説明

鶏糞の湿式酸化分解処理装置

【課題】 鶏糞を、その含有する無機、有機の固形物による支障なく十分に酸化分解し、低コスト、短時間で、環境に負荷を与えることなく無害に処理できる鶏糞の湿式酸化分解処理装置を提供する。
【解決手段】 鶏糞の湿式酸化分解処理装置を、鶏糞と水を攪拌して流動化させる攪拌タンクと、同攪拌タンクから供給された前記流動化した鶏糞から無機固形物を分離する遠心分離機と、同遠心分離機から供給された前記無機固形物を分離した鶏糞の固形有機物を磨砕し同鶏糞をスラリー化する磨砕機と、同スラリー化した鶏糞が連続的に供給されるとともに酸素または空気が供給されて亜臨界状態で前記鶏糞を湿式酸化分解処理する酸化分解処理炉とを有してなるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形有機物を含む有機廃液を、低コスト、短時間で、環境に負荷を与えることなく無害に処理し再利用できる湿式酸化分解処理装置に関し、特に鶏糞を支障なく処理できる湿式酸化分解処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に食品工業廃水等、動植物由来の有機物、バイオマス有機物としての固形有機物を含む有機廃液は、農地還元(畑地散布)、濃縮・乾燥の後に家畜飼料化、メタン発酵によるエネルギー回収、海洋投棄などの手段により処理されることが多かった。
【0003】
そのなかでも特に、鶏糞は処理手段が限られ、従来、燃焼処分または乾燥・肥料化が主な処理手段であった。しかし、燃焼処分は鶏糞中に含まれる無機固形物である灰分、砂等不燃物が残る問題の他、乾燥、燃焼時の悪臭の問題などから社会的には受け入れられ難くなっている。肥料化による農地還元は、需給バランスがとれず、二次汚染の心配があること、などの問題があるため、近年、新たな処理方法、処理装置が求められている。
【0004】
上記のような従来の処理手段に対して、一般的な有機廃棄物の処理システムとしては、例えば、特開2003−290738公報(特許文献1)に示されるような有機廃棄物及び有機廃水の処理システムが提案されており、再利用も行うものとしている。その記載されている概要を、図2の構成概要図に基づき以下説明する。
【0005】
図2において、101は破砕機であり、高速で回転し、有機廃棄物を裁断するカッター(刃)と、攪拌機を備えている。104は筒状の密閉式高圧容器からなる分解炉であり、外殻には、電気ヒーターを利用した加熱手段が設けられている。105は分解炉104と同様の筒状の密閉式高圧容器からなり、チタニア及びアルミナに、ルテニウム、パラジウムなどの貴金属を担持した触媒、または白金、ゼオライトのような触媒が充填されている触媒炉である。
【0006】
108は、炭酸ガスを選択的に吸着するゼオライトを封入した吸着塔等から構成される炭酸ガス濃縮装置である。109は、触媒(ルテニウム触媒)を封入した反応管、ヒーター等から構成される炭酸ガス還元装置である。110は、金属イオン成分(陽イオン成分)と無機栄養塩類(陰イオン成分)を除去あるいはその濃度を低減するためのゼオライトが封入された吸着塔などから構成される不純物吸着装置である。111は、ポリアミド重合膜とポリスルホンの膜からなるフィルタ(逆浸透膜)を備える高度浄水装置である。114は、メタンガスを燃料に発電する発電装置である。115は、水耕栽培により野菜や果樹などを生産する植物工場的な植物栽培装置等である。分解炉104、触媒炉105、炭酸ガス還元装置108はヒートポンプなどからなる廃熱回収システムに接続されており、回収された熱は熱交換器103において再利用される。
【0007】
なお、システムは、この他にも高圧圧送ポンプ102や、空気添加装置106、背圧バルブ107、気液分離装置113などを備える。
【0008】
