善法−クジン抽出物のコーティングによる食欲改善>
クジン抽出物添加餌料(原末換算で0.5%以上)をマダイに投与した場合、摂餌が不活発になる傾向がある。この現象は数グラムの稚魚では顕著ではないが、50g以上の魚でよく観察される。クジン抽出物は苦いことから、この苦味が摂餌低下を引き起こしている可能性がある。本試験では50g以上のマダイにクジン抽出物添加飼料を給餌し、食欲がどの低下するのか、クジン抽出物の苦味成分が溶出しないように本抽出物をコーティングすることで食欲が改善されるかを検討した。
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重71.7g)各区13尾を用いて、給餌試験を行った。試験区は、クジン熱水およびエタノール抽出物それぞれを原末換算で1.0%添加した飼料を給餌する区(クジン抽出物1.0%添加区)、コーティングしたクジン抽出物を原末換算で1.0%添加した飼料を給餌する区(コーティングクジン抽出物1.0%添加区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計3区とした。
クジン抽出物のコーティングは、カゼイン、カラギナン、クジン抽出物(熱水抽出物:Et抽出物=1:1)を10:1:15の比率で混合することで行った。方法を以下に示す。クジン抽出物の調整法1で得た水抽出物100g、エタノール抽出物50gを混合し、100℃の熱水中でカゼイン100gを加え十分に混合した。水酸化ナトリウム水溶液でpHを7に調整し、カラギナン10gを加えて滑らかになるまでよく攪拌した。この混合物を室温まで冷やした後、混合物を凍結乾燥機で乾燥させた。この乾燥物をミキサーで粉砕し、300μmメッシュで粒度の低い粉体を得た。この粉体をクジン抽出コーティング物とした。クジン抽出コーティング物添加飼料の作製は以下に従って行った。ホワイトミール、オキアミミール、スクイッドミール、デキストリン、イワシオイル、ビタミン混合物、ミネラル混合物、第1リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、グルテン、グアガムを常法に従い混合し、クジン抽出コーティング物を原末換算で飼料重量当り1.0%量になるように加えよく混合した。混合物に水を加え造粒機でペレットした後、40℃で3時間乾燥させた。本飼料をクジン抽出物コーティング飼料とした。また、コントロール区の飼料はクジン抽出コーティング物を加えず作製したペレットを、クジン1.0%添加飼料はコントロール区のペレットにクジン熱水およびエタノール抽出物それぞれを原末換算で1.0%噴霧したものとした。
給餌試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を飽食になるまで給餌することで行った。給餌回数は1日に2回とし、その時間は午前9:00と午後16:00とした。毎日の各区給餌量を記録した。試験期間は13日間とし、試験期間中の水温は16〜17℃であった。試験期間中の換水は13回転/日とした。
日間摂餌率の結果を図13に示した。コントロール区、クジン抽出物1.0%添加区、コーティングクジン抽出物1.0%添加区の魚体重当りの摂餌率は、それぞれ、0.9±0.2%/日、0.4±0.2%/日、0.6±0.2%/日であった。クジン抽出物1.0%添加区、コーティングクジン抽出物1.0%添加区の摂餌率は、コントロール区と比較し有意に低い値となった(P<0.01)。しかし、コーティングクジン抽出物1.0%添加区の摂餌率は、クジン抽出物1.0%添加区と比較し有意に高い値となった(P<0.01)。したがって、クジン抽出物添加飼料はマダイの食欲を低下させる場合があるが、クジン抽出物をコーティングして苦味成分が溶出しないようにすることで、その食欲は改善されることが示された。
【実施例17】
【0037】
<クジン抽出物添加飼料のマダイ摂餌に及ぼす影響の改善法−モイスト飼料による食欲改善効果>
モイストペレットは粉体であるマッシュとアジなどの生の魚を混合して得られる飼料である。魚はモイストペレットに対し嗜好性が高く、モイストペレットは魚の摂餌行動を誘引する。本試験は、モイストペレットにクジン抽出物を添加することで、マダイの食欲が改善されるか否かを検討した。
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重148.8g)各区10尾を用いて、給餌試験を行った。試験区は、クジン熱水およびエタノール抽出物それぞれを原末換算で0.4%添加したモイストペレット飼料を給餌する区(クジン0.4%モイスト区)、クジン熱水およびエタノール抽出物それぞれを原末換算で0.7%添加したモイストペレット飼料を給餌する区(クジン0.7%モイスト区)、無添加モイストペレット飼料を給餌する区(コントロール区)の計3区とした。
クジン抽出物は調整法1と同様にして得た。モイストペレットの製造は以下の方法で行った。ミンチャーに、生餌(アジ):マッシュ=1:1の割合で入れて混合し、そこにクジン抽出物を原末換算で0.4%もしくは0.7%となるように加えさらに混合した。混合後、造粒機でペレットとした。コントロール区は、クジン抽出物を加えないモイストペレットのみを給餌した。
給餌試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を飽食になるまで給餌することで行った。給餌回数は1日に2回とし、その時間は午前9:00と午後16:00とした。毎日の各区給餌量を記録した。試験期間は14日間とし、試験期間中の水温は 19±1℃であった。試験期間中の換水は22回転/日とした。
日間摂餌率の結果を図14に示した。コントロール区、クジン0.4%モイスト区、クジン0.7%モイスト区の摂餌率は、それぞれ、2.3±0.5%、2.2±0.5%、2.4±0.5%であり、いずれの区も同等の摂餌率となった。したがって、クジン抽出物をモイストペレットに混合し給餌することで、魚の食欲を低下させることなくクジン抽出物を投与できることが示された。
【実施例18】
【0038】
<マダイ以外の魚種に対するクジン抽出物添加飼料の抗白点虫効果−ヒラメの白点虫に対する効果>
疾病の認められていないヒラメ(平均魚体重11.5g)各区17尾を用いて、白点虫に対するクジン抽出物の飼料添加効果を検討した。試験区は、クジン20%エタノール抽出物を原末換算で0.5または2.0%添加した飼料を給餌する区(クジン0.5%区、クジン2.0%区)、および無添加飼料を給餌するコントロール区の計3区とした。また給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。クジン抽出物は実施例2と同様にして得た。クジン含有飼料は、実施例4と同様にして得た。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始2週間後に、各水槽に85,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることにより行った。その後2日間、試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は24〜25℃であった。試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その片側の鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
試験の結果、コントロール区、クジン0.5%区、クジン2.0%区の白点虫寄生数は、それぞれ、7.0±6.1個体/尾(平均値±標準偏差)、1.5±1.8個体/尾、0.3±0.5個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図15に示した。クジン0.5%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意差はないものの少ない傾向が認められた(P=0.26)。クジン2.0%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。クジン抽出物添加飼料はヒラメの白点虫に対してもその感染を阻止することが示された。
本実施例の結果より、クジン抽出物添加飼料は各種魚類の白点虫に対してもその感染を阻止すると考えられる。
【実施例19】
【0039】
<ヒラメの白点虫に対するクジン抽出物と山豆根抽出物の効果>
マダイを用いた実施例14〜16でクジン抽出物中の抗白点虫有効成分の一つはマトリンであること、マトリンを含む生薬である山豆根抽出物に、クジン抽出物同様に白点虫感染に対する飼料添加効果が認められた。そこで、ヒラメを用いて山豆根抽出物添加飼料の白点虫に対する防除効果を検討した。
疾病の認められていないヒラメ(平均魚体重11.4g)各区17尾を用いて、白点虫に対する山豆根抽出物およびクジン抽出物の飼料添加効果を検討した。試験区は、山豆根20%エタノール抽出物を原末換算で0.5または1.0%添加した飼料を給餌する区(山豆根0.5%区、山豆根1.0%区)、クジン20%エタノール抽出物を原末換算で0.5または1.0%添加した飼料を給餌する区(クジン0.5%区、クジン1.0%区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計5区とした。給餌は1日2回とし、飽食とした。山豆根20%エタノール抽出物は実施例2と同様にして得た。山豆根含有飼料は、作製実施例4と同様にして得た。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始2ヶ月後に、各水槽に58,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、3時間止水の状態で感染させることにより行った。その後2日間、試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は24±1℃であった。試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その片側の鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
