麻酔薬製剤
本発明は、一般に、神経刺激性ステロイド麻酔薬のための薬物送達システムの分野に関する。より具体的には、麻酔薬製剤および鎮静薬製剤が、1つまたは複数の神経刺激性ステロイド麻酔薬およびシクロデキストリンを含むホスト/ゲスト調製物の形態で提供される。意図される具体的なシクロデキストリンには、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンおよびその修飾形態が含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「麻酔薬製剤」と題する2010年1月21日に出願された米国仮特許出願第61/297,249号明細書および「麻酔薬製剤」と題する2010年9月22日に出願された米国仮特許出願第61/385,318号明細書に関連し、それらに基づく優先権を主張するものであり、それらの内容全体を参照によって本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明は、一般に、神経刺激性ステロイド麻酔薬のための薬物送達システムの分野に関する。より具体的には、麻酔薬組成物および鎮静薬組成物は、1つまたは複数の神経刺激性ステロイド麻酔薬およびシクロデキストリンまたはその修飾形態を含むホスト/ゲスト調製物の形態で提供される。
【背景技術】
【0003】
本明細書に挙げた参考文献の書誌詳細は、本明細書の最後に掲載してある。
【0004】
いかなる従来技術に言及しても、その従来技術がいずれかの国において一般常識の一部を形成しているとの認識、または何らかの形での示唆であるとは解釈されず、解釈されるべきでもない。
【0005】
薬物送達システムは、全身または標的部位に、所望の効果を得るのに十分な時間および条件下で、必要量の薬物を供給することを目標とする。一部の薬物送達システムでは、特定の望ましくない薬物特性を緩和するために担体物質が必要となる。そのようなタイプの担体分子の1つとして、選択されたゲスト分子のためのホストとして働くシクロデキストリンがある。
【0006】
シクロデキストリンは、その外表面に水酸基および中心に親油性の空洞を有する環状オリゴ糖である。シクロデキストリンは、疎水性分子と共に包接複合体を形成することができる。形成されるホスト/ゲスト複合体の安定性は、ゲスト分子がどれほど容易にホストの中心空洞を占有するかに依存する。
【0007】
最も一般的なシクロデキストリンは、6、7および8個のα−1,4結合グルコース単位からそれぞれなるα−、β−およびγ−シクロデキストリンである。シクロデキストリンは、水および有機溶媒への溶解度が比較的低く、これが医薬製剤におけるシクロデキストリンの使用を限定している。シクロデキストリンの一般化学についての説明は、以下の文献を参照されたい。Fromming and Szejtlic(eds),Cyclodextrins in Pharmacy,Kluwer:Dordrecht,The Netherlands,1994;Atwood,Davies,MacNicol and Vogtie(Eds),Comprehensive Supramolecular Chemistry Vol 4,Pergamon:Oxford UK,1996;およびThomason,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst 14:1,1997。
【0008】
アルファキサロン[アルファキサロンすなわち3−α−ヒドロキシ−5−α−,プレグナン−11,20−ジオン]は、獣医学で現在使用される強力な神経刺激性ステロイド麻酔薬である(Child et al.,British Journal of Anaesthesia 43:2−13,1971)。
【0009】
アルファキサロンは、アルファドロンと共に[アルテシン;アルファテシン]、1983年までヒト患者に対して静脈麻酔薬として世界中で広く使用されていた。これらの麻酔薬は高い治療係数を有するが、それにもかかわらず、ポリエトキシ化ヒマシ油賦形剤(Cremophor EL[登録商標])に対する、偶発的で予測不能であり、かつ重度のアナフィラキシー様反応のため、医療から撤退した。
【0010】
現在は、ジイソプロピルフェノール(プロポフォール)の脂質製剤が、最もよく使用される麻酔薬である。しかし、プロポフォールは、その血圧低下作用、すなわち心拍出量を低減させ、呼吸調節に悪影響を及ぼし得る作用のため、危険率の高い特定の患者には禁忌となり得る。具体的には、プロポフォールは、微生物に汚染されればその増殖を促進する可能性のある脂質エマルジョン中に製剤化される。この製剤は、事実上滅菌することができない。微生物に汚染されたプロポフォール製剤が患者に感染を引き起こした例があった。現在のプロポフォール製剤に関する別の問題の1つは、静脈内注射の後またはその間に誘発される痛みである。水をベースとした調製物で再製剤化する試みは、注射痛の増大をもたらした。プロポフォールはまた、心血管および呼吸の抑制をもたらすことがあり、治療係数は5と低い。すなわち、標準麻酔薬用量のわずか5倍で死に至る恐れがある。さらに、この麻酔薬はプラスチック保存容器およびプラスチック注射器と適合性がなく、そのため、静脈麻酔および鎮静のために標準的にしばしば使用される注射器送達装置の使用は難しい。この薬物はさらに高脂血症を引き起こすことがあり、点滴により大用量で使用する場合、毒性を誘発することがある。これは、集中治療環境では特に問題となる。
【0011】
神経刺激性ステロイド麻酔薬は、プロポフォールより少ない副作用でより効果的である可能性がある。
【0012】
したがって、対象に神経刺激性ステロイド麻酔薬を使用できるようにする適切な製剤を開発する必要性がある。
【発明の概要】
【0013】
本明細書を通して、文脈上、他の意味に解釈すべき場合を除き、「含む(comprise)」という単語ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などの変化形は、明記された要素もしくは整数もしくは方法ステップまたは要素もしくは整数もしくは方法ステップの群を包含することを意味するものであって、他の任意の要素もしくは整数もしくは方法ステップまたは要素もしくは整数もしくは方法ステップの群を除外することを意味するものでないことは理解されよう。
【0014】
本発明は、神経刺激性ステロイド麻酔薬およびシクロデキストリンまたはその修飾形態を含む、哺乳類対象に麻酔または鎮静を誘導する際に使用するためのホスト/ゲスト複合体製剤を提供する。一般に、神経刺激性ステロイド麻酔薬はやや難溶である。したがって、ホスト/ゲスト複合体製剤は、神経刺激性ステロイド麻酔薬のための薬物送達システムになる。一実施形態では、シクロデキストリンは修飾ポリアニオン性β−シクロデキストリンであり、神経刺激性ステロイド麻酔薬はアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール(acebrochol)、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン(ganaxolone)、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される。しかしながら、シクロデキストリンはすべて、γ、αシクロデキストリンまたはそれらの修飾形態およびそれらの塩を含むことを本明細書では意図する。用語「誘導体」には、神経刺激性ステロイド麻酔薬の重水素化誘導体が含まれる。重水素化誘導体は改良された医薬品としての使用が意図される。1つまたは複数の水素原子が重水素に置換され得る。シクロデキストリンの修飾形態としては、メチル化、ヒドロキシアルキル化、分岐、アルキル化、アシル化およびアニオン性シクロデキストリンが挙げられる。「アルキル化」に関しては、アルキルエーテル誘導体およびアルキルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンが含まれる。薬剤「アルファドロン」には、その塩、酢酸アルファドロンが含まれる。シクロデキストリンまたはその修飾形態に言及する場合、その塩(例えばナトリウム塩)も含まれる。
【0015】
したがって、本発明の一態様は、シクロデキストリンまたはその修飾形態を用いて製剤化された神経刺激性ステロイド麻酔薬を含む麻酔薬組成物または鎮静薬組成物を対象とする。
【0016】
本発明の麻酔薬製剤または鎮静薬製剤は、滅菌可能であり、注射痛の発生率を低減させ、プロポフォールに比較して高い治療係数(5を超える治療係数を含む)を有し、プラスチック容器の中に保存可能であり、外科レベルに達する麻酔の迅速誘導に加え、プロポフォールまたはアルテシン(アルファキサロンおよびアルファドロン)と同様かそれよりも迅速な覚醒時間をもたらすなどの特徴を示す。
【0017】
したがって、本発明の別の態様は、麻酔薬組成物または鎮静薬組成物であって、神経刺激性ステロイド麻酔薬およびシクロデキストリンまたはその修飾形態を含み、この麻酔薬およびシクロデキストリンが、滅菌可能であること、静脈内注射痛が最小であること、5を超える治療係数を有すること、およびプラスチック容器への保存が可能であることから選択される特性を示す麻酔薬組成物を提供するように製剤化されている、麻酔薬組成物または鎮静薬組成物を提供する。一実施形態では、この製剤は、これらの特性の1つ、2つ、3つまたは4つすべてを含む。
【0018】
関連する実施形態では、本発明は、麻酔薬または鎮静薬送達ホスト/ゲスト組成物であって、神経刺激性ステロイド麻酔薬ゲストとシクロデキストリンホストまたはその修飾形態とを含み、ホスト/ゲスト組成物が、滅菌可能であり、最小の静脈内注射痛で投与することができ、かつ5を超える治療係数を示すように製剤化されている、麻酔薬または鎮静薬送達ホスト/ゲスト組成物を提供する。製剤は、さらにプラスチック容器に保存可能であってもよい。
【0019】
より具体的には、本発明は、シクロデキストリンまたはその修飾形態を用いて製剤化されたアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩およびプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド麻酔薬を含む麻酔薬組成物または鎮静薬組成物を提供する。
【0020】
一層具体的には、本発明は、麻酔薬組成物または鎮静薬組成物であって、シクロデキストリンまたはその修飾形態を用いて製剤化されたアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩およびプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド麻酔薬を含み、この組成物が、滅菌可能であること、静脈内注射痛が最小であること、5を超える治療係数を有すること、およびプラスチック容器への保存が可能であることから選択される特性を示す、麻酔薬組成物または鎮静薬組成物を対象とする。
【0021】
本発明の実施に有用な具体的なシクロデキストリンは、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのスルホアルキルエーテルシクロデキストリンである。この化合物は、米国特許第5,376,645号明細書に記載のとおりに調製することができる。別の有用なシクロデキストリンは、スルホアルキルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンを含むアルキルエーテル誘導体である。しかしながら、本発明はメチル化、ヒドロキシアルキル化、分岐、アシル化およびアニオン性形態などの他のシクロデキストリン誘導体にも及ぶ。本発明の麻酔薬製剤は、哺乳類対象、具体的にはヒト患者に対して注射投与を可能にする。
【0022】
本発明の別の態様は、5を超える治療係数を有する滅菌可能な組成物を生成するためにスルホアルキルエーテルシクロデキストリンまたはその修飾形態を用いて製剤化されたアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイドを含む麻酔薬組成物または鎮静薬組成物を提供する。
【0023】
一実施形態では、この組成物は、さらにプラスチック容器において保存可能である。
【0024】
この製剤は、約pH5.5〜pH8の範囲内にpHを維持するために緩衝液を含んでもよい。あるいは、製剤のpHが約pH3〜約pH9.5になる場合は、製剤を緩衝化しなくてもよい。製剤はまた、防腐剤、抗菌薬および/または毒性軽減薬を含んでもよい。さらに、溶解性および/または安定性を改善するために、コポリマーを含んでもよい。好適なコポリマーの例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(pyrollidone)(PVP)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。
【0025】
本発明は、点滴または間欠的ボーラス投与により、対象において麻酔または鎮静を誘導または維持することをさらに意図するものであり、その方法は、麻酔または鎮静を誘導するための時間および条件下で、シクロデキストリンを用いて製剤化された神経刺激性ステロイド麻酔薬の麻酔有効量を投与することを含む。
【0026】
より具体的には、本発明は、点滴または間欠的ボーラス投与により、対象において麻酔または鎮静を誘導または維持する方法であって、麻酔または鎮静を誘導するのに十分な時間および条件下で、シクロデキストリンまたはその修飾形態を用いて製剤化されたアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド麻酔薬の麻酔有効量を投与することを含み、この麻酔薬製剤または鎮静薬製剤が、滅菌可能であること、静脈内注射痛が最小であること、5を超える治療係数を有することから選択される特性を示す方法を提供する。
【0027】
一実施形態では、この製剤は、さらにプラスチック容器に保存可能である。
【0028】
一般に、神経刺激性ステロイド麻酔薬とシクロデキストリンとのモル比は、約1:1〜約1:6、より具体的には約1:1〜約1:4、さらにより具体的には約1:1〜約1:3、一層より具体的には約1:2である。
【0029】
本発明のこれらの態様は、点滴または間欠的ボーラス投与により、対象において麻酔もしくは鎮静またはその両方を誘導または維持することに及ぶ。
【0030】
この製剤は、1組の説明書を含む販売パッケージとしてもよい。この説明書には、麻酔を誘導するのに十分な時間および条件下で、シクロデキストリンを用いて製剤化されたアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩およびプロドラッグ形態から選択されるものなどの神経刺激性ステロイド麻酔薬の有効量を患者に投与することを含む患者管理プロトコルを含めてもよい。上述のとおり、好適なシクロデキストリンとしては、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのスルホアルキルエーテルデキストリンおよびスルホアルキル−アルキルエーテルシクロデキストリンなどのアルキルエーテル誘導体が挙げられる。他の誘導体としては、メチル化、ヒドロキシアルキル化、分岐、アルキル化、アシル化およびアニオン性シクロデキストリンが挙げられる。
【0031】
本発明は、対象に麻酔を誘導する医薬品の製造における、神経刺激性ステロイド麻酔薬およびシクロデキストリンまたはその修飾形態の使用をさらに意図する。特定の実施形態では、神経刺激性ステロイド麻酔薬は、アルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩およびプロドラッグ形態から選択される。
【0032】
第1のコンパートメントの中に神経刺激性ステロイド麻酔薬を、第2のコンパートメントの中にスルホアルキルエーテルシクロデキストリンなどのシクロデキストリンを、そして場合によっては、第3または他のコンパートメントの中に賦形剤および/またはコポリマーを含む、コンパートメント形態のキットもまた、本明細書では意図される。このキットは、改変注射器の形態になることもある。
【0033】
さらに、神経刺激性ステロイド麻酔薬の標識化形態は、鎮静または麻酔の間に麻酔薬をモニターし追跡するのに有用である。したがって、標識化神経刺激性ステロイド麻酔薬のモニタリングを支援するキットおよび装置が本明細書において提供される。標識化誘導体には、重水素化、トリチウム化およびその他の標識化薬剤が含まれる。
【0034】
一部の図にはカラー表示またはカラー要素が含まれている。カラー写真は、要請に応じて特許権所有者からまたは適切な特許局から入手可能である。特許局から得る場合は、料金が課されることがある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1aから図1fは、ハロタン麻酔下で、留置用内頚静脈内カテーテルを埋め込み、次いで、プロポフォール(a、b)、アルテシン[アルファキサロンおよび酢酸アルファドロン](c、d)またはPhaxanCD[アルファキサロンと(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンが1:2モル複合比](e、f)を注射した雄性ウィスターラットに関する実験を示すグラフである。
【図2】図2は、2つのアルファキサロン調製物[ラットにおけるPhaxanCDおよびアルテシン]の致死量投与を示すグラフである。
【図3】図3は、ラットにおけるアルテシン調製物の致死量投与に対するプロビットプロットを示すグラフである。
【図4】図4は、PhaxanCD(アルファキサロンと(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンが1:2モル複合比)の反復投与を用いた場合のラットの睡眠時間を示すグラフである。
【図5】図5は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のプレグナノロンを用いた場合のラットにおける正向反射の時間応答曲線を示すグラフである。
【図6】図6は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のプレグナノロンを用いた場合のラットにおける尾ピンチの時間応答曲線を示すグラフである。
【図7】図7は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のプレグナノロンを用いた場合のラットにおけるロータロッド試験の時間応答曲線を示すグラフである。
【図8】図8は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のアルファドロンを用いた場合のラットにおける正向反射の時間応答曲線を示すグラフである。
【図9】図9は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のアルファドロンを用いた場合のラットにおける尾ピンチの時間応答曲線を示すグラフである。
【図10】図10は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のアルファドロンを用いた場合のラットにおけるロータロッド試験の時間応答曲線を示すグラフである。
【図11】図11は、プロポフォール、アルテシンまたはPhaxanCDを注射した後のラットにおける平均収縮期血圧のパーセント変化を示すグラフである。
【図12】図12は、プロポフォール、アルテシンまたはPhaxanCDを注射した後のラットにおける平均拡張期血圧のパーセント変化を示すグラフである。
【0036】
「PhaxanCD」に言及する場合、アルファキサロンと(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンとの調製物を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は神経刺激性ステロイド麻酔薬のための薬物送達システムを提供する。一般に、神経刺激性ステロイド麻酔薬は水にやや難溶である。この薬物送達システムはホスト担体をシクロデキストリン形態またはその修飾形態で含む。一実施形態では、「シクロデキストリン」に言及する場合、α−、β−もしくはγ−シクロデキストリンまたはそれらの修飾形態もしくは誘導形態が含まれる。別の実施形態では、「シクロデキストリン」に言及する場合、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのスルホアルキルエーテルデキストリンまたはスルホブチルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンなどのそのアルキルエーテル誘導体が含まれる。シクロデキストリンの誘導体としては、メチル化、ヒドロキシアルキル化、分岐、アルキル化、アシル化およびアニオン性シクロデキストリンが挙げられる。「アルキル化」に関しては、アルキルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンなどのアルキルエーテル誘導体が含まれる。本明細書において意図される具体的なシクロデキストリンは、表7[Uekama et al.,Chem.Rev.98:2045−2076,1998]に示され、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、エチルエーテル、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル(平面型)、γ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルおよびα−シクロデキストリンスルホブチルエーテルならびにそれらの塩(例えばナトリウム塩)が含まれる。
【0038】
本発明の薬物送達システムにより、神経刺激性ステロイド麻酔薬を、滅菌された形態で対象に投与することができる。さらに、この送達それ自体は、プロポフォールの静脈内投与と比較して痛みが少ない。加えて、本発明の製剤は5を超える治療係数を有する(麻酔用量の5倍を超える投与で試験動物の死がもたらされ得ることを意味する)。「5を超える」に関しては、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190および200を含む、5と200との間ならびにその間の整数または分数で示される治療係数を意味する。本発明の製剤はまた、プラスチック容器に保存可能であり、プラスチック送達装置での使用に適合する。
【0039】
したがって、本発明の一態様は、麻酔薬または鎮静薬送達ホスト/ゲスト組成物であって、シクロデキストリンホストまたはその修飾形態と神経刺激性ステロイド麻酔薬ゲストとを含み、このホスト/ゲスト組成物が、滅菌可能であり、最小の静脈内注射痛で投与することができ、かつ5を超える治療係数を示すように製剤化されている、麻酔薬または鎮静薬送達ホスト/ゲスト組成物を提供する。一実施形態では、この製剤は、さらにプラスチック容器に保存可能であってもよい。一実施形態では、この製剤は、これらの特性の1つ、2つ、3つまたは4つすべてを示してもよい。
【0040】
「軽減した痛み」は、プロポフォールを含む製剤をリファレンスとして比較したことを意味する。
【0041】
この製剤は、哺乳類対象、具体的にはヒト対象に麻酔または鎮静を誘導するのに有用である。
【0042】
一実施形態では、神経刺激性ステロイド麻酔薬は、アルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される。
【0043】
薬理学的に許容される塩の一例は酢酸アルファドロンであり、これは本発明に包含される。神経刺激性ステロイド麻酔薬の誘導体の一例は重水素化誘導体である。「修飾」シクロデキストリンには、シクロデキストリンの誘導体が含まれる。
【0044】
したがって、本発明の別の態様は、薬物送達ホスト/ゲスト組成物であって、シクロデキストリンホストまたはその修飾形態とアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド麻酔薬ゲストとを含み、このホスト/ゲスト組成物が、滅菌可能であり、最小の静脈内注射痛で投与することができ、5を超える治療係数を示し、かつ/またはプラスチック容器に保存可能である、薬物送達ホスト/ゲスト組成物を対象とする。この製剤は、外科レベルに達する麻酔の迅速誘導に加え、プロポフォールと同様かそれよりも迅速な覚醒時間をもたらす。上述のように、この製剤は、これらの特性の1つ、2つ、3つまたはすべてを含む。
【0045】
本発明の組成物は、製剤、ホスト/ゲスト組成物、薬物送達システム、医薬品、麻酔薬または鎮静薬と呼ばれ、また麻酔薬製剤または鎮静薬製剤などと、さらに記述的に呼ばれ得る。
【0046】
本発明の別の態様は、麻酔薬製剤または鎮静薬製剤であって、神経刺激性ステロイド麻酔薬およびシクロデキストリンまたはその修飾形態を含み、この製剤が、滅菌可能であること、静脈内投与痛が少ないこと、5を超える治療係数を有すること、および/またはプラスチック容器への保存が可能であることを含む特性を示す、麻酔薬製剤または鎮静薬製剤を提供する。
【0047】
より具体的には、本発明は、麻酔薬製剤または鎮静薬製剤であって、アルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド麻酔薬を含み、この製剤が、滅菌可能であること、静脈内投与痛が少ないこと、および5を超える治療係数を有することを含む特性を示す、麻酔薬製剤または鎮静薬製剤に関する。
【0048】
一実施形態では、この製剤は、さらにプラスチック容器に保存可能である。
【0049】
本発明は、アルファキサロンならびにアルファドロンおよび/もしくは酢酸アルファドロンまたはそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩もしくはプロドラッグ形態を含む組成物など2つ以上の神経刺激性ステロイド麻酔薬の混合物に及ぶ。
【0050】
「薬理学的に許容される誘導体」は、副作用を増強せずに、麻酔を依然として誘導する誘導体である。1つまたは複数の水素原子が重水素と置換される場合には、用語「誘導体」には重水素化誘導体が含まれる。これは効果の改善をもたらすことがある。さらに、麻酔薬は、アルキル化、アルコキシ化、アセチル化および/またはリン酸化を受けて他の誘導体を精製し得る。他のタイプの誘導体としては、体内の麻酔薬をモニターし追跡するために有用な重水素化形態もしくはトリチウム化形態またはその他の標識形態が挙げられる。用語「誘導体」および「修飾形態」は、本明細書において互換的に使用される。アルファドロンの塩には酢酸アルファドロンが含まれる。プロドラッグに言及する場合、輸送プロドラッグが含まれる。
【0051】
一実施形態では、シクロデキストリンは、これらに限定されないが、スルホアルキルエーテルデキストリンなどβ−シクロデキストリンまたはその修飾形態である。具体的に有用なスルホアルキルエーテルデキストリンは、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンである。スルホアルキルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンなどのアルキルエーテル誘導体もまた意図される。アルキルエーテル誘導体の一例は、スルホブチルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンである。本明細書において意図される他のシクロデキストリンは表7に記載されており、メチル化、ヒドロキシアルキル化、アルキル化、分岐、アシル化およびアニオン性誘導体が含まれる。
【0052】
したがって、本発明の一態様は、麻酔薬または鎮静薬送達ホスト/ゲスト組成物であって、スルホアルキルエーテルデキストリンホストまたはその修飾形態と神経刺激性ステロイド麻酔薬ゲストとを含み、このホスト/ゲスト組成物が、滅菌可能で、最小の静脈内注射痛で投与できるように製剤化され、5を超える治療係数を示す、麻酔薬または鎮静薬送達ホスト/ゲスト組成物を提供する。一実施形態では、この製剤は、さらにプラスチック容器に保存可能であってもよい。
【0053】
本発明の別の態様は、薬物送達ホスト/ゲスト組成物であって、スルホアルキルエーテルデキストリンホストまたはその修飾形態とアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド麻酔薬ゲストとを含み、このホスト/ゲスト組成物が、滅菌可能であり、最小の静脈内注射痛で投与することができ、かつ5を超える治療係数を示す、薬物送達ホスト/ゲスト組成物を対象とする。
【0054】
一実施形態では、組成物は、さらにプラスチック容器において保存可能である。
【0055】
本発明の別の態様は、麻酔薬製剤または鎮静薬製剤であって、神経刺激性ステロイド麻酔薬およびスルホアルキルエーテルデキストリンまたはその修飾形態を含み、この製剤が、滅菌可能であること、静脈内投与痛が少ないこと、5を超える治療係数を有すること、および/またはプラスチック容器への保存が可能であることを含む特性を示す、麻酔薬製剤または鎮静薬製剤を提供する。
【0056】
上述のように、具体的に有用なスルホアルキルエーテルデキストリンの1つは、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンである。特定の実施形態では、この製剤は示された特性のうちの2つ以上、3つ以上またはすべての特性を示す。これらの特性には、外科レベルに達する麻酔の迅速誘導に加え、プロポフォールと比較した場合同様かそれよりも迅速な覚醒時間の模倣(imitating)が含まれる。
【0057】
神経刺激性ステロイドとシクロデキストリンとの製剤は、一般に、モル比が1:1〜1:6(神経刺激性ステロイド:シクロデキストリン)、より具体的には約1:1〜1:4、さらにより具体的には1:1〜約1:3、一層より具体的には約1:2である。1:1〜1:6の範囲には、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.1、1:2.2、1:2.3、1:2.4、1:2.5、1:2.6、1:2.7、1:2.8、1:2.9、1:3、1:3.1、1:3.2、1:3.3、1:3.4、1:3.5、1:3.6、1:3.7、1:3.8、1:3.9、1:4、1:4.1、1:4.2、1:4.3;1:4.4、1:4.5、1:4.6、1:4.7、1:4.8、1:4.9、1:5、1:5.1、1:5.2、1:5.3、1:5.4、1:5.5、1:5.6、1:5.7、1:5.8、1:5.9および1:6が含まれる。
【0058】
したがって、本発明は、薬物送達ホスト/ゲスト組成物であって、シクロデキストリンホストまたはその修飾形態と神経刺激性ステロイド薬ゲストとを含み、神経刺激性ステロイドとシクロデキストリンとのモル比が約1:1〜約1:6であり、この組成物が、滅菌可能で、最小の静脈内注射痛で投与できるように製剤化され、かつ5を超える治療係数を示す、薬物送達ホスト/ゲスト組成物を提供する。一実施形態では、この製剤は、さらにプラスチック容器に保存可能であってもよい。
【0059】
より具体的には、本発明は、薬物送達ホスト/ゲスト組成物であって、α−、β−もしくはγ−シクロデキストリンあるいはスルホアルキルエーテルデキストリンもしくはスルホアルキルエーテル−アルキルエーテル誘導体または表7に記載の他の誘導体を含むそれらの修飾形態から選択されるシクロデキストリンと、アルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド薬ゲストとを含み、神経刺激性ステロイドとシクロデキストリンとのモル比が約1:1〜約1:6であり、この組成物が、滅菌可能であり、最小の静脈内注射痛で投与することができ、かつ5を超える治療係数を示すように製剤化されている、薬物送達ホスト/ゲスト組成物を対象とする。一実施形態では、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンは100ppm未満のリン酸を含み、溶液1ml当たりデキストリン300mgを含有する、光路1cmのセル中の水溶液に対して245nm〜270nmの波長でUV/vにより分光測定した場合に薬物分解酵素による吸収が0.5AU未満である。一実施形態では、この製剤は、さらにプラスチック容器に保存可能であってもよい。
【0060】
一実施形態では、本発明の麻酔薬組成物は、リン酸もしくはトリスまたはクエン酸リン酸緩衝液などの緩衝液を含み、pHを約5.5〜約8に維持する。このpH値には、5.5、6、6.5、7、7.5および8のpH値が含まれる。あるいは、この組成物に緩衝液を含ませず、そのpHをpH3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9または9.5など約pH3〜約pH9.5とする。
【0061】
さらなる態様では、本発明の製剤はまた、賦形剤および/または防腐剤、微生物遅延剤などの1つまたは複数の薬剤を含む。他の薬剤もまた毒性を軽減するために含むことができる。薬剤としては、例えば、EDTA、ベンジルアルコール、重亜硫酸塩、ラウリン酸のモノグリセリルエステル(モノラウリン)、カプリン酸および/またはその可溶性アルカリ性塩もしくはそのモノグリセリルエステル(モノカプリン)、エデト酸塩、ならびにカプリン酸および/またはその可溶性アルカリ性塩もしくはそのモノグリセリルエステル(モノカプリン)ならびにエデンテート(edentate)が挙げられる。この製剤はまた、麻酔薬の溶解性または安定性を補助するために1つまたは複数のコポリマーを含有してもよい。例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)および/またはカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。
【0062】
好都合なことに、神経刺激性ステロイド麻酔薬は、シクロデキストリンを含む生理食塩水懸濁液中に約0.5〜100mg/mlの濃度で提供される。このような薬物濃度としては、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、および100mg/mlが挙げられる。上述のように、この組成物は、一般に、神経刺激性ステロイドとシクロデキストリンとのモル比が約1:1〜約1:6、具体的には約1:1〜1:4、より具体的には約1:1〜約1:3、最も具体的には約1:2となるように製剤化される。
【0063】
任意の具体的な神経刺激性ステロイドまたはその塩に言及する場合、それぞれの麻酔薬の単一エナンチオマーと同様にそれぞれの薬剤のエナンチオマーのラセミ混合物も含まれる。
【0064】
特定の実施形態では、神経刺激性ステロイドはアルファキサロン、アルファドロンおよび/または酢酸アルファドロンである。一実施形態では、アルファキサロンは、10mg/mlなど1〜100mg/mlの濃度の製剤である。別の実施形態では、アルファドロンまたは酢酸アルファドロンは、3mg/mlなど0.5〜50mg/mlで存在する。
【0065】
本明細書の製剤は、神経刺激性ステロイド麻酔薬が、静脈内、皮下、腹腔内、髄腔内、筋肉内、硝子体内、経皮、坐薬(直腸)、膣座薬(膣)、吸入、鼻腔内などにより送達されることを意味するin vivo送達用である。最も効果的には、この製剤は静脈内(iv)製剤である。
【0066】
したがって、本発明の別の態様は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンまたはアルキルエーテル誘導体などのシクロデキストリンを用いて製剤化され、滅菌可能であり、最小の静脈内注射痛で投与することができ、5を超える治療係数を示し、かつプラスチック容器に保存可能であるように選択された神経刺激性ステロイド麻酔薬の注射用製剤を提供する。
【0067】
神経刺激性ステロイド麻酔薬は、単独であるいは別の麻酔薬もしくは鎮静薬または他の有効薬剤と組み合わせて用いてもよい。一実施形態では、アルファキサロンはアルファドロンまたはその塩、酢酸アルファドロンと共に用いられる。したがって、「アルファドロン」に言及する場合、酢酸アルファドロンが含まれる。したがって、この組成物は、アルファキサロン単独またはアルファドロン単独、あるいはアルファキサロンとアルファドロン、またはそれらの誘導体、塩もしくはプロドラッグ形態のいずれかの組合せを含み得る。
【0068】
それ故、特定の実施形態では、本発明は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのスルホアルキルエーテルデキストリンを用いて製剤化されたアルファキサロンまたはその薬理学的に許容される誘導体、塩もしくはプロドラッグおよび/あるいはアルファドロンまたはその薬理学的に許容される誘導体、塩もしくはプロドラッグを含み、アルファキサロンおよび/またはアルファドロンとデキストリンとのモル比が約1:1〜約1:6である、組成物を提供する。製剤の方法および試薬については、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Eaton,USA,1990、およびRowe’s Handbook of Pharmaceutical Excipients,2009を便利に参照することができる。
【0069】
本発明は、点滴または間欠的ボーラス投与により、ヒト対象において麻酔を誘導または維持することを意図するものであり、この方法は、麻酔を誘導するための時間および条件下で、スルホアルキルエーテルデキストリンなどのシクロデキストリンを用いて製剤化された神経刺激性ステロイド麻酔薬の麻酔有効量を投与することを含む。
【0070】
より具体的には、本発明は、点滴または間欠的ボーラス投与により、ヒト対象において麻酔を誘導または維持する方法であって、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのシクロデキストリンを用いて製剤化されたアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド麻酔薬の麻酔有効量を、麻酔を誘導するのに十分な時間および条件下で投与することを含み、この麻酔薬製剤が、滅菌可能で、最小の静脈内注射痛で投与することができ、かつ5を超える治療係数を示す、方法を提供する。さらに、この製剤は、迅速な麻酔誘導に加え、プロポフォールまたはアルテシン(登録商標)と比較して、同様かより迅速な覚醒時間をもたらすことができる。この製剤は、さらにプラスチック容器に保存可能であってもよい。
【0071】
本発明は、点滴または間欠的ボーラス投与により、鎮静を誘導または維持することに及ぶ。したがって、本発明の別の態様は、点滴または間欠的ボーラス投与により、対象において鎮静を誘導または維持する方法であって、スルホアルキルエーテルデキストリン、例えば(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのシクロデキストリンを用いて製剤化された神経刺激性ステロイド麻酔薬の鎮静有効量を、鎮静を誘導するのに十分な時間および条件下で投与することを含む方法を提供する。
【0072】
「(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン」に言及する場合、スルホブチルエーテル−アルキルエーテルβ−シクロデキストリンなど、そのメチル化、ヒドロキシアルキル化、分岐、アルキル化、アシル化およびアニオン性誘導体が含まれる。他の誘導体(derives)には、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、エチルエーテル、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル(平面型)、γ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルおよびα−シクロデキストリンスルホブチルエーテルならびにそれらの塩(例えばナトリウム塩)が含まれる。
【0073】
上述のように、具体的な対象はヒト対象である。
【0074】
この麻酔薬製剤は、使用説明書を含む販売パッケージとすることができる。この使用には、スルホアルキルエーテルデキストリン、例えば(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのシクロデキストリンを用いて製剤化されたアルファキサロン、アルファドロンならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩およびプロドラッグ形態から選択されるものなどの神経刺激性ステロイド麻酔薬の有効量を、麻酔を誘導するのに十分な時間および条件下で患者に投与することを含む患者管理プロトコルが含まれる。
【0075】
本発明は、ヒト対象などの対象に麻酔を誘導する医薬品の製造における、神経刺激性ステロイド麻酔薬およびスルホアルキルエーテルデキストリン、例えば(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのシクロデキストリンの使用をさらに意図する。特定の実施形態では、神経刺激性ステロイド麻酔薬は、アルファキサロン、アルファドロンおよびそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩およびプロドラッグ形態から選択される。別の実施形態では、麻酔薬は、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される。
【0076】
麻酔有効量に関しては、一般に、約0.25mg/kg体重〜約100mg/kg体重である。鎮静有効量は、同量かまたはより低量になり、約0.05mg/kg体重〜約10mg/kg体重が含まれる。
【0077】
本発明はさらにキットを提供する。このキットは、注射器または改変注射器を含む任意の形態としてもよい。キットは、1つまたは複数のコンパートメントの中にアルファキサロンおよび/またはアルファドロンまたはその他の神経刺激性ステロイド麻酔薬またはそれらの誘導体、塩もしくはプロドラッグを、さらなるコンパートメントの中にスルホアルキルエーテルデキストリンを、そして続くコンパートメントの中に賦形剤を含んでもよい。コンパートメントの内容物を使用前に混合してもよい。
【0078】
特定の実施形態では、本発明は、スルホブチルエーテルシクロデキストリンと複合体を形成したアルファキサロンおよび/またはアルファドロンおよび/またはそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩もしくはプロドラッグ形態を含む、点滴または間欠的ボーラス投与により、ヒト対象において麻酔または鎮静を誘導または維持するのに使用するための製剤を提供する。
【0079】
麻酔薬形態を、重水素化形態もしくはトリチウム化形態などにするかまたはその他の標識により標識して、体内の麻酔薬のモニタリングおよび追跡を容易にしてもよい。したがって、標識化神経刺激性ステロイド麻酔薬をモニターするキットおよび装置が提供される。
【0080】
本発明はヒトに使用するための麻酔薬製剤を具体的には対象としているが、他方、この製剤は、臨床試験または獣医学的使用などのために、動物に使用してもよい。本明細書において意図する非ヒト動物としては、ラット、マウス、モルモット、ハムスター、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ラクダおよび非ヒト霊長類が挙げられる。
【0081】
したがって、本発明は、麻酔薬組成物または鎮静薬組成物であって、神経刺激性ステロイド麻酔薬およびシクロデキストリンまたはその修飾形態を含み、この組成物が以下の特性:
(i)神経刺激性ステロイドおよびシクロデキストリンが約1:1〜約1:6のモル比で製剤化されること;
(ii)神経刺激性ステロイドが、アルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択されること;
(iii)シクロデキストリンが、α−、β−およびγ−シクロデキストリンまたはそれらの修飾形態から選択されること;
(iv)緩衝液が場合によっては存在し、存在する場合には、製剤のpHは、約pH5.5〜約pH8.0であり、緩衝液が存在しない場合には、製剤のpHは約pH3〜約pH9.5であること;
(v)この製剤が滅菌可能であること;
(vi)この製剤の静脈内注射がプロポフォール製剤よりも痛みが少ないこと;
(vii)この製剤の治療係数が5を超えること;
(viii)この製剤がプラスチック容器に保存可能であること;および
(ix)この製剤が、外科レベルに達する麻酔の迅速誘導に加え、プロポフォールと比較して同様かそれよりも迅速な覚醒時間をもたらすことができること
を有する麻酔薬組成物または鎮静薬組成物を提供する。
【0082】
特定の実施形態では、スルホアルキルエーテルまたはスルホアルキルエーテル−アルキルエーテルデキストリン、神経刺激性ステロイド麻酔薬(アルファキサロンまたはアルファドロンなど)および1つまたは複数のコポリマー(HPMC、PVPおよび/またはCMCなど)を含む麻酔薬製剤または鎮静薬製剤を提供する。
【0083】
特定の実施形態では、神経刺激性ステロイド麻酔薬は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのスルホアルキルエーテルデキストリンを用いて製剤化される。
【0084】
本発明は、麻酔薬組成物または鎮静薬組成物を製剤化する方法であって、シクロデキストリンおよび神経刺激性ステロイドを含むホスト/ゲスト組成物を生成する方法をさらに意図する。一実施形態では、シクロデキストリンは、スルホアルキルエーテルまたは(7)スルホブチルエーテル(either)β−シクロデキストリンもしくはスルホブチルエーテル−アルキルエーテルβ−シクロデキストリンなどのスルホアルキルエーテル−アルキルエーテルデキストリンである。他のシクロデキストリンとしては、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル−エチルエーテル、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル(平面型)、γ−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、α−シクロデキストリンスルホブチルエーテルおよびそれらのナトリウム塩が挙げられる。
【0085】
本発明は、以下の非限定実施例においてさらに説明される。神経刺激性ステロイド麻酔薬がシクロデキストリンを用いて製剤化される場合、「神経刺激性ステロイド麻酔薬CD」と称される。例としてPhaxanCDがあるが、これは、シクロデキストリン、この場合では(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンを用いて製剤化されたアルファキサロンを含む。他の例としては、プレグナノロンCDおよびアルファドロンCDが挙げられる。
【実施例】
【0086】
実施例1
30%w/vの(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のアルファキサロンの麻酔効果
アルファキサロンは、
・ アルファキサロン60mg(10mg/ml);
・ (7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン1800mg;
・ 生理食塩水(0.9%w/v)6ml
を含む6mlの無色澄明の液体として製剤化した。
【0087】
この製剤では、アルファキサロンと(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンとのモル複合比が1:4.6になる。頚静脈内カテーテルを留置した雄性ウィスターラット(体重[wt]270〜315g)を、Perspex保定器に入れて、注射投与し、保定器から解放した際に得られた観察を表1に示す。
【0088】
25および100mg/kg体重を投与されたラットは、60分までに回復し、これらの用量で死亡せず、いかなる副作用も受けなかった。これらの実験では、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中に溶解したアルファキサロン10mg/mlを静脈内注射すると、10mg/kgを超える用量で意識消失がもたらされ、広い安全域を有する用量相関麻酔効果があったことを認めることができ、25および100mg/kg体重(麻酔用量の2倍および10倍)を投与されたラットは死亡せず、この調製物の安全域が広いことが示された。これは、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン中のアルファキサロン製剤とは明確に異なる。Jurox Pty,Newcastle NSW Australiaにより製造されたそのような調製物(AlfaxanCD−RTU)では、静脈内投与されたときラットの50%が死亡するアルファキサロンの用量であるLD50が19mg/kg体重であることが公表されており、この数字は、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中に製剤化されたアルファキサロンに対してここで示された数字より顕著に低い数字である[アルファキサンCD−RTU物質安全性データシート;Jurox Pty,Newcastle NSW Australia]。
【0089】
実施例2
ラットにおける薬物動態
内頚静脈内カテーテルおよび内頚動脈内カテーテルを埋め込まれた10匹のラットからなる2つの群に、アルファキサロンの(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン製剤を10mg/kg体重(n=10ラット)、またはCremophorEL(ポリエトキシル化ひまし油)中のアルファキサロンとアルファドロンとの混合物を1.1ml/kg(n=10ラット)、頚静脈を介してボーラス静脈内注射した。この注射の後に時間間隔を置いたいくつかの時点で頚動脈または尾から採取した血液をアルファキサロン血中濃度のために分析した。そのデータを3コンパートメント薬物動態モデルにフィットさせ、キーパラメーターの平均±semをステロイド麻酔薬の両方の調製物について計算した。
【0090】
(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン製剤およびアルテシン(登録商標)製剤について計算されたPKパラメーター間に有意差がないことが推測される。これは、具体的に麻酔および鎮静に必要とされる用量、また回復の速さに関して、アルテシン(登録商標)が以前に示した挙動と同様の様式の挙動を新しい製剤が示すと推測されることを示す。これらの実験から推測することができる血中濃度のサンプル表を表2に示す。
【0091】
実施例3
アルテシン(登録商標)としてのアルファキサロンおよびプロポフォールと比較した(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のアルファキサロンの麻酔効果
雄性ウィスターラット(体重150〜220g)にハロタン麻酔下で留置用内頚静脈内カテーテルを埋め込んだ。24時間後に、各ラットに、プロポフォール(10%w/vのIntralipidエマルジョン中に10mg/ml;Diprivan[登録商標]);アルテシン[登録商標](20%w/vのCremophorEL中にアルファキサロン9mg/mlと酢酸アルファドロン3mg/ml);またはPhaxanCD(アルファキサロン10mg/mlとCaptisol(登録商標)−(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンとが1:2のモル複合比)のいずれかを一連の用量で静脈内注射した。静脈内注射後に一定の時間間隔で下記のことを評価した。
1.正向反射:次のようにスコア化した:1 正常;2 遅い;3 若干有り;4 無し−これを意識消失状態の開始および期間の基準とした;
2.尾ピンチ応答:次のようにスコア化した:1 正常;2 弱い;3 若干有り;4 無し−これを外科麻酔状態の開始および期間の基準とした;および
3.ラットがロータロッド(回転シリンダ)上を歩行することができた時間を秒単位で測定した。最大の正常走行時間を非鎮静のラットで120秒とする−この値を得ることが、麻酔薬注射の鎮静効果から完全に回復するのにかかる時間の基準とした。
【0092】
同じ麻酔薬および用量で処置されたラット10匹の群から得られた結果を、統計処理のためにまとめた。正向反射の消失のために4のスコアを得たラットは、意識を消失していると見なし、尾ピンチ応答の消失のために4のスコアを得たラットは、外科麻酔状態にあると見なした。同様に処置された10匹の動物からなるそれぞれの群の中で4のスコアを得たラットの数を、SPSS Statistics18を用いてプロビット回帰分析して、プロビット値対対数用量(プロビットプロット)のグラフを作製し、さらに、意識消失状態(正向反射測定)および外科麻酔状態(尾ピンチ応答)に関して対象の50%および95%(それぞれAD50およびAD95)が麻酔状態になる推定用量を計算した。ロータロッド歩行時間も、各用量および処置についてプロットした。これを完全回復の尺度として用いた。結果を図1a〜1fに示し、各麻酔薬、用量毎のn=10ラットでのロータロッド成績を示す。
【0093】
この一連の実験結果を下記の表3に要約する。PhaxanCDは意識消失状態および外科麻酔状態を引き起こす点においてアルテシン(登録商標)と効力が等しく、両方ともこの点でプロポフォールよりも効力があることを認めることができる。PhaxanCDにより引き起こされた意識消失状態からの回復はプロポフォールとまったく同様に迅速である。しかしながら、麻酔深度が外科レベルになる場合には、PhaxanCDからの回復はプロポフォールより若干遅くなるが、アルテシン(登録商標)よりは迅速である。対照実験から、単独で静脈内投与されたビヒクル、20%CremophorEL、10%Intralipidおよび13%Captisolには鎮静効果も麻酔効果もないことが明らかになった。
【0094】
この一連の実験から、以下の結論を得ることができる。
・ PhaxanCDは、静脈内注射後に迅速に全身麻酔を誘導する有効な静脈麻酔薬である。
・ PhaxanCDは、アルテシンと効力が等しく、プロポフォールの2倍の効力がある。
【0095】
実施例4
アルファキサロン麻酔薬調製物の致死量判定
この一連の実験は、CremophorEL[アルテシン(登録商標)]および(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(PhaxanCD)中で製剤化されたアルファキサロンのLD50およびLD95用量、すなわち対象の50%および95%を死亡させるCaptisol(登録商標)中のアルファキサロンの用量を決定するために行った。雄性ウィスターラット(体重150〜220g)にハロタン麻酔下で留置用内頚静脈内カテーテルを埋め込んだ。24時間後に、各ラットに、アルテシン(登録商標)(20%w/vのCremophorEL中にアルファキサロン9mg/mlと酢酸アルファドロン3mg/ml);またはPhaxanCD(アルファキサロン10mg/mlとCaptisol(登録商標)−7スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンとが1:2のモル複合比)のいずれかを一連の用量で静脈内注射した。同じ用量の薬物を投与された10匹のラットからなるそれぞれの群について、死亡したラットの数を記録した。同じ麻酔薬および用量で処置されたラット10匹の群から得られた結果を、統計処理のためにまとめた。生データのグラフを図2に示す[各投薬群で死亡した%ラット対用量]。
【0096】
50mg/kgと60mg/kgとの間のアルファキサロン用量で、アルテシン(登録商標)群のラットはすべて死亡したが、同じ用量のアルファキサロンを投与されたPhaxanCD群では、いずれのラットも死亡しなかった。PhaxanCDの致死率は20%で天井を示し、PhaxanCDとして投与されたアルファキサロンの用量が増加しても、ラットの死亡は20%を超えなかった。すべての異なる投薬処置群において死亡したラットのパーセントを、SPSS Statistics18を用いて、プロビット回帰分析に供し、プロビット値を麻酔薬の対数用量に対してグラフ上にプロットした。これをプロビットプロットと呼ぶ。このプロットを図3に示す。
【0097】
アルテシン(登録商標)のプロビットプロットを用いて、50%および95%のラットを死亡させる、この製剤中のアルファキサロンの用量(それぞれLD50およびLD95)を計算した。これらの値は、43.6mg/kg[LD50]および51.5mg/kg[LD95]であった。アルファキサロンがアルテシン(登録商標)として投与された場合、アルファキサロンの用量が増加するにつれて、比例して死亡したラットの数が増加した。これに対して、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(PhaxanCD)製剤中のアルファキサロンの致死率には天井効果があった。致死率により評価すると、CremophorEL(アルテシン[登録商標])を用いて製剤化されたアルファキサロンと比較して、このアルファキサロンの毒性は顕著に少ないものであった。アルテシン(登録商標)としてのアルファキサロンの用量が52mg/kgの場合、この群の10匹のラットはすべて死亡したが、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(PhaxanCD)を用いて製剤化されたアルファキサロンを64mg/kgの用量で投与された10匹のラットの中で、この用量のアルファキサロンにより死亡するラットはいなかった。さらに、用量の増加と共に致死率が増加する直接的比例関係を示したアルテシン(登録商標)のプロビットプロットと異なり、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(PhaxanCD)中で製剤化されたアルファキサロンは、致死率に関して天井効果を示した。この調製物中のアルファキサロンの用量を71、78、次いで84mg/kgに増加しても、20%のラットのみがそれぞれの群で死亡した。このように、50%および95%のラットを死亡させる、この製剤中のアルファキサロンの用量(それぞれLD50およびLD95)を見出すことは可能ではなかった。いずれにせよ、これらの値は両方とも、アルテシン(登録商標)の対応量の2倍を超え、またJuroxにより製造された、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン中で製剤化されたアルファキサロンのLD50値[アルファキサンCD−RTU物質安全性データシート;Jurox Pty,Newcastle NSW Australia]の4倍を超える84mg/kg超である。
【0098】
これらの結果から、治療係数(50%の対象を死亡させる用量(LD50)を50%の対象を麻酔状態にする用量(AD50)で割って得られる比率)は、アルテシン(登録商標)に対して14.8、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(Captisol[登録商標]PhaxanCD)中で製剤化されたアルファキサロンに対して>30.2となる。この相違は賦形剤の毒性の相違によるものではない。下記の表4に、頚静脈内カテーテルを留置された10匹のラットにおける実験結果を示す。5匹のラットに20%Cremophor EL溶液を静脈内投与し、別の5匹のラットに(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン溶液を投与した。両溶液とも、最大用量のアルファキサロンが投与された上記実験と同じ用量および容量で投与した。いずれの賦形剤もラットをまったく死亡させず、アルファキサロンの2つの製剤の安全性/致死性の相違が賦形剤の用量相関毒性によるものではないことが示された。
【0099】
実施例5
Captisol[登録商標](スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン)によりアルファキサロンの毒性が制限されることの証明
20%CremophorEL(アルテシン[登録商標])中であろうと(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(PhaxanCD)中であろうと、ボーラス用量のアルファキサロンに関して、麻酔状態にする効力は同じであるので、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン製剤中のアルファキサロンをより高用量で投与する場合における毒性の天井効果は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンに関係しているはずである。このような特性は、静脈麻酔薬についてこれまで記載されていない。さらに、この特性は、他のシクロデキストリン中で製剤化されたアルファキサロンについてもこれまで記載されていない。
【0100】
PhaxanCDの低毒性がCaptisol賦形剤によるものか否かを試験するために、頚静脈内カテーテルを留置された20匹のラットをそれぞれ10匹のラットの2つの群に分けた。これらのラットすべてに、20%Cremophor中で製剤化されたアルファキサロンを、実施例4で報告した前の実験においてすべてのラットを死亡させた用量で静脈内注射した(アルテシン[登録商標];アルファキサロン用量52.5mg/kg iv−この用量は、極めて高い割合のラットまたはすべてのラットが死亡すると推測されるアルテシン(登録商標)のAD95の16倍に等しい)。アルテシン(登録商標)注射の60秒前に、前投薬注射を行った。
・ 群1(10匹のラット)には、アルテシン(登録商標)としてアルファキサロン52.5mg/kgを投与する60秒前に0.9%塩化ナトリウム溶液5.3mls/kgを投与した;
・ 群2(10匹のラット)には、アルテシン(登録商標)としてアルファキサロン52.5mg/kgを投与する60秒前に0.9%塩化ナトリウム溶液中の13%(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン溶液5.3mls/kgを投与した。
【0101】
表5に示すそれぞれの群で死亡したラットの数を記録した。20匹のラットはすべて、アルテシン(登録商標)としてアルファキサロン52.5mg/kgを注射することにより麻酔状態になった。しかしながら、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンの存在により、アルファキサロンを起因とする死亡率が統計的および臨床的に有意に低下した。
【0102】
これはほとんど予想されなかった結果である。
【0103】
実施例6
睡眠時間に対するPhaxanCD反復投与の効果
アルファキサロン毒性に対する天井効果を引き起こす、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンを原因とするメカニズムは未知である。アルファキサロンは水に極めて難溶性であることが知られており、したがって、大多数のアルファキサロン分子は、1:2の比(複合比)でシクロデキストリン分子と複合体を形成する。PhaxanCDを静脈内注射すると、アルファキサロンの一部がシクロデキストリン複合体から解離することが知られている。毒性に対して天井効果を示すアルファキサロンスルホブチルエーテルシクロデキストリン複合体のユニークな特性が提起する疑問は、これが複合体から放出されるアルファキサロンの量が限定されることに起因するのか否か、またはさもなければ脳に侵入して毒性を引き起こす可能性のあるアルファキサロン分子が、肝臓によるアルファキサロン代謝により解放された、複合体を形成していない過剰のシクロデキストリン分子により「除去」されるのか否かについてである。後者の効果により、遊離アルファキサロンのレベルが漸進的に減少すると予測される。その理由は、複合体を形成していないスルホブチルエーテルシクロデキストリンの濃度が、
・ アルファキサロンの肝臓代謝;
・ PhaxanCDの投与回数が多くなると、それによって複合体を形成していないシクロデキストリンがより多く利用可能になること
の結果として増加するからである。
【0104】
この通りであったとすると、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中で製剤化されたアルファキサロンの反復投与に対して耐性になることが予測される。すなわち、PhaxanCDの反復注射により、鎮静効果および麻酔効果が漸進的に低下することになろう。
【0105】
これを試験するために、頚静脈内カテーテルを留置された5匹のラットに、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のアルファキサロンを、正向反射の完全な消失から判断される麻酔状態に10/10のラットがなった最小用量(5mg/kgのPhaxanCD)で反復注射した。各ラットが正向反射を回復し始めた時間(上記の実施例2に記載した正向反射におけるスコア4からスコア3への移行)を測定し、次いで、5mg/kgのPhaxanCDをさらに投与した。麻酔薬の2回目投与の後に正向反射の回復を開始した時間を測定し、次いで、5mg/kgのPhaxanCDをさらにiv投与し、このプロセスをさらに8回繰り返した。1回目から10回目の投与までの回復時間の漸進性を、それら5匹のラットついての平均(sem)として、下記のヒストグラム(図4)および表6に示す。最初の4投与それぞれの後に回復時間が漸進的に顕著に増加したことを認めることができる。さらなる投与5〜10回目では、それ以上顕著な増加は起こらず、さらに重要なことには、睡眠時間の減少がなかった。これらの結果から、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンに起因するアルファキサロン毒性天井効果は、おそらく複合体からのアルファキサロンの放出が、麻酔状態にするのに十分な速度であるが、いかに多くの複合体が投与されたにしても、それを超えない速度に制御されていることによるものであるとわかる。これは、アルファキサロンおよび(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンの化学的関係と、体液を含む水性環境へのアルファキサロンの難溶解性と、脳に侵入して麻酔状態にするために必要とされるアルファキサロンの量と、アルファキサロンの薬物動態との間のユニークなバランスにある。結果を図4および表6に示す。この結果はどれも予想されなかったし、従来技術からも予測することができなかった。
【0106】
5匹のラットへのPhaxanCD5mg/kgの10回反復投与後の睡眠時間のデータに一元配置分散分析[Tukey Kramer post hoc]を適用することにより、1回目から2回目、2回目から3回目および3回目から4回目にかけて睡眠時間は統計的に有意な漸進的増加を示したが、それ以降は睡眠時間の増加はなかったことが明らかとなった。さらに、PhaxanCDの低毒性および天井効果のメカニズムが、複合体を形成していない「遊離」スルホブチルエーテルシクロデキストリン[Captisol(登録商標)]が血液からアルファキサロンを除去することによるものであれば予測されたであろう睡眠時間の漸進的減少が、なかったことに留意することは重要である。この通りであった場合には、複合体を形成していない遊離Captisolの量は、投与回数が多くなるにつれて、またアルファキサロンが肝臓により代謝されるにつれて増加し、したがって、反復暴露実験が進行するにつれて複合体を形成していない遊離Captisolの漸進的増加がもたらされたであろう。アルファキサロンがこれにより除去される場合には、それぞれの逐次的投与に伴って睡眠時間が減少すると推測されよう。しかし、これに反して、睡眠時間は最初の4回の各投与では増加し、後続の各投与では一定のままであった。
【0107】
実施例7
天井毒性
以下の仮定をする。
A.アルテシン(登録商標)の静脈内注射は血漿中でアルファキサロンを即時に分散させるが、1回の血液循環で薬物注射による麻酔状態になり、また肝臓の初回通過によりアルファキサロンが血液から除去されるため、血漿中での混合により達成されるアルファキサロンレベルは、即時の混合を仮定した場合の理論的最大値の30%に到達するだけであろう。
【0108】
以下の点を考慮する。
1.アルファキサロンは0.03mg/mlまで水に可溶である;
2.アルファキサロンは血漿中で35%がタンパク質に結合している;
3.ラットの血漿量は31ml/kgである(Davies and Morris,Pharmaceutical Research,10(7):1093−95,1993);
4.アルテシン(登録商標)およびPhaxanCDは両方とも、アルファキサロン濃度が10mg/mlである;
5.麻酔誘導に対して、アルテシン(登録商標)およびPhaxanCDは効力が等しい;いずれの調製物でも最低限4.3mg/kgのアルファキサロンがあれば、ほとんど(95%)のラットに睡眠が誘導される;
6.最初のボーラス注射の後、最初の睡眠周期の間に薬物調製物は血漿量と平衡になるが、その後、薬物は、297ml/kgの細胞外液[ECF](Davies and Morris,1993supra)の中へ分散する;
7.CaptisolはECFに分布し、このスペースに限定される;そして
8.水性環境中の遊離アルファキサロンのレベルが未飽和、すなわち<0.03mg/ml[事実1]である場合にのみ、アルファキサロンがCaptisolから水性環境の中へ放出される。
【0109】
本明細書において以下のことを提案する。
I.上記のAおよび5から、睡眠を誘導するのに必要な薬物の血漿レベル=アルテシンとして投与された用量/血漿量=4.3/31=0.14mg/ml。
II.Aを適用すると、血液が循環して薬物を効果的に混合した場合、血漿濃度はこの30%であると推測される=0.046mg/ml。
III.これから、単一ivボーラス注射後における、麻酔誘導と関連した血漿中の遊離非結合アルファキサロンのレベル=全体の65%(事実2から)=0.045×0.65=0.03mg/ml。
IV.上記の提案IIIは、まさに、公知のアルファキサロンの水溶解度である。
V.提案IVと項目5および8を組み合わせて、PhaxanCDの1回目の誘導用量により、複合体からアルファキサロンがすべて放出され、麻酔レベルおよび遊離アルファキサロンの飽和レベルにちょうど到達することによって、麻酔がもたらされたと本明細書において提案する。
VI.麻酔薬の2回目の投与が実施例9においてなされたとき、一部の遊離アルファキサロンが肝臓により代謝されており、一部の遊離アルファキサロンがECFに再分布しており、かつアルファキサロンを含有するCaptisolもまたECFに再分布していたため、ラットは麻酔から回復し始めていた。このようにして、遊離アルファキサロンレベルが低下し、アルファキサロンが脳を離れて、その結果覚醒がもたらされた。そこで、さらなる投与が行われた。1回目の投与と異なり、血液中に依然としてアルファキサロンが存在していたため、アルファキサロンの一部のみが複合体から放出され、遊離アルファキサロンレベルを0.03mg/mlに戻した;脳は再負荷され、続いて睡眠が起こる。
VII.しかしながら、ECFが、0.03mg/mlのアルファキサロンおよびアルファキサロン/Captisol複合体[項目6および7]で負荷されるまで、睡眠は2回目、3回目、さらに4回目の投与後により長時間続く。その後、Captisolのさらなる投与は、肝臓代謝がその用量のアルファキサロンを除去するまで、遊離アルファキサロンの血中濃度を補充し、それを維持するだけである。
VIII.いったん遊離アルファキサロンのレベルが0.03mg/mlに到達すれば、脳は麻酔状態になる。遊離アルファキサロンのレベルが増加すれば、脳は単により多くのアルファキサロンを吸収することになる。これはアルテシン(登録商標)に関しては可能であり、その薬物の麻酔用量の15倍がボーラスとして投与されると、0.45mg/mlの理論的な遊離アルファキサロンレベルに到達して、結果として死亡する。これに対して、アルファキサロンのその用量が、Captisol(登録商標)との複合体のPhaxanCDとして投与される場合には、いったん遊離アルファキサロンレベルが0.03mg/ml[項目1]に到達すると、アルファキサロンは複合体から放出されない。これにより、13%スルホブチル−7−エーテルβ−シクロデキストリン中で製剤化された場合のアルファキサロンの致死率に関する天井効果が説明される。
IX.PhaxanCD5mg/kgの5回目の投与およびそれ以降の同じ量の投与の後で、睡眠時間のさらなる増加が起こらないので、そのときアルファキサロンのクリアランスは用量投与速度と平衡にあるはずである。したがって、アルファキサロンの平衡クリアランスは5mg/kg/4.2分である。血漿中の濃度が約0.04mg/mlであるので、そのとき、平衡にある血漿クリアランス速度=((5÷4.2)÷0.04)=30mls/kg/分である。これは、肝臓血流の公知の値の範囲内である(Davies and Morris,1993 supra)。アルファキサロンが、主として、初回通過肝臓代謝により血漿から除去されることは周知である。
X.後者は、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のアルファキサロンのこの特定の製剤では、脳に侵入する遊離非結合麻酔薬のレベルが、麻酔状態にするレベルであるがそれを超えないレベルに制御されていることを意味する;血漿の水に飽和したアルファキサロンレベルよりも多くの化合物がもはやCaptisolから放出されることはなく、したがって、毒性を引き起こすことになる、より高い血中濃度は得られない。
【0110】
この特性は、静脈麻酔薬または静脈内投与シクロデキストリンについてこれまで記載されていない。これは記載されていないかまたはこれまでに発見されていない、以下のユニークな一連の状況から生じる:
1.ユニークなホスト:ゲスト相互作用。これに対する証拠は、別のホストシクロデキストリン(AlfaxanCD−RTU;ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン−Jurox調製物)中で製剤化された同じゲスト[アルファキサロン]が、ラットにおいて、毒性に対して天井を示さず、20%の致死率をもたらすだけである(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のアルファキサロンの用量より75%少ない用量である19mg/kg ivの見積もりLD50を有するという事実である;
2.ゲストは、その水溶解度と等しい遊離薬物レベルで麻酔状態にする化合物である;および
3.ゲストは、遊離薬物レベルが毒性レベルよりかなり下にあるような高い治療係数を有する化合物である。
【0111】
実施例8
プレグナノロン製剤
神経刺激性ステロイド麻酔薬プレグナノロンを、0.9%生理食塩水中で13%w/vのスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(Captisol[登録商標])と混合し、プレグナノロンCDを形成させた。プレグナノロンは10mg/mlの濃度で溶解が不完全であり、アルファキサロンと異なり、4時間の連続撹拌の後にやっと溶液になった。この溶液は乳白光を発していた。この観察は、すべての神経刺激性ステロイドが、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンに同じように相互作用するとは限らないことを示す。内頚静脈内カテーテルを外科的に埋め込まれた15匹の雄性ウィスターラット(体重150〜200g)を、この実験に用い、実験では、ラットにプレグナノロンCDを静脈内注射した:2.5mg/kg(n=5);5mg/kg(n=5);および10mg/kg(n=5)。
【0112】
正向反射に基づいてラットの麻酔に関し評価し、スコアは以下のとおりとした:1 正常;2 遅い;3 若干有り;4 無し。4のスコアは、意識消失(麻酔)の状態に到達したことを意味する。2.5、5および10mg/kgのプレグナノロンを投与された3つの群のラットに対するこの試験の結果を下記の図5に示す。図示した結果は、プレグナノロンの静脈内注射後の各時点における5匹のラットすべてからの記録の平均である。
【0113】
さらに、尾ピンチ応答を用いてラットの外科麻酔に関し評価し、スコアは以下のとおりとした;1 正常;2 弱い;3 若干有り;4 無し。4のスコアは、外科麻酔に到達したことを示す。2.5、5および10mg/kgのプレグナノロンCDを投与された3つの群のラットに対するこの試験の結果を図6に示す。図示した結果は、プレグナノロンCDの静脈内注射後の各時点における5匹のラットすべてからの記録の平均である。
【0114】
プレグナノロンCDの鎮静効果から完全に回復するまでの時間を、ロータロッド走行時間を用いて評価した−正常な非鎮静ラットの高速回転ドラム上の走行は120秒である;ラットがロータロッドトレッドミル上を120秒間歩行することができたとき、ラットは完全に回復している。2.5、5および10mg/kgのプレグナノロンCDを投与された3つの群のラットに対するこの試験の結果を下記の図7に示す。図示した結果は、プレグナノロンCDの静脈内注射後の各時点における5匹のラットすべてからの記録の平均である。
【0115】
結論
プレグナノロンCDは静脈麻酔薬であるが、長時間の静脈麻酔薬である。これは静脈内注射直後に麻酔を誘導する。この効果は用量に相関し、中枢神経系を十分に抑制して、外科麻酔に導くことが可能である。
【0116】
実施例9
アルファドロン製剤
神経刺激性ステロイド麻酔薬アルファドロンを、0.9%w/v生理食塩水中で13%w/vのスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(Captisol)と混合し、アルファドロンCDを形成させた。アルファドロンは10mg/mlの濃度で完全に溶解したが、アルファキサロンと異なり、4時間の連続撹拌の後にやっと溶液になった。この観察は、すべての神経刺激性ステロイドが、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンに同じように相互作用するとは限らないことを示す。内頚静脈内カテーテルを外科的に埋め込まれた15匹の雄性ウィスターラット(体重150〜200g)を、この実験に用い、実験では、ラットにアルファドロンCDを静脈内注射した:10mg/kg(n=5);20mg/kg(n=5);および40mg/kg(n=5)。
【0117】
正向反射に基づいてラットの麻酔に関し評価し、スコアは以下のとおりとした:1 正常;2 遅い;3 若干有り;4 無し。4のスコアは、意識消失(麻酔)の状態に到達したことを意味する。10、20および40mg/kgのアルファドロンCDを投与された3つの群のラットに対するこの試験の結果を図8に示す。図示した結果は、アルファドロンの静脈内注射後の各時点における5匹のラットすべてからの記録の平均である。
【0118】
さらに、尾ピンチ応答を用いてラットの外科麻酔に関し評価し、スコアは以下のとおりとした;1 正常;2 弱い;3 若干有り;4 無し。4のスコアは、外科麻酔に到達したことを示す。10、20および40mg/kgのアルファドロンCDを投与された3つの群のラットに対するこの試験の結果を図9に示す。図示した結果は、アルファドロンCDの静脈内注射後の各時点における5匹のラットすべてからの記録の平均である。
【0119】
アルファドロンCDの鎮静効果から完全に回復するまでの時間を、ロータロッド走行時間を用いて評価した−正常な非鎮静ラットの高速回転ドラム上の走行は120秒である;ラットがロータロッドトレッドミル上を120秒間歩行することができたとき、ラットは完全に回復している。10、20および40mg/kgのアルファドロンCDを投与された3つの群のラットに対するこの試験の結果を図10に示す。図示した結果は、アルファドロンCDの静脈内注射後の各時点における5匹のラットすべてからの記録の平均である。
【0120】
結論
アルファドロンCDは短時間の静脈麻酔薬である。これは静脈内注射直後に麻酔を誘導する。この効果は用量に相関し、中枢神経系を十分に抑制して、外科麻酔に導くことが可能である。
【0121】
実施例10
アルテシンおよびプロポフォールと比較されたPhaxanCDの心血管系作用
内頚静脈内カテーテルを外科的に埋め込まれた15匹の雄性ウィスターラット(体重150〜200g)を、この実験に用い、実験では、3つの群のラットに、プロポフォール(6.6mg/kg;Diprivan 10%のIntralipidエマルジョン中に10mg/mlのプロポフォール)、アルテシン(3.28mg/kgのアルファキサロン;アルテシン 20%のCremophorELに溶解した9mg/mlのアルファキサロンと3mg/mlのアルファドロン)、またはPhaxanCD(3.23mg/kgのアルファキサロン;13%のCaptisol[(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン]に溶解した10mg/mlのアルファキサロン)のいずれかを、効力の等しいAD95麻酔用量で静脈内注射した;1群当たりn=5のラット。収縮期および拡張期の血圧をこれらの注射前後に測定した。各測定は、そのラットの麻酔前のレベルからのパーセント変化として計算した。各処置群における心血管パラメーターのそれぞれについて時間に対するパーセント変化を図11および12に示す。
【0122】
結論
アルファキサロン(アルテシン/20%CremophorEL;PhaxanCD/スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(Captisol[登録商標]))の両方の製剤は、等効力麻酔用量のプロポフォールよりも心血管障害が少なく、一方の測定(拡張期血圧)では、アルファキサロン(PhaxanCD)のスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン製剤は、CremophorEL調製物(アルテシン[登録商標])と比較して、心血管障害が少なかった。
【0123】
実施例11
第1/2a相臨床試験
ヒトボランティアのこれらの試験では、プロポフォールおよび(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン/アルファキサロン製剤を、二重盲検方式で比較する。各ボランティアは完全設備の麻酔室の中に待機する。プロポフォールまたはアルファキサロンのいずれを投薬するかは、プロポフォールまたはアルファキサロンの選択に関する無作為化表により決定する。麻酔薬を投与するように選定された1人の麻酔専門医が、いずれの薬物をこの患者に投与するべきか知るために封筒を開く。薬物用量は、その薬物の最終使用用量に対する前の患者の応答に応じて、計算表(以下を参照のこと)から決定する−麻酔状態になったか否かは脳波の二波長指数(BIS値)の50の尺度に基づく。患者には、右手に薬物投与用の静脈内カニューレと、薬物の血中濃度測定用試料を採血するための別のカニューレとが挿入されている。その腕および麻酔薬を投与する麻酔専門医は、被験対象とも、対象に接触し対象の一般的ケアおよび生理学的モニタリングに責任がある第2の麻酔専門医ともコミュニケーションをとることはない。その腕および薬物を投与する麻酔専門医は、対象をケアする麻酔専門医ならびにそこにいる対象および麻酔看護師とはカーテンにより分離されている。薬物を注射する第1の麻酔専門医は、ベルを鳴らして麻酔薬注射の開始を知らせるだけであり、ケアする麻酔専門医は、試験が終了して対象が部屋を離れた後にBIS値が50以下になったか否かを伝えるために薬物を投与する麻酔専門医とコミュニケーションするだけである。実施する測定および評価:
・ 対象の体重(kg)。これを症例記録に記載した後、投与する麻酔専門医に渡す。
・ ケアする麻酔専門医は、注射の際の痛みを報告するように患者に依頼し、陽性か否かの報告を記載する。
・ ケアする麻酔専門医は、異常な動作の有無を記載する。4
・ 麻酔薬注射を知らせるベルの音から、伸ばした左腕の親指とその他の指との間に握った、20mlの水を負荷された注射器を患者が落とすまでの時間。
・ 麻酔薬注射を知らせるベルの音から、患者の呼びかけ応答が消失するまでの時間および呼びかけ応答が回復する時間。
・ 麻酔薬注射を知らせるベルの音から、患者の睫毛反射が消失するまでの時間および睫毛反射が回復する時間。
・ BIS値、静脈内注射後における50以下の値への到達の有無、到達した時間および持続時間。
・ 5分間は1分毎に、次の10分間は2.5分毎に、それ以降は5分毎に非侵襲的方法を用いて測定した収縮期血圧および拡張期血圧ならびに脈拍数。
・ 左耳の耳垂に置いたパルスオキシメータプローブを用いて測定した血液の酸素飽和度。酸素飽和レベルが93%未満に低下しない限り、対象には空気を呼吸させ、低下したときには、マスクおよび麻酔回路から酸素を与える。無呼吸が起こり30秒を超えて持続する場合には、呼吸を補助する。低い酸素飽和度および無呼吸の発生を記載する。
・ デジタル置換え検査での正常な成績により示される完全回復までの時間。
・ 麻酔薬注射後0.5、1.0、1.5、2、5、10、15、30および60分にアルファキサロン血中レベルの分析のために採取する血液。
・ 試験前、試験1時間後、24時間後および1週間後に採取する、以下のことを目的とした血液:
全血液学的分析。
肝機能検査。
腎機能検査。
【0124】
用量スケジュール
麻酔薬を投与する麻酔専門医が封筒を開くと、プロポフォールまたはアルファキサロンを投与するようにとの無作為化された指示がある。この対象がその薬物を投与される最初の対象である場合、対象は以下のものを投与される:プロポフォール2mg/kg;アルファキサロン0.5mg/kg。
・ その薬物を投与される次の患者に対する投薬は、その薬物を投与された最初の対象の応答に基づいて決定する。
最初の対象が50以下のBISに到達しなかった場合は、プロポフォールについては、その用量を3mg/kgとし、アルファキサロンについては、0.75mg/kgとする。
最初の対象が50以下のBISに到達した場合は、プロポフォールについては、その用量を1mg/kgとし、アルファキサロンについては、0.25mg/kgとする。
・ その後の投与は以下のとおり:
その薬剤で処置されたそれまでの対象すべてが50以下のBISに到達した場合、用量を25%減少、または
その薬剤で処置されたそれまでの対象すべてが50のBISに到達しなかった場合、用量を25%増加、または
この薬物で処置されて、50以下のBIS値に到達した対象もいれば、BIS値が50以下に低下しなかった対象もいる場合は、以下のいずれかとする:
最後の応答が50以下のBISである場合には、この薬物を投与される次の対象に対する薬物用量は、その薬物を投与された最後の対象に対する用量とその薬物を投与されかつ50以下のBISに到達しなかった最も直近の対象に投与された用量との間の中央値とする。
最後の応答が50を超えるBISである場合には、この薬物を投与される次の対象に対する薬物用量は、その薬物を投与された最後の対象に対する用量とその薬物を投与されかつ50以下のBISに到達した最も直近の対象に投与された用量との間の中央値とする。
用量範囲の変更が小さくなり、薬物の同用量±10%を投与された6人の対象が50以下のBISに到達するまで、各薬物シリーズについて後者を繰り返す。BISが麻酔レベルに到達するこれら6つの用量をまとめて、平均±sem誘導用量を計算する。
【0125】
以下の結果が予測される:
・ アルファキサロンは、1回の腕/脳循環時間で、BIS値が50未満となる全身麻酔を誘導する。
・ 誘導の質は少なくともプロポフォールと同様に良好であるが、注射痛がないという利点が加わる。
・ 「誘導用量」では、プロポフォールは、アルファキサロンに比べて、血圧低下が大きく、無呼吸発生率が増加し、かつ酸素飽和度が減少する。
・ 「誘導用量」の投与後における回復の速さおよび質はアルファキサロンがより速やかである。
・ 静脈内投与後のアルファキサロンの薬物動態は、文献中にあるアルテシン(登録商標)投与後のアルファキサロンの形と同じである。
【0126】
当業者は、本明細書において説明した本発明では具体的に説明したもの以外の変形および変更が可能であることを認識されよう。本発明は、そのような変形および変更をすべて含むことを理解されたい。本発明はまた、本明細書において言及または提示したステップ、特徴、組成物および化合物のすべてを個々にまたは集合的に、かつ前記ステップまたは特徴のうちの任意の2つ以上の任意の組合せおよびすべての組合せを包含する。
【0127】
参考文献
Atwood,Davies,MacNicol and Vogtie(Eds),Comprehensive Supramolecular Chemistry Vol 4,Pergamon:Oxford UK,1996
Child et al.,British Journal of Anaesthesia 43:2−13,1971
Davies and Morris,Pharmaceutical Research,10(7):1093−95,1993
Fromming and Szejtlic(eds),Cyclodextrins in Pharmacy,Kluwer: Dordrecht,The Netherlands,1994
Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Eaton,USA,1990
Rowe’s Handbook of Pharmaceutical Excipients,2009
Thomason,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst 14:1,1997
Uekama et al.,Chem.Rev.98:2045−2076,1998
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「麻酔薬製剤」と題する2010年1月21日に出願された米国仮特許出願第61/297,249号明細書および「麻酔薬製剤」と題する2010年9月22日に出願された米国仮特許出願第61/385,318号明細書に関連し、それらに基づく優先権を主張するものであり、それらの内容全体を参照によって本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明は、一般に、神経刺激性ステロイド麻酔薬のための薬物送達システムの分野に関する。より具体的には、麻酔薬組成物および鎮静薬組成物は、1つまたは複数の神経刺激性ステロイド麻酔薬およびシクロデキストリンまたはその修飾形態を含むホスト/ゲスト調製物の形態で提供される。
【背景技術】
【0003】
本明細書に挙げた参考文献の書誌詳細は、本明細書の最後に掲載してある。
【0004】
いかなる従来技術に言及しても、その従来技術がいずれかの国において一般常識の一部を形成しているとの認識、または何らかの形での示唆であるとは解釈されず、解釈されるべきでもない。
【0005】
薬物送達システムは、全身または標的部位に、所望の効果を得るのに十分な時間および条件下で、必要量の薬物を供給することを目標とする。一部の薬物送達システムでは、特定の望ましくない薬物特性を緩和するために担体物質が必要となる。そのようなタイプの担体分子の1つとして、選択されたゲスト分子のためのホストとして働くシクロデキストリンがある。
【0006】
シクロデキストリンは、その外表面に水酸基および中心に親油性の空洞を有する環状オリゴ糖である。シクロデキストリンは、疎水性分子と共に包接複合体を形成することができる。形成されるホスト/ゲスト複合体の安定性は、ゲスト分子がどれほど容易にホストの中心空洞を占有するかに依存する。
【0007】
最も一般的なシクロデキストリンは、6、7および8個のα−1,4結合グルコース単位からそれぞれなるα−、β−およびγ−シクロデキストリンである。シクロデキストリンは、水および有機溶媒への溶解度が比較的低く、これが医薬製剤におけるシクロデキストリンの使用を限定している。シクロデキストリンの一般化学についての説明は、以下の文献を参照されたい。Fromming and Szejtlic(eds),Cyclodextrins in Pharmacy,Kluwer:Dordrecht,The Netherlands,1994;Atwood,Davies,MacNicol and Vogtie(Eds),Comprehensive Supramolecular Chemistry Vol 4,Pergamon:Oxford UK,1996;およびThomason,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst 14:1,1997。
【0008】
アルファキサロン[アルファキサロンすなわち3−α−ヒドロキシ−5−α−,プレグナン−11,20−ジオン]は、獣医学で現在使用される強力な神経刺激性ステロイド麻酔薬である(Child et al.,British Journal of Anaesthesia 43:2−13,1971)。
【0009】
アルファキサロンは、アルファドロンと共に[アルテシン;アルファテシン]、1983年までヒト患者に対して静脈麻酔薬として世界中で広く使用されていた。これらの麻酔薬は高い治療係数を有するが、それにもかかわらず、ポリエトキシ化ヒマシ油賦形剤(Cremophor EL[登録商標])に対する、偶発的で予測不能であり、かつ重度のアナフィラキシー様反応のため、医療から撤退した。
【0010】
現在は、ジイソプロピルフェノール(プロポフォール)の脂質製剤が、最もよく使用される麻酔薬である。しかし、プロポフォールは、その血圧低下作用、すなわち心拍出量を低減させ、呼吸調節に悪影響を及ぼし得る作用のため、危険率の高い特定の患者には禁忌となり得る。具体的には、プロポフォールは、微生物に汚染されればその増殖を促進する可能性のある脂質エマルジョン中に製剤化される。この製剤は、事実上滅菌することができない。微生物に汚染されたプロポフォール製剤が患者に感染を引き起こした例があった。現在のプロポフォール製剤に関する別の問題の1つは、静脈内注射の後またはその間に誘発される痛みである。水をベースとした調製物で再製剤化する試みは、注射痛の増大をもたらした。プロポフォールはまた、心血管および呼吸の抑制をもたらすことがあり、治療係数は5と低い。すなわち、標準麻酔薬用量のわずか5倍で死に至る恐れがある。さらに、この麻酔薬はプラスチック保存容器およびプラスチック注射器と適合性がなく、そのため、静脈麻酔および鎮静のために標準的にしばしば使用される注射器送達装置の使用は難しい。この薬物はさらに高脂血症を引き起こすことがあり、点滴により大用量で使用する場合、毒性を誘発することがある。これは、集中治療環境では特に問題となる。
【0011】
神経刺激性ステロイド麻酔薬は、プロポフォールより少ない副作用でより効果的である可能性がある。
【0012】
したがって、対象に神経刺激性ステロイド麻酔薬を使用できるようにする適切な製剤を開発する必要性がある。
【発明の概要】
【0013】
本明細書を通して、文脈上、他の意味に解釈すべき場合を除き、「含む(comprise)」という単語ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などの変化形は、明記された要素もしくは整数もしくは方法ステップまたは要素もしくは整数もしくは方法ステップの群を包含することを意味するものであって、他の任意の要素もしくは整数もしくは方法ステップまたは要素もしくは整数もしくは方法ステップの群を除外することを意味するものでないことは理解されよう。
【0014】
本発明は、神経刺激性ステロイド麻酔薬およびシクロデキストリンまたはその修飾形態を含む、哺乳類対象に麻酔または鎮静を誘導する際に使用するためのホスト/ゲスト複合体製剤を提供する。一般に、神経刺激性ステロイド麻酔薬はやや難溶である。したがって、ホスト/ゲスト複合体製剤は、神経刺激性ステロイド麻酔薬のための薬物送達システムになる。一実施形態では、シクロデキストリンは修飾ポリアニオン性β−シクロデキストリンであり、神経刺激性ステロイド麻酔薬はアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール(acebrochol)、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン(ganaxolone)、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される。しかしながら、シクロデキストリンはすべて、γ、αシクロデキストリンまたはそれらの修飾形態およびそれらの塩を含むことを本明細書では意図する。用語「誘導体」には、神経刺激性ステロイド麻酔薬の重水素化誘導体が含まれる。重水素化誘導体は改良された医薬品としての使用が意図される。1つまたは複数の水素原子が重水素に置換され得る。シクロデキストリンの修飾形態としては、メチル化、ヒドロキシアルキル化、分岐、アルキル化、アシル化およびアニオン性シクロデキストリンが挙げられる。「アルキル化」に関しては、アルキルエーテル誘導体およびアルキルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンが含まれる。薬剤「アルファドロン」には、その塩、酢酸アルファドロンが含まれる。シクロデキストリンまたはその修飾形態に言及する場合、その塩(例えばナトリウム塩)も含まれる。
【0015】
したがって、本発明の一態様は、シクロデキストリンまたはその修飾形態を用いて製剤化された神経刺激性ステロイド麻酔薬を含む麻酔薬組成物または鎮静薬組成物を対象とする。
【0016】
本発明の麻酔薬製剤または鎮静薬製剤は、滅菌可能であり、注射痛の発生率を低減させ、プロポフォールに比較して高い治療係数(5を超える治療係数を含む)を有し、プラスチック容器の中に保存可能であり、外科レベルに達する麻酔の迅速誘導に加え、プロポフォールまたはアルテシン(アルファキサロンおよびアルファドロン)と同様かそれよりも迅速な覚醒時間をもたらすなどの特徴を示す。
【0017】
したがって、本発明の別の態様は、麻酔薬組成物または鎮静薬組成物であって、神経刺激性ステロイド麻酔薬およびシクロデキストリンまたはその修飾形態を含み、この麻酔薬およびシクロデキストリンが、滅菌可能であること、静脈内注射痛が最小であること、5を超える治療係数を有すること、およびプラスチック容器への保存が可能であることから選択される特性を示す麻酔薬組成物を提供するように製剤化されている、麻酔薬組成物または鎮静薬組成物を提供する。一実施形態では、この製剤は、これらの特性の1つ、2つ、3つまたは4つすべてを含む。
【0018】
関連する実施形態では、本発明は、麻酔薬または鎮静薬送達ホスト/ゲスト組成物であって、神経刺激性ステロイド麻酔薬ゲストとシクロデキストリンホストまたはその修飾形態とを含み、ホスト/ゲスト組成物が、滅菌可能であり、最小の静脈内注射痛で投与することができ、かつ5を超える治療係数を示すように製剤化されている、麻酔薬または鎮静薬送達ホスト/ゲスト組成物を提供する。製剤は、さらにプラスチック容器に保存可能であってもよい。
【0019】
より具体的には、本発明は、シクロデキストリンまたはその修飾形態を用いて製剤化されたアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩およびプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド麻酔薬を含む麻酔薬組成物または鎮静薬組成物を提供する。
【0020】
一層具体的には、本発明は、麻酔薬組成物または鎮静薬組成物であって、シクロデキストリンまたはその修飾形態を用いて製剤化されたアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩およびプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド麻酔薬を含み、この組成物が、滅菌可能であること、静脈内注射痛が最小であること、5を超える治療係数を有すること、およびプラスチック容器への保存が可能であることから選択される特性を示す、麻酔薬組成物または鎮静薬組成物を対象とする。
【0021】
本発明の実施に有用な具体的なシクロデキストリンは、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのスルホアルキルエーテルシクロデキストリンである。この化合物は、米国特許第5,376,645号明細書に記載のとおりに調製することができる。別の有用なシクロデキストリンは、スルホアルキルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンを含むアルキルエーテル誘導体である。しかしながら、本発明はメチル化、ヒドロキシアルキル化、分岐、アシル化およびアニオン性形態などの他のシクロデキストリン誘導体にも及ぶ。本発明の麻酔薬製剤は、哺乳類対象、具体的にはヒト患者に対して注射投与を可能にする。
【0022】
本発明の別の態様は、5を超える治療係数を有する滅菌可能な組成物を生成するためにスルホアルキルエーテルシクロデキストリンまたはその修飾形態を用いて製剤化されたアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイドを含む麻酔薬組成物または鎮静薬組成物を提供する。
【0023】
一実施形態では、この組成物は、さらにプラスチック容器において保存可能である。
【0024】
この製剤は、約pH5.5〜pH8の範囲内にpHを維持するために緩衝液を含んでもよい。あるいは、製剤のpHが約pH3〜約pH9.5になる場合は、製剤を緩衝化しなくてもよい。製剤はまた、防腐剤、抗菌薬および/または毒性軽減薬を含んでもよい。さらに、溶解性および/または安定性を改善するために、コポリマーを含んでもよい。好適なコポリマーの例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(pyrollidone)(PVP)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。
【0025】
本発明は、点滴または間欠的ボーラス投与により、対象において麻酔または鎮静を誘導または維持することをさらに意図するものであり、その方法は、麻酔または鎮静を誘導するための時間および条件下で、シクロデキストリンを用いて製剤化された神経刺激性ステロイド麻酔薬の麻酔有効量を投与することを含む。
【0026】
より具体的には、本発明は、点滴または間欠的ボーラス投与により、対象において麻酔または鎮静を誘導または維持する方法であって、麻酔または鎮静を誘導するのに十分な時間および条件下で、シクロデキストリンまたはその修飾形態を用いて製剤化されたアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド麻酔薬の麻酔有効量を投与することを含み、この麻酔薬製剤または鎮静薬製剤が、滅菌可能であること、静脈内注射痛が最小であること、5を超える治療係数を有することから選択される特性を示す方法を提供する。
【0027】
一実施形態では、この製剤は、さらにプラスチック容器に保存可能である。
【0028】
一般に、神経刺激性ステロイド麻酔薬とシクロデキストリンとのモル比は、約1:1〜約1:6、より具体的には約1:1〜約1:4、さらにより具体的には約1:1〜約1:3、一層より具体的には約1:2である。
【0029】
本発明のこれらの態様は、点滴または間欠的ボーラス投与により、対象において麻酔もしくは鎮静またはその両方を誘導または維持することに及ぶ。
【0030】
この製剤は、1組の説明書を含む販売パッケージとしてもよい。この説明書には、麻酔を誘導するのに十分な時間および条件下で、シクロデキストリンを用いて製剤化されたアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩およびプロドラッグ形態から選択されるものなどの神経刺激性ステロイド麻酔薬の有効量を患者に投与することを含む患者管理プロトコルを含めてもよい。上述のとおり、好適なシクロデキストリンとしては、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのスルホアルキルエーテルデキストリンおよびスルホアルキル−アルキルエーテルシクロデキストリンなどのアルキルエーテル誘導体が挙げられる。他の誘導体としては、メチル化、ヒドロキシアルキル化、分岐、アルキル化、アシル化およびアニオン性シクロデキストリンが挙げられる。
【0031】
本発明は、対象に麻酔を誘導する医薬品の製造における、神経刺激性ステロイド麻酔薬およびシクロデキストリンまたはその修飾形態の使用をさらに意図する。特定の実施形態では、神経刺激性ステロイド麻酔薬は、アルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩およびプロドラッグ形態から選択される。
【0032】
第1のコンパートメントの中に神経刺激性ステロイド麻酔薬を、第2のコンパートメントの中にスルホアルキルエーテルシクロデキストリンなどのシクロデキストリンを、そして場合によっては、第3または他のコンパートメントの中に賦形剤および/またはコポリマーを含む、コンパートメント形態のキットもまた、本明細書では意図される。このキットは、改変注射器の形態になることもある。
【0033】
さらに、神経刺激性ステロイド麻酔薬の標識化形態は、鎮静または麻酔の間に麻酔薬をモニターし追跡するのに有用である。したがって、標識化神経刺激性ステロイド麻酔薬のモニタリングを支援するキットおよび装置が本明細書において提供される。標識化誘導体には、重水素化、トリチウム化およびその他の標識化薬剤が含まれる。
【0034】
一部の図にはカラー表示またはカラー要素が含まれている。カラー写真は、要請に応じて特許権所有者からまたは適切な特許局から入手可能である。特許局から得る場合は、料金が課されることがある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1aから図1fは、ハロタン麻酔下で、留置用内頚静脈内カテーテルを埋め込み、次いで、プロポフォール(a、b)、アルテシン[アルファキサロンおよび酢酸アルファドロン](c、d)またはPhaxanCD[アルファキサロンと(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンが1:2モル複合比](e、f)を注射した雄性ウィスターラットに関する実験を示すグラフである。
【図2】図2は、2つのアルファキサロン調製物[ラットにおけるPhaxanCDおよびアルテシン]の致死量投与を示すグラフである。
【図3】図3は、ラットにおけるアルテシン調製物の致死量投与に対するプロビットプロットを示すグラフである。
【図4】図4は、PhaxanCD(アルファキサロンと(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンが1:2モル複合比)の反復投与を用いた場合のラットの睡眠時間を示すグラフである。
【図5】図5は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のプレグナノロンを用いた場合のラットにおける正向反射の時間応答曲線を示すグラフである。
【図6】図6は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のプレグナノロンを用いた場合のラットにおける尾ピンチの時間応答曲線を示すグラフである。
【図7】図7は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のプレグナノロンを用いた場合のラットにおけるロータロッド試験の時間応答曲線を示すグラフである。
【図8】図8は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のアルファドロンを用いた場合のラットにおける正向反射の時間応答曲線を示すグラフである。
【図9】図9は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のアルファドロンを用いた場合のラットにおける尾ピンチの時間応答曲線を示すグラフである。
【図10】図10は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のアルファドロンを用いた場合のラットにおけるロータロッド試験の時間応答曲線を示すグラフである。
【図11】図11は、プロポフォール、アルテシンまたはPhaxanCDを注射した後のラットにおける平均収縮期血圧のパーセント変化を示すグラフである。
【図12】図12は、プロポフォール、アルテシンまたはPhaxanCDを注射した後のラットにおける平均拡張期血圧のパーセント変化を示すグラフである。
【0036】
「PhaxanCD」に言及する場合、アルファキサロンと(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンとの調製物を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は神経刺激性ステロイド麻酔薬のための薬物送達システムを提供する。一般に、神経刺激性ステロイド麻酔薬は水にやや難溶である。この薬物送達システムはホスト担体をシクロデキストリン形態またはその修飾形態で含む。一実施形態では、「シクロデキストリン」に言及する場合、α−、β−もしくはγ−シクロデキストリンまたはそれらの修飾形態もしくは誘導形態が含まれる。別の実施形態では、「シクロデキストリン」に言及する場合、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのスルホアルキルエーテルデキストリンまたはスルホブチルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンなどのそのアルキルエーテル誘導体が含まれる。シクロデキストリンの誘導体としては、メチル化、ヒドロキシアルキル化、分岐、アルキル化、アシル化およびアニオン性シクロデキストリンが挙げられる。「アルキル化」に関しては、アルキルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンなどのアルキルエーテル誘導体が含まれる。本明細書において意図される具体的なシクロデキストリンは、表7[Uekama et al.,Chem.Rev.98:2045−2076,1998]に示され、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、エチルエーテル、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル(平面型)、γ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルおよびα−シクロデキストリンスルホブチルエーテルならびにそれらの塩(例えばナトリウム塩)が含まれる。
【0038】
本発明の薬物送達システムにより、神経刺激性ステロイド麻酔薬を、滅菌された形態で対象に投与することができる。さらに、この送達それ自体は、プロポフォールの静脈内投与と比較して痛みが少ない。加えて、本発明の製剤は5を超える治療係数を有する(麻酔用量の5倍を超える投与で試験動物の死がもたらされ得ることを意味する)。「5を超える」に関しては、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190および200を含む、5と200との間ならびにその間の整数または分数で示される治療係数を意味する。本発明の製剤はまた、プラスチック容器に保存可能であり、プラスチック送達装置での使用に適合する。
【0039】
したがって、本発明の一態様は、麻酔薬または鎮静薬送達ホスト/ゲスト組成物であって、シクロデキストリンホストまたはその修飾形態と神経刺激性ステロイド麻酔薬ゲストとを含み、このホスト/ゲスト組成物が、滅菌可能であり、最小の静脈内注射痛で投与することができ、かつ5を超える治療係数を示すように製剤化されている、麻酔薬または鎮静薬送達ホスト/ゲスト組成物を提供する。一実施形態では、この製剤は、さらにプラスチック容器に保存可能であってもよい。一実施形態では、この製剤は、これらの特性の1つ、2つ、3つまたは4つすべてを示してもよい。
【0040】
「軽減した痛み」は、プロポフォールを含む製剤をリファレンスとして比較したことを意味する。
【0041】
この製剤は、哺乳類対象、具体的にはヒト対象に麻酔または鎮静を誘導するのに有用である。
【0042】
一実施形態では、神経刺激性ステロイド麻酔薬は、アルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される。
【0043】
薬理学的に許容される塩の一例は酢酸アルファドロンであり、これは本発明に包含される。神経刺激性ステロイド麻酔薬の誘導体の一例は重水素化誘導体である。「修飾」シクロデキストリンには、シクロデキストリンの誘導体が含まれる。
【0044】
したがって、本発明の別の態様は、薬物送達ホスト/ゲスト組成物であって、シクロデキストリンホストまたはその修飾形態とアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド麻酔薬ゲストとを含み、このホスト/ゲスト組成物が、滅菌可能であり、最小の静脈内注射痛で投与することができ、5を超える治療係数を示し、かつ/またはプラスチック容器に保存可能である、薬物送達ホスト/ゲスト組成物を対象とする。この製剤は、外科レベルに達する麻酔の迅速誘導に加え、プロポフォールと同様かそれよりも迅速な覚醒時間をもたらす。上述のように、この製剤は、これらの特性の1つ、2つ、3つまたはすべてを含む。
【0045】
本発明の組成物は、製剤、ホスト/ゲスト組成物、薬物送達システム、医薬品、麻酔薬または鎮静薬と呼ばれ、また麻酔薬製剤または鎮静薬製剤などと、さらに記述的に呼ばれ得る。
【0046】
本発明の別の態様は、麻酔薬製剤または鎮静薬製剤であって、神経刺激性ステロイド麻酔薬およびシクロデキストリンまたはその修飾形態を含み、この製剤が、滅菌可能であること、静脈内投与痛が少ないこと、5を超える治療係数を有すること、および/またはプラスチック容器への保存が可能であることを含む特性を示す、麻酔薬製剤または鎮静薬製剤を提供する。
【0047】
より具体的には、本発明は、麻酔薬製剤または鎮静薬製剤であって、アルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド麻酔薬を含み、この製剤が、滅菌可能であること、静脈内投与痛が少ないこと、および5を超える治療係数を有することを含む特性を示す、麻酔薬製剤または鎮静薬製剤に関する。
【0048】
一実施形態では、この製剤は、さらにプラスチック容器に保存可能である。
【0049】
本発明は、アルファキサロンならびにアルファドロンおよび/もしくは酢酸アルファドロンまたはそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩もしくはプロドラッグ形態を含む組成物など2つ以上の神経刺激性ステロイド麻酔薬の混合物に及ぶ。
【0050】
「薬理学的に許容される誘導体」は、副作用を増強せずに、麻酔を依然として誘導する誘導体である。1つまたは複数の水素原子が重水素と置換される場合には、用語「誘導体」には重水素化誘導体が含まれる。これは効果の改善をもたらすことがある。さらに、麻酔薬は、アルキル化、アルコキシ化、アセチル化および/またはリン酸化を受けて他の誘導体を精製し得る。他のタイプの誘導体としては、体内の麻酔薬をモニターし追跡するために有用な重水素化形態もしくはトリチウム化形態またはその他の標識形態が挙げられる。用語「誘導体」および「修飾形態」は、本明細書において互換的に使用される。アルファドロンの塩には酢酸アルファドロンが含まれる。プロドラッグに言及する場合、輸送プロドラッグが含まれる。
【0051】
一実施形態では、シクロデキストリンは、これらに限定されないが、スルホアルキルエーテルデキストリンなどβ−シクロデキストリンまたはその修飾形態である。具体的に有用なスルホアルキルエーテルデキストリンは、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンである。スルホアルキルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンなどのアルキルエーテル誘導体もまた意図される。アルキルエーテル誘導体の一例は、スルホブチルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンである。本明細書において意図される他のシクロデキストリンは表7に記載されており、メチル化、ヒドロキシアルキル化、アルキル化、分岐、アシル化およびアニオン性誘導体が含まれる。
【0052】
したがって、本発明の一態様は、麻酔薬または鎮静薬送達ホスト/ゲスト組成物であって、スルホアルキルエーテルデキストリンホストまたはその修飾形態と神経刺激性ステロイド麻酔薬ゲストとを含み、このホスト/ゲスト組成物が、滅菌可能で、最小の静脈内注射痛で投与できるように製剤化され、5を超える治療係数を示す、麻酔薬または鎮静薬送達ホスト/ゲスト組成物を提供する。一実施形態では、この製剤は、さらにプラスチック容器に保存可能であってもよい。
【0053】
本発明の別の態様は、薬物送達ホスト/ゲスト組成物であって、スルホアルキルエーテルデキストリンホストまたはその修飾形態とアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド麻酔薬ゲストとを含み、このホスト/ゲスト組成物が、滅菌可能であり、最小の静脈内注射痛で投与することができ、かつ5を超える治療係数を示す、薬物送達ホスト/ゲスト組成物を対象とする。
【0054】
一実施形態では、組成物は、さらにプラスチック容器において保存可能である。
【0055】
本発明の別の態様は、麻酔薬製剤または鎮静薬製剤であって、神経刺激性ステロイド麻酔薬およびスルホアルキルエーテルデキストリンまたはその修飾形態を含み、この製剤が、滅菌可能であること、静脈内投与痛が少ないこと、5を超える治療係数を有すること、および/またはプラスチック容器への保存が可能であることを含む特性を示す、麻酔薬製剤または鎮静薬製剤を提供する。
【0056】
上述のように、具体的に有用なスルホアルキルエーテルデキストリンの1つは、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンである。特定の実施形態では、この製剤は示された特性のうちの2つ以上、3つ以上またはすべての特性を示す。これらの特性には、外科レベルに達する麻酔の迅速誘導に加え、プロポフォールと比較した場合同様かそれよりも迅速な覚醒時間の模倣(imitating)が含まれる。
【0057】
神経刺激性ステロイドとシクロデキストリンとの製剤は、一般に、モル比が1:1〜1:6(神経刺激性ステロイド:シクロデキストリン)、より具体的には約1:1〜1:4、さらにより具体的には1:1〜約1:3、一層より具体的には約1:2である。1:1〜1:6の範囲には、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.1、1:2.2、1:2.3、1:2.4、1:2.5、1:2.6、1:2.7、1:2.8、1:2.9、1:3、1:3.1、1:3.2、1:3.3、1:3.4、1:3.5、1:3.6、1:3.7、1:3.8、1:3.9、1:4、1:4.1、1:4.2、1:4.3;1:4.4、1:4.5、1:4.6、1:4.7、1:4.8、1:4.9、1:5、1:5.1、1:5.2、1:5.3、1:5.4、1:5.5、1:5.6、1:5.7、1:5.8、1:5.9および1:6が含まれる。
【0058】
したがって、本発明は、薬物送達ホスト/ゲスト組成物であって、シクロデキストリンホストまたはその修飾形態と神経刺激性ステロイド薬ゲストとを含み、神経刺激性ステロイドとシクロデキストリンとのモル比が約1:1〜約1:6であり、この組成物が、滅菌可能で、最小の静脈内注射痛で投与できるように製剤化され、かつ5を超える治療係数を示す、薬物送達ホスト/ゲスト組成物を提供する。一実施形態では、この製剤は、さらにプラスチック容器に保存可能であってもよい。
【0059】
より具体的には、本発明は、薬物送達ホスト/ゲスト組成物であって、α−、β−もしくはγ−シクロデキストリンあるいはスルホアルキルエーテルデキストリンもしくはスルホアルキルエーテル−アルキルエーテル誘導体または表7に記載の他の誘導体を含むそれらの修飾形態から選択されるシクロデキストリンと、アルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド薬ゲストとを含み、神経刺激性ステロイドとシクロデキストリンとのモル比が約1:1〜約1:6であり、この組成物が、滅菌可能であり、最小の静脈内注射痛で投与することができ、かつ5を超える治療係数を示すように製剤化されている、薬物送達ホスト/ゲスト組成物を対象とする。一実施形態では、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンは100ppm未満のリン酸を含み、溶液1ml当たりデキストリン300mgを含有する、光路1cmのセル中の水溶液に対して245nm〜270nmの波長でUV/vにより分光測定した場合に薬物分解酵素による吸収が0.5AU未満である。一実施形態では、この製剤は、さらにプラスチック容器に保存可能であってもよい。
【0060】
一実施形態では、本発明の麻酔薬組成物は、リン酸もしくはトリスまたはクエン酸リン酸緩衝液などの緩衝液を含み、pHを約5.5〜約8に維持する。このpH値には、5.5、6、6.5、7、7.5および8のpH値が含まれる。あるいは、この組成物に緩衝液を含ませず、そのpHをpH3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9または9.5など約pH3〜約pH9.5とする。
【0061】
さらなる態様では、本発明の製剤はまた、賦形剤および/または防腐剤、微生物遅延剤などの1つまたは複数の薬剤を含む。他の薬剤もまた毒性を軽減するために含むことができる。薬剤としては、例えば、EDTA、ベンジルアルコール、重亜硫酸塩、ラウリン酸のモノグリセリルエステル(モノラウリン)、カプリン酸および/またはその可溶性アルカリ性塩もしくはそのモノグリセリルエステル(モノカプリン)、エデト酸塩、ならびにカプリン酸および/またはその可溶性アルカリ性塩もしくはそのモノグリセリルエステル(モノカプリン)ならびにエデンテート(edentate)が挙げられる。この製剤はまた、麻酔薬の溶解性または安定性を補助するために1つまたは複数のコポリマーを含有してもよい。例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)および/またはカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。
【0062】
好都合なことに、神経刺激性ステロイド麻酔薬は、シクロデキストリンを含む生理食塩水懸濁液中に約0.5〜100mg/mlの濃度で提供される。このような薬物濃度としては、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、および100mg/mlが挙げられる。上述のように、この組成物は、一般に、神経刺激性ステロイドとシクロデキストリンとのモル比が約1:1〜約1:6、具体的には約1:1〜1:4、より具体的には約1:1〜約1:3、最も具体的には約1:2となるように製剤化される。
【0063】
任意の具体的な神経刺激性ステロイドまたはその塩に言及する場合、それぞれの麻酔薬の単一エナンチオマーと同様にそれぞれの薬剤のエナンチオマーのラセミ混合物も含まれる。
【0064】
特定の実施形態では、神経刺激性ステロイドはアルファキサロン、アルファドロンおよび/または酢酸アルファドロンである。一実施形態では、アルファキサロンは、10mg/mlなど1〜100mg/mlの濃度の製剤である。別の実施形態では、アルファドロンまたは酢酸アルファドロンは、3mg/mlなど0.5〜50mg/mlで存在する。
【0065】
本明細書の製剤は、神経刺激性ステロイド麻酔薬が、静脈内、皮下、腹腔内、髄腔内、筋肉内、硝子体内、経皮、坐薬(直腸)、膣座薬(膣)、吸入、鼻腔内などにより送達されることを意味するin vivo送達用である。最も効果的には、この製剤は静脈内(iv)製剤である。
【0066】
したがって、本発明の別の態様は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンまたはアルキルエーテル誘導体などのシクロデキストリンを用いて製剤化され、滅菌可能であり、最小の静脈内注射痛で投与することができ、5を超える治療係数を示し、かつプラスチック容器に保存可能であるように選択された神経刺激性ステロイド麻酔薬の注射用製剤を提供する。
【0067】
神経刺激性ステロイド麻酔薬は、単独であるいは別の麻酔薬もしくは鎮静薬または他の有効薬剤と組み合わせて用いてもよい。一実施形態では、アルファキサロンはアルファドロンまたはその塩、酢酸アルファドロンと共に用いられる。したがって、「アルファドロン」に言及する場合、酢酸アルファドロンが含まれる。したがって、この組成物は、アルファキサロン単独またはアルファドロン単独、あるいはアルファキサロンとアルファドロン、またはそれらの誘導体、塩もしくはプロドラッグ形態のいずれかの組合せを含み得る。
【0068】
それ故、特定の実施形態では、本発明は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのスルホアルキルエーテルデキストリンを用いて製剤化されたアルファキサロンまたはその薬理学的に許容される誘導体、塩もしくはプロドラッグおよび/あるいはアルファドロンまたはその薬理学的に許容される誘導体、塩もしくはプロドラッグを含み、アルファキサロンおよび/またはアルファドロンとデキストリンとのモル比が約1:1〜約1:6である、組成物を提供する。製剤の方法および試薬については、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Eaton,USA,1990、およびRowe’s Handbook of Pharmaceutical Excipients,2009を便利に参照することができる。
【0069】
本発明は、点滴または間欠的ボーラス投与により、ヒト対象において麻酔を誘導または維持することを意図するものであり、この方法は、麻酔を誘導するための時間および条件下で、スルホアルキルエーテルデキストリンなどのシクロデキストリンを用いて製剤化された神経刺激性ステロイド麻酔薬の麻酔有効量を投与することを含む。
【0070】
より具体的には、本発明は、点滴または間欠的ボーラス投与により、ヒト対象において麻酔を誘導または維持する方法であって、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのシクロデキストリンを用いて製剤化されたアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド麻酔薬の麻酔有効量を、麻酔を誘導するのに十分な時間および条件下で投与することを含み、この麻酔薬製剤が、滅菌可能で、最小の静脈内注射痛で投与することができ、かつ5を超える治療係数を示す、方法を提供する。さらに、この製剤は、迅速な麻酔誘導に加え、プロポフォールまたはアルテシン(登録商標)と比較して、同様かより迅速な覚醒時間をもたらすことができる。この製剤は、さらにプラスチック容器に保存可能であってもよい。
【0071】
本発明は、点滴または間欠的ボーラス投与により、鎮静を誘導または維持することに及ぶ。したがって、本発明の別の態様は、点滴または間欠的ボーラス投与により、対象において鎮静を誘導または維持する方法であって、スルホアルキルエーテルデキストリン、例えば(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのシクロデキストリンを用いて製剤化された神経刺激性ステロイド麻酔薬の鎮静有効量を、鎮静を誘導するのに十分な時間および条件下で投与することを含む方法を提供する。
【0072】
「(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン」に言及する場合、スルホブチルエーテル−アルキルエーテルβ−シクロデキストリンなど、そのメチル化、ヒドロキシアルキル化、分岐、アルキル化、アシル化およびアニオン性誘導体が含まれる。他の誘導体(derives)には、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、エチルエーテル、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル(平面型)、γ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルおよびα−シクロデキストリンスルホブチルエーテルならびにそれらの塩(例えばナトリウム塩)が含まれる。
【0073】
上述のように、具体的な対象はヒト対象である。
【0074】
この麻酔薬製剤は、使用説明書を含む販売パッケージとすることができる。この使用には、スルホアルキルエーテルデキストリン、例えば(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのシクロデキストリンを用いて製剤化されたアルファキサロン、アルファドロンならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩およびプロドラッグ形態から選択されるものなどの神経刺激性ステロイド麻酔薬の有効量を、麻酔を誘導するのに十分な時間および条件下で患者に投与することを含む患者管理プロトコルが含まれる。
【0075】
本発明は、ヒト対象などの対象に麻酔を誘導する医薬品の製造における、神経刺激性ステロイド麻酔薬およびスルホアルキルエーテルデキストリン、例えば(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのシクロデキストリンの使用をさらに意図する。特定の実施形態では、神経刺激性ステロイド麻酔薬は、アルファキサロン、アルファドロンおよびそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩およびプロドラッグ形態から選択される。別の実施形態では、麻酔薬は、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される。
【0076】
麻酔有効量に関しては、一般に、約0.25mg/kg体重〜約100mg/kg体重である。鎮静有効量は、同量かまたはより低量になり、約0.05mg/kg体重〜約10mg/kg体重が含まれる。
【0077】
本発明はさらにキットを提供する。このキットは、注射器または改変注射器を含む任意の形態としてもよい。キットは、1つまたは複数のコンパートメントの中にアルファキサロンおよび/またはアルファドロンまたはその他の神経刺激性ステロイド麻酔薬またはそれらの誘導体、塩もしくはプロドラッグを、さらなるコンパートメントの中にスルホアルキルエーテルデキストリンを、そして続くコンパートメントの中に賦形剤を含んでもよい。コンパートメントの内容物を使用前に混合してもよい。
【0078】
特定の実施形態では、本発明は、スルホブチルエーテルシクロデキストリンと複合体を形成したアルファキサロンおよび/またはアルファドロンおよび/またはそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩もしくはプロドラッグ形態を含む、点滴または間欠的ボーラス投与により、ヒト対象において麻酔または鎮静を誘導または維持するのに使用するための製剤を提供する。
【0079】
麻酔薬形態を、重水素化形態もしくはトリチウム化形態などにするかまたはその他の標識により標識して、体内の麻酔薬のモニタリングおよび追跡を容易にしてもよい。したがって、標識化神経刺激性ステロイド麻酔薬をモニターするキットおよび装置が提供される。
【0080】
本発明はヒトに使用するための麻酔薬製剤を具体的には対象としているが、他方、この製剤は、臨床試験または獣医学的使用などのために、動物に使用してもよい。本明細書において意図する非ヒト動物としては、ラット、マウス、モルモット、ハムスター、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ラクダおよび非ヒト霊長類が挙げられる。
【0081】
したがって、本発明は、麻酔薬組成物または鎮静薬組成物であって、神経刺激性ステロイド麻酔薬およびシクロデキストリンまたはその修飾形態を含み、この組成物が以下の特性:
(i)神経刺激性ステロイドおよびシクロデキストリンが約1:1〜約1:6のモル比で製剤化されること;
(ii)神経刺激性ステロイドが、アルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択されること;
(iii)シクロデキストリンが、α−、β−およびγ−シクロデキストリンまたはそれらの修飾形態から選択されること;
(iv)緩衝液が場合によっては存在し、存在する場合には、製剤のpHは、約pH5.5〜約pH8.0であり、緩衝液が存在しない場合には、製剤のpHは約pH3〜約pH9.5であること;
(v)この製剤が滅菌可能であること;
(vi)この製剤の静脈内注射がプロポフォール製剤よりも痛みが少ないこと;
(vii)この製剤の治療係数が5を超えること;
(viii)この製剤がプラスチック容器に保存可能であること;および
(ix)この製剤が、外科レベルに達する麻酔の迅速誘導に加え、プロポフォールと比較して同様かそれよりも迅速な覚醒時間をもたらすことができること
を有する麻酔薬組成物または鎮静薬組成物を提供する。
【0082】
特定の実施形態では、スルホアルキルエーテルまたはスルホアルキルエーテル−アルキルエーテルデキストリン、神経刺激性ステロイド麻酔薬(アルファキサロンまたはアルファドロンなど)および1つまたは複数のコポリマー(HPMC、PVPおよび/またはCMCなど)を含む麻酔薬製剤または鎮静薬製剤を提供する。
【0083】
特定の実施形態では、神経刺激性ステロイド麻酔薬は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなどのスルホアルキルエーテルデキストリンを用いて製剤化される。
【0084】
本発明は、麻酔薬組成物または鎮静薬組成物を製剤化する方法であって、シクロデキストリンおよび神経刺激性ステロイドを含むホスト/ゲスト組成物を生成する方法をさらに意図する。一実施形態では、シクロデキストリンは、スルホアルキルエーテルまたは(7)スルホブチルエーテル(either)β−シクロデキストリンもしくはスルホブチルエーテル−アルキルエーテルβ−シクロデキストリンなどのスルホアルキルエーテル−アルキルエーテルデキストリンである。他のシクロデキストリンとしては、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル−エチルエーテル、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル(平面型)、γ−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、α−シクロデキストリンスルホブチルエーテルおよびそれらのナトリウム塩が挙げられる。
【0085】
本発明は、以下の非限定実施例においてさらに説明される。神経刺激性ステロイド麻酔薬がシクロデキストリンを用いて製剤化される場合、「神経刺激性ステロイド麻酔薬CD」と称される。例としてPhaxanCDがあるが、これは、シクロデキストリン、この場合では(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンを用いて製剤化されたアルファキサロンを含む。他の例としては、プレグナノロンCDおよびアルファドロンCDが挙げられる。
【実施例】
【0086】
実施例1
30%w/vの(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のアルファキサロンの麻酔効果
アルファキサロンは、
・ アルファキサロン60mg(10mg/ml);
・ (7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン1800mg;
・ 生理食塩水(0.9%w/v)6ml
を含む6mlの無色澄明の液体として製剤化した。
【0087】
この製剤では、アルファキサロンと(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンとのモル複合比が1:4.6になる。頚静脈内カテーテルを留置した雄性ウィスターラット(体重[wt]270〜315g)を、Perspex保定器に入れて、注射投与し、保定器から解放した際に得られた観察を表1に示す。
【0088】
25および100mg/kg体重を投与されたラットは、60分までに回復し、これらの用量で死亡せず、いかなる副作用も受けなかった。これらの実験では、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中に溶解したアルファキサロン10mg/mlを静脈内注射すると、10mg/kgを超える用量で意識消失がもたらされ、広い安全域を有する用量相関麻酔効果があったことを認めることができ、25および100mg/kg体重(麻酔用量の2倍および10倍)を投与されたラットは死亡せず、この調製物の安全域が広いことが示された。これは、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン中のアルファキサロン製剤とは明確に異なる。Jurox Pty,Newcastle NSW Australiaにより製造されたそのような調製物(AlfaxanCD−RTU)では、静脈内投与されたときラットの50%が死亡するアルファキサロンの用量であるLD50が19mg/kg体重であることが公表されており、この数字は、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中に製剤化されたアルファキサロンに対してここで示された数字より顕著に低い数字である[アルファキサンCD−RTU物質安全性データシート;Jurox Pty,Newcastle NSW Australia]。
【0089】
実施例2
ラットにおける薬物動態
内頚静脈内カテーテルおよび内頚動脈内カテーテルを埋め込まれた10匹のラットからなる2つの群に、アルファキサロンの(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン製剤を10mg/kg体重(n=10ラット)、またはCremophorEL(ポリエトキシル化ひまし油)中のアルファキサロンとアルファドロンとの混合物を1.1ml/kg(n=10ラット)、頚静脈を介してボーラス静脈内注射した。この注射の後に時間間隔を置いたいくつかの時点で頚動脈または尾から採取した血液をアルファキサロン血中濃度のために分析した。そのデータを3コンパートメント薬物動態モデルにフィットさせ、キーパラメーターの平均±semをステロイド麻酔薬の両方の調製物について計算した。
【0090】
(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン製剤およびアルテシン(登録商標)製剤について計算されたPKパラメーター間に有意差がないことが推測される。これは、具体的に麻酔および鎮静に必要とされる用量、また回復の速さに関して、アルテシン(登録商標)が以前に示した挙動と同様の様式の挙動を新しい製剤が示すと推測されることを示す。これらの実験から推測することができる血中濃度のサンプル表を表2に示す。
【0091】
実施例3
アルテシン(登録商標)としてのアルファキサロンおよびプロポフォールと比較した(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のアルファキサロンの麻酔効果
雄性ウィスターラット(体重150〜220g)にハロタン麻酔下で留置用内頚静脈内カテーテルを埋め込んだ。24時間後に、各ラットに、プロポフォール(10%w/vのIntralipidエマルジョン中に10mg/ml;Diprivan[登録商標]);アルテシン[登録商標](20%w/vのCremophorEL中にアルファキサロン9mg/mlと酢酸アルファドロン3mg/ml);またはPhaxanCD(アルファキサロン10mg/mlとCaptisol(登録商標)−(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンとが1:2のモル複合比)のいずれかを一連の用量で静脈内注射した。静脈内注射後に一定の時間間隔で下記のことを評価した。
1.正向反射:次のようにスコア化した:1 正常;2 遅い;3 若干有り;4 無し−これを意識消失状態の開始および期間の基準とした;
2.尾ピンチ応答:次のようにスコア化した:1 正常;2 弱い;3 若干有り;4 無し−これを外科麻酔状態の開始および期間の基準とした;および
3.ラットがロータロッド(回転シリンダ)上を歩行することができた時間を秒単位で測定した。最大の正常走行時間を非鎮静のラットで120秒とする−この値を得ることが、麻酔薬注射の鎮静効果から完全に回復するのにかかる時間の基準とした。
【0092】
同じ麻酔薬および用量で処置されたラット10匹の群から得られた結果を、統計処理のためにまとめた。正向反射の消失のために4のスコアを得たラットは、意識を消失していると見なし、尾ピンチ応答の消失のために4のスコアを得たラットは、外科麻酔状態にあると見なした。同様に処置された10匹の動物からなるそれぞれの群の中で4のスコアを得たラットの数を、SPSS Statistics18を用いてプロビット回帰分析して、プロビット値対対数用量(プロビットプロット)のグラフを作製し、さらに、意識消失状態(正向反射測定)および外科麻酔状態(尾ピンチ応答)に関して対象の50%および95%(それぞれAD50およびAD95)が麻酔状態になる推定用量を計算した。ロータロッド歩行時間も、各用量および処置についてプロットした。これを完全回復の尺度として用いた。結果を図1a〜1fに示し、各麻酔薬、用量毎のn=10ラットでのロータロッド成績を示す。
【0093】
この一連の実験結果を下記の表3に要約する。PhaxanCDは意識消失状態および外科麻酔状態を引き起こす点においてアルテシン(登録商標)と効力が等しく、両方ともこの点でプロポフォールよりも効力があることを認めることができる。PhaxanCDにより引き起こされた意識消失状態からの回復はプロポフォールとまったく同様に迅速である。しかしながら、麻酔深度が外科レベルになる場合には、PhaxanCDからの回復はプロポフォールより若干遅くなるが、アルテシン(登録商標)よりは迅速である。対照実験から、単独で静脈内投与されたビヒクル、20%CremophorEL、10%Intralipidおよび13%Captisolには鎮静効果も麻酔効果もないことが明らかになった。
【0094】
この一連の実験から、以下の結論を得ることができる。
・ PhaxanCDは、静脈内注射後に迅速に全身麻酔を誘導する有効な静脈麻酔薬である。
・ PhaxanCDは、アルテシンと効力が等しく、プロポフォールの2倍の効力がある。
【0095】
実施例4
アルファキサロン麻酔薬調製物の致死量判定
この一連の実験は、CremophorEL[アルテシン(登録商標)]および(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(PhaxanCD)中で製剤化されたアルファキサロンのLD50およびLD95用量、すなわち対象の50%および95%を死亡させるCaptisol(登録商標)中のアルファキサロンの用量を決定するために行った。雄性ウィスターラット(体重150〜220g)にハロタン麻酔下で留置用内頚静脈内カテーテルを埋め込んだ。24時間後に、各ラットに、アルテシン(登録商標)(20%w/vのCremophorEL中にアルファキサロン9mg/mlと酢酸アルファドロン3mg/ml);またはPhaxanCD(アルファキサロン10mg/mlとCaptisol(登録商標)−7スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンとが1:2のモル複合比)のいずれかを一連の用量で静脈内注射した。同じ用量の薬物を投与された10匹のラットからなるそれぞれの群について、死亡したラットの数を記録した。同じ麻酔薬および用量で処置されたラット10匹の群から得られた結果を、統計処理のためにまとめた。生データのグラフを図2に示す[各投薬群で死亡した%ラット対用量]。
【0096】
50mg/kgと60mg/kgとの間のアルファキサロン用量で、アルテシン(登録商標)群のラットはすべて死亡したが、同じ用量のアルファキサロンを投与されたPhaxanCD群では、いずれのラットも死亡しなかった。PhaxanCDの致死率は20%で天井を示し、PhaxanCDとして投与されたアルファキサロンの用量が増加しても、ラットの死亡は20%を超えなかった。すべての異なる投薬処置群において死亡したラットのパーセントを、SPSS Statistics18を用いて、プロビット回帰分析に供し、プロビット値を麻酔薬の対数用量に対してグラフ上にプロットした。これをプロビットプロットと呼ぶ。このプロットを図3に示す。
【0097】
アルテシン(登録商標)のプロビットプロットを用いて、50%および95%のラットを死亡させる、この製剤中のアルファキサロンの用量(それぞれLD50およびLD95)を計算した。これらの値は、43.6mg/kg[LD50]および51.5mg/kg[LD95]であった。アルファキサロンがアルテシン(登録商標)として投与された場合、アルファキサロンの用量が増加するにつれて、比例して死亡したラットの数が増加した。これに対して、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(PhaxanCD)製剤中のアルファキサロンの致死率には天井効果があった。致死率により評価すると、CremophorEL(アルテシン[登録商標])を用いて製剤化されたアルファキサロンと比較して、このアルファキサロンの毒性は顕著に少ないものであった。アルテシン(登録商標)としてのアルファキサロンの用量が52mg/kgの場合、この群の10匹のラットはすべて死亡したが、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(PhaxanCD)を用いて製剤化されたアルファキサロンを64mg/kgの用量で投与された10匹のラットの中で、この用量のアルファキサロンにより死亡するラットはいなかった。さらに、用量の増加と共に致死率が増加する直接的比例関係を示したアルテシン(登録商標)のプロビットプロットと異なり、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(PhaxanCD)中で製剤化されたアルファキサロンは、致死率に関して天井効果を示した。この調製物中のアルファキサロンの用量を71、78、次いで84mg/kgに増加しても、20%のラットのみがそれぞれの群で死亡した。このように、50%および95%のラットを死亡させる、この製剤中のアルファキサロンの用量(それぞれLD50およびLD95)を見出すことは可能ではなかった。いずれにせよ、これらの値は両方とも、アルテシン(登録商標)の対応量の2倍を超え、またJuroxにより製造された、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン中で製剤化されたアルファキサロンのLD50値[アルファキサンCD−RTU物質安全性データシート;Jurox Pty,Newcastle NSW Australia]の4倍を超える84mg/kg超である。
【0098】
これらの結果から、治療係数(50%の対象を死亡させる用量(LD50)を50%の対象を麻酔状態にする用量(AD50)で割って得られる比率)は、アルテシン(登録商標)に対して14.8、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(Captisol[登録商標]PhaxanCD)中で製剤化されたアルファキサロンに対して>30.2となる。この相違は賦形剤の毒性の相違によるものではない。下記の表4に、頚静脈内カテーテルを留置された10匹のラットにおける実験結果を示す。5匹のラットに20%Cremophor EL溶液を静脈内投与し、別の5匹のラットに(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン溶液を投与した。両溶液とも、最大用量のアルファキサロンが投与された上記実験と同じ用量および容量で投与した。いずれの賦形剤もラットをまったく死亡させず、アルファキサロンの2つの製剤の安全性/致死性の相違が賦形剤の用量相関毒性によるものではないことが示された。
【0099】
実施例5
Captisol[登録商標](スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン)によりアルファキサロンの毒性が制限されることの証明
20%CremophorEL(アルテシン[登録商標])中であろうと(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(PhaxanCD)中であろうと、ボーラス用量のアルファキサロンに関して、麻酔状態にする効力は同じであるので、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン製剤中のアルファキサロンをより高用量で投与する場合における毒性の天井効果は、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンに関係しているはずである。このような特性は、静脈麻酔薬についてこれまで記載されていない。さらに、この特性は、他のシクロデキストリン中で製剤化されたアルファキサロンについてもこれまで記載されていない。
【0100】
PhaxanCDの低毒性がCaptisol賦形剤によるものか否かを試験するために、頚静脈内カテーテルを留置された20匹のラットをそれぞれ10匹のラットの2つの群に分けた。これらのラットすべてに、20%Cremophor中で製剤化されたアルファキサロンを、実施例4で報告した前の実験においてすべてのラットを死亡させた用量で静脈内注射した(アルテシン[登録商標];アルファキサロン用量52.5mg/kg iv−この用量は、極めて高い割合のラットまたはすべてのラットが死亡すると推測されるアルテシン(登録商標)のAD95の16倍に等しい)。アルテシン(登録商標)注射の60秒前に、前投薬注射を行った。
・ 群1(10匹のラット)には、アルテシン(登録商標)としてアルファキサロン52.5mg/kgを投与する60秒前に0.9%塩化ナトリウム溶液5.3mls/kgを投与した;
・ 群2(10匹のラット)には、アルテシン(登録商標)としてアルファキサロン52.5mg/kgを投与する60秒前に0.9%塩化ナトリウム溶液中の13%(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン溶液5.3mls/kgを投与した。
【0101】
表5に示すそれぞれの群で死亡したラットの数を記録した。20匹のラットはすべて、アルテシン(登録商標)としてアルファキサロン52.5mg/kgを注射することにより麻酔状態になった。しかしながら、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンの存在により、アルファキサロンを起因とする死亡率が統計的および臨床的に有意に低下した。
【0102】
これはほとんど予想されなかった結果である。
【0103】
実施例6
睡眠時間に対するPhaxanCD反復投与の効果
アルファキサロン毒性に対する天井効果を引き起こす、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンを原因とするメカニズムは未知である。アルファキサロンは水に極めて難溶性であることが知られており、したがって、大多数のアルファキサロン分子は、1:2の比(複合比)でシクロデキストリン分子と複合体を形成する。PhaxanCDを静脈内注射すると、アルファキサロンの一部がシクロデキストリン複合体から解離することが知られている。毒性に対して天井効果を示すアルファキサロンスルホブチルエーテルシクロデキストリン複合体のユニークな特性が提起する疑問は、これが複合体から放出されるアルファキサロンの量が限定されることに起因するのか否か、またはさもなければ脳に侵入して毒性を引き起こす可能性のあるアルファキサロン分子が、肝臓によるアルファキサロン代謝により解放された、複合体を形成していない過剰のシクロデキストリン分子により「除去」されるのか否かについてである。後者の効果により、遊離アルファキサロンのレベルが漸進的に減少すると予測される。その理由は、複合体を形成していないスルホブチルエーテルシクロデキストリンの濃度が、
・ アルファキサロンの肝臓代謝;
・ PhaxanCDの投与回数が多くなると、それによって複合体を形成していないシクロデキストリンがより多く利用可能になること
の結果として増加するからである。
【0104】
この通りであったとすると、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中で製剤化されたアルファキサロンの反復投与に対して耐性になることが予測される。すなわち、PhaxanCDの反復注射により、鎮静効果および麻酔効果が漸進的に低下することになろう。
【0105】
これを試験するために、頚静脈内カテーテルを留置された5匹のラットに、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のアルファキサロンを、正向反射の完全な消失から判断される麻酔状態に10/10のラットがなった最小用量(5mg/kgのPhaxanCD)で反復注射した。各ラットが正向反射を回復し始めた時間(上記の実施例2に記載した正向反射におけるスコア4からスコア3への移行)を測定し、次いで、5mg/kgのPhaxanCDをさらに投与した。麻酔薬の2回目投与の後に正向反射の回復を開始した時間を測定し、次いで、5mg/kgのPhaxanCDをさらにiv投与し、このプロセスをさらに8回繰り返した。1回目から10回目の投与までの回復時間の漸進性を、それら5匹のラットついての平均(sem)として、下記のヒストグラム(図4)および表6に示す。最初の4投与それぞれの後に回復時間が漸進的に顕著に増加したことを認めることができる。さらなる投与5〜10回目では、それ以上顕著な増加は起こらず、さらに重要なことには、睡眠時間の減少がなかった。これらの結果から、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンに起因するアルファキサロン毒性天井効果は、おそらく複合体からのアルファキサロンの放出が、麻酔状態にするのに十分な速度であるが、いかに多くの複合体が投与されたにしても、それを超えない速度に制御されていることによるものであるとわかる。これは、アルファキサロンおよび(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンの化学的関係と、体液を含む水性環境へのアルファキサロンの難溶解性と、脳に侵入して麻酔状態にするために必要とされるアルファキサロンの量と、アルファキサロンの薬物動態との間のユニークなバランスにある。結果を図4および表6に示す。この結果はどれも予想されなかったし、従来技術からも予測することができなかった。
【0106】
5匹のラットへのPhaxanCD5mg/kgの10回反復投与後の睡眠時間のデータに一元配置分散分析[Tukey Kramer post hoc]を適用することにより、1回目から2回目、2回目から3回目および3回目から4回目にかけて睡眠時間は統計的に有意な漸進的増加を示したが、それ以降は睡眠時間の増加はなかったことが明らかとなった。さらに、PhaxanCDの低毒性および天井効果のメカニズムが、複合体を形成していない「遊離」スルホブチルエーテルシクロデキストリン[Captisol(登録商標)]が血液からアルファキサロンを除去することによるものであれば予測されたであろう睡眠時間の漸進的減少が、なかったことに留意することは重要である。この通りであった場合には、複合体を形成していない遊離Captisolの量は、投与回数が多くなるにつれて、またアルファキサロンが肝臓により代謝されるにつれて増加し、したがって、反復暴露実験が進行するにつれて複合体を形成していない遊離Captisolの漸進的増加がもたらされたであろう。アルファキサロンがこれにより除去される場合には、それぞれの逐次的投与に伴って睡眠時間が減少すると推測されよう。しかし、これに反して、睡眠時間は最初の4回の各投与では増加し、後続の各投与では一定のままであった。
【0107】
実施例7
天井毒性
以下の仮定をする。
A.アルテシン(登録商標)の静脈内注射は血漿中でアルファキサロンを即時に分散させるが、1回の血液循環で薬物注射による麻酔状態になり、また肝臓の初回通過によりアルファキサロンが血液から除去されるため、血漿中での混合により達成されるアルファキサロンレベルは、即時の混合を仮定した場合の理論的最大値の30%に到達するだけであろう。
【0108】
以下の点を考慮する。
1.アルファキサロンは0.03mg/mlまで水に可溶である;
2.アルファキサロンは血漿中で35%がタンパク質に結合している;
3.ラットの血漿量は31ml/kgである(Davies and Morris,Pharmaceutical Research,10(7):1093−95,1993);
4.アルテシン(登録商標)およびPhaxanCDは両方とも、アルファキサロン濃度が10mg/mlである;
5.麻酔誘導に対して、アルテシン(登録商標)およびPhaxanCDは効力が等しい;いずれの調製物でも最低限4.3mg/kgのアルファキサロンがあれば、ほとんど(95%)のラットに睡眠が誘導される;
6.最初のボーラス注射の後、最初の睡眠周期の間に薬物調製物は血漿量と平衡になるが、その後、薬物は、297ml/kgの細胞外液[ECF](Davies and Morris,1993supra)の中へ分散する;
7.CaptisolはECFに分布し、このスペースに限定される;そして
8.水性環境中の遊離アルファキサロンのレベルが未飽和、すなわち<0.03mg/ml[事実1]である場合にのみ、アルファキサロンがCaptisolから水性環境の中へ放出される。
【0109】
本明細書において以下のことを提案する。
I.上記のAおよび5から、睡眠を誘導するのに必要な薬物の血漿レベル=アルテシンとして投与された用量/血漿量=4.3/31=0.14mg/ml。
II.Aを適用すると、血液が循環して薬物を効果的に混合した場合、血漿濃度はこの30%であると推測される=0.046mg/ml。
III.これから、単一ivボーラス注射後における、麻酔誘導と関連した血漿中の遊離非結合アルファキサロンのレベル=全体の65%(事実2から)=0.045×0.65=0.03mg/ml。
IV.上記の提案IIIは、まさに、公知のアルファキサロンの水溶解度である。
V.提案IVと項目5および8を組み合わせて、PhaxanCDの1回目の誘導用量により、複合体からアルファキサロンがすべて放出され、麻酔レベルおよび遊離アルファキサロンの飽和レベルにちょうど到達することによって、麻酔がもたらされたと本明細書において提案する。
VI.麻酔薬の2回目の投与が実施例9においてなされたとき、一部の遊離アルファキサロンが肝臓により代謝されており、一部の遊離アルファキサロンがECFに再分布しており、かつアルファキサロンを含有するCaptisolもまたECFに再分布していたため、ラットは麻酔から回復し始めていた。このようにして、遊離アルファキサロンレベルが低下し、アルファキサロンが脳を離れて、その結果覚醒がもたらされた。そこで、さらなる投与が行われた。1回目の投与と異なり、血液中に依然としてアルファキサロンが存在していたため、アルファキサロンの一部のみが複合体から放出され、遊離アルファキサロンレベルを0.03mg/mlに戻した;脳は再負荷され、続いて睡眠が起こる。
VII.しかしながら、ECFが、0.03mg/mlのアルファキサロンおよびアルファキサロン/Captisol複合体[項目6および7]で負荷されるまで、睡眠は2回目、3回目、さらに4回目の投与後により長時間続く。その後、Captisolのさらなる投与は、肝臓代謝がその用量のアルファキサロンを除去するまで、遊離アルファキサロンの血中濃度を補充し、それを維持するだけである。
VIII.いったん遊離アルファキサロンのレベルが0.03mg/mlに到達すれば、脳は麻酔状態になる。遊離アルファキサロンのレベルが増加すれば、脳は単により多くのアルファキサロンを吸収することになる。これはアルテシン(登録商標)に関しては可能であり、その薬物の麻酔用量の15倍がボーラスとして投与されると、0.45mg/mlの理論的な遊離アルファキサロンレベルに到達して、結果として死亡する。これに対して、アルファキサロンのその用量が、Captisol(登録商標)との複合体のPhaxanCDとして投与される場合には、いったん遊離アルファキサロンレベルが0.03mg/ml[項目1]に到達すると、アルファキサロンは複合体から放出されない。これにより、13%スルホブチル−7−エーテルβ−シクロデキストリン中で製剤化された場合のアルファキサロンの致死率に関する天井効果が説明される。
IX.PhaxanCD5mg/kgの5回目の投与およびそれ以降の同じ量の投与の後で、睡眠時間のさらなる増加が起こらないので、そのときアルファキサロンのクリアランスは用量投与速度と平衡にあるはずである。したがって、アルファキサロンの平衡クリアランスは5mg/kg/4.2分である。血漿中の濃度が約0.04mg/mlであるので、そのとき、平衡にある血漿クリアランス速度=((5÷4.2)÷0.04)=30mls/kg/分である。これは、肝臓血流の公知の値の範囲内である(Davies and Morris,1993 supra)。アルファキサロンが、主として、初回通過肝臓代謝により血漿から除去されることは周知である。
X.後者は、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のアルファキサロンのこの特定の製剤では、脳に侵入する遊離非結合麻酔薬のレベルが、麻酔状態にするレベルであるがそれを超えないレベルに制御されていることを意味する;血漿の水に飽和したアルファキサロンレベルよりも多くの化合物がもはやCaptisolから放出されることはなく、したがって、毒性を引き起こすことになる、より高い血中濃度は得られない。
【0110】
この特性は、静脈麻酔薬または静脈内投与シクロデキストリンについてこれまで記載されていない。これは記載されていないかまたはこれまでに発見されていない、以下のユニークな一連の状況から生じる:
1.ユニークなホスト:ゲスト相互作用。これに対する証拠は、別のホストシクロデキストリン(AlfaxanCD−RTU;ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン−Jurox調製物)中で製剤化された同じゲスト[アルファキサロン]が、ラットにおいて、毒性に対して天井を示さず、20%の致死率をもたらすだけである(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン中のアルファキサロンの用量より75%少ない用量である19mg/kg ivの見積もりLD50を有するという事実である;
2.ゲストは、その水溶解度と等しい遊離薬物レベルで麻酔状態にする化合物である;および
3.ゲストは、遊離薬物レベルが毒性レベルよりかなり下にあるような高い治療係数を有する化合物である。
【0111】
実施例8
プレグナノロン製剤
神経刺激性ステロイド麻酔薬プレグナノロンを、0.9%生理食塩水中で13%w/vのスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(Captisol[登録商標])と混合し、プレグナノロンCDを形成させた。プレグナノロンは10mg/mlの濃度で溶解が不完全であり、アルファキサロンと異なり、4時間の連続撹拌の後にやっと溶液になった。この溶液は乳白光を発していた。この観察は、すべての神経刺激性ステロイドが、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンに同じように相互作用するとは限らないことを示す。内頚静脈内カテーテルを外科的に埋め込まれた15匹の雄性ウィスターラット(体重150〜200g)を、この実験に用い、実験では、ラットにプレグナノロンCDを静脈内注射した:2.5mg/kg(n=5);5mg/kg(n=5);および10mg/kg(n=5)。
【0112】
正向反射に基づいてラットの麻酔に関し評価し、スコアは以下のとおりとした:1 正常;2 遅い;3 若干有り;4 無し。4のスコアは、意識消失(麻酔)の状態に到達したことを意味する。2.5、5および10mg/kgのプレグナノロンを投与された3つの群のラットに対するこの試験の結果を下記の図5に示す。図示した結果は、プレグナノロンの静脈内注射後の各時点における5匹のラットすべてからの記録の平均である。
【0113】
さらに、尾ピンチ応答を用いてラットの外科麻酔に関し評価し、スコアは以下のとおりとした;1 正常;2 弱い;3 若干有り;4 無し。4のスコアは、外科麻酔に到達したことを示す。2.5、5および10mg/kgのプレグナノロンCDを投与された3つの群のラットに対するこの試験の結果を図6に示す。図示した結果は、プレグナノロンCDの静脈内注射後の各時点における5匹のラットすべてからの記録の平均である。
【0114】
プレグナノロンCDの鎮静効果から完全に回復するまでの時間を、ロータロッド走行時間を用いて評価した−正常な非鎮静ラットの高速回転ドラム上の走行は120秒である;ラットがロータロッドトレッドミル上を120秒間歩行することができたとき、ラットは完全に回復している。2.5、5および10mg/kgのプレグナノロンCDを投与された3つの群のラットに対するこの試験の結果を下記の図7に示す。図示した結果は、プレグナノロンCDの静脈内注射後の各時点における5匹のラットすべてからの記録の平均である。
【0115】
結論
プレグナノロンCDは静脈麻酔薬であるが、長時間の静脈麻酔薬である。これは静脈内注射直後に麻酔を誘導する。この効果は用量に相関し、中枢神経系を十分に抑制して、外科麻酔に導くことが可能である。
【0116】
実施例9
アルファドロン製剤
神経刺激性ステロイド麻酔薬アルファドロンを、0.9%w/v生理食塩水中で13%w/vのスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(Captisol)と混合し、アルファドロンCDを形成させた。アルファドロンは10mg/mlの濃度で完全に溶解したが、アルファキサロンと異なり、4時間の連続撹拌の後にやっと溶液になった。この観察は、すべての神経刺激性ステロイドが、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンに同じように相互作用するとは限らないことを示す。内頚静脈内カテーテルを外科的に埋め込まれた15匹の雄性ウィスターラット(体重150〜200g)を、この実験に用い、実験では、ラットにアルファドロンCDを静脈内注射した:10mg/kg(n=5);20mg/kg(n=5);および40mg/kg(n=5)。
【0117】
正向反射に基づいてラットの麻酔に関し評価し、スコアは以下のとおりとした:1 正常;2 遅い;3 若干有り;4 無し。4のスコアは、意識消失(麻酔)の状態に到達したことを意味する。10、20および40mg/kgのアルファドロンCDを投与された3つの群のラットに対するこの試験の結果を図8に示す。図示した結果は、アルファドロンの静脈内注射後の各時点における5匹のラットすべてからの記録の平均である。
【0118】
さらに、尾ピンチ応答を用いてラットの外科麻酔に関し評価し、スコアは以下のとおりとした;1 正常;2 弱い;3 若干有り;4 無し。4のスコアは、外科麻酔に到達したことを示す。10、20および40mg/kgのアルファドロンCDを投与された3つの群のラットに対するこの試験の結果を図9に示す。図示した結果は、アルファドロンCDの静脈内注射後の各時点における5匹のラットすべてからの記録の平均である。
【0119】
アルファドロンCDの鎮静効果から完全に回復するまでの時間を、ロータロッド走行時間を用いて評価した−正常な非鎮静ラットの高速回転ドラム上の走行は120秒である;ラットがロータロッドトレッドミル上を120秒間歩行することができたとき、ラットは完全に回復している。10、20および40mg/kgのアルファドロンCDを投与された3つの群のラットに対するこの試験の結果を図10に示す。図示した結果は、アルファドロンCDの静脈内注射後の各時点における5匹のラットすべてからの記録の平均である。
【0120】
結論
アルファドロンCDは短時間の静脈麻酔薬である。これは静脈内注射直後に麻酔を誘導する。この効果は用量に相関し、中枢神経系を十分に抑制して、外科麻酔に導くことが可能である。
【0121】
実施例10
アルテシンおよびプロポフォールと比較されたPhaxanCDの心血管系作用
内頚静脈内カテーテルを外科的に埋め込まれた15匹の雄性ウィスターラット(体重150〜200g)を、この実験に用い、実験では、3つの群のラットに、プロポフォール(6.6mg/kg;Diprivan 10%のIntralipidエマルジョン中に10mg/mlのプロポフォール)、アルテシン(3.28mg/kgのアルファキサロン;アルテシン 20%のCremophorELに溶解した9mg/mlのアルファキサロンと3mg/mlのアルファドロン)、またはPhaxanCD(3.23mg/kgのアルファキサロン;13%のCaptisol[(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン]に溶解した10mg/mlのアルファキサロン)のいずれかを、効力の等しいAD95麻酔用量で静脈内注射した;1群当たりn=5のラット。収縮期および拡張期の血圧をこれらの注射前後に測定した。各測定は、そのラットの麻酔前のレベルからのパーセント変化として計算した。各処置群における心血管パラメーターのそれぞれについて時間に対するパーセント変化を図11および12に示す。
【0122】
結論
アルファキサロン(アルテシン/20%CremophorEL;PhaxanCD/スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン(Captisol[登録商標]))の両方の製剤は、等効力麻酔用量のプロポフォールよりも心血管障害が少なく、一方の測定(拡張期血圧)では、アルファキサロン(PhaxanCD)のスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン製剤は、CremophorEL調製物(アルテシン[登録商標])と比較して、心血管障害が少なかった。
【0123】
実施例11
第1/2a相臨床試験
ヒトボランティアのこれらの試験では、プロポフォールおよび(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン/アルファキサロン製剤を、二重盲検方式で比較する。各ボランティアは完全設備の麻酔室の中に待機する。プロポフォールまたはアルファキサロンのいずれを投薬するかは、プロポフォールまたはアルファキサロンの選択に関する無作為化表により決定する。麻酔薬を投与するように選定された1人の麻酔専門医が、いずれの薬物をこの患者に投与するべきか知るために封筒を開く。薬物用量は、その薬物の最終使用用量に対する前の患者の応答に応じて、計算表(以下を参照のこと)から決定する−麻酔状態になったか否かは脳波の二波長指数(BIS値)の50の尺度に基づく。患者には、右手に薬物投与用の静脈内カニューレと、薬物の血中濃度測定用試料を採血するための別のカニューレとが挿入されている。その腕および麻酔薬を投与する麻酔専門医は、被験対象とも、対象に接触し対象の一般的ケアおよび生理学的モニタリングに責任がある第2の麻酔専門医ともコミュニケーションをとることはない。その腕および薬物を投与する麻酔専門医は、対象をケアする麻酔専門医ならびにそこにいる対象および麻酔看護師とはカーテンにより分離されている。薬物を注射する第1の麻酔専門医は、ベルを鳴らして麻酔薬注射の開始を知らせるだけであり、ケアする麻酔専門医は、試験が終了して対象が部屋を離れた後にBIS値が50以下になったか否かを伝えるために薬物を投与する麻酔専門医とコミュニケーションするだけである。実施する測定および評価:
・ 対象の体重(kg)。これを症例記録に記載した後、投与する麻酔専門医に渡す。
・ ケアする麻酔専門医は、注射の際の痛みを報告するように患者に依頼し、陽性か否かの報告を記載する。
・ ケアする麻酔専門医は、異常な動作の有無を記載する。4
・ 麻酔薬注射を知らせるベルの音から、伸ばした左腕の親指とその他の指との間に握った、20mlの水を負荷された注射器を患者が落とすまでの時間。
・ 麻酔薬注射を知らせるベルの音から、患者の呼びかけ応答が消失するまでの時間および呼びかけ応答が回復する時間。
・ 麻酔薬注射を知らせるベルの音から、患者の睫毛反射が消失するまでの時間および睫毛反射が回復する時間。
・ BIS値、静脈内注射後における50以下の値への到達の有無、到達した時間および持続時間。
・ 5分間は1分毎に、次の10分間は2.5分毎に、それ以降は5分毎に非侵襲的方法を用いて測定した収縮期血圧および拡張期血圧ならびに脈拍数。
・ 左耳の耳垂に置いたパルスオキシメータプローブを用いて測定した血液の酸素飽和度。酸素飽和レベルが93%未満に低下しない限り、対象には空気を呼吸させ、低下したときには、マスクおよび麻酔回路から酸素を与える。無呼吸が起こり30秒を超えて持続する場合には、呼吸を補助する。低い酸素飽和度および無呼吸の発生を記載する。
・ デジタル置換え検査での正常な成績により示される完全回復までの時間。
・ 麻酔薬注射後0.5、1.0、1.5、2、5、10、15、30および60分にアルファキサロン血中レベルの分析のために採取する血液。
・ 試験前、試験1時間後、24時間後および1週間後に採取する、以下のことを目的とした血液:
全血液学的分析。
肝機能検査。
腎機能検査。
【0124】
用量スケジュール
麻酔薬を投与する麻酔専門医が封筒を開くと、プロポフォールまたはアルファキサロンを投与するようにとの無作為化された指示がある。この対象がその薬物を投与される最初の対象である場合、対象は以下のものを投与される:プロポフォール2mg/kg;アルファキサロン0.5mg/kg。
・ その薬物を投与される次の患者に対する投薬は、その薬物を投与された最初の対象の応答に基づいて決定する。
最初の対象が50以下のBISに到達しなかった場合は、プロポフォールについては、その用量を3mg/kgとし、アルファキサロンについては、0.75mg/kgとする。
最初の対象が50以下のBISに到達した場合は、プロポフォールについては、その用量を1mg/kgとし、アルファキサロンについては、0.25mg/kgとする。
・ その後の投与は以下のとおり:
その薬剤で処置されたそれまでの対象すべてが50以下のBISに到達した場合、用量を25%減少、または
その薬剤で処置されたそれまでの対象すべてが50のBISに到達しなかった場合、用量を25%増加、または
この薬物で処置されて、50以下のBIS値に到達した対象もいれば、BIS値が50以下に低下しなかった対象もいる場合は、以下のいずれかとする:
最後の応答が50以下のBISである場合には、この薬物を投与される次の対象に対する薬物用量は、その薬物を投与された最後の対象に対する用量とその薬物を投与されかつ50以下のBISに到達しなかった最も直近の対象に投与された用量との間の中央値とする。
最後の応答が50を超えるBISである場合には、この薬物を投与される次の対象に対する薬物用量は、その薬物を投与された最後の対象に対する用量とその薬物を投与されかつ50以下のBISに到達した最も直近の対象に投与された用量との間の中央値とする。
用量範囲の変更が小さくなり、薬物の同用量±10%を投与された6人の対象が50以下のBISに到達するまで、各薬物シリーズについて後者を繰り返す。BISが麻酔レベルに到達するこれら6つの用量をまとめて、平均±sem誘導用量を計算する。
【0125】
以下の結果が予測される:
・ アルファキサロンは、1回の腕/脳循環時間で、BIS値が50未満となる全身麻酔を誘導する。
・ 誘導の質は少なくともプロポフォールと同様に良好であるが、注射痛がないという利点が加わる。
・ 「誘導用量」では、プロポフォールは、アルファキサロンに比べて、血圧低下が大きく、無呼吸発生率が増加し、かつ酸素飽和度が減少する。
・ 「誘導用量」の投与後における回復の速さおよび質はアルファキサロンがより速やかである。
・ 静脈内投与後のアルファキサロンの薬物動態は、文献中にあるアルテシン(登録商標)投与後のアルファキサロンの形と同じである。
【0126】
当業者は、本明細書において説明した本発明では具体的に説明したもの以外の変形および変更が可能であることを認識されよう。本発明は、そのような変形および変更をすべて含むことを理解されたい。本発明はまた、本明細書において言及または提示したステップ、特徴、組成物および化合物のすべてを個々にまたは集合的に、かつ前記ステップまたは特徴のうちの任意の2つ以上の任意の組合せおよびすべての組合せを包含する。
【0127】
参考文献
Atwood,Davies,MacNicol and Vogtie(Eds),Comprehensive Supramolecular Chemistry Vol 4,Pergamon:Oxford UK,1996
Child et al.,British Journal of Anaesthesia 43:2−13,1971
Davies and Morris,Pharmaceutical Research,10(7):1093−95,1993
Fromming and Szejtlic(eds),Cyclodextrins in Pharmacy,Kluwer: Dordrecht,The Netherlands,1994
Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Eaton,USA,1990
Rowe’s Handbook of Pharmaceutical Excipients,2009
Thomason,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst 14:1,1997
Uekama et al.,Chem.Rev.98:2045−2076,1998
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
麻酔薬または鎮静薬送達ホスト/ゲスト組成物であって、シクロデキストリンホストまたはその修飾形態と神経刺激性ステロイド麻酔薬ゲストとを含み、前記ホスト/ゲスト組成物が、滅菌可能であり、最小の静脈内注射痛で投与することができ、かつ5を超える治療係数を示すように製剤化されている、麻酔薬または鎮静薬送達ホスト/ゲスト組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、前記神経刺激性ステロイド麻酔薬が、アルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択されることを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物において、神経刺激性ステロイド麻酔薬とシクロデキストリンとのモル比が約1:1〜1:6であることを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の組成物において、神経刺激性ステロイド麻酔薬とシクロデキストリンとのモル比が約1:1〜約1:4であることを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の組成物において、神経刺激性ステロイド麻酔薬とシクロデキストリンとのモル比が約1:2であることを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の組成物において、抗菌薬、防腐剤、緩衝液および/またはコポリマーの1つまたは複数をさらに含むことを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物において、前記コポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(pyrollidone)およびカルボキシメチルセルロースから選択されることを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の組成物において、緩衝液が存在する場合は、そのpHは約5.5〜約8であることを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の組成物において、前記シクロデキストリンが、β−シクロデキストリンまたはその修飾形態であることを特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物において、β−シクロデキストリンの前記修飾形態が、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンまたはそのメチル化、ヒドロキシアルキル化、分岐、アルキル化、アシル化もしくはアニオン性誘導体であることを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の組成物において、前記スルホアルキルエーテルβ−シクロデキストリンが、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンであることを特徴とする組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の組成物において、アルキル化誘導体が、スルホアルキルエーテル−アルキルエーテル誘導体であることを特徴とする組成物。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の組成物において、前記シクロデキストリンが、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル−エチルエーテル、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル(平面型)、γ−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、α−シクロデキストリンスルホブチルエーテルおよびそれらのナトリウム塩から選択されることを特徴とする組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物において、前記組成物が、麻酔の迅速誘導に加え、プロポフォールと同様かそれに比較して迅速な覚醒時間をもたらすことを特徴とする組成物。
【請求項15】
麻酔薬組成物または鎮静薬組成物であって、5を超える治療係数を有する滅菌可能な組成物を生成するためにスルホアルキルエーテルデキストリンまたはその修飾形態を用いて製剤化されたアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイドを含むことを特徴とする麻酔薬組成物または鎮静薬組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の麻酔薬組成物または鎮静薬組成物において、前記神経刺激性ステロイド麻酔薬が、アルファキサロンおよび/もしくはアルファドロンまたはそれらの薬理学的に許容される、重水素化誘導体を含む誘導体、塩およびプロドラッグ形態であることを特徴とする麻酔薬組成物または鎮静薬組成物。
【請求項17】
請求項15または16に記載の麻酔薬組成物または鎮静薬組成物において、前記スルホアルキルエーテルデキストリンが、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンまたはそのアルキルエーテル誘導体であることを特徴とする麻酔薬組成物または鎮静薬組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の麻酔薬組成物または鎮静薬組成物において、前記デキストリンが、スルホブチルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンであることを特徴とする麻酔薬組成物または鎮静薬組成物。
【請求項19】
請求項15または16に記載の麻酔薬組成物または鎮静薬組成物において、前記シクロデキストリンが、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル−エチルエーテル、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル(平面型)、γ−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、α−シクロデキストリンスルホブチルエーテルおよびそれらのナトリウム塩から選択されることを特徴とする麻酔薬組成物または鎮静薬組成物。
【請求項20】
点滴または間欠的ボーラス投与により、対象において麻酔または鎮静を誘導または維持する方法であって、請求項1乃至19のいずれかに記載の組成物の麻酔有効量または鎮静有効量を投与することを含む方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記神経刺激性ステロイド麻酔薬が、アルファキサロン、アルファドロンおよび/または酢酸アルファドロンであることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、アルファキサロンおよび/またはアルファドロンが、0.25mg/kg体重〜100mg/kg体重の麻酔薬濃度で用いられることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法において、前記アルファキサロンが、0.05mg/kg体重〜10mg/kg体重の鎮静薬濃度で用いられることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項20乃至23のいずれか一項に記載の方法において、前記対象がヒトであることを特徴とする方法。
【請求項25】
対象に麻酔を誘導する医薬品の製造における、神経刺激性ステロイド麻酔薬およびシクロデキストリンまたはその修飾形態の使用であって、前記医薬品が滅菌可能であり、5を超える治療係数を有することを特徴とする使用。
【請求項26】
請求項25に記載の使用において、前記神経刺激性ステロイド麻酔薬が、アルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択されることを特徴とする使用。
【請求項27】
請求項25または26に記載の使用において、前記シクロデキストリンが、スルホアルキルエーテルデキストリンであることを特徴とする使用。
【請求項28】
請求項27に記載の使用において、前記スルホアルキルエーテルデキストリンが、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンまたはそのアルキルエーテル誘導体であることを特徴とする使用。
【請求項29】
請求項28に記載の使用において、前記デキストリンが、スルホブチルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンであることを特徴とする使用。
【請求項30】
請求項25または26に記載の方法において、前記シクロデキストリンが、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル−エチルエーテル、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル(平面型)、γ−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、α−シクロデキストリンスルホブチルエーテルおよびそれらのナトリウム塩から選択されることを特徴とする使用。
【請求項31】
点滴または間欠的ボーラス投与により、ヒト対象において鎮静を誘導または維持する方法であって、スルホアルキルエーテルデキストリンまたはその修飾形態で製剤化されたアルファキサロン、アルファドロンならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩およびプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド麻酔薬の鎮静有効量を前記対象に投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法において、前記スルホアルキルエーテルデキストリンが、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンまたはそのアルキルエーテル誘導体であることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法において、前記デキストリンが、スルホブチルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンであることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項31に記載の方法において、前記スルホアルキルエーテルデキストリンが、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル−エチルエーテル、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル(平面型)、γ−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、α−シクロデキストリンスルホブチルエーテルおよびそれらのナトリウム塩から選択されることを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項25に記載の使用または請求項31に記載の方法において、前記対象がヒトであることを特徴とする使用または方法。
【請求項1】
麻酔薬または鎮静薬送達ホスト/ゲスト組成物であって、シクロデキストリンホストまたはその修飾形態と神経刺激性ステロイド麻酔薬ゲストとを含み、前記ホスト/ゲスト組成物が、滅菌可能であり、最小の静脈内注射痛で投与することができ、かつ5を超える治療係数を示すように製剤化されている、麻酔薬または鎮静薬送達ホスト/ゲスト組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、前記神経刺激性ステロイド麻酔薬が、アルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択されることを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物において、神経刺激性ステロイド麻酔薬とシクロデキストリンとのモル比が約1:1〜1:6であることを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の組成物において、神経刺激性ステロイド麻酔薬とシクロデキストリンとのモル比が約1:1〜約1:4であることを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の組成物において、神経刺激性ステロイド麻酔薬とシクロデキストリンとのモル比が約1:2であることを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の組成物において、抗菌薬、防腐剤、緩衝液および/またはコポリマーの1つまたは複数をさらに含むことを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物において、前記コポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(pyrollidone)およびカルボキシメチルセルロースから選択されることを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の組成物において、緩衝液が存在する場合は、そのpHは約5.5〜約8であることを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の組成物において、前記シクロデキストリンが、β−シクロデキストリンまたはその修飾形態であることを特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物において、β−シクロデキストリンの前記修飾形態が、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンまたはそのメチル化、ヒドロキシアルキル化、分岐、アルキル化、アシル化もしくはアニオン性誘導体であることを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の組成物において、前記スルホアルキルエーテルβ−シクロデキストリンが、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンであることを特徴とする組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の組成物において、アルキル化誘導体が、スルホアルキルエーテル−アルキルエーテル誘導体であることを特徴とする組成物。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の組成物において、前記シクロデキストリンが、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル−エチルエーテル、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル(平面型)、γ−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、α−シクロデキストリンスルホブチルエーテルおよびそれらのナトリウム塩から選択されることを特徴とする組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物において、前記組成物が、麻酔の迅速誘導に加え、プロポフォールと同様かそれに比較して迅速な覚醒時間をもたらすことを特徴とする組成物。
【請求項15】
麻酔薬組成物または鎮静薬組成物であって、5を超える治療係数を有する滅菌可能な組成物を生成するためにスルホアルキルエーテルデキストリンまたはその修飾形態を用いて製剤化されたアルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイドを含むことを特徴とする麻酔薬組成物または鎮静薬組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の麻酔薬組成物または鎮静薬組成物において、前記神経刺激性ステロイド麻酔薬が、アルファキサロンおよび/もしくはアルファドロンまたはそれらの薬理学的に許容される、重水素化誘導体を含む誘導体、塩およびプロドラッグ形態であることを特徴とする麻酔薬組成物または鎮静薬組成物。
【請求項17】
請求項15または16に記載の麻酔薬組成物または鎮静薬組成物において、前記スルホアルキルエーテルデキストリンが、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンまたはそのアルキルエーテル誘導体であることを特徴とする麻酔薬組成物または鎮静薬組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の麻酔薬組成物または鎮静薬組成物において、前記デキストリンが、スルホブチルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンであることを特徴とする麻酔薬組成物または鎮静薬組成物。
【請求項19】
請求項15または16に記載の麻酔薬組成物または鎮静薬組成物において、前記シクロデキストリンが、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル−エチルエーテル、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル(平面型)、γ−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、α−シクロデキストリンスルホブチルエーテルおよびそれらのナトリウム塩から選択されることを特徴とする麻酔薬組成物または鎮静薬組成物。
【請求項20】
点滴または間欠的ボーラス投与により、対象において麻酔または鎮静を誘導または維持する方法であって、請求項1乃至19のいずれかに記載の組成物の麻酔有効量または鎮静有効量を投与することを含む方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記神経刺激性ステロイド麻酔薬が、アルファキサロン、アルファドロンおよび/または酢酸アルファドロンであることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、アルファキサロンおよび/またはアルファドロンが、0.25mg/kg体重〜100mg/kg体重の麻酔薬濃度で用いられることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法において、前記アルファキサロンが、0.05mg/kg体重〜10mg/kg体重の鎮静薬濃度で用いられることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項20乃至23のいずれか一項に記載の方法において、前記対象がヒトであることを特徴とする方法。
【請求項25】
対象に麻酔を誘導する医薬品の製造における、神経刺激性ステロイド麻酔薬およびシクロデキストリンまたはその修飾形態の使用であって、前記医薬品が滅菌可能であり、5を超える治療係数を有することを特徴とする使用。
【請求項26】
請求項25に記載の使用において、前記神経刺激性ステロイド麻酔薬が、アルファキサロン、アルファドロン、アセブロコール、アロプレグナノロン、エルタノロン(プレグナノロン)、ガナキソロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、Org20599、Org21465およびテトラヒドロデオキシコルチコステロン、ならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩またはプロドラッグ形態から選択されることを特徴とする使用。
【請求項27】
請求項25または26に記載の使用において、前記シクロデキストリンが、スルホアルキルエーテルデキストリンであることを特徴とする使用。
【請求項28】
請求項27に記載の使用において、前記スルホアルキルエーテルデキストリンが、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンまたはそのアルキルエーテル誘導体であることを特徴とする使用。
【請求項29】
請求項28に記載の使用において、前記デキストリンが、スルホブチルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンであることを特徴とする使用。
【請求項30】
請求項25または26に記載の方法において、前記シクロデキストリンが、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル−エチルエーテル、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル(平面型)、γ−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、α−シクロデキストリンスルホブチルエーテルおよびそれらのナトリウム塩から選択されることを特徴とする使用。
【請求項31】
点滴または間欠的ボーラス投与により、ヒト対象において鎮静を誘導または維持する方法であって、スルホアルキルエーテルデキストリンまたはその修飾形態で製剤化されたアルファキサロン、アルファドロンならびにそれらの薬理学的に許容される誘導体、塩およびプロドラッグ形態から選択される神経刺激性ステロイド麻酔薬の鎮静有効量を前記対象に投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法において、前記スルホアルキルエーテルデキストリンが、(7)スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンまたはそのアルキルエーテル誘導体であることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法において、前記デキストリンが、スルホブチルエーテル−アルキルエーテルシクロデキストリンであることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項31に記載の方法において、前記スルホアルキルエーテルデキストリンが、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル−エチルエーテル、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル(平面型)、γ−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、α−シクロデキストリンスルホブチルエーテルおよびそれらのナトリウム塩から選択されることを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項25に記載の使用または請求項31に記載の方法において、前記対象がヒトであることを特徴とする使用または方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2013−517299(P2013−517299A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549208(P2012−549208)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【国際出願番号】PCT/AU2011/000050
【国際公開番号】WO2011/088503
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(512184744)グッドチャイルド インベストメンツ プロプライエタリー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】GOODCHILD INVESTMENTS PTY LTD
【出願人】(511071511)モナッシュ ユニバーシティ (2)
【氏名又は名称原語表記】MONASH UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【国際出願番号】PCT/AU2011/000050
【国際公開番号】WO2011/088503
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(512184744)グッドチャイルド インベストメンツ プロプライエタリー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】GOODCHILD INVESTMENTS PTY LTD
【出願人】(511071511)モナッシュ ユニバーシティ (2)
【氏名又は名称原語表記】MONASH UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
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