このようにして構成されたシステムによって、有機廃棄物及び有機廃水を処理し、再利用する主な工程は概略以下のように提案されている。
【0009】
(1)破砕工程:
有機廃棄物及び有機廃水は、破砕機101に投入され、カッターで裁断され攪拌機で混合されたのちスラリー状にされ、高圧圧送ポンプ102を用いてバルブ112経由、熱交換器103に送り込まれ、熱交換器103によって予熱されたのち、分解炉104に送り込まれる。
【0010】
(2)酸化分解工程:
送り込まれたスラリー状物質は、分解炉104で酸化効率を高めるために空気添加装置106(あるいは酸素供給装置)により所定量の空気(酸素でもよい)が添加されるとともに、高温(250〜300℃)に加熱され、含有する有機物が酸化分解されて、炭酸ガスと分解できなかった少量の有機物とを含有する水溶液とからなる中間生成物に変換される。そして、炭酸ガスと分解できなかった少量の有機物を含む水溶液は、互いに交じり合った混合溶液として、高圧圧送ポンプ102の圧力により連続的に触媒炉105に送られる。なお、分解炉104で生じた廃熱は熱交換器103により回収される。
【0011】
(3)無機化工程:
触媒炉105に流入した混合水溶液に含まれる有機物は、空気添加装置106(あるいは酸素供給装置)を用いて触媒に循環接触されてさらに酸化分解され、混合溶液は水、炭酸ガス、窒素ガス等に分解されて完全に無機化される。そして、無機化された水溶液は、熱交換器103を経て背圧バルブ107で降圧されて気液分離器113に導入され、水溶液と炭酸ガスに分離され、それぞれ、不純物吸着装置110、炭酸ガス濃縮装置108に送り込まれる。なお、触媒炉105で生じた廃熱は熱交換器103により回収される。背圧バルブ107は、分解炉104、触媒炉105内を所定の高圧に維持するものである。
【0012】
(4)浄水工程:
無機化された水溶液は、不純物吸着装置110によって、陰電荷に帯電したゼオライトによって金属成分(陽イオン)が一定量除去されるとともに、陽電荷に帯電したゼオライトによって無機栄養塩類(陰イオン)が一定量取り除かれ、浄水として高度浄水装置111に送り込まれる。
【0013】
(5)再利用工程:
気液分離装置113で水溶液と分離された炭酸ガスは、炭酸ガス濃縮装置108による吸着と分離によって分離濃縮され、炭酸ガス還元装置109に送り込まれて水素ガスを加えられたのち、還元されてメタンガスと水に転換される。そして、メタンガスは燃料として発電装置114に送り込まれる。また、発電装置114から生じた炭酸ガスは、植物工場の植物栽培装置115に送り込まれ、光合成によって植物の成長に利用される。植物栽培装置115では不純物吸着装置110で回収した無機栄養塩類も肥料として再利用できる。
【0014】
しかしながら、上記のような処理システムにおいては、鶏糞のように、餌として供給された貝殻等の灰分や、鶏が呑み込んだ砂等の無機固形物を多量(約10%になることがある)に含む場合には、上述の「破砕工程」、「酸化分解工程」の実施が困難となり、また固形有機物であっても鶏糞に多量に含まれる羽根は分解しにくい上、上記の「破砕工程」で処理しきれず、有機廃棄物スラリーの製造が困難であって、羽根によるプロセスラインの閉塞の恐れがあり、上記のような連続処理システムの適用が困難であった。
【0015】
また、特開2000−254479公報(特許文献2)には、有機固形廃棄物を湿式酸化分解する装置が示されているが、10mm以下に粗粉砕後の有機固形廃棄物を先ず空塔反応器(図2の分解炉104に対応)に投入して100℃以上の高温、7MPa程度の高圧で湿式酸化分解し、空塔反応器には沈殿したスラッジを分離し排出するラインを設け、空塔反応器から取り出された処理液を固液分離器にかけてさらに除去した固形物を一部の液相とともに空塔反応器に戻し、他の一部の液相を空塔反応器からの気相とともに触媒反応器(図2の触媒炉105に対応)に送って触媒酸化による湿式酸化分解処理を行うというものである。