コントロール区、山豆根0.5%区、山豆根1.0%区、クジン0.5%区、クジン1.0%区の白点虫寄生数はそれぞれ、111.7±88.4個体/尾(平均値±標準偏差)、56.9±30.5個体/尾、65.9±95.8個体/尾、41.7±25.8個体/尾、70.9±65.2個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図16に示した。クジン0.5%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.05)。山豆根抽出物0.5%区および1.0%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意差はないものの少ない傾向が認められた(0.5%区のP値は0.069、1.0%区のP値は0.212)。山豆根抽出物添加飼料はヒラメの白点虫に対してもその感染を阻止することが判明した。また、クジン抽出物添加飼料はヒラメの白点虫に対してもその感染を阻止することが再現された。
したがって、マトリンを含む生薬抽出物を飼料に添加することで、各種魚類の白点虫感染に対し有効であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、白点虫等の寄生虫に対し高い抗寄生虫活性を有し、かつ、薬剤の副作用や魚への薬剤残留による影響が極めて少ない組成物を提供することができる。すなわち、薬浴剤が使用できない場合にも使用できる経口投与可能な抗寄生虫症作用を有する組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】クジン抽出物添加飼料の抗白点虫効果を示した説明図である(*P<0.01)。
【図2】クジン抽出物添加飼料の抗白点虫効果(短期投与)を示した説明図である(*P<0.01)。
【図3】クジン抽出物添加飼料の白点虫駆虫効果を示した説明図である。
【図4】クジン抽出物添加飼料の白点虫感染に対する治療・生残改善効果(試験期間中の水温推移)を示した説明図である。
【図5】クジン抽出物添加飼料の白点虫感染に対する治療・生残改善効果(攻撃20日後の寄生虫数の比較)(P<0.01)を示した説明図である。
【図6】クジン抽出物添加飼料の白点虫感染に対する治療・生残改善効果(攻撃30日後の寄生虫数の比較)(P<0.01)を示した説明図である。
【図7】クジン抽出物添加飼料の白点虫感染に対する治療・生残改善効果 (生残率の比較)(P<0.01)を示した説明図である。
【図8】熱水抽出物とエタノール抽出物の抗白点虫効果の比較と両抽出物添加による相乗効果有無 (*P<0.01)を示した説明図である。
【図9】熱水抽出物とエタノール抽出物添加による抗白点虫相乗効果有無(追試) (*P<0.01)を示した説明図である。
【図10】マトリン添加飼料の抗白点虫効果(*P<0.01)を示した説明図である。
【図11】マトリン添加飼料の抗白点虫効果(追試)(*P<0.01)を示した説明図である。
【図12】マトリンを含む生薬抽出物の抗白点虫効果(山豆根抽出物)(*P<0.01)を示した説明図である。
【図13】クジン抽出物のコーティングによる食欲改善を示した説明図である。
【図14】クジン抽出物のモイスト飼料へ添加することによる食欲改善を示した説明図である。
【図15】ヒラメにおけるクジン抽出物添加飼料の抗白点虫効果(*P<0.01)を示した説明図である。
【図16】ヒラメにおけるクジン抽出物および山豆根添加飼料の抗白点虫効果(*P<0.05)を示した説明図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類用の抗寄生虫症作用を有する組成物に関する。詳細には経口投与で効果を有する魚類用の抗寄生虫症作用を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
魚類の養殖業においては、近年種苗生産、飼育技術の向上により各種海産魚の集約的養殖が行われるようになり、ウィルス、細菌、原虫、寄生虫を原因とする感染症による産業的損害が大きくなっている。その中でも寄生虫症の被害が増大しており、その理由として有効な防除法の確立の遅れ等が挙げられる。例えば白点虫症は、西日本を中心にヒラメ・マダイ・トラフグ等の養殖現場において多発し、養殖魚の大量斃死をもたらしており、一つの養殖漁場で年間数億円の被害が発生するケースがある。白点虫症は寄生性原虫の繊毛虫類に属す白点虫Cryptocaryon irritansが魚の鰓や皮膚に寄生することによって生じる。増殖至適温度は18〜30℃である。白点虫の感染はマダイ、トラフグ、カンパチ、ヒラメなど数多くの海産魚で認められている。
【0003】
海面生簀で発生した場合の対処法は白点虫症が発生していない潮通しの良い海域に生簀を移動させることくらいである。この対処により水底シストに起因する感染及び、魚体中に存在する虫体に起因する感染の確立を軽減させることができる。また陸上施設での対処法は、本虫の存在しない水槽への移動を繰り返すことが有効である。すなわち水温25℃付近で本虫は、感染3〜4日で宿主を離脱しシストになること、シストからの孵化幼生の放出には4日以上要することなどを利用し、3日おきに魚を新しい水槽に移すことによって感染の拡大を防ぐことができる。しかしこの方法は多大な労力を必要とする。
特許文献1、2には、有効成分としてクジンが挙げられているが、これらの特許はAeromonas salmonicidaあるいはStreptococcus sp.等の微生物感染に対する効果を示しているものであり、寄生虫に対する効果を示すものではない。特許文献3には、いくつかの生薬に魚類の抗寄生虫作用があることが開示されている。
【0004】
クジン、山豆根は生薬として知られている。
<クジン(苦参、Sophorae Radix)>
基原:マメ科の苦参 Sophora flavescens Ait. (クララ)の根を乾燥したもの。
性味:味は苦、性は寒。(帰経:心・肝・小腸・大腸・胃経)
主成分:アルカロイド;マトリン(matrine)、オキシマトリン(oxymatrine)、sophoranolなど、フラボノイド;xanthohumol,
kurarinone, kuraridin, kuraridinol, kurarinolなどが知られている。
薬理作用:清熱燥湿・去風殺虫、利尿・解熱作用、抗真菌作用、抗トリコモナス作用、血圧降下作用、抗消化性潰瘍作用、中枢抑制作用、ホスフォジエステラーゼ阻害作用、肝障害抑制作用、止血作用、免疫賦活作用、抗面皰作用等が知られている。
薬効:滋養強壮、下痢、小便不利、あせも、水虫、黄疸、疥癬、悪瘡
薬効・用い方:苦参(くじん)は、苦味健胃、強壮、消炎、利尿、下痢止め、鎮痛剤としてや赤痢などの細菌性下痢、血便、腫毒に効き目があり、内蔵を丈夫にして食欲を増進させる効果もあるが、作用の強いアルカロイドのマトリン、オキシマトリンなどを含み、虚弱体質者の場合には副作用が表れる。
苦参6gに、水0.3リットルを加えて煎じ、その煎液を、水虫、あせも、かいせんの場合に塗布する。かやみや炎症性のはれものなどには効き目がある。かいせんには、生の根の汁を塗る。
クララの乾燥した茎葉(けいよう)300グラムに、約5リットルの水を加えて煎じたものは、農作物の害虫や牛馬など動物の皮膚寄生虫の駆除に効果がある。また、乾燥した茎葉を、適当に細かくして用いると、うじ虫の駆除になる。中国では、魚類の寄生虫症用薬浴剤としてクジンが販売されている。
用量:3〜15g。
注意: 全草(茎葉)には、有毒のマトリン、オキシマトリンなどのアルカロイドを含む。マトリンは、大脳を麻痺させて痙攣(けいれん)を起こし、呼吸運動神経麻痺で呼吸が止まり死に至るので、絶対に服用してはいけない。
【0005】
<山豆根>
基原:マメ科の広豆根(Sophora subprostrata)の根を乾燥したもの。
性味:味は苦、性は寒。(帰経:心・肺経)
主成分:マトリン、マトリン-n-オキシド、anagyrine、methylcytisine、genistin、フェノール性物質
薬理作用:清熱利咽、消炎作用、抗腫瘍作用
臨床応用:咽喉や歯鹹の実熱の腫脹疼痛に、玄参・桔梗などを配合している。射干・牛旁子を配合して、たとえば喉痛方を使用してもよい。ただし咽喉の虚火による腫脹疼痛には適していない。ガン(とくに肺ガン・喉頭ガンの初期)に対する補助薬として、白花蛇舌草・魚腥草などを配合して用いる。ただし、治療効果については観察を続ける必要がある。子宮頸部炎や口内炎に、山豆根の粉末を外用すると消炎効果がある。
用量:内服には6〜9g。粉末は2〜6g、外用は適量。
【0006】
【特許文献1】特許第2535555号公報
【特許文献2】特許第2535559号公報
【特許文献3】特許第3366991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
養殖の現場では白点虫等の寄生虫に対して有効な物質が求められていた。本発明は、白点虫等の寄生虫に対し高い抗寄生虫活性を有し、薬剤の副作用や魚への薬剤残留による影響が極めて少ない組成物を提供することを課題とする。すなわち、閉鎖された池や陸上水槽で養殖される魚種と異なり、海上の生け簀における養殖では、周辺環境への影響に配慮する必要性が高く、また、閉鎖されていないから生け簀内の薬浴剤の濃度を長時間維持するということは不可能であり、閉鎖された水中で長時間薬浴することも困難である。したがって、本発明は、海上の生け簀等で養殖される海産魚にも使用できるよう経口投与で有効な組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
副作用や薬物残留による魚、環境への影響が少ない成分を求めて広く天然物質を探索した結果、生薬であるクジンの抽出物に海産魚白点虫に対する優れた防除効果を見いだした。実施例6の試験例に示すようにクジン以外の各種生薬についても抗寄生虫症作用を検討した。いくつかの生薬はin vitroで効果を示したが、経口投与で十分な効果を示したのはクジン、山豆根だけであった。
【0009】
本発明は、下記の(1)〜(7)の寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物を要旨とする。
(1)マトリンを含有する魚類用の経口投与可能な寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
(2)マトリンを含有する組成物がクジン、山豆根の粉砕物または抽出物である(1)の寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
(3)クジンの抽出物が水及び/又は有機溶媒抽出物である(2)の寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
