説明

黄変防止用エマルション

【課題】紙、繊維、プラスチック等の分野、特に紙分野での黄変を防止するヒンダードアミン系光安定剤及び/又は紫外線吸収剤のエマルション提供すること。
【課題を解決するための手段】乳化剤として、1種以上の平均分子量800乃至20000の非イオン系界面活性剤を含有し、固形分20乃至70%であり、平均粒子径1μm以下である、1種以上のヒンダードアミン系光安定剤及び/又は1種以上の紫外線吸収剤の黄変防用止エマルションである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化剤として、1種以上の平均分子量800乃至20000の非イオン系界面活性剤を含有し、固形分20乃至70%であり、平均粒子径1μm以下である、1種以上のヒンダードアミン系光安定剤及び1種以上の紫外線吸収剤;1種以上のヒンダードアミン系光安定剤;又は1種以上の紫外線吸収剤の黄変防用止エマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から紙、繊維、プラスチック等の分野では、長期間の保存における黄変が長い間問題であった。
紙分野では、リグニンが主な原因成分であり、例えば、特許文献1では、リグニンに富む厚紙シートの黄変を遅延させるために紫外線吸収剤及び又はヒンダードアミン系光安定剤を含むワニスが記載されている。特許文献2では、漂白されたパルプシートからなるウエットティシュでは乾燥による残留リグニンの特定部分への濃縮によって黄変が起こると考えられており、ポリエチレングリコールを含有することで効果的に黄変が抑制・防止されることが記載されている。特許文献3では、漂白されたパルプシートからなるウエットティシュでは、パルプに残留するセルロースやヘミセルロースから派生した糖質物質(二糖類)の混合物が空気酸化を受けて変質し、着色基を生成して黄変が生じると推察し、乳酸ナトリウム又は塩化カルシウムを含有することによって黄変が防止されることが記載されている。特許文献4では、低ニップ・高温・高速でソフトカレンダー処理して嵩高で不透明度に優れながら黄変化による変色の少ない塗工紙の製造方法が開示されている。特許文献5では、樹脂配合用繊維材料として、紙を使用した環境配慮型樹脂組成物が記載されており、水が樹脂組成や成形物にかかると、その部分が局部的に黄変するし、この着色成分が紙に由来することが記載されている。
【0003】
また、繊維、プラスチックの分野においては、特許文献6では、黄変防止のポリアミド繊維構造物及びその製造法が記載されており、ポリアミド系繊維の黄変には末端アミノ基が関与しており、酸無水物で処理することにより末端アミノ基を減少させ、黄変を防止することが記載されている。
特許文献7では、ポリウレタン組成物およびポリウレタン弾性糸にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及び金属不活性剤を含有することによって黄変を防止することが記載されている。特許文献8では、軟質ポリウレタンフォームに酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤の1種又は2種以上を含有することによってNOxガスによっても黄変し難くなることが記載されている。
【0004】
しかしながら、黄変を防止するため、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤等をエマルション化した黄変防止用エマルションを記載した特許文献等は見当たらない。
【特許文献1】特開2006−240734号公報
【特許文献2】特開2006−35002号公報
【特許文献3】特開平9−70372号公報
【特許文献4】特開2006−37257号公報
【特許文献5】特開2006−265348号公報
【特許文献6】特開2002−138367号公報
【特許文献7】特開2000−169700号公報
【特許文献8】特開2002−97245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、紙、繊維、プラスチック等の分野、特に、紙分野において使用される、1種以上のヒンダードアミン系光安定剤及び1種以上の紫外線吸収剤;1種以上のヒンダードアミン系光安定剤;又は1種以上の紫外線吸収剤(以下、「1種以上のヒンダードアミン系光安定剤及び/又は1種以上の紫外線吸収剤」ともいう。)の黄変防止用エマルション提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、紙等分野での上記の課題を解決するためには、ヒンダードアミン系光安定剤及び/又は紫外線吸収剤のエマルションが出来れば、その乳剤水溶液を紙上に均一に分散させることでき、黄変防止効果を発揮すると考え、その適切なエマルションを見出すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の乳化剤として、平均分子量800乃至20000の非イオン系界面活性、好適には、ジスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物型の非イオン系界面活性剤、プルロニック型の非イオン系界面活性剤及びポリオキシエチレン高級アルキルエーテル型の非イオン系界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上を含有させることにより、ヒンダードアミン系光安定剤及び/又は紫外線吸収剤の適切なエマルションを得ることができ、そのエマルションが黄変防止効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)乳化剤として、1種以上の平均分子量800乃至20000の非イオン系界面活性剤を含有し、固形分20乃至70%であり、平均粒子径1μm以下である、1種以上のヒンダードアミン系光安定剤及び1種以上の紫外線吸収剤;1種以上のヒンダードアミン系光安定剤;又は1種以上の紫外線吸収剤の黄変防止用エマルション、