【0016】
特開2000−254479公報のものの場合、空塔反応器にスラッジ排出ラインを設け、空塔反応器と触媒反応器との間には固液分離器、循環ライン、液相ポンプ等、複雑な配管、弁、分離機器、駆動機器を設けることとなり、亜臨界状態(例えば略310℃以上、14MPa)での湿式酸化分解処理を行う場合には、亜臨界状態の高温、高圧下の装置構成が複雑であるためのコストアップ、操作困難性、適用温度、圧力の制限等の問題を引き起こすものであり、また、これを鶏糞処理に適用しようとすれば多量の無機固形物、分解し難く閉塞の原因となりやすい羽根の取り扱いの問題等があり、鶏糞処理装置としては適用し難い。
【0017】
【特許文献1】特開2003−290738公報(第3〜5頁、図1)
【特許文献2】特開2000−254479公報(第3、4頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
図2に示すように、有機廃棄物及び有機廃水の処理システムの基本的な考え方の例や、有機固形廃棄物の湿式酸化処理にかかる装置の例は従来示されているが、鶏糞のような処理困難な無機、有機の固形物を多量に含有する有機廃棄物を、低コスト、短時間で、環境に負荷を与えることなく無害に処理するには、まだ解決されなければならない問題が多かった。
【0019】
本発明は、鶏糞を、その含有する無機、有機の固形物による支障なく支障なく十分に酸化分解し、低コスト、短時間で、環境に負荷を与えることなく無害に処理できる、鶏糞の湿式酸化分解処理装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記の課題を解決するためになされ、下記の(1)から(5)の手段を提供するものであり、以下、特許請求の範囲に記載の順に説明する。
【0021】
(1)その第1の手段として、鶏糞と水を攪拌して流動化させる攪拌タンクと、同攪拌タンクから供給された前記流動化した鶏糞から無機固形物を分離する遠心分離機と、同遠心分離機から供給された前記無機固形物を分離した鶏糞の固形有機物を磨砕し同鶏糞をスラリー化する磨砕機と、同スラリー化した鶏糞が連続的に供給されるとともに酸素または空気が供給されて亜臨界状態で前記鶏糞を湿式酸化分解処理する酸化分解処理炉とを有してなることを特徴とする鶏糞の湿式酸化分解処理装置を提供する。
【0022】
(2)第2の手段としては、第1の手段の鶏糞の湿式酸化分解処理装置において、前記遠心分離機で分離された無機固形物を水で洗浄する洗浄装置を有し、同洗浄装置からの洗浄廃水を前記酸化分解処理炉において湿式酸化分解処理するように構成されてなることを特徴とする鶏糞の湿式酸化分解処理装置を提供する。
【0023】
(3)また、第3の手段として、第2の手段の鶏糞の湿式酸化分解処理装置において、前記スラリー化した鶏糞は前記洗浄廃水を含む水を加えて所定の濃度に調整されて前記酸化分解処理炉に供給されるように構成されてなることを特徴とする鶏糞の湿式酸化分解処理装置を提供する。
【0024】
(4)第4の手段として、第1の手段ないし第3の手段のいずれかの鶏糞の湿式酸化分解処理装置において、前記磨砕機は前記鶏糞の固形有機物を粒度100μmから10μmに磨砕するものであることを特徴とする鶏糞の湿式酸化分解処理装置を提供する。
【0025】
(5)第5の手段として、第1の手段ないし第3の手段のいずれかの鶏糞の湿式酸化分解処理装置において、前記亜臨界状態は略、310℃、14MPaであることを特徴とする鶏糞の湿式酸化分解処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0026】
