麻疹−ヒトパピローマ混合ワクチン
本発明は、麻疹およびヒトパピローマウイルス(HPV)に対する混合ワクチンに関する。特に、本発明は、HPV由来の単一または数種の抗原、好ましくは16型HPV、ならびに任意選択で18型、6型および11型HPVの主要カプシド抗原L1、微量カプシド抗原L2、初期遺伝子E6腫瘍性タンパク質および初期遺伝子E7腫瘍性タンパク質をコードする異種核酸を含む、組換え麻疹ウイルスベクターに関する。第一の実施形態において、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて強い持続性の免疫応答を誘導してHPV感染およびMV感染に対して保護するように、HPV抗原、好ましくはL1および/またはL2を発現する予防用ワクチンが作製される。別の実施形態において、誘導した強い免疫応答が、初期または後期において持続性のHPV感染(HPV誘導性の子宮頸癌を含む)を解決するように、E6タンパク質およびE7タンパク質、および任意選択でL1およびL2を発現する治療ワクチンが作製される。好ましい実施形態において、混合ワクチンは、大規模製造が容易であり、低コストで分配できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麻疹およびヒトパピローマウイルス(HPV)に対する混合ワクチンに関する。特に、本発明は、HPV由来の単一または数種の抗原、好ましくは16型HPV、ならびに任意選択で18型、6型および11型HPVの主要カプシド抗原L1、微量カプシド抗原L2、初期遺伝子E6腫瘍性タンパク質および初期遺伝子E7腫瘍性タンパク質をコードする異種核酸を含む、組換え麻疹ウイルスベクターに関する。
【0002】
第一の実施形態において、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて強い持続性の免疫応答を誘導してHPV感染およびMV感染に対して保護するように、HPV抗原、好ましくはL1および/またはL2を発現する予防用ワクチンが作製される。別の実施形態において、誘導した強い免疫応答が、初期または後期において持続性のHPV感染(HPV誘導性の子宮頸癌が含まれる)を解決するように、E6タンパク質およびE7タンパク質、および任意選択でL1およびL2を発現する治療ワクチンが作製される。好ましい実施形態において、混合ワクチンは、大規模製造が容易であり、低コストで分配できる。
【背景技術】
【0003】
ヒトパピローマウイルスにより誘導される症候群
毎年、約50万人の新たな子宮頸癌の症例が世界中で記録されており、特に発展途上国では、女性の死亡数の2番目に多い一般的原因となっている。ヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頸癌の主要な病因因子であり、HPV DNAは、これらの癌の95%より多くにおいて見出すことができる(1)。1998年以降、予防および治療の戦略は主に、前浸潤疾患を検出および切除するために構築されたスクリーニングプログラムに依存する。しかし、HPV試験の使用は、社会問題によって制限されており、最近の主な障害はコストが高いことである。したがって、HPV感染を予防するワクチンの開発は、子宮頸癌を予防するための重要な機会を提示し、同時に治療的免疫化は、悪性前疾患および悪性疾患の治療において有用であろう。
【0004】
HPVは、扁平上皮に感染する小さい二本鎖DNAウイルスの大きな科に属する。(パピローマウイルスに関する最近の包括的な総説に関しては、Howley, PMおよびLowy, DR(2007)、Fields Virology、第5版)、編集主幹Knipe, D.M.およびHowley, P. M.、Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia PA 19106、USA、2299-2354頁を参照のこと。今日まで、100を越える遺伝子型が記載されており、そのうち少なくとも35の型が生殖器に感染する。HPV型のほとんどは良性病変を生じるが、わずかな遺伝子型集団は高悪性度の扁平上皮内病変および子宮頸癌の発症と強く関連している。この小集団は「高リスク」として特定されており、HPV-16が子宮頸癌の約60%を占め、HPV-18がさらに10%〜20%を占めていると推定されている。他の高リスク型には、31型、33型、35型、39型、45型、51型、52型、56型、58型、59型、68型および73型が含まれる。低リスクHPV(例えば、HPV-6およびHPV-11)は、良性の性器疣贅を引き起こす(90%の良性尖圭コンジローマは、HPV6または11ポジティブである)。最も一般的な高リスク型を排除する二価ワクチン16/18は、低リスク型をも克服することを可能にし得る。理想的なワクチンは、異なる型由来の抗原および/または保存された領域を含む抗原の使用を介して、他のHPV型に対して保護するものであろう。
【0005】
HPVゲノムは8つのタンパク質をコードする。後期L1遺伝子およびL2遺伝子はカプシドタンパク質をコードする。初期タンパク質E1およびE2は、ウイルスの複製および転写を担い、E4は感染細胞からのウイルス放出に関与する。高リスク型HPVウイルスDNAの宿主ゲノムへの組み込みにより、E1またはE2媒介性の転写制御が失われ、結果として、悪性形質転換プロセスを担うE6タンパク質およびE7タンパク質の過剰発現が生じる(2)。高リスク型由来の構造タンパク質L1は、予防用ワクチンの最適の標的である。他方、E6タンパク質およびE7タンパク質は、明らかな治療標的である。
【0006】
主要ウイルスカプシドタンパク質L1(モノマーとして、または16型および18型のHPV、ならびにある場合にはさらなる型由来のウイルス様粒子(VLP)としてのいずれか)に基づくいくつかの予防用HPVワクチン製剤が実際に存在する(W094/00152、W094/20137、WO93/02184およびWO94/05792)。VLPはさらにL2タンパク質を含み得、例えば、L2ベースのワクチンがWO93/00436に記載されている。これらのワクチンは、免疫原性が高く、安全なように思われる。しかし、コストが高いため、危険にさらされた集団が一般に利用することができず、そして、それらのHPV型特異性が別の制限となっている。したがって、安価であるべき、さらなる改善されたHPVに対するワクチンを開発する必要性がなお存在している。さらに、抗原によるワクチン接種は主に、定着したHPV感染および関連疾患に対してほとんどまたは全く利益にならない抗体特異的応答を誘導する。
【0007】
治療ワクチンの開発は、中和抗体の産生に依存するだけでなく、定着した感染のクリアランスのための重要な成分である、特異的細胞性免疫応答の誘導に主に依存している。したがって、治療ワクチンは、後期タンパク質ではなく初期HPVタンパク質由来のいくつかの抗原決定基を含むことが必要である。高リスク型HPVの初期遺伝子(E6およびE7)は、主要な形質転換タンパク質をコードする。これらの遺伝子は、上皮細胞を不死化することが可能であり、発癌プロセスの開始において役割を果たすと考えられている。これらの初期遺伝子のタンパク質産物は、腫瘍抑制遺伝子の正常な機能を妨害する。HPV E6はp53と相互作用してその機能不全を導くことができ、それによって、DNAのエラーが生じた場合に細胞周期を阻止するその能力が損なわれる。E6はまた、その臨界点を超えてテロメラーゼ長を維持して、細胞をアポトーシスから保護する。HPV E7は、網膜芽腫タンパク質(pRb)に結合し、細胞周期を開始させる遺伝子を活性化して、組織増殖を導く。E6タンパク質およびE7タンパク質は良好な標的を提示し、E6に基づいてHPV治療ワクチンの種々のアプローチが記載されている。過去数年間に、多数のペプチド/タンパク質ベースまたは遺伝的免疫化戦略が、HPV特異的CTL活性の誘導に関して記載されている。HPVに対するワクチンの開発における進歩の総説に関しては、参考文献(3)を参照のこと。細胞性応答を主に促進することが知られているDNAワクチン(HPVタンパク質をコードするプラスミドDNA)を用いた試みがなされた。DNAワクチンがマウスモデルにおいて良好に機能するという事実にもかかわらず、多数の臨床試験は、ヒトにおける原理の証拠の提供に失敗している。ペプチドベースのアプローチに関連する主な欠点には、MHC多型の問題、およびT細胞活性化ではなくT細胞寛容を誘導する危険性が含まれる。特異的T細胞寛容の誘導に起因して、腫瘍特異的ペプチドでのワクチン接種は、腫瘍の増殖の増強を生じることが示されている。より大きいタンパク質での免疫化はこれらの問題を克服するであろうが、これは、効率的なin vivo発現系および/または効率的な細胞性免疫応答を刺激するための安全なアジュバントを必要とする。組換えウイルスベクターワクチンを含むアプローチが開発中である(ポック
スウイルス、アデノウイルス、アルファウイルス、ポリオウイルスおよびヘルペスウイルス)。アデノウイルスベースのワクチンは、例えば、US2007269409(WO2004044176)中に記載されており、これは、HPVのE6タンパク質またはE7タンパク質をコードする。アデノウイルスベースのワクチンは、長期免疫を生じることが可能である。しかし、宿主ゲノム中へのHPV DNAの組み込みの可能性は残ったままであり、安全性の制限を突きつけ得る。上記欠点を考慮すると、HPV抗原を発現するためのベクターとしての麻疹ウイルスの使用は、予防用HPV-麻疹混合ワクチンならびに治療用HPVワクチンを開発するための戦略の原型を提示する。
【0008】
麻疹ウイルスベースの免疫化ベクター
麻疹ウイルス(MV)はパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)の一員である。MVの非セグメント化ゲノムは、ゲノムRNAを生じるanti-message polarityを有し、このゲノムRNAは、精製されると、in vivoまたはin vitroのいずれでも翻訳されず、感染性でもなくなる。非セグメント化(-)鎖のRNAウイルスの転写および複製、ならびにウイルス粒子としてのそれらの集合は、研究され報告されている(4)。麻疹ウイルスの転写および複製は、感染細胞の核に関与しないが、その感染細胞の細胞質で生じる。麻疹ウイルスのゲノムは、6つの遺伝子(N、P、M、F、HおよびLと称される)由来の6つの主要な構造タンパク質、およびP遺伝子由来のさらなる2つの非構造タンパク質をコードする遺伝子を含む。MVは、乳児および若年小児における急性熱性疾患の主要原因である。世界保健機関(WHO)の推定によれば、100万人の若年小児が、毎年麻疹で亡くなっている。この高い犠牲者数は、主に発展途上国で発生しているが、近年、米国などの先進国も、予防接種への不完全な実施に主に起因して、麻疹の流行によって再度侵されている(5)。現在、いくつかの弱毒MV生ワクチン株(Schwarz、MoratenおよびEdmonston-Zagreb株が含まれる)が使用されており、これらはほとんど全てが、非ヒト細胞での複数回の継代による元のEdmonston株(6)に由来する。MVワクチンは、これまでに開発された、最も安全で最も安定かつ有効なヒトワクチンの1つであることが証明されている。多くの国で大規模に生産され、WHOの予防接種拡大計画(EPI)によって低コストで分配されたこのワクチンは、単回注射後の生涯にわたる免疫を誘導し(4、7)、追加免疫が有効である。保護は、抗体と、CD4 T細胞およびCD8 T細胞との両方によって媒介される。抗体およびCD8細胞の持続は、ワクチン接種後25年もの長期にわたって示されている(7)。
【0009】
Martin Billeterおよび共同研究者らは、参考文献8およびWO97/06270に記載されるように、Edmonston株MV由来のクローン化デオキシリボ核酸(cDNA)から非セグメント化マイナス鎖RNAウイルスを生成するための独創的かつ有効な逆遺伝学的手順を確立した。麻疹ウイルスのアンチゲノムp(+)MVEZ編成の模式図を図1に示す。まず第一に、これらの技術は、部位特異的変異誘発を可能にし、これらのウイルスの生物学の種々の局面に関する重要な見識を可能にする。それに付随して、a)マーカー遺伝子発現を介したin vivoのウイルス複製の局在化を可能にし、b)麻疹および他の病原体に対する候補多価ワクチンを開発し、およびc)候補腫瘍退縮ウイルスを作出するために、外来コード配列が挿入された。これらのウイルスのベクター使用は、RNAウイルスについて予測できなかった組換え体の顕著な遺伝的安定性と、6kbを超える、分子量の大きい遺伝物質が挿入可能であることによって、実験的に促進された。したがって、公知の利点(例えば、DNAウイルスと比較して小さいベクターゲノムサイズ、高い安全性および有効性の実績があるワクチンとしての弱毒MVの豊富な臨床経験、およびワクチン接種用量1回当たりの低い製造コスト)が補完されることが好ましい。
【0010】
組換え麻疹ウイルスヌクレオチド配列は、6の倍数であるヌクレオチドの総数を有するレプリコンを含むはずである。<<6の規則>>は、組換えcDNA中に存在するヌクレオチドの総数が、最終的に、6の倍数であるヌクレオチドの総数と等しいことで表現され、この規則は、麻疹ウイルスのゲノムRNAの効率的な複製を可能にする。
【0011】
異種DNAは、麻疹ウイルスのアンチゲノムRNAに対応するcDNA中に挿入された追加転写単位(Additional Transcription Unit(ATU))内で、MVベクター中にクローニングされる。ATUの位置は、このcDNAに沿って変化できる。しかし、これは、麻疹ウイルスの発現勾配から利益を得るような部位に位置する。したがって、ATUまたは異種DNA配列のクローニングに適切な任意の挿入部位は、cDNAに沿って分布し得、挿入部位についておよび特にATUにおける好ましい実施形態では、この配列のN末端部分、および特に麻疹ウイルスのL遺伝子から上流の領域内、および有利にはこのウイルスのM遺伝子から上流の領域内、およびより好ましくはこのウイルスのN遺伝子から上流の領域内に、存在する。
【0012】
組換え麻疹ウイルスの有利な免疫学的特性は、麻疹ウイルスに感受性の動物から選択される動物モデルにおいて示すことができ、このモデルにおいて、異種抗原に対するおよび/または麻疹ウイルスに対する体液性および/または細胞性免疫応答が決定される。免疫応答の特徴付けのためのモデルとして使用されるのに適したこのような動物のうち、当業者は、MVに対するCD46特異的レセプターを発現するトランスジェニックマウス、またはサルを特に使用できる。
【0013】
