説明

鳥害防止用アークホーン

【課題】鳥類が休止することができないようにするだけでなく、作業者の作業に支障をきたさないようにした鳥害防止用アークホーンを提供する。
【解決手段】この鳥害防止用アークホーンは、碍子連10の両端部に先端側が近接する方向に傾斜した姿勢で取り付けられた鳥害防止用アークホーンであって、周方向に回転する筒状の回転体50と回転しない非回転部42とが軸方向に交互に設けられている。また、縮径した芯体部41,41,…を不連続に複数設け、該芯体部41と芯体部41との間を拡径した非回転部42としたロッド40が備えられ、前記回転体50が外径を非回転部42の外径と同一又はほぼ同一として、芯体部41を外嵌している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空送電線を架設する鉄塔などに固定された碍子連(長幹碍子と懸垂碍子の両方を含む。)に取り付けられ、落雷による碍子連への被害を最小限とするためのアークホーンにおいて、飛来する鳥類によって地絡事故が起きないようにした鳥害防止用アークホーンに関する。
【背景技術】
【0002】
送電線を架設する鉄塔などには、図4に示すように、碍子連10が水平姿勢で固定され、この碍子連10の両端部にアークホーン20,20が取り付けられている。アークホーン20,20は、基端部20a,20aが碍子連10の各端部に取り付けられ、先端部20b,20bが近接するように先端側が屈曲されている。落雷時に、アークホーン20,20間に雷電流が通電することにより、碍子連10の破壊が防止される。
【0003】
そして、154kV以下、特に66kVや77kVの送電線では、2本のアークホーン20,20の先端部20b,20bの間隔が短くされている(66kVでは約40cm)。したがって、一般的なアークホーン20,20においては、鳥類が飛来して一方のアークホーン20で休止した後、飛び立つときに、広げた羽や翼が他方のアークホーン20に接触し、地絡事故を起こすことがある。
【0004】
そこで、飛来した鳥類に起因する地絡事故が起きないようにした鳥害防止用アークホーンが各種提供されている。
【0005】
また、特許文献1には、図5に示すように、アークホーン20にワンタッチ的に、かつ、安定して取り付けられるようにしたアークホーン用鳥害防止具30についての発明が記載されている。このアークホーン用鳥害防止具30は、アークホーン20全体をカバーする基体部材31の表面にバリヤー棒体32,32,…を多数樹立したものとされている。また、基体部材31とバリヤー棒体32,32,…とは、電気絶縁性及び耐候性に優れた合成樹脂で一体成形されている。
【0006】
そして、基体部材31は、アークホーン20の湾曲に副うように湾曲可能な半円筒体で形成され、両端に相互に逆向きとなる断面C形状の開口を有する挟着部33,33が設けられている。このアークホーン用鳥害防止具30は、挟着部33,33の開口が相互に逆向き位置に設けられており、挟着部33,33の開口をアークホーン20の側面に押し付けて嵌挿することで、安定した状態に取り付けられる。そして、バリヤー棒体32,32,…によって、鳥類が飛来しても、アークホーン20で休止することができないようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−98450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたアークホーン用鳥害防止具30は、耐候性に優れた合成樹脂で成形されているものの、経年劣化は避けられず、長年の使用によって挟着部33がアークホーン20,20から脱落することがあり得る。また、作業者がアークホーン20,20を掴んで作業したり、身を乗り出して作業したりする場合があるにもかかわらず、特許文献1に記載されたアークホーン用鳥害防止具30では、多数のバリヤー棒体32,32,…が樹立されているため、その作業に支障をきたすものとなっている。
【0009】
そこで、本発明は、鳥類が休止することができないようにするだけでなく、作業者の作業に支障をきたさないようにした鳥害防止用アークホーンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る鳥害防止用アークホーンは、碍子連の両端部に先端側が近接する方向に傾斜した姿勢で取り付けられた鳥害防止用アークホーンであって、周方向に回転する筒状の回転体と回転しない非回転部とが軸方向に交互に設けられていることを特徴としている。