(1)特許請求の範囲に記載の請求項1の発明によれば、鶏糞の湿式酸化分解処理装置を上記第1の手段のように構成したので、鶏糞は水とともに攪拌タンクで攪拌混合され流動化されるため遠心分離機での無機固形物の分離除去が十分に行われ、続く工程の磨砕や湿式酸化分解反応に支障がなくなり、磨砕機で磨砕されて微小粒度化された固形有機物を含む鶏糞スラリーとなるため羽根も含めて十分な酸化分解反応が得られ、鶏糞を環境に無害で臭気の問題のない排気と排水に変えて放出処理が可能となる。また、遠心分離機で分離された無機固形物は別途の処理で利用可能となる。
【0027】
すなわち、貝殻、砂等の多量の無機固形物や、羽根等の分解処理され難い固体有機物を含む特有の条件の鶏糞を、支障なく十分に酸化分解し、低コスト、短時間で、環境に負荷を与えることなく無害に処理でき、回収した無機固形物の利用も可能な鶏糞の湿式酸化分解処理装置となる。
【0028】
(2)請求項2の発明によれば、鶏糞の湿式酸化分解処理装置を上記第2の手段のように構成したので、請求項1の発明の作用効果に加え、遠心分離機で分離された鶏糞中の無機固形物は、洗浄機において洗浄されて、環境に無害で且つ臭気も問題ない状態の洗浄済無機固形物となり、再利用やコンクリート骨材等に用いることができる。そして、洗浄廃水は、湿式酸化分解処理がなされるので鶏糞の成分が処理されずに放出されることがない鶏糞の湿式酸化分解処理装置となる。
【0029】
(3)請求項3の発明によれば、鶏糞の湿式酸化分解処理装置を上記第3の手段のように構成したので、請求項2の発明の作用効果に加え、洗浄廃水を無駄なく利用できるとともに、所定の濃度に濃度調整済み鶏糞スラリーが酸化分解処理炉に供給されるので、温度条件、反応条件が安定し好ましい亜臨界状態での湿式酸化分解処理がなされる。
【0030】
(4)請求項4の発明によれば、鶏糞の湿式酸化分解処理装置を上記第4の手段のように構成したので、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明の作用効果に加え、分解し難い固形有機物の、より確実で良好な湿式酸化分解処理が得られる。
【0031】
(5)請求項5の発明によれば、鶏糞の湿式酸化分解処理方法を上記第5の手段のように構成したので、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明の作用効果に加え、亜臨界水の酸化特性、溶解特性が高い性質を十分に利用でき、より好ましい酸化分解反応が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明を実施するための最良の形態として、以下に実施例1を説明する。
【実施例1】
【0033】
図1に基づいて本発明の実施例1に係る鶏糞の湿式酸化分解処理装置を説明する。図1は本実施例の鶏糞の湿式酸化分解処理装置の主要部構成概要図である。
【0034】
図1において、1は攪拌タンクであり、適宜のタンク、ホッパー等に貯留された処理対象の鶏糞a1が適宜のコンベア等によって投入され、適宜の水供給源から水w1が給水され、鶏糞a1と水w1とを攪拌混合して鶏糞a1を水w1に十分に分散、溶解させ、濃度および粘度を低下させて流動化させ、次の遠心分離処理工程を容易にするためのものである。攪拌タンク1の下流側には遠心分離機2が接続し、攪拌タンク1から流動化した鶏糞a1が供給され、遠心力により鶏糞a1中の貝殻、砂等の無機固形物f1を分離除去する。
【0035】
遠心分離機2で無機固形物f1を分離除去された鶏糞a2は、磨砕機3に供給され、鶏糞a1中の固形有機物が微小粒度(好ましくは100μm以下から10μm)に磨砕されてスラリー化され、微細化された固形有機物を含む鶏糞スラリーb1となり、濃度調整タンク4に送られる。
【0036】