(4)魚類が海産魚類である(1)〜(3)の寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
(5)魚類が分類上スズキ目、フグ目、カレイ目、サケ目、ナマズ目、コイ目に属する魚種である(1)〜(3)いずれかの寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
(6)寄生虫症が原生動物繊毛虫類、又は、扁形動物単生綱に属する寄生虫によるものである(1)〜(5)いずれかの寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
(7)寄生虫症が原生動物繊毛虫類に属する白点虫、ブルークリネラ、キロドネラ、エピスチリス、スクーチカ、トリコジナ、ネオベネデニア、又は、扁形動物単生綱に属するネオベネデニア、ダクチロギルス、シュードダクチロギルス、ミクロコチレ、ビバギナ、ヘテラキシネ、ヘテロボツリウム、ネオヘテロボツリウムによるものである(1)〜(5)いずれかの寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
【0010】
本発明は、下記の(8)〜(16)の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法を要旨とする。
(8)マトリンを含有する組成物を経口投与して魚類の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
(9)マトリン換算で魚体重1kg当たり1〜50mg/日、クジン原末換算で魚体重1kg当たり10〜2000mg/日、あるいは山豆根原末換算で魚体重1kg当たり10〜2000mg/日を経口投与するものである(8)の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
(10)マトリンを含有する組成物を添加した飼料を給餌して魚類の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
(11)飼料が、マトリンを含有する組成物を養魚用飼料にマトリン換算で0.002〜0.1%、クジン原末換算で0.1〜5%、あるいは山豆根原末換算で0.1〜5%添加したものである(10)の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
(12)マトリンを含有する組成物が苦味成分が溶出しにくくなるよう加工されたものである(10)又は(11)の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
(13)マトリンを含有する組成物の苦味成分が溶出しにくくなるための加工がカプセル化、マイクロカプセル化、コーティングされた錠剤化、又は、水不溶性成分と共に粉末化したものである(12)の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
(14)マトリンを含有する組成物がクジン、山豆根の粉砕物または抽出物である(8)〜(13)いずれかの寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
(15)抽出物が水及び/又は有機溶媒抽出物である(14)の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
(16)飼料がモイストペレット、EP(Extruded Pellet)である(10)〜(13)いずれかの寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組成物は生薬として知られているものであるから、ヒト、動物における使用経験がある組成物であり、安全性や環境への影響などの点での心配が少なく使いやすい。魚類に経口投与することにより抗寄生虫症作用を発現するので、薬浴に適さない海産魚等の抗寄生虫症薬として使用できる。本発明の組成物は寄生虫症の感染を抑制する効果とやや弱いが寄生虫を駆除する効果を有し、適切な使用方法により寄生虫症を治癒させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のマトリン(matrine)とは、式1に示す構造を有する化合物である。マメ科クララ (Sophora Flavescens)の根(これを生薬では苦参と呼ぶ)に含まれるアルカロイドで、苦味が強い。
【0013】
【化1】
【0014】
マトリンを含有する生薬としては、苦参、山豆根が知られている。マトリンは水溶性であり、これら生薬から抽出することができる。また、合成品も販売されている。
クジンはマメ科クララ (Sophora Flavescens)の根であり、山豆根はマメ科広豆根(Sophora subprostrata)の根である。本発明において、クジンおよび山豆根は、生、乾燥品、粉砕物、粉末、抽出物等いずれの形態で用いることも可能である。魚に経口投与する際の状況に応じて適宜選択すればよい。安定した効果を得るためには有効成分の含量を一定に保つことができる抽出物を液状、粉末状等にして用いるのがよい。
【0015】
本発明において魚類とは、淡水産魚、海水産魚のいずれも含む。淡水産魚の場合、養殖池、水槽が閉鎖系であることが多く、薬浴の対象になりやすいので、必ずしも本発明の経口投与可能な組成物を使用する必要ない場合もあるが、薬浴よりも経口投与によるメリットがある場合には淡水産魚にも使用できる。本発明の組成物は広い範囲の寄生虫症に効果があると考えられるので、寄生虫症が知られているあらゆる魚類に使用できる。分類上スズキ目、フグ目、カレイ目、サケ目、ナマズ目、コイ目に属する魚種などが例示される。具体的には、スズキ目の魚類では、マダイ(タイ科)、イシダイ(イシダイ科)、イシガキダイ(イシダイ科)、クロダイ(タイ科)、カサゴ(フサカサゴ科)、ティラピア(カワスズメ科)、スズキ(スズキ科)、アカメ(アカメ科)、マハタ(ハタ科)、クエ(ハタ科)、チャイロマルハタ(ハタ科)、キジハタ(ハタ科)、サラサハタ(ハタ科)、アカマダラハタ(ハタ科)、ブリ(アジ科)、カンパチ(アジ科)、ヒラマサ(アジ科)、シマアジ(アジ科)等、フグ目では、トラフグ(フグ科)等が、カレイ目では、ヒラメ(ヒラメ科)、ターボット(スコプタルムス科)等が、サケ目では、ニジマス(サケ科)、ギンザケ(サケ科)、大西洋サケ(サケ科)等が、また、淡水魚では、ナマズ目のアメリカナマズ(イクタルルス科)等、コイ目の金魚(コイ科)、コイ(コイ科)等、スズキ目のディスカス(カワスズメ(シクリッド)科)等が例示される。
【0016】
本発明における寄生虫症とは寄生虫の寄生により発症する魚類の疾病であり、養殖魚における寄生虫症としては、原生動物繊毛虫類に属する白点虫、ブルークリネラ、キロドネラ、エピスチリス、スクーチカ、トリコジナ、ネオベネデニア、又は、扁形動物単生綱に属するネオベネデニア、ダクチロギルス、シュードダクチロギルス、ミクロコチレ、ビバギナ、ヘテラキシネ、ヘテロボツリウム、ネオヘテロボツリウムなどが知られている。本発明の組成物はこれらの寄生虫症に有用である。
本発明において予防及び/又は治療用とは、予防は寄生虫が魚に寄生することを抑制する作用を意味し、治療とは寄生した寄生虫を除去し、治癒させる作用を意味する。
本発明において経口投与とは、本発明の組成物を錠剤、顆粒、カプセルなどの製剤として直接魚に投与すること、あるいは、飼料に添加(原料に混合、液状にして浸漬、コーティングするなど)して飼料と一緒に摂取させるなどを意味する。
【0017】
本発明のマトリンを含有する組成物とは、マトリンを含有する生薬の生または乾燥品の裁断物、粉砕物など、あるいは、水、熱水、アルコール等の有機溶媒などによる抽出物を意味する。マトリンの合成品を使用することも可能であるが、価格が高価である。
クジンにおいて、単に熱水で抽出される成分だけでなく、アルコールにより抽出される成分を併用することにより抗寄生虫症作用が増強されることが示された。マトリンは水溶性であることから、マトリン以外の成分が機能していると考えられる。実施例に示されるように熱水抽出してから、残渣をアルコール抽出しても良いし、水とアルコールの混合溶液により抽出してもよい。例えば、水にエタノールを20〜50%程度加えた混合液で本発明の成分を抽出することができる。上記マトリン以外の成分はアルコールを加えたクロロホルム溶媒にも溶解する。酢酸エチル、アセトン等の極性の高い有機溶媒を抽出溶媒とすることもできる。
【0018】
本発明は、マトリンを含有する組成物を経口投与して魚類の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法である。本発明のマトリンを含有する組成物は、マトリン換算で魚体重1kg当たり1〜50mg/日、クジン原末換算で魚体重1kg当たり10〜2000mg/日、あるいは山豆根原末換算で魚体重1kg当たり10〜2000mg/日を経口投与する。好ましくは、マトリン換算で魚体重1kg当たり3〜15mg/日、クジン原末換算で魚体重1kg当たり30〜500mg/日、あるいは山豆根原末換算で魚体重1kg当たり30〜500mg/日を経口投与する。
寄生虫は寄生虫によってその生活環が異なる。例えば、白点虫の場合、孵化した幼生が宿主(魚)に感染すると鰓や皮膚の上皮組織に袋状の囲いを作ってその中で成長する。25℃では3〜4日間で宿主から離脱し、水中にシストとして浮遊する。25℃では4日から2週間で再び幼生が孵化し、宿主に感染する。したがって、魚についている寄生虫を除いても水中にいるシストからの幼生が再び寄生することになり完全に寄生虫症を治療することにならない。隔離された陸上養殖はともかく、海の生け簀では常に寄生虫症の危険がある。例えば、白点虫の場合、海水温が18℃以上になると感染の危険がある。したがって、本発明の組成物は海水温が18℃以上になる時期継続して使用するのがよい。それが無理な場合でも、感染した場合は上述のような生活環を考慮し、少なくとも1ヶ月以上連続して使用する必要がある。その他の寄生虫症に用いる場合もそれぞれの生活環を考慮してサイクルが一巡する期間以上継続して使用するのが好ましい。
本発明のマトリンを含有する組成物を飼料に添加して摂餌させる場合、その魚種の1日当たりの摂餌量によって、必要なマトリンが摂取されるように飼料中の濃度を調節すればよい。魚種によって体重当たりの摂餌量が異なり、また、成長段階によっても異なるので、適宜調節する必要があるが、通常多くの養殖魚では、1日当たり魚体重の3%程度の量の飼料が与えられる。その場合、マトリンを含有する組成物を養魚用飼料にマトリン換算で0.002〜0.1%、クジン原末換算で0.1〜5%、あるいは山豆根原末換算で0.1〜5%添加する。好ましくは、マトリンを含有する組成物を養魚用飼料にマトリン換算で0.005〜0.05%、クジン原末換算で0.3〜2%、あるいは山豆根原末換算で0.3〜2%添加する。