この技術は、混合MVワクチンとして使用するのに適した外来遺伝子を含みかつその外来遺伝子を安定に発現するレスキューされたウイルスを産生することを可能にする。概念の証拠として、MVは、SIV、HIV、肝炎B、ムンプス、西ナイル(WN)ウイルスおよびSARSCoV由来の抗原を発現するために使用されてきた(9〜12)。これらの研究のほとんどにおいて、異種抗原を発現する組換えMVは、トランスジェニックマウスモデルにおいて特異的体液性中和抗体を誘導するようであり(13)、ある種のタンパク質に対する細胞性免疫応答を誘導することが示された(9、11)。現在、MVに基づく任意の組換えワクチン候補を用いた臨床試験は、計画段階でしかないが、実験結果は、MV混合ワクチンが、ベクターウイルス自体に対してと同様、他の病原性因子に対する持続性の免疫保護を惹起するのに有効であるはずであるという仮説を支持している。事実、WNV gpEを発現するMVの場合、6ヶ月までの完全な保護がサルにおいて報告されており(14)、デング抗原を発現するMVは、中和抗体の長期産生を誘導した(15)。さらに、トランスジェニックマウスおよびマカクにおいて、レスキューされた組換えMVは、MVに対する既に存在する免疫の存在下で、異種抗原に対する特異的抗体応答を誘導することができた(9、11、16)。
【0014】
レスキューされた組換えMV生ワクチンは、ほとんどの国において大規模産生が容易であり、低コストで分配できる。安全性に関して、MVは細胞質中で排他的に複製し、宿主DNA中への組み込みの可能性が排除される。これらの特徴は、レスキューされた組換えMVワクチンを、HPV抗原に関する多価ワクチン接種ベクターとして使用される魅力的な候補にしている。しかし、大人の集団(既にMV免疫された個体であっても)もまた、MV組換え体免疫化から利益を得ることができる。それは、本発明の組換え形態でのMVウイルスの再投与が、抗MV抗体の追加免疫を生じ得るからである(11)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】W094/00152
【特許文献2】W094/20137
【特許文献3】WO93/02184
【特許文献4】WO94/05792
【特許文献5】WO93/00436
【特許文献6】US2007269409(WO2004044176)
【特許文献7】WO97/06270
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Howley, PMおよびLowy, DR(2007)、Fields Virology、第5版、編集主幹Knipe,D.M.およびHowley, P. M.、Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia PA 19106、USA、2299-2354頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
これまでのところ、HPVに対する免疫と組み合わせてMVに対する免疫を誘導することができるワクチンを産生するための手法は開発されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、特に、HPV由来の抗原をコードする異種核酸を保有する組換え麻疹ウイルスの調製に関する。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明の目的は、異なるHPV型由来のL1、L2、E6および/またはE7タンパク質をコードする安定に組み込まれたヌクレオチド配列を含むことが可能である組換え麻疹ベクターからの、麻疹-HPV混合ワクチンの産生である。
【0020】
本発明は、感受性のトランスジェニックマウス、サルおよびヒトの宿主において、感染、複製およびL1、L2、E6またはE7タンパク質の発現が可能である組換えMV-HPVウイルスのレスキューを含む。
【0021】
さらに、本発明は、多価組換え麻疹-HPVベクターの構築を含み、このベクターでは、2つの異なる抗原が同時にクローニングされ、同じベクター中で発現されて、これら両方に対する免疫を付与する。
【0022】
さらに、本発明は、異なるHPV型に対する免疫応答を宿主において惹起するために、異なるHPV型由来の遺伝子をそれぞれが保持し発現する、異なる組換え麻疹-HPVウイルスの混合に関する。
【0023】
さらに、本発明は、このような組換えウイルスを含むワクチンを産生する方法を含む。
【0024】
さらに、本発明は、混合ワクチンの応答を増大させるための、インターロイキンまたはインターロイキン-2のアジュバントとしての使用にも関する。
【0025】
最後に、本発明は、ヒトにおいてHPVおよび麻疹ウイルスに対する強力で生涯にわたる免疫応答を誘導でき、感染を予防できおよび/または感染に関連する疾患を治療できるワクチンに関する。
【0026】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】麻疹ウイルスのアンチゲノムp(+)MVの模式図である。p(+)MV-EZは、T7 RNAポリメラーゼプロモーター(T7)の制御下に麻疹ウイルス(Edmoston Zagreb)の完全配列を含み、位置1(麻疹ウイルスのN遺伝子の前)、位置2(麻疹ウイルスのP遺伝子とM遺伝子との間)および位置3(麻疹ウイルスのH遺伝子とL遺伝子との間)に、3つのATUをそれぞれ含み、デルタ型肝炎リボザイムおよびT7 RNAポリメラーゼターミネーター(□T7t)で正確に終わる、pBluescript由来のプラスミドである。プラスミドのサイズは18941bpである。
【図2】組換え麻疹-パピローマプラスミドp(+)MV2-EZ-L1の模式図である。これは、BssHII-AatII消化によって麻疹ゲノムの位置2にクローニングされたHPV-L1遺伝子(16型)(1518bp)を含む、p(+)MV-EZ由来のプラスミドである。この組換えプラスミドのサイズは20561bpである。
【図3】組換え麻疹-パピローマプラスミドp(+)MV3-EZ-HPV-L1の模式図である。これは、BssHII-AatII消化によって麻疹ゲノムの位置3にクローニングされたHPV-L1遺伝子(16型)(1518bp)を含む、p(+)MV-EZ由来のプラスミドである。この組換えプラスミドp(+)MV3-EZ-HPV-L1は20561bpである。
【図4a】p(+)MV2EZ-GFP(19774bp)の完全ヌクレオチド配列を示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 592〜608 T7プロモーター- 609〜17335 MV Edmoston Zagrebアンチゲノム- 4049〜4054 MluI制限部位- 4060〜4065 BssHII制限部位- 4066〜4782 緑色蛍光タンパク質(GFP)ORF- 4786〜4791 BssHII制限部位- 4798〜4803 AatII制限部位- 17336〜17561 HDVリボザイムおよびT7ターミネーター。
【図4b】p(+)MV3EZ-GFP(19774bp)の完全ヌクレオチド配列を示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 592〜608 T7プロモーター- 609〜17335 MV Edmoston Zagrebアンチゲノム- 9851〜9856 MluI制限部位- 9862〜9867 BssHII制限部位- 9868〜10584 緑色蛍光タンパク質(GFP)ORF- 10588〜10593 BssHII制限部位- 10600〜10605 AatII制限部位- 17336〜17561 HDVリボザイムおよびT7ターミネーター。
【図5a】ANL1TEを示す図である:これは、本発明者らがクローニングしたHPV16-L1配列ORF(1518bp)である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜1515 HPV-L1 ORF- 1516〜1518 終止コドン。
【図5b】HPV16-L2配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜1419 HPV-L2 ORF- 1420〜1422 終止コドン。
【図5c】HPV16-E6配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜474 HPV-E6 ORF- 475〜477 終止コドン。
【図5d】HPV16-E7配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜294 HPV-E7 ORF- 295〜297 終止コドン。
【図5e】HPV18-L1配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜1704 HPV-L1 ORF- 1705〜1707 終止コドン。
【図5f】HPV18-L2配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜1386 HPV-L2 ORF- 1387〜1389 終止コドン。
【図5g】HPV18-E6配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜474 HPV-E6 ORF- 475〜477 終止コドン。
【図5h】HPV18-E7配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜315 HPV-E7 ORF- 316〜318 終止コドン。
【図5i】HPV6-L1配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜1500 HPV-L1 ORF- 1501〜1503 終止コドン。
【図5j】HPV6-L2配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜1377 HPV-L2 ORF- 1378〜1380 終止コドン。
【図5k】HPV6-E6配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜450 HPV-E6 ORF- 451〜453 終止コドン。
【図5l】HPV6-E7配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜294 HPV-E7 ORF- 295〜297 終止コドン。
【図6】293-3-46ヘルパー細胞に対する組換えウイルスMV2EZ-L1のレスキューを示す図である。細胞は、25ngのpEMCLaおよび5μgの組換えp(+)MV2EZ-L1プラスミドで同時トランスフェクトした。
【図7】MV2EZ-L1でトランスフェクトされたVero細胞におけるシンシチウム形成を示す図である。注入後(p.i.)24時間の時点で、細胞をエタノールで固定し、クリスタルバイオレットで染色した。
【図8】MRC5細胞における、細胞関連(CA)および細胞フリー(CF)ウイルスの増殖曲線を示す図である。単層を、0.05のMOIでMV2EZ-L1またはMVEZウイルスに感染させた。
【図9】免疫蛍光分析による組換えMVからのHPV-L1発現を示す図である。Vero細胞にMOI 0.05で48時間にわたりMV2EZ-L1(A)またはMVEZ(B)のいずれかを感染させ、間接的免疫蛍光のために処理した。上のパネルでは、特異的HPV-L1シグナルを、マウスモノクローナル抗HPV-L1抗体と、その後のヤギ抗マウス抗体-FITCコンジュゲートとによって、検出した。下のパネルでは、同じスライドを、DAPI(4',6-ジアミジン-2-フェニルインドール塩酸塩)で染色し、蛍光または自然光でそれぞれ観察した。
【図10】ウエスタンブロット分析による組換えMVからのHPV-L1発現を示す図である。Vero細胞にMOI 0.05で48時間にわたりMVEZ(1)またはMV2EZ-L1(2)のいずれかを感染させた。MVEZ(レーン1)またはMV2EZ-L1(レーン2)での感染後の、上清(A)および細胞溶解物(B)におけるHPV-L1の発現。
【図11】種々のCsCl勾配画分におけるHPV-L1のウエスタンブロット分析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施例が本発明を説明する。
【実施例1】
【0029】
組換えp(+)MV2EZ-HPVプラスミドおよびp(+)MV3EZ-HPVプラスミドの構築
全てのクローニング手順は、基本的にSambrookら(1989)に記載されたとおりとした。全ての制限酵素は、New England BioLabs製であり、オリゴヌクレオチドPCRプライマーはInvitrogen製であった。
【0030】
L1配列をPCRによって増幅し、固有のMVベクター中に直接クローニングして、2つの組換えMV-HPV16-L1プラスミド:p(+)MV2EZ-HPV-L1およびp(+)MV3EZ-HPV-L1を得た。
【0031】
PCR増幅は、プルーフリーディングPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を使用して実施した。合成オリゴヌクレオチドプライマーのDNA配列は、MVヌクレオチドに対するものは大文字で示し、非MVヌクレオチドに対するものは小文字で示す。適切な制限エンドヌクレアーゼ認識部位の配列には下線を付す。以下のプライマーを使用した。
FOR-L1 5'-ttggcgcgccATGAGCCTGTGGCTGCCC-3'
REV-L1 5'-atgacgtcTCACAGCTTCCTCTTCTTCCTC-3'
【0032】
For-L1は、3bp長の保護部位(ttg)の後に、BssHII制限部位(gcgcgc)を有するオーバーハング(小文字)を含む。
【0033】
Rev-L1は、AatII制限部位(gacgtc)を有するオーバーハング(小文字)を含む。
【0034】
得られたPCR-HPV16-L1(1536bp)を、BssHII+AatIIでの消化後に、Pタンパク質遺伝子とMタンパク質遺伝子との間(位置2、図2)またはHタンパク質遺伝子とLタンパク質遺伝子との間(位置3、図3)に、p(+)MVEZベクター(図1)中にクローニングした。ライゲーションを、1単位のT4 DNAリガーゼを使用して、予め消化したMeV2EZおよびMeV3EZベクターBssHII+AatII(19Kb長)に関して等モルの比で16℃で一晩実施し、それぞれp(+)MV2EZ-L1(20561bp)およびp(+)MV3EZ-L1(20561bp)を得た。図4および5において、ベクターp(+)MV2EZ-GFPおよびp(+)MV3EZ-GFPの配列をそれぞれ示す。
【0035】
次いで、XL10 Gold chemicalコンピテント細胞を、標準的な形質転換プロトコル(Sambrookら、1989)に従って全ライゲーション体積で形質転換し、プレートし、アンピシリン抵抗性についてLB-寒天プレート上で選択した。コロニーを、DNAプラスミド調製(QIAGEN、ミニ-ミディおよびマキシキット)および制限酵素消化によってスクリーニングした。正しいクローンをMWGに送り、配列決定した:配列、DNA Striderソフトウェアを使用して推測された配列で整列した配列は、100%の同一性を示した。HPV16-L1をコードするヌクレオチド配列を図5aに示す。
【0036】
全ての他の抗原、HPV16型由来のL2、E6およびE7、ならびにHPV18型および6型からのL1、L2、E6およびE7を、上に詳述したようにクローニングした。