【0011】
この鳥害防止用アークホーンによれば、飛来した鳥類がアークホーンで休止しようとしても、回転体が回転することにより、鳥類は、回転体に掴まることができないことから、休止することができない。したがって、この鳥害防止用アークホーンは、鳥類の羽や翼が接触することがないものとされている。そして、この鳥害防止用アークホーンは、作業者が非回転部を掴んで作業することができるものとされている。
【0012】
また、前記本発明に係る鳥害防止用アークホーンにおいて、縮径した芯体部を不連続に複数設け、該芯体部と芯体部との間を拡径した非回転部としたロッドが備えられ、前記回転体が外径を非回転部の外径と同一又はほぼ同一として、芯体部を外嵌していることことが好ましい。
【0013】
この鳥害防止用アークホーンによれば、ロッドに芯部が設けられることにより、非回転部と同一又はほぼ同一の外径とされた回転体が芯部を外嵌し、回転体と非回転体とが同一又はほぼ同一の外径で並ぶように配列され、回転体が特に作業者の作業の邪魔になることがないようにされている。
【0014】
また、前記本発明に係る鳥害防止用アークホーンにおいて、前記回転体の内面及び下側となる端面の少なくとも一方に1本又は複数本の溝が形成されていることが好ましい。
【0015】
この鳥害防止用アークホーンによれば、回転体とロッドとの間に雨水が浸透しても、雨水が溝を伝って排出され、溜まった雨水が原因で鳥害防止用アークホーンが錆びないようにすることができる。
【0016】
また、前記本発明に係る鳥害防止用アークホーンにおいて、均一の外径を有するロッドが備えられ、前記回転体が、ロッドを固定した状態に外嵌する内側筒体と、該内側筒体を間隔を空けて取り囲む外側筒体と、内側筒体と外側筒体との間に配置される転動体とを備えたものとされてもよい。
【0017】
この鳥害防止用アークホーンによれば、回転体は、内側筒体がロッドを外嵌するものとされているため、既存のアークホーンに後付することができるものとされている。そして、転動体を介して外側筒外が内側筒体を回転しているため、内側筒体がロッドを保持した状態で外側筒体が周方向に回転することができるようにされている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、周方向に回転する回転体と回転しない非回転部とを軸方向に交互に設けた鳥害防止用アークホーンが提供されるため、作業者の作業性を低下させることなく、鳥類が休止できないようすることができ、鳥類の羽や翼が鳥害防止用アークホーンに接触しないようにされていることにより、鳥類に起因する地絡事故が発生しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る鳥害防止用アークホーンの第1の実施形態を示す概略正面図及び要部を拡大した概略正面図及びさらに要部を拡大した断面正面図である。
【図2】本発明に係る鳥害防止用アークホーンを構成する回転体の変形例を示す概略斜視図である。
【図3】本発明に係る鳥害防止用アークホーンの第2の実施形態を示す要部拡大概略断面正面図である。
【図4】従来のアークホーンの一例を示す正面図である。
【図5】従来のアークホーン用鳥害防止具を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施の形態1〕
本発明に係る鳥害防止用アークホーンの第1の実施の形態について図1を参照しながら説明する。
【0021】
この鳥害防止用アークホーンは、2本の変形円柱状のロッド40,40の基端部40a,40aが碍子連10の各端部に取り付けられ、先端部40b,40bが近接するように先端側が屈曲して傾斜姿勢とされている。そして、各ロッド40は、先端側において、縮径した芯体部41,41,…を不連続に複数設け、芯体部41と芯体部41との間に拡径した非回転部42を設けたものとされている。
【0022】
芯体部41及び非回転部42は、全て同じ長さとされ、等間隔に設けられているが、長さを変更したり、間隔を不均等にしたりしてもよい。また、芯体部41と非回転部42とは、同じ長さとしてもよいし、異なる長さとしてもよい。
【0023】
いずれにしても、各芯体部41には、周方向に回転する筒状の回転体50が外嵌される。回転体50の内径は、芯体部41の外径よりもわずかに大きく、回転体50が周方向に回転することができるようにされている。また、回転体50の外径は、非回転部42の外径と同一又はほぼ同一とされている。また、回転体50は、各端面から長さ方向の中間部の方に次第に拡径するいわゆる太鼓形状としてもよい。