(2)1種以上の非イオン系界面活性剤がジスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物型の非イオン系界面活性剤、プルロニック型の非イオン系界面活性剤及びポリオキシエチレン高級アルキルエーテル型の非イオン系界面活性剤からなる群から選ばれる、(1)項記載の黄変防止用エマルション、
(3)1種以上のヒンダードアミン系光安定剤がビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及びビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートからなる群から選ばれ、1種以上の紫外線吸収剤が2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(3、5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(3、5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、及びC7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートからなる群から選ばれる、(1)又は(2)項記載の黄変防止用エマルション、
(4)1種以上のヒンダードアミン系光安定剤がビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及び1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンからなる群から選ばれ、1種以上の紫外線吸収剤がC7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートである、(1)又は(2)項記載の黄変防止用エマルション、
(5)乳化剤として、1種以上の分子量800乃至2000のポリオキシエチレン高級アルキルエーテル型の非イオン系界面活性剤を含有し、1種以上のヒンダードアミン系光安定剤がビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートであり、1種以上の紫外線吸収剤がC7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートである、(1)項記載の黄変防止用エマルション、
(6)エマルションが、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートのエマルションである、(5)項記載の黄変防止用エマルション、
(7)乳化剤として、1種以上の分子量1000乃至6000のジスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物型の非イオン系界面活性剤及び1種以上の分子量6000乃至20000のプルロニック型の非イオン系界面活性剤からなる群から選ばれる非イオン系界面活性剤を含有し、1種以上のヒンダードアミン系光安定剤が1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンであり、1種以上の紫外線吸収剤がC7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートである、(1)項記載の黄変防止用エマルション、
(8)(1)乃至(7)項記載の黄変防止用エマルションを0.1乃至1.0%含有する紙基材。
(9)紙基材が中質紙、上質紙、再生紙及び塗工紙からなる群から選ばれる、(8)項記載の紙基材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のヒンダードアミン系光安定剤及び/又は紫外線吸収剤の黄変防止用エマルションは、紙、繊維、プラスチック等の分野、特に紙分野での黄変を防止する効果に優れており、中質紙、上質紙、再生紙、塗工紙等の紙基材にポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂をフィルムやシートに用いたものやウレタン粘着剤層を設けた印刷物表示体、包装材料、厚紙材料等の黄変防止に優れており、特に書籍、野外にて使用されるポスター、ステッカー、ラベル等の印刷物表示体の黄変防止に有用である。更に、本発明の黄変防止用エマルションは、ヒンダードアミン系光安定剤及び/又は紫外線吸収剤を含むので、各種プラスチックへの添加剤としても用いることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いられるヒンダードアミン系光安定剤は、ヒンダードアミン系光安定剤であれば特に制限はないが、例えば、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等であり得、好適には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン又はビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートであり、特に好適には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート又は1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである。
【0010】
本発明に用いられる紫外線吸収剤は、例えば、ベンゾトリアゾ−ル系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系等であり得、好適には、ベンゾトリアゾ−ル系である。
ベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤は、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H-ベンゾトリアゾ−ル、2−(3、5−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H-ベンゾトリアゾ−ル、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(3、5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(3、5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、C7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート等であり得、好適には、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(3、5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(3、5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル又はC7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートであり、特に好適には、C7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートである。
【0011】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤は、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルフォン酸3水和物、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン等であり得、好適には、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン又は2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノンであり、特に好適には、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノンである。
【0012】
ベンゾエート系紫外線吸収剤は、例えば、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等であり得る。
【0013】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤は、例えば、2’−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等であり得る。
上記の紫外線吸収剤は、お互いに併用することが出来る。
【0014】
本発明に用いられる非イオン系界面活性剤(平均分子量800乃至20000を有する)は、例えば、スチレレン化フェノール及び又はスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物型の非イオン系界面活性剤、プルロニック型の非イオン系界面活性剤、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル型の非イオン系界面活性剤等であり得る。
スチレレン化フェノール及び又はスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物型の非イオン系界面活性剤は、モノ、ジ,トリ−スチレン化フェノール及び又はモノ、ジ,トリ−スチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物を含む。スチレン化フェノール及び/又はスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物型の非イオン系界面活性剤は、好適には、ジスチレン化フェノール及び/又はジスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物であり、特に好適には、ジスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物である。更に、ジスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物型の非イオン系界面活性剤は、好適には、ジスチレン化m−又はp−クレゾール及びそれらの混合物にエチレンオキシドを付加したものであり、ジスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加体が70重量%以上の主成分であれば、モノスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加体及び/又はトリスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加体が混在しても良い。ジスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加モル数は,平均分子量が本発明の範囲であれば特に制限はないが、好適には、10乃至150モルであり、特に好適には、20モル乃至100モルであり、平均分子量が1000乃至6000である。
【0015】
プルロニック型の非イオン系界面活性剤は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドのブロック重合体で平均分子量が本発明の範囲であれば特に制限はないが、好適には、ポリエチレンオキシ基の平均鎖長25乃至250、ポリプロピレンオキシ基の平均鎖長10乃至100及びポリエチレンオキシ基の平均鎖長25乃至250であり、特に好適には、ポリエチレンオキシ基の平均鎖長60乃至200、ポリプロピレンオキシ基の平均鎖長20乃至70及びポリエチレンオキシ基の平均鎖長60乃至200であり、平均分子量6000乃至20000である。