【0037】
ORFの配列を図5(5b〜5l)に示す。
【0038】
HPV16型、18型および6型由来の組換えMV-HPVプラスミドの一覧:
p(+)MV2EZ-HPV16-L1プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV16-L1プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV16-L2プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV16-L2プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV16-E6プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV16-E6プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV16-E7プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV16-E7プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV18-L1プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV18-L1プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV18-L2プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV18-L2プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV18-E6プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV18-E6プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV18-E7プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV6-E7プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV6-L1プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV6-L1プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV6-L2プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV6-L2プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV6-E6プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV6-E6プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV6-E7プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV6-E7プラスミド
【実施例2】
【0039】
細胞およびウイルス
細胞を、Vero細胞(アフリカミドリザル腎臓)については5%ウシ胎仔血清(FCS)を補充した、293T細胞(ヒト胚腎臓)については10%FCSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で;MRC-5(ヒト胎児線維芽細胞)についてはGlutamax(F12)および10% FCSを補充したDMEM中で;293-3-46については10% FCSおよび1.2mg/mlのG418を補充したDMEM中で、単層として維持した。
【0040】
MVウイルスストックを増殖させて約107pfu/mlの力価に到達させるために、組換えウイルスおよびワクチン株Edmoston Zagrebを、MRC-5細胞中で増殖させた。プラーク精製を、シンシチウムを35mmのMRC-5細胞培養物に移し、この細胞培養物をまず10cmディッシュにまで拡大させ、その後175cmフラスコに拡大させることによって実施した。ウイルスストックを、シンシチウム形成が約90%明白になった時点で、175cm2の培養物から作製した。いわゆる「細胞フリーウイルス画分」に対応する培地を回収し、凍結および解凍を3回行い、スピンダウンして細胞デブリを回避した。次いで、この培地を-80℃で保存した。いわゆる「細胞関連ウイルス画分」に対応する細胞を、3mlのOPTIMEM(Gibco BRL)中にかき取り、その後凍結および解凍を3ラウンド行い、スピンダウンし、清澄化した上清を-80℃で保存した。
【実施例3】
【0041】
プラスミドのトランスフェクションおよびMVウイルスのレスキュー
組換え麻疹-HPVワクチンウイルスを、麻疹Nタンパク質およびPタンパク質ならびにT7 RNAポリメラーゼを安定に発現する293-3-46ヘルパー細胞(ヒト胚腎臓細胞)を使用して得た。ウイルスRNAポリメラーゼ(large protein, L)を、15ngのプラスミドpeMCLaを用いて細胞を同時トランスフェクトすることによって発現させた。リン酸カルシウム法をトランスフェクションに使用した。
【0042】
293T-3-46細胞を、35mmのウェルに播種し、約50〜70%のコンフルエントに達したところでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間前に、培地を10% FCSを含むDMEM 3mlに置き換えた。全ての組換えプラスミドは、QIAGENプラスミド調製キットに従って調製した。DNAのCa2+リン酸塩共沈のためのキットは、Invitrogen製であった。
【0043】
細胞を、以下の最終濃度でプラスミドを用いて同時トランスフェクトした:pEMCLa 25ngおよび組換えp(+)MV2EZ-L1プラスミド5μg。H2O中に希釈した全てのプラスミドを、2M CaCl2を含むEppendorfチューブに添加し、この混合物を、振盪条件下で、HEPESバッファーを含む別のEppendorfチューブに添加して、室温(RT)で30分間インキュベートした。こうして、共沈物を培養物に滴下し、トランスフェクションを37℃および5% CO2で約18時間実施した。次いで、トランスフェクション培地を、10% FCSを含むDMEM 3mlで置き換えた。
【0044】
最初のシンシチウムはトランスフェクションの3〜4日後に現れ、この時点では、図6に示すように、細胞はまだサブコンフルエントであった。次いで、シンシチウム形成をより容易に進行させるため、それぞれ35mmウェルのほぼコンフルエントな細胞単層を、10cmディシュに移した。各シンシチウムを300μlのトランスフェクション培地中に取り、700μlのOPTIMEMを含む無菌Eppendorfチューブ中に入れ、凍結および解凍を3ラウンド行い、-80℃で保存した。
【実施例4】
【0045】
プラークアッセイによるウイルス力価決定
ウイルス調製物の連続10倍希釈を、OPTIMEMを使用して実施して、0.5mlの最終体積にした。各希釈物を35mmのVero細胞培養物上に添加した。ウイルス吸着の1時間後、接種材料を除去し、感染した細胞を、5% FCSおよび1%低融点アガロース(LMPアガロース)を含むDMEM 2mlで覆った。37℃および5% CO2での5日間のインキュベーション後、培養物を1mlの10% TCAで1時間固定し、次いでUVで30分間架橋した。アガロースの覆いを除去した後、細胞単層を、4%エタノール中に溶解したクリスタルバイオレットで染色し、水で洗浄し、プラークを倒立顕微鏡下で計数した(図7)。
【実施例5】
【0046】
組換えウイルスのMRC-5ウイルス連続継代
レスキューされたウイルスを、MRC5細胞上で10回連続継代し、10cm直径のプレート中に播種し、それに標準のMVウイルスおよび組換えMVウイルスを、0.01PFU/細胞のMOIで感染させた。単層が完全に感染した後、各培養物の1%上清を使用して、後のMRC5細胞単層を感染させた。導入遺伝子の発現および安定性を試験するために、継代1、5および10からのウイルスを使用して、ウエスタンブロットおよび免疫蛍光によって、発現をさらに特徴付けた。
【実施例6】
【0047】
増殖動態曲線
35mmディッシュ上に播種したMRC5細胞(1〜5×105)を、90%コンフルエントになるまでモニターし、対照としてMVEZを含む、細胞関連ウイルス画分由来の清澄化したウイルス懸濁物を、0.05MOIで感染させた。いわゆる「細胞フリーウイルス画分」に対応するサンプルおよびいわゆる「細胞関連ウイルス画分」に対応するサンプルを、1週間にわたって毎日回収し、力価決定した。増殖曲線の比較から、MV2EZ-L1の複製が僅かしか損なわれなかったことは興味深い:組換えウイルスは、6.12×106 TCID50s/ml 48hpiのピーク力価に達したが、MVEZは、6.8×106 TCID50s/ml 36hpiの最終力価であった(図8)。僅かに遅い複製の進行は、いくらか減少したプラークサイズにも反映された。MV2EZ-L1は、平均直径0.83mmのプラークを生じたが、MVEZは、平均直径0.91mmのプラークを生じた。
【実施例7】
【0048】
タンパク質発現分析
MV抗原およびHPV抗原発現を分析するために、免疫蛍光、ウエスタンブロットおよびVLPの単離を実施した。
【0049】
免疫蛍光
Vero細胞を、35mmウェル中の24mm×24mmのカバーガラス上に播種し、一晩培養し、レスキューされた組換えウイルスMV2EZ-L1またはネガティブコントロールウイルスMVEZを、0.05b M.O.I.で感染させた。感染の48時間後、カバーガラス上の細胞をPBS中4%のパラホルムアルデヒドで固定し、0.1% TX-100で透過処理し、ブロッキング溶液(1% BSAを含むPBS)で1時間洗浄し、特異的HPV-L1マウスモノクローナル抗体(Biogenesis)およびFITCHコンジュゲート化ヤギ抗マウス二次抗体で染色した。
【0050】
レスキューされたMV2EZ-L1の全てのシンシチウムは、ポジティブシグナルを示した(図9の上パネル、左の画像)が、レスキューされたMVEZのシンシチウムは、蛍光を示さなかった(図9の上パネル、右の画像)。このことは、MV2EZ-L1によって誘導された全てのシンシチウムがL1抗原を発現したことを示す。
【0051】
ウエスタンブロット
ウエスタンブロットのために、35mmディッシュ上に播種したVero細胞(1〜5×105)を、次の日、90%コンフルエンスになるまでモニターし、対照としてMVEZを含む、細胞関連ウイルス画分からの清澄化したウイルス懸濁物を、0.05MOI(感染多重度)を使用して感染させた。約80%のシンシチウム形成が観察された時点で、培地および細胞由来のタンパク質を分析した。細胞をまずPBSで洗浄し、次いで1mlのPBS中にかき取り、Eppendorfチューブ中に回収し、2000RPM/4分で遠心分離した。次いで、細胞を、プロテアーゼインヒビターカクテル(Complete Mini、Roche、1 836 153)を補充した溶解バッファー(1%NP-40、50mM Tris pH8、150mM NaCl)70μlで5分/RTで溶解した。上清を、13000RPM/5分で遠心分離することによって清澄化し、新たなチューブに移した。30μlの4×ローディングバッファー(Invitrogen)を添加した。サンプルを混合し、95℃/2minで煮沸し、スピンダウンし、-20℃で保存した。
【0052】
SDS-PAGE移動を、1×ランニングバッファーを使用して、200Vで50分間(開始100〜125mA、終了60〜80mA)、還元条件下NuPAGE 12%ビスアクリルアミドゲルで泳動して実施した。次いで、セミドライ法を使用して、分離した細胞-タンパク質を、14V/1時間30分でニトロセルロースメンブレンに転写した。
【0053】
HPV-L1に対するマウスモノクローナル抗体(Biogenesis)を一次抗体として使用した。二次抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス抗体であり、増強化学発光キット(ECL(商標)、Amersham LifeScience)によるバンドの可視化を可能にした。
【0054】
抗HPVL1抗体は、MV2EZ-L1感染細胞の培養培地中に放出された約55kDaのタンパク質と反応したが、このようなタンパク質は、MVEZ感染細胞の培養培地中では検出されず(図10、パネルA)、同様に、MV2EZ-L1感染細胞中で合成された約55kDaのタンパク質とも反応したが、このようなタンパク質はMVEZ感染細胞溶解物中では検出されなかった(図10、パネルB)。この結果は、MV2EZ-L1感染細胞が、HPV由来の真正のL1タンパク質とサイズが類似したL1タンパク質を発現および分泌することを示している。
【0055】
VLPの単離
増殖した単層Vero細胞に、0.1MOIで組換えウイルスMV2EZ-L1またはネガティブコントロールウイルスMVEZを感染させ、37℃でインキュベートした。ウイルス吸着から1時間後、培地を、5%FCSを含むDMEMによって置換し、37℃で48時間インキュベートして、90%のシンシチウムを得た。感染細胞由来の培地を回収し、遠心分離し、40%(w/v)サッカロース層上での、110,00×g、4℃で2.5時間の遠心分離に供して、粒子からタンパク質を分離した。続いて、ペレットをPBS中27%(w/w)塩化セシウムに可溶化し、PBS中27%(w/w)塩化セシウム中での密度勾配遠心分離で、141,000g、4℃で20時間分析した。勾配画分を、SDS-page電気泳動およびウエスタンブロットによって、HPV-L1の存在について分析した(図11)。
【実施例8】
【0056】
マウス免疫化
上記レスキューされた組換えMV-HPVウイルスの免疫原性能力を、MV感染に感受性のトランスジェニックマウスCD46で実施した免疫化試験によって証明した。動物を、最適な衛生条件下で維持し、6〜8週齢で免疫化した。免疫化は、0週目および4週目での2回の注射によって、105PFUの各組換えMV-HPVを使用して、腹腔内で実施した。非感染マウスならびにPBS免疫化マウスを対照とした。UV不活化MVを対照として使用して、免疫応答の活性化に対するウイルス複製の影響を決定した。
【0057】