濃度調整タンク4は、磨砕機3からの鶏糞スラリーb1と、適宜の水供給源からの水w2と、必要に応じて加えられる苛性ソーダ水溶液等の添加剤cとが供給され、あるいはさらに後述の高温洗浄機14からの洗浄廃水w4が供給され、次工程の湿式酸化分解処理に好ましい所定の濃度の濃度調整済み鶏糞スラリーb2を製造するものである。濃度調整は図示しない濃度検出器と、その検出信号に基づき鶏糞スラリーb1、水W2、添加剤c、洗浄廃水W4のそれぞれの供給手段(弁、ポンプ等)を制御する制御装置によってバッチ的に行われる。
【0037】
濃度調整済み鶏糞スラリーb2は一旦フィードタンク5に移された後、高圧ポンプ6によって亜臨界条件の所期の高圧(例えば略14MPa)に昇圧されて連続的に酸化分解処理炉7に送られる。高圧ポンプ6から酸化分解処理炉7への供給ライン8には予熱器9が設けられ、供給される濃度調整済み鶏糞スラリーb2を所定の供給温度(例えば180℃)に昇温する。
【0038】
本実施例の酸化分解処理炉7は、略300℃以上、13〜15MPa、好ましくは略310℃、14MPaの亜臨界条件で湿式酸化分解処理を行う高圧密閉容器で形成された反応塔7aを上流側に、触媒塔7bを下流側に直列に接続した構成としている。反応塔7aは、処理対象である濃度調整済み鶏糞スラリーb2と、高圧の酸素dが供給され亜臨界状態で湿式酸化分解処理を行い固形有機物を可溶化し約70%の有機物を分解する。触媒塔7bは同様亜臨界状態で触媒酸化による湿式酸化分解処理を行うもので、有機廃棄物の亜臨界状態での湿式酸化分解と無機化に、材質、触媒作用ともにより適したルテニウム、パラジウムなどによる触媒が充填されており、高圧の酸素dが供給され、触媒に接触させることにより、触媒塔7b内での触媒を伴う酸化分解反応よって、酢酸イオン等の中間生成物を含む残り約30%の有機物を略完全に酸化分解して無機化し、また中間生成物に含まれる硝酸イオン、亜硝酸イオン等も低分子にまで完全に酸化分解し、炭酸ガスCO、窒素ガスN、水HO、残余の酸素Oを主成分とする環境に無害な臭気の問題もない生成物eにする。
【0039】
なお、酸素dに代えて酸化作用に十分な酸素量となる空気を高圧下で供給してもよいが、本実施例においては、以下、酸素を供給する構成で説明する。空気を供給する場合は、生成物e中には空気を構成する他の気体が含まれる。
【0040】
亜臨界状態の湿式酸化分解処理は、亜臨界水の酸化特性、溶解特性が高い性質を積極的に利用するためのものであり、略310℃、14MPaの亜臨界状態ではその性質を十分に利用でき、より好ましい酸化分解反応が得られる。
【0041】
また、酸化分解処理炉7を構成する反応塔7a、触媒塔7bはともに、外殻に図示しない電気式、熱油式等のヒーターを備えており、酸化分解処理のスタートアップ時に酸化分解処理炉7を早急に亜臨界状態の酸化分解反応が可能な状態とする。なお、酸化分解反応は発熱反応なので、反応開始後は同ヒーターを停止できる。
【0042】
本実施例において酸化分解処理炉7は、上流側に反応塔7a、下流側に触媒塔7bを直列に接続した構成としているが、酸化分解処理炉7の構成はそれに限定されず、他の構成であってもよい。
【0043】
酸化分解処理炉7から略310℃で排出ライン10に出た生成物eは、排出ライン10に介装された冷却器11で熱を回収されて、好ましい所定の冷却後温度(例えば、40〜70℃)まで冷却される。回収された回収熱hは予熱器9において濃度調整済み鶏糞スラリーb2を予熱するのに用いることがでる。その場合、予熱器9と冷却器11は一体に構成された熱交換器を構成してもよく、別個に設けて回収熱hを移動させる構成にしてもよい。
【0044】
冷却器11の下流には圧力調整弁や絞り機構等による圧力調整装置12が設けられ生成物eを所定の圧(例えば、大気圧)まで降圧して下流の気液分離器13へ送る。圧力調整装置12はまた、その上流側を所期の高圧(略14MPa)に保持するものである。