【0016】
ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル型の非イオン系界面活性剤は1種以上の炭素数8乃至18の高級アルコールにエチレンオキシドを付加させたもので、エチレンオキシド付加モル数は平均分子量が本発明の範囲であれば特に制限はないが、好適には、15乃至100であり、特に好適には、15乃至50である。高級アルコールのエチレンオキシド付加体は、好適には、1種以上の炭素数10乃至18の高級アルコールのエチレンオキシド付加体であり、特に好適には、デシルアルコールとセチルアルコールの混合物のエチレンオキシド付加体で平均分子量が800乃至2000である。
【0017】
エマルションの製造方法は、ヒンダードアミン系光安定剤の種類及び/又は紫外線吸収剤の種類によって異なるが、乳化剤として、1種以上の平均分子量800乃至20000の非イオン系界面活性剤を含有させることによって達成される。乳化機は、特に制限はないが、好適には、通常市販されているTKコンビミックス(特殊機化工業(株)製)又はウルトラタラックスT25(18N)(IKA社製)である。ヒンダードアミン系光安定剤及び/又は紫外線吸収剤の一方若しくは両者が液状の場合、非イオン性界面活性剤を添加し、乳化機を用いて攪拌し、均一に混合する。次いで水を添加し、転相乳化を行なって目的のエマルションを得る。ヒンダードアミン系光安定剤及び/又は紫外線吸収剤の一方又は両者が粉末若しくは結晶の場合、溶剤を用いて均一化する。非イオン性界面活性剤及び水を添加し、乳化機で攪拌しエマルションを得る。このエマルションを脱溶剤化し、水による固形分調整を行ない、目的のエマルシヨンを得る。用いられる溶剤は、特に制限はないが、好適には、脱溶剤化しやすい溶剤であり、例えば、ベンゼン,トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグライム類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、アセトニトリル等のニトリル類がであり得、好適には、ベンゼン,トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類である。固形分は添加する水の量に依存するが、通常、固形分20乃至70%であり、好適には、25乃至70%である。粒子径は乳化機の攪拌回転数と関係しており、平均粒子径が1μm以下のエマルション(好適には、0.34μm乃至0.75μmのエマルション)が出来る回転数であれば特に制限はないが、通常500乃至20000rpmであり、好適には、1000乃至18000rpmである。
【0018】
適切なエマルションを製造する際、ヒンダードアミン系光安定剤及び/又は紫外線吸収剤と乳化剤である非イオン性界面活性剤の組み合せは、特に制限はないが、好適には、ヒンダードアミン系光安定剤がビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートであり、紫外線吸収剤がC7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート(商品名:TINUVIN(登録商標)384−2、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)である場合、乳化剤として、分子量800乃至2000のポリオキシエチレン高級アルキルエーテル型の非イオン系界面活性剤を用いて、転相乳化により、エマルションが製造され、特に好適には、デシルアルコールとセチルアルコールの混合物のエチレンオキシド付加体で平均分子量が800乃至2000の非イオン系界面活性剤を用いて、転相乳化により、エマルションが製造される。
【0019】
また、ヒンダードアミン系光安定剤が1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンであり、紫外線吸収剤がC7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート(商品名:TINUVIN(登録商標)384−2、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)である場合、好適には、乳化剤として、ジスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物型の非イオン系界面活性剤とプルロニック型の非イオン系界面活性剤の組み合せを用いて、エマルションが製造され、特に好適には、分子量1000乃至6000のジスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物型の非イオン系界面活性剤と分子量6000乃至20000のプルロニック型の非イオン系界面活性剤を用いて、エマルションが製造される。
【0020】
このようにして得られたエマルションは紙分野、繊維分野、プラスチック分野及びこれらを複合した分野等広い分野にわたって用いることができるが、特に好適には、紙分野である。
【0021】