免疫化CD46マウス(1群当たり少なくとも6匹)由来の血清におけるMV特異的抗体の存在を、IgG抗体検出のために、麻疹ウイルスEIAバルク(ATCC VR-24)で被覆した96マイクロウェルプレートを使用してELISAによって決定した。タンパク質を、0.05M炭酸塩バッファー(pH9.4)で0.6μg/mlに希釈し、1ウェル当たり100μlを、96ウェルのマイクロタイタープレートに添加した。これらのプレートを4℃で一晩インキュベートし、PBS/0.05% Tween 20(PT)(pH7.4)で洗浄し、PT(0.1ml/ウェル)-10%BSAと共に37℃で60分間インキュベートし、再度PTで洗浄した。試験した血清の連続2倍希釈物を添加し(100μl/ウェル)、プレートを、37℃で60分間インキュベートした。プレートをPTで洗浄し、PBS-0.05% Tween 20中に1:2000希釈した100μlのヤギ抗マウスIgG HRPと共に37℃で30分間インキュベートした。プレートをPTで洗浄し、100μl OPD(o-フェニレンジアミン、Fluka 78411)と共にインキュベートした。3〜4分後に反応を停止させた。プレートを、波長490nmでMicroElisa Readerで読み取った。ネガティブコントロールの3倍よりも高い読み取りを、ポジティブ反応としてスコアした。
【0058】
免疫化CD46マウスの血清におけるHPVL1特異的抗体の存在を、ELISAアッセイおよび中和アッセイによって決定した。
【0059】
簡潔に述べると、Elisaアッセイに関して、96マイクロウェルプレートを、炭酸塩バッファーpH9.4で2〜50ng/ウェルの濃度に希釈したHPVL1抗原で被覆した。プレートを4℃で一晩インキュベートし、PBS/0.05%Tween 20(PT)で洗浄した。続いて、非特異的相互作用を、PT中に溶解した10%脱脂乳を用いて37℃で1時間ブロッキングし、ウェルを再度PTで洗浄した。プレートを、種々の希釈のマウス血清(1:200で開始し、連続2倍希釈が続く)、ペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgGおよびOPD基質と共に、連続してインキュベートした。吸光度を490nmで測定した。カットオフバックグラウンドレベル(MV免疫化マウス由来の血清の平均値に2.1倍を乗じたもの)を上回る値を、ポジティブとみなした。力価は最終希釈の逆数として示した。
【0060】
中和抗体についてアッセイするため、血清の2倍希釈物を、50PFUの組換え体と共に37℃で1時間インキュベートし、二連で104のVero細胞/ウェル(96ウェルプレート)上にプレートした。5日後、力価を顕微鏡によって決定した。エンドポイント力価は、PFUの数値を少なくとも50%減少させた、試験した最も高い血清希釈として計算した。
【0061】
HPV-L1に対する特異的免疫応答をtable 1(表1)に示す。Elisaアッセイおよび中和アッセイにおける力価は両方とも、VLPの3回の注射後に女性またはマウスにおいて観察された力価と類似している。さらに、2つのアッセイで観察された非常に類似した力価は、発現されたL1のほとんどが、コンフォメーション的に正しいことを示している。
【実施例9】
【0062】
プラーク精製による、欠陥干渉粒子(Defecting Interfering Particles:DI)からの、マラリア抗原を発現する組換え麻疹ウイルスの精製
パラミクソウイルス、および特に麻疹ウイルスによる特定の回数の継代後、欠陥干渉粒子 (DI)の蓄積が生じることが、文献から公知である(23、24)。これらのDIは、種々の欠陥を生じることが記載されている:ワクチンの安全性に対する負の影響、製造時のウイルス収率に対する負の影響、ゲノム不安定性およびワクチン接種後の免疫反応の抑制。本発明者らの新たな組換えウイルスによるこのようなDIを回避するため、本発明者らは、Vero細胞の代わりにMRC5細胞を用いた点以外、実施例7に記載されたプラーク精製法を適用した。透明な充分明確なシンシチウムの形成後、本発明者らは、顕微鏡下で、マイクロピペットを用いてこのような材料を吸引し、新鮮なMRC5組織培養物中でさらに継代した。
【実施例10】
【0063】
エンドポイント希釈による、欠陥干渉粒子 (DI)からの、マラリア抗原を発現する組換え麻疹ウイルスの精製
エンドポイント希釈技術を、マイクロプレート中で適用した。全てのウェルにおいて、MRC5細胞を用いた新たな単層がちょうど発生した。組換え麻疹-マラリアウイルスを含むウイルス懸濁物を、2倍希釈で調製した。シンシチウムが検出された最後の単層のウェルから、上清をピペットで吸引した。この上清を、MRC5細胞を含む懸濁物と混合した。この混合物を4℃で1時間インキュベートした。最後に、これを小さいCostarフラスコ中に移し、35℃+5%CO2でインキュベートし、10日後に、組換え麻疹-マラリアウイルスを精製するために回収した。
【実施例11】
【0064】
麻疹-マラリア混合ワクチンの製造
上記組換え麻疹-マラリアウイルスのワーキングシードを、1750cm2のローラーボトル中で、35℃で10日間、MRC5細胞単層上でインキュベートした。細胞は、健康状態およびコンフルエンスの状態について、毎日モニターした。10日目に、シンシチウム形成の最も高いレベルで、液体窒素中での保存のために、上清を鋼製円筒中に投入した。同じ手順を2日後に反復した。全ての試験(ウイルス力価、ゲノム安定性、ウイルス安全性、細胞安全性、化学分析、繁殖不能性その他)を実施した後、回収物を解凍し、ゼラチン、ソルビトール、アミノ酸および他の糖を含む安定剤と混合して、105の最終希釈にした。自動充填機器を用いて、小さい凍結ビン(F3)に、各0.5mlで接種した。特別に算定した凍結乾燥プログラムを使用して、凍結-乾燥プロセスの間の製品の最大の生存を保障する。
【0065】
[参考文献]
【技術分野】
【0001】
本発明は、麻疹およびヒトパピローマウイルス(HPV)に対する混合ワクチンに関する。特に、本発明は、HPV由来の単一または数種の抗原、好ましくは16型HPV、ならびに任意選択で18型、6型および11型HPVの主要カプシド抗原L1、微量カプシド抗原L2、初期遺伝子E6腫瘍性タンパク質および初期遺伝子E7腫瘍性タンパク質をコードする異種核酸を含む、組換え麻疹ウイルスベクターに関する。
【0002】
第一の実施形態において、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて強い持続性の免疫応答を誘導してHPV感染およびMV感染に対して保護するように、HPV抗原、好ましくはL1および/またはL2を発現する予防用ワクチンが作製される。別の実施形態において、誘導した強い免疫応答が、初期または後期において持続性のHPV感染(HPV誘導性の子宮頸癌が含まれる)を解決するように、E6タンパク質およびE7タンパク質、および任意選択でL1およびL2を発現する治療ワクチンが作製される。好ましい実施形態において、混合ワクチンは、大規模製造が容易であり、低コストで分配できる。
【背景技術】
【0003】
ヒトパピローマウイルスにより誘導される症候群
毎年、約50万人の新たな子宮頸癌の症例が世界中で記録されており、特に発展途上国では、女性の死亡数の2番目に多い一般的原因となっている。ヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頸癌の主要な病因因子であり、HPV DNAは、これらの癌の95%より多くにおいて見出すことができる(1)。1998年以降、予防および治療の戦略は主に、前浸潤疾患を検出および切除するために構築されたスクリーニングプログラムに依存する。しかし、HPV試験の使用は、社会問題によって制限されており、最近の主な障害はコストが高いことである。したがって、HPV感染を予防するワクチンの開発は、子宮頸癌を予防するための重要な機会を提示し、同時に治療的免疫化は、悪性前疾患および悪性疾患の治療において有用であろう。
【0004】
HPVは、扁平上皮に感染する小さい二本鎖DNAウイルスの大きな科に属する。(パピローマウイルスに関する最近の包括的な総説に関しては、Howley, PMおよびLowy, DR(2007)、Fields Virology、第5版)、編集主幹Knipe, D.M.およびHowley, P. M.、Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia PA 19106、USA、2299-2354頁を参照のこと。今日まで、100を越える遺伝子型が記載されており、そのうち少なくとも35の型が生殖器に感染する。HPV型のほとんどは良性病変を生じるが、わずかな遺伝子型集団は高悪性度の扁平上皮内病変および子宮頸癌の発症と強く関連している。この小集団は「高リスク」として特定されており、HPV-16が子宮頸癌の約60%を占め、HPV-18がさらに10%〜20%を占めていると推定されている。他の高リスク型には、31型、33型、35型、39型、45型、51型、52型、56型、58型、59型、68型および73型が含まれる。低リスクHPV(例えば、HPV-6およびHPV-11)は、良性の性器疣贅を引き起こす(90%の良性尖圭コンジローマは、HPV6または11ポジティブである)。最も一般的な高リスク型を排除する二価ワクチン16/18は、低リスク型をも克服することを可能にし得る。理想的なワクチンは、異なる型由来の抗原および/または保存された領域を含む抗原の使用を介して、他のHPV型に対して保護するものであろう。
【0005】
HPVゲノムは8つのタンパク質をコードする。後期L1遺伝子およびL2遺伝子はカプシドタンパク質をコードする。初期タンパク質E1およびE2は、ウイルスの複製および転写を担い、E4は感染細胞からのウイルス放出に関与する。高リスク型HPVウイルスDNAの宿主ゲノムへの組み込みにより、E1またはE2媒介性の転写制御が失われ、結果として、悪性形質転換プロセスを担うE6タンパク質およびE7タンパク質の過剰発現が生じる(2)。高リスク型由来の構造タンパク質L1は、予防用ワクチンの最適の標的である。他方、E6タンパク質およびE7タンパク質は、明らかな治療標的である。
【0006】
主要ウイルスカプシドタンパク質L1(モノマーとして、または16型および18型のHPV、ならびにある場合にはさらなる型由来のウイルス様粒子(VLP)としてのいずれか)に基づくいくつかの予防用HPVワクチン製剤が実際に存在する(W094/00152、W094/20137、WO93/02184およびWO94/05792)。VLPはさらにL2タンパク質を含み得、例えば、L2ベースのワクチンがWO93/00436に記載されている。これらのワクチンは、免疫原性が高く、安全なように思われる。しかし、コストが高いため、危険にさらされた集団が一般に利用することができず、そして、それらのHPV型特異性が別の制限となっている。したがって、安価であるべき、さらなる改善されたHPVに対するワクチンを開発する必要性がなお存在している。さらに、抗原によるワクチン接種は主に、定着したHPV感染および関連疾患に対してほとんどまたは全く利益にならない抗体特異的応答を誘導する。
【0007】
治療ワクチンの開発は、中和抗体の産生に依存するだけでなく、定着した感染のクリアランスのための重要な成分である、特異的細胞性免疫応答の誘導に主に依存している。したがって、治療ワクチンは、後期タンパク質ではなく初期HPVタンパク質由来のいくつかの抗原決定基を含むことが必要である。高リスク型HPVの初期遺伝子(E6およびE7)は、主要な形質転換タンパク質をコードする。これらの遺伝子は、上皮細胞を不死化することが可能であり、発癌プロセスの開始において役割を果たすと考えられている。これらの初期遺伝子のタンパク質産物は、腫瘍抑制遺伝子の正常な機能を妨害する。HPV E6はp53と相互作用してその機能不全を導くことができ、それによって、DNAのエラーが生じた場合に細胞周期を阻止するその能力が損なわれる。E6はまた、その臨界点を超えてテロメラーゼ長を維持して、細胞をアポトーシスから保護する。HPV E7は、網膜芽腫タンパク質(pRb)に結合し、細胞周期を開始させる遺伝子を活性化して、組織増殖を導く。E6タンパク質およびE7タンパク質は良好な標的を提示し、E6に基づいてHPV治療ワクチンの種々のアプローチが記載されている。過去数年間に、多数のペプチド/タンパク質ベースまたは遺伝的免疫化戦略が、HPV特異的CTL活性の誘導に関して記載されている。HPVに対するワクチンの開発における進歩の総説に関しては、参考文献(3)を参照のこと。細胞性応答を主に促進することが知られているDNAワクチン(HPVタンパク質をコードするプラスミドDNA)を用いた試みがなされた。DNAワクチンがマウスモデルにおいて良好に機能するという事実にもかかわらず、多数の臨床試験は、ヒトにおける原理の証拠の提供に失敗している。ペプチドベースのアプローチに関連する主な欠点には、MHC多型の問題、およびT細胞活性化ではなくT細胞寛容を誘導する危険性が含まれる。特異的T細胞寛容の誘導に起因して、腫瘍特異的ペプチドでのワクチン接種は、腫瘍の増殖の増強を生じることが示されている。より大きいタンパク質での免疫化はこれらの問題を克服するであろうが、これは、効率的なin vivo発現系および/または効率的な細胞性免疫応答を刺激するための安全なアジュバントを必要とする。組換えウイルスベクターワクチンを含むアプローチが開発中である(ポック
スウイルス、アデノウイルス、アルファウイルス、ポリオウイルスおよびヘルペスウイルス)。アデノウイルスベースのワクチンは、例えば、US2007269409(WO2004044176)中に記載されており、これは、HPVのE6タンパク質またはE7タンパク質をコードする。アデノウイルスベースのワクチンは、長期免疫を生じることが可能である。しかし、宿主ゲノム中へのHPV DNAの組み込みの可能性は残ったままであり、安全性の制限を突きつけ得る。上記欠点を考慮すると、HPV抗原を発現するためのベクターとしての麻疹ウイルスの使用は、予防用HPV-麻疹混合ワクチンならびに治療用HPVワクチンを開発するための戦略の原型を提示する。
【0008】
麻疹ウイルスベースの免疫化ベクター
麻疹ウイルス(MV)はパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)の一員である。MVの非セグメント化ゲノムは、ゲノムRNAを生じるanti-message polarityを有し、このゲノムRNAは、精製されると、in vivoまたはin vitroのいずれでも翻訳されず、感染性でもなくなる。非セグメント化(-)鎖のRNAウイルスの転写および複製、ならびにウイルス粒子としてのそれらの集合は、研究され報告されている(4)。麻疹ウイルスの転写および複製は、感染細胞の核に関与しないが、その感染細胞の細胞質で生じる。麻疹ウイルスのゲノムは、6つの遺伝子(N、P、M、F、HおよびLと称される)由来の6つの主要な構造タンパク質、およびP遺伝子由来のさらなる2つの非構造タンパク質をコードする遺伝子を含む。MVは、乳児および若年小児における急性熱性疾患の主要原因である。世界保健機関(WHO)の推定によれば、100万人の若年小児が、毎年麻疹で亡くなっている。この高い犠牲者数は、主に発展途上国で発生しているが、近年、米国などの先進国も、予防接種への不完全な実施に主に起因して、麻疹の流行によって再度侵されている(5)。現在、いくつかの弱毒MV生ワクチン株(Schwarz、MoratenおよびEdmonston-Zagreb株が含まれる)が使用されており、これらはほとんど全てが、非ヒト細胞での複数回の継代による元のEdmonston株(6)に由来する。MVワクチンは、これまでに開発された、最も安全で最も安定かつ有効なヒトワクチンの1つであることが証明されている。多くの国で大規模に生産され、WHOの予防接種拡大計画(EPI)によって低コストで分配されたこのワクチンは、単回注射後の生涯にわたる免疫を誘導し(4、7)、追加免疫が有効である。保護は、抗体と、CD4 T細胞およびCD8 T細胞との両方によって媒介される。抗体およびCD8細胞の持続は、ワクチン接種後25年もの長期にわたって示されている(7)。