【0019】
飼料の原料は、通常その魚種用の飼料として使用されているものなら何でもよく、飼料原料により、本発明の効果が影響を受けることはない。モイストペレットの場合、多獲魚等の冷凍品を主原料として、魚粉、糟糠類、ビタミン類、ミネラル類などを添加して成型して製造する。EPの場合、魚粉、糟糠類、ビタミン類、ミネラル類などをエクストルーダ等を用いてペレット状に成型される。本発明のマトリンを含有する組成物はこれら原料に混合してペレットに仕上げることができる。
本発明の組成物は、苦味を有するので、魚種や成長度合いによって摂餌量の減少が認められることがある。その場合、飼料の表面に噴霧するような添加方法よりも、原料に添加してペレットを製造するような、飼料の内側に多く含有させて表面の苦味が少なくなるような添加方法が適している。また、本発明の組成物に苦味がマスクされるような加工を施すのもよい。具体的には、一般に苦味のある薬剤に行われる、カプセル化、マイクロカプセル化、糖衣などの皮膜が施された錠剤化、コーティングされた顆粒化、あるいは、カゼイン、カラギーナン等の水不溶性成分と共に粉末化して水溶性成分が容易に放出されない形態にする等が例示される。いずれにしても魚類は飼料を飲みこむので、飼料の表面から苦味が溶け出しにくい状態にすればよい。
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
<クジン抽出物の調整1>
乾燥クジン粉砕物(ダイセル化成品社製)と熱水を1:10(w/v)の割合で混合し、ディスパーサー(バイオミキサー;日本精機製作所社製)でクジンの成分を溶出させた(30分間)。本抽出液を8000rpm、15分間遠心分離し、上清をミリポアフィルター(0.22μm、ミリポア社製)でろ過して熱水抽出物を得た。また、残った沈殿物にエタノール(和光純薬社製)を1:5(w/v)の割合で混合し、恒温槽で80℃まで加熱してディスパーサーで溶出させた(30分間)。抽出液を8000rpm、15分間遠心分離し、上清をミリポアフィルターでろ過して熱水抽出残渣のエタノール抽出物を得た。
【実施例2】
【0021】
<クジン抽出物の調整2>
乾燥クジン粉砕物(ダイセル化成品社製)と熱水を1:10(w/v)の割合で混合し、100℃に加温した恒温槽内で1時間静置しクジン成分を溶出させた。本抽出液を8000rpm、15分間遠心分離し、上清をミリポアフィルター(0.22μm、ミリポア社製)でろ過してクジン抽出物を得た。
【実施例3】
【0022】
<添加飼料の製造例1>
実施例1で得られたクジン抽出物を用いて固形飼料を製造した。即ち、EP飼料(日本水産株式会社、稚魚用D−1、D−2、マダイ育成用Dシリーズ)1kgに、実施例1で得たクジン熱水抽出物50ml及び熱水抽出残渣のエタノール抽出物25mlを噴霧した後、乾燥機で40℃、5時間かけ乾燥させた。このようにして、原末換算で0.5%含有する固形飼料を得た。
【実施例4】
【0023】
<添加飼料の製造例2>
実施例2で得られたクジン抽出物を用いて固形飼料を製造した。即ち、EP飼料(日本水産株式会社、稚魚用D−1、D−2、マダイ育成用Dシリーズ)1kgに、実施例2で得たクジン抽出物50mlを噴霧した後、乾燥機で40℃、5時間かけ乾燥させた。このようにして、原末換算で0.5%含有する固形飼料を得た。
【実施例5】
【0024】
<クジン抽出物の海産の白点虫に対する効果(in vitro 試験)>
海水1mlに対し実施例1のクジン熱水抽出物1μlを溶解したもの(0.01%溶液に白点虫孵化仔虫を浸漬し、抗白点虫効果を確認した。
浸漬して2時間後に孵化仔虫の死亡数を計測し、効果を判断した。供試した寄生虫は200個体以上とした。浸漬時の水温は20℃、25℃とした。コントロール区は海水のみとした。
この結果、白点虫孵化仔虫はコントロール区では96%以上が生存したのに対し、クジン区では全寄生虫の死亡が確認され、本抽出物が白点虫に対し優れた効果を有することが示された。
【実施例6】
【0025】
<クジン抽出物の海産のネオベネデニアに対する効果(in vitro 試験)>
実施例5と同様の試験を、ネオベネデニア(ハダ虫)の孵化仔虫ならびに幼虫を用いて行った。浸漬して2時間後にネオベネデニアの孵化仔虫は死亡数を、成虫については萎縮した数を計測し、効果を判断した。供試した寄生虫は30個体以上とし、浸漬時の水温は20℃、25℃とした。なお、コントロール区は海水のみとした。
この結果、ネオベネデニアはコントロール区では95%以上が生存したのに対し、クジン区では全寄生虫の死亡が確認され、本抽出物はネオベネデニアに対しても優れた駆虫効果を有することが示された。
以上の結果から、本発明のクジン抽出物は扁形動物(白点虫)、原生動物(ネオベネデニア)と分類が大きく異なる寄生虫に対し、駆虫効果を有することが示された。よって、その有効性は魚類寄生虫全般と考えられる。
<試験例>
また、クジン以外の生薬として表1に示す各種の生薬について実施例5と同様の試験系で寄生虫に対する効果を試験した。各抽出物は実施例1と同様の方法によったこのin vitroの試験系では表1に示すようにいくつかの生薬が抗寄生虫作用を示した。しかし、これらは経口投与した場合には効果が無いか弱いものであり、経口投与で十分な効果を有していたのはクジンのみであった。
【0026】
【表1】
【実施例7】
【0027】
<マダイにおけるクジン抽出物添加飼料の抗海産白点虫効果>
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重39.3g)各区8尾を用いて、白点虫に対するクジン抽出物の飼料添加効果を検討した。試験区は、クジン抽出物を原末換算でそれぞれ0.0%、0.05%、0.1%、0.5%、1.0%添加した飼料を給餌する区(コントロール区、クジン0.05%区、クジン0.1%区、クジン0.5%区、クジン1.0%区)の計5区とした。また給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。
クジン抽出物添加飼料は実施例3と同様の方法により、噴霧する熱水抽出物とエタノール抽出物の量を調節して製造した。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始3週間後に、各水槽に40,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることにより行った。その後2日間、試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は24〜25℃であった。試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。補正値とは各試験区間の魚の大きさの差を補正するために、「補正値=寄生数/魚体重2/3」により表される。
試験の結果、コントロール区、クジン0.05%区、クジン0.1%区、クジン0.5%区、およびクジン1.0%区の白点虫寄生数はそれぞれ、169.1±62.3個体/尾(平均値±標準偏差)、201.9±56.3個体/尾、144.4±36.1個体/尾、80.3±44.2個体/尾、72.4±17.4個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図1に示した。クジン0.5%区及びクジン1.0%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。したがって、クジン抽出物添加飼料をマダイに投与することにより、白点虫の感染を阻止できることが示された。本発明の抽出物を原末換算で0.5〜1%重量パーセント量添加した飼料が経口投与により抗寄生虫症作用を有することが示された。
【実施例8】
【0028】
<マダイにおけるクジン抽出物添加飼料の抗海産白点虫効果(短期投与)>
実施例7では白点虫による攻撃前に、予め3週間本抽出物添加飼料を給餌した。本実施例では白点虫による攻撃前に本抽出物添加飼料を4日間の給餌とし、短期間投与での抗白点虫効果を検討した。
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重31.1g)各区10尾を用いて、白点虫による攻撃試験を行った。試験区は、クジン抽出物を原末換算で0.5%添加した飼料を給餌する区(クジン0.5%区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計2区とした。給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。クジン抽出物添加飼料は実施例3の製造法により製造した飼料を使用した。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始4日後に、各水槽に40,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることで行った。その後2日間試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は24〜25℃であった。なお、試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
コントロール区およびクジン0.5%区の白点虫寄生数はそれぞれ、313.3±111.5個体/尾(平均値±標準偏差)、179.6±69.6個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図2に示した。0.5%クジン区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。したがって、短期間投与においても白点虫の感染を阻止することが示された。
【実施例9】
【0029】
<マダイにおけるクジン抽出物添加飼料の白点虫駆虫効果(感染本虫に対する駆虫効果)>
実施例7、8に示すように、クジン抽出物添加飼料をマダイに給餌することで、白点虫感染を阻止できることが判明した。本実施例では、本発明の飼料がマダイに感染した白点虫に対し駆虫作用を有するか否かを検討した。