紙分野、例えば、中質原紙、上質原紙、再生紙、塗工紙等に、本発明のエマルションを添加する場合、1種以上の蛍光増白剤を含んでも良く、その含有量(重量)は、例えば、塗工液中のクレイ・炭酸カルシウム重量に対して、0.05乃至0.5重量%であり、好適には、0.1乃至0.3重量%であり、特に好適には、0.1重量%である。表面被覆は、炭酸カルシウム及び/又はクレイ、特にカオリンを含んでも良いが、通常、炭酸カルシウム/クレイの割合は、30乃至80重量%/70乃至20重量%であり、好適には、炭酸カルシウム/カオリンクレイの割合は、40乃至60重量%/60乃至40重量%である。又、表面被覆は、その結合力を改良するためバインダー、特に,澱粉を含んでも良い。その澱粉は、例えば、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉(HES)等であり得、好適には、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉(HES)である。澱粉の含有量は、クレイ・炭酸カルシウム重量に対して、通常1乃至15重量%であり、好適には、3乃至7重量%である。表面被覆剤として、ポリビニルアルコール(PVA)又はラテックス(Latex)を配合することが出来る。ポリビニルアルコールの配合量は、クレイ・炭酸カルシウム重量に対して、通常0.5乃至4重量%であり、好適には、1乃至2重量%であり、ラテックスの配合量は、クレイ・炭酸カルシウム重量に対して、通常5乃至20重量%であり、好適には8乃至15重量%である。
本発明のエマルションは、好適には、表面被覆する前若しくは表面被覆剤を混合した後、紙に塗工する。エマルションの添加量(固形分換算)は、クレイ・炭酸カルシウム重量に対して、通常、0.05乃至4重量%であり、好適には、0.1乃至2重量%であり、さらに好適には、0.1乃至1重量%である。
【0022】
紙基材にポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂をフィルムやシートに用いたものやウレタン粘着剤層を設けた印刷物表示体、包装材料、厚紙材料等の複合材料への添加する場合、好適には、紙基材に予め紙分野で前述した添加方法で本発明のエマルションを添加し、塗工する。
【0023】
雑誌、グラビア等の分野において、紙厚が厚く、嵩高で、不透明度の高い、より高級感のある光沢紙は嵩高な塗工紙を用いており、塗工紙は、一般的に、クレーや炭酸カルシウムなどの顔料と接着剤を含む塗工液を、ロール塗工装置やブレード塗工装置を用いて、基紙に塗工した後、乾燥し、その後、塗工面をカレンダー処理して製造されている。塗工液の接着剤は、澱粉及びスチレン,ブタジエン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどから成っており、有効な黄変防止効果を得るためには、本発明のエマルション(固形分換算)を、クレイ・炭酸カルシウム重量に対して、好適には、0.05乃至4重量%添加し、さらに好適には、0.1乃至2重量%添加し、特に好適には、0.1乃至1重量%添加する。
【0024】
本発明のエマルションは、中質紙、上質紙、再生紙、塗工紙、光沢紙等の紙基材にポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂をフィルムやシートに用いたものやウレタン粘着剤層を設けた印刷物表示体、包装材料等、特に書籍、野外にて使用されるポスター、ステッカー、ラベルなどの印刷物表示体等の黄変防止に有用である。
【0025】
紙以外の分野では、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、生分解性プラスチック、アクリル系樹脂などに本発明のエマルションを成形時に添加することができるが、好適には、水系の乳化重合などによって製造される樹脂の乳化重合時に、本発明のエマルションを添加する。本発明のエマルションの添加量(固形分換算)は、モノマーの総重量に対して、通常、0.05乃至4重量%であり、好適には、0.1乃至2重量%である。
【0026】
塗料には、有機溶剤を用いる塗料と水系塗料に分けられるが、特に、水系塗料に、本発明のエマルションを添加することができる。本発明のエマルションの添加量(固形分換算)は、溶剤以外の成分に対して、通常0.05乃至4重量%であり、好適には、0.1乃至2重量%である。
【0027】
インキ、染料、特に水系インキ及び染料に本発明のエマルションを添加することができる。本発明のエマルションの添加量(固形分換算)は、溶剤以外の成分に対して、通常0.05乃至4重量%であり、好適には、0.1乃至2重量%である。
【0028】
その他必要に応じて、本発明のエマルションと造核剤、可塑剤、充填剤、増強剤、帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、防カビ剤、殺菌剤等の加工剤と併用することができる。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明の実施例、比較例及び試験例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
実施例1
1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンのエマルション
1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン50g及びトルエン50gを60℃に加温し、光安定剤の均一溶液を得た。一方、ジスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物(ポリオキシエチレン基の平均鎖長35、平均分子量1870、HLB16.6)5gとエチレンオキシド−プロピレンオキシド−エチレンオキシドブロック共重合体(プルロニック型、ポリオキシエチレン基の平均鎖長175、ポリオキシプロピレン基の平均鎖長68、ポリオキシエチレン基の平均鎖長175、平均分子量19000、HLB16)1gにイオン交換水94gを加え、均一化した乳化剤水溶液を得た。光安定剤の均一溶液と乳化剤水溶液を混合し、ウルトラタラックスT25(18N)(IKA社製)で、18000rpmで10分間攪拌し、トルエン含有のエマルションを得た。このエマルションを脱トルエン化し、イオン交換水による固形分調整を行ない、目的のエマルション(固形分25%、平均粒子径0.75μm)224gを得た。