【0009】
Martin Billeterおよび共同研究者らは、参考文献8およびWO97/06270に記載されるように、Edmonston株MV由来のクローン化デオキシリボ核酸(cDNA)から非セグメント化マイナス鎖RNAウイルスを生成するための独創的かつ有効な逆遺伝学的手順を確立した。麻疹ウイルスのアンチゲノムp(+)MVEZ編成の模式図を図1に示す。まず第一に、これらの技術は、部位特異的変異誘発を可能にし、これらのウイルスの生物学の種々の局面に関する重要な見識を可能にする。それに付随して、a)マーカー遺伝子発現を介したin vivoのウイルス複製の局在化を可能にし、b)麻疹および他の病原体に対する候補多価ワクチンを開発し、およびc)候補腫瘍退縮ウイルスを作出するために、外来コード配列が挿入された。これらのウイルスのベクター使用は、RNAウイルスについて予測できなかった組換え体の顕著な遺伝的安定性と、6kbを超える、分子量の大きい遺伝物質が挿入可能であることによって、実験的に促進された。したがって、公知の利点(例えば、DNAウイルスと比較して小さいベクターゲノムサイズ、高い安全性および有効性の実績があるワクチンとしての弱毒MVの豊富な臨床経験、およびワクチン接種用量1回当たりの低い製造コスト)が補完されることが好ましい。
【0010】
組換え麻疹ウイルスヌクレオチド配列は、6の倍数であるヌクレオチドの総数を有するレプリコンを含むはずである。<<6の規則>>は、組換えcDNA中に存在するヌクレオチドの総数が、最終的に、6の倍数であるヌクレオチドの総数と等しいことで表現され、この規則は、麻疹ウイルスのゲノムRNAの効率的な複製を可能にする。
【0011】
異種DNAは、麻疹ウイルスのアンチゲノムRNAに対応するcDNA中に挿入された追加転写単位(Additional Transcription Unit(ATU))内で、MVベクター中にクローニングされる。ATUの位置は、このcDNAに沿って変化できる。しかし、これは、麻疹ウイルスの発現勾配から利益を得るような部位に位置する。したがって、ATUまたは異種DNA配列のクローニングに適切な任意の挿入部位は、cDNAに沿って分布し得、挿入部位についておよび特にATUにおける好ましい実施形態では、この配列のN末端部分、および特に麻疹ウイルスのL遺伝子から上流の領域内、および有利にはこのウイルスのM遺伝子から上流の領域内、およびより好ましくはこのウイルスのN遺伝子から上流の領域内に、存在する。
【0012】
組換え麻疹ウイルスの有利な免疫学的特性は、麻疹ウイルスに感受性の動物から選択される動物モデルにおいて示すことができ、このモデルにおいて、異種抗原に対するおよび/または麻疹ウイルスに対する体液性および/または細胞性免疫応答が決定される。免疫応答の特徴付けのためのモデルとして使用されるのに適したこのような動物のうち、当業者は、MVに対するCD46特異的レセプターを発現するトランスジェニックマウス、またはサルを特に使用できる。
【0013】
この技術は、混合MVワクチンとして使用するのに適した外来遺伝子を含みかつその外来遺伝子を安定に発現するレスキューされたウイルスを産生することを可能にする。概念の証拠として、MVは、SIV、HIV、肝炎B、ムンプス、西ナイル(WN)ウイルスおよびSARSCoV由来の抗原を発現するために使用されてきた(9〜12)。これらの研究のほとんどにおいて、異種抗原を発現する組換えMVは、トランスジェニックマウスモデルにおいて特異的体液性中和抗体を誘導するようであり(13)、ある種のタンパク質に対する細胞性免疫応答を誘導することが示された(9、11)。現在、MVに基づく任意の組換えワクチン候補を用いた臨床試験は、計画段階でしかないが、実験結果は、MV混合ワクチンが、ベクターウイルス自体に対してと同様、他の病原性因子に対する持続性の免疫保護を惹起するのに有効であるはずであるという仮説を支持している。事実、WNV gpEを発現するMVの場合、6ヶ月までの完全な保護がサルにおいて報告されており(14)、デング抗原を発現するMVは、中和抗体の長期産生を誘導した(15)。さらに、トランスジェニックマウスおよびマカクにおいて、レスキューされた組換えMVは、MVに対する既に存在する免疫の存在下で、異種抗原に対する特異的抗体応答を誘導することができた(9、11、16)。
【0014】
レスキューされた組換えMV生ワクチンは、ほとんどの国において大規模産生が容易であり、低コストで分配できる。安全性に関して、MVは細胞質中で排他的に複製し、宿主DNA中への組み込みの可能性が排除される。これらの特徴は、レスキューされた組換えMVワクチンを、HPV抗原に関する多価ワクチン接種ベクターとして使用される魅力的な候補にしている。しかし、大人の集団(既にMV免疫された個体であっても)もまた、MV組換え体免疫化から利益を得ることができる。それは、本発明の組換え形態でのMVウイルスの再投与が、抗MV抗体の追加免疫を生じ得るからである(11)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】W094/00152
【特許文献2】W094/20137
【特許文献3】WO93/02184
【特許文献4】WO94/05792
【特許文献5】WO93/00436
【特許文献6】US2007269409(WO2004044176)
【特許文献7】WO97/06270
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Howley, PMおよびLowy, DR(2007)、Fields Virology、第5版、編集主幹Knipe,D.M.およびHowley, P. M.、Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia PA 19106、USA、2299-2354頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
これまでのところ、HPVに対する免疫と組み合わせてMVに対する免疫を誘導することができるワクチンを産生するための手法は開発されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、特に、HPV由来の抗原をコードする異種核酸を保有する組換え麻疹ウイルスの調製に関する。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明の目的は、異なるHPV型由来のL1、L2、E6および/またはE7タンパク質をコードする安定に組み込まれたヌクレオチド配列を含むことが可能である組換え麻疹ベクターからの、麻疹-HPV混合ワクチンの産生である。
【0020】
本発明は、感受性のトランスジェニックマウス、サルおよびヒトの宿主において、感染、複製およびL1、L2、E6またはE7タンパク質の発現が可能である組換えMV-HPVウイルスのレスキューを含む。
【0021】
さらに、本発明は、多価組換え麻疹-HPVベクターの構築を含み、このベクターでは、2つの異なる抗原が同時にクローニングされ、同じベクター中で発現されて、これら両方に対する免疫を付与する。
【0022】
さらに、本発明は、異なるHPV型に対する免疫応答を宿主において惹起するために、異なるHPV型由来の遺伝子をそれぞれが保持し発現する、異なる組換え麻疹-HPVウイルスの混合に関する。
【0023】
さらに、本発明は、このような組換えウイルスを含むワクチンを産生する方法を含む。
【0024】
さらに、本発明は、混合ワクチンの応答を増大させるための、インターロイキンまたはインターロイキン-2のアジュバントとしての使用にも関する。
【0025】
最後に、本発明は、ヒトにおいてHPVおよび麻疹ウイルスに対する強力で生涯にわたる免疫応答を誘導でき、感染を予防できおよび/または感染に関連する疾患を治療できるワクチンに関する。
【0026】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】麻疹ウイルスのアンチゲノムp(+)MVの模式図である。p(+)MV-EZは、T7 RNAポリメラーゼプロモーター(T7)の制御下に麻疹ウイルス(Edmoston Zagreb)の完全配列を含み、位置1(麻疹ウイルスのN遺伝子の前)、位置2(麻疹ウイルスのP遺伝子とM遺伝子との間)および位置3(麻疹ウイルスのH遺伝子とL遺伝子との間)に、3つのATUをそれぞれ含み、デルタ型肝炎リボザイムおよびT7 RNAポリメラーゼターミネーター(□T7t)で正確に終わる、pBluescript由来のプラスミドである。プラスミドのサイズは18941bpである。
【図2】組換え麻疹-パピローマプラスミドp(+)MV2-EZ-L1の模式図である。これは、BssHII-AatII消化によって麻疹ゲノムの位置2にクローニングされたHPV-L1遺伝子(16型)(1518bp)を含む、p(+)MV-EZ由来のプラスミドである。この組換えプラスミドのサイズは20561bpである。
【図3】組換え麻疹-パピローマプラスミドp(+)MV3-EZ-HPV-L1の模式図である。これは、BssHII-AatII消化によって麻疹ゲノムの位置3にクローニングされたHPV-L1遺伝子(16型)(1518bp)を含む、p(+)MV-EZ由来のプラスミドである。この組換えプラスミドp(+)MV3-EZ-HPV-L1は20561bpである。
【図4a】p(+)MV2EZ-GFP(19774bp)の完全ヌクレオチド配列を示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 592〜608 T7プロモーター- 609〜17335 MV Edmoston Zagrebアンチゲノム- 4049〜4054 MluI制限部位- 4060〜4065 BssHII制限部位- 4066〜4782 緑色蛍光タンパク質(GFP)ORF- 4786〜4791 BssHII制限部位- 4798〜4803 AatII制限部位- 17336〜17561 HDVリボザイムおよびT7ターミネーター。
【図4b】p(+)MV3EZ-GFP(19774bp)の完全ヌクレオチド配列を示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 592〜608 T7プロモーター- 609〜17335 MV Edmoston Zagrebアンチゲノム- 9851〜9856 MluI制限部位- 9862〜9867 BssHII制限部位- 9868〜10584 緑色蛍光タンパク質(GFP)ORF- 10588〜10593 BssHII制限部位- 10600〜10605 AatII制限部位- 17336〜17561 HDVリボザイムおよびT7ターミネーター。
【図5a】ANL1TEを示す図である:これは、本発明者らがクローニングしたHPV16-L1配列ORF(1518bp)である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜1515 HPV-L1 ORF- 1516〜1518 終止コドン。
【図5b】HPV16-L2配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜1419 HPV-L2 ORF- 1420〜1422 終止コドン。
【図5c】HPV16-E6配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜474 HPV-E6 ORF- 475〜477 終止コドン。
【図5d】HPV16-E7配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜294 HPV-E7 ORF- 295〜297 終止コドン。
【図5e】HPV18-L1配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜1704 HPV-L1 ORF- 1705〜1707 終止コドン。
【図5f】HPV18-L2配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜1386 HPV-L2 ORF- 1387〜1389 終止コドン。
【図5g】HPV18-E6配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜474 HPV-E6 ORF- 475〜477 終止コドン。
【図5h】HPV18-E7配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜315 HPV-E7 ORF- 316〜318 終止コドン。
【図5i】HPV6-L1配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜1500 HPV-L1 ORF- 1501〜1503 終止コドン。
【図5j】HPV6-L2配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜1377 HPV-L2 ORF- 1378〜1380 終止コドン。
【図5k】HPV6-E6配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜450 HPV-E6 ORF- 451〜453 終止コドン。
【図5l】HPV6-E7配列のORFを示す図である。この配列は、ヌクレオチドの位置を参照して以下のように記載できる:- 1〜3 開始コドン- 4〜294 HPV-E7 ORF- 295〜297 終止コドン。
【図6】293-3-46ヘルパー細胞に対する組換えウイルスMV2EZ-L1のレスキューを示す図である。細胞は、25ngのpEMCLaおよび5μgの組換えp(+)MV2EZ-L1プラスミドで同時トランスフェクトした。
【図7】MV2EZ-L1でトランスフェクトされたVero細胞におけるシンシチウム形成を示す図である。注入後(p.i.)24時間の時点で、細胞をエタノールで固定し、クリスタルバイオレットで染色した。
【図8】MRC5細胞における、細胞関連(CA)および細胞フリー(CF)ウイルスの増殖曲線を示す図である。単層を、0.05のMOIでMV2EZ-L1またはMVEZウイルスに感染させた。