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重13.3g)各区20尾を用いて、白点虫による攻撃試験を行った。試験区は、クジン抽出物を原末換算で0.5%添加した飼料を給餌する区(クジン0.5%区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計2区とした。給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。クジン抽出物添加飼料は実施例3の製造法により製造した飼料を使用した。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容し、1週間の通常の飼料で馴致後、各水槽に100,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることで行った。感染3時間後から3日間各試験飼料を給餌した。試験期間中の水温は18.5〜19.5℃であった。なお、試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
コントロール区および0.5%クジン区の白点虫寄生数はそれぞれ、179.8±78.9個体/尾(平均値±標準偏差)、133.6±48.7個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図3に示した。クジン0.5%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.05)が、補正値においては両区に有意差(P=0.072)は認められなかった。この結果から、クジン抽出物添加飼料の抗寄生虫効果には駆虫作用よりも感染阻止作用の方が大きく関与していると考えられた。
【実施例10】
【0030】
<マダイにおけるクジン抽出物添加飼料の白点虫感染に対する治療・生残改善効果>
実施例7〜9の試験では、白点虫により攻撃して3日後に供試魚の鰓への白点虫寄生数を調べて、その効果を判定した。本試験では白点虫により攻撃してから約2ヶ月間試験飼料で継続飼育し、長期間投与における本抽出物添加飼料の抗白点虫効果(治療・生残改善効果)を調べた。
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重8.0g)各区50尾を用いて、白点虫による攻撃試験を行った。試験区は、クジン抽出物を原末換算で0.5%添加した飼料を給餌する区(クジン0.5%区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計2区とした。給餌量は、各区とも飽食とした。クジン抽出物添加飼料は実施例3の製造法により製造した飼料を使用した。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容し、3週間各試験飼料で馴致後、各水槽に70,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることで行った。その後各試験飼料にて63日間継続飼育した。試験期間中の水温は、17.5〜24.5℃であり、その推移を図4に示した。なお、試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、毎日の死亡個体数を記録し飼育期間中の生残率を比較すること、および攻撃開始20日および30日後に各区5尾をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
攻撃開始20日後のコントロール区およびクジン0.5%区の白点虫寄生数はそれぞれ、206.2±17.5個体/尾(平均値±標準偏差)、28.7±59.4個体/尾であり、これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図5に示した。クジン0.5%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。攻撃開始30日後のコントロール区およびクジン0.5%区の白点虫寄生数はそれぞれ、1302.0±577.3個体/尾(平均値±標準偏差)、5.0±11.2個体/尾であり、これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図6に示した。クジン0.5%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。さらに、コントロール区の魚の摂餌は白点虫感染によって低下しており、この時のサンプリング魚の平均魚体重はコントロール区が13.3g、クジン0.5%区が14.6gであった。コントロール区は攻撃開始31日後から斃死が始まり、34日後に全滅した(図7)。一方、クジン0.5%区は試験終了まで斃死は認められなかった。終了時にクジン0.5%区の生残魚の鰓を観察したが、白点虫は観察されなかった。したがって、クジン添加飼料は白点虫感染魚の生残に対しても効果を有すること、治療効果を有することが示された。
【実施例11】
【0031】
<熱水抽出物と熱水抽出残渣のエタノール抽出物の抗白点虫効果の比較と両抽出物添加による相乗効果の検討>
生薬の一般的な抽出方法は熱水抽出であり、クジンも例外ではない。実施例7〜10では、熱水抽出物および熱水抽出残渣のエタノール抽出物の両方を飼料に添加して評価した。本試験では、熱水抽出物、エタノール抽出物、および併用の抗寄生虫活性について調べた。
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重55g)各区9尾を用いて、白点虫による攻撃試験を行った。試験区は、クジン熱水抽出物を原末換算で0.5%または1.0%添加した飼料を給餌する区(クジン熱水抽出0.5%区、クジン熱水抽出1%区)、クジン熱水抽出残差のエタノール抽出物を0.5%または1.0%添加した飼料を給餌する区(クジンエタノール抽出0.5%区、クジンエタノール抽出1.0%区)、クジン熱水抽出物を0.5%およびクジン熱水抽出残差エタノール抽出物を0.5%添加した飼料を給餌する区(クジン熱水抽出0.5%+エタノール抽出0.5%区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計6区とした。給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。熱水抽出物と熱水抽出残差エタノール抽出物は実施例1の方法により製造した。これら抽出物を添加した飼料を実施例3の製造法により製造した。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始3週間後に、各水槽に50,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることにより行った。その後2日間、試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は20〜23℃であった。試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
コントロール区、クジン熱水抽出0.5%区、クジン熱水抽出1.0%区、クジンエタノール抽出0.5%区、クジンエタノール抽出1.0%区およびクジン熱水抽出0.5%+エタノール抽出0.5%区の白点虫寄生数はそれぞれ、259.6±57.0個体/尾(平均値±標準偏差)、111.9±48.1個体/尾、125.8±41.1個体/尾、210.4±47.2個体/尾、201.0±54.8個体/尾、76.0±48.5個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図7に示した。クジン熱水抽出0.5%区、クジン熱水抽出1.0%区およびクジン熱水抽出0.5%+エタノール抽出0.5%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。したがって、抗白点虫効果をもたらす有効成分は熱水抽出物に多く含まれることが判明した。しかしながら、クジン熱水抽出0.5%+エタノール抽出0.5%区の寄生数は、クジン熱水抽出0.5%区と比較し少ない傾向があり(P=0.16)、クジン熱水抽出1.0%区と比較した場合は有意に少ない結果となった(P<0.05)。したがって、クジン熱水抽出物とエタノール抽出物両方を餌に添加することで、熱水抽出物単独添加と比べ効果が増強されることが考えられた。すなわち、有効成分は熱抽出物およびエタノール抽出物両方に含まれることが判明した。
【実施例12】
【0032】
<熱水抽出物および熱水抽出残渣エタノール抽出物添加による抗白点虫相乗効果有無の検討(追試)>
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重6g)各区5尾を用いて、白点虫による攻撃試験を行った。試験区は、クジン水抽出物を原末換算で0.5%添加した飼料を給餌する区(クジン熱水抽出0.5%区)、クジン熱水抽出物を0.5%およびクジン熱水抽出残渣エタノール抽出物を0.5%添加した飼料を給餌する区(クジン熱水抽出0.5%+エタノール抽出0.5%区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計3区とした。給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。
クジン抽出物は実施例1と同様にして得た。クジン含有飼料は、実施例3と同様にして得た。コントロール区は、市販の初期試料用ペレットのみを給餌した。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始3週間後に、各水槽に50,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることにより行った。その後2日間、試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は24〜25℃であった。試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
コントロール区、クジン熱水抽出0.5%区、およびクジン熱水抽出0.5%+エタノール抽出0.5%区の白点虫寄生数はそれぞれ、146.4±33.2個体/尾(平均値±標準偏差)、31.0±17.9個体/尾、10.4±4.3個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図9に示した。クジン熱水抽出0.5%区およびクジン熱水抽出0.5%+エタノール抽出0.5%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。また、クジン熱水抽出0.5%+エタノール抽出0.5%区の寄生数は、クジン熱水抽出0.5%区と比較し、有意に少ない結果となった(P<0.05)。クジン熱水抽出物と熱水抽出物残渣エタノール抽出物両方を餌に添加することで、熱水抽出物単独添加と比べ効果が増強されることが再現された。