【0031】
実施例2
1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとC7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート(商品名:TINUVIN(登録商標)384−2、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)(重量比3:1)のエマルション
1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン45gとC7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート(商品名:TINUVIN(登録商標)384−2、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)15g及びトルエン35gを60℃に加温し、光安定剤と紫外線吸収剤の均一溶液を得た。一方、ジスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物(ポリオキシエチレン基の平均鎖長61、平均分子量3010、HLB17.9)9gとエチレンオキシド−プロピレンオキシド−エチレンオキシドブロック共重合体(プルロニック型、ポリオキシエチレン基の平均鎖長175、ポリオキシプロピレン基の平均鎖長68、ポリオキシエチレン基の平均鎖長175、平均分子量19000、HLB16)1.8gにイオン交換水88gを加え、均一化した乳化剤水溶液を得た。光安定剤及び紫外線吸収剤の均一溶液と乳化剤水溶液を混合し、ウルトラタラックスT25(18N)(IKA社製)で、18000rpmで10分間攪拌し、トルエン含有のエマルションを得た。このエマルションを脱トルエン化し、イオン交換水による固形分調整を行ない、目的のエマルション(固形分25%、平均粒子径0.34μm)283gを得た。
【0032】
実施例3
1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとC7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート(商品名:TINUVIN(登録商標)384−2、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)(重量比1:1)のエマルション
1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン30gとC7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート(商品名:TINUVIN(登録商標)384−2、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)30g及びトルエン20gを60℃に加温し、光安定剤と紫外線吸収剤の均一溶液を得た。一方、ジスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物(ポリオキシエチレン基の平均鎖長61、平均分子量3010、HLB17.9)4.5g、ジスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物(ポリオキシエチレン基の平均鎖長123、平均分子量5730、HLB18.9)4.5gとエチレンオキシド−プロピレンオキシド−エチレンオキシドブロック共重合体(プルロニック型、ポリオキシエチレン基の平均鎖長175、ポリオキシプロピレン基の平均鎖長68、ポリオキシエチレン基の平均鎖長175、平均分子量19000、HLB16)1.8gにイオン交換水70gを加え、均一化した乳化剤水溶液を得た。光安定剤及び紫外線吸収剤の均一溶液と乳化剤水溶液を混合し、ウルトラタラックスT25(18N)(IKA社製)で、18000rpmで10分間攪拌し、トルエン含有のエマルションを得た。このエマルションを脱トルエン化し、イオン交換水による固形分調整を行ない、目的のエマルション(固形分25%、平均粒子径0.36μm)283gを得た。
【0033】
実施例4
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートのエマルション
TKコンビミックス乳化機(特殊機化工業(株)製)にビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート2200gとポリオキシエチレンデシル/セチルエーテル(ポリオキシエチレン基の平均鎖長13.4、平均分子量870、HLB13.6)220gを仕込み、アンカー羽根の回転数150rpmで5分間攪拌し、均一に混合した。攪拌を止め、イオン交換水330gを乳化機に加え、アンカー羽根の回転数150rpmで5分間攪拌後、アンカー羽根の回転数150rpm並びにディスパー羽根の回転数5000rpmの条件で10分間攪拌し、転相乳化を行なった。転相乳化後、アンカー羽根の回転数100rpm並びにディスパー羽根の回転数1000rpmに回転数を落し、イオン交換水973gを徐々に加えて固形分を調整し、目的のエマルション(固形分65%、平均粒子径0.64μm)3723gを得た。
【0034】
実施例5
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとC7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート(商品名:TINUVIN(登録商標)384−2、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)(重量比3:1)のエマルション