【0045】
降温、降圧された生成物eは気液分離器13において、環境に無害な、炭酸ガスCO、窒素ガスN、残余の酸素O等を主成分とする排気gと、排水w3とに分離され、放出される。
【0046】
一方、遠心分離機2で分離された貝殻、砂等の無機固形物f1は、高温洗浄機14において水w1によって高温洗浄されて付着した鶏糞a1の有機物が分離され、洗浄済無機固形物f2として取り出される。無機固形物f1の洗浄は、常温水でも可能であるが、常温以上沸点以下(40℃〜100℃程度)の高温水で行うのがより効果的である。また、洗浄水の加熱は適宜の方式でよいが、酸化分解処理炉7の生成物eからの回収熱hを利用することもできる。
【0047】
洗浄済無機固形物f2は、鶏糞a1中に大量に含まれていた貝殻や砂等であり、高温洗浄によって環境に無害で且つ臭気も問題ない状態になっているので、さらに乾燥後、再利用やコンクリート骨材等に用いることができる。なお、高温洗浄機14で用いる水としては、前述の酸化分解処理炉7の生成物eから分離された排水w3も用いることができる。
【0048】
鶏糞a1の有機廃棄物成分を含む洗浄後の洗浄廃水w4は、洗浄廃水w4中に残る無機固形物f1の再混入を防ぐ為、適宜なフィルター装置15を介して濃度調整タンク4に送られ、前述のように鶏糞スラリーb1の濃度調整に用いられ濃度調整済み鶏糞スラリーb2として酸化分解処理炉7に供給されて湿式酸化分解処理がなされる。なお、図示しないが、洗浄廃水w4の一部または全部を、攪拌タンク1へ投入する水w1の一部または全部に代えて用いてもよい。
【0049】
以上のような、本実施例の鶏糞の湿式酸化分解処理装置によれば、処理対象である鶏糞a1は、水w1とともに攪拌タンク1で攪拌混合され濃度および粘度を低下させ流動化されるので、遠心分離機2での砂、貝殻等の無機固形物f1の分離除去が十分に行われ、後工程の磨砕や湿式酸化分解処理を支障なく行うことができる。
【0050】
無機固形物f1を分離除去された鶏糞a2はその固形有機物が磨砕機3で磨砕され、微小粒度化された固形有機物を含む鶏糞スラリーb1となるので、単なる破砕、切断による小粒化、小片化ではなしえない酸化分解反応が得られ、通常は分解し難くプロセスの閉塞等の障害を起こす恐れのある羽根も磨砕されることで十分な酸化分解反応を受け、可溶化され、さらに他の固形有機物と同様に分解される。特に磨砕機3によって固形有機物を粒度100μmから10μmに磨砕すれば、分解し難い固体有機物の、より確実に良好な湿式酸化分解処理が得られる。
【0051】
また、濃度調整タンク4により所定の濃度の濃度調整済み鶏糞スラリーb2とされるので、酸化分解処理炉7での温度条件、反応条件が安定し好ましい亜臨界状態での湿式酸化分解処理がなされる。
【0052】
本実施例の酸化分解処理炉7は、亜臨界水の酸化特性、溶解特性が高い性質を積極的に利用するためのものであり、略310℃、14MPaの亜臨界状態ではその性質を十分に利用でき、より好ましい酸化分解反応が得られる。
【0053】
また、酸化分解処理炉7から略310℃で出た生成物eは、冷却器11で熱を回収されて、好ましい所定の冷却後温度まで冷却されるとともに、回収された回収熱hは予熱器9において濃度調整済み鶏糞スラリーb2を予熱するのに用いることができ、亜臨界状態の温度条件を保持するのに寄与でき、エネルギー効率が向上する。
【0054】
従って、鶏糞a1は酸化分解処理炉7で環境に無害な、炭酸ガスCO、窒素ガスN、残余の酸素O等と水HOとを主成分とする生成物eとなり、排気gと排水w4として放出処理が可能となる。
【0055】