【0024】
このような回転体50は、樹脂又はロッド40と同じ材質によって成形される。ロッド40及び回転体50がステンレス鋼で成形される場合は、雨水が両者間に溜まって錆が生じないようにするため、図2に示すように、回転体50の内面及び下側の端面に溝51,52を形成し、雨水が溝から排出するようにすることが好ましい。なお、図示しないが、溝51,52は、回転体50の内面のみ、又は下側の端面にのみ形成してもよい。
【0025】
また、図示しないが、回転体50の内面に多数の疣々状の突起を設けることによって、回転体50とロッド40との間に雨水が溜まらないようにするとともに、回転体50とロッド40との摩擦抵抗を低減し、回転体50がスムーズに回転するようにしてもよい。
【0026】
また、回転体50が弾性変形することができる材質によって成形されているときは、両端面間に亘るスリット(図示せず)が形成され、このスリットを拡開して芯体部41に嵌め込み、その後、スリットが狭まるようにして回転体50を芯体部41に取り付けてもよい。
【0027】
あるいは、ロッド40が芯体部41と非回転部42とを別体で成形され、直列に組み付けるようにしてもよい。この場合、非回転部42の一方又は両方の端面に芯体部41の先端部を嵌め込む軸孔(図示せず)を形成してもよい。そして、芯体部41の少なくとも先端部に雄ネジ(図示せず)を形成し、非回転部42の軸孔に雌ネジ(図示せず)を形成し、両ネジが螺合することによって、芯体部41と非回転部42とを一体化してもよいし、ネジを形成することなく、接着剤によって一体化してもよい。
【0028】
いずれにしても、芯体部41は、回転体50よりも長く形成され、芯体部41と非回転部42とを一体化していない状態において、回転体50が芯体部41を外嵌し、その後、芯体部41の先端部を非回転部42の軸孔に嵌め込むことによって組み立てられる。したがって、この回転体50は、スリット(図示せず)を形成していないものとすることができる。
【0029】
そして、この第1の実施形態の鳥害防止用アークホーンは、鳥類が飛来し、回転体50で休止しようとすると、回転体50が回転するため、鳥類は休止することができない。したがって、この鳥害防止用アークホーンは、鳥類の羽や翼が接触しないため、鳥類に起因する地絡事故が起きないものとされている。
【0030】
また、作業者は、この鳥害防止用アークホーンの非回転部42を掴んで作業することができ、さらに、身を乗り出して作業しても、突き刺さるような棒体が樹立されていないことから、この鳥害防止用アークホーンは、作業者に危険を及ぼさないものとされている。
【0031】
なお、この鳥害防止用アークホーンは、落雷時に2本の鳥害防止用アークホーン間に雷電流が通電することによって碍子連10が破壊されないという本来の機能を損ねないことはいうまでもない。
【0032】
〔実施の形態2〕
本発明に係る鳥害防止用アークホーンの第2の実施の形態について図3を参照しながら説明する。この鳥害防止用アークホーンは、既設のアークホーンに後付することができるようにされている。
【0033】
そのため、この鳥害防止用アークホーンは、既設のアークホーンを、均一の外径を有するロッド60として使用する。そして、ロッド60に複数の回転体70,70,…が取り付けられる。回転体70と回転体70との間で露出しているロッドが非回転部62とされる。
【0034】
そして、回転体70は、ロッド60を固定した状態に外嵌する内側筒体71と、この内側筒体71を間隔を空けて取り囲む外側筒体72と、内側筒体71と外側筒体72との間に配置される複数の転動体73,73,…とを備えたものとされている。したがって、この回転体70は、ベアリングのように構成され、外側筒体72が転動体73上を円滑に回転する。
【0035】
また、内側筒体71は、半割にされた部材を円筒状に組み合わせたり、ベルトをロッド60に巻き付けたりすることによってロッド60に固定される。そして、外側筒体72は、内面側に転動体73を収納する凹部を設けたものとされ、半割にされた部材を組み合わせて円筒状にされる。
【0036】
また、外側筒体72が滑り落ちないように、内側筒体71の下端側端縁に外向きのフランジ(図示せず)を設け、あるいは、内側筒体71外周であって、転動体73と干渉しない位置に、小さな突起又はフランジ(いずれも図示せず)を設け、外側筒体72にこの突起又はフランジを嵌める溝(図示せず)を形成したものとしてもよい。