TKコンビミックス乳化機(特殊機化工業(株)製)にビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート120g、C7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート(商品名:TINUVIN(登録商標)384−2、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)40gとポリオキシエチレンデシル/セチルエーテル(ポリオキシエチレン基の平均鎖長13.4、平均分子量870、HLB13.6)16gを仕込み、ディスパー羽根の回転数1000rpmで3分間攪拌し、均一に混合した。攪拌を止め、イオン交換水24gを乳化機に加え、ディスパー羽根の回転数3000rpmで10分間攪拌し、転相乳化を行なった。転相乳化後、ディスパー羽根の回転数1000rpmに回転数を落し、イオン交換水70gを徐々に加えて固形分を調整し、目的のエマルション(固形分69.2%、平均粒子径0.37μm)230gを得た。
【0035】
実施例6
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとC7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート(商品名:TINUVIN(登録商標)384−2、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)(重量比1:1)のエマルション
TKコンビミックス乳化機(特殊機化工業(株)製)にビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート80g、C7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート(商品名:TINUVIN(登録商標)384−2、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)80gとポリオキシエチレンデシル/セチルエーテル(ポリオキシエチレン基の平均鎖長13.4、平均分子量870、HLB13.6)16gを仕込み、ディスパー羽根の回転数1000rpmで3分間攪拌し、均一に混合した。攪拌を止め、イオン交換水24gを乳化機に加え、ディスパー羽根の回転数3000rpmで10分間攪拌し、転相乳化を行なった。転相乳化後、ディスパー羽根の回転数1000rpmに回転数を落し、イオン交換水70gを徐々に加えて固形分を調整し、目的のエマルション(固形分68.3%、平均粒子径0.42μm)270gを得た。
【0036】
試験例1
実施例1及び実施例4で得られたエマルション0.1重量%及び配合材料としてポリビニルアルコール(PVA)1.0%を50%カオリン及び50%炭酸カルシュウムのベース混合物に添加し、更にベース混合物換算で0.1%の蛍光染料を添加した塗工液を調製し、巻き線メイヤーバーにて、塗工量12.0〜12.7g/mで中質原紙及び上質原紙表面に手塗り塗工を行ない(なお、実施例1で得られたエマルションは、上質原紙表面のみに手塗り塗工を行なった)、試験用サンプル紙を作製した。ブランクとして非塗工の中質原紙及び上質原紙のみを、比較例として中質原紙又は上質原紙にエマルションを添加せず、他は同様に調製した1.0%PVA配合塗工液を同様に塗工して比較用サンプル紙として作製した。
これらのブランク、試験用及び比較用サンプル紙を耐光性試験機としてXENON WEATHER O−METER(Ci−65)(アトラス社製)を用いて温度:Black Panel Temperature 63℃、槽内45℃、湿度:50%、照射強度:0.39W/m(340nm)、Outer filter:ボロシリケイトで10時間照射した。評価は分光測色計:CM−3700d(ミノルタ(株)製)を用いて行なった。
【0037】
試験例2
実施例1及び実施例4で得られたエマルション0.1重量%を50%カオリン及び50%炭酸カルシウムのベース混合物に添加した。更にベース混合物換算で0.1%の蛍光染料、4.0%のヒドロキシエチルエーテル化澱粉(HES)、11.0%のラテックス(Latex:SBRラテックス)、0.5%のワックス(ステアリン酸カルシュウム)を配合し、均一になるよう混合調製し、塗工液を作製した。この塗工液を上質原紙表面に13.0〜16.8g/mになるよう巻き線メイヤーバーで手塗り塗工し、Latex配合試験用サンプル紙を作製した。同様に比較例としてエマルションの入らない比較用サンプルを作製した。これらのサンプル紙を試験例1と同様に耐光性試験機としてXENON WEATHER O−METER(Ci−65)(アトラス社製)を用いて温度:Black Panel Temperature 63℃、槽内45℃、湿度:50%、照射強度:0.39W/m(340nm)、Out filter:ボロシリケイトで10時間照射した。評価は分光測色計:CM−3700d(ミノルタ(株)製)を用いて行なった。
【0038】
試験例3
実施例2及び実施例6で得られたエマルション、それぞれ、1.0及び0.5重量%を50%カオリン及び50%炭酸カルシュウムのベース混合物に添加した。更にベース混合物換算で0.1%の蛍光染料を添加し、4.0%のヒドロキシエチルエーテル化澱粉(HES)、11.0%のラテックス(Latex:SBRラテックス)、0.5%のワックス(ステアリン酸カルシュウム)を配合し、均一になるよう混合調製し、塗工液を作製した。同様に巻き線メイヤーバーにて、塗工量15.2〜16.2g/mで上質原紙表面に手塗り塗工を行ない、試験用サンプル紙を作製した。同様に比較例としてエマルションの入らない比較用サンプルを作製した。試験用サンプル紙を耐光性試験機としてXENON WEATHER O−METER(Ci−65)(アトラス社製)を用いて温度:Black Panel Temperature 63℃、槽内45℃、湿度:50%、照射強度:0.39W/m(340nm)、Out filter:ソーダーラムで10時間照射した。評価は分光測色計:CM−3700d(ミノルタ(株)製)を用いて行なった。