【図9】免疫蛍光分析による組換えMVからのHPV-L1発現を示す図である。Vero細胞にMOI 0.05で48時間にわたりMV2EZ-L1(A)またはMVEZ(B)のいずれかを感染させ、間接的免疫蛍光のために処理した。上のパネルでは、特異的HPV-L1シグナルを、マウスモノクローナル抗HPV-L1抗体と、その後のヤギ抗マウス抗体-FITCコンジュゲートとによって、検出した。下のパネルでは、同じスライドを、DAPI(4',6-ジアミジン-2-フェニルインドール塩酸塩)で染色し、蛍光または自然光でそれぞれ観察した。
【図10】ウエスタンブロット分析による組換えMVからのHPV-L1発現を示す図である。Vero細胞にMOI 0.05で48時間にわたりMVEZ(1)またはMV2EZ-L1(2)のいずれかを感染させた。MVEZ(レーン1)またはMV2EZ-L1(レーン2)での感染後の、上清(A)および細胞溶解物(B)におけるHPV-L1の発現。
【図11】種々のCsCl勾配画分におけるHPV-L1のウエスタンブロット分析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施例が本発明を説明する。
【実施例1】
【0029】
組換えp(+)MV2EZ-HPVプラスミドおよびp(+)MV3EZ-HPVプラスミドの構築
全てのクローニング手順は、基本的にSambrookら(1989)に記載されたとおりとした。全ての制限酵素は、New England BioLabs製であり、オリゴヌクレオチドPCRプライマーはInvitrogen製であった。
【0030】
L1配列をPCRによって増幅し、固有のMVベクター中に直接クローニングして、2つの組換えMV-HPV16-L1プラスミド:p(+)MV2EZ-HPV-L1およびp(+)MV3EZ-HPV-L1を得た。
【0031】
PCR増幅は、プルーフリーディングPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を使用して実施した。合成オリゴヌクレオチドプライマーのDNA配列は、MVヌクレオチドに対するものは大文字で示し、非MVヌクレオチドに対するものは小文字で示す。適切な制限エンドヌクレアーゼ認識部位の配列には下線を付す。以下のプライマーを使用した。
FOR-L1 5'-ttggcgcgccATGAGCCTGTGGCTGCCC-3'
REV-L1 5'-atgacgtcTCACAGCTTCCTCTTCTTCCTC-3'
【0032】
For-L1は、3bp長の保護部位(ttg)の後に、BssHII制限部位(gcgcgc)を有するオーバーハング(小文字)を含む。
【0033】
Rev-L1は、AatII制限部位(gacgtc)を有するオーバーハング(小文字)を含む。
【0034】
得られたPCR-HPV16-L1(1536bp)を、BssHII+AatIIでの消化後に、Pタンパク質遺伝子とMタンパク質遺伝子との間(位置2、図2)またはHタンパク質遺伝子とLタンパク質遺伝子との間(位置3、図3)に、p(+)MVEZベクター(図1)中にクローニングした。ライゲーションを、1単位のT4 DNAリガーゼを使用して、予め消化したMeV2EZおよびMeV3EZベクターBssHII+AatII(19Kb長)に関して等モルの比で16℃で一晩実施し、それぞれp(+)MV2EZ-L1(20561bp)およびp(+)MV3EZ-L1(20561bp)を得た。図4および5において、ベクターp(+)MV2EZ-GFPおよびp(+)MV3EZ-GFPの配列をそれぞれ示す。
【0035】
次いで、XL10 Gold chemicalコンピテント細胞を、標準的な形質転換プロトコル(Sambrookら、1989)に従って全ライゲーション体積で形質転換し、プレートし、アンピシリン抵抗性についてLB-寒天プレート上で選択した。コロニーを、DNAプラスミド調製(QIAGEN、ミニ-ミディおよびマキシキット)および制限酵素消化によってスクリーニングした。正しいクローンをMWGに送り、配列決定した:配列、DNA Striderソフトウェアを使用して推測された配列で整列した配列は、100%の同一性を示した。HPV16-L1をコードするヌクレオチド配列を図5aに示す。
【0036】
全ての他の抗原、HPV16型由来のL2、E6およびE7、ならびにHPV18型および6型からのL1、L2、E6およびE7を、上に詳述したようにクローニングした。
【0037】
ORFの配列を図5(5b〜5l)に示す。
【0038】
HPV16型、18型および6型由来の組換えMV-HPVプラスミドの一覧:
p(+)MV2EZ-HPV16-L1プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV16-L1プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV16-L2プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV16-L2プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV16-E6プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV16-E6プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV16-E7プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV16-E7プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV18-L1プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV18-L1プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV18-L2プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV18-L2プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV18-E6プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV18-E6プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV18-E7プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV6-E7プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV6-L1プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV6-L1プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV6-L2プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV6-L2プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV6-E6プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV6-E6プラスミド
p(+)MV2EZ-HPV6-E7プラスミド
p(+)MV3EZ-HPV6-E7プラスミド
【実施例2】
【0039】
細胞およびウイルス
細胞を、Vero細胞(アフリカミドリザル腎臓)については5%ウシ胎仔血清(FCS)を補充した、293T細胞(ヒト胚腎臓)については10%FCSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で;MRC-5(ヒト胎児線維芽細胞)についてはGlutamax(F12)および10% FCSを補充したDMEM中で;293-3-46については10% FCSおよび1.2mg/mlのG418を補充したDMEM中で、単層として維持した。
【0040】
MVウイルスストックを増殖させて約107pfu/mlの力価に到達させるために、組換えウイルスおよびワクチン株Edmoston Zagrebを、MRC-5細胞中で増殖させた。プラーク精製を、シンシチウムを35mmのMRC-5細胞培養物に移し、この細胞培養物をまず10cmディッシュにまで拡大させ、その後175cmフラスコに拡大させることによって実施した。ウイルスストックを、シンシチウム形成が約90%明白になった時点で、175cm2の培養物から作製した。いわゆる「細胞フリーウイルス画分」に対応する培地を回収し、凍結および解凍を3回行い、スピンダウンして細胞デブリを回避した。次いで、この培地を-80℃で保存した。いわゆる「細胞関連ウイルス画分」に対応する細胞を、3mlのOPTIMEM(Gibco BRL)中にかき取り、その後凍結および解凍を3ラウンド行い、スピンダウンし、清澄化した上清を-80℃で保存した。
【実施例3】
【0041】
プラスミドのトランスフェクションおよびMVウイルスのレスキュー
組換え麻疹-HPVワクチンウイルスを、麻疹Nタンパク質およびPタンパク質ならびにT7 RNAポリメラーゼを安定に発現する293-3-46ヘルパー細胞(ヒト胚腎臓細胞)を使用して得た。ウイルスRNAポリメラーゼ(large protein, L)を、15ngのプラスミドpeMCLaを用いて細胞を同時トランスフェクトすることによって発現させた。リン酸カルシウム法をトランスフェクションに使用した。
【0042】
293T-3-46細胞を、35mmのウェルに播種し、約50〜70%のコンフルエントに達したところでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間前に、培地を10% FCSを含むDMEM 3mlに置き換えた。全ての組換えプラスミドは、QIAGENプラスミド調製キットに従って調製した。DNAのCa2+リン酸塩共沈のためのキットは、Invitrogen製であった。
【0043】
細胞を、以下の最終濃度でプラスミドを用いて同時トランスフェクトした:pEMCLa 25ngおよび組換えp(+)MV2EZ-L1プラスミド5μg。H2O中に希釈した全てのプラスミドを、2M CaCl2を含むEppendorfチューブに添加し、この混合物を、振盪条件下で、HEPESバッファーを含む別のEppendorfチューブに添加して、室温(RT)で30分間インキュベートした。こうして、共沈物を培養物に滴下し、トランスフェクションを37℃および5% CO2で約18時間実施した。次いで、トランスフェクション培地を、10% FCSを含むDMEM 3mlで置き換えた。
【0044】
最初のシンシチウムはトランスフェクションの3〜4日後に現れ、この時点では、図6に示すように、細胞はまだサブコンフルエントであった。次いで、シンシチウム形成をより容易に進行させるため、それぞれ35mmウェルのほぼコンフルエントな細胞単層を、10cmディシュに移した。各シンシチウムを300μlのトランスフェクション培地中に取り、700μlのOPTIMEMを含む無菌Eppendorfチューブ中に入れ、凍結および解凍を3ラウンド行い、-80℃で保存した。
【実施例4】
【0045】
プラークアッセイによるウイルス力価決定
ウイルス調製物の連続10倍希釈を、OPTIMEMを使用して実施して、0.5mlの最終体積にした。各希釈物を35mmのVero細胞培養物上に添加した。ウイルス吸着の1時間後、接種材料を除去し、感染した細胞を、5% FCSおよび1%低融点アガロース(LMPアガロース)を含むDMEM 2mlで覆った。37℃および5% CO2での5日間のインキュベーション後、培養物を1mlの10% TCAで1時間固定し、次いでUVで30分間架橋した。アガロースの覆いを除去した後、細胞単層を、4%エタノール中に溶解したクリスタルバイオレットで染色し、水で洗浄し、プラークを倒立顕微鏡下で計数した(図7)。
【実施例5】
【0046】
組換えウイルスのMRC-5ウイルス連続継代
レスキューされたウイルスを、MRC5細胞上で10回連続継代し、10cm直径のプレート中に播種し、それに標準のMVウイルスおよび組換えMVウイルスを、0.01PFU/細胞のMOIで感染させた。単層が完全に感染した後、各培養物の1%上清を使用して、後のMRC5細胞単層を感染させた。導入遺伝子の発現および安定性を試験するために、継代1、5および10からのウイルスを使用して、ウエスタンブロットおよび免疫蛍光によって、発現をさらに特徴付けた。
【実施例6】
【0047】
増殖動態曲線
35mmディッシュ上に播種したMRC5細胞(1〜5×105)を、90%コンフルエントになるまでモニターし、対照としてMVEZを含む、細胞関連ウイルス画分由来の清澄化したウイルス懸濁物を、0.05MOIで感染させた。いわゆる「細胞フリーウイルス画分」に対応するサンプルおよびいわゆる「細胞関連ウイルス画分」に対応するサンプルを、1週間にわたって毎日回収し、力価決定した。増殖曲線の比較から、MV2EZ-L1の複製が僅かしか損なわれなかったことは興味深い:組換えウイルスは、6.12×106 TCID50s/ml 48hpiのピーク力価に達したが、MVEZは、6.8×106 TCID50s/ml 36hpiの最終力価であった(図8)。僅かに遅い複製の進行は、いくらか減少したプラークサイズにも反映された。MV2EZ-L1は、平均直径0.83mmのプラークを生じたが、MVEZは、平均直径0.91mmのプラークを生じた。
【実施例7】
【0048】
タンパク質発現分析
MV抗原およびHPV抗原発現を分析するために、免疫蛍光、ウエスタンブロットおよびVLPの単離を実施した。
【0049】
免疫蛍光
Vero細胞を、35mmウェル中の24mm×24mmのカバーガラス上に播種し、一晩培養し、レスキューされた組換えウイルスMV2EZ-L1またはネガティブコントロールウイルスMVEZを、0.05b M.O.I.で感染させた。感染の48時間後、カバーガラス上の細胞をPBS中4%のパラホルムアルデヒドで固定し、0.1% TX-100で透過処理し、ブロッキング溶液(1% BSAを含むPBS)で1時間洗浄し、特異的HPV-L1マウスモノクローナル抗体(Biogenesis)およびFITCHコンジュゲート化ヤギ抗マウス二次抗体で染色した。
【0050】
レスキューされたMV2EZ-L1の全てのシンシチウムは、ポジティブシグナルを示した(図9の上パネル、左の画像)が、レスキューされたMVEZのシンシチウムは、蛍光を示さなかった(図9の上パネル、右の画像)。このことは、MV2EZ-L1によって誘導された全てのシンシチウムがL1抗原を発現したことを示す。
【0051】
ウエスタンブロット