【実施例13】
【0033】
<有効成分の検討−マトリン添加飼料の抗白点虫効果>
クジンの有効成分の一つとして、アルカロイドのマトリンが挙げられる。そこで、マトリン添加飼料の抗白点虫効果について検討した。
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重55g)各区10尾を用いて、白点虫による攻撃試験を行った。試験区は、市販されているマトリン(ICN
Biomedical Inc社製)を飼料1kgに外添で0、20、100、500mg添加した飼料を給餌する区(コントロール区、マトリン20mg区、マトリン100mg区、マトリン500mg区)の計4区とした。給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。
マトリン含有飼料の製造は、マトリンを有機溶剤に溶解し、市販の初期飼料用ペレットに噴霧することで行った。マトリンを100mg/100mLの割合でエタノールに溶解し、本溶解溶液を市販の初期飼料用ペレット1kgに対し、マトリン20mg区では20mL、マトリン100mg区では100mL、マトリン500mg区では500mLをそれぞれ噴霧した。噴霧後、飼料を40℃で5時間乾燥させた。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始3週間後に、各水槽に50,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることにより行った。その後2日間、試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は24〜25℃であった。試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
コントロール区、マトリン20mg区、マトリン100mg区、マトリン500mg区の白点虫寄生数はそれぞれ、345.9±134.1個体/尾(平均値±標準偏差)、380.6±108.0個体/尾、281.6±90.9個体/尾、153.4±78.4個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図10に示した。マトリン500mg区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。したがって、クジン抽出物中の抗白点虫有効成分の一つはマトリンであることが判明した。
【実施例14】
【0034】
<マトリン添加飼料の抗白点虫効果(追試)>
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重55g)各区16尾を用いて、白点虫による攻撃試験を行った。試験区は、マトリンを飼料1kgに外添で500mg添加した飼料を給餌する区(マトリン500mg区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計2区とした。給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。
マトリン添加飼料は実施例14同様に製造した。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始9日後に、各水槽に50,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることにより行った。その後2日間、試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は24〜25℃であった。試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
コントロール区、マトリン500mg区の白点虫寄生数はそれぞれ、38.7±20.6個体/尾(平均値±標準偏差)、7.6±5.9個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図11に示した。マトリン500mg区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較して有意に少ない値となった(P<0.01)。実施例14の結果が再現された。
【実施例15】
【0035】
<クジン以外のマトリンを含む生薬抽出物の抗白点虫効果>
生薬である山豆根の抽出物は、クジン同様にマトリンを含むことが知られている。そこで、山豆根抽出物添加飼料の白点虫に対する防除効果を検討した。
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重65g)各区8尾を用いて、白点虫による攻撃試験を行った。試験区は、山豆根20%エタノール抽出物を原末換算で0.5または1.0%添加した飼料を給餌する区(山豆根0.5%区、山豆根1.0%区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計3区とした。給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。
山豆根20%エタノール抽出物は、実施例2と同様にして得、山豆根含有飼料は実施例4と同様にして製造した。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始18日後に、各水槽に110,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることにより行った。その後2日間、試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は24〜25℃であった。試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
コントロール区、山豆根0.5%区、山豆根1.0%区の白点虫寄生数はそれぞれ、444.3±131.2個体/尾(平均値±標準偏差)、235.9±73.0個体/尾、146.3±55.6個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図12に示した。山豆根0.5%区、山豆根1.0%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。したがって、マトリンを含む生薬抽出物添加飼料は白点虫感染に対し有効であることが確認された。
【実施例16】
【0036】
<クジン抽出物添加飼料のマダイ摂餌に及ぼす影響とその改善法−クジン抽出物のコーティングによる食欲改善>
クジン抽出物添加餌料(原末換算で0.5%以上)をマダイに投与した場合、摂餌が不活発になる傾向がある。この現象は数グラムの稚魚では顕著ではないが、50g以上の魚でよく観察される。クジン抽出物は苦いことから、この苦味が摂餌低下を引き起こしている可能性がある。本試験では50g以上のマダイにクジン抽出物添加飼料を給餌し、食欲がどの低下するのか、クジン抽出物の苦味成分が溶出しないように本抽出物をコーティングすることで食欲が改善されるかを検討した。
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重71.7g)各区13尾を用いて、給餌試験を行った。試験区は、クジン熱水およびエタノール抽出物それぞれを原末換算で1.0%添加した飼料を給餌する区(クジン抽出物1.0%添加区)、コーティングしたクジン抽出物を原末換算で1.0%添加した飼料を給餌する区(コーティングクジン抽出物1.0%添加区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計3区とした。
クジン抽出物のコーティングは、カゼイン、カラギナン、クジン抽出物(熱水抽出物:Et抽出物=1:1)を10:1:15の比率で混合することで行った。方法を以下に示す。クジン抽出物の調整法1で得た水抽出物100g、エタノール抽出物50gを混合し、100℃の熱水中でカゼイン100gを加え十分に混合した。水酸化ナトリウム水溶液でpHを7に調整し、カラギナン10gを加えて滑らかになるまでよく攪拌した。この混合物を室温まで冷やした後、混合物を凍結乾燥機で乾燥させた。この乾燥物をミキサーで粉砕し、300μmメッシュで粒度の低い粉体を得た。この粉体をクジン抽出コーティング物とした。クジン抽出コーティング物添加飼料の作製は以下に従って行った。ホワイトミール、オキアミミール、スクイッドミール、デキストリン、イワシオイル、ビタミン混合物、ミネラル混合物、第1リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、グルテン、グアガムを常法に従い混合し、クジン抽出コーティング物を原末換算で飼料重量当り1.0%量になるように加えよく混合した。混合物に水を加え造粒機でペレットした後、40℃で3時間乾燥させた。本飼料をクジン抽出物コーティング飼料とした。また、コントロール区の飼料はクジン抽出コーティング物を加えず作製したペレットを、クジン1.0%添加飼料はコントロール区のペレットにクジン熱水およびエタノール抽出物それぞれを原末換算で1.0%噴霧したものとした。
給餌試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を飽食になるまで給餌することで行った。給餌回数は1日に2回とし、その時間は午前9:00と午後16:00とした。毎日の各区給餌量を記録した。試験期間は13日間とし、試験期間中の水温は16〜17℃であった。試験期間中の換水は13回転/日とした。
日間摂餌率の結果を図13に示した。コントロール区、クジン抽出物1.0%添加区、コーティングクジン抽出物1.0%添加区の魚体重当りの摂餌率は、それぞれ、0.9±0.2%/日、0.4±0.2%/日、0.6±0.2%/日であった。クジン抽出物1.0%添加区、コーティングクジン抽出物1.0%添加区の摂餌率は、コントロール区と比較し有意に低い値となった(P<0.01)。しかし、コーティングクジン抽出物1.0%添加区の摂餌率は、クジン抽出物1.0%添加区と比較し有意に高い値となった(P<0.01)。したがって、クジン抽出物添加飼料はマダイの食欲を低下させる場合があるが、クジン抽出物をコーティングして苦味成分が溶出しないようにすることで、その食欲は改善されることが示された。