【0037】
また、外側筒体72は、図示したように、凹部を設ける中間部が拡径し、両端側が次第に縮径するようないわゆる太鼓形状とされ、あるいは、図示しないが全長に亘って同じ外径とされる。
【0038】
なお、第2の実施形態の鳥害防止用アークホーンも、当然、新たに製造することができ、この場合は、内側筒体71や外側筒体72は、半割でなく、円筒状のものとし、ロッド60が内側筒体71を貫通するようにして組み立てることができる。
【0039】
そして、この第2の実施形態の鳥害防止用アークホーンも、鳥類が飛来し、回転体70に休止しようとしても、回転体70が回転するため、鳥類は休止することができない。したがって、この鳥害防止用アークホーンは、鳥類に起因する地絡事故が起きないものとされている。
【0040】
また、外側筒体72が太鼓形状とされていると、作業者の手が外側筒体72に当たっても、食込むことがないため、作業者は不快感が与えられないようにされている。逆に、全長に亘って同じ外径とされた外側筒体72は、作業者の手にくい込む状態となるため、作業者の手が滑らないようにすることができる。
【0041】
いずれにしても、作業者がこの鳥害防止用アークホーンの非回転部42を掴んで作業することができるだけでなく、身を乗り出して作業しても、突き刺さるような棒体が樹立されていないことから、この鳥害防止用アークホーンは、作業者の安全性を確保するものされている。
【0042】
なお、この鳥害防止用アークホーンは、落雷時に2本の鳥害防止用アークホーン間に雷電流が通電することによって碍子連10が破壊されないという本来の機能を損ねないことはいうまでもない。
【0043】
〔他の実施形態〕
本発明は、前記の実施形態に限定することなく種々変更することができる。鳥害防止用アークホーンは、例えば、第1の実施形態で説明した回転体50と第2の実施形態で説明した回転体70とを組み合わせてもよいし、傾斜した先端側だけでなく全長に亘って回転体50,70と非回転部42,62を設けてもよい。
【0044】
また、一方の鳥害防止用アークホーンとして一方の実施形態で説明した回転体50,70を設け、他方の鳥害防止用アークホーンとして他方の実施形態で説明した回転体70,50を設けてもよい。さらに、第1及び第2の実施形態の回転体50の表面に、作業者が掴んでも障害とならなない程度の低い突起(図示せず)を多数設けたものとしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…碍子連
40…ロッド
41…芯体部
42…非回転部
50…回転体
51…溝
52…溝
60…ロッド
62…非回転部
70…回転体
71…内側筒体
72…外側筒体
73…転動体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
碍子連の両端部に先端側が近接する方向に傾斜した姿勢で取り付けられた鳥害防止用アークホーンであって、
周方向に回転する筒状の回転体と回転しない非回転部とが軸方向に交互に設けられていることを特徴とする鳥害防止用アークホーン。
【請求項2】
縮径した芯体部を不連続に複数設け、該芯体部と芯体部との間を拡径した非回転部としたロッドが備えられ、前記回転体が外径を非回転部の外径と同一又はほぼ同一として、芯体部を外嵌していることを特徴とする請求項1に記載の鳥害防止用アークホーン。
【請求項3】
前記回転体の内面及び下側となる端面の少なくとも一方に1本又は複数本の溝が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の鳥害防止用アークホーン。
【請求項4】
均一の外径を有するロッドが備えられ、前記回転体が、ロッドを固定した状態に外嵌する内側筒体と、該内側筒体を間隔を空けて取り囲む外側筒体と、内側筒体と外側筒体との間に配置される転動体とを備えたものとされていることを特徴とする請求項2に記載の鳥害防止用アークホーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−192520(P2011−192520A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57257(P2010−57257)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】