ウエスタンブロットのために、35mmディッシュ上に播種したVero細胞(1〜5×105)を、次の日、90%コンフルエンスになるまでモニターし、対照としてMVEZを含む、細胞関連ウイルス画分からの清澄化したウイルス懸濁物を、0.05MOI(感染多重度)を使用して感染させた。約80%のシンシチウム形成が観察された時点で、培地および細胞由来のタンパク質を分析した。細胞をまずPBSで洗浄し、次いで1mlのPBS中にかき取り、Eppendorfチューブ中に回収し、2000RPM/4分で遠心分離した。次いで、細胞を、プロテアーゼインヒビターカクテル(Complete Mini、Roche、1 836 153)を補充した溶解バッファー(1%NP-40、50mM Tris pH8、150mM NaCl)70μlで5分/RTで溶解した。上清を、13000RPM/5分で遠心分離することによって清澄化し、新たなチューブに移した。30μlの4×ローディングバッファー(Invitrogen)を添加した。サンプルを混合し、95℃/2minで煮沸し、スピンダウンし、-20℃で保存した。
【0052】
SDS-PAGE移動を、1×ランニングバッファーを使用して、200Vで50分間(開始100〜125mA、終了60〜80mA)、還元条件下NuPAGE 12%ビスアクリルアミドゲルで泳動して実施した。次いで、セミドライ法を使用して、分離した細胞-タンパク質を、14V/1時間30分でニトロセルロースメンブレンに転写した。
【0053】
HPV-L1に対するマウスモノクローナル抗体(Biogenesis)を一次抗体として使用した。二次抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス抗体であり、増強化学発光キット(ECL(商標)、Amersham LifeScience)によるバンドの可視化を可能にした。
【0054】
抗HPVL1抗体は、MV2EZ-L1感染細胞の培養培地中に放出された約55kDaのタンパク質と反応したが、このようなタンパク質は、MVEZ感染細胞の培養培地中では検出されず(図10、パネルA)、同様に、MV2EZ-L1感染細胞中で合成された約55kDaのタンパク質とも反応したが、このようなタンパク質はMVEZ感染細胞溶解物中では検出されなかった(図10、パネルB)。この結果は、MV2EZ-L1感染細胞が、HPV由来の真正のL1タンパク質とサイズが類似したL1タンパク質を発現および分泌することを示している。
【0055】
VLPの単離
増殖した単層Vero細胞に、0.1MOIで組換えウイルスMV2EZ-L1またはネガティブコントロールウイルスMVEZを感染させ、37℃でインキュベートした。ウイルス吸着から1時間後、培地を、5%FCSを含むDMEMによって置換し、37℃で48時間インキュベートして、90%のシンシチウムを得た。感染細胞由来の培地を回収し、遠心分離し、40%(w/v)サッカロース層上での、110,00×g、4℃で2.5時間の遠心分離に供して、粒子からタンパク質を分離した。続いて、ペレットをPBS中27%(w/w)塩化セシウムに可溶化し、PBS中27%(w/w)塩化セシウム中での密度勾配遠心分離で、141,000g、4℃で20時間分析した。勾配画分を、SDS-page電気泳動およびウエスタンブロットによって、HPV-L1の存在について分析した(図11)。
【実施例8】
【0056】
マウス免疫化
上記レスキューされた組換えMV-HPVウイルスの免疫原性能力を、MV感染に感受性のトランスジェニックマウスCD46で実施した免疫化試験によって証明した。動物を、最適な衛生条件下で維持し、6〜8週齢で免疫化した。免疫化は、0週目および4週目での2回の注射によって、105PFUの各組換えMV-HPVを使用して、腹腔内で実施した。非感染マウスならびにPBS免疫化マウスを対照とした。UV不活化MVを対照として使用して、免疫応答の活性化に対するウイルス複製の影響を決定した。
【0057】
免疫化CD46マウス(1群当たり少なくとも6匹)由来の血清におけるMV特異的抗体の存在を、IgG抗体検出のために、麻疹ウイルスEIAバルク(ATCC VR-24)で被覆した96マイクロウェルプレートを使用してELISAによって決定した。タンパク質を、0.05M炭酸塩バッファー(pH9.4)で0.6μg/mlに希釈し、1ウェル当たり100μlを、96ウェルのマイクロタイタープレートに添加した。これらのプレートを4℃で一晩インキュベートし、PBS/0.05% Tween 20(PT)(pH7.4)で洗浄し、PT(0.1ml/ウェル)-10%BSAと共に37℃で60分間インキュベートし、再度PTで洗浄した。試験した血清の連続2倍希釈物を添加し(100μl/ウェル)、プレートを、37℃で60分間インキュベートした。プレートをPTで洗浄し、PBS-0.05% Tween 20中に1:2000希釈した100μlのヤギ抗マウスIgG HRPと共に37℃で30分間インキュベートした。プレートをPTで洗浄し、100μl OPD(o-フェニレンジアミン、Fluka 78411)と共にインキュベートした。3〜4分後に反応を停止させた。プレートを、波長490nmでMicroElisa Readerで読み取った。ネガティブコントロールの3倍よりも高い読み取りを、ポジティブ反応としてスコアした。
【0058】
免疫化CD46マウスの血清におけるHPVL1特異的抗体の存在を、ELISAアッセイおよび中和アッセイによって決定した。
【0059】
簡潔に述べると、Elisaアッセイに関して、96マイクロウェルプレートを、炭酸塩バッファーpH9.4で2〜50ng/ウェルの濃度に希釈したHPVL1抗原で被覆した。プレートを4℃で一晩インキュベートし、PBS/0.05%Tween 20(PT)で洗浄した。続いて、非特異的相互作用を、PT中に溶解した10%脱脂乳を用いて37℃で1時間ブロッキングし、ウェルを再度PTで洗浄した。プレートを、種々の希釈のマウス血清(1:200で開始し、連続2倍希釈が続く)、ペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgGおよびOPD基質と共に、連続してインキュベートした。吸光度を490nmで測定した。カットオフバックグラウンドレベル(MV免疫化マウス由来の血清の平均値に2.1倍を乗じたもの)を上回る値を、ポジティブとみなした。力価は最終希釈の逆数として示した。
【0060】
中和抗体についてアッセイするため、血清の2倍希釈物を、50PFUの組換え体と共に37℃で1時間インキュベートし、二連で104のVero細胞/ウェル(96ウェルプレート)上にプレートした。5日後、力価を顕微鏡によって決定した。エンドポイント力価は、PFUの数値を少なくとも50%減少させた、試験した最も高い血清希釈として計算した。
【0061】
HPV-L1に対する特異的免疫応答をtable 1(表1)に示す。Elisaアッセイおよび中和アッセイにおける力価は両方とも、VLPの3回の注射後に女性またはマウスにおいて観察された力価と類似している。さらに、2つのアッセイで観察された非常に類似した力価は、発現されたL1のほとんどが、コンフォメーション的に正しいことを示している。
【実施例9】
【0062】
プラーク精製による、欠陥干渉粒子(Defecting Interfering Particles:DI)からの、マラリア抗原を発現する組換え麻疹ウイルスの精製
パラミクソウイルス、および特に麻疹ウイルスによる特定の回数の継代後、欠陥干渉粒子 (DI)の蓄積が生じることが、文献から公知である(23、24)。これらのDIは、種々の欠陥を生じることが記載されている:ワクチンの安全性に対する負の影響、製造時のウイルス収率に対する負の影響、ゲノム不安定性およびワクチン接種後の免疫反応の抑制。本発明者らの新たな組換えウイルスによるこのようなDIを回避するため、本発明者らは、Vero細胞の代わりにMRC5細胞を用いた点以外、実施例7に記載されたプラーク精製法を適用した。透明な充分明確なシンシチウムの形成後、本発明者らは、顕微鏡下で、マイクロピペットを用いてこのような材料を吸引し、新鮮なMRC5組織培養物中でさらに継代した。
【実施例10】
【0063】
エンドポイント希釈による、欠陥干渉粒子 (DI)からの、マラリア抗原を発現する組換え麻疹ウイルスの精製
エンドポイント希釈技術を、マイクロプレート中で適用した。全てのウェルにおいて、MRC5細胞を用いた新たな単層がちょうど発生した。組換え麻疹-マラリアウイルスを含むウイルス懸濁物を、2倍希釈で調製した。シンシチウムが検出された最後の単層のウェルから、上清をピペットで吸引した。この上清を、MRC5細胞を含む懸濁物と混合した。この混合物を4℃で1時間インキュベートした。最後に、これを小さいCostarフラスコ中に移し、35℃+5%CO2でインキュベートし、10日後に、組換え麻疹-マラリアウイルスを精製するために回収した。
【実施例11】
【0064】
麻疹-マラリア混合ワクチンの製造
上記組換え麻疹-マラリアウイルスのワーキングシードを、1750cm2のローラーボトル中で、35℃で10日間、MRC5細胞単層上でインキュベートした。細胞は、健康状態およびコンフルエンスの状態について、毎日モニターした。10日目に、シンシチウム形成の最も高いレベルで、液体窒素中での保存のために、上清を鋼製円筒中に投入した。同じ手順を2日後に反復した。全ての試験(ウイルス力価、ゲノム安定性、ウイルス安全性、細胞安全性、化学分析、繁殖不能性その他)を実施した後、回収物を解凍し、ゼラチン、ソルビトール、アミノ酸および他の糖を含む安定剤と混合して、105の最終希釈にした。自動充填機器を用いて、小さい凍結ビン(F3)に、各0.5mlで接種した。特別に算定した凍結乾燥プログラムを使用して、凍結-乾燥プロセスの間の製品の最大の生存を保障する。
【0065】
[参考文献]
【特許請求の範囲】
【請求項1】
麻疹およびHPVの両方に対する免疫応答および保護を惹起することが可能である、HPV抗原を発現する組換え麻疹ワクチンウイルスを含む、麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項2】
組換え麻疹ワクチンウイルスが、単一または異なるHPV抗原の少なくとも1つのL1タンパク質を発現する、請求項1に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項3】
L1タンパク質が、HPV16-L1、HPV18-L1、HPV6-L1およびHPV11-L1から選択される、請求項2に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項4】
組換え麻疹ワクチンウイルスが、単一または異なるHPV抗原の少なくとも1つのL2タンパク質を発現する、請求項1に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項5】
L2タンパク質が、HPV16-L2、HPV18-L2、HPV6-L2およびHPV11-L2から選択される、請求項4に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項6】
組換え麻疹ワクチンウイルスが、単一または異なるHPV抗原の少なくとも1つのE6タンパク質またはE7タンパク質を発現する、請求項1に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項7】
E6タンパク質が、HPV16-E6、HPV18-E6およびHPV6-E6から選択される、請求項6に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項8】
E7タンパク質が、HPV16-E7、HPV18-E7およびHPV6-E7から選択される、請求項6に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項9】
HPV抗原が、哺乳動物発現系で産生される、請求項1から8のいずれか一項に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項10】
哺乳動物発現系が293T-3-46細胞である、請求項1に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項11】
異なるHPV型および麻疹の抗原のヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項12】
図5a〜5lに記載されたヌクレオチド配列から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
図4aおよび4bに記載されたヌクレオチド配列から選択されるヌクレオチド配列をさらに含む、請求項11に記載のベクター。
【請求項14】
抗原が、HPV-16、HPV-18、HPV-6およびHPV-11のL1タンパク質、L2タンパク質、E6タンパク質またはE7タンパク質から選択される、請求項11に記載のベクター。
【請求項15】
L1の配列が、麻疹ウイルス配列のPタンパク質とMタンパク質との間またはHタンパク質とLタンパク質との間にクローニングされる、請求項11に記載のベクター。
【請求項16】
請求項11に記載のベクターを含む宿主。
【請求項17】
エシェリキア・コリ(E.coli)細胞株または哺乳動物細胞株から選択される、請求項20に記載の宿主。
【請求項18】
組換え麻疹ウイルスが、Edmoston Zagreb由来のワクチン株起源である、請求項1に記載の混合ワクチン。
【請求項19】
HPV16-L1、HPV18-L1、HPV6-L1およびHPV11-L1全体をコードする核酸配列が挿入されている組換え麻疹ウイルスを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の混合ワクチン。
【請求項20】
HPV16-L2、HPV18-L2、HPV6-L2およびHPV11-L2をコードする核酸配列が挿入されている組換え麻疹ウイルスを含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の混合ワクチン。
【請求項21】
HPV16-E6、HPV18-E6およびHPV6-E6をコードする核酸配列が挿入されている組換え麻疹ウイルスを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項22】
HPV16-E7、HPV18-E7およびHPV6-E7をコードする核酸配列が挿入されている組換え麻疹ウイルスを含む、請求項1から21のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項23】
HPV16-L1、HPV18-L1、HPV6-L1、HPV11-L1、HPV16-L2、HPV18-L2、HPV6-L2、HPV11-L2、HPV16-E6、HPV18-E6、HPV6-E6、HPV16-E7、HPV18-E7、HPV6-E7、またはそれらの組み合わせをコードする核酸配列が挿入されている組換え麻疹ウイルスを含む、請求項1から22のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項24】
組換え麻疹ウイルスに、前記HPV抗原のうち2つまたは3つを同時にコードする少なくとも2つまたは3つの核酸配列が挿入されている、請求項1から23のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項25】