【実施例17】
【0037】
<クジン抽出物添加飼料のマダイ摂餌に及ぼす影響の改善法−モイスト飼料による食欲改善効果>
モイストペレットは粉体であるマッシュとアジなどの生の魚を混合して得られる飼料である。魚はモイストペレットに対し嗜好性が高く、モイストペレットは魚の摂餌行動を誘引する。本試験は、モイストペレットにクジン抽出物を添加することで、マダイの食欲が改善されるか否かを検討した。
疾病の認められていないマダイ(平均魚体重148.8g)各区10尾を用いて、給餌試験を行った。試験区は、クジン熱水およびエタノール抽出物それぞれを原末換算で0.4%添加したモイストペレット飼料を給餌する区(クジン0.4%モイスト区)、クジン熱水およびエタノール抽出物それぞれを原末換算で0.7%添加したモイストペレット飼料を給餌する区(クジン0.7%モイスト区)、無添加モイストペレット飼料を給餌する区(コントロール区)の計3区とした。
クジン抽出物は調整法1と同様にして得た。モイストペレットの製造は以下の方法で行った。ミンチャーに、生餌(アジ):マッシュ=1:1の割合で入れて混合し、そこにクジン抽出物を原末換算で0.4%もしくは0.7%となるように加えさらに混合した。混合後、造粒機でペレットとした。コントロール区は、クジン抽出物を加えないモイストペレットのみを給餌した。
給餌試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を飽食になるまで給餌することで行った。給餌回数は1日に2回とし、その時間は午前9:00と午後16:00とした。毎日の各区給餌量を記録した。試験期間は14日間とし、試験期間中の水温は 19±1℃であった。試験期間中の換水は22回転/日とした。
日間摂餌率の結果を図14に示した。コントロール区、クジン0.4%モイスト区、クジン0.7%モイスト区の摂餌率は、それぞれ、2.3±0.5%、2.2±0.5%、2.4±0.5%であり、いずれの区も同等の摂餌率となった。したがって、クジン抽出物をモイストペレットに混合し給餌することで、魚の食欲を低下させることなくクジン抽出物を投与できることが示された。
【実施例18】
【0038】
<マダイ以外の魚種に対するクジン抽出物添加飼料の抗白点虫効果−ヒラメの白点虫に対する効果>
疾病の認められていないヒラメ(平均魚体重11.5g)各区17尾を用いて、白点虫に対するクジン抽出物の飼料添加効果を検討した。試験区は、クジン20%エタノール抽出物を原末換算で0.5または2.0%添加した飼料を給餌する区(クジン0.5%区、クジン2.0%区)、および無添加飼料を給餌するコントロール区の計3区とした。また給餌量は、各区魚体重に対し3%/日とした。クジン抽出物は実施例2と同様にして得た。クジン含有飼料は、実施例4と同様にして得た。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始2週間後に、各水槽に85,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、2時間止水の状態で感染させることにより行った。その後2日間、試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は24〜25℃であった。試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その片側の鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
試験の結果、コントロール区、クジン0.5%区、クジン2.0%区の白点虫寄生数は、それぞれ、7.0±6.1個体/尾(平均値±標準偏差)、1.5±1.8個体/尾、0.3±0.5個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図15に示した。クジン0.5%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意差はないものの少ない傾向が認められた(P=0.26)。クジン2.0%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.01)。クジン抽出物添加飼料はヒラメの白点虫に対してもその感染を阻止することが示された。
本実施例の結果より、クジン抽出物添加飼料は各種魚類の白点虫に対してもその感染を阻止すると考えられる。
【実施例19】
【0039】
<ヒラメの白点虫に対するクジン抽出物と山豆根抽出物の効果>
マダイを用いた実施例14〜16でクジン抽出物中の抗白点虫有効成分の一つはマトリンであること、マトリンを含む生薬である山豆根抽出物に、クジン抽出物同様に白点虫感染に対する飼料添加効果が認められた。そこで、ヒラメを用いて山豆根抽出物添加飼料の白点虫に対する防除効果を検討した。
疾病の認められていないヒラメ(平均魚体重11.4g)各区17尾を用いて、白点虫に対する山豆根抽出物およびクジン抽出物の飼料添加効果を検討した。試験区は、山豆根20%エタノール抽出物を原末換算で0.5または1.0%添加した飼料を給餌する区(山豆根0.5%区、山豆根1.0%区)、クジン20%エタノール抽出物を原末換算で0.5または1.0%添加した飼料を給餌する区(クジン0.5%区、クジン1.0%区)、無添加飼料を給餌する区(コントロール区)の計5区とした。給餌は1日2回とし、飽食とした。山豆根20%エタノール抽出物は実施例2と同様にして得た。山豆根含有飼料は、作製実施例4と同様にして得た。
攻撃試験は、魚をそれぞれ100リットル水槽に収容して各試験飼料を給餌し、給餌開始2ヶ月後に、各水槽に58,000個体の白点虫孵化仔虫を入れ、3時間止水の状態で感染させることにより行った。その後2日間、試験飼料にて継続飼育した。試験期間中の水温は24±1℃であった。試験期間中の換水は24回転/日とした。
評価は、攻撃開始3日後に全試験魚をサンプリングし、その片側の鰓に寄生している本虫の寄生数、および補正値を比較することで行った。
コントロール区、山豆根0.5%区、山豆根1.0%区、クジン0.5%区、クジン1.0%区の白点虫寄生数はそれぞれ、111.7±88.4個体/尾(平均値±標準偏差)、56.9±30.5個体/尾、65.9±95.8個体/尾、41.7±25.8個体/尾、70.9±65.2個体/尾であった。これらの値の補正値について、コントロール区の値を1とした割合で図16に示した。クジン0.5%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意に少ない値となった(P<0.05)。山豆根抽出物0.5%区および1.0%区の本虫の鰓への寄生数は、コントロール区と比較し有意差はないものの少ない傾向が認められた(0.5%区のP値は0.069、1.0%区のP値は0.212)。山豆根抽出物添加飼料はヒラメの白点虫に対してもその感染を阻止することが判明した。また、クジン抽出物添加飼料はヒラメの白点虫に対してもその感染を阻止することが再現された。
したがって、マトリンを含む生薬抽出物を飼料に添加することで、各種魚類の白点虫感染に対し有効であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、白点虫等の寄生虫に対し高い抗寄生虫活性を有し、かつ、薬剤の副作用や魚への薬剤残留による影響が極めて少ない組成物を提供することができる。すなわち、薬浴剤が使用できない場合にも使用できる経口投与可能な抗寄生虫症作用を有する組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】クジン抽出物添加飼料の抗白点虫効果を示した説明図である(*P<0.01)。
【図2】クジン抽出物添加飼料の抗白点虫効果(短期投与)を示した説明図である(*P<0.01)。
【図3】クジン抽出物添加飼料の白点虫駆虫効果を示した説明図である。
【図4】クジン抽出物添加飼料の白点虫感染に対する治療・生残改善効果(試験期間中の水温推移)を示した説明図である。
【図5】クジン抽出物添加飼料の白点虫感染に対する治療・生残改善効果(攻撃20日後の寄生虫数の比較)(P<0.01)を示した説明図である。
【図6】クジン抽出物添加飼料の白点虫感染に対する治療・生残改善効果(攻撃30日後の寄生虫数の比較)(P<0.01)を示した説明図である。
【図7】クジン抽出物添加飼料の白点虫感染に対する治療・生残改善効果 (生残率の比較)(P<0.01)を示した説明図である。
【図8】熱水抽出物とエタノール抽出物の抗白点虫効果の比較と両抽出物添加による相乗効果有無 (*P<0.01)を示した説明図である。
【図9】熱水抽出物とエタノール抽出物添加による抗白点虫相乗効果有無(追試) (*P<0.01)を示した説明図である。
【図10】マトリン添加飼料の抗白点虫効果(*P<0.01)を示した説明図である。
【図11】マトリン添加飼料の抗白点虫効果(追試)(*P<0.01)を示した説明図である。
【図12】マトリンを含む生薬抽出物の抗白点虫効果(山豆根抽出物)(*P<0.01)を示した説明図である。
【図13】クジン抽出物のコーティングによる食欲改善を示した説明図である。
【図14】クジン抽出物のモイスト飼料へ添加することによる食欲改善を示した説明図である。
【図15】ヒラメにおけるクジン抽出物添加飼料の抗白点虫効果(*P<0.01)を示した説明図である。
【図16】ヒラメにおけるクジン抽出物および山豆根添加飼料の抗白点虫効果(*P<0.05)を示した説明図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリンを含有する魚類用の経口投与可能な寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項2】
マトリンを含有する組成物がクジン、山豆根の粉砕物または抽出物である請求項1の寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項3】
クジンの抽出物が水及び/又は有機溶媒抽出物である請求項2の寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項4】
魚類が海産魚類である請求項1、2又は3の寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項5】