また、遠心分離機2で分離された鶏糞a1中の無機固形物f1は、高温洗浄機14において高温洗浄されて、環境に無害で且つ臭気も問題ない状態の洗浄済無機固形物f2となり、再利用やコンクリート骨材等に用いることができる。そして、無機固形物f1の洗浄廃水w4は、濃度調整タンク4、または攪拌タンク1に送られて、湿式酸化分解処理がなされるので鶏糞a1の成分が処理されずに放出されることがない。
【0056】
以上のように、貝殻、砂等の多量の無機固形物や、羽根等の分解処理され難い固体有機物を含む特有の条件の鶏糞a1を、支障なく十分に酸化分解し、低コスト、短時間で、環境に負荷を与えることなく無害に処理でき、さらにエネルギーロスを低減し、回収した無機固形物の利用も可能な鶏糞の湿式酸化分解処理装置となる。
【0057】
以上、本発明を図示の実施例について説明したが、本発明は上記の実施例に限定されず、本発明の範囲内でその具体的構造、構成に種々の変更を加えてよいことはいうまでもない。例えば、上述のように、酸素dに代えて空気を供給するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例1に係る鶏糞の湿式酸化分解処理装置の主要部構成概要図である。
【図2】従来の有機廃棄物及び有機廃水の処理システムの構成概要図である。
【符号の説明】
【0059】
1 攪拌タンク
2 遠心分離機
3 磨砕機
4 濃度調整タンク
5 フィードタンク
6 高圧ポンプ
7 酸化分解処理炉
7a 反応塔
7b 触媒塔
8 供給ライン
9 予熱器
10 排出ライン
11 冷却器
12 圧力調整装置
13 気液分離器
14 高温洗浄機
15 フィルター装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏糞と水を攪拌して流動化させる攪拌タンクと、同攪拌タンクから供給された前記流動化した鶏糞から無機固形物を分離する遠心分離機と、同遠心分離機から供給された前記無機固形物を分離した鶏糞の固形有機物を磨砕し同鶏糞をスラリー化する磨砕機と、同スラリー化した鶏糞が連続的に供給されるとともに酸素または空気が供給されて亜臨界状態で前記鶏糞を湿式酸化分解処理する酸化分解処理炉とを有してなることを特徴とする鶏糞の湿式酸化分解処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鶏糞の湿式酸化分解処理装置において、前記遠心分離機で分離された無機固形物を水で洗浄する洗浄装置を有し、同洗浄装置からの洗浄廃水を前記酸化分解処理炉において湿式酸化分解処理するように構成されてなることを特徴とする鶏糞の湿式酸化分解処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の鶏糞の湿式酸化分解処理装置において、前記スラリー化した鶏糞は前記洗浄廃水を含む水を加えて所定の濃度に調整されて前記酸化分解処理炉に供給されるように構成されてなることを特徴とする鶏糞の湿式酸化分解処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の鶏糞の湿式酸化分解処理装置において、前記磨砕機は前記鶏糞の固形有機物を粒度100μmから10μmに磨砕するものであることを特徴とする鶏糞の湿式酸化分解処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の鶏糞の湿式酸化分解処理装置において、前記亜臨界状態は略、310℃、14MPaであることを特徴とする鶏糞の湿式酸化分解処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−231118(P2006−231118A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−45813(P2005−45813)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】