組換え麻疹ウイルスが、図5a〜5lに記載されたコード配列を含む、請求項1に記載のワクチン。
【請求項26】
組換え麻疹ウイルスが、HPV抗原に加えて、アジュバント特性を有するタンパク質をコードする、請求項1から25のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項27】
アジュバントが、インターロイキン、好ましくはインターロイキン2である、請求項25に記載のワクチン。
【請求項28】
少なくとも1つの前記組換え麻疹HPVウイルス、または2〜数種の前記組換え麻疹HPVウイルスの混合物から必須になる、請求項1から27のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項29】
前記組換え麻疹HPVウイルス、または2〜数種の前記組換え麻疹HPVウイルスの混合物が、欠陥干渉粒子(DI)を欠く、請求項1から28のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項30】
偶発的に生じたDI粒子がプラーク精製によって排除されている、請求項1から29のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項31】
偶発的に生じたDI粒子がエンドポイント希釈によって排除されている、請求項1から30のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項32】
偶発的に生じたDI粒子が物理的方法によって排除されている、請求項1から31のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項33】
物理的方法が遠心分離である、請求項1から32のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項34】
混合ワクチンの一成分であり、他の成分が、単独のまたは組み合わせた、天然に弱毒化されたまたは組換えの、風疹、ムンプス、水痘または他の弱毒生ワクチンウイルスである、請求項1から33のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項35】
適切な安定剤および非経口投与用のソルビトールと混合された、請求項1から34のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項36】
適切な安定剤および/または鼻腔内投与に適したアジュバントと混合された、請求項1から34のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項37】
適切な安定剤および/または吸入投与用のアジュバントと混合された、請求項1から34のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項38】
適切な安定剤および/または経口投与に適したアジュバントと混合された、請求項1から34のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項39】
適切な安定剤および/または坐剤製剤に適したアジュバントと混合された、請求項1から34のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項40】
適切な安定剤および/または経皮投与に適したアジュバントと混合された、請求項1から34のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項41】
実施例で報告した詳細な配列に記載されるコード配列を有する組換え麻疹ウイルスを含む、請求項1から40のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項1】
麻疹およびHPVの両方に対する免疫応答および保護を惹起することが可能である、HPV抗原を発現する組換え麻疹ワクチンウイルスを含む、麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項2】
組換え麻疹ワクチンウイルスが、単一または異なるHPV抗原の少なくとも1つのL1タンパク質を発現する、請求項1に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項3】
L1タンパク質が、HPV16-L1、HPV18-L1、HPV6-L1およびHPV11-L1から選択される、請求項2に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項4】
組換え麻疹ワクチンウイルスが、単一または異なるHPV抗原の少なくとも1つのL2タンパク質を発現する、請求項1に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項5】
L2タンパク質が、HPV16-L2、HPV18-L2、HPV6-L2およびHPV11-L2から選択される、請求項4に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項6】
組換え麻疹ワクチンウイルスが、単一または異なるHPV抗原の少なくとも1つのE6タンパク質またはE7タンパク質を発現する、請求項1に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項7】
E6タンパク質が、HPV16-E6、HPV18-E6およびHPV6-E6から選択される、請求項6に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項8】
E7タンパク質が、HPV16-E7、HPV18-E7およびHPV6-E7から選択される、請求項6に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項9】
HPV抗原が、哺乳動物発現系で産生される、請求項1から8のいずれか一項に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項10】
哺乳動物発現系が293T-3-46細胞である、請求項1に記載の麻疹-HPV混合ワクチン。
【請求項11】
異なるHPV型および麻疹の抗原のヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項12】
図5a〜5lに記載されたヌクレオチド配列から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
図4aおよび4bに記載されたヌクレオチド配列から選択されるヌクレオチド配列をさらに含む、請求項11に記載のベクター。
【請求項14】
抗原が、HPV-16、HPV-18、HPV-6およびHPV-11のL1タンパク質、L2タンパク質、E6タンパク質またはE7タンパク質から選択される、請求項11に記載のベクター。
【請求項15】
L1の配列が、麻疹ウイルス配列のPタンパク質とMタンパク質との間またはHタンパク質とLタンパク質との間にクローニングされる、請求項11に記載のベクター。
【請求項16】
請求項11に記載のベクターを含む宿主。
【請求項17】
エシェリキア・コリ(E.coli)細胞株または哺乳動物細胞株から選択される、請求項20に記載の宿主。
【請求項18】
組換え麻疹ウイルスが、Edmoston Zagreb由来のワクチン株起源である、請求項1に記載の混合ワクチン。
【請求項19】
HPV16-L1、HPV18-L1、HPV6-L1およびHPV11-L1全体をコードする核酸配列が挿入されている組換え麻疹ウイルスを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の混合ワクチン。
【請求項20】
HPV16-L2、HPV18-L2、HPV6-L2およびHPV11-L2をコードする核酸配列が挿入されている組換え麻疹ウイルスを含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の混合ワクチン。
【請求項21】
HPV16-E6、HPV18-E6およびHPV6-E6をコードする核酸配列が挿入されている組換え麻疹ウイルスを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項22】
HPV16-E7、HPV18-E7およびHPV6-E7をコードする核酸配列が挿入されている組換え麻疹ウイルスを含む、請求項1から21のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項23】
HPV16-L1、HPV18-L1、HPV6-L1、HPV11-L1、HPV16-L2、HPV18-L2、HPV6-L2、HPV11-L2、HPV16-E6、HPV18-E6、HPV6-E6、HPV16-E7、HPV18-E7、HPV6-E7、またはそれらの組み合わせをコードする核酸配列が挿入されている組換え麻疹ウイルスを含む、請求項1から22のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項24】
組換え麻疹ウイルスに、前記HPV抗原のうち2つまたは3つを同時にコードする少なくとも2つまたは3つの核酸配列が挿入されている、請求項1から23のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項25】
組換え麻疹ウイルスが、図5a〜5lに記載されたコード配列を含む、請求項1に記載のワクチン。
【請求項26】
組換え麻疹ウイルスが、HPV抗原に加えて、アジュバント特性を有するタンパク質をコードする、請求項1から25のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項27】
アジュバントが、インターロイキン、好ましくはインターロイキン2である、請求項25に記載のワクチン。
【請求項28】
少なくとも1つの前記組換え麻疹HPVウイルス、または2〜数種の前記組換え麻疹HPVウイルスの混合物から必須になる、請求項1から27のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項29】
前記組換え麻疹HPVウイルス、または2〜数種の前記組換え麻疹HPVウイルスの混合物が、欠陥干渉粒子(DI)を欠く、請求項1から28のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項30】
偶発的に生じたDI粒子がプラーク精製によって排除されている、請求項1から29のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項31】
偶発的に生じたDI粒子がエンドポイント希釈によって排除されている、請求項1から30のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項32】
偶発的に生じたDI粒子が物理的方法によって排除されている、請求項1から31のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項33】
物理的方法が遠心分離である、請求項1から32のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項34】
混合ワクチンの一成分であり、他の成分が、単独のまたは組み合わせた、天然に弱毒化されたまたは組換えの、風疹、ムンプス、水痘または他の弱毒生ワクチンウイルスである、請求項1から33のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項35】
適切な安定剤および非経口投与用のソルビトールと混合された、請求項1から34のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項36】
適切な安定剤および/または鼻腔内投与に適したアジュバントと混合された、請求項1から34のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項37】
適切な安定剤および/または吸入投与用のアジュバントと混合された、請求項1から34のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項38】
適切な安定剤および/または経口投与に適したアジュバントと混合された、請求項1から34のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項39】
適切な安定剤および/または坐剤製剤に適したアジュバントと混合された、請求項1から34のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項40】
適切な安定剤および/または経皮投与に適したアジュバントと混合された、請求項1から34のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項41】
実施例で報告した詳細な配列に記載されるコード配列を有する組換え麻疹ウイルスを含む、請求項1から40のいずれか一項に記載のワクチン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図5f】
【図5g】
【図5h】
【図5i】
【図5j】
【図5k】
【図5l】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図5f】
【図5g】
【図5h】
【図5i】
【図5j】
【図5k】
【図5l】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【公表番号】特表2011−524863(P2011−524863A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511167(P2011−511167)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/IN2009/000302
【国際公開番号】WO2010/079505
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(507365927)カディラ・ヘルスケア・リミテッド (26)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/IN2009/000302
【国際公開番号】WO2010/079505
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(507365927)カディラ・ヘルスケア・リミテッド (26)
【Fターム(参考)】
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