魚類が分類上スズキ目、フグ目、カレイ目、サケ目、ナマズ目、コイ目に属する魚種である請求項1、2又は3の寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項6】
寄生虫症が原生動物繊毛虫類、又は、扁形動物単生綱に属する寄生虫によるものである請求項1ないし5いずれかの寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項7】
寄生虫症が原生動物繊毛虫類に属する白点虫、ブルークリネラ、キロドネラ、エピスチリス、スクーチカ、トリコジナ、ネオベネデニア、又は、扁形動物単生綱に属するネオベネデニア、ダクチロギルス、シュードダクチロギルス、ミクロコチレ、ビバギナ、ヘテラキシネ、ヘテロボツリウム、ネオヘテロボツリウムによるものである請求項1ないし5いずれかの寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項8】
マトリンを含有する組成物を経口投与して魚類の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項9】
マトリン換算で魚体重1kg当たり1〜50mg/日、クジン原末換算で魚体重1kg当たり10〜2000mg/日、あるいは山豆根原末換算で魚体重1kg当たり10〜2000mg/日を経口投与するものである請求項8の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項10】
マトリンを含有する組成物を添加した飼料を給餌して魚類の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項11】
飼料が、マトリンを含有する組成物を養魚用飼料にマトリン換算で0.002〜0.1%、クジン原末換算で0.1〜5%、あるいは山豆根原末換算で0.1〜5%添加したものである請求項10の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項12】
マトリンを含有する組成物が苦味成分を溶出しにくくする加工されたものである請求項10又は11の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項13】
マトリンを含有する組成物の苦味成分が溶出しにくくなるための加工がカプセル化、マイクロカプセル化、コーティングされた錠剤化、又は、水不溶性成分と共に粉末化したものである請求項12の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項14】
マトリンを含有する組成物がクジン、山豆根の粉砕物または抽出物である請求項8ないし13いずれかの寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項15】
抽出物が水及び/又は有機溶媒抽出物である請求項14の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項16】
飼料がモイストペレット、EP(Extruded Pellet)である請求項10ないし13いずれかの寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項17】
魚類が海産魚類である請求項8ないし16いずれかの寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項18】
魚類が分類上スズキ目、フグ目、カレイ目、サケ目、ナマズ目、コイ目に属する魚種でである請求項8ないし17いずれかの寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項19】
寄生虫症が原生動物繊毛虫類、又は、扁形動物単生綱に属する寄生虫によるものである請求項8ないし18いずれかの寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項20】
寄生虫症が原生動物繊毛虫類に属する白点虫、ブルークリネラ、キロドネラ、エピスチリス、スクーチカ、トリコジナ、ネオベネデニア、又は、扁形動物単生綱に属するネオベネデニア、ダクチロギルス、シュードダクチロギルス、ミクロコチレ、ビバギナ、ヘテラキシネ、ヘテロボツリウム、ネオヘテロボツリウムによるものである請求項8ないし18いずれかの寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項1】
マトリンを含有する魚類用の経口投与可能な寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項2】
マトリンを含有する組成物がクジン、山豆根の粉砕物または抽出物である請求項1の寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項3】
クジンの抽出物が水及び/又は有機溶媒抽出物である請求項2の寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項4】
魚類が海産魚類である請求項1、2又は3の寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項5】
魚類が分類上スズキ目、フグ目、カレイ目、サケ目、ナマズ目、コイ目に属する魚種である請求項1、2又は3の寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項6】
寄生虫症が原生動物繊毛虫類、又は、扁形動物単生綱に属する寄生虫によるものである請求項1ないし5いずれかの寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項7】
寄生虫症が原生動物繊毛虫類に属する白点虫、ブルークリネラ、キロドネラ、エピスチリス、スクーチカ、トリコジナ、ネオベネデニア、又は、扁形動物単生綱に属するネオベネデニア、ダクチロギルス、シュードダクチロギルス、ミクロコチレ、ビバギナ、ヘテラキシネ、ヘテロボツリウム、ネオヘテロボツリウムによるものである請求項1ないし5いずれかの寄生虫症の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項8】
マトリンを含有する組成物を経口投与して魚類の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項9】
マトリン換算で魚体重1kg当たり1〜50mg/日、クジン原末換算で魚体重1kg当たり10〜2000mg/日、あるいは山豆根原末換算で魚体重1kg当たり10〜2000mg/日を経口投与するものである請求項8の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項10】
マトリンを含有する組成物を添加した飼料を給餌して魚類の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項11】
飼料が、マトリンを含有する組成物を養魚用飼料にマトリン換算で0.002〜0.1%、クジン原末換算で0.1〜5%、あるいは山豆根原末換算で0.1〜5%添加したものである請求項10の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項12】
マトリンを含有する組成物が苦味成分を溶出しにくくする加工されたものである請求項10又は11の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項13】
マトリンを含有する組成物の苦味成分が溶出しにくくなるための加工がカプセル化、マイクロカプセル化、コーティングされた錠剤化、又は、水不溶性成分と共に粉末化したものである請求項12の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項14】
マトリンを含有する組成物がクジン、山豆根の粉砕物または抽出物である請求項8ないし13いずれかの寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項15】
抽出物が水及び/又は有機溶媒抽出物である請求項14の寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項16】
飼料がモイストペレット、EP(Extruded Pellet)である請求項10ないし13いずれかの寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項17】
魚類が海産魚類である請求項8ないし16いずれかの寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項18】
魚類が分類上スズキ目、フグ目、カレイ目、サケ目、ナマズ目、コイ目に属する魚種でである請求項8ないし17いずれかの寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項19】
寄生虫症が原生動物繊毛虫類、又は、扁形動物単生綱に属する寄生虫によるものである請求項8ないし18いずれかの寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【請求項20】
寄生虫症が原生動物繊毛虫類に属する白点虫、ブルークリネラ、キロドネラ、エピスチリス、スクーチカ、トリコジナ、ネオベネデニア、又は、扁形動物単生綱に属するネオベネデニア、ダクチロギルス、シュードダクチロギルス、ミクロコチレ、ビバギナ、ヘテラキシネ、ヘテロボツリウム、ネオヘテロボツリウムによるものである請求項8ないし18いずれかの寄生虫症を予防及び/又は治療する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−28072(P2006−28072A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208015(P2004−208015)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000004189)日本水産株式会社 (119)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000004189)日本水産株式会社 (119)
【Fターム(参考)】
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