【0039】
比較例及び試験例の塗工液の配合を表1に示す。
【表1】


塗工液は水を加えて固形分濃度が55%になるように調製した。塗工原紙は25cm幅X60cm長さの上質紙(83g/m)又は中質紙(44g/m)を使用した。耐光性試験は20mm幅X40mm長さのサンプル紙を使用した。
また、「部」は、重量部を示す。
【0040】
耐光性試験評価
試験例1、試験例2及び試験例3で得られた10時間後の色差(ΔE*)及び色度(Δb*)を表2に示す。表2に示すように、実施例のエマルションは明確に色差(ΔE*)及び色度(Δb*)において優れた黄色変防止効果を示した。
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のヒンダードアミン系光安定剤及び/又は紫外線吸収剤の黄変防止用エマルションは、紙、繊維、プラスチック等の分野、特に紙分野での黄変を防止する効果に優れており、紙、繊維、プラスチック等の黄変防止剤として使用出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化剤として、1種以上の平均分子量800乃至20000の非イオン系界面活性剤を含有し、固形分20乃至70%であり、平均粒子径1μm以下である、1種以上のヒンダードアミン系光安定剤及び1種以上の紫外線吸収剤;1種以上のヒンダードアミン系光安定剤;又は1種以上の紫外線吸収剤の黄変防用止エマルション。
【請求項2】
1種以上の非イオン系界面活性剤がジスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物型の非イオン系界面活性剤、プルロニック型の非イオン系界面活性剤及びポリオキシエチレン高級アルキルエーテル型の非イオン系界面活性剤からなる群から選ばれる、請求項1記載の黄変防止用エマルション。
【請求項3】
1種以上のヒンダードアミン系光安定剤がビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及びビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートからなる群から選ばれ、1種以上の紫外線吸収剤が2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(3、5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(3、5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル、及びC7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートからなる群から選ばれる、請求項1又は2記載の黄変防止用エマルション。
【請求項4】
1種以上のヒンダードアミン系光安定剤がビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及び1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンからなる群から選ばれ、1種以上の紫外線吸収剤がC7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートである、請求項1又は2記載の黄変防止用エマルション。
【請求項5】
乳化剤として、1種以上の分子量800乃至2000のポリオキシエチレン高級アルキルエーテル型の非イオン系界面活性剤を含有し、1種以上のヒンダードアミン系光安定剤がビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートであり、1種以上の紫外線吸収剤がC7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートである、請求項1記載の黄変防止用エマルション。
【請求項6】
エマルションが、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートのエマルションである、請求項5記載の黄変防止用エマルション。
【請求項7】
乳化剤として、1種以上の分子量1000乃至6000のジスチレン化クレゾールのエチレンオキシド付加物型の非イオン系界面活性剤及び1種以上の分子量6000乃至20000のプルロニック型の非イオン系界面活性剤からなる群から選ばれる非イオン系界面活性剤を含有し、1種以上のヒンダードアミン系光安定剤が1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンであり、1種以上の紫外線吸収剤がC7−C9分枝鎖及び直鎖アルキル[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートである、請求項1記載の黄変防止用エマルション。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7記載の黄変防止用エマルションを0.1乃至1.0重量%含有する紙基材。
【請求項9】
紙基材が中質紙、上質紙、再生紙及び塗工紙からなる群から選ばれる、請求項8記載の紙基材。

【公開番号】特開2009−7397(P2009−7397A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167354(P2007−167354)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(390014856)日本乳化剤株式会社 (26)
【出願人】(507214072)